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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20221209BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20221209BHJP
   F04B 53/14 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
B65D47/34 110
F04B9/14 B
F04B53/14 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017191469
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019064674
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】古原 裕嗣
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】石田 智樹
【審判官】山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D47/34
F04B 9/14
F04B53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着される装着キャップと、
前記装着キャップに、上方付勢状態で下方移動可能に貫設されたステムを有するポンプと、
前記ステムの上端部に装着されるとともに、内容物を吐出する吐出孔が形成された押下ヘッドと、
下降端位置に位置する前記押下ヘッドが着脱可能に装着され、前記押下ヘッドおよび前記ステムの上方移動を規制する規制筒と、を備え、
前記ポンプは、
前記ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、
前記ピストンが上下摺動可能に嵌合された摺動筒部を有するシリンダと、
前記ステムの上下動に連係し、前記ピストンの内側に挿通されたピストンガイドと、
前記シリンダの下端開口を開閉する弁本体を有する下部弁体と、を備え、
前記シリンダは、前記摺動筒部より下方に位置し、内径が前記摺動筒部の内径より小さく、内側に前記下部弁体が配設された収容筒部を備え、
前記ピストンガイドは、前記押下ヘッドおよび前記ステムとともに下降端位置に位置したときに、前記収容筒部内に着脱可能に嵌合され、この収容筒部内と前記摺動筒部内との連通を遮断するシール部を備える吐出器であって、
前記ピストンガイドにおいて、下降端位置に位置したときに、前記収容筒部の内面との間で閉空間を画成する壁面、前記弁本体、並びに、前記収容筒部のうちの少なくとも1つに、上昇端位置に位置する前記押下ヘッドを下降させ前記規制筒に装着する際に、復元可能に変形することで、前記収容筒部の内圧の上昇を吸収する内圧吸収部が形成され
前記内圧吸収部は、前記ピストンガイドの前記壁面、および前記弁本体のうちの少なくとも一方に形成されるとともに、上昇端位置に位置する前記押下ヘッドを下降させ前記規制筒に装着する際に、前記収容筒部の外側に向けて反転変形、若しくは弾性変形し、
前記内圧吸収部は、前記弁本体に形成されるとともに、前記収容筒部の内側に向けて突の曲面状に形成され、前記収容筒部の外側に向けて反転変形可能に形成されていることを特徴とする吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、容器本体の口部に装着される装着キャップと、装着キャップに、上方付勢状態で下方移動可能に貫設されたステムを有するポンプと、ステムの上端部に装着されるとともに、内容物を吐出する吐出孔が形成された押下ヘッドと、下降端位置に位置する押下ヘッドが着脱可能に装着され、押下ヘッドおよびステムの上方移動を規制する規制筒と、を備え、ポンプは、ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、ピストンが上下摺動可能に嵌合された摺動筒部を有するシリンダと、ステムの上下動に連係し、ピストンの内側に挿通されたピストンガイドと、シリンダの下端開口を開閉する弁本体を有する下部弁体と、を備える吐出器が知られている。
この種の吐出器として、シリンダが、摺動筒部より下方に位置し、内径が摺動筒部の内径より小さく、内側に下部弁体が配設された収容筒部を備え、ピストンガイドが、押下ヘッドおよびステムとともに下降端位置に位置したときに、収容筒部内に着脱可能に嵌合され、この収容筒部内と摺動筒部内との連通を遮断するシール部を備える構成が知られている。この吐出器では、押下ヘッドが規制筒に装着された状態で、シール部が収容筒部内に嵌合されるので、この状態で容器本体の内圧が上昇しても、容器本体内の内容物が、シリンダの摺動筒部内に進入するのを防ぐことができる。
ところで、使用者によっては、押下ヘッドを規制筒から外し、押下ヘッド、ステム、ピストン、およびピストンガイドを上昇端位置に位置させて内容物を使用した後に、この吐出器付き容器本体を例えば外に持ち出す等のために、再び、押下ヘッド等を下降端位置に位置させ、押下ヘッドを規制筒に装着する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-182801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出器では、上昇端位置に位置する押下ヘッドを、再び規制筒に装着する際に、収容筒部の内圧が上昇することで、例えば、押下ヘッド等を下降端位置にまで到達させることができなかったり、押下ヘッドの規制筒への装着が不十分になったり、収容筒部内の内容物からの反発力により、押下ヘッドが規制筒から外れたりする等のおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、押下ヘッドの規制筒への再装着時に、収容筒部の内圧が上昇するのを抑制することができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の吐出器は、容器本体の口部に装着される装着キャップと、前記装着キャップに、上方付勢状態で下方移動可能に貫設されたステムを有するポンプと、前記ステムの上端部に装着されるとともに、内容物を吐出する吐出孔が形成された押下ヘッドと、下降端位置に位置する前記押下ヘッドが着脱可能に装着され、前記押下ヘッドおよび前記ステムの上方移動を規制する規制筒と、を備え、前記ポンプは、前記ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、前記ピストンが上下摺動可能に嵌合された摺動筒部を有するシリンダと、前記ステムの上下動に連係し、前記ピストンの内側に挿通されたピストンガイドと、前記シリンダの下端開口を開閉する弁本体を有する下部弁体と、を備え、前記シリンダは、前記摺動筒部より下方に位置し、内径が前記摺動筒部の内径より小さく、内側に前記下部弁体が配設された収容筒部を備え、前記ピストンガイドは、前記押下ヘッドおよび前記ステムとともに下降端位置に位置したときに、前記収容筒部内に着脱可能に嵌合され、この収容筒部内と前記摺動筒部内との連通を遮断するシール部を備える吐出器であって、前記ピストンガイドにおいて、下降端位置に位置したときに、前記収容筒部の内面との間で閉空間を画成する壁面、前記弁本体、並びに、前記収容筒部のうちの少なくとも1つに、上昇端位置に位置する前記押下ヘッドを下降させ前記規制筒に装着する際に、復元可能に変形することで、前記収容筒部の内圧の上昇を吸収する内圧吸収部が形成され、前記内圧吸収部は、前記ピストンガイドの前記壁面、および前記弁本体のうちの少なくとも一方に形成されるとともに、上昇端位置に位置する前記押下ヘッドを下降させ前記規制筒に装着する際に、前記収容筒部の外側に向けて反転変形、若しくは弾性変形し、前記内圧吸収部は、前記弁本体に形成されるとともに、前記収容筒部の内側に向けて突の曲面状に形成され、前記収容筒部の外側に向けて反転変形可能に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ピストンガイドの前記壁面、弁本体、および収容筒部のうちの少なくとも1つに、内圧吸収部が形成されているので、上昇端位置に位置する押下ヘッドを下降させ規制筒に装着する際、つまり、上昇端位置に位置するピストンガイドを下降させ、シール部を収容筒部内に嵌合する際に、収容筒部の内圧が上昇しようとしたときに、内圧吸収部が変形することで、収容筒部の内圧の上昇を吸収することができる。したがって、上昇端位置に位置する押下ヘッド、ステム、ピストン、およびピストンガイドを、下降端位置に到達させることが可能になり、押下ヘッドを再び規制筒に確実に装着することができる。
【0008】
圧吸収部が、ピストンガイドの前記壁面、および弁本体のうちの少なくとも一方に形成されるとともに、上昇端位置に位置する押下ヘッドを下降させ規制筒に装着する際に、収容筒部の外側に向けて反転変形、若しくは弾性変形するので、前述のように収容筒部の内圧が上昇しようとしたときに、内圧吸収部が、収容筒部の外側に向けて反転変形、若しくは弾性変形することで、この内圧の上昇を吸収することができる。
【0009】
圧吸収部が、収容筒部の内側に向けて突の曲面状に形成され、収容筒部の外側に向けて反転変形可能に形成されているので、前述のように収容筒部の内圧が上昇しようとしたときに、内圧吸収部を収容筒部の外側に向けて反転変形させることで、この内圧の上昇を吸収することができる。
また、内圧吸収部が弁本体に形成されているので、内圧吸収部の大きさを容易に広く確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押下ヘッドの規制筒への再装着時に、収容筒部の内圧が上昇するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出器の縦断面図である。
図2図1に示す吐出器において、押下ヘッドが上昇端位置に位置した状態を示す図である。
図3図1および図2の吐出器において、上昇端位置に位置する押下ヘッドを再び規制筒に装着した状態の要部を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出器1について説明する。
本実施形態の吐出器1は、図1および図2に示されるように、容器本体Wの口部W1に装着される装着キャップ21と、装着キャップ21に、上方付勢状態で下方移動可能に貫設されたステム11を有するポンプ24と、ステム11の上端部に装着されるとともに、内容物を吐出する吐出孔16aが形成された押下ヘッド16と、下降端位置に位置する押下ヘッド16が着脱可能に装着され、押下ヘッド16およびステム11の上方移動を規制する規制筒22と、を備える。なお、内容物は、空気より圧縮しにくい液体等となっている。
装着キャップ21は、環状の天壁部21aを備える有頂筒状に形成されている。装着キャップ21の内周面に、口部W1に螺着される雌ねじ部が形成されている。
【0013】
ポンプ24は、ステム11の上下動に連係する筒状のピストン14と、ピストン14が上下摺動可能に嵌合された摺動筒部15aを有するシリンダ15と、ステム11の上下動に連係し、ピストン14の内側に挿通されたピストンガイド17と、シリンダ15の下端開口を開閉する弁本体34を有する下部弁体18と、を備える。
装着キャップ21、ステム11、規制筒22、ピストン14、およびシリンダ15はそれぞれ、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線O方向から見て、軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0014】
ピストン14は、シリンダ15の内周面に摺接する外筒28と、外筒28の内側に配設された内筒29と、外筒28と内筒29とを全周にわたって連結する環状の連結部27と、を備える。
連結部27は、外筒28および内筒29それぞれにおける上端部と下端部との間に位置する中間部同士を連結している。内筒29は、ステム11の下端部内に上下摺動自在に嵌合されている。
【0015】
シリンダ15は、摺動筒部15aより下方に位置し、内径が摺動筒部15aの内径より小さく、内側に下部弁体18が配設された収容筒部15bと、収容筒部15bから下方に向けて突出し、かつ収容筒部15bより小径に形成された連結筒部15cと、を備える。
【0016】
連結筒部15c内に、下端開口が容器本体Wの底部に位置する吸い上げパイプ15eが嵌合されている。
摺動筒部15aの上部に径方向の外側に向けて突出するフランジ部15dが全周にわたって形成され、フランジ部15dが、容器本体Wの口部W1の上端開口縁上に配置されている。摺動筒部15aのうち、フランジ部15dより上方に位置する上端部は、装着キャップ21の天壁部21aの内側に挿通されている。フランジ部15dの上面に、装着キャップ21の天壁部21aが配置されている。
【0017】
シリンダ15には、径方向に開口し、容器本体W内とシリンダ15内とを連通する導入孔20が形成されている。図示の例では、導入孔20は、摺動筒部15aの上部のうち、フランジ部15dより下方に位置する部分に形成されている。導入孔20は、図2に示されるような、押下ヘッド16およびステム11が上昇端位置に位置する待機状態で、外筒28の外周面により閉塞される。図示の例では、外筒28における上端部および下端部にそれぞれ、径方向の外側に向けて膨出する膨出部が形成されており、前述の待機状態で、導入孔20が、外筒28の両膨出部同士の間に位置することで閉塞される。
【0018】
ピストンガイド17は、ステム11の下部内に嵌合された装着部31を備える。装着部31は、ステム11の下端開口から下方に突出している。図1に示されるような、ピストンガイド17が下降端位置に位置した状態で、装着部31は、シリンダ15の摺動筒部15a内に位置する。装着部31は、周方向に間隔をあけて配置されるとともに、ステム11の下部内に嵌合された複数の分割周壁と、複数の分割周壁における周方向の中央部から各別に径方向の内側に向けて突出し、軸線O上で互いに連結されたリブと、を備える。リブは、分割周壁における軸線O方向の全域にわたって配設されている。
【0019】
ピストンガイド17は、装着部31の下端部から下方に向けて突出する栓部13を備える。栓部13は有頂筒状に形成されている。なお栓部13は、中実に形成されてもよい。栓部13の天壁部から装着部31が上方に向けて延びている。栓部13の周壁部は、装着部31の分割周壁より径方向の外側に位置している。栓部13の周壁部の外周面に、シリンダ15の摺動筒部15aの内周面に近接する近接突起13aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。近接突起13aにおける径方向の外端部は、シリンダ15の収容筒部15bの内周面より径方向の外側に位置している。ピストンガイド17が下降端位置に位置した状態で、近接突起13aは、シリンダ15の摺動筒部15a内の下端部に位置する。近接突起13aは、栓部13の周壁部における軸線O方向の中間部に配設されている。
【0020】
栓部13の周壁部において、近接突起13aより下方に位置する下部は、ピストンガイド17が押下ヘッド16およびステム11とともに下降端位置に位置したときに、収容筒部15b内に着脱可能に嵌合され、この収容筒部15b内と摺動筒部15a内との連通を遮断するシール部12となっている。
栓部13内に付勢手段19の上端部が配設されている。内容物の吐出後、ステム11を上方に復元移動させる際に、栓部13の天壁部が、ピストン14の下端部に係合し、ピストン14を上方に復元移動させる。
【0021】
下部弁体18は、シリンダ15内において、ピストンガイド17の下方に位置する部分に配設されている。下部弁体18は収容筒部15b内に配設されている。図示の例では、下部弁体18の上端部は、摺動筒部15aの下端部内に位置している。
下部弁体18は、収容筒部15b内に嵌合された嵌合部33と、嵌合部33の内側に配設され、シリンダ15の下端開口を開閉する弁本体34と、を備える。
【0022】
嵌合部33は、収容筒部15bの下端部内に嵌合された下部33aと、下部33aより上方に位置する上部33bと、を備える。
上部33bは、下部33aより径方向の内側に位置している。上部33bは、軸線Oを径方向に挟む両側に配置され、互いに対向する一対の側板と、これらの側板同士を連結する中板と、側板および中板の各上端部に一体に連結された頂板と、を備える。軸線O方向から見て、一対の側板および中板は全体でH字状を呈し、頂板は、一対の側板に外接する円形状を呈する。一対の側板および中板それぞれの軸線O方向の長さは互いに同等となっている。一対の側板および中板それぞれの軸線O方向の位置は互いに同等になっている。
下部33aは、下端部に位置し全周にわたって連続して延びる環状体と、環状体と上部33bにおける一対の側板とを各別に連結する一対の連結板と、を備える。連結板は、環状体の上端開口縁と、側板の下端縁と、を連結し、上方を向く座面33cを有する。
【0023】
弁本体34は、収容筒部15bの内面における、収容筒部15bの下端開口の周縁部に、上方に向けて離反可能に載置されている。弁本体34は、嵌合部33の下部33aの内側に配設されている。弁本体34は、嵌合部33の下部33aにおける前記環状体の内周面に、弾性変形可能な連結片を介して連結されている。嵌合部33において、上部33bが付勢手段19の内側に挿入され、座面33cに、付勢手段19の下端部が配設されている。付勢手段19は、ステム11およびピストンガイド17を一体に上方に向けて付勢する。
【0024】
下部弁体18は、シリンダ15内の加圧時に、シリンダ15の下端開口を閉塞したままに維持し、シリンダ15内の減圧時に、シリンダ15の下端開口を開放する逆止弁となっている。これにより、シリンダ15内の加圧時に、シリンダ15内の内容物がシリンダ15の下端開口から容器本体W内に戻ることが阻止され、シリンダ15内の減圧時に、容器本体W内の内容物がシリンダ15の下端開口からシリンダ15内に流入する。
【0025】
押下ヘッド16は、ステム11の上端部に嵌合された嵌合筒16bと、嵌合筒16bから径方向の外側に向けて突出し、その先端に吐出孔16aが形成された吐出筒16cと、嵌合筒16bを径方向の外側から囲う螺着筒16dと、を備える。吐出筒16cは、螺着筒16dを径方向に貫いている。嵌合筒16bの上部は、ステム11の上端部から上方に突出しており、この上部に、径方向の外側に向けて突出し、ステム11の上端開口縁に当接した係止突起16eが形成されている。係止突起16eは、ステム11の上端開口縁から径方向の外側に突出している。
【0026】
規制筒22は、シリンダ15の上端部に外嵌された外嵌筒22aと、下降端位置に位置する押下ヘッド16の螺着筒16dが螺着される雄ねじ筒22bと、を備える。雄ねじ筒22bのうち、下部がシリンダ15の上端部内に挿入され、かつ上部がシリンダ15の上端部から上方に突出しており、この上部の外周面に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ筒22bの下部の外周面、およびシリンダ15の上端部の内周面にはそれぞれ、互いに係合する回り止め部が形成されている。
【0027】
ここで、規制筒22の雄ねじ筒22b、およびシリンダ15の摺動筒部15aそれぞれの内周面と、ステム11の外周面と、の間に、押下ヘッド16が下降端位置に位置しているときに、シリンダ15の導入孔20を閉塞する閉塞筒23が配設されている。
【0028】
閉塞筒23の下端部に、シリンダ15内に摺動自在に嵌合された閉塞筒部23aが形成されている。閉塞筒部23aは、図2に示されるような、押下ヘッド16およびステム11が上昇端位置に位置する待機時に、雄ねじ筒22bより下方に突出し、シリンダ15の内周面に当接している。この際、閉塞筒部23aの下端開口縁と、ピストン14の外筒28の上端開口縁と、が当接している。一方、図1に示されるような、ステム11および押下ヘッド16が下降端位置に位置して、押下ヘッド16が規制筒22に螺着された状態では、閉塞筒部23aは、シリンダ15の導入孔20を閉塞する。図示の例では、閉塞筒部23aにおける上端部および下端部にそれぞれ、径方向の外側に向けて膨出する膨出部が形成されており、押下ヘッド16が規制筒22に螺着された状態で、導入孔20が、閉塞筒部23aの両膨出部同士の間に位置することで閉塞される。ステム11の外周面と、閉塞筒23の内周面と、の間に、外部とピストン14の外筒28の内周面側とを連通する導入通路25が形成されている。前述の待機時に、閉塞筒23の上端部は、規制筒22の雄ねじ筒22bより上方に位置している。
【0029】
以上のように構成された吐出器1の使用方法について説明する。
【0030】
まず、下降端位置に位置する押下ヘッド16を、規制筒22に対して軸線O回りに回転させることで、押下ヘッド16の螺着筒16dの雌ねじ部と、規制筒22の雄ねじ筒22bの雄ねじ部と、の螺合を解除する。この際、押下ヘッド16、ステム11、およびピストンガイド17が、シリンダ15に対して上昇し、ピストンガイド17のシール部12が、シリンダ15の収容筒部15bから外れ、収容筒部15b内と摺動筒部15a内とが連通する。そして、付勢手段19の上方付勢力によって、ピストンガイド17、ステム11、および押下ヘッド16が一体に上昇する。この過程において、ピストンガイド17の栓部13における天壁部が、ピストン14の内筒29の下端部に係合し、ピストン14も上昇する。
これにより、シリンダ15内が減圧することで、下部弁体18がシリンダ15の下端開口を開放し、容器本体W内の内容物が、吸い上げパイプ15eを通してシリンダ15内に流入する。また、ピストン14の外筒28の上端開口縁が、閉塞筒23の閉塞筒部23aの下端開口縁に係合することで、閉塞筒23を上昇させて導入孔20から上方に離間させ、外筒28がシリンダ15の導入孔20を覆う。
【0031】
そして、押下ヘッド16を押下して、ステム11およびピストンガイド17とともに下降移動させると、まず、ピストンガイド17の栓部13における天壁部が、ピストン14の内筒29の下端部から下方に離れて、シリンダ15内とステム11内とが連通し、また、ステム11の下端部が、ピストン14の連結部27に当接する。さらに、この下降移動を継続すると、ピストン14も下降移動することで、ピストン14が導入孔20から下方に離間しつつ、シリンダ15内の内容物が、ピストンガイド17における周方向で互いに隣り合う近接突起13a同士の間を通して、ステム11内に流入し、吐出孔16aから吐出される。
次に、押下ヘッド16の押下を解除すると、付勢手段19の上方付勢力によって、前述と同様に、ピストンガイド17、ピストン14、ステム11、および押下ヘッド16が上方に復元移動し、容器本体W内の内容物がシリンダ15内に流入する。
【0032】
そして、本実施形態では、ピストンガイド17において、下降端位置に位置したときに、収容筒部15bの内面との間で閉空間Xを画成する壁面、弁本体34、並びに、収容筒部15bのうちの少なくとも1つに、上昇端位置に位置する押下ヘッド16を下降させ規制筒22に装着する際に、復元可能に変形することで、収容筒部15bの内圧の上昇を吸収する内圧吸収部35が形成されている。図示の例では、ピストンガイド17の前記壁面は、栓部13のうち、収容筒部15bの内側を向く内面13bとなっている。内圧吸収部35は、栓部13の内面13b、および弁本体34のうちの少なくとも一方に形成されるとともに、上昇端位置に位置する押下ヘッド16を下降させ規制筒22に装着する際に、収容筒部15bの外側に向けて反転変形、若しくは弾性変形する。
【0033】
図示の例では、内圧吸収部35は弁本体34に形成されている。内圧吸収部35は、収容筒部15bの内側、つまり上方に向けて突の曲面状に形成され、収容筒部15bの外側、つまり下方に向けて反転変形可能に形成されている。なお、内圧吸収部35は、下方に向けた押圧力が加えられ、下方に向けて反転変形した後に、この押圧力が解除されたときに、弾性復元力により上方に向けて反転変形する構成であってもよいし、この押圧力が解除されても、下方に向けた反転変形が維持される構成であってもよい。
【0034】
弁本体34は有頂筒状に形成され、天壁部が内圧吸収部35とされ、周壁部36が、前記連結片を介して嵌合部33の下部33aの内周面に連結されている。内圧吸収部35の厚さは、弁本体34の周壁部36の肉厚より薄くなっている。内圧吸収部35は、嵌合部33の上部33bの下端部より下方に位置している。内圧吸収部35は、下方に向けて反転変形した状態で、弁本体34の周壁部36の内側に進入し、収容筒部15bの下端開口より上方に位置する。なお、内圧吸収部35は、下方に向けて反転変形した状態で、収容筒部15bの下端開口に進入してもよい。内圧吸収部35は、収容筒部15bの下端開口における全域にわたって軸線O方向で対向している。弁本体34の周壁部36の下端開口縁が、収容筒部15bの内面における、収容筒部15bの下端開口の周縁部に、上方に向けて離反可能に載置されている。
【0035】
そして、上昇端位置に位置する押下ヘッド16を、再び規制筒22に装着するには、押下ヘッド16を下方に向けて押し込み、押下ヘッド16の螺着筒16dを規制筒22の雄ねじ筒22bに押し当てた状態で、押下ヘッド16を軸線O回りに回転させ、螺着筒16dを雄ねじ筒22bに螺着する。
この際、閉塞筒23の上端開口縁が、押下ヘッド16の嵌合筒16bに形成された係止突起16eにより下方に向けて押し込まれ、閉塞筒23が下降し、閉塞筒部23aが導入孔20を閉塞する。
さらにこの際、ピストンガイド17のシール部12が、シリンダ15の収容筒部15b内に嵌合され、収容筒部15b内と摺動筒部15a内との連通が遮断される。この過程において、収容筒部15bの内圧が上昇しようとしたときに、図3に示されるように、内圧吸収部35が、下方に向けて反転変形することで、この内圧の上昇が吸収される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態による吐出器1によれば、弁本体34に内圧吸収部35が形成されているので、上昇端位置に位置する押下ヘッド16を下降させ規制筒22に装着する際、つまり、上昇端位置に位置するピストンガイド17を下降させ、シール部12を収容筒部15b内に嵌合する際に、収容筒部15bの内圧が上昇しようとしたときに、内圧吸収部35が下方に向けて反転変形することで、収容筒部15bの内圧の上昇を吸収することができる。したがって、上昇端位置に位置する押下ヘッド16、ステム11、ピストン14、およびピストンガイド17を、下降端位置に到達させることが可能になり、押下ヘッド16を再び規制筒22に確実に装着することができる。
また、内圧吸収部35が弁本体34に形成されているので、内圧吸収部35の大きさを容易に広く確保することができる。
【0037】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0038】
例えば 前記実施形態では、規制筒22として、下降端位置に位置する押下ヘッド16が着脱可能に螺着される構成を示したが、これに限らず例えば、押下ヘッドが着脱可能にアンダーカット嵌合される構成にする等、適宜変更してもよい。
また、内圧吸収部35は、ピストンガイド17において、下降端位置に位置したときに、収容筒部15bの内面との間で閉空間Xを画成する栓部13の内面13bに形成してもよいし、収容筒部15bに形成してもよいし、栓部13の内面13b、弁本体34、および収容筒部15bの全てに形成してもよい。内圧吸収部35を栓部13の内面13bに形成する場合、例えば、栓部13の天壁部を、収容筒部15bの内側に向けて突の曲面状に形成するとともに、収容筒部15bの外側に向けて反転変形可能に形成してもよい。
また、内圧吸収部35は、前述のように弁本体34の天壁部の全体、若しくは栓部13の天壁部の全体が反転変形する構成に限らず例えば、栓部13および弁本体34それぞれにおいて、閉空間Xを画成する壁体のうちの壁面だけが、弾性変形し収容筒部15bの外側に向けて窪む構成等を採用してもよい。
また、内圧吸収部を収容筒部15bに形成する場合、内圧吸収部は、収容筒部15bの内圧が上昇しようとしたときに、下方に向けて伸長変形することで、収容筒部15bを下方に向けて伸長させてもよい。なおこの内圧吸収部として、例えば蛇腹等を採用してもよい。
また、空気より圧縮しにくい内容物としては、例えば、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプー、リンス、およびコンディショナー等が挙げられる。
【0039】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 吐出器
11 ステム
12 シール部
13b 栓部の内面(壁面)
14 ピストン
15 シリンダ
15a 摺動筒部
15b 収容筒部
16 押下ヘッド
16a 吐出孔
17 ピストンガイド
18 下部弁体
21 装着キャップ
22 規制筒
24 ポンプ
34 弁本体
35 内圧吸収部
W 容器本体
W1 口部
X 閉空間
図1
図2
図3