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特許7190873HUDシステム及びHUDのための光学素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】HUDシステム及びHUDのための光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20221209BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20221209BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/08 D
B60K35/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018213904
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2019095786
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158610
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】李 振鎬
(72)【発明者】
【氏名】エレーナ マリノフスカヤ
(72)【発明者】
【氏名】イーゴル ヤヌシク
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】南 東▲ぎょん▼
(72)【発明者】
【氏名】崔 倫善
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161732(JP,A)
【文献】特開2005-148118(JP,A)
【文献】特開2007-171547(JP,A)
【文献】特開2009-229752(JP,A)
【文献】特開2015-215508(JP,A)
【文献】米国特許第07656585(US,B1)
【文献】米国特許第07119960(US,B1)
【文献】特開2016-133700(JP,A)
【文献】特開2009-210780(JP,A)
【文献】特開2008-015059(JP,A)
【文献】中国実用新案第205003361(CN,U)
【文献】特開2016-200682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 5/08
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HUDのための光学素子において、
HUD映像の虚像を拡大するフレネルパターンレイヤと、
前記フレネルパターンレイヤ上に形成され、光源からのマルチ波長バンドの光を受信し、前記マルチ波長バンドそれぞれについて設定された透過率に応じて前記マルチ波長バンドの光の一部を透過させるマルチバンドコーティングレイヤと、
前記マルチバンドコーティングレイヤ上に形成され、前記フレネルパターンレイヤと同じ屈折率を有するイマージョンレイヤと、
を含み、
前記マルチバンドコーティングレイヤの前記マルチ波長バンドの各波長帯域は、同じ帯域幅及び透過率を有し、
前記光学素子可視光に対する透過率は、ウインドシールドの可視光に対する透過率と同一であり、
前記フレネルパターンレイヤは、三角プリズム形態のフレネルパターンを含み、前記フレネルパターンのピッチ及び高さのうち大きいものは、220μm未満の大きさを有
前記マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅は約25nmに設定され、前記マルチ波長バンドを構成している各波長帯域について前記透過率は約80%に設定されている、又は、前記マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅は約5nmに設定され、前記マルチ波長バンドを構成している各波長帯域について前記透過率は約50%に設定されている、
光学素子。
【請求項2】
前記マルチ波長バンドは、赤色光に対応する波長帯域、緑色光に対応する波長帯域、及び青色光に対応する波長帯域を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記透過率は、ウインドシールドに対する前記光学素子の視認性に基づいて設定される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記マルチバンドコーティングレイヤは、前記フレネルパターンレイヤの少なくとも1つの傾斜面に形成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記フレネルパターンレイヤは、前記HUD映像がユーザに照射される角度に基づいて少なくとも1つの傾斜面を含むフレネルレンズの一部領域を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記フレネルレンズは、第1方向の傾斜面を含む第1領域、第2方向の傾斜面を含む第2領域、及び中心軸周辺の第3領域を含み、
前記フレネルパターンレイヤは、前記第1領域又は前記第2領域を含む、請求項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記光学素子はウインドシールド内に挿入され、又は、前記ウインドシールドにフィルム状に取り付けられる、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
HUD映像のためのマルチ波長バンドの光を提供する光源と、
前記マルチ波長バンドの光を調整する第1光学素子と、
前記HUD映像の虚像を拡大する第1レイヤ、前記マルチ波長バンドそれぞれについて設定された透過率に応じて前記マルチ波長バンドの光の一部を透過させる第2レイヤ、及び前記第1レイヤと同じ屈折率を有する第3レイヤを含む第2光学素子と、
を含み、
前記第2レイヤの前記マルチ波長バンドの各波長帯域は、同じ帯域幅及び透過率を有し、
前記第2光学素子可視光に対する透過率は、ウインドシールドの可視光に対する透過率と同一であり、
前記第1レイヤは、三角プリズム形態のフレネルパターンを含み、前記フレネルパターンのピッチ及び高さのうち大きいものは、220μm未満の大きさを有
前記光源がLEDである場合、前記マルチ波長バンドそれぞれについて前記透過率は約80%に設定され、前記光源がレーザである場合、前記マルチ波長バンドそれぞれについて前記透過率は約50%に設定される、
HUDシステム。
【請求項9】
前記マルチ波長バンドは、赤色光に対応する波長帯域、緑色光に対応する波長帯域、及び青色光に対応する波長帯域を含む、請求項に記載のHUDシステム。
【請求項10】
前記第1光学素子は、少なくとも1つのミラー又は少なくとも1つの投射光学部を含む、請求項に記載のHUDシステム。
【請求項11】
前記第2レイヤは、前記第1レイヤの傾斜面に形成される、請求項に記載のHUDシステム。
【請求項12】
前記第1レイヤは、前記HUD映像がユーザに照射される角度に基づいて少なくとも1つの傾斜面を含むフレネルレンズの一部領域を含む、請求項に記載のHUDシステム。
【請求項13】
前記HUD映像を表示するディスプレイパネルと、
前記HUD映像を3Dに変換する3D光学レイヤと、
をさらに含む、請求項に記載のHUDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、HUDシステム及びHUDのための光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
HUD(head up display、ヘッドアップディスプレイ)システムは、運転者の前方に虚像を生成し、虚像内に情報を表示して運転者に様々な情報を提供し得る。運転者に提供される情報は、車両の速度、ガソリンの残量、エンジンRPM(revolution per minute)などの計器盤情報及びナビゲーション情報を含んでいる。運転者は、運転中に視線を移動することなく、前方に表示される情報を容易に把握できるため、運転の安定性が高くなり得る。HUDシステムは、計器盤情報及びナビゲーション情報の他にも、前方視野が良くない場合のための車線表示、工事表示、交通事故表示、道行者を示す警告表示などを運転者にAR(Augmented Reality、拡張現実)方式で提供し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、HUDシステム及びHUDのための光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によれば、HUDのための光学素子は、HUD映像の虚像を拡大するフレネルパターンレイヤと、前記フレネルパターンレイヤ上に形成され、光源からのマルチ波長バンドの光を受信し、前記マルチ波長バンドそれぞれについて設定された透過率に応じて前記マルチ波長バンドの光の一部を透過させるマルチバンドコーティングレイヤと、前記マルチバンドコーティングレイヤ上に形成され、前記フレネルパターンレイヤと同じ屈折率を有するイマージョンレイヤとを含む。
【0005】
前記マルチ波長バンドは、赤色光に対応する波長帯域、緑色光に対応する波長帯域、及び青色光に対応する波長帯域を含み得る。前記透過率は、白色光に関する透過率が予め決定したレベルに保持されるよう前記マルチ波長バンドそれぞれについて設定され得る。前記透過率は、ウインドシールドに対する前記光学素子の視認性に基づいて設定され得る。
【0006】
前記透過率は、前記マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅が狭いほど低く設定され得る。前記光源がLEDである場合、前記透過率は第1透過率に設定され、前記光源がレーザである場合、前記透過率は第2透過率に設定され、前記第1透過率は前記第2透過率に比べて高くし得る。
【0007】
前記マルチバンドコーティングレイヤは、前記フレネルパターンレイヤの少なくとも1つの傾斜面に形成され得る。前記フレネルパターンレイヤは、前記HUD映像がユーザに照射される角度に基づいて少なくとも1つの傾斜面を含むフレネルレンズの一部領域を含み得る。前記フレネルレンズは、第1方向の傾斜面を含む第1領域、第2方向の傾斜面を含む第2領域、及び中心軸周辺の第3領域を含み、
【0008】
前記フレネルパターンレイヤは、前記第1領域又は前記第2領域を含み得る。
【0009】
前記光学素子はウインドシールド内に挿入され、又は、前記ウインドシールドにフィルム状に取り付けられ得る。
【0010】
一実施形態に係るHUDシステムは、HUD映像のためのマルチ波長バンドの光を提供する光源と、前記マルチ波長バンドの光を調整する第1光学素子と、前記HUD映像の虚像を拡大する第1レイヤ、前記マルチ波長バンドそれぞれについて設定された透過率に応じて前記マルチ波長バンドの光の一部を透過させる第2レイヤ、及び前記第1レイヤと同じ屈折率を有する第3レイヤを含む第2光学素子とを含む。
【0011】
前記第1光学素子は、少なくとも1つのミラー又は少なくとも1つの投射光学部を含み得る。前記HUDシステムは、前記HUD映像を表示するディスプレイパネルと、前記HUD映像を3Dに変換する3D光学レイヤとをさらに含み得る。
【0012】
他の実施形態に係るHUDシステムは、HUD映像のための第1マルチ波長バンドの光を提供する光源と、前記光源によって提供された前記第1マルチ波長バンドの光を反射し、車両外部の外部光源によって提供された第2マルチ波長バンドの光を透過させる第1光学素子と、前記HUD映像の虚像を拡大する第1レイヤ、前記第1光学素子によって反射した前記第1マルチ波長バンドの光、及び前記外部光源によって提供された前記第1マルチ波長バンドの光を反射し、前記外部光源によって提供された前記第2マルチ波長バンドの光を透過させる第2レイヤ、及び前記第1レイヤと同じ屈折率を有する第3レイヤを含む第2光学素子とを含む。
【0013】
前記第1マルチ波長バンドは、赤色に対応する第1波長帯域の一部、緑色に対応する第2波長帯域の一部、及び青色に対応する第3波長帯域の一部を含み、前記第2マルチ波長バンドは、前記第1波長帯域から前記第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部、前記第2波長帯域から前記第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部、及び前記第3波長帯域から前記第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部を含み得る。
【0014】
更なる実施形態に係るHUDシステムは、HUD映像のための第1マルチ波長バンドの光を提供する光源と、前記光源によって提供された前記第1マルチ波長バンドの光を反射する第1光学素子と、傾斜面を有する少なくとも1つのフレネルレンズを含むフレネルパターンレイヤ、前記少なくとも1つのフレネルレンズの傾斜面上に形成され、前記マルチ波長バンドそれぞれについて設定された透過率に応じて前記マルチ波長バンドの光を反射するマルチバンドコーティングレイヤ、及び前記マルチバンドコーティングレイヤ上に形成され、前記フレネルパターンレイヤと同じ屈折率を有するイマージョンレイヤを含み、前記第1光学素子によって反射した前記第1マルチ波長バンドの光を反射する第2光学素子とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、HUDシステム及びHUDのための光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るHUDシステムを示す図である。
図2】一実施形態に係るHUDのための光学素子を示す図である。
図3】一実施形態に係るマルチバンドコーティングレイヤの透過特性を示すグラフである。
図4】一実施形態に係るLEDタイプ光源の波長帯域を示すグラフである。
図5】一実施形態に係るHUDのための光学素子の透過及び反射特性を示す図である。
図6】一実施形態に係るウインドシールドの可視光透過率の解釈結果を示すグラフである。
図7】一実施形態に係るHUDのための光学素子の可視光透過率の解釈結果を示すグラフである。
図8】他の実施形態に係るHUDのための光学素子の透過及び反射特性を示す図である。
図9】他の実施形態に係るHUDのための光学素子の可視光透過率の解釈結果を示すグラフである。
図10】一実施形態に係るフレネルレンズの使用領域を示す図である。
図11A】一実施形態に係るフレネルレンズの使用領域による光の進行経路を示す図である。
図11B】一実施形態に係るフレネルレンズの使用領域による光の進行経路を示す図である。
図12】一実施形態に係る目の分解能を示す図である。
図13】一実施形態に係るフレネルパターンの構造及びティメンジョンを示す図である。
図14】一実施形態に係るHUDのための光学素子の製造過程を示す図である。
図15】一実施形態に係る外光遮断のためのHUDシステムを示す図である。
図16】一実施形態に係る外光遮断のためのマルチバンドコーティングレイヤの透過特性を示すグラフである。
図17】一実施形態に係るディスプレイ装置及びミラーを示す図である。
図18】一実施形態に係る投射光学部を含むHUDシステムを示す図である。
図19】一実施形態に係る3D光学レイヤを含むHUDシステムを示す図である。
図20】一実施形態に係るメガネのためのHUDシステムを示す図である。
図21】一実施形態に係るメガネのためのHUDシステムに関する光の経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態に対する特定な構造的又は機能的な説明は単なる例示のための目的として開示されたものとして、様々な形態に変更される。したがって、実施形態は特定な開示形態に限定されるものではなく、本明細書の範囲は技術的な思想に含まれる変更、均等物ないし代替物を含む。
【0018】
第1又は第2などの用語を複数の構成要素を説明するために用いることがあるが、このような用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ解釈されなければならない。例えば、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に第2構成要素は第1構成要素にも命名することができる。
【0019】
単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0020】
異なるように定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含めて、ここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0021】
以下、実施形態を添付する図面を参照しながら詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0022】
図1は、一実施形態に係るHUDシステムを示す図である。図1を参照すれば、HUDシステム100は、ディスプレイ装置110、第1光学素子120、及び第2光学素子130を含む。
【0023】
ディスプレイ装置110は、ディスプレイパネル111及び光源113を含む。ディスプレイパネル111はHUD映像を表示し、光源113は、HUD映像のためのマルチ波長バンドの光をディスプレイパネル111に提供する。例えば、マルチ波長バンドは、赤色光に対応する波長帯域、緑色光に対応する波長帯域、及び青色光に対応する波長帯域を含む。以下、マルチ波長バンドは、光源113を介して提供される光の波長帯域を意味したり、光源113を介して提供される光の波長帯域に関して第2光学素子130の透過率が設定される波長帯域を意味する。光源113は、LEDタイプ、又はレーザタイプであってもよい。ただし、マルチ波長バンドに属する波長帯域及び光源113のタイプは、必ず上記の例示に該当するものではなく、光源113は、上記する例示の他の波長帯域(例えば、青緑色(Cyan)、紫紅色(Magenta)、及び黄色(Yellow)光源の波長帯域)を用いてもよく、上記する例示の他のタイプであってもよい。以下、説明の便宜のために、ディスプレイ装置110内のディスプレイパネル111と光源113が別途のレイヤで具現された実施形態を説明するが、場合に応じて、ディスプレイ装置110のディスプレイパネル111と光源113は、単一レイヤ(例えば、LEDマトリックスなど)として具現されてもよい。
【0024】
光源113によって提供されたマルチ波長バンドの光は、ディスプレイパネル111を介して第1光学素子120に投射され、第1光学素子120は、マルチ波長バンドの光を調整し得る。ここで、マルチ波長バンドの光を調整することは、マルチ波長バンドの光を光学的に調整することを含む。例えば、第1光学素子120は、少なくとも1つのミラー、少なくとも1つの投射光学部、又は、その組合せを含む。少なくとも1つのミラーは、少なくとも1つの非球面(aspheric surface)ミラーを含む。第1光学素子120が少なくとも1つのミラーを含む場合、第1光学素子120は、マルチ波長バンドの光が第2光学素子130側に進行されるよう、マルチ波長バンドの光の方向を光学的に調整する。第1光学素子120が少なくとも1つの投射光学部を含む場合、第1光学素子120は、仮想イメージの平面150上の虚像が拡大されるよう、マルチ波長バンドの光の方向を光学的に調整し得る。
【0025】
第2光学素子130は、光源113からのマルチ波長バンドの光を受信し、マルチ波長バンドそれぞれについて設定された透過率に応じてマルチ波長バンドの光の一部を透過させ、残りを反射させる。以下、実施形態は光の透過及び光の反射のいずれか1つの側面で説明されるが、この説明は、残りの1つの側面でも実質的に同一に理解される。例えば、透過率が80%という説明は、反射率が20%であるものと理解される。ユーザは、第2光学素子130によって反射された光を介して仮想イメージの平面150上でHUD映像の虚像を観測できる。
【0026】
このようにHUDシステム100は、投射方式により運転者前方の仮想イメージの平面150に虚像を生成して情報を表示し得る。表現映像の大きさが十分に大きくなかったり、視野角(field of view;FOV)が十分に広くない場合、車両前方の事物や背景に関する情報をAR(Augmented Reality)に表現し難い場合がある。HUDを介してARレベルの情報を提供するためには、HUD映像の虚像が観測される仮想イメージの平面150が広視野角として実現される必要がある。ディスプレイ装置110及び第1光学素子120は、車両のダッシュボード内に装着される。ダッシュボード内の空間は限定されているため、ディスプレイ装置110及び第1光学素子120のサイズを大きくして十分な広視野角を実現するには限界が存在する。
【0027】
第2光学素子130は、ウインドシールド140内に挿入されたり、又は、ウインドシールド140に取り付けられてHUD映像の虚像を拡大し得る。ここで、ウインドシールド140内に挿入されることは、ウインドシールド140を構成している2枚のガラスの間に挿入されることを含み、ウインドシールド140に取り付けられることは、ウインドシールド140の車両の内部側の表面にフィルム状に取り付けられることを含む。第2光学素子130は、小さい体積で仮想イメージの平面150内の虚像を拡大できるため、第2光学素子130を介してディスプレイ装置110、第1光学素子120、及びディスプレイ装置110と第1光学素子120から構成された光学系空間の体積は減少し、広視野角を具現することができる。第2光学素子130については、以下にてより詳細に説明する。
【0028】
図2は、一実施形態に係るHUDのための光学素子を示す図である。光学素子200は、フレネルパターンレイヤ210、マルチバンドコーティングレイヤ220、及びイマージョンレイヤ230を含む。光学素子200は、図1を参照して説明された第2光学素子130に対応する。
【0029】
フレネルパターンレイヤ210は、フレネルレンズの少なくとも一部を含んでもよく、HUD映像の虚像を拡大し得る。フレネルレンズは、一般レンズを円形の帯に分割して薄く圧縮したものであり、一般のレンズに比べて薄い厚さでイメージを拡大できる。フレネルレンズは、第1方向の傾斜面を含む第1領域、第2方向の傾斜面を含む第2領域、及び中心軸周辺の第3領域を含む。第1領域及び第2領域は、軸外(off-axis)領域と称する。図2には、フレネルパターンレイヤ210がフレネルレンズの第1領域、第2領域、及び第3領域を全て含むものとして図示されているが、実施形態によってフレネルパターンレイヤ210は、フレネルレンズの軸外領域に構成されてもよい。例えば、フレネルパターンレイヤ210は、上述した第1領域又は第2領域を含んでもよい。フレネルパターンレイヤ210で軸外領域が使用されることで、HUD映像に対応する光がユーザに効率よく到達できる。
【0030】
光21は、光源によって提供されたマルチ波長バンドの光として、HUD映像に対応する。マルチバンドコーティングレイヤ220は、マルチ波長バンドの光21を受信し、マルチ波長バンドについて設定された透過率に応じて光21の一部を透過させ、残りを反射させる。マルチバンドコーティングレイヤ220の透過率に応じて、光21の一部は、マルチバンドコーティングレイヤ220によって反射してユーザに提供されることができ、光21の残りは車両の外部に透過されることができる。マルチバンドコーティングレイヤ220の透過率は、光源によって提供される光の波長帯域に基づいて設定される。例えば、マルチバンドコーティングレイヤ220は、残りの波長帯域の光に比べて光源によって提供される波長帯域の光をさらに多く反射するよう設定され得る。一例として、マルチバンドコーティングレイヤ220の透過率は、光源によって提供される波長帯域に関して第1値を有し、残りの波長帯域に関して第2値を有するように設定されてもよく、第1値は第2値よりも小さくし得る。
【0031】
外光23は、車両の外部から流入されたものである。例えば、外光23は、車両外部の外部光源によって提供されたものであり得る。外光23は、太陽光、ランプ、反射光などに基づき、以下では外光23が太陽光であると仮定する。この場合、外光23は、光源によって提供される波長帯域を含む可視光線帯域の全体、及び紫外線帯域などの他の帯域の光を含む。マルチバンドコーティングレイヤ220の透過率に応じて、外光23の一部は、マルチバンドコーティングレイヤ220によって車両の外部に反射され、外光23の残りは車両の内部に流入される。外光23が反射される波長帯域及び反射率は、光源によって提供される光の波長帯域及び反射率に対応する。
【0032】
実施形態によれば、マルチバンドコーティングレイヤ220の透過率は、ウインドシールドに対する光学素子200の視認性に基づいて設定される。ウインドシールドに対する光学素子200の視認性は、ユーザの視野でウインドシールドと光学素子200がどれ程円満に区分されるかを意味する。ウインドシールド上で光学素子200が目立つように観測されてしまうと、ユーザの前方視野に異質感が感じられる。実施形態によれば、このような異質感を除去するためウインドシールドに対する光学素子200の視認性が低くなるよう透過率を設定し得る。例えば、上述した第1値及び第2値は、HUD映像がユーザに適切な明るさで提供されつつ、ウインドシールドに対する光学素子200の視認性が最小化されるよう設定できる。又は、マルチバンドコーティングレイヤ220の透過率は、白色光に関する透過率が予め決定したレベルに保持されるよう、マルチ波長バンドについて設定される。例えば、マルチバンドコーティングレイヤ220の白色光に関する透過率は、ウインドシールドの白色光に関する透過率に対応するように設定されてもよい。
【0033】
マルチバンドコーティングレイヤ220は、フレネルパターンレイヤ210上に形成される。フレネルパターンレイヤ210は、フレネルレンズの曲面に対応する傾斜面及び垂直方向の垂直面を含み得る。実施形態によって、マルチバンドコーティングレイヤ220は、フレネルパターンレイヤ210の傾斜面及び垂直面のうち傾斜面に形成されてもよい。マルチバンドコーティングレイヤ220がフレネルパターンレイヤ210の傾斜面に形成されることで、HUD映像に対応する光がユーザに効率よく到達できる。又は、実施形態によって、マルチバンドコーティングレイヤ220がフレネルパターンレイヤ210の傾斜面に形成されることで、不要な外光の流入を防止できる。
【0034】
イマージョンレイヤ230は、フレネルパターンレイヤ210と同じ屈折率を有してもよく、イマージョンレイヤ230は、マルチバンドコーティングレイヤ220上に形成されてもよい。例えば、フレネルパターンレイヤ210の屈折率n1及びイマージョンレイヤ230の屈折率n2は同一であり得る。フレネルパターンレイヤ210と同じ屈折率を有するイマージョンレイヤ230が光学素子200に含まれることで、光学素子200を介して観測される対象に歪みの発生を防止することができる。
【0035】
図3は、一実施形態に係るマルチバンドコーティングレイヤの透過特性を示すグラフであり、図4は、一実施形態に係るLEDタイプ光源の波長帯域を示すグラフである。図3を参照すれば、赤色光に対応する波長帯域335、緑色光に対応する波長帯域333、及び青色光に対応する波長帯域331が図示されている。以下で、波長帯域331,333,335をマルチ波長バンドと称する。実線310は、マルチ波長バンドの光に関して0%の透過率を有する透過特性を示す。点線320は、マルチバンドコーティングレイヤの透過特性を示し、マルチ波長バンドに関して約80%の透過率を有し、残りの可視光線帯域に関して約97%の透過率を有する。マルチ波長バンドの帯域幅は、光源によって提供される光の帯域幅に対応して設定される。図3に示す透過特性は、LEDタイプ光源に対応する。
【0036】
図4を参照すれば、赤色、緑色、及び青色帯域が図示されている。それぞれの帯域は約24~27nmの半値全幅(full width at half maximum、FWHM)を有する。したがって、本LEDタイプの光源がディスプレイ装置のバックライトとして使用される場合、図3に示すように、マルチ波長バンドの帯域幅が25nmの内外に設定される。言い換えれば、マルチ波長バンドの帯域幅は、光源によって提供される光の帯域幅に対応して設定され得る。もし、レーザのようなさらに狭い半値全幅を有する光源が使用される場合、該当半値全幅に対応して波長帯域331,333,335の帯域幅はさらに狭く設定される。例えば、レーザ光源は1nmの内外の半値全幅を有してもよい。マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅が狭いほど、マルチ波長バンドに関する透過率は低く設定されるため、これにより、マルチ波長バンドに関する反射率が増加しながらHUDシステムの光効率は向上される。例えば、マルチ波長バンドに関する透過率は、LEDタイプに関して第1透過率に設定され、レーザタイプに関して第2透過率に設定され、ここで、第1透過率は第2透過率に比べて高くし得る。
【0037】
図5は、一実施形態に係るHUDのための光学素子の透過及び反射特性を示す図である。図5を参照すれば、光学素子500は、光510及び光520の一部を透過させて残りを反射させる。光510は、光源によって提供されたマルチ波長バンドの光を示し、HUD映像に対応する。光520は、車両の外部から流入された光を示し、太陽光のような外光に対応する。
【0038】
図3を参照して説明したように、光学素子500は、赤色、緑色、及び青色帯域、すなわち、マルチ波長バンド帯域の光に関して80%の透過率を有するマルチバンドコーティングレイヤを含む。したがって、光510の20%は、光学素子500によって反射してユーザに提供され、残りの80%は光学素子500を透過する。また、光520でマルチ波長バンド帯域の光のうち20%は、光学素子500によって反射され、マルチ波長バンド帯域の光のうち80%及び残りの波長帯域の光は、光学素子500を透過してユーザに提供される。図3に示す実施形態によれば、残りの波長帯域の光のうち約97%程度が光学素子500を透過してユーザに提供される。
【0039】
ユーザは、光520のうち光学素子500を透過した一部を介して車両外部の事物や背景を観測し、光510のうち光学素子500によって反射した一部を介してHUD映像の虚像を観測する。光520の大部分がユーザに提供されるため、ユーザは、光学素子500に関して異質感を感じることなく前方視野を介してARレベルのHUD情報を観測できる。
【0040】
図6は、一実施形態に係るウインドシールドの可視光透過率の解釈結果を示すグラフであり、図7は、一実施形態に係るHUDのための光学素子の可視光透過率の解釈結果を示すグラフである。図6及び図7に示すグラフは、光学シミュレーションツールを用いて取得される。
【0041】
図6に示すように、ウインドシールドは約84%の可視光透過率を示す。ここで、ウインドシールドは、ウインドシールドのうち光学素子が備えられていない部分を意味する。図7に示すグラフは、図3及び図4を参照して説明された条件で光学素子の可視光透過率を解釈した結果であり、その条件は、図4を参照して説明されたLEDタイプ光源が使用されること、マルチバンドコーティングレイヤの赤色、緑色、及び青色波長帯域幅、及び透過率がそれぞれ25nm及び80%に設定されること、残りの可視光帯域の透過率が97%に設定されることを含む。図7に示すように、光学素子は約84%の可視光透過率を示す。言い換えれば、図3を参照して説明した光学コーティングにより、光学素子の可視光透過率及びウインドシールドのうち光学素子が備えられていない領域の可視光透過率が同等なレベルに示される。したがって、実施形態によれば、光学素子が設置された領域と周辺領域との間の可視光透過率の差が解消され、光学素子に関する視認性の問題を改善することができる。
【0042】
一方、LEDタイプ光源が使用される場合、マルチ波長バンドは、450~480nm、510~540nm、620~650nmの範囲を有することが好ましい。一般的に、ウインドシールドは、可視光に関して80~85%レベルの透過率を有するが、ウインドシールドの透過率は、ウインドシールドの設計によって変わり得る。例えば、ウインドシールドを構成している2枚のガラスの間にカラーの中間膜が用いられる場合、又はウインドシールドにカラーフィルムが取り付けられる場合などにウインドシールドの透過率が変わり得る。実施形態に係る光学素子の透過率は、ウインドシールドの透過率に対応して多様に調整され得る。
【0043】
HUDシステムの効率を改善するために、マルチ波長バンドに関する透過率を低くする。言い換えれば、マルチ波長バンドに関する反射率を高める。HUDシステムの効率は、光源によって提供された光量に対する、ユーザに提供される虚像の明るさを意味する。光源をLEDタイプに保持しながら、マルチ波長バンドに関する透過率を低くする場合、光学素子の視認性が多少増加する。もし、レーザのように光帯域幅の狭い光源が使用される場合、マルチ波長バンドに関する透過率が低くなっても光学素子の視認性は増加しないことがある。言い換えれば、光帯域幅の狭い光源を用いて、光学素子の視認性を増加させないまま、HUDシステムの効率を改善することができる。
【0044】
図8は、他の実施形態に係るHUDのための光学素子の透過及び反射特性を示す図であり、図9は、他の実施形態に係るHUDのための光学素子の可視光透過率の解釈結果を示すグラフである。図8及び図9は、レーザタイプの光源が使用された実施形態を示す。
【0045】
図8を参照すれば、光810は、光源によって提供されたマルチ波長バンドの光を示し、HUD映像に対応する。光820は、車両外部の外部光源によって提供された光を示し、太陽光のような外光に対応する。図5に示す実施形態とは異なって、光学素子800は、赤色、緑色、及び青色帯域、すなわち、マルチ波長バンド帯域の光に関して50%の透過率を有するマルチバンドコーティングレイヤを含む。したがって、光810の50%は、光学素子800によって反射してユーザに提供され、残りの50%は光学素子800を透過する。また、光820でマルチ波長バンド帯域の光のうち50%は、光学素子800によって反射され、マルチ波長バンド帯域の光のうち50%及び残りの波長帯域の光は、光学素子800を透過してユーザに提供される。
【0046】
図9に示すグラフは、光学シミュレーションツールを用いて取得された光学素子の可視光透過率を示し、レーザタイプ光源が使用され、マルチバンドコーティングレイヤの赤色、緑色及び青色波長の帯域幅、及び透過率がそれぞれ5nm及び50%に設定され、残りの可視光帯域の透過率が97%に設定された環境で取得される。波長帯域910~930は、マルチ波長バンドを構成し、それぞれ、赤色、緑色及び青色に対応する。
【0047】
図9において、マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅は、図4でマルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅に比べて狭い。マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅が狭いほど、マルチ波長バンドに関する透過率は低く設定される。言い換えれば、マルチ波長バンドに関する反射率は、高く設定される。光学素子の視認性を低くするためには、可視光帯域に関する光学素子の透過率を適正なレベルに保持する必要がある。マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の帯域幅が狭いほど、マルチ波長バンドを構成している各波長帯域の反射率を高めても、可視光帯域に関する光学素子の透過率は適正なレベルに保持できる。マルチ波長バンドに関する反射率が高いことは、光源で提供された光がユーザに提供される比率が高いものであるため、HUDシステムの光効率が向上することを意味する。LEDを用いた実施形態の場合、光効率が20%レベルにあり得るが、レーザを用いた実施形態の場合、光効率が50%レベルにあり得る。
【0048】
図9に示すように、光学素子は約84%の可視光透過率を示す。図6を参照して説明したように、ウインドシールドの可視光透過率が約84%であるため、光学素子の可視光透過率及びウインドシールドのうち光学素子が備えられていない領域の可視光透過率が同等なレベルに示される。したがって、レーザ光源を使用する場合、マルチ波長バンドに関する反射率を高めても、光学素子に関する視認性は除去され得る。
【0049】
図10は、一実施形態に係るフレネルレンズの使用領域を示す図である。図10を参照すれば、フレネルレンズ1000は、第1方向D1の傾斜面を含む第1領域1010、第2方向D2の傾斜面を含む第2領域1020、及び中心軸周辺の第3領域1030を含む。第1領域1010及び第2領域1020は、軸外領域と称する。
【0050】
ウインドシールドから反射される光、又は、所望しないノイズ光がユーザの視野に入らないようにするため、フレネルレンズ1000の軸外領域を用いてフレネルパターンの光学コーティング面で反射される光と、ウインドシールドで反射される光の経路を相違にし得る。また、ウインドシールドが約30~40度の角度に傾斜していることからユーザの方向に光を容易に送るため、HUD映像に対応する光がユーザへ照射される角度を考慮することができる。実施形態によれば、フレネルパターンレイヤは、HUD映像がユーザに照射される角度に応じて、第1領域1010又は第2領域1020を含む。例えば、第2領域1020は、HUD映像に対応する光をユーザに提供できる角度を形成し、第1領域1010は、HUD映像に対応する光をユーザに提供することが難しい角度を形成する。ただし、第1領域1010を裏返せば第2領域1020になるため、第1領域1010及び第2領域1020のいずれか1つが選択的に使用され得る。
【0051】
図11は、一実施形態に係るフレネルレンズの使用領域による光の進行経路を示す図である。実施形態によれば、フレネルパターンレイヤは、HUD映像がユーザに照射される角度に対応してフレネルレンズの一部領域を含む。図11を参照すれば、光学素子1110は、傾斜面が第1方向に形成されたフレネルパターンレイヤを含み、光学素子1120は、傾斜面が第2方向に形成されたフレネルパターンレイヤを含む。それぞれの光学素子1110,1120及び水平線間の角度をθに示す場合、例えば、θは30~40度である。それぞれの光学素子1110,1120のフレネルパターンレイヤ上には、マルチバンドコーティングレイヤが形成され、マルチバンドコーティングレイヤによって各光学素子1110,1120に入射される光が反射される。一実施形態によれば、マルチバンドコーティングレイヤは、フレネルパターンの傾斜面に形成される。隅にあたる光は、ノイズ光になる確率が高いため、フレネルパターンの傾斜面のみをコーティングしてユーザにノイズとして作用する光の発生を抑制できる。
【0052】
光学素子1110のマルチバンドコーティングレイヤは、第1方向の傾斜面上に形成される。図11Aを参照すれば、第1方向の傾斜面に形成されたマルチバンドコーティングレイヤがHUD映像に対応する光をユーザ側に反射する確率は高くない。したがって、光学素子1110によるHUDシステムの光効率は低くなる。もし、ユーザ側に反射されるHUD映像に対応する光が存在しない場合、ユーザはHUD映像の虚像を観測できない場合もある。
【0053】
光学素子1120のマルチバンドコーティングレイヤは、第2方向の傾斜面上に形成される。図11Bを参照すれば、第2方向の傾斜面に形成されたマルチバンドコーティングレイヤは、HUD映像に対応する光1121を高い確率でユーザ側に反射し得る。したがって、光学素子1120によるHUDシステムの光効率は、光学素子1110に比べて高い。また、ディスプレイ装置側から提供されるノイズ光1123は、ウインドシールドの表面で反射されてユーザ側に入らず、下方へ除去される。他の位置側から提供されるノイズ光1125についてもマルチバンドコーティングレイヤによって下方へ除去される。
【0054】
図12は、一実施形態に係る目の分解能を示す図であり、図13は、一実施形態に係るフレネルパターンの構造及びティメンジョンを示す図である。図12を参照すれば、人の目は、1arcmin又は1/60°程度の分解能を有する。ユーザから1m距離に離れた物体は、その大きさが0.3mm以下である場合、ユーザによって識別されない。ウインドシールドでフレネルパターンが目に見えないようにするためには、フレネルパターンを1arcmin以下の大きさに製造しなければならない。車両用のHUDシステムでウインドシールド及びユーザの間の距離が750mm内に設けられた場合、フレネルパターンは、220um未満の大きさを有するよう製造される。図13を参照すれば、フレネルパターンは、ピッチ及び高さを含む三角プリズムの形態に定義される。この場合、フレネルパターンは、ピッチ及び高さのうち大きいものが220um未満の大きさを有するよう製造され得る。
【0055】
図14は、一実施形態に係るHUDのための光学素子の製造過程を示す図である。図14を参照すれば、ステップ1410において、フレネルパターン形状の溝を有する鋳型及びレジンの塗布された第1フィルムが備えられる。ここで、レジンは、UV硬化レジン又は熱硬化レジンとし得る。ステップ1420において、製造装置は、鋳型をレジンの塗布された第1フィルムに圧着し、第1フィルムに鋳型が圧着された状態で第1フィルムのレジンを硬化させる。ここで、硬化したレジンは、フレネルパターンレイヤに対応する。ステップ1430において、製造装置は、鋳型の圧着を解除する。ステップ1440において、製造装置は、真空蒸着などの方法を用いて前記硬化したレジンにマルチバンドコーティングレイヤを形成させる。マルチバンドコーティングレイヤは、前記硬化したレジンの傾斜面に形成される。
【0056】
ステップ1450において、レジンの塗布された第2フィルムが備えられる。ここで、レジンは、UV硬化レジン又は熱硬化レジンとすることができ、ステップ1410のレジン及びステップ1450のレジンは、同じ屈折率を有し得る。ステップ1460において、製造装置は、マルチバンドコーティングレイヤが形成されたフレネルパターンレイヤを裏返し、これをレジンの塗布された第2フィルムに接触させた状態で第2フィルムのレジンを硬化させる。ここで、硬化されたレジンは、イマージョンレイヤに対応する。ステップ1470において、フレネルパターンレイヤ、マルチバンドコーティングレイヤ、及びイマージョンレイヤを含む光学素子が取得され得る。
【0057】
光学素子の製造は、R2R(roll to roll)方式で行われる。光学素子は、ステップ1410~1470とは他の工程を用いて製造されてもよい。例えば、フレネルパターンは、半導体生産などに用いられるエッチング工程で製造されてもよく、イマージョンレイヤは、フレネルパターンフィルム2枚を裏返しに取り付けて製造されてもよい。
【0058】
図15は、一実施形態に係る外光遮断のためのHUDシステムを示す図である。図15を参照すれば、ディスプレイ装置1510は、HUD映像を出力する。ディスプレイ装置1510は、第1マルチ波長バンドの光を提供する光源、及びHUD映像を表示するディスプレイパネルを含む。図15において、第1マルチ波長バンドは、R1、G1及びB1のように示され、第2マルチ波長バンドは、R2、G2及びB2に示されている。R1、G1及びB1のそれぞれは、赤色に対応する第1波長帯域の一部、緑色に対応する第2波長帯域の一部、及び青色に対応する第3波長帯域の一部を示し、R2、G2及びB2のそれぞれは、第1波長帯域から第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部、第2波長帯域から第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部、及び第3波長帯域から前記第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部を示す。第1マルチ波長バンド及び第2マルチ波長バンドについては、図16を参照して具体的に説明する。
【0059】
光源は、第1マルチ波長バンドの光を第1光学素子1520,1530に提供する。第1光学素子1520,1530のそれぞれは、非球面ミラー又は反射ミラーであり得る。図15には、第1光学素子1520,1530が2つ構成されるように示されているが、第1光学素子1520,1530は、ディスプレイ装置1510及びウインドシールド間の角度に応じて1つの光学素子に代替されてもよい。第1光学素子1520,1530は、マルチバンドコーティングレイヤを含む。マルチバンドコーティングレイヤは、第1マルチ波長バンドの光を反射し、第2マルチ波長バンドの光を透過させ得る。実施形態により、第1光学素子1530のみマルチバンドコーティングレイヤを適用し得る。
【0060】
第1光学素子1520,1530の透過率は、第1マルチ波長バンド及び第2マルチ波長バンドに関して設定される。例えば、第1光学素子は、第1マルチ波長バンドの光をほとんど反射し、第2マルチ波長バンドの光をほとんど透過するよう設定される。この場合、第1マルチ波長バンドに関する透過率は0%に近接するように設定され、第2マルチ波長バンドに関する透過率は100%に近接するように設定される。
【0061】
第2光学素子1540は、HUD映像の虚像を拡大するフレネルパターンレイヤ、第1光学素子1520,1530と同じコーティングが適用されたマルチバンドコーティングレイヤ、及びフレネルパターンレイヤと同じ屈折率を有するイマージョンレイヤを含む。マルチバンドコーティングレイヤは、第1光学素子1520,1530によって反射した第1マルチ波長バンドの光、及び車両外部の外部光源によって提供された光のうち第1マルチ波長バンドの光を反射し、車両外部の外部光源によって提供された第2マルチ波長バンドの光を透過させ得る。
【0062】
光源から提供された第1マルチ波長バンドの光は、第1光学素子1520,1530及び第2光学素子1540を介してユーザに提供され、第2マルチ波長バンドの光は、第1光学素子1520,1530及び第2光学素子1540を透過する。したがって、ディスプレイ装置1510への外光流入が遮断され、ディスプレイ装置1510の過熱及びディスプレイ装置1510におけるフレアのような雑光の発生を防止できる。
【0063】
図16は、一実施形態に係る外光遮断のためのマルチバンドコーティングレイヤの透過特性を示すグラフである。図16を参照すれば、赤色に対応する第1波長帯域1615、緑色に対応する第2波長帯域1613、及び青色に対応する第3波長帯域1611が図示されている。図16において、第1マルチ波長バンドはR1、G1、B1に示されている。R1、G1、B1のそれぞれは、第1波長帯域1615の一部である波長帯域1625、第2波長帯域1613の一部である波長帯域1623、及び第3波長帯域1611の一部である波長帯域1621に属する。図16において、第2マルチ波長バンドはR2、G2、B2に示されている。R2、G2、B2それぞれは、第1波長帯域1615から第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部1635、第2波長帯域1613から第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部1633、及び第3波長帯域1611から第1マルチ波長バンドを除外した残りの少なくとも一部1631に属する。図15を参照して説明された第1光学素子1530及び第2光学素子1540は、それぞれ図16に示すグラフに対応するマルチバンドコーティングレイヤを含む。マルチバンドコーティングレイヤは、第1マルチ波長バンドに関して0%に近接する透過率を有し、第2マルチ波長バンドに関して100%に近接する透過率を有する。
【0064】
図17は、一実施形態に係るディスプレイ装置及びミラーを示す図である。ディスプレイ装置1710は、ディスプレイパネル1711、散光器1713、及び光源1715を含む。ディスプレイパネル1711はHUD映像を表示する。ディスプレイパネル1711は、LCDパネル又はDLP(digital light processor)及びLCoS(liquid crystal on silicon)のような空間光変調器(spatial light modulator、SLM)を含む。実施形態に係るディスプレイパネル1711及び光源1715は、LED装置のように結合された形態に実現できる。光源1715は、ディスプレイパネル1711にマルチ波長バンドの光を提供し、LEDタイプ、又はレーザタイプであってもよい。図17には、マルチ波長バンドの光の例示として、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)が図示されている。ディスプレイパネル1711は、光源1715から提供されたマルチ波長バンドの光をバックライトとして利用する。
【0065】
ディスプレイパネル1711及び光源1715の間には、光の均一度を確保するための散光器1713が挿入される。ミラー1720,1730は、光源1715によって提供されたマルチ波長バンドの光をウインドシールドの光学素子側に反射させ得る。ミラー1720,1730のいずれか1つは非球面ミラーであってもよく、残りの1つは反射ミラーであってもよい。非球面ミラーは、HUD映像を拡大したりHUD映像の歪みを補正するために光経路を調整し得る。反射ミラーは平面であってもよく、光経路を調整し得る。図17には、2つのミラー1720,1730が図示されているが、ディスプレイ装置1710及びウインドシールド間の角度に応じて2つのミラー1720,1730のいずれか1つのみが使用されてもよい。
【0066】
図18は、一実施形態に係る投射光学部を含むHUDシステムを示す図である。図18は、光学素子でミラーの代わりに投射光学部が使用された実施形態を示す。図18を参照すれば、ディスプレイ装置1810は、ディスプレイパネル1811、散光器1813、及び光源1815を含む。光源1815によって提供されたマルチ波長バンドの光は、ディスプレイパネル1811及び散光器1813を介して投射光学部1820に提供される。投射光学部1820は、少なくとも1つの光学レンズを含む。投射光学部1820は、HUD映像を拡大したりHUD映像の歪みを補正するために、HUD映像に対応する光の経路を変更する。投射光学部1820を通過したマルチ波長バンドの光は、フレネルパターンを含む光学素子1830に提供される。
【0067】
図19は、一実施形態に係る3D光学レイヤを含むHUDシステムを示す図である。図19は、HUD映像を立体に提供するための実施形態を示す。図19を参照すれば、ディスプレイ装置1910は、3D光学レイヤ1911、ディスプレイパネル1913、散光器1915、及び光源1917を含む。3D光学レイヤ1911はパララックスバリア(parallax barrier)、レンチキュラレンズ(lenticular lens)、及び指向性バックライトユニット(directional back light unit)のいずれか1つであってもよく、HUD映像を3Dに変換する。図19には、3D光学レイヤ1911がディスプレイパネル1913の前面に図示されているが、3D光学レイヤ1911が指向性バックライトユニットである場合、3D光学レイヤ1911は、ディスプレイパネル1913の後面に配置されて光源1917を代替し得る。ミラー1920,1930のいずれか1つは非球面ミラーであってもよく、残りの1つは反射ミラーであってもよい。図19には2つのミラー1920,1930が図示されているが、ディスプレイ装置1910及びウインドシールド間の角度に応じて2つのミラー1920,1930のいずれか1つのみが使用されてもよい。
【0068】
図20は、一実施形態に係るメガネのためのHUDシステムを示す図であり、図21は、一実施形態に係るメガネのためのHUDシステムに関する光の経路を示す図である。図20及び図21は、車両のウインドシールドではないメガネを介してHUD映像を提供する実施形態を示している。図20及び図21の実施形態は、スマートメガネに適用されてもよい。図20を参照すれば、HUDシステム2000は、ディスプレイ装置2010、光学レンズ2020、光学素子2030を含む。ディスプレイ装置2010は、空間光変調器(spatial light modulator、SLM)であってもよい。ディスプレイ装置2010は、HUD映像に対応するマルチ波長バンドの光を提供し、光学レンズ2020は、HUD映像を拡大したり、HUD映像の歪みを補正するためにHUD映像に対応する光の経路を変更する。光学素子2030は、フレネルパターンレイヤ、マルチバンドコーティングレイヤ、及びイマージョンレイヤを含み、HUD映像の虚像を拡大する。したがって、HUDシステム2000は、広視野角を介してARレベルのHUD情報を提供する。図21には、ディスプレイ装置2110で提供されたマルチ波長バンドの光が光学レンズ2120、光学素子2130及び瞳2140を介して網膜2150に達する経路が図示されている。
【0069】
上述した実施形態は、ハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の組合せで具現される。例えば、本実施形態で説明した装置及び構成要素は、例えば、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)、マイクロコンピュータ、FPA(field programmable array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサー、又は命令(instruction)を実行して応答する異なる装置のように、1つ以上の汎用コンピュータ又は特殊目的コンピュータを用いて具現される。処理装置は、オペレーティングシステム(OS)及びオペレーティングシステム上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行する。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答してデータをアクセス、格納、操作、処理、及び生成する。理解の便宜のために、処理装置は1つが使用されるものとして説明する場合もあるが、当技術分野で通常の知識を有する者は、処理装置が複数の処理要素(processing element)及び/又は複数類型の処理要素を含むことが把握する。例えば、処理装置は、複数のプロセッサ又は1つのプロセッサ及び1つのコントローラを含む。また、並列プロセッサ(parallel processor)のような、他の処理構成も可能である。
【0070】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム、コード、命令、又はこれらのうちの1つ以上の組合せを含み、希望通りに動作するように処理装置を構成し、独立的又は結合的に処理装置に命令する。ソフトウェア及び/又はデータは、処理装置によって解釈され、処理装置に命令又はデータを提供するためのあらゆる類型の機械、構成要素、物理的装置、仮想装置、コンピュータ格納媒体又は装置、或いは送信される信号波を介して永久的又は一時的に具現化される。ソフトウェアは、ネットワークに連結されたコンピュータシステム上に分散され、分散された方法で格納されるか又は実行される。ソフトウェア及びデータは1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納される。
【0071】
本実施形態による方法は、様々なコンピュータ手段を介して実施されるプログラム命令の形態で具現され、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される。記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独又は組合せて含む。記録媒体及びプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計して構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知のものであり使用可能なものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び磁気テープのような磁気媒体、CD-ROM、DYIJDのような光記録媒体、フロプティカルディスクのような磁気-光媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置を含む。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行される高級言語コードを含む。ハードウェア装置は、本発明に示す動作を実行するために1つ以上のソフトウェアモジュールとして作動するように構成してもよく、その逆も同様である。
【0072】
上述したように実施形態をたとえ限定された図面によって説明したが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の説明に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順序で実行されるし、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合又は組み合わせられてもよいし、他の構成要素又は均等物によって置き換え又は置換されたとしても適切な結果を達成することができる。
【符号の説明】
【0073】
100 HUDシステム
110 ディスプレイ装置
111 ディスプレイパネル
113 光源
120 第1光学素子
130 第2光学素子
140 ウインドシールド
150 仮想イメージの平面
200 光学素子
210 フレネルパターンレイヤ
220 マルチバンドコーティングレイヤ
230 イマージョンレイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21