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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】垂直共振器型発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
H01S5/183
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018196393
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020064993
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉本 大
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205006(JP,A)
【文献】特表2015-525976(JP,A)
【文献】特開2000-252584(JP,A)
【文献】特開平11-121864(JP,A)
【文献】特開平09-018084(JP,A)
【文献】米国特許第06751245(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡上に形成され、発光層を含む発光構造層と、
前記発光構造層上に形成され、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、
前記発光構造層は、前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間において環状に設けられた低抵抗領域と、前記低抵抗領域の内側に形成され、前記低抵抗領域よりも高い電気抵抗を有する高抵抗領域と、を有し、
前記共振器は、前記発光構造層の前記低抵抗領域に対応して前記第1及び第2の多層膜反射鏡間に延びる環状領域と、前記環状領域の内側において前記高抵抗領域に対応して設けられた中央領域と、前記環状領域の外側に設けられた外側領域と、を有し、
前記中央領域及び前記外側領域は、前記環状領域よりも低い等価屈折率を有することを特徴とする垂直共振器型発光素子。
【請求項2】
前記発光層から放出される光の波長λとし、前記波長λに対する前記環状領域の等価屈折率を屈折率nλとし、445nmの波長に対する前記環状領域の等価屈折率を屈折率n445とした場合、前記低抵抗領域の幅W1は、W1≧2.85×(λ/0.445)×(nλ/n445)[μm]の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項3】
前記低抵抗領域の内側の前記高抵抗領域の幅は、前記発光層でのキャリアの拡散長の2倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項4】
前記発光構造層は、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された前記発光層と、前記発光層上に形成され、前記第1の半導体層とは反対の導電型を有する第2の半導体層と、を有し、
前記第2の半導体層は、上面と、前記上面から環状に突出する凸部とを有し、
前記第2の半導体層の前記上面は、絶縁層に覆われることで前記高抵抗領域として機能し、
前記第2の半導体層の前記凸部は、電極に接触することで前記低抵抗領域として機能することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項5】
前記発光構造層は、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された前記発光層と、前記発光層上に形成され、前記第1の半導体層とは反対の導電型を有する第2の半導体層と、を有し、
前記第2の半導体層は、環状の領域を残してイオンが注入されたイオン注入領域を有し、
前記第2の半導体層の前記イオンが注入されていない領域は、前記低抵抗領域として機能することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項6】
前記発光構造層は、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された前記発光層と、前記発光層上に形成され、前記第1の半導体層とは反対の導電型を有する第2の半導体層と、を有し、
前記第2の半導体層は、環状の領域を残して前記第2の半導体層の不純物が不活性化された不活性化領域を有し、
前記第2の半導体層の前記不純物が不活性化されていない領域は、前記低抵抗領域として機能することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項7】
前記発光構造層は、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された前記発光層と、前記発光層上に形成され、前記第1の半導体層とは反対の導電型を有する第2の半導体層と、前記第2の半導体層上に環状に形成され、前記低抵抗領域として機能するトンネル接合層と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項8】
前記第2の半導体層の層厚は、前記発光層でのキャリアの拡散長の2倍以下であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1つに記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項9】
前記環状領域は、前記発光構造層上面に垂直な方向から見たときに楕円環状、矩形環状、十字を囲む環状のいずれか一つの形状を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直共振器型面発光レーザなどの垂直共振器型発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型面発光レーザ(以下、単に面発光レーザと称する)は、基板上に積層された多層膜からなる反射鏡を有し、当該基板の表面に垂直な方向に沿って光を出射する半導体レーザである。例えば、特許文献1には、窒化物半導体を用いた面発光レーザが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5707742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、面発光レーザなどの垂直共振器型発光素子においては、発光パターンが安定していること、例えば遠視野像が安定していることが好ましい。このためには、例えば、垂直共振器型発光素子内には、所望の横モードの光を生成できる共振器が構成されていることが好ましい。例えば、基本固有モードのレーザ光を生成することで、放射角が狭く、単峰性な高出力のレーザ光の遠視野像を得ることができる。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、安定した横モードの光を出射することが可能な垂直共振器型発光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による垂直共振器型発光素子は、基板と、基板上に形成された第1の多層膜反射鏡と、第1の多層膜反射鏡上に形成され、発光層を含む発光構造層と、発光構造層上に形成され、第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、発光構造層は、第1の多層膜反射鏡と第2の多層膜反射鏡との間において環状に設けられた低抵抗領域と、低抵抗領域の内側に形成され、低抵抗領域よりも高い電気抵抗を有する高抵抗領域と、を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係る面発光レーザの断面図である。
図2】実施例1に係る面発光レーザの模式的な上面図である。
図3】実施例1に係る面発光レーザ内の共振器の構成を模式的に示す図である。
図4】実施例1に係る面発光レーザ内の電流経路を模式的に示す図である。
図5】実施例1に係る面発光レーザから出射される光を模式的に示す図である。
図6A】実施例1に係る面発光レーザにおける電流注入領域の幅と固有モードとの関係を示す図である。
図6B】実施例1に係る面発光レーザから出射された光の遠視野像の例を示す図である。
図6C】実施例1に係る面発光レーザから出射された光の遠視野像の他の例を示す図である。
図7A】実施例1の変形例1に係る面発光レーザの模式的な上面図である。
図7B】実施例1の変形例2に係る面発光レーザの模式的な上面図である。
図7C】実施例1の変形例3に係る面発光レーザの模式的な上面図である。
図8】実施例2に係る面発光レーザの断面図である。
図9】実施例3に係る面発光レーザの断面図である。
図10】実施例4に係る面発光レーザの断面図である。
図11】実施例5に係る面発光レーザの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。また、以下の実施例においては、本発明が面発光レーザ(半導体レーザ)として実施される場合について説明する。しかし、本発明は、面発光レーザに限定されず、垂直共振器型発光ダイオードなど、種々の垂直共振器型発光素子に適用することができる。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser、以下、面発光レーザと称する)の断面図である。また、図2は、面発光レーザ10の模式的な上面図である。図1は、図2のV-V線に沿った断面図である。図1及び図2を用いて、面発光レーザ10の構成について説明する。
【0010】
面発光レーザ10は、基板11と、基板11上に形成された第1の多層膜反射鏡(以下、単に第1の反射鏡と称する)12と、を有する。本実施例においては、第1の反射鏡12は、基板11上に形成され、第1の半導体膜(以下、高屈折率半導体膜と称する)H1と高屈折率半導体膜H1よりも低い屈折率を有する第2の半導体膜(以下、低屈折率半導体膜と称する)L1とが交互に積層された構造を有する。
【0011】
すなわち、本実施例においては、第1の反射鏡12は、半導体多層膜反射鏡であり、半導体材料からなる分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)を構成する。
【0012】
また、本実施例においては、基板11は、GaNの組成を有する。また、基板11は、第1の反射鏡12の結晶成長に用いられる成長用基板である。また、第1の反射鏡12における高屈折率半導体層H1はGaNの組成を有し、低屈折率半導体層L1はAlInNの組成を有する。なお、本実施例においては、基板11と第1の反射鏡12との間にはGaNの組成を有するバッファ層(図示せず)が設けられている。
【0013】
面発光レーザ10は、第1の反射鏡12上に形成され、発光層14を含む発光構造層EMを有する。本実施例においては、発光構造層EMは、窒化物系半導体からなる複数の半導体層を含む。発光構造層EMは、第1の反射鏡12上に形成されたn型半導体層(第1の半導体層)13と、n型半導体層13上に形成された発光層(活性層)14と、発光層14上に形成されたp型半導体層(第2の半導体層)15と、を有する。
【0014】
本実施例においては、n型半導体層13は、GaNの組成を有し、Siをn型不純物として含む。発光層14は、InGaNの組成を有する井戸層及びGaNの組成を有する障壁層を含む量子井戸構造を有する。また、p型半導体層15は、GaN系の組成を有し、Mgをp型不純物として含む。
【0015】
なお、発光構造層EMの構成はこれに限定されない。例えば、n型半導体層13は、互いに組成が異なる複数のn型の半導体層を有していてもよい。また、p型半導体層15は、互いに組成が異なる複数のp型の半導体層を有していてもよい。
【0016】
例えば、p型半導体層15は、発光層14との界面に、発光層14に注入された電子のp型半導体層15へのオーバーフローを防止する電子ブロック層(図示せず)として、例えばAlGaN層を有していてもよい。また、p型半導体層15は、電極とのオーミックコンタクトを形成するためのコンタクト層(図示せず)を有していてもよい。この場合、例えば、p型半導体層15は、当該電子ブロック層及びコンタクト層間に、クラッド層としてのGaN層を有していればよい。
【0017】
また、本実施例においては、p型半導体層15は、上面15A及び上面15Aから突出した凸部15Bを有する。凸部15Bは、上面15Aに垂直な方向から見たときに環状に形成されている。また、本実施例においては、図2に示すように、凸部15Bは、上面15Aから円環状に突出したp型半導体層15の表面領域である。
【0018】
面発光レーザ10は、p型半導体層15の凸部15Bを除いた上面15A上に形成された絶縁層(第1の絶縁層)16を有する。本実施例においては、絶縁層16は、p型半導体層15の上面15Aと、p型半導体層15の凸部15Bの側面と、に接している。絶縁層16は、発光層14から放出された光に対して透光性を有し、p型半導体層15(凹部15B)よりも低い屈折率を有する材料、例えば、SiO2などの酸化物からなる。
【0019】
また、絶縁層16は、p型半導体層15の上面15Aにおける凸部15Bに囲まれた領域上に形成された内側絶縁部16Aを有する。本実施例においては、p型半導体層15の発光層14とは反対側の表面は、凸部15Bの上端面において絶縁層16から露出している。
【0020】
面発光レーザ10は、絶縁層16上に形成され、p型半導体層15の凸部15Bにおいてp型半導体層15に接続された透光電極層17を有する。透光電極層17は、発光層14から放出された光に対して透光性を有する導電性の膜である。透光電極層17は、絶縁層16の上面及びp型半導体層15の凸部15Bの上端面に接触している。例えば、透光電極層17は、ITO又はIZOなどの金属酸化膜からなる。
【0021】
絶縁層16は、透光電極層17を介して発光構造層EMに注入される電流を狭窄する電流狭窄層として機能する。まず、p型半導体層15の凸部15Bは、絶縁層16から露出し、透光電極層17(電極)に接触することで、発光構造層EMにおける低抵抗領域LRとして機能する。そして、p型半導体層15の凸部15Bが設けられた領域は、発光層14に電流が注入される電流注入領域として機能する。
【0022】
また、p型半導体層15における凸部15Bの内側及び外側の領域(上面15Aの領域)は、絶縁層16に覆われることで低抵抗領域LRよりも高い電気抵抗を有する高抵抗領域HRとして機能する。すなわち、p型半導体層15の上面15Aが設けられた領域は、発光層14への電流の注入が抑制される非電流注入領域として機能する。
【0023】
換言すれば、発光構造層EMは、第1及び第2の反射鏡12及び19間において環状に設けられた低抵抗領域LRと、低抵抗領域LRの内側及び外側に形成され、低抵抗領域LRよりも高い電気抵抗を有する高抵抗領域HRと、を有する。
【0024】
面発光レーザ10は、透光電極層17上に形成された絶縁層(第2の絶縁層)18を有する。例えば、絶縁層18は、Ta25、Nb25、ZrO2、TiO2、HfO2などの金属酸化物からなる。また、絶縁層18は、発光層14から放出された光に対して透光性を有する。
【0025】
面発光レーザ10は、絶縁層18上に形成された第2の多層膜反射鏡(以下、単に第2の反射鏡と称する)19を有する。第2の反射鏡19は、発光構造層EMを介して第1の反射膜12に対向する位置に配置されている。第2の反射鏡19は、第1の反射鏡12との間で、発光構造層EMに垂直な方向(基板11に垂直な方向)を共振器長方向とする共振器OCを構成する。
【0026】
また、本実施例においては、図2に示すように、第2の反射鏡19は、円柱状の形状を有する。従って、本実施例においては、面発光レーザ10は、円柱状の共振器OCを有する。
【0027】
本実施例においては、第2の反射鏡19は、第1の誘電体膜(以下、高屈折率誘電体膜と称する)H2と高屈折率誘電体膜H2よりも低い屈折率を有する第2の誘電体膜(以下、低屈折率誘電体膜と称する)L2とが交互に積層された構造を有する。
【0028】
すなわち、本実施例においては、第2の反射鏡19は、誘電体多層膜反射鏡であり、誘電体材料からなる分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)を構成する。本実施例においては、高屈折率誘電体膜H2はTa25層からなり、低屈折率誘電体膜L2はAl23層からなる。
【0029】
発光構造層EMにおけるp型半導体層15の凸部15B、すなわち低抵抗領域LRは、第1の反射鏡12と第2の反射鏡19との間の領域に設けられている。すなわち、本実施例においては、共振器OCは、発光構造層EMの低抵抗領域LRに対応して第1及び第2の反射鏡12及び19間に延びる環状領域R2と、環状領域R2の内側において高抵抗領域HRに対応して設けられた中央領域R1と、環状領域R2の外側に設けられた外側領域R3とを有する。
【0030】
また、本実施例においては、絶縁層16は、p型半導体層15よりも低い屈折率を有する。従って、共振器OC内における中央領域R1及び外側領域R3は環状領域R2よりも低い等価屈折率を有する。すなわち、中央領域R1及び外側領域R3は低屈折率領域として機能し、環状領域R2は高屈折率領域として機能する。また、本実施例においては、中央領域R1は、円柱状の形状を有し、環状領域R2及び外側領域R3の各々は、円筒状の形状を有する。
【0031】
面発光レーザ10は、発光構造層EMに電流を印加する第1及び第2の電極E1及びE2を有する。第1の電極E1は、n型半導体層13上に形成されている。また、第2の電極E2は、透光電極層17上に形成されている。
【0032】
第1及び第2の電極E1及びE2間に電圧が印加されると、発光構造層EMの発光層14から光が放出される。発光層14から放出された光は、第1及び第2の反射鏡12及び19間において反射を繰り返し、共振状態に至る(レーザ発振を行う)。
【0033】
また、本実施例においては、第1の反射鏡12は、第2の反射鏡19よりもわずかに低い反射率を有する。従って、第1及び第2の反射鏡12及び19間で共振した光は、その一部が第1の反射鏡12及び基板11を透過し、外部に取出される。このようにして、面発光レーザ10は、基板11に及び発光構造層EMに垂直な方向に光を出射する。
【0034】
なお、発光構造層EMにおけるp型半導体層15の凸部15Bは、発光層14における発光中心を画定し、共振器OCの中心軸CAを画定する。共振器CAの中心軸CAは、p型半導体層15の凸部15Bの中心を通り、p型半導体層15(発光構造層EM)に垂直な方向に沿って延びる。本実施例においては、p型半導体層15の凸部15Bの中心は、絶縁層16における内側絶縁部16Aの中心に対応する位置に配置されている。
【0035】
ここで、面発光レーザ10における各層の例示的な構成について説明する。本実施例においては、第1の反射鏡12は、44ペアのGaN層及びAlInN層からなる。n型半導体層13は、650nmの層厚を有する。発光層14は、4nmのInGaN層及び5nmのGaN層が3回積層された多重量子井戸構造の活性層からなる。第2の反射鏡19は、10ペアのTa25層及びAl23層からなる。
【0036】
また、p型半導体層15は、凸部15Bの領域において50nmの層厚T1を有する。p型半導体層15は、上面15Aの領域において30nmの層厚を有する。凸部15Bは、3.3μmの内径D1を有する。また、凸部15Bは、10μmの外径を有する。凸部15Bは、3.35μmの幅W1を有する。
【0037】
また、絶縁層16は、20nmの層厚を有する。絶縁層16の上面は、p型半導体層15の凸部15Bの上端面と同一平面をなすように構成されている。なお、これらは一例に過ぎない。
【0038】
図3は、面発光レーザ10の共振器OCの光学的な特性を模式的に示す図である。図3は、図1と同様の断面図であるが、ハッチングを省略している。本実施例においては、絶縁層16は、p型半導体層15よりも低い屈折率を有し、p型半導体層15の凸部15Bの上端面と同一の高さで形成されている。また、第1及び第2の反射鏡12及び19間における他の層の層厚は、それぞれ一定である。
【0039】
従って、共振器OC内における等価的な屈折率(第1及び第2の反射鏡12及び19間の光学距離であり、共振器長)は、p型半導体層15及び絶縁層16間の屈折率の差によって、中央領域R1、環状領域R2及び外側領域R3間で異なる。
【0040】
具体的には、図3に示すように、環状領域R2における第1及び第2の反射鏡12及び19間の光学距離を光学距離OL1とし、中央領域R1及び外側領域R3における第1及び第2の反射鏡12及び19間の光学距離を光学距離OL2とした場合、光学距離OL2は、光学距離OL1よりも小さい。すなわち、中央領域R1及び外側領域R3における等価的な共振器長は、環状領域R2における等価的な共振器長よりも小さい。
【0041】
図4は、面発光レーザ10の共振器OC内(発光構造層EM内)における電気的な特性を模式的に示す図である。図4は、発光構造層EM内を流れる電流CRを模式的に示す図である。図4は、図1と同様の断面図であるが、ハッチングを省略している。本実施例においては、凸部15Bの領域である環状領域R2が低抵抗領域LRとして機能し、他の領域である中央領域R1及び外側領域R3は高抵抗領域HRとして機能する。
【0042】
従って、図4に示すように、環状領域R2においてのみ発光層14に電流CRが注入され、中央領域R1においては発光層14にほとんど電流が注入されない。すなわち、環状領域R2において光が生成される(利得が生ずる)一方で、中央領域R1においては光が生成されない。
【0043】
図5は、面発光レーザ10から出射される光を模式的に示す図である。本実施例においては、面発光レーザ10内の定在波は、第1の反射鏡12から外部に取り出される。ここで、当該面発光レーザ10内で共振した光は、図5に示すように、中央領域R1に収束しつつ外部に取り出される。なお、図5には、面発光レーザ10から出射されるレーザ光LBのビーム外縁を破線で模式的に示している。
【0044】
具体的には、まず、本実施例においては、絶縁層16の屈折率は、p型半導体層15(凸部15B)の屈折率よりも小さい。従って、共振器OC内において領域R1~R3間で等価屈折率の差が設けられている。本実施例においては、外側領域R3における共振器OC(レーザ媒質)の等価屈折率は、環状領域R2における共振器OCの等価屈折率よりも小さい。
【0045】
これによって、共振器OC内の定在波が環状領域R2から外側に発散(放射)することによる光損失が抑制される。すなわち、環状領域R2の内側に多くの光が留まり、またその状態でレーザ光LBが外部に取り出される。従って、多くの光が共振器OCの環状領域R2に集中し、高出力なレーザ光LBを生成及び出射することができる。
【0046】
また、本実施例においては、等価屈折率の差を設けることで共振器OC内の光閉じ込め構造が形成されている。従って、強度の低下を伴うことなくほぼ全ての光がレーザ光LBとなる。従って、高効率で高出力なレーザ光LBを生成及び出射することができる。
【0047】
次に、本実施例においては、低抵抗領域LR、すなわち発光層14に対する電流注入領域を環状領域R2のみに制限している。すなわち、中央領域R1には電流が注入されず、この非電流注入領域を囲むように電流注入領域が設けられている。これによって、レーザ光LBの固有モードを安定させることができる。
【0048】
具体的には、発光層14から放出される光の波長を考慮し、主に低抵抗領域LRの幅W1(図2を参照)、すなわち電流注入幅を調節することで、安定した固有モードのレーザ光LBを出射することができる。これによって、安定した高強度な遠視野像を得ることができる。
【0049】
図6Aは、電流注入幅W1とレーザ光LBの固有モード(スーパーモードとも称される)との関係を示す図である。図6Aの横軸は低抵抗領域LR(すなわち凸部15B)の幅W1を示し、縦軸はレーザ光LBの固有モードの数を示している。なお、図6Aは、幅W1に対するレーザ光LBの固有モードの変化を示している。
【0050】
図6Aに示すように、電流注入幅W1が2.3μm以下の場合、8番目の固有モードが発現する。換言すれば、環状領域R2内において、8つのビームスポットがあり、その隣接するスポット間で位相が反転するモードが発現する(out-of-phaseモードとなる)。従って、遠視野像では、多峰性のレーザ光LBが観測される。図6Bは、電流注入幅W1が2.3μm未満の場合のレーザ光LBの遠視野像を示す図である。
【0051】
一方、電流注入幅W1が2.85μm以上場合、基本固有モードとなる。具体的には、環状領域R2内には8つのビームスポットが存在するが、そのスポットが全て同位相となるモードが発現する(in-phaseモードとなる)。従って、単峰性のレーザ光LBが出射される。図6Cは、電流注入幅W1が2.85μmよりも大きい場合のレーザ光LBの遠視野像を示す図である。
【0052】
なお、本願の発明者は、電流注入幅W1が2.3~2.85μmの範囲内では、印加する電流値によって固有モードがin-phaseモード及びout-of-phaseモード間で変化することを確認している。
【0053】
このように、低抵抗領域LRを環状に配置し、その幅W1を調節することで、安定した固有モードのレーザ光LBを生成することができ、安定した遠視野像を形成することができる。しかし、安定した横モードのレーザ光LBを生成することを考慮すると、環状の低抵抗領域LR及びその内側の高抵抗領域HRが共振器OC内に設けられていればよい。
【0054】
なお、電流注入幅W1は、主に、レーザ光LB(すなわち発光層14から放出される光)の波長及び共振器OCの等価屈折率に応じて調節することができる。例えば、当該発光波長のみを考慮して幅W1を調節する場合、発光層14から放出される光の波長を波長λとした場合、単峰性のレーザ光LBを得ることを考慮すると、電流注入幅W1は、W1≧2.85×(λ/0.445)[μm]の関係を満たすように設定されればよい。
【0055】
また、当該発光波長及び等価屈折率の両方を考慮して幅W1を調節することで、レーザ光LBの固有モードをより安定させることができる。例えば、発光層14から放出される光の波長を波長λとし、当該波長λに対する環状領域R2の等価屈折率を屈折率nλとし、445nmの波長に対する環状領域R2の等価屈折率を屈折率n445とした場合、単峰性のレーザ光LBを得ることを考慮すると、電流注入領域CJの幅W1は、W1≧2.85×(λ/0.445)×(nλ/n445)[μm]の関係を満たすように設定されればよい。
【0056】
また、本願の発明者は、電流注入幅W1は、5.5μm以下であることが安定した単一固有モードのレーザ光LBを得る上で好ましいことを確認している。幅W1が5.5μmよりも大きい場合、レーザ発振の閾値を超えると多モードのレーザ光LBが出射される場合があったからである。すなわち、波長λが445nmの場合に単峰性のレーザ光LBを得ることを考慮すると、幅W1は、2.85≦W1≦5.5[μm]の関係を満たせばよい。また、この範囲は、発光波長λ及び環状領域R2の等価屈折率に応じて調節されればよい。
【0057】
また、低抵抗領域LRの内径D1(図2を参照)は、発光層14でのキャリア(電子又は正孔)の拡散長を考慮して好ましい範囲に設定されることができる。発光層14でのキャリアの拡散長とは、例えば、発光層14内において発光層14に平行な方向(横方向)にキャリアが移動する距離に対応する。
【0058】
例えば、本実施例においては、環状領域R2の内側に電流が注入されない発光層14の領域を形成することが好ましい。従って、低抵抗領域LRは、発光層14に垂直な方向から見たときに、発光層14でのキャリア(本実施例においては電子)の拡散長の2倍以上の内径D1を有していれば、環状領域R2の内側における発光層14の領域の少なくとも一部に、電流が注入されない領域が形成される。従って、低抵抗領域LRは、発光層14に垂直な方向から見たときに、発光層14でのキャリアの拡散長の2倍以上の内径D1を有することが好ましい。すなわち、低抵抗領域LRの内側の高抵抗領域HRの幅は、発光層14でのキャリアの拡散長の2倍以上であることが好ましい。
【0059】
また、同様に、p型半導体層15の層厚T1(本実施例においては凸部15Bの上端面から発光層14との界面までの距離、図1を参照)についても、発光層14でのキャリアの拡散長を考慮して好ましい範囲に設定することができる。p型半導体層15の層厚T1は、発光層14でのキャリアの拡散長の2倍以下であることが好ましい。これによって、キャリア(電子)が到達しない発光層14の領域を環状領域R2の内側に形成することができる。
【0060】
また、本実施例においては、環状領域R2は、低抵抗領域LRであり、かつ高屈折率領域である。従って、注入される電流のほとんどをレーザ光LBの生成に利用できるのみならず、屈折率差による中央領域R1又は外側領域R3でのレーザ光LBの損失が大幅に抑制される。従って、高出力で安定した横モードのレーザ光LBを、低閾値かつ高効率で生成することができる。また、中央領域R1に電流を流さないことで、中央領域R1での発熱を抑制することができ、高温での動作が可能となる。
【0061】
なお、本実施例においては、環状領域R2が高屈折率領域であり、中央領域R1及び外側領域R3が低屈折率領域である場合について説明した。すなわち、低抵抗領域LRと高抵抗領域HRとの境界は、高屈折率領域と低屈折率領域との境界と一致する位置に設けられる場合について説明した。しかし、中央領域R1、環状領域R2及び外側領域R3の構成はこれに限定されない。
【0062】
安定した横モードのレーザ光LBを得ることを考慮すると、第1及び第2の反射鏡12及び19間において、環状の低抵抗領域LR及び低抵抗領域LRの内側の高抵抗領域HRが設けられていればよい。例えば、中央領域R1と環状領域R2との境界とは異なる位置に、高屈折率領域と低屈折率領域との境界が設けられるように構成されていてもよい。
【0063】
また、本実施例においては、p型半導体層15が凸部15Bを有し、凸部15Bが透光電極層17に接触することで低抵抗領域LRとして機能する場合について説明した。しかし、発光構造層EMが環状の低抵抗領域LRを有していればよい。例えば、n型半導体層13が凸部15Bと同様の凸部を有していてもよい。すなわち、低抵抗領域LR及び高抵抗領域HRがn型半導体層13に設けられていてもよい。
【0064】
また、本実施例においては、低抵抗領域LR、すなわちp型半導体層15の凸部15Bが円環状に形成されている場合について説明した。しかし、低抵抗領域LRの構成はこれに限定されない。
【0065】
図7Aは、本実施例の変形例1に係る面発光レーザ10Aの模式的な上面図である。面発光レーザ10Aは、発光構造層EMAの構成を除いては、面発光レーザ10と同様の構成を有する。発光構造層EMAは、p型半導体層15M1の構成を除いては、発光構造層EMと同様の構成を有する。
【0066】
発光構造層EMAにおいては、p型半導体層15M1が楕円環状(トラック形状)の凸部15B1を有する。すなわち、本変形例においては、楕円環状の環状領域R2(低抵抗領域LRかつ高屈折率領域)が形成される。このように環状領域R2が形成されていても、例えば凸部15B1の幅を調節することで、レーザ光LBの固有モードは安定する。従って、例えば単峰性のレーザ光LBの遠視野像を得ることができる。また、低放射角かつ高強度なレーザ光LBを得ることができる。
【0067】
図7Bは、本実施例の変形例2に係る面発光レーザ10Bの模式的な上面図である。面発光レーザ10Bは、発光構造層EMBの構成を除いては、面発光レーザ10と同様の構成を有する。発光構造層EMBは、p型半導体層15M2の構成を除いては、発光構造層EMと同様の構成を有する。
【0068】
発光構造層EMBにおいては、p型半導体層15M2が矩形環状の凸部15B2を有する。すなわち、本変形例においては、矩形環状の環状領域R2(低抵抗領域LRかつ高屈折率領域)が形成される。このように環状領域R2が形成されていても、例えば凸部15B2の幅を調節することで、レーザ光LBの固有モードは安定する。従って、例えば単峰性であり、低放射角かつ高強度なレーザ光LBの遠視野像を得ることができる。
【0069】
図7Cは、本実施例の変形例3に係る面発光レーザ10Cの模式的な上面図である。面発光レーザ10Cは、発光構造層EMCの構成を除いては、面発光レーザ10と同様の構成を有する。発光構造層EMCは、p型半導体層15M3の構成を除いては、発光構造層EMと同様の構成を有する。
【0070】
発光構造層EMCにおいては、p型半導体層15M3が十字を囲むような環状の凸部15B3を有する。すなわち、本変形例においては、当該十字を囲む環状の環状領域R2(低抵抗領域LRかつ高屈折率領域)が形成される。このように環状領域R2が形成されていても、例えば凸部15B3の幅を調節することで、レーザ光LBの固有モードは安定する。従って、例えば単峰性であり、低放射角かつ高強度なレーザ光LBの遠視野像を得ることができる。
【0071】
このように、本実施例においては、共振器OC内に環状の低抵抗領域LRを設けることで、環状領域R2内において発現する光の固有モードを安定させる。これによって、例えば単一の固有モードのレーザ光LB(例えば図6Cを参照)を得たり、複数の固有モードの光の集合体としてのレーザ光LB(例えば図6Bを参照)を得る。従って、低抵抗領域LRは、例えば図7A図7Cのように、種々の構成を有し得る。
【0072】
また、本実施例においては、p型半導体層15及び絶縁層16によって発光構造層EMに低抵抗領域LRが形成される場合について説明した。しかし、低抵抗領域LRの構成はこれに限定されない。例えば、p型半導体層15の上面において、環状の領域を残して他の領域が高抵抗化されることで、低抵抗領域LRが形成されてもよい。
【0073】
上記したように、本実施例においては、面発光レーザ10は、基板11と、基板11上に形成された第1の反射鏡12と、第1の反射鏡12上に形成され、発光層14を含む発光構造層EMと、発光構造層EM上に形成され、第1の反射鏡12との間で共振器OCを構成する第2の反射鏡19と、を有する。また、発光構造層EMは、第1及び第2の反射鏡12及び19間において環状に形成された低抵抗領域LRと、低抵抗領域LRの内側に設けられ、低抵抗領域LRよりも高い電気抵抗を有する高抵抗領域HRと、を有する。従って、安定した横モードの光を出射することが可能な面発光レーザ10を提供することができる。
【実施例2】
【0074】
図8は、実施例2に係る面発光レーザ20の断面図である。面発光レーザ20は、発光構造層EM1及び低抵抗領域LRの構成を除いては、面発光レーザ10と同様の構成を有する。
【0075】
発光構造層EM1は、環状の領域を残してイオンが注入されたイオン注入領域21Aを有するp型半導体層(第2の半導体層)21を有する。例えば、イオン注入領域21Aは、Bイオン、Alイオン、又は酸素イオンが注入されたp型半導体層21の上面の領域である。
【0076】
なお、イオン注入領域21Aにおいては、p型の不純物が不活性化されている。すなわち、イオン注入領域21Aは、高抵抗領域HRとして機能する。また、イオン注入領域21Aにおいては、イオンが注入されることで屈折率が変化する。
【0077】
また、本実施例においては、イオン注入領域21A以外のp型半導体層21の領域21Bは、イオン注入が行われていない非イオン注入領域であり、環状に形成されている。従って、本実施例においては、非イオン注入領域21Bは、低抵抗領域LRとして機能し、環状領域R2を構成する。
【0078】
本実施例のように、イオン注入の有無によっても、電気抵抗及び屈折率に差を設けることができる。従って、低抵抗領域LRを発光構造層EM内に設けることができる。従って、安定した横モードの光を出射することが可能な面発光レーザ20を提供することができる。
【実施例3】
【0079】
図9は、実施例3に係る面発光レーザ30の断面図である。面発光レーザ30は、発光構造層EM1と第2の反射鏡19との間に形成され、領域間で異なる屈折率を有する絶縁層(第2の絶縁層)31を有する点を除いては、面発光レーザ20と同様の構成を有する。
【0080】
面発光レーザ30においては、絶縁層31は、透光電極層17上に形成され、非イオン注入領域21B上に凸部32Aを有する高屈折率絶縁層32と、凸部32Aを露出させつつ高屈折率絶縁層32上に形成され、高屈折率絶縁層32よりも低い屈折率を有する低屈折率絶縁層33と、を有する。高抵抗絶縁層32は、例えば、Nb25からなる。また、低屈折率絶縁層33は、例えばSiO2からなる。
【0081】
本実施例においては、発光構造層EM1内に加え、その外部に形成された絶縁層31によって、中央領域R1、環状領域R2及び外側領域R3間の屈折率差が設けられている。これによって、例えば、低抵抗領域LR及び高抵抗領域HRを発光構造層EM1によって優先的かつ確実に画定し、低屈折率領域及び高屈折率領域を絶縁層31によって画定及び補強することができる。従って、安定した横モードの光を出射することが可能な面発光レーザ30を提供することができる。
【実施例4】
【0082】
図10は、実施例4に係る面発光レーザ40の断面図である。面発光レーザ40は、発光構造層EM2及び低抵抗領域LRの構成を除いては、面発光レーザ10と同様の構成を有する。
【0083】
面発光レーザ40においては、発光構造層EM2は、環状の領域を残してドライエッチングが行われたエッチング部41Aを有するp型半導体層41を有する。p型半導体層41におけるエッチングが行われていない環状の上面領域は、凸部41Bとなる。
【0084】
p型半導体層41などの不純物を含む半導体は、ドライエッチングを行うことによって、その表面が粗面化される。これによって、エッチング部41Aにおけるp型の不純物が不活性化される。すなわち、p型半導体層41は、エッチング部41Aの領域にp型の不純物が不活性化された不活性化領域41Cを有する。従って、不活性化領域41Cは、高抵抗領域HRとして機能する。
【0085】
また、本実施例においては、エッチング部41Aにおいては、p型半導体層41が部分的に除去される。従って、エッチング部41A以外の領域は、エッチング部41Aから突出した凸部41Bとなる。また、エッチング部41Aにおいては、一般的に半導体層における金属との界面に設けられるコンタクト層が除去されている。従って、例えば実施例1のように絶縁層16を設けなくても、エッチング部41Aは、十分に高抵抗化される。
【0086】
従って、まず、電流は凸部41Bのみから発光構造層EM2に注入される。また、エッチング部41Aと凸部41Bとの間でp型半導体層41の層厚が異なる。従って、共振器OCの等価屈折率、すなわち共振器OC内の光学距離に差を設けることができる。
【0087】
なお、低抵抗領域LRを設けることを考慮すると、p型半導体層41が選択的に不活性化領域41Cを有していればよい。従って、p型半導体層41は、ドライエッチングが行われたエッチング部41Aを有する場合に限定されない。例えば、イオン注入が行われることで不活性化領域41Cが形成されてもよいし、アッシング処理が行われることで不活性化領域41Cが形成されていてもよい。
【0088】
本実施例においては、発光構造層EM2のp型半導体層(第2の半導体層)41は、環状の領域を残してp型の不純物が不活性化された不活性化領域41Cを有する。そして、p型半導体層41の不純物が不活性化されていない領域41Bは、低抵抗領域LRとして機能する。
【0089】
このように、例えばエッチングを選択的に行ってp型半導体層41を部分的に不活性化させることによっても、電気抵抗及び屈折率に差を設けることができる。従って、低抵抗領域LRを発光構造層EM内に設けることができる。従って、安定した横モードの光を出射することが可能な面発光レーザ40を提供することができる。
【実施例5】
【0090】
図11は、実施例5に係る面発光レーザ50の断面図である。面発光レーザ50は、発光構造層EM3及び低抵抗領域LRの構成を除いては、面発光レーザ10と同様の構成を有する。
【0091】
面発光レーザ50においては、発光構造層EM3は、p型半導体層15の凸部15B上に環状に設けられたトンネル接合層51と、トンネル接合層51上に設けられたn型半導体層(第2のn型半導体層又は第3の半導体層)52と、を有する。また、発光構造層EM3は、トンネル接合層51及びn型半導体層52の側面を取り囲み、トンネル接合層51及びn型半導体層52よりも低い屈折率を有するn型半導体層(第3のn型半導体層又は第4の半導体層)53と、を有する。
【0092】
トンネル接合層51は、p型半導体層15上に形成され、p型半導体層(第2の半導体層)15よりも高い不純物濃度を有するハイドープp型半導体層(図示せず)と、当該ハイドープp型半導体層上に形成され、n型半導体層(第1のn型半導体層又は第1の半導体層)13よりも高い不純物濃度を有するハイドープn型半導体層(図示せず)と、を含む。
【0093】
また、本実施例においては、n型半導体層53は、Geをn型不純物として含む。これによって、n型半導体層53は、n型半導体層52、トンネル接合層51及びp型半導体層15の凸部15Bの平均屈折率よりも低い屈折率を有する。
【0094】
従って、本実施例においては、トンネル接合層51が抵抗領域LRとして機能する。本実施例においては、すなわち、発光構造層EM3は、p型半導体層15(第2の半導体層)上において環状に形成され、低抵抗領域LRとして機能するトンネル接合層51を有する。また、n型半導体層53が中央領域R1及び外側領域R3を画定する。
【0095】
本実施例のように、トンネル接合による電流狭窄を行い、またその領域を環状に設けることによっても、発光構造層EM3内に低抵抗領域LRを形成することができる。また、低抵抗領域LR以外の領域の屈折率を低くすることで、中央領域R1、環状領域R2及び外側領域R3を画定することができる。従って、安定した横モードの光を出射することが可能な面発光レーザ50を提供することができる。
【0096】
なお、上記に示した実施例は、一例に過ぎない。例えば、上記した種々の実施例は組み合わせることができる。例えば、面発光レーザ10が面発光レーザ30と同様の絶縁層31を有していてもよい。また、例えば、面発光レーザ40が不活性化領域41C上に絶縁層16を有していてもよい。
【0097】
上記したように、例えば、面発光レーザ10は、発光構造層EMが第1及び第2の反射鏡12及び19間において環状に設けられた低抵抗領域(電流注入領域CJ)を有する。これによって、安定した横モードの光を出射することが可能な面発光レーザ10(垂直共振器型発光素子)を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
10、10A、10B、10C、20、30、40、50 面発光レーザ(垂直共振器型発光素子)
EM、EMA、EMB、EMC、EM1、EM2、EM3 発光構造層
14 発光層
LR 低抵抗領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11