(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】分割型電柱の接合工具および接合方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20221209BHJP
E04H 12/12 20060101ALI20221209BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H02G1/02
E04H12/12
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2018245310
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】久保 仁志
(72)【発明者】
【氏名】谷川 幸一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-168875(JP,A)
【文献】特開2009-132175(JP,A)
【文献】特開昭49-012455(JP,A)
【文献】特開昭61-037380(JP,A)
【文献】特開平05-079226(JP,A)
【文献】特開2008-101325(JP,A)
【文献】特開平11-077382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00- 1/02
E04H 12/12
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にフランジ部を有する二本の電柱を地上において水平に支持した状態で、前記電柱のフランジ部同士を突き合わせてボルト締めすることにより二本の電柱を接合する分割型電柱の接合工具であって、
地上に配置された一方の電柱に対して、他方の電柱を軸中心で回転可能に支持する受け部がベース部に設けられて
おり、
前記一方の電柱のフランジ部に対して前記他方の電柱のフランジ部を高さ調整するための昇降機構が、前記受け部と前記ベース部との間に設けられていることを特徴とする分割型電柱の接合工具。
【請求項2】
一端にフランジ部を有する二本の電柱を地上において水平に支持した状態で、前記電柱のフランジ部同士を突き合わせてボルト締めすることにより二本の電柱を接合する分割型電柱の接合方法であって、
一方の電柱を支持台上に載置すると共に、他方の電柱を接合工具上に軸中心で回転可能に載置し、一方の電柱のフランジ部と他方の電柱のフランジ部とを突き合わせた状態で、
前記接合工具の昇降機構により、一方の電柱に対して他方の電柱を上下動させ、前記フランジ部同士を高さ方向で位置合わせすると共に、一方の電柱に対して他方の電柱を接合工具上で回転させ、前記フランジ部同士を周方向で位置合わせすることを特徴とする分割型電柱の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割型電柱をフランジ部同士の突き合わせおよびボルト締めにより接合する分割型電柱の接合工具および接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電柱はコンクリート製の一本物であるが、この場合、高経年化に伴う電柱の建て替え時や新設時における運搬費用が増加したり、建柱作業で防護範囲が拡大したり、障害物を避け難い。また、電柱の撤去時、運搬規制による電柱切断費用や作業時間が増加したりしている。
【0003】
そこで、電柱の建て替え時や新設時における運搬費用、建柱作業での防護範囲の縮小や障害物回避の容易性、また、電柱の撤去時における電柱切断費用や作業時間を削減するため、近年では、一本物の電柱に代わって、分割型電柱が導入されつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
分割型電柱12は、
図11に示すように、一端にフランジ部13,14を有する上部柱15および下部柱16からなり、上部柱15のフランジ部13と下部柱16のフランジ部14とを突き合わせてボルト締めすることにより、上部柱15と下部柱16とを接合した構造を具備する。
【0005】
上部柱15および下部柱16の両フランジ部13,14には、
図12に示すように、ボルト締め用のボルト孔17,18が円周方向複数箇所に等間隔で形成されている。
【0006】
分割型電柱12の建柱作業では、柱上接合工法と地上接合工法の二種類がある。柱上接合工法は、
図13に示すように、上部柱15と下部柱16とを柱上で接合する。地上接合工法は、
図14に示すように、上部柱15と下部柱16とを地上で接合する。
【0007】
柱上接合工法は、
図13に示すように、穴掘り建柱車と称する作業車両19により上部柱15を吊り上げ、地上に予め建柱された下部柱16の上に建柱する。
【0008】
この状態で、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を突き合わせて両フランジ部13,14でボルト締めすることにより、下部柱16に対して上部柱15を接合する。
【0009】
地上接合工法は、
図14に示すように、地上に配置された支持台20上に下部柱16を水平状態に載置する。そして、作業車両19により上部柱15を吊り上げて下部柱16の側方に水平状態で配置する。
【0010】
このように、上部柱15を吊り上げた状態で、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を突き合わせてボルト締めすることにより、下部柱16に対して上部柱15を接合する。
【0011】
電柱12は、垂直に建柱する以外に、斜めに建柱する場合がある。つまり、
図15に示すように、垂直な電柱12を補強する支柱として、垂直な電柱12に対して斜めに電柱12を建柱する。この支柱工事では、電柱12を斜めに建柱するため、上部柱15と下部柱16とを地上で接合する地上接合工法が必須である。
【0012】
上部柱15と下部柱16とを地上で接合する従来の地上接合工法は、
図16~
図20に示す要領でもって以下のように行われる。
【0013】
まず、
図16に示すように、作業車両19(穴掘り建柱車)により下部柱16を吊り上げて運搬車両から降ろし、作業車両19により下部柱16を吊り上げた状態で、地上に配置された支持台20上に水平状態で載置する。
【0014】
一方、
図17に示すように、作業車両19により上部柱15を吊り上げ、地上に予め配置された下部柱16の側方に水平状態で配置する。上部柱15の吊り上げ状態で、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を突き合わせる。
【0015】
その上で、
図18に示すように、上部柱15の吊り上げ状態で、下部柱16に対して上部柱15を上下動させて高さ調整すると共に、下部柱16に対して上部柱15を軸中心で回転させる。
【0016】
上部柱15の高さ調整により、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を上下方向で位置合わせする。上部柱15の回転により、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を周方向で位置合わせする。
【0017】
この位置合わせにより、下部柱16のフランジ部14のボルト孔18と上部柱15のフランジ部13のボルト孔17を一致させる(
図12参照)。両フランジ部13,14のボルト孔17,18を一致させた状態で、両フランジ部13,14をボルト締めする。このボルト締めにより、下部柱16に対して上部柱15を接合する。
【0018】
この時、吊り上げ状態にある上部柱15という重量物の直下作業となることから、作業の安全性を確保するため、フランジ部13,14の下方に位置するボルト孔17,18についてはボルト締めしないようにしている。
【0019】
両フランジ部13,14をボルト締めした後、
図19に示すように、上部柱15と地上との間に支持台21を挿入配置する。その上で、作業車両19のワイヤによる吊り上げ状態を一旦緩める。
【0020】
その後、
図20に示すように、作業車両19のワイヤ操作により上部柱15を吊り上げて軸中心で回転させる。上部柱15および下部柱16の回転により、フランジ部13,14の下方に位置する残りのボルト孔17,18を上方に位置させる。
【0021】
このようにして、残りのボルト孔17,18をフランジ部13,14の上方に配置した状態でボルト締めする。これにより、上部柱15と下部柱16との接合を完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところで、従来の地上接合工法では、作業車両19により上部柱15を一点吊りで吊り上げた状態で、下部柱16に対して上部柱15を近接させて突き合わせ、上部柱15を上下動させて高さ調整すると共に軸中心で回転させ、フランジ部13,14のボルト孔17,18を位置合わせしている。
【0024】
この地上接合工法において、上部柱15を一点吊りで吊り上げた状態は不安定となり易い。また、作業車両19のワイヤによる吊り上げ位置を回転操作に必要な位置に調整するのに手間がかかる。
【0025】
そのため、下部柱16に対する上部柱15の上下動および回転による位置合わせを実施することは非常に難しく、作業車両19において慎重な操作が必要で、作業員は作業車両19の操作にかなりの熟練度を要する。
【0026】
また、吊り上げ状態での作業車両19における操作回数が6回程度と多いことから、作業時間の短縮化が困難であり、吊り上げ作業中は常に作業車両19が必要で長時間占有されてしまう。その結果、吊り上げ作業の間、作業車両19により建柱のための穴掘り作業を実施することができず、全体の作業時間が増加することになる。
【0027】
さらに、
図19に示すように、上部柱15と地上との間に支持台21を挿入配置してその支持台21上に上部柱15を載置した上で作業車両19による吊り上げ状態を緩めた時、接合前の重心位置Mと接合後の重心位置Nとが大幅に変わる。
【0028】
そのため、上部柱15の支持台21の配置位置によっては、上部柱15および下部柱16が予想外の動きをするおそれがあり、作業上の安全性を確保することが困難となる。
【0029】
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、作業時間の短縮化および作業内容の簡易化を図り、作業上の安全性を確保し得る分割型電柱の接合工具および接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、一端にフランジ部を有する二本の電柱を地上において水平に支持した状態で、電柱のフランジ部同士を突き合わせてボルト締めすることにより二本の電柱を接合する分割型電柱の接合工具および接合方法である。
【0031】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明の接合工具は、地上に配置された一方の電柱に対して、他方の電柱を軸中心で回転可能に支持する受け部がベース部に設けられていることを特徴とする。
【0032】
本発明の接合方法は、一方の電柱を支持台上に配置すると共に、他方の電柱を接合工具上に軸中心で回転可能に載置し、一方の電柱のフランジ部と他方の電柱のフランジ部とを突き合わせた状態で、一方の電柱に対して他方の電柱を接合工具上で回転させ、フランジ部同士を周方向で位置合わせすることを特徴とする。
【0033】
本発明では、地上に配置(載置)された一方の電柱に対して、他方の電柱を軸中心で回転可能に支持する接合工具を採用している。
【0034】
これにより、一方の電柱のフランジ部と他方の電柱のフランジ部とを突き合わせる際に、一方の電柱に対して他方の電柱を接合工具上で回転させる作業が簡易に行える。その結果、両フランジ部同士の回転方向での位置合わせおよびボルト締めを迅速かつ容易に行うことができる。
【0035】
本発明の接合工具において、一方の電柱のフランジ部に対して他方の電柱のフランジ部を高さ調整するための昇降機構が受け部とベース部との間に設けられた構造が望ましい。
【0036】
本発明の接合方法において、一方の電柱のフランジ部と他方の電柱のフランジ部とを突き合わせた状態で、接合工具の昇降機構により、一方の電柱に対して他方の電柱を上下動させ、両フランジ部同士を高さ方向で位置合わせすることが望ましい。
【0037】
この接合工具および接合方法では、地上に配置された一方の電柱に対して、他方の電柱を高さ調整するための昇降機構を採用している。
【0038】
これにより、一方の電柱のフランジ部と他方の電柱のフランジ部とを突き合わせる際に、一方の電柱に対して他方の電柱を接合工具上で上下動させる作業が簡易に行える。その結果、両フランジ部同士の高さ方向での位置合わせおよびボルト締めを迅速かつ容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、地上に配置された一方の電柱に対して、他方の電柱を軸中心で回転可能に支持した接合工具を採用することにより、一方の電柱のフランジ部と他方の電柱のフランジ部とを突き合わせる際に、一方の電柱に対して他方の電柱を接合工具上で回転させる作業が簡易に行える。
【0040】
その結果、両フランジ部同士の回転方向での位置合わせおよびボルト締めを迅速かつ容易に行うことができるので、分割型電柱を建柱するに際して、作業時間の短縮化および作業内容の簡易化が図れ、作業上の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態で、接合工具の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1の接合工具の使用状態を示す構成図である。
【
図5】本発明の接合方法で、下部柱を支持台により地上に配置した状態を示す構成図である。
【
図6】本発明の接合方法で、上部柱をワイヤにより吊り上げて接合工具上に載置した状態を示す構成図である。
【
図7】本発明の接合方法で、上部柱を接合工具上で回転させる状態を示す構成図である。
【
図8】本発明の接合方法で、接合後、下部柱および上部柱を回転させる状態を示す構成図である。
【
図9】本発明の接合方法で、上部柱を一方の接合工具から浮かした状態を示す構成図である。
【
図10】本発明の接合方法で、一方の接合工具を上部柱から下部柱へ移動させた状態を示す構成図である。
【
図12】上部柱および下部柱のフランジ部を示す正面図である。
【
図13】柱上接合工法を説明するための構成図である。
【
図14】地上接合工法を説明するための構成図である。
【
図15】電柱を斜めに建柱する支柱工事を説明するための構成図である。
【
図16】従来の接合方法で、下部柱を支持台により地上に配置した状態を示す構成図である。
【
図17】従来の接合方法で、上部柱をワイヤにより吊り上げた状態を示す構成図である。
【
図18】従来の接合方法で、下部柱に対して上部柱を吊り上げ状態で突き合わせて回転させる状態を示す構成図である。
【
図19】従来の接合方法で、ワイヤを緩めて上部柱を支持台に載置した状態を示す構成図である。
【
図20】従来の接合方法で、ワイヤ操作により上部柱および下部柱を回転させる状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に係る分割型電柱の接合工具および接合方法の実施形態を図面に基づいて以下に詳述する。
【0043】
分割型電柱12は、一端にフランジ部13,14を有するコンクリート製の上部柱15および下部柱16からなり、上部柱15のフランジ部13と下部柱16のフランジ部14とを突き合わせてボルト締めすることにより、上部柱15と下部柱16とを接合した構造を具備する(
図11参照)。
【0044】
上部柱15および下部柱16の両フランジ部13,14には、ボルト締め用のボルト孔17,18が円周方向複数箇所に等間隔で形成されている(
図12参照)。
【0045】
分割型電柱12の建柱作業には、柱上接合工法および地上接合工法の二種類があり、以下の実施形態で説明する地上接合工法は、垂直な電柱12を補強する支柱として、垂直な電柱12に対して斜めに電柱12を建柱する場合に必須である(
図15参照)。
【0046】
なお、以下の実施形態では、地上接合工法が必須である支柱工事、つまり、電柱12を斜めに建柱する場合について例示するが、地上接合工法により電柱12を垂直に建柱する場合にも適用可能である。
【0047】
この実施形態における地上接合工法を説明する前に、この実施形態で採用する接合工具を以下に詳述する。
【0048】
接合工具31は、
図1~
図3に示すように、上部柱15あるいは下部柱16を軸中心で回転可能に支持する受け部32と、その受け部32を上下動自在に搭載するベース部33とで主要部が構成されている。
【0049】
受け部32は、上部柱15あるいは下部柱16の軸方向から見て略V字状をなす。受け部32のV字状両側部位には、二つのローラ34が回転自在に軸支されている。ローラ34は、上部柱15あるいは下部柱16を二点で安定して下方支持する。
【0050】
ベース部33の中央部位には、受け部32を上下動させる昇降機構であるジャッキ35が設けられている。ジャッキ35の昇降ロッドは、受け部32のV字状中央部位に取り付けられている。
【0051】
ベース部33の両側部位には、受け部32の上下動を案内するガイド棒36が立設されている。ガイド棒36は、受け部32のV字状両端部位に挿通されている。
【0052】
ベース部33の中央部位と両側部位との間には空洞部37が設けられている。このように、空洞部37を設けることにより、ベース部33を中抜き構造とし、接合工具31の軽量化を図っている。
【0053】
ベース部33の底部には、接合工具31が搬送可能なようにロック付きキャスタ38が設けられている。キャスタ38をロック付きとすることにより、接合工具31の搬送時にブレーキ機能を発揮させて逸走防止を図っている。
【0054】
ベース部33は、上方から見て長方形状をなす。ベース部33の辺部には、接合工具31の搬送時に作業員が把持するための取っ手39が設けられている。取っ手39は、ベース部33の短辺部40および長辺部41の二箇所に着脱自在に取り付けられる。
【0055】
取っ手39をベース部33に取り付けるに際して、ベース部33の短辺部40あるいは長辺部41のいずれかを選択することにより、接合工具31の搬送方向に向けて作業員が常に押すように取っ手39を把持できるようにしている。
【0056】
以上の構成からなる接合工具31を使用するに際しては、穴掘り建柱車と称する作業車両19により上部柱15および下部柱16をワイヤで吊り上げて中型運搬車などの運搬車両から降ろす。
【0057】
この運搬車両から接合工具31へ移載された上部柱15および下部柱16は、
図4に示すように、両端部が二台の接合工具31の受け部32で支持される。
【0058】
この状態で、二人の作業員が接合工具31の取っ手39を把持した状態で押すことにより、上部柱15および下部柱16を所定の位置まで運搬することが可能となる。
【0059】
このようにして、接合工具31を利用することにより、運搬車両が進入できない箇所へ、上部柱15および下部柱16を運搬することができる。
【0060】
この実施形態における接合工具31の構成は前述のとおりであるが、この接合工具31を採用した実施形態の地上接合工法は、
図5~
図10に示す要領でもって以下のように行われる。
【0061】
まず、前述したように、作業車両19により下部柱16を吊り上げて運搬車両から降ろす。
図5に示すように、作業車両19のワイヤで下部柱16を吊り上げた状態で、地上に配置された支持台20上に水平状態で載置する。
【0062】
運搬車両から支持台20への下部柱16の移載は、運搬車両から直接的に行われるか、あるいは、前述したように接合工具31を介して間接的に行われる。
【0063】
一方、作業車両19により上部柱15を吊り上げて運搬車両から降ろす。
図6に示すように、作業車両19のワイヤで上部柱15を吊り上げて二台の接合工具31上に載置する。上部柱15は、接合工具31の受け部32に支持された状態で、地上に支持台20で予め固定配置された下部柱16の側方に水平状態で配置される。
【0064】
この状態で、
図7に示すように、作業員が二台の接合工具31を前後左右に移動させる。接合工具31の前後左右移動により、上部柱15の水平方向位置を調整することができる。これにより、固定配置された下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を近接させて突き合わせる。
【0065】
なお、接合工具31の前後左右移動は、ベース部33に設けられたキャスタ38で実現されるが、このキャスタ38以外に、ベース部33をXYテーブルとした構造であっても実現可能である。
【0066】
接合工具31上に上部柱15を載置した状態で、接合工具31により、下部柱16に対して上部柱15を高さ調整すると共に、下部柱16に対して上部柱15を軸中心で回転させる。
【0067】
高さ調整は、接合工具31のジャッキ35の昇降ロッドを伸縮させることにより行う。これにより、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を上下動させて高さ方向で位置合わせする。
【0068】
上部柱15の回転は、上部柱15が接合工具31の受け部32にローラ34で回転可能に載置されていることから、作業員が手で直接的に行うことができる。上部柱15の回転により、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を周方向で位置合わせする。
【0069】
この位置合わせは、両フランジ部13,14に付された目印を目視することにより行われる。この位置合わせにより、下部柱16のフランジ部14のボルト孔18と上部柱15のフランジ部13のボルト孔17を一致させる。
【0070】
このようにして、両フランジ部13,14のボルト孔17,18が一致した状態で、下部柱16のフランジ部14に対して上部柱15のフランジ部13を規定のトルクでボルト締めする。このボルト締めにより、下部柱16に対して上部柱15を接合する。
【0071】
ここで、従来の場合、接合前は、上部柱15が作業車両19のワイヤにより吊り上げ状態であり、接合後は、作業車両19のワイヤを緩めて支持台21で下方から支持された状態である(
図19参照)。これに対して、この実施形態の場合、接合前および接合後の両方で、常に接合工具31により上部柱15が下方から支持されている。
【0072】
これにより、接合前の重心位置Mと接合後の重心位置Nとが大幅に変わっても、上部柱15および下部柱16が予想外の動きをすることなく、接合工具31および支持台20に安定して支持されているので、作業上の安全性を確保することが容易である。
【0073】
下部柱16に対する上部柱15の接合時、上部柱15という重量物の直下作業となることから、作業の安全性を確保するため、フランジ部13,14の下方に位置するボルト孔17,18についてはボルト締めしないようにしている。
【0074】
両フランジ部13,14のボルト締め後、
図8に示すように、支持台20上に載置された下部柱16を作業車両19のワイヤ操作により吊り上げて軸中心で回転させる。この時、下部柱16に接合された上部柱15は、接合工具31の受け部32のローラ34で回転可能に支持された状態であることから、下部柱16と一体的に回転する。
【0075】
上部柱15および下部柱16の回転により、フランジ部13,14の下方に位置する残りのボルト孔17,18を上方に位置させる。このようにして、残りのボルト孔17,18をフランジ部13,14の上方に配置した状態でボルト締めする。これにより、上部柱15と下部柱16との接合を完了する。
【0076】
この実施形態では、地上に固定配置された下部柱16に対して、上部柱15を軸中心で回転可能に支持する接合工具31を採用している。なお、この実施形態では、下部柱16を支持台20に非回転状態に載置した場合を例示しているが、下部柱16を支持台20に回転可能に載置するようにしてもよい。
【0077】
この接合工具31を採用したことにより、下部柱16のフランジ部14と上部柱15のフランジ部13とを突き合わせる際に、下部柱16に対して上部柱15を接合工具31上で回転させると共に上下動させる作業が簡易に行える。
【0078】
このように、作業車両19での操作が不要となり、作業員に熟練度が要求されないので、両フランジ部13,14同士の回転方向および高さ方向での位置合わせおよびボルト締めを迅速かつ容易に行うことができる。
【0079】
また、従来の場合、吊り上げ状態での作業車両19における操作回数が6回程度と多いのに対して、この実施形態では、吊り上げ状態での作業車両19における操作回数が3回程度と少なくて済む。
【0080】
このことから、作業時間の短縮化が容易であり、吊り上げ作業を削減できる。吊り上げ作業を削減した分、作業車両19により建柱のための穴掘り作業を実施することができるので、全体の作業時間の短縮化が図れて作業効率が向上する。
【0081】
なお、前述の実施形態では、下部柱16に対する上部柱15の接合後、フランジ部13,14の下方に位置する残りのボルト孔17,18をボルト締めするため、
図8に示すように、支持台20上に載置された下部柱16を作業車両19のワイヤ操作により吊り上げて回転させている。
【0082】
これに対して、
図9および
図10に示すように、支持台20上に載置された下部柱16を作業車両19のワイヤ操作により吊り上げることなく、上部柱15および下部柱16を回転させることができる。
【0083】
つまり、
図9に示すように、上部柱15を支持する二台の接合工具31のうち、下部柱16側(図示右側)に位置する一方の接合工具31のジャッキ35を操作して受け部32を降下させる。これにより、一方の接合工具31の受け部32から上部柱15が浮いた状態となる。
【0084】
逆に、下部柱16と反対側(図示左側)に位置する他方の接合工具31のジャッキ35を操作して受け部32を上昇させるようにしてもよい。これによっても、一方の接合工具31の受け部32から上部柱15が浮いた状態となる。
【0085】
あるいは、二台の接合工具31の両方について、一方の接合工具31のジャッキ35を操作して受け部32を降下させると共に、他方の接合工具31のジャッキ35を操作して受け部32を上昇させるようにしてもよい。これによっても、一方の接合工具31の受け部32から上部柱15が浮いた状態となる。
【0086】
以上のようにして、一方の接合工具31の受け部32から上部柱15を浮いた状態とした後、
図10に示すように、その一方の接合工具31を下部柱16の側へ移動させる。この下部柱16の側に配置された一方の接合工具31のジャッキ35を操作して受け部32を上昇させる。
【0087】
一方の接合工具31では、受け部32の上昇によりその受け部32で下部柱16を下方から支持する。その上で、下部柱16を支持していた支持台20を取り外す。これにより、下部柱16を一方の接合工具31で支持すると共に上部柱15を他方の接合工具31で支持する。
【0088】
このように、上部柱15および下部柱16が二台の接合工具31のみで支持されることにより、上部柱15および下部柱16は作業員の手で回転可能となる。
【0089】
この上部柱15および下部柱16の回転により、フランジ部13,14の下方に位置する残りのボルト孔17,18を上方に配置した状態でボルト締めすることができる。
【0090】
この場合、作業車両19のワイヤによる上部柱15の吊り上げ作業(
図8参照)が不要となるので、吊り上げ状態での作業車両19における操作回数は2回程度とさらに少なくて済む。
【0091】
以上の実施形態では、二本の上部柱15および下部柱16を接合する場合について例示したが、既設の電柱を撤去するに際して、運搬車両で運搬可能なように、一本の電柱を切断により分離する場合にも適用可能である。
【0092】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0093】
12 分割型電柱
13,14 フランジ部
15 電柱(上部柱)
16 電柱(下部柱)
20 支持台
31 接合工具
32 受け部
33 ベース部
35 昇降機構(ジャッキ)