(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】液化低温流体の荷役設備
(51)【国際特許分類】
B63B 27/34 20060101AFI20221209BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20221209BHJP
B67D 9/00 20100101ALI20221209BHJP
【FI】
B63B27/34
B63B25/16 M
B67D9/00 A
B67D9/00 B
(21)【出願番号】P 2018248467
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田窪 舜
(72)【発明者】
【氏名】村田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】室 嘉浩
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-270103(JP,A)
【文献】特表2012-528287(JP,A)
【文献】特開2005-155668(JP,A)
【文献】特開平09-014597(JP,A)
【文献】特開2016-075306(JP,A)
【文献】米国特許第06637479(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/34
B63B 25/16
B67D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化低温流体を水上で搬送する船舶との間において液化低温流体を荷役する液化低温流
体の荷役設備であって、
陸上において液化低温流体を貯留する陸側貯留部からの液化低温流体を前記船舶にて液
化低温流体を貯留する船舶側貯留部へ圧送する圧送手段と、前記陸側貯留部と前記船舶側
貯留部との間において液化低温流体又は液化低温流体が気化した気化流体を通流する流体
通流管と、前記流体通流管の接続端部に着脱自在な着脱機構を一端に有すると共に他端を前記船舶側貯留部に接続して液化低温流体を通流可能な可撓性流体通流部とを
コンテナ内に備え、
少なくとも2つ以上の前記陸側貯留部から同時に液化低温流体の荷役を実行可能に構成
される液化低温流体の荷役設備。
【請求項2】
前記流体通流管として、
複数の前記陸側貯留部の夫々からの液化低温流体を通流する液化低温流体通流路と、当該液化低温流体通流路を通流する液化低温流体が合流する合流流路とを備えると共に、
前記液化低温流体通流路と前記合流流路を液化低温流体にて予冷したときに発生する低温気体を、前記陸側貯留部の夫々へ返送可能な返送流路を備えている請求項1に記載の
液化低温流体の荷役設備。
【請求項3】
複数の前記陸側貯留部の夫々からの液化低温流体を通流する液化低温流体通流路と、当
該液化低温流体通流路を通流する液化低温流体が合流する合流流路とを備えると共に、
前記陸側貯留部として、内部の充填容量に余裕のある回収用陸側貯留部を接続可能に構成され、
当該回収用陸側貯留部と前記合流流路とを接続して液化低温流体を通流する回収用液化
低温流体通流路を備え、
前記回収用陸側貯留部以外の前記陸側貯留部から流出した液化低温流体を前記回収用液化低温流体通流路を介して前記回収用陸側貯留部へ回収する回収運転を実行可能に構成されている請求項1又は2に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項4】
前記合流流路において前記船舶側貯留部と前記陸側貯留部との間で閉止状態と開放状態
とで切り換わる遮断弁を備え、
前記回収運転は、前記遮断弁を閉止状態として、前記圧送手段による吐出圧を昇圧又は
降圧しながら吐出される液化低温流体を前記回収用陸側貯留部へ回収する吐出圧変更運転
を含むものである請求項3に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項5】
前記回収運転は、
前記圧送手段が、最低吐出量を下回る低流量を前記合流流路へ流出する場合に、前記最
低吐出量から前記低流量を減算した残流量を、前記回収用陸側貯留部へ回収するミニフロ
ー運転を含むものである請求項3に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項6】
前記吐出圧変更運転は、前記船舶側貯留部の圧力が前記陸側貯留部の許容圧力よりも高
い場合に実行されるものである請求項4に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項7】
前記流体通流管として、液化低温流体通流路の鉛直方向で下方に位置する状態で液化低温流体通流路に液抜き開閉弁を介して連通接続される液抜き配管を備える請求項1~6の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【請求項8】
複数の前記陸側貯留部の夫々からの液化低温流体を通流する液化低温流体通流路と、当該液化低温流体通流路を通流する液化低温流体が合流する合流流路とを備え、
前記合流流路において前記船舶側貯留部と前記陸側貯留部との間で閉止状態と開放状態
とで切り換わる遮断弁を備え、
パージガスを貯留するパージガス貯留部からのパージガスを通流するパージガス通流路を、少なくとも、前記遮断弁の近傍で且つ前記遮断弁より前記船舶側貯留部の側に連通接続している請求項1~6の何れか一項に記載の液化低温流体の荷役設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化低温流体を水上で搬送する船舶との間において低温流体を荷役する液化低温流体の荷役設備に関する。
【背景技術】
【0002】
液化低温流体としてのLNGを荷役する荷役設備として、特許文献1に示すように、陸上に設けられるLNG貯留タンクから、圧送ポンプにて圧送されるLNGを液体通流管等を介して、水上の船舶に設けられる船舶側LNG貯留部へ圧送する設備が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、排ガス規制により排ガス中の窒素酸化物や二酸化炭素の低減を図る手段として、天然ガス燃料の需要が高まりつつあるため、船舶によるLNGの荷役を効果的且つ迅速に実行できる技術が望まれており、開発の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、船舶に対するLNGの荷役を効果的且つ迅速に実行できる液化低温流体の荷役設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための液化低温流体の荷役設備は、液化低温流体を水上で搬送する
船舶との間において液化低温流体を荷役する液化低温流体の荷役設備であって、その特徴
構成は、
陸上において液化低温流体を貯留する陸側貯留部からの液化低温流体を前記船舶にて液
化低温流体を貯留する船舶側貯留部へ圧送する圧送手段と、前記陸側貯留部と前記船舶側
貯留部との間において液化低温流体又は液化低温流体が気化した気化流体を通流する流体
通流管と、前記流体通流管の接続端部に着脱自在な着脱機構を一端に有すると共に他端を前記船舶側貯留部に接続して液化低温流体を通流可能な可撓性流体通流部とをコンテナ内に備え、
少なくとも2つ以上の前記陸側貯留部から同時に液化低温流体の荷役を実行可能に構成
されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、特に、少なくとも2つ以上の陸側貯留部から同時に液化低温流体の荷役を実行可能に構成されているから、例えば、大流量を圧送可能な圧送手段を備えることで、複数の陸側貯留部から同時に大流量の液化低温流体を抽出して船舶へ圧送することで、液化低温流体の荷役を迅速に行うことが可能となる。
また、例えば、可撓性流体通流部を複数備えることで、複数の船舶に対して液化低温流体の荷役を同時に並行して実行することができ、効果的な荷役を実現することができる。
【0008】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記流体通流管として、
複数の前記陸側貯留部の夫々からの液化低温流体を通流する液化低温流体通流路と、当該液化低温流体通流路を通流する液化低温流体が合流する合流流路とを備えると共に、
前記液化低温流体通流路と前記合流流路を液化低温流体にて予冷したときに発生する低温気体を、前記陸側貯留部の夫々へ返送可能な返送流路を備えている点にある。
【0009】
液化低温流体の荷役設備にて荷役を行う船舶は、種々の船舶が想定され船舶によっては、船舶側貯留部の内部圧力は、陸側貯留部の許容圧力を超えている場合が想定される。
このような場合、船舶側貯留部の気体が陸側貯留部へ流れ込むことを防ぐため、船舶側貯留部と陸側貯留部との間の流体通流管に設けられる遮断弁を閉止する必要がある。
従って、陸側貯留部から吐出された液化低温流体にて流体通流管を予冷したときに発生する低温気体を船側へ送ることができず、陸側で処理する必要がある。
以上のような場合であっても、上記特徴構成によれば、低圧の低温気体を返送流路により陸側貯留部へ返送することができるから、陸側で発生したメタン等の低温気体を大気放散することなく、予冷運転を適切に実行することができる。
【0010】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記陸側貯留部として、内部の充填容量に余裕のある回収用陸側貯留部を接続可能に構
成され、
当該回収用陸側貯留部と前記合流流路とを接続して液化低温流体を通流する回収用液化
低温流体通流路を備え、
前記回収用陸側貯留部以外の前記陸側貯留部から流出した液化低温流体を前記回収用液化低温流体通流路を介して前記回収用陸側貯留部へ回収する回収運転を実行可能に構成されている点にある。
例えば、前記合流流路において前記船舶側貯留部と前記陸側貯留部との間で閉止状態と
開放状態とで切り換わる遮断弁を備え、
前記回収運転は、前記遮断弁を閉止状態として、前記圧送手段による吐出圧を昇圧又は
降圧しながら吐出される液化低温流体を前記回収用陸側貯留部へ回収する吐出圧変更運転
を含むものであることが好ましい。
【0011】
通常、液化低温流体を圧送する圧送手段としてのポンプは、ポンプを停止状態で一部の液化低温流体を通流させて予冷した後、ポンプを稼動させて液化低温流体を圧送しながら吐出圧を徐々に上昇させる必要がある。
しかしながら、上述したように、船舶側貯留部の内部圧力が陸側貯留部の許容圧力を超えほど高い場合には、ポンプの立ち上げ後、ポンプから吐出した液化低温流体の圧力が船舶側貯留部へ液を移送するために必要な圧力に満たない状態が続く場合があり、このような場合には、ポンプから吐出した液化低温流体を船舶側貯留部へ導くことができず、液化低温流体の行き場がなくなることになる。
上記特徴構成によれば、吐出圧力変更中のポンプから吐出される液化低温流体を、回収用陸側貯留部へ回収用液化低温流体通流路を介して回収できるから、船舶側貯留部の内部圧力によらず、荷役を進めることができる。
更に、陸側貯留部を移動可能なタンクローリー等から構成することで、充填容量に余裕のあるタンクローリーを順次取り替えながら、液化低温流体を回収することができ、荷役を滞らせることなく円滑に行うことができる。
【0012】
更に、例えば、前記回収運転は、
前記圧送手段が、最低吐出量を下回る低流量を前記合流流路へ流出する場合に、前記最低吐出量から前記低流量を減算した残流量を、前記回収用陸側貯留部へ回収するミニフロー運転を含むものであることが好ましい。
【0013】
荷役設備においては、圧送手段としてのポンプが、その最低吐出量よりも低い低流量を圧送しなければならない場合もあるが、このような場合であっても、ポンプから圧送された流量のうち低流量を超える流量を回収用陸側貯留部へ回収するミニフロー運転を実行することで、所望の低流量の液化低温流体を合流流路へ圧送することができる。
【0014】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記吐出圧変更運転は、前記船舶側貯留部の圧力が前記陸側貯留部の許容圧力よりも高い場合に実行されるものである点にある。
【0015】
これまで説明してきた構成によれば、船舶側貯留部の圧力が陸側貯留部の許容圧力よりも高い場合においても、吐出圧力変更運転を良好に実行できる荷役設備が実現できる。
【0016】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
前記流体通流管として、液化低温流体通流路の鉛直方向で下方に位置する状態で液化低温流体通流路に液抜き開閉弁を介して連通接続される液抜き配管を備える点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、本発明の如く流体通流管が比較的複雑な構成をしている場合であっても、その内部に残留している液化低温流体を液抜き配管へ自重により、適切に回収することができる。
【0018】
液化低温流体の荷役設備の更なる特徴構成は、
複数の前記陸側貯留部の夫々からの液化低温流体を通流する液化低温流体通流路と、当該液化低温流体通流路を通流する液化低温流体が合流する合流流路とを備え、
前記合流流路において前記船舶側貯留部と前記陸側貯留部との間で閉止状態と開放状態とで切り換わる遮断弁を備え、
パージガスを貯留するパージガス貯留部からのパージガスを通流するパージガス通流路を、少なくとも、前記遮断弁の近傍で且つ前記遮断弁より前記船舶側貯留部の側に連通接続している点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、パージガスを前記遮断弁より船舶側貯留部の側へ導くことで、例えば、配管接続直後において可撓性流体通流部に含まれる空気を適切にパージでき、可撓性流体通流部において空燃比が可燃性限界を超えるような状況が生じることを避けることができる。
また、例えば、パージガスを液抜き配管に通流可能とすることで、パージガスにて液抜き配管の液化低温流体を良好に圧送して残液処理をすることができる。
また、例えば、パージガスを流体通流部から陸側貯留部へ通流させることで、流体通流部と陸側貯留部との間の配管も適切にパージできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る液化低温流体の荷役設備の概略構成図
【
図2】第1実施形態に係る空気パージ運転を実行している場合の流れを示す図
【
図3】第1実施形態に係る気体導入運転を実行している場合の流れを示す図
【
図4】第1実施形態に係る液体導入運転を実行している場合の流れを示す図
【
図5】第1実施形態に係る液抜き運転を実行している場合の流れを示す図
【
図6】第1実施形態に係るパージ運転を実行している場合の流れを示す図
【
図7】第2実施形態に係る液化低温流体の荷役設備の概略構成図、及び予冷運転を実行している場合の流れを示す図
【
図8】第3実施形態に係る液化低温流体の荷役設備の概略構成図、及びミニフロー運転を実行している場合の流れを示す図
【
図9】第4実施形態に係る液化低温流体の荷役設備の概略構成図、及び気体導入運転を実行している場合の流れを示す図
【
図10】第4実施形態に係る吐出圧変更運転を実行している場合の流れを示す図
【
図11】第4実施形態に係る吐出先変更運転及び液体導入運転を実行している場合の流れを示す図
【
図12】第4実施形態に係る第1残液処理運転を実行している場合の流れを示す図
【
図13】第4実施形態に係る第2残液処理運転を実行している場合の流れを示す図
【
図14】第4実施形態に係る第3残液処理運転を実行している場合の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る液化低温流体(例えば、液化天然ガス:以下LNGと略称)の荷役設備100は、液化低温流体の荷役の際の地理的制約や時間的制約に係る自由度を向上し得るものに関する。
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る液化低温流体の荷役設備100を、
図1~6に基づいて説明する。
当該実施形態に係る液化低温流体の荷役設備100は、
図1に示すように、液化低温流体を水上で搬送するLNGタンカー等の船舶Sとの間において液化低温流体を荷役する荷役設備であり、特に、陸上において液化低温流体を貯留する第1、2陸側貯留部LT1、LT2からの液化低温流体を船舶Sにて液化低温流体を貯留する船舶側貯留部STへ圧送するポンプ(圧送手段の一例)と、陸側貯留部と船舶側貯留部STとの間において液化低温流体又は液化低温流体が気化した気化流体(例えば、天然ガス:以下NTと略称)を通流する流体通流管とを有して、船舶S及び陸側貯留部との接続が解除された状態で移動可能な移動体を少なくとも1つ備えている。
尚、本明細書においては、陸側貯留部を上流側とし船舶側貯留部STを下流側として説明をする場合がある。
【0023】
ここで、移動体としては、流体通流管の接続端部に着脱自在な第1クイックカプラQC1(着脱機構の一例)を一端に有すると共に他端の第2クイックカプラQC2(着脱機構の一例)を船舶側貯留部STに連通接続して液化低温流体を通流可能なホースHを備える親移動体PM(
図1で一点鎖線で囲まれる構成)を少なくとも一つ備える。
図1に示す親移動体PMは、流体通流管において船舶Sと荷役設備100との間の流体の通流を遮断する緊急遮断弁EVが備えられると共に、船舶Sの急な移動の際に船舶Sと荷役設備100とを切り離す緊急離脱装置EWがホースH(可撓性流体通流部の一例)に対して備えられている。更に、親移動体PMとしては、荷役設備100の全体の流体の通流状態を制御するべく、ポンプP1、P2、及び後述する各種弁体の開閉状態を制御する制御装置C(制御部の一例)が設けられている。尚、着脱機構としての第1クイックカプラQC1及び第2クイックカプラQC2は、フランジ等の構成を代用しても構わない。
また、
図1に示す荷役設備100では、一の親移動体PMに加え、一の子移動体CM(
図1で二点鎖線で囲まれる構成)が設けられており、図示は省略するが、親移動体PM及び子移動体CMは、双方ともコンテナの内部に各構成機器を内設する形態で、移動可能に構成されている。また、夫々の移動体には、コンテナ内での各種機器の移動及び設置や陸側貯留部と移動体との間の流体通流管の移動及び設置等を担うハンドリングクレーンが設けられると共に、メタン等のガス濃度を検知するガス検知器が設けられている。
加えて、親移動体PMには、流体通流配管をパージするためのパージガス(例えば、窒素やメタン)を貯留するためのガス貯留部と、移動体に設けられる各種機器の駆動に用いる電力を発電する発電機と、荷役の際に発生した余剰の天然ガス等の低温流体を放散したり流体通流管の内圧が許容値を超えた場合に低温流体を放散したりする放散塔と、各種弁体を駆動するための圧力を蓄圧するアキュムレーターとが備えられている。ちなみに、上述した親移動体PMのみが備える各種構成については、子移動体CMの夫々にも備える構成を採用しても構わない。
【0024】
第1陸側貯留部LT1は、流入出端としての第5フランジF5と第10開閉弁V10とを有して液体を流入出する第1液体流入出部LE1を備えると共に、流入出端としての第6フランジF6と第11開閉弁V11とを有して気体を流入出する第1気体流入出部GE1を備える。
親移動体PMは、一端にて第5フランジF5を介して第1液体流入出部LE1と連通接続すると共に他端に第6開閉弁V6を有する第1液体通流路LF1と、一端に第6フランジF6を介して第1気体流入出部GE1と連通接続すると共に他端に第7開閉弁V7を有する第1気体通流路GF1とを備え、両者は、他端側にて接続して第1混合流路MF1に連通接続される。第1混合流路MF1には、上流側から、液化低温流体を上流側から下流側へ圧送すると共にその回転数を調整可能なインバータ式の第1ポンプP1、第2混合流路MF2を通流する流体の流量を調整する第1流量調整弁RV1、流体の下流側から上流側の逆流を禁止する第1逆止弁CV1が記載の順に設けられており、その下流端が、他の移動体からの流体が通流する合流流路JTLに接続されている。尚、第1混合流路MF1には、第1逆止弁CV1をバイパスする第1バイパス流路MF1aが設けられており、当該第1バイパス流路MF1aには、第4開閉弁V4が設けられている。
【0025】
第2陸側貯留部LT2及び子移動体CMとは、液化低温流体及び低温気体が通流する流路に関し、上述した第1陸側貯留部LT1及び親移動体PMと同一の構成を有している。
即ち、第2陸側貯留部LT2は、流入出端としての第7フランジF7と第12開閉弁V12とを有して液体を流入出する第2液体流入出部LE2を備えると共に、流入出端としての第8フランジF8と第13開閉弁V13とを有して気体を流入出する第2気体流入出部GE2を備える。
子移動体CMは、一端にて第7フランジF7を介して第2液体流入出部LE2と連通接続すると共に他端に第8開閉弁V8を有する第2液体通流路LF2と、一端に第8フランジF8を介して第2気体流入出部GE2と連通接続すると共に他端に第9開閉弁V9を有する第2気体通流路GF2とを備え、両者は、他端側にて接続して第2混合流路MF2に連通接続される。第2混合流路MF2には、上流側から、液化低温流体を上流側から下流側へ圧送すると共にその回転数を調整可能なインバータ式の第2ポンプP2、第2混合流路MF2を通流する流体の流量を調整する第2流量調整弁RV2、流体の下流側から上流側の逆流を禁止する第2逆止弁CV2が記載の順に設けられており、その下流端が、他の移動体からの流体が通流する合流流路JTLに接続されている。尚、第2混合流路MF2には、第2逆止弁CV2をバイパスする第2バイパス流路MF2aが設けられており、当該第2バイパス流路MF2aには、第5開閉弁V5が設けられている。
【0026】
合流流路JTLは、複数の移動体に対して共通して形成される流路であり、移動体の間ではフランジを介して流路を連通接続する構成を採用しており、親移動体PMと子移動体CMとの間は、第1フランジF1を介して連通接続されている。当該合流流路JTLの上流側には、第3フランジF3が設けられ他の移動体の合流流路JTLが連通接続可能となっており、合流流路JTLの下流側には、緊急遮断弁EVが設けられると共にその下流端にホースHと迅速な接続が可能な第1クイックカプラQC1が設けられている。
ホースHには、緊急離脱装置EWが設けられ、その下流端が第2クイックカプラQC2を介して、船舶側流路SLに接続されている。
【0027】
船舶側流路SLは、その上流端に第3開閉弁V3が設けられると共に、その下流側に、主に天然ガス等の低温気体を通流する船舶側気体通流路SLaと、主にLNG等の液化低温流体を通流する船舶側液体通流路SLbとがパラレルに設けられている。両者の下流端は、船舶側貯留部STに連通接続されており、船舶側気体通流路SLaには第1開閉弁V1が、船舶側液体通流路SLbには第2開閉弁V2が夫々設けられている。尚、場合によっては、船舶側気体通流路SLaは、液化低温流体を通流するときもある。
【0028】
これまで説明してきた流体通流管には、内部をパージした際等に気体を外部へ放散する放散弁が複数設けられている。
説明を追加すると、合流流路JTLのうち、緊急遮断弁EVの下流側に第1放散弁HV1が上流側に第2放散弁HV2が夫々設けられている。更に、第1液体通流路LF1の第6開閉弁V6の上流側に第3放散弁HV3が、第2液体通流路LF2の第8開閉弁V8の上流側に第5放散弁HV5が、第1気体通流路GF1の第7開閉弁V7の上流側に第4放散弁HV4が、第2気体通流路GF2の第9開閉弁V9の上流側に第6放散弁HV6が、夫々設けられている。
【0029】
更に、流体通流管の内部に滞留した液化低温流体又は低温気体を、パージするパージガスを通流するパージガス通流路が設けられている。
具体的には、パージガス貯留部PTに連通接続される主パージガス通流路PL0、主パージガス通流路PL0に連通接続されると共に合流流路JTLで緊急遮断弁EVと第1放散弁EV1との間にその一端が接続される第1パージガス通流路PL1、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第1液体通流路LF1に連通接続される第2パージガス通流路PL2、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第1気体通流路GF1に連通接続される第3パージガス通流路PL3、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第2液体通流路LF2に連通接続される第4パージガス通流路PL4、一端が第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に他端が第2気体通流路GF2に連通接続される第5パージガス通流路PL5が設けられている。
また、主パージガス通流路PL0には第1パージ弁PV1が、第1パージガス通流路PL1には第2パージ弁PV2が、第2パージガス通流路PL2には第3パージ弁PV3が、第3パージガス通流路PL3には第4パージ弁PV4が、第4パージガス通流路PL4には第5パージ弁PV5が、第5パージガス通流路PL5には第6パージ弁PV6が、夫々設けられており、特に、第2パージ弁PV2は第1パージガス通流路PL1と合流流路JTLの接続部位の近傍に設けられている。
当該第1パージガス通流路PL1についても、合流流路JTLと同様に、複数の移動体に対して共通して形成される流路であり、移動体の間ではフランジを介して流路を連通接続する構成が採用されている。親移動体PMと子移動体CMとの間は、第2フランジF2を介して連通接続されており、他端の第4フランジF4には、他の移動体の第1パージガス通流路PL1が連通接続可能となっている。
このように、フランジを介する他の移動体の流体通流管と連通接続又は当該連通接続を解除する形で、移動体を増減設置可能で且つ交換可能となっている。
更に、当該実施形態に係る液化低温流体の荷役設備100においては、少なくとも2つ以上の第1、2陸側貯留部LT1、LT2から同時に液化低温流体の荷役を実行可能に構成されている。
【0030】
尚、流体通流管は可撓性を有する配管から構成しても構わない。特に、複数の移動体の間の部分、及び陸側貯留部と移動体の間の部分を、可撓性を有する配管から構成することで、複数の移動体の間の位置決めの自由度を向上できる。
【0031】
さて、これまで説明してきた液化低温流体の荷役設備100は、以下の各運転を順次実行することにより、液化低温流体の荷役を行う。尚、
図2~6において、太破線は気体の流れを示し、太実線は液体の流れを示すものとする。
荷役設備100は、
図1に示す接続状態が維持された状態で、接続段階で流体通流配管の内部に存在する空気をパージするパージ運転を実行する。当該パージ運転では、
図2に示すように、パージガス貯留部PTから吹出されたパージガスが、すべてのパージガス通流路を介して、第1液体通流路LF1、第2液体通流路LF2、第1気体通流路GF1、第2気体通流路GF2及びホースHに導かれ、第2放散弁HV2を除いたすべての放散弁(第1放散弁HV1、第3放散弁HV3、第4放散弁HV4、第5放散弁HV5、第6放散弁HV6)を介して、空気を含むパージガスを大気へ放散する。当該パージ運転では、第2放散弁HV2を除くすべての放散弁及びすべてのパージ弁が開放状態となり、他の弁体は閉止状態となる。
【0032】
次に、天然ガス等の低温気体が、流体通流管に対して導入する気体導入運転が実行される。当該気体導入運転では、
図3に示すように、船舶側貯留部STから低温気体を、船舶側気体通流路SLa、船舶側流路SL、ホースH、合流流路JTL、第1バイパス流路MF1a、第2バイパス流路MF2a、第1混合流路MF1、第2混合流路MF2、第1気体通流路GF1、第2気体通流路GF2、第1気体流入出部GE1及び第2気体流入出部GE2に導入する。即ち、第1開閉弁V1、第3開閉弁V3、緊急遮断弁EV、第4開閉弁V4、第5開閉弁V5、第1流量調整弁RV1、第2流量調整弁RV2、第7開閉弁V7、第9開閉弁V9、第11開閉弁V11、第13開閉弁V13が開放状態となり、それ以外の弁体が閉止状態となる。尚、第1ポンプP1及び第2ポンプP2が逆流ができないポンプである場合、図示しないバイパス流路を介してポンプをバイパスする形態で、低温気体を導入することになる。
尚、詳細な説明は割愛するが、第1、2陸側貯留部LT1、LT2の内部圧力が船舶側貯留部STの内部圧力よりも高い場合、低温気体が、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から船舶側貯留部STへ向かって導入される気体導入運転が実行される。
【0033】
その後、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から液化低温流体を吐出して船舶側貯留部STにて受け入れる液体導入運転が実行される。当該液体導入運転では、
図4に示すように、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から液化低温流体を、第1液体流入出部LE1、第2液体流入出部LE2、第1液体通流路LF1、第2液体通流路LF2、第1混合流路MF1、第2混合流路MF2、合流流路JTL、ホースH、船舶側流路SL及び船舶側液体通流路SLbを介して、液化低温流体が船舶側貯留部STへ導入される。即ち、第10開閉弁V10、第12開閉弁V12、第6開閉弁V6、第8開閉弁V8、第1流量調整弁RV1、第2流量調整弁RV2、第1逆止弁CV1、第2逆止弁CV2、緊急遮断弁EV、第3開閉弁V3、第2開閉弁V2が開放状態となり、それ以外の弁体が閉止状態となる。
当該運転において、必要圧力を第1ポンプP1及び第2ポンプP2にて加圧する形態で、液化低温流体を圧送する。
【0034】
液化低温流体の船舶側貯留部STへの導入が完了すると、流体通流管の内部に存在する液化低温流体の液抜きを行う液抜き運転が実行される。当該液抜き運転では、
図5に示すように、船舶側貯留部STに貯留される低温気体により流体通流配管の内部の液化低温流体を圧送して第1、2陸側貯留部LT1、LT2へ圧送する形で、液抜きが実行される。即ち、船舶側貯留部STの低温気体が、船舶側気体通流路SLa、船舶側流路SL、ホースH、合流流路JTL、第1バイパス流路MF1a、第2バイパス流路MF2a、第1混合流路MF1、第2混合流路MF2、第1液体通流路LF1、第2液体通流路LF2、第1液体流入出部LE1及び第2液体流入出部LE2に導入する。即ち、第1開閉弁V1、第3開閉弁V3、緊急遮断弁EV、第4開閉弁V4、第5開閉弁V5、第1流量調整弁RV1、第2流量調整弁RV2、第6開閉弁V6、第8開閉弁V8、第10開閉弁V10、第12開閉弁V12が開放状態となり、それ以外の弁体が閉止状態となる。尚、第1ポンプP1及び第2ポンプP2が逆流ができないポンプである場合、図示しないバイパス流路を介してポンプをバイパスする形態で、低温気体を導入することになる。
【0035】
最後に、
図6に示すように、パージガス貯留部PTに貯留されるパージガスを用いて、流体通流管の内部をパージするパージ運転を実行する。当該パージ運転では、第1、2陸側貯留部LT1、LT2及び船舶側貯留部STからの液体及び気体の流出を禁止するべく、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第10開閉弁V10、第11開閉弁V11、第12開閉弁V12、第13開閉弁V13を閉止状態とし、その他の弁体を開放状態として、流体通流管の内部にパージガスを通流させて、すべての放散弁から気体を放散する処理を実行する。
【0036】
〔第2実施形態〕
当該第2実施形態に係る液化低温流体の荷役設備100は、
図7に示すように、予冷運転の際に発生する低温気体を第1、2陸側貯留部LT1、LT2の夫々へ返送する複数の第1、2返送流路RL1、RL2を備える点、及び流体通流配管に滞留した液化低温流体を抜き取る液抜き配管NL0を備える点に特徴があるので、その点に重点をおいて説明し、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すと共にその説明を割愛することがある。
尚、第1実施形態においては、第1液体通流路LF1と第1気体通流路GF1とが合流して第1混合流路MF1に連通接続する構成、及び第2液体通流路LF2と第2気体通流路GF2とが合流して第2混合流路MF2に連通接続する構成を示したが、当該実施形態においては、第1気体通流路GF1は第1液体通流路LF1へ合流せず、更には、第2気体通流路GF2は第2液体通流路LF2へ合流しない構成を採用している。
【0037】
一端が第1返送開閉弁RTV1を介して合流流路JTLへ接続すると共に他端が第1気体側返送流路RL1bを介して第1気体通流路GF1の第7開閉弁V7の下流側出口に接続される第1返送流路RL1が設けられている。また、当該第1返送流路RL1の他端には、第1液体通流路LF1の第6開閉弁V6の下流側出口に接続される第1液体側返送流路RL1aが連通接続されており、当該第1液体側返送流路RL1aには、第3返送開閉弁RTV3が設けられている。
更には、一端が第2返送開閉弁RTV2を介して合流流路JTLへ接続すると共に他端が第2気体側返送流路RL2bを介して第2気体通流路GF2の第9開閉弁V9の下流側出口に接続される第2返送流路RL2が設けられている。また、当該第2返送流路RL2の他端には、第2液体通流路LF2の第8開閉弁V8の下流側出口に接続される第2液体側返送流路RL2aが連通接続されており、当該第2液体側返送流路RL2aには、第4返送開閉弁RTV4が設けられている。
【0038】
以上の構成を採用することにより、液化低温流体の導入初期において、液化低温流体通流路としての第1液体通流路LF1と第1混合流路MF1、及び合流流路JTLとから液化低温流体が気化することにより発生する低温気体を、第1返送流路RL1、第1液体側返送流路RL1a及び第1気体側返送流路RL1bを介して、第1気体通流路GF1へ導き、第1陸側貯留部LT1へ返送することができる。
更に、液化低温流体通流路としての第2液体通流路LF2と第2混合流路MF2、及び合流流路JTLとから液化低温流体が気化することにより発生する低温気体を、第2返送流路RL2、第2液体側返送流路RL2a及び第2気体側返送流路RL2bを介して、第2気体通流路GF2へ導き、第2陸側貯留部LT2へ返送することができる。
【0039】
当該低温気体の返送においては、第1返送開閉弁RTV1~第4返送開閉弁RTV4、及び第1、2逆止弁CV1、CV2、第1、2流量調整弁RV1、RV2、第6開閉弁V6~第12開閉弁V12を開放状態とし、他の弁体を閉止状態とする。
【0040】
尚、当該第2実施形態では、流体通流管として、液化低温流体通流路の鉛直方向で下方に位置する状態で、第1、2液抜き開閉弁DV1、DV2を介して液化低温流体通流路に連通接続される液抜き配管NL0を備え、当該液抜き配管NL0には第6パージガス通流路PL6を介してパージガスを圧送可能に構成されている。
当該液抜き配管NL0を用いた液抜き運転については、第4実施形態において詳述する。
【0041】
〔第3実施形態〕
当該第3実施形態に係る液化低温流体の荷役設備100は、陸側貯留部として、内部の充填容量に余裕のある回収用陸側貯留部LT3を接続可能に構成されており、例えば、液化低温流体等を当該回収用陸側貯留部LT3へ回収する回収運転を実行できる点を特徴としている。以下、当該特徴に重点をおいて説明し、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すと共にその説明を割愛することがある。
尚、第1実施形態においては、混合流路MF1、MF2の合流流路JTLへの接続部位においては、逆止弁CV1、CV2と、逆止弁CV1、CV2をバイパスするバイパス流路Mf1a、Mf2aと、当該バイパス流路Mf1a、Mf2aを開閉する開閉弁V4、V5を設ける構成を示したが、当該実施形態においては、これらの構成は省略している。
【0042】
当該第3実施形態においては、フランジ等の接続に関する詳細構成については省略するが、
図8に示すように、回収用陸側貯留部LT3は、第16開閉弁V16を有して液体を流入出する第3液体流入出部LE3を備えると共に、第17開閉弁V17を有して気体を流入出する第3気体流入出部GE3を備える。
更に、回収用陸側貯留部LT3を荷役の用に供するための第2子移動体CM2が設けられている。
第2子移動体CM2は、第3液体流入出部LE3と連通接続すると共に他端に第14開閉弁V14を有する第3液体通流路LF3と、第3気体流入出部GE3と連通接続すると共に他端に第15開閉弁V15を有する第3気体通流路GF3とを備え、両者は、他端側にて接続して第3混合流路MF3に連通接続される。第3混合流路MF3には、第3混合流路MF3を通流する流体の流量を調整する第3流量調整弁RV3が設けられており、その下流端が、他の移動体からの流体が通流する合流流路JTLに接続されている。
更に、第3液体通流路LF3及び第3気体通流路GF3の夫々には、内部の気体を放散するための第7放散弁HV7、第8放散弁HV8が記載の順に設けられている。
また、第3液体通流路LF3は、第7パージ弁PV7が設けられる第7パージガス通流路PL7を介して第1パージガス通流路PL1に連通接続されると共に、第3気体通流路GF3は、第8パージ弁PV8が設けられる第8パージガス通流路PL8を介して第1パージガス通流路PL1に連通接続されている。
【0043】
以上の構成を採用することにより、回収用陸側貯留部LT3を合流流路JTLとを接続して液化低温流体を通流する回収用液化低温流体通流路として第3混合流路MF3及び第3液体通流路LF3を備えることとなり、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から流出した液化低温流体を回収用液化低温流体通流路を介して回収用陸側貯留部LT3へ回収する回収運転を実行可能に構成されている。
当該回収運転は、例えば、
図8に示すように、第1、2ポンプP1、P2が、最低吐出量を下回る低流量を合流流路JTLへ流出する場合に、最低吐出量から低流量を減算した残流量を、回収用陸側貯留部へ回収するミニフロー運転を含む運転である。
図8に示すミニフロー運転では、緊急遮断弁EVが閉止状態となっているが、当該緊急遮断弁EVを開放状態とすることで、最低吐出量から低流量を減算した残流量を船舶側貯留部STへ導くことができる。
【0044】
尚、当該第3実施形態では、流体通流管として、液化低温流体通流路の鉛直方向で下方に位置する状態で、第1、2、3液抜き開閉弁DV1、DV2、DV3を介して液化低温流体通流路に連通接続される液抜き配管NL0を備え、当該液抜き配管NL0には第6パージガス通流路PL6を介してパージガスを圧送可能に構成されている。
当該液抜き配管NL0を用いた液抜き運転については、第4実施形態において詳述する。
【0045】
〔第4実施形態〕
当該第4実施形態にあっては、第3実施形態に開示の構成に加え、流体通流管にて発生した低温気体を陸側貯留部LT1、LT2、LT3へ返送する第3返送流路RL3を備える点を特徴とするため、当該特徴に重点をおいて説明し、第3実施形態と同一の構成については同一の符号を付すと共にその説明を割愛することがある。
尚、第3実施形態においては、第1液体通流路LF1と第1気体通流路GF1とが合流して第1混合流路MF1に連通接続する構成、第2液体通流路LF2と第2気体通流路GF2とが合流して第2混合流路MF2に連通接続する構成、第3液体通流路LF3と第3気体通流路GF3とが合流して第3混合流路MF3に連通接続する構成を示したが、当該第4実施形態においては、第1気体通流路GF1は第1液体通流路LF1へ合流せず、第2気体通流路GF2は第2液体通流路LF2へ合流せず、更には、第3気体通流路GF3は第3液体通流路LF3へ合流しない構成を採用している。
【0046】
第3返送流路RL3は、その下流端がこれまで説明してきた第2放散弁HV2を介して合流流路JTLに接続されると共に、その上流端が、第1液体通流路LF1の第6開閉弁V6の下流側出口、第1気体通流路GF1の第7開閉弁V7の下流側出口、第2液体通流路LF2の第8開閉弁V8の下流側出口、第2気体通流路GF2の第9開閉弁V9の下流側出口、第3気体通流路GF3の第15開閉弁V15の下流側出口の夫々に、連通接続している。尚、第1液体通流路LF1の第6開閉弁V6の下流側出口への接続部位には第5返送開閉弁RTV5が設けられ、第2液体通流路LF2の第8開閉弁V8の下流側出口への接続部位には第6返送開閉弁RTV6が設けられている。
【0047】
更に、流体通流管として、液化低温流体通流路の鉛直方向で下方に位置する状態で、第1、2、3液抜き開閉弁DV1、DV2、DV3を介して液化低温流体通流路に連通接続される液抜き配管NL0を備え、当該液抜き配管NL0には第6パージガス通流路PL6を介してパージガスを圧送可能に構成されている。
具体的には、第1混合流路MF1の鉛直方向での最下端と液抜き配管NL0との接続部位に第1液抜き開閉弁DV1を備え、第2混合流路MF2の鉛直方向での最下端と液抜き配管NL0との接続部位に第2液抜き開閉弁DV2を備え、第3混合流路MF3の鉛直方向での最下端と液抜き配管NL0との接続部位に第3液抜き開閉弁DV3を備えており、第6パージガス通流路PL6には、第9パージ弁PV9が設けられている。
【0048】
第4実施形態に係る荷役設備100にあっては、第1実施形態において示したパージ運転を実行した後、
図9に示す弁の開閉状態において、気体導入運転及び液体導入運転が順次実行される。尚、当該第4実施形態における液体導入運転では、第3返送流路RL3、及び第1気体通流路GF1と第2気体通流路GF2と第3気体通流路GF3とを介して、発生した低温気体が第1、2陸側貯留部LT1、LT2及び回収用陸側貯留部LT3へ返送される。
【0049】
液体導入運転の後、第1ポンプP1及び第2ポンプP2を作動させることになるが、船舶側貯留部STの内部圧力が第1、2陸側貯留部LT1、LT2の許容圧力を超えている場合、船舶側貯留部STの気体が第1、2陸側貯留部LT1、LT2に流れ込まないように、緊急遮断弁EVを閉止している必要がある。第1ポンプP1及び第2ポンプP2の昇圧に時間を要する場合、第1ポンプP1及び第2ポンプP2の吐出圧力(+高低差に伴う圧力+圧損)が船舶の圧力以上になるまで、緊急遮断弁EVは閉止している必要がある。
そこで、
図10に示す回路状態において実行される吐出圧力変更運転においては、緊急遮断弁EVを閉止した状態で、第1ポンプP1及び第2ポンプP2にて液化低温流体を通流しながら吐出圧力を徐々に昇圧しつつ、吐出された液化低温流体を回収用陸側貯留部LT3に回収する。
尚、第1ポンプP1及び第2ポンプP2の降圧時においても同様の処理が実行される。
【0050】
当該運転を実行して、第1ポンプP1及び第2ポンプP2の吐出圧が、船舶側貯留部STの内部圧力を超えた所望の圧力となった時点で、
図11に示すように、緊急遮断弁EV、第3開閉弁V3、第2開閉弁V2を開放状態へ移行すると共に、第3流量調整弁RV3と第14開閉弁V14と第16開閉弁V16を閉止状態へ移行する吐出先変更運転を実行した後、液化低温流体を船舶側貯留部STへ導入する定常荷役運転を実行する。
【0051】
定常荷役運転による荷役が完了すると、再び、吐出先変更運転にて液化低温流体の吐出先を回収用陸側貯留部LT3へ変更し且つ吐出圧力変更運転にて第1ポンプP1及び第2ポンプP2の吐出圧の降圧処理を実行した後、
図12に示す回路状態において、パージガス貯留部PTのパージガスを、主パージガス通流路PL0及び第1パージガス通流路PL1を介して、ホースH、船舶側流路SL、船舶側液体通流路SLbに通流させ、その内部の液化低温流体を船舶側貯留部STへ圧送する第1残液処理運転を実行する。
更に、
図12に示す回路状態に示すように、第1液抜き開閉弁DV1、第2液抜き開閉弁DV2、第3液抜き開閉弁DV3を開放状態として、合流流路JTL、第1混合流路MF1と第2混合流路MF2と第3混合流路MF3、第1液体通流路LF1と第2液体通流路LF2と第3液体通流路LF3に滞留する液化低温流体を、液抜き配管NL0へ導き、その後、
図13に示す回路状態にて、液が抜かれた各流路に、第1、2陸側貯留部LT1、LT2及び回収用陸側貯留部LT3からの低温気体を充填する第2残液処理運転を実行する。
最後に、
図14に示す回路状態において、パージガス貯留部PTから主パージガス通流路PL0、第1パージガス通流路PL1を介してパージガスを、液抜き配管NL0に導き、液抜き配管NL0に貯留される液化低温流体を、第3液体通流路LF3を介して回収用陸側貯留部LT3に回収する第3残液処理運転を実行する。
尚、第3残液処理運転では、回路構成を工夫することにより、残液を第1、2陸側貯留部LT1、LT2へ返送するようにしても構わない。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)船舶との間で荷役される液化低温流体を貯留する陸側貯留部として、上記実施形態では、タンクローリーを例示した。しかしながら、当該陸側貯留部は、陸地に設けられる固定式の貯留タンクの他、水上に配置されたタンカーであっても構わない。
【0053】
(2)更に、図示は省略するが、移動体の夫々には、第1、2陸側貯留部LT1、LT2から圧送されてきた液化低温流体を空気との熱交換により加熱する加熱蒸発器を第1ポンプP1及び第2ポンプP2に替えて圧送手段として備える共に、当該蒸発により昇圧した天然ガス等の低温気体を第1、2陸側貯留部LT1、LT2へ返送する返送路を備え、第1、2陸側貯留部LT1、LT2からの圧力を所望の圧力へ制御する構成を採用することができる。
尚、当該加熱蒸発器にて生成された天然ガス等の低温流体は、燃料として親移動体PMに備えられる発電機に供給することができる。
尚、移動体に組み込まずに独立して設けてある発電機に対して、低温流体を供給しても構わない。
【0054】
(3)上記実施形態において、移動体の夫々は、単一の陸側貯留部に連通接続される構成を示したが、一の移動体に対して、複数の陸側貯留部を連通接続する構成を採用することもできる。
【0055】
(4)子移動体CMが有する第2ポンプP2による液化低温流体の最大圧送流量は、親移動体PMが有する第1ポンプP1による液化低温流体の最大圧送流量よりも少ないものを採用しても構わない。そして、親移動体PMの第1ポンプP1を船舶側貯留部STへの液化低温流体を荷役する荷役運転に稼働し、子移動体CMの第2ポンプP2のみを、流体通流管や船舶のタンク等を予冷する予冷運転に稼働する構成を採用しても構わない。
ただし、子移動体CMの第2ポンプP2は、荷役運転時に稼動させても構わない。このように各ポンプの役割を明確にすることで、ポンプに要求する吐出流量の範囲を限定することができ、設備コストの低減を図ることができる。
【0056】
(5)上記実施形態では、荷役設備100において、一の親移動体PMを備える構成を示した。しかしながら、二以上の親移動体PMを備える構成を採用しても構わない。
そして、親移動体PM同士を離間した場所に配設した状態で、親移動体PMの夫々が各別に、異なる船舶Sとの間で液化低温流体の荷役を実行するように構成しても構わない。
また、親移動体PMの制御装置C同士が、互いに通信して主従関係を構築可能に構成されていても構わない。
【0057】
(6)上記第1~第4実施形態において、第1ポンプP1をバイパスするポンプバイパス流路を設ける構成を採用しても構わない。
当該構成を採用することで、第1ポンプP1が下流側から上流側への逆流が許容されないポンプである場合にも、ポンプバイパス流路を介して下流側から上流側へ流体を通流させることができる。
また、第1ポンプP1が、最低吐出量を下回る低流量を合流流路JTLへ流出する場合に、最低吐出量から最小流量を減算した残流量を、ポンプバイパス流路へ通流するミニフロー運転を実行することができる。
【0058】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の液化低温流体の荷役設備は、船舶によるLNGの荷役を効果的且つ迅速に実行できる液化低温流体の荷役設備として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 :荷役設備
C :制御装置
CM :子移動体
CM2 :第2子移動体
DV1 :第1液抜き開閉弁
DV2 :第2液抜き開閉弁
DV3 :第3液抜き開閉弁
EV :緊急遮断弁
EW :緊急離脱装置
GF1 :第1気体通流路
GF2 :第2気体通流路
GF3 :第3気体通流路
H :ホース
JTL :合流流路
LF1 :第1液体通流路
LF2 :第2液体通流路
LF3 :第3液体通流路
LT1 :第1陸側貯留部
LT2 :第2陸側貯留部
LT3 :回収用陸側貯留部
MF1 :第1混合流路
MF2 :第2混合流路
MF3 :第3混合流路
NL0 :液抜き配管
P1 :第1ポンプ
P2 :第2ポンプ
PL0 :主パージガス通流路
PL1 :第1パージガス通流路
PL2 :第2パージガス通流路
PL3 :第3パージガス通流路
PL4 :第4パージガス通流路
PL5 :第5パージガス通流路
PL6 :第6パージガス通流路
PL7 :第7パージガス通流路
PL8 :第8パージガス通流路
PM :親移動体
PT :パージガス貯留部
QC1 :第1クイックカプラ
RL1 :第1返送流路
RL1a :第1液体側返送流路
RL1b :第1気体側返送流路
RL2 :第2返送流路
RL2a :第2液体側返送流路
RL2b :第2気体側返送流路
RL3 :第3返送流路
S :船舶
ST :船舶側貯留部
TL1 :陸側貯留部
TL2 :陸側貯留部
TL3 :回収用陸側貯留部