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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】枠体及び枠体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/968 20060101AFI20221209BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20221209BHJP
   E06B 3/30 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
E06B3/968 A
E06B1/34 Z
E06B3/30
E06B3/968 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018169599
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020041330
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 康之
(72)【発明者】
【氏名】榎 靖志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅紀
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-164163(JP,A)
【文献】特開2000-160950(JP,A)
【文献】特開2010-150819(JP,A)
【文献】特開2015-10408(JP,A)
【文献】特開昭48-59648(JP,A)
【文献】特開2013-71253(JP,A)
【文献】実開昭56-125987(JP,U)
【文献】特開2005-42386(JP,A)
【文献】実開昭56-16777(JP,U)
【文献】特開2010-48083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/34
E06B 3/20-3/22
E06B 3/30
E06B 3/96-3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる一対の縦枠及び一対の前記縦枠と直交する方向に延びる一対の横枠を四方枠状に連結してなり、
前記縦枠及び前記横枠は、基材と、前記基材の表面に形成され前記基材とは異なる色の表層部材と、を有し、
前記縦枠と前記横枠とは、前記表層部材と同色であって熱溶着された接着部材を介して連結されていることを特徴とする枠体。
【請求項2】
前記縦枠または前記横枠は内部に中空部を有し、
前記接着部材は、前記表層部材に沿って延びる第1延在部と、前記第1延在部に直交して延びるとともに、前記縦枠及び前記横枠の板厚よりも厚い第2延在部とを有する請求項1に記載の枠体。
【請求項3】
前記縦枠または前記横枠の少なくとも一方の端面には、前記表層部材よりも前記縦枠または前記横枠の内部側に形成されるとともに、隣接する前記縦枠または前記横枠の他方側に向かって突出する段部が設けられ、
前記接着部材は前記段部を覆うように設けられる
請求項1または請求項2に記載の枠体。
【請求項4】
前記縦枠と前記横枠とを突き当てて形成された角部の外周側において、
前記縦枠または前記横枠のうち少なくとも一方の端部には、側部と、底部と、を有する凹状の切欠き部が形成され、
前記切欠き部には、前記接着部材が設けられ、
前記側部は前記縦枠または前記横枠のうちの他方と連結されている請求項1から3のいずれか一項に記載の枠体。
【請求項5】
上下方向に延びる一対の縦枠及び一対の前記縦枠と直交する方向に延びる一対の横枠とを四方枠状に連結してなり、
前記縦枠及び前記横枠は、基材と、前記基材の表面に形成され前記基材とは異なる色の表層部材と、を有し、
前記縦枠と前記横枠とを、前記表層部材と同色の接着部材を介して連結した枠体の製造方法であって、
隣接する前記縦枠または前記横枠の少なくとも一方の端面に前記接着部材を配置する接着部材配置工程と、
前記縦枠及び前記横枠の端面を加熱する加熱工程と、
前記縦枠と前記横枠とを当接し、圧着して前記縦枠と前記横枠とを溶着して連結する連結工程と、
を備える枠体の製造方法。
【請求項6】
前記接着部材配置工程において、前記縦枠の両端面及び前記横枠の両端面に前記接着部材を設置する
請求項5に記載の枠体の製造方法。
【請求項7】
前記縦枠または前記横枠の少なくとも一方の端面には、前記基材の表面よりも前記縦枠または前記横枠の内部側に形成されるとともに、隣接する前記縦枠または前記横枠の他方側に向かって突出する段部が設けられ、
前記接着部材には、前記段部に当接可能な窪みが形成され、
前記接着部材配置工程において、前記接着部材の前記窪みが、前記段部を覆うように設けられる
請求項5または請求項6に記載の枠体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体及び枠体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の縦枠と、上枠と、下枠とを方形状に連結した樹脂製の枠体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の枠体は、各枠の長手方向の端部を45度に切断加工し、切断した端面を突き合わせて、熱溶着により圧着して連結することによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-52364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外観向上の目的で、枠体(障子)の基材の表面を基材とは異なる色の表層部材で覆った枠体が知られている。このような枠体を溶着して接合する際、特許文献1に示すように、各枠同士を突き合せて熱溶着により圧着して連結する。このとき、熱溶着の際、枠同士の接合面から内側の基材及び表層部材が盛り上がり、枠体の表面にはバリが発生する。このバリを除去すると、枠間には基材が露出してしまう。基材の色と表層部材の色とが異なるため、露出した基材を表層部材と同じ色に塗装する必要が生じる。露出部分の塗装は人の手で行われるため、工数や資材費が掛かり、生産効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、生産効率を向上可能な枠体及び枠体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る枠体は、上下方向に延びる一対の縦枠及び一対の前記縦枠と直交する方向に延びる一対の横枠を四方枠状に連結してなり、前記縦枠及び前記横枠は、基材と、前記基材の表面に形成され前記基材とは異なる色の表層部材と、を有し、前記縦枠と前記横枠とは、前記表層部材と同色であって熱溶着された接着部材を介して連結されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、縦枠と横枠とは、表層部材と同色の接着部材を介して連結されているため、基材が縦枠と横枠との間から露出することを防止することができる。すなわち、接着部材が縦枠と横枠との間に露出しているため、従来のように、露出した基材を表層部材と同じ色で塗る必要がない。これにより、生産効率を向上させることができる。また、本発明によれば、露出した基材を表層部材と同じ色で塗る必要がないため、色ムラの発生や枠体ごとの色のバラつきを抑えることができる。従って、品質を向上させることが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る枠体において、前記縦枠または前記横枠は内部に中空部を有し、前記接着部材は、前記表層部材に沿って延びる第1延在部と、前記第1延在部に直交して延びるとともに、前記縦枠及び前記横枠の板厚よりも厚い第2延在部とを有していてもよい。
【0009】
縦枠及び前記横枠の板厚よりも厚い第2延在部第2延在部を有しているため、縦枠と横枠との接触面積を大きくすることができる。従って、縦枠と横枠とをより強固に接着することができる。
【0010】
また、本発明に係る枠体において、前記縦枠または前記横枠の少なくとも一方の端面には、前記表層部材よりも前記縦枠または前記横枠の内部側に形成されるとともに、隣接する前記縦枠または前記横枠の他方側に向かって突出する段部が設けられ、前記接着部材は前記段部を覆うように設けられていてもよい。
【0011】
段部を覆うように接着部材が設けられているため、表層部材の表面からの基材の露出をより効果的に抑えることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る枠体において、前記縦枠と前記横枠とを突き当てて形成された角部の外周側において、前記縦枠または前記横枠のうち少なくとも一方の端部には、側部と、底部と、を有する凹状の切欠き部が形成され、前記切欠き部には、前記接着部材が設けられ、前記側部は前記縦枠または前記横枠のうちの他方と連結されていてもよい。
【0013】
切欠部に接着部材が配置されているため、枠体の側面においても基材の露出を抑えることができる。従って、露出部分に色付けする手間が省ける。また、枠体の角部から接着部材がはみ出すのを抑えることができるため、資材費を抑えることができる。
【0014】
本発明に係る枠体の製造方法において、上下方向に延びる一対の縦枠及び一対の前記縦枠と直交する方向に延びる一対の横枠とを四方枠状に連結してなり、前記縦枠及び前記横枠は、基材と、前記基材の表面に形成され前記基材とは異なる色の表層部材と、を有し、
前記縦枠と前記横枠とを、前記表層部材と同色の接着部材を介して連結した枠体の製造方法であって、隣接する前記縦枠または前記横枠の少なくとも一方の端面に前記接着部材を配置する接着部材配置工程と、前記縦枠及び前記横枠の端面を加熱する加熱工程と、前記縦枠と前記横枠とを当接し、圧着して前記縦枠と前記横枠とを溶着して連結する連結工程と、を備える。
【0015】
この場合、隣接する縦枠または横枠の少なくとも一方の端面に接着部材を配置し、縦枠及び横枠の端面を加熱して縦枠及び横枠を圧着して連結する際、縦枠と横枠との間から接着部材がはみ出る。表層部材と同色の接着部材を縦枠または横枠の少なくとも一方の端面に配置することにより、はみ出した部分(バリ)を切除しても、表層部材と同色の接着部材が残るため、基材は露出しない。これにより、基材を塗装するコストと手間を省くことができるため、生産効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る枠体の製造方法では、前記接着部材配置工程において、前記縦枠の両端面及び前記横枠の両端面に前記接着部材を設置してもよい。
この場合、より均一、かつ、安定した状態で縦枠と横枠とを接着させることができる。
【0017】
また、本発明に係る枠体の製造方法では、前記縦枠または前記横枠の少なくとも一方の端面には、前記基材の表面よりも前記縦枠または前記横枠の内部側に形成されるとともに、隣接する前記縦枠または前記横枠の他方側に向かって突出する段部が設けられ、前記接着部材には、前記段部に当接可能な窪みが形成され、前記接着部材配置工程において、前記接着部材の前記窪みが、前記段部を覆うように設けられていてもよい。
【0018】
この場合には、段部に窪みを当接させることにより、段部の上面には必ず接着部材が配置される。これにより、表層部材の表面からの基材の露出を確実に抑えることができる。また、段部に窪みを当接させることにより、一定の位置に接着部材を配置させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の枠体及び枠体の製造方法によれば、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る枠体の一例を示す室内側から見た正面図である。
図2図1に示す枠体(障子)の室外側から見た斜視図である。
図3図1に示す枠体(障子)のA-A断面図である。
図4図1の枠体(障子)の接着部材を示す斜視図である。
図5図3の枠体(障子)の連結部分を示す拡大図である。
図6図1の枠体(障子)の縦枠(戸先側縦框)を示す図である。
図7図1の枠体(障子)の縦枠(戸先側縦框)の端部を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る枠体の製造方法に用いる接着部材の側面図である。
図9図8の溶着部材の斜視図である。
図10図8の溶着部材を縦枠(戸先側縦框)の端面に配置した状態を示す図である。
図11図8の溶着部材を縦枠(戸先側縦框)の端面に配置した状態を示す図である。
図12】各框の端面に接着部材を配置した状態を示す図である。
図13】各框同士を圧着して溶着する状態を示す図である。
図14】溶着後の接着部材によるバリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態に係る障子(枠体)10について、図1から図14を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る建具1は、例えば、辷り出し窓であり、壁部2に形成された開口部に設けられている。建具1は、開口部に沿って設けられた四方枠状の開口枠体40と、開口枠体40の内側に室内外方向に開閉可能に設けられた障子10とを備えている。
本実施形態においては、建具1に設けられた障子10を用いて説明を行うが、本願発明は辷り出し窓に限られず、引違い窓、開き窓などに使用される障子や開口枠体にも適用可能である。
以下の説明において、室外側と室内側とを結ぶ方向を室内外方向とし、壁部2に取り付けられた建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向とする。
【0022】
開口枠体40は、左右方向に延びる上枠41及び下枠42と、上下方向に延びて上枠41及び下枠42と連結された一対の縦枠43,44とを有している。上枠41、下枠42、及び一対の縦枠43,44は、略同じ断面に形成されている。上枠41の両端部41a,41b、下枠42の両端部42a,42b、及び縦枠43の両端部43a,43b、縦枠44の両端部44a,44bは、それぞれ斜め45°に切断されている。上枠41及び下枠42と、一対の縦枠43,44とは、互いの端部を突き合わせて90°をなすように連結されている。
【0023】
障子(枠体)10は、図1及び図2に示すように、それぞれ四方枠状に形成された框体11と、框体11内に配置されて框体11によって支持された複層ガラス12とを有している。
【0024】
框体11は、上下方向に延びる戸先側縦框(縦枠)13,吊元側縦框(縦枠)14と、戸先側縦框13の上端部13aと吊元側縦框14の上端部14aとを連結する上框15と、戸先側縦框13の下端部13bと吊元側縦框14の下端部14bとを連結する下框16とを備えている。上框15及び下框16は、左右方向に延びている。
図2に示すように、戸先側縦框13、吊元側縦框14、上框15及び下框16は、それぞれ基材13A、14A、15A、16Aと、表層部材20と、を有している。例えば、図3に示すように、戸先側縦框13は、基材13Aと表層部材20とを有し、上框15は、基材15Aと表層部材20とを有している。
図1に示すように、戸先側縦框13には、室内側にレバーハンドル6が設けられている。レバーハンドル6は、障子10に設けられた施錠機構(不図示)の施錠状態と解錠状態とを切り替えるように構成されている。
【0025】
図2に示すように、上框15、下框16、戸先側縦框13及び吊元側縦框14は、それぞれ同じ断面に形成されている。上框15の両端部15a,15b、下框16の両端部16a,16b、戸先側縦框13の両端部13a,13b及び吊元側縦框14の両端部14a,14bはそれぞれ斜め45°に切断されている。上框15の端部15aと戸先側縦框13の端部13aとを突き合わせて90°をなすように、接着部材30が介在された状態で連結されている。同様に上框15の端部15bと吊元側縦框14の端部14aとを突き合わせて、吊元側縦框14の端部14bと下框16の端部16bとを突き合わせて、下框16の端部16aと戸先側縦框13の端部13bとを突き合わせて、90°をなすように、接着部材30がそれぞれ介在された状態で連結されている。このようにして、框体11が四方枠状に形成されている。
【0026】
図3に示すように、外観の向上の目的から、基材13A及び基材15Aの室外側の表面11aは表層部材20で覆われている。すなわち、上框15を構成する基材15A、下框16を構成する基材16A、戸先側縦框13を構成する基材13A及び吊元側縦框14を構成する基材14Aのそれぞれの表面11aは、表層部材20で覆われている。表層部材20は、例えば、アクリル樹脂である。本実施形態では、各基材13A~16Aと、表層部材20との2層の押出成形により、基材13A~基材16Aの表面11aに表層部材20が形成されて、上框15、下框16、戸先側縦框13及び吊元側縦框14が形成されている。表層部材20は、少なくとも基材13A~基材16Aの表面11aを覆っていればよい。本実施形態では、表層部材20は、基材13A~基材16Aの表面11a及び側面11bを覆っている。
各框を構成する基材13A~基材16Aは、表層部材20と異なる色によって形成されている。本実施形態では、基材13A~16Aは、例えば白色であり、表層部材20は、黒色である。
接着部材30は、表層部材20と同じ色によって形成されている。すなわち、本実施形態においては、接着部材30は黒色である。なお、表層部材20と接着部材30との色が同じ色であればよいため、基材13A~16A、表層部材20、接着部材30の色は任意である。
【0027】
次に、各框同士の連結構造は同じであるため、戸先側縦框13と上框15との連結部分について説明する。
図3に示すように、各上框15、下框16、戸先側縦框13及び吊元側縦框14は、中空部S2を有している。図3及び図4に示すように、接着部材30は、表層部材20に沿って延びる第1接着部(第1延在部)31と、障子10の側面10bに沿って延びる突出部32と、第1接着部31に直交して延びる第2接着部(第2延在部)38と、中空部S2に挿入される第1片33及び第2片34とを有している。接着部材30は、第1接着部31と突出部32とにより、L字状に形成されている。接着部材30の第1接着部31は、障子10の表面10a側に露出している。接着部材30の突出部32は、障子10の側面10b側に露出している。
【0028】
図5に示すように、戸先側縦框13の端面13cには、表層部材20よりも戸先側縦框13の内側に形成されるとともに、隣接する上框15の端面15c側に向かって突出する段部17が設けられている。同様に、上框15の端面15cには、表層部材20よりも上框15の内側に形成されるとともに、隣接する戸先側縦框13の端面13cに向かって突出する段部18が設けられている。接着部材30は段部17及び段部18を覆うように設けられている。すなわち、第1接着部31は、戸先側縦框13と上框15との間の、戸先側縦框13の段部17と上框15の段部18とによって形成される空間S1内に充填されており、段部17の上面17a及び段部18の上面18aに、第1接着部31が配置されている。第1接着部31は、表層部材20と略面一になる位置まで設けられている。さらに、第1接着部31は、戸先側縦框13の段部17を形成する突起部17bと、上框15の段部18を形成する突起部18bとの間から戸先側縦框13の下面13d及び上框15の下面15dまで設けられている。すなわち、第1接着部31は、戸先側縦框13と上框15との間において、表層部材20から戸先側縦框13及び上框15の内部に形成された中空部S2まで達し、戸先側縦框13と上框15とを連結している。
【0029】
図4に示すように、各框13~16を突き当てて形成された角部の外周側において、戸先側縦框13の端部13fには、側部131と底部132とを有する凹状の切欠部13eが形成されている。切欠部13eは、室内外方向に沿って戸先側縦框13及び表層部材20を切り欠いた部分である。突出部32は、戸先側縦框13の切欠部13eに配置されている。同様に、戸先側縦框13に対向して配置される上框15にも、側部151と底部152とを有する凹状の切欠部15eが形成され、突出部32は、上框15の切欠部15eに配置されている。これにより、室内外方向(厚み方向)においても、戸先側縦框13と上框15との間には突出部32が介在された状態で、戸先側縦框13と上框15とが連結されている。また、戸先側縦框13の側部131は、上框15の側部151と連結されている。
【0030】
次に、本発明に係る枠体の製造方法について、図6から図14を参照して説明する。
まず、連結前の框体11及び接着部材30Aの構成について説明する。各框の端部の構造は同じであるため、戸先側縦框13を例に挙げて説明する。
図6に示すように、戸先側縦框13には、両端部13a,13bに沿って段部17が形成されている。段部17は、表層部材20及び戸先側縦框13を内側に(厚み方向に)切り欠かれることによって形成されている。段部17の突出寸法は、数ミリ程度である。
図7に示すように、戸先側縦框13の側面の端部13fには、切欠部13eが形成されている。切欠部13eは、戸先側縦框13の側面の端部13fの室内外方向における中央部分を含んだ位置に形成されている。すなわち、戸先側縦框13の側面の端部13fの上部及び下部(側部)131を残して切り欠かれている。
【0031】
次に、框間に介在させる接着部材30Aについて説明する。
図8に示すように、溶着前の接着部材30Aは、第1接着部31Aと、第1接着部31Aに直交する方向に延びる突出部32Aと、第1片33及び第2片34とを備えている。また、図9に示すように、第1片33及び第2片34は、突出部32Aの延在方向に延びるとともに、第1接着部31A及び突出部32Aの延在方向に直交する方向に突出する板状部材である。また、第1片33及び第2片34は、第1接着部31の延在方向に沿って間隔をあけて設けられている。
さらに、接着部材30Aには、第1接着部31A及び突出部32Aの延在方向に直交する方向に突起した突起部35が設けられている。突起部35は、第1接着部31Aの上部に第1接着部31Aの延在方向に沿って延びている。突起部35は、第1片33及び第2片34と間隔をあけて設けられている。これにより、突起部35と第1片33及び第2片34との間には窪み36が形成される。この窪み36は、戸先側縦框13に形成された段部17に当接(載置)可能である。
【0032】
また、図7に示すように、各框には、内部に中空部S2が形成されている。中空部S2の室内外方向における寸法をL1とし、図9に示すように、第1片33及び第2片34の延在方向の寸法をL2とすると、中空部の寸法L1と第1片33及び第2片34の寸法L2とは、ほぼ同じか、若干第1片33及び第2片34の寸法L2の方が大きく形成されている。これにより、第1片33及び第2片34は中空部S2に篏合可能な構成となっている。
また、図7に示すように、切欠部13eの室内外方向における寸法をL3とし、図9に示すように、突出部32Aの延在方向における寸法をL4とすると、突出部32Aの寸法L4の方が小さく形成されている。これにより、接着部材30Aを溶着した際、接着部材30Aが切欠部13eに埋まるように構成されている。
【0033】
図10に示すように、戸先側縦框13の端部13aに、上述した接着部材30Aを配置する(接着部材配置工程)。このとき、接着部材30Aの窪み36が段部17に当接し、戸先側縦框13の切欠部13eに接着部材30Aの突出部32Aは配置される。
図10及び図13に示すように、接着部材30Aにおいて、戸先側縦框13及び上框15の板厚の寸法L5に比べて、接着部材30Aの第2接着部38の厚みの寸法L6の方が厚く形成されている。また、図11に示すように、第1片33及び第2片34が中空部S2に入り込み、接着部材30Aと戸先側縦框13とが篏合する。
【0034】
戸先側縦框13の端部13aと同様に、戸先側縦框13の端部13b、上框15の両端部15a,15b、下框16の両端部16a,16b、戸先側縦框13の両端部13a,13b及び吊元側縦框14の両端部14a,14bそれぞれに接着部材30を配置した後、図12に示すように、上框15の両端部15a,15b、下框16の両端部16a,16b、戸先側縦框13の両端部13a,13b及び吊元側縦框14の両端部14a,14bをそれぞれ対向させて配置する。隣接する接着部材30A間に加熱した熱板(図示略)を挟み、接着部材30A及び各上框15,下框16,戸先側縦框13,吊元側縦框14の端面を溶融させる(加熱工程)。その後、図13に示すように、戸先側縦框13の端部13aと上框15の端部15aとを突き合わせて圧着する。他の端部においても同様に突き合わせて圧着して、上框15,下框16,戸先側縦框13,吊元側縦框14同士を溶着して連結する(連結工程)。このとき、図14に示すように、表層部材20の表面20aからは接着部材30がはみ出し、バリ37が発生する。バリ37は、カッター装置などを用いて、接着部材30が表層部材20の表面20aと略面一となるように除去され、接着部材30が介在された状態で框同士が連結される。
【0035】
本実施形態の障子10では、4つの角部である隣接する上框15と戸先側縦框13との間、戸先側縦框13と下框16との間、下框16と吊元側縦框14との間、吊元側縦框14と上框15との間に接着部材30が介在された状態で上框15,下框16,戸先側縦框13,吊元側縦框14同士が連結されている。これにより、白色の框体11が表層部材20の表面20aから露出することを防止することができる。すなわち、接着部材30が上框15,下框16,戸先側縦框13,吊元側縦框14間に露出しているため、従来のように、露出した框体11の白色部分を表層部材20と同じ黒色で塗る必要がない。従って、生産効率を向上させることができ、さらには、色ムラの発生や枠体ごとの色のバラつきを抑えることができるので、品質を向上させることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、室内外方向に沿って延びる突出部32を有しているため、角部分にバリが出ないように形成した切欠部13eを埋めることができる。
接着部材30Aにおいて、基材13Aの板厚の寸法L5に比べて、接着部材30Aの第2接着部38の厚みの寸法L6の方が厚く形成されているため、第2接着部38は、図14に示すように、基材13A~基材16Aの下面に回り込む。これにより、隣接する框間の接合面積が広くなるので、接着強度が増すことになり、框間同士が強固に連結される。
【0037】
本実施形態では、段部17の上面17aに接着部材30が載置されているため、表層部材20の表面20aからの框体11の露出をより効果的に抑えることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、切欠部13eに接着部材30が配置されているため、障子10の側面10bにおいても、白色の框体11の露出を抑えることができる。従って、露出部分に色付けする手間が省ける。また、障子10の角部から接着部材30がはみ出すのを抑えることができるため、資材費を抑えることができる。
【0039】
本実施形態の障子10の製造方法では、隣接する上框15の両端部15a,15b、下框16の両端部16a,16b、戸先側縦框13の両端部13a,13b及び吊元側縦框14の両端部14a,14bに配置された接着部材30を加熱して框同士を圧着して連結すると、上框15,下框16,戸先側縦框13,吊元側縦框14間から接着部材30がはみ出る。表層部材20と同色の接着部材30を框の両端部に配置するため、はみ出した部分(バリ)を切除しても、表層部材20と同色の接着部材30が残るので、白色の框体11は露出しない。これにより、従来のように框間に露出した白色部分を塗装するコストと手間を省くことができるため、生産効率を向上させることができる。
また、隣接する上框15の両端部15a,15b、下框16の両端部16a,16b、戸先側縦框13の両端部13a,13b及び吊元側縦框14の両端部14a,14bのそれぞれに接着部材30を配置しているため、より均一、かつ、安定した状態で框同士を接着させることができる。
【0040】
本実施形態では、段部17に窪み36を当接させることにより、段部17の上面17aには必ず接着部材30Aが配置される。これにより、表層部材20の表面20aからの框体11の露出を確実に抑えることができる。また、段部17に窪み36を当接させることにより、一定の位置に接着部材30Aを配置させることができる。
さらに、接着部材30Aが、第1片33及び第2片34を有しているため、框同士をより強固に連結することができる。
【0041】
以上、本発明に係る枠体及び枠体の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【0042】
例えば、実施形態では、本発明の枠体として障子10を例に挙げて説明したが、開口枠体40においても同様に構成及び製造方法を適用することが可能である。すなわち、上枠41の端部41aと縦枠43の端部43aとの間、縦枠43の端部43bと下枠42の端部42aとの間、下枠42の端部42bと縦枠44の端部44bとの間、縦枠44の端部44aと上枠41の端部41bとの間に接着部材が介在された状態で、上枠41、下枠42、一対の縦枠43,44が連結されていてもよい。
また、表層部材20は、框体11の表面11a及び側面11bを覆っている構成としたが、少なくとも框体11の表面11aを覆っていればよい。
表層部材20は、框体11の室外側の表面11aに設けられた構成としたが、框体11の室内側の表面に表層部材20を設けてもよく、室内側と室外側の両方の表面に表層部材20が設けられていてもよい。
【0043】
また、接着部材30は、第1接着部31と第2接着部38とを有する構成としたが、少なくとも表層部材20を含む框体11の表面において、隣接する框間に接着部材30が介在された状態で、框同士が連結されていればよいため、第2接着部38は設けられていなくてもよい。また、第1片33、第2片34は、必ずしも設けられていなくてもよく、また、いずれか一方であってもよい。
また、各框に段部を設けていない構成であってもよい。各框が段部を設けていなくても各框間に接着部材を設けることにより框体11が障子10の表面10aから露出するのを防ぐことができる。
切欠部13eは必ずしも形成されていなくてもよい。
【0044】
本実施形態では、各框の両端部に接着部材30を配置して溶着する方法を示したが、片側の端部にのみ接着部材30を配置して溶着する方法であってもよい。その場合、対向する框の端面のいずれか一方に接着部材30を配置すればよい。
【符号の説明】
【0045】
S1 中空部
10 障子(枠体)
11 框体(基材)
11a 框体の表面
13 戸先側縦框(縦枠)
13e 切欠部
14 吊元側縦框(縦枠)
15 上框(上枠)
16 下框(下枠)
17、18 段部
20 表層部材
30,30A 接着部材
31,31A 第1接着部(第1延在部)
38 第2接着部(第2延在部)
40 開口枠体(枠体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14