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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】光センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20221209BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20221209BHJP
   H04N 5/235 20060101ALI20221209BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221209BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20221209BHJP
   G01J 3/51 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
G01J1/42 J
G01J1/44 M
H04N5/235 700
H04N5/225 300
G03B7/091
G01J3/51
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018186400
(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公開番号】P2020056641
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石藤 潤一
(72)【発明者】
【氏名】上平 祥嗣
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006802(JP,A)
【文献】特開2018-064214(JP,A)
【文献】特開平08-201158(JP,A)
【文献】特開2016-134753(JP,A)
【文献】特開2015-138011(JP,A)
【文献】特開2016-135173(JP,A)
【文献】特開2014-220763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60
H04N 5/222-5/28
G03B 7/00-7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境光の光量に応じた第1光検出信号を出力する第1光検出回路と、
前記第1光検出信号のピーク周期毎にフラグ信号のパルス出力を行うロジック回路と、
を有し、
前記ロジック回路は、基準値設定期間において前記ピーク周期の実測値に応じて前記フラグ信号のパルス出力周期の基準値を設定し、補正値算出期間において前記ピーク周期の複数の実測値と前記パルス出力周期の前記基準値をそれぞれ比較することにより複数の誤差を求めて前記複数の誤差の平均値から前記パルス出力周期の補正値を設定することを特徴とする光センサ。
【請求項2】
前記ロジック回路は、前記補正値算出期間の満了後、補正済みの前記パルス出力周期毎に前記フラグ信号のパルス出力を行うことを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記ロジック回路は、前記補正値を逐次更新することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記ロジック回路は、前記第1光検出信号のピーク位置を複数検出して前記ピーク周期の実測値を求めることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光センサ。
【請求項5】
前記ロジック回路は、前記第1光検出信号の連続する3つの測定値を、D[n-1]、D[n]、D[n+1]として、D[n-1]<D[n]かつD[n]≧D[n+1]を満たすとき、D[n]を前記第1光検出信号のピーク値とすることを特徴とする請求項4に記載の光センサ。
【請求項6】
前記ロジック回路は、前記ピーク周期の実測値と前記パルス出力周期の基準値との誤差が所定の上限値に達したとき、または、前記誤差から求められる前記パルス出力周期の補正値が所定の上限値に達したとき、若しくは、外部センサの出力信号が所定の条件を満たしたときに、前記パルス出力周期の基準値を設定し直すことを特徴とする請求項~請求項5のいずれか一項に記載の光センサ。
【請求項7】
前記環境光の色成分に応じた第2光検出信号を出力する第2光検出回路をさらに有することを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の光センサ。
【請求項8】
前記ロジック回路は、前記第1光検出信号を第1周期でサンプリングし、前記第2光検出信号を前記第1周期よりも長い第2周期でサンプリングすることを特徴とする請求項7に記載の光センサ。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の光センサと、
前記光センサから前記フラグ信号の入力を受け付けるマイコンと、
前記光センサと前記マイコンとの間を接続するバスと、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
カメラをさらに有し、
前記マイコンは、前記フラグ信号に応じて前記カメラの露光タイミングを制御することを特徴とする請求項9に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、光センサ(例えばカラーセンサ)に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯やLED[Light Emitting Diode]照明機器などの人工照明は、商用電源周波数(日本国内であれば50Hzまたは60Hz)またはこれに応じた周波数で、その光量が周期的に変動する現象(いわゆるフリッカー)を生じる。このようなフリッカーの影響により、同じ環境下で撮影した写真であっても露光タイミングに応じた明暗の差を生じる。
【0003】
そこで、デジタルカメラでは、環境光のフリッカー周期よりも十分に短いサンプリング周期(例えば500μs)で環境光の光量を逐次検出し、明暗の差が少ないタイミングで露光を行うことにより、フリッカーの影響が抑えられている。
【0004】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-115173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スマートフォンなどの電子機器では、環境光の光量取得をカラーセンサが担っている。しかしながら、カラーセンサの出力値をマイコンで逐次読み出すためには、バスの通信速度(100K~1Mbps程度)が足りないので、実質的なサンプリング周期が長くなってしまう。そのため、精度の高いフリッカー検出を行うことが難しかった。
【0007】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、最小限の通信で精度の高いフリッカー検出を行うことのできる光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に開示されている光センサは、環境光の光量に応じた第1光検出信号を出力する第1光検出回路と、前記第1光検出信号のピーク周期毎にフラグ信号のパルス出力を行うロジック回路と、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0009】
なお、第1の構成から成る光センサにおいて、前記ロジック回路は、前記ピーク周期の実測値に応じて前記フラグ信号のパルス出力周期の基準値を設定する構成(第2の構成)にするとよい。
【0010】
また、第2の構成から成る光センサにおいて、前記ロジック回路は、前記ピーク周期の実測値と前記パルス出力周期の基準値との誤差から前記パルス出力周期の補正値を求める構成(第3の構成)にするとよい。
【0011】
また、第2または第3の構成から成る光センサにおいて、前記ロジック回路は、前記第1光検出信号のピーク位置を複数検出して前記ピーク周期の実測値を求める構成(第4の構成)にするとよい。
【0012】
また、第4の構成から成る光センサにおいて、前記ロジック回路は、前記第1光検出信号の連続する3つの測定値を、D[n-1]、D[n]、D[n+1]として、D[n-1]<D[n]かつD[n]≧D[n+1]を満たすとき、D[n]を前記第1光検出信号のピーク値とする構成(第5の構成)にするとよい。
【0013】
また、第2~第5いずれかの構成から成る光センサにおいて、前記ロジック回路は、前記ピーク周期の実測値と前記パルス出力周期の基準値との誤差が所定の上限値に達したとき、または、前記誤差から求められる前記パルス出力周期の補正値が所定の上限値に達したとき、若しくは、外部センサの出力信号が所定の条件を満たしたときに、前記パルス出力周期の基準値を設定し直す構成(第6の構成)にするとよい。
【0014】
また、第1~第6いずれかの構成から成る光センサは、前記環境光の色成分に応じた第2光検出信号を出力する第2光検出回路を有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0015】
また、第7の構成から成る光センサにおいて、前記ロジック回路は、前記第1光検出信号を第1周期でサンプリングし、前記第2光検出信号を前記第1周期よりも長い第2周期でサンプリングする構成(第8の構成)にするとよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、第1~第8いずれかの構成から成る光センサと、前記光センサから前記フラグ信号の入力を受け付けるマイコンと、前記光センサと前記マイコンとの間を接続するバスと、を有する構成(第9の構成)とされている。
【0017】
第9の構成から成る電子機器は、カメラをさらに有し、前記マイコンは、前記フラグ信号に応じて前記カメラの露光タイミングを制御する構成(第10の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本明細書中に開示されている発明によれば、最小限の通信で精度の高いフリッカー検出を行うことのできる光センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】カラーセンサの一構成例を示す図
図2】各種透過フィルタの光学特性を示す図
図3】ロジック回路の一構成例を示す図
図4】ピーク位置検出動作及びピーク周期補正動作の概要を示す図
図5】ピーク位置検出動作の詳細を示す図
図6】ピーク位置検出動作の詳細を示すフローチャート
図7】スマートフォンの外観図
図8】スマートフォンの内部構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<カラーセンサ>
図1は、カラーセンサの一構成例を示す図である。本構成例のカラーセンサ1は、スマートフォンなどの電子機器に搭載されて、環境光の色成分(赤色成分R、緑色成分G、青色成分B、及び、赤外線成分IR)を検出する光センサICの一種であり、第1光検出回路10と、第2光検出回路20と、ロジック回路30と、赤外線遮断フィルタ40と、を有する。
【0021】
第1光検出回路10は、受光素子11と、AD[Analog-to-Digital]変換器12と、を含み、環境光の光量に応じた第1光検出信号S1を出力する。なお、第1光検出回路10は、蛍光灯やLED照明機器などの人工照明に起因する環境光のフリッカーを検出するために設けられている。
【0022】
受光素子11は、赤外線遮断フィルタ40を介して入射される環境光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。AD変換器12は、受光素子11からのアナログ電流信号をデジタル(例えば16ビット)の第1光検出信号S1に変換する。
【0023】
第2光検出回路20は、受光素子(21R、21G、21B、21IR)と、AD変換器(22R、22G、22B、22IR)と、各種透過フィルタ(23R、23G、23B、23IR)と、を含み、環境光の色成分(R、G、B、IR)に応じた第2光検出信号(S2R、S2G、S2B、S2IR)を出力する。
【0024】
受光素子21Rは、赤色光透過フィルタ23Rを介して入射される赤色光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。AD変換器22Rは、受光素子21Rからのアナログ電流信号をデジタル(例えば16ビット)の赤色光検出信号S2Rに変換して出力する。赤色光透過フィルタ23Rは、図2の実線で示した光学特性を持ち、赤外線遮断フィルタ40を介して入射される環境光の赤色成分R(およそ波長620~750nm)を選択的に透過させる。
【0025】
受光素子21Gは、緑色光透過フィルタ23Gを介して入射される緑色光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。AD変換器22Gは、受光素子21Gからのアナログ電流信号をデジタル(例えば16ビット)の緑色光検出信号S2Gに変換して出力する。緑色光透過フィルタ23Gは、図2の小破線で示した光学特性を持ち、赤外線遮断フィルタ40を介して入射される環境光の緑色成分G(およそ波長495~570nm)を選択的に透過させる。
【0026】
受光素子21Bは、青色光透過フィルタ23Bを介して入射される青色光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。AD変換器22Bは、受光素子21Bからのアナログ電流信号をデジタル(例えば16ビット)の青色光検出信号S2Bに変換して出力する。青色光透過フィルタ23Bは、図2の大破線で示した光学特性を持ち、赤外線遮断フィルタ40を介して入射される環境光の青色成分B(およそ波長450~495nm)を選択的に透過させる。
【0027】
受光素子21IRは、赤外線透過フィルタ23IRを介して入射される赤外線の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。AD変換器22IRは、受光素子21IRからのアナログ電流信号をデジタル(例えば16ビット)の赤外線検出信号S2IRに変換して出力する。赤外線透過フィルタ23IRは、図2の一点鎖線で示した光学特性を持ち、環境光に含まれる赤外線成分IR(およそ波長750~1400nmの近赤外線)を選択的に透過させる。
【0028】
赤外線遮断フィルタ40は、受光素子11、赤色光透過フィルタ23R、緑色光透過フィルタ23G、及び、青色光透過フィルタ23Bそれぞれの上流側で、環境光に含まれる赤外線成分IRを遮断する。このような赤外線遮断フィルタ40を設けることにより、環境光の光量及びRGB成分(延いては色温度)を精度良く検出することができる。
【0029】
なお、上記の受光素子(11、21R、21G、21B、21IR)としては、それぞれ、フォトダイオードやフォトトランジスタなどを好適に用いることができる。
【0030】
ロジック回路30は、第1光検出信号S1を第1周期でサンプリングすることにより、環境光のフリッカーを検出する一方、第2光検出信号(S2R、S2G、S2B、S2IR)を第1周期よりも長い第2周期(例えば第1周期の32倍)でサンプリングすることにより、環境光の色成分を検出する。
【0031】
なお、ロジック回路30は、所定の通信規格(I2C[Inter-Integrated Circuit]など)に準拠したバス(不図示)を介して、カラーセンサ1外部のマイコン(不図示)とバス信号S3の双方向通信を行うインターフェイス機能を備えている。なお、バス信号S3には、例えば、環境光の色成分(R、G、B、IR)に関する測定データが含まれる。
【0032】
また、ロジック回路30は、マイコン側で環境光のフリッカー検出(さらにはその検出結果を反映した露光タイミング制御など)を行うことができるように、第1光検出信号S1のピーク周期毎(=環境光のフリッカー周期毎)に、フラグ信号S4のパルス出力を行う機能も備えている。
【0033】
以下では、ロジック回路30におけるフラグ信号S4のパルス出力機能について、具体的かつ詳細な説明を行う。
【0034】
<ロジック回路>
図3は、ロジック回路30の一構成例(特にフラグ信号S4のパルス出力機能に関連する信号処理経路)を示すブロック図である。本構成例のロジック回路30は、積分部31と、ピーク位置検出部32と、ピーク周期補正部33と、を含む。
【0035】
積分部31は、所定のサンプリング周期Ts毎に第1光検出信号S1を積分することにより、環境光の光量に応じた積分信号S31を離散的に出力する。なお、上記のサンプリング周期Ts(=先述の第1周期に相当)については、デジタルカメラにおけるフリッカー検出用のサンプリング周期と同等の長さ(例えば500μs)に設定するとよい。
【0036】
ピーク位置検出部32は、サンプリング周期Ts毎に逐次取得される積分信号S31から第1光検出信号S1のピーク位置S32を検出する(詳細は後述)。
【0037】
ピーク周期補正部33は、第1光検出信号S1のピーク位置S32から求めた第1光検出信号S1のピーク周期毎(=環境光のフリッカー周期毎)に、フラグ信号S4のパルス出力を行う。その際、ピーク周期補正部33は、フラグ信号S4のパルス出力周期を第1光検出信号S1のピーク周期と一致させるように補正する(詳細は後述)。
【0038】
なお、上記の積分部31、ピーク位置検出部32、及び、ピーク周期補正部33は、ハードウェア的に実装してもよいし、或いは、ソフトウェア的に実装してもよい。
【0039】
<ピーク位置検出動作、ピーク周期補正動作>
図4は、ロジック回路30におけるピーク位置検出動作及びピーク周期補正動作の概要を示す図であり、積分信号S31及びフラグ信号S4それぞれの挙動が描写されている。
【0040】
ロジック回路30(特にピーク位置検出部32)は、サンプリング周期Ts毎に積分信号S31を逐次サンプリングする(図中の黒丸を参照)。そして、ロジック回路30は、積分信号S31のサンプリング結果から、積分信号S31のピーク位置(=積分信号S31のピーク値が検出されるタイミングに相当、図中の白丸を参照)を複数検出し、積分信号S31のピーク周期(=環境光のフリッカー周期)の実測値を求める。
【0041】
図中のA区間(=基準値設定期間に相当)に着目すると、積分信号S31の第1ピーク位置(=ピーク値D1の検出タイミング)から第2ピーク位置(=ピーク値D2の検出タイミング)までの時間を測定することにより、ピーク周期の実測値T1が求められる。また、積分信号S31の第2ピーク位置(=ピーク値D2の検出タイミング)から第3ピーク位置(=ピーク値D3の検出タイミング)までの時間を測定することにより、ピーク周期の実測値T2が求められる。
【0042】
ロジック回路30は、上記のようにして求められたピーク周期の実測値T1及びT2から、フラグ信号S4のパルス出力周期の基準値Tを設定する。例えば、基準値Tは、ピーク周期の実測値T1及びT2の平均値(T=(T1+T2)/2)に設定すればよい。
【0043】
なお、本図では、測定開始からフリッカー周期の3倍程度に設定された基準値設定期間(=A区間)において、パルス出力周期の基準値Tを算出する例を挙げたが、A区間の長さはこれに限定されるものではなく、例えば、基準値設定期間を延長して3点以上の実測値(T1、T2、T3、…)から基準値Tを算出してもよいし、逆に、基準値設定期間を短縮して1点の実測値T1をそのまま基準値Tとして採用してもよい。
【0044】
その後、ロジック回路30は、基準値Tに設定されたパルス出力周期毎に、フラグ信号S4のパルス出力を行う。本図に即して述べると、ロジック回路30は、積分信号S31の第3ピーク位置(=ピーク値D3の検出タイミング)を起算点として、パルス出力周期(=基準値T)が経過する度に、フラグ信号S4のパルス出力を行う。
【0045】
このように、ロジック回路30は、積分信号S31のデータ値(例えば16ビット値)をそのままバス信号S3として出力するのではなく、積分信号S31のピーク周期毎(=環境光のフリッカー周期毎)に、フラグ信号S4のパルス出力を行う機能を備えている。
【0046】
従って、マイコン側では、1ビットのフラグ信号S4を監視するだけで、環境光のフリッカー検出を行うことができるので、バスの通信速度に依らず、必要最小限の通信で精度の高いフリッカー検出を行うことが可能となる。
【0047】
また、ロジック回路30は、A区間以降も積分信号S31の逐次サンプリングを継続してピーク周期の実測値を求め続けており、これらの実測値とパルス出力周期の基準値との誤差から、パルス出力周期の補正値を求める機能を備えている。
【0048】
図中のB区間(=補正値算出期間に相当)に着目すると、積分信号S31の第3ピーク位置(=ピーク値D3の検出タイミング)から第4ピーク位置(=ピーク値D4の検出タイミング)までの時間を測定することにより、ピーク周期の実測値T3が求められる。また、積分信号S31の第4ピーク位置(=ピーク値D4の検出タイミング)から第5ピーク位置(=ピーク値D5の検出タイミング)までの時間を測定することにより、ピーク周期の実測値T4が求められる。また、積分信号S31の第5ピーク位置(=ピーク値D5の検出タイミング)から第6ピーク位置(=ピーク値D6の検出タイミング)までの時間を測定することにより、ピーク周期の実測値T5が求められる。
【0049】
さらに、ピーク周期の実測値T3~T5とパルス出力周期の基準値Tをそれぞれ比較することにより、誤差d1(=T3-T)、誤差d2(=T4-T)、及び、誤差d3(=T5-T)が求められる。
【0050】
そして、ロジック回路30は、上記のようにして求められた誤差d1~d3から、パルス出力周期の補正値αを設定する。例えば、補正値αは、誤差d1~d3の平均値(α=(d1+d2+d3)/3)に設定すればよい。
【0051】
なお、本図では、フリッカー周期の3倍程度に設定された補正値算出期間(=B区間)において、パルス出力周期の補正値αを算出する例を挙げたが、補正値算出期間の長さはこれに限定されるものではなく、例えば、補正値算出期間を延長して4点以上の誤差から補正値αを算出してもよいし、逆に、補正値算出期間を短縮して2点以下の誤差から補正値αを算出してもよい。
【0052】
その後、ロジック回路30は、補正済みのパルス出力周期(=T+α)毎に、フラグ信号S4のパルス出力を行う。本図に即して述べると、ロジック回路30は、積分信号S31の第6ピーク位置(=ピーク値D6の検出タイミング)を起算点として、補正済みのパルス出力周期(=T+α)が経過する度に、フラグ信号S4のパルス出力を行う。
【0053】
また、図中のC区間以降も、上記同様の信号処理により、補正値αが逐次更新される。
【0054】
このように、ロジック回路30は、積分信号S31のピーク周期(=環境光のフリッカー周期)と、フラグ信号S4のパルス出力周期との間にずれが生じた場合には、そのずれをなくすように、パルス出力周期を定期的に補正する機能を備えている。従って、フリッカー検出精度を高めることが可能となる。
【0055】
なお、ロジック回路30は、例外処理として、所定の再設定条件が満たされたときに、パルス出力周期の基準値Tを設定し直す機能も備えている。
【0056】
例えば、積分信号S31のピーク周期の実測値T*とパルス出力周期の基準値Tとの誤差d(=T*-T)が所定の上限値に達したとき、または、誤差dに応じたパルス出力周期の補正値αが所定の上限値に達したときには、現在保持されている基準値T自体がもはや適正でないと考えられるので、再度の基準値設定期間(=A区間)を経て基準値Tの再設定が行われる。
【0057】
また、カラーセンサ1以外に設けられている外部センサの出力信号が所定の条件を満たしたときにも、パルス出力周期の基準値Tを再設定すべき場合がある。例えば、照度センサで所定の閾値を超える照度の変動が検出された場合(例えば照度の異なる部屋に移動した場合)、若しくは、加速度センサまたはジャイロセンサで所定の閾値を超える加速度または角速度の変動が検出された場合(例えばカラーセンサ1が搭載される電子機器の向きを変えた場合)には、現在保持されている基準値T自体を更新する方が望ましいと考えられるので、再度の基準値設定期間(=A区間)を経て基準値Tの再設定が行われる。
【0058】
図5は、ロジック回路30におけるピーク位置検出動作(例えば、図4のA区間におけるピーク値D1~D3の検出動作、または、B区間におけるピーク値D4~D6の検出動作に相当)の詳細を示す図である。
【0059】
まず、一つ目のピーク値D[n]に着目して説明する。ロジック回路30(特にピーク位置検出部32)は、積分信号S31(延いては第1光検出信号S1)の連続する3つの測定値を、D[n-1]、D[n]、D[n+1]として、D[n-1]<D[n]かつD[n]≧D[n+1]を満たすときに、D[n]を一つ目のピーク値として取得する。
【0060】
次に、二つ目のピーク値D[2n]に着目して説明する。ロジック回路30(特にピーク位置検出部32)は、積分信号S31(延いては第1光検出信号S1)の連続する3つの測定値を、D[2n-1]、D[2n]、D[2n+1]として、D[2n-1]<D[2n]かつD[2n]≧D[2n+1]を満たすときに、D[2n]をピーク値として取得する。
【0061】
最後に、三つ目のピーク値D[3n]に着目して説明する。ロジック回路30(特にピーク位置検出部32)は、積分信号S31(延いては第1光検出信号S1)の連続する3つの測定値を、D[3n-1]、D[3n]、D[3n+1]として、D[3n-1]<D[3n]かつD[3n]≧D[3n+1]を満たすときに、D[3n]をピーク値として取得する。
【0062】
図6は、図5で説明したピーク位置検出動作の詳細を示すフローチャートである。測定が開始されると、ステップ#1では、積分信号S31(延いては第1光検出信号S1)の連続する3つの測定値を、D[n-1]、D[n]、D[n+1]として、D[n-1]<D[n]かつD[n]≧D[n+1]を満たすか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップ#2に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップ#1に戻されて上記の判定処理が繰り返される。なお、ステップ#1での判定処理は、一つ目のピーク値D[n]を検出する動作に相当する。
【0063】
ステップ#1でイエス判定が下された場合(すなわち一つ目のピーク値D[n]が検出された場合)、ステップ#2では、積分信号S31(延いては第1光検出信号S1)の連続する3つの測定値を、D[2n-1]、D[2n]、D[2n+1]として、D[2n-1]<D[2n]かつD[2n]≧D[2n+1]を満たすか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップ#3に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップ#2に戻されて上記の判定処理が繰り返される。なお、ステップ#2での判定処理は、二つ目のピーク値D[2n]を検出する動作に相当する。
【0064】
ステップ#2でイエス判定が下された場合(すなわち二つ目のピーク値D[2n]が検出された場合)、ステップ#3では、積分信号S31(延いては第1光検出信号S1)の連続する3つの測定値を、D[3n-1]、D[3n]、D[3n+1]として、D[3n-1]<D[3n]、かつ、D[3n]≧D[3n+1]を満たすか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップ#4に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップ#3に戻されて上記の判定処理が繰り返される。なお、ステップ#3での判定処理は、三つ目のピーク値D[3n]を検出する動作に相当する。
【0065】
ステップ#3でイエス判定が下された場合(すなわち三つ目のピーク値D[3n]が検出された場合)、ステップ#4では、上記で求められたピーク値D[n]、D[2n]、D[3n]を用いて、ピーク周期の算出及び補正(先に説明したパルス出力周期の基準値T及び補正値αの算出に相当)が行われる。
【0066】
その後、フローがステップ#1に戻されて、上記一連の信号処理が繰り返される。
【0067】
<スマートフォンへの適用>
図7は、スマートフォンの外観図である。スマートフォンXは、図1のカラーセンサ1を搭載する電子機器の具体例であり、外観的には、例えば、タッチパネル機能を備えたディスプレイX1(液晶ディスプレイや有機EL[electro-luminescence]ディスプレイ)と、カメラX2と、スピーカX3及びマイクX4と、カラーセンサX10と、を有する。
【0068】
なお、背景技術の項でも述べたが、蛍光灯やLED照明機器などの照明器具Yは、商用電源周波数(日本国内であれば50Hzまたは60Hz)またはこれに応じた周波数で、フリッカーを生じる。そのため、照明器具Yに照らされた環境下において、スマートフォンXを用いた撮影を行う場合、カメラX2の露光タイミングを適切に制御しなければ、同じ環境下で撮影した写真であっても、意図しない明暗の差を生じるおそれがある。
【0069】
そこで、本構成例のスマートフォンXは、カラーセンサX10として、先述のカラーセンサ1(図1を参照)を搭載し、明暗の差が少ないタイミングで露光を行うことにより、フリッカーの影響を抑える機能を備えている。以下、スマートフォンXの内部構成を例示しつつ、そのフリッカー抑制機能について詳述する。
【0070】
図8は、スマートフォンXの内部構成例を示す図である。本図で示すように、スマートフォンXは、先出のカラーセンサX10以外にも、種々のセンサ(ここでは、照度センサX11、加速度センサX12、ジャイロセンサX13)を備えている。
【0071】
カラーセンサX10は、バスX20を介してマイコンX30に接続されており、環境光の色成分(赤色成分R、緑色成分G、青色成分B、及び赤外線成分IR)を検出して、その検出結果(=バス信号S3)をマイコンX30に出力する。また、カラーセンサX10は、先出のフラグ信号S4をマイコンX30に送出するための信号経路も備えている。
【0072】
照度センサX11は、バスX20を介してマイコンX30に接続されており、周囲の照度を検出して、その検出結果をマイコンX30に出力する。
【0073】
加速度センサX12は、バスX20を介してマイコンX30に接続されており、スマートフォンXの加速度を検出して、その検出結果をマイコンX30に出力する。
【0074】
ジャイロセンサX13は、バスX20を介してマイコンX30に接続されており、スマートフォンXの角速度を検出して、その検出結果をマイコンX30に出力する。
【0075】
バスX20は、所定の通信規格(例えばI2C)に準拠して各種センサX10~X13とマイコンX20との間を接続する信号伝達経路である。
【0076】
マイコンX30は、スマートフォンXの動作を統括的に制御する主体である。例えば、カラーセンサX10との連携機能に着目すると、マイコンX30は、カラーセンサX10で測定された環境光の色成分(色温度)に応じて、ディスプレイX1のバックライトを調整したり、カメラX2のホワイトバランスを調整したりする機能を備えている。
【0077】
また、マイコンX30は、カラーセンサ10から入力されるフラグ信号S4に応じて、カメラX2の露光タイミングを制御する機能も備えている。より具体的に述べると、マイコンX30は、フラグ信号S4にパルスが生成されるタイミング(=周期的に変動する周囲光の光量が最も大きくなるタイミング)で、カメラX2の露光を行うようにタイミング制御を行う。このような構成とすることにより、フリッカーの影響を抑えて常に明るい撮像を得ることが可能となる。
【0078】
また、マイコンX30は、照度センサX11で所定の閾値を超える照度の変動が検出された場合、若しくは、加速度センサX12またはジャイロセンサX13で所定の閾値を超える加速度または角速度の変動が検出された場合、バス信号S3を用いてその旨をカラーセンサX10に通知する機能を備えている。このような構成とすることにより、カラーセンサX10は、フラグ信号S4のパルス出力周期について、その基準値Tを更新すべきタイミングを知ることができるので、フリッカー検出精度を高めることが可能となる。
【0079】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末、ノートパソコン、携帯ゲーム機、液晶テレビ、ないしは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 カラーセンサ(光センサ)
10 第1光検出回路
11 受光素子(フォトダイオード)
12 AD変換器
20 第2光検出回路
21R、21G、21B、21IR 受光素子(フォトダイオード)
22R、22G、22B、22IR AD変換器
23R、23G、23B、23IR 各種透過フィルタ(R、G、B、IR)
30 ロジック回路
31 積分部
32 ピーク位置検出部
33 ピーク周期補正部
40 赤外線遮断フィルタ
X スマートフォン(電子機器)
X1 ディスプレイ
X2 カメラ
X3 スピーカ
X4 マイク
X10 カラーセンサ
X11 照度センサ
X12 加速度センサ
X13 ジャイロセンサ
X20 バス
X30 マイコン
Y 照明器具(フリッカー光源)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8