(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】基準電圧回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
G05F3/24 B
(21)【出願番号】P 2019021108
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 薫
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-335122(JP,A)
【文献】特開2005-122574(JP,A)
【文献】特開2000-341104(JP,A)
【文献】米国特許第04096430(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/12-1/44
G05F 1/45-7/00
G11C 11/401-11/4099
G11C 11/56
H01L 21/336
H01L 29/76
H01L 29/772
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1MOSトランジスタペアと第2MOSトランジスタペアと出力端子を備え、
前記第1MOSトランジスタペアは、
ゲートとドレインが接続された第一導電型エンハンスメント型の第1MOSトランジスタと、ゲートが前記第1MOSトランジスタのソースに接続され、ソースが前記第1MOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記出力端子に接続された第一導電型デプレッション型の第2MOSトランジスタと、を備え、
前記第2MOSトランジスタペアは、
ゲートとドレインが前記出力端子に接続され、ソースが前記第2MOSトランジスタのソースに接続された第一導電型エンハンスメント型の第3MOSトランジスタと、ゲートが前記第3MOSトランジスタのソースに接続され、ソースが前記出力端子に接続された第一導電型デプレッション型の第4MOSトランジスタと、を備え、
全てのMOSトランジスタは弱反転領域で動作することを特徴とする基準電圧回路。
【請求項2】
前記第1MOSトランジスタペアは、複数のMOSトランジスタペアで構成された
ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項3】
ゲートとドレインが前記第1MOSトランジスタのソースに接続され、ソースが前記第2MOSトランジスタのゲートに接続され、弱反転領域で動作する第一導電型エンハンスメント型の第5MOSトランジスタを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項4】
前記第4MOSトランジスタのソースと前記出力端子の間に介挿され、弱反転領域で動作する第一導電型デプレッション型の第6MOSトランジスタと第2導電型エンハンスメント型の第7MOSトランジスタを有する出力回路を備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基準電圧回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の基準電圧回路を備えた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置において、エンハンスメント型MOSトランジスタとデプレッション型MOSトランジスタの閾値電圧の絶対値の和で出力電圧が決定される基準電圧回路が用いられている。
そのような基準電圧回路が出力する基準電圧は、エンハンスメント型MOSトランジスタとデプレッション型MOSトランジスタの各閾値電圧の温度依存性が相殺し合うことで、温度依存性が小さくなることが知られている。また、デプレッション型MOSトランジスタ、或いは、エンハンスメント型MOSトランジスタのいずれかの個数を増やすことで、任意の高い基準電圧を得ることが出来る(例えば、特許文献1の
図2から
図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の基準電圧回路では、エンハンスメント型MOSトランジスタとデプレッション型MOSトランジスタをバイアスするために2つ以上の定電流源を備えている。従って、2つ以上の経路に電流が常に流れるため、消費電流を小さくし難いという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為され、消費電流が微小で、任意に基準電圧を高く設定することが出来る基準電圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基準電圧回路は、
第1MOSトランジスタペアと第2MOSトランジスタペアと出力端子を備え、
前記第1MOSトランジスタペアは、
ゲートとドレインが接続された第一導電型エンハンスメント型の第1MOSトランジスタと、ゲートが前記第1MOSトランジスタのソースに接続され、ソースが前記第1MOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記出力端子に接続された第一導電型デプレッション型の第2MOSトランジスタと、を備え、
前記第2MOSトランジスタペアは、
ゲートとドレインが前記出力端子に接続され、ソースが前記第2MOSトランジスタのソースに接続された第一導電型エンハンスメント型の第3MOSトランジスタと、ゲートが前記第3MOSトランジスタのソースに接続され、ソースが前記出力端子に接続された第一導電型デプレッション型の第4MOSトランジスタと、を備え、全てのMOSトランジスタは弱反転領域で動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基準電圧回路によれば、弱反転動作する第一導電型エンハンスメント型のMOSトランジスタ(第1MOSトランジスタ)の電流で消費電流が決まるため、消費電流を容易に微小とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の基準電圧回路を説明するための回路図である。
【
図2】本実施形態の基準電圧回路の他の例を説明するための回路図である。
【
図3】本実施形態の基準電圧回路の他の例を説明するための回路図である。
【
図4】本実施形態の基準電圧回路の他の例を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態の基準電圧回路を説明するための回路図である。
【0011】
本実施形態の基準電圧回路10は、第一導電型(ここではNチャネル型)エンハンスメント型のMOSトランジスタ11、12と、第一導電型デプレッション型のMOSトランジスタ21、22と、を備えている。ここで、MOSトランジスタ11とMOSトランジスタ21で第1MOSトランジスタペアを構成し、MOSトランジスタ12とMOSトランジスタ22で第2MOSトランジスタペアを構成する。
【0012】
基準電圧回路10の各構成要素の接続について説明する。
MOSトランジスタ11は、ソースが接地端子100に接続され、ゲートとドレインがMOSトランジスタ12のソースに接続されている。MOSトランジスタ12は、ゲートとドレインが出力端子102に接続されている。MOSトランジスタ21は、ソースがMOSトランジスタ12のソースに接続され、ゲートが接地端子100に接続され、ドレインが出力端子102に接続されている。MOSトランジスタ22は、ソースが出力端子102に接続され、ゲートがMOSトランジスタ21のソースに接続され、ドレインが電源端子101に接続される。MOSトランジスタ11のドレインとMOSトランジスタ21のソースの接続点を接点N1とする。
【0013】
掛かる構成の基準電圧回路10の動作について、以下に説明する。
MOSトランジスタ11のドレイン電圧は、MOSトランジスタ21のゲート・ソース間電圧によって下降を制限される。MOSトランジスタ21のソース電圧は、MOSトランジスタ11のゲート・ソース間電圧によって上昇を制限される。結果として、接点N1の電圧は、接地端子100を基準とした一定電圧に安定する。
【0014】
MOSトランジスタ12とMOSトランジスタ22においても、同様の関係が成立し、MOSトランジスタ12のドレインとMOSトランジスタ22のソースの接続点である出力端子102の電圧は、接点N1を基準とした一定電圧に安定する。
【0015】
ここで、各エンハンスメント型MOSトランジスタの閾値電圧VTEは、各デプレッション型MOSトランジスタの閾値電圧VTDの絶対値よりも大きく設定する。
【0016】
このように閾値を設定すると、MOSトランジスタ11、12と、MOSトランジスタ21、22は全て弱反転領域で動作する。従って、出力端子102の電圧は、式1の出力電圧Voutで安定する。
【0017】
【数1】
ここで、nは弱反転スロープ係数、U
Tは熱電圧、Cは回路構成及び各MOSトランジスタの設計値に基く定数である。
【0018】
基準電圧回路10の消費電流は、弱反転領域で動作するMOSトランジスタ11のドレイン電流で決まるので、微小にすることが可能となる。従って、消費電流を小さくするために、MOSトランジスタのL長を大きくすることや、微小な定電流を生成する定電流回路を必要としないので、回路規模を小さくすることが出来る。
【0019】
また、式1からわかるように、右辺第一項は、閾値電圧VTEと閾値電圧VTDの温度依存性が相殺し合う。従って、右辺第二項の寄与を第一項よりも小さくするか、あるいは、右辺第二項の温度依存性を第一項に残る温度依存性と相殺するように調整することで、出力電圧Voutの温度依存性を小さくすることが出来る。
【0020】
上述したように、本実施形態の基準電圧回路によれば、弱反転動作のエンハンスメント型MOSトランジスタの電流で消費電流が決まる構成としたため、小さい回路規模で消費電流を微小にすることが出来る。
【0021】
なお、本実施形態の基準電圧回路は、2組のMOSトランジスタペアで構成したが、より高い基準電圧を得たい場合は、第1MOSトランジスタペアを複数のMOSトランジスタペアで構成しても良い。例えば、
図2の基準電圧回路10のように、第1MOSトランジスタペアをMOSトランジスタ11a、21aのMOSトランジスタペアとMOSトランジスタ11b、21bのMOSトランジスタペアで構成しても良い。ここで、MOSトランジスタ11aのドレインとMOSトランジスタ21aのソースの接点をN1a、MOSトランジスタ11bのドレインとMOSトランジスタ21bのソースの接点をN1bとする。
【0022】
掛かる構成の基準電圧回路10の動作について、以下に説明する。
MOSトランジスタ11a、11bと、MOSトランジスタ21a、21bは
図1の基準電圧回路10と同様に動作し、接点N1bの電圧は式1で表される。
【0023】
MOSトランジスタ12とMOSトランジスタ22においても同様の動作関係が成立し、MOSトランジスタ12のドレインとMOSトランジスタ22のソースの接点である出力端子102の電圧は接点N1bを基準とした一定電圧に安定化する。
【0024】
また同様に、MOSトランジスタ12とMOSトランジスタ22は弱反転領域で動作し、出力端子102の出力電圧Voutは式2の電圧に安定化する。
【0025】
【0026】
そして、上述した動作の説明は、MOSトランジスタのペアの数が増えて、M個になったとしても同様のことが繰り返される。即ち、MOSトランジスタのペアの数Mを調整することにより、エンハンスメント型MOSトランジスタとデプレッション型MOSトランジスタの閾値電圧の和の電圧の1/2に比例した任意の高い電圧が得ることが可能となる。また、基準電圧回路10の消費電流は、弱反転領域で動作するMOSトランジスタ11(11a)のドレイン電流で決定されるので、微小にすることが可能となる。
【0027】
図3は、本実施形態の基準電圧回路の他の例を説明するための回路図である。
【0028】
基準電圧回路10aは、
図1の基準電圧回路10に加えて、MOSトランジスタ11と接地端子100との間に第一導電型エンハンスメント型のMOSトランジスタ13が介挿されて構成される。
図3の回路図において、
図1と同様の構成については、同一の符号を付与し、詳細な説明は省略する。
【0029】
MOSトランジスタ13は、ソースが接地端子100に接続され、ゲートとドレインはMOSトランジスタ11のソースに接続される。MOSトランジスタ21のゲートは、MOSトランジスタ13のソースと接地端子100に接続される。
【0030】
掛かる構成の基準電圧回路10aの動作について、以下に説明する。
基準電圧回路10aは、MOSトランジスタ11とMOSトランジスタ13が直列に接続されているため、安定状態において各々のゲート・ソース間電圧は小さい。即ち、MOSトランジスタ11とMOSトランジスタ13は、高温においても弱反転領域の動作点を持つ。
【0031】
一般的に高温では、MOSトランジスタの閾値電圧が低くなるため、MOSトランジスタは弱反転動作から強反転動作に移行しやすい。基準電圧回路10aは、上述のように構成したので、高温においてもMOSトランジスタ11とMOSトランジスタ13が弱反転領域の動作点を保持し、消費電流を小さくし続けることが出来る。
【0032】
以上説明したように、基準電圧回路10aによれば、基準電圧回路10の効果に加えて、広い温度範囲で消費電流を微小にすることが出来る。
【0033】
図4は、本実施形態の基準電圧回路の他の例を説明するための回路図である。
【0034】
基準電圧回路20は基準電圧回路10に加えて、第一導電型デプレッション型のMOSトランジスタ23と、第二導電型(ここではPチャネル型)エンハンスメント型のMOSトランジスタ31と、を備えている。MOSトランジスタ23とMOSトランジスタ31は、基準電圧回路の出力回路を構成する。
図4の回路図において、
図1と同様の構成については、同一の符号を付与し、詳細な説明は省略する。
【0035】
MOSトランジスタ23は、ドレインが電源端子101に接続され、ゲートが接点N2に接続され、ソースが出力端子102に接続される。MOSトランジスタ31は、ソースが出力端子102に接続され、ゲートが接点N2に接続され、ドレインが接地端子100に接続される。
【0036】
掛かる構成の基準電圧回路20の動作について、以下に説明する。
MOSトランジスタ11、12と、MOSトランジスタ21、22は基準電圧回路10と同様に動作し、MOSトランジスタ12のドレインとMOSトランジスタ22のソースの接点N2の電圧が式1で表される。
【0037】
ここで、MOSトランジスタ31の閾値電圧VTE2の絶対値は、MOSトランジスタ23の閾値電圧VTDの絶対値よりも大きいように設定する。この時、MOSトランジスタ31とMOSトランジスタ23は、弱反転領域で動作し、出力端子102の出力電圧Voutは式3の電圧に安定化する。
【0038】
【数3】
MOSトランジスタ31は弱反転領域で動作するため、MOSトランジスタ31を経由した電源端子101と接地端子100間の経路の電流は微小となる。そのため、MOSトランジスタ31とMOSトランジスタ23の追加による消費電流の増加はごく僅かとなる。
【0039】
また、式3の右辺第三項の閾値電圧VTE2と閾値電圧VTDは温度依存性が相殺し合う。そのため、基準電圧回路20の出力電圧Voutの温度依存性は小さくなる。
【0040】
上述のように構成した基準電圧回路20では、出力インピーダンスがMOSトランジスタ31とMOSトランジスタ23の設計値によって決まるため、エンハンスメント型MOSトランジスタとデプレッション型MOSトランジスタのペア数の影響を受けない。従って、基準電圧回路20によれば、エンハンスメント型MOSトランジスタとデプレッション型MOSトランジスタのペア数が増加しても、出力インピーダンスを低くすることが出来る。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、基準電圧回路10aにおいて、エンハンスメント型MOSトランジスタ13を複数と備えてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10、20 基準電圧回路
11、12、13 第一導電型エンハンスメント型MOSトランジスタ
21、22、23 第一導電型デプレッション型MOSトランジスタ
31 第二導電型エンハンスメント型MOSトランジスタ
100 接地端子
101 電源端子
102 出力端子