(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20221209BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20221209BHJP
C01G 9/02 20060101ALI20221209BHJP
C01G 23/047 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/58
C01G9/02 A
C01G23/047
(21)【出願番号】P 2018229936
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-157638(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051600(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091539(WO,A1)
【文献】特開2012-244062(JP,A)
【文献】特開2014-236175(JP,A)
【文献】特開2002-363379(JP,A)
【文献】特開2016-027620(JP,A)
【文献】特開2009-081235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0190400(US,A1)
【文献】中国実用新案第205846012(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
F21S 2/00
F21V 8/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記発光素子上に配置された透光部材と、
前記基板上において前記透光部材を取り囲むように配置され、前記透光部材の側面を覆う被覆体と、を有し、
前記被覆体は、前記被覆体内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、
前記複数の金属酸化物粒子は、酸素欠損によってバンドギャップが低下する性質を有し、
前記粒子群における前記被覆体の側面の近傍に分散された
前記複数の金属酸化物粒子は、各粒子内において、他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記被覆体は、前記複数の金属酸化物粒子を担持し、可視光及び紫外光を透過させる1つの樹脂マトリクスを有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記複数の金属酸化物粒子は、前記被覆体内において均一な密度で分散されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の金属酸化物粒子は、前記被覆体内において前記被覆体の上面から前記基板に向かって徐々に密度が高くなるように分散されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記被覆体内における前記被覆体の側面の近傍の第1の領域に分散された
前記複数の金属酸化物粒子における可視光の吸収率は、前記被覆体の前記第1の領域よりも内側の第2の領域に分散された
前記複数の金属酸化物粒子における可視光の吸収率よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記被覆体の前記第1の領域における前記複数の金属酸化物粒子を担持する樹脂マトリクスと、前記被覆体の前記第2の領域における前記複数の金属酸化物粒子を担持する樹脂マトリクスとが、連続して形成されている事を特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記
複数の金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項8】
前記複数の金属酸化物粒子は、前記被覆体内において、5~70wt%の範囲内で分散されていることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記粒子群は、前記複数の金属酸化物粒子と、前記複数の金属酸化物粒子を紫外線による変質から保護する被覆膜と、を有することを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項10】
前記他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有する前記複数の金属酸化物粒子は、前記被覆体の側面から20μm以下の深さの範囲内の領域に分散されていることを特徴とする請求項
7に記載の発光装置。
【請求項11】
モジュール基板及び前記モジュール基板上に並置された複数の発光装置を含み、
前記複数の発光装置の各々は、
個別基板と、
前記個別基板上に配置された発光素子と、
前記発光素子上に配置された透光部材と、
前記個別基板上において前記透光部材を取り囲むように配置され、前記透光部材の側面を覆う被覆体と、を有し、
前記被覆体は、光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、
前記複数の金属酸化物粒子は、酸素欠損によってバンドギャップが低下する性質を有し、
前記粒子群における前記被覆体の側面の近傍に分散された
前記複数の金属酸化物粒子は、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴とする発光装置モジュール。
【請求項12】
前記被覆体は、側面に複数の凹凸を有することを特徴とする請求項11に記載の発光装置モジュール。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記基板上において前記発光素子を取り囲むように配置され、前記発光素子の側面を覆う被覆体と、を有し、
前記被覆体は、光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、
前記複数の金属酸化物粒子は、酸素欠損によってバンドギャップが低下する性質を有し、
前記粒子群における前記被覆体の側面の近傍に分散された
前記複数の金属酸化物粒子は、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴とする発光装置。
【請求項14】
前記各粒子内における前記他の部分よりもバンドギャップが小さい部分の割合は、前記被覆体の側面の近傍に近づくにつれて増加する請求項1乃至13のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項15】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記基板上において前記発光素子を取り囲むように配置され、前記発光素子の側面を覆う被覆体と、を有し、
前記被覆体は、光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、
前記複数の金属酸化物粒子は、酸素欠損によってバンドギャップが低下する性質を有し、
前記被覆体は、前記被覆体の側面に
、前記複数の金属酸化物粒子に酸素欠損が生じるようにレーザ光が照射された領域を有することを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの発光素子を含む発光装置及び複数の発光装置を含むモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の波長(発光色)を有する光を放出する発光素子と、当該光源からの光の波長を変換する波長変換体とを組み合わせた発光装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置には、高出力であることのみならず、明暗の境界が明確であることが求められる場合がある。この場合、発光装置は、特定の領域から高出力の光を出射するように、かつ、その他の領域からは光を出射しないように構成されていることが求められる。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、単純な構成で高出力かつ側面からの迷光の出射が抑制された発光装置及び発光装置モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による発光装置は、基板と、基板上に配置された発光素子と、発光素子上に配置された透光部材と、基板上において透光部材を取り囲むように配置され、透光部材の側面を覆う被覆体と、を有し、被覆体は、被覆体内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、粒子群における被覆体の側面の近傍に分散された金属酸化物粒子は、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明による発光装置モジュールは、モジュール基板及びモジュール基板上に並置された複数の発光装置を含み、複数の発光装置の各々は、個別基板と、個別基板上に配置された発光素子と、発光素子上に配置された透光部材と、個別基板上において透光部材を取り囲むように配置され、透光部材の側面を覆う被覆体と、を有し、被覆体は、光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、粒子群における被覆体の側面の近傍に分散された金属酸化物粒子は、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明による発光装置は、基板と、基板上に配置された発光素子と、基板上において発光素子を取り囲むように配置され、発光素子の側面を覆う被覆体と、を有し、被覆体は、被覆体内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、粒子群における被覆体の側面の近傍に分散された金属酸化物粒子は、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明による発光装置は、基板と、基板上に配置された発光素子と、基板上において発光素子を取り囲むように配置され、発光素子の側面を覆う被覆体と、を有し、被覆体は、被覆体内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群を有し、被覆体は、被覆体の側面にレーザ光が照射された領域を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1C】実施例1に係る発光装置の拡大断面図である。
【
図1D】実施例1に係る発光装置における被覆体内の粒子の断面図である。
【
図2A】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2B】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2C】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図3】実施例1に係る発光装置内の光の進路を模式的に示す図である。
【
図4】実施例1に係る発光装置からの光出力を示す図である。
【
図5A】実施例1の変形例1に係る発光装置の断面図である。
【
図5B】実施例1の変形例2に係る発光装置の断面図である。
【
図5C】実施例1の変形例3に係る発光装置の断面図である。
【
図5D】実施例1の変形例4に係る発光装置の断面図である。
【
図5E】実施例1の変形例5に係る発光装置の断面図である。
【
図6A】実施例2に係る発光装置モジュールの上面図である。
【
図6B】実施例2に係る発光装置モジュールの断面図である。
【
図6C】実施例2に係る発光装置における被覆体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1Aは、実施例1に係る発光装置10の断面図である。
図1Bは、発光装置10の模式的な上面図である。
図1Aは、
図1Bの1A-1A線に沿った断面図である。また、
図1Cは、
図1Aの破線で囲まれた部分Aを拡大して示す拡大断面図である。
図1A乃至
図1Cを用いて、発光装置10の構成について説明する。
【0013】
発光装置10は、基板11と、基板11上に載置された発光素子12と、接合部材13を介して発光素子12に接合された透光部材14とを有する。本実施例においては、発光素子12は、その底面が基板11の上面上に配置されている。また、接合部材13は、発光素子12の上面に接している。また、透光部材14は、その底面が接合部材13の上面に接している。
【0014】
また、発光装置10は、基板11上に形成され、発光素子12、接合部材13及び透光部材14の各々の側面を覆う被覆体15を有する。被覆体15は、外部に露出する露出面として、端部において透光部材14に接する上面S1と、端部において基板11に接する側面(外側側面)S2を有する。
【0015】
本実施例においては、被覆体15は、透光部材14を取り囲むように環状にかつ筒状に形成されている。被覆体15の上面S1は、透光部材14の上面に接する上端面である。また、被覆体15の側面S2は、被覆体15における基板11から基板11に垂直な方向に沿って延びる外周面である。
【0016】
以下、発光装置10の詳細な構成について説明する。まず、本実施例においては、基板11は、発光素子12の載置面を有し、発光素子12を実装する実装基板である。また、基板11は、当該載置面に形成されかつ発光素子12に接続された第1の配線及び第2の配線を有する。また、基板11は、当該載置面とは反対側の面(裏面)に形成され、第1の配線及び第2の配線にそれぞれ電気的に接続された第1の接続電極及び第2の接続電極を有する。
【0017】
発光素子12は、例えば、発光ダイオードなどの半導体発光素子である。本実施例においては、発光素子12は、窒化物系半導体からなる半導体層(図示せず)を有する。発光素子12は、例えば、420~470nmの波長の光(以下、青色光と称する場合がある)を放出する。
【0018】
発光素子12は、例えば、発光層を含む半導体層と、当該半導体層を支持する支持基板とを有する。支持基板は、例えばシリコン基板からなる。また、発光素子12は、基板11の当該第1及び第2の配線にそれぞれ接続された第1及び第2の電極を有する。
【0019】
例えば、発光素子12は、支持基板、当該支持基板の第1の主面上に形成された半導体層、当該支持基板の第1の主面上に形成された第1の電極、及び当該支持基板の当該第1の主面とは反対側の第2の主面上に形成された第2の電極を有する。この場合、発光素子12は、当該第2の主面から基板11の載置面に載置される。また、当該第2の電極は、導電性接着材(導電性接合部材とも称される)を介して基板11の第2の配線に接続されている。また、当該第1の電極は、金ワイヤを介して基板11の第1の配線に接続されている。
【0020】
なお、発光素子12の構成はこれに限定されない。例えば、発光素子12としては、半導体層の結晶成長に用いられる成長基板を有していてもよい。この場合、例えば、発光素子12は、成長基板、当該成長基板上に成長された半導体層、当該半導体層上に形成された第1の電極及び第2の電極を有する。また、この場合、発光素子12は、成長基板が基板11に接着(接合)される。発光素子12の第1及び第2の電極は、金ワイヤを介して基板11の第1及び第2の配線に接続される。
【0021】
また、発光素子12の他の構成としては、半導体層が基板11の載置面に載置されていてもよい。この場合、発光素子12は、支持基板(又は成長基板、以下同様)、当該支持基板上に形成された半導体層、及び当該半導体層上に形成された第1及び第2の電極を有する。また、発光素子12の第1及び第2の電極は、導電性接着材(又は導電性接合部材)を介して基板11に接合される(フリップチップ接合ともいう)。この場合、基板11上には半導体層が配置され、半導体層上に支持基板が配置されることとなる。
【0022】
また、本実施例においては、発光素子12は、基板11における発光素子12の実装面に垂直な方向から見たときに矩形(本実施例においては正方形)の上面形状を有する場合について説明する。しかし、発光素子12の上面形状は、矩形に限定されず、例えば円形状、楕円形状及び長方形状など、種々の形状であってもよい。本実施例においては、発光素子12の上面(例えば半導体層又は支持基板における基板11とは反対側の表面)は、発光素子12の光取り出し面として機能する。
【0023】
接合部材13は、発光素子12から放出された光を透過させる特性を有する。接合部材13は、例えば少なくとも可視光を透過させる。例えば、接合部材13としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、低融点ガラスなどが用いられることができる。本実施例においては、接合部材13はシリコーン樹脂からなる。
【0024】
接合部材13は、発光素子12から放出された光の波長を変換する波長変換体、例えば蛍光体を含んでいてもよい。例えば、当該蛍光体としては、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体、青色光を黄色光に変換する黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体などが用いられることができる。
【0025】
なお、接合部材13の構成はこれに限定されない。例えば、接合部材13は、発光素子12から放出された光、及び波長変換体によって変換された光を透過させる金属酸化物のナノ粒子焼結体から構成されていてもよい。
【0026】
透光部材14は、接合部材13の上面上に配置されている。例えば、透光部材14は、板状の形状を有する。また、透光部材14は、発光素子12から放出された光、及び/又は波長変換体によって変換された光を透過させる特性、例えば少なくとも可視光を透過させる特性を有する。例えば、透光部材14としては、ガラスプレート、サファイアプレート、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)プレートなどを用いることができる。
【0027】
また、透光部材14は、発光素子12から放出された光の波長を変換する波長変換体、例えば蛍光体を含んでいてもよい。例えば、当該蛍光体としては、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体、青色光を黄色光に変換する黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体などを用いることができる。本実施例においては、透光部材14は、蛍光体を含んだYAGプレート(YAG:Ce蛍光体を含む)からなる。
【0028】
なお、透光部材14の構成はこれに限定されない。例えば、透光部材14は、発光素子12から放出された光、及び波長変換体によって変換された光を透過させるアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又は金属酸化物のナノ粒子焼結体から構成されていてもよい。
【0029】
透光部材14の上面は、発光装置10の光取り出し面として機能する。本実施例においては、透光部材14の上面は、発光素子12の上面と同様の形状、例えば矩形の形状を有する。しかし、透光部材14の上面形状は、矩形に限定されず、また、発光素子12の上面形状とは異なる形状であってもよい。また、例えば、透光部材14の側面は、階段状に形成されていてもよいし、上面に対して傾斜していてもよい。
【0030】
なお、透光部材14の上面には、透光性の有機被膜(図示せず)が設けられていてもよい。当該有機被膜としては、例えば、フッ素樹脂を用いた樹脂膜が挙げられる。フッ素樹脂によって透光部材14の上面を被覆することで、光取り出し面への汚れの付着を抑制することができる。従って、発光装置10からの光取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0031】
また、本実施例においては、被覆体16は、発光素子12の側面、接合部材13の側面及び透光部材14の側面の各々を覆いつつ、基板11上に形成されている。また、被覆体15は、外部に露出する露出面として、上面S1及び側面S2を有する。
【0032】
具体的には、本実施例においては、被覆体15の上面S1は、透光部材14の上面(すなわち光取り出し面)の端部から、基板11における発光素子12の載置面に平行な方向に沿って延びる被覆体15の表面部分である。また、被覆体15の外側面S2は、基板11における発光素子12の載置面から、当該載置面に垂直な方向に沿って延びる被覆体15の表面部分である。
【0033】
また、被覆体15は、基板11における発光素子12の載置面に接する底面と、発光素子12の側面、接合部材13の側面及び透光部材14の側面の各々に接する側面(内側側面)と、を有する。
【0034】
なお、本実施例においては、被覆体15が透光部材14の側面の全体に接する場合について説明する。しかし、被覆体15は、透光部材14の側面の一部のみに接していてもよい。例えば、被覆体15は、透光部材14の側面のうち、透光部材14の上面(光取り出し面)に接する端部を含む一部の領域まで(すなわち透光部材14の側面の上方の領域のみ)を覆っていてもよい。
【0035】
次に、
図1C及び
図1Dを用いて、被覆体15の内部構造について説明する。まず、
図1Cに示すように、被覆体15は、被覆体15内に分散された複数の酸化チタン粒子(
図1Cには第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3を示した)を含む粒子群15PTを有する。
【0036】
本実施例においては、被覆体15は、粒子群15PTを分散させる媒質(マトリックス)を含む。当該媒質としては、例えば熱硬化性のシリコーン樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。すなわち、被覆体15は、粒子を含有する樹脂体からなる。また、本実施例においては、当該媒質としての樹脂体は、紫外光及び可視光を透過させる特性を有する。なお、本実施例においては、被覆体15は、発光素子12及び基板11上の配線等を封止する封止体として機能する。
【0037】
また、
図1Dに示すように、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々は、粒子本体P10、P20及びP30と、粒子本体P10、P20及びP30をそれぞれ被覆する被覆膜P11、P21及びP31と、を有している。
【0038】
具体的には、本実施例においては、第1の酸化チタン粒子P1は、粒子本体P10(酸化チタンからなる部分)と、粒子本体P10の表面を被覆して粒子本体P10を保護する被覆膜P11と、を有する。被覆膜P11は、例えば、アルミナ、シリカ、ポリオールなどの有機物からなる膜である。同様に、第2及び第3の酸化チタン粒子P2及びP3の各々は、粒子本体P20及びP30と、粒子本体P20及びP30の表面を被覆する被覆膜P21及びP31と、を有する。また、本実施例においては、被覆膜P11~P31は、粒子本体P10~P30を紫外線による変質から保護する。
【0039】
次に、
図1Dに示すように、粒子群15PTのうち、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々は、各粒子内(各粒子本体P10及びP30内)において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分P00を有する。当該部分P00は、酸化チタンにおける酸素が欠損した部分である。以下においては、部分P00を酸素欠損部と称する。
【0040】
また、
図1Cに示すように、本実施例においては、粒子群15PTは、被覆体15の側面S2から透光部材14に向かって、各粒子内における酸素欠損部P00の密度が低くなるように分散された第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3を含む。なお、図の明確さのため、
図1Cにおいては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3にハッチングを施している。本実施例においては、酸化チタン粒子P1~P3の各々は、ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO
2)からなる。
【0041】
なお、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々内における酸素欠損部P00の密度とは、例えば、各粒子内における酸素欠損部P00が占める割合であり、例えば、各粒子本体P10~P30の表面における酸素欠損部P00の占有面積である。
【0042】
本実施例においては、粒子群15PTのうち、最も側面S2側の領域に分散された第1の酸化チタン粒子P1においては、第1の酸化チタン粒子P1内における酸素欠損部P00の密度が最も高い(第1の密度で酸素欠損部P00を有する)。
【0043】
例えば、第1の酸化チタン粒子P1の酸素欠損部P00は、可視光のエネルギー(詳細には可視光の波長のエネルギー)よりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。例えば、第1の酸化チタン粒子P1における酸素欠損部P00は、発光素子12からの放出光(本実施例においては青色光)及び透光部材13からの出射光(本実施例においては青色光及び黄色光)のエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギー(例えば約1.5eV)を有する。
【0044】
また、粒子群15PTのうち、被覆体15内における最も発光素子12側の領域に分散された第2の酸化チタン粒子P2においては、第2の酸化チタン粒子P2内における酸素欠損部P00の密度が最も低い(第2の密度で酸素欠損部P00を有する)。
【0045】
例えば、第2の酸化チタン粒子P2は、
図1Dに示すように、酸素欠損部P00をほとんど有さない。従って、例えば、第2の酸化チタン粒子P2は、いずれの部分においても(ほぼ全体において)、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する。
【0046】
例えば、第2の酸化チタン粒子P2がルチル型の結晶構造を有する場合、第2の酸化チタン粒子P2は、3.0eVのバンドギャップエネルギーを有する。なお、第2の酸化チタン粒子P2がアナターゼ型の結晶構造を有する場合、第2の酸化チタン粒子P2は、3.2eVのバンドギャップエネルギーを有する。
【0047】
また、粒子群15PTのうち、第1及び第2の酸化チタン粒子P1及びP2間に分散された第3の酸化チタン粒子P3においては、第3の酸化チタン粒子P3内における酸素欠損部P00(例えば1.5eVのバンドギャップエネルギーを有する部分)は、第1の酸化チタン粒子P1と第2の酸化チタン粒子P2との間の密度(第3の密度(第1の密度と第2の密度との間の密度))で、設けられている。
【0048】
なお、酸化チタンの結晶は、酸素欠損によってバンドギャップが小さくなると解されている。より詳細には、酸素欠損によって、酸化チタンの価電子帯と導電帯との間に中間準位が形成される。ここでいうバンドギャップとは、この中間準位と価電子帯又は導電帯との間のエネルギーギャップである。
【0049】
ここで、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3におけるバンドギャップ(各粒子内における局部的なバンドギャップ)について説明する。バンドギャップを有する結晶は、そのバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの波長の光を吸収し、これよりも小さなエネルギーの波長の光を透過させる光学特性を有する。
【0050】
本実施例においては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々における酸素欠損部P00は、可視光の波長に相当するバンドギャップエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。従って、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々は、酸素欠損部P00によって、可視光を吸収する。従って、本実施例においては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、白色の可視光を用いた観察下では、可視光が吸収されるために、黒色又は灰色を呈している。
【0051】
なお、本実施例においては、第2の酸化チタン粒子P2の各々は酸素欠損部P00を有さない(ほとんど有さない)ため、可視光を透過及び散乱させる。従って、本実施例においては、第2の酸化チタン粒子P2の各々は、白色の可視光を用いた観察下では、白色を呈している。
【0052】
例えば、450nmの波長の光、(青色光、大気中)の光のエネルギーは約2.76eVであり、630nmの波長の光(赤色光、大気中)の光のエネルギーは約1.67eVである。従って、1.5eVのバンドギャップエネルギーを有する酸素欠損部P00を含む第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、可視光を吸収する粒子として機能する。一方、酸素欠損部P00を含まない第2の酸化チタン粒子P2は、3.2eVのバンドギャップエネルギーを有するため、可視光を吸収しない散乱反射粒子として機能する。
【0053】
また、本実施例においては、被覆体15における第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3の各々が分散された領域をそれぞれ第1、第2及び第3の領域(又は第1、第2及び第3の粒子層)15A、15B及び15Cとした場合、第1及び第3の領域15A及び15Cは、可視光を吸収する可視光吸収領域(以下、単に吸収領域と称する)15ABとして機能する。一方、第2の領域15Bは、可視光を散乱及び反射させる可視光散乱反射領域(以下、単に散乱反射領域と称する)15SCとして機能する。
【0054】
また、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、被覆体15の側面S2の近傍の領域のみに分散されている。例えば、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、側面S2から20μm以下の厚さ(深さ)の範囲内の領域のみに分散されている。従って、被覆体15は、側面S2の近傍では吸収領域15ABとして機能し、その内部では散乱反射領域15SCとして機能する。
【0055】
また、本実施例においては、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は、被覆体15内(媒質内)において、全体として均一な分散密度で分散されている。しかし、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は、被覆体15の上面S1から基板11に向かって分散密度(含有量)が徐々に高くなるように、分散されていてもよい。例えば、粒子群15PTは、被覆体15における基板11に近い領域(下部領域)においては、上面S1に近い領域(上部領域)よりも高い密度で分散されていてもよい。
【0056】
なお、第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3は、それぞれ被覆膜P11、P21及びP31を有する。これによって、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3に、紫外線による黄変への耐性(耐黄変性)や、耐候性を持たせることができる。しかし、紫外線による黄変への耐性や耐候性を必要としない場合、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は被覆膜P11~P31を有していなくてもよい。
【0057】
【0058】
まず、
図2Aは、発光素子12、接合部材13、透光部材14及び粒子含有樹脂15Pが形成された基板11Pを示す図である。本実施例においては、まず、配線を有する基板11P上に複数の発光素子12を配置して接合する(工程1)。次に、発光素子12上に接合部材13としてシリコーン樹脂を塗布する(工程2)。また、接合部材13上に透光部材14として蛍光体を含むYAGプレートを配置し、接着する(工程3)。
【0059】
続いて、基板11P上における透光部材14間の領域に、粒子含有樹脂15Pとして、第2の酸化チタン粒子P2と同様の酸化チタン粒子P0を含有するシリコーン樹脂を充填する(工程4)。そして、粒子含有樹脂15Pを加熱して硬化させる(工程5)。本実施例においては、酸化チタン粒子P0として、平均粒径が250nm、バンドギャップエネルギーが3.0eVのルチル型の二酸化チタンを用いた。そして、粒子含有樹脂15Pにおける酸化チタン粒子P0の濃度は16wt%とした。
【0060】
図2Bは、粒子含有樹脂15Pの側面S2にレーザ光の照射を行っている際の粒子含有樹脂15Pの基板11を示す図である。まず、粒子含有樹脂15Pを硬化させた後、基板11Pを発光素子12毎、すなわち透光部材14毎に切断して個片化する(工程6)。本実施例においては、個片化された粒子含有樹脂15Pには、基板11に垂直に延びる切断面が形成される。この切断面は、粒子含有樹脂15Pの側面S2となる。
【0061】
そして、基板11を支持しつつ、粒子含有樹脂15Pの側面S2に対し、レーザ光LBを照射する(工程7)。本実施例においては、355nmの波長のレーザ光LBを出射するレーザ光源LZを準備した。また、レーザ光LBを走査しつつ粒子含有樹脂15Pの側面S2に照射する。
【0062】
本実施例においては、φ45μmのビーム径及び50kW/cm2の出力のレーザ光LBを、1000mm/secの速度で移動させつつ、粒子含有樹脂15Pの側面S2に照射した。なお、355nmの波長の光のエネルギーは約3.5eVであり、ルチル型の二酸化チタンのバンドギャップエネルギーは3.0eVである。従って、レーザ光LBのエネルギーは酸化チタン粒子P0のバンドギャップエネルギーよりも大きい。従って、レーザ光LBは、酸化チタン粒子P0に吸収される。
【0063】
これによって、レーザ光LBに照射された酸化チタン粒子P0が変質し、粒子内の酸素原子が脱離する。また、レーザ光LBの照射強度、照射時間及び焦点位置などを調節することで、レーザ光LBは側面S2の近傍の酸化チタン粒子P0のみに照射される。従って、粒子含有樹脂15Pにおける側面S2の近傍で最も酸素欠損の多い酸化チタン粒子が生成され、側面S2から離れるに従ってその酸素欠損の程度が小さい酸化チタン粒子が生成される。
【0064】
これによって、粒子含有樹脂15Pの側面S2の近傍におけるレーザ光LBが比較的強く照射された酸化チタン粒子P0は、高密度で酸素欠損部P00を有する酸化チタン粒子、すなわち第1の酸化チタン粒子P1となる。そして、粒子含有樹脂15Pの側面S2から少し離れた酸化チタン粒子P0は、酸素欠損部P00が比較的少ない第3の酸化チタン粒子P3となる。
【0065】
また、側面S2から所定の距離(レーザ光LBが酸化チタン粒子によって遮光される距離)以上離れると、レーザ照射の影響を受けず、酸化チタン粒子P0は変質しない。従って、例えば発光素子12及び透光部材14の近傍に存在する酸化チタン粒子P0は、酸素欠損部P00をほとんど有しない酸化チタン粒子、すなわち第2の酸化チタン粒子P2となる。
【0066】
このようにして、レーザ照射によって、酸素欠損部P00の密度が徐々に低くなるように分散された複数の酸化チタン粒子(粒子群15PT)を含む被覆体15及びこれを含む発光装置10を製造することができる(
図2C)。
【0067】
なお、レーザ光LBの照射工程(工程7)においては、他の材料、例えば被覆体15の媒質(例えばシリコーン樹脂)、接合部材13及び透光部材14などを変質させないようにレーザ光源LZの出力調節を行うことが好ましい。例えば上記した条件でレーザ光LBを照射することで、他の材料の変質を抑制しつつ、酸化チタン粒子P0のみを変質させることができる。
【0068】
本願の発明者らは、当該条件(及び25~75kW/cm2の範囲内の出力)のレーザ光LBが被覆体15の媒質としてのシリコーン樹脂、接合部材13、及び透光部材14としてのYAGプレートを変質させないことを確認している。なお、本実施例においては、被覆体15の媒質として、355nmの波長の光に対して60%以上の透過率を有するシリコーン樹脂を用いた。
【0069】
なお、発光装置10の製造方法はこれに限定されない。例えば、粒子含有樹脂15Pを塗布し、所定時間静置した後、粒子含有樹脂15Pを加熱することによって酸化チタン粒子P0を沈降させる。これによって、上面S1側の酸化チタン粒子P0の分散密度を低くした被覆体15を形成することもできる。
【0070】
図3は、発光装置10内における光の進路を模式的に示す図である。まず、発光素子12から放出された光のうち、大部分の光は、光L1のように、接合部材13及び透光部材14を通過して透光部材14の上面(光取り出し面)から外部に取り出される。
【0071】
次に、透光部材14の側面から被覆体15の散乱反射領域15SCに進入する光(光L2のような光)は、散乱反射領域15SCによって反射されて透光部材14に戻って来る。そして、光L2のような光は、透光部材14の上面から外部に取り出される。
【0072】
一方、透光部材14の側面から被覆体15に入射した光の一部は、光L3のように、被覆体15内を伝搬し、被覆体15の側面S2に至る場合がある。このような光は、吸収領域15ABに進入し、吸収領域15ABによって吸収される。また、光L3のような光は、吸収領域15ABにおいて完全に吸収されなかった場合でも、十分に減衰される。従って、被覆体15の側面S2から取り出される光はほとんど存在しない。
【0073】
従って、外部に取り出される光の強度の低下を抑制しつつ側面S2からの迷光の出射を抑制し、高いコントラストの光を得ることができる。例えば、被覆体15の側面S2に吸収領域15ABが設けられない場合、被覆体15の側面S2から光L3のような光が取り出されることとなる。この場合、光L3が迷光となり、外部に取り出される光にノイズが重畳される要因となる。
【0074】
具体的には、例えば、発光装置10が照明用途に用いられる場合、発光装置10は、その全体が照明装置の筐体内に収容される。また、発光装置10から取り出された光は、レンズなどの種々の光学系を介して当該照明装置から照明対象の領域(空間)に向けて投光される。従って、光L3のような光は、当該光学系に対して意図しない方向から入射することが想定される。
【0075】
従って、例えば、光L3は、設計上の光取り出し面から取り出される光(例えば光L1及びL2)に対して意図しない強度変化及び強度分布を与える場合がある。これに対し、被覆体15が側面S2の近傍に吸収領域15ABを有することで、光L3のような光が発光装置10から取り出されることが抑制される。
【0076】
図4は、発光装置10からの光出力の分布を示す図である。
図4の横軸は
図1Bの1A-1A線に沿った発光装置10の位置を示し、縦軸は光出力(輝度を最大値で規格化した値)を示している。
【0077】
なお、
図4においては、比較例に係る発光装置100として、被覆体15に代えて第2の酸化チタン粒子P2のみが分散された被覆体を有する発光装置を準備し、発光装置100からの出力の測定結果を発光装置10の測定結果と重ねて破線で示している。また、発光装置10及び100の最大出力値はほぼ同一であった。すなわち、発光装置10は、出力を低下させることなく、高コントラストな発光装置であることがわかる。
【0078】
また、本実施例においては、被覆体15の上面S1においては吸収領域15ABが設けられていない。従って、発光装置10から取り出される光の強度の低下を抑制することができる。例えば、筐体内において反射を繰り返したのち、被覆体15の上面S1に入射した光は、光L1及びL2と同様に外部に取り出されることができる。従って、被覆体15の上面S1、例えば被覆体15の全体に吸収領域15ABを設ける場合に比べ、外部に取り出される光の強度の低下が抑制される。
【0079】
次に、吸収領域15ABを形成する際のレーザ光LBの強度(密度)と側面S2から出射される光の強度の関係について説明する。表1は、異なる強度のレーザ光LBによって吸収領域15ABを形成した際の発光装置10(実施例1)の側面S2からの出射光の強度の測定結果と、発光装置100(比較例、すなわち吸収領域15ABが設けられていない発光装置)の側面S2からの出射光の強度の測定結果と、を示す。
【0080】
【0081】
より具体的には、表1は、測定用のサンプルの各々における、被覆体15の厚み(側面S2から透光部材14までの距離)、レーザ光源LZの出力、側面S2における光強度、及び当該側面S2の光強度の比較例に対する比強度を示す。実施例1-1は、レーザ出力を25kW/cm2に設定して作製した発光装置10のサンプルである。同様に、実施例1-2及び1-3は、それぞれレーザ出力を50及び75kW/cm2に設定して作製した発光装置10のサンプルである。
【0082】
なお、表1に示す側面S2の光強度の数値は、透光部材14から出射された光の単位面積当たりの強度を100に規格化した場合の強度値である。また、比強度の数値は、比較例の発光装置100の側面S2の光強度(本実施例では8.0)を1とした場合の各発光装置10のサンプルの側面S2の強度値である。
【0083】
表1に示すように側面S2の光強度は、レーザ出力を高くするに従って、2.4、2.0、1.7と、弱くなる。同様に、比強度も0.3、0.25、0.22となる。従って、レーザ出力を高くすることで、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3における酸素欠損部P00の密度が増加し、吸収領域15ABにおける光の吸収量が増加することがわかる。また、吸収領域15ABによって側面S2の光強度が約1/4に減少していることがわかる。
【0084】
このように、被覆体15は、発光素子12、接合部材13及び透光部材14から被覆体15に入射した光のほとんどに対しては高い反射性を有し、わずかに存在する被覆体15の側面S2に伝搬した光に対しては吸収性を有する。従って、発光装置10は、光の出力低下を犠牲にすることなく、高い出力の光を出射することができる。
【0085】
また、被覆体15の吸収領域15ABは、レーザ光LBの照射工程(工程7)を加えるだけで、容易に形成することができる。従って、容易に、高出力かつ高コントラストな発光装置10を提供することが可能となる。
【0086】
なお、本実施例においては、粒子群15PTの分散媒質である樹脂体は、一体的に形成されている。すなわち、例えば、被覆体15は、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々を担持し、可視光及び紫外光を透過させる1つの樹脂マトリクスを有する。また、第1~第3の領域15A~15C間の各々には媒質の境界が存在しない。従って、吸収領域15ABを設けた場合でも被覆体15の機械的強度が維持され、また上記したように光学機能も安定する。従って、高品質及び高寿命な被覆体15及び発光装置10となる。
【0087】
また、本実施例においては、粒子群15PTは、被覆体15内において、全体として均一な分散密度を有する。従って、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々は、互いに同程度の範囲内の密度で被覆体15内に分散されている。従って、吸収領域15ABを設けた場合でも被覆体15の全体としての熱膨張係数が均一化され、これによって、被覆体15の機械的強度が維持される。従って、高品質及び高寿命な被覆体15及び発光装置10となる。
【0088】
なお、上記したように、粒子群15PTにおける被覆体15内の分散密度は基板11に向かって徐々に低くなっていてもよい。例えば、基板11側における第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の分散密度を高くし、上面S1側における第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の分散密度を低くした場合には、被覆体15の上面S1の樹脂割れを抑制することができる。
【0089】
より具体的には、例えば、上記した工程4を実行する際に、酸化チタン粒子P0の含有量を32wt%とした粒子含有樹脂15Pを用いて、静置工程(酸化チタン粒子P0を沈降させる工程)を経て被覆体15を形成する。この場合、被覆体15における上面S1の近傍の酸化チタン粒子(第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3)の含有量を16wt%程度とすることができる。この場合、上面S1の近傍における吸収領域15ABでの光吸収特性及び散乱反射領域15SCでの光散乱特性を維持することができ、さらに被覆体15の樹脂割れを防止することが可能となる。
【0090】
なお、被覆体15における基板11の近傍の部分では、粒子群15PTの密度が高い部分が露出されることとなる。しかし、当該被覆体15の側面S2における基板11の近傍の部分は、基板11に接しているため、樹脂割れが生じにくい。
【0091】
また、本実施例においては、被覆体15は、樹脂媒質として、1.4~1.55の範囲内の屈折率を有する熱硬化性のエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂を有する。また、粒子群15PTは、例えば、約2.5の屈折率を有するアナターゼ型の酸化チタン粒子、又は約2.7の屈折率を有するルチル型の酸化チタン粒子を含む。このように、被覆体15内で光を散乱させることを考慮すると、粒子群15PT(特に第2の酸化チタン粒子P2)は、樹脂媒質よりも高い屈折率を有していることが好ましい。
【0092】
また、被覆体15の粒子群15PTにおける第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々の粒径(平均粒径)は、良好な拡散反射を得ることを考慮すると、150~350nmの範囲内であることが好ましい。また、被覆体15内に進入した光(可視光)の波長(例えばシリコーン樹脂の媒質内の波長)に対し、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の平均粒径を1~1/4程度の範囲内とすることで、後方散乱割合が高いミー散乱を生じさせ、極めて良好な拡散反射を得ることができる。これらを考慮して粒子群15PT内の粒子の平均粒径を調節することで、散乱反射領域15SCでの反射率を高めることができる。また、吸収領域15ABにおいても、光が散乱することで光が高確率で粒子に取り込まれて吸収されるため、吸収率を高めることができる。
【0093】
また、被覆体15における粒子群15PTの濃度は、所望の光反射性及び光吸収性を得ることを考慮すると、5~70wt%の範囲内であることが好ましく、製造の容易さ(粒子含有樹脂15Pの塗布の容易さ)や製造コストを考慮すると、8~30wt%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、被覆体15における上記した粒子群15PT及び媒質の構成は一例に過ぎない。
【0094】
また、
図1Dに示したように、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々が被覆膜P11~P31を有すること(すなわち各粒子の形成用に用いる酸化チタン粒子P0が被覆膜を有すること)で、発光装置10の製造時におけるレーザ光LBの照射工程(工程7)において、355nmの波長の高出力レーザを用いて、効果的にかつ安定して各粒子本体P10~P30の表面に酸素欠損を生じさせることができる。従って、被覆体15の側面S2から数μm~20μmの薄い領域のみに安定して吸収領域15ABを形成することができる。
【0095】
また、レーザ光LBの粒子含有樹脂15P内での波長に対して、酸化チタン粒子P0の粒径が略等しい場合は、粒子含有樹脂15P内の領域では酸化チタン粒子P0によって後方散乱割合の大きいミー散乱が生ずる。これによって、レーザ光LBは粒子含有樹脂15Pの側面S2の近傍で散乱反射される。その結果、被覆体15の側面S2の近傍(側面S2から数μm~20μmの薄い領域)のみに均一にレーザ光LBを照射することができ、安定して吸収領域15ABを形成することができる。
【0096】
また、レーザ光LBとして、粒子含有樹脂15P内の酸化チタン粒子P0のバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの波長の光を用いることで、レーザ光LBを酸化チタン粒子P0に吸収させることができる。従って、被覆体15の側面S2から離れた位置へのレーザ光LBの照射が抑制される。従って、被覆体15の側面S2の近傍のみに安定して吸収領域15ABを形成することができる。
【0097】
図5Aは、実施例1の変形例1に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Aは、接合部材13Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、接合部材13Aは、発光素子12の側面の一部を覆っている。すなわち、接合部材13Aは、発光素子12の上面及び側面上に形成されている。本変形例においては、被覆体15は、発光素子12の側面の下方領域においては発光素子12に接し、その上方領域においては接合部材13Aを介して発光素子12を覆っている。
【0098】
発光装置10Aにおいては、被覆体15が発光素子12の側面の上方において発光素子12の側面に接しない部分を有する。このように被覆体15が構成されている場合、発光素子12の側面から放出された光を、接合部材13Aによって導光させ、透光部材14の外縁部に入射させることができる。従って、透光部材14の外縁部から取り出される光を増大させることができる。従って、高コントラストな発光装置10Aとなる。また、発光装置10Aにおいても、被覆体15によって側面S2からの迷光の出射を抑制することができる。
【0099】
図5Bは、実施例1の変形例2に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Bは、接合部材13Bの構成を除いては、発光装置10及び10Aと同様の構成を有する。本変形例においては、接合部材13Bは、発光素子12の側面の全体を覆っている。すなわち、接合部材13Bは、発光素子12の上面及び側面の全体に接している。本変形例においては、被覆体15は、接合部材13Bを介して発光素子12の側面を覆っている。
【0100】
発光装置10Bにおいては、被覆体15が発光素子12の側面に完全に接しない。このように被覆体15が構成されている場合、発光素子12の側面から放出された光のほぼ全てを、接合部材13Bによって透光部材14の外縁部に入射させることができる。従って、透光部材14の外縁部から取り出される光を増大させることができる。従って、高コントラストな発光装置10Bとなる。また、発光装置10Bにおいても、被覆体15によって側面S2からの迷光の出射を抑制することができる。
【0101】
図5Cは、実施例1の変形例3に係る発光装置10Cの断面図である。発光装置10Cは、接合部材13C及び透光部材14Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、透光部材14Aが発光素子12の上面よりも大きな上面を有する。また、接合部材13Cは、発光素子12の側面から透光部材14Aの底面に亘って形成されている。
【0102】
本変形例においては、発光素子12から放出された光は、接合部材13Cを介して透光部材14Aの底面全体に入射した後、透光部材14Aの上面から外部に取り出される。また、被覆体15は、接合部材13Cの側面及び透光部材14Aの側面を覆っている。従って、例えば、発光素子12の側面から放出された光を接合部材13Cによって透光部材14Aの外縁部に入射させることができる。従って、例えば、発光素子12のサイズを変えることなく光取り出し面のサイズを拡大し、かつコントラストの低下が抑制された発光装置10Cを提供することができる。また、発光装置10Cにおいても、被覆体15によって側面S2からの迷光の出射を抑制することができる。
【0103】
図5Dは、実施例1の変形例4に係る発光装置10Dの断面図である。発光装置10Dは、接合部材13D及び透光部材14Bの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、透光部材14Bは、発光素子12の上面よりも小さな上面を有する。また、接合部材13Dは、発光素子12の上面から透光部材14Bの側面に亘って形成されている。
【0104】
本変形例においては、発光素子12から放出された光は、接合部材13Dを介して透光部材14Bの底面及び側面に入射した後、透光部材14Bの上面から外部に取り出される。また、被覆体15は、発光素子12及び接合部材13Dの側面と、透光部材14Bの側面の上方部分を覆っている。従って、例えば、発光素子12のサイズを変えることなく光取り出し面のサイズを縮小し、高出力かつ高コントラストな発光装置10Dを提供することができる。また、発光装置10Dにおいても、被覆体15によって側面S2からの迷光の出射を抑制することができる。
【0105】
図5Eは、実施例1の変形例5に係る発光装置10Eの断面図である。発光装置10Eは、透光部材14を有さない点を除いては発光装置10と同様の構成を有する。発光装置10Eは、基板11と、基板11上に配置された発光素子12と、発光素子12の側面を覆う被覆体16とを有する。
【0106】
被覆体16は、発光素子12の側面を覆う点を除いては、被覆体15と同様の構成を有する。被覆体16は、発光素子12の側面を覆い、外部に露出する露出面として上面S1及び側面S2を有する。また、被覆体16は、被覆体15と同様に、側面S2から発光素子12に向かって各粒子内における酸素欠損部P00の密度が低くなるように層状に分散された複数の酸化チタン粒子(例えば第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3)を含む粒子群16PTを有する。
【0107】
本変形例においては、発光素子12の上面が外部に露出している。この場合、発光素子12からの放出光は、他の媒体を介さずに直接外部に取り出される。発光装置10Eにおいても、被覆体16が粒子群16PTを含むことで、高出力かつ高コントラストな発光装置となる。また、発光装置10Eにおいても、被覆体16によって側面S2からの迷光の出射を抑制することができる。
【0108】
なお、本実施例においては、被覆体15が可視光に対する吸収性を有する吸収領域15AB及び可視光に対して反射性を有する散乱反射領域15SCを有する場合について説明した。しかし、被覆体15の構成はこれに限定されない。例えば、発光素子12は、可視光以外の帯域の光を放出する構成を有していてもよい。この場合、被覆体15の吸収領域15AB及び散乱反射領域15SCは、当該他の波長帯域の光及び/又は波長変換体によってさらに他の波長に変換された光に対し、それぞれ吸収性及び反射性を有していればよい。
【0109】
換言すれば、例えば、発光素子12からの放出光、並びに接合部材13又は透光部材14に含まれる波長変換体からの出射光の波長に応じた光吸収性及び光反射性を有する領域を有するように被覆体15内の粒子及びそのバンドギャップ構成、並びに媒質が調節されていればよい。
【0110】
また、この場合、被覆体15内において効果的に吸収領域15AB及び散乱反射領域15SCを設けることを考慮すると、例えば、粒子群15PTにおける酸化チタン粒子は、発光素子12からの放出光及び/又は接合部材13若しくは透光部材14に含まれる波長変換体からの出射光の被覆体15内の波長に対応する平均粒径を有していることが好ましい。
【0111】
また、被覆体15は、機械的強度を維持させること考慮すると、粒子群15PTの複数の酸化チタン粒子を分散させる一体的に形成された樹脂媒質(例えばシリコーン樹脂)を有していることが好ましい。
【0112】
また、本実施例においては、粒子群15PTが第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3を有する場合について説明したが、粒子群15PTの構成はこれに限定されない。例えば、粒子群15PTは、例えば2種類の酸化チタン粒子P1及びP2のみから構成されていてもよい。
【0113】
この場合、例えば、被覆体15内における被覆体15の側面S2の近傍の第1の領域15Aに分散された第1の酸化チタン粒子P1における酸素欠損部P00の平均密度は、被覆体15の第1の領域15Aの内側の第2の領域15Bに分散された第2の酸化チタン粒子P2における酸素欠損部P00の平均密度よりも大きければよい。また、例えば、第1の領域15Aに分散された第1の酸化チタン粒子P1における可視光の吸収率は、第2の領域16Bに分散された第2の酸化チタン粒子P2における可視光の吸収率よりも大きければよい。
【0114】
また、例えば、被覆体15は、最も側面S2に近い位置に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する部分(酸素欠損部P00)を高密度で有する複数の第1の酸化チタン粒子P1と、第1の酸化チタン粒子P1よりも透光部材14側(又は発光素子12側)に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する部分(酸素欠損部P00)を低密度で有する複数の第2の酸化チタン粒子P2と、を含んでいればよい。
【0115】
また、例えば、粒子群15PTは、少なくとも第1の酸化チタン粒子P1を含んでいればよい。すなわち、粒子群15PTにおける被覆体15の側面S2の近傍において分散された第1の酸化チタン粒子P1は、酸素欠損部P00を有していればよい。
【0116】
また、粒子群15PTにおいて吸収領域15AB及び散乱反射領域15SCを構成する粒子は、酸化チタン粒子に限定されない。例えば、酸化亜鉛(ZnO)は、酸化チタンと同様の性質を有する。例えば、酸化亜鉛のバンドギャップエネルギーは3.37eVであり、可視光を透過する。また、酸化亜鉛は、波長355nmの紫外線(例えばレーザ光LB)を吸収する性質を有する。さらに、酸化亜鉛の屈折率は2.0であり、シリコーン樹脂の屈折率(1.4~1.55)より大きい。そして、酸化亜鉛は、酸素欠損によって、深いドナー順位を形成してバンドギャップが小さくなり(バンドギャップが小さい部分P00に対応する部分が形成され)、可視光を吸収する性質を有する。
【0117】
従って、粒子群15PTには、例えば酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子など、酸素欠損がない結晶状態において可視光などの所定の波長の光を散乱又は反射させ、酸素欠損によって当該波長の光を吸収する性質を有する金属酸化物結晶を用いることができる。例えば、このような性質を有する金属酸化物の粒子は、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3に置き換えられてもよいし、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3に加えて粒子群15PTに含有されていてもよい。
【0118】
また、粒子群15PTには、酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子の他に、発光素子12からの放出光及び/又は接合部材13若しくは透光部材14に含まれる波長変換体からの出射光を散乱する粒子が添加されていてもよい。当該粒子としては、炭化ケイ素(SiC)、窒化珪素(Si2N3)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属炭化物、また、金属酸化物、金属窒化物などの粒子が挙げられる。
【0119】
すなわち、被覆体15は、少なくとも、被覆体15内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群15PTを有していればよい。例えば、粒子群15PTが酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子以外の粒子を含む複数の粒子を含んでいる場合、当該複数の粒子が被覆体15内で均一な密度で分散されているか、又は上面S1から基板11に向かって徐々に密度が高くなるように分散されていればよい。また、例えば、粒子群15PTに含まれる粒子の全体が上記した濃度で分散されていればよい。
【0120】
また、本実施例においては、被覆体15の上面S1には吸収領域15ABが設けられない場合について説明した。しかし、吸収領域15ABは、被覆体15の上面S1に設けられていてもよい。例えば、出力及びコントラストのうち、コントラストを優先する場合、被覆体15が上面S1の近傍に吸収領域15ABを有していてもよい。
【0121】
このように、例えば、発光装置10は、基板11と、基板11上に配置された発光素子12と、発光素子12上に配置された透光部材14と、基板11上において透光部材14を取り囲むように配置され、透光部材14の側面を覆う被覆体15と、を有する。
【0122】
また、被覆体15は、被覆体15内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群15PTを有する。また、粒子群15PTにおける被覆体15の側面S2の近傍において分散された金属酸化物粒子(例えば第1の酸化チタン粒子P1)は、酸素が欠損した部分(各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分)P00を有する。従って、単純な構成で高出力かつ側面S2からの迷光の出射が抑制された発光装置10を提供することができる。
【0123】
また、例えば、発光装置10Eは、基板11と、基板11上に配置された発光素子12と、基板11上において発光素子12を取り囲むように配置され、発光素子12の側面を覆う被覆体16と、を有する。また、被覆体16は、被覆体16内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群16PTを有する。また、粒子群16PTにおける被覆体16の側面S2の近傍において分散された金属酸化物粒子(例えば第1の酸化チタン粒子P1)は、酸素が欠損した部分P00を有する。従って、単純な構成で高出力かつ側面S2からの迷光の出射が抑制された発光装置10Eを提供することができる。
【0124】
また、例えば、この酸素欠損部P00は、レーザ光LBの照射によって金属酸化物粒子の酸素が欠損した部分である。すなわち、被覆体15又は16は、被覆体15又は16の側面S2にレーザ光LBが照射された領域を有する。これによって、被覆体15又は16の側面S2に側面S2からの迷光の出射を抑制する吸収領域15AB又は16ABを形成することができる。従って、容易に製造することが可能であり、単純な構成で高出力かつ側面S2からの迷光の出射が抑制された発光装置10を提供することができる。
【実施例2】
【0125】
図6Aは、実施例2に係る発光装置モジュール20の上面図である。また、
図6Bは、発光装置モジュール20の断面図である。
図6Bは
図6Aの6B-6B線に沿った断面図である。また、
図6Cは、発光装置モジュール20内の発光装置10Fの斜視図である。発光装置モジュール20は、複数の発光装置10Fを有する。
【0126】
本実施例においては、発光装置モジュール20は、モジュール基板21上に並置された複数の発光装置10Fを有する。本実施例においては、モジュール基板21上において2行2列でマトリクス状に配置された4つの発光装置10Fを有する。また、発光装置10Fの各々は、発光素子12の各々上に接合部材13を介して配置された透光部材14を有する。
【0127】
また、発光装置10Fの各々は、基板(個別基板)11上において透光部材14を取り囲むように配置され、透光部材14の側面を覆う被覆体17を有する。
【0128】
また、本実施例においては、被覆体17は、側面S2に複数の凹部17Rを有する。また、本実施例においては、
図6Cに示すように、被覆体17の凹部17Rの各々は、被覆体17の上面S1と基板11との間において溝状に延びている。また、図示していないが、凹部17Rの各々は、うろこ状の内壁を有する。
【0129】
被覆体17は、例えば、粒子含有樹脂15Pの側面S2にレーザ光LB(紫外領域の波長の光)を重畳して(複数回に亘って)照射することで形成することができる。具体的には、355nmの波長で25kW/cm2以上の出力のレーザ光LBを特定のパターンで照射し、これを再度同じパターンで照射することで、シリコーン樹脂が表面から順次昇華除去され、その表面にレーザ光LBの照射痕が残存する。これによって、粒子含有樹脂15Pの側面S2には、レーザ光LBのビーム径及びその移動方向に応じた溝が形成される。このレーザ痕は、被覆体17の凹部17Rとなる。
【0130】
なお、被覆体17の凹部17Rは、レーザ光LBを複数回に亘って照射する場合のみならず、例えば、レーザ光LBの出力、走査速度などを調節することによっても、形成することができる。また、凹部17Rの形状は、図示した形状に限定されない。例えば、被覆体17の上面には、凸部が形成されていてもよいし、波状の連続した凹凸が形成されていてもよい。被覆体17は、種々の凹凸を有する側面S2を有していればよい。
【0131】
また、凹部17Rの溝の延びる方向は、基板11と上面S1と平行な方向、基板11に対して角度を有する斜め方向などにすることも可能である。また、凹部17Rとしての溝は、線状以外の形状、例えば波状の形状を有していても良い。
【0132】
また、本実施例においても、被覆体17の各々は、被覆体15と同様に、被覆体17内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子(例えば酸化チタン粒子)を含む粒子群15PTを有する。また、粒子群15PTにおける被覆体17の側面S2の近傍において分散された金属酸化物粒子(例えば第1の酸化チタン粒子P1)は、酸素が欠損した部分(各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分)P00を有する。
【0133】
本実施例においては、被覆体17の各々の側面S2は、例えば
図6Cのように繰り返し設けられた凹部17Rを有することによって、例えば平坦な面に比べて外部に露出する面の面積が増大する。これによって、被覆体17に設けられた吸収領域17ABの表面積が増大する。従って、被覆体17は、透光部材14の側面から被覆体17に進入する光(
図3における光L3のような光)を高効率で吸収する。従って、発光装置10Fは、例えば、コントラストと出力のうち、コントラストを優先する場合に好適な構成となる。
【0134】
また、本実施例においては、隣接する発光装置10F間における光のクロストークを抑制することができる。例えば、本実施例においては、発光装置モジュール20は、発光装置10Fの各々を独立して駆動するように構成されている。すなわち、発光装置10Fの各々は、互いに無関係に点消灯を行う。例えば、このような構成は、照射領域(例えば配光領域)を変化させることが好ましい用途、例えば車両の前照灯などの照明用途に用いられることができる。
【0135】
この場合、照射領域毎のコントラストが高いことが求められるのみならず、1の照射領域に対応する光が他の照射領域に向けて出射されないことが求められる。本実施例においては、発光装置モジュール20は、このような用途に好適な構成を有する。
【0136】
また、例えば、上記したような照明用途に用いられる場合、隣接する発光装置10Fの間の領域に対応する光の暗部が設けられないことが好ましい。従って、発光装置10Fはできるだけ近づけて配置されることが好ましい。発光装置モジュール20は、このような要求に対しても十分に対応することができる。
【0137】
具体的には、被覆体17の側面S2に吸収領域17ABを設けれることで、確実に発光装置10Fの側面間での光のクロストークを抑制することができる。従って、クロストークを防止するために光反射部材又は吸収部材などの他の部材を設けなくてもよい。また、例えば被覆体17が隣接する他の被覆体17に接するまで近づけた場合でも、確実にクロストークが抑制される。また、隣接する発光装置10F間及び透光部材14間には、2つの吸収領域17ABが設けられることとなる。従って、確実に発光装置10F間のクロストークが抑制される。
【0138】
例えば、モジュール基板21に発光装置10Fを格子状に隣接して配置(例えば6行24列の矩形)した発光装置モジュール20の場合、1行目に配置された24個の発光装置10Fの発光素子12から、2行目に配置された24個の発光装置10Fに向かって出射された光L3のような光は、当該発光素子12の側面の被覆体17の散乱反射領域17SCで反射されることで減衰され、次に吸収領域17ABで吸収されることで減衰されて出射する。
【0139】
さらに、1行目の発光装置10Fにおける被覆体17の側面S2から出射されたわずかな光は、2行目の発光装置10Fの各々における被覆体17の側面S2から被覆体17に入射し、吸収領域15ABで吸収されて減衰され、散乱反射領域で反射されて減衰される。従って、わずかな残存光のみが2行目の発光装置10Fに到達することとなる。すなわち、発光装置10Fの各々が被覆体17を有することで、光L3のような光は、確実に減衰される。
【0140】
例えば、表1に示す実施例1-2の発光装置10を用いる場合、吸収領域17ABの比強度は0.25(1/4)であるため、1行目の発光素子12から2つの吸収領域17ABを経て2行目の発光素子12に到達する光は、比較例の発光装置100と比較して1/16(=1/4×1/4)にまで桁違いに減衰される。従って、クロストークはほぼ確実に防止できる。
【0141】
なお、本実施例においては、被覆体17の側面S2の全体に凹部17Rが形成されている場合について説明した。しかし、凹部17Rは、被覆体17の側面S2の一部のみに形成されていてもよい。また、凹部17Rの形状についても、
図6A及び
図6Cに示した場合に限定されない。
【0142】
また、凹部17Rは設けられていなくてもよい。被覆体17は、側面S2に吸収領域15ABを形成するような粒子群15PTを有していればよい。これによって、発光素子12及び透光部材14間の光のクロストークを抑制することができる。
【0143】
また、モジュール基板21上には、発光装置10F以外の電子部品、例えば、抵抗、コンデンサ、ICチップ、コイル、コネクタなどが配置されていても良い。この場合、発光装置10Fは、側面S2から発光装置10Fの外側に向かう光の洩れを防止した構造となっているため、発光装置10F以外の他の電子部品による反射光が迷光となって生ずるクロストークも抑制できる。
【0144】
また、発光装置モジュール20の発光装置10Fは、その上面S1及び透光部材14以外の面が、耐候性の固着剤で覆われていても良い。これによって、例えば、発光装置10Fの吸収領域15ABに対してリン、硫黄、塩素、過酸化物などを含む腐食性ガスが浸透して、酸化チタン粒子P1及びP3を変質させることを防ぐことができる。
【0145】
また、モジュール基板21上には、複数の発光装置10Fが互いに接するように配置されていてもよい。この場合においても、発光装置10Fの側面S2に設けた凹部17Rによって、固着剤を発光装置10F間へ浸透させることができる。なお、固着剤に遮光性(光吸収性、光反射性)の顔料(粒子)又は染料を添加すれば、より一層クロストークを防止できる。
【0146】
このように、発光装置モジュール20は、モジュール基板21と、モジュール基板21上に並置された複数の発光装置10Fと、を有する。また、発光装置10Fの各々は、個別基板11と、個別基板11上に配置された発光素子12と、発光素子12上に配置された透光部材14と、個別基板11上において透光部材14を取り囲むように配置され、透光部材14の各々の側面を覆う被覆体17と、を有する。
【0147】
また、被覆体17の各々は、被覆体17の各々内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子からなる粒子群15PTを有する。また、粒子群15PTにおける被覆体17の側面S2の近傍において分散された金属酸化物粒子は、酸素が欠損した部分(各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分)P00を有する。従って、単純な構成で高出力かつ発光装置10F間のクロストークが抑制された発光装置モジュール20を提供することができる。
【符号の説明】
【0148】
10、10A、10B、10C、10C、10D、10E 発光装置
20 発光装置モジュール
11 基板
12 発光素子
14 透光部材
15、16、17 被覆体
P1、P2、P3 酸化チタン粒子
15PT、16PT 粒子群