(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】カテーテル用シーネ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/135 20060101AFI20221209BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
A61B17/135
A61F5/01 N
(21)【出願番号】P 2018203438
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】595121928
【氏名又は名称】有限会社サンパック
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】森 和美
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-253659(JP,A)
【文献】特開2008-259795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335831(US,A1)
【文献】特開2016-106876(JP,A)
【文献】特表2000-500674(JP,A)
【文献】特開2003-010216(JP,A)
【文献】特表2008-512178(JP,A)
【文献】特開2014-018633(JP,A)
【文献】特開昭58-058042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0234374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/132-17/135
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側は段ボールで、対象者の皮膚側となる内側は吸水性のシートで形成したハサミやカッターナイフにより切断可能なシート状であって、対象者の前腕に巻き付けられ、対象者の手首または肘の少なくとも一方を固定するシート部と、
前腕に巻き付けられた前記シート部を固定する固定部と、
を備え、
前記シート部には、止血器具を露出させる開口孔が形成され、
前記シート部を切断することで該シート部のサイズや前記開口孔のサイズを変更して使用し、また、手首の固定と肘の固定のどちらにも使用できることを特徴とするカテーテル用シーネ。
【請求項2】
前記シート部に切断用のミシン目が施されたことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用シーネ。
【請求項3】
対象者の手首または肘の少なくとも一方を固定する添え木を備えたことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用シーネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の前腕に巻き付けられ、対象者の手首または肘の少なくとも一方を固定するカテーテル用シーネに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、人体の種々の箇所の造影検査を行うために、橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈などからカテーテルが穿刺されて造影剤が注入される。そして、造影検査が終了すると、カテーテルが抜去されることになるが、抜去後、例えば、特許文献1や非特許文献1、非特許文献2のような止血器具を用い、止血のために穿刺部を3、4時間程度、圧迫しなければならない。この時、肘や手首が曲がらないように固定しなければならない。
また、カテーテルの抜去後だけでなく、カテーテルが橈骨動脈や上腕動脈に穿刺されている時には、肘や手首が曲げられないように固定しなければならない。
【0003】
この肘や手首が曲がらないように固定するために、種々のシーネが考えられた。特許文献2の圧迫止血兼シーネ(動脈閉塞器/副子)は、PVCなどの剛性ある材料の手首副子が腕を収容するように凹状で前腕から手の甲まで延在し、圧迫止血兼シーネの両端がストラップによって前腕と手に取り付けられる。これにより、手首が曲がらないようになっている。また、前腕側のストラップには押圧パッドが設けられて橈骨動脈を局部的に圧迫する。このとき、尺骨動脈は圧迫されずに血液が流れる。
【0004】
特許文献3のシーネは、
図5に示されるように、腕を収容するよう凹状に湾曲して形成された発泡スチロールの関節抑制具が上腕から手まで延在し、4本の指が関節抑制具と把手の間に入り、関節抑制具の上腕側が結束バンドで上腕に取り付けられる。これにより、肘が曲がらないようになっている。
【0005】
特許文献4のシーネは、
図1に示されるように、木や樹脂からなる硬質材で皮膚面にフィットし易い樋状の固定板が肘の前後に延在し、その両端がバンドによって腕に取り付けられる。これにより、肘が曲がらないようになっている。
【0006】
非特許文献3の圧迫止血兼シーネは、手首用の市販品であり、わずかに湾曲した合成樹脂の固定板が手首の前後に延在する。その延在方向には複数の補強リブが形成され、固定板の両端がバンドによって前腕と手に取り付けられる。これにより、手首が曲がらないようになっている。そして、別体の止血器具が付いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-202231号公報
【文献】特表2000-500674号公報
【文献】特許5847751号公報
【文献】特公平3-42102号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】テルモ株式会社ホームページ、[online]、TRバンド、[平成30年6月28日検索]、インターネット〈URL: http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/470034/470034_13B1X00101000001_B_01_02.pdf〉
【文献】ゼオンメディカル株式会社ホームページ、[online]、ゼメックス止血システム、[平成30年6月24日検索]、インターネット〈URL: http://www.zeonmedical.co.jp/product/circulation/arteria_coronaria_04/tometakun_01.shtml〉
【文献】SCJ細径倶楽部可児支部というブログ、[online]、RadiStop Otome、[平成30年6月25日検索]、インターネット〈http://yangt3.blog.so-net.ne.jp/2011-08-12&pagename=nice〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2~4および非特許文献3のシーネは、何れも手首や肘が曲がらないように固定するための固定部が自由に変形することが出来ない硬い材質である。したがって、太った人と痩せた人のように腕の太さが異なる対象者や、大人と子どものように伸長が異なる対象者には、そのまま同じシーネがフィットしないという問題がある。このために、異なる対象者に適用するには、予め複数のサイズのシーネを準備しておいたり、フットするよう調整するためのアダプタを追加したりする必要がある。
【0010】
また、従来のシーネは、手首固定用或は肘固定用というように、一つのシーネで手首の固定或は肘の固定、どちらにも使用できるような発想で作られたものではなかった。
【0011】
また、複数のシーネを準備しておく場合、シーネ自体は形状が特定されているものなので、複数のシーネを簡単に重ねておくことはできず、収容の際にも嵩張ってしまうという問題もある。
【0012】
また、従来のシーネは、射出成型のための固定部の金型費が掛かること等から高価なものである。例えば、手首固定用であれば1万円程度、肘固定用であれば1万2千円程度している。
【0013】
また、従来のシーネは、高額であること等から、その多くが再使用されている。シーネは、血液が付着することもあるので、再使用の際に必ず消毒が行われる。この消毒作業は非常に手間である。また、万一消毒作業にミスがあれば、取り返しのつかないトラブルとなる。また、何度も再使用されると、シーネが劣化したり、破損したりする恐れがあり、このような経時変化によるシーネは、見た目も悪く、清潔感もない。このように、シーネの再使用では多くの問題が生じる。
【0014】
また、従来のシーネは、固定する部分が何れも腕の下側で支える構造となっているが、止血中、仮に出血がおこった場合に血液が拡散しやすいという問題もある。
【0015】
そこで、本発明は、事前に複数の異なるカテーテル用シーネを準備することなく、異なる対象者であっても容易にフィットさせることのできるカテーテル用シーネを提供することを目的とする。また、安価で、再使用する必要のないカテーテル用シーネを提供することを目的とする。また、止血中に出血がおこった場合にも、血液の拡散が少ないカテーテル用シーネを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の一つの態様に係るカテーテル用シーネは、対象者の前腕に巻き付けられ、対象者の手首または肘の少なくとも一方を固定するシート部と、前腕に巻き付けられた前記シート部を固定する固定部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
これにより、従来の固いシーネと比較して、本願のカテーテル用シーネは腕に巻き付けられるシート状であるので、寸法が異なる腕にも容易にフィットさせることができる。また、シート状であるので、複数のカテーテル用シーネを重ねておくことができ、保管時に嵩張らずに複数のカテーテル用シーネを収納しておくことができる。また、シート部を巻き付ける構成のため、巻き付ける対象の寸法を気にする必要がなく、手首の固定、或は肘の固定のどちらにも使用することができる。また、巻き付ける構成であることから、止血中、仮に出血がおこった場合にも、血液の拡散を抑えることができる。また、巻き付けられたシート部は、腕の延在方向に曲がり難いので、手首や肘の曲げを強固に防ぐことができる。
また、本発明のカテーテル用シーネにおいては、前記シート部は、中芯と表ライナーからなる段ボールを備えることが好ましい。
【0018】
シート部を紙素材である段ボールで実現するため、カテーテル用シーネを安価に提供できる。このために、使い捨てができるので、再使用がなくて衛生的であり、使用後の消毒作業が不要である。また、紙素材であるので、容易にカットできる。またカットにより、シート部を所望する形状に変更することができる。また、表ライナーに容易に文字を書くことができる。例えば、ボールペンで止血終了時間などの申し送り事項を記入することができる。
また、本発明のカテーテル用シーネにおいては、前記シート部は、使用者の皮膚側に吸水性のシートを備えることが好ましい。
【0019】
これにより、止血中に漏れた血液を吸収することができるので、血液の拡散を防ぐことになる。このため、血液による周囲の汚れを防止でき、周囲の清掃を減らすことができる。
また、本発明のカテーテル用シーネにおいては、前記シート部に切断用のミシン目が施されることが好ましい。
【0020】
これにより、後述の実施形態で説明する、穿刺部の開口孔用のミシン目、左右の親指の挿入孔用のミシン目、巻き付け長さ調整用のミシン目、全長調整用のミシン目、取り外し用のミシン目、等を設ければ、使用者が容易にシート部をカットすることができる。
また、本発明のカテーテル用シーネにおいては、前記シート部に穿刺部の開口孔と左右の親指の挿入孔を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、よく使用され、また、最初から設けられていても支障が無い穿刺部の開口孔と左右の親指の挿入孔を設けておくことで、使用者が孔を明ける手間を省くことができる。また、親指を孔に入れて固定させることにより、前腕が回内運動または回外運動をして穿刺部周辺の筋肉が動き、穿刺部が開くことを防止することができる。
また、本発明のカテーテル用シーネにおいては、対象者の手首または肘の少なくとも一方を固定する添え木を備えることが好ましい。
これにより、より強く手首や肘の曲げを阻止することができる。たとえば、介護者の注意を守ることができない子どもの出血を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】Aは本発明の第1実施形態に係るカテーテル用シーネの要部を示す平面図であり、BはそのIB-IB断面図である。
【
図2】Aは第1実施形態に係るカテーテル用シーネが手首の固定用として切断される使用例1のカテーテル用シーネを示す平面図であり、Bは使用例1のカテーテル用シーネが腕に装着された状態を示す平面図である。
【
図3】Aは
図2BのIIIA-IIIA断面図であり、(B)は
図2BのIIIB-IIIB断面図である。
【
図4】Aは第1実施形態に係るカテーテル用シーネが肘の固定用として切断される使用例2のカテーテル用シーネを示す平面図であり、Bは使用例2のカテーテル用シーネが肘を挟んで前腕と上腕に装着された状態を示す平面図である。
【
図5】Aは第2実施形態に係るカテーテル用シーネの要部を示す側面図であり、Bは第2実施形態に係るカテーテル用シーネが手首の固定用として切断される使用例3と、肘の固定用として切断される使用例4のカテーテル用シーネを示す平面図である。
【
図6】Aは第2実施形態における使用例3のカテーテル用シーネが装着される前の腕の状態を示す撮像であり、Bはそのカテーテル用シーネが腕に装着された状態を示す撮像である。
【
図7】Aは第2実施形態における使用例4のカテーテル用シーネが装着される前の腕の状態を示す撮像であり、Bはそのカテーテル用シーネが腕に装着された状態を示す撮像である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るカテーテル用シーネの要部を示す平面図である。
【
図9】Aは本発明の第4実施形態に係るカテーテル用シーネを示す平面図であり、Bは第5実施形態に係るカテーテル用シーネの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0024】
[第1実施形態]
図1~4を用いて第1実施形態のカテーテル用シーネ100を説明する。カテーテル用シーネ100はカテーテル検査後の動脈の止血中に手首A1や肘A2の関節が曲がらないように固定するシーネ(固定具)である。カテーテル用シーネ100はカテーテル検査を受ける対象者(被検者)の手A3、前腕A4や上腕A5に巻き付けられるシート状のシート部1と、巻き付けられたシート部1を固定する2つの固定部2からなる。
【0025】
図1A、
図1Bに示すように、シート部1は、表ライナー111と中芯112からなる段ボール11と、裏ライナーに相当するクッション12と、吸水部13からなる。
段ボール11を構成する表ライナー111は、文字を書き易い白色の紙からなる。また、
段ボール11を構成する中芯112は、例えば材質がK120で波がCフルートなどの一般的な紙製の段ボールの中芯である。
【0026】
なお、
図1AにおいてD1方向は、シート部1の巻き付け方向である。そして、このD1方向は、波形を形成する機械の流れ方向と一致している。このため、段ボール11は、この巻き付け方向D1には非常に曲がり易い。
【0027】
また、
図1AにおいてD2方向は、前腕A4や上腕A5の延在方向と一致するシート部1の延在方向であり、巻き付け方向D1と直交する。この延在方向D2は、段ボール11の幅方向(目方向)と一致する。このため、段ボール11は、この延在方向D2には曲がり難い。
【0028】
クッション12は、緩衝剤などに使用される柔らかなプラスチックス製の発泡フォームシート材であり、中芯112に接着される。また、吸水部13は、和紙やティッシュペーパーのような吸水性があって軟らかいものであり、クッション12に接着される。
【0029】
シート部1は、シート状であり、クッション12と吸水部13は非常に柔らかいために、表ライナー111とは逆側の巻き付け方向D1に容易に曲がる。また、シート部1は、紙や軟らかい発泡のプラスチックス材からなるため、ハサミやカッターナイフで容易に切断可能である。
【0030】
そして、シート部1は、容易に切断可能であるので、大きめのサイズになっており、医師や看護師などの使用者が所望する大きさに切断して用いられる。また、
図2に示される止血器具Sの要部が露出する開口孔14や親指A6が挿入される挿入孔15などの孔は、使用者によって開けられる構成となっているため、第1実施形態のシート部1には最初は開いていない。
【0031】
2つの固定部2は、共通の部品からなる。固定部2は、ベルト21と、保持部を構成する面ファスナーのループ面22と面ファスナーのフック面23とからなる。ベルト21は、一般的な人の腕周りの長さより十分に長い矩形状の丈夫な素材からなる。面ファスナーのループ面22は、ベルト21の先端側の一方の面に貼り付けられて形成されている。ループ面22は、雌面やB面とも呼ばれ、輪状のループが外糸の縫合により形成されている。面ファスナーのフック面23は、ベルト21の他方の面に貼り付けられて形成されている。フック面23は、雄面やA面とも呼ばれ、鍵状のフックが外糸の縫合により形成されている。
【0032】
そして、固定部2は、ベルト21をシート部1に巻き付け、ループ面22とフック面23とが合わせられ、ループ面22のループにフック面23のフックが掛かって係合することで、巻き付けられたシート部1を固定する。
【0033】
なお、
図1Bに示すように、ベルト21は、ループ面22が形成されている面を、接着やステッチによる縫合等でシート部1の表ライナー111に固着されている。
【0034】
[使用例1]
図2、
図3を用いて、使用例1を説明する。使用例1は、手首の固定用としての使用例である。具体的には、第1実施形態のカテーテル用シーネ100を切断し、右側の手首A1の固定として使用している。なお、
図2Aの破線の斜線は、第1実施形態のシート部1から切断される部分を示している。
【0035】
使用例1のシート部1Aは、第1実施形態のシート部1を切断して形成されている。具体的には、巻き付け方向D1の長さは、手A3や前腕A4に巻きつけるのに適した長さにシート部1を切断し、また、延在方向D2の長さは、指A7が少し見える程度の長さに、シート部1を切断している。また、撓骨動脈C1用の止血器具Sの要部である押圧部S1が露出するように、シート部1から開口孔14が切断されている。また、親指A6が嵌入するように、シート部1から挿入孔15が切断されている。
【0036】
この切断により、第1実施形態のカテーテル用シーネ100は、使用例1のカテーテル用シーネ100Aとなる。また、第1実施形態のシート部1は、使用例1のシート部1Aとなる。
【0037】
なお、これらの切断は、カテーテル用シーネ100Aの強度が低下しないように、最小限の大きさで切断されている。また、固定部2のベルト21が長すぎるときは、ベルト21を切断して長さを調整してもよい。
【0038】
そして、
図2Bに示すように、カテーテル用シーネ100Aは、親指A6が挿入孔15から、また止血器具Sの押圧部S1と空気注入部S2が開口孔14から露出するように、右側の手A3と前腕A4に巻き付けられる。この時、
図3Bに示すように、固定部2の周回したベルト21の先端のループ面22がフック面23と合わさって、シート部1Aが固定される。
【0039】
巻き付けられた状態のカテーテル用シーネ100Aは、シート部1Aの延在方向D2が前腕A4の延在方向と一致するので、カテーテル用シーネ100Aが曲がり難くて手首A1の曲げを阻止することができる。
【0040】
なお、
図3Aに示すように、止血器具Sの押圧部S1は空気圧で膨らまされ、固い支持板S3とは逆側に突出して撓骨B1近傍の撓骨動脈C1を局部的に圧迫する。このとき、尺骨B2近傍の尺骨動脈C2は圧迫されないので、尺骨動脈C2の血流は妨げられない。
【0041】
[使用例2]
図4を用いて、使用例2を説明する。使用例2は、肘の固定用としての使用例である。具体的には、第1実施形態のカテーテル用シーネ100を切断し、右側の肘A2の固定として使用している。なお、
図4Aの破線の斜線は、第1実施形態のシート部1から切断される部分を示している。
【0042】
使用例2のシート部1Bも、第1実施形態のシート部1を切断して形成されている。具体的には、巻き付け方向D1の長さは、前腕A4や上腕A5に巻きつけるのに適した長さにシート部1を切断している。また、上腕動脈用の止血器具SBの要部である押圧部が露出するように、シート部1から開口孔14Bが切断されている。
【0043】
この切断により、第1実施形態のカテーテル用シーネ100は、使用例2のカテーテル用シーネ100Bとなる。また、第1実施形態のシート部1は、使用例2のシート部1Bとなる。
【0044】
そして、
図4Bに示すように、カテーテル用シーネ100Bは、止血器具SBの押圧部S1と空気注入部S2Bが露出するように、右側の前腕A4と上腕A5に巻き付けられる。この時、シート部1Bが固定部2によって固定される。
【0045】
以上、使用例1、使用例2に示したように、容易に切断可能なシート状の第1実施形態のカテーテル用シーネ100は、適宜切断して使用することにより、使用例1のように手首A1の固定用として、また使用例2のように腕A2の固定用として、両方に適切にフィットさせて共用することができる。
【0046】
また、カテーテル用シーネ100は、太った人と痩せた人のように腕の太さが異なる対象者や、大人と子どものように伸長が異なる対象者にもフィットして共通使用することができる。また、開口孔14、14Bの大きさを止血器具S、SBの大きさに合わせて切断することで、カテーテル用シーネ100は、サイズが異なる止血器具S、SBにも共通使用することができる。このように第1実施形態のカテーテル用シーネ100は、多方面において共通使用することができるので、サイズや孔が異なるカテーテル用シーネ100を複数在庫する必要がない。
【0047】
また、カテーテル用シーネ100は、シート部1を巻き付けて使用する構成であることからも、巻き付ける対象の寸法を気にする必要がなく、手首の固定、肘の固定のどちらにも使用でき、また、太った人、痩せた人に対してもフィットさせることができる。また、シート部1を巻き付ける構成であることから、止血中、仮に出血がおこった場合にも、血液の拡散を抑えることができる。巻き付けられたシート部1は、腕の延在方向D2に曲がり難いので、手首や肘の曲げを従来に比べより強固に防ぐことができる。
また、カテーテル用シーネ100は、シート状であるので、保管時に嵩張らずに収納することができる。
【0048】
また、カテーテル用シーネ100の基材は、段ボール11であるので安価である。このために、カテーテル用シーネ100の使い捨てができるので、再使用がなくて衛生的であり、使用後のカテーテル用シーネ100の消毒作業が不要である。
【0049】
また、表ライナー111は、紙素材であることから、ボールペンや鉛筆などで直接文字を書きやすい。従って、止血終了時間などの申し送り事項をカテーテル用シーネ100の表面に記入することができる。特にカテーテル用シーネ100は、シート部1を巻き付けて使用する構成であることから、表ライナー111に記入した申し送り事項が非常に視認し易い。
【0050】
また、皮膚に触れるカテーテル用シーネ100の内面は吸水性がある吸水部13であるので、漏れた血液を吸い取ることができる。また、吸水部13と中芯111の間は軟らかいクッションであるので、装着の心地が良い。
【0051】
なお、段ボール11の部分は紙素材であったが、これに限定するものではなく、D1方向に撓み易くて、D2方向に撓み易いシート状のもの、例えば、巻き簾のような素材でも、前腕A4にフィットし易くて手首A1や肘A2を固定することができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、
図5Aを用いて、第2実施形態のカテーテル用シーネ100Cを説明する。第2実施形態のカテーテル用シーネ100Cは、第1実施形態のカテーテル用シーネ100と同じ材質である。一方で、カテーテル用シーネ100Cは、撓骨動脈C1用の止血器具Sと上腕動脈用の止血器具SB共用の開口孔14Cと、親指A6が挿入される挿入孔15Cが左右2つ、最初からパンチ等によって設けられている。
【0053】
なお、挿入孔15Cの部分については、シート部1Cを構成するクッション12と吸水部13(共に図示なし)については、貫通孔ではなく、クロス状の貫通する切り込151Cみとなっている。この切り込み151Cによって、親指A6が挿入されないときは挿入孔15Cがクッション12と吸水部13で皮膚が露出しないようになる。
【0054】
[使用例3]
図5B、
図6A、
図6Bを用いて、使用例3を説明する。使用例3は、手首の固定用として使用例である。具体的には、第2実施形態のカテーテル用シーネ100Cのシート部1Cを切断して、右側の手首A1の固定として使用している。なお、
図5Bの破線の斜線は第2実施形態のシート部1Cの切断される部分を示す。シート部1Cを切断したシート部1Dの巻き付け方向D1の長さは、手A3や前腕A4に巻きつけるのに適した長さに切断される。
【0055】
図6Aは、カテーテル用シーネ100Dが装着される前の手A3と前腕A4の状態を示す撮像であり、撓骨動脈C1用の止血器具Sが装着されている。
図6Bに示すように、一部が切断されたカテーテル用シーネ100Dのシート部1Dは、親指A6と止血器具Sの要部が露出した状態で右側の手A3と前腕A4に巻き付けられ、2つの固定部2によって固定される。
【0056】
巻き付けられた状態のシート部1Dの延在方向D2が、前腕A4の延在方向と一致するので、カテーテル用シーネ100Dが曲がり難く、手首A1の曲げを阻止することができる。このとき、使用例3のカテーテル用シーネ100Dの左親指A6用の挿入孔15Cは使用されないが、手首A1の固定には支障がない。
【0057】
[使用例4]
図5B、
図7A、
図7Bを用いて、使用例4を説明する。使用例4は、肘の固定用としての使用例である。具体的には、第2実施形態のカテーテル用シーネ100Cのシート部1Cを切断して、右側の肘A2の固定として使用している。なお、本使用例では、
図5Bの第3使用例のカテーテル用シーネ100Dをそのまま使用例4として使用している。
【0058】
図7Aは、カテーテル用シーネ100Dが装着される前の前腕A4と上腕A5の状態を示す撮像であり、上腕動脈C2用の止血器具SBが装着されている。
図7Bに示すように、カテーテル用シーネ100Dのシート部1Dは、止血器具SBの要部が露出した状態で右側の前腕A4と上腕A5に巻き付けられ、2つの固定部2によって固定される。
【0059】
巻き付けられた状態のシート部1Dの延在方向D2が、前腕A4の延在方向と一致するので、カテーテル用シーネ100Dが曲がり難く、肘A2の曲げを阻止することができる。このとき、使用例4のカテーテル用シーネ100Dの両親指A6用の2つの挿入孔15Cは使用されないが、肘A2の固定には支障がない。
【0060】
以上、使用例3、使用例4に示したように、第2実施形態のカテーテル用シーネ100Cは、対象者の上腕A5の太さに応じて巻き付け方向D1の長さ調節するだけで、手首A1の固定にも肘A2の固定にも共通使用することができる。
【0061】
また、第2実施形態の既設の開口孔14Cは撓骨動脈C1と上腕動脈C2用が兼用であったが、それぞれ専用の開口孔14Cを設けてもよい。このときは延在方向D2に長いシート部1Cとしておき、使用者はこれを切断して使用することができる。
【0062】
[第3実施形態]
図8を用いて、第3実施形態のカテーテル用シーネ100Eを説明する。カテーテル用シーネ100Eは、第1実施形態のカテーテル用シーネ100に種々のミシン目16が施されたものである。ミシン目16は、シート部1Eを容易に切断するためのものである。
図8に示すように、切断用のミシン目16は、4種のものが設けられている。
【0063】
具体的には、一つは、シート部1Eを巻き付けるときの長さを調節するために延在方向D2と平行な方向に設けられた4本のミシン目である。また一つは、カテーテル用シーネ100Eの前腕A4方向の長さを調節するために巻き付け方向D1と平行な方向に設けられた2本のミシン目である。また一つは、撓骨動脈C1用の止血器具S或は上腕動脈用の止血器具SB用を露出させるための大小二つの大きさの開口孔用のミシン目である。また一つは、左右どちらからの親指が挿入される挿入孔用のミシン目である。
【0064】
そして、使用者は、これらのミシン目16を適宜選択して切断することにより、容易にシート部1Eを切断することができ、対象に合わせて様々なサイズのカテーテル用シーネ100Eを実現することができる。
なお、本実施形態のようなミシン目ではなく、切取り線のような印刷による目印としても、ハサミやカッターナイフでシート部1Eを切断し易くなる。
【0065】
[第4実施形態]
図9Aを用いて、第4実施形態のカテーテル用シーネ100Fを説明する。カテーテル用シーネ100Fは、第1実施形態等で示したカテーテル用シーネ100Aに付属の添え木3を追加したものである。
【0066】
添え木3は、樹脂や金属等の硬い棒状のものからなる。そして、この添え木3によって、手首A1や肘A2をより強固に固定することができる。例えば、介護者の注意をなかなか守ることができない子供等は、不意に手首や肘を曲げてしまうおそれがある。このような場合、非常に強い力がカテーテル用シーネ100Fに加わることになるが、本実施形態の添え木3を追加しておくことにより、手首や肘の曲げを阻止して、出血を防止することができる。
【0067】
この添え木3は、カテーテル用シーネ100Fに最初から取り付けておく構成でも構わないが、対象者によって取り付けられるよう着脱可能な構成が好ましい。この着脱可能な構成の場合、例えば、シート部1Fに添え木3を挿入可能な袋状の挿入部を設けておく構成を採用することができる。
また、添え木3は、カテーテル用シーネ100Fの使用時に、腕の下側に位置するように設けられる。
【0068】
[第5実施形態]
図9B用いて、第5実施形態のカテーテル用シーネ100Gを説明する。カテーテル用シーネ100Fは、シート部1Gの巻き付け方向D1の長さが長いものとなっている。第1実施形態等では、シート部1Gの巻き付け方向D1の長さを切断して調整していた。
【0069】
一方、本実施形態ではシート部1Gの巻き付け方向D1を切断することなく、
図9Bに示すように、折り曲げたものとなっている。
図8Bに示すように、第5実施形態のシート部1Gの固定部2とは逆側の端部17が、外側に折り曲げられる。
【0070】
このように、シート部1Gの端部17を折り曲げることにより、この曲げられた端部17が、第4実施形態の添え木3と同様な働きをする。なお、シート部1Gを更に長くしておくことで、この折り曲げの回数を増加させることもできる。
【0071】
以上のように、本発明のカテーテル用シーネは、対象者の前腕に巻き付けられ、対象者の手首または肘の少なくとも一方を固定するシート部と、前腕に巻き付けられたこのシート部を固定する固定部と、を備えた構成となっている。
【0072】
この構成により、事前に異なる複数のカテーテル用シーネを準備することなく、異なる対象者であっても容易にフィットさせることができる。また、保管時においても嵩張らず収納できるため、病院等の限られた保管スペースを有効に利用することができる。また、出血がおこった場合でも、血液の拡散を抑えることができる。
また、シート部を紙素材とすることで、安価なものを提供することができ、使い捨てとすることができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、本発明のカテーテル用シーネをカテーテルの抜去後の止血の際に用いる例で説明したが、止血の際の固定具としてだけでなく、カテーテルを橈骨動脈や上腕動脈に穿刺している時の固定具として用いても構わない。
【符号の説明】
【0074】
100:カテーテル用シーネ
1:シート部
11:段ボール
111:表ライナー
112:中芯
12:クッション
13:吸水部
14:開口孔
15:挿入孔
16:ミシン目
2:固定部
21:ベルト
22:ループ面
23:フック面
3:添え木
A1:手首
A2:肘
D1:巻き付け方向
D2:延在方向
S、SB:止血器具