(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20221209BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20221209BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20221209BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221209BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20221209BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221209BHJP
【FI】
B60K11/02
B60L3/00 J
H02K9/19 A
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2018226531
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖 尚悟
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-202244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0050605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318370(US,A1)
【文献】特開2011-182607(JP,A)
【文献】特開2012-211432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/02
B60L 3/00
H02K 9/19
H01M 10/613
H01M 10/6568
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータ、バッテリ、インバータ、モータ、前記ラジエータの順に冷却媒体を循環可能な循環流路と、
前記循環流路において、前記ラジエータをバイパス可能な第1の切替弁と、
前記循環流路において、前記モータをバイパス可能な第2の切替弁と、
前記バッテリのバッテリ温度
および前記インバータのインバータ温
度に基づいて、前記第1の切替弁および前記第2の切替弁を制御する制御部と
を備え
、
前記制御部は、前記インバータ温度が第1の閾温度未満であり、かつ、前記バッテリ温度が第2の閾温度未満である場合に、前記ラジエータをバイパスするように前記第1の切替弁を制御し、前記モータを経由するように前記第2の切替弁を制御する
冷却システム。
【請求項2】
前記循環流路において、前記バッテリをバイパス可能な第3の切替弁をさらに備え、
前記制御部は、前記バッテリ温度、前記インバータ温度、および前記モータのモータ温度に基づいて、前記第1の切替弁、前記第2の切替弁、および前記第3の切替弁を制御し、
前記制御部は、前記モータ温度が第3の閾温度以上であり、かつ、前記バッテリ温度が前記第2の閾温度未満である場合に、前記ラジエータを経由するように前記第1の切替弁を制御し、前記モータを経由するよう前記第2の切替弁を制御し、前記バッテリをバイパスするように前記第3の切替弁を制御する
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記循環流路において、前記バッテリをバイパス可能な第3の切替弁をさらに備え、
前記制御部は、前記バッテリ温度、前記インバータ温度、および前記モータのモータ温度に基づいて、前記第1の切替弁、前記第2の切替弁、および前記第3の切替弁を制御し、
前記制御部は、前記モータ温度が第3の閾温度未満であり、前記インバータ温度が前記第1の閾温度以上であり、かつ、前記バッテリ温度が前記第2の閾温度未満である場合に、前記ラジエータを経由するように前記第1の切替弁を制御し、前記モータをバイパスするよう前記第2の切替弁を制御し、前記バッテリをバイパスするように前記第3の切替弁を制御する
請求項1または請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記循環流路において、前記バッテリをバイパス可能な第3の切替弁をさらに備え、
前記制御部は、前記バッテリ温度、前記インバータ温度、および前記モータのモータ温度に基づいて、前記第1の切替弁、前記第2の切替弁、および前記第3の切替弁を制御し、
前記制御部は、
前記インバータ温度が前記第1の閾温度未満であり、前記バッテリ温度が前記第2の閾温度未満であり、前記モータ温度が第3の閾温度未満である場合に、前記ラジエータをバイパスするように前記第1の切替弁を制御し、前記モータを経由するように前記第2の切替弁を制御し、前記バッテリを経由するように前記第3の切替弁を制御する第1のモードの制御を行い、
前記第1のモードの制御を行っている際に、前記モータ温度が前記第3の閾温度以上になり、かつ、前記バッテリ温度が前記第2の閾温度未満になった場合に、前記ラジエータを経由するように前記第1の切替弁を制御し、前記モータを経由するよう前記第2の切替弁を制御し、前記バッテリをバイパスするように前記第3の切替弁を制御する第2のモードの制御を行う
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記循環流路において、前記バッテリをバイパス可能な第3の切替弁をさらに備え、
前記制御部は、前記バッテリ温度、前記インバータ温度、および前記モータのモータ温度に基づいて、前記第1の切替弁、前記第2の切替弁、および前記第3の切替弁を制御し、
前記制御部は、
前記インバータ温度が前記第1の閾温度未満であり、前記バッテリ温度が前記第2の閾温度未満であり、前記モータ温度が第3の閾温度未満である場合に、前記ラジエータをバイパスするように前記第1の切替弁を制御し、前記モータを経由するように前記第2の切替弁を制御し、前記バッテリを経由するように前記第3の切替弁を制御する第1のモードの制御を行い、
前記第1のモードの制御を行っている際に、前記モータ温度が前記第3の閾温度未満になり、前記インバータ温度が前記第1の閾温度以上になり、かつ、前記バッテリ温度が前記第2の閾温度未満になった場合に、前記ラジエータを経由するように前記第1の切替弁を制御し、前記モータをバイパスするよう前記第2の切替弁を制御し、前記バッテリをバイパスするように前記第3の切替弁を制御する第3のモードの制御を行う
請求項1または請求項4に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に用いられる冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、電気自動車やハイブリッド自動車などのように、バッテリ、インバータ、およびモータを備えるものがある。例えば、特許文献1,2には、ラジエータ、インバータ、モータ、バッテリ、ラジエータの順に冷却媒体を循環させる冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-126256号公報
【文献】特開2008-189249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両は、様々な気温や様々な天候などの環境下で走行し得る。また、バッテリ、インバータ、およびモータにおける発熱量は、走行状態に応じて変化し得る。よって、車両では、簡易な構成で、環境や走行状態に応じて、バッテリ、インバータ、およびモータを適切に冷却することが望まれている。
【0005】
簡易な構成で、バッテリ、インバータ、およびモータを適切に冷却することができる冷却システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る冷却システムは、循環流路と、第1の切替弁と、第2の切替弁と、制御部とを備えている。循環流路は、ラジエータ、バッテリ、インバータ、モータ、ラジエータの順に冷却媒体を循環可能に構成される。第1の切替弁は、循環流路において、ラジエータをバイパス可能に構成される。第2の切替弁は、循環流路において、モータをバイパス可能に構成される。制御部は、前記バッテリのバッテリ温度および前記インバータのインバータ温度に基づいて、第1の切替弁および第2の切替弁を制御するように構成される。制御部は、インバータ温度が第1の閾温度未満であり、かつ、バッテリ温度が第2の閾温度未満である場合に、ラジエータをバイパスするように第1の切替弁を制御し、モータを経由するように第2の切替弁を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る冷却システムによれば、簡易な構成で、バッテリ、インバータ、およびモータを適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る冷却システムを備えた車両の一構成例を表す説明図である。
【
図2】
図1に示した切替弁の一動作例を表す表である。
【
図3】
図1に示した冷却システムの一動作例を表す表である。
【
図4A】
図1に示した冷却システムの一動作例を表す説明図である。
【
図4B】
図1に示した冷却システムの他の動作例を表す説明図である。
【
図4C】
図1に示した冷却システムの他の動作例を表す説明図である。
【
図4D】
図1に示した冷却システムの他の動作例を表す説明図である。
【
図4E】
図1に示した冷却システムの他の動作例を表す説明図である。
【
図5】
図1に示した冷却システムにおける動作モードの遷移を表す状態遷移図である。
【
図6】第1の実施の形態の変形例に係る冷却システムを備えた車両の一構成例を表す説明図である。
【
図7】
図6に示した切替弁の一動作例を表す表である。
【
図8】第2の実施の形態に係る冷却システムを備えた車両の一構成例を表す説明図である。
【
図9】
図8に示した冷却システムの一動作例を表す表である。
【
図10A】
図8に示した冷却システムの一動作例を表す説明図である。
【
図10B】
図8に示した冷却システムの他の動作例を表す説明図である。
【
図10C】
図8に示した冷却システムの他の動作例を表す説明図である。
【
図11】
図8に示した冷却システムにおける動作モードの遷移を表す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(3つの切替弁を設ける例)
2.第2の実施の形態(2つの切替弁を設ける例)
【0010】
<1.第1の実施の形態>
[構成例]
図1は、第1の実施の形態に係る冷却システム(冷却システム1)の一構成例を表すものである。この冷却システム1は、車両100に搭載されている。車両100は、ハイブリッド自動車である。車両100は、単一の冷却システム1を用いて、バッテリ、インバータ、およびモータを冷却可能に構成される。
【0011】
図1に示したように、車両100は、循環流路10と、ラジエータ11と、ポンプ12と、バッテリ13と、インバータ14と、モータ15と、エンジン16と、変速機17と、切替弁A,B,Cと、制御部20とを備えている。循環流路10、ポンプ12、切替弁A,B,C、および制御部20は、冷却システム1を構成する。
【0012】
循環流路10は、冷却媒体9を流す流路である。この例では、循環流路10は、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に冷却媒体9を循環可能に構成される。冷却媒体9は、例えば水を用いることができる。循環流路10には、切替弁A,B,Cが設けられている。後述するように、循環流路10は、切替弁Aによりラジエータ11をバイパス可能に構成され、切替弁Bによりモータ15をバイパス可能に構成され、切替弁Cによりバッテリ13をバイパス可能に構成される。
【0013】
ラジエータ11は、車両100の最前部に配置され、循環流路10を流れる冷却媒体9を冷却するように構成される。ラジエータ11は、循環流路10に接続された流入口INおよび流出口OUTを有しており、外気と、流入口INから流出口OUTに向かってラジエータ11の内部に流れる冷却媒体9との間で熱交換を行うことにより、冷却媒体9を冷却することができるようになっている。
【0014】
ポンプ12は、循環流路10に冷却媒体9を循環させる流体機械である。ポンプ12は、循環流路10に接続された流入口INおよび流出口OUTを有しており、流入口INから流れ込む冷却媒体9を流出口OUTから吐き出すように構成される。ポンプ12は、制御部20からの指示に基づいて、動作を行うようになっている。
【0015】
バッテリ13は、例えば車両100の後部に配置され、電力を蓄えるとともに、インバータ14に直流電力Pdcを供給するように構成される。バッテリ13は、循環流路10に接続された流入口INおよび流出口OUTを有し、流入口INから流出口OUTに向かってバッテリ13の内部に流れる冷却媒体9により冷却され、あるいはこの冷却媒体9により暖機されることができるようになっている。バッテリ13は、温度センサ13Tを有している。温度センサ13Tは、バッテリ13の温度(バッテリ温度Tb)を検出し、このバッテリ温度Tbについての情報を制御部20に供給する。バッテリ13は、バッテリ温度Tbがバッテリ13の耐熱温度(例えば45度)を下回るように、冷却システム1により冷却されるようになっている。
【0016】
インバータ14は、バッテリ13から供給された直流電力Pdcに基づいて交流電力Pacを生成し、生成した交流電力Pacをモータ15に供給するように構成される。インバータ14は、循環流路10に接続された流入口INおよび流出口OUTを有し、流入口INから流出口OUTに向かってインバータ14の内部に流れる冷却媒体9により冷却されることができるようになっている。インバータ14は、温度センサ14Tを有している。温度センサ14Tは、インバータ14の温度(インバータ温度Tinv)を検出し、このインバータ温度Tinvについての情報を制御部20に供給する。インバータ14は、インバータ温度Tinvがインバータ14の耐熱温度(例えば45度)を下回るように、冷却システム1により冷却されるようになっている。
【0017】
モータ15は、インバータ14から供給された交流電力Pacに基づいて、機械的エネルギーである駆動力を生成する動力源である。モータ15は、生成した駆動力を変速機17に供給するようになっている。この例では、モータ15は、変速機17の内部に配置され、あるいは変速機17に隣接して配置されている。モータ15は、循環流路10に接続された流入口INおよび流出口OUTを有し、流入口INから流出口OUTに向かってモータ15の内部に流れる冷却媒体9により冷却されることができるようになっている。モータ15は、温度センサ15Tを有している。温度センサ15Tは、モータ15の温度(モータ温度Tm)を検出し、このモータ温度Tmについての情報を制御部20に供給する。モータ15は、モータ温度Tmがモータ15の耐熱温度(例えば200℃)を下回るように、冷却システム1により冷却されるようになっている。
【0018】
エンジン16は、例えばガソリンなどの燃料を燃焼させることにより、機械的エネルギーである駆動力を生成する動力源である。エンジン16は、生成した駆動力を変速機17に供給するようになっている。
【0019】
変速機17は、モータ15から伝達された駆動力およびエンジン16から伝達された駆動力を、その駆動力のトルクや回転数を変更しつつ、車両100の駆動輪に伝達するように構成される。
【0020】
切替弁A,B,Cは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10における、冷却媒体9が流れる流路を切り替え可能に構成される。
【0021】
図2は、切替弁A,B,Cの一動作例を表すものである。
【0022】
切替弁Aは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10において、ラジエータ11をバイパス可能に構成される。切替弁Aは、
図1に示したように、流入口IN1,IN2および流出口OUTを有している。流入口IN1は循環流路10を介してラジエータ11の流出口OUTに接続され、流入口IN2は循環流路10を介してモータ15の流出口OUTに接続され、流出口OUTは循環流路10を介してポンプ12の流入口INに接続される。切替弁Aは、制御部20からの指示に基づいて、流入口IN1から流出口OUTへの流路、および流入口IN2から流出口OUTへの流路のうちの一方を開通させる。切替弁Aが、流入口IN1から流出口OUTへの流路を開通させた場合(
図2における状態S1)には、冷却媒体9がラジエータ11を経由して流れる。また、切替弁Aが、流入口IN2から流出口OUTへの流路を開通させた場合(
図2における状態S2)には、冷却媒体9がラジエータ11をバイパスして流れるようになっている。
【0023】
切替弁Bは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10において、モータ15をバイパス可能に構成される。切替弁Bは、
図1に示したように、流入口INおよび流出口OUT1,OUT2を有している。流入口INは循環流路10を介してインバータ14の流出口OUTに接続され、流出口OUT1は循環流路10を介してモータ15の流入口INに接続され、流出口OUT2は循環流路10を介してラジエータ11の流入口INに接続される。切替弁Bは、制御部20からの指示に基づいて、流入口INから流出口OUT1への流路、および流入口INから流出口OUT2への流路のうちの一方を開通させる。切替弁Bが、流入口INから流出口OUT1への流路を開通させた場合(
図2における状態S1)には、冷却媒体9がモータ15を経由して流れる。また、切替弁Bが、流入口INから流出口OUT2への流路を開通させた場合(
図2における状態S2)には、冷却媒体9がモータ15をバイパスして流れるようになっている。
【0024】
切替弁Cは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10において、バッテリ13をバイパス可能に構成される。切替弁Cは、
図1に示したように、流入口INおよび流出口OUT1,OUT2を有している。流入口INは循環流路10を介してポンプ12の流出口OUTに接続され、流出口OUT1は循環流路10を介してバッテリ13の流入口INに接続され、流出口OUT2は循環流路10を介してインバータ14の流入口INに接続される。切替弁Cは、制御部20からの指示に基づいて、流入口INから流出口OUT1への流路、および流入口INから流出口OUT2への流路のうちの一方を開通させる。切替弁Cが、流入口INから流出口OUT1への流路を開通させた場合(
図2における状態S1)には、冷却媒体9がバッテリ13を経由して流れる。また、切替弁Cが、流入口INから流出口OUT2への流路を開通させた場合(
図2における状態S2)には、冷却媒体9がバッテリ13をバイパスして流れるようになっている。
【0025】
制御部20は、例えば複数の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)を用いて構成される。複数の電子制御ユニットは、例えば、車両100全体の動作を制御する電子制御ユニット、モータ15の動作を制御する電子制御ユニット、エンジン16の動作を制御する電子制御ユニット、変速機17の動作を制御する電子制御ユニット、バッテリ13の動作を制御する電子制御ユニットなどを含む。制御部20は、ポンプ12の動作を制御するとともに、モータ15の温度センサ15Tにより検出されたモータ温度Tm、インバータ14の温度センサ14Tにより検出されたインバータ温度Tinv、およびバッテリ13の温度センサ13Tにより検出されたバッテリ温度Tbに基づいて、切替弁A~Cを制御する機能を有している。
【0026】
ここで、切替弁Aは、本開示における「第1の切替弁」の一具体例に対応する。切替弁Bは、本開示における「第2の切替弁」の一具体例に対応する。切替弁Cは、本開示における「第3の切替弁」の一具体例に対応する。制御部20は、本開示における「制御部」の一具体例に対応する。
【0027】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の冷却システム1の動作および作用について説明する。
【0028】
(全体動作概要)
まず、
図2を参照して、冷却システム1の全体動作概要を説明する。ポンプ12は、循環流路10に冷却媒体9を循環させる。冷却媒体9は、例えば、循環流路10に沿って、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15の順に循環し得る。切替弁Aは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10において、冷却媒体9がラジエータ11を経由して流れ、あるいは冷却媒体9がラジエータ11をバイパスして流れるように、流路を切り替える。切替弁Bは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10において、冷却媒体9がモータ15を経由して流れ、あるいは冷却媒体9がモータ15をバイパスして流れるように、流路を切り替える。切替弁Cは、制御部20からの指示に基づいて、循環流路10において、冷却媒体9がバッテリ13を経由して流れ、あるいは冷却媒体9がバッテリ13をバイパスして流れるように、流路を切り替える。制御部20は、ポンプ12の動作を制御するとともに、モータ15の温度センサ15Tにより検出されたモータ温度Tm、インバータ14の温度センサ14Tにより検出されたインバータ温度Tinv、およびバッテリ13の温度センサ13Tにより検出されたバッテリ温度Tbに基づいて、切替弁A~Cを制御する。
【0029】
(詳細動作)
制御部20は、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、切替弁A~Cを制御する。これにより、冷却システム1は、5つの動作モードM(動作モードM1~M5)で動作することができる。以下に、冷却システム1の動作について詳細に説明する。
【0030】
図3は、冷却システム1における5つの動作モードM1~M5を表すものである。
図4A~4Eは、動作モードM1~M5における動作状態をそれぞれ表すものである。
図4A~4Eにおいて、循環流路10のうちの網掛けされた部分は、冷却媒体9が流れる流路を示す。
【0031】
(動作モードM1)
例えば、寒冷地などにおいて車両100が走行を開始する際、制御部20は、動作モードMを動作モードM1に設定する。この動作モードM1では、冷却システム1は、モータ15を熱源として用いてバッテリ13を暖機する。
【0032】
制御部20は、
図3に示したように、モータ温度Tmが所定の閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、インバータ温度Tinvが所定の閾温度T2未満(この例では40℃未満)であり、バッテリ温度Tbが所定の閾温度T3未満(この例では40℃未満)である場合に、動作モードMを動作モードM1に設定する。
【0033】
動作モードM1では、制御部20は、
図3,4Aに示したように、切替弁Aによりラジエータ11をバイパスさせ(状態S2)、切替弁Bによりモータ15を経由させ(状態S1)、切替弁Cによりバッテリ13を経由させる(状態S1)。これにより、冷却媒体9は、モータ15、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15の順に循環する。その結果、冷却システム1は、モータ15を熱源として用いてバッテリ13を暖機することができる。
【0034】
すなわち、例えば、外気温が低い(例えば-20℃)場合において、車両100が走行を開始する際、モータ温度Tmが低い場合にはモータ15の潤滑油の粘度が高いので燃費が悪化し、また、バッテリ温度Tbが低い場合にはバッテリ13の出力電力が低下し得る。よって、このような場合には、制御部20は、動作モードMを動作モードM1に設定することにより、冷却媒体9を、モータ15、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15の順に循環させる。エンジン16は、動作を開始することにより発熱し、エンジン16で生じた熱がモータ15および変速機17に伝わる。特に、エンジン16の冷却水と変速機17の冷却油との間で熱交換を行う熱交換器を搭載している場合には、エンジン16で生じた熱が効果的に変速機17に伝わり、さらにこの変速機17の内部に設けられたモータ15に伝わる。また、モータ15は、動作を開始することにより発熱する。その結果、モータ温度Tmは上昇する。冷却媒体9は、モータ15に流れることにより温められ、モータ15により温められた冷却媒体9は、バッテリ13に流れることによりバッテリ13を温める。このようにして、冷却システム1は、動作モードM1において、モータ15を熱源として用いて、バッテリ13を暖機することができる。
【0035】
(動作モードM2)
例えば、冷却システム1が動作モードM1で動作している場合において、モータ15がまだ十分に熱くなっていない状態で、バッテリ13が十分に暖機された場合には、制御部20は、動作モードMを動作モードM2に設定する。この動作モードM2では、冷却システム1は、モータ15を熱源として用いて変速機17を暖機するとともに、ラジエータ11を用いてバッテリ13およびインバータ14を冷却する。
【0036】
制御部20は、
図3に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(この例では40℃以上)である場合に、動作モードMを動作モードM2に設定する。
【0037】
動作モードM2では、制御部20は、
図3,4Bに示したように、切替弁Aによりラジエータ11を経由させ(状態S1)、切替弁Bによりモータ15をバイパスさせ(状態S2)、切替弁Cによりバッテリ13を経由させる(状態S1)。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、ラジエータ11の順に循環する。その結果、冷却システム1は、モータ15を熱源として用いて変速機17を暖機するとともに、ラジエータ11を用いてバッテリ13およびインバータ14を冷却することができる。
【0038】
すなわち、モータ温度Tmが閾温度T1未満(例えば80℃未満)でありモータ15がまだ十分に熱くなっていない場合には、モータ15の潤滑油の粘度が高いので燃費が悪化するおそれがある。同様に、変速機17においても、潤滑油の粘度が高いので燃費が悪化するおそれがある。一方、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(例えば40℃以上)でありバッテリ13は十分に暖機されている場合には、バッテリ13の出力電力の低下は抑えられる。バッテリ13およびインバータ14は、動作を行うことにより発熱するので、バッテリ温度Tbおよびインバータ温度Tinvはそれぞれさらに上昇し得る。よって、制御部20は、動作モードMを動作モードM2に設定することにより、冷却媒体9を、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、ラジエータ11の順に循環させる。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11に流れることにより冷却され、ラジエータ11により冷却された冷却媒体9は、バッテリ13およびインバータ14に流れることにより、バッテリ13およびインバータ14を冷却することができる。一方、冷却媒体9はモータ15には流れないので、モータ15で生じた熱が変速機17に伝わることにより、変速機17を暖機することができる。このようにして、冷却システム1は、動作モードM2において、モータ15を熱源として用いて変速機17を暖機するとともに、ラジエータ11を用いてバッテリ13およびインバータ14を選択的に冷却することができる。
【0039】
(動作モードM3)
例えば、冷却システム1が動作モードM2で動作している場合において、モータ15が十分に熱くなった場合には、制御部20は、動作モードMを動作モードM3に設定する。この動作モードM3では、冷却システム1は、ラジエータ11を用いて、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却する。
【0040】
制御部20は、
図3に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1以上(この例では80℃以上)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(この例では40℃以上)である場合に、動作モードMを動作モードM3に設定する。
【0041】
動作モードM3では、制御部20は、
図3,4Cに示したように、切替弁Aによりラジエータ11を経由させ(状態S1)、切替弁Bによりモータ15を経由させ(状態S1)、切替弁Cによりバッテリ13を経由させる(状態S1)。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に循環する。その結果、冷却システム1は、ラジエータ11を用いて、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却することができる。
【0042】
すなわち、モータ温度Tmが閾温度T1以上(例えば80℃以上)でありモータ15は十分に熱くなっている場合には、潤滑油の粘度が低いので燃費の悪化を防ぐことができる。同様に、変速機17も十分に熱くなっているので、潤滑油の粘度が低いので燃費の悪化を防ぐことができる。また、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(例えば40℃以上)でありバッテリ13が十分に暖機されている場合には、バッテリ13の出力電力の低下は抑えられる。バッテリ13、インバータ14、およびモータ15は、動作を行うことにより発熱するので、バッテリ温度Tb、インバータ温度Tinv、およびモータ温度Tmはそれぞれさらに上昇し得る。よって、制御部20は、動作モードMを動作モードM3に設定することにより、冷却媒体9を、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に循環させる。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11に流れることにより冷却され、ラジエータ11により冷却された冷却媒体9は、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15に流れることにより、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却することができる。このようにして、冷却システム1は、動作モードM3において、ラジエータ11を用いて、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却することができる。
【0043】
(動作モードM4)
例えば、冷却システム1が動作モードM1で動作している場合において、バッテリ13がまだ十分に暖機されていない状態で、モータ15が十分に熱くなった場合には、制御部20は、動作モードMを動作モードM4に設定する。この動作モードM4では、冷却システム1は、ラジエータ11を用いてインバータ14およびモータ15を冷却する。
【0044】
制御部20は、
図3に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1以上(この例では80℃以上)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)である場合に、動作モードMを動作モードM4に設定する。
【0045】
動作モードM4では、制御部20は、
図3,4Dに示したように、切替弁Aによりラジエータ11を経由させ(状態S1)、切替弁Bによりモータ15を経由させ(状態S1)、切替弁Cによりバッテリ13をバイパスさせる(状態S2)。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11、ポンプ12、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に循環する。その結果、冷却システム1は、ラジエータ11を用いてインバータ14およびモータ15を冷却する。
【0046】
すなわち、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(例えば40℃未満)でありバッテリ13はまだ十分に暖機されていない場合には、バッテリ13の出力電力が低下し得る。一方、モータ温度Tmが閾温度T1以上(例えば80℃以上)でありモータ15は十分に熱くなっている場合には、潤滑油の粘度が低いので燃費の悪化を防ぐことができる。インバータ14およびモータ15は、動作を行うことにより発熱するので、インバータ温度Tinvおよびモータ温度Tmはそれぞれさらに上昇し得る。よって、制御部20は、動作モードMを動作モードM4に設定することにより、冷却媒体9を、ラジエータ11、ポンプ12、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に循環させる。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11に流れることにより冷却され、ラジエータ11により冷却された冷却媒体9は、インバータ14およびモータ15に流れることにより、インバータ14およびモータ15を冷却することができる。一方、冷却媒体9はバッテリ13には流れないので、バッテリ13が動作を行うことにより発熱し、バッテリ温度Tbは上昇することができる。このようにして、冷却システム1は、動作モードM4において、ラジエータ11を用いてインバータ14およびモータ15を選択的に冷却することができる。
【0047】
(動作モードM5)
例えば、冷却システム1が動作モードM1で動作している場合において、バッテリ13がまだ十分に暖機されておらず、モータ15が十分に熱くなっていない状態で、インバータ14が十分に温かくなった場合には、制御部20は、動作モードMを動作モードM5に設定する。この動作モードM5では、冷却システム1は、ラジエータ11を用いてインバータ14を冷却する。
【0048】
制御部20は、
図3に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、インバータ温度Tinvが閾温度T2以上(この例では40℃以上)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)である場合に、動作モードMを動作モードM5に設定する。
【0049】
動作モードM5では、制御部20は、
図3,4Eに示したように、切替弁Aによりラジエータ11を経由させ(状態S1)、切替弁Bによりモータ15をバイパスさせ(状態S2)、切替弁Cによりバッテリ13をバイパスさせる(状態S2)。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11、ポンプ12、インバータ14、ラジエータ11の順に循環する。その結果、冷却システム1は、ラジエータ11を用いてインバータ14を冷却する。
【0050】
すなわち、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(例えば40℃未満)でありバッテリ13はまだ十分に暖機されていない場合には、バッテリ13の出力電力が低下し得る。また、モータ温度Tmが閾温度T1未満(例えば80℃未満)でありモータ15がまだ十分に熱くなっていない場合には、モータ15の潤滑油の粘度が高いので燃費が悪化するおそれがある。一方、インバータ温度Tinvは閾温度T2以上(例えば40℃以上)であり、インバータ14は動作を行うことにより発熱するので、インバータ温度Tinvはさらに上昇し得る。よって、制御部20は、動作モードMを動作モードM5に設定することにより、冷却媒体9を、ラジエータ11、ポンプ12、インバータ14、ラジエータ11の順に循環させる。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11に流れることにより冷却され、ラジエータ11により冷却された冷却媒体9は、インバータ14に流れることにより、インバータ14を冷却することができる。一方、冷却媒体9はバッテリ13およびモータ15には流れないので、バッテリ13およびモータ15が動作を行うことにより発熱し、バッテリ温度Tbおよびモータ温度Tmは上昇することができる。このようにして、冷却システム1は、動作モードM5において、ラジエータ11を用いてインバータ14を選択的に冷却することができる。
【0051】
ここで、動作モードM1は、本開示における「第1のモード」の一具体例に対応する。動作モードM4は、本開示における「第2のモード」の一具体例に対応する。動作モードM5は、本開示における「第3のモード」の一具体例に対応する。閾温度T1は、本開示における「第3の閾温度」の一具体例に対応する。閾温度T2は、本開示における「第1の閾温度」の一具体例に対応する。閾温度T3は、本開示における「第2の閾温度」の一具体例に対応する。
【0052】
(切替弁A~Cの動作について)
切替弁A~Cは、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、制御部20により制御される。
【0053】
具体的には、制御部20は、
図3に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、インバータ温度Tinvが閾温度T2未満(この例では40℃未満)であり、かつ、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)である場合に、切替弁Aによりラジエータ11をバイパスさせる(状態S2)。
【0054】
また、制御部20は、
図3に示したように、以下に示す第1の条件および第2の条件のうちの少なくとも一方を満たした場合に、切替弁Bによりモータ15を経由させる(状態S1)。第1の条件は、モータ温度Tmが閾温度T1以上(この例では80℃以上)であることである。第2の条件は、インバータ温度Tinvが閾温度T2未満(この例では40℃未満)であり、かつ、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)であることである。
【0055】
また、制御部20は、
図3に示したように、以下に示す第1の条件および第2の条件のうちの一方を満たした場合に、切替弁Cによりバッテリ13を経由させる(状態S1)。第1の条件は、モータ温度Tmが閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、インバータ温度Tinvが閾温度T2未満(この例では40℃未満)であり、かつ、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)であることである。第2の条件は、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(この例では40℃以上)であることである。
【0056】
このようにして、切替弁A~Cは、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、制御部20により制御される。これにより、冷却システム1は、上述した5つの動作モードM1~M5で動作する。
【0057】
(動作モードMの遷移について)
図5は、冷却システム1における動作モードMの遷移を表すものである。例えば、寒冷地などにおいて車両100が走行を開始する際、制御部20は、動作モードMを動作モードM1に設定する。
【0058】
例えば、冷却システム1が動作モードM1で動作している場合において、モータ15がまだ十分に熱くなっていない状態で、バッテリ13が十分に暖機された場合には、動作モードMは、動作モードM1から動作モードM2に遷移する。そして、例えば、冷却システム1が動作モードM2で動作している場合において、モータ15が十分に熱くなった場合には、動作モードMは、動作モードM2から動作モードM3に遷移する。そして、例えば、冷却システム1が動作モードM3で動作している場合において、モータ15が十分に冷却された場合には、動作モードMは、動作モードM3から動作モードM2に遷移する。
【0059】
例えば、冷却システム1が動作モードM1で動作している場合において、バッテリ13がまだ十分に暖機されていない状態で、モータ15が十分に熱くなった場合には、動作モードMは、動作モードM1から動作モードM4に遷移する。そして、例えば、冷却システム1が動作モードM4で動作している場合において、モータ15が十分に冷却された場合には、動作モードM4から動作モードM5に遷移する。そして、例えば、冷却システム1が動作モードM5で動作している場合において、モータ15が十分に熱くなった場合には、動作モードMは、動作モードM5から動作モードM4に遷移する。
【0060】
例えば、冷却システム1が動作モードM1で動作している場合において、バッテリ13がまだ十分に暖機されておらず、モータ15が十分に熱くなっていない状態で、インバータ14が十分に温かくなった場合には、動作モードMは、動作モードM1から動作モードM5に遷移する。
【0061】
例えば、冷却システム1が動作モードM4で動作している場合において、バッテリ13が十分に温まった場合には、動作モードMは、動作モードM4から動作モードM3に遷移する。
【0062】
例えば、冷却システム1が動作モードM5で動作している場合において、バッテリ13が十分に温まった場合には、動作モードMは、動作モードM5から動作モードM2に遷移する。
【0063】
このように、冷却システム1では、単一の循環流路10を用いて、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却可能に構成した。これにより、冷却システム1では、例えば、バッテリ13を冷却するシステム、インバータ14を冷却するシステム、モータ15を冷却するシステムを、個別に準備する場合に比べて、冷却システム1の構成をシンプルにすることができる。
【0064】
また、冷却システム1では、循環流路10において、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に冷却媒体9を循環可能に構成したので、バッテリ13、インバータ14、モータ15を効果的に冷却することができる。特に、冷却システム1では、ラジエータ11から始まる一巡流路において、耐熱温度が最も高いモータ15を、バッテリ13およびインバータ14の下流に配置した。これにより、例えば、バッテリ13、インバータ14、モータ15をともに冷却したい場合(
図4C)において、ラジエータ11により冷却された冷却媒体9は、いち早くバッテリ13やインバータ14に供給される。これにより、バッテリ13やインバータ14を効果的に冷却することができる。また、冷却システム1では、バッテリ13よりも耐熱温度が高いインバータ14を、バッテリ13の下流に配置した。これにより、例えばバッテリ13およびインバータ14を冷却したい場合(
図4B)において、同様に、ラジエータ11により冷却された冷却媒体9は、インバータ14より前にバッテリ13に供給されるので、バッテリ13を効果的に冷却することができる。
【0065】
また、冷却システム1では、循環流路10に3つの切替弁A~Cを設けるようにしたので、これらの切替弁A~Cを用いて複数の動作モードM(この例では動作モードM1~M5)を設定できるため、環境や走行状態に応じて、バッテリ、インバータ、およびモータを適切に冷却することができる。具体的には、例えば、動作モードM1(
図4A)では、寒冷地などにおいて車両100が走行を開始する際、モータ15を熱源として用いてバッテリ13を暖機することができる。また、例えば、動作モードM2(
図4B)では、バッテリ13およびインバータ14を選択して冷却することができる。また、例えば、動作モードM3(
図4C)では、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却することができる。また、例えば、動作モードM4(
図4D)では、インバータ14およびモータ15を選択して冷却することができる。また、例えば、動作モードM5(
図4E)では、インバータ14を選択して冷却することができる。
【0066】
[効果]
以上のように本実施の形態では、単一の循環流路を用いて、バッテリ、インバータ、およびモータを冷却可能に構成したので、冷却システムの構成をシンプルにすることができる。
【0067】
本実施の形態では、循環流路において、ラジエータ、ポンプ、バッテリ、インバータ、モータ、ラジエータの順に冷却媒体を循環可能に構成したので、バッテリ、インバータ、モータを効果的に冷却することができる。
【0068】
本実施の形態では、循環流路に3つの切替弁を設けるようにしたので、環境や走行状態に応じて、バッテリ、インバータ、およびモータを適切に冷却することができる。
【0069】
[変形例]
上記実施の形態では、
図6に示した位置に、切替弁A,B,Cを設けたがこれに限定されるものではない。例えば、切替弁Aは、ラジエータ11をバイパス可能であれば、どのような位置に設けてもよいし、切替弁Bは、モータ15をバイパス可能であれば、どのような位置に設けてもよいし、切替弁Cは、バッテリ13をバイパス可能であれば、どのような位置に設けてもよい。以下に、切替弁Cを例に挙げて、詳細に説明する。
【0070】
図6は、本変形例に係る車両100Aの一構成例を表すものである。車両100Aは、切替弁CCと、制御部20Aとを備えている。循環流路10、ポンプ12、切替弁A,B,CC、および制御部20Aは、冷却システム1Aを構成する。
図7は、切替弁A,B,CCの一動作例を表すものである。切替弁CCは、制御部20Aからの指示に基づいて、循環流路10において、バッテリ13をバイパス可能に構成される。切替弁CCは、流入口IN1,IN2および流出口OUTを有している。流入口IN1は循環流路10を介してバッテリ13の流出口OUTに接続され、流入口IN2は循環流路10を介してポンプ12の流出口OUTに接続され、流出口OUTは循環流路10を介してインバータ14の流入口INに接続される。
図7に示すように、切替弁CCは、制御部20Aからの指示に基づいて、流入口IN1から流出口OUTへの流路、および流入口IN2から流出口OUTへの流路のうちの一方を開通させる。切替弁CCが、流入口IN1から流出口OUTへの流路を開通させた場合には、冷却媒体9がバッテリ13を経由して流れる(状態S1)。また、切替弁CCが、流入口IN2から流出口OUTへの流路を開通させた場合には、冷却媒体9がバッテリ13をバイパスして流れるようになっている(状態S2)。制御部20Aは、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、切替弁A,B,CCを制御する機能を有している。
【0071】
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る冷却システム2について説明する。本実施の形態は、循環流路10に2つの切替弁A,Bを設けたものである。なお、上記第1の実施の形態に係る冷却システム2と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0072】
図8は、第2の実施の形態に係る冷却システム2の一構成例を表すものである。この冷却システム2は、車両200に搭載されている。車両200は、2つの切替弁A,Bと、制御部30とを備えている。すなわち、上記第1の実施の形態に係る冷却システム1では、循環流路10に3つの切替弁A~Cを設けたが、本実施の形態に係る冷却システム2では、切替弁Cを省いている。循環流路10、ポンプ12、切替弁A,B、および制御部30は、冷却システム2を構成する。
【0073】
切替弁Aは、制御部30からの指示に基づいて、循環流路10において、ラジエータ11をバイパス可能に構成される。切替弁Bは、制御部30からの指示に基づいて、循環流路10において、モータ15をバイパス可能に構成される。切替弁A,Bの動作は、上記第1の実施の形態の場合(
図2)と同様である。
【0074】
制御部30は、上記第1の実施の形態に係る制御部20と同様に、ポンプ12の動作を制御するとともに、モータ15の温度センサ15Tにより検出されたモータ温度Tm、インバータ14の温度センサ14Tにより検出されたインバータ温度Tinv、およびバッテリ13の温度センサ13Tにより検出されたバッテリ温度Tbに基づいて、切替弁A,Bを制御する機能を有している。
【0075】
冷却システム2は、制御部30が、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、切替弁A,Bを制御することにより、3つの動作モードM(動作モードM11~M13)で動作することができる。
【0076】
図9は、冷却システム2における3つの動作モードM11~M13を表すものである。
図10A~10Cは、動作モードM11~M13における動作状態をそれぞれ表すものである。
【0077】
(動作モードM11)
例えば、寒冷地などにおいて車両200が走行を開始する際、制御部30は、動作モードMを動作モードM11に設定する。この動作モードM11では、冷却システム2は、モータ15を熱源として用いてバッテリ13を暖機する。
【0078】
制御部30は、
図9に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、インバータ温度Tinvが閾温度T2未満(この例では40℃未満)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)である場合に、動作モードMを動作モードM11に設定する。
【0079】
動作モードM11では、制御部30は、
図9,10Aに示したように、切替弁Aによりラジエータ11をバイパスさせ(状態S2)、切替弁Bによりモータ15を経由させる(状態S1)。これにより、冷却媒体9は、モータ15、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15の順に循環する。その結果、冷却システム2は、上記第1の実施の形態の場合(
図4A)と同様に、モータ15を熱源として用いてバッテリ13を暖機することができる。
【0080】
(動作モードM12)
例えば、冷却システム2が動作モードM11で動作している場合において、モータ15がまだ十分に熱くなっていない状態で、バッテリ13が十分に暖機された場合には、制御部30は、動作モードMを動作モードM12に設定する。この動作モードM12では、冷却システム2は、モータ15を熱源として用いて変速機17を暖機するとともに、ラジエータ11を用いてバッテリ13およびインバータ14を冷却する。
【0081】
制御部30は、
図9に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1未満(この例では80℃未満)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(この例では40℃以上)である場合に、動作モードMを動作モードM12に設定する。
【0082】
動作モードM12では、制御部30は、
図9,10Bに示したように、切替弁Aによりラジエータ11を経由させ(状態S1)、切替弁Bによりモータ15をバイパスさせる(状態S2)。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、ラジエータ11の順に循環する。その結果、冷却システム2は、上記第1の実施の形態の場合(
図4B)と同様に、モータ15を熱源として用いて変速機17を暖機するとともに、ラジエータ11を用いてバッテリ13およびインバータ14を冷却することができる。
【0083】
(動作モードM13)
例えば、冷却システム2が動作モードM12で動作している場合において、モータ15が十分に熱くなった場合には、制御部30は、動作モードMを動作モードM13に設定する。この動作モードM3では、冷却システム2は、ラジエータ11を用いて、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却する。
【0084】
制御部30は、
図9に示したように、モータ温度Tmが閾温度T1以上(この例では80℃以上)であり、バッテリ温度Tbが閾温度T3以上(この例では40℃以上)である場合に、動作モードMを動作モードM13に設定する。
【0085】
動作モードM13では、制御部30は、
図9,10Cに示したように、切替弁Aによりラジエータ11を経由させ(状態S1)、切替弁Bによりモータ15を経由させる(状態S1)。これにより、冷却媒体9は、ラジエータ11、ポンプ12、バッテリ13、インバータ14、モータ15、ラジエータ11の順に循環する。その結果、冷却システム2は、上記第1の実施の形態の場合(
図4C)と同様に、ラジエータ11を用いて、バッテリ13、インバータ14、およびモータ15を冷却することができる。
【0086】
ここで、動作モードM11は、本開示における「第1のモード」の一具体例に対応する。動作モードM12は、本開示における「第2のモード」の一具体例に対応する。動作モードM13は、本開示における「第3のモード」の一具体例に対応する。
【0087】
(切替弁A,Bの動作について)
切替弁A,Bは、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、制御部30により制御される。
【0088】
具体的には、制御部30は、
図9に示したように、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)である場合に、切替弁Aによりラジエータ11をバイパスさせる(状態S2)。
【0089】
また、制御部30は、
図9に示したように、以下に示す第1の条件および第2の条件のうちの少なくとも一方を満たした場合に、切替弁Bによりモータ15を経由させる(状態S1)。第1の条件は、モータ温度Tmが閾温度T1以上(この例では80℃以上)であることである。第2の条件は、インバータ温度Tinvが閾温度T2未満(この例では40℃未満)であり、かつ、バッテリ温度Tbが閾温度T3未満(この例では40℃未満)であることである。
【0090】
このようにして、切替弁A,Bは、モータ温度Tm、インバータ温度Tinv、およびバッテリ温度Tbに基づいて、制御部30により制御される。これにより、冷却システム2は、上述した3つの動作モードM11~M13で動作する。
【0091】
(動作モードMの遷移について)
図11は、冷却システム2における動作モードMの遷移を表すものである。例えば、寒冷地などにおいて車両200が走行を開始する際、制御部30は、動作モードMを動作モードM11に設定する。例えば、冷却システム2が動作モードM11で動作している場合において、モータ15がまだ十分に熱くなっていない状態で、バッテリ13が十分に暖機された場合には、動作モードMは、動作モードM11から動作モードM12に遷移する。そして、例えば、冷却システム2が動作モードM12で動作している場合において、モータ15が十分に熱くなった場合には、動作モードMは、動作モードM12から動作モードM13に遷移する。そして、例えば、冷却システム2が動作モードM13で動作している場合において、モータ15が十分に冷却された場合には、動作モードMは、動作モードM13から動作モードM12に遷移する。
【0092】
このように、冷却システム2では、循環流路10に2つの切替弁A,Bを設けるようにしたので、上記第1の実施の形態に係る冷却システム1に比べて、切替弁Cを省くことができるとともに、動作モードMの数を少なくすることができるので、冷却システム2の構成をシンプルにすることができる。
【0093】
以上のように本実施の形態では、循環流路に2つの切替弁を設けるようにしたので、冷却システムの構成をシンプルにすることができる。その他の効果は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0094】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0095】
例えば、上記実施の形態等では、モータ温度Tmに係る閾温度T1を80℃にし、インバータ温度Tinvに係る閾温度T2を40℃にし、バッテリ温度Tbに係る閾温度T3を40℃にしたが、これに限定されるものではなく、閾温度を適宜設定することができる。また、この例では、閾温度T2と閾温度T3とを互いに等しくしたが、これに限定されるものではなく、互いに異なっていてもよい。
【0096】
また、例えば、上記実施の形態では、例えば、モータ温度Tmが閾温度T1以上(Tm≧T1)であるか、または閾温度T1未満(Tm<T1)であるかを検出したが、これに限定されるものではなく、モータ温度Tmが閾温度T1より高い(Tm>T1)か、または閾温度T1以下(Tm≦T1)であるかを検出してもよい。インバータ温度Tinvについても同様であり、バッテリ温度Tbについても同様である。
【0097】
また、例えば、上記の実施の形態等では、本技術をハイブリッド自動車に適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、本技術を電気自動車に適用してもよい。
【0098】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,2…冷却システム、10…循環流路、11…ラジエータ、12…ポンプ、13…バッテリ、13T…温度センサ、14…インバータ、14T…温度センサ、15…モータ、15T…温度センサ、16…エンジン、17…変速機、20,20A,30…制御部、100,100A,200…車両、A,B,C,CC…切替弁、M1~M5,M11~M13…動作モード、Pac…交流電力、Pdc…直流電力、S1,S2…状態、Tb…バッテリ温度、Tinv…インバータ温度、Tm…モータ温度、T1~T3…閾温度。