(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ヒト抗RANKL抗体の製剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221209BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221209BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221209BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221209BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 3/14 20060101ALI20221209BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20221209BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221209BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20221209BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 M
A61K47/18
A61K9/08
A61P19/08
A61P35/00
A61P3/14
A61P19/10
A61P35/04
A61P13/08
A61P11/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018086261
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-04-19
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ロバート・ブリーチ
(72)【発明者】
【氏名】リアン・エム・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミル・ファロン
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・ミッシェル・ゴス
(72)【発明者】
【氏名】ジエン・ホワ・グー
(72)【発明者】
【氏名】パバン・ケイ・ガティ・ベンカタ・クリシュナ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-519347(JP,A)
【文献】特表2010-531306(JP,A)
【文献】特表2014-510152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 9/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、及び(ii)
フェニルアラニン又はトリプトファンを含む水性医薬製
剤。
【請求項2】
L-フェニルアラニン又はL-トリプトファン
を含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項3】
5mM~300mMの
前記フェニルアラニン又はトリプトファンを含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項4】
5mM~180mMの
フェニルアラニン又はトリプトファンを含む、請求項
3に記載の水性医薬製剤。
【請求項5】
5mM~100mMの
フェニルアラニン又はトリプトファンを含む、請求項
4に記載の水性医薬製剤。
【請求項6】
(i)
フェニルアラニン又はトリプトファンのただ1
つを含む、(ii)前記
フェニルアラニン又はトリプトファンの前記抗RANKL抗体に対するモル比が10~200である、及び/又は(iii)さらに、張性調節剤を含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項7】
張性調節剤が、ソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
6に記載の水性医薬製剤。
【請求項8】
5.0~5.4の範囲のpHを有する、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項9】
(i)5℃で6cP以下の粘度を有する、(ii)500μS/cm~2000μS/cmの導電率を有する、(iii)200mOsm/kg~500mOsm/kgの範囲のオスモル濃度を有する、及び/又は(iv)2℃~8℃で、少なくとも12ヶ月間、24ヶ月間、又は36ヶ月間保存した後、SE-UHPLCによって測定して、2%未満の高分子量種(HMWS)及び/又は98%超の抗体主ピークを含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項10】
前記粘度が4.5cP~5.5cPである、請求項
9に記載の水性医薬製剤。
【請求項11】
25mM~90mMの
フェニルアラニン又はトリプトファンを含む、請求項
5に記載の水性医薬製剤。
【請求項12】
フェニルアラニン
を含む、請求項
4、
5又は
11に記載の水性医薬製剤。
【請求項13】
20mM~50mMの
フェニルアラニン又はトリプトファンを含む、請求項
11に記載の水性医薬製剤。
【請求項14】
pHが5.0から5.2である、請求項
8に記載の水性医薬製剤。
【請求項15】
オスモル濃度が225mOsm/kg~400mOsm/kgである、請求項
9に記載の水性医薬製剤。
【請求項16】
オスモル濃度が250mOsm/kg~350mOsm/kgである、請求項
15に記載の水性医薬製剤。
【請求項17】
20℃~30℃で、1ヶ月間保存した後、SE-UHPLCによって測定して、2%未満の高分子量種(HMWS)及び/又は98%超の抗体主ピークを含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項18】
2℃~8℃での、少なくとも12ヶ月間、24ヶ月間、又は36ヶ月間の保存及び、20℃~30℃での1ヶ月間の第2の保存の後、SE-UHPLCによって測定して、2%未満の高分子量種(HMWS)及び/又は98%超の抗体主ピークを含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項19】
37℃で1ヶ月、又は30℃で3ヶ月保存した後、SE-UHPLCによって測定して、2%未満の高分子量種(HMWS)及び/又は98%超の抗体主ピークを含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項20】
前記抗体又はその抗原結合部分の濃度が、70mg/mLより大きい、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項21】
前記抗体又はその抗原結合部分の濃度が、300mg/mLより小さい、請求項
20に記載の水性医薬製剤。
【請求項22】
前記抗体又はその抗原結合部分の濃度が、200mg/mLより小さい、請求項
21に記載の水性医薬製剤。
【請求項23】
前記抗体又はその抗原結合部分の濃度が、75mg/mL~200mg/mLである、請求項
22に記載の水性医薬製剤。
【請求項24】
前記抗体又はその抗原結合部分の濃度が、100mg/mL~140mg/mLである、請求項
23に記載の水性医薬製剤。
【請求項25】
さらに緩衝剤及び/又は界面活性剤を含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項26】
前記緩衝剤が酢酸塩又はグルタミン酸塩である、請求項
25に記載の水性医薬製剤。
【請求項27】
5mM~60mMの緩衝剤を含む、請求項
26に記載の水性医薬製剤。
【請求項28】
16mM~41mMの酢酸塩緩衝剤を含む、請求項
27に記載の水性医薬製剤。
【請求項29】
前記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項
25に記載の水性医薬製剤。
【請求項30】
少なくとも0.004(w/v)%の界面活性剤を含み、そして0.15(w/v)%未満の界面活性剤を含む、請求項
25に記載の水性医薬製剤。
【請求項31】
2.0(w/w)%~5.0(w/w)%のソルビトールを含む、請求項
6に記載の水性医薬製剤。
【請求項32】
前記抗RANKL抗体がIgGである、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項33】
前記抗RANKL抗体がIgG
2である、請求項
32に記載の水性医薬製剤。
【請求項34】
前記抗RANKL抗体又はその抗原結合部分が、(A)配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1を含む軽鎖可変ドメイン、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、及び(B)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1を含む重鎖可変ドメイン、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、を含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項35】
前記抗RANKL抗体又はその抗原結合部分が、配列番号1の軽鎖可変領域及び配列番号2の重鎖可変領域を含む、請求項
34に記載の水性医薬製剤。
【請求項36】
前記抗RANKL抗体又はその抗原結合部分が、配列番号13の軽鎖及び配列番号14の重鎖を含む、請求項
35に記載の水性医薬製剤。
【請求項37】
20mM~50mMのL-フェニルアラニン又はL-トリプトファンを含む、請求項
13に記載の水性医薬製剤。
【請求項38】
請求項1に記載の水性医薬製剤を含有する容器。
【請求項39】
バイアル、プレフィルドシリンジ(PFS)、又はガラス容器である、請求項
38に記載の容器。
【請求項40】
対象における、骨関連事象(SRE)、骨の巨細胞腫、高カルシウム血症、若しくは骨粗鬆症の治療、又は骨量の増加のための、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項41】
(a)固形腫瘍からの骨転移を有する対象におけるSREの治療、
(b)切除不能であるか、又は外科的切除が重度の罹患率を生じる可能性がある、骨の巨細胞腫を有する成人又は骨格の成熟した青年である対象におけるSREの治療、
(c)対象におけるビスホスホネート治療に難治性である悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療、
(d)多発性骨髄腫、又は固形腫瘍由来の骨転移を有する対象におけるSREの治療、
(e)骨折の危険性が高い閉経後女性の骨粗鬆症の治療、
(f)乳癌のアジュバントアロマターゼ阻害剤療法を受けている骨折の危険性が高い女性の骨量を増加させる治療、
(g)非転移性前立腺癌のアンドロゲン除去療法を受けている骨折のリスクが高い男性の骨量を増加させる治療、
(h)骨折の危険性が高い骨粗鬆症を有する男性の骨量を増加させるための治療、及び/又は
(i)カルシウム又はビタミンDによる療法、
のための、請求項
40に記載の水性医薬製剤。
【請求項42】
ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を含む安定な水性医薬製剤を作製する方法であって、前記抗RANKLモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を70mg/mLを超える濃度で、
フェニルアラニン又はトリプトファン、緩衝剤、及び界面活性剤と混合することを含
む、方法。
【請求項43】
前記抗RANKLモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を70mg/mLを超える濃度で、
フェニルアラニン又はトリプトファン、緩衝剤、界面活性剤、及び張性調節剤と混合することを含む、請求項
42に記載の方法。
【請求項44】
ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を70mg/mLを超える濃度で含む水性医薬製剤の安定性を改善する方法であって、
ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を含む前記水性医薬製剤を5.0から5.2未満の範囲のpHで調製すること、又は
フェニルアラニン又はトリプトファンと混合した、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を含む前記水性医薬製剤を調製することを含み
、
前記水性医薬製剤が、5.0から5.2未満の範囲のpHでない同等の水性医薬製剤と比較して、5.0から5.2未満の範囲のpHで改善された安定性を示すか、又は、前記水性医薬製剤が、
フェニルアラニン又はトリプトファンを含まない同等の水性医薬製剤と比較して、
フェニルアラニン又はトリプトファンによる改善された安定性を示す、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
2017年4月28日に出願された米国仮特許出願第62/492,056号の35 U.S.C.§119(e)による利益が、ここに主張され、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されたデータの参照による援用
本明細書と同時に提出された、コンピュータ読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれており、以下と特定される:2018年4月20日に作成された、49キロバイトのASCII(テキスト)ファイル「51689A_Seqlisting.txt」。
【0003】
背景
開示の分野
本発明は、デノスマブ及びそのバイオシミラーの高濃度水性製剤などのヒト抗RANKLモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の簡単な説明
デノスマブは、60mg/mL及び70mg/mLの濃度にて溶液形態で市販されている。
【0005】
タンパク質製剤の濃度が増加すると、安定性、例えば高分子量種(HMWS)の形成をもたらす凝集などの問題を引き起こす可能性がある。HMWS、特に単量体対応物の天然立体配座の大部分を保存するものは、いくつかのタンパク質製剤において特に懸念される。凝集はまた、潜在的に、治療用タンパク質の皮下バイオアベイラビリティー及び薬物動態に影響を及ぼし得る。
【0006】
充填及び仕上げ操作、ならびに投与は、ピストンポンプ、蠕動ポンプ、または注入用針を通してタンパク質溶液を流すステップを含み得る。このようなプロセスは、タンパク質の変性を引き起こし、凝集を生じさせ得るせん断応力及び機械的応力を与え得る。この現象は、タンパク質溶液がより濃縮されるにつれて悪化する可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明に従って提供される開示は、高濃度の抗RANKL抗体を含む水溶液にアミノ酸凝集阻害剤を添加することにより、時間と共に形成される抗体凝集物の量が減少すること、ならびにこのような凝集体の形成速度が遅くなることを初めて実証することである。本開示はまた、抗RANKL抗体の濃縮水溶液における凝集物形成に対するpH効果、すなわち、水溶液のpHが約5.0から5.2未満の範囲において凝集体の形成が減少するのが観察されるとの効果、を提供する。本明細書に提示される開示によってさらに示唆されることは、抗RANKL抗体の安定化が、アミノ酸凝集阻害剤と抗体との間の相互作用により生じることである。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、アミノ酸凝集阻害剤と抗RANKL抗体との間の疎水性相互作用ならびに他のタイプの分子間相互作用が、濃縮抗体溶液に対して安定化効果をもたらすことが企図される。したがって、本発明の開示は、低濃度(例えば、約2%未満)の凝集物しか含まない、高濃度の抗RANKL抗体を含む安定な水性医薬製剤に関するものである。
【0008】
したがって、本開示の1つの態様は、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を、70mg/mLを超える濃度で含み、約5.0から5.2未満の範囲のpHを有する水性医薬製剤である。
【0009】
本開示の別の態様は、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分と、アミノ酸凝集阻害剤との混合物を含む水性医薬製剤である。例示的態様において、アミノ酸凝集阻害剤は、電荷を有する側鎖を含むアミノ酸、芳香族アミノ酸、または疎水性アミノ酸を含む。例示的な例では、電荷を有する側鎖を含むアミノ酸は、例えば、アルギニン及びリシンなどの正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸である。例示的態様において、芳香族アミノ酸は、フェニルまたはインドールを含む。任意に、芳香族アミノ酸は、アルファ炭素とフェニルまたはインドールとの間にC1-C6アルキル鎖をさらに含む。例えば、フェニルアラニン及びトリプトファンなどのアミノ酸は、例示的なアミノ酸凝集阻害剤である。例示的な例では、アミノ酸凝集阻害剤は、Kyte及びDoolittle疎水性スケールで約2.5を超えるスコアを有する疎水性アミノ酸である。任意に、疎水性アミノ酸はバリン、ロイシンまたはイソロイシンである。さらなるアミノ酸凝集阻害剤は、本明細書に記載されるように企図される。
【0010】
例示的な例では、水性医薬製剤は、張性調節剤、界面活性剤、緩衝剤、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0011】
本開示の別の態様は、保存または使用、例えば、使い捨てバイアル、使い捨て注射器、またはガラスの、ガラスで覆われた、もしくはガラスで被覆された一次容器内での保存または使用のための製剤の提示である。本開示の例示的態様は、本明細書に記載の水性医薬製剤のいずれかを含む、容器、任意に、バイアル、プレフィルドシリンジ(PFS)、またはガラス容器である。例示的な例では、容器は約1mL以下(例えば約0.5mL)の水性医薬製剤を含む。
【0012】
本開示の別の態様は、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む安定な水性医薬製剤の製造方法であって、70mg/mLを超える濃度の抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を、アミノ酸凝集阻害剤、緩衝剤、界面活性剤及び任意に張性調節剤と混合することを含む方法を提供する。本開示の態様は、本明細書に記載の安定な水性医薬製剤の製造方法のいずれか1つに従って製造された安定な水性医薬製剤を含む。
【0013】
本開示の別の態様は、ヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に応答する疾患を予防または治療するために、本明細書に記載の製剤を使用する方法を提供する。具体的態様において、この使用は、対象における、骨関連事象(SRE)の治療または予防、骨の巨細胞腫瘍の治療または予防、悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療または予防、骨粗鬆症の治療または予防、または骨量の増加、を包含する対象の治療処置を包含する。例えば、治療的処置は、(a)固形腫瘍からの骨転移を有する対象におけるSREの治療または予防、(b)切除不能であるか、または外科的切除が重度の罹患率を生じる可能性がある、骨の巨細胞腫を有する成人または骨格の成熟した青年である対象におけるSREの治療または予防、(c)対象におけるビスホスホネート治療に難治性である悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療、(d)多発性骨髄腫、または固形腫瘍由来の骨転移を有する対象におけるSREの治療または予防、(e)骨折の危険性が高い閉経後女性の骨粗鬆症の治療、(f)乳癌のアジュバントアロマターゼ阻害剤療法を受けている骨折の危険性が高い女性の骨量を増加させる治療、(g)非転移性前立腺癌のアンドロゲン除去療法を受けている骨折の危険性が高い男性の骨量を増加させる治療、(h)骨折の危険性が高い骨粗鬆症を有する男性の骨量を増加させるための治療、(i)カルシウムまたはビタミンDによる治療、を包含する。
【0014】
本開示のさらなる態様は、骨関連事象(SRE)の予防を必要とする患者において骨関連事象(SRE)を予防する方法、骨の巨細胞腫の処置を必要とする患者において骨の巨細胞腫を処置する方法、悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療を必要とする患者の悪性腫瘍の高カルシウム血症を治療する方法、骨粗鬆症の治療を必要とする患者の骨粗鬆症を治療する方法、及び骨量の増加を必要とする患者の骨量を増加させる方法を含んでいる。この方法は、有効量の本明細書に記載の製剤のいずれか1つを患者に投与することを含む。例示的な例では、製剤は患者に皮下で送達される。
【0015】
本開示の別の態様は、ヒト抗RANKLモノクローナル抗体を必要とする患者を治療するための、本明細書に記載の医薬の製造において、デノスマブ、または別のヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。
【0016】
本開示の別の態様は、本明細書に開示される組成物または物品を、添付文書、パッケージラベル、説明書、または本明細書に開示される方法または実施形態のいずれかを指示または開示する他の表示と共に含むキットである。
【0017】
本開示の別の態様は、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を70mg/mLを超える濃度で含む水性医薬製剤の安定性を改善する方法であって、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分をpHが約5.0から5.2未満の範囲で含む水性医薬製剤を調製するステップを含み、且つこの水性医薬製剤は、約5.0から5.2未満の範囲内のpHでない同等の水性医薬製剤と比較して、約5.0から5.2未満の範囲のpHで改善された安定性を示すものである方法である。
【0018】
本開示の別の態様は、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む水性医薬製剤の安定性を改善する方法であって、アミノ酸凝集阻害剤と混合した、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む水性医薬製剤を調製するステップを含み、且つこの水性医薬製剤は、アミノ酸凝集阻害剤を用いない同等の水性医薬製剤と比較して、アミノ酸凝集阻害剤により改善された安定性を実証する方法である。
【0019】
本開示の別の態様は、デノスマブまたは別のヒト抗RANKLモノクローナル抗体の溶液中におけるHMWS凝集物のレベルを低下させる方法である。
【0020】
さらなる態様及び利点は、図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、当業者には明らかであろう。組成物、物品及び方法は様々な形の実施形態の影響を受けやすいが、以下の記載は、本開示が例示的なものであり、本発明を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図するものではないとの理解のもとに特定の実施形態を含んでいる。本明細書に記載の組成物、物品及び方法については、成分、その組成範囲、置換分、条件及びステップを含むがこれらに限定されない任意の特徴は、本明細書で提供される様々な態様、実施形態及び実施例から選択されることが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】種々の高濃度デノスマブ製剤について、37℃での製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図1の凡例は、表1に示される略称を有する配合に一致する。
【
図2】種々の高濃度デノスマブ製剤について、37℃での製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
【
図3】37℃で1ヶ月間保存した後の様々な高濃度デノスマブ製剤のサイズ排除クロマトグラムを示す。
図3の凡例は、表2に示されている略称を有する製剤と一致する。
【
図4】表3Aに示された対応するF#を有する各製剤の時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWS%のグラフである。
【
図5】表3Aに列挙された製剤の対のサイズ排除クロマトグラムである。
図5の凡例は、表3Bに記載された製剤名に一致する。
【
図6】表4Aに示される対応するF#を有する各製剤について、37℃での保存時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWS%のグラフである。
【
図7】Aは、表4Aに列挙したデノスマブ濃度を有するpH4.8での製剤のサイズ排除クロマトグラムを示す。Bは、表4Aに列挙したデノスマブ濃度を有するpH5.1での製剤のサイズ排除クロマトグラムを示す。
【
図8】種々の高濃度デノスマブ製剤について、37℃での製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図8の凡例は、表5に示される文字に一致する。
【
図9】表6Bに示された対応するF#を有する各製剤について、37℃での保存時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWS%のグラフである。
【
図10】表6Bに示された名称を有する製剤について、37℃で1ヶ月間保存した後の製剤の関数としてのサイズ排除クロマトグラムを示す。
【
図11】Aは、表7Bに示された文字を有する製剤の37℃での時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。Bは、表7Cに示された文字を有する製剤について、40℃での時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
【
図12】Aは、表7Bの製剤のサイズ排除クロマトグラムを示す。Bは、表7Cの製剤のサイズ排除クロマトグラムを示す。
【
図13】表8Aに示された対応する製剤文字を有する各製剤について、37℃での保存時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
図13は芳香族アミノ酸を含む製剤に関するものである。
【
図14】表8Aに示された対応する製剤文字を有する各製剤について、37℃での保存時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
図14は極性/電荷を有するアミノ酸を含む製剤に関するものである。
【
図15】表8Aに示された対応する製剤文字を有する各製剤について、37℃での保存時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
図15は疎水性アミノ酸を含む製剤に関するものである。
【
図16】37℃で1ヶ月間保存した後の表8Aに列挙した製剤のクロマトグラフィーオーバーレイである。
図16は芳香族アミノ酸を含む製剤に関するものである。
【
図17】37℃で1ヶ月間保存した後の表8Aに列挙した製剤のクロマトグラフィーオーバーレイである。
図17は極性/電荷を有するアミノ酸を含む製剤に関するものである。
【
図18】37℃で1ヶ月間保存した後の表8Aに列挙した製剤のクロマトグラフィーオーバーレイである。
図18は疎水性アミノ酸を含む製剤に関するものである。
【
図19】製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸28~33の時間(log(秒))の関数としての4℃での重水素取り込み%のグラフである。
【
図20】製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸108~116の時間(log(秒))の関数としての4℃での重水素取り込み%のグラフである。
【
図21】製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸125~132の時間(log(秒))の関数としての4℃での重水素取り込み%のグラフである。
【
図22】製剤35~38のそれぞれについて、重鎖アミノ酸47~59の時間(log(秒))の関数としての4℃での重水素取り込み%のグラフである。
【
図23】製剤35~38のそれぞれについて、重鎖アミノ酸243~253の時間(log(秒))の関数としての4℃での重水素取り込み%のグラフである。
【
図24】製剤35~38のそれぞれについて、重鎖アミノ酸392~399の時間(log(秒))の関数としての4℃での重水素取り込み%のグラフである。
【
図25】製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸28~33の時間(log(秒))の関数としての37℃における重水素取り込み%のグラフである。
【
図26】製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸108~117の時間(log(秒))の関数としての37℃における重水素取り込み%のグラフである。
【
図27】製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸124~131の時間(log(秒))の関数としての37℃における重水素取り込み%のグラフである。
【
図28】製剤35~38のそれぞれについて、重鎖アミノ酸47~59の時間(log(秒))の関数としての37℃における重水素取り込み%のグラフである。
【
図29】製剤35~38のそれぞれについて、重鎖アミノ酸242~253の時間(log(秒))の関数としての37℃における重水素取り込み%のグラフである。
【
図30】製剤35~38のそれぞれについて、重鎖アミノ酸392~399の時間(log(秒))の関数としての37℃における重水素取り込み%のグラフである。
【
図31】表10に示された製剤名で37℃にて、製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
【
図32】表11に示された製剤名で37℃にて、製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたLMWSパーセントのグラフである。
【
図33】表12に示された製剤名で37℃にて、製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
【
図34】表13に示された製剤名で37℃にて、製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたLMWSパーセントのグラフである。
【
図35】表14に示された製剤名で37℃にて、製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
【
図36】表15に示された製剤名で37℃にて、製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたLMWSパーセントのグラフである。
【
図37】表10に示された製剤名を有する各製剤のサイズ排除クロマトグラムオーバーレイである。
【
図38】表12に示された製剤名を有する各製剤のサイズ排除クロマトグラムオーバーレイである。
【
図39】表14に示された製剤名を有する各製剤のサイズ排除クロマトグラムオーバーレイである。
【
図40】pH4.5、4.8及び5.0でアルギニンの非存在下のデノスマブの等温化学変性曲線を含むグラフである。
図40Aは、変性剤濃度の関数としての変性デノスマブの画分のグラフである。
図40Bは、変性剤濃度の関数としてdF/d[変性剤]をプロットしたグラフである。
【
図41】
図41A及び
図41Bは、pH4.5、4.8及び5.2で75mMアルギニンHClの存在下のデノスマブの等温化学変性曲線を含むグラフである。
図41Aは、変性剤濃度の関数としての変性デノスマブの画分のグラフである。
図41Bは、変性剤濃度の関数としてdF/d[変性剤]をプロットしたグラフである。
【
図42】製剤名が表17である製剤について、25℃で3ヶ月間の時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
【
図43】製剤名が表17である製剤について、37℃で2ヶ月間の時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSパーセントのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
デノスマブ及び他のヒト抗RANKL抗体及びその抗原結合部分のより濃縮された水溶液で、希釈溶液と同等、またはそれより安定である濃縮水溶液を提供することが望ましいであろう。より濃縮された溶液は、例えば、デノスマブなどの120mgの活性成分を送達するために、より希釈された活性製剤の1.7mLまたは2mL注入ではなく、1mL注入などのより小さな容量の投与を可能にすることによって、患者の利便性を提供することができる。さらにまた、さらにより少量の注射溶液が、より低用量の活性物質を送達することが可能となり、例えば、60mg用量を送達するために、120mg/mL濃度のデノスマブ0.5mLで可能となる。従来公知の溶液よりも安定である、デノスマブ及び他のヒト抗RANKL抗体及びその抗原結合部分の水溶液を提供することも望ましいであろう。安定した濃縮製剤は、より少量の製品の取り扱い及び出荷を可能にし、製品のより長い保存期間を可能にするなどの他の利点も有する。
【0023】
生物学的製剤中の凝集物は、起源、サイズ、及びタイプが異なる場合がある。生物学的製剤の有効性または安全性に影響を及ぼし得る凝集物、例えば、免疫応答を増強し、有害な臨床効果を引き起こし得る凝集物は、特に懸念事項である。高分子量凝集体、別名、高分子量種(HMWS)、特に単量体対応物の天然立体配座の大部分を保存する高分子量凝集体が特に懸念される。凝集はまた、潜在的に、治療用タンパク質の皮下バイオアベイラビリティー及び薬物動態に影響を及ぼし得る。
【0024】
凝集体の形成には、様々な原因があり得る。一般に、タンパク質凝集は、タンパク質の構造変化の結果である構造的不安定性、及び分子間力によって支配されるコロイド不安定性に起因する。重要な核形成事象が沈殿を誘発するために必要とされる場合、タンパク質凝集の動力学は、遅延時間相を包含することによって特徴付けることができる。
【0025】
構造不安定性に起因する凝集は、アンフォールディング及び会合のステップを含む。タンパク質分子のアンフォールディングは、疎水性アミノ酸残基を露出させる。アンフォールディング分子の疎水性残基は、その後会合を経て、凝集体(例えば、二量体、三量体、他の多量体、及び高次の凝集体など)をもたらし得る。このような会合は濃度依存性である。水性溶媒中のタンパク質濃度の増加は、一般に、熱誘導凝集などの凝集の速度及び程度を増加させる。したがって、溶液中でのタンパク質アンフォールディングの自由エネルギーに影響を及ぼす添加剤は、構造安定性に影響し得る。
【0026】
コロイド不安定性は、タンパク質-タンパク質の分子間会合力による凝集体をもたらす。このような力は、イオン強度、溶液pH、及び緩衝剤の種類を含む1つ以上の因子によって影響され得る。
【0027】
デノスマブは、60mg/mL及び70mg/mLの濃度の溶液形態で市販されている。同じ添加剤を用いてデノスマブのより高濃度の溶液を処方する試みにより、より高い濃度が、HMWSの付随的かつ比例的な増加によって生成物の安定性に影響を与えることが示された。例えば、デノスマブ120mg/mLの濃度は、デノスマブ70mg/mLよりも70%を超える高い濃度を有し、60mg/mL濃度の2倍である。
【0028】
したがって、本開示による安定化された水性製剤は、従来公知の製剤よりも、より大きな程度まで凝集体形成に抵抗するであろう。本開示の1つの態様は、5.0から5.2未満のpHを特徴とする安定化水性製剤である。本開示の別の非排他的な態様は、アミノ酸凝集阻害剤を含む安定化水性製剤である。関連する調剤の提供形態、例えば、使い捨てバイアル、シリンジ及びガラス容器、及び関連する治療方法もまた提供することができる。安定な水性医薬製剤の製造方法がさらに提供される。
【0029】
以下に記載するように、pH及びアミノ酸凝集阻害剤(例えば、アルギニン、アルギニン-アルギニンジペプチド、アルギニン-フェニルアラニンジペプチド)は、120mg/mLのデノスマブの、HMWSレベル及びHMWS形成速度を低下させることが示された2つの手段である。HMWSは、不可逆(例えば、共有結合性)または可逆(例えば、非共有結合性自己会合相互作用)である分子間タンパク質相互作用として説明することができる。粘度及びHMWSの増加をもたらし得るタンパク質自己会合反応の4つの一般に認められている原因:疎水性、電荷、極性及び双極子相互作用、がある。製剤pH及びアルギニン(中性から酸性pH値での高電荷塩基性アミノ酸)の両方は、電荷を有するタンパク質の分子間力を妨げる可能性がある。特定の理論に拘束されることを意図しないが、デノスマブの120mg/mLでのHMWS形成はタンパク質の電荷に基づくものであり、これらの製剤の変化はHMWS形成のメカニズムに関与する電荷力を破壊していると考えられる。さらに、特定の理論に拘束されることを意図しないが、アルギニンは側鎖には短い脂肪族炭化水素鎖を含むので、HMWSの形成において疎水性タンパク質自己会合相互作用が存在することも考えられる。この脂肪族鎖は、タンパク質間の疎水性相互作用を破壊することができる。この考えは、HMWSのレベルをさらに低下させるために、製剤中にフェニルアラニンを含有させることによってさらに支持される。いかなる特定の理論にも縛られることないが、アルギニンが疎水性相互作用を介して抗体と相互作用する場合、アルギニンは1つ以上の他の方法で抗体と相互作用してもよいように、アルギニンはフェニルアラニンとは異なる方法で抗RANKL抗体を安定化する。
【0030】
HMWSのレベル及び形成速度の低下に潜在的に正の影響を及ぼす可能性がある他の添加剤は、アルギニンと比較した場合、中性から酸性pH値で同様の正電荷基を有することができ、及び/またはフェニルアラニンと同様の性質の疎水性であり得る。これらの添加剤の例としては、リシン、N-アセチルアルギニン、N-アセチルリシン、チロシン、トリプトファン、及びロイシンが挙げられる。
【0031】
製剤、調剤の提供形態、及び方法は、別段の記載がない限り、以下にさらに記載される1つ以上の追加の任意の要素、特徴及びステップ(図面に示されるものを含む)の任意の組み合わせを含む実施形態を含むことが企図される。
【0032】
人体に対して実施される方法の特許を禁ずる管轄区域において、組成物をヒト対象に「投与する」という意味は、ヒト対象が任意の技術(例えば、経口、吸入、局所適用、注射、挿入など)によって自己投与する制御物質を処方することに限定されるものとする。特許可能な主題を定義する法律または規則に合致する、最も広く合理的な解釈が意図されている。人体で実施される方法の特許取得を禁じていない管轄区域において、組成物の「投与」には、人体で実施される方法及び前述の活動の両方が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「含む」は、指定されたものに加えて、他の薬剤、要素、ステップまたは特徴の潜在的な包含を示している。
【0034】
この明細書全体にわたって与えられる全ての最大数値制限は、対応する全てのより小さい数値限定で形成される範囲を、代替態様として、このような数値範囲が明示的に書かれているかのように含むと理解されるべきである。本明細書全体を通して与えられる最小の数値限定は、全てのより高い数値限定で形成される範囲を、代替態様として、このような範囲が明示的に書かれているかのように含む。この明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、このようなより広い数値範囲内に含まれる全てのより狭い数値範囲を、このようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように、含む。本明細書に開示される寸法及び値は、記載された値及び対応する正確な数値の両方の開示を含むと理解されるべきである、例えば、「約10mM」と記載される値は、代替開示として「10mM」を含むものと理解されるべきである。
【0035】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、特定された疾患または状態を治療、改善または予防するため、または検出可能な治療効果、予防効果または阻害効果を示すために十分な化合物の量を指す。その効果は、例えば、臨床状態の改善または症状の軽減によって検出することができる。対象の正確な有効量は、対象の体重、サイズ、及び健康状態、状態の性質及び程度、及び投与のために選択された治療剤または治療剤の組み合わせ、に依存する。薬剤が米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている場合、「治療有効量」とは、特定された疾患または状態の治療のためにFDAまたはその対応する外国機関によって承認された投与量を指す。
【0036】
本開示は、保存後の、凝集体の減少量及び/または凝集体形成速度の低下によって示される安定化した(または安定な)水性医薬製剤を提供する。本明細書に記載されているように、このような製剤の安定性は、様々な時間及び様々な温度で保存した後、HMWSの減少量及び/またはHMWS形成速度の低下により示される。一般に、より高い安定性を有する製剤は、低温と比べてより高い保存温度でより低いHMWS量、より低いHMWS形成速度及び/またはより高い抗体主ピークと関係している。本明細書で使用される「高分子量種」または「HMWS」という用語は、製剤の抗体の高次凝集体、ならびに製剤の抗体の低次凝集体を指す。より低次の凝集体は、例えば二量体種を含む。凝集量及び形成速度は、例えばSE-UHPLCのような技術によって測定またはモニターすることができる。抗体のSE-UHPLCクロマトグラムは、いくつかの例では、水性医薬製剤のHMWSの量を表す5.8分付近のピーク、二量体種を表す6.7分付近のピーク、及び無傷の非凝集形態の抗体の量を反映する8.0分付近のピークを示す。4℃で保存する場合と比較して、37℃で保存すると、特定の製剤の安定性が4℃での保存期間に比べて短時間で測定されるように、安定性アッセイを促進することができる。例えば、37℃で1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月間保存すると、4℃で36ヶ月間保存することが示唆されるか、または予測され得る。
【0037】
1つのタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化された製剤は、添加剤として、10mMの酢酸塩、5%(w/v)のソルビトール、0.01%(w/v)のポリソルベート20を含み、5.2の溶液pHを有する等濃度対照製剤と比較して、37℃で3ヶ月間保存した後のHMWSの形成の程度及び速度が低下するであろう。
【0038】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載された、アミノ酸凝集阻害剤を含む安定化製剤は、アミノ酸凝集阻害剤を含まない等価な対照製剤と比較して、37℃で1ヶ月の保存後のHWMSの形成の程度が低下するであろう。形成の程度は、例えば、SE-UPHLCによるHMWS%量は、37℃で1ヶ月間保存した対照製剤と比較して、少なくとも約0.1%、または約0.2%、または約0.3%、または約0.4%、または約0.5%または約0.6%、または約0.7%、例えば約0.1%~約2%、または約0.1%~約1%の範囲だけ低くなるように低下し得る。
【0039】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化された製剤は、SE-UHPLCによる、37℃で1ヶ月保存後のHMWS量が少量あろう。例えば、HMWS量は、2%以下、または2%未満、または1.9%以下、または1.9%未満、または1.8%以下、または1.8%未満、または1.7%以下、または1.7%未満、または1.6%以下、または1.6%未満、または1.5%以下、または1.5%未満、または1.4%以下、または1.4%未満、または1.3%以下、1.3%未満、または1.2%以下、または1.2%未満、例えば約0.01%~約2%、または約0.01%~約1.9%、または約0.01%~約1.8%、または約0.01%~約1.7%、または約0.01%~約1.6%、または約0.01%~約1.5%、または約0.01%~約1.4%、または約0.01%~約1.3%、または約0.01%~約1.2%の範囲であり得る。別のタイプの実施形態では、SE-UHPLCによる37℃での1ヶ月の保存後のHMWSの量は、2%よりも大きく、例えば2%より大きく3%までに、なり得るが、一方、アミノ酸凝集阻害剤によってもたらされる凝集速度の低下は、適切な製品保存期間、最大3年、または最大2年の期間を可能にできる。
【0040】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化された製剤は、SE-UHPLCによる、37℃で3ヶ月保存後のHMWSが少量であろう。例えば、HMWSの量は、2%以下、または2%未満、または1.9%以下、または1.9%未満、または1.8%以下、または1.8%未満、または1.7%以下、または1.7%未満、または1.6%以下、または1.6%未満、または1.5%以下、または1.5%未満、または1.4%以下、または1.4%未満、または1.3%以下、1.3%未満、または1.2%以下、または1.2%未満、例えば約0.01%~約2%、または約0.01%~約1.9%、または約0.01%~約1.8%、または約0.01%~約1.7%、または約0.01%~約1.6%、または約0.01%~約1.5%、または約0.01%~約1.4%、または約0.01%~約1.3%、または約0.01%~約1.2%の範囲であり得る。
【0041】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化された製剤は、SE-UHPLCによる、4℃で36ヶ月保存後のHMWS量が少量であろう。例えば、HMWSの量は、2%以下、または2%未満、または1.9%以下、または1.9%未満、または1.8%以下、または1.8%未満、または1.7%以下、または1.7%未満、または1.6%以下、または1.6%未満、または1.5%以下、または1.5%未満、または1.4%以下、または1.4%未満、または1.3%以下、1.3%未満、または1.2%以下、または1.2%未満、例えば約0.01%~約2%、または約0.01%~約1.9%、または約0.01%~約1.8%、または約0.01%~約1.7%、または約0.01%~約1.6%、または約0.01%~約1.5%、または約0.01%~約1.4%、または約0.01%~約1.3%、または約0.01%~約1.2%の範囲であり得る。
【0042】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化製剤は、SE-UHPLCによる、37℃で1ヶ月保存した後のデノスマブまたは他の抗体(またはその抗原結合部分)主ピーク量が多いであろう。例えば、主ピークの量は、少なくとも95%、または95%超、または少なくとも96%、または96%超、または少なくとも97%、または97%超、または少なくとも97.5%、または97.5%超、または少なくとも98%、または98%超、または少なくとも98.1%、または98.1%超、または少なくとも98.2%、または98.2%超、または少なくとも98.3%、または98.3%超、または少なくとも98.4%、または98.4%超、または少なくとも98.5%、または98.5%超、または少なくとも98.6%、または98.6%超、例えば約95~約99.9%、または約96~約99.9%、または約97~約99.9%、または約97.5~約99.9%、または約98~約99.9%、または約98.1~約99.9%、または約98.2~約99.9%、または約98.3~約99.9%、または約98.4~約99.9%、または約98.5~約99.9%、または約98.6~約99.9%の範囲であり得る。
【0043】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化製剤は、SE-UHPLCによる、37℃で3ヶ月保存した後のデノスマブまたは他の抗体(またはその抗原結合部分)の主要ピーク量が多いであろう。例えば、主ピークの量は、少なくとも95%、または95%超、または少なくとも96%、または96%超、または少なくとも97%、または97%超、または少なくとも97.5%、または97.5%超、または少なくとも98%、または98%超、または少なくとも98.1%、または98.1%超、または少なくとも98.2%、または98.2%超、または少なくとも98.3%、または98.3%超、または少なくとも98.4%、または98.4%超、または少なくとも98.5%、または98.5%超、または少なくとも98.6%、または98.6%超、例えば約95~約99.9%、または約96~約99.9%、または約97~約99.9%、または約97.5~約99.9%、または約98~約99.9%、または約98.1~約99.9%、または約98.2~約99.9%、または約98.3~約99.9%、または約98.4~約99.9%、または約98.5~約99.9%、または約98.6~約99.9%の範囲であり得る。
【0044】
別のタイプの実施形態では、本明細書に記載の安定化製剤は、SE-UHPLCにより、4℃で36ヶ月間保存した後のデノスマブまたは他の抗体(またはその抗原結合部分)主ピーク量が多いであろう。例えば、主ピークの量は、少なくとも95%、または95%超、または少なくとも96%、または96%超、または少なくとも97%、または97%超、または少なくとも97.5%、または97.5%超、または少なくとも98%、または98%超、または少なくとも98.1%、または98.1%超、または少なくとも98.2%、または98.2%超、または少なくとも98.3%、または98.3%超、または少なくとも98.4%、または98.4%超、または少なくとも98.5%、または98.5%超、または少なくとも98.6%、または98.6%超、例えば約95~約99.9%、または約96~約99.9%、または約97~約99.9%、または約97.5~約99.9%、または約98~約99.9%、または約98.1~約99.9%、または約98.2~約99.9%、または約98.3~約99.9%、または約98.4~約99.9%、または約98.5~約99.9%、または約98.6~約99.9%の範囲であり得る。
【0045】
さらなる実施形態では、安定化された製剤は、貯蔵後に、上記の明細書に従って、少量のHMWS及び多量の主ピークを有することが企図される。
【0046】
例示的態様において、水性医薬製剤は、保存後にSE-UHPLCによって測定される、高分子量種(HMWS)を約4%以下で含み、及び/または抗体主ピークを約96%超で含む。例示的態様において、水性医薬製剤は、保存後にSE-UHPLCによって測定される、高分子量種(HMWS)を約3%以下で含み、及び/または抗体主ピークを約97%超で含む。例示的態様において、水性医薬製剤は、保存後にSE-UHPLCによって測定される、HMWSを約2%以下で含み、及び/または抗体主ピークを約98%超で含む。例示的態様において、保存は、約2℃~約8℃(例えば、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃)の温度で、少なくとも12ヶ月、24ヶ月または36ヶ月(例えば、少なくともまたは約12ヶ月、少なくともまたは約16ヶ月、少なくともまたは約20ヶ月、少なくともまたは約24ヶ月、少なくともまたは約28ヶ月、少なくともまたは約32ヶ月、少なくともまたは約36ヶ月、任意にはより長く)の期間である。例示的態様において、貯蔵は、約20℃~約30℃(例えば、約21℃~約30℃、約22℃~約30℃、約23℃~約30℃、約24℃~約30℃、約25℃~約30℃、約26℃~約30℃、約27℃~約30℃、約28℃~約30℃、約28℃~約30℃、約20℃~約29℃、約20℃~約28℃、約20℃~約27℃、約20℃~約26℃、約20℃~約25℃、約20℃~約24℃、約20℃~約23℃、約20℃~約22℃)で、約1ヶ月(例えば、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約31日、約32日、約33日、約34日、約35日、約36日)の間である。例示的態様では、保存は、第1の保存、それに続く第2の保存を含み、第1の保存は、約2℃~約8℃で、少なくとも12ヶ月間、24ヶ月間、または36ヶ月間、第2の保存は、約20℃~約30℃で約1ヶ月間である。例示的な例では、水性医薬製剤は、2%以下のHMWS、または2%未満のHMWS、または1.9%以下のHMWS、または1.9%未満のHMWS、または1.8%以下のHMWS、または1.8未満のHMWS、または1.7%以下のHMWS、または1.7%未満のHMWS、または1.6%以下のHMWS、または1.6%未満のHMWS、または1.5%以下のHMWS、または1.5%未満のHMWS、または1.4%以下のHMWS、または1.4%未満のHMWS、または1.3%以下のHMWSまたは、1.3%未満のHMWS、または1.2%以下のHMWSまたは、1.2%未満のHMWS、例えば約0.01%~約2%のHMWS、または約0.01%~約1.9%のHMWS、または約0.01%~約1.8%のHMWS、または約0.01%~約1.7%のHMWS、または約0.01%~約1.6%のHMWS、または約0.01%~約1.5%のHMWS、または約0.01%~約1.4%のHMWS、または約0.01%~約1.3%のHMWSまたは、約0.01%~約1.2%のHMWSを含み、このHMWSは任意に、SE-UHPLCによって測定される。代替または追加の態様において、水性医薬製剤は、98%超の抗体主ピーク、または少なくとも95%抗体主ピーク、または95%超の抗体主ピーク、または少なくとも96%の抗体主ピーク、または96%超の抗体主ピーク、または少なくとも97%の抗体主ピーク、または97%超の抗体主ピーク、または少なくとも97.5%の抗体主ピーク、または97.5%超の抗体主ピーク、または少なくとも98%の抗体主ピーク、または98%超の抗体主ピーク、または少なくとも98.1%の抗体主ピーク、または98.1%超の抗体主ピーク、または少なくとも98.2%の抗体主ピーク、または98.2%超の抗体主ピーク、または少なくとも98.3%の抗体主ピーク、または98.3%超の抗体主ピーク、または少なくとも98.4%の抗体主ピーク、または98.4%超の抗体主ピーク、または少なくとも98.5%の抗体主ピーク、または98.5%超の抗体主ピーク、または少なくとも98.6%の抗体主ピーク、または98.6%超の抗体主ピーク、例えば、約95%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約96%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約97%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約97.5%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約98%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約98.1%~約99.9%の範囲抗体主ピーク、または約98.2%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約98.3%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約98.4%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約98.5%~約99.9%の範囲の抗体主ピーク、または約98.6%~約99.9%の範囲の抗体主ピークを含み、このピークは任意にSE-UHPLCによって測定される。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、重鎖及び軽鎖を含み、可変領域及び定常領域を含む従来の免疫グロブリンフォーマットを有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、2つの同一の対のポリペプチド鎖の「Y型」構造であるIgG抗体であってもよく、それぞれ対は、1つの「軽」鎖(典型的には約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(典型的には約50~70kDaの分子量を有する)を有する。抗体は、可変領域及び定常領域を有する。IgGフォーマットでは、可変領域は一般に約100~110またはそれ以上のアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主に抗原認識に関与し、そして異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に変化する。例えば、Janeway et.al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999)を参照。
【0048】
簡潔に言えば、抗体骨格において、CDRは、抗原結合及び認識に主に関与する領域を構成する重鎖及び軽鎖可変領域のフレームワーク内に包埋される。可変領域は、フレームワーク領域(指定骨格領域1~4、FR1、FR2、FR3、及びFR4と、Kabat et al.,1991、またChothia及びLesk,1987、上記参照、に指定された)内の、少なくとも3つの重鎖CDRまたは3つの軽鎖CDR(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.、またChothia及びLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917、Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883参照)を含む。
【0049】
ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとしてそれぞれ定義する。IgGは、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むがこれらに限定されないサブクラスを有する。IgMは、IgM1及びIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスを有する。本開示の実施形態は、抗体のこのようなクラスまたはアイソタイプを全て含む。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー型の重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー型重鎖定常領域、であり得る。したがって、例示的実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のいずれか1つを含むアイソタイプIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMの抗体である。例示的態様において、抗RANKL抗体は、IgG1、IgG2またはIgG4抗体である。
【0050】
様々な態様において、抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得る。いくつかの態様において、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ブタ、ヒトなどによって産生される天然抗体と実質的に類似の配列を含む。これに関して、抗体は、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ブタ抗体、ヒト抗体などと考えることができる。特定の態様において、抗RANKL抗体は、モノクローナルヒト抗体である。特定の態様において、組換えタンパク質は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。用語「キメラ抗体」は、本明細書では、1つの種からの定常ドメイン及び第2の種からの可変ドメインを含む、またはより一般的には、少なくとも2つの種からの一続きのアミノ酸配列を含む抗体を指すために使用される。用語「ヒト化」は、抗体に関して使用される場合、元の供給源抗体よりも真のヒト抗体により類似した構造及び免疫機能を有するように操作された非ヒト供給源に由来する少なくともCDR領域を有する抗体を指す。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体由来のCDRをヒト抗体に移植することを含むことができる。ヒト化はまた、非ヒト配列をヒト配列のように見せるために選択されたアミノ酸置換を含むことができる。
【0051】
様々の態様において、抗体は、例えば、パパイン及びペプシンなどの酵素によって断片に切断される。パパインは抗体を切断して2つのFab断片と単一のFc断片を産生する。ペプシンは抗体を切断してF(ab’)2フラグメント及びpFc’断片を産生する。例示的態様において、水性医薬製剤は、少なくとも1つの抗原(RANKL)結合部位を保持する抗体断片、例えばFab、Fc、F(ab’)2またはpFc’を含む。本開示の水性医薬製剤及び方法に関して、抗体は、抗体の特定の部分を欠いていてもよく、RANKLに結合する抗体断片であってもよい。例示的態様において、抗体断片は、抗RANKL抗体の抗原結合部分である。
【0052】
抗体タンパク質産物は、完全な抗原結合能力を保持する抗体断片、例えばscFv、Fab及びVHH/VH、に基づく抗原結合フォーマットであり得る。完全な抗原結合部位を保持する最小の抗原結合断片は、完全に可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性で可撓性のアミノ酸ペプチドリンカーを用いて、V領域をscFv(一本鎖断片可変性)断片と結合させて分子を安定化させるか、またはV領域に定常(C)ドメインを付加してFab断片[断片、抗原結合]を生成する。scFv及びFabの両方は、宿主(例えば、原核宿主)において容易に産生され得る広く使用される断片である。他の抗体タンパク質産物としては、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、一本鎖Fab(scFab)、ならびにジア体、トリア体及びテトラ体のような二量体及び多量体の抗体フォーマット、またはオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なるフォーマットを含むミニボディ(miniAb)が挙げられる。最も小さなフラグメントは、ラクダ科重鎖AbのVHH/VH、ならびに単一ドメインAb(sdAb)である。新規の抗体フォーマットを作製するために最も頻繁に使用されるビルディングブロックは、約15のアミノ酸残基のペプチドリンカーによって連結された重鎖及び軽鎖由来のVドメイン(VH及びVLドメイン)を含む一本鎖可変(V)ドメイン抗体フラグメント(scFv)である。ペプチボディまたはペプチド-Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質産物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上に移植された生物学的に活性なペプチドからなる。ペプチボディは当該分野において十分に説明されている。例えばShimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照。
【0053】
他の抗体タンパク質産物としては、一本鎖抗体(SCA)、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、二重特異性または三重特異性抗体などが挙げられる。二重特異性抗体は、5つの主要なクラス:BsIgG、付加されたIgG、BsAbフラグメント、二重特異性融合タンパク質及びBsAbコンジュゲート、に分類することができる。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照。
【0054】
例示的態様において、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、これらの抗体タンパク質産物(例えば、scFv、Fab VHH/VH、Fv断片、ds-scFv、scFab、二量体抗体、多量体抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、miniAb、ラクダ重鎖抗体のペプチボディVHH/VH、sdAb、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、二重特異性または三重特異性抗体、BsIgG、付加されたIgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、及びBsAbコンジュゲート)のいずれか1つを含むか、いずれか1つから実質的になるか、或いはいずれか1つからなる。
【0055】
例示的態様において、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、単量体形態またはポリマー形態、オリゴマー形態または多量体形態の抗体タンパク質産物を含むか、実質的にそれからなるか、またはそれからなる。抗体が2つ以上の別個の抗原結合領域断片を含む特定の実施形態において、抗体は、その抗体によって認識され及び結合される別個のエピトープの数に応じて、二重特異性、三重特異性、または多特異性、または二価、三価または多価であると考えられる。
【0056】
製剤に使用するヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、ヒトRANKLタンパク質またはその断片のヒトオステオプロテグリン(OPGL)タンパク質に特異的に結合し、そしてRANKLまたはOPGLタンパク質の活性を阻害または中和し、及び/またはRANK/RANKLシグナル伝達経路を阻害する、抗体またはその抗原結合部分であり、本明細書ではヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と称する。例えば、本明細書に記載の製剤は、ヒトRANKL(配列番号12)またはその一部のアミノ酸配列に特異的に結合するヒト抗RANKLモノクローナル抗体を含むことができる。ヒトRANKLタンパク質は、破骨細胞の形成、機能及び生存に必須であることが知られている配列番号11のポリヌクレオチド配列によってコードされる膜貫通タンパク質または可溶性タンパク質である。例えば、ヒト抗RANKL抗体は、RANKLとその受容体RANKとの相互作用を阻害する。
【0057】
ヒト抗RANKLモノクローナル抗体の例はデノスマブであり、Xgeva(登録商標)及びProlia(登録商標)として市販されている。Xgeva(登録商標)は、120mgのデノスマブ、酢酸塩(18mM)、ソルビトール(4.6%)、注射用水(USP)、pH5.2に調整するための水酸化ナトリウムを含む、単回使用バイアル中にある1.7mL溶液(70mg/mL)のデノスマブの120mg投与量製剤である。Prolia(登録商標)は、1mL溶液(60mg/mL)のデノスマブの60mg投与量製剤として入手可能である。Prolia(登録商標)の1mLの使い捨てシリンジには、それぞれ60mgのデノスマブ(60mg/mL溶液)、4.7%ソルビトール、17mM酢酸塩、0.01%ポリソルベート20、注射用水(USP)、及びpH5.2に調整するための水酸化ナトリウムを含む。本明細書に記載され、デノスマブまたはその一部を含む製剤が、特に意図されている。デノスマブは、ヒトRANKLに結合する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体である。デノスマブはおよそ147kDaの分子量を有し、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株で発現される。デノスマブ可変軽鎖(LC)及び可変重鎖(HC)のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号1及び2と示され、全長LC及びHCは、それぞれ配列番号3及び4と示される。配列番号1のアミノ酸配列(デノスマブ可変LC)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いくつかの態様では、配列番号19の核酸である。配列番号2のアミノ酸配列(デノスマブ変種HC)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いくつかの態様において、配列番号20の核酸である。配列番号3のアミノ酸配列(全長デノスマブLC)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いくつかの態様では、配列番号21の核酸である。配列番号4のアミノ酸配列(全長のデノスマブHC)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いくつかの態様では、配列番号23の核酸である。完全長LCのアミノ酸21~235として表されるLCの成熟形態は、配列番号13として示され、完全長HCのアミノ酸20~467として表されるHCの成熟形態は、配列番号14として示される。配列番号13のアミノ酸配列(成熟形態のLC)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いくつかの態様では、配列番号22の核酸である。配列番号14のアミノ酸配列(HCの成熟形態)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いくつかの態様では、配列番号24の核酸である。さらに、デノスマブLC CDRは、配列番号5(LC CDR1)、配列番号6(LC CDR2)及び配列番号7(LC CDR3)として示される。デノスマブHC CDRは、配列番号8(HC CDR1)、配列番号9(HC CDR2)及び配列番号10(HC CDR3)として示される。デノスマブは、国際特許出願第WO03/002713号及び米国特許第7,364,736号に記載され、特許請求されており、これらの開示内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0058】
本明細書中で使用される場合、用語「デノスマブ」は、デノスマブのバイオシミラーを含む。本明細書で使用される「バイオシミラー」(認可された参照製品/生物学的薬剤のもの、例えばタンパク質治療剤、抗体など)は、(a)臨床的に不活性な成分のわずかな相違にもかかわらず、生物学的製剤が参照製品と非常に類似していることを実証する分析研究、(b)動物試験(毒性の評価を含む)、及び/または(c)参照製品が認可され、使用が意図され、そして生物学的製剤について免許が求められている、1つ以上の適切な使用条件において、安全性、純度及び効力を実証するのに十分な単数または複数の臨床研究(免疫原性及び薬物動態学または薬力学の評価を含む)、から誘導されるデータに基づく参照製品に類似する生物学的製剤を指す。1つの実施形態において、バイオシミラー生物学的製剤及び参照製品は、参照製品について単数または複数の作用メカニズムが知られている程度まで、提案された表示において規定、推奨、または示唆された単数または複数の使用条件に同じ単数または複数の作用メカニズムを利用する。1つの実施形態において、生物学的製剤について提案された表示において規定、推奨または示唆された単数または複数の使用条件は、参照製品に対して以前に承認されている。1つの実施形態では、投与経路、剤形、及び/または生物学的製剤の強度は、参照製品のものと同じである。1つの実施形態では、生物学的製剤が製造、処理、包装または保持される施設は、生物学的製剤が安全で純粋で強力であり続けることを保証するために設計された基準を満たしている。参照製品は、米国、ヨーロッパ、または日本の少なくとも1つで承認されている可能性がある。バイオシミラーは、例えば、市販の抗体と同じ一次アミノ酸配列を有する抗体であり得るが、異なる細胞型で、或いは異なる製造、精製または製剤化方法によって作製することができる。
【0059】
製剤は、配列番号1~4、13、14またはその一部のアミノ酸配列の少なくとも1つを含むヒト抗RANKL抗体を含むことができる。製剤は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10として示されるCDRアミノ酸配列の少なくとも1つを含むか、或いは配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10として示されるCDRアミノ酸配列の少なくとも2つを含むか、或いは配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10として示されるCDRアミノ酸配列の少なくとも3つを含むか、或いは配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10として示されるCDRアミノ酸配列の少なくとも4つを含むか、或いは配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10として示されるCDRアミノ酸配列の少なくとも5つを含むか、或いは配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10として示されるCDRアミノ酸配列の少なくとも6つを含む、ヒト抗RANKL抗体を含むことができる。
【0060】
製剤は、配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも80%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも85%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも90%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも91%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する、少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも92%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも93%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも94%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも95%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも96%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも97%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも98%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、または配列番号1~4、13及び14のいずれか1つと少なくとも99%同一であり、RANKLとその受容体、RANK、との間の相互作用を阻害する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むヒト抗RANKL抗体、を含むことができる。
【0061】
例示的実施形態において、水性医薬製剤は、本明細書に記載の、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分(抗体タンパク質産物など)を含む。例示的態様において、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。代替的または追加的な例では、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。代替的または追加的な態様では、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。いくつかの例において、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、配列番号5、配列番号6及び配列番号10を含む。例示的態様において、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、(ii)配列番号8、任意に配列番号27に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列を含む重鎖可変ドメイン、(iii)配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列を含む重鎖可変ドメイン、または(iv)これらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、(A)配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1を含む軽鎖可変ドメイン、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、及び(B)配列番号8(任意に配列番号27)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1を含む重鎖可変ドメイン、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。例示的態様では、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、(A)(i)少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)配列番号1と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(ii)配列番号19を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、(iii)配列番号19からなるポリヌクレオチドの相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン、または(B)(i)少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)配列番号2と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、(ii)配列番号20を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び(iii)ストリンジェントな条件下で、配列番号20からなるポリヌクレオチドの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、からなる群から選択される重鎖可変ドメイン、または(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメイン、を含む。例示的な態様において、抗RANKL抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。例示的な例において、抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、または一本鎖Fvである。例示的態様において、抗RANKL抗体は、IgG1、IgG2またはIgG4抗体であり、任意に、抗RANKL抗体は配列番号15の配列を含む。いくつかの態様において、抗RANKL抗体は、配列番号16、配列番号17、または配列番号18の配列を含む。例示的態様では、抗RANKL抗体またはその抗原結合部分は、(A)(i)少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)配列番号3または配列番号13と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、(ii)配列番号21または23のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖、(iii)ストリンジェントな条件下で、配列番号21または23からなるポリヌクレオチドの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖、からなる群から選択される軽鎖、または(B)(i)少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)配列番号4または配列番号14と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、(ii)配列番号22または24のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖、及び(iii)ストリンジェントな条件下で、配列番号22または24からなるポリヌクレオチドの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖、からなる群から選択される重鎖、または(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメイン、を含む。
【0062】
水性製剤中のデノスマブまたは他のヒト抗RANKL抗体またはその抗原結合部分の濃度は、一般に、任意の有用な範囲、例えば約0.1~約200mg/mLであり得る。濃度が増加するにつれて、粘度の増加があり、これは製剤の薬学的使用のための滅菌調剤提供形態への加工を妨げ得る。
【0063】
1つの態様では、アミノ酸凝集阻害剤による製剤の改善された安定性は、デノスマブまたは他のヒト抗RANKL抗体またはその抗原結合部分の、約10mg/mL~約200mg/mL、または約15mg/mL~約150mg/mL、または約30mg/mL~約200mg/mL、または約60mg/mL~約200mg/mL、または約60mg/mL~約180mg/mL、または約60mg/mL~約160mg/mL、または約60mg/mL~約150mg/mL、または約60mg/mL~約140mg/mL、または約60mg/mL~約130mg/mL、または約60mg/mL~約120mg/mL、または約60mg/mL~約110mg/mL、または約60mg/mL~約100mg/mL、または約60mg/mL~約90mg/mL、または約60mg/mL~約80mg/mL、または約60mg/mL~約70mg/mL、または約70mg/mL~約200mg/mL、または約70mg/mL~約180mg/mL、または約70mg/mL~約160mg/mL、または約70mg/mL~約150mg/mL、または約70mg/mL~約140mg/mL、または約70mg/mL~約130mg/mL、または約70mg/mL~約120mg/mL、または約70mg/mL~約110mg/mL、または約70mg/mL~約100mg/mL、または約70mg/mL~約90mg/mL、または約70mg/mL~約80mg/mL、例えば120mg/mL、などの任意の濃度で存在し得る。
【0064】
別の態様では、約5.0から5.2未満のpHを有する製剤のデノスマブまたは他のヒト抗RANKL抗体またはその抗原結合部分の濃度は、70mg/mLを超える、または少なくとも71mg/mL、または少なくとも約75mg/mL、または少なくとも約80mg/mL、または少なくとも約85mg/mL、または少なくとも約90mg/mL、または少なくとも約95mg/mL、または少なくとも約100mg/mL、または少なくとも約105mg/mL、または少なくとも約110mg/mL、または少なくとも約115mg/mL、または少なくとも約120mg/mL、且つ約200mg/mLまでの範囲を含むことが企図される。例えば、企図される範囲としては、71mg/mL~約200mg/mL、または約75mg/mL~約200mg/mL、または約75mg/mL~約180mg/mL、または約75mg/mL~約160mg/mL、または約75mg/mL~約150mg/mL、または約75mg/mL~約140mg/mL、または約75mg/mL~約130mg/mL、または約75mg/mL~約120mg/mL、または約75mg/mL~約110mg/mL、または約75mg/mL~約100mg/mL、または約75mg/mL~約90mg/mL、または約120mg/mL~約200mg/mL、または約120mg/mL~約180mg/mL、または約120mg/mL~約160mg/mL、または約120mg/mL~約140mg/mL、例えば約120mg/mLが挙げられる。
【0065】
例示的態様では、水性医薬製剤は、抗体またはその抗原結合部分を70mg/mLを超える濃度、例えば80mg/mL超、90mg/mL超、100mg/mL超、125mg/mL超、150mg/mL超、175mg/mL超、200mg/mL超、225mg/mL超、250mg/mL超、275mg/mL超の濃度で含む。例示的態様において、水性医薬製剤は抗体またはその抗原結合部分を、約300mg/mL未満の濃度、例えば約275mg/mL未満、約250mg/mL未満、約225mg/mL未満、約200mg/mL未満、約175mg/mL未満、または約150mg/mL未満で含む。例示的態様では、製剤中の抗体またはその抗原結合部分の濃度は、約10mg/mL~約300mg/mL、例えば、約25mg/mL~約300mg/mL、約50mg/mL~約300mg/mL、約75mg/mL~約300mg/mL、約125mg/mL~約300mg/mL、約150mg/mL~約300mg/mL、約175mg/mL~約300mg/mL、約200mg/mL~約300mg/mL、約225mg/mL~約300mg/mL、約250mg/mL~約300mg/mL、約275mg/mL~約300mg/mL、約10mg/mL~約275mg/mL、約10mg/mL~約250mg/mL、約10mg/mL~約225mg/mL、約10mg/mL~約200mg/mL、約10mg/mL~約175mg/mL、約10mg/mL~約150mg/mL、約10mg/mL~約125mg/mL、約10mg/mL~約100mg/mL、約10mg/mL~約75mg/mL、約10mg/mL~約50mg/mL、または約10mg/mL~約25mg/mLの範囲である。例示的態様では、水性医薬製剤は、抗体またはその抗原結合部分を、70mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、例えば80mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、90mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、100mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、125mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、150mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、175mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、200mg/mLを超えて約300mg/mLまでの範囲、70mg/mLを超えて約275mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約250mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約225mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約200mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約175mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約150mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約125mg/mLまでの範囲、約70mg/mLを超えて約100mg/mLまでの範囲の濃度で含む。例示的態様において、水性医薬製剤は、抗体またはその抗原結合部分を、約100mg/mL~約140mg/mLの範囲、例えば、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mLの濃度で含む。水性医薬製剤は、いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分を、約120mg/mL±12mg/mL、例えば、約108mg/mL~約132mg/mL、約115mg/mL~約125mg/mL、約116mg/mL、約117mg/mL、約118mg/mL、約119mg/mL、約120mg/mL、約121mg/mL、約122mg/mL、約123mg/mL、約124mg/mLの濃度で含む。
【0066】
デノスマブ及び他のヒト抗RANKLモノクローナル抗体及びその抗原結合部分は、国際特許公開WO2003002713A2号で提供される記載に従って調製することができる。
【0067】
以下に記載する高濃度デノスマブ溶液(例えば、120mg/mL)に関する製剤研究は、pH5未満、特により低いpH(例えばpH4.5)においてHMWS形成(速度及び程度)の大きな増加を示した。pHが増加するにつれて、二量体種の形成が増加することが示された。2つの効果をバランスさせるために、本明細書に記載の製剤は、約5.0~5.2未満、または約5.0~約5.19、または約5.0~約5.15、または約5.0~約5.10の範囲、例えば約5.0、約5.05、約5.1、または約5.15、のpHを有することが企図されている。
【0068】
本明細書に記載の研究はまた、アミノ酸凝集阻害剤を含むことによって可能となる独立して安定化し且つ凝集が低減した効果を示した。したがって、アミノ酸凝集阻害剤が含まれる場合、製剤のpHは、約4.9~約5.4、または約5.0~約5.4、または約5.0~約5.2、または約5.0~5.2未満、または約5.0~5.19、または約5.0~約5.15、または約5.0~約5.10の範囲、例えば約5.0、約5.05、約5.1または約5.15、または約5.2であり得ることが企図されている。
【0069】
水性製剤は、緩衝化することができる。使用される場合、緩衝液は有機緩衝液であり得る。緩衝系は、25℃で、pH4~5.5、または4.5~5.5、または4.5~5付近を中心とすることができる。例えば、緩衝系は、25℃でpH5.0~5.2の1pH単位内にpKaを有することができる。このような緩衝系の1つは、酢酸/酢酸塩であり、25℃で約4.75のpKaを有する。別のこのような緩衝系はグルタミン酸/グルタミン酸塩であり、25℃で約4.27のpKaを有する。企図される他の代替緩衝系としては、コハク酸塩(25℃でpKa4.21)、プロピオン酸塩(25℃でpKa4.87)、リンゴ酸塩(25℃でpKa5.13)、ピリジン(25℃でpKa5.23)及びピペラジン(25℃でpKa5.33)などのイオンに基づく系が挙げられる。緩衝液は、ナトリウム塩(または必要に応じて二ナトリウム塩)として、または代わりにカリウム、マグネシウムまたはアンモニウム塩として提供することができることが企図される。緩衝液は、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、及びヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)をベースにすることができる。酢酸塩、グルタミン酸塩、及びコハク酸塩に基づく緩衝液が特に企図され、例えば酢酸塩またはグルタミン酸塩である。
【0070】
酢酸塩またはグルタミン酸塩緩衝液を有する(それ以外は同じ)120mg/mLのデノスマブ製剤中のサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)によるHMWS形成の比較は、37℃で4週間の保存にわたって評価された場合に、緩衝液のタイプによる差異はないことを示した。
【0071】
使用される場合、緩衝液は、製品の貯蔵寿命、例えば、4℃で3年、または25℃で1ヶ月、または25℃で2週間、または25℃で7日間、のための保存条件で、製剤の選択されたpHを維持するのに十分な量で含まれる。緩衝液濃度は、約2mM~約40mM、または約5mM~約20mM、または約10mM~約25mM、または約15mM~約25mMの範囲、例えば、10mM、または15mM、または18mM、または25mMであり得る。例えば、抗RANKLモノクローナル抗体(例えば、デノスマブ)及びフェニルアラニンと共に使用される酢酸塩緩衝液は、約2mM~約30mM、または約16mM~約41mM、または約25mM~約39mM、または約30mM~約34mMの範囲であり得る。換言すれば、70mg/mLを超える濃度(例えば、120mg/mL)に抗体を濃縮するために使用される透析ろ過緩衝液は、5mM~約30mM、または約15mM~約25mMの範囲、または約20mMであり得る。また、自己緩衝化されたアミノ酸安定化製剤を提供することも企図されている。例示的態様において、緩衝液は、製剤の選択されたpHを、例えば約2℃~約8℃で36ヶ月、任意に続いて約20℃~約30℃で約1ヶ月の製品の貯蔵寿命の保存条件で維持するのに十分な量で含まれる。
【0072】
いくつかの態様における水性医薬製剤は、緩衝液を含み、場合により、緩衝液は、25℃で約pH4.0から約pH5.5の範囲を中心とする。いくつかの態様では、緩衝液は、25℃でpH5.0~5.2の1pH単位内のpKaを有する。特定の態様における水性医薬製剤は、約5mM~約60mMの緩衝液、約5mM~約50mMの緩衝液、または約9mM~約45mMの緩衝液(例えば、約15mM~約30mMの緩衝液、例えば約20mM、約25mM緩衝液)を含む。例示的態様において、緩衝液は酢酸塩またはグルタミン酸塩である。
【0073】
製剤はまた、タンパク質凝集に対する1つ以上の安定剤及び他の製剤添加剤を含み得る。このような安定剤及び添加剤には、アミノ酸凝集阻害剤、張性調節剤、界面活性剤、可溶化剤(例えば、N-メチル-2-ピロリドン)、PEGコンジュゲーション、及びシクロデキストリン(例えばCaptisol(登録商標))が含まれるがこれらに限定されないことが企図される。
【0074】
用語「アミノ酸凝集阻害剤」は、任意の所定のアミノ酸がその遊離塩基の形またはそれの塩の形(例えば、アルギニンHCl)で存在するアミノ酸またはアミノ酸の組み合わせ(例えば、混合物またはジペプチドまたは2~10残基を有するオリゴペプチド)、或いはアミノ酸類似体であって、HMWSを減少させるか、またはHMWSの形成を阻害するものを指す。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、及び塩酸塩などが企図される。さらに、塩酸を有するアルギニン塩、グルタミン酸塩、酪酸塩、及びグリコール酸塩が企図される。アミノ酸の組み合わせが使用される場合、アミノ酸の全てはそれらの遊離塩基の形で存在してもよく、全てがそれらの塩の形で存在してもよく、或いはいくらかはそれらの遊離塩基の形で存在し、他はそれらの塩の形で存在してもよい。ジペプチド及びオリゴペプチドに加えて、またはそれに代えて、1つ以上のアミノ酸の混合物、例えばアルギニンとフェニルアラニンの混合物を使用することができる。別の実施形態では、1種類のアミノ酸凝集阻害剤のみが水性医薬製剤中に存在する。例示的態様では、L-アルギニンのみ、またはL-フェニルアラニンのみが製剤中に存在するなど、1つのアミノ酸のみが存在する。
【0075】
電荷を有する側鎖を持つ1つ以上のアミノ酸、例えばアルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸の1つ以上を使用することが企図されている。アミノ酸は、塩基性アミノ酸、例えば、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせから選択することができる。アルギニンが特に企図されている。特定のアミノ酸の任意の立体異性体(すなわち、L、D、またはDL異性体)、またはこれらの立体異性体の組み合わせは、特定のアミノ酸がその遊離塩基の形またはその塩基の形で存在する限り、本発明の方法または製剤で使用され得る。特にL-立体異性体、例えばL-アルギニン、が企図されている。任意に、アミノ酸は正電荷を有する側鎖を持つもの、例えば、アルギニンである。
【0076】
別の態様では、側鎖に芳香族環を有する1つ以上のアミノ酸、例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、またはそれらの組み合わせ、を使用することが企図されている。フェニルアラニンが特に企図されている。
【0077】
別の態様では、1つ以上の疎水性アミノ酸、例えばアラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、またはグリシンを使用することが企図されている。
【0078】
別の態様では、1つ以上の脂肪族疎水性アミノ酸、例えばアラニン、イソロイシン、ロイシンまたはバリンを使用することが企図されている。ロイシンが特に企図されている。
【0079】
凝集減少または凝集阻害の効果を示すアミノ酸類似体も、本発明の方法または製剤において使用することができる。用語「アミノ酸類似体」は、天然に存在するアミノ酸の誘導体を指す。企図されている類似体には、例えば、アミノ及びN-モノエチル及びn-アセチル誘導体が含まれる。企図されている他の類似体には、ジペプチド、または2~10残基を有するオリゴペプチド、例えば、アルギニン-アルギニン及びフェニルアラニン-アルギニンが挙げられる。1つのタイプの実施形態では、n-アセチルアルギニン及びn-アセチルリシンは単独では使用されないが、別のアミノ酸凝集阻害剤と組み合わせて使用され得ることが考慮される。アミノ酸と同様に、アミノ酸類似体は、本発明の方法または製剤において、その遊離塩基の形またはその塩の形のいずれかで使用される。
【0080】
本発明の方法または製剤で使用されるアミノ酸凝集阻害剤(複数可)は、治療活性タンパク質を様々なストレスから保護し、これにより、タンパク質の寿命の間(保存前及び保存中、使用前)のタンパク質またはタンパク質を含む製剤の安定性を増加及び/または維持する。ここで、「ストレス」とは、輸送などの任意の源からの、熱、凍結、pH、光、攪拌、酸化、脱水、サーフェス、せん断、凍結/融解、圧力、重金属、フェノール化合物、変性剤などを含むが、これらに限定されない。熱ストレスが特に企図されている。ストレスという用語は、タンパク質またはタンパク質を含有する製剤の安定性を調節する(すなわち、低下させる、維持する、または増加する)任意の因子を包含する。アミノ酸凝集阻害剤の添加による安定性の増加及び/または維持は、濃度に依存して起こる。すなわち、アミノ酸凝集阻害剤の濃度の増加により、本発明のタンパク質またはそのタンパク質を含む製剤は、そのタンパク質またはそのタンパク質を含有する製剤が通常、アミノ酸凝集阻害剤の非存在下で凝集体形成を示す場合に、タンパク質または製剤の安定性が増加及び/または維持するように導かれる。以下の実施例に示すように、製剤中にアミノ酸凝集阻害剤を含有させることにより、既に形成されたHMWSの量を減少させることもできる。例えば、このようなアミノ酸凝集阻害剤としては、アルギニン及びアルギニン-フェニルアラニンジペプチドが挙げられる。凝集物の形成を減少させるために本方法または製剤に使用される特定のアミノ酸凝集阻害剤の量を決定することにより、タンパク質の安定性を増加させることができるので、したがってタンパク質の全寿命中の製剤の向上した安定性は、本明細書中の開示を考慮して、デノスマブ、または対象の任意の特定のヒト抗RANKLモノクローナル抗体について容易に決定することができる。
【0081】
製剤中のアミノ酸凝集阻害剤の存在は、二量体種の量及びその形成速度を低下させることが示されている。例えば、pH5.2のデノスマブ製剤中にアルギニンを75mMの濃度で含むと、37℃で1ヶ月後の二量体種の量及びその形成速度がそれぞれ、pH5.2でアルギニンを含まない同様の製剤と比較して、約0.3%及び25%低下した。対照的に、ヒト抗RANKLモノクローナル抗体ではないモノクローナル抗体は、アルギニンを含むことによって安定化されず、代わりにHMWSを増加させることが判明した。したがって、本開示の別の方法は、デノスマブまたは別のヒト抗RANKLモノクローナル抗体の製剤中のHMWSを、アミノ酸凝集阻害剤、例えば、アルギニンまたはフェニルアラニンの添加により、低下させる方法である。
【0082】
したがって、例示的実施形態では、水性医薬製剤は、任意にアミノ酸である、アミノ酸凝集阻害剤を含む。例示的態様において、アミノ酸は、D-立体異性体アミノ酸(D-アミノ酸)が企図されるが、L-立体異性体アミノ酸(L-アミノ酸)である。いくつかの態様では、アミノ酸凝集阻害剤は、本明細書では「電荷を有するアミノ酸」とも呼ばれる電荷を有する側鎖を含むアミノ酸を含む。用語「電荷を有するアミノ酸」は、生理学的pHで水溶液中において負の電荷を有する(すなわち脱プロトン化した)或いは正の電荷を有する(すなわちプロトン化した)側鎖を含むアミノ酸を指す。例えば、負の電荷を有するアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ、一方、正の電荷を有するアミノ酸としては、例えば、アルギニン、リシン及びヒスチジンが挙げられる。電荷を有するアミノ酸としては、20個のコードされたアミノ酸の中の電荷を有するアミノ酸、ならびに非定型または非天然または非コードのアミノ酸が挙げられる。したがって、例示的態様において、アミノ酸凝集阻害剤は、正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸である。例示的な例では、正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸は、式Iまたは式IIの側鎖構造を含み、
【0083】
【化1】
式中、nは1~7であり、R
1及びR
2のそれぞれは、独立して、H、C
1-C
18アルキル、(C
1-C
18アルキル)OH、(C
1-C
18アルキル)NH
2、NH、NH
2(C
1-C
18アルキル)SH、(C
0-C
4アルキル)(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
0-C
4アルキル)(C
2-C
5複素環)、(C
0-C
4アルキル)(C
6-C
10アリール)R
7及び(C
1-C
4アルキル)(C
3-C
9ヘテロアリール)からなる群から選択され、R
7はHまたはOHであり、任意にR
1及びR
2の1つは遊離アミノ基(-NH
3
+)であり、
【0084】
【化2】
式中、mは1~7であり、R
3及びR
4のそれぞれは、独立して、H、C
1-C
18アルキル、(C
1-C
18アルキル)OH、(C
1-C
18アルキル)NH
2、(C
1-C
18アルキル)SH、(C
0-C
4アルキル)(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
0-C
4アルキル)(C
2-C
5複素環)、(C
0-C
4アルキル)(C
6-C
10アリール)R
8及び(C
1-C
4アルキル)(C
3-C
9ヘテロアリール)からなるA群から選択され、R
8はHまたはOHであり、R
5は任意に存在し、存在する場合はA群から選択され、任意にR
3及びR
4及びR
5のそれぞれはHである。
【0085】
例示的態様において、正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸は、式Iの側鎖構造を含み、nは2~4の範囲である。代替的または追加の態様において、R1はNHまたはNH2である。例示的態様において、R2はNH2またはNH3
+である。例示的な例において、正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸はアルギニンである。例示的態様では、正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸は、式IIの側鎖構造を含み、mは3~5の範囲である。いくつかの態様では、R3及びR4のそれぞれはHである。ある場合には、R5が存在し、任意にHである。ある場合には、正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸はリシンである。正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸は、いくつかの態様では塩として、任意に塩酸塩(HCl)塩として、製剤中に存在する。したがって、例示的態様において、水性医薬組成物は、L-アルギニンHClまたはL-リシンHClを含む。
【0086】
例示的態様において、アミノ酸凝集阻害剤は芳香族アミノ酸である。いくつかの例では、芳香族アミノ酸は、フェニルまたはインドールを含む。例示的態様において、芳香族アミノ酸は、アルファ炭素とフェニルまたはインドールとの間にC1~C6アルキル鎖(例えば、C1~C3アルキル鎖)を含む。例示的な例では、芳香族アミノ酸はL-フェニルアラニンである。他の例では、芳香族アミノ酸はL-トリプトファンである。
【0087】
例示的態様では、アミノ酸凝集阻害剤は疎水性アミノ酸である。疎水性は、当該技術分野で公知の疎水性スケールのいずれか1つに従って測定またはスコア付けすることができる。一般に、スコアがプラスであるほど、アミノ酸はより疎水性である。いくつかの例では、疎水性は、Kyte及びDoolittle疎水性スケール(Kyte J,Doolittle RF(May 1982).“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”.J.Mol.Biol.157(1):105-32.)でスコア付けされる。いくつかの態様では、疎水性アミノ酸は、Kyte及びDoolittle疎水性スケールで約2.5を超えるスコアを有する。特定の態様における疎水性アミノ酸は、分枝鎖または直鎖のC2~C12アルキル、またはC4~C8シクロアルキル、窒素ヘテロ原子を含むC4~C8複素環であって、任意に、イミダゾール、ピロール、またはインドールである、複素環を含む側鎖を含む。本明細書の目的のために、用語「シクロアルキル」は、炭素二環または三環などの任意の炭素環を包含し得る。
【0088】
例示的態様において、疎水性アミノ酸はC3~C8アルキルを含み、任意に疎水性アミノ酸は分枝C3アルキルまたは分枝C4アルキルを含む。疎水性アミノ酸は、特定の態様において、L-バリン、L-ロイシンまたはL-イソロイシンである。
【0089】
アミノ酸凝集阻害剤は、増大した安定性を提供するために有効な量で使用され、約10mM~約200mMの範囲、例えば約30mM~約120mMの範囲、または約38mM~約150mM、または約38mM~約113mM、または約38mM~約75mMの範囲、例えば、約10mM、約38mM、約75mM、約113mM、または約150mM、の濃度で使用することができる。例示的態様において、水性医薬製剤は、約5mM~約300mMのアミノ酸凝集阻害剤、任意に約25mM~約90mMのアミノ酸凝集阻害剤を含む。いくつかの態様では、水性医薬製剤は、アミノ酸凝集阻害剤が正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸、任意にL-アルギニンである場合には、約5mM~約150mM(例えば、約10mM~約150mM、約15mM~約150mM、約20mM~約150mM、約25mM~約150mM、約5mM~約140mM、約5mM~約130mM、約5mM~約120mM、約5mM~約110mM、約5mM~約100mM、約5mM~約90mM)のアミノ酸凝集阻害剤を含む。いくつかの態様では、水性医薬製剤は、アミノ酸凝集阻害剤が正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸、任意にL-アルギニンである場合には、約30mM~約80mM(例えば、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM)のアミノ酸凝集阻害剤を含む。
【0090】
いくつかの態様では、水性医薬製剤は、アミノ酸凝集阻害剤が芳香族アミノ酸、任意にL-フェニルアラニンである場合には、約5mM~約180mM(例えば、約10mM~約180mM、約15mM~約180mM、約20mM~約180mM、約25mM~約180mM、約5mM~約170mM、約5mM~約170mM、約5mM~約160mM、約5mM~約150mM、約5mM~約140mM、約5mM~約130mM、約5mM~約120mM、約5mM~約110mM)のアミノ酸凝集阻害剤を含む。例示的な例では、水性医薬製剤は、アミノ酸凝集阻害剤が芳香族アミノ酸、任意にL-フェニルアラニンである場合には、約5mM~約100mM(例えば、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM)のアミノ酸凝集阻害剤、任意に約20mM~約50mMのアミノ酸凝集阻害剤を含む。
【0091】
任意に、水性凝集製剤は、アミノ酸凝集阻害剤が、疎水性アミノ酸、任意にL-バリン、L-イソロイシンまたはL-ロイシンである場合、約5mM~約300mMのアミノ酸凝集阻害剤を含む。任意に、水性医薬製剤は、アミノ酸凝集阻害剤が、疎水性アミノ酸、任意にL-バリン、L-イソロイシンまたはL-ロイシンである場合、約5mM~約200mM(例えば、約10mM~約200mM、約20mM~約200mM、約30mM~約200mM、約40mM~約200mM、約50mM~約200mM、約60mM~約200mM、約70mM~約200mM、約80mM~約200mM、約90mM~約200mM、約100mM~約200mM、約5mM~約290mM、約5mM~約280mM、約5mM~約270mM、約5mM~約260mM、約5mM~約250mM、約5mM~約240mM、約5mM~約230mM、約5mM~約220mM、約5mM~約210mM)のアミノ酸凝集阻害剤を含み、任意に、アミノ酸凝集阻害剤が、疎水性アミノ酸、任意にL-バリン、L-イソロイシンまたはL-ロイシンである場合、約20mM~約50mMのアミノ酸凝集阻害剤を含む。例示的態様において、水性医薬組成物は、約30mM~約80mMのL-アルギニン塩酸塩、約20mM~約50mMのL-フェニルアラニン、約20mM~約50mMのL-トリプトファン、約30mM~約80mMのL-リシン塩酸塩、約20mM~約50mMのL-ロイシン、約20mM~約50mMのL-イソロイシン、約20mM~約50mMのL-バリン、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0092】
例示的態様において、アミノ酸凝集阻害剤の濃度は、抗体とのモル比である。いくつかの態様において、アミノ酸凝集阻害剤の抗RANKL抗体に対するモル比は、アミノ酸凝集阻害剤が芳香族アミノ酸、任意にL-フェニルアラニンである場合、約10~約200(例えば、約25~約150、約50~約100)である。任意に、モル比は、約20~約90である。例示的態様において、アミノ酸凝集阻害剤の抗RANKL抗体に対するモル比は、アミノ酸凝集阻害剤が正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸、任意にL-アルギニンである場合、約20~300である。任意に、モル比は約45~約180である。
【0093】
界面活性剤は、両親媒性(極性頭部及び疎水性尾部を有する)である界面活性剤である。界面活性剤は界面に優先的に蓄積し、結果として界面張力を低下させる。界面活性剤は、任意に、製剤に含めることができる。界面活性剤の使用はまた、大きなタンパク質性粒子の形成を軽減するのに役立ち得る。
【0094】
1つのタイプの実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、アルキルアリールポリエーテル、例えば、オキシエチル化アルキルフェノール(例えば、Triton(商標)X-100)及びポロキサマー(例えばPluronics(登録商標)、例えばPluronic(登録商標)F68)、ならびに界面活性剤のクラス内か、或いは界面活性剤の複数のクラスの中における、前記いずれかの組み合わせを挙げることができる。ポリソルベート20及びポリソルベート80が特に企図されている。
【0095】
約0.004%(w/v)~約0.1%(w/v)(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80の場合)の範囲の界面活性剤濃度は、例えば約0.004%~約0.05%、または約0.004%~約0.02%、または約0.01%が好適である。例示的態様において、製剤は、少なくとも約0.004%(w/v)の界面活性剤を、任意に約0.15(w/v)%未満を含む。例示的態様では、約0.005(w/v)%~約0.015(w/v)%の界面活性剤が、製剤中に存在し、任意に約0.005(w/v)%、約0.006(w/v)%、約0.007(w/v)%、約0.008(w/v)%、約0.009(w/v)%、約0.010(w/v)%、約0.011(w/v)%、約0.012(w/v)%、約0.013(w/v)%、または約0.014(w/v)%が存在する。
【0096】
安定化された水性製剤は、非経口、特に皮下を含む、任意の許容される経路による投与に適しているということができる。例えば、皮下投与は、上腕、大腿上部または腹部に行うことができる。他の経路としては、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、節内及び脾臓内が挙げられる。皮下経路が好ましい。
【0097】
溶液が対象への投与を意図した形態である場合、それは意図された投与部位と等張性になるように作製することができる。例えば、オスモル濃度は、約270~約350mOsm/kG、または約285~約345mOsm/kG、または約300~約315mOsm/kGの範囲であり得る。例えば、溶液が非経口投与のための形態である場合、それは血液と等張性であり得る(約300mOsm/kGオスモル濃度)。例示的態様において、水性医薬製剤は、約200mOsm/kg~約500mOsm/kg、または約225mOsm/kg~約400mOsm/kg、または約250mOsm/kg~約350mOsm/kgの範囲のオスモル濃度を有する。
【0098】
例示的態様では、水性医薬製剤は、約500μS/cm~約5500μS/cmの範囲の導電率を有し、任意に、製剤が正電荷を有する側鎖を含むアミノ酸を含む場合、導電率は約2500μS/cm~約5500μS/cmの範囲であり、或いは製剤が芳香族アミノ酸を含むか、アミノ酸凝集阻害剤を欠いている場合、導電率は約500μS/cm~約2000μS/cmの範囲である。5℃で約6cP以下の粘度を有し、任意に約4.5cP~約5.5cPの粘度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。特定の態様における水性医薬製剤は、25℃で約13cP未満、任意に約2.0cP~約10cP、任意に約2.5cP~約4cPの粘度を有する。
【0099】
張性調節剤、すなわち張性調整剤は、当該技術分野において公知であり、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、乳酸ナトリウム)、糖(例えば、デキストラン、デキストロース、ラクトース、トレハロース)、及び糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、プロピレングリコール)などの化合物を含む。特定の態様では、張性調節剤は、ソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。例示的な例では、張性調節剤はソルビトールである。ソルビトールを、例えば0.1%(w/v)~5%(w/v)、または1.2%(w/v)~5%(w/v)の範囲、例えば3.6%(w/v)、4.6%(w/v)または4.7%(w/v)で使用することができる。任意に、製剤は、約1.0%(w/w)~約5.0%(w/w)の張性調節剤を含む。例えば、製剤は、約2.0%(w/w)~約5.0%(w/w)のソルビトール、または約3.5%(w/w)~約5.0%(w/w)のソルビトール、または約4.0%(w/w)~約5.0%(w/w)のソルビトールを含む。いくつかの態様では、製剤はどのようなソルビトールを含まず、すなわちソルビトールを含んでいない。例示的態様において、製剤は、いかなる張性調節剤も含まない。
【0100】
安定性に悪影響を及ぼさない限り、当該技術分野で公知の他の添加剤を製剤に使用することができる。凍結/解凍安定性を提供することを含めて、タンパク質を凝集から保護するために糖及びポリオールを使用することができる。このような化合物としては、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、エリスリトール、カプリレート、トリプトファネート、サルコシド、及びグリシンが挙げられる。凍結乾燥製剤を調製するための安定剤、例えば安定化糖、例えば、トレハロース及びスクロースなどの二糖類が挙げられる。凍結乾燥製剤はまた、当該技術分野で知られているように増量剤を含むことができる。タンパク質安定化のための当該分野で公知の他の添加剤としては、可溶化剤(例えば、N-メチル-2-ピロリドン)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びシクロデキストリン(例えば、Captisol(登録商標))が挙げられる。薬学的に許容される酸及び塩基、例えば水酸化ナトリウム、を使用して、溶液のpHを調節することができる。
【0101】
非経口投与の場合、製剤は、薬学的に許容されるビヒクル中に、デノスマブまたは別のヒト抗RANKLモノクローナル抗体を、追加の治療剤を伴ってまたは伴わないで含む、発熱物質を含まない、非経口的に許容される滅菌水溶液の形態であり得る。特定の実施形態では、非経口注射用のビヒクルは、デノスマブまたは別のヒト抗RANKLモノクローナル抗体が、少なくとも1つのさらなる治療剤を伴ってまたは伴わずに、滅菌等張溶液として処方される滅菌蒸留水である。製剤は、薬学的に許容される添加剤、例えば、USP(米国薬局方)グレードの添加剤を含む。
【0102】
「防腐剤」は、その中の細菌の作用を低下させるために、医薬製剤に含められ得る化合物であり、これにより、例えば、多用途製剤の製造を容易にする。防腐剤の例には、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの混合物)及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。他の種類の防腐剤には、フェノール、ブチル及びベンジルアルコール、メチル及びプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾールなどの芳香族アルコールが含まれる。或いは、製剤は防腐剤を含まなくてもよい。例えば、単回使用剤形で提供される場合の製剤は、防腐剤を含まなくてもよい。
【0103】
製剤はその水性形態で本明細書に記載されているが、安定化された製剤は引き続き凍結乾燥して凍結乾燥物を調製することもできる。したがって、文脈に特段の指示がない限り、製剤への言及及びその使用方法は、安定化された水溶液から生じる凍結乾燥物を含むことが企図されている。
【0104】
インビボ投与に使用される医薬製剤は、典型的には無菌である。特定の実施形態において、これは、滅菌ろ過膜によるろ過によって達成され得る。特定の実施形態では、非経口組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば静脈内溶液バッグ、または皮下注射針で穿孔可能な栓を有するバイアル、またはプレフィルドシリンジ、に入れられる。特定の実施形態では、製剤は、すぐに使用できる形態、または投与前に再構成されるまたは希釈される形態(例えば、凍結乾燥された形態)のいずれかで保存され得る。
【0105】
特定の実施形態では、本発明は、単回用量の投与単位を作製するためのキットに関する。特定の実施形態では、キットは、それぞれ、本明細書に記載の溶液製剤から作製されたデノスマブまたは他のヒト抗RANKLモノクローナル抗体の乾燥製剤を有する第1の容器と、滅菌水または水溶液を有する第2の容器の両方を含むことができる。本発明の特定の実施形態では、単一及び複数のチャンバーを備えたプレフィルドシリンジ(例えば、液体注射器及びリオシリンジ)を含むキットが含まれる。
【0106】
本明細書に記載の安定化された製剤は、1種以上の追加の治療薬、例えば、カルシウム及びビタミンD化合物、と共に使用され得る。本明細書に記載の安定化製剤は、追加の治療薬による治療を受けている患者に投与することができ、または本明細書に記載の安定化製剤を追加の治療薬と同時投与することができる。
【0107】
安定化製剤は、本明細書に記載のその態様及び実施形態のいずれにおいても、デノスマブまたは別のヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に応答する任意の疾患を予防または治療するために使用することができる。このような使用及び関連する方法には、以下に記載する態様及び実施形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
1つの態様において、製剤は、骨関連事象(SRE)の予防を必要とする患者において骨関連事象(SRE)を予防するために使用することができ、その使用は本明細書に記載の安定化製剤を有効量で投与することを含む。SREは、例えば、病理学的骨折、骨への放射線療法、骨への手術、及び脊髄圧迫からなる群から選択することができる。患者は、固形腫瘍からの骨転移を有する患者であり得る。固形腫瘍は、例えば、乳癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌及び腎細胞癌のうちの1つ以上であり得る。製剤の量は、クレアチニンについて補正した骨代謝マーカー尿N末端テロペプチド(uNTx/Cr)を、任意に少なくとも80%低下させるのに有効であり得る。患者は多発性骨髄腫の患者であり得る。
【0109】
別の態様では、製剤は、骨の巨細胞腫の患者を治療するために使用することができ、その使用は本明細書に記載の安定化製剤を有効量で投与することを含む。1つのタイプの実施形態では、患者は、再発性であり、切除不能であるか、または外科的切除が重度の罹患率をもたらす可能性が高い、骨の巨細胞腫を有する。患者は、例えば、成人または骨格の成熟した青年であってもよい。
【0110】
別の態様では、製剤は、骨悪性腫瘍の高カルシウム血症患者を治療するために使用することができ、その使用は本明細書に記載の安定化製剤の有効量を投与することを含む。一態様では、悪性腫瘍はビスホスホネート治療に対して不応性であり得る。この方法または使用は、患者の血清カルシウムを約11.5mg/dL以下のレベルに低減または維持するのに有効な量の製剤を投与することを含むことができる。
【0111】
別の態様では、製剤は、骨粗鬆症の治療を必要とする患者において骨粗鬆症を治療するために使用することができ、その使用は本明細書に記載の安定化製剤の有効量を投与することを含む。例えば、患者は、骨折の危険性が高い閉経後の女性であってもよい。別のタイプの実施形態では、患者は骨折の危険性の高い男性であり得る。
【0112】
別の態様では、製剤は、骨量の増加を必要とする患者において骨量を増加させるために使用され、その使用は本明細書に記載の安定化製剤の有効量を投与することを含む。例えば、投与される製剤の量は、新しい脊椎骨折及び/または非脊椎骨折の発生率を減少させるのに有効な量であり得る。別のタイプの実施形態では、投与される製剤の量は、骨吸収を減少させるのに有効な量であり得る。別のタイプの実施形態では、製剤の量は、腰椎、全股関節及び大腿骨頸部から選択される少なくとも1つの領域において、患者の骨密度を増加させるのに有効な量であり得る。別のタイプの実施形態では、製剤の量は、患者の皮質骨及び/または骨梁における骨量を増加させるのに有効な量であり得る。別のタイプの実施形態では、製剤の量は、骨吸収マーカー血清1型C-テロペチド(CTX)を減少させるのに有効な量であり得る。それを必要とする患者は、場合によっては骨粗鬆症を有し得る。別のタイプの実施形態では、それを必要とする患者は、乳癌のアジュバントアロマターゼ阻害剤療法を受けている骨折の危険性が高い女性であり得る。別のタイプの実施形態では、それを必要とする患者は、非転移性前立腺癌のアンドロゲン除去療法を受けている骨折の危険性が高い男性であり得る。別のタイプの実施形態では、それを必要とする患者は、骨折の危険性が高い骨粗鬆症を有する男性であり得る。
【0113】
別の態様において、製剤は、アジュバント/術前補助療法を受けている疾患の再発のリスクが高い早期乳癌を有する閉経後女性のためのアジュバント治療として使用することができる。
【0114】
別の態様において、製剤は、白金ベースの化学療法と組み合わせて、転移性非小細胞肺癌患者の第一選択治療として使用することができる。
【0115】
別の態様では、製剤を特発性声門下狭窄(ISS)の治療に使用することができる。
【0116】
別の態様において、製剤は、BRCA-1突然変異した健康な女性における乳癌及び卵巣癌の予防に使用することができる。
【0117】
任意に、製剤は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。任意に、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント経路、例えばCTLA4、LAG3、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7H4、BTLA、SLAM、2B4、CD160、KLRG-1またはTIM3において機能するタンパク質に特異的である。任意に、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4、LAG3、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7H4、BTLA、SLAM、2B4、CD160、KLRG-1またはTIM3に特異的な抗体、その抗原結合フラグメント、または抗体タンパク質産物である。このような免疫チェックポイント阻害剤には、アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-936558、MK3475、CT-011、AM-224、MDX-1105、IMP321、MGA271が含まれるが、これらに限定されない。PD-1阻害剤としては、例えば、ペンブロリズマブ及びニボルマブが挙げられる。PD-L1阻害剤には、例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びドゥバルマブが挙げられる。CTLA4阻害剤としては、例えば、イピリムマブが挙げられる。別の態様では、製剤を、骨転移を有するメラノーマ患者を治療するために、任意にPD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ)と組み合わせて使用することができる。別の態様では、製剤は、乳癌患者を治療するために、任意に、イピリムマブなどのCTLA4阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0118】
別の態様において、製剤は、例えば、副甲状腺機能亢進症における、または二次動脈瘤性骨嚢胞を伴う、巨大細胞が豊富な腫瘍を治療するのに使用される。
【0119】
別の態様において、製剤は、進行性の転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を治療するために使用することができる。別の態様において、製剤は、去勢感受性前立腺癌を治療するために使用され得る。別の態様において、製剤は、ホルモン耐性前立腺癌を治療するために使用され得る。
【0120】
別の態様において、製剤は、転移性乳癌(mBC)を治療するために使用することができる。別の態様では、製剤は、術前乳癌を処置するために使用され得る。別の態様において、製剤は、早期乳癌を治療するために使用することができる。他の態様において、製剤は、ホルモン受容体陰性、RANK陽性またはRANK陰性の原発性乳癌を治療するために使用され得る。別の態様では、製剤は、更年期後のHER2陰性乳癌を治療するために使用することができる。
【0121】
別の態様では、製剤は、例えば高齢患者における、骨髄異形成症候群を治療するために使用することができる。
【0122】
別の態様において、製剤は、がん治療によって誘発される骨損失(CTIBL)を治療するために使用され得る。
【0123】
別の態様において、製剤は、子宮頸部の子宮腫瘍を処置するために使用され得る。
【0124】
別の態様では、製剤は、免疫療法の有無にかかわらず患者に免疫調節効果を誘導するために使用することができる
【0125】
別の態様では、製剤は、骨粗鬆症、パジェット病、骨髄炎、高カルシウム血症、骨減少症、骨壊死及び関節リウマチに関連する骨損失を予防または治療するために使用することができる。別の態様において、製剤は、骨損失を伴う炎症状態を予防または治療するために使用され得る。別の態様において、製剤は、骨損失を伴う自己免疫状態を予防または治療するために使用され得る。別の態様において、本製剤は、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌、腎臓癌、肺癌、食道癌、直腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌及び胃腸癌、多発性骨髄腫、リンパ種及びホジキン病などのがんに関連する骨損失を予防または治療するために使用され得る。
【0126】
製剤は、任意の適切なタイミングのスケジュールで投与することができる。1つの実施形態では、投与スケジュールは4週間に1回である。任意に、投与は、治療の最初の月の8日目及び15日目の投与を含むことができる。別のタイプの実施形態では、投与は6ヶ月に1回のスケジュールで行うことができる。6ヶ月に1回のスケジュールは、例えば、骨粗鬆症及び骨量増加のための使用が企図されている。企図されているその他の維持用量は、3週間ごと、3ヶ月ごと、及び6週間ごとである。
【0127】
いくつかの態様において、水性医薬製剤は、多発性骨髄腫または固形腫瘍からの骨転移を有する患者を治療するために使用される。特定の態様において、製剤は、上腕、大腿上部、または腹部の皮下注射として、4週間ごとに約120mgの用量で投与される。
【0128】
いくつかの態様において、水性医薬製剤は、骨の巨大細胞腫の患者を治療するために使用される。特定の態様では、製剤は、4週間ごとに約120mgの用量で投与され、治療の最初の月の8日目及び15日目に追加の120mg用量が投与される。いくつかの態様では、製剤は、患者の上腕、大腿上部または腹部の皮下に投与される。いくつかの場合、カルシウム及びビタミンDを、低カルシウム血症を治療または予防するために患者に投与する。
【0129】
いくつかの態様において、水性医薬製剤は、悪性腫瘍の高カルシウム血症患者を治療するために使用される。特定の態様では、製剤は4週間ごとに約120mgの用量で投与され、治療の最初の月の8日目及び15日目に追加の120mg用量が投与される。いくつかの態様では、製剤は、患者の上腕、大腿上部または腹部の皮下に投与される。
【0130】
いくつかの態様において、水性医薬製剤は、骨折の危険性が高い骨粗鬆症を有する閉経後女性を治療するために使用されるか、または非転移性前立腺癌のアンドロゲン除去療法を受けている骨折の危険性の高い男性、または乳癌のためのアジュバントアロマターゼ阻害剤療法を受けている骨折の危険性の高い女性に、骨量を増加させるために使用される。いくつかの態様では、水性医薬製剤は、上腕、大腿上部または腹部の皮下注射で、ヘルスケア専門家によって、6ヶ月ごとに60mgの用量で投与される。いくつかの態様では、患者はまた、毎日1000mgのカルシウムと毎日少なくとも400IUのビタミンDを摂取するように指示される。
【0131】
本開示の製剤の1つのタイプは、デノスマブ、酢酸塩及びアルギニンを含んでいる。アルギニンは任意にL-アルギニンである。アルギニンは任意にL-アルギニン塩酸塩である。製剤は、任意にソルビトールを含むことができる。製剤は、任意にポリソルベートを含むことができる。ポリソルベートは任意にポリソルベート20であり得る。pHは任意に約5.0~約5.2、または5.2未満であり得る。
【0132】
本開示による製剤の別のタイプは、デノスマブ、酢酸塩及びフェニルアラニンを含有する。製剤は、任意にソルビトールを含むことができる。製剤は、任意にポリソルベートを含むことができる。ポリソルベートは任意にポリソルベート20であり得る。pHは任意に約5.0~約5.2、または5.2未満であり得る。例えば、製剤は、pH5.1で、約108mg/mL~約132mg/mLの濃度のデノスマブ、約28.8mM~約35.2mMの酢酸塩、33.3mM~約40.7mMのフェニルアラニン、3.51%(w/v)~約4.29%(w/v)のソルビトール、及び約0.009%(w/v)~約0.011%(w/v)のポリソルベート20を含むことができ、そして任意にPFS中に含有させることができ、PFSは任意に約1mLまたは約1mL未満(例えば、約0.5mL)の製剤を含有する。例えば、製剤は、pH5.1で、120mg/mLの濃度のデノスマブ、32mMの酢酸塩、37mMのフェニルアラニン、3.9%(w/v)のソルビトール及び0.01%(w/v)のポリソルベート20を含むことができ、そして任意にPFS中に含有させることができ、PFSは任意に約1mLまたは約1mL未満(例えば、約0.5mL)の製剤を含有する。この製剤は、pH4.7で、20mMの酢酸塩、4.2%(w/v)のソルビトール、及び40mMのフェニルアラニンを含有する透析ろ過緩衝液を用いてデノスマブを濃縮することによって作製することができる。
【0133】
本開示の製剤の別のタイプは、デノスマブ、グルタミン酸塩及びアルギニンを含有する。アルギニンは任意にL-アルギニンである。アルギニンは任意にL-アルギニン塩酸塩である。製剤は、任意にソルビトールを含むことができる。製剤は、任意にポリソルベートを含むことができる。ポリソルベートは任意にポリソルベート20であリ得る。pHは任意に約5.0~約5.2、または5.2未満であり得る。
【0134】
本開示の製剤の別のタイプは、デノスマブ、酢酸酸塩、アルギニン及びフェニルアラニンを含有する。製剤は、任意にソルビトールを含むことができる。製剤は、任意にポリソルベートを含むことができる。ポリソルベートは任意にポリソルベート20であリ得る。pHは任意に約5.0~約5.2、または5.2未満であり得る。
【0135】
本開示の製剤の別のタイプは、デノスマブ、グルタミン酸塩、アルギニン及びフェニルアラニンを含有する。アルギニンは任意にL-アルギニンである。アルギニンは任意にL-アルギニン塩酸塩である。製剤は、任意にソルビトールを含むことができる。製剤は、任意にポリソルベートを含むことができる。ポリソルベートは任意にポリソルベート20であリ得る。pHは任意に約5.0~約5.2、または5.2未満であり得る。
【0136】
本開示の製剤は、任意の適切な方法によって作製することができる。1つのタイプの方法では、抗RANKLモノクローナル抗体(例えばデノスマブ)を含有する溶液を70mg/mL未満の濃度で調製することができ、本明細書に記載のアミノ酸凝集阻害剤の適切な量を溶液に添加することができ、次いで、溶液を、本明細書に記載の70mg/mLを超える量、例えば、120mg/mLに濃縮することができる。任意に、溶液を最初に過剰に濃縮することができ、すなわち、最終目標濃度よりも高い抗RANKLモノクローナル抗体(例えば、デノスマブ)の濃度にすることができ、次いで過剰濃縮溶液を希釈、例えばpH調整された緩衝溶液を用いて希釈して最終目標濃度及びpHにすることができる。例えば、過剰濃度は、130mg/mL~300mg/mLまたは180mg/mL~300mg/mLの範囲の抗RANKLモノクローナル抗体(例えば、デノスマブ)の量をもたらし得る。濃縮前のデノスマブの初期濃度は特に限定されず、例えば、約1mg/mL、または約2mg/mL、または約5mg/mL、または約8mg/mL、または約10mg/mL、または約20mg/mL、または約30mg/mL、または約40mg/mL、または約50mg/mL、または約60mg/mLまたは約70mg/mL、またはこのような濃度で囲まれた範囲、例えば約1mg/mL~約70mg/mL、または約1mg/mL~約10mg/mLであり得る。
【0137】
製剤の濃縮は、任意の適切な方法によって実施することができる。1つの態様では、濃縮プロセスは遠心分離を含むことができる。別の態様では、濃縮プロセスは、限外ろ過を含み得る。
【0138】
製剤へのアミノ酸凝集阻害剤の導入は、任意の適切な方法によって行うことができる。例えば、アミノ酸凝集阻害剤は、以下の実施例に記載されているように、製剤への単純な添加(スパイク)によって製剤に導入することができる。別の方法では、アミノ酸凝集阻害剤は、例えば以下の実施例に記載されているように、アミノ酸凝集阻害剤を含有する緩衝液に対する透析ろ過によって製剤に導入することができる。アミノ酸凝集阻害剤は、抗RANKLモノクローナル抗体を70mg/mL超に濃縮する前または後に製剤に導入することができる。以下の実施例に示すように、アミノ酸凝集阻害剤を濃縮前に溶液に添加することは、濃縮処理中に凝集を抑制するので有益である。
【0139】
したがって、本開示は、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む安定な水性医薬製剤を作製する方法を提供する。例示的な例では、この方法は、70mg/mLを超える濃度の抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を、アミノ酸凝集阻害剤、緩衝剤、界面活性剤及び場合により張性調節剤と混合することを含む。抗体または抗原結合部分は、本明細書に記載されるもののいずれかであり得、抗体またはその抗原結合部分の濃度は、本明細書の教示と一致し得る。アミノ酸凝集阻害剤は、本明細書に記載のもののいずれかであり得る。例えば、アミノ酸凝集阻害剤は、正電荷を有するアミノ酸、芳香族アミノ酸、または疎水性アミノ酸であってもよい。アミノ酸凝集阻害剤は、本明細書に記載の抗体とモル比で存在し得る。凝集阻害剤、界面活性剤、張性調節剤、及び緩衝剤の量及び選択は前述の通りである。本開示はまた、本明細書に記載の製造方法によって製造された製剤を提供する。
【0140】
本明細書の開示による製剤は、本明細書に記載の抗RANKLモノクローナル抗体(例えば、デノスマブ)の高濃度溶液、例えば70mg/mL超、すなわち120mg/mLの濃度を有するもの、をpH調整することを含むことができる。別の態様では、製剤は、抗RANKLモノクローナル抗体(例えば、デノスマブ)の低濃度溶液をpH調整し、次いで溶液を所望のより高い最終濃度に濃縮することによって調製することができる。適切なpH調節剤は当該技術分野において公知である。
【0141】
実施形態
【0142】
以下は、特定の企図された実施形態のリストである:
1.70mg/mLを超える濃度及び約5.0から5.2未満の範囲のpHを有するヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む水性医薬製剤。
【0143】
2.約5.0~5.19、または約5.0~約5.15、または約5.0~約5.1の範囲のpHを有する、実施形態1に記載の製剤。
【0144】
3.約5.1のpHを有する、実施形態2に記載の製剤。
【0145】
4.アミノ酸凝集阻害剤をさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の製剤。
【0146】
5.ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分とアミノ酸凝集阻害剤の混合物を含む水性医薬製剤。
【0147】
6.約5.0~約5.4、または約5.0~約5.2、または約5.0~5.2未満、または約5.0~5.19、または約5.0~約5.15、または約5.0~約5.1の範囲のpHを有する、実施形態5に記載の製剤。
【0148】
7.約5.1のpHを有する、実施形態6に記載の製剤。
【0149】
8.pH緩衝剤をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0150】
9.前記抗体またはその抗原結合部分の濃度が約10mg/mL~約200mg/mLの範囲である、実施形態5~8のいずれか1つに記載の製剤。
【0151】
10.前記抗体またはその抗原結合部分の濃度が70mg/mL超~約200mg/mLの範囲である、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0152】
11.前記抗体またはその抗原結合部分の濃度が約100mg/mL~約140mg/mLの範囲である、実施形態10に記載の製剤。
【0153】
12.前記抗体またはその抗原結合部分の濃度が約120mg/mLである、実施形態11に記載の製剤。
【0154】
13.前記抗体がデノスマブまたはそのバイオシミラーである、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0155】
14.前記抗体がデノスマブである、実施形態13に記載の製剤。
【0156】
15.前記アミノ酸凝集阻害剤が、1つ以上のアミノ酸、そのジペプチド、または2~10個の残基を有するオリゴペプチドから選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0157】
16.前記アミノ酸凝集阻害剤が、少なくとも2つのアミノ酸の混合物を含む、実施形態15に記載の製剤。
【0158】
17.前記アミノ酸がアルギニン及びフェニルアラニンを含む、実施形態16に記載の製剤。
【0159】
18.前記アミノ酸凝集阻害剤が、1つ以上の疎水性アミノ酸、そのジペプチド、または2~10個の残基を有し且つ1つ以上の疎水性アミノ酸を含むオリゴペプチドから選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0160】
19.前記アミノ酸凝集阻害剤が、電荷を有する側鎖を持つ1つ以上のアミノ酸、そのジペプチド、または2~10個の残基を有し且つ電荷を有する側鎖を持つ1つ以上のアミノ酸を含有するオリゴペプチドから選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0161】
20.前記アミノ酸凝集阻害剤が、1つ以上の塩基性アミノ酸、そのジペプチド、または2~10個の残基を有し且つ1つ以上の塩基性アミノ酸を含有するオリゴペプチドから選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0162】
21.前記アミノ酸凝集阻害剤が、1つ以上のジペプチドから選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0163】
22.前記アミノ酸凝集阻害剤が、2~10個のアミノ酸残基を有する1つ以上のオリゴペプチドから選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0164】
23.前記アミノ酸凝集阻害剤がアルギニン残基を含むか、または前記アミノ酸凝集阻害剤がアルギニンを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0165】
24.前記アミノ酸凝集阻害剤がアルギニン-フェニルアラニンジペプチドを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0166】
25.前記アミノ酸凝集阻害剤が、約10mM~約200mMの範囲の濃度で前記製剤中に存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤
【0167】
26.界面活性剤をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0168】
27.前記界面活性剤が、1つ以上のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、または1つ以上のアルキルアリールポリエーテル、例えば、オキシエチル化アルキルフェノール(例えば、Triton(登録商標)X-100)、または1つ以上のポロキサマー(例えばPluronics(登録商標)、例えばPluronic(登録商標)F68)、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態26に記載の製剤。
【0169】
28.前記界面活性剤が約0.004%(w/v)~約0.1%(w/v)の範囲の濃度で存在する、実施形態26または27に記載の製剤。
【0170】
29.前記界面活性剤が約0.01%(w/v)の濃度で存在する、実施形態28に記載の製剤。
【0171】
30.さらに緩衝剤を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0172】
31.前記緩衝剤は、25℃で約pH4~約pH5.5の範囲を中心とする、実施形態30に記載の製剤。
【0173】
32.前記緩衝剤が、25℃においてpH5.0~5.2の1pH単位内にpKaを有する、実施形態30または31に記載の製剤。
【0174】
33.前記緩衝剤が酢酸塩を含む、実施形態30~32のいずれか1つに記載の製剤。
【0175】
34.前記緩衝剤がグルタミン酸塩を含む、実施形態30~32のいずれか1つに記載の製剤。
【0176】
35.さらに張性調節剤を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0177】
36.前記張性調節剤が、ソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリセロール、及びこれらの組み合わせの1つ以上から選択される、実施形態35に記載の製剤。
【0178】
37.前記張性調節剤がソルビトールを含む、実施形態36に記載の製剤。
【0179】
38.さらに、糖、ポリオール、可溶化剤(例えばN-メチル-2-ピロリドン)、疎水性安定剤(例えばプロリン)、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の追加の添加剤を含む先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0180】
39.37℃で3ヶ月間保存した後、SE-UHPLCにより得られる前記ヒト抗RANKLモノクローナル抗体の2%未満の高分子量種を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0181】
40.4℃で36ヶ月間保存した後、SE-UHPLCにより得られる前記ヒト抗RANKLモノクローナル抗体の2%未満の高分子量種を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0182】
41.37℃で3ヶ月間保存した後、SE-UHPLCにより得られる抗体主ピークの少なくとも98%を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0183】
42.4℃で36ヶ月間保存した後SE-UHPLCにより得られる抗体主ピークの少なくとも98%を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0184】
43.デノスマブと、アルギニン、そのジペプチド、または2~10個の残基を有し且つアルギニンを含むオリゴマーの1つ以上から選択されるアミノ酸凝集阻害剤と、酢酸塩緩衝剤と、ソルビトールと、界面活性剤とを含み、pHが約5.0~5.2未満の範囲である先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0185】
44.前記アミノ酸凝集阻害剤が、アルギニン、アルギニン-アルギニン、またはアルギニン-フェニルアラニンから選択される、実施形態43に記載の製剤。
【0186】
45.前記アミノ酸凝集阻害剤が、アルギニンとフェニルアラニンとの混合物を含む、実施形態43に記載の製剤。
【0187】
46.前記酢酸塩緩衝剤が約5mM~約25mMの範囲で存在する、実施形態43~45のいずれか1つに記載の製剤。
【0188】
47.前記ソルビトールが0.1%(w/v)~5%(w/v)の範囲で存在する、実施形態43~46のいずれか1つに記載の製剤。
【0189】
48.前記界面活性剤が、ポリソルベート20及びポリソルベート80の1つ以上から選択される、実施形態43~47のいずれか1つに記載の製剤。
【0190】
49.pHが約5.0~約5.15の範囲である、実施形態43~48のいずれか1つに記載の製剤。
【0191】
50.pHが約5.10である、実施形態49に記載の製剤。
【0192】
51.前記製剤が皮下注射に好適である、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0193】
52.前記製剤が滅菌され、防腐剤を含まない、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0194】
53.前記ヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分が、(1)配列番号2を含む重鎖可変領域及び配列番号1を含む軽鎖可変領域、または(2)配列番号8、9及び10をそれぞれ含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域、ならびに配列番号5、6及び7をそれぞれ含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域を含む先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0195】
54.前記ヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分が抗体である、先行実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
【0196】
55.前記ヒト抗RANKLモノクローナル抗体またはその抗原結合部分が抗原結合部分である、実施態様1~53のいずれか1つの製剤。
【0197】
56.実施形態1~55のいずれか1つに記載の製剤を含有するバイアル、プレフィルドシリンジ、またはガラス容器。
【0198】
57.約1mL以下の製剤を含有する、実施形態56に記載のバイアル、プレフィルドシリンジ、またはガラス容器。
【0199】
58.骨関連事象(SRE)の予防を必要とする患者において骨関連事象(SRE)を予防する方法であって、実施形態1~55のいずれか1つに記載の製剤を有効量投与することを含む、前記方法。
【0200】
59.前記SREが、病理学的骨折、骨への放射線療法、骨への手術及び脊髄圧迫からなる群より選択される、実施形態58に記載の方法。
【0201】
60.前記患者が固形腫瘍からの骨転移を有する、実施形態58または59に記載の方法。
【0202】
61.前記固形腫瘍が、乳癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌、及び腎細胞癌から選択される、実施形態60に記載の方法。
【0203】
62.前記患者が多発性骨髄腫を有する、実施形態58または59に記載の方法。
【0204】
63.クレアチニンについて補正した骨代謝マーカー尿N末端テロペプチド(uNTx/Cr)を減少、任意に少なくとも80%減少させるために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態58~62のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
64.実施形態1~55のいずれか1つに記載の製剤を有効量投与することを含む、骨の巨大細胞腫の治療を必要とする患者の骨の巨大細胞腫を治療する方法。
【0206】
65.前記患者が、再発性であるか、切除不能であるか、または外科的切除が重度の罹患率を生じやすい骨の巨大細胞腫を有する、実施形態64に記載の方法。
【0207】
66.実施形態1~55のいずれか1つに記載の製剤を有効量投与することを含む、悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療を必要とする患者の悪性腫瘍の高カルシウム血症を治療する方法。
【0208】
67.前記悪性腫瘍がビスホスホネート治療に対して不応性である、実施形態66に記載の方法。
【0209】
68.前記患者の血清カルシウムを約11.5mg/dL以下のレベルに低減または維持するために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態66または67に記載の方法。
【0210】
69.前記製剤が、約120mg/mLの濃度で前記ヒト抗RANKL抗体を含む、実施形態58~68に記載のいずれかの方法。
【0211】
70.前記製剤を4週間に1回のスケジュールで投与することを含む、実施形態58~69のいずれかに記載の方法。
【0212】
71.治療の最初の月の8日目及び15日目に前記製剤を投与することを含む、実施形態58~70のいずれかに記載の方法。
【0213】
72.実施形態1~55のいずれか1つに記載の製剤を有効量で投与することを含む、骨粗鬆症の治療を必要とする患者における骨粗鬆症の治療方法。
【0214】
73.前記患者が、骨折の危険性が高い閉経後女性である、実施形態72に記載の方法。
【0215】
74.前記患者が、骨折の危険性が高い男性である、実施形態72に記載の方法。
【0216】
75.有効量の実施形態1~55のいずれか1つに記載の製剤を投与することを含む、骨量の増加を必要とする患者の骨量を増加させる方法。
【0217】
76.前記患者が、骨粗鬆症を有する、実施形態75に記載の方法。
【0218】
77.前記患者が、乳癌のアジュバントアロマターゼ阻害剤療法を受けている骨折のリスクが高い女性である、実施形態75に記載の方法。
【0219】
78.前記患者が、非転移性前立腺癌のアンドロゲン除去療法を受けている骨折のリスクが高い男性である、実施形態75に記載の方法。
【0220】
79.新しい脊椎骨折及び/または非脊椎骨折の発生率を低下させるために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態75~78のいずれかに記載の方法。
【0221】
80.骨吸収を減少させるために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態75~79のいずれかに記載の方法。
【0222】
81.腰椎、全股関節及び大腿骨頸部から選択される少なくとも1つの領域において前記患者の骨密度を増加させるために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態75~80のいずれかに記載の方法。
【0223】
82.前記患者の皮質骨及び/または骨梁の骨量を増加させるために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態75~81のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
83.骨吸収マーカー血清1型C-テロペチド(CTX)を減少させるために有効な量の前記製剤を投与することを含む、実施形態75~82のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
84.前記製剤を6ヶ月に1回のスケジュールで投与することを含む、実施形態75~83のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
85.1mL以下の容量で前記製剤を投与することを含む、実施態様58~84のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
86.前記製剤を皮下に投与することを含む、実施形態58~85のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
87.前記製剤を上腕、大腿上部または腹部の皮下に投与することを含む、実施形態86に記載の方法。
【0229】
88.前記患者がカルシウム及びビタミンDの一方または両方の投与を受けている、実施形態58~87のいずれかに記載の方法。
【0230】
89.ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を70mg/mLを超える濃度で含む水性医薬製剤の安定性を改善する方法であって、
ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む前記水性医薬製剤を約5.0から5.2未満の範囲のpHで調製することを含み、
前記水性医薬製剤が、約5.0から5.2未満の範囲のpHにない同等の水性医薬製剤と比較して、約5.0から5.2未満の範囲のpHで改善された安定性を示す、前記方法。
【0231】
90.ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む水性医薬製剤の安定性を改善する方法であって、
アミノ酸凝集阻害剤と混合した、ヒト抗ヒト核因子カッパ-B受容体活性化剤リガンド(抗RANKL)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む前記水性医薬製剤を調製することを含み、
前記水性医薬製剤は、前記アミノ酸凝集阻害剤を含まない同等の水性医薬製剤と比較して、前記アミノ酸凝集阻害剤による改善された安定性を示す、前記方法。
【実施例】
【0232】
以下の実施例は、本発明の説明のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書中に提示される実施例を通して、以下の略語が使用される:DF、透析ろ過、PS20、ポリソルベート20、HCl、塩酸塩、UF/DF、限外ろ過/透析ろ過、F#、製剤番号、HMWS、高分子量種、SE-UHPLC、サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー。さらに、これらの実施例を通して、デノスマブを含む最終製剤を製造するために使用されるDF緩衝液または透析緩衝液の組成、ならびに最終製剤の成分の推定濃度が提供される。保存され、続いて安定性について分析される最終製剤の特定の成分の最終濃度は、対イオン(例えば、HCl)の存在または非存在に依存して、DFまたは透析緩衝液の濃度と異なることがある。対イオンがない場合、製剤は低いイオン強度を有する。このような例では、酢酸塩はデノスマブと共濃縮して、最終製剤がDFまたは透析緩衝液の濃度に対してより高い濃度の酢酸塩を含むようになる。例えば、10mMの酢酸塩を含むDF緩衝液を使用すると、DF緩衝液も最終製剤も対イオン(例えばHCl)を含まず、したがってイオン強度が低い場合には、最終のデノスマブ(120mg/mL)製剤(pH5.1)中において約23mMの酢酸塩が得られる。同様に、20mMの酢酸塩を含むDF緩衝液では、対イオン(例えば、HCl)を含むことなく、pH5.1の最終デノスマブ(120mg/mL)製剤中に約32mMの酢酸塩がもたらされる。対イオン(例えば、アルギニンHClのHCl)が存在する場合、酢酸塩はデノスマブと共濃縮しないので、DF緩衝液の酢酸塩濃度と最終組成物の酢酸塩濃度とは一般に同じである。さらに、添加剤は容量分析で排除することができ、或いは非特異的相互作用によって影響を受ける可能性がある。例えば、120mg/mLのデノスマブ製剤では、フェニルアラニン及びソルビトール濃度は、DF緩衝液中に示される濃度よりも約7~10%低く、アルギニン濃度は約10~15%低い。上記を考慮して、以下の実施例を通して、最終製剤の成分の濃度が、上記の添加剤排除及び酢酸塩共濃縮効果を考慮して提供される。
【0233】
実施例1
12の製剤の初期評価を、高濃度液体デノスマブ製剤(120mg/mL)中のHMWSの量(%)及びその経時的形成を最小化する効果について行った。製剤の代替物には、緩衝液の種類、安定剤及び溶液のpHの変更が含まれた。試験した製剤、A~Lを以下の表1に記載する。引用された全ての緩衝液値は、抗体が透析ろ過される緩衝液濃度に関するものである。各添加剤及び界面活性剤を、表に示すレベルまで緩衝液交換後の溶液に添加した。本製剤中の酢酸塩濃度は測定されなかったが、10mMの酢酸塩に対して透析ろ過されたソルビトールを有する120mg/mLデノスマブ製剤は、25mM~35mMの酢酸塩の近似最終酢酸塩値を有していた。
【0234】
pH5.2の酢酸塩中70mg/mLデノスマブは、pH5.2で10mMの酢酸塩に対してUF/DFを行い、160mg/mLに濃縮された。ストック溶液は、以下からなるpH5.2の10mMの酢酸塩中で、調製された。
【0235】
35%ソルビトール
【0236】
1%ポリソルベート20
【0237】
1%ポリソルベート80
【0238】
30%Pluronic(登録商標)F-68
【0239】
3%Triton(商標)X-100
【0240】
250mMのL-アルギニンHCl
【0241】
250mMのN-アセチルアルギニン(NAR)
【0242】
250mMのN-アセチルリシン(NAK)
【0243】
250mMのプロリン
【0244】
250mMのポリエチレングリコール(PEG)3350
【0245】
250mMのCaptisol(登録商標)シクロデキストリン
【0246】
製剤A~Jを得るために、pH5.2の10mMの酢酸塩を用いて調製した160mg/mLの材料を、pH5.2の10mMの酢酸塩を用いて120mg/mLに希釈した後、対応するソルビトール、添加剤及び/または界面活性剤原液を添加して、表1に記載の目的の最終濃度まで希釈した。製剤K及びLを得るために、自己緩衝化製剤及びグルタミン酸塩製剤、それぞれ160mg/mLの材料からの2つの別々のアリコートは、遠心分離により追加の緩衝液交換を受けた。その後、製剤K及びLのための材料は、それぞれ緩衝液を用いて120mg/mLに希釈し、次いで、対応するソルビトール及びポリソルベート20原液を添加して、表1の製剤に列挙された目標最終濃度にした。
【0247】
【0248】
図1は、37℃での製剤及び時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。約10mMのグルタミン酸塩緩衝液、10mMのL-アルギニンHCl、張性調節剤としての2.4%(w/v)ソルビトール、界面活性剤としての0.01%(w/v)ポリソルベート20及びpH値5.0からなる製剤Lは、既に形成された凝集体のいくらかの減少を示唆するHMWSの開始量の減少、及び37℃でのHMWS形成の動力学の減少、の両方を示した。
【0249】
実施例2
10mMの酢酸塩、75mMのL-アルギニン、2.4%(w/v)のソルビトール、0.01%(w/v)のポリソルベート20の添加剤の製剤、及び10mMの酢酸塩、5%(w/v)のソルビトール、0.01%(w/v)のポリソルベート20の添加剤の製剤で、それぞれは高濃度(120mg/mL)のデノスマブを有する製剤を、37℃において温度にて最大1ヶ月で評価し、HMWS形成の速度及び程度に対するpH及びアミノ酸凝集阻害剤の効果を明らかにした。試験された製剤は、以下の表2に記載されている。引用された全ての緩衝液及び添加剤の値は、抗体が透析ろ過される緩衝液及び添加剤の濃度に関するものである。
【0250】
試験試料M~Qを調製するために、pH5.2の70mg/mLの酢酸塩中のデノスマブの3mLのアリコートを、下記のDF緩衝液500mLに対して透析して合計3回の緩衝液交換を行い、前の製剤の100万倍希釈を達成し、完全な緩衝液交換を確実にした。次いで、この材料を、遠心濃縮器を用いて過剰濃縮し、続いて120mg/mLに希釈し、ポリソルベート20を0.01%の最終濃度まで添加した。
【0251】
【0252】
図2は、37℃での製剤及び時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図3は、37℃で1ヶ月間保存した後の製剤の関数としてのサイズ排除クロマトグラムを示す。
【0253】
溶液のpHが低下するにつれて、大きな凝集体の形成が増加した。pH4.8未満、特に4.5において、大きな凝集物が主なHWMSであり、試験製剤についてpH4.5で劇的な増加を示した。
図3に示すように、製剤P及びQは、最小量の高次HWMS(保持時間約6分)を有し、続いて比較製剤O、N及びMは低下したpH値を有していた。
【0254】
しかしながら、pHが増加するにつれて、一般に二量体種の増加がもたらされた。
図3に示されているように、製剤Nは最も少ない量の二量体種(保持時間約6.8分)を有し、その後製剤M、O、P及びQも続いた。
【0255】
75mMの濃度の製剤O中のアルギニンの存在により、同じpHを有するがアルギニンを有さない製剤Pと比較して、37℃で1ヶ月後に、二量体種の量及びその形成速度のそれぞれにおいて約0.3%及び25%の減少がもたらされた。
【0256】
実施例3
この実施例は、高濃度デノスマブ製剤についてのpHの効果を実証する。
【0257】
デノスマブ(120mg/mLの濃度で)は、3つの異なるpH値:4.8、5.1、及び5.4において、酢酸塩、ソルビトール、及びポリソルベート20(PS20)と共に、且つアミノ酸凝集阻害剤の有りまたは無しで、処方された。この研究では、アミノ酸凝集阻害剤はL-アルギニンHClであった。全ての製剤は、より低い濃度のデノスマブを含有する初期溶液の緩衝液を交換し、続いてデノスマブ材料を過剰濃縮し、次いでデノスマブ材料を所望量の緩衝液、添加剤、及び界面活性剤で希釈することによって作製した。簡単に述べると、pH5.2の酢酸塩(初期物質)中の70mg/mLのデノスマブのアリコートを表3Aに記載のDF緩衝液に対して透析し、合計3回の緩衝液交換を行って初期材料の100万倍の希釈を達成し、完全な緩衝液交換を確実にした。次いで、緩衝液交換したデノスマブ材料を、遠心濃縮器を使用して120mg/mLを超えるデノスマブ濃度に濃縮し、次いで濃縮した物質を120mg/mLデノスマブの濃度に達するまで希釈した。PS20を加えて0.01%の最終濃度とした。
【0258】
高濃度のタンパク質は、その電荷状態に基づいて溶液pHに影響を与えると考えられていた。製剤1の酢酸塩濃度を増加させて目標の最終pHを達成し、製剤2及び3の酢酸塩濃度を製剤1の酢酸塩濃度と一致させた。製剤4~6の酢酸塩濃度は、酢酸塩がHCl塩の存在下では共濃縮されていないため、製剤1~3の最終酢酸塩濃度と一致するようにするには、より高い酢酸塩量が必要であった。製剤7は、製剤4~6中の増加した酢酸塩濃度が、アルギニン塩酸塩製剤のタンパク質安定性を妨げないことを保証するため、対照としての役目を担った。
【0259】
この研究で作製され試験された種々のデノスマブ製剤を表3Aに記載する。
【0260】
【表3】
*最終製剤は、デノスマブ120mg/mL及び0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、示されたpHを有した。ソルビトール濃度は、DF緩衝液のソルビトール濃度よりも8.5%低いと推定される。アルギニン濃度は、DF緩衝液のアルギニン濃度より12.5%低いと推定される。
【0261】
各製剤の試料を1mLの充填体積で容器に充填し、37℃の温度にて4週間以下で保存した。HMWS及び二量体種形成に基づく、凝集阻害及び経時的な凝集阻害に対する安定性を、SE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の凝集阻害プロファイルを、初期条件及び保存期間中及びその後において比較した。
【0262】
HMWSのパーセントを、37℃での製剤と時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングした。
図4は、製剤1~7についての時間の関数としてのHMWSのパーセントのグラフを表し、表3Bは、グラフのデータ点を提供する。
【0263】
【表4】
左の列に示されているF#は、表3AのF#と一致する。
【0264】
図5は、37℃で1ヶ月間保存した後の各製剤のサイズ排除クロマトグラムを示す。アルギニンを含まない製剤は左のパネルに示され、アルギニンを含む製剤は右のパネルに示されている。
【0265】
図4に示すように、アルギニンを含有する製剤は、アルギニン塩酸塩を含まない対照製剤よりも良好に実施され、pH5.1の製剤は、pH4.8及びpH5.4の比較製剤よりも良好に実施された。アルギニン塩酸塩を含まない製剤1~3では、溶液pHが5.4に上昇するにつれて二量体種が増加した(
図5A)。アルギニン塩酸塩を含有する製剤4~6については、溶液のpHが4.8に低下するにつれて、より大きな凝集体の形成が増加し、ならびに溶液のpHが5.4に上昇するにつれて、二量体種が増加した(
図5B)。5.1の溶液pHでは、アルギニン塩酸塩の存在下での製剤6は、アルギニン塩酸塩の存在無しの製剤2と比較して、総HMWSの最低量を示した。さらに、製剤7の挙動は、酢酸塩緩衝液濃度を10mMから40mMに増加させてもHMWS形成に対する効果が比較的小さいことを示した。
【0266】
実施例4
この実施例は、種々のデノスマブ濃度を含む異なるデノスマブ製剤についてのpHとHMWS形成との間の関係を実証する。
【0267】
15mg/mL~150mg/mLのデノスマブタンパク質濃度を、様々なタンパク質濃度及び75mMのアルギニン塩酸塩濃度でのHMWS形成のpH感受性がどうかについて評価した。2つのpH値、すなわちpH4.8及び5.1を、試験した各タンパク質濃度:15、60、120及び150mg/mLで評価した。
【0268】
合計8つの製剤(製剤8~15、表4Aに記載)をこの研究で評価した。これらの製剤を調製するために、pH5.2の酢酸塩中の70mg/mLのデノスマブの2つのアリコートを、表4Aに記載のそれぞれのDF緩衝液に対して透析した。透析セットアップ#1と#2の両方を合計3回の緩衝液交換を行って、前の製剤を100万倍に希釈し、完全な緩衝液交換を確実にした。透析後、表4Aに記載された各透析セットアップ#1及び#2のアリコートを除去して、製剤8、9、12及び13の希釈ステップを調製した。その後、残りの材料を、遠心分離濃縮装置を用いて過剰濃縮し、表4Aに列挙された対応するデノスマブ濃度に希釈し、PS20を添加して0.01%の最終濃度にした。
【0269】
【表5】
*最終製剤は、0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、示されたpHを有した。酢酸塩の推定濃度は10mMであり、ソルビトール濃度はDF緩衝液のソルビトール濃度より約8.5%低いと推定される。アルギニン濃度は65mMと推定される。ソルビトール濃度は2.2%(w/v)と推定される。
【0270】
製剤を1mLの充填体積で容器に充填し、37℃の温度にて1ヶ月以下で保存した。HMWS及び二量体種の形成に基づく、凝集阻害及び経時的な凝集阻害に対する安定性を、SE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の凝集阻害プロファイルを、初期条件及び保存期間中及びその後において比較した。
【0271】
図6は、各製剤について37℃での保存時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントのグラフを表し、表4Bはグラフのデータ点を提供する。
【0272】
【0273】
図7A及び7Bは、37℃で1ヶ月間保存した後の製剤の関数として、サイズ排除クロマトグラムを示す。
図6に示すように、HMWS%はタンパク質濃度が増加するにつれて増加した。pH4.8での製剤8~11は、pH5.1(製剤12~15)での対応する製剤と比較して一貫してより高いレベルのHMWSを有していた。pH4.8でHMWS%の増加は、
図7A(上)に示されている約5.75分の大きな凝集ピークに起因する。溶液pH5.1でのHMWS%は、タンパク質濃度が増加するにつれて増加する二量体種を有するが、全HMWSは、溶液pH4.8で対応するタンパク質濃度よりも低かった(
図7b(下))。
【0274】
pH5.1対pH4.8でのHMWSレベルの差異は、デノスマブ濃度が増加するにつれて大きくなり、デノスマブ濃度が高いほど差異は大きかった。
【0275】
実施例5
アルギニン、NAR、及びアルギニン-アルギニン(Arg-Arg)及びアルギニン-フェニルアラニン(Arg-Phe)からなる2種のジペプチドの種々の濃度の製剤を、デノスマブ濃度が120mg/mLの溶液に対する安定化効果について評価した。
【0276】
試験された製剤は、以下の表5に記載されている。引用した全ての酢酸塩及び添加剤(ジペプチドを除く)の値は、抗体が透析ろ過される緩衝液及び添加剤の濃度である。それぞれのジペプチドを、緩衝液交換後、表に示すレベルまで溶液中に添加した。製剤R~Xは、以下に列挙するDF緩衝液に対するUF/DFによって達成された。製剤Y及びZは、10mMの酢酸塩、3.6%のソルビトール、pH4.0を含有するDF緩衝液に対するUF/DFにより、単一プール中で一緒に達成された。UF/DF後に、製剤Y及びZのプールを2つに分割し、次いでArg-ArgまたはArg-PheジペプチドがpH5.1の3.6%ソルビトールを含有する1Mストック溶液から加えられた。ポリソルベート20を0.01%の最終処方濃度で各製剤に添加した。酢酸塩は、アルギニン無しで共濃縮し、製剤S~Xにおいて約25mMの最終酢酸塩濃度が得られる。ソルビトールは、濃縮プロセスにおいて優先的に排除され、初期濃度から約7~8%(w/v)の減少をもたらす。
【0277】
製剤を1.0mLの充填体積で容器に充填した。製剤は2℃~8℃の温度で最大12ヶ月、そして25℃、30℃、及び37℃で3ヶ月間保存する。HMWSの形成に基づく安定性は、SE-UHPLCを用いて評価される。37℃で1ヶ月後のこれらのジペプチド製剤の安定性を、
図8に示すように37℃でアルギニン塩酸塩製剤と比較した。
【0278】
【0279】
図8は、37℃での製剤及び時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。結果は、アミノ酸凝集阻害剤がHMWSの形成を阻害したことを示している。例えば、アルギニン-フェニルアラニンジペプチドは、有意な改善を示し、他の製剤と比較して生じたHMWSが約0.3%少なかった。最低から最高のHMWSのランク順位は、Z<<V<Y≒T≒W≒X≒U<S<Rであった。図からわかるように、アルギニン-アルギニン(Arg-Arg)(製剤Y)及びアルギニン-フェニルアラニン(Arg-Phe)(製剤Z)ジペプチド含有製剤の両方は、アルギニン及びアルギニン含有ジペプチドを欠く対照製剤(製剤R)と比較してHMWS形成を減少させた。製剤Zは、製剤Yよりも優れた、最小量のHMWSを含有していた。
【0280】
実施例6
この実施例は、異なる濃度のアルギニンとフェニルアラニン、ならびにアルギニンとフェニルアラニンの比較混合物の関数としてのデノスマブの凝集阻害及び安定性を実証する。
【0281】
上述のように、アルギニン塩酸塩(HCl)及びアルギニンHCl-フェニルアラニンジペプチドは、デノスマブのHMWS形成の初期開始レベル及び速度を低下させることが確認された。この研究では、アルギニンHClの濃度、フェニルアラニンの濃度、及びアルギニンHClとフェニルアラニンの組み合わせを含む製剤を、デノスマブを120mg/mLで含有する溶液に対する安定化効果について評価した。
【0282】
試験された製剤(製剤16~20)を以下の表6Aに記載する。これらの製剤を調製するために、pH5.2の酢酸塩中の70mg/mLのデノスマブのアリコートを、表6Aに記載したDF緩衝液に対して透析して合計3回の緩衝液交換を行って前の製剤の100万倍の希釈を達成し、完全な緩衝液交換を確実にした。次いで、この材料を、遠心濃縮器を用いて過剰濃縮し、続いて120mg/mLに希釈し、ポリソルベート20を添加して0.01%の最終濃度にした。製剤16を対照製剤とみなした。
【0283】
【表8】
*最終製剤は、120mg/mLのデノスマブ及び0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、示されたpHを有していた。ソルビトール及びフェニルアラニンの濃度は、DF緩衝液の濃度より約8.5%低いと推定される。アルギニン濃度は、DF緩衝液の濃度より約12.5%低いと推定される。
【0284】
製剤を1.0mLの充填体積で容器に充填した。製剤を37℃の温度で1ヶ月以下保存した。HMWS及び二量体種の形成に基づく、凝集阻害及び経時的な凝集阻害に対する安定性を、SE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の凝集阻害プロファイルを、初期条件及び保存期間中及びその後において比較した。
【0285】
図9は、37℃における製剤及び時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図10は、37℃で1ヶ月間保存した後の製剤の関数としてのサイズ排除クロマトグラムを示す。以下の表6Bは、37℃での製剤及び時間の関数として、SE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
【0286】
【0287】
アミノ酸凝集阻害剤、アルギニンまたはフェニルアラニンを含む全ての製剤(製剤17~20)は、どのようなアミノ酸凝集阻害剤も含まないソルビトール対照製剤(製剤16)よりも優れていた。全てのフェニルアラニン含有製剤(製剤18、19及び20)は、対照及びアルギニンHCl製剤(それぞれ製剤16及び17)と比較した場合、同様に低レベルのHMWSを含有していた(
図9)。HMWS形成速度は、
図9に示すように、アルギニンHCl及びフェニルアラニン含有製剤(製剤17~19)の間では同様であった。38mMのアルギニン及び38mMのフェニルアラニンの両方を含む組み合わせ製剤(合計76nM、製剤20)は、75mMアルギニン製剤(製剤17)より良好な安定性を示したが(
図9)、75mMフェニルアラニン製剤(製剤19)より良好な安定性を示さなかった(
図9)。
【0288】
実施例7
この実施例は、フェニルアラニンの異なる濃度の関数としてのデノスマブの凝集阻害及び安定性を実証する。
【0289】
前の研究では、アルギニン塩酸塩及びアルギニン塩酸塩-フェニルアラニンジペプチドが、デノスマブのHMWS形成の初期開始レベル及び速度を最小限にすると特定された。アルギニン塩酸塩を含む製剤、種々の濃度のフェニルアラニンを含む製剤、及びアルギニン塩酸塩とフェニルアラニンの組み合わせを含む製剤の、デノスマブを120mg/mLで含有する溶液に対する安定化効果について評価した。
【0290】
試験された製剤を以下の表7Aに記載する。試験試料A~Eを調製するために、酢酸塩中のデノスマブ70mg/mLのアリコート(pH5.2)を、以下に記載のDF緩衝液に対して透析し、合計3回の緩衝液交換を行って前の製剤の100万倍の希釈を達成し、完全な緩衝液交換を確実にした。次いで、この材料を、遠心分離濃縮装置を用いて約130mg/mL~150mg/mLに過剰濃縮し、続いて120mg/mLに希釈し、ポリソルベート20を0.01%の最終濃度まで添加した。製剤Aを対照製剤とみなした。
【0291】
製剤を1.0mLの充填体積で容器に充填した。製剤を37℃の温度で1ヶ月以下保存した。HMWSの生成に基づく安定性をSE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の安定性プロファイルを、
図11Aに示すように、37℃で1ヶ月後、ソルビトール及び塩酸アルギニン/ソルビトール製剤と37℃で比較した。
【0292】
試験試料F~Kを調製するために、酢酸塩中のデノスマブ70mg/mLのアリコート(pH5.2)を、下記のDF緩衝液に対して合計12の透析体積の限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)を行い、完全な緩衝液交換を確実にした。次いで、この材料を、限外ろ過を用いて約200mg/mLに過剰濃縮し、続いて120mg/mLに希釈し、ポリソルベート20を0.01%の最終濃度まで添加した。これらの製剤では、酢酸塩濃度は20mMであった。製剤Fを対照製剤とみなした。引用した全ての酢酸塩及び添加剤の値は、抗体が透析される緩衝液濃度及び添加剤濃度に関するものである。
【0293】
製剤を1.0mLの充填体積で容器に充填した。製剤を40℃の温度で1ヶ月以下保存した。HMWSの生成に基づく安定性をSE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の安定性プロファイルを、
図11Bに示すように、40℃で1ヶ月後にソルビトール及びアルギニン塩酸塩/ソルビトール製剤と40℃で比較した。
【0294】
【表10】
*最終製剤は、デノスマブ120mg/mL及び0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、示されたpHを有していた。ソルビトール及びフェニルアラニンの濃度は、DF緩衝液の濃度より約8.5%低いと推定される。アルギニン濃度は、DF緩衝液の濃度より約12.5%低いと推定される。
【0295】
図11A及び表7Bは、37℃での製剤及び時間の関数としてのSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図11B及び表7Cは、40℃での製剤及び時間の関数としてのSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図12A及び12Bは、それぞれ37℃及び40℃で1ヶ月間保存した後の製剤の関数としてのサイズ排除クロマトグラムを示す。
【0296】
【0297】
【0298】
ソルビトール製剤及びアルギニン塩酸塩/ソルビトール製剤(それぞれ製剤A及びB)の両方と比較した場合、全てのフェニルアラニン製剤(製剤C、D、E、G~K)は、より低いレベルのHMWSを含有していた。アルギニン塩酸塩とフェニルアラニンの組み合わせ製剤は、アルギニン/ソルビトール製剤(製剤B)と比較して同様の安定性を有していた。全ての製剤は、ソルビトール対照製剤(製剤A及びF)よりも優れていた。
【0299】
実施例8
この実施例は、種々のアミノ酸凝集阻害剤の評価を実証する。
【0300】
異なるアミノ酸凝集阻害剤の評価は、疎水性アミノ酸、芳香族アミノ酸または極性/電荷を有するアミノ酸を含む8つの製剤を調製し、高濃度液体デノスマブ製剤(120mg/mL)中のHMWSの量(%)及び経時的なHMWS形成の最小化に対する効果を決定することにより実施した。この製剤は、アミノ酸凝集阻害剤を含まずより多量の張性用ソルビトールの対照製剤(製剤26)と比較して、8つのL-アミノ酸の1つと、より少ない量のソルビトールを含んでいた。
【0301】
試験したアミノ酸凝集阻害剤は、以下のように3つのグループ(グループI~III)の1つにグループ分けされ、アミノ酸凝集阻害剤量を含有していた:
I.芳香族アミノ酸:
(a)38mMのフェニルアラニン(製剤27)、
(b)38mMのトリプトファン(製剤28)、
II.極性/電荷を有するアミノ酸:
(a)75mMのアルギニンHCl(製剤29)、
(b)75mMのリシン(製剤30)、
(c)75mMのヒスチジン(製剤31)、
III.疎水性アミノ酸:
(a)38mMのロイシン(製剤32)、
(b)38mMのイソロイシン(製剤33)、
(c)38mMのバリン(製剤34)。
【0302】
製剤26~34を調製するために、pH5.2の酢酸塩中70mg/mLのデノスマブのアリコートを、表8Aに記載のDF緩衝液に対して透析し、合計3回の緩衝液交換を行って前の製剤の100万倍の希釈を達成し、完全な緩衝液交換を確実にした。ヒスチジン製剤Fの透析では、開始pHが4.0の緩衝液を使用し、pHが、ドナン効果及び酢酸塩の共濃縮により、タンパク質濃縮時に目標のpH5.1にシフトすることが予測された。しかしながら、タンパク質を120mg/mLに濃縮した後、pHは5.1の目標pHにシフトしないで、pH4.0を維持した。ヒスチジン製剤のpHをpH5.1にするために、希(0.1N)NaOHによる滴定が必要であった。残りの製剤は、遠心分離濃縮装置を用いて過剰濃縮し、続いて124~128mg/mLに希釈し、0.01%(w/v)の最終濃度までポリソルベート20を添加した。
【0303】
【表13】
*最終製剤は、デノスマブ120mg/mL及び0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、示されたpHを有していた。ソルビトール及びフェニルアラニンの濃度は、DF緩衝液のソルビトール濃度より約8.5%低いと推定される。アルギニン濃度は、DF緩衝液のアルギニン濃度より約12.5%低いと推定される。F#の後に現れる()内の文字は、
図13~18に対応する。
【0304】
製剤を1.0mLの充填体積で容器に充填した。製剤を37℃の温度で4週間以下保存した。HMWS及び二量体種の形成に基づく、凝集阻害及び経時的な凝集阻害に対する安定性を、SE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の凝集阻害プロファイルを、初期条件及び保存期間中及びその後において比較した。
【0305】
図13~15は、各製剤について37℃における保存時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントのグラフを表し、表8Bはグラフのデータポイントを提供する。
図16~18は、37℃で1ヶ月間保存した後の表8Aに列挙された製剤のクロマトグラフィーオーバーレイを示す。
図13及び16は芳香族アミノ酸を含む製剤に関するものであり、
図14及び17は極性/電荷を有するアミノ酸を含む製剤に関するものであり、
図15及び18は疎水性アミノ酸を含む製剤に関するものである。
【0306】
【表14】
F#は、左の列に提供され、表8AのF#に対応する。
【0307】
図13~15に示すように、アミノ酸凝集阻害剤を含有する全ての製剤(製剤27~34)は、酢酸塩/ソルビトール製剤(製剤26)と比較して、安定性においていくらかの改善を示した。芳香族アミノ酸を含有する製剤(製剤27及び28)は、HMWS%において最大の減少を示した。また、フェニルアラニンを含む製剤(製剤27)は、HMWSにおいて大きな減少を示し、トリプトファンを含む製剤は、対照(製剤26)に比べて最大の減少を示した。極性/電荷を有するアミノ酸を含有するデノスマブ製剤(製剤29~31)は、アミノ酸安定化剤を有する他の製剤(
図16及び18)と比較して、一般に、より大きなオーダーの凝集物(
図17)を示し、そしてこの特定のヒスチジン製剤は、酢酸塩/ソルビトール製剤(製剤26)と比較した場合、全体としてより多くの量のHWMSを示した(
図14)。ヒスチジン製剤の結果は、透析プロセス、pH4.0でのより長い持続時間、及び希釈NaOHによる製剤の滴定から、偏りがあり得る。疎水性アミノ酸を含有する製剤(製剤32~34)は全て、HMWS形成において一貫した改善を示した。
【0308】
実施例9
この実施例は、デノスマブの安定化におけるアルギニン及びフェニルアラニンの可能性のある作用メカニズムを実証する。重水素交換質量分析法(HDX-MS)は、タンパク質-タンパク質/リガンド/添加剤の相互作用を特徴付けるための感度が高く堅固な技術である。この方法は、添加剤との相互作用による骨格アミド水素結合の変化を検出する。
【0309】
L-アルギニン(製剤35)、L-フェニルアラニン(製剤36)、またはL-グリシン(製剤37)の存在下、10mMの酢酸塩緩衝液(pH5.2)(「A52」)中のデノスマブ(濃度3mg/mL)を用いて水素重水素交換質量分析(HDX-MS)を行い、そしてアミノ酸凝集阻害剤を含まないデノスマブ製剤(製剤38)と比較した。実験は、4℃(75mM濃度の、L-アルギニン、L-フェニルアラニン、またはL-グリシン)及び37℃(150mM濃度のL-アルギニン、L-フェニルアラニン、またはL-グリシン)で行った。530を超えるペプチドを分析した後、有意な構造変化を有する少数の領域が特定された。これらの領域に由来するいくつかの代表的なペプチドは
図19~30に示される。
【0310】
図19~24は、製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸28~33(
図19)、軽鎖アミノ酸108~116(
図20)、軽鎖アミノ酸125~132(
図21)、重鎖アミノ酸47~59(
図22)、重鎖アミノ酸243~253(
図23)及び重鎖アミノ酸392~399(
図24)の、4℃における時間の関数(log(秒))としての重水素取り込み%のグラフである。
【0311】
図25~30は、製剤35~38のそれぞれについて、軽鎖アミノ酸28~33(
図25)、軽鎖アミノ酸108~117(
図26)、軽鎖アミノ酸124~131(
図27)、重鎖アミノ酸47~59(
図28)、重鎖アミノ酸242~253(
図29)及び重鎖アミノ酸392~399(
図30)の、37℃における時間の関数(log(秒))としての重水素取り込み%のグラフである。
【0312】
これらのデータは、Argはデノスマブ上でわずかにより強いHDXフットプリント(立体配座変化)を有するが、Arg及びGlyがデノスマブに対する類似の相互作用効果を有することを支持している:Fab LC 28~33領域における強い安定化、Fab LC 108~132及びHC 47~59、Fc CH3 HC 392~399領域におけるわずかな安定化、Fc CH2 243~253領域におけるわずかな不安定化。特定の理論に縛られる意図はないが、アルギニン塩酸塩の効果は、デノスマブ表面からの優先的排除及び弱い表面相互作用の組み合わせによるものであり、一方、グリシンの働きは優先的排除によるものであると考えられる。
【0313】
しかしながら、フェニルアラニンは、デノスマブに対して有意な構造的摂動を示さなかった。任意の特定の理論に拘束される意図はないが、フェニルアラニン安定化効果は、以下のメカニズムの1つ以上:ペプチド骨格に影響を与えないので(HDXフットプリント無し)側鎖の相互作用、及び/または骨格水素結合ネットワークに影響を与えることなく、アルギニン/リシン側鎖との陽イオン-パイ相互作用、を介して起こる可能性があると考えられる。
【0314】
実施例10
この実施例は、フェニルアラニン安定化デノスマブの作用の可能性のあるメカニズムを実証する。
【0315】
デノスマブに対するPheの特異的効果を研究するために、分子動力学シミュレーションを実施した。具体的には、デノスマブのFabドメインを、シミュレーションボックスで過剰Pheで溶媒和し、10-nsシミュレーションを2回行った。まとめて、時間の90%超にわたってFabに結合したPhe残基をさらなる分析のために選び出した。このようなものとして9例が特定された。長時間滞留の9つの観察のうち5つにおいて、Phe残基は、VH/VL(可変重/可変軽)及びCH/CL(定常重/定常軽)領域の境界に結合した。一例では、Phe側鎖は、VH/VLの界面で、疎水性残基の側鎖(例えば、重鎖のV93、Y95、及びW112及び軽鎖のA44及びP45)と相互作用していると考えられた。別の例において、Pheの側鎖環は、CH1及びCLの界面で、残基(例えば、軽鎖のT165及び重鎖のG171、V172、及びT174)のNH3+及びCOO(-)基と相互作用していると考えられた。特定の理論に拘束される意図はないが、この観察は、デノスマブの凝集を緩和するPheの特異的効果が、フェニル基と疎水性残基(例えば、軽鎖のCDR1のR30、G31、R32及びY33、軽鎖のCDR2のA52、及び重鎖のCDR3のM106)が重定常1(Hc)鎖及び軽定常(Lc)鎖の界面を形成することによるものとの考えに導く。この相互作用は、前に疎水性であった表面を、Phe添加剤からのNH3+及びCOO(-)基からの比較的より大きい電荷を有する(結果として親水性の)表面と置き換えるものと仮定される。
【0316】
実施例11
(アイソタイプIgG1、IgG2、及びIgG4の)抗RANKL抗体の複数の構築物の安定性評価を行った。上記のように、アルギニンHCl及びフェニルアラニンの両方は、デノスマブ(IgG2免疫グロブリンである)の酢酸塩/ソルビトール対照製剤と比較して、HMWSの開始及びHWMSの経時的レベルを最小にする。この評価は、異なる抗RANKL抗体構築物を含有する製剤中のHMWSを低下させるArg-HCl及びPheの可能性を比較するために行った。この研究で試験したIgG1及びIgG4構築物は、デノスマブと比較して同じ相補性決定領域(CDR)を含有していたが、異なる定常ドメイン足場も含んでいた。この研究において試験された異なるIgG2構築物は、デノスマブとは異なるCDRを有していたが、同じ定常ドメイン足場を含んでいた。
【0317】
試験した各抗体構築物を精製し、遠心分離濃縮を用いて8mg/mLから70mg/mLに濃縮した。それぞれの濃縮した体積を3つのアリコートに分割し、表9に記載のように、ソルビトール、ソルビトール/フェニルアラニン及びソルビトール/アルギニン塩酸塩で調製した酢酸塩緩衝液に対して透析して製剤39~47を調製した。透析後の試料を遠心分離で120mg/mL超に過剰濃縮した。抗体タンパク質をそれぞれの緩衝液で120mg/mLに希釈した。
【0318】
【表15】
*最終製剤は、0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、示されたpHを有した。ソルビトール及びフェニルアラニンの濃度は、DF緩衝液の濃度より約8.5%低いと推定される。アルギニン濃度は、DF緩衝液の濃度より約12.5%低いと推定される。
【0319】
製剤を1.0mLの充填体積でガラスバイアル容器に充填した。製剤を37℃の温度で1ヶ月以下保存した。HMWSの形成に基づく凝集阻害及び経時的な凝集阻害に対する安定性をSE UHPLCを用いて評価した。これらの製剤の凝集阻害プロファイルを初期条件及び保存期間後に比較した。保存後のこれらの製剤の安定性を、免疫グロブリンクラス内で比較した。
【0320】
図31、33及び35(及び以下の関連する表10、12及び14)は、免疫グロブリンG(それぞれIgG1、IgG2、及びIgG4)を用い、37℃で製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
図32、34及び36(及び以下の関連する表11、13及び15)は、免疫グロブリンG(それぞれIgG1、IgG2、及びIgG4)を用い、37℃で製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニターされた低分子量種のパーセント(LMWS、例えばタンパク質断片化)を示す。
図37、38及び39は、t=4wについて37℃での保存後の製剤の関数としてのサイズ排除クロマトグラムオーバーレイを示す。
【0321】
【0322】
【0323】
【0324】
【0325】
【0326】
【0327】
図31及び32に示されるように、前のデノスマブ試料と同様のCDR領域を有するIgG1分子は、酢酸塩/ソルビトール対照製剤と比較した場合、フェニルアラニンの添加によりHMWSにおいて約0.2%の減少を示した。異なるCDRを有し、
図33及び34に示されるIgG2試料は、対照酢酸塩/ソルビトール製剤と比較した場合、酢酸塩/フェニルアラニン/ソルビトール製剤においてHMWSの増加を示した。酢酸塩/ソルビトール及び酢酸塩/フェニルアラニン/ソルビトール製剤は、
図35及び
図36に示すように、IgG4試料タイプについても、HMWS形成がより大きい酢酸塩/ソルビトール/アルギニンと同様の安定性を有していた。IgG1、IgG2、及びIgG4の試料タイプの全ての場合においても、酢酸塩/ソルビトール/アルギニン含有製剤は、酢酸塩/ソルビトール(対照)及び酢酸塩/フェニルアラニン/ソルビトール製剤と比較してHMWS分解が増加することを示した。
【0328】
図37及び38に示す酢酸塩/アルギニン/ソルビトール製剤中にタンパク質断片化の大きな増加があったため、断片化と抗体アイソフォームとの間の関係を
図32、34、及び36に示した。モノクローナル抗体断片化媒介性凝集が、37℃で保存された抗体にもたらし得ることが、文献に示されている[Perico N.et.al.,J.Pharm.Sci.(2009)98,pgs.3031-3042]。この評価において、このメカニズムは、酢酸塩/アルギニン/ソルビトール製剤において断片化が最大であると考えられ得る。この断片化は、酢酸塩/フェニルアラニン/ソルビトール製剤で最小限に抑えられ、HMWS種がより少なくなる可能性がある。IgG4試料タイプは、断片化または凝集を加速しなかった。
【0329】
この研究で収集されたデータ及びデノスマブで収集された前の分子モデリングデータから、CDRのアミノ酸配列と、HMWSをフェニルアラニンで減少させる相対効果との間に強い相関関係を確立させることができる。デノスマブ(IgG2)及び同一のCDRアミノ酸を有するIgG1変異体ではHMW種の減少が観察されたが、異なるCDRドメインを有するIgG2変異体ではHMWSの減少は観察されなかった。CDRドメイン内に含まれるアミノ酸配列は、フェニルアラニンとの相互作用及びその後の凝集阻害の影響を受けやすいようである。IgG4分子はまた、デノスマブと比較した場合、同一のCDR領域を有していたが、研究の過程で最小の凝集変化しか検出されなかった。IgG4分子は、主としてそのヒンジアミノ酸の長さ及びその機能的に活性な構造によって、IgG1及びIgG2のバージョンとは異なる。IgG1及びIgG2抗体アイソフォームは、具体的には「Y」形状として記載される伸長構造を有するので、IgG4 Fab CH1ドメインはCH2ドメインと相互作用し、よりコンパクトな構造を形成する[Aalberse R.C. et al.,Immunology(2002),105.pgs.9-19]。このコンパクトな構造は、IgG1及びIgG2モダリティで典型的に見られる断片化及び凝集反応を阻害することができた。
【0330】
実施例12
以下に記載のように、表16に関連して製剤化されたデノスマブ(製剤51~55)の安定性をモニターするために研究が行われる。透析ろ過緩衝液は、酢酸塩濃度及び開始pHが異なり、120mg/mlのデノスマブ濃度でpH5.1を有する最終製剤を産生する。さらに、ソルビトールレベルは、最終生成物の等張性を維持するように調節される(約300mOsm/Kg)。70mg/mLのデノスマブを、7倍を超えた透析体積で各緩衝液に対して透析ろ過し、次いで、限外ろ過して約180gm/mLとし、透析ろ過緩衝液及びポリソルベートで希釈して、120mg/mLのデノスマブ濃度及び0.01%のポリソルベート20とする。安定性が、37℃で保存後、SE-UHPLCを用いて評価され、これらの製剤におけるデノスマブ安定性は非常に類似していることを示す。初期HMW種は、最初のアセテート濃度が増加するにつれてわずかに減少する。対照的に、凝集速度は、酢酸塩のレベルが低い製剤でわずかに改善する。
【0331】
【表22】
*最終製剤は、デノスマブ120mg mL及び0.01%(w/v)の最終濃度のPS20を含み、pHは5.1であった。
【0332】
実施例13
以下の実施例は、3つの異なるpH値:4.5、4.8及び5(または5.2)におけるデノスマブの化学的変性安定性に対するアルギニンの影響に関する研究の結果を報告する。
【0333】
全ての化学変性実験は、蛍光検出器を備えたUnchained Labs機器-HUNKを用いて行った。励起波長は280nmであり、発光スキャンは300と500nmとの間で記録された。各変性実験について、タンパク質、緩衝液、及び変性剤(グアニジニウムHCl)を変性剤濃度の線形増加で36ウェルに分注し、各条件について36点の曲線を得た。機器メーカー(Unchained Labs)が提供するカーブフィッティングソフトウェアをデータポイントのフィッティングに使用した。単一の遷移(ネイティブ←→変性)のみの証拠があったため、2状態モデルを使用した。実験は、10mM酢酸塩の5.0%w/vソルビトール中の0~6M尿素を用いて行い、4.5、4.8または5(5.2)の必要なpHに滴定した。全ての実験において、デノスマブタンパク質の濃度は7mg/mLであった。
【0334】
図40は、アルギニンが存在しない場合の、pH4.5、4.8及び5.0でのデノスマブの等温化学変性曲線を示す。アルギニンが存在しない場合、50%アンフォールディングに必要な化学変性剤のC
1/2は、試験した3つのpH条件において同様である。
【0335】
図41は、pH4.5、4.8及び5.2において75mMのアルギニンHClの存在下でのデノスマブの等温化学変性曲線を示す。pH4.8及び4.5と比較して、pH5.2において化学的変性安定性の顕著な増加があった。C
1/2では、より低いpHに対してpH5.2においては、変性剤のグアニジニウムHClが1Mだけ増加する。したがって、アルギニンの保護的性質は驚くべきであり、pHに大きく依存する。
【0336】
実施例14
以下の実施例は、シリンジ中の高濃度デノスマブ製剤の経時安定性に対するアルギニン及びフェニルアラニンの効果に関する研究の結果を提供する。
【0337】
前の研究では、アルギニン塩酸塩及びフェニルアラニンが、デノスマブのHMWS形成の初期開始レベル及び速度を低下させることが確認された。この研究では、アルギニン塩酸塩、フェニルアラニン、及びアルギニン塩酸塩とフェニルアラニンの組み合わせを含む製剤を、3ヶ月以下の間、2つの異なる温度でシリンジに保存された、120mg/mLのデノスマブを含有する溶液に対する安定化効果について評価した。
【0338】
試験された製剤は、以下の表17に記載されている。製剤56~59を調製するために、酢酸塩中70mg/mL、pH5.2のデノスマブを、下記の透析ろ過(DF)緩衝液に対して8透析体積で透析ろ過し、緩衝液交換を確実にした。次いで、その材料を180mg/mL超に限外ろ過し、続いて120mg/mLに希釈し、ポリソルベート20を0.01%の最終濃度まで添加した。製剤56を対照製剤とみなした。列挙された酢酸塩、アルギニンHCl及びフェニルアラニンの値はDF緩衝液についてのものであり、120mg/mLデノスマブでの最終組成物の推定レベルは、他の対イオンが存在しない場合の添加剤排除及び酢酸塩共濃縮を考慮して提供される。5℃及び25℃での粘度は、1000秒-1(逆秒)までのずり速度でPaarモジュラーコンパクトレオメーターを使用して測定した。製剤を1.0mLの充填体積でガラスプレフィルドシリンジ(PFS)に充填した。パラレルシリンジセットを25℃の温度で3ヶ月間、37℃の温度で2ヶ月間保存した。HMWSの形成に基づく安定性はSE UHPLCを用いて評価した。
【0339】
【表23】
*各最終製剤は、120mg/mLのデノスマブ及び0.01%のPS20を含み、pHは製剤の略称に示される。
【0340】
図42及び43は、それぞれ25℃で3ヶ月間及び37℃で2ヶ月間における製剤及び時間の関数としてSE-UHPLCによってモニタリングされたHMWSのパーセントを示す。
【0341】
表18~21は、同じデータを表形式で示し、HMWSの初期レベルに対するHMWSの増加も示す。
【0342】
【0343】
【0344】
【0345】
【0346】
この実施例は、アルギニン、フェニルアラニン及びそれらの組み合わせの添加が、高濃度のデノスマブ製剤中の初期HMWS(t=0)のレベルをそれぞれ低下させることを示している。25℃では、HMWSの増加は、対照製剤56と比較して、フェニルアラニン製剤59では減少する。37℃で、製剤57及び59は、対照ソルビトール製剤56と比較してHMWS形成が減少している。アルギニンHClとフェニルアラニンの両方を含む製剤は、他の製剤と比較して37℃でより高い速度でHMWSを形成しており、これは、これらの添加剤の組み合わせは、この製剤中においてこのようなより高い温度ではデノスマブを不安定化させていることを示している。
【0347】
本発明の範囲内の変更は当業者には明らかであり得るので、以上の説明は、理解の明快さのためだけに与えられたもので、これにより不必要な制限は考えるべきではない。
【0348】
本明細書及び以下に続く特許請求の範囲を通して、文脈に特段の要求がない限り、「comprise(含む)」という語及び「comprises(含む)」及び「comprising(含む)」などの変形は、記載された整数またはステップ、または整数またはステップのグループの包含を意味し、任意の他の整数またはステップまたは整数またはステップのグループの除外を意味するものではないと理解されるであろう。
【0349】
本明細書全体にわたって、組成物は成分または材料を含むものとして記載されている場合、別段の記載がない限り、組成物は列挙された成分または材料の任意の組み合わせから実質的になるか、またはそれらからなることも企図されている。同様に、方法が特定のステップを含むものとして記載されている場合、他に記載されていない限り、これらの方法は列挙されたステップの任意の組み合わせから実質的になるか、またはそれらからなることも企図されている。本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素またはステップの非存在下で適切に実施することができる。
【0350】
本明細書に開示された方法及びその個々のステップの実施は、手動で、及び/または電子機器によって提供される手段または自動化により実施され得る。特定の実施形態を参照してプロセスを説明してきたが、当業者は、本方法に関連する作業を実行する他の方法を使用することができることを容易に理解するであろう。例えば、別段の記載がない限り、様々なステップの順序は、本方法の範囲または主旨から逸脱することがなければ変更されてもよい。さらに、個々のステップのいくつかを組み合わせたり、省略したり、追加のステップにさらに細分することができる。
【0351】
本明細書に引用された全ての特許、刊行物及び参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先する。
【配列表】