(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
A62C35/20
(21)【出願番号】P 2018216250
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】椿 大志
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291508(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150225(JP,U)
【文献】特開2014-068743(JP,A)
【文献】実開平07-037746(JP,U)
【文献】特開2011-195116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用ホースを収納する筐体と、該筐体の前面パネルに設けられて前記消火用ホースを引き出すための開口部と、該開口部の下辺部を回動軸として下方に向けて回動させて開放する消火栓扉と、該消火栓扉の開放を緩慢にするダンパー機構とを備えた消火栓装置であって、
前記ダンパー機構は、
一端が前記消火栓扉の裏面に、前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結された第1リンクと、
一端が前記筐体内部の構造物に、前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結され、他端が前記第1リンクの他端側に前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結された第2リンクと、
一端が前記第1リンクまたは前記第2リンクの他端側に前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結され、他端が前記筐体内部の構造物における前記一端よりも上方にある部位に、前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結されたシリンダーダンパーと、を備えてなることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
前記シリンダーダンパーは、シリンダーロッドが縮んだときに該シリンダーロッドを伸長する方向に付勢する付勢手段を有し、
前記消火栓扉が閉じた状態において、前記第1リンクの軸線の向きが前記消火栓扉の回動軸よりも筐体外側方向に設定され、かつ前記第2リンクにおける他端の回動支点が、前記第2リンクの一端側の回動支点と前記シリンダーダンパーの他端の回動支点を結ぶ直線よりも筐体外側に配置されていることを特徴とする請求項
1記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネル内に設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消火栓装置は、その内部に消火用ホースを収納しており、消火活動の際には筐体の前面パネルに設けられた消火栓扉を開放して、消火用ホースを引き出すことになる。
消火栓扉としては、例えば、特許文献1に開示された消火栓装置の消火栓扉のように下辺を回動軸として、略180°回動するものがある。
【0003】
このように下辺を回動軸として下方に向けて大きく(例えば、90°以上)回動して開放する消火栓扉の回動機構に関し、特許文献1においては、「消火栓扉の回動機構部にシリンダーダンパーを具備し、消火栓扉の回動速度の低速化を図り、作業負荷を軽減できるとともに、消火栓扉の前面パネルへの衝突に起因する損傷の発生を抑制できる消火栓装置を得ることを目的とする。」としている。
そして、上記の目的を達成するため、特許文献1においては、シリンダーダンパーの一端を筐体内における開口部の下方の底部近傍に傾動可能に設置し、他端側をリンクを介して消火栓扉の裏面側に連結するという構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消火栓扉が大きく回動するためには、それに相当するストロークがシリンダーロッドに要求されると共に、それに伴ってシリンダーダンパーの傾動角度も大きくなる。
特許文献1のものは、消火栓扉が閉止した状態では、シリンダーダンパーが筐体の内方に向けて傾斜する姿勢になっており(特許文献1の
図3参照)、消火栓扉が全開した状態では、シリンダーダンパーは、ほぼ直立した姿勢になっている(特許文献1の
図5参照)。
したがって、シリンダーダンパーは、消火栓扉の開閉に伴って傾斜した状態から直立した状態へと傾動動作をする。
【0006】
上述したように、消火栓扉の回動角度が大きく回動する場合には、シリンダーダンパーの傾動範囲が大きくなるが、特許文献1では、シリンダーダンパーの動きを筐体内で行うという考えに基づいているが故に、シリンダーダンパーの動作範囲を確保するために筐体の奥行がある程度必要とされていた。
【0007】
最近では、消火栓装置の薄型化が志向されているが、シリンダーダンパーを有し、開放の際の回動角度の大きな消火栓扉の回動機構において、シリンダーダンパーの傾動空間を筐体内に確保しなければならないことが、筐体の薄型化の障害となっていた。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、開放時の回動角度が大きい消火栓扉を有する消火栓装置において、シリンダーダンパーを設けながらも薄型化を実現した消火栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る消火栓装置は、消火用ホースを収納する筐体と、該筐体の前面パネルに設けられて前記消火用ホースを引き出すための開口部と、該開口部の下辺部を回動軸として下方に向けて回動させて開放する消火栓扉と、該消火栓扉の開放を緩慢にするダンパー機構とを備えたものであって、
前記ダンパー機構は、一端側がリンクを介して前記消火栓扉の裏面に連結され、他端側が前記一端側よりも上方にある前記筐体内部の構造物に回動可能に連結され、前記消火栓扉の開放時には、前記一端側が前記開口部から筐体外に突出されるシリンダーダンパーによって構成したことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、消火用ホースを収納する筐体と、該筐体の前面パネルに設けられて前記消火用ホースを引き出すための開口部と、該開口部の下辺部を回動軸として下方に向けて回動させて開放する消火栓扉と、該消火栓扉の開放を緩慢にするダンパー機構とを備えた消火栓装置であって、
前記ダンパー機構は、
一端が前記消火栓扉の裏面に、前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結された第1リンクと、
一端が前記筐体内部の構造物に、前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結され、他端が前記第1リンクの他端側に前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結された第2リンクと、
一端が前記第1リンクまたは前記第2リンクの他端側に前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結され、他端が前記筐体内部の構造物における前記一端よりも上方にある部位に、前記消火栓扉の回動軸と平行な軸回りに回動可能に連結されたシリンダーダンパーと、を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記シリンダーダンパーは、シリンダーロッドが縮んだときに該シリンダーロッドを伸長する方向に付勢する付勢手段を有し、
前記消火栓扉が閉じた状態において、前記第1リンクの軸線の向きが前記消火栓扉の回動軸よりも筐体外側方向に設定され、かつ前記第2リンクにおける他端の回動支点が、前記第2リンクの一端側の回動支点と前記シリンダーダンパーの他端の回動支点を結ぶ直線よりも筐体外側に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、ダンパー機構を、一端側がリンクを介して消火栓扉の裏面に連結され、他端側が前記一端側よりも上方にある筐体内部の構造物に回動可能に連結され、前記消火栓扉の開放時には、前記一端側が前面パネルの開口部から筐体外に突出されるシリンダーダンパーによって構成したことにより、回動角度が大きい消火栓扉を有する消火栓装置において、シリンダーダンパーを設けながらも薄型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る消火栓装置の正面図であって、内部構造を透視して示した図である。
【
図2】
図1に示した消火栓装置の側面図であって、内部構造を透視して示した図である。
【
図3】
図1に示した消火栓装置の消火栓扉の動作を説明する図であって、(a)が消火栓扉を閉止した状態、(b)が消火栓扉を全開した状態を示している。
【
図4】シリンダーダンパーの内部構造の説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るダンパー機構の構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る消火栓装置1は、
図1、
図2に示すように、消火用ホース3を収納する筐体5と、筐体5の前面パネル7に設けられて消火用ホース3を引き出すための開口部9と、開口部9の下辺部を回動軸として下方に向けて大きく回動させて開放する消火栓扉11と、消火栓扉11の開放を緩慢にするダンパー機構13とを備えたものである。なお、本実施の形態の消火栓扉11は160°以上回動するものであるが、本発明の消火栓扉の回動角度はこれに限定されるものではなく、90°以上回動する消火栓扉であれば適用することができる。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<筐体>
筐体5は、
図1、
図2に示すように、矩形の箱状からなり、筐体5内には内巻きに巻き回された消火用ホース3を収納するホース収納部15が設けられ、またホース収納部15の右側に、メンテナンス弁等を有する配管系統17が設けられている。
ホース収納部15は、筐体5の内壁上面から内壁下面に至る対向する一対の側壁18によって区画された空間によって構成されている。
筐体5の前面パネル7には、消火用ホース3を引き出すための開口部9が設けられており、この開口部9に消火栓扉11が設けられている。
なお、筐体5内には、
図1に示すように、ホース収納部15に隣接して消火器19を収納する消火器収納部21が設けられている。
【0016】
<消火栓扉>
消火栓扉11は板状の金属板から構成された横長の矩形状をしており、上述のように前面パネル7の開口部9に開閉可能に取り付けられている。
消火栓扉11は、下辺両端に回動軸(蝶番23)が設けられ、開口部9を閉鎖状態から、下辺を回動軸として開くことができ、全開状態では、
図2に示すように、下辺の回動角度が160°以上(本例では略180°)となる。
また、消火栓扉11には、開放の際に操作する取っ手24と、取っ手24によって出没するラッチ26が設けられている。
【0017】
消火栓扉11の背面側には、消火ノズル25を着脱可能に固定するノズル固定部27及び、消火用ホース3に消火水を供給する消火水供給管路に設けられた消火栓弁(図示なし)を開閉操作する操作レバー29(消火栓弁操作部)が設けられている。
【0018】
<ダンパー機構>
ダンパー機構13は、第1リンク31と第2リンク33とシリンダーダンパーとしてのオイルダンパー35によって構成されている(
図3参照)。なお、第1リンク31、第2リンク33の各回動支点(連結点)は消火栓扉11の回動軸と平行な軸回りに回動可能になっているが、以下の説明では、説明が冗長になるのを避けるために単に回動可能と表記する。
【0019】
第1リンク31は、一端が消火栓扉11の裏面に回動可能に連結され、他端側がオイルダンパー35のシリンダーロッド37の先端に回動可能に連結されている。
第2リンク33は、一端が筐体内部の構造物であるホース収納部15の側壁18に回動可能に連結され、他端が第1リンク31の他端側に回動可能に連結されている。
オイルダンパー35は、シリンダーロッド37の先端が第1リンク31及び第2リンク33の他端側に回動可能に連結され、他端が筐体5内部の構造物であるホース収納部15の側壁18であって、シリンダーロッド37の先端側よりも上方にある部位に回動可能に連結されている。
【0020】
オイルダンパー35は、特許文献1に開示されているものと同様のものであり、
図4に示されるように、オイル39が充填された本体41内に摺動可能なピストン43が配設され、ピストン43にはシリンダーロッド37が設けられている。
本体41内は、ピストン43により第1オイル室45と第2オイル室47とに画成されるが、ピストン43には、第1オイル室45と第2オイル室47とを連通するように第1オリフィス49及び、第1オリフィス49より大径の第2オリフィス51が形成されている。
【0021】
また、逆止弁53がピストン43の第2オイル室47側に、第2オリフィス51を開閉可能に配設されている。逆止弁53は、第2オリフィス51を介して、第1オイル室45から第2オイル室47へのオイル39の流入を許容し、一方、第2オイル室47から第1オイル室45へのオイル39の流入を許容しないようにするためのものである。
さらに、フリーピストン55が、ピストン43と相対して第1オイル室45を画成するように本体41内を摺動するように配設されている。そして、付勢手段としての高圧ガス57がフリーピストン55の第1オイル室45と反対側に充填されている。
【0022】
シリンダーロッド37の伸長時には、ピストン43の移動により、第2オイル室47内のオイル39が加圧される。そこで、逆止弁53が閉じ、第2オイル室47内のオイル39が第1オリフィス49を介して第1オイル室45に流入し、ピストン43が第2オイル室47側に徐々に移動する。これにより、シリンダーロッド37が低速度で伸長し、消火栓扉11がゆっくりと開けられることになる。
【0023】
シリンダーロッド37の縮退時には、ピストン43の移動により、第1オイル室45内のオイル39が加圧される。そこで、逆止弁53が開き、第1オイル室45内のオイル39が主に大径の第2オリフィス51を介して第2オイル室47に流入し、ピストン43が第1オイル室45側に徐々に移動する。これにより、シリンダーロッド37が伸長速度より速い速度で収縮し、消火栓扉11が軽い力で閉じられることになる。
【0024】
フリーピストン55の第1オイル室45と反対側に充填された高圧ガス57が、第1オイル室45内のオイル39に圧力を加えている。この高圧ガス57は、シリンダーロッド37が縮んだときにシリンダーロッド37を伸長する方向に付勢する付勢手段として機能する。
【0025】
上記のように構成された本実施の形態の消火栓装置1における消火栓扉11の開閉時の作用効果について説明する。
消火栓扉11を閉じた状態では、
図3(a)に示すように、オイルダンパー35は縮退したシリンダーロッド37を下方に向けて、略垂直な状態で筐体5内に収納されている。このとき、第1リンク31と第2リンク33は、
図3(a)に示すように、それぞれの一端側の高さ位置がほぼ同じ位置として、ハの字の姿勢になっている。
【0026】
図3(a)の状態から、消火栓扉11の取っ手24をもって開放操作を開始し、ラッチ26が外れると、消火栓扉11は自重によって回動しようとするが、上述したオイルダンパー35の作用によって、操作者が支えなくても、ゆっくりしたスピードで開放して、
図3(b)で示す全開状態になる。
【0027】
全開状態では、シリンダーロッド37が伸長したオイルダンパー35は、シリンダーロッド37が筐体5の開口部9から突出する方向に傾斜した状態になっている。
すなわち、オイルダンパー35は、消火栓扉11の閉止状態から全開状態に至るまで、シリンダーロッド37が開口部9から突出する方向に傾動する動きをして、全開状態ではシリンダーロッド37の先端が開口部9から最も突出した状態になる。
【0028】
このように、消火栓扉11の開閉にはオイルダンパー35の傾動動作が伴うことになる点は特許文献1のものと同様であるが、本実施の形態では、オイルダンパー35の基端側を筐体5内においてシリンダーロッド37の先端よりも上方の位置に回動可能に設置して、オイルダンパー35の傾動の際に、シリンダーロッド37側が筐体5の開口部9から突出するようにしたので、筐体5内に傾動範囲を吸収するための大きな空間が必要ない。その結果、オイルダンパー35の傾動を可能にするための空間を筐体5内に確保する必要がなくなり、これにより、筐体5の薄型化が実現できる。
【0029】
[実施の形態2]
本発明の消火栓装置1のように、下辺を回動軸として下方に向けて開放する消火栓扉11を備えたものの場合、仮にオイルダンパー35が無ければ、消火栓扉11の開放時にラッチ(図示なし)を外して上辺側を少し前方に移動させると、消火栓扉11が自身の重みで勢いよく開放するため危険である。
オイルダンパー35は、このような消火栓扉11の開放時において、操作者が支持しなくても、消火栓扉11の開放動作を緩慢にして危険を防止するというものである。
この意味では、第1リンク31、第2リンク33、オイルダンパー35の配置関係を厳格に規定する必要がないとも言える。
【0030】
しかし、操作開始時において、操作者がラッチ26を外すと操作者が消火栓扉11を開かせるために上辺側を手前に引くような動作をしなくても、消火栓扉11が自動的に開く方が操作上はより好ましい。
そこで、本実施の形態では、このような動作を可能にしたダンパー機構13を有する消火栓装置1について説明する。
【0031】
上記のような動作を可能にするための、第1リンク31、第2リンク33、オイルダンパー35の配置関係について、
図5に基づいて説明する。
図5は、消火栓扉11が閉じた状態(
図3(a))における第1リンク31、第2リンク33、オイルダンパー35の配置関係を示しており、aは消火栓扉11の回動支点、bは第1リンク31の一端側(消火栓扉11との連結端側)の回動支点、cは第1リンク31、第2リンク33の他端側及びオイルダンパー35のシリンダーロッド37の先端の回動支点、dは第2リンク33の一端側(ホース収納部15の側壁18側)の回動支点、eはオイルダンパー35の本体41の他端側(ホース収納部15の側壁18側)の回動支点、である。
【0032】
本実施の形態のダンパー機構13は、
図5(a)(b)に示すように、消火栓扉11が閉じた状態において、第1リンク31の軸線(直線bc)の向きが消火栓扉11の回動軸(a点を通る紙面直交方向の軸)よりも筐体外側方向(図中左方向)に設定され、かつ第2リンク33における他端の回動支点(c点)が、第2リンク33の一端側の回動支点(d点)とオイルダンパー35の他端の回動支点(e点)を結ぶ直線(直線de)よりも筐体外側方向に配置されている。
【0033】
オイルダンパー35は、
図4に示すように、シリンダーロッド37を伸長する方向に付勢する付勢手段としての高圧ガス57が封入されているため、消火栓扉11が閉止してシリンダーロッド37が縮退した状態では、常時、シリンダーロッド37は伸長方向に付勢されている。
この状態で、操作者がラッチ26を外して消火栓扉11の開放が可能な状態になると、シリンダーロッド37が伸長する方向に力が作用する。このとき、第1リンク31、第2リンク33、オイルダンパー35の配置関係が上述した関係(
図5(a)(b)参照)にあると、シリンダーロッド37の伸長によって第1リンク31及び第2リンク33に作用する力の方向が、消火栓扉11を開放する方向と一致する。このため、消火栓扉11はラッチが外れると、高圧ガス57の作用によるロッドの伸長によって、操作者が開放操作をせずとも自動的に開放が開始し、それ以後は、オイルダンパー35の作用によって緩慢な開放動作となる。
【0034】
一方、第1リンク31、第2リンク33、オイルダンパー35の配置関係が上述した関係満たさない場合、例えば
図5(c)に示すように、第1リンク31の軸線(直線bc)の向きが消火栓扉11の回動軸(a点を通る紙面直交方向の軸)よりも筐体内側方向(図中右方向)に設定された場合、あるいは
図5(d)に示すように、第2リンク33における他端の回動支点(c点)が、第2リンク33の一端側の回動支点(d点)とオイルダンパー35の他端の回動支点(e点)を結ぶ直線(直線de)よりも筐体内側方向に配置されているような場合には、シリンダーロッド37の伸長によって第1リンク31及び第2リンク33に作用する力の方向が、消火栓扉11を閉じる方向になるため、高圧ガス57によるシリンダーロッド37の伸長動作を消火栓扉11の開放に利用できない。
もっとも、この場合には、操作者がラッチを外した後、扉を開放方向に誘導することで、消火栓扉11の開放を行うことはできる。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、第1リンク31、第2リンク33、オイルダンパー35の配置関係を、
図5(a)(b)に示すようにしたことにより、消火栓扉11の開放開始時において、操作者が消火栓扉11のラッチ26を外しさえすれば、消火栓扉11が、オイルダンパー35内の高圧ガス57の作用によるロッドの伸長によって、操作者が開放操作をせずとも自動的に開放が開始するので、消火栓扉11の開放操作がよりスムーズになる。
【0036】
なお、上記の実施の形態においては、シリンダーダンパーの例としてオイルダンパー35を例示したが、シリンダーダンパーとしては、オイル以外の流体を用いるものや、オイル等の流体による抵抗を利用するのではなく、摩擦抵抗を利用したものであってもよい。
【0037】
また、上記の実施の形態では、シリンダーロッド37の先端と、第1リンク31及び第2リンク33の他端の回動支点が同一である例を示したが、本発明においてはこれに限られるものではなく、第1リンク31の他端を第2リンク33との連結位置よりも延長して該延長した部位にシリンダーロッド37の先端を回動可能に連結してもよいし、あるいは第2リンク33の他端を第1リンク31との連結位置よりも延長して該延長した部位にシリンダーロッド37の先端を回動可能に連結してもよい。
【0038】
また、上記の例では、ダンパー機構13は、オイルダンパー35のシリンダーロッド37と消火栓扉11を連結するリンクとして第1リンク31と第2リンク33を例示して説明したが、本発明にかかるダンパー機構は、これに限られるものではなく、一端側がリンクを介して消火栓扉11の裏面に連結され、他端側が前記一端側よりも上方にある筐体内部の構造物に回動可能に連結されシリンダーダンパーによって構成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 消火栓装置
3 消火用ホース
5 筐体
7 前面パネル
9 開口部
11 消火栓扉
13 ダンパー機構
15 ホース収納部
17 配管系統
18 側壁
19 消火器
21 消火器収納部
23 蝶番
24 取っ手
25 消火ノズル
26 ラッチ
27 ノズル固定部
29 操作レバー
31 第1リンク
33 第2リンク
35 オイルダンパー
37 シリンダーロッド
39 オイル
41 本体
43 ピストン
45 第1オイル室
47 第2オイル室
49 第1オリフィス
51 第2オリフィス
53 逆止弁
55 フリーピストン
57 高圧ガス