(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/244 20210101AFI20221209BHJP
H01M 50/247 20210101ALI20221209BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20221209BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20221209BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20221209BHJP
H01M 10/46 20060101ALN20221209BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20221209BHJP
H01M 10/6563 20140101ALN20221209BHJP
H01M 10/643 20140101ALN20221209BHJP
H01M 10/6235 20140101ALN20221209BHJP
H01M 10/6557 20140101ALN20221209BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/247
B25F5/00 H
H01M50/213
H01M50/296
H01M50/244 Z
H01M10/46
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/643
H01M10/6235
H01M10/6557
(21)【出願番号】P 2018225406
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英二
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-045689(JP,A)
【文献】特開2014-216284(JP,A)
【文献】特開2012-054086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
B25F 5/00
H01M 50/50
H01M 10/46
H01M 10/613
H01M 10/6563
H01M 10/643
H01M 10/6235
H01M 10/6557
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器と、
前記電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで前記電気機器に着脱可能な電池パックを備える電力供給システムであって、
前記電気機器が、
機器側電力端子と、
前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブを備えており、
前記電池パックが、
前記機器側電力端子と機械的に係合して電気的に接続する電池側電力端子と、
前記電池側電力端子を収容するケースを備えており、
前記ケースが、
前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口と、
前記スライド方向に沿って伸びる凹溝であって、前記電池側電力端子の両側に配置されている凹溝を備えている、電力供給システム。
【請求項2】
前記電気機器が、機器側信号端子をさらに備えており、
前記保護リブが、前記機器側信号端子よりも高い位置まで伸びており、前記機器側信号端子の両側にも配置されており、
前記電池パックが、前記ケースに収容されており、前記機器側信号端子と機械的に係合して電気的に接続する電池側信号端子をさらに備えており、
前記ケースが、前記スライド方向において、前記電池側信号端子に対向する位置に配置された信号端子用開口をさらに備えており、
前記凹溝が、前記電池側信号端子の両側にも配置されている、請求項1の電力供給システム。
【請求項3】
前記電気機器が、機器側スライドレールをさらに備えており、
前記保護リブの少なくとも1つが、前記機器側スライドレールと前記機器側電力端子の間に配置されており、
前記電池パックが、前記機器側スライドレールに対して
前記スライド方向に摺動可能に係合する電池側スライドレールをさらに備えており、
前記凹溝の少なくとも1つが、前記電池側スライドレールと前記電池側電力端子の間に配置されている、請求項1または2の電力供給システム。
【請求項4】
電池パックをスライド方向にスライドさせることで前記電池パックを着脱可能な電気機器であって、
機器側電力端子と、
前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブ
と、
機器側スライドレールを備えて
おり、
前記保護リブの少なくとも1つが、前記機器側スライドレールと前記機器側電力端子の間に配置されている、電気機器。
【請求項5】
前記電気機器が、機器側信号端子をさらに備えており、
前記保護リブが、前記機器側信号端子よりも高い位置まで伸びており、前記機器側信号端子の両側にも配置されている、請求項4の電気機器。
【請求項6】
電池パックをスライド方向にスライドさせることで前記電池パックを着脱可能な電気機器であって、
機器側電力端子と、
前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブ
と、
機器側信号端子を備えて
おり、
前記機器側電力端子と前記機器側信号端子とが第1方向に沿って設けられており、
前記保護リブが、前記機器側信号端子よりも高い位置まで伸びており、前記機器側信号端子の両側にも配置されており、かつ、前記機器側電力端子と前記機器側信号端子との間にも配置されている、電気機器。
【請求項7】
機器側電力端子と、前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブと、を有する電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで前記電気機器に着脱可能な電池パックであって、
電池側電力端子と、
前記電池側電力端子を収容するケースを備えており、
前記ケースが、
前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口と、
前記スライド方向に沿って伸びる凹溝であって、前記電池側電力端子の両側に配置されている凹溝を備えている、電池パック。
【請求項8】
前記ケースに収容された電池側信号端子をさらに備えており、
前記ケースが、前記スライド方向において、前記電池側信号端子に対向する位置に配置された信号端子用開口をさらに備えており、
前記凹溝が、前記電池側信号端子の両側にも配置されている、請求項7の電池パック。
【請求項9】
前記電池パックが、電池側スライドレールをさらに備えており、
前記凹溝の少なくとも1つが、前記電池側スライドレールと前記電池側電力端子の間に配置されている、請求項7または8の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電気機器と、前記電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで着脱可能に取り付けられる電池パックを備える電力供給システムが開示されている。前記電気機器は、機器側電力端子を備えている。前記電池パックは、前記機器側電力端子と機械的に係合して電気的に接続する電池側電力端子と、前記電池側電力端子を収容するケースを備えている。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような電力供給システムにおいては、電気機器から電池パックを取り外した状態では、電気機器の機器側電力端子が外部に露出するため、ユーザが誤って機器側電力端子に触れてしまうおそれがある。本明細書では、電気機器から電池パックが取り外された状態でも、ユーザが誤って機器側電力端子に触れてしまうことを防止することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、電力供給システムを開示する。前記電力供給システムは、電気機器と、前記電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで前記電気機器に着脱可能な電池パックを備えていてもよい。前記電気機器は、機器側電力端子と、前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブを備えていてもよい。前記電池パックは、前記機器側電力端子と機械的に係合して電気的に接続する電池側電力端子と、前記電池側電力端子を収容するケースを備えていてもよい。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口と、前記スライド方向に沿って伸びる凹溝であって、前記電池側電力端子の両側に配置されている凹溝を備えていてもよい。
【0006】
本明細書は、電気機器も開示する。前記電気機器は、電池パックをスライド方向にスライドさせることで前記電池パックを着脱可能であってもよい。前記電気機器は、機器側電力端子と、前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブを備えていてもよい。
【0007】
本明細書は、電池パックも開示する。前記電池パックは、電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで前記電気機器に着脱可能であってもよい。前記電池パックは、電池側電力端子と、前記電池側電力端子を収容するケースを備えていてもよい。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口と、前記スライド方向に沿って伸びる凹溝であって、前記電池側電力端子の両側に配置されている凹溝を備えていてもよい。
【0008】
上記の構成によれば、電気機器の機器側電力端子の両側に、機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブが設けられているので、電池パックを電気機器から取り外した状態であっても、ユーザが誤って機器側電力端子に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パックを電気機器に取り付ける際には、電池パックのケースの凹溝が電気機器の保護リブを受け入れることで、保護リブとケースが干渉することなく電池パックを電気機器に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る電力供給システム600の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施例に係る電池パック2を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図3】実施例に係る電池パック2を後方左方上方から見た斜視図である。
【
図4】実施例に係る電池パック2を前方右方下方から見た斜視図である。
【
図5】実施例に係る電池パック2の電池モジュール10を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図6】実施例に係る電池パック2の電池モジュール10を後方左方上方から見た斜視図である。
【
図7】実施例に係る電池パック2の電池モジュール10を前方右方下方から見た斜視図である。
【
図8】実施例に係る電池パック2の複数の電池セル40およびセルホルダ42を後方左方上方から見た斜視図である。
【
図9】実施例に係る電池パック2の電力端子60を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図10】実施例に係る電池パック2の電力端子60を左方から見た側面図である。
【
図11】実施例に係る電池パック2の電力端子60を後方から見た背面図である。
【
図12】実施例に係る電池パック2の信号端子62を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図13】実施例に係る電池パック2の信号端子62を後方から見た背面図である。
【
図14】実施例に係る電池パック2の下部ケース16を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図15】実施例に係る電池パック2の電池モジュール10を下部ケース16に取り付けた状態を後方左方上方から見た斜視図である。
【
図16】実施例に係る電池パック2の電池モジュール10を下部ケース16に取り付けた状態における前方の部分を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図17】実施例に係る電池パック2の電池モジュール10を下部ケース16に取り付けた状態における後方の部分を後方左方上方から見た斜視図である。
【
図18】実施例に係る電池パック2の電気機器200に対する着脱の様子を前方右方下方から見た斜視図である。
【
図19】実施例に係る電気機器200の電池パック取付部202を前方右方下方から見た斜視図である。
【
図20】実施例に係る電気機器200の電池パック取付部202を前方から見た正面図である。
【
図21】実施例に係る電気機器200の電池パック取付部202を下方から見た底面図である。
【
図22】実施例に係る電池パック2の充電器400に対する着脱の様子を前方右方下方から見た斜視図である。
【
図23】実施例に係る充電器400の電池パック取付部404を前方右方下方から見た斜視図である。
【
図24】実施例に係る電池パック2を充電器400に取り付けた状態を左方から見た断面図である。
【
図25】実施例に係る電池パック2を上方から見た平面図である。
【
図26】実施例に係る電池パック2の制御基板44と表示基板46を上方から見た平面図である。
【
図27】実施例に係る電池パック2の複数の電池セル40およびセルホルダ42を上方から見た平面図である。
【
図28】実施例に係る電池パック2を右方から見た断面図である。
【
図29】実施例に係る電池パック2の制御基板44が行う充電開始判定処理のフローチャートである。
【
図30】実施例に係る電池パック2の制御基板44が記憶している電池セル温度と充電開始電圧しきい値の対応関係の例を示すグラフである。
【
図31】実施例に係る電池パック2の制御基板44が行う充電パラメータ生成処理のフローチャートである。
【
図32】実施例に係る電池パック2の制御基板44が行う充電異常判定処理のフローチャートである。
【
図33】実施例に係る電池パック2の制御基板44が記憶している電池セル温度と許容充電電圧の対応関係の例を示すグラフである。
【
図34】実施例に係る電池パック2の制御基板44が記憶している電池セル温度と許容充電電流の対応関係の例を示すグラフである。
【
図35】実施例に係る電池パック2の制御基板44が記憶している電池セル温度と充電電流絞り開始電圧の対応関係の例を示すグラフである。
【
図36】実施例に係る電池パック2の制御基板44が記憶している電池セル温度とカットオフ電流の対応関係の例を示すグラフである。
【
図37】実施例に係る電池パック2の制御基板44が記憶している電池セル温度と異常電圧しきい値の対応関係の例を示すグラフである。
【
図38】実施例に係る充電器400の制御基板408が実行する送風制御処理のフローチャートである。
【
図39】実施例に係る電池パック2の制御基板44が行う放電異常判定処理のフローチャートである。
【
図40】変形例に係る電池パック2を上方から見た平面図である。
【
図41】別の変形例に係る電池パック2を上方から見た平面図である。
【
図42】別の変形例に係る電池パック2の制御基板44と表示基板46を上方から見た平面図である。
【
図43】さらに別の変形例に係る電池パック2を右方から見た断面図である。
【
図44】さらに別の変形例に係る電池パック2を右方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1またはそれ以上の実施形態において、電力供給システムは、電気機器と、前記電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで前記電気機器に着脱可能な電池パックを備えていてもよい。前記電気機器は、機器側電力端子と、前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブを備えていてもよい。前記電池パックは、前記機器側電力端子と機械的に係合して電気的に接続する電池側電力端子と、前記電池側電力端子を収容するケースを備えていてもよい。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口と、前記スライド方向に沿って伸びる凹溝であって、前記電池側電力端子の両側に配置されている凹溝を備えていてもよい。
【0011】
1またはそれ以上の実施形態において、電気機器は、電池パックをスライド方向にスライドさせることで前記電池パックを着脱可能であってもよい。前記電気機器は、機器側電力端子と、前記機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブであって、前記機器側電力端子の両側に配置されている保護リブを備えていてもよい。
【0012】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パックは、電気機器に対してスライド方向にスライドさせることで前記電気機器に着脱可能であってもよい。前記電池パックは、電池側電力端子と、前記電池側電力端子を収容するケースを備えていてもよい。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側電力端子に対向する位置に配置された電力端子用開口と、前記スライド方向に沿って伸びる凹溝であって、前記電池側電力端子の両側に配置されている凹溝を備えていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、電気機器の機器側電力端子の両側に、機器側電力端子よりも高い位置まで伸びる保護リブが設けられているので、電池パックを電気機器から取り外した状態であっても、ユーザが誤って機器側電力端子に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パックを電気機器に取り付ける際には、電池パックのケースの凹溝が電気機器の保護リブを受け入れることで、保護リブとケースが干渉することなく電池パックを電気機器に取り付けることができる。
【0014】
1またはそれ以上の実施形態において、前記電気機器は、機器側信号端子をさらに備えていてもよい。前記保護リブは、前記機器側信号端子よりも高い位置まで伸びていてもよく、前記機器側信号端子の両側にも配置されていてもよい。前記電池パックは、前記ケースに収容されており、前記機器側信号端子と機械的に係合して電気的に接続する電池側信号端子をさらに備えていてもよい。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側信号端子に対向する位置に配置された信号端子用開口をさらに備えていてもよい。前記凹溝は、前記電池側信号端子の両側にも配置されていてもよい。
【0015】
1またはそれ以上の実施形態において、前記電気機器は、機器側信号端子をさらに備えていてもよい。前記保護リブは、前記機器側信号端子よりも高い位置まで伸びていてもよく、前記機器側信号端子の両側にも配置されていてもよい。
【0016】
1またはそれ以上の実施形態において、前記電池パックは、前記ケースに収容された電池側信号端子をさらに備えていてもよい。前記ケースは、前記スライド方向において、前記電池側信号端子に対向する位置に配置された信号端子用開口をさらに備えていてもよい。前記凹溝は、前記電池側信号端子の両側にも配置されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、電気機器の機器側信号端子の両側にも、機器側信号端子よりも高い位置まで伸びる保護リブが設けられているので、電池パックを電気機器から取り外した状態であっても、ユーザが誤って機器側信号端子に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パックを電気機器に取り付ける際には、電池パックのケースの凹溝が電気機器の保護リブを受け入れることで、保護リブとケースが干渉することなく電池パックを電気機器に取り付けることができる。
【0018】
1またはそれ以上の実施形態において、前記電気機器は、機器側スライドレールをさらに備えていてもよい。前記保護リブの少なくとも1つは、前記機器側スライドレールと前記機器側電力端子の間に配置されていてもよい。前記電池パックは、前記機器側スライドレールに対してスライド方向に摺動可能に係合する電池側スライドレールをさらに備えていてもよい。前記凹溝の少なくとも1つは、前記電池側スライドレールと前記電池側電力端子の間に配置されていてもよい。
【0019】
1またはそれ以上の実施形態において、前記電気機器は、機器側スライドレールをさらに備えていてもよい。前記保護リブの少なくとも1つは、前記機器側スライドレールと前記機器側電力端子の間に配置されていてもよい。
【0020】
1またはそれ以上の実施形態において、前記電池パックは、電池側スライドレールをさらに備えていてもよい。前記凹溝の少なくとも1つは、前記電池側スライドレールと前記電池側電力端子の間に配置されていてもよい。
【0021】
多くの場合、電気機器の機器側スライドレールと機器側電力端子の間には、電池パックの電池側スライドレールを受け入れるための空間が設けられており、ユーザの指が入りやすい構造となっている。上記の構成によれば、電池パックを電気機器から取り外した状態であっても、ユーザが誤って機器側スライドレールと機器側電力端子の間の空間から機器側電力端子に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パックを電気機器に取り付ける際には、電池パックのケースの凹溝が電気機器の保護リブを受け入れることで、保護リブとケースが干渉することなく電池パックを電気機器に取り付けることができる。
【0022】
(実施例)
図1に示す電力供給システム600は、電池パック2と、電気機器200と、充電器400を備えている。電池パック2は、電気機器200に着脱可能に取り付けることができる。電気機器200は、例えば、例えば電動ドリル、電動グラインダ、電動マルノコ、電動チェーンソー、電動レシプロソー等の電動工具であってもよいし、電動芝刈り機、電動刈払機、電動ブロア等の電動作業機であってもよいし、ライト、ラジオ等の他の電気機器であってもよい。電気機器200に取り付けられると、電池パック2は、電気機器200に電力を供給する。また、電池パック2は、充電器400に着脱可能に取り付けることができる。充電器400に取り付けられると、電池パック2は、充電器400から電力を供給される。
【0023】
図2-
図4に示すように、電池パック2は、電池モジュール10(
図5-
図7参照)と、電池モジュール10を収容するケース12を備えている。なお、以下の説明では、電池パック2に関して、電気機器200や充電器400に取り付けられた時に、電池パック2から見て電気機器200や充電器400が位置する方向を上方といい、その反対方向を下方という。また、電池パック2に関して、電気機器200や充電器400に取り付けられる時に、電池パック2をスライドさせる方向を後方といい、電気機器200や充電器400から取り外される時に、電池パック2をスライドさせる方向を前方という。すなわち、以下の説明において、前後方向は、電池パック2を電気機器200または充電器400に対してスライドさせるスライド方向に相当する。
【0024】
電池パック2の公称電圧は、例えば64Vである。電池パック2の公称容量は、例えば5Ahである。電池パック2の前後方向の寸法は、例えば220mm程度である。電池パック2の上下方向の寸法は、例えば130mm程度である。電池パック2の左右方向の寸法は、例えば110mm程度である。電池パック2の重量は、例えば2kg程度である。なお、電池パック2の公称電圧、サイズ、重量は、後述する電池セル40の個数等に応じて変化するものであり、上記の各数値は一例である。
【0025】
ケース12は、全体が略直方体形状に形成されており、上部ケース14と、下部ケース16に分割されている。上部ケース14と下部ケース16は、それぞれ、樹脂等の絶縁性材料から構成されている。上部ケース14と下部ケース16は、金属製のねじ18によって互いに固定されている。
【0026】
図2に示すように、上部ケース14には、スライドレール20と、端子受入部22と、フック取付部24が形成されている。スライドレール20は、前後方向に沿って伸びており、上部ケース14の上部の左右端部に配置されている。スライドレール20は、電気機器200や充電器400に電池パック2を着脱する際に、電気機器200のスライドレール210(
図19参照)や、充電器400のスライドレール414(
図23参照)に対して、摺動可能に係合する。端子受入部22は、左右のスライドレール20の間に配置されており、電気機器200や充電器400に電池パック2を取り付ける際に、電気機器200の電力端子204および信号端子206(
図19参照)や、充電器400の電力端子410および信号端子412(
図23参照)を受け入れる。フック取付部24は、上部ケース14の前上部に配置されている。フック取付部24には、フック26が設けられている。フック26は、樹脂製の部材であって、操作部26aと、係合部26bを備えている。フック26は、上下方向に移動可能に上部ケース14に保持されている。フック26は、図示しない圧縮バネによって上方向に向けて付勢されており、操作部26aや係合部26bが下方に向けて押圧されると下方に移動する。係合部26bは、電気機器200や充電器400に電池パック2が取り付けられた時に、電気機器200のハウジング(図示せず)や充電器400のハウジング402(
図22参照)に係合して、電気機器200や充電器400に電池パック2を固定する。電気機器200や充電器400から電池パック2を取り外す際には、ユーザが操作部26aを下方に押し下げることで、係合部26bが下方に移動する。この状態で、電池パック2をスライドさせることで、電気機器200や充電器400から電池パック2を取り外すことができる。操作部26aは、前方から後方に向かって下方に窪んだ形状を有している。このため、ユーザが操作部26aに指をかけて操作部26aを下方に押し下げる際に、指が滑ることなく操作部26aを押し下げることができる。
【0027】
図4に示すように、下部ケース16には、把持用窪み28が形成されている。把持用窪み28は、下部ケース16の前下部に配置されている。把持用窪み28は、下方に向けて開口している。ユーザは、人差し指、中指、薬指および小指を把持用窪み28にかけて、電池パック2を持ち上げて運搬することができる。また、ユーザは、人差し指、中指、薬指および小指を把持用窪み28にかけて、親指で操作部26aを押し下げることで、電気機器200や充電器400からの電池パック2の取り外しを片手で行うことができる。下部ケース16の下部には、保護膜30が設けられている。保護膜30は、例えばエラストマである。保護膜30は、下部ケース16の下面の角部近傍を覆っている。これによって、例えば電池パック2が落下した場合に、下部ケース16の角部が損傷することを抑制することができる。保護膜30は、把持用窪み28の内部も覆っている。このため、ユーザが把持用窪み28に指をかけて電池パック2を持ち上げる際に、ユーザの指にかかる負荷を分散させることができる。
【0028】
図2に示すように、下部ケース16の前面には、表示部32が設けられている。表示部32は、電池パック2の充電残量をユーザに提示するインジケータ32aと、インジケータ32aの表示のオン・オフを切り替えるボタン32bを備えている。表示部32は、ケース12の外面において、フック26の操作部26aと、把持用窪み28の間に配置されている。このため、ユーザが操作部26aや把持用窪み28に指をかけて電気機器200や充電器400に着脱しようとする際に、表示部32を介して電池パック2の充電残量を容易に確認することができる。
【0029】
図5-
図7に示すように、電池モジュール10は、複数の電池セル40と、複数の電池セル40を保持するセルホルダ42と、セルホルダ42に固定された制御基板44と、制御基板44に接続された表示基板46を備えている。
【0030】
それぞれの電池セル40は、一方の端部に正極が形成され、他方の端部に負極が形成された、略円筒形状の二次電池セル、例えばリチウムイオン電池セルである。
図8に示すように、複数の電池セル40は、長手方向が左右方向に沿うように配置されている。複数の電池セル40は、上下方向および前後方向に並んで配置されている。本実施例では、電池セル40は、上下方向に4つ並んで配置されているとともに、前後方向に8つ並んで配置されている。それぞれの電池セル40の公称電圧は、例えば4Vである。それぞれの電池セル40の公称容量は、例えば2.5Ahである。セルホルダ42は、樹脂製の部材であって、右側セルホルダ48と、左側セルホルダ50に分割されている。右側セルホルダ48は、複数の電池セル40の右端部近傍を保持している。左側セルホルダ50は、複数の電池セル40の左端部近傍を保持している。右側セルホルダ48と左側セルホルダ50は、金属製のねじ52によって互いに固定されている。右側セルホルダ48は、複数の電池セル40の右端部に配置された電極(正極または負極)と当接する複数のリード板54を備えている。左側セルホルダ50は、複数の電池セル40の左端部に配置された電極(正極または負極)と当接する複数のリード板56を備えている。
図5に示すように、複数のリード板54,56は、それぞれ、セルホルダ42の上方に配置された制御基板44に接続されている。
【0031】
制御基板44は、セルホルダ42の上部に載置された状態で、金属製のねじ58によってセルホルダ42に固定されている。制御基板44には、電池パック2が電気機器200や充電器400に取り付けられた際に、放電または充電のために使用される一対の電力端子60と、信号の送受信のために使用される複数の信号端子62が設けられている。一対の電力端子60は、複数の信号端子62を左右両側から挟む位置に配置されている。
【0032】
図9-
図11に示すように、電力端子60は、金属板に切断加工および折り曲げ加工を施すことによって製造される。電力端子60は、支持部60aと、下側湾曲部60bと、挟持部60cと、上側湾曲部60dを備えている。支持部60aは、上下方向に伸びる略角筒形状に形成されている。支持部60aの断面は、長手方向が前後方向に沿う略長方形状である。支持部60aの下端には、下方に向けて突出する支持リブ60eが形成されている。支持リブ60eは、制御基板44に電力端子60を固定するとともに、制御基板44に電力端子60を電気的に接続する。
【0033】
下側湾曲部60bは、支持部60aの左右両側に形成されている。下側湾曲部60bは、支持部60aの上端から内側に向けて湾曲した形状に形成されている。挟持部60cは、下側湾曲部60bの上端からわずかに外側に屈曲して伸びる平板状に形成されている。挟持部60cは、電気機器200の電力端子204や充電器400の電力端子410を電力端子60に係合させたときに、電力端子204や電力端子410の面と平行な角度となるように、すなわち電力端子204や電力端子410の面と面あたりする角度となるように、その傾斜角度が調整されている。上側湾曲部60dは、挟持部60cの上端部から外側に向けて湾曲する形状に形成されている。
【0034】
電力端子60には、複数のスリット60fが形成されている。それぞれのスリット60fは、上側湾曲部60dの上端から、下側湾曲部60bの下端まで達するU字形状に形成されている。以下では、複数のスリット60fによって分割された、下側湾曲部60bと、挟持部60cと、上側湾曲部60dを合わせて、電力端子60の弾性挟持片対60gともいう。すなわち、電力端子60は、支持部60aと、支持部60aから上方に向けて伸びる複数の弾性挟持片対60gを備えている。
【0035】
電力端子204や電力端子410が電力端子60に差し込まれる場合には、電力端子60の弾性挟持片対60gに電力端子204や電力端子410の前方の端縁が入り込み、それによって弾性挟持片対60gが外側に開き、弾性挟持片対60gによって電力端子204や電力端子410が挟持される。この際に、弾性挟持片対60gの弾性復元力によって、電力端子60の挟持部60cが電力端子204や電力端子410に押し当てられることで、電力端子204や電力端子410と電力端子60が係合する。すなわち、弾性挟持片対60gは、電池パック2が電気機器200や充電器400に取り付けられたときに、電力端子204や電力端子410を受け入れて、電力端子204や電力端子410を両側から挟持する。逆に、電力端子204や電力端子410が電力端子60から抜き出されると、電力端子204や電力端子410と電力端子60が係合解除される。そして、弾性挟持片対60gの弾性復元力によって、弾性挟持片対60gは元の形状に戻る。
【0036】
電力端子60の最も後方に配置された弾性挟持片対60g、すなわち電池パック2を電気機器200や充電器400に取り付ける際に最初に電力端子204や電力端子410を受け入れる弾性挟持片対60gの、後方の端部には、差し込み案内リブ60hが形成されている。差し込み案内リブ60hは、挟持部60cの後方の端部から後方に向けて延伸し、かつ外側に向けて湾曲する形状に形成されている。差し込み案内リブ60hが形成されていることで、電力端子204や電力端子410の差し込みをスムーズに行うことできる。
【0037】
電力端子60の最も後方に配置された弾性挟持片対60g以外の弾性挟持片対60gの、後方の端部には、差し込み案内窪み60iが形成されている。差し込み案内窪み60iは、弾性挟持片対60gの後方の端縁から、下側湾曲部60b、挟持部60cおよび上側湾曲部60dを略円弧状に切り欠くことで形成されている。差し込み案内窪み60iが形成されていることで、電力端子204や電力端子410の差し込みをスムーズに行うことができる。
【0038】
電力端子60の最も前方に配置された弾性挟持片対60g以外の弾性挟持片対60gの、前方の端部には、抜き出し案内リブ60jが形成されている。抜き出し案内リブ60jは、挟持部60cの前方の端部から前方に向けて延伸し、かつ外側に向けて湾曲する形状に形成されている。抜き出し案内リブ60jが形成されていることで、電力端子204や電力端子410の抜き出しをスムーズに行うことができる。
【0039】
図12、
図13に示す信号端子62は、金属板に切断加工および折り曲げ加工を施すことによって製造される。信号端子62は、支持部62aと、下側湾曲部62bと、挟持部62cと、上側湾曲部62dを備えている。支持部62aは、上下方向に伸びる略角筒形状に形成されている。支持部62aの断面は、長手方向が前後方向に沿う略長方形状である。支持部62aの下端には、下方に向けて突出する支持リブ62eが形成されている。支持リブ62eは、制御基板44に信号端子62を固定するとともに、制御基板44に信号端子62を電気的に接続する。
【0040】
下側湾曲部62bは、支持部62aの左右両側に形成されている。下側湾曲部62bは、支持部62aの上端から内側に向けて湾曲した形状に形成されている。挟持部62cは、下側湾曲部62bの上端からわずかに外側に屈曲して伸びる平板状に形成されている。挟持部62cは、電気機器200の信号端子206や充電器400の信号端子412を信号端子62に係合させたときに、信号端子206や信号端子412の面と平行な角度となるように、すなわち信号端子206や信号端子412の面と面あたりする角度となるように、その傾斜角度が調整されている。上側湾曲部62dは、挟持部62cの上端から外側に向けて湾曲する形状に形成されている。以下では、下側湾曲部62bと、挟持部62cと、上側湾曲部62dを合わせて、信号端子62の弾性挟持片対62gともいう。すなわち、信号端子62は、支持部62aと、支持部62aから上方に向けて伸びる弾性挟持片対62gを備えている。
【0041】
信号端子206や信号端子412が信号端子62に差し込まれる場合には、信号端子62の弾性挟持片対62gに信号端子206や信号端子412の前方の端縁が入り込み、それによって弾性挟持片対62gが外側に開き、弾性挟持片対62gによって信号端子206や信号端子412が挟持される。この際に、弾性挟持片対62gの弾性復元力によって、信号端子62の挟持部62cが信号端子206や信号端子412に押し当てられることで、信号端子62と信号端子206や信号端子412が係合する。すなわち、弾性挟持片対62gは、電池パック2が電気機器200や充電器400に取り付けられたときに、信号端子206や信号端子412を受け入れて、信号端子206や信号端子412を両側から挟持する。逆に、信号端子206や信号端子412が信号端子62から抜き出されると、信号端子62と信号端子206や信号端子412が係合解除される。そして、弾性挟持片対62gの弾性復元力によって、弾性挟持片対62gは元の形状に戻る。
【0042】
信号端子62の弾性挟持片対62gの後方の端部には、差し込み案内リブ62hが形成されている。差し込み案内リブ62hは、挟持部62cの後方の端部から後方に向けて延伸し、かつ外側に向けて湾曲する形状に形成されている。差し込み案内リブ62hが形成されていることで、信号端子206や信号端子412の差し込みをスムーズに行うことできる。
【0043】
信号端子62の弾性挟持片対62gの前方の端部には、抜き出し案内リブ62iが形成されている。抜き出し案内リブ62iは、挟持部62cの前方の端部から前方に向けて延伸し、かつ外側に向けて湾曲する形状に形成されている。抜き出し案内リブ62iが形成されていることで、信号端子206や信号端子412の抜き出しをスムーズに行うことができる。
【0044】
図5に示すように、表示基板46は、信号線64を介して制御基板44に接続されている。表示基板46は、下部ケース16の表示部32の裏面近傍に配置されている。表示基板46は、インジケータ32aの表示内容を変化させるLED46aと、ボタン32bに対する操作を検出するスイッチ46bを備えている。なお、右側セルホルダ48には、信号線64が弛まないように信号線64を保持するガイド66が形成されている。
【0045】
右側セルホルダ48の前部には、ねじ受け部48aが形成されている。左側セルホルダ50の前部には、ねじ受け部50aが形成されている。ねじ受け部48a、50aは、セルホルダ42の上下方向の中央よりも上方に配置されている。
図6に示すように、右側セルホルダ48の後部には、ねじ受け部48bが形成されている。左側セルホルダ50の後部には、ねじ受け部50bが形成されている。ねじ受け部48b、50bは、セルホルダ42の上下方向の中央よりも上方に配置されている。ねじ受け部48a、50aは、ねじ受け部48b、50bよりも下方に配置されている。
図14に示すように、下部ケース16の内部の前部には、ねじ受け部48a、50aに対応する位置に、ねじボス16a、16bが形成されている。下部ケース16の内部の後部には、ねじ受け部48b、50bに対応する位置に、ねじボス16c、16dが形成されている。なお、
図7に示すように、セルホルダ42の下部には、緩衝材68が取り付けられている。緩衝材68は、例えばラバーである。
【0046】
図15に示すように、電池モジュール10は、上部ケース14が取り外された状態で、下部ケース16に対して取り付けられる。この際に、電池モジュール10は、下部ケース16の内側底面に載置された状態で、金属製のねじ70によって下部ケース16に対して固定される。ねじ70は、
図16に示すように、前方側のねじ70は、セルホルダ42のねじ受け部48a、50aの上方から、下部ケース16のねじボス16a、16bに螺着される。
図17に示すように、後方側のねじ70は、セルホルダ42のねじ受け部48b、50bの上方から、下部ケース16のねじボス16c、16dに螺着される。これによって、電池モジュール10を下部ケース16に対して強固に固定することができる。なお、電池モジュール10の下面と下部ケース16の内側底面の間には緩衝材68が介在しているので、電池モジュール10と下部ケース16の間で振動や衝撃が伝達することを抑制することができる。
【0047】
図2-
図4に示すように、下部ケース16に上部ケース14を取り付けた状態では、ねじ70の頭部は、上部ケース14によって完全に覆われており、電池パック2の外部に露出していない。このため、電池パック2の外部の静電気等の影響が、ねじ70を介して電池パック2の内部の電池モジュール10に及ぶことを抑制することができる。
【0048】
図18に示すように、電気機器200は、ハウジング(図示せず)と、ハウジングに設けられており、電池パック2を着脱可能な電池パック取付部202を備えている。電池パック2は、電池パック取付部202に対して所定のスライド方向にスライドさせることで、電池パック取付部202に着脱可能である。
図18に示す例では、電気機器200は、2つの電池パック取付部202を備えており、2つの電池パック2を取り付け可能である。なお、これとは異なり、電気機器200は、1つの電池パック取付部202のみを備え、1つの電池パック2のみを取り付け可能であってもよいし、3つ以上の電池パック取付部202を備え、3つ以上の電池パック2を取り付け可能であってもよい。
【0049】
図19に示すように、電池パック取付部202は、電力端子204と、信号端子206と、保護リブ208と、スライドレール210を備えている。電池パック2を電池パック取付部202に取り付けた状態では、電気機器200の電力端子204は、電池パック2の電力端子60に係合して電気的に接続され、電気機器200の信号端子206は、電池パック2の信号端子62に係合して電気的に接続される。保護リブ208は、側板部208aと後板部208bを備えている。側板部208aは、前後方向および上下方向に沿った平板形状を有しており、それぞれの電力端子204の左右の両側およびそれぞれの信号端子206の左右の両側に配置されている。後板部208bは、左右方向および上下方向に沿った平板形状を有しており、電力端子204および信号端子206よりも後方側に配置されており、それぞれの側板部208aに連結している。スライドレール210は、前後方向に沿って伸びており、電池パック取付部202の左右端部に配置されている。スライドレール210は、電池パック2を電気機器200に着脱する際に、電池パック2のスライドレール20と摺動可能に係合する。
【0050】
図20に示すように、側板部208aおよび後板部208bの下端は、電力端子204および信号端子206の下端よりも下方まで伸びている。また、
図21に示すように、側板部208aの前端は、電力端子204および信号端子206の前端よりも前方まで伸びている。このため、電池パック取付部202に電池パック2が取り付けられておらず、電池パック取付部202が外部に露出している場合であっても、ユーザが誤って電力端子204や信号端子206に触れてしまうことを抑制することができる。特に、
図18に示すように、電気機器200が複数の電池パック2を取り付け可能であって、幾つかの電池パック取付部202には電池パック2が取り付けられており、残りの電池パック取付部202には電池パック2が取り付けられていない場合には、電池パック2が取り付けられていない電池パック取付部202の電力端子204や信号端子206に高電圧が出力されるおそれがある。このような場合であっても、本実施例の電気機器200によれば、ユーザが誤って電力端子204や信号端子206に触れてしまうことが無いので、ユーザの安全を確保することができる。
【0051】
図20に示すように、電力端子204の両側に配置された側板部208aの前端は、他の側板部208aの前端よりも前方まで伸びている。このため、ユーザが誤って電力端子204に触れてしまうことをより確実に抑制することができる。
【0052】
図22に示すように、充電器400は、ハウジング402と、ハウジング402に設けられており、電池パック2を着脱可能な電池パック取付部404と、ハウジング402から伸びており、交流電源に接続可能な電源コード406と、ハウジング402の内部に収容された制御基板408(
図24参照)を備えている。電池パック2は、電池パック取付部404に対して所定のスライド方向にスライドさせることで、電池パック取付部404に着脱可能である。
図22に示す例では、充電器400は、2つの電池パック取付部404を備えており、2つの電池パック2を取り付け可能である。なお、これとは異なり、充電器400は、1つの電池パック取付部404のみを備え、1つの電池パック2のみを取り付け可能であってもよいし、3つ以上の電池パック取付部404を備え、3つ以上の電池パック2を取り付け可能であってもよい。制御基板408は、電源コード406から供給される交流電力を直流電力に変換して、電池パック取付部404に取り付けられた電池パック2に充電する。
【0053】
図23に示すように、電池パック取付部404は、電力端子410と、信号端子412と、スライドレール414と、端子カバー416と、送風ファン418(
図24参照)を備えている。電力端子410、信号端子412および送風ファン418は、制御基板408に接続されている。電池パック2を電池パック取付部404に取り付けた状態では、充電器400の電力端子410は、電池パック2の電力端子60に係合して電気的に接続され、充電器400の信号端子412は、電池パック2の信号端子62に係合して電気的に接続される。端子カバー416は、電力端子410および信号端子412を覆う保護位置(
図22参照)と、電力端子410および信号端子412を露出させる退避位置(
図23参照)の間でスライド可能である。端子カバー416は、図示しない圧縮バネによって保護位置に向けて付勢されている。端子カバー416は、電池パック2を充電器400に取り付ける際に、電池パック2の上部ケース14に押圧されて、保護位置から退避位置へと移動する。送風ファン418は、電池パック2に充電する際に、電池パック取付部404から空気を吸引する。
【0054】
図3に示すように、電池パック2において、上部ケース14の端子受入部22には、電力端子用開口72と信号端子用開口74が形成されている。電力端子用開口72は、制御基板44の電力端子60に対応して配置されており、電気機器200の電力端子204や充電器400の電力端子410が通過可能な位置および形状で形成されている。信号端子用開口74は、制御基板44の信号端子62に対応して配置されており、電気機器200の信号端子206や充電器400の信号端子412が通過可能な位置および形状で形成されている。電池パック2を電気機器200に取り付ける際には、電力端子204が電力端子用開口72に入り込んで電力端子60に係合するとともに、信号端子206が信号端子用開口74に入り込んで信号端子62に係合する。電池パック2を充電器400に取り付ける際には、電力端子410が電力端子用開口72に入り込んで電力端子60に係合するとともに、信号端子412が信号端子用開口74に入り込んで信号端子62に係合する。
【0055】
電池パック2の端子受入部22において、上部ケース14には、電力端子用開口72の左右両側と、信号端子用開口74の左右両側に、凹溝76が形成されている。凹溝76は、電気機器200の保護リブ208の側板部208aを受け入れ可能な位置および形状で形成されている。このため、凹溝76の下端部は、電力端子用開口72や信号端子用開口74の下端部よりも下方まで伸びており、凹溝76の前端部は、電力端子用開口72や信号端子用開口74の前端部よりも前方まで伸びている。また、凹溝76は、上方向と後方向の二方向に開口している。
【0056】
図25に示すように、電力端子60と信号端子62の間に配置された凹溝76の下面と、左右方向で互いに隣接する2つの信号端子62の間に配置された凹溝76の下面には、通気孔78が形成されている。通気孔78は、1つの凹溝76の下面に配置された複数の孔78aを備えている。このため、
図40に示すように、1つの凹溝76の下面に、単一の大きな通気孔78を形成する場合に比べて、個々の孔78aのサイズを小さくすることができ、通気孔78を介して電池パック2の外部から内部に異物が侵入することを抑制することができる。また、上部ケース14の上面には、端子受入部22から後方にオフセットした位置に、通気孔79が形成されている。
【0057】
図26に示すように、制御基板44において、電力端子60と信号端子62の間と、左右方向で互いに隣接する2つの信号端子62の間には、スリット80が形成されている。スリット80は上部ケース14の通気孔78に対向する位置に配置されている。制御基板44にスリット80が形成されていることで、例えば水などの導電性物質が電池パック2の内部に侵入して制御基板44に付着した場合でも、電力端子60と信号端子62の間や、左右方向で互いに隣接する2つの信号端子62の間で短絡が生じてしまうことを抑制することができる。また、制御基板44には、信号端子62から後方にオフセットした位置に、スリット81が形成されている。スリット81は上部ケース14の通気孔79に対向する位置に配置されている。制御基板44の右端部には、互いに隣接するリード板54の間を伸びる切り欠き44aが形成されている。制御基板44に切り欠き44aが形成されていることで、例えば水などの導電性物質が電池パック2の内部に侵入して制御基板44に付着した場合でも、前後方向で互いに隣接する2つのリード板54の間で短絡が生じてしまうことを抑制することができる。制御基板44の左端部には、互いに隣接するリード板56の間を伸びる切り欠き44bが形成されている。制御基板44に切り欠き44bが形成されていることで、例えば水などの導電性物質が電池パック2の内部に侵入して制御基板44に付着した場合でも、前後方向で互いに隣接する2つのリード板56の間で短絡が生じてしまうことを抑制することができる。
【0058】
図27に示すように、セルホルダ42の上面には、開口82が形成されている。上部ケース14の通気孔78と、制御基板44のスリット80は、セルホルダ42の開口82に対向する位置に配置されている。また、上部ケース14の通気孔79と、制御基板44のスリット81は、セルホルダ42の開口82に対向する位置に配置されている。
【0059】
図24に示すように、下部ケース16の下面と、下部ケース16の後面には、給気孔84が形成されている。また、上部ケース14のフック取付部24は、フック26と上部ケース14の隙間を介して空気が流通可能であり、給気孔84として機能する。
【0060】
電池パック2を充電器400に取り付けた状態で、充電器400の送風ファン418が駆動すると、送風ファン418が電池パック取付部404から空気を吸引する。これによって、電池パック2では、給気孔84を介して外部から内部に空気が流入する。電池パック2の内部に流入した空気は、複数の電池セル40の間の空間を通過して、セルホルダ42の開口82に向けて流動する。この際に、複数の電池セル40は、周囲を流れる空気によって冷却される。セルホルダ42の開口82に達した空気の大部分は、制御基板44のスリット80を通過し、上部ケース14の通気孔78を通過して、端子受入部22の凹溝76に流出する。凹溝76に流出した空気は、充電器400の電池パック取付部404を流れて、送風ファン418に到達する。また、セルホルダ42の開口82に達した空気の一部は、制御基板44のスリット81を通過し、上部ケース14の通気孔79を通過して、充電器400の送風ファン418に到達する。さらに、セルホルダ42の開口82に達した空気の他の一部は、制御基板44の切り欠き44a、44bを通過し、さらに上部ケース14の通気孔78、79を通過して、充電器400の送風ファン418に到達する。
図23に示すように、充電器400のハウジング402には、排気孔402aが形成されている。送風ファン418によってハウジング402の内部に吸引された空気は、充電器400のハウジング402の内部を流れた後、排気孔402aを介して外部に排出される。
【0061】
電池パック2では、上部ケース14の通気孔78、79が、制御基板44のスリット80、81に対向して配置されている。このような構成とすることによって、通気孔78、79からの空気の流出に伴って、制御基板44の下方の空気がスリット80、81を介して吸引される。これによって、複数の電池セル40のうち、制御基板44の直下に配置されている部分を十分に冷却することができる。
【0062】
また、電池パック2では、セルホルダ42の開口82が制御基板44のスリット80、81に対向して配置されている。このような構成とすることによって、スリット80、81を介した空気の吸引に伴って、複数の電池セル40の間の空間からセルホルダ42の開口82に向けて空気が流動する。これによって、複数の電池セル40のうち、中央近傍に配置されている部分を十分に冷却することができる。
【0063】
制御基板44は、スリット81を備えておらず、スリット80のみを備えていてもよい。これに対応して、上部ケース14は、通気孔79を備えておらず、通気孔78のみを備えていてもよい。
【0064】
図40に示すように、上部ケース14において、それぞれの凹溝76の下面に単一の大きな通気孔78を形成してもよい。この場合、
図25に示すように、それぞれの凹溝76の下面に複数の孔78aを形成した場合に比べて、空気が通気孔78を通過しやすくなり、複数の電池セル40の冷却性能を向上することができる。
【0065】
図41に示すように、上部ケース14において、電力端子60とスライドレール20の間に配置された凹溝76の下面に、通気孔83を形成してもよい。通気孔83は、1つの凹溝76の下面に配置された複数の孔83aを備えていてもよい。
図42に示すように、制御基板44において、電力端子60とリード板54、56の間に、スリット85を形成してもよい。制御基板44にスリット85が形成されていることで、例えば水などの導電性物質が電池パック2の内部に侵入して制御基板44に付着した場合でも、電力端子60とリード板54、56の間で短絡が生じてしまうことを抑制することができる。スリット85は、上部ケース14の通気孔83に対向する位置に配置されていてもよい。
図41、
図42の構成によれば、充電器400の送風ファン418の駆動によって、複数の電池セル40の間の空間を流れる空気の量が増大し、複数の電池セル40の冷却性能を向上することができる。
【0066】
図28に示すように、電池パック2は、第1サーミスタ90と、第2サーミスタ92を備えている。第1サーミスタ90と第2サーミスタ92は、いずれも、制御基板44に接続されている。第1サーミスタ90は、例えばフィルムサーミスタである。第2サーミスタ92は、例えばディップサーミスタである。一般に、フィルムサーミスタは、温度の検出精度が高いが、制御基板44から離れた位置まで延伸させることが困難である。逆に、ディップサーミスタは、温度の検出精度が低いが、制御基板44から離れた位置まで容易に延伸させることができる。電池パック2では、第1サーミスタ90は、上下方向および前後方向に並んで配置された複数の電池セル40のうち、中央部近傍に配置された電池セル40aの温度を検出し、第2サーミスタ92は、上下方向および前後方向に並んで配置された複数の電池セル40のうち、周縁部近傍に配置された電池セル40bの温度を検出する。この場合、第1サーミスタ90は、電池セル40aに近接した位置であって、他の電池セル40によって取り囲まれた位置の温度を検出する。第2サーミスタ92は、電池セル40bに近接した位置であって、他の電池セル40によって取り囲まれていない位置の温度を検出する。また、第1サーミスタ90は、上部ケース14や下部ケース16との間に電池セル40が介在する位置の温度を検出し、第2サーミスタ92は、下部ケース16との間に電池セル40が介在しない位置の温度を検出する。さらに、第1サーミスタ90は、電池パック2の外部から内部に空気が流入する給気孔84までの距離に比べて、電池パック2の内部から外部に空気が流出する通気孔78までの距離の方が短い位置の温度を検出する。第2サーミスタ92は、電池パック2の内部から外部に空気が流出する通気孔78までの距離に比べて、電池パック2の外部から内部に空気が流入する給気孔84までの距離の方が短い位置の温度を検出する。
【0067】
一般に、上下方向および前後方向に並んで配置された複数の電池セル40においては、中央部近傍に配置された電池セル40は、放熱がしにくいため高温となり、周縁部近傍に配置された電池セル40は、放熱がしやすいため低温となる。また、給気孔84から流入して通気孔78から流出する空気によって複数の電池セル40を冷却する構成では、給気孔84から流入する空気は温度が低く、通気孔78から流出する空気は温度が高くなるので、給気孔84に近い位置の電池セル40は低温となり、通気孔78に近い位置の電池セル40は高温となる。このため、上記のように第1サーミスタ90と第2サーミスタ92を配置した場合、第1サーミスタ90が温度を検出する電池セル40aは、複数の電池セル40のうち充電時に最も高温となり、第2サーミスタ92が温度を検出する電池セル40bは、複数の電池セル40のうち充電時に最も低温となる。このため、第1サーミスタ90と第2サーミスタ92を用いることで、電池パック2の充電時に、複数の電池セル40のうち最も高温となる電池セル40aの温度と、最も低温となる電池セル40bの温度を取得することができる。
【0068】
充電器400は、電池パック取付部404に電池パック2が取り付けられている時に、電池パック2から充電開始指示を受信すると、電池パック2への充電を実行する。充電器400は、電池パック2への充電中、電池パック2から、充電パラメータとして、充電許容電圧、充電許容電流、充電電流絞り開始電圧、カットオフ電流をそれぞれ受信する。そして、充電器400は、充電許容電圧以下の充電電圧および、充電許容電流以下の充電電流で、電池パック2への充電を実行する。充電器400は、電池パック2の充電中に、充電電圧が充電電流絞り開始電圧に達すると、充電電流を徐々に低減する。そして、充電器400は、電池パック2の充電中に、充電電流がカットオフ電流まで低減すると、電池パック2の充電を終了する。なお、充電器400は、電池パック2の充電中に、電池パック2から充電終了指示を受信した場合には、その時点で電池パック2への充電を終了する。
【0069】
以下では、電池パック2の充電に関連して制御基板44が行う各種の処理について説明する。電池パック2の制御基板44は、電池パック2が充電器400の電池パック取付部404に取り付けられている時に、
図29に示す充電開始判定処理を実行する。
【0070】
S2では、制御基板44は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0071】
S4では、制御基板44は、第1充電開始電圧しきい値を特定する。制御基板44は、
図30に示す電池セル温度と充電開始電圧しきい値の対応関係を予め記憶している。
図30に示す対応関係では、電池セル温度が低温の場合の充電開始電圧しきい値は、電池セル温度が常温の場合の充電開始電圧しきい値よりも低く設定され、電池セル温度が高温の場合の充電開始電圧しきい値は、電池セル温度が常温の充電開始電圧しきい値と同じ値に設定される。制御基板44は、第1温度と、
図30の対応関係を用いて、第1充電開始電圧しきい値を特定する。
【0072】
S6では、制御基板44は、第2充電開始しきい値を特定する。制御基板44は、第2温度と、
図30の対応関係を用いて、第2充電開始電圧しきい値を特定する。
【0073】
S8では、制御基板44は、充電開始電圧しきい値を特定する。本実施例では、制御基板44は、第1充電開始電圧しきい値と、第2充電開始電圧しきい値のうち、低い方の値を、充電開始電圧しきい値として特定する。
【0074】
S10では、全ての電池セル40の電圧が、充電開始電圧しきい値より小さいか否かを判断する。いずれかの電池セル40の電圧が充電開始電圧しきい値以上の場合(NOの場合)、処理はS2へ戻る。全ての電池セル40の電圧が充電開始電圧しきい値より小さい場合(YESの場合)、処理はS12へ進む。
【0075】
S12では、制御基板44は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0076】
S14では、制御基板44は、第1温度と第2温度の両方が、所定の充電開始上限温度(例えば55℃)未満であるか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが充電開始上限温度以上の場合(NOの場合)、処理はS12へ戻る。第1温度と第2温度の両方が充電開始上限温度未満の場合(YESの場合)、処理はS16へ進む。
【0077】
S16では、制御基板44は、第1温度と第2温度の両方が、所定の充電開始下限温度(例えば2℃)を超えているか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが充電開始下限以下の場合(NOの場合)、処理はS12へ戻る。第1温度と第2温度の両方が充電開始下限を超えている場合(YESの場合)、処理はS18へ進む。
【0078】
S18では、制御基板44は、充電器400に充電開始指示を出力する。これによって、充電器400による電池パック2の充電が開始される。S18の後、
図29の処理は終了する。
【0079】
電池パック2の制御基板44は、電池パック2が充電器400によって充電されている間、
図31に示す充電パラメータ生成処理と、
図32に示す充電異常判定処理を並行して実行する。
【0080】
以下では
図31に示す充電パラメータ生成処理について説明する。S22では、制御基板44は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0081】
S24では、制御基板44は、第1許容充電電圧、第1許容充電電流、第1充電電流絞り開始電圧、第1カットオフ電流を特定する。制御基板44は、
図33に示す電池セル温度と許容充電電圧の対応関係と、
図34に示す電池セル温度と許容充電電流の対応関係と、
図35に示す電池セル温度と充電電流絞り開始電圧の対応関係と、
図36に示す電池セル温度とカットオフ電流の対応関係を、予め記憶している。
図33に示す対応関係では、電池セル温度が低温の場合の許容充電電圧は、電池セル温度が常温の場合の許容充電電圧よりも低く設定され、電池セル温度が高温の場合の許容充電電圧は、電池セル温度が常温の許容充電電圧と同じ値に設定される。
図34に示す対応関係では、電池セル温度が低温の場合の許容充電電流は、電池セル温度が常温の場合の許容充電電流よりも低く設定され、電池セル温度が高温の場合の許容充電電流は、電池セル温度が常温の許容充電電流よりも低く設定される。
図35に示す対応関係では、電池セル温度が低温の場合の充電電流絞り開始電圧は、電池セル温度が常温の場合の充電電流絞り開始電圧よりも低く設定され、電池セル温度が高温の場合の充電電流絞り開始電圧は、電池セル温度が常温の充電電流絞り開始電圧と同じ値に設定される。
図36に示す対応関係では、電池セル温度が低温の場合のカットオフ電流は、電池セル温度が常温の場合のカットオフ電流よりも低く設定され、電池セル温度が高温の場合のカットオフ電流は、電池セル温度が常温のカットオフ電流よりも高く設定される。制御基板44は、第1温度と、
図33-
図36の対応関係を用いて、第1許容充電電圧、第1許容充電電流、第1充電電流絞り開始電圧、第1カットオフ電流をそれぞれ特定する。
【0082】
S26では、制御基板44は、第2許容充電電圧、第2許容充電電流、第2充電電流絞り開始電圧、第2カットオフ電流を特定する。制御基板44は、第2温度と、
図33-
図36の対応関係を用いて、第2許容充電電圧、第2許容充電電流、第2充電電流絞り開始電圧、第2カットオフ電流をそれぞれ特定する。
【0083】
S28では、制御基板44は、許容充電電圧、許容充電電流、充電電流絞り開始電圧、カットオフ電流を特定する。本実施例では、制御基板44は、第1許容充電電圧と、第2許容充電電圧のうち、低い方の値を、許容充電電圧として特定する。同様に、制御基板44は、第1許容充電電流と、第2許容充電電流のうち、低い方の値を、許容充電電流として特定し、第1充電電流絞り開始電圧と、第2充電電流絞り開始電圧のうち、低い方の値を、充電電流絞り開始電圧として特定し、第1カットオフ電流と、第2カットオフ電流のうち、低い方の値を、カットオフ電流として特定する。
【0084】
S30では、制御基板44は、許容充電電圧、許容充電電流、充電電流絞り開始電圧、カットオフ電流を、充電器400に出力する。充電器400は、電池パック2から出力された許容充電電圧、許容充電電流、充電電流絞り開始電圧、カットオフ電流に基づいて、電池パック2への充電動作を実行する。
【0085】
S32では、制御基板44は、充電器400による充電が終了したか否かを判断する。充電がいまだ終了していない場合(NOの場合)、処理はS22へ戻る。充電が終了した場合(YESの場合)、
図31の処理は終了する。
【0086】
以下では
図32に示す充電異常判定処理について説明する。S42では、制御基板44は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0087】
S44では、制御基板44は、第1温度と第2温度の両方が、所定の充電時上限温度(例えば60℃)未満であるか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが充電時上限温度以上の場合(NOの場合)、処理はS46へ進む。S46では、制御基板44は、異常な高温による充電終了指示を充電器400に送信し、
図32の処理は終了する。S44で、第1温度と第2温度の両方が充電時上限温度未満の場合(YESの場合)、処理はS48へ進む。
【0088】
S48では、制御基板44は、第1温度と第2温度の両方が、所定の充電時下限温度(例えば0℃)を超えているか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが充電時下限温度以下の場合(NOの場合)、処理はS50へ進む。S50では、制御基板44は、異常な低温による充電終了指示を充電器400に送信し、
図32の処理は終了する。S48で、第1温度と第2温度の両方が充電時下限温度を超えている場合(YESの場合)、処理はS52へ進む。
【0089】
S52では、制御基板44は、第1異常電圧しきい値を特定する。制御基板44は、
図37に示す電池セル温度と異常電圧しきい値の対応関係を予め記憶している。
図37に示す対応関係では、電池セル温度が低温の場合の異常電圧しきい値は、電池セル温度が常温の場合の異常電圧しきい値よりも低く設定され、電池セル温度が高温の場合の異常電圧しきい値は、電池セル温度が常温の異常電圧しきい値よりも低く設定される。制御基板44は、第1温度と、
図37の対応関係を用いて、第1異常電圧しきい値を特定する。
【0090】
S54では、制御基板44は、第2異常電圧しきい値を特定する。制御基板44は、第2温度と、
図37の対応関係を用いて、第2異常電圧しきい値を特定する。
【0091】
S56では、制御基板44は、異常電圧しきい値を特定する。本実施例では、制御基板44は、第1異常電圧しきい値と、第2異常電圧しきい値のうち、低い方の値を、異常電圧しきい値として特定する。
【0092】
S58では、全ての電池セル40の電圧が、異常電圧しきい値より小さいか否かを判断する。いずれかの電池セル40の電圧が異常電圧しきい値以上の場合(NOの場合)、処理はS60へ進む。S60では、制御基板44は、異常な高電圧による充電終了指示を充電器400に送信し、
図32の処理は終了する。S58で、全ての電池セル40の電圧が異常電圧しきい値より小さい場合(YESの場合)、処理はS62へ進む。
【0093】
S62では、制御基板44は、充電器400による充電が終了したか否かを判断する。充電がいまだ終了していない場合(NOの場合)、処理はS42へ戻る。充電が終了した場合(YESの場合)、
図32の処理は終了する。
【0094】
なお、充電器400が電池パック2の充電を行っている間、充電器400の制御基板408は、電池パック2から第1サーミスタ90の検出温度と第2サーミスタ92の検出温度を取得し、送風ファン418の動作を制御する。充電器400が電池パック2に対する充電動作を開始すると、制御基板408は、
図38に示す送風制御処理を実行する。
【0095】
S72では、制御基板408は、送風ファン418を駆動する。
【0096】
S74では、制御基板408は、電池パック2に対する充電が終了したか否かを判断する。充電が終了した場合(YESの場合)、処理はS76へ進む。S76では、制御基板408は、送風ファン418を停止して、
図38の処理は終了する。S74で、充電がいまだ終了していない場合(NOの場合)、処理はS78へ進む。
【0097】
S78では、制御基板408は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0098】
S80では、制御基板408は、第1温度と第2温度の両方が、所定の送風停止温度(例えば15℃)未満であるか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが送風停止温度以上の場合(NOの場合)、処理はS74へ戻る。第1温度と第2温度の両方が送風停止温度未満の場合(YESの場合)、処理はS82へ進む。
【0099】
S82では、制御基板408は、送風ファン418を停止する。
【0100】
S84では、制御基板408は、電池パック2に対する充電が終了したか否かを判断する。充電が終了した場合(YESの場合)、
図38の処理は終了する。充電がいまだ終了していない場合(NOの場合)、処理はS86へ進む。
【0101】
S86では、制御基板408は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0102】
S88では、制御基板408は、第1温度と第2温度の両方が、所定の送風開始温度(例えば17℃)を超えているか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが送風開始温度以下の場合(NOの場合)、処理はS84へ戻る。第1温度と第2温度の両方が送風開始温度を超えている場合(YESの場合)、処理はS72へ戻る。
【0103】
以下では、電池パック2の放電に関連して制御基板44が行う処理について説明する。電池パック2の制御基板44は、電池パック2が電気機器200の電池パック取付部202に取り付けられており、電気機器200に対する放電を実行している時に、
図39に示す放電異常判定処理を実行する。
【0104】
S92では、制御基板44は、第1温度として第1サーミスタ90で検出される温度を取得するとともに、第2温度として第2サーミスタ92で検出される温度を取得する。
【0105】
S94では、制御基板44は、第1温度と第2温度の両方が、所定の放電時上限温度(例えば85℃)未満であるか否かを判断する。第1温度と第2温度のいずれかが放電時上限温度以上の場合(NOの場合)、処理はS96へ進む。S96では、制御基板44は、異常な高温による放電終了指示を電気機器200に送信し、
図39の処理は終了する。S94で、第1温度と第2温度の両方が放電時上限温度未満の場合(YESの場合)、処理はS98へ進む。
【0106】
S98では、制御基板44は、電気機器200への放電が終了したか否かを判断する。放電がいまだ終了していない場合(NOの場合)、処理はS92へ戻る。放電が終了した場合(YESの場合)、
図39の処理は終了する。
【0107】
上記の実施例において、電気機器200の保護リブ208の側板部208aは、電力端子204の両側にのみ設けられ、信号端子206の両側には設けられていない構成としてもよい。これに対応して、電池パック2の凹溝76は、電力端子60の両側にのみ設けられ、信号端子62の両側には設けられていない構成としてもよい。
【0108】
上記の実施例において、電池パック2の電力端子60は、信号端子62を左右方向の両側から挟み込む位置に配置されているが、電力端子60と信号端子62の配置は、他の配置としてもよい。これに対応して、電気機器200の電力端子204と信号端子206の配置、および、充電器400の電力端子410と信号端子412の配置は、電池パック2の電力端子60と信号端子62の配置に応じたものであればよく、上記の実施例とは異なる配置としてもよい。
【0109】
上記の実施例において、電池パック2の電力端子60と信号端子62は、制御基板44に搭載されているが、電力端子60と信号端子62は、制御基板44に電気的に接続された制御基板44とは別個の端子基板(図示せず)に搭載されていてもよい。
【0110】
上記の実施例では、充電器400の送風ファン418は、電池パック取付部404から空気を吸引するように構成されている。これとは異なり、送風ファン418は、電池パック取付部404に向けて空気を排出する構成としてもよい。この場合、
図43に示すように、電池パック2の通気孔78は、電池パック2の外部から内部へ空気が導入される給気孔として機能し、電池パック2の給気孔84は、電池パック2の内部から外部へ空気を排出する排気孔として機能する。なお、
図43に示す例では、上部ケース14のフック取付部24は、フック26と上部ケース14の隙間を介して空気が流通できないように隙間が閉塞されており、給気孔84として機能しない。この場合、通気孔78を介して電池パック2の内部に流入した空気は、制御基板44のスリット80を通過した後、セルホルダ42の開口82を通過して、複数の電池セル40の間の空間に流れ込む。複数の電池セル40の間の空間に流れ込んだ空気は、複数の電池セル40を冷却した後、給気孔84を介して電池パック2の外部へ流出する。
図43に示す例では、第1サーミスタ90は、電池パック2の外部から内部に空気が流入する通気孔78までの距離に比べて、電池パック2の内部から外部に空気が流出する給気孔84までの距離の方が短い位置に配置され、第2サーミスタ92は、電池パック2の内部から外部に空気が流出する給気孔84までの距離に比べて、電池パック2の外部から内部に空気が流入する通気孔78までの距離の方が短い位置に配置される。
図43に示す例においても、第1サーミスタ90が温度を検出する電池セル40aは、複数の電池セル40のうち充電時に最も高温となり、第2サーミスタ92が温度を検出する電池セル40bは、複数の電池セル40のうち充電時に最も低温となる。このため、第1サーミスタ90と第2サーミスタ92を用いることで、電池パック2の充電時に、複数の電池セル40のうち最も高温となる電池セル40aの温度と、最も低温となる電池セル40bの温度を取得することができる。
【0111】
上記の実施例では、電池パック2が32個の電池セル40を備えており、電池パック2の公称電圧が64Vであり、電池パック2の公称容量が5Ahの場合について説明した。これとは異なり、例えば電池パック2が16個の電池セル40を備えており、電池パック2の公称電圧が64Vであり、電池パック2の公称容量が2.5Aであってもよい。この場合、
図44に示すように、電池セル40は、上下方向に4つ並んで配置されているとともに、前後方向に4つ並んで配置されている。
図44に示すように第1サーミスタ90と第2サーミスタ92を配置した場合、第1サーミスタ90が温度を検出する電池セル40aは、複数の電池セル40のうち充電時に最も高温となり、第2サーミスタ92が温度を検出する電池セル40bは、複数の電池セル40のうち充電時に最も低温となる。このため、第1サーミスタ90と第2サーミスタ92を用いることで、電池パック2の充電時に、複数の電池セル40のうち最も高温となる電池セル40aの温度と、最も低温となる電池セル40bの温度を取得することができる。
【0112】
以上のように、1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、複数の電池セル40と、複数の電池セル40を保持するセルホルダ42と、セルホルダ42を収容するケース12を備えている。ケース12は、下部ケース16(第1ケースの例)と、下部ケース16に固定される上部ケース14(第2ケースの例)を備えている。セルホルダ42は、下部ケース16にねじ70(締結具の例)によって固定されている。下部ケース16に上部ケース14が固定された時に、ねじ70はケース12の外部から遮蔽されている。
【0113】
上記の構成によれば、セルホルダ42を下部ケース16に固定するねじ70がケース12の外部から遮蔽されているので、ケース12の外部の静電気等の影響がねじ70を介してケース12の内部に及ぶことがない。複数の電池セル40を保持するセルホルダ42を収容するケース12を備える電池パック2において、ケース12の外部の静電気等の影響がケース12の内部に及ぶことを抑制することができる。
【0114】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、下部ケース16とセルホルダ42の間に介在する緩衝材68をさらに備えている。
【0115】
上記の構成によれば、ケース12からセルホルダ42に振動や衝撃が伝達することを抑制することができる。
【0116】
1またはそれ以上の実施形態において、下部ケース16は、上面(一面の例)が開口した箱型の形状を有している。セルホルダ42は、下部ケース16の内側底面に載置された状態で、下部ケース16にねじ70によって固定されている。下部ケース16の内側底面に直交する方向、すなわち上下方向に関して、ねじ70は、セルホルダ42の中心に比べて下部ケース16の内側底面から離れた位置で締結されている。
【0117】
上記の構成によれば、複数の電池セル40を保持したセルホルダ42がケース12に対して揺動することを抑制することができる。
【0118】
1またはそれ以上の実施形態において、複数の電池セル40のそれぞれは、左右方向(第1方向の例)に長手方向を有する略円筒形状を有している。複数の電池セル40は、前後方向(第1方向に直交する第2方向の例)に並んで配置された状態で、セルホルダ42に保持されている。ねじ70は、左右方向に関して、複数の電池セル40の両端部よりも内側であって、前後方向に関して、複数の電池セル40のうち最も外側に位置する電池セル40よりも外側の位置で締結されている。
【0119】
複数の電池セル40のそれぞれが、左右方向に長手方向を有する略円筒形状を有しており、複数の電池セル40が、前後方向に並んで配置された状態で、セルホルダ42に保持されている場合、複数の電池セル40の左右方向の両端部には、複数の電池セル40の電極に接続されるリード板54,56等の部品が設けられる。このため、ねじ70が、左右方向に関して、複数の電池セル40の両端部よりも外側であって、前後方向に関して、複数の電池セル40のうち最も外側に位置する電池セル40よりも内側の位置で締結される構成とすると、複数の電池セル40の左右方向の両端部近傍の部品との干渉を回避する必要が生じ、電池パック2の大型化を招いてしまう。上記のように、ねじ70が、左右方向に関して、複数の電池セル40の両端部よりも内側であって、前後方向に関して、複数の電池セル40のうち最も外側に位置する電池セル40よりも外側の位置で締結される構成とすることによって、電池パック2の大型化を招くことなく、セルホルダ42をねじ70によって下部ケース16に固定することができる。
【0120】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、ケース12に収容されており、複数の電池セル40に電気的に接続された制御基板44をさらに備えている。制御基板44は、セルホルダ42に固定されている。
【0121】
上記の構成によれば、電池パック2を製造する際に、制御基板44をセルホルダ42に固定した状態で、制御基板44とセルホルダ42を一体的に下部ケース16に取り付けることができる。電池パック2の製造に係る労力を低減することができる。
【0122】
1またはそれ以上の実施形態において、ねじ70は、制御基板44に直交する方向、すなわち上方向から平面視したときに、制御基板44の外側の位置で締結されている。
【0123】
上記の構成によれば、制御基板44が固定されたセルホルダ42を下部ケース16に取り付ける際に、制御基板44と干渉することなくねじ70の締結作業を行うことができる。電池パック2の製造に係る労力を低減することができる。
【0124】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、電池セル40と、電力端子60および信号端子62(複数の端子の例)が設けられた制御基板44(基板の例)と、電池セル40および制御基板44を収容するケース12を備えている。制御基板44は、電力端子60および信号端子62の間に配置されたスリット80(貫通孔の例)を備えている。ケース12は、制御基板44のスリット80に対向する位置に配置された通気孔78を備えている。
【0125】
上記の構成によれば、ケース12に設けられた通気孔78が、制御基板44に設けられたスリット80に対向する位置に配置されているので、ケース12の通気孔78を介して流入または流出する空気が、制御基板44のスリット80を通過する。このため、ケース12の内部で電池セル40と制御基板44が近接して配置されている場合であっても、電池セル40と制御基板44の間の箇所に十分に空気を流すことができ、制御基板44に近接する箇所の電池セル40を十分に冷却することができる。また、上記の構成によれば、制御基板44に設けられたスリット80は、電力端子60および信号端子62の間に配置されている。このため、ケース12の内部に水等の導電性物質が侵入して制御基板44に付着した場合であっても、電力端子60および信号端子62の間で短絡を生じることを抑制することができる。
【0126】
1またはそれ以上の実施形態において、電力端子60および信号端子62は、第1の端子(例えば電力端子60)と、第2の端子(例えば電力端子60に隣接する信号端子62)を備えている。通気孔78は、上部ケース14において、第1の端子(例えば電力端子60)に対向する領域と第2の端子(例えば電力端子60に隣接する信号端子62)に対向する領域の間に配置された複数の孔78aを備えている。
【0127】
ケース12に設けられた通気孔78のサイズが大きいと、通気孔78を通過する空気の量が増大する一方で、通気孔78を介して電池パック2の内部に異物が侵入しやすくなる。上記の構成によれば、通気孔78が複数の孔78aを備えているので、通気孔78を通過する空気の量を低減することなく、個々の孔78aのサイズを小さくすることができ、通気孔78を介して電池パック2の内部に異物が侵入すること抑制することができる。
【0128】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、ケース12に収容されており、電池セル40を保持するセルホルダ42をさらに備えている。セルホルダ42は、制御基板44のスリット80に対向する位置に配置された開口82を備えている。
【0129】
セルホルダ42によって電池セル40が保持される構成の場合、制御基板44のスリット80と電池セル40の間がセルホルダ42によって遮蔽されていると、スリット80を通過する空気が制御基板44とセルホルダ42の間を流れてしまい、スリット80の近傍の電池セル40を十分に冷却することができなくなってしまう。上記の構成では、セルホルダ42が、制御基板44のスリット80に対向する位置に配置された開口82を備えているので、スリット80を通過する空気がセルホルダ42の開口82を通過する。これによって、スリット80の近傍の電池セル40を十分に冷却することができる。
【0130】
1またはそれ以上の実施形態において、ケース12は、電力端子60および信号端子62の間に配置されており、二方向に開口した凹溝76を備えている。通気孔78は、凹溝76の底面に配置されている。
【0131】
上記の構成によれば、ケース12の凹溝76の内部の空間が、通気孔78を通過する空気の流路として機能する。そして、上記の構成によれば、通気孔78を通過する空気がケース12に対して流入または流出する方向を、凹溝76が開口する二方向のうち所望の方向とすることができる。上記の構成によれば、電池パック2に冷却のための空気を流入または流出させる機構の設計上の自由度を向上することができる。
【0132】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、電池セル40と制御基板44を接続するリード板54、56をさらに備えている。制御基板44は、電力端子60とリード板54、56の間に配置されたスリット85(第2貫通孔の例)をさらに備えている。ケース12は、制御基板44のスリット85に対向する位置に配置された通気孔83(第2通気孔の例)をさらに備えている。
【0133】
上記の構成によれば、ケース12に設けられた通気孔83が、制御基板44に設けられたスリット85に対向する位置に配置されているので、ケース12の通気孔83を介して流入または流出する空気が、制御基板44のスリット85を通過する。このため、ケース12の内部で電池セル40と制御基板44が近接して配置されている場合であっても、電池セル40と制御基板44の間の箇所に十分に空気を流すことができ、制御基板44に近接する箇所の電池セル40を十分に冷却することができる。また、上記の構成によれば、制御基板44に設けられたスリット85は、電力端子60とリード板54、56の間に配置されている。このため、ケース12の内部に水等の導電性物質が侵入して制御基板44に付着した場合であっても、電力端子60とリード板54、56の間で短絡を生じることを抑制することができる。
【0134】
1またはそれ以上の実施形態において、制御基板44は、互いに隣接するリード板54(またはリード板56)の間に形成された切り欠き44a(または切り欠き44b)を備えている。
【0135】
上記の構成によれば、制御基板44の切り欠き44a(または切り欠き44b)を介しても空気が通過するため、電池セル40と制御基板44の間の箇所に十分に空気を流すことができ、制御基板44に近接する箇所の電池セル40を十分に冷却することができる。また、上記の構成によれば、制御基板44に形成された切り欠き44a(または切り欠き44b)は、互いに隣接するリード板54(またはリード板56)の間に配置されている。このため、ケース12の内部に水等の導電性物質が侵入して制御基板44に付着した場合であっても、互いに隣接するリード板54(またはリード板56)の間で短絡を生じることを抑制することができる。
【0136】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、前後方向(所定のスライド方向の例)にスライドさせることで充電器400に着脱可能である。制御基板44は、信号端子62から前方向にオフセットした位置に配置されたスリット81(第3貫通孔の例)をさらに備えている。ケース12は、制御基板44のスリット81に対向する位置に配置された通気孔79(第3通気孔の例)をさらに備えている。
【0137】
上記の構成によれば、ケース12に設けられた通気孔79が、制御基板44に設けられたスリット81に対向する位置に配置されているので、ケース12の通気孔79を介して流入または流出する空気が、制御基板44のスリット81を通過する。このため、ケース12の内部で電池セル40と制御基板44が近接して配置されている場合であっても、電池セル40と制御基板44の間の箇所に十分に空気を流すことができ、制御基板44に近接する箇所の電池セル40を十分に冷却することができる。
【0138】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、電池セル40a(第1電池セルの例)と電池セル40b(第2電池セルの例)を含む複数の電池セル40と、第1サーミスタ90と、第2サーミスタ92を備えている。第1サーミスタ90は、電池セル40aの近傍であって、他の電池セル40によって取り囲まれた位置に配置されている。第2サーミスタ92は、電池セル40bの近傍であって、他の電池セル40によって取り囲まれていない位置に配置されている。
【0139】
上記の構成によれば、第1サーミスタ90は、電池セル40aの近傍であって、他の電池セル40によって取り囲まれた位置、すなわち、放熱がされにくく、高温となりやすい位置に配置されているので、第1サーミスタ90によって高温の電池セル40aの温度を取得することができる。また、上記の構成によれば、第2サーミスタ92は、電池セル40bの近傍であって、他の電池セル40によって取り囲まれていない位置、すなわち、放熱がされやすく、低温となりやすい位置に配置されているので、第2サーミスタ92によって低温の電池セル40bの温度を取得することができる。上記の構成によれば、複数の電池セル40を備える電池パック2において、高温になる電池セル40aの温度だけでなく、低温になる電池セル40bの温度も取得することができる。
【0140】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、複数の電池セル40と、第1サーミスタ90と、第2サーミスタ92を収容するケース12をさらに備えている。ケース12は、空気を導入する給気孔84(給気口の例)と、空気を排出する通気孔78(排気口の例)を備えている。
【0141】
上記の構成によれば、ケース12の内部を給気孔84から通気孔78へ向けて流れる空気によって複数の電池セル40を冷却する電池パック2において、高温になる電池セル40aの温度だけでなく、低温になる電池セル40bの温度も取得することができる。
【0142】
1またはそれ以上の実施形態において、第2サーミスタ92は、通気孔78までの距離に比べて、給気孔84までの距離が小さい位置に配置されている。
【0143】
ケース12の内部を給気孔84から通気孔78へ向けて流れる空気によって複数の電池セル40を冷却する電池パック2においては、給気孔84から流れ込んだ直後の空気が最も低温となり、通気孔78から流れ出る直前の空気が最も高温となる。このため、給気孔84の近くに配置された電池セル40は低温となりやすく、通気孔78の近くに配置された電池セル40は高温となりやすい。上記の構成によれば、第2サーミスタ92によって、より低温になる電池セル40bの温度を取得することができる。
【0144】
1またはそれ以上の実施形態において、第1サーミスタ90は、給気孔84までの距離に比べて、通気孔78までの距離が小さい位置に配置されている。
【0145】
ケース12の内部を給気孔84から通気孔78へ向けて流れる空気によって複数の電池セル40を冷却する電池パック2においては、給気孔84の近くに配置された電池セル40は低温となりやすく、通気孔78の近くに配置された電池セル40は高温となりやすい。上記の構成によれば、第1サーミスタ90によって、より高温になる電池セル40aの温度を取得することができる。
【0146】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、ケース12に収容されており、通気孔78と複数の電池セル40の間に配置された制御基板44(基板の例)をさらに備えている。第1サーミスタ90および第2サーミスタ92は、それぞれ、制御基板44に接続されている。第1サーミスタ90は、フィルムサーミスタを備えている。第2サーミスタ92は、ディップサーミスタを備えている。
【0147】
上記の構成によれば、制御基板44が通気孔78と複数の電池セル40の間に配置されているので、通気孔78の近くに配置された電池セル40a、すなわち高温となりやすい電池セル40aの温度を、フィルムサーミスタを備える第1サーミスタ90によって取得することで、高温の電池セル40aの温度を精度よく取得することができる。また、上記の構成によれば、制御基板44が通気孔78と複数の電池セル40の間に配置されている場合であっても、給気孔84の近くに配置された電池セル40b、すなわち低温となりやすい電池セル40bの温度を、ディップサーミスタを備える第2サーミスタ92によって取得することができる。
【0148】
1またはそれ以上の実施形態において、電池セル40bは、ケース12の壁面との間に他の電池セル40が介在しない位置に配置されている。
【0149】
一般に、ケース12の内部に複数の電池セル40を収容した電池パック2では、ケース12の外表面からケース12の外部の空気に対する放熱が存在するので、ケース12の壁面に近い位置の電池セル40は低温になりやすく、ケース12の壁面から遠い位置の電池セル40は高温になりやすい。上記の構成によれば、第2サーミスタ92によって温度を取得する電池セル40bが、ケース12の壁面に近い位置に配置されている。このため、第2サーミスタ92によって、より低温となる電池セル40bの温度を取得することができる。
【0150】
1またはそれ以上の実施形態において、電池セル40aは、ケース12の壁面との間に他の電池セル40が介在する位置に配置されている。
【0151】
一般に、ケース12の内部に複数の電池セル40を収容した電池パック2では、ケース12の外表面からケース12の外部の空気に対する放熱が存在するので、ケース12の壁面に近い位置の電池セル40は低温になりやすく、ケース12の壁面から遠い位置の電池セル40は高温になりやすい。上記の構成によれば、第1サーミスタ90によって温度を取得する電池セル40aが、ケース12の壁面から遠い位置に配置されている。このため、第1サーミスタ90によって、より高温となる電池セル40aの温度を取得することができる。
【0152】
1またはそれ以上の実施形態において、電力供給システム600は、電気機器200と、電気機器200に対して前後方向(スライド方向の例)にスライドさせることで電気機器200に着脱可能な電池パック2を備えている。電気機器200は、電力端子204(機器側電力端子の例)と、電力端子204よりも高い位置まで伸びる保護リブ208であって、電力端子204の両側に配置されている保護リブ208を備えている。電池パック2は、電力端子204と機械的に係合して電気的に接続する電力端子60(電池側電力端子の例)と、電力端子60を収容するケース12を備えている。ケース12は、前後方向において、電力端子60に対向する位置に配置された電力端子用開口72と、前後方向に沿って伸びる凹溝76であって、電力端子60の両側に配置されている凹溝76を備えている。
【0153】
1またはそれ以上の実施形態において、電気機器200は、電池パック2を前後方向(スライド方向の例)にスライドさせることで電池パック2を着脱可能である。電気機器200は、電力端子204(機器側電力端子の例)と、電力端子204よりも高い位置まで伸びる保護リブ208であって、電力端子204の両側に配置されている保護リブ208を備えている。
【0154】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、電気機器200に対して前後方向(スライド方向の例)にスライドさせることで電気機器200に着脱可能である。電池パック2は、電力端子60(電池側電力端子の例)と、電力端子60を収容するケース12を備えている。ケース12は、前後方向において、電力端子60に対向する位置に配置された電力端子用開口72と、前後方向に沿って伸びる凹溝76であって、電力端子60の両側に配置されている凹溝76を備えている。
【0155】
上記の構成によれば、電気機器200の電力端子204の両側に、電力端子204よりも高い位置まで伸びる保護リブ208が設けられているので、電池パック2を電気機器200から取り外した状態であっても、ユーザが誤って電力端子204に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パック2を電気機器200に取り付ける際には、電池パック2のケース12の凹溝76が電気機器200の保護リブ208を受け入れることで、保護リブ208とケース12が干渉することなく電池パック2を電気機器200に取り付けることができる。
【0156】
1またはそれ以上の実施形態において、電気機器200は、信号端子206(機器側信号端子の例)をさらに備えている。保護リブ208は、信号端子206よりも高い位置まで伸びており、信号端子206の両側にも配置されている。電池パック2は、ケース12に収容されており、信号端子206と機械的に係合して電気的に接続する信号端子62(電池側信号端子の例)をさらに備えている。ケース12は、前後方向において、信号端子62に対向する位置に配置された信号端子用開口74をさらに備えている。凹溝76は、信号端子62の両側にも配置されている。
【0157】
1またはそれ以上の実施形態において、電気機器200は、信号端子206(機器側信号端子の例)をさらに備えている。保護リブ208は、信号端子206よりも高い位置まで伸びており、信号端子206の両側にも配置されている。
【0158】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、ケース12に収容された信号端子62(電池側信号端子の例)をさらに備えている。ケース12は、前後方向において、信号端子62に対向する位置に配置された信号端子用開口74をさらに備えている。凹溝76は、信号端子62の両側にも配置されている。
【0159】
上記の構成によれば、電気機器200の信号端子206の両側にも、信号端子206よりも高い位置まで伸びる保護リブ208が設けられているので、電池パック2を電気機器200から取り外した状態であっても、ユーザが誤って信号端子206に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パック2を電気機器200に取り付ける際には、電池パック2のケース12の凹溝76が電気機器200の保護リブ208を受け入れることで、保護リブ208とケース12が干渉することなく電池パック2を電気機器200に取り付けることができる。
【0160】
1またはそれ以上の実施形態において、電気機器200は、スライドレール210(機器側スライドレールの例)をさらに備えている。保護リブ208の少なくとも1つは、スライドレール210と電力端子204の間に配置されている。電池パック2は、スライドレール210に対して前後方向に摺動可能に係合するスライドレール20(電池側スライドレールの例)をさらに備えている。凹溝76の少なくとも1つは、スライドレール20と電力端子60の間に配置されている。
【0161】
1またはそれ以上の実施形態において、電気機器200は、スライドレール210(機器側スライドレールの例)をさらに備えている。保護リブ208の少なくとも1つは、スライドレール210と電力端子204の間に配置されている。
【0162】
1またはそれ以上の実施形態において、電池パック2は、スライドレール20(電池側スライドレールの例)をさらに備えている。凹溝76の少なくとも1つは、スライドレール20と電力端子60の間に配置されている。
【0163】
多くの場合、電気機器200のスライドレール210と電力端子204の間には、電池パック2のスライドレール20を受け入れるための空間が設けられており、ユーザの指が入りやすい構造となっている。上記の構成によれば、電池パック2を電気機器200から取り外した状態であっても、ユーザが誤ってスライドレール210と電力端子204の間の空間から電力端子204に触れてしまうことがない。なお、上記の構成によれば、電池パック2を電気機器200に取り付ける際には、電池パック2のケース12の凹溝76が電気機器200の保護リブ208を受け入れることで、保護リブ208とケース12が干渉することなく電池パック2を電気機器200に取り付けることができる。
【0164】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0165】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的な有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0166】
2 :電池パック
10 :電池モジュール
12 :ケース
14 :上部ケース
16 :下部ケース
16a :ねじボス
16b :ねじボス
16c :ねじボス
16d :ねじボス
18 :ねじ
20 :スライドレール
22 :端子受入部
24 :フック取付部
26 :フック
26a :操作部
26b :係合部
28 :把持用窪み
30 :保護膜
32 :表示部
32a :インジケータ
32b :ボタン
40 :電池セル
40a :電池セル
40b :電池セル
42 :セルホルダ
44 :制御基板
44a :切り欠き
44b :切り欠き
46 :表示基板
46a :LED
46b :スイッチ
48 :右側セルホルダ
48a :ねじ受け部
48b :ねじ受け部
50 :左側セルホルダ
50a :ねじ受け部
50b :ねじ受け部
52 :ねじ
54 :リード板
56 :リード板
58 :ねじ
60 :電力端子
60a :支持部
60b :下側湾曲部
60c :挟持部
60d :上側湾曲部
60e :支持リブ
60f :スリット
60g :弾性挟持片対
60h :差し込み案内リブ
60i :差し込み案内窪み
60j :抜き出し案内リブ
62 :信号端子
62a :支持部
62b :下側湾曲部
62c :挟持部
62d :上側湾曲部
62e :支持リブ
62g :弾性挟持片対
62h :差し込み案内リブ
62i :抜き出し案内リブ
64 :信号線
66 :ガイド
68 :緩衝材
70 :ねじ
72 :電力端子用開口
74 :信号端子用開口
76 :凹溝
78 :通気孔
78a :孔
79 :通気孔
80 :スリット
81 :スリット
82 :開口
83 :通気孔
83a :孔
84 :給気孔
85 :スリット
90 :第1サーミスタ
92 :第2サーミスタ
200 :電気機器
202 :電池パック取付部
204 :電力端子
206 :信号端子
208 :保護リブ
208a :側板部
208b :後板部
210 :スライドレール
400 :充電器
402 :ハウジング
402a :排気孔
404 :電池パック取付部
406 :電源コード
408 :制御基板
410 :電力端子
412 :信号端子
414 :スライドレール
416 :端子カバー
418 :送風ファン
600 :電力供給システム