(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018200012
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘登
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-013944(JP,A)
【文献】特開2017-143179(JP,A)
【文献】特開2006-237407(JP,A)
【文献】特開2010-076066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、
直線状に形成され互いに平行に配置される複数本のハンドフォークと、前記ハンドフォークの上面側に配置され前記搬送対象物の下面を支持するとともに前記ハンドフォークの長手方向への前記搬送対象物の移動を規制する支持部材と、前記ハンドフォークの長手方向に前記支持部材を移動させる移動機構と
、前記支持部材が固定される固定部材と、前記固定部材の下面に固定されるゴム製のゴムパッドと、前記ゴムパッドが前記ハンドフォークの上面に所定の接触圧で接触する接触位置と前記ゴムパッドが前記ハンドフォークの上面から離れる離間位置との間で前記固定部材を移動させる第2移動機構とを備えることを特徴とするハンド。
【請求項2】
前記ハンドフォークに対して前記ハンドフォークの長手方向に移動可能な前記支持部材と、前記ハンドフォークの上面側に固定され前記搬送対象物の下面を支持する第2支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記ハンドフォークの長手方向における一方側への前記搬送対象物の移動を規制し、
前記第2支持部材は、前記ハンドフォークの長手方向における他方側への前記搬送対象物の移動を規制することを特徴とする請求項1記載のハンド。
【請求項3】
前記第2移動機構は、エアシリンダであり、
前記ゴムパッドは、前記接触位置に前記固定部材が配置されているときに、前記エアシリンダによって前記ハンドフォークの上面に接触させられているか、または、押し付けられていることを特徴とする請求項
1または2記載のハンド。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載のハンドと、前記ハンドが連結されるとともに前記ハンドを保持するハンド保持部とを備え、
前記ハンドフォークの長手方向の一方を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とすると、
前記搬送対象物は、前記ハンドフォークの第2方向側部分に搭載され、
前記移動機構の駆動源は、前記ハンド保持部への前記ハンドの連結部分よりも第1方向側に配置されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項5】
前記ハンドは、前記第2移動機構が取り付けられるとともに前記支持部材と一緒に前記ハンドフォークの長手方向に移動する可動部材を備え
、
前記第2移動機構は、前記可動部材の第1方向端側に取り付けられていることを特徴とする
請求項4記載の産業用ロボット。
【請求項6】
請求項1から
3のいずれかに記載のハンドと、前記ハンドが連結されるとともに前記ハンドを保持するハンド保持部と、前記ハンドフォークに搭載された前記搬送対象物の水平方向に対する傾きを補正する傾き補正機構とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドに関する。また、本発明は、かかるハンドを備える産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置で使用されるマスクを搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、マスクが搭載されるハンドと、ハンドの基端側を支持するリニア駆動部と、リニア駆動部を支持する本体部とを備えている。ハンドは、直線状に形成される2本のハンドフォークを備えている。2本のハンドフォークは、互いに平行になるように配置されている。マスクは、2本のハンドフォークに搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の産業用ロボットが、たとえば、様々な大きさのマスクを製造するマスクの製造ラインで使用される場合、この産業用ロボットは、様々な大きさのマスクをハンドに搭載して搬送する必要がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、様々な大きさの搬送対象物を適切に搭載することが可能な産業用ロボットのハンドを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるハンドを備える産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットのハンドは、搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、直線状に形成され互いに平行に配置される複数本のハンドフォークと、ハンドフォークの上面側に配置され搬送対象物の下面を支持するとともにハンドフォークの長手方向への搬送対象物の移動を規制する支持部材と、ハンドフォークの長手方向に支持部材を移動させる移動機構と、支持部材が固定される固定部材と、固定部材の下面に固定されるゴム製のゴムパッドと、ゴムパッドがハンドフォークの上面に所定の接触圧で接触する接触位置とゴムパッドがハンドフォークの上面から離れる離間位置との間で固定部材を移動させる第2移動機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の産業用ロボットのハンドは、搬送対象物の下面を支持するとともにハンドフォークの長手方向への搬送対象物の移動を規制する支持部材を、ハンドフォークの長手方向に移動させる移動機構を備えている。そのため、本発明では、搬送対象物の大きさに応じて、搬送対象物の下面を適切に支持することが可能な位置に支持部材を移動させることが可能になる。したがって、本発明では、様々な大きさの搬送対象物をハンドに適切に搭載することが可能になる。また、本発明では、ハンドは、支持部材が固定される固定部材と、固定部材の下面に固定されるゴム製のゴムパッドと、ゴムパッドがハンドフォークの上面に所定の接触圧で接触する接触位置とゴムパッドがハンドフォークの上面から離れる離間位置との間で固定部材を移動させる第2移動機構とを備えている。そのため、接触位置に固定部材が配置されているときの、ゴムパッドとハンドフォークの上面との摩擦力を利用して、ハンドフォークの長手方向における所定の位置で支持部材を停止させておくことが可能になる。また、固定部材を離間位置に移動させることで、移動機構によって、ハンドフォークの長手方向に支持部材を容易に移動させることが可能になる。
【0008】
本発明において、ハンドは、ハンドフォークに対してハンドフォークの長手方向に移動可能な支持部材と、ハンドフォークの上面側に固定され搬送対象物の下面を支持する第2支持部材とを備え、支持部材は、ハンドフォークの長手方向における一方側への搬送対象物の移動を規制し、第2支持部材は、ハンドフォークの長手方向における他方側への搬送対象物の移動を規制することが好ましい。このように構成すると、ハンドフォークの長手方向における他方側への搬送対象物の移動を規制する第2支持部材が、ハンドフォークに対してハンドフォークの長手方向に移動可能になっている場合と比較して、ハンドの構成を簡素化することが可能になる。
【0010】
本発明において、第2移動機構は、エアシリンダであり、ゴムパッドは、接触位置に固定部材が配置されているときに、エアシリンダによってハンドフォークの上面に接触させられているか、または、押し付けられていることが好ましい。このように構成すると、接触位置に固定部材が配置されているときの、ゴムパッドとハンドフォークの上面との摩擦力を高めることが可能になるため、ハンドフォークの長手方向における所定の位置で支持部材を確実に停止させておくことが可能になる。
【0011】
本発明のハンドは、ハンドが連結されるとともにハンドを保持するハンド保持部を備える産業用ロボットであって、ハンドフォークの長手方向の一方を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とすると、搬送対象物は、ハンドフォークの第2方向側部分に搭載され、移動機構の駆動源は、ハンド保持部へのハンドの連結部分よりも第1方向側に配置されている産業用ロボットに用いることができる。
【0012】
この産業用ロボットでは、様々な大きさの搬送対象物をハンドに適切に搭載することが可能になる。また、この産業用ロボットでは、ハンドフォークの長手方向において、ハンドに搭載される搬送対象物と移動機構の駆動源との距離を離すことが可能になるため、比較的高温の搬送対象物がハンドに搭載される場合であっても、搬送対象物の熱の影響による移動機構の駆動源の損傷を防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、ハンドは、第2移動機構が取り付けられるとともに支持部材と一緒にハンドフォークの長手方向に移動する可動部材を備え、第2移動機構は、可動部材の第1方向端側に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
このように構成すると、ハンドフォークの長手方向において、ハンドに搭載される搬送対象物と第2移動機構との距離を離すことが可能になる。したがって、比較的高温の搬送対象物がハンドに搭載される場合であっても、搬送対象物の熱の影響による第2移動機構の損傷を防止することが可能になる。
【0015】
本発明のハンドは、ハンドが連結されるとともにハンドを保持するハンド保持部と、ハンドフォークに搭載された搬送対象物の水平方向に対する傾きを補正する傾き補正機構とを備える産業用ロボットに用いることができる。この産業用ロボットでは、様々な大きさの搬送対象物をハンドに適切に搭載することが可能になる。また、この産業用ロボットでは、ハンドフォークに搭載された搬送対象物の重量によってハンドフォークが撓んでも、ハンドフォークに搭載された搬送対象物の水平方向に対する傾きを補正することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の産業用ロボットのハンドでは、様々な大きさの搬送対象物をハンドに適切に搭載することが可能になる。また、本発明の産業用ロボットでは、様々な大きさの搬送対象物をハンドに適切に搭載することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの側面図である。
【
図3】
図1に示すハンドの構造を説明するための平面図である。
【
図4】
図1に示すハンドの構造を説明するための図である。
【
図5】(A)は、
図1のE部の構成を説明するための拡大図であり、(B)は、
図1のF部の構成を説明するための拡大図である。
【
図6】(A)は、
図2のG部の構成を説明するための拡大図であり、(B)は、
図2のH部の構成を説明するための拡大図である。
【
図7】(A)は、
図4(A)のJ部の拡大図であり、(B)は、
図4(B)のK部の拡大図である。
【
図8】
図1のM部の構成を説明するための拡大図である。
【
図9】
図8のN-N断面の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の側面図である。
図2は、
図1に示す産業用ロボット1の平面図である。
【0020】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、所定の搬送対象物2を搬送するための水平多関節型のロボットである。本形態の搬送対象物2は、露光装置等で使用されるマスクである。したがって、以下では、搬送対象物2を「マスク2」とする。マスク2は、たとえば、長方形の平板状に形成されている。本形態のロボット1は、様々な大きさのマスク2を製造するマスク2の製造ラインに設置されており、様々な大きさのマスク2を搬送することが可能になっている。たとえば、ロボット1は、最大で縦幅および横幅が2000(mm)程度のマスク2を搬送することが可能になっているとともに、最小で縦幅および横幅が800(mm)程度のマスク2を搬送することが可能になっている。
【0021】
ロボット1は、マスク2が搭載されるハンド3と、ハンド3が先端側に回動可能に連結されるアーム4と、アーム4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース6とを備えている。本体部5は、アーム4の基端側を支持するとともに昇降可能なアームサポート7と、アームサポート7を昇降可能に保持する保持フレーム8と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース6に対して水平移動可能な基台9と、保持フレーム8の下端が固定されるとともに基台9に対して回動可能な旋回フレーム10とを備えている。
【0022】
アーム4は、第1アーム部12と第2アーム部13との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部12の基端側は、アームサポート7に回動可能に連結されている。第1アーム部12の先端側には、第2アーム部13の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部13の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。第1アーム部12と第2アーム部13とハンド3とは、下側から上側に向かってこの順番で配置されている。ロボット1は、アーム4を伸縮させるアーム駆動機構を備えている。本形態のアーム4は、ハンド3が連結されるとともにハンド3を保持するハンド保持部である。
【0023】
保持フレーム8は、上下方向に細長い直方体の柱状に形成されている。保持フレーム8は、アームサポート7を介してハンド3およびアーム4を昇降可能に保持している。ロボット1は、保持フレーム8に対してアームサポート7を昇降させる昇降機構と、アームサポート7を上下方向へ案内するガイド機構とを備えている。保持フレーム8の下端は、旋回フレーム10に固定されている。上述のように、旋回フレーム10は、基台9に対して回動可能となっており、基台9は、ベース6に対して水平移動可能となっている。ロボット1は、基台9に対して旋回フレーム10を回動させる回動機構と、ベース6に対して基台9を水平移動させる水平移動機構とを備えている。
【0024】
(ハンドの構成)
図3は、
図1に示すハンド3の構造を説明するための平面図である。
図4は、
図1に示すハンド3の構造を説明するための図である。
図5(A)は、
図1のE部の構成を説明するための拡大図であり、
図5(B)は、
図1のF部の構成を説明するための拡大図である。
図6(A)は、
図2のG部の構成を説明するための拡大図であり、
図6(B)は、
図2のH部の構成を説明するための拡大図である。
図7(A)は、
図4(A)のJ部の拡大図であり、
図7(B)は、
図4(B)のK部の拡大図である。
【0025】
ハンド3は、第2アーム部13の先端側に回動可能に連結される基部15と、基部15から水平方向の一方へ伸びる直線状の複数本のハンドフォーク16とを備えている。本形態のハンド3は、2本のハンドフォーク16を備えている。また、ハンド3は、ハンドフォーク16の上面側に配置されるとともにマスク2の下面を支持する支持部材17、18と、ハンドフォーク16の長手方向へ支持部材17を移動させる移動機構19とを備えている。
【0026】
さらに、ハンド3は、支持部材17が固定される固定部材20と、固定部材20の下面に固定されるゴム製のゴムパッド21と、ゴムパッド21がハンドフォーク16の上面に所定の接触圧で接触する接触位置(
図7(B)の実線で示す位置)20Aとゴムパッド21がハンドフォーク16の上面から離れる離間位置(
図7(B)の二点鎖線で示す位置)20Bとの間で固定部材20を移動させる第2移動機構22とを備えている。
【0027】
基部15は、中空状に形成されるとともに上下方向の厚さが薄い扁平な略直方体状に形成されている。基部15には、ハンドフォーク16の基端部が固定されている。直線状に形成される2本のハンドフォーク16は、所定の間隔をあけた状態で互いに平行に配置されており、基部15から水平方向の同方向へ突出している。以下の説明では、ハンドフォーク16の長手方向(
図3等のX方向)を「前後方向」とし、上下方向と前後方向とに直交する
図3等のY方向を「左右方向」とする。
【0028】
また、以下の説明では、前後方向のうちの、基部15からハンドフォーク16が突出する方向(
図3のX1方向)を「前」方向とし、その反対方向(
図3等のX2方向)を「後ろ」方向とする。すなわち、以下の説明では、ハンドフォーク16の先端側を前側とし、ハンドフォーク16の基端側を後ろ側とする。本形態の後ろ方向(X2方向)は、ハンドフォーク16の長手方向の一方である第1方向となっており、前方向(X1方向)は、第1方向の反対方向である第2方向となっている。
【0029】
基部15は、上述のように、第2アーム部13の先端側に回動可能に連結されている。すなわち、基部15は、アーム4の先端側に回動可能に連結されている。本形態では、基部15は、前後方向における基部15の中心よりも前側でアーム4の先端側に連結されている。すなわち、アーム4へのハンド3の連結部分である関節部23は、前後方向における基部15の中心よりも前側に配置されている。
【0030】
ハンドフォーク16は、上述のように、直線状に形成されている。本形態では、ハンドフォーク16は、前後方向に細長い四角筒状に形成されており、中空状に形成されている。ハンドフォーク16の上面は、上下方向に略直交する平面となっている。また、ハンドフォーク16は、炭素繊維を含有する樹脂で形成されている。ハンドフォーク16の基端部は、中空状に形成される基部15の内部に配置されている。また、右側に配置されるハンドフォーク16の基端部は、基部15の右端部に固定され、左側に配置されるハンドフォーク16の基端部は、基部15の左端部に固定されている。マスク2は、2本のハンドフォーク16の前側部分に搭載されている。
【0031】
2本のハンドフォーク16のそれぞれの上面側には、支持部材17と支持部材18とが1個ずつ配置されている。支持部材17、18は、ブロック状に形成されている。支持部材17は、ハンドフォーク16に対して前後方向に移動可能となっている。一方、支持部材18は、ハンドフォーク16に固定されている。本形態の支持部材18は、第2支持部材である。
【0032】
支持部材18は、ハンドフォーク16の前端部(先端部)において、ハンドフォーク16の上面側に固定されている。また、支持部材18は、L字状に形成される固定板25(
図5、
図6参照)を介してハンドフォーク16の前端部に固定されている。支持部材18には、マスク2の前端部の下面に接触する接触面18aが形成されている。接触面18aは、上下方向に略直交する平面となっている。また、支持部材18には、マスク2の前側への移動を規制する規制面18bが形成されている。すなわち、支持部材18は、マスク2の前側への移動を規制している。規制面18bは、前後方向に略直交する平面となっており、マスク2の前端面が接触可能となっている。
【0033】
固定板25には、マスク2の有無を検知するためのセンサ26が固定されている。センサ26は、支持部材18の後ろ側に配置されている。また、センサ26は、接触面18aよりも下側に配置されている。なお、センサ26から引き出される配線は、中空状に形成されるハンドフォーク16の内部を利用して、ハンド3の後端部まで引き回されている。
【0034】
支持部材17は、支持部材18よりも後ろ側に配置されている。支持部材17には、マスク2の後端部の下面に接触する接触面17aが形成されている。接触面17aは、平面であり、固定部材20が接触位置20Aに配置されているときに、上下方向に略直交している。また、支持部材17には、マスク2の後ろ側への移動を規制する規制面17bが形成されている。すなわち、支持部材17は、マスク2の後ろ側への移動を規制している。規制面17bは、前後方向に略直交する平面となっており、マスク2の後端面が接触可能となっている。
【0035】
移動機構19は、駆動源であるモータ29と、モータ29に連結されるボールねじ30とを備えている。モータ29は、基部15の下面を構成する平板状の底板31の上面に固定されている。また、モータ29は、基部15の後端部に固定されている。すなわち、モータ29は、関節部23よりも後ろ側に配置されている。モータ29は、モータ29の出力軸が前側に突出するように配置されている。
【0036】
ボールねじ30のネジ軸32は、ネジ軸32の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。ネジ軸32は、軸受を介して底板31に回転可能に支持されている。ネジ軸32は、モータ29の前側に配置されており、減速機およびカップリングを介してモータ29の出力軸に固定されている。また、ネジ軸32は、ハンド3の左右方向における中心位置に配置されている。ボールねじ30のナット部材33は、支持部材17と一緒に前後方向に移動する可動部材34に取り付けられている。具体的には、ナット部材33は、可動部材34の前端部に固定されている。
【0037】
底板31の上面には、前後方向へ可動部材34を案内するガイドレール35が固定されている。ガイドレール35は、左右方向でネジ軸32を挟むように、底板31の上面の2箇所に固定されている。可動部材34には、ガイドレール35に上側から係合するガイドブロック36が固定されている。ガイドレール35は、2本のハンドフォーク16よりも左右方向の内側に配置されている。
【0038】
第2移動機構22は、エアシリンダである。したがって、以下では、第2移動機構22を「エアシリンダ22」とする。エアシリンダ22は、可動部材34に取り付けられている。具体的には、エアシリンダ22は、可動部材34の後端側の2箇所に取り付けられている。エアシリンダ22は、2本のガイドレール35よりも左右方向の外側に配置されている。エアシリンダ22は、エアシリンダ22のロッドが下側へ突出するように配置されている。エアシリンダ22の上端部は、前後方向を軸方向とするエアシリンダ22の回動が可能となるように、可動部材34に保持されている。
【0039】
エアシリンダ22の動力は、レバー部材39、管状部材40および保持部材41を介して固定部材20に伝達されている。管状部材40は、円管状に形成されている。すなわち、管状部材40は、細長い円柱状に形成されている。管状部材40は、管状部材40の長手方向と前後方向とが一致するように配置されている。管状部材40は、軸受を介して可動部材34に回動可能に保持されている。管状部材40は、可動部材34に対して前後方向を回動の軸方向とする回動が可能となっている。
【0040】
前後方向から見たときに、右側に配置される管状部材40は、右側に配置されるエアシリンダ22の右側に配置され、左側に配置される管状部材40は、左側に配置されるエアシリンダ22の左側に配置されている。また、管状部材40は、2本のハンドフォーク16よりも左右方向の内側に配置されている。
【0041】
レバー部材39の一端部は、エアシリンダ22のロッドに回動可能に連結されている。レバー部材39は、エアシリンダ22のロッドに対して前後方向を回動の軸方向とする回動が可能となっている。レバー部材39の他端部は、管状部材40の後端部に固定されている。また、レバー部材39の他端部は、管状部材40の下端部に固定されている。一端部がエアシリンダ22のロッドに連結されるレバー部材39の他端部が管状部材40の後端部に固定されているため、可動部材34に対する管状部材40の前後方向の移動が規制されている。
【0042】
保持部材41は、管状部材40の前端部に固定されている。また、保持部材41は、管状部材40の上端部に固定されており、保持部材41は、管状部材40の前端部から上側に向かって立ち上がっている。
【0043】
固定部材20は、長方形の平板状に形成されており、固定部材20の長手方向と左右方向とが一致するように配置されている。右側に配置される支持部材17は、右側に配置される固定部材20の上面の右端部に固定されている。右側に配置される固定部材20の左端部は、右側に配置される保持部材41の上端面に固定されている。左側に配置される支持部材17は、左側に配置される固定部材20の上面の左端部に固定されている。左側に配置される固定部材20の右端部は、左側に配置される保持部材41の上端面に固定されている。
【0044】
ゴムパッド21は、たとえば、長方形の板状に形成されたゴム板である。ゴムパッド21は、右側に配置される固定部材20の下面の右端側と、左側に配置される固定部材20の下面の左端側とに固定されている。また、ゴムパッド21は、右側に配置される固定部材20の下面、および、左側に配置される固定部材20の下面のそれぞれにおいて、左右方向に間隔をあけた状態で複数箇所に固定されている。たとえば、ゴムパッド21は、右側に配置される固定部材20の下面の3箇所と、左側に配置される固定部材20の下面の3箇所とに固定されている。なお、本形態のゴムパッド21は、薄鋼板に焼き付けられて固定されており、ゴムパッド21が固定された薄鋼板が固定部材20の下面に固定されている。すなわち、ゴムパッド21は、薄鋼板を介して固定部材20の下面に固定されている。
【0045】
保持部材41には、マスク2の有無を検知するためのセンサ42が固定されている。右側に配置されるセンサ42は、右側に配置される固定部材20の左側に配置され、左側に配置されるセンサ42は、左側に配置される固定部材20の右側に配置されている。また、センサ42は、支持部材17の接触面17aよりも下側に配置されている。なお、センサ42から引き出される配線は、円管状に形成される管状部材40の内部を利用して、ハンド3の後端部まで引き回されている。
【0046】
本形態では、エアシリンダ22のロッド側に圧縮空気が供給されてエアシリンダ22のロッドが引っ込んでいるときに、固定部材20は、接触位置20Aに配置されている(
図7の実線参照)。固定部材20が接触位置20Aに配置されているときには、ゴムパッド21は、エアシリンダ22によってハンドフォーク16の上面に接触させられている。本形態では、固定部材20が接触位置20Aに配置されているときに、ゴムパッド21は、エアシリンダ22によってハンドフォーク16の上面に押し付けられている。この状態で、エアシリンダ22のヘッド側に圧縮空気が供給されてエアシリンダ22のロッドが突出すると、レバー部材39、管状部材40および保持部材41と一緒に固定部材20が管状部材40の軸心を中心にして回動して、離間位置20Bに移動する(
図7の二点鎖線参照)。
【0047】
また、本形態では、ロボット1で搬送されるマスク2の大きさに応じて、支持部材17を前後方向に移動させるときに、固定部材20を離間位置20Bに移動させる。固定部材20が離間位置20Bに配置された状態で、モータ29が起動してネジ軸32が回転すると、ナット部材33が固定された可動部材34と一緒に、エアシリンダ22、レバー部材39、管状部材40、保持部材41、固定部材20および支持部材17が前後方向に移動する。なお、ハンド3は、エアシリンダ22に接続されるエア配管の一部等が収容されるケーブルベヤ(登録商標)を備えている。
【0048】
(傾き補正機構の構成)
図8は、
図1のM部の構成を説明するための拡大図である。
図9は、
図8のN-N断面の構成を説明するための図である。
【0049】
ロボット1は、ハンドフォーク16に搭載されたマスク2の水平方向に対する傾きを補正する傾き補正機構46を備えている。傾き補正機構46は、関節部23を構成している。すなわち、ハンド3の基部15は、傾き補正機構46を介して第2アーム部13の先端側に回動可能に連結されている。傾き補正機構46は、左右方向を回動の軸方向として、かつ、支点部47を回動中心にしてハンド3を回動させることで、ハンドフォーク16に搭載されているマスク2の傾きを補正する。
【0050】
傾き補正機構46は、駆動源であるモータ48と、モータ48の出力軸に減速機を介して連結される偏心軸(クランク軸)49と、偏心軸49に一端側が取り付けられるリンク部材50と、リンク部材50の他端側が取り付けられる取付部材51と、第2アーム部13の先端側に回動可能に保持される回動部材52とを備えている。なお、
図8では、リンク部材50の図示を省略している。
【0051】
モータ48は、回動部材52に保持されている。偏心軸49は、偏心軸49の軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。偏心軸49は、回動部材52に回動可能に保持されている。偏心軸49は、回動部材52に対して左右方向を回動の軸方向とする回動が可能となっている。偏心軸49は、偏心軸49の回動中心から軸心が所定量ずれている円柱状の偏心部49aを備えている。
【0052】
リンク部材50の一端側は、偏心部49aの外周側に回動可能に取り付けられている。リンク部材50の他端側は、取付部材51の後端部に回動可能に取り付けられている。取付部材51の前端部は、支点部47に回動可能に保持されており、取付部材51は、回動部材52に対して支点部47を回動中心にして回動可能となっている。また、取付部材51は、左右方向を回動の軸方向とする回動が可能となっている。取付部材51の上端には、ハンド3の基部15の下面が固定されている。
【0053】
傾き補正機構46では、モータ48が起動すると、偏心軸49が回動する。偏心軸49が回動すると、リンク部材50が移動して、取付部材51が支点部47を中心に回動する。取付部材51が支点部47を中心に回動すると、ハンド3も支点部47を中心に回動して、ハンドフォーク16に搭載されているマスク2の傾きが補正される。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンド3は、マスク2の下面を支持するとともにマスク2の後ろ側への移動を規制する支持部材17を前後方向に移動させる移動機構19を備えており、ロボット1で搬送されるマスク2の大きさに応じて、支持部材17を前後方向に移動させている。そのため、本形態では、マスク2の大きさに応じて、マスク2の下面を適切に支持することが可能な位置に支持部材17を移動させることが可能になる。したがって、本形態では、様々な大きさのマスク2をハンド3に適切に搭載することが可能になる。
【0055】
本形態では、マスク2の前側への移動を規制する支持部材18は、ハンドフォーク16に固定されている。そのため、本形態では、ハンドフォーク16に対して支持部材18が前後方向に移動可能になっている場合と比較して、ハンド3の構成を簡素化することが可能になる。
【0056】
本形態では、ハンド3は、支持部材17が固定される固定部材20の下面に固定されるゴムパッド21と、ゴムパッド21がハンドフォーク16の上面に所定の接触圧で接触する接触位置20Aとゴムパッド21がハンドフォーク16の上面から離れる離間位置20Bとの間で固定部材20を移動させるエアシリンダ22とを備えている。そのため、本形態では、接触位置20Aに固定部材20が配置されているときの、ゴムパッド21とハンドフォーク16の上面との摩擦力を利用して前後方向における所定の位置で支持部材17を停止させておくことが可能になる。また、本形態では、固定部材20を離間位置20Bに移動させることで、移動機構19によって前後方向に支持部材17を容易に移動させることが可能になる。
【0057】
また、本形態では、ゴムパッド21は、接触位置20Aに固定部材20が配置されているときに、エアシリンダ22によってハンドフォーク16の上面に押し付けられているため、接触位置20Aに固定部材20が配置されているときの、ゴムパッド21とハンドフォーク16の上面との摩擦力を高めることが可能になる。したがって、本形態では、前後方向における所定の位置で支持部材17を確実に停止させておくことが可能になる。
【0058】
本形態では、マスク2は、2本のハンドフォーク16の前側部分に搭載されている。また、本形態では、モータ29は、関節部23よりも後ろ側に配置されている。そのため、本形態では、前後方向において、ハンド3に搭載されるマスク2とモータ29との距離を離すことが可能になる。したがって、本形態では、比較的高温のマスク2がハンド3に搭載される場合であっても、マスク2の熱の影響によるモータ29の損傷を防止することが可能になる。
【0059】
また、本形態では、エアシリンダ22が可動部材34の後端側に取り付けられているため、前後方向において、ハンド3に搭載されるマスク2とエアシリンダ22との距離を離すことが可能になる。したがって、本形態では、比較的高温のマスク2がハンド3に搭載される場合であっても、マスク2の熱の影響によるエアシリンダ22の損傷を防止することが可能になる。
【0060】
本形態では、ハンド3は、ハンドフォーク16に搭載されたマスク2の水平方向に対する傾きを補正する傾き補正機構46を備えている。そのため、本形態では、ハンドフォーク16に搭載されたマスク2の重量によってハンドフォーク16が撓んでも、ハンドフォーク16に搭載されたマスク2の水平方向に対する傾きを補正することが可能になる。
【0061】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0062】
上述した形態において、支持部材17に加えて、支持部材18がハンドフォーク16に対して前後方向に移動可能となっていても良い。この場合には、ハンド3は、支持部材18を前後方向に移動させる移動機構を備えている。また、上述した形態において、支持部材17に代えて、支持部材18がハンドフォーク16に対して前後方向に移動可能となっていても良い。
【0063】
上述した形態において、エアシリンダ22は、可動部材34の前端側に取り付けられていても良いし、前後方向における可動部材34の中間位置に取り付けられていても良い。また、上述した形態では、固定部材20は、管状部材40の軸心を中心にして回動することで、接触位置20Aと離間位置20Bとの間を移動するが、固定部材20は、たとえば、上下方向に直線的に移動することで、接触位置20Aと離間位置20Bとの間を移動しても良い。また、上述した形態において、ハンド3は、エアシリンダ22に代えて、モータと、このモータの動力を固定部材20に伝達する動力伝達機構とを備えていても良い。
【0064】
上述した形態において、基部15の後端部がアーム4の先端側に回動可能に連結されていても良い。また、上述した形態において、モータ29は、基部15の前端部に固定されていても良い。さらに、上述した形態において、ハンド3が備えるハンドフォーク16の本数は、3本以上であっても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、傾き補正機構46を備えていなくても良い。また、上述した形態において、ロボット1が搬送する搬送対象物2は、マスク以外の物であっても良い。たとえば、ロボット1が搬送する搬送対象物2は、液晶ディスプレイ用のガラス基板であっても良い。
【0065】
上述した形態では、ロボット1は、水平多関節型のロボットであるが、本発明が適用されるロボットは、水平多関節型のロボット以外の産業用ロボットであっても良い。たとえば、本発明が適用されるロボットは、上述の特許文献1に開示された産業用ロボットのように、ハンド3の基端側を支持するリニア駆動部と、リニア駆動部を支持する本体部とを備えるロボットであっても良い。この場合のリニア駆動部は、ハンド3が連結されるとともにハンド3を保持するハンド保持部である。
【符号の説明】
【0066】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 マスク(搬送対象物)
3 ハンド
4 アーム(ハンド保持部)
16 ハンドフォーク
17 支持部材
18 支持部材(第2支持部材)
19 移動機構
20 固定部材
20A 接触位置
20B 離間位置
21 ゴムパッド
22 エアシリンダ(第2移動機構)
23 関節部(ハンド保持部へのハンドの連結部分)
29 モータ(移動機構の駆動源)
34 可動部材
46 傾き補正機構
X ハンドフォークの長手方向
X1 第2方向
X2 第1方向