(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20221209BHJP
B29C 45/24 20060101ALI20221209BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/24
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2019007312
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樽家 宏治
(72)【発明者】
【氏名】中田 匡英
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 啓人
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3049681(JP,U)
【文献】実開平06-086913(JP,U)
【文献】実開平06-074314(JP,U)
【文献】国際公開第2015/151166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の開閉及び型締を行う型締ユニットと、可塑化樹脂を射出する射出ユニットとを備えた射出成形機において、
前記射出ユニットは、可塑化樹脂を射出するノズルが先端に形成された加熱シリンダを、型締された前記金型のキャビティに連通させる射出位置と、前記金型から離間させる待機位置との間を移動し、
前記待機位置の前記加熱シリンダからの可塑化樹脂の排出経路上に配置されて、前記ノズルから排出される可塑化樹脂を該射出成形機の外部へ搬送するコンベアを備え、
前記コンベアは、前記ノズルからの可塑化樹脂の排出速度に連動して、搬送速度を切り替え、
前記射出ユニットは、前記加熱シリンダ内で回転及び前後進可能なスクリュを有し、
前記コンベアは、前記射出ユニットが前記待機位置の状態において、
前記スクリュが移動しているときに、第1速度で可塑化樹脂を搬送し、
前記スクリュが停止しているときに、前記第1速度より遅い第2速度で可塑化樹脂を搬送することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記コンベアは、
前記スクリュを前進させて前記加熱シリンダ内の可塑化樹脂を排出するパージ動作中に、前記第1速度で可塑化樹脂を搬送し、
前記スクリュを回転後退させて前記加熱シリンダ内に可塑化樹脂を貯留する計量動作中に、前記第1速度より遅い第3速度で可塑化樹脂を搬送することを特徴とする請求項
1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記ノズル先端のノズル孔を閉塞する閉塞位置、及び前記ノズル孔を開放する開放位置の間を移動する蓋を備え、
前記射出ユニットは、
前記蓋を前記閉塞位置に配置して前記計量動作を実行し、
前記蓋を前記開放位置に配置して前記パージ動作を実行することを特徴とする請求項
2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記コンベア上を搬送される可塑化樹脂を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
金型の開閉及び型締を行う型締ユニットと、可塑化樹脂を射出する射出ユニットとを備えた射出成形機において、
前記射出ユニットは、可塑化樹脂を射出するノズルが先端に形成された加熱シリンダを、型締された前記金型のキャビティに連通させる射出位置と、前記金型から離間させる待機位置との間を移動し、
前記待機位置の前記加熱シリンダからの可塑化樹脂の排出経路上に配置されて、前記ノズルから排出される可塑化樹脂を該射出成形機の外部へ搬送するコンベアを備え、
該射出成形機は、前記待機位置が前記射出位置の鉛直上方に位置する竪型であり、
前記コンベアは、
前記射出ユニットが前記待機位置に移動した後に、前記加熱シリンダの直下の前進位置に移動し、
前記射出ユニットが前記射出位置に移動する前に、前記加熱シリンダの移動経路から外れた退避位置に移動することを特徴とする射出成形機。
【請求項6】
前記コンベアは、前記前進位置と前記退避位置との間を、可塑化樹脂の搬送方向に沿って前後進することを特徴とする請求項
5に記載の射出成形機。
【請求項7】
該射出成形機は、前記射出位置と前記待機位置とが水平方向に離間した横型であり、
前記コンベアは、前記待機位置における前記加熱シリンダの前記ノズルの直下に固定されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記加熱シリンダの移動経路上のガイド位置と、前記加熱シリンダの移動経路から外れた退避位置との間を移動するガイド板を備え、
前記コンベアは、前記ガイド位置の前記ガイド板の直下に固定されており、
前記ガイド板は、
前記射出ユニットが前記待機位置に移動した後に、前記ガイド位置に移動し、
前記射出ユニットが前記射出位置に移動する前に、前記退避位置に移動することを特徴とする請求項
7に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑化樹脂を金型内に射出して射出成形品を製造する射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金型の樹脂注入孔に当接する当接位置と、当接位置より上方の後退限位置との間を上下動する加熱筒を備える竪型の射出成形機が開示されている。また、特許文献1には、加熱筒内の可塑化樹脂を排出するパージ動作を実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の射出成形機において、オペレータは、可塑化樹脂を受ける受け皿を、パージ動作を実行する前に加熱筒の直下のロケート部にセットし、再び射出成形を行う前にロケート部から取り除く必要がある。さらに、パージ動作で排出される可塑化樹脂の量が多い場合、オペレータは、パージ動作の途中で受け皿内の可塑化樹脂を除去する必要がある。
【0005】
そのため、上記構成の射出成形機では、パージ動作を実行する際のオペレータの作業負担が大きいと言う課題がある。なお、この課題は、竪型の射出成形機のみならず、加熱筒が水平方向に移動する横型の射出成形機においても生じ得る。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、パージ動作中のオペレータの作業負担を低減した射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、金型の開閉及び型締を行う型締ユニットと、可塑化樹脂を射出する射出ユニットとを備えた射出成形機において、前記射出ユニットは、可塑化樹脂を射出するノズルが先端に形成された加熱シリンダを、型締された前記金型のキャビティに連通させる射出位置と、前記金型から離間させる待機位置との間を移動し、前記待機位置の前記加熱シリンダからの可塑化樹脂の排出経路上に配置されて、前記ノズルから排出される可塑化樹脂を該射出成形機の外部へ搬送するコンベアを備え、前記コンベアは、前記ノズルからの可塑化樹脂の排出速度に連動して、搬送速度を切り替え、前記射出ユニットは、前記加熱シリンダ内で回転及び前後進可能なスクリュを有し、前記コンベアは、前記射出ユニットが前記待機位置の状態において、前記スクリュが移動しているときに、第1速度で可塑化樹脂を搬送し、前記スクリュが停止しているときに、前記第1速度より遅い第2速度で可塑化樹脂を搬送することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、射出ユニットが待機位置のときに加熱シリンダから排出される可塑化樹脂が、コンベアによって自動的に射出成形機の外部に搬送される。その結果、パージ動作の実行に際して受け皿を着脱する等のオペレータの作業負担を軽減することができる。また、可塑化樹脂の排出速度に対してコンベアの搬送速度が遅過ぎると、コンベアの搬送面上で可塑化樹脂が団子状態になる。一方、可塑化樹脂の排出速度に対してコンベアの搬送速度が速過ぎると、無駄な電力を消費したり、コンベアを駆動するモータが過熱状態となる可能性がある。そこで上記構成のように、可塑化樹脂の排出速度に連動してコンベアの搬送速度を切り替えるのが望ましい。さらに、こうすることで、スクリュが停止中にノズル孔から垂れてくる樹脂も取り除くことができる。
【0012】
例えば、前記コンベアは、前記スクリュを前進させて前記加熱シリンダ内の可塑化樹脂を排出するパージ動作中に、前記第1速度で可塑化樹脂を搬送し、前記スクリュを回転後退させて前記加熱シリンダ内に可塑化樹脂を貯留する計量動作中に、前記第1速度より遅い第3速度で可塑化樹脂を搬送することを特徴としてもよい。
【0013】
また、前記ノズル先端のノズル孔を閉塞する閉塞位置、及び前記ノズル孔を開放する開放位置の間を移動する蓋を備え、前記射出ユニットは、前記蓋を前記閉塞位置に配置して前記計量動作を実行し、前記蓋を前記開放位置に配置して前記パージ動作を実行することを特徴としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、射出ユニットが待機位置のときに加熱シリンダから可塑化樹脂が漏れ出ることを防止できる。また、蓋を閉塞位置に配置して計量動作を実行することにより、加熱シリンダ内の背圧が高まって計量動作の効率が向上する。
【0015】
また、前記コンベア上を搬送される可塑化樹脂を冷却する冷却装置を備えることを特徴としてもよい。
【0016】
溶融した状態の可塑化樹脂は、コンベアの表面に張り付いて剥がれにくくなる。そこで上記構成によれば、可塑化樹脂の固化を促進して、コンベアの表面から剥がれやすくする効果が期待できる。
【0017】
本発明は、前記課題を解決するため、金型の開閉及び型締を行う型締ユニットと、可塑化樹脂を射出する射出ユニットとを備えた射出成形機において、前記射出ユニットは、可塑化樹脂を射出するノズルが先端に形成された加熱シリンダを、型締された前記金型のキャビティに連通させる射出位置と、前記金型から離間させる待機位置との間を移動し、前記待機位置の前記加熱シリンダからの可塑化樹脂の排出経路上に配置されて、前記ノズルから排出される可塑化樹脂を該射出成形機の外部へ搬送するコンベアを備え、該射出成形機は、前記待機位置が前記射出位置の鉛直上方に位置する竪型であり、前記コンベアは、前記射出ユニットが前記待機位置に移動した後に、前記加熱シリンダの直下の前進位置に移動し、前記射出ユニットが前記射出位置に移動する前に、前記加熱シリンダの移動経路から外れた退避位置に移動することを特徴とする。
【0018】
また、前記コンベアは、前記前進位置と前記退避位置との間を、可塑化樹脂の搬送方向に沿って前後進することを特徴としてもよい。
【0019】
上記構成によれば、コンベアの移動に必要なスペースを小さくできる。
【0020】
他の例として、該射出成形機は、前記射出位置と前記待機位置とが水平方向に離間した横型であり、前記コンベアは、前記待機位置における前記加熱シリンダの前記ノズルの直下に固定されていることを特徴としてもよい。
【0021】
また、前記加熱シリンダの移動経路上のガイド位置と、前記加熱シリンダの移動経路から外れた退避位置との間を移動するガイド板を備え、前記コンベアは、前記ガイド位置の前記ガイド板の直下に固定されており、前記ガイド板は、前記射出ユニットが前記待機位置に移動した後に、前記ガイド位置に移動し、前記射出ユニットが前記射出位置に移動する前に、前記退避位置に移動することを特徴としてもよい。
【0022】
上記構成によれば、パージ動作によって加熱シリンダから勢いよく排出された可塑化樹脂が、ガイド位置のガイド板に当たってコンベアに導かれる。その結果、横型の射出成形機において、パージ動作によって排出される可塑化樹脂を、コンベアを通じて確実且つ効率的に射出成形機の外部に排出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、射出ユニットが待機位置のときに加熱シリンダから排出される可塑化樹脂が、コンベアによって自動的に射出成形機の外部に搬送される。その結果、パージ動作の実行に際して受け皿を着脱する等のオペレータの作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る竪型の射出成形機の正面図である。
【
図3】射出成形機のハードウエアブロック図である。
【
図6】第2実施形態に係る横型の射出成形機の側面図である。
【
図7】加熱シリンダを先端側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る射出成形機10を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る射出成形機10の正面図である。
図2は、射出ユニット30の拡大模式図である。
図3は、射出成形機10のハードウエアブロック図である。射出成形機10は、金型内に可塑化樹脂を射出して、射出成形品を製造する装置である。第1実施形態に係る射出成形機10は、所謂「竪型」である。
図1~
図3に示すように、射出成形機10は、型締ユニット20と、射出ユニット30と、操作パネル40と、コントローラ50とを主に備える。
【0027】
型締ユニット20は、金型21の開閉及び型締めを行う。具体的には、型締ユニット20は、固定金型22を支持する固定ダイプレート23と、固定金型22の直上で可動金型24を支持する移動ダイプレート25と、移動ダイプレート25をタイバー26に沿って上下方向に移動させる型開閉モータ61とを主に備える。
【0028】
型開閉モータ61は、移動ダイプレート25を上下方向に移動させるサーボモータである。型開閉モータ61の駆動力は、例えば、トグルリンク機構(図示省略)を通じて移動ダイプレート25に伝達される。
図1に示すように、移動ダイプレート25が上昇すると、固定金型22と可動金型24とが離間する。一方、移動ダイプレート25が降下すると、固定金型22と可動金型24とが当接して、金型21の内部にキャビティ(内部空間)が形成される。そして、移動ダイプレート25にさらに下向きの圧力が加わると、固定金型22及び可動金型24が型締めされる。
【0029】
射出ユニット30は、ホッパ(図示省略)から供給された樹脂を、可塑化し、計量し、射出する。第1実施形態に係る射出ユニット30は、型締ユニット20の上方に配置されている。射出ユニット30は、加熱シリンダ31と、スクリュ32と、コンベア33と、ファン34と、蓋35と、ノズルタッチモータ62と、計量モータ63と、射出モータ64と、コンベア進退モータ65と、コンベア駆動モータ66と、蓋進退モータ67とを主に備える。
【0030】
加熱シリンダ31は、上下方向に延びる円筒形状の部材である。加熱シリンダ31には、可塑化樹脂を射出するノズル36のノズル孔36aが先端(下端)に形成され、ホッパから樹脂の供給を受ける供給口(図示省略)が基端(上端)側に形成されている。そして、加熱シリンダ31の内部には、供給口からノズル36に至る直線状の内部空間が形成されている。また、加熱シリンダ31の外周面には、加熱シリンダ31を加熱するバンドヒータ(図示省略)が取り付けられていてもよい。
【0031】
ノズルタッチモータ62は、射出ユニット30を上下方向に移動させるサーボモータである。射出ユニット30は、ノズルタッチモータ62の駆動力が伝達されて、射出位置(
図2(A))と、待機位置(
図2(B)~(D))との間を上下方向に移動する。射出位置は、加熱シリンダ31先端のノズル36が移動ダイプレート25に設けられた開口(図示省略)に進入して、加熱シリンダ31の内部空間と金型21のキャビティとが連通する位置である。待機位置は、加熱シリンダ31先端のノズル36が移動ダイプレート25の開口から退出して、加熱シリンダ31と金型21とが離間する位置である。第1実施形態に係る待機位置は、射出位置より鉛直上方の位置である。
【0032】
スクリュ32は、外周面に螺旋溝が形成された長尺棒状の部材である。スクリュ32は、回転及び前後進可能な状態で、加熱シリンダ31の内部空間に収容されている。計量モータ63は、加熱シリンダ31内でスクリュ32を回転させるサーボモータである。射出モータ64は、加熱シリンダ31内でスクリュ32を前後進させるサーボモータである。射出ユニット30は、加熱シリンダ31内でスクリュ32を回転或いは前後進させることによって、計量動作、射出動作、及びパージ動作を行う。
【0033】
計量動作は、スクリュ32を回転させることによって、加熱シリンダ31の先端側(ノズル36側)に所定量の可塑化樹脂を貯留させる動作である。このとき、加熱シリンダ31に供給された樹脂は、加熱シリンダ31及びスクリュ32の間に生じる摩擦熱や剪断熱、及びバンドヒータが発生させる熱によって可塑化される。また、可塑化樹脂は、スクリュ32の螺旋溝に沿って加熱シリンダ31の先端側に移動して、加熱シリンダ31の先端側に溜まる。その結果、スクリュ32は、加熱シリンダ31内を回転しながら後退する。
【0034】
射出動作及びパージ動作は、スクリュ32を前進させることによって、加熱シリンダ31の先端側に貯留された可塑化樹脂を、ノズル36を通じて加熱シリンダ31から射出(排出)する動作である。本明細書では、射出ユニット30が射出位置のときに加熱シリンダ31から可塑化樹脂を射出する動作を「射出動作」と表記し、射出ユニット30が待機位置のときに加熱シリンダ31から可塑化樹脂を排出する動作を「パージ動作」と表記する。
【0035】
コンベア33は、射出ユニット30が待機位置のときに加熱シリンダ31から排出された可塑化樹脂を、射出成形機10の外部に搬送する役割を担う。すなわち、コンベア33は、待機位置の加熱シリンダ31からの可塑化樹脂の排出経路上(ノズル孔36aの直下)に配置される。コンベア進退モータ65は、コンベア33を前後進させるサーボモータである。コンベア駆動モータ66は、コンベア33を回転駆動させるサーボモータである。
【0036】
コンベア33は、コンベア進退モータ65の駆動力が伝達されて、前進位置(
図2(C)、(D))と、退避位置(
図2(A)、(B))との間を前後進する。前進位置は、待機位置の加熱シリンダ31先端のノズル36(ノズル孔36a)の直下に、コンベア33の搬送面(上面)が配置される位置である。退避位置は、加熱シリンダ31の移動経路からコンベア33が外れた位置である。前進位置及び退避位置は、コンベア33による可塑化樹脂の搬送方向(すなわち、
図2の左右方向)に離間した位置である。すなわち、コンベア33は、可塑化樹脂の搬送方向に沿って前後進する。
【0037】
コンベア33が前進位置のとき、待機位置の加熱シリンダ31先端のノズル36(ノズル孔36a)から排出される可塑化樹脂はコンベア33の搬送面に着弾し、射出ユニット30(加熱シリンダ31)は待機位置から射出位置に移動できない。一方、コンベア33が退避位置のとき、待機位置の加熱シリンダ31先端のノズル36(ノズル孔36a)から排出される可塑化樹脂はコンベア33の搬送面に着弾せず、射出ユニット30(加熱シリンダ31)は射出位置と待機位置との間を移動できる。
【0038】
また、コンベア33は、コンベア駆動モータ66の駆動力が伝達されて、搬送面に着弾した可塑化樹脂を、射出成形機10の外部に排出する方向(
図2の反時計回り)に回転する。また、コンベア33は、搬送速度を切り替え可能に構成されていてもよい。第1実施形態に係るコンベア33は、少なくとも高速(第1速度)及び低速(第2速度)に切り替え可能である。第1速度は、例えば、パージ動作における可塑化樹脂の排出速度に基づいて設定される。第2速度は、第1速度より遅い速度である。
【0039】
ファン34は、コンベア33上を搬送される可塑化樹脂を冷却する役割を担う冷却装置である。具体的には、ファン34は、コンベア33の搬送面に向けて送風する。また、ファン34は、コンベア33の所定位置に固定されている。すなわち、ファン34は、前進位置及び退避位置の間を移動するコンベア33と一体となって前後進する。また、ファン34の送風速度(単位時間当たりの送風量)は、コンベア33の搬送速度に連動して切り換え可能であってもよい。
【0040】
蓋35は、加熱シリンダ31の先端に当接して、ノズル36を閉塞させる役割を担う。蓋進退モータ67は、蓋35を前後進させるサーボモータである。蓋35は、蓋進退モータ67の駆動力が伝達されて、ノズル36を閉塞する閉塞位置(
図2(D))と、ノズル36を開放する開放位置(
図2(A)-(C))との間を前後進する。
【0041】
図2に示すように、射出ユニット30は、加熱シリンダ31、コンベア33、及び蓋35を収容する箱体37を備える。箱体37は、加熱シリンダ31、コンベア33、及び蓋35それぞれが挿通されるスリット37a、37b、37cを有する。すなわち、加熱シリンダ31、コンベア33、蓋35は、スリット37a、37b、37cを通じて、箱体37の内部空間に対して進退する。
【0042】
なお、加熱シリンダ31先端のノズル36は、常に箱体37の内部空間に位置する。これにより、ノズル36から射出される可塑化樹脂にオペレータが触れることを防止できる。但し、箱体37は、メンテナンスのために内部空間を露出させる扉(図示省略)などを有していてもよい。
【0043】
操作パネル40は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、操作パネル40は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。操作パネル40は、例えば、射出動作の開始を指示するオペレータの操作と、パージ動作の開始を指示するオペレータの操作とを受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号をコントローラ50に出力する。
【0044】
コントローラ50は、射出成形機10全体の動作を制御する。コントローラ50は、操作パネル40から出力される操作信号、各モータ61~67のエンコーダ(図示省略)から出力されるエンコード信号を取得する。そして、コントローラ50は、取得した各種信号に基づいて、各モータ61~67及びファン34を駆動させる。
【0045】
コントローラ50は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)51、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)52、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)53を備える。そして、ROM52に記憶されたプログラムをCPU51が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0046】
但し、コントローラ50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0047】
次に、
図4及び
図5を参照して、第1実施形態に係る射出成形機10の動作を説明する。
図4は、樹脂排出処理のフローチャートである。
図5は、パージ制御処理のフローチャートである。樹脂排出処理は、例えば、射出成形が終了したタイミングで開始される。
図2(A)に示すように、樹脂排出処理の開始時点において、射出ユニット30(加熱シリンダ31)は射出位置に配置され、コンベア33は退避位置に配置され、蓋35は開放位置に配置されている。
【0048】
まず、コントローラ50は、ノズルタッチモータ62を駆動して、射出ユニット30(加熱シリンダ31)を射出位置から待機位置に上昇させる(S11)。これにより、
図2(B)に示すように、加熱シリンダ31が上昇して金型21から離間し、ノズル36のノズル孔36aが露出される。
【0049】
次に、コントローラ50は、コンベア進退モータ65及びコンベア駆動モータ66を駆動して、コンベア33を退避位置から前進位置に前進させると共に、コンベア33を低速回転させる(S12)。これにより、
図2(C)に示すように、待機位置の加熱シリンダ31の直下に、コンベア33が配置される。すなわち、コントローラ50は、射出ユニット30(加熱シリンダ31)を待機位置に移動させた後に、コンベア33を前進位置に移動させる。また、コントローラ50は、ファン34を回転させる。
【0050】
次に、コントローラ50は、操作パネル40を通じてオペレータから指示が入力されるまで、以降の処理の実行を待機する(S13)。そして、コントローラ50は、パージ動作の実行を指示するオペレータの操作が操作パネル40を通じて受け付けられた場合に(S13:パージ)、パージ制御処理を実行する(S14)。
【0051】
図5に示すように、コントローラ50は、蓋進退モータ67を駆動して、蓋35を開放位置から閉塞位置に前進させる(S21)。これにより、
図2(D)に示すように、蓋35が加熱シリンダ31の先端に当接して、ノズル36が閉塞される。その結果、加熱シリンダ31内の可塑化樹脂が重力によってノズル36(ノズル孔36a)から少しずつ漏れ出すのを防止できる。
【0052】
次に、コントローラ50は、計量モータ63を回転させて、スクリュ32を回転後退させる(S22)。これにより、加熱シリンダ31の先端側に可塑化樹脂が貯留される(計量動作)。そして、コントローラ50は、計量モータ63のエンコーダから出力されるエンコード値に基づいて、スクリュ32が所定位置に達する(所定量の可塑化樹脂が貯留される)まで、以降の処理の実行を待機する(S23:No)。
【0053】
コントローラ50は、スクリュ32が所定位置まで後退したと判定した場合に(S23:Yes)、コンベア駆動モータ66に供給する駆動電流を増加させて、コンベア33を高速回転に切り替える(S24)。また、コントローラ50は、蓋進退モータ67を駆動して、蓋35を閉塞位置から開放位置に後退させる(S25)。これにより、
図2(D)の状態から
図2(C)の状態に戻る。なお、ステップS24、S25の処理は、処理順序が逆転してもよいし、並行して実行されてもよい。
【0054】
次に、コントローラ50は、射出モータ64を駆動して、スクリュ32を前進させる(S26)。これにより、加熱シリンダ31の先端側に貯留された可塑化樹脂がノズル36を通じて排出される(パージ動作)。そして、ノズル36から排出された可塑化樹脂は、コンベア33の搬送面に着弾し、高速回転するコンベア33によって射出成形機10の外部に搬送される。さらに、可塑化樹脂は、コンベア33上を搬送される過程において、ファン34から供給される送風によって冷却される。
【0055】
次に、コントローラ50は、パージ動作の実行回数(すなわち、ステップS21~S26の繰り返し回数)が所定回数に達したか否かを判定する(S27)。パージ動作の実行回数は、予め定められたデフォルト値がRAM53に記憶されていてもよいし、操作パネル40を通じてオペレータによって指定されてもよい。
【0056】
そして、コントローラ50は、パージ動作の実行回数が所定回数に達していないと判定した場合に(S27:No)、コンベア駆動モータ66に供給する駆動電流を減少させて、コンベア33を低速回転に切り替える(S28)。そして、コントローラ50は、ステップS21に戻って処理を継続する。
【0057】
一方、コントローラ50は、パージ動作の実行回数が所定回数に達したと判定した場合に(S27:Yes)、コンベア駆動モータ66に供給する駆動電流を減少させて、コンベア33を低速回転に切り替える(S29)。そして、コントローラ50は、パージ制御処理を終了する。また、コントローラ50は、パージ動作を所定回数実行した後に(S27:Yes)、射出モータ64を駆動して加熱シリンダ31内でスクリュ32を前後進させる、所謂「空打ち」を実行してもよい。
【0058】
次に
図4に戻って、コントローラ50は、ステップS13以降の処理を再び実行する。そして、コントローラ50は、射出動作の実行を指示するオペレータの操作を操作パネル40を通じて受け付けた場合に(S13:射出)、コンベア駆動モータ66を停止させると共に、コンベア進退モータ65を駆動してコンベア33を前進位置から退避位置に後退させる(S15)。さらに、コントローラ50は、ファン34を停止させる。これにより、
図2(C)の状態から
図2(B)の状態に戻る。
【0059】
次に、コントローラ50は、ノズルタッチモータ62を駆動して、射出ユニット30(加熱シリンダ31)を待機位置から射出位置に降下させる(S16)。これにより、
図2(B)から
図2(A)の状態に戻る。すなわち、コントローラ50は、射出ユニット30(加熱シリンダ31)を射出位置に移動させる前に、コンベア33を退避位置に移動させる。
【0060】
そして、コントローラ50は、射出成形を実行する(S17)。具体的には、コントローラ50は、型閉動作、型締め動作、計量動作、射出動作、型開き動作、成形品の排出動作を、所定の回数繰り返す。ステップS17の処理は既に周知なので、詳細な説明は省略する。そして、コントローラ50は、所定回数の射出成形を実行した場合に、再びステップS11に戻って処理を継続する。
【0061】
第1実施形態に係る射出成形機10によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0062】
第1実施形態によれば、パージ動作によって待機位置の加熱シリンダ31から排出される可塑化樹脂が、コンベア33によって自動的に射出成形機10の外部に搬送される。その結果、パージ動作の実行に際して受け皿を着脱する等のオペレータの作業負担を軽減することができる。
【0063】
なお、可塑化樹脂の排出速度に対してコンベア33の搬送速度が遅過ぎると、コンベア33の搬送面上で可塑化樹脂が団子状態になる。一方、可塑化樹脂の排出速度に対してコンベア33の搬送速度が速過ぎると、無駄な電力を消費したり、コンベア駆動モータ66が過熱状態となる可能性がある。そこで第1実施形態のように、可塑化樹脂の排出速度に連動してコンベア33の搬送速度を切り替えるのが望ましい。
【0064】
これにより、ステップS26で排出された可塑化樹脂は、コンベア33の搬送面上でひも状になって搬送される。その結果、スリット37bをコンベア33が通過可能な最小限の高さにすることができるので、オペレータの手がスリット37bを通じて箱体37の内部に誤って入ることを防止できる。
【0065】
また、第1実施形態のように、蓋35でノズル36(ノズル孔36a)を閉塞することによって、射出ユニット30が待機位置のときに加熱シリンダ31から可塑化樹脂が漏れ出ることを防止できる。また、蓋35を閉塞位置に配置して計量動作を実行することにより、加熱シリンダ31内の背圧が高まって計量動作の効率が向上する。なお、蓋35が閉塞位置の間(S21~S25)は、コンベア駆動モータ66を停止させてもよい。
【0066】
一方、蓋35を省略してもよい。この場合、計量動作中(S22~S23)におけるコンベア33の搬送速度を、第1速度より遅く且つ第2速度より速い第3速(中速)としてもよい。これにより、ノズル36を通じて可塑化樹脂の搬送速度に、コンベア33の搬送速度をさらに正確に連動させることができる。但し、第2速度及び第3速度の関係は前述の例に限定されず、第2速度>第3速度でもよいし、第2速度=第3速度でもよい。
【0067】
さらに、計量動作中(S22~S23)におけるコンベア33の搬送速度を、第1速度にしてもよい。すなわち、コントローラ50は、スクリュ32が移動(回転、前後進)しているときに(S22~S26)、コンベア33に可塑化樹脂を第1速度で搬送させ、スクリュ32が停止しているときに(S12~S13)、コンベア33に可塑化樹脂を第2速度で搬送させてもよい。
【0068】
また、溶融した状態の可塑化樹脂は、コンベア33の表面に張り付いて剥がれにくくなる。そこで第1実施形態のように、コンベア33上の可塑化樹脂をファン34で冷却することによって、可塑化樹脂の固化が促進されて、コンベア33の表面から剥がれやすくする効果が期待できる。なお、冷却装置の具体例はファン34に限定されず、冷媒を用いて冷風を発生させる装置であってもよい。
【0069】
また、第1実施形態では、可塑化樹脂の搬送方向に沿ってコンベア33を前後進させる例を説明した。これにより、コンベア33の移動に必要なスペースが小さくなるので、スリット37bを小さくできる。但し、コンベア33の移動軌跡は前述の例に限定されず、水平面上をスイングしてもよい。
【0070】
(第2実施形態)
次に、
図6及び
図7を参照して、第2実施形態に係る射出成形機10Aを説明する。
図6は、射出成形機10Aの概略構成を示す側面図である。
図7は、加熱シリンダ31の先端側から見た正面図である。なお、第1実施形態と共通の機能を担う構成部品には、同一の参照符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0071】
第2実施形態に係る射出成形機10Aは、水平方向に離間した射出位置と待機位置との間を、射出ユニット30(加熱シリンダ31)が水平方向に移動する所謂「横型」である。すなわち、第2実施形態に係る射出成形機10Aは、主な構成要素22~26、31~32の位置関係が90°反転している点で、第1実施形態に係る射出成形機10と異なる。
【0072】
また、第2実施形態に係る射出成形機10Aは、蓋35に代えて、ガイド板38を備える。但し、射出成形機10Aは、蓋35を備えていてもよい。ガイド板38は、パージ動作で加熱シリンダ31から排出された可塑化樹脂を、コンベア33の搬送面に案内する役割を担う。ガイド板38は、ガイド板進退モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて、退避位置(
図7(A))と、ガイド位置(
図7(B))との間を移動する。
【0073】
退避位置は、加熱シリンダ31の移動経路から外れた位置である。ガイド位置は、加熱シリンダ31の移動経路上の位置である。すなわち、ガイド板38が退避位置のとき、待機位置の加熱シリンダ31から排出される可塑化樹脂はガイド板38に着弾せず、射出ユニット30(加熱シリンダ31)は待機位置及び射出位置の間を移動できる。一方、ガイド板38がガイド位置のとき、待機位置の加熱シリンダ31から排出される可塑化樹脂はガイド板38に着弾し、射出ユニット30(加熱シリンダ31)は待機位置から射出位置に移動できない。
【0074】
さらに、第2実施形態に係るコンベア33は、待機位置における加熱シリンダ31先端のノズル36の直下で、且つガイド位置のガイド板38の直下に固定されている。すなわち、待機位置の加熱シリンダ31から少しずつ漏れ出る可塑化樹脂、及び待機位置の加熱シリンダ31から勢いよく排出されてガイド板38に着弾した可塑化樹脂の両方は、コンベア33の搬送面に着弾して、射出成形機10Aの外部に搬送される。
【0075】
第2実施形態に係る射出成形機10Aは、
図4及び
図5に示す処理を実行する。但し、第2実施形態では、ステップS12、S15におけるコンベアの前後進と、ステップS21、S25の処理とが省略される。また、第2実施形態に係るコントローラ50は、射出ユニット30(加熱シリンダ31)を射出位置から待機位置に移動させた後(すなわち、ステップS11の直後)に、ガイド板38を退避位置からガイド位置に移動させる。さらに、第2実施形態に係るコントローラ50は、射出ユニット30(加熱シリンダ31)を待機位置から射出位置に移動させる前(すなわち、ステップS16の直前)に、ガイド板38をガイド位置から退避位置に移動させる。
【0076】
第2実施形態によれば、パージ動作によって加熱シリンダ31先端のノズル36から勢いよく排出された可塑化樹脂が、ガイド位置のガイド板38に当たってコンベア33の搬送面に導かれる。その結果、横型の射出成形機10Aにおいて、パージ動作によって排出される可塑化樹脂を、コンベア33を通じて確実且つ効率的に射出成形機10Aの外部に排出できる。
【符号の説明】
【0077】
10,10A…射出成形機、20…型締ユニット、21…金型、22…固定金型、23…固定ダイプレート、24…可動金型、25…移動ダイプレート、26…タイバー、30…射出ユニット、31…加熱シリンダ、32…スクリュ、33…コンベア、34…ファン(冷却装置)、35…蓋、36…ノズル、36a…ノズル孔、37…箱体、37a,37b,37c…スリット、38…ガイド板、40…操作パネル、50…コントローラ、51…CPU、52…ROM、53…RAM、61…型開閉モータ、62…ノズルタッチモータ、63…計量モータ、64…射出モータ、65…コンベア進退モータ、66…コンベア駆動モータ、67…蓋進退モータ