(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】地図データ生成プログラム、コンピュータ読取可能な記録媒体及び地図データ生成装置
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20221209BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20221209BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20221209BHJP
G08G 1/137 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G01C21/26 A
G08G1/01 E
G08G1/137
(21)【出願番号】P 2018014678
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-10-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム/大規模実証実験/ダイナミックマップ/ダイナミックマップの試作・整備及びセンター機能や更新手法等の確立及び大規模実証実験の実施・管理」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593154436
【氏名又は名称】アイサンテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】321011767
【氏名又は名称】ジオテクノロジーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(73)【特許権者】
【識別番号】591115475
【氏名又は名称】株式会社三菱総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】517418828
【氏名又は名称】ダイナミックマップ基盤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 喜秋
(72)【発明者】
【氏名】吉埜 孝広
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 幸城
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156704(JP,A)
【文献】特開2002-236444(JP,A)
【文献】特開2003-346285(JP,A)
【文献】「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・自動走行システム」自動走行システムの実現に向けた諸課題とその解決の方向性に関する調査・検討におけるダイナミックマップ構築に向けた試作・評価に関する調査検討 委託業務成果報告書(本編)[online],ダイナミックマップ構築検討コンソーシアム,2016年03月04日,p.5,82,インターネット<URL:https://www.sip-adus.go.jp/wp/wp-content/uploads/co_2015_col1-1_doc4.pdf>,[2021年 9月22日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
第1の交差点を表す3次元座標の位置座標を有した仮想の第1の交差点領域と、第2の交差点を表す3次元座標の位置座標を有した仮想の第2の交差点領域と、前記第1の交差点と前記第2の交差点とを接続する単路部であって前記第1の交差点と前記第2の交差点との間に他の交差点を持たない単路部である接続単路部を規定し、前記第1の交差点領域と前記第2の交差点領域とに接続する仮想の車道リンクとを有する地図データの前記第1の交差点領域の内部に仮想の第1の基準点を設定し、前記第2の交差点領域の内部に仮想の第2の基準点を設定する基準点設定処理と、
前記接続単路部の渋滞を表す渋滞データを取得する渋滞データ取得処理と、
前記渋滞データを、前記第1の基準点と前記第2の基準点との少なくともいずれかと、前記車道リンクとに、対応付ける対応付け処理と
を実行させる地図データ生成プログラム。
【請求項2】
前記渋滞データ取得処理によって取得される前記渋滞データは、
前記接続単路部における前記渋滞の始点と終点とを含んでおり、
前記対応付け処理では、前記始点と前記終点とは、
前記第1の交差点領域と前記第2の交差点領域との間に位置し、前記第1の基準点と前記第2の基準点との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられている請求項1に記載の地図データ生成プログラム。
【請求項3】
前記渋滞データ取得処理によって取得される前記渋滞データは、
前記渋滞の始点と終点とのいずれか一方のみが、前記第1の交差点領域と前記第2の交差点領域との間に位置し、
前記対応付け処理では、前記一方は、
前記第1の基準点と前記第2の基準点との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられる請求項1に記載の地図データ生成プログラム。
【請求項4】
前記渋滞データ取得処理によって取得される前記渋滞データは、
前記渋滞の始点と終点とのいずれも前記第1の交差点領域と前記第2の交差点領域との間に位置することなく、前記第1の交差点領域から前記第2の交差点領域まで続く渋滞を示しており、
前記対応付け処理では、
前記第1の基準点と前記第2の基準点との間の道のり距離が対応付けられる請求項1に記載の地図データ生成プログラム。
【請求項5】
前記渋滞データ取得処理によって取得される前記渋滞データは、
前記車道リンクの途中で、第1の渋滞データと第2の渋滞データとに分割されているとともに、分割されている位置を表す分割位置データを有し、
前記分割位置データは、
前記対応付け処理では、前記第1の基準点と前記第2の基準点との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられる請求項1に記載の地図データ生成プログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の地図データ生成プログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項7】
第1の交差点を表す3次元座標の位置情報を有した仮想の第1の交差点領域と、第2の交差点を表す3次元座標の位置情報を有した仮想の第2の交差点領域と、前記第1の交差点と前記第2の交差点とを接続する単路部であって前記第1の交差点と前記第2の交差点との間に他の交差点を持たない単路部である接続単路部を規定し、前記第1の交差点領域と前記第2の交差点領域とに接続する仮想の車道リンクとを有する地図データの前記第1の交差点領域の内部に仮想の第1の基準点を設定し、前記第2の交差点領域の内部に仮想の第2の基準点を設定する基準点設定部と、
前記接続単路部の渋滞を表す渋滞データを取得する渋滞データ取得部と、
前記渋滞データを、前記第1の基準点と前記第2の基準点との少なくともいずれかと、前記車道リンクとに、対応付ける対応付け部と
を備える地図データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行支援システムに関するものであり、特に、自動走行支援システムにおいて用いられる地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、国内外で自動運転に関する技術が注目されている。3次元地図データを用いた自動運転車の開発が進められている。SIP自動走行システムで検討しているダイナミックマップは、ダイナミックマップを構成する高精度な3次元地図データ(静的データ)に、車線別規制情報(準静的データ)や車線別渋滞情報(準動的データ)及び信号情報や横断歩行者情報等(動的データ)を紐付けることで、自動走行車両の地図として活用可能となる。
紐付けの概念検討はなされていたが、実際に、地図データと他のデータを紐付ける方法についての具体的な検討はされてはおらず、地図データと他のデータを紐付けるデータ構造の実現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-156704号公報
【文献】国際公開WO2007/037389号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【文献】「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・自動走行システム」自動走行システムの実現に向けた諸課題とその解決の方向性に関する調査・検討におけるダイナミックマップ構築に向けた試作・評価に係る調査検討委託業務成果報告書 http://www.sip-adus.jp/wp/wp-content/uploads/cao_2016_cao1-01_01.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、静的データと渋滞データのような準動的データとが対応付けられている、地図データの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地図データは、
自動走行支援システムで用いられる地図データであって、
第1の交差点を表す仮想の第1の交差点領域と、
前記第1の交差点領域の内部に設定された仮想の第1の基準点と、
第2の交差点を表す仮想の第2の交差点領域と、
前記第2の交差点領域の内部に設定された仮想の第2の基準点と、
前記第1の交差点と前記第2の交差点とを接続する単路部であって前記第1の交差点と前記第2の交差点との間に他の交差点を持たない単路部である接続単路部を規定し、前記第1の交差点領域と前記第2の交差点領域とに接続する仮想の車道リンクと、
前記接続単路部の渋滞を表す渋滞データと、
を備え、
前記渋滞データは、
前記第1の基準点と前記第2の基準点との少なくともいずれかと、
前記車道リンクとに、対応付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交差点領域に設定された基準点と、渋滞データとを対応付けることができるので、高精度の3次元地図データに渋滞情報を容易に関連付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における自動走行支援システム100のブロック図。
【
図2】実施の形態1における車両位置情報の送受信について説明するための図。
【
図3】実施の形態1における基盤的地図データベース200のデータ構造図。
【
図4】実施の形態1におけるマーカーポイントデータ205のデータ構造図。
【
図5】実施の形態1におけるマーカーポイント313について説明するための図。
【
図6】実施の形態1における自車両位置処理のフローチャート。
【
図7】実施の形態1における他車両位置処理のフローチャート。
【
図8】実施の形態1における自動走行支援について説明するための図。
【
図9】実施の形態1におけるマーカーポイントの位置情報が誤差を有する場合について説明するための図。
【
図10】実施の形態1におけるマーカーポイントの位置情報が誤差を有する場合について説明するための図。
【
図12】実施の形態1における地物の用途と地物に紐づけられる動的情報とを示す表。
【
図13】実施の形態1における地物の用途と地物に紐づけられる動的情報とを示す表。
【
図14】実施の形態1における地物の用途と地物に紐づけられる動的情報とを示す表。
【
図15】実施の形態1における地物の用途と地物に紐づけられる動的情報とを示す表。
【
図16】実施の形態1における区画線321と車道リンク322と車線リンク323との関係図。
【
図17】実施の形態1における交差点領域326と交差点内車線リンク327との関係図。
【
図18】実施の形態1における自動走行支援装置110のハードウェア構成図。
【
図19】実施の形態2を示す図で、ダイナミックマップデータ500を示す図。
【
図20】実施の形態2を示す図で、ケース1-1から1-4、ケース2-1-1及びケース2-1-2のそれぞれの、位置情報表現タイプを示す図。
【
図21】実施の形態2を示す図で、ケース1-1の交通情報リンクの数及び車道リンクの数とを模式的に示す図。
【
図22】実施の形態2を示す図で、ケース1-2の交通情報リンクの数及び車道リンクの数とを模式的に示す図。
【
図23】実施の形態2を示す図で、ケース1-3の交通情報リンクの数及び車道リンクの数とを模式的に示す図。
【
図24】実施の形態2を示す図で、ケース1-1の渋滞を示す図。
【
図25】実施の形態2を示す図で、ケース1-2の渋滞を示す図。
【
図26】実施の形態2を示す図で、ケース1-3の渋滞を示す図。
【
図27】実施の形態2を示す図で、ケース1-4の渋滞を示す図。
【
図28】実施の形態2を示す図で、ケース2-1-1の渋滞を示す図。
【
図29】実施の形態2を示す図で、ケース2-1-2の渋滞を示す図。
【
図30】実施の形態2を示す図で、地図データ生成装置400の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
自動走行支援システム100について、
図1から
図16に基づいて説明する。
【0010】
***システム構成の説明***
図1の(a)に基づいて、自動走行支援システム100の構成を説明する。
自動走行支援システム100は、車両の自動走行を支援するためのシステムであり、後述する車両311に搭載される。
自動走行支援システム100は、自動走行支援装置110と車両制御システム120とを備える。
自動走行支援装置110は、車載器に相当する装置である。
車両制御システム120は、車両を制御するシステムである。
【0011】
図1の(b)は、交通情報提供システム550の構成を示す図である。交通情報提供システム550は、通信ネットワーク回線600を通じて、路側機312に接続される。
交通情報提供システム550は、後述する提供情報61を格納した交通情報データベース510を備えている。
提供情報61は、後述するダイナミックマップデータ500の準動的情報が格納されている。また、ダイナミックマップデータ500の静的情報、準静的情報、動的情報が格納されていても良い。
ダイナミックマップデータ500の準動的情報である提供情報61は、通信ネットワーク回線600および路側機312を介して、自動走行支援システム100の通信システム111に提供される。
【0012】
自動走行支援装置110は、通信システム111と、ポジショニングシステム112と、基盤的地図データベース200と、車両位置情報処理部113とを備える。
通信システム111は、路側機312および他車両と通信する。具体的には、通信システム111は、他車両の位置情報を受信するとともに、自車両の位置情報を送信する。
ポジショニングシステム112は、衛星測位装置と慣性航法装置との組み合わせにより構成され、自車両の位置を計測する。ポジショニングシステム112は、例えば1m以下もしくは50cm以下の高精度な測位精度で位置計測を行っても良い。
基盤的地図データベース200は、基盤的地図データ290を備える。基盤的地図データ290は、自動走行支援に必要なデータで構成される。つまり、基盤的地図データ290は、道路形状および道路地物等に関するデータで構成される。道路地物は、道路または道路の周辺にある地物である。
車両位置情報処理部113は、通信システム111を介して取得される他車両の位置情報と、基盤的地図データベース200から取得されるデータとに基づき、他車両の位置や道路上の地物または道路の周辺に存在する地物の位置を特定する。また、車両位置情報処理部113は、ポジショニングシステム112により計測される自車両の位置と、基盤的地図データベース200から取得されるデータとに基づき、自車両の位置情報を生成する。
車両制御システム120は、車両位置情報処理部113により特定される他車両の位置と、ポジショニングシステム112により計測される自車両の位置と、道路上の地物または道路の周辺に存在する地物の位置とに基づいて、自車両を制御する。具体的には、車両制御システム120は、加速、操舵および制動等の制御を行う。
【0013】
図2に基づいて、通信システム111を用いて行われる車両位置情報301の送受信について説明する。
車両311は、自車両の車両位置情報301を送信し、他車両の車両位置情報301を受信する。
車両位置情報301は、路車間通信または車車間通信で通信される。
路車間通信は、路側機312と車両311との間で行われる通信である。
車車間通信は、車両311間で直接行われる通信である。
ここで、路車間通信で路側機312から車両311に伝達する情報は、例えば、車両311に搭載されているカメラ、レーダ等のセンサで検出できない「先の道路形状、道路の規制情報、道路の渋滞情報、気象情報」などの情報であって、ダイナミックマップデータ500の準動的情報も含まれる。
路側機312としては、道路上に配置されて専用狭域通信を行うETC2.0の通信スポットが用いられても良いし、ARIB STD‐T109またはIEEE802.11pに則り、広域通信または狭域通信を行う路車間通信システムが用いられても良いし、LTEまたは5Gによる移動体通信システムが用いられて良い。
また、車車間通信で複数の車両311間で伝達される情報は、例えば、自車両311の位置、速度、加速度、ワイパー稼働の有無、ウインカ稼働の有無、目的値、通信システム111の電波法で規定されている無線機としての識別ID(WCN:wireless call number)などの情報である。
【0014】
図3に基づいて、基盤的地図データベース200のデータ構造を説明する。
自動走行を支援するためには、道路の形状および道路の周辺に存在する地物を特定することを可能とする基盤的地図データ290が必要になる。
基盤的地図データベース200には、基盤的地図データ290として、区画線データ201、交差点データ202、停止線データ203、信号機データ204、マーカーポイントデータ205、車線リンクデータ206および車道リンクデータ207等が記憶されている。
【0015】
区画線データ201は、区画線の位置など、区画線に関するデータである。区画線は、道路に標示された線であり、車線および車道を区画する。車道は、車両311が走行する道路であり、1以上の車線等から構成される。
【0016】
交差点データ202は、交差点の位置など、交差点領域に関するデータである。交差点は、2以上の道路が交差する所である。交差点領域は、車線が交差、合流または分岐する領域である。具体的な交差点領域は、十字路、T字路またはその他の交差点である。
停止線データ203は、停止線に関するデータである。
信号機データ204は、信号機に関するデータである。
【0017】
マーカーポイントデータ205は、マーカーポイントに関するデータである。
マーカーポイントは、停止線および交差点領域などの重要な位置に設定され、自車両の相対位置及び他車両の相対位置の原点となる。つまり、マーカーポイントは、相対位置を表現するための基準となる位置基準点である。
【0018】
車線リンクデータ206は、車線リンクに関するデータである。車線リンクは、車線の中心線を規定する。
車道リンクデータ207は、車道リンクに関するデータである。車道リンクは、1以上の車線を有する車道を規定する。
【0019】
図4に基づいて、マーカーポイントデータ205のデータ構造を説明する。
マーカーポイントデータ205には、マーカーポイント毎に、マーカーポイントIDと位置情報と属性情報とが互いに対応付けられて含まれる。
マーカーポイントIDは、マーカーポイントを識別する識別情報である。なお、位置情報が識別情報として利用されてもよい。
位置情報は、マーカーポイントの絶対位置を示す。絶対位置とは、地球のある位置を原点として決まる位置であり、緯度、経度及び標高の座標系で表現可能な座標値である。各車両311でナビゲーションシステムに利用される地図が異なる場合であっても、マーカーポイントの位置情報は、各車両311で共通である。
属性情報は、マーカーポイントが有する属性を示す。例えば、属性情報は、車道リンクIDを示す。この車道リンクIDは、マーカーポイントの付近に存在する交差点領域と接続する車道リンクを識別する。
【0020】
図5に基づいて、マーカーポイント313について説明する。
マーカーポイント313は、
図5の(a)、(b)また(c)に示すような位置に設けられる。
図5の(a)は、交差点の手前にある停止線の右端にマーカーポイント313が設けられた例を示している。車両311は交差点が位置する方向に走行している。
図5の(b)は、マーカーポイント313が車線の分岐点に設けられた例を示している。車両311は分岐点が位置する方向に走行している。
図5の(c)は、マーカーポイント313が車線の合流点に設けられた例を示している。車両311は合流点が位置する方向に走行している。
【0021】
なお、マーカーポイント313の位置は、
図5の(a)~(c)に示す位置に限られるものではない。
図5の(a)において、マーカーポイント313は、交差点の中心に設けられてもよい。
図5の(b)において、マーカーポイント313は、車両311の進行方向に対して分岐点の手前に設けられてもよい。
図5の(c)において、マーカーポイント313は、車両311の進行方向に対して合流点の手前に設けられてもよい。
【0022】
図5の(a)~(c)に示すように、車両311の位置は、マーカーポイント313に対する相対位置で表すことができる。
具体的には、車両311の位置は、道のりdとオフセットLとで表すことができる。道のりdは、道路の長さ方向におけるマーカーポイント313から車両311までの距離である。オフセットLは、道路の幅方向におけるマーカーポイント313から車両311までの距離である。オフセットLは、マーカーポイント313が位置する車線から車両311が位置する車線までの車線の数でもよい。
【0023】
図5の(a)~(c)において、車両311の自動走行支援システム100は、自車両の絶対位置と基点となるマーカーポイント313の絶対位置とに基づき、基点となるマーカーポイント313に対する自車両の相対位置を求める。そして、車両311の自動走行支援システム100は、自車両の相対位置と基点となるマーカーポイント313の識別情報とを含んだ情報を、前述した車両位置情報301として送信する。車両位置情報301は、路車間通信または車車間通信により、他車両に送信される。
基点となるマーカーポイント313は、車両311の進行方向に位置する直近のマーカーポイント313である。
【0024】
***動作の説明***
図6に基づいて、自動走行支援システム100の車両位置情報処理部113による自車両位置処理を説明する。
自車両位置処理は、自車両の車両位置情報301を生成し、生成された車両位置情報301を通信システム111に出力する処理である。
【0025】
ステップS110において、車両位置情報処理部113は、ポジショニングシステム112から自車両の絶対位置および進行方向を取得する。
【0026】
ステップS120において、車両位置情報処理部113は、自車両の絶対位置と自車両の進行方向とに基づいて、基点となるマーカーポイント313の位置情報(絶対位置)と識別情報とを、基盤的地図データベース200のマーカーポイントデータ205から取得する。
【0027】
ステップS130において、車両位置情報処理部113は、ステップS110で取得した自車両の絶対位置とステップS120で取得したマーカーポイント313の絶対位置とに基づき、マーカーポイント313に対する自車両の相対位置を算出する。
【0028】
ステップS140において、車両位置情報処理部113は、ステップS120で取得したマーカーポイント313の識別情報とステップS130で算出した自車両の相対位置とを含む車両位置情報301を生成する。
【0029】
ステップS150において、車両位置情報処理部113は、ステップS140で生成した車両位置情報301を通信システム111に出力する。
【0030】
図7に基づいて、自動走行支援システム100の車両位置情報処理部113による他車両位置処理を説明する。
他車両位置処理は、他車両の位置を特定して、特定した他車両の位置を車両制御システム120に出力する処理である。
【0031】
ステップS210において、車両位置情報処理部113は、他車両の車両位置情報301を、通信システム111から取得する。他車両の車両位置情報301には、他車両の相対位置と、その相対位置の基点となるマーカーポイント313の識別情報とが含まれる。 そして、車両位置情報処理部113は、他車両の車両位置情報301から、他車両の相対位置と、マーカーポイント313の識別情報とを取得する。
【0032】
ステップS220において、車両位置情報処理部113は、ステップS210で取得したマーカーポイント313の識別情報と同じ識別情報に対応付けられた位置情報(絶対位置)を、基盤的地図データベース200のマーカーポイントデータ205から取得する。
【0033】
ステップS230において、車両位置情報処理部113は、ステップS210で取得した他車両の相対位置とステップS220で取得したマーカーポイントの絶対位置とに基づいて、他車両の位置を特定する。
他車両の位置とは、他車両の絶対位置、または、自車両に対する他車両の相対位置である。
【0034】
ステップS240において、車両位置情報処理部113は、ステップS230で特定した他車両の位置を、車両制御システム120に出力する。
【0035】
車両位置情報処理部113の動作の具体例を説明する。
ステップS130において、自車両の進行方向の直近にマーカーポイントMr
10が存在する場合、車両位置情報処理部113は、マーカーポイントMr
10に対する自車両の相対位置を算出する。
ステップS210において、車両位置情報処理部113は、マーカーポイントMr
10の識別情報(Mr
10)と、マーカーポイントMr
10に対する他車両の相対位置とを取得する。
ステップS220において、車両位置情報処理部113は、
図4のマーカーポイントデータ205から、Mr
10に対応付けられた絶対位置(例えば、北緯35°29′13″、東経137°24′8″、標高312.9m)を取得する。
ステップS230において、車両位置情報処理部113は、マーカーポイントMr
10に対する自車両の相対位置とマーカーポイントMr
10に対する他車両の相対位置とに基づいて、自車両に対する他車両の相対位置を特定する。
【0036】
図8に基づいて、車線の合流点における自動走行支援について説明する。
図8の(a)~(c)は、車両Aと車両Bと車両Cとのそれぞれの位置の変化を示している。
車両Aは、本線に合流しようとする車両311である。
車両Bおよび車両Cは、本線を走行している車両311である。
車両Aと車両Bと車両Cとのそれぞれに、自動走行支援システム100が搭載されている。
【0037】
車両Aの自動走行支援システム100は、マーカーポイント313に対する車両Bの相対位置の情報と、マーカーポイント313に対する車両Cの相対位置の情報とを所定時間の間隔で受信する。
すると、車両Aの自動走行支援システム100は、
図7に基づいて説明した他車両位置処理により、車両Bの位置と、車両Cの位置とを所定時間の間隔で特定する。
そして、車両Aの自動走行支援システム100は、車両Bと車両Cとのそれぞれの位置と、車両Bと車両Cとのそれぞれの速度とに基づいて、車両Aが適切なタイミングで本線に合流するように、車両Aの走行を制御する。なお、速度は、所定時間の間隔で特定された位置を用いることによって、求めることができる。
このように、車両A~車両Cに共通の絶対位置を有するマーカーポイント313が車線の合流点に設定されることにより、車両Aの自動走行支援システム100は、マーカーポイント313に対する車両Bの相対位置とマーカーポイント313に対する車両Cの相対位置とを利用することができる。そして、車両Aの自動走行支援システム100は、それらの相対位置を利用することにより、車両Bとの衝突および車両Cとの衝突を回避することができる。
【0038】
図9および
図10に基づいて、各車両が有するマーカーポイントの位置情報が誤差を有する場合に生じる問題点について説明する。
図9において、実線は現実の道路を表している。一点鎖線は地
図Aにおける道路を表している。破線は地
図Bにおける道路を表している。
また、マーカーポイントMrは、現実の道路におけるマーカーポイントを表している。マーカーポイントMaは、地
図Aにおけるマーカーポイントを表している。マーカーポイントMbは、地
図Bにおけるマーカーポイントを表している。各マーカーポイントは、道路の合流点に設けられている。
【0039】
地
図Aおよび地
図Bには、測定誤差等が含まれる。
そのため、地
図Aおよび地
図Bにおける道路の位置に、現実の道路に対する誤差が生じる。
それに伴い、地
図Aおよび地
図Bにおけるマーカーポイント(Ma、Mb)の位置にも、マーカーポイントMrに対する誤差が生じる。
【0040】
図10において、車両Aは地
図Aを利用している車両311であり、車両Bは地
図Bを利用している車両311である。
車両Aは、本線に合流しようとしているため、本線を走行している車両Bの位置情報を必要としている。
車両Bは、地
図BにおけるマーカーポイントMbに対する自車両の相対位置(道のりdおよびオフセットL)を送信する。
車両Aは、車両Bの相対位置を取得する。
車両Aは、取得した車両Bの相対位置と、地
図AにおけるマーカーポイントMaの位置とに基づいて、車両Bの位置を算出する。
地
図AにおけるマーカーポイントMaの位置は、地
図BにおけるマーカーポイントMbの位置と異なるため、車両Aによって算出される車両Bの位置には、現実の道路における車両Bの位置に対して、誤差が生じる。
つまり、車両Aは、車両Bの位置を正確に特定することができない。その結果、車両Aは、適切な自動走行を実現することができない。
【0041】
***基盤的地図データの説明***
図11に基づいて、基盤的地図データベース200に格納される基盤的地図データ290について説明する。
基盤的地図データベース200には、仮想の地物と実在の地物とに関するデータが基盤的地図データ290として格納される。
具体的には、35種類の地物に関するデータが基盤的地図データ290として基盤的地図データベース200に格納される。
【0042】
No.1~No.26の地物は、実在の地物である。
No.27~No.35の地物は、仮想の地物である。
仮想の地物に関する基盤的地図データは、実在の地物に関する基盤的地図データに含まれる情報のうちの形状および位置を表す情報に基づいて生成される。
【0043】
基盤的地図データ290は、No.1~No.35の地物のうちの一部の地物に関するデータであってもよい。また、基盤的地図データ290は、No.1~No.35の地物以外の地物に関するデータを含んでもよい。
【0044】
図12、
図13、
図14および
図15に、自動走行支援システム100における地物の用途と、地物に紐づけられる情報とを示す。
「紐づけられる情報」とは、地物の静的情報に対応付けられて車両311に提供される情報を指す。
ここで、地物の静的情報に対応付けられて車両311に提供される情報は、後述の
図19に示している「準静的情報」、「準動的情報」、「動的情報」である。
【0045】
静的情報は時間が経過しても動的に変化しずらい情報であり、動的情報は時間経過に伴い動的に変化する情報である。
ここで、時間経過の目安としては、
静的情報は1か月程度もしくは1か月以上は変化しずらい情報、
準静的情報は1日程度もしくは1時間以内で変化する情報、
準動的情報は1時間以内もしくは1分程度で変化する情報、
動的情報は1分以下で変化する情報、
のように分類することができる。
各情報における主な内容は、
「準静的情報」としては交通規制情報、道路工事情報、広域の気象情報等であり、
「準動的情報」としては事故情報、渋滞情報、狭域気象情報等であり、
「動的情報」としては周辺車両情報、歩行者情報、信号機の現示情報等である。
なお、「準静的情報」は、上記のように、「準動的情報」及び「動的情報」と同様に、時間経過に伴って変化する情報である。
情報の種別によっては、「準静的情報」と「準動的情報」とのいずれかへの分類が困難な情報も有る。
言い換えれば、「準静的情報」、「準動的情報」及び「動的情報」は、「静的情報」と比べて、「静的情報」よりも時間経過に対して変化しやすい情報であり、この意味で、「準静的情報」、「準動的情報」及び「動的情報」は、「静的情報」に対して広い意味での動的情報である。
静的情報は基盤的地図データベース200に予め格納され、動的情報は動的に静的情報に対応付けられる。
【0046】
No.35の地物はマーカーポイントである。マーカーポイントの静的情報はマーカーポイントの識別情報であり、マーカーポイントに紐づけられる動的情報はマーカーポイントに対する車両311の相対位置の情報である。
車両311の相対位置は、マーカーポイントの識別情報に対応付けられて、路車間通信または車車間通信で車両311に提供される。
【0047】
No.29の地物は車線リンクである。車線リンクの静的情報は車線リンクの識別情報等であり、車線リンクの「準静的情報」および「準動的情報」は、車両311の進行方向における「規制情報」および「渋滞情報」等である。
渋滞情報および規制情報等の動的情報は、車線リンクの識別情報等に対応付けられて、路車間通信または車車間通信で車両311に提供される。
渋滞情報は、渋滞の有無など、渋滞に関する情報である。
規制情報は、交通規制の有無、車線規制の有無および通行止めの有無など、規制に関する情報である。
【0048】
No.27の地物は車道リンクである。車道リンクの静的情報は車道リンクの識別情報等であり、車道リンクの「準静的情報」および「準動的情報」は「車両311の進行方向における広域および狭域の気象情報」および「規制情報」等である。
「広域および狭域の気象情報」および「規制情報」等の「準静的情報」および「準動的情報」は、車道リンクの識別情報等に対応付けられて路車間通信または車車間通信で車両311に提供される。
「広域および狭域の気象情報」は、天気および温度など、気象に関する情報である。
【0049】
No.32の地物は交差点領域である。交差点領域の静的情報は交差点領域の識別情報等であり、交差点領域の「動的情報」は交差点領域における車両情報、歩行者情報および信号機の現示情報等である。
車両情報および歩行者情報および信号機の現示情報等の動的情報は、交差点領域の識別情報等に対応付けられて路車間通信または車車間通信で車両311に提供される。
車両情報は、交差点領域に存在する車両に関する情報である。
歩行者情報は、交差点領域に存在する歩行者に関する情報である。
【0050】
No.24の地物は信号機である。信号機の静的情報は信号機の識別情報であり、信号機の動的情報は車両311の進行方向に存在する信号機の現示情報のカウント情報である。信号機の現示情報のカウント情報は、信号機の表示が変化するまでの残り時間を示す情報である。
信号機の現示情報のカウント情報は、信号機の識別情報に対応付けられて、路車間通信または車車間通信で車両311に提供される。
【0051】
車線リンクに紐づけられた渋滞情報又は規制情報を利用することの効果について説明する。
車線リンクは車線の中心線を表す。そのため、自動走行支援システム100は、車線リンクに紐づけられた渋滞情報又は規制情報を用いることで、車線ごとに、渋滞又は規制の有無を判断することができる。
例えば、3車線の高速道路においては、ある出口の付近で左車線(出口に接続する車線)のみ渋滞が発生する場合がある。この場合、車線リンクに対応づけられた渋滞情報を利用することで、この出口の付近で左車線のみ渋滞が発生していることを判断することができる。よって、この出口を避けて次の出口、又は1つ手前の出口を利用する等の判断が可能である。
【0052】
***地物の説明***
図16に基づいて、区画線321と車道リンク322と車線リンク323との関係を説明する。
区画線321は実在の地物であり、車道リンク322および車線リンク323は仮想の地物である。
【0053】
具体的な区画線321は、車道境界線324および車線区画線325である。
基盤的地図データベース200において、区画線321は、所定間隔毎に設定されるノードと、ノードを接続するリンクとにより表される。
図16において、実線の端にある黒丸が区画線321のノードであり、実線が区画線321のリンクである。
【0054】
区画線321のノードは、例えば、以下のように設定される。
区画線321のノードは、一般道では2.5m間隔で設定される。
区画線321のノードは、高速道において、直線の部分およびカーブが緩やかな部分では5m間隔で設定され、カーブが急な部分では2.5m間隔で設定される。
基盤的地図データベース200には、ノード情報およびリンク情報等が区画線データ201として格納される。ノード情報はノードの位置を示し、リンク情報はリンクを示す。
【0055】
車道リンク322は道路を表す。
基盤的地図データベース200において、車道リンク322は、区画線321と同様に、ノードとリンクとにより表される。
図16において、一点鎖線の端にある黒丸が車道リンク322のノードであり、一点鎖線が車道リンク322である。
車道リンク322のノードは、道路の左側端に設定された区画線321のノードと道路の右側端に設定された区画線321のノードとの中間に作成される。車道リンク322のノードは、道路の長さ方向に所定間隔で設定される。
車道リンクデータ207は、区画線データ201に基づいて生成される。
【0056】
車線リンク323は車線の中心線を表す。
基盤的地図データベース200において、車線リンク323は、区画線321と同様に、ノードとリンクとにより表される。
図16において、点線の端にある黒丸が車線リンク323のノードであり、点線が車線リンク323である。
車線リンク323のノードは、車線の左側端に設定された区画線321のノードと車線の右側端に設定された区画線321のノードとの中間に作成される。車線リンク323のノードは、車線の長さ方向に所定間隔で設定される。
車線リンクデータ206は、区画線データ201に基づいて生成される。
【0057】
基盤的地図データベース200には、車道リンク322のノード情報およびリンク情報等が車道リンクデータ207として格納され、車線リンク323のノード情報およびリンク情報が車線リンクデータ206として格納される。
【0058】
図17に基づいて、交差点領域326と交差点内車線リンク327との関係を説明する。
図17において、交差点領域326の中の実線が交差点内車線リンク327である。また、交差点領域326と交差点の絵との間に記された点線は車線リンク323である。
交差点領域326および交差点内車線リンク327は、仮想の地物である。
【0059】
交差点領域326は、十字路およびT字路等、2つもしくは2つ以上の車道が交差する領域を表す。
交差点領域326は、停止線と車道境界線とにより囲まれた領域に設定される。停止線は車線が交差する部分に存在する。
交差点データ202は、停止線データ203に基づいて生成される。
ここで、停止線データ203は、
図17で示しているが、先の
図5においては、「(a)交差点」に適用され、
図5の「(b)分岐点」及び「(c)合流点」を表わす部分も交差点の一種であり、「(b)分岐点」及び「(c)合流点」も交差点領域と呼ばれる。なお、(b)と(c)には停止線データ203は存在しない。
【0060】
交差点内車線リンク327は、交差点領域326において走行可能な経路を表す車線リンクである。
【0061】
***ハードウェア構成の説明***
図18に基づいて、自動走行支援装置110のハードウェア構成について説明する。
自動走行支援装置110は、プロセッサ901とメモリ902と補助記憶装置903と通信装置904といったハードウェアを備えるコンピュータである。プロセッサ901は、信号線を介して他のハードウェアと接続されている。
【0062】
プロセッサ901は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)であり、他のハードウェアを制御する。具体的には、プロセッサ901は、CPU(Central Processing Unit)である。
メモリ902は揮発性の記憶装置である。メモリ902は、主記憶装置またはメインメモリとも呼ばれる。具体的には、メモリ902はRAM(Random Access Memory)である。
補助記憶装置903は不揮発性の記憶装置である。具体的には、補助記憶装置903は、ROM、HDDまたはフラッシュメモリである。ROMはRead Only Memoryの略称であり、HDDはHard Disk Driveの略称である。
通信装置904は、通信を行う装置であり、レシーバとトランスミッタとを備える。具体的には、通信装置904は通信チップまたはNIC(Network Interface Card)である。
【0063】
自動走行支援装置110は、車両位置情報処理部113およびポジショニングシステム112を機能構成の要素として備える。これら要素の機能はソフトウェアで実現される。以下、これら要素を「部」と記す。
【0064】
補助記憶装置903には、「部」の機能を実現するプログラムが記憶されている。「部」の機能を実現するプログラムは、メモリ902にロードされて、プロセッサ901によって実行される。
さらに、補助記憶装置903にはOS(Operating System)が記憶されている。OSの少なくとも一部は、メモリ902にロードされて、プロセッサ901によって実行される。
つまり、プロセッサ901は、OSを実行しながら、「部」の機能を実現するプログラムを実行する。
「部」の機能を実現するプログラムを実行して得られるデータは、メモリ902、補助記憶装置903、プロセッサ901内のレジスタまたはプロセッサ901内のキャッシュメモリといった記憶装置に記憶される。これらの記憶装置は、データを記憶する記憶部として機能する。
なお、自動走行支援装置110が複数のプロセッサ901を備えて、複数のプロセッサ901が「部」の機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0065】
プロセッサ901は、車両位置情報処理部113およびポジショニングシステム112として機能する。
補助記憶装置903は、基盤的地図データベース200として機能する。
通信装置904は、通信システム111として機能する。また、通信装置904のレシーバはデータを受信する受信部として機能し、通信装置904のトランスミッタはデータを送信する送信部として機能する。
【0066】
プロセッサ901とメモリ902と補助記憶装置903とをまとめたハードウェアを「プロセッシングサーキットリ」という。
「部」は「処理」または「工程」に読み替えてもよい。「部」の機能はファームウェアで実現してもよい。
「部」の機能を実現するプログラムは、磁気ディスク、光ディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体に記憶することができる。
【0067】
***実施の形態1の効果***
車線が交差、合流または分岐する交差点領域にマーカーポイントが設けられる。マーカーポイントは、各車両で共通に用いられる絶対位置を有する。マーカーポイントに関するデータは、基盤的地図データに設けられる。当該基盤的地図データを利用する自動走行支援システムにおいて、マーカーポイントに対する他車両の相対位置を用いて、他車両の位置をより正確に特定することが可能となる。
これにより、マーカーポイントが設けられる領域において、合流点、交差点または分岐点等に向かって進行する他車両との衝突を回避することが可能となる。
基盤的地図データにおいて、車線ごとに生成される車線リンクに、渋滞情報又は規制情報が対応づけられる。そのため、基盤的地図データを利用する自動走行支援装置において、車線ごとに渋滞又は規制の有無を判断することができる。その結果、状況に応じた運転が可能となる。
基盤的地図データにおいて、車道ごとに生成される車道リンクに、気象情報又は規制情報が対応づけられる。そのため、基盤的地図データを利用する自動走行支援装置において、車道に属する各車線の天候又は規制を判断することができる。その結果、状況に応じた運転が可能となる。
基盤的地図データにおいて、交差点領域に、車両又は歩行者の情報が対応づけられる。そのため、基盤的地図データを利用する自動走行支援装置において、交差点領域内の車両又は歩行者の有無を判断することができる。その結果、他車両又は歩行者との衝突を防止することが可能となる。
【0068】
***実施の形態1の補足***
実施の形態1は、好ましい形態の例示であり、本発明の技術的範囲を制限することを意図するものではない。実施の形態1は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。フローチャート等を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【0069】
実施の形態2.
図19から
図30を用いて実施の形態2を説明する。実施の形態2では地図データ905としてダイナミックマップデータ500を想定する。
なお、
図24から
図29は、ケース1-1からケース2-2-1の例を説明する図であるともに、地図データ905を概念的に示す図である。ダイナミックマップデータ500は自動走行支援システムで用いられる3次元の高精度地図データである。ダイナミックマップデータ500には、基準点(Common Reference Point)と呼ばれる位置表現方法に使用可能な点がある。実施の形態2は、この基準点(CRP)を用いた位置表現に関する。以下、基準点はCRPと記す。
CRPは実施の形態1のマーカーポイントと同様のものである。
すなわち、CRP毎に、CRPを識別するためのID(IDentification、以下CRPIDと記す)と、位置情報と、属性情報とが互いに対応付けられている。
CRPIDは、CRPを識別する識別情報である。CRPは、例えば
図11や
図15におけるNo.35の地物名称に示すマーカーポイントの代わりに用いても良い。
CRPの位置情報は、CRPの絶対位置を示す。絶対位置とは、地球のある位置を原点として決まる位置であり、緯度、経度及び標高の座標系で表現可能な座標値である。CRPは位置座標によって3次元位置が特定され、好ましくは50cm以下、より好ましくは25cm以下の位置精度を有すると良い。各車両311でナビゲーションシステムに利用される地図が異なる場合であっても、CRPの位置情報は、各車両311で共通である。
属性情報は、CRPが有する属性を示す。例えば、属性情報は、車道リンクIDを示す。この車道リンクIDは、CRPの付近に存在する交差点領域と接続する車道リンクを識別する。
【0070】
図19はダイナミックマップデータ500を説明する図である。ダイナミックマップデータ500は静的情報、準静的情報、準動的情報及び動的情報からなる。静的情報は、3次元の高精度な基盤的地図データであって、路面情報、車線情報、3次元構造物などを含み、地物を示す3次元位置座標や線形ベクトルデータから構成される。準静的情報、準動的情報及び動的情報は、時々刻々と変化する動的データであって、位置情報を基に静的情報に重畳されるデータである。準静的情報は、交通規制情報、道路工事情報、広域気象情報などを含む。準動的情報は、事故情報、渋滞情報、狭域気象情報などを含む。動的情報は、ITS情報(周辺車両、歩行者、信号情報など)を含む。実施の形態2では、準動的情報である渋滞情報を、静的情報である基準点(CRP)を用いた位置表現を説明する。
【0071】
実施の形態2では、CRPを用いた位置情報表現として、以下の(1)(2)を説明する。
(1)位置情報表現タイプ1
位置情報表現タイプ1は、CRPからの差分距離で位置を表現する。
(2)位置情報表現タイプ2は、CRPからの道のり距離で位置を表現する。「道のり距離」とは、一方のCRP(地点)から該当地点までの、曲り及び凹凸も考慮した距離である。位置情報表現タイプ2は車道中心線からのオフセットを使用してもよいが、実施の形態2では説明を簡略化するため、主にオフセットを使用しない例について説明する。車道リンクを使用することで、道のり距離を表現できる。
【0072】
図20は、実施の形態2で以下に説明するケース1-1から1-4、ケース2-1-1及びケース2-1-2のそれぞれの、位置情報表現タイプとの関係を示す表である。表における記載は後述する。
【0073】
<1-1 基本方針>
CRPを用いた位置表現について、複数のCRPを跨ぐ準静的情報または準動的情報の表現を対象に、ケース1-1からケース2-1を説明する。実施の形態2では、準動的情報とされる渋滞を表現対象とする。
【0074】
ケース1-1からケース1-4は、単路部で生じる渋滞を、CRPを用いて位置表現する場合を示す。ケース2-1は交差点領域の内部の渋滞を、CRPを用いて位置表現する場合を示す。
【0075】
<ケース1-1>
ケース1-1は、単路部において、隣接するCRPどうしの間で生じている渋滞の位置表現に関する。ケース1-1では、交通情報リンクの数と、車道リンクの数とは、1:1に対応している。この意味は後述する。
【0076】
図24はケース1-1の具体例を示す。
図21は、
図24に示すケース1-1の交通情報リンクの数と車道リンクの数とを模式的に示す図である。「交通情報リンクの数」とは、渋滞を示す交通情報が提供される単位の数である。以下では、この提供される「渋滞を示す交通情報」を提供情報と呼び、「交通情報リンクの数」を提供情報61の数と呼ぶ。また、CRPによって位置表現される渋滞の情報を「交通渋滞情報」と呼ぶ。
図24では、提供情報61は複数の車両311が渋滞している領域を示している。
【0077】
図21では、
図21において、交差点領域41と交差点領域42とは、一つの車道リンク11で接続されていることを示している。
図21では、提供情報61の単位は一つである。
よって、交通情報リンクの数:車道リンクの数=1:1である。つまり、一つの車道リンクに一つの提供情報61が対応する。言い換えれば、一つの車道リンク11に、一つの提供情報61が対応付けられる。
【0078】
(1)
図24を参照して、渋滞の位置表現を説明する。
図24には車道80及び中央分離帯70のような実在の要素も示している。また、車道リンク端点とCRPを結ぶ点線30を示している。これらについては
図25から
図29も同様である。
(2)
図24では、提供情報61の示す渋滞は、交差点領域41と交差点領域42との間で起きている。提供情報61は渋滞始点61s、渋滞終点61eを含む。図の右方向が車両進行方向である。以下
図26~
図29も右方向が車両進行方向である。渋滞始点61sと渋滞終点61eは、交差点領域41と交差点領域42との間にある。
(3)交差点領域41にはCRP1が設定されており、交差点領域42にはCRP2が設定されている。
(4)渋滞始点61sは、CRP1と対応付けられている。つまり、渋滞始点61sは、CRP1からCRP2へ、0.3000と、対応付けられている。0.3000の意味は、CRP1からCRP2への道のり距離のうち、渋滞始点61sの位置がCRP1から0.3、つまり30%の道のり距離であることを示す。
図24の他の記載及び
図25~
図29の記載も、同じ意味である。ダイナミックマップ500の持つ車道リンクによって、曲り及び凹凸のような道路の変化が反映できるため、道のり距離が計算可能である。より具体的には、CRP1と渋滞始点61sとの道のり距離は、CRP1と車道リンク11の端点11aとを結ぶ点線30と、車道リンク11の端点11aから渋滞始点61sまでの車道リンク11の部分とによって構成される。交差点領域の内部には車道リンクがないため、交差点領域の内部の場合には、CRPと車道リンク端点とを結ぶ線により距離を表現する。この距離はCRPの座標と車道リンクの端点の座標とから求まる距離を用いる。
(5)渋滞終点61eは、渋滞始点61sと同様にCRP1と対応付けられている。上記のように、渋滞終点61eの位置は、CRP1からCRP2への道のり距離の80%として、CRP1に対応付けられている。
(6)ケース1-1では、交通渋滞情報1は、CRP1と、渋滞始点61s及び渋滞終点61eとの道のり距離で表現される。
なお、
図24において、車道80は片側3車線の道路を示している。CRP1とCRP2は同一の車道リンク11上にあるが、進行方向に対し最も左側の車線、中央の車線、最も右側の車線のそれぞれに車両311が走行している。
そこで、車線毎に渋滞始点61sと渋滞終点61eの位置が異なる場合は、交通渋滞情報1において、車線毎の渋滞始点61sと渋滞終点61eを表現しても良い。
この場合、最も左側の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eと、最も右側の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eとは、それぞれオフセットを付加して構成される。
このオフセットは、道路の幅方向における車道リンク11から各車線の中央までの距離、すなわち車道リンク11に垂直な方向の各車線の中央までの長さとなる。また中央の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eはオフセットが0となる。
【0079】
ケース1-1では、提供情報61と、CRPによって位置表現される交通渋滞情報とは1体1に対応している。
【0080】
図24は、以下のようである。地図データ905は、第1の交差点領域41と、CRP1と、第2の交差点領域42、CRP2、車道リンク11と、渋滞データである提供情報61と、を備えている。
(1)第1の交差点領域41は、第1の交差点を表す仮想のデータである。
(2)CRP1は、第1の交差点領域41の内部に設定された仮想の第1の基準点である。
(3)第2の交差点領域42は、第2の交差点を表す仮想のデータである。
(4)CRP2は、第2の交差点領域42の内部に設定された仮想の第2の基準点である。
(5)車道リンク11は、第1の交差点と第2の交差点とを接続する単路部であって、第1の交差点と第2の交差点との間に他の交差点を持たない単路部である接続単路部を規定する。
車道リンク11は、第1の交差点領域41と第2の交差点領域42とに接続する仮想のデータである。
(6)提供情報61は、車道リンク11で表される接続単路部の渋滞を表す。
(7)提供情報61は、第1の基準点であるCRP1と第2の基準点であるCRP2との少なくともいずれかと、車道リンク11と、に対応付けられている。
提供情報61を車道リンク11に対応付けることで、道のり距離で渋滞を位置表現できる。
また提供情報61をCRPに対応付けることで、準動的情報である提供情報61を静的情報であるCRPに簡単に対応付けることができる。
図24の場合は提供情報61はCRP1に対応付けられているが、提供情報61はCRP2に対応付けられてもよい。
【0081】
さらに、
図24は以下を意味する。
(1)提供情報61は、接続単路部における渋滞始点61sと渋滞終点61eとを含んでいる。
(2)渋滞始点61sと渋滞終点61eとは、第1の交差点領域41と第2の交差点領域42との間に位置し、第1の基準点のCRP1と第2の基準点のCRP2との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられている。なお、提供情報61はCRP1に対応付けられていたが、提供情報61はCRP2に対応付けられてもよい。
【0082】
<ケース1-2>
ケース1-2では、提供情報61の数と、車道リンクの数とは、1:nに対応している。nは整数を意味する。
【0083】
図25はケース1-2の具体例を示す。
図25は、提供情報61の数:車道リンクの数=1:3である。
図22は、
図25について、提供情報61の数と車道リンクの数とを模式的に示す図である。
図22では、
図25において、交差点領域41と交差点領域42とは車道リンク11で接続されており、交差点領域42と交差点領域43とは車道リンク12で接続されており、交差点領域43と交差点領域44とは車道リンク13で接続されていることを示す。また、
図22は、交差点領域42には車道リンク14が接続しており、交差点領域43には車道リンク15が接続している。また
図22では、提供情報61は一つである。
【0084】
(1)
図25を参照して、提供情報61の位置表現を説明する。
図25では接続単路部は、交差点領域41と交差点領域42を接続する車道リンク11で示される。
(2)
図25では、提供情報61の示す渋滞は交差点領域41と交差点領域44の間で起きている。また、交差点領域41と交差点領域44との間には、交差点領域42と交差点領域43がある。提供情報61の渋滞は、交差点領域42から交差点領域43を経ている。渋滞始点61sは、交差点領域41と交差点領域42の間にある。渋滞終点61eは、交差点領域43と交差点領域44の間にある。
(3)交差点領域41,42,43,44には、それぞれ、CRP1,2,3,4が設定されている。
(4)渋滞始点61sは、CRP1と道のり距離で対応付けられている。
(5)渋滞終点61eは、CRP3と道のり距離で対応付けられている。
(6)
図25では、CRP1とCRP4の間に、CRP2及びCRP3が設定されている。この理由は、提供情報61の示す渋滞に対して、渋滞始点61sと渋滞終点61eの位置を表現しただけでは不十分だからである。つまり、渋滞始点61sと渋滞終点61eの位置を特定しただけの場合、渋滞始点61sから、CRP2、高速道路バス停留所610、CRP3、渋滞終点61eと連続しておりCRP2とCRP3との間には生じていない場合と、渋滞がCRP1からCRP4への方向に直線的に連続して渋滞している場合とを区別できないからである。この区別を可能とするために、CRP2とCRP3との設定が必要である。CRP2とCRP3との設定により、一つの提供情報61は、車道リンクごとに、交通渋滞情報1と、交通渋滞情報2と交通渋滞情報3との3つに分割される。交通渋滞情報1は、CRP1から渋滞始点61sまでの道のり距離と、CRP1からCRP2までの道のり距離で表現される。交通渋滞情報2は、CRP3の位置と、CRP2からCRP3までの道のり距離で表現される。交通渋滞情報3は、CRP2の位置と、CRP3から渋滞終点61eまでの道のり距離で表現される。
【0085】
(1)
図25に示す交通渋滞情報1については以下のようである。
提供情報61の示す渋滞は、渋滞始点61sから渋滞終点61eまで続く。つまり、提供情報61の示す渋滞は、渋滞始点61sと渋滞終点61eとのいずれか一方のみが、第1の交差点領域41と第2の交差点領域42との間に位置する。
図25では渋滞始点61sが間に位置する場合を示している。提供情報61の示す渋滞において、交差点領域41と交差点領域42の間に関しては、渋滞始点が渋滞始点61s、渋滞終点がCRP2の渋滞情報が交通渋滞情報1である。「一方」に該当するのは渋滞始点61sである。「一方」である渋滞始点61sは、第1の基準点であるCRP1と第2の基準点であるCRP2との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられる。
図25では、渋滞始点61sはCRP1との道のり距離が対応付けられている。
【0086】
(2)交通渋滞情報3については以下のようである。
提供情報61の示す渋滞は、渋滞始点61sと渋滞終点61eとのいずれか一方のみが、第1の交差点領域43と第2の交差点領域44との間に位置する。1の交差点領域43と第2の交差点領域44との間の渋滞では、渋滞始点はCRP3であり、渋滞終点は渋滞終点61eであり、「一方」に該当するのは渋滞終点61eである。渋滞始点がCRP3、渋滞終点が渋滞終点61eの渋滞情報が交通渋滞情報3である。「一方」である渋滞終点61eは、第1の基準点であるCRP3と第2の基準点であるCRP4との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられる。
図25は渋滞終点61eは、CRP3との道のり距離が対応付けられている場合を示している。
【0087】
(3)交通渋滞情報2については以下のようである。
提供情報61の示す渋滞では、渋滞始点61sと渋滞終点61eとは、いずれも第1の交差点領域42と第2の交差点領域43との間に位置することなく、提供情報61の示す渋滞は第1の交差点領域42から第2の交差点領域43まで連続している。よって、提供情報61の示す渋滞のうち、第1の交差点領域42から第2の交差点領域43へ連続する渋滞は、第1の基準点であるCRP2と第2の基準点であるCRP3との間の道のり距離が対応付けられており、これが交通渋滞情報2である。
なお、
図25において、車道80は片側3車線の道路を示している。
CRP1,CRP2,CRP3,CRP4は同一の車道リンク11上にあるが、進行方向に対し最も左側の車線、中央の車線、最も右側の車線のそれぞれに車両311が走行している。
そこで、車線毎に渋滞始点61sと渋滞終点61eの位置が異なる場合は、交通渋滞情報1及び交通渋滞情報3において、車線毎の渋滞始点61sと渋滞終点61eを表現しても良い。
この場合、最も左側の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eと最も右側の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eは、それぞれオフセットを付加して構成される。このオフセットは、道路の幅方向における車道リンク11から各車線の中央までの距離、すなわち車道リンク11に垂直な方向の各車線の中央までの長さとなる。また中央の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eは、オフセットが0となる。
【0088】
<ケース1-3>
ケース1-3は、交差点領域が設定されていない範囲に渋滞が発生する状況を表現する。ケース1-3では、提供情報61の数と、車道リンクの数とは、n:1である。nは整数を意味する。
【0089】
図26はケース1-3の具体例を示す。
図26はn=2の場合、つまり、提供情報61の数:車道リンクの数=2:1の場合を示している。
図23は、
図26の交通情報リンクの数と車道リンクの数とを模式的に示す図である。
図23に示すように、
図26では、交差点領域41と交差点領域42とは車道リンク11で接続されている。提供情報は、提供情報61-1と提供情報61-2との二つである。
図26では提供情報61-1は、二次メッシュ境界611よりも左側のデータを持たない。提供情報61-2は、二次メッシュ境界611よりも右側のデータを持たない。
なお、ここでは、二次メッシュ境界611と記載したが、データの境界は、県境、国境、市町村などの自治体での区切りとして定義してもよい。
【0090】
(1)
図26を参照して、渋滞データである提供情報61の位置表現を説明する。
(2)
図26では、実際の渋滞は交差点領域41と交差点領域42との間で起きており、渋滞の状況は、
図24と同じである。しかし、提供情報61-1と、提供情報61-2とは分割された別々の情報として提供されるため、提供情報61-1及び提供情報61-2をCRPと対応付ける必要がある。そのため、提供情報61-1と提供情報61-2の示す渋滞は、CRPと二次メッシュ境界611とを用いて表現される。これが交通渋滞情報1と交通渋滞情報2である。交通渋滞情報1は、CRP1から渋滞始点61-1sまでの道のり距離と、CRP1から二次メッシュ境界611までの道のり距離で表現されている。交通渋滞情報2は、CRP1から二次メッシュ境界611までの道のり距離と、CRP1から渋滞終点61-2eまでの道のり距離で表現されている。
【0091】
図26は、以下のようである。提供情報は、車道リンク11の途中で、提供情報61-1と提供情報61-2とに分割されている。これらの提供情報は、分割されている位置を表す分割位置データを有する。
図26では分割位置データは、二次メッシュ境界611の位置である。分割位置データである二次メッシュ境界611の位置は、第1の基準点であるCRP1と第2の基準点であるCRP2との少なくともいずれかとの道のり距離が対応付けられる。
図26では、二次メッシュ境界611の位置は、CRP1との道のり距離が対応付けられている。
なお、
図26において、車道80は片側3車線の道路を示している。
CRP1,CRP2は同一の車道リンク11上にあるが、進行方向に対し最も左側の車線、中央の車線、最も右側の車線のそれぞれに車両311が走行している。
そこで、車線毎に渋滞始点61-1sと渋滞終点61-2eの位置が異なる場合は、交通渋滞情報1及び交通渋滞情報2において、車線毎の渋滞始点61-1sと渋滞終点61-2eを表現しても良い。
この場合、最も左側の車線の渋滞始点61-1s,渋滞終点61-2eと最も右側の車線の渋滞始点61-1s,渋滞終点61-2eは、それぞれオフセットを付加して構成される。
このオフセットは、道路の幅方向における車道リンク11から各車線の中央までの距離、すなわち車道リンク11に垂直な方向の各車線の中央までの長さとなる。また中央の車線の渋滞始点61-1s,渋滞終点61-2eはオフセットが0となる。
【0092】
<ケース1-4>
図27はケース1-4を示す。ケース1-4は、ケース1-2と、ケース1-3との組み合わせである。
図27の場合は、ケース1-2の渋滞の状態において、ケース1-3と同様に、提供情報が、二次メッシュ境界611、2つに分割されている。よって、ケース1-4は、ケース1-2と、ケース1-3との組み合わせで、渋滞を表現できる。
図27に示すように、提供情報61-1及び提供情報61-2からなる提供情報61は、交通渋滞情報1から交通渋滞情報4として表される。交通渋滞情報1は、CRP1から渋滞始点61-1sまでの道のり距離と、CRP1からCRP2への道のり距離で表現される。渋滞始点61-1sは提供情報61-1の渋滞始点である。交通渋滞情報2は、CRP2の位置と、CRP2から二次メッシュ境界611までの道のり距離で表現される。交通渋滞情報3は、CRP2から二次メッシュ境界611までの道のり距離と、CRP2からCRP3までの道のり距離で表現される。交通渋滞情報4は、CRP3の位置と、CRP3から渋滞終点61-2eまでの道のり距離で表現される。渋滞終点61-2eは提供情報61-2の渋滞終点である。
なお、
図27において、車道80は片側3車線の道路を示している。
CRP1,CRP2,CRP3,CRP4は同一の車道リンク11上にあるが、進行方向に対し最も左側の車線、中央の車線、最も右側の車線のそれぞれに車両311が走行している。
そこで、車線毎に渋滞始点61-1sと渋滞終点61-2eの位置が異なる場合は、
交通渋滞情報1及び交通渋滞情報4において、車線毎の渋滞始点61-1sと渋滞終点61-2eを表現しても良い。
この場合、最も左側の車線の渋滞始点61-1s,渋滞終点61-2eと最右側の車線の渋滞始点61-1s,渋滞終点61-2eは、それぞれオフセットを付加して構成される。
このオフセットは、道路の幅方向における車道リンク11から各車線の中央までの距離、すなわち車道リンク11に垂直な方向の各車線の中央までの長さとなる。また中央の車線の渋滞始点61s,渋滞終点61eはオフセットが0となる。
【0093】
<交差点部>
以下に説明するケース2-1では,交差点領域の内部の渋滞を、CRPを用いて位置表現する。ケース2-1では、位置情報表現タイプ1を用いる。位置情報表現タイプ1は、道のり距離を使用せず、座標間の距離で渋滞を表現する。これは、交差点領域の内部には車道リンクが形成されていないからである。ケース2-1の具体例として、ケース2-1-1とケース2-1-2を示す。
図28はケース2-1-1を示し、
図29はケース2-1-2を示す。
図28では車道リンクは、車道リンク11、車道リンク12としており、
図29では車道リンク10としている。
【0094】
<ケース2-1-1>
ケース2-1-1では、交差点領域41の内部に、提供情報61の持つ渋滞始点61s及び渋滞終点61eが存在する場合である。渋滞始点61s及び渋滞終点61eは、CRP1を用いて位置表現される。ここで、渋滞始点61s及び渋滞終点61eは、地球のある位置を原点とし、緯度、経度及び標高の座標系で表現可能な座標値であって、
図28の例において、渋滞始点61s及び渋滞終点61eはともに、車道リンク11上の車線上の位置で座標値を表現している。
(1)
図28を参照して、提供情報61の示す渋滞の位置表現を説明する。
(2)
図28では、提供情報61の示す渋滞は交差点領域41の内部で起きている。
(3)交差点領域41の内部にCRP1が設定されている。
(4)提供情報61は、CRP1から渋滞始点61sまでの距離と、CRP1から渋滞終点61eまでの距離で表現される。CRP1から渋滞始点61sまでの距離で表現される渋滞が交通渋滞情報1である。CRP1から渋滞終点61eまでの距離で表現される渋滞が交通渋滞情報2である。CRP1から渋滞始点61sまでの距離は、CRP1の座標と、渋滞始点61sの座標との距離51であり、この距離によって交通渋滞情報1が位置表現される。CRP1から渋滞終点61eまでの距離は、CRP1の座標と、渋滞終点61eの座標との距離52であり、この距離によって交通渋滞情報2が位置表現される。交通渋滞情報1及び交通渋滞情報2の位置表現によって、提供情報61の示す渋滞が位置表現される。交通渋滞情報1及び交通渋滞情報2の位置表現は、位置情報表現タイプ1に基づく。
【0095】
<ケース2-1-2>
ケース2-1-2では、交差点領域41の内部に渋滞始点61s、交差点領域41の外に渋滞終点61eが存在する場合に、CRPを用いて渋滞を位置表現する。ここで、渋滞始点61sは、地球のある位置を原点とし、緯度、経度及び標高の座標系で表現可能な座標値である。
図28の例において、渋滞始点61sは、車道リンク11上の車線上の位置で座標値を表現している。
(1)
図29を参照して、提供情報61で表される渋滞の位置表現を説明する。
(2)
図29では、提供情報61の渋滞始点61sは交差点領域41の内部に存在し、提供情報61の渋滞終点61eは交差点領域41の外に存在する。
(3)交差点領域41の内部にCRP1が設定されている。
交差点領域42の内部にCRP2が設定されている。
(4)提供情報61の示す渋滞は、CRP1の座標と渋滞始点61sの座標との間の距離51と、CRP1からCRP2に向かって渋滞終点61eまでの道のり距離で表現される。CRP1の座標と渋滞始点61sの座標との間の距離51で表現される渋滞情報が交通渋滞情報1である。CRP1と渋滞終点61eの座標との間の道のり距離で表現される渋滞情報が交通渋滞情報2である。CRP1の座標と渋滞始点61sの座標との距離は位置情報表現タイプ1に基づき、CRP1から渋滞終点61eまでの道のり距離は位置情報表現タイプ2に基づく。
なお、
図29において、車道80は片側3~4車線の道路を示している。
CRP2の対応した車道リンク11に対して、車線毎に渋滞終点61eの位置が異なる場合は、交通渋滞情報2において、車線毎の渋滞終点61eを、オフセットを用いて表現しても良い。
この場合、最も左側の車線の渋滞終点61eと最も右側の車線の渋滞終点61eは、それぞれオフセットを付加して構成される。
このオフセットは、道路の幅方向における車道リンク11から各車線の中央までの距離、すなわち車道リンク11に垂直な方向の各車線の中央までの長さとなる。また車道リンク11と同一である中央の車線の渋滞終点61eはオフセットが0となる。
【0096】
図28、
図29は以下のようである。
図28、
図29に示す地図データ905は、交差点を表す仮想の交差点領域41と、交差点領域41の内部に設定された仮想の基準点であるCRP1と、交差点領域41の内部の渋滞を表すとともに、渋滞始点61sと渋滞終点61eとの少なくともいずれかが交差点領域41の内部に位置する渋滞データである提供情報61と、を備えている。提供情報61は、渋滞始点61sが交差点領域41の内部に位置する場合には、CRP1の座標と渋滞始点61sの座標との距離が対応付けられている。また、提供情報61は、渋滞終点61eが交差点領域41の内部に位置する場合には、CRP1の座標と渋滞終点61eとの距離が対応付けられている。
図28は渋滞始点61sと渋滞終点61eとが交差点領域41の内部に位置する場合であり、
図29は渋滞始点61sのみが交差点領域41の内部に位置する場合である。
【0097】
図30は、地図データ生成装置400のハードウェア構成図である。地図データ生成装置400は、
図18に示す自動走行支援装置110と同じ構成のコンピュータである。プロセッサ901は、基準点設定部410、渋滞データ取得部420及び対応付け部430を備えている。基準点設定部410、渋滞データ取得部420及び対応付け部430との機能を実現するプログラムは補助記憶装置903に記憶されている。このプログラムはメモリ902にロードされてプロセッサ901によって実行される。プロセッサ901はサーキットリーと呼ばれる場合もある。
【0098】
地図データ生成装置400が、渋滞の渋滞始点または渋滞終点とCRPとの道のり距離を用いて、渋滞を位置表現する位置情報表現タイプ2の動作は以下のようである。
図24を例に説明する。
(1)基準点設定部410は、第1の交差点領域41と、第2の交差点領域42と、車道リンク11とを有する地図データ905の第1の交差点領域41の内部に仮想の第1の基準点であるCRP1を設定し、第2の交差点領域42の内部に仮想の第2の基準点であるCRP2を設定する。
なお、この設定は、基盤的地図データ290が基盤的地図データベース200に実装されるときに設定がなされる。もしくは通信システム111による外部との路車間通信または移動体通信によって、基盤的地図データベース200の基盤的地図データ290の更新がなされるときに設定が行われる。
この設定は、自動走行支援システム100のメモリ902もしくはプロセッサ901の内部メモリにおいて設定が行われる。
(2)渋滞データ取得部420は、車道リンク11で示される接続単路部の渋滞を表す渋滞データである提供情報61を取得する。提供情報61は、提供情報61を提供する提供元から取得する。例えば、渋滞データ取得部420は通信装置904によってネットワークから提供情報61を取得する。取得した提供情報61は、予め各CRPと渋滞始点および渋滞終点との対応関係が取られている。
(3)対応付け部430は、提供情報61を、地図データ生成装置400の基盤的地図データ290に格納されたCRP1とCRP2との少なくともいずれかと、車道リンク11とに、対応付ける。
【0099】
地図データ生成装置400が、交差点領域の内部の渋滞を、CRPを用いて位置表現する、位置情報表現タイプ1の動作は以下のようである。
図28を例に説明する。
(1)基準点設定部410は、交差点領域41を有する地図データ905の交差点領域41の内部に仮想の基準点であるCRP1を設定する。
(2)渋滞データ取得部420は、交差点領域41の内部の渋滞を表すとともに、渋滞始点61sと渋滞終点61eとの少なくともいずれかが交差点領域41の内部に位置する渋滞データである提供情報61を取得する。提供情報61は例えばネットワークを介して取得される。
(3)対応付け部430は、渋滞データの渋滞始点61sが交差点領域41の内部に位置する場合には、渋滞データにCRP1の座標と渋滞始点61sの座標との距離を対応付ける。対応付け部430は、提供情報61の渋滞終点61eが交差点領域41の内部に位置する場合には、提供情報61にCRPの座標と渋滞終点61eの座標との距離を対応付ける。
【0100】
地図データ生成装置400によって生成された地図データ905は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。つまり、
図24から
図29に示した地図データ905はコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。また、
図24から
図29に示した地図データ905はプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0101】
***実施の形態2の効果***
実施の形態2の地図データ905によれば、静的情報であるCRPと、準動的情報である提供情報61とを対応付けることができるので、高精度の3次元地図データに渋滞情報を容易に関連付けることができる。
【符号の説明】
【0102】
10,11,12,13 車道リンク、11a 端点、20 CRP、30 車道リンク端点とCRPを結ぶ点線、40 交差点領域、51、52 CRPからの距離、61 提供情報、61s 渋滞始点、61e 渋滞終点、70 中央分離帯、80 車道、100 自動走行支援システム、110 自動走行支援装置、111 通信システム、112 ポジショニングシステム、113 車両位置情報処理部、120 車両制御システム、200 基盤的地図データベース、201 区画線データ、202 交差点データ、203 停止線データ、204 信号機データ、205 マーカーポイントデータ、206 車線リンクデータ、207 車道リンクデータ、290 基盤的地図データ、301 車両位置情報、311 車両、312 路側機、313 マーカーポイント、321 区画線、322 車道リンク、323 車線リンク、324 車道境界線、325 車線区画線、326 交差点領域、327 交差点内車線リンク、400 地図データ生成装置、410 基準点設定部、420 渋滞データ取得部、430 対応付け部、500 ダイナミックマップデータ、550 交通情報提供システム、600 通信ネットワーク回線、610 高速道路バス停留所、611 二次メッシュ境界、901 プロセッサ、902 メモリ、903 補助記憶装置、904 通信装置、905 地図データ。