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特許7190902電磁干渉インジケータおよび関係する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】電磁干渉インジケータおよび関係する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20221209BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20221209BHJP
   H01Q 9/27 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G01R29/08 D
H01Q1/38
H01Q9/27
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018538224
(86)(22)【出願日】2017-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2017051033
(87)【国際公開番号】W WO2017125465
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】1601134.8
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511247389
【氏名又は名称】キネテイツク・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホード,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ハーキー,デイビッド・ルイス
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0298724(US,A1)
【文献】国際公開第03/083495(WO,A1)
【文献】特開2004-364040(JP,A)
【文献】特開2012-168983(JP,A)
【文献】特開昭59-167102(JP,A)
【文献】特表2013-508689(JP,A)
【文献】特表2009-505069(JP,A)
【文献】特開2010-223931(JP,A)
【文献】特開2010-151751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0032832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
H01Q 1/38
H01Q 9/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超広帯域検出器を備える電磁干渉(EMI)インジケータにおいて、超広帯域検出器は、
受信機保護を有する、EMIを受信するためのアンテナと、
EMI信号の大きさに比例する直流電圧にEMI信号を変換するための対数受信機と、
検出器中で生じた直流電圧が、EMIイベントを示すしきい値電圧を超えるときに、信号を生成するための、受信機の出力部に接続されたピーク/平均検出器およびコントローラとを備え、
データベース中の情報に基づいて、
a)アンテナと対数受信機との間で使用される固定ハードウェア減衰器の減衰値を定義することと、
b)しきい値電圧を微調整し、設定するために使用されるソフトウェア制御電位差計のための値を定義し、前記しきい値電圧の設定は、コード化レベルの入力を介してユニットにプログラムされることと、
c)ピーク検出器のパルス応答時間を定義することと
を行うように構成された検出アルゴリズムを使用して、ピーク/平均検出器は、直流電圧がしきい値電圧を超えるときを検出するように構成されており、
検出器が、EMIイベントを検出すると、指示手段を起動するように構成されている、電磁干渉(EMI)インジケータ。
【請求項2】
アンテナが、遮蔽を行うための、および随意にフレキシブルプリント回路基板上に印刷された、大きい導電性エリアを有する、請求項1に記載のインジケータ。
【請求項3】
アンテナが、逆対数スパイラルアンテナである、請求項1または2に記載のインジケータ。
【請求項4】
アンテナが、方位角または迎角において、湾曲したまたは半球状の形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項5】
アンテナエリアが、特定の脅威周波数、またはアンテナの現在の帯域幅の外部の新生の新しい脅威の検出を可能にするために2つの次元においてスケーラブルである、請求項1から4のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項6】
コントローラが中央処理ユニット(CPU)であり、およびあるいは指示手段がインジケータの一部であり、視覚手段(たとえば、発光ダイオード)または可聴手段(たとえば、ブザー)のうちの少なくとも1つを備える、請求項1からのいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項7】
インジケータが、コンピュータシステムからデータを送信/受信するための1つまたは複数の出力ポートをさらに備え、コンピュータシステムが、ワイヤードまたはワイヤレス手段を介してコンピュータシステムに通信される検出器デバイスからの出力信号に応答するソフトウェアプログラムを備える指示手段を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項8】
外部から導出されるGPS/GNSSタイミング信号も、検出器が検出器の定義されたおよび設置されたロケーションから移動されたかどうか座標の変化を通して指示を与えることによって、不正変更検出を助けるために使用され得る、請求項1からのいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項9】
停電中にEMI検出およびEMIイベントデータ記憶を可能にするバッテリーバックアップが与えられる、請求項1からのいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項10】
1つまたは複数のエレクトロニクス構成要素がEMI遮蔽筐体内に格納される、請求項1からのいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項11】
受信機が、受信機を保護するように開回路を与えるための犠牲故障モードをもつ要素を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項12】
ワイヤードまたはワイヤレス手段を介してコンピュータシステムに通信される検出器デバイスからの出力信号に応答するソフトウェアプログラムを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項13】
遠隔制御および問合せを提供するコンピュータシステムに組み込まれ、前記コンピュータシステムが、随意に、1つまたは複数のインジケータをインターフェースすることに専用のソフトウェアアプリケーションを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項14】
高いピーク電力をもつEMI信号と、高い瞬時平均電力成分のEMI信号との弁別を可能にする、ピーク/平均弁別が達成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項15】
不揮発性メモリ記憶装置が含まれ、検出器によって記録されるEMIイベントが電気/電子システムの不調/誤動作と時間相関されることを可能にし、前記不揮発性メモリ記憶装置が不正変更保護され、データが科学捜査的に検査され、証拠手段のために使用されることを可能にする、請求項1から14のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項16】
搭載リアルタイムクロックチップから導出されるタイムスタンプが、外部から導出されるGPS/GNSSタイミング信号に対して較正され、前記タイムスタンプが、こうして、不揮発性メモリに記憶されたイベントデータストリングの構成部分を形成する、請求項1から15のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項17】
通信が、1つの切断可能なワイヤードチャネル/ポートと、ワイヤレスチャネルの2つの形態、(ワールドワイドな)長距離のためのGPRSおよび(200mよりも小さい)短距離のためのZigbeeとを介して達成される、請求項1から16のいずれか一項に記載のインジケータ。
【請求項18】
請求項15に記載のインジケータの使用を備える、EMIから電気/電子機器を識別および/または保護する方法であって、前記不揮発性メモリ記憶装置が、追加または代替として、電気/電子機器の自動パワーダウン制御に接続可能である、方法。
【請求項19】
電気/電子機器のためのEMIを識別する方法であって、
a)電磁放射に応答して、少なくとも30MHzから6GHzの帯域幅を有する検出器において直流電流および電圧信号を生成するステップであって、検出器が、それぞれの整流器を有する少なくとも1つのアンテナと、対数受信機とを備える、生成するステップと、
b)ピーク/平均検出器を使用して、ステップ(a)において生成された直流電圧を、EMIイベントを示すしきい値電圧と比較するステップと、
c)直流電圧がしきい値電圧を超える場合、環境が不利であるという指示を与えるステップと
を備え、
データベース中の情報に基づいて、
a)アンテナと対数受信機との間で使用される固定ハードウェア減衰器の減衰値を定義することと、
b)しきい値電圧を微調整し、設定するために使用されるソフトウェア制御電位差計のための値を定義し、前記しきい値電圧の設定は、コード化レベルの入力を介してユニットにプログラムされることと、
c)ピーク検出器のパルス応答時間を定義することと
を行うように構成された検出アルゴリズムを使用して、ピーク/平均検出器は、直流電圧をしきい値電圧と比較する、方法。
【請求項20】
調査モードの間に、周囲EMI環境または通常EMI環境を記録および監視することと、記録された通常EMIイベントまたは周囲EMIイベントから異常EMIイベントを弁別することとをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射電磁干渉(EMI:electromagnetic interference)を検出するための、およびEMIの強度が所定のレベルを超えたときに指示するための、システムおよびプロセスに関する。本システムは、ワイヤードまたはワイヤレスリンクにわたって中央コンピュータ端末に通信することができる、いくつかの検出器デバイスを備える。特に、検出器デバイスは、電気/電子機器の機能に干渉しやすい、周波数、エネルギーおよび他の信号パラメータを有するEMIを検出することが可能である。本EMI検出システムは、低ランニングコストをもつ低コストソリューションを提示する。
【背景技術】
【0002】
電気/電子機器はEMIを受けやすいことがある。強い電磁界およびパルスが、電気/電子機器中で電流および電圧を誘起することができ、機器が誤動作するかまたは永続的に損傷を受けることを引き起こす。情報通信技術(ICT)、たとえば、金融機関(銀行、株式市場)、航空機産業(航空機および航空交通管制)、セキュリティ機器、および公益事業(電話交換局、電力グリッドコントローラ)など、電気/電子機器に高度に依拠するビジネス慣行が特に危険にさらされる。機器に不調または損傷を引き起こす電磁妨害は、しばしば、電磁干渉またはEMIと呼ばれる。これは、無線受信機の性能の劣化を引き起こし得る、無線信号への妨害を暗示する、「干渉」という用語のより一般的な用法と混同されるべきでない。このテキストでは、用語EMIは、電気/電子機器の通常動作機能における逸脱を引き起こす電磁信号を指す。
【0003】
電磁干渉源が、意図的なまたは意図的でないものとして分類され得る。意図的なEMIは、電気/電子機器に混乱、不調または誤動作を引き起こすことが目的とされるEMエネルギーの故意の生成である。意図的でないEMIは、自然にまたは偶然に発生することがあるが、電気/電子機器に対する影響は同様であり得る。意図的でないEMIの潜在源の例は、電光および静電放電(ESD:electro-static discharge)の自然EM現象、または無線周波数(RF)送信機などの人工源である。
【0004】
意図的なまたは意図的でないEMIのいずれかのタイプは、狭帯域または広帯域としてさらに説明され得る。超広帯域と呼ばれることがある、広帯域の干渉は、普通は、典型的に数百ピコ秒から数ナノ秒の持続時間の極めて短いパルスによって生成される。これらのパルスは、広帯域幅、典型的に中心周波数の25-100%を有し、広帯域干渉の周波数範囲は、数百MHzから数GHzを瞬時にカバーすることができる。狭帯域干渉は、中心周波数の1%の公称帯域幅を有する。狭帯域干渉は、一般に、はるかに高い平均電力成分を有するが、広帯域信号は、高い瞬間ピーク電力成分を有する傾向がある。
【0005】
電気および電子機器は、たとえば、核電磁パルス(NEMP:nuclear electromagnetic pulse)デバイスまたは電光(LEMP)によって生成された電磁パルス(EMP)からの単一のEMイベントをも受けやすい。EMP放射は、通常、従来の連続干渉物よりも低い周波数成分と、従来の連続干渉物よりも広い帯域幅の両方を有するものとして特徴づけられ、典型的に10kHzから150MHzであり、より長いパルス幅、典型的に数百ナノ秒を示すが、一般に、はるかに高いエネルギーのものである。上記で説明された干渉物のすべては、たとえば、たいていのビジネス慣行において見られる電気/電子機器に脅威を与えると考えられる。
【0006】
データ処理または通信のための電気/電子機器に対する、社会による広範な使用および絶えず増大する依存は、EMIに対する電気/電子機器の感受性を特に重要なものにする。電気/電子機器を保護するための旧来の対策は、導電性シールド内に機器を密閉することと、ケーブル接続上でフィルタ処理を使用することとを伴う。遮蔽およびフィルタ処理は、EMIに対する有効ガードを与えることができるが、特にたいていの商業利用可能な電気機器は、必要とされる程度の保護を与えられていないので、特定のビジネスによって所有される電気/電子機器のあらゆる部片上での遮蔽およびフィルタ処理の使用は、法外に費用がかかることが判明し得る。遮蔽はまた、システムにかなりの重量を加えることがあり、これは明らかに携帯性を妨害する。完全密閉導電性ルーム内に機器およびケーブルを格納することが、代替ソリューションを提示する。しかしながら、特定のビジネスによって所有されるすべての電気機器が、好都合にこのようにして保護され得るとは限らない。結果として、そのようなルームサイズの筐体は、一般に、重要な機器を保護するために使用されるにすぎない。このタイプの筐体は、明らかに、ポータブル電気/電子機器を保護するのに適さない。
【0007】
電気/電子機器のあらゆる部片を遮蔽することとケーブル敷設とは、費用がかかるおよび不都合であることが判明し得るので、代替手法は、単に、混乱させるレベルのEMIのインジケータを提供することであり、それゆえ、ユーザが、自分自身の回避行動、たとえば、EMI源からさらに電気機器を移動すること、シールドを設けること、機器の電源を切断すること、をとることを可能にすることである。ユーザは電気機器を保護することに関心がないが、代わりに、処置がとられ得るように、電気機器がEMIに遭遇したときを知ることだけを望む状況があり得る。エレクトロニクスへの電磁妨害は、特に、たいていの電気機器のクラッシュまたは同様の混乱が、しばしば、ソフトウェアまたはハードウェア障害に起因するので、見分けることが極端に困難であり得る。それゆえ、電気/電子機器を混乱させることが可能なEMIが検出されたときに指示を与えるデバイスを有することが望ましい。
【0008】
EMIを検出するとアラームを鳴らすための現在のデバイス、たとえば、RF漏洩検知器および電磁界パーソナルモニタは、一般に、電子レンジなど、コンシューマーエレクトロニクスからの放出を検出するように設計され、超広帯域幅、短パルス狭帯域、または単一イベントのEMIを検出するために必要な周波数の範囲またはパルス特性をカバーしない。
【0009】
WO03/083495(QinetiQ)が、少なくとも10MHzから7GHzの帯域幅を有するEM放射を受信するためのループアンテナ検出器と、EM放射の強度がパーソナルコンピュータを混乱させることが可能なレベルに接近するときに警告を生成するための指示手段としてのLEDおよびブザーとを備える、電磁放射を検出するためのEMIインジケータについて説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第03/083495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
EMI、意図的であるのか意図的でないのかにかかわらず、とりわけパルス(広帯域)EMI、のタイプを検出および区別するための、およびそのようなEMIの強度が所定のしきい値レベルを超えたときに指示するための、拡張能力および/または効率性をもつ、さらなるEMI検出器デバイスおよびシステムを提供する必要がある。したがって、そのようなデバイス、システムおよびプロセスを提供することが本発明の目的である。特に、EMIの特性が、典型的な電気/電子機器の動作を混乱させるための潜在能力を有し、EMIの強度が、典型的な電気/電子機器の動作を混乱させるために必要なレベルに接近する、EMIを検出および監視するために好適な低コストデバイスを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による発明を提供する。本発明の利点は、以下のようなさらなる説明および例から理解されよう。本発明は、EMIを検出することと、EMIが電気/電子機器に脅威を与えることを指示することとを行うための手段を提供する。本発明による、システムおよびインジケータが、ワイヤードまたはワイヤレス手段を使用して、中央端末と通信され、中央端末によって制御され得る、単一の検出器または多くの検出器を備えることができる。
【0013】
コントローラが、任意の好適な形態をとり得、たとえば、プロセッサ、たとえば、中央処理ユニット(CPU)または複数のプロセッサであり得る。
【0014】
本発明の検出器は、広範囲のロケーション設定、電源オプションおよび設定最適化をも可能にする。本発明によるコンピュータシステムが、遠隔制御および問合せのさらなる利点を提示する。
【0015】
現在のEMI脅威の分析によれば、本発明の検出システムは、少なくとも30MHzから6GHzの帯域幅を有する。したがって、検出器は、アンテナ(または(1つまたは複数の)アンテナ)と、受信機保護をもつ受信機と、関連する制御エレクトロニクスとを組み込む。好適に、すべての潜在的にEMIを受けやすい検出器の部分は、遮蔽筐体中に格納される。
【0016】
好ましくは、アンテナエリアは、存在する帯域幅の外部の新しい脅威に適応するようにスケーラブルである。アンテナの必要とされる超広帯域応答を達成するために、1つの好ましいソリューションは、ブロードバンド逆スパイラルまたは中央給電逆ログスパイラルなど、スパイラルである。
【0017】
アンテナができる限り広い「視野」角を有するように、アンテナはフレキシブルプリント回路基板上にプリントされ得る。この基板は、好適に、検出角度またはビーム幅を最適化するように整形され得、たとえば、(方位角または迎角において)湾曲したまたは半球状の形状である。アンテナ導電性要素は銅合金から製造され得るが、他の好適な金属、たとえば銀および金が使用され得る。いくつかの好ましい実施形態では、アンテナ設計は、大きい導体エリアが、アンテナの後ろに物理的に位置するデバイスエレクトロニクスに遮蔽(スクリーニング)または部分遮蔽を行うように、大きい導体エリアを有する。
【0018】
検出器機能は、平均値の弁別を可能にする:連続波(CW)、狭帯域EMIおよびピーク(またはパルス)EMIの特性、広帯域および超広帯域EMIの特性。検出器は、EMI信号電圧をあらかじめ設定されたしきい値電圧と比較することによってフォールスアラームを低減するやり方を組み込む。これは、たとえば、脅威および効果データベースから導出され、以下の3つの機構を介してしきい値を設定するアルゴリズムを使用して達成される。
a)アンテナと受信機との間で使用される固定ハードウェア減衰器の値を定義すること。
b)しきい値を微調整するために使用されるソフトウェア制御電位差計のための値を定義すること。前記しきい値設定は、コード化レベルの入力を介してユニットにプログラムされ、前記コード化レベルは、検出器への電力が失われ、バッテリーバックアップが消耗されると、ソフトウェアコード化されたしきい値が再設定されるように、揮発性メモリに記憶される。
c)ピーク検出器のパルス応答時間を定義すること。
【0019】
検出器および/または中央端末は、EMIイベントが検出されたことを指示する手段を提供する。検出器ユニットの場合、インジケータは、発光ダイオードを介した視覚的指示を備えることができる。他の好適な視覚インジケータが使用され得る。可聴インジケータ、たとえばブザーが使用され得る。代替的に、中央端末は、ワイヤードまたはワイヤレス手段を介してコンピュータシステムに通信される検出器デバイスからの出力信号に応答するソフトウェアプログラムを組み込み、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介してソフトウェアを通してEMIイベントの指示を与える。
【0020】
不揮発性メモリ記憶装置が、「EMIイベント」および検出器システムステータスデータの記憶のために使用される。「EMIイベント」は、所定のしきい値レベルを超える、単一の狭帯域または広帯域EMIの発生の検出に対応する。(1つまたは複数の)EMIイベントが、コロケートされた電気機器で遭遇された障害と後で時間相関され得るように、イベントデータがタイムスタンプされる。外部から導出されるGPS/GNSSタイミング信号を介して較正される、搭載リアルタイムクロック回路からクロック信号を導出することによって、正確なタイミングが達成される。イベントデータの記憶は、診断/科学捜査手法が、関連のあるEMI脅威を特徴づけ、区別することを可能にする能力を与える。
【0021】
検出器は、選択可能な期間および間隔にわたる詳細なリアルタイム調査を行う能力、ならびに調査イベントまたはあらかじめ設定されたしきい値レベルを上回るイベントの記録を不揮発性メモリデバイスに記憶する能力をも有する。また、調査データをEMIイベントデータと比較することは、フォールスアラームを最小限に抑えることを容易にする。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、中央端末を介した接続/制御を通してEMIからの電気/電子機器のパワーダウン保護を行う方法を提供する。本発明は、低い製造コストおよびランニングコストなど、他の利益をも提示する。
【0023】
本発明の特定の利点は、以下のようなさらなる説明および例から理解されよう。次に、本発明の実施形態が、単に例として、および添付の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】検出器ユニットから離れて配置され得る、中央端末にワイヤレスに接続された遠隔検出器ユニット(RDU)を備える、EMI検出およびインジケータシステムの図である。任意の数の遠隔検出ユニットが端末に接続され得る。RDUは、EMIイベントおよびシステムステータスの視覚インジケータ(1)を提供する。中央端末は、グラフィックユーザインターフェース(GUI)を介してソフトウェアを通して視覚インジケータをも提供する。
図2】本明細書で論じられる主要なサブシステム機能を示す遠隔検出ユニットの図である。
図3】方位角において湾曲された逆ログスパイラルアンテナをもつデバイスの表現の図である(暗い色が導電性表面であり、明るい色が誘電体表面である)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されているように、中央端末が、双方向のコマンド、制御およびデータ回復機能を提供する。中央端末は、離れて(遠隔検出ユニットのロケーションから離れて)配置され得、2つのフォーマット、(200mよりも小さい)短距離のためのZigBeeまたは(ワールドワイドな)より長い範囲のためのGPRS SMSテキストメッセージングで、着脱可能なワイヤードデータリンクまたはワイヤレスデータリンクを介して、1つまたは複数の遠隔検出器ユニット(RDU)(1)と通信する。RDUは、EMIイベントおよびシステムステータスの視覚的指示を与える。中央端末は、ZigBeeおよびGPRSモデムをもつ標準既製コンピュータシステムであり、コマンド、制御およびデータ回復機能を提供するための特注ソフトウェアがロードされ得る。中央端末も、EMIイベントの視覚的指示を与える。中央端末と「n」個のRDUとの間の双方向ワイヤレス通信は、RDUプログラミングアップリンク、あるいはRDUからのEMIイベントまたはシステムステータスダウンリンクを提供する。双方向ワイヤレス通信モード(2)が可能である(GPRSおよびZigBee)。ワイヤード(USB)リンクも、エンジニアリング目的のために提供される。
【0026】
図2に示されているように、検出器は、受信機によって処理するのに好適な電圧に放射EMIを変換するために、受信モードで動作するアンテナまたは(1つまたは複数の)アンテナを組み込む。アンテナ受信機組合せは、周波数範囲30MHzから6GHzにわたってほぼフラットな電圧出力を与える。アンテナ受信機組合せは、典型的に100ピコ秒程度に短いパルス幅に応答する。アンテナは低コストであり得、容易に利用可能なフレキシブルで適合するプリント回路基板(PCB)材料から製造され得る。設計は、標準プリント回路基板作製技法を使用して基板上にエッチングされ得る。アンテナは、アンテナの視野角/ビーム幅を増加させるように円弧に設置され得、半球などの他の形状に形成され得る。
【0027】
図3に示されているように、1つの好ましいアンテナ設計は、アンテナが、アンテナの後ろに位置するアイテムのためのある程度の遮蔽を行うように、大きい導電性/金属表面エリアを与える逆ログスパイラルである。本発明によるアンテナの設計は、視覚的に魅力的であり得る。
【0028】
アンテナは、たとえば、アンテナの現在の帯域幅の外部にある何らかの新しい脅威が将来において出現する場合、特定の脅威周波数がカバーされることを可能にするために、2つの次元(エリア)においてスケーラブルであり得る。
【0029】
受信機保護は、図2に示されているように、使用のために検出器ユニットを作動させるのに先立って定義された限度内で受信機フロントエンドのための保護を提供する。受信機保護は、EMI減衰と調整可能な減衰制御とを連続的に利用する。使用される減衰の大きさは、検出アルゴリズムによって必要とされるもののうちで受信機のダイナミックレンジをもたらすために必要とされるものに依存する。受信機保護チェーンの第1の要素は、極めて高い強度のEMIが検出器デバイスに当たった場合、減衰の第1の要素がまず故障し、開回路条件を作り出すことになるという意味で、犠牲的である。
【0030】
受信機は、(アンテナおよび保護要素を通した伝搬の後で)EMI信号に応答し、対数ベースの信号レベルの大きさに関係する出力信号レベルにEMI信号を変換する。これは、入力信号レベルにおける小さい変化が、出力信号レベルにおける大きい変化を作り出すことを意味する。受信機のダイナミックレンジは、少なくとも50dBである。受信機は、ピーク検出/平均検出要素にインターフェースする。
【0031】
RFしきい値検出器回路が、2つのチャネルを備える。一方のチャネルは、(連続波(CW)または狭帯域EMIを特徴づける)瞬時「平均」EMI環境の検出を行い、他方のチャネルは、典型的に100ピコ秒のパルス幅応答をもつEMIの(広帯域および超広帯域EMIを特徴づける)ピーク検出を行う。
【0032】
ピーク/平均検出、しきい値設定要素は、EMI信号を検出し、しきい値レベル、ピーク/平均RFレベル、および波形持続時間の設定を可能にする。多種多様な潜在的EMI脅威信号がある。脅威EMI信号を追跡するために、主要な脅威信号パラメータ(変調、および出力の大きさ)を記述するデータベースが、構築および使用され得る。この「脅威」データベースは、様々なソースからのデータを使用して有用に組み立てされ得る。
【0033】
「脅威データベース」に加えて、「効果データベース」も様々なソースからのデータに基づいて作成され得る。検出器のピーク/平均検出しきい値を較正するために、「脅威」データベースと「効果」データベースの両方の分析から、アルゴリズムが作成される。脅威データベースと効果データベースの両方は、新しい脅威または効果データで定期的に更新され得る。アルゴリズムは、以下の3つの機構を使用して検出器に好適に実装される。a)固定ハードウェア減衰器が、アンテナと受信機との間で使用される。減衰器の値は、アルゴリズムによって定義される。b)ソフトウェア制御電位差計が、しきい値を微調整するために使用される。ソフトウェアしきい値設定が、コード化レベルの入力を介してユニットにプログラムされる。コード化レベルは、検出器への電力が失われ(バッテリーバックアップが消耗される)と、ソフトウェアコード化されたしきい値が再設定されるように、揮発性メモリに記憶される。c)ピーク検出器の応答時間が、アルゴリズムによって指示された応答時間に対して較正される。ピーク/平均検出は、EMI検出器コントローラまたは中央処理ユニット(CPU)にインターフェースする。
【0034】
CPUは、EMIイベントがキャプチャされることを保証するために、EMI検出器システムの機能を制御する。ピーク/平均RF振幅レベルおよびイベント持続時間が測定され、CPUメモリとイベント記憶装置の両方に記憶される。CPUは、不揮発性メモリ記憶装置と、ピーク/平均検出器と、ワイヤードプログラミングポートと、(1つまたは複数の)ワイヤレスネットワークインターフェースポートとにインターフェースする。CPU埋込みソフトウェアが、CPUが、制御機能、不揮発性イベントデータ記憶デバイスへのイベントデータの割当てを実行することと、システムステータスを監視することとを可能にする。
【0035】
法的訴訟において使用するのに好適な規格のイベントデータの潜在的証拠として使用するために意図される、EMIイベントデータ(しきい値レベルを上回るEMIの大きさ、イベントの時間、およびイベントのデータ)が、不揮発性メモリに安全に記憶される。
【0036】
CPUは、選択可能なしきい値レベルにおいて、ピークまたは平均イベントの記憶を同時にまたは別々に管理することができる。しきい値レベルおよび検出器の動作モード(ピーク、平均、または両方)は、ワイヤードまたはワイヤレスインターフェースを介してプログラム可能である。イベントデータは、リアルタイムクロックを使用してタイムスタンプされ、メモリにおよび不揮発性メモリデバイスに記憶される。メモリデバイスは、フラッシュメモリが証拠目的のために使用されることを可能にする、不正変更防止設計を容易にするために、遮蔽筐体内で物理的に保護される。
【0037】
いくつかの場合には、検出器は、EMIイベントが一般的にまたは日常的に遭遇される環境中に配置されるように要求されることが予想される。たとえば、アーク、コロナ、部分放電および回路遮断器過渡現象によって生成されたものなど、EMIイベントが極めて一般的であるロケーション、特にたとえば高電圧変電所サイト。これらの一般的、日常的または「周囲」EMIイベントに対処し、これらのEMIイベントを有意なEMIイベントと弁別するために、検出器は、ユーザ決定された調査期間にわたって周囲環境の完全な特徴づけを可能にする、周囲調査モードを装備することができる。さらに、検出器によって記録された「イベント」をサイトの重要な電気/電子機器の実際の機能的妨害と相関させることが有用であることが分かっている。
【0038】
不正変更検出デバイスは、EMI検出器システムが、無認可の人によって、すなわち、EMI検出器にアクセスしようとする無認可の試みを用いてEMI検出器システムが不正変更されたことをユーザにアラートすることと、検出器の設置されたロケーションから検出器が移動されたかどうかを決定することとを可能にする。不正変更検出デバイスは、GPS/GNSSロケーション信号に基づくことができる。検出器のための電源は、主に、1次電源を供給する幹線電力/充電器モジュールを備える。内部バックアップ機能を提供する内部バックアップ電源も、幹線停電中にEMI検出デバイスの動作を維持するために供給される。検出デバイスは、検出エレクトロニクスを保護するために、EMI遮蔽およびフィルタ筐体内に収められる。EMI遮蔽筐体は、検出器デバイスの視覚的指示「ステータス(オン/オフ)」、「イベント検出」、「調査モードアクティブ」、および「GPRSアクティブ」を与える。遮蔽筐体は、環境バリアを提供することと、固定および取付けの適切な方法を提供することとを行うために、プラスチック筐体内に収められる。
【0039】
本発明によれば、関連のあるサイト上の(1つまたは複数の)検出器の物理的ロケーションの選定は、外部電源を含むべきかどうかを含めて適応され得る。設備の外部から内部への何らかの脅威の伝搬に影響を及ぼすファクタの大きさの不確実性を仮定すれば、設備の外部の検出器によって観測された妨害をEMI「脅威」イベントとして反映するための適切なしきい値の設定は困難であり得る。検出器の最適な場所のための1つの好ましいストラテジーは、重要な機器にできる限り近接して、および、好ましくは、脅威が発することがある最も可能性がある方向に整合させて、検出器を配置することである。
【0040】
追加として、電気的に雑音の多い電気/電子機器から離れて検出器を位置決めすることが、より良い感度と、それゆえ、EMIを検出することのより大きい見込みとを可能にするために好ましい。
図1
図2
図3