(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】放射線撮像装置および放射線撮像システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221209BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20221209BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20221209BHJP
H04N 5/32 20060101ALI20221209BHJP
H04N 5/341 20110101ALI20221209BHJP
H04N 5/355 20110101ALI20221209BHJP
H04N 5/353 20110101ALI20221209BHJP
G01N 23/04 20180101ALN20221209BHJP
【FI】
A61B6/00 300S
G01T7/00 A
G01T1/17 G
H04N5/32
H04N5/341
H04N5/355 630
H04N5/353
A61B6/00 320M
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2019004620
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 亮介
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192443(JP,A)
【文献】特開2017-092606(JP,A)
【文献】特開2017-067501(JP,A)
【文献】特開2014-219248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G01T 1/00 - 7/12
H04N 5/30 - 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像を取得するための撮像部に配され、入射する放射線を検出するための複数の検出素子を含む放射線撮像装置であって、
前記放射線撮像装置は、線量取得部をさらに含み、
前記線量取得部は、露出制御を行う期間において、
前記複数の検出素子のうち第1検出素子および第2検出素子から、並行して互いに異なるサンプリング周期で信号を取得し、
前記第1検出素子から取得する第1信号と、前記第2検出素子から取得する第2信号と、に基づいて、入射する放射線量を検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記線量取得部は、前記第1検出素子から第1サンプリング周期で取得する前記第1信号と、前記第2検出素子から前記第1サンプリング周期よりも長い第2サンプリング周期で取得する前記第2信号と、に基づいて、入射する放射線量を検出することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記線量取得部は、
前記第1信号がサンプリングされた回数が予め設定された回数までは、前記第1信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行い、
前記第1信号がサンプリングされた回数が予め設定された回数を越えると、前記第2信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記予め設定された回数が、10回以上かつ100回以下であることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記線量取得部は、
前記第1信号の信号値が予め設定された値を越えると、前記第1信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行い、
前記第1信号の信号値が予め設定された値までは、前記第2信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記線量取得部は、
前記第1信号の累積値を、前記第2信号の累積値に応じて補正し、
補正された前記第1信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記線量取得部は、前記第2サンプリング周期ごとに前記第2信号の累積値を更新した際に、前記第1信号の累積値を取得した前記第2信号の当該累積値に置換することを特徴とする請求項6に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記線量取得部は、
前記第1信号および前記第2信号の単位時間あたりの信号値の変化の比を取得し、
前記第1信号を累積する際に、前記第1信号の信号値に前記比を適用し、前記第1信号の累積値を取得することを特徴とする請求項6または7に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記第1サンプリング周期が、前記第2サンプリング周期の1/3以下かつ1/20以上であることを特徴とする請求項2乃至8の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記線量取得部は、
放射線が照射される前に、前記第1検出素子から前記第1サンプリング周期で第1オフセット信号、および、前記第2検出素子から前記第2サンプリング周期で第2オフセット信号をそれぞれ取得し、
露出制御を行う期間において、前記第1信号を前記第1オフセット信号に応じて、および、前記第2信号を前記第2オフセット信号に応じて、それぞれ補正し、補正された前記第1信号および前記第2信号に基づいて、入射する放射線量を検出することを特徴とする請求項2乃至9の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記線量取得部は、露出制御を行う期間において、
前記複数の検出素子のうち前記第1検出素子および前記第2検出素子が配される関心領域とは異なる関心領域に配された第3検出素子および第4検出素子から、前記第1検出素子および前記第2検出素子と並行して一定のサンプリング周期で信号を取得し、
前記第1信号、前記第2信号、前記第3検出素子から第3サンプリング周期で取得する第3信号、および、前記第4検出素子から前記第3サンプリング周期とは異なる第4サンプリング周期で取得する第4信号に基づいて、入射する放射線量を検出することを特徴とする請求項2乃至10の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記撮像部は、放射線画像を生成するための複数の画素が配された画素アレイを含み、
前記複数の検出素子が、前記画素アレイに配されることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記撮像部は、放射線画像を生成するための複数の画素が配された画素アレイを含み、
前記複数の画素のうち一部が、前記複数の検出素子として機能することを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
前記第1検出素子と前記第2検出素子とが、前記複数の画素が配されるピッチにおいて、10ピッチ以下の間隔で配されていることを特徴とする請求項12または13に記載の放射線撮像装置。
【請求項15】
前記第1検出素子と前記第2検出素子とが、前記複数の画素が配されるピッチにおいて、2ピッチ以上の間隔で配されていることを特徴とする請求項12乃至14の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項16】
前記第1検出素子および前記第2検出素子が、同じ関心領域に配されることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置からの信号を処理する信号処理部と、
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置および放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、半導体材料によって構成される平面検出器(フラットパネルディテクタ:FPD)を用いた放射線撮像装置が広く使用されている。こうした放射線撮像装置において、放射線撮像装置に入射する放射線をモニタすることが知られている。特許文献1には、放射線量をリアルタイムで検出することによって、放射線の照射中に入射した放射線の積算線量を把握し自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、X線露光量検出画素から所定時間間隔で信号を読み出し、予め設定してある所定値と比較することが示されている。しかしながら、強い放射線が入射する(単位時間あたりの放射線量が多い)条件の場合、信号を読み出す1回あたりの信号値が大きくなり、蓄積された信号値が所定値を超えた時点で適性な露光量を超過してしまう可能性がある。一方、弱い放射線が入射する(単位時間あたりの放射線量が少ない)条件の場合、信号を読み出す1回あたりの信号値は小さくなるが、蓄積された信号値が所定値に達するまでの読出回数が増加することで、読出回路のノイズが信号値に重畳される回数が増加する。ノイズの重畳によって、蓄積された信号値が、目標線量に対して大きな誤差を含んでしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、AECの精度向上に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る放射線撮像装置は、放射線画像を取得するための撮像部に配され、入射する放射線を検出するための複数の検出素子を含む放射線撮像装置であって、放射線撮像装置は、線量取得部をさらに含み、線量取得部は、露出制御を行う期間において、複数の検出素子のうち第1検出素子および第2検出素子から、並行して互いに異なるサンプリング周期で信号を取得し、第1検出素子から取得する第1信号と、第2検出素子から取得する第2信号と、に基づいて、入射する放射線量を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、AECの精度向上に有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態にかかる放射線撮像装置を用いた放射線撮像システムの構成例を示す図。
【
図2】
図1の放射線撮像装置の撮像部の構成例を示す等価回路図。
【
図3】
図1の放射線撮像装置の撮像部の構成例を示す等価回路図。
【
図4】
図1の放射線撮像装置の動作例を示すフロー図。
【
図5】
図1の放射線撮像装置の動作例を示すタイミング図。
【
図6】
図1の放射線撮像装置の動作例を示すタイミング図。
【
図7】比較例の放射線撮像装置の動作例を示すタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
【0011】
図1~7を参照して、本発明の実施形態における放射線撮像装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態における放射線撮像装置100を用いた放射線撮像システムSYSの構成例を示す図である。本実施形態において、放射線撮像システムSYSは、放射線撮像装置100、制御用コンピュータ200、放射線制御装置300、放射線発生装置400を含む。
【0012】
放射線撮像装置100は、放射線画像を取得するための撮像部120に配され、入射する放射線を検出するための複数の検出素子を含む。また、撮像部120の構成の詳細は後述するが、撮像部120は、放射線画像を生成するための複数の画素が配された画素アレイをさらに含み、画像情報を出力する。放射線撮像装置100は、撮像部120に配された検出素子から信号を取得し、露出制御を行うために入射する放射線量を検出する線量取得部140、撮像部120の駆動を制御するための駆動制御ユニット160をさらに含む。線量取得部140は、放射線の照射中に、検出素子から出力された信号を演算し、入射した放射線量や放射線強度の時間変動を含む露光情報を出力する。線量取得部140には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やDSP(Digital Signal Processor)、プロセッサなどのデジタル信号処理回路が用いられてもよい。また、線量取得部140には、サンプルホールド回路やオペアンプなどのアナログ回路が用いてられてもよい。また、
図1において、線量取得部140は、放射線撮像装置100内に配される構成としたが、線量取得部140の機能の一部またはすべてが、制御用コンピュータ200に含まれていてもよい。この場合、放射線撮像装置100と制御用コンピュータ200のうち線量取得部140の機能とをあわせて、本発明の「放射線撮像装置」といえる。
【0013】
制御用コンピュータ200は、放射線撮像システムSYSの全体を制御し、放射線の照射の制御や放射線画像の取得を行う。また、制御用コンピュータ200は、ユーザ(例えば、医師や放射線技師)が放射線撮像システムSYSを使用する際のユーザインタフェースとして機能しうる。放射線制御装置300は、制御用コンピュータ200から受信する放射線の照射制御に関する信号に従って放射線発生装置400を動作させる。放射線発生装置400は、放射線制御装置300に従って、放射線撮像装置100に放射線を照射する。
【0014】
図2は、本実施形態における撮像部120の構成例を示す等価回路図である。撮像部120は、画素アレイ112、読出回路113、駆動回路114、A/D変換器110を含む。
図2には、説明の簡便化のために、5行×5列の画素PIXが配された画素アレイ112が示されている。しかしながら、実際の画素アレイ112は、より多くの画素PIXが配され、例えば、17インチの撮像装置では約2800行×約2800列の画素PIXを有しうる。
【0015】
画素アレイ112は、行列状に配された複数の画素PIXを有する。画素PIXは、放射線を電荷に変換する変換素子102と、その電荷に応じた電気信号を出力するためのスイッチ素子101と、を含む。本実施形態において、変換素子102として、放射線を変換素子で検知可能な光に変換する波長変換体(例えば、シンチレータ)と、波長変換体で変換された光を電荷に変換する光電変換素子と、が用いられる。光電変換素子には、ガラス基板などの絶縁基板上に配され、アモルファスシリコンを主材料とするMIS型フォトダイオードが用いられてもよい。また、光電変換素子には、シリコンなどの半導体基板上に配されたPIN型フォトダイオードが用いられてもよい。また、変換素子102は、上述の放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に変換する波長変換体を備えた間接型の変換素子に限られることはなく、放射線を直接、電荷に変換する直接型の変換素子が用いられてもよい。この場合、変換素子の主材料としてアモルファスセレンなどが用いられてもよい。スイッチ素子101には、制御端子と2つの主端子とを有するトランジスタが用いられてもよい。本実施形態において、スイッチ素子101として、薄膜トランジスタ(TFT)が用いられる。
【0016】
変換素子102の一方の電極は、スイッチ素子101の2つの主端子の一方に電気的に接続され、他方の電極は、共通のバイアス配線Bsを介してバイアス電源103に電気的に接続される。行方向(
図2において横方向)に配されるスイッチ素子101、例えばスイッチT11~T15は、制御端子が駆動配線Vg1に共通に電気的に接続されている。スイッチT11~T15には、駆動回路114からスイッチT11~T15の導通状態を制御する駆動信号が、駆動配線Vg1を介して行単位で与えられる。列方向(
図2において縦方向)に配されるスイッチ素子101、例えばスイッチT11~T51は、他方の主端子が信号配線Sig1に電気的に接続されている。スイッチT11~T51が導通状態である間、変換素子102に蓄積された電荷に応じた信号が、信号配線Sig1を介して読出回路113に出力される。列方向に配される信号配線Sig1~Sig5は、同じ駆動配線Vgに接続された画素PIXから出力される信号を、並列に読出回路113に伝送する。
【0017】
本実施形態において、スイッチT23、T43を含む画素PIXは、露出制御を行う期間、つまり、放射線の照射中に、入射する放射線量を検出する検出素子として個別に動作させるため、駆動配線Vgd1、Vgd2に接続されている。ここで、
図2において、画素アレイ112に配される画素PIXのうち検出素子として機能する画素を検出素子PIXDと表記する。また、それぞれの検出素子PIXDのうち、特定の検出素子を示す場合、検出素子PIXD1のように、参照記号に数字をさらに添える。
図2に示される構成において、スイッチT23を含む検出素子を検出素子PIXD1、スイッチT43を含む検出素子を検出素子PIXD2とよぶ。
【0018】
入射する放射線量を検出するための複数の検出素子PIXDは、
図2に示されるように、画素アレイ112に配される。1つの関心領域に複数の検出素子PIXDが配されるように、検出素子PIXDは、近接して配されていてもよい。例えば、検出素子PIXDが、複数の画素PIXが配されるピッチにおいて、10ピッチ以下の間隔で配されていてもよい。ただし、検出素子PIXDが1ピッチ、つまり、互いに隣り合うように配された場合、検出素子PIXDの位置の画像データを補完する際、放射線画像を生成するための画素PIXの間隔が開いてしまい、補間の精度が下がる可能性がある。そこで、例えば、検出素子PIXDを2ピッチ以上の間隔で配することによって、検出素子PIXDに隣接する周囲の画素PIXの画素値を用いて検出素子PIXDの位置の画像データを補完することが可能となる。
図2に示される構成において、検出素子PIXD1と検出素子PIXD2とは、画素PIX2ピッチ分の間隔をあけて配されている。
【0019】
本実施形態において、駆動配線Vgd1、Vgd2には、それぞれ1つの検出素子PIXDが接続されているが、駆動配線Vgd1、Vgd2に、それぞれ複数の検出素子PIXDを接続させてもよい。また、1つの関心領域内に、3つ以上の検出素子PIXDを配し、それぞれに別の駆動配線Vgdを接続してもよい。また、
図2に示される構成において、検出素子PIXDは、同じ信号配線Sig3に信号を出力するが、これに限られることはなく、それぞれ異なる信号配線Sigに信号を出力する構成になっていてもよい。換言すると、検出素子PIXDは、互いに異なる列に配されていてもよい。また、
図2に示される構成において、検出素子PIXD1と検出素子PIXD2とは、異なる行に配されているが、これに限られることはない。それぞれ異なる駆動配線Vgdに接続された検出素子PIXDが、同じ行に配されていてもよい。
【0020】
読出回路113には、画素アレイ112に配された画素PIXから並列に出力された信号を増幅する増幅回路106が、信号配線Sigごとに設けられている。増幅回路106は、積分増幅器105、可変増幅器104、サンプルホールド回路107を含む。
【0021】
積分増幅器105は、画素PIX、検出素子PIXDから出力された信号を増幅する。より具体的には、積分増幅器105は、画素PIX、検出素子PIXDから読み出された電気信号を増幅して出力する演算増幅器、積分容量、リセットスイッチを含む。積分増幅器105は、積分容量の値を変化させることによって、増幅率を変更することが可能である。演算増幅器の反転入力端子には画素PIX、検出素子PIXDから出力された信号が入力され、正転入力端子には基準電源111から基準電圧Vrefが入力される。また、演算増幅器の出力端子から増幅された信号が出力される。また、積分容量が、演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に配される。可変増幅器104は、積分増幅器105から出力された信号を増幅する。サンプルホールド回路107は、積分増幅器105、可変増幅器104で増幅された信号をサンプリングし保持する。サンプルホールド回路107は、サンプリングスイッチとサンプリング容量とを含む。
【0022】
また、読出回路113は、増幅回路106から並列に読み出された信号を順次出力して直列信号の画像信号として出力するマルチプレクサ108と、画像信号をインピーダンス変換して出力するバッファ増幅器109と、を含む。バッファ増幅器109から出力されたアナログ電気信号である画像信号Voutは、A/D変換器110によってデジタルデータに変換される。放射線の照射中、検出素子PIXDからA/D変換器110を介して出力されるデジタルデータは、上述の線量取得部140に供給される。また、放射線の照射後、それぞれの画素PIXからA/D変換器110を介して出力されるデジタルデータに変換された信号は、画像情報として制御用コンピュータ200へ供給される。制御用コンピュータ200は、放射線撮像装置100の画素PIXから供給される信号を処理し、放射線画像として制御用コンピュータ200の表示部や外部のディスプレイに表示する信号処理部として機能してもよい。
【0023】
また、撮像部120は、各種の電源を供給する電源部として、増幅回路の基準電源111、バイアス電源103を含む。基準電源111は、積分増幅器105の演算増幅器の正転入力端子に基準電圧Vrefを供給する。バイアス電源103は、バイアス配線Bsを介してそれぞれの画素PIXの変換素子102に共通のバイアス電圧Vsを供給する。
【0024】
駆動回路114は、駆動制御ユニット160から供給される制御信号D-CLK、OE、DIOに応じて、スイッチ素子101を導通状態にする導通電圧Vcomと非導通状態にする非導通電圧Vssとを含む駆動信号を、それぞれの駆動配線Vg、Vgdに出力する。これによって、駆動回路114は、スイッチ素子101の導通状態および非導通状態を制御し、画素アレイ112を駆動する。制御信号D-CLKは、駆動回路114として用いられるシフトレジスタのシフトクロックである。制御信号DIOは、シフトレジスタが転送するパルスである。制御信号OEは、シフトレジスタの出力端を制御する信号である。以上によって、駆動の所要時間と走査方向が設定される。
【0025】
また、駆動制御ユニット160は、読出回路113に制御信号RC、SH、CLKを供給することによって、読出回路113の各構成要素の動作を制御する。制御信号RCは、積分増幅器105のリセットスイッチの動作を制御するための信号である。制御信号SHは、サンプルホールド回路107の動作を制御するための信号である。制御信号CLKは、マルチプレクサ108の動作を制御するための信号である。
【0026】
本実施形態において、
図2に示されるように、検出素子PIXDと放射線画像を生成するための画素PIXとで接続する駆動配線Vg、Vgdを分離し、それぞれ異なるタイミングでスイッチ素子101を動作できるように構成されている。換言すると、検出素子PIXDは、放射線画像を取得するための画素PIXとは独立して設けられている。しかしながら、検出素子の配置は、この構成に限られることはない。例えば、
図3に示されるように、放射線画像を取得するための画素PIXとは独立した検出素子PIXDを配さずに、放射線画像を取得するための画素PIXのうち一部が、検出素子として機能するようにしてもよい。この場合、関心領域内の特定の行の駆動配線Vgに接続されている画素PIXを検出素子として用いる。このとき、詳細は後述するが、並行して互いに異なる一定のサンプリング周期で信号を取得するために、画素PIXのうち関心領域内の複数の行に配された画素PIXを検出素子として利用する。
【0027】
次いで、
図4、5を用いて本実施形態における放射線撮像装置100の動作について説明する。
図4は、放射線撮像装置100の動作例を示すフロー図、
図5は、放射線撮像装置100の動作例を示すタイミング図である。
【0028】
まず、放射線撮像装置100を用いた放射線画像を取得するための撮像準備を行う(S401)。撮像準備の工程において、被写体(例えば、患者)、放射線撮像装置100および放射線発生装置400のそれぞれの配置が行われる。また、撮像準備の工程において、放射線の照射条件や自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)を行う関心領域の位置や目標線量の設定などが行われる。目標線量の設定は、1つまたは複数の関心領域の放射線量の最大値や平均値、放射線量の最大値と最小値の差や比率で設定され、制御用コンピュータ200によって放射線量の閾値に変換され、放射線撮像装置100の線量取得部140に供給される。放射線量の閾値への変換は、線量取得部140で行われてもよい。線量取得部140は、放射線量の閾値に基づいて、放射線撮像装置100の検出素子PIXDによって検出された入射した放射線量が、目標線量に到達したか否かの判定を行う。
【0029】
撮像準備が完了すると、駆動制御ユニット160は、放射線の照射が開始されるまでの間、リセット駆動(空読み駆動)を行う(S402)。リセット駆動は、
図5に示されるように、駆動回路114から駆動配線Vgに順次、スイッチ素子101が導通する電圧(導通電圧Vcom)を印加し、それぞれの画素PIXの変換素子102で発生するダーク電荷などをリセットする動作である。リセット駆動において、それぞれの画素PIXから取得される信号を、放射線画像を生成する際のオフセット補正に用いてもよい。このリセット駆動において、駆動回路114から駆動配線Vgdに順次、導通電圧Vcomを印加し、検出素子PIXDも同時にリセット動作を行う。
【0030】
リセット駆動は、放射線の曝射スイッチがユーザによって押下されるまで繰り返される。(S403のNO)。ユーザによって曝射スイッチが押下されると(S403のYES)、線量取得部140は、放射線が照射される前に、露出制御に用いられる検出素子PIXDのオフセット信号を取得する(S404)。放射線が照射されない状態で、駆動制御ユニット160が、検出素子PIXDのスイッチ素子101が順次導通するように制御することによって、線量取得部140は、オフセット信号を取得することができる。オフセット信号のノイズを抑制するために、線量取得部140は、それぞれの検出素子PIXDから複数回にわたってオフセット信号を取得し、複数のオフセット信号を加算平均してもよい。このとき、線量取得部140は、それぞれの検出素子PIXDで露出制御を行う期間に信号をサンプリングする周期と同じサンプリング周期でオフセット信号を取得する。
図5に示されるように、線量取得部140は、検出素子PIXD1から露出制御を行う期間と同じサンプリング周期SR1で検出素子PIXD1のオフセット信号を取得する。同様に、線量取得部140は、検出素子PIXD2から露出制御を行う期間と同じサンプリング周期SR2で検出素子PIXD2のオフセット信号を取得する。これによって、露出制御を行う際に、それぞれの検出素子PIXDから出力される信号に対して、サンプリング周期に応じた適切なオフセット補正を行うことができる。
【0031】
検出素子PIXDのオフセット信号を取得した後、放射線の照射が開始される(S405)。例えば、線量取得部140が、露出制御を行う期間において使用する検出素子PIXDのオフセット信号を取得したことに応じて、制御用コンピュータ200に放射線の照射に対する準備が整ったことを示す信号を送信する。制御用コンピュータ200は、この信号に応じて、放射線制御装置300を介して放射線発生装置400から放射線撮像装置100への放射線の照射を開始させてもよい。また、例えば、線量取得部140が、直接、放射線制御装置300に放射線の照射に対する準備が整ったことを示す信号を送信してもよい。この信号に応じて、放射線制御装置300は、放射線発生装置400に放射線撮像装置100への放射線の照射を開始させる。
【0032】
放射線の照射中、駆動制御ユニット160が、検出素子PIXDのスイッチ素子101が順次導通するように制御することによって、線量取得部140は、検出素子PIXDから露出制御を行うための信号を取得する(S406)。このとき、線量取得部140は、同じ関心領域に配された検出素子PIXD1と検出素子PIXD2とから、並行して互いに異なる一定のサンプリング周期で信号を取得する。
図5に示されるように、駆動配線Vgd1に導通電圧Vcomが印加され、検出素子PIXD1から信号をサンプリングするサンプリング周期SR1と、駆動配線Vgd2に導通電圧Vcomが印加され、検出素子PIXD2から信号をサンプリングするサンプリング周期SR2と、が異なっている。これによって、線量取得部140は、同じ関心領域に入射する放射線に対して、異なるサンプリング周期の信号を取得することができる。
【0033】
サンプリング周期の組み合わせは、放射線撮像装置100の工場出荷時などで、予め決められている値であってもよい。また、サンプリング周期の組み合わせは、ユーザが制御用コンピュータ200に入力する撮像部位や撮像条件などから決定するようにしてもよい。この場合、サンプリング周期の組み合わせは、撮像部位や撮像条件などに応じて制御用コンピュータ200の記憶部などに記憶された組み合わせを読み出してもよいし、ユーザが組み合わせを適宜、選択してもよい。例えば、放射線の照射時間が1ms~1000msであり、1つの関心領域で2種類のサンプリング周期で検出素子PIXDを動作させる場合、2つのサンプリング周期の比は、1:10程度としてもよい。例えば、
図5に示されるような、短いサンプリング周期SR1が、長いサンプリング周期SR2の1/3以下かつ1/20以上であってもよい。
【0034】
また、例えば、線量取得部140は、露出制御を行う期間において、上述の検出素子PIXD1、2が配される関心領域とは異なる領域に配された2つ以上の検出素子PIXDから、検出素子PIXD1、2と並行して信号を取得してもよい。ここでは、検出素子PIXD1、2とは異なる関心領域に配される検出素子をそれぞれ検出素子PIXD3、4とよぶ。線量取得部140は、検出素子PIXD3と検出素子PIXD4とから、検出素子PIXD1と検出素子PIXD2との関係と同様に、互いに異なる一定のサンプリング周期で信号を取得する。このとき、検出素子PIXD1または検出素子PIXD2から信号を取得するサンプリング周期と、検出素子PIXD3または検出素子PIXD4から信号を取得するサンプリング周期と、が同じサンプリング周期であってもよい。また、すべての検出素子PIXD1~4から信号を取得するサンプリング周期が、異なっていてもよい。
【0035】
つまり、露出制御を行う際に複数の関心領域がある場合、それぞれの関心領域でサンプリング周期の組み合わせが同じであってもよいし、異なっていてもよい。撮像部位の条件から比較的、線量が多くなると予想される関心領域は、サンプリング周期が短めの組み合わせにする。逆に、比較的、線量が少なくなると予想される関心領域は、サンプリング周期が長めの組み合わせにしてもよい。
【0036】
図3に示される画素PIXの一部を検出素子として機能させる場合のタイミング図が、
図6に示される。
図6は、駆動配線Vg2、Vg4に接続される画素PIXを検出素子として駆動する場合を示したタイミング図である。ユーザによって曝射スイッチが押下されると、まず、放射線が照射される前に、駆動回路114から駆動配線Vg2、Vg4に順次、導通電圧Vcomが印加され、線量取得部140は、検出素子として機能する画素PIXのオフセット信号を取得する。次いで、放射線の照射中、駆動回路114から駆動配線Vg2、Vg4に導通電圧Vcomが印加され、線量取得部140は、駆動配線Vg2、Vg4に接続される画素PIXから露出制御を行うための信号を取得する。このとき、駆動配線Vg2と駆動配線Vg4とに導通電圧Vcomが印加される周期を互いに異ならせることによって、検出素子として機能する複数の画素PIXから、線量取得部140は、互いに異なるサンプリング周期で信号を取得することができる。
【0037】
線量取得部140は、異なるサンプリング周期で検出素子PIXD1および検出素子PIXD2から並行して取得した信号に基づいて、入射する放射線量を検出する。より具体的には、検出素子PIXDから取得した信号の累積値を用いて、入射した放射線量が目標線量に達したか否かの判定を行う(S407)。このとき、線量取得部140は、放射線の照射中に検出素子PIXD1から取得した信号を、S404で検出素子PIXD1から取得したオフセット信号に応じて補正し、補正された検出素子PIXD1から取得した信号を用いて入射する放射線量を検出してもよい。同様に、線量取得部140は、放射線の照射中に検出素子PIXD2から取得した信号を、S404で検出素子PIXD2から取得したオフセット信号に応じて補正し、補正された検出素子PIXD2から取得した信号を用いて入射する放射線量を検出してもよい。互いに異なるサンプリング周期で取得した信号に対して、線量取得部140がそれぞれの信号の取得と同じサンプリング周期で取得したオフセット信号を適用することによって、適切なオフセット補正を実施することができる。
【0038】
線量取得部140が入射した放射線量が目標線量に達していないと判定した場合(S407のNO)、駆動制御ユニット160は、引き続き、線量取得部140が検出素子PIXDから信号を取得するように画素アレイ112を動作させる(S406)。また、線量取得部140は、入射した放射線量が目標線量に達したか否かの判定を行う(S407)。
【0039】
線量取得部140が入射した放射線量が目標線量に達したと判定した場合(S407のYES)、線量取得部140は、制御用コンピュータ200に放射線の照射を停止させるための信号を送信する。この信号に応じて、制御用コンピュータ200は、放射線制御装置300を介して放射線発生装置400からの放射線の照射を停止させる(S408)。線量取得部140は、放射線の照射を停止させるための信号を、直接、放射線制御装置300に送信し、これに応じて放射線制御装置300が、放射線発生装置400に放射線の照射を停止させてもよい。線量取得部140が、入射した放射線量が目標線量に達したか否かの判定を行い、目標線量に達したときに放射線の照射を停止させるための信号を出力することによって、放射線撮像装置100は、AEC機能を有することができる。
【0040】
放射線の照射が停止すると、駆動制御ユニット160は、それぞれの画素PIXに蓄積された放射線画像を生成するための信号を読み出す本読み駆動を行う(S409)。本読み駆動は、駆動回路114から駆動配線Vgに順次、導通電圧Vcomを印加し、それぞれの駆動配線Vgに接続された変換素子102に蓄積した電荷を読み出す動作である。読出回路113によって読み出された信号は、A/D変換器110でデジタルデータに変換され、画像情報として制御用コンピュータ200に転送される。
【0041】
画像情報における検出素子PIXDが配された位置の画素値は、放射線の照射中に読み出されているためゼロとなり、画素値は欠落している。そこで、上述のように、検出素子PIXDの周辺に配された画素PIXの画素値を用いて検出素子PIXDが配された位置の画素値を補完してもよい。また、放射線の照射中に検出素子PIXDから読みされた信号の累積値は、放射線の照射中に検出素子PIXDに蓄積される電荷と同量となりうる。つまり、検出素子PIXDから読みされた信号の累積値を、検出画素PIXDが配された位置の画素値として使用してもよい。
【0042】
次に、露出制御を行うために、線量取得部140が検出素子PIXDから取得した信号を演算する方法に関して説明する。
図7は、比較例の放射線撮像装置の動作例を示すタイミング図である。
図7に示される比較例において、放射線の照射中の検出素子PIXDからの信号の取得は、すべて同じサンプリング周期で行われている。
【0043】
発明者らは、
図7に示される一定の周期のサンプリング駆動でAECを行った結果、以下のような課題があることを見出した。
1.強く短い放射線に対して、1回あたりの読み出される信号の信号値が大きくなり、サンプリングされた信号が、目標線量として設定された信号値の目標値より大きくなった時点で、適切な露光量である目標線量を大きく上回ってしまう可能性が高い。このため、目標線量に対して大きな誤差が生じうる。
2.弱く長い放射線に対して、1回あたりの読み出される信号の信号値は小さくなるが、サンプリングされた信号が目標線量として設定された信号値の目標値に到達するまでのサンプリング回数が多くなる。読出回路113のランダムノイズや、放射線の照射前に予め取得したオフセット信号と露出制御を行う期間におけるオフセット分との誤差などが、サンプリング回数が増える分だけ積算され、目標線量に対して大きな誤差が生しうる。
【0044】
そこで、
図5に示されるように、1つの関心領域に配された複数の検出素子PIXDから、並行して互いに異なる複数のサンプリング周期で信号を取得することで、放射線の照射条件に依存することを抑制し、目標線量に対する誤差を小さくできることを見出した。前述の課題から、強く短い放射線に対して、信号を検出素子PIXDからサンプリングする周期を短く、弱く長い放射線に対して、信号を検出素子PIXDからサンプリングする周期を長くすることが、目標線量に対して誤差を小さくする方法となりうる。
【0045】
複数の検出素子PIXDを用いて、複数の異なるサンプリング周期で信号を取得し、強く短い放射線は、短いサンプリング周期SR1で取得した信号を利用し、弱く長い放射線は、長いサンプリング周期SR2で取得した信号を利用する。具体的には、線量取得部140は、短いサンプリング周期SR1で取得した信号と、長いサンプリング周期SR2で取得した信号と、をそれぞれ累積しておく。線量取得部140は、短いサンプリング周期SR1で信号がサンプリングされた回数が予め設定された回数までは、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行う。一方、短いサンプリング周期SR1で信号がサンプリングされた回数が予め設定された回数を越えると、線量取得部140は、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行う。
【0046】
例えば、放射線の照射時間が1ms~1000ms、短いサンプリング周期SR1が100μs、長いサンプリング周期SR2が1000μsである場合、上述の予め設定された回数は、10回以上かつ100回以下であってもよい。例えば、目標線量に応じて、線量取得部140は、10回から100回の中で、短いサンプリング周期SR1の信号の累積値と長いサンプリング周期SR2の信号の累積値との切り替えるタイミングを変更してもよい。切り替えるタイミングの変更は、線量取得部140内の記憶部などに、目標線量と切り替えるタイミングとの関係を示すデータ記憶し、線量取得部140が記憶部からデータを読み出すことによって行ってもよい。また、制御用コンピュータ200から、線量取得部140に目標線量に応じた切り替えのタイミングを指示する信号が供給されてもよい。
【0047】
また、例えば、入射する単位時間あたりの放射線量に応じて、複数のサンプリング周期で取得した信号のうち露出制御に使用する信号が決定されてもよい。例えば、強い放射線が入射する場合、長いサンプリング周期SR2で取得した信号は、1回あたりの信号の誤差が、短いサンプリング周期SR1で取得した信号よりも大きくなる場合がある。そこで、線量取得部140は、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の信号値が予め設定された値を越えると(強い放射線が入射すると)、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行う。一方、線量取得部140は、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の信号値が予め設定された値までは(弱い放射線が入射すると)、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行う。何れのサンプリング周期で取得した信号を露出制御に使用するかを決定するための閾値(予め設定された値)は、例えば、放射線撮像装置100の出荷時に、放射線撮像装置100内に配された記憶部などに記憶させておいてもよい。線量取得部140は、記憶部に記憶された閾値を参照することによって、短いサンプリング周期SR1または長いサンプリング周期SR2で取得した信号を用いて、入射する放射線量を検出する。また、例えば、何れのサンプリング周期で取得した信号を露出制御に使用するかを決定するための閾値は、ユーザが制御用コンピュータ200に入力する撮像部位や撮像条件などから制御用コンピュータ200が決定し、線量取得部140に供給されてもよい。
【0048】
このように、線量取得部140が、1つの関心領域に配された2つ以上の検出素子PIXDから互いにサンプリング周期が異なる信号を並行して取得する。これによって、放射線の照射条件に依存することなく、目標線量に対して精度の高い自動露出量制御を実現した放射線撮像装置100および放射線撮像システムSYSを提供することができる。
【0049】
上述の実施形態では、線量取得部140が、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値と長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値との何れかを用いて露出制御を行うことを説明したが、これに限られることはない。例えば、線量取得部140が、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値に応じて補正するようにしてもよい。線量取得部140は、補正された短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を用いて目標線量に到達したか否かの判定を行う。
【0050】
上述のように、線量取得部140が短いサンプリング周期SR1で信号を取得する検出素子PIXD1と、線量取得部140が長いサンプリング周期SR2で信号を取得する検出素子PIXD2と、は同じ関心領域に互いに近接して配されている。そのため、放射線の照射開始からある時間が経過した後に、検出素子PIXD1および検出素子PIXD2で得られた信号の累積値は、ほぼ同じになるはずである。しかし上述したように、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値は、サンプリングの回数が多いため、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値よりも、ランダムノイズなどの影響による誤差が大きくなる。
【0051】
そこで、線量取得部140は、サンプリング周期SR2ごとに、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値を更新した際に、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の当該累積値に置換する。これによって、短いサンプリング周期SR1において、サンプリング回数の増加に伴うランダムノイズなどの影響が抑制できる。また、サンプリング周期SR2で取得した信号の累積値に置換した後に、短いサンプリング周期SR1で信号を取得することによって、線量取得部140は、高い精度で目標線量に到達したか否かの判定を行うことができる。累積値の置換は、上述のように、サンプリング周期SR2ごとに行われてもよいし、例えば、2~5回程度の長いサンプリング周期SR2でのサンプリングごとに行ってもよい。短いサンプリング周期SR1と長いサンプリング周期SR2との比などに応じて、適切な頻度で補正が行われればよい。
【0052】
また、例えば、線量取得部140は、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値および長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値から、それぞれの信号の単位時間あたりの信号値の変化の比を取得してもよい。この信号値の比の取得は、例えば、長いサンプリング周期SR2で信号を取得したタイミングで、線量取得部140によって行われてもよい。
【0053】
例えば、線量取得部140は、サンプリング周期SR2ごとに、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値を更新した際に、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の当該累積値に置換する。次いで、線量取得部140は、短いサンプリング周期SR1で取得した信号を累積する際に、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の信号値に、上述の信号値の比を適用し、短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を取得する。
【0054】
このように、補正された短いサンプリング周期SR1で取得した信号の累積値を露出制御に用いることで、目標線量に対しての誤差を、長いサンプリング周期SR2で取得した信号の累積値と同等にすることができる。さらに、短いサンプリング周期SR1で入射した放射線量が目標線量に達したか否かを判定することが可能となり、放射線撮像装置100のAECの精度が向上する。
【0055】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0056】
100:放射線撮像装置、120:撮像部、140:線量取得部、PIXD:検出素子