(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】電源装置、自動操舵車両、及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20221209BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20221209BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221209BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20221209BHJP
B61C 3/02 20060101ALI20221209BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
B60L1/00 A
B62D6/00
B62D5/04
B61B13/00 N
B61C3/02
B60L1/00 B
B60T7/12 B
(21)【出願番号】P 2019053506
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】清水 一隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】林 詠悟
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-11653(JP,A)
【文献】特開平6-191418(JP,A)
【文献】実開昭49-60416(JP,U)
【文献】特開2012-249462(JP,A)
【文献】特開2000-50408(JP,A)
【文献】特開2014-147197(JP,A)
【文献】特開2011-255757(JP,A)
【文献】特開2011-19326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
B62D 5/04,6/00
B61B 13/00
B61C 3/02
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、軌道上で前記車体を走行させる走行輪及び該走行輪を自動で操舵可能な操舵装置を含む台車と、を有する自動操舵車両に設けられた電源装置であって、
前記走行輪を回転駆動するモータへ電力を供給する第一電源系統と、
前記第一電源系統の電力の一部が供給されて電圧を変圧する変圧装置と、
前記変圧装置で変圧された電力を前記操舵装置に供給する第二電源系統と、
前記第一電源系統で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記変圧装置に電力を供給可能な第一予備電源と、
を備え
、
前記第一予備電源は、前記変圧装置に対して前記自動操舵車両が停止するまでに必要な電力を供給する電源装置。
【請求項2】
前記第二電源系統に設けられ、前記操舵装置に電力を供給する第二予備電源をさらに備え、
前記第二予備電源は、前記変圧装置で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記操舵装置に電力を供給可能となっている請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第二予備電源は、該第二予備電源の状態を管理するバッテリマネジメントシステムを有している請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記バッテリマネジメントシステムは、前記第二予備電源から前記操舵装置に供給可能な電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記台車に設けられて前記走行輪にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置を動作させる請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記操舵装置は、前記走行輪を操舵するアクチュエータと、前記アクチュエータの動作量を決定するためのセンサと有し、
前記第二電源系統は、前記アクチュエータへ電力を供給する操舵系統と、前記センサへ供給するセンサ系統と、を有し、
前記第二予備電源は、前記操舵系統と前記センサ系統との各々に設けられている請求項2から4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記操舵系統及び前記センサ系統へは、前記変圧装置から並列に電力が供給可能となっている請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記第二予備電源は、前記台車に設けられている請求項5又は6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記操舵系統に設けられた前記第二予備電源は、前記アクチュエータに加えられる外力を回生電力として吸収可能に設けられている請求項5から7のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記操舵系統及び前記センサ系統は、前記車体の走行方向の前部に設けられる前記台車と、前記車体の前記走行方向の後部に設けられる前記台車とに対応して対をなして設けられ、
一対の前記操舵系統の各々に設けられた前記第二予備電源は、一対の前記操舵系統のいずれに対しても電力を供給可能であり、
一対の前記センサ系統の各々に設けられた前記第二予備電源は、一対の前記センサ系統のいずれに対しても電力を供給可能である請求項5から8のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項10】
前記変圧装置は、前記変圧装置で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記台車に設けられて前記走行輪にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置を動作さ
せるリレーを有する請求項1から9のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項11】
前記第一電源系統は、前記第一電源系統で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記台車に設けられて前記走行輪にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置を動作させるリレーを有する請求項1から10のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の電源装置と、
前記電源装置からの電力によって回転駆動可能な走行輪、及び、前記電力によって前記走行輪を自動で操舵可能な操舵装置を有する台車と、
前記台車が設けられた車体と、
を備える自動操舵車両。
【請求項13】
車体と、軌道上で前記車体を走行させる走行輪及び該走行輪を自動で操舵可能な操舵装置を含む台車と、を有する自動操舵車両への電力供給方法であって、
第一電源系統によって前記走行輪を回転駆動するモータへ電力を供給するステップと、
前記第一電源系統の電力の一部が供給されて電圧を変圧装置で変圧するステップと、
前記変圧装置で変圧された電力を前記操舵装置に供給するステップと、
前記第一電源系統で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、第一予備電源によって前記変圧装置に電力を供給するステップと、
を含
み、
前記第一予備電源によって前記変圧装置に電力を供給するステップでは、前記第一予備電源は、前記変圧装置に対して前記自動操舵車両が停止するまでに必要な電力を供給する電力供給方法。
【請求項14】
前記変圧装置で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、第二予備電源から前記操舵装置に電力を供給するステップをさらに含む請求項13に記載の電力供給方法。
【請求項15】
前記第二予備電源から前記操舵装置に供給可能な電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記走行輪にブレーキ力を付与するステップをさらに含む請求項14に記載の電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、電源装置を備えた自動操舵車両、及び自動操舵車両への電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バスや鉄道以外の新たな交通手段として、ゴムタイヤ等からなる走行輪によって軌道上を走行する軌道系交通システムが知られている。この種の軌道系交通システムは、一般に「新交通システム」と呼ばれている。
新交通システムの具体例としては、例えば、APM(Automated People Mover:全自動無人運転車両)や都市内向けAGT(Automated Guideway Transit:自動案内軌条旅客輸送システム)等がある。
【0003】
ところで新交通システムとしては、軌道に設けられた案内軌条によって案内輪が案内されつつ車両が操舵されるパッシブ型のシステムと、車両が自らの操舵によって軌道を走行するアクティブ型のシステムとが知られている。アクティブ型のシステムでは、仮に電源喪失が発生した場合、走行だけでなく操舵もできなくなるため、電源喪失時の脱線防止等の対策が必要となる。
【0004】
ここで特許文献1には、車載バッテリが故障した際に車両に搭載された補助電源によって操舵補助力を発生させることができる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の装置は、自動車の操舵を行うパワーステアリング装置に適用されるものである。よって、バッテリ故障による電源喪失が生じても、運転手がステアリングを操作することで車両の操舵を継続することは可能である。即ち特許文献1に記載の装置は自動操舵車両に適用される装置ではなく、特許文献1の装置は電源喪失時に、あくまで操舵補助力を発生させるのみであって操舵制御の全てを行うものではない。
【0007】
そこで本発明では、電源喪失時に、より安全に自動操舵車両の走行を制御することが可能な電源装置と、電源装置を備えた自動操舵車両と、自動操舵車両への電力供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電源装置は、車体と、軌道上で前記車体を走行させる走行輪及び該走行輪を自動で操舵可能な操舵装置を含む台車と、を有する自動操舵車両に設けられた電源装置であって、前記走行輪を回転駆動するモータへ電力を供給する第一電源系統と、前記第一電源系統の電力の一部が供給されて電圧を変圧する変圧装置と、前記変圧装置で変圧された電力を前記操舵装置に供給する第二電源系統と、前記第一電源系統で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記変圧装置に電力を供給可能な第一予備電源と、を備え、前記第一予備電源は、前記変圧装置に対して前記自動操舵車両が停止するまでに必要な電力を供給する。
【0009】
また、上記の電源装置は、前記第二電源系統に設けられ、前記操舵装置に電力を供給する第二予備電源をさらに備え、前記第二予備電源は、前記変圧装置で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記操舵装置に電力を供給可能となっていてもよい。
【0010】
また、上記の電源装置は、前記第二予備電源は、該第二予備電源の状態を管理するバッテリマネジメントシステムを有していてもよい。
【0011】
また、上記の電源装置では、前記バッテリマネジメントシステムは、前記第二予備電源から前記操舵装置に供給可能な電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記台車に設けられて前記走行輪にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置を動作させてもよい。
【0012】
また、上記の電源装置では、前記操舵装置は、前記走行輪を操舵するアクチュエータと、前記アクチュエータの動作量を決定するためのセンサと有し、前記第二電源系統は、前記アクチュエータへ電力を供給する操舵系統と、前記センサへ供給するセンサ系統と、を有し、前記第二予備電源は、前記操舵系統と前記センサ系統との各々に設けられていてもよい。
【0013】
また、上記の電源装置では、前記操舵系統及び前記センサ系統へは、前記変圧装置から並列に電力が供給可能となっていてもよい。
【0014】
また、上記の電源装置では、前記第二予備電源は、前記台車に設けられていてもよい。
【0015】
また、上記の電源装置では、前記操舵系統に設けられた前記第二予備電源は、前記アクチュエータに加えられる外力を回生電力として吸収可能に設けられていてもよい。
【0016】
また、上記の電源装置では、前記操舵系統及び前記センサ系統は、前記車体の走行方向の前部に設けられる前記台車と、前記車体の前記走行方向の後部に設けられる前記台車とに対応して対をなして設けられ、一対の前記操舵系統の各々に設けられた前記第二予備電源は、一対の前記操舵系統のいずれに対しても電力を供給可能であり、一対の前記センサ系統の各々に設けられた前記第二予備電源は、一対の前記センサ系統のいずれに対しても電力を供給可能であってもよい。
【0017】
また、上記の電源装置では、前記変圧装置は、前記変圧装置で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記台車に設けられて前記走行輪にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置を動作させるリレーを有していてもよい。
【0018】
また、上記の電源装置では、前記第一電源系統は、前記第一電源系統で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記台車に設けられて前記走行輪にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置を動作させるリレーを有していてもよい。
【0019】
また、本発明の一態様の自動操舵車両は、上記の電源装置と、前記電源装置からの電力によって回転駆動可能な走行輪、及び、前記電力によって前記走行輪を自動で操舵可能な操舵装置を有する台車と、前記台車が設けられた車体と、を備えている。
【0020】
また、本発明の一態様の電力供給方法は、車体と、軌道上で前記車体を走行させる走行輪及び該走行輪を自動で操舵可能な操舵装置を含む台車と、を有する自動操舵車両への電力供給方法であって、第一電源系統によって前記走行輪を回転駆動するモータへ電力を供給するステップと、前記第一電源系統の電力の一部が供給されて電圧を変圧装置で変圧するステップと、前記変圧装置で変圧された電力を前記操舵装置に供給するステップと、前記第一電源系統で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、第一予備電源によって前記変圧装置に電力を供給するステップと、を含み、前記第一予備電源によって前記変圧装置に電力を供給するステップでは、前記第一予備電源は、前記変圧装置に対して前記自動操舵車両が停止するまでに必要な電力を供給する。
【0021】
また、上記の電力供給方法は、前記変圧装置で検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、第二予備電源から前記操舵装置に電力を供給するステップをさらに含んでもよい。
【0022】
また、上記の電力供給方法は、前記第二予備電源から前記操舵装置に供給可能な電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、前記走行輪にブレーキ力を付与するステップをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
上記の電源装置と、電源装置を備えた自動操舵車両と、自動操舵車両への電力供給方法によれば、電源喪失時に、より安全に自動操舵車両の走行を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両における台車の概略上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両の電源装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記電源装置における電力供給方法を示す図であって、第一電源系統でのフロー図である。
【
図4】上記電源装置における電力供給方法を示す図であって、変圧装置でのフロー図である。
【
図5】上記電源装置における電力供給方法を示す図であって、第二予備電源でのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る自動操舵車両1(以下、単に車両1とする)について図面を参照して説明する。
図1に示すように車両1は新交通システムの車両であって、車体2と、車体2の下部に設けられた台車3と、台車3に電力を供給する電源装置20とを備えている。
【0026】
車体2は走行方向D1の前後に長い略直方体の中空形状をなしている。車体2の内部には、乗客を収容可能な空間が設けられている。
台車3は、車体2を下方から支持し、軌道100上を走行する。台車3は、車体2の走行方向D1における前部及び後部における下部に一つずつ設けられている。前部に配置された台車3Aと後部に配置された台車3Bとは同じ構成を有している。
【0027】
台車3(3A、3B)の各々は、車体2に取り付けられる台車枠4と、台車枠4に支持された走行輪7と、走行輪7を自動操舵する操舵装置10と、を備えている。
【0028】
台車枠4には、車両1の走行方向D1に交差する軌道100の幅方向に延びる車軸8が設けられている。また台車枠4には車軸8を回転させるモータ9が設けられている。また、本実施形態では、台車枠4には軌道100の幅方向に延びる給電部5が設けられている。給電部5の両端にはパンタグラフ6が設けられている。パンタグラフ6は電源装置20に電気的に接続されている。パンタグラフ6が軌道100の側壁に沿って設けられた給電線120に接触することで、電源装置20を介して台車3に電力が供給される。
【0029】
ここで、給電部5及びパンタグラフ6に代えてバッテリを設けてもよい。この場合、台車3は軌道100の給電線120からではなく、バッテリから電力の供給を受けることになるため、軌道100に給電線120を設ける必要はない。また給電線120からの電力とバッテリからの電力とを併用して台車3へ供給してもよい。
【0030】
走行輪7は車軸8の両端に一つずつ設けられたゴムタイヤである。走行輪7は車軸8とともに回転可能となっている。
【0031】
操舵装置10は、台車枠4と走行輪7とを連結する連結アーム11と、連結アーム11を動作させるアクチュエータ12と、走行輪7の軌道100上の位置を検出するセンサ13と、センサ13の検出結果に基づいてアクチュエータ12を動作させる操舵制御部14とを有している。
【0032】
連結アーム11は、車軸8の両側の走行輪7を連結し、これらの走行輪7をリンクさせて上下方向に延びる軸回りに旋回可能とし、走行輪7を操舵する。
【0033】
アクチュエータ12は、例えばエアシリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ等である。アクチュエータ12の動作によって連結アーム11を通じて走行輪7が操舵される。アクチュエータ12は台車枠4に設けられている。
【0034】
センサ13は、例えばレーザー等を用いて軌道100の側壁(不図示)と車体2との距離を検知する等して、走行輪7の幅方向の位置を検知する装置である。センサ13は車体2に設けられてもよいし、台車3に設けられてもよい。本実施形態ではセンサ13は。例えば走行方向D1の前部の台車3Aの近くに、車体2における幅方向の両端に一つずつ設けられ、走行方向D1の後部の台車3Bの近くに、車体2における幅方向の両端に一つずつ設けられている。ただしセンサ13の数量、設置位置は上述の場合に限定されない。またセンサ13は、GPS(Global Positioning System)の信号を受信して車両1の位置や姿勢等を検出する装置であってもよい。
【0035】
操舵制御部14はプロセッサ等を有し、センサ13の検知信号を取得してアクチュエータ12を動作させる。即ち、走行輪7の位置が軌道100の幅方向の所定位置からずれているとセンサ13で検知された際、操舵制御部14は、走行輪7が所定位置に戻るように走行輪7を操舵する。操舵制御部14は車体2に設けられてもよいし、台車3に設けられてもよい。
【0036】
次に、
図2を参照して電源装置20について詳細に説明する。
図2に示すように、電源装置20は、第一電源系統21と、第二電源系統31と、変圧装置22と、第一予備電源35と、第二予備電源36とを備えている。
【0037】
第一電源系統21は、走行輪7を回転駆動させるための配線及び電子機器(不図示)を有している。即ち第一電源系統21は駆動系の電源系統であり、パンタグラフ6によって給電線120から取りこんだ電力を台車3のモータ9へ供給することで走行輪7を回転駆動させる。第一電源系統21は例えば車内の照明、空調、ドアエンジン等(不図示)にも接続され、これらの機器へも電力を供給している。
【0038】
第一電源系統21は、電気の流れの上流側から下流側に向かってSIV(静止形インバータ:Static Inverter)21aと、VD(ボルテージディテクタ)21bと、リレー21cとを有している。例えばSIV21aは給電線120からの電力の電圧を変圧したり、電力の交直変換を行ったりする。リレー21cは、VD21bで上流から供給される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、走行輪7にブレーキ力を付与する保安ブレーキ装置17を動作させる。保安ブレーキ装置17は詳細な図示は省略するが、非常時に常用ブレーキとは別系統で常用ブレーキのブレーキシリンダ(不図示)を動作させることでブレーキ力を走行輪7に付与するものである。
【0039】
変圧装置22は、第一電源系統21の電力の一部が供給され、電圧を変圧する。変圧装置22は、電気の流れの上流側から下流側に向かってDC/DCコンバータ23と、VD(ボルテージディテクタ)24と、リレー25と、を有している。
リレー25は、VD24で変圧装置22の上流から供給される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に動作し、走行輪7にブレーキ力を付与する上記の保安ブレーキ装置17を動作させる。
本実施形態では、DC/DCコンバータ23と、VD24と、リレー25との組は複数組(4組)設けられている。
【0040】
第二電源系統31は、変圧装置22に電気的に接続されている。第二電源系統31へは変圧装置22で変圧後の電力が供給される。第二電源系統31は、走行輪7以外の機器を動作させるための配線及び電子機器(不図示)を有している。即ち、第二電源系統31は、アクチュエータ12及び操舵制御部14へ電力を供給する操舵系統32と、センサ13へ電力を供給するセンサ系統33とを有している。
【0041】
操舵系統32には、第一電源系統21からの電力が変圧装置22で変圧されて供給される。第一電源系統21から変圧装置22へ供給される電力の電圧は例えばDC100Vであり、操舵系統32の電圧は例えばDC12Vである。
本実施形態では、走行方向D1の前部の台車3Aのアクチュエータ12を動作させる操舵系統(前)32A、及び、走行方向D1の後部の台車3Bのアクチュエータ12を動作させる操舵系統(後)32Bの2系統が設けられている。各々の操舵系統32は、変圧装置22内のDC/DCコンバータ23、VD24、及びリレー25の一つの組に、一つずつ接続されている。即ち各々の操舵系統32へは変圧装置22から並列に電力が供給可能となっている。
【0042】
センサ系統33には、第一電源系統21からの電力が変圧装置22で変圧されて供給される。センサ系統33の電圧は操舵系統32とは異なる例えばDC24Vである。
本実施形態では、走行方向D1の前部の台車3Aに近いセンサ13を動作させるセンサ系統(前)33A、及び、走行方向D1の後部の台車3Bに近いセンサ13を動作させるセンサ系統(後)33Bの2系統が設けられている。各々のセンサ系統33は、変圧装置22内のDC/DCコンバータ23、VD24、及びリレー25の一つの組に、一つずつ接続されている。即ち各々のセンサ系統33へは変圧装置22から並列に電力が供給可能となっている。
【0043】
第一予備電源35は、バッテリであって、車体2又は台車3に設けられている。第一予備電源35は、第一電源系統21と変圧装置22との間に電気的に接続されて設けられている。第一予備電源35は詳しくは後述するように、第一電源系統21のVD21bで検知される電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、変圧装置22に対して車両1が安全に自動操舵しながら緊急停止するまでに必要な電力を変圧装置22供給する。第一予備電源35は、変圧装置22を介して第二電源系統31のみに電力を供給してもよいし、第二電源系統31に加えて第一電源系統21にも電力を供給してもよい。
【0044】
第一予備電源35が変圧装置22に供給可能な電力の電圧は、第一予備電源35の下流側の機器を動作させるために十分な電圧であるとともに、正常運転時に第一電源系統21が変圧装置22に供給する電力の電圧よりも若干低くなっている。これにより、例えば第一電源系統21が変圧装置22に供給している電力の電圧が低下し、この電圧が、第一予備電源35が変圧装置22に供給可能な電力の電圧よりも低くなると、自動的に第一予備電源35から変圧装置22への電力供給が開始される。第一予備電源35はフローティング充電可能に設けられていてもよい。
【0045】
第二予備電源36は、第二電源系統31におけるセンサ系統33及び操舵系統32のそれぞれに一つずつ電気的に接続されて、各々の系統に、各系統と同じ電圧で電力を供給可能になっている。第二予備電源36は、車両1が安全に自動操舵しながら緊急停止するまでに必要な電力を第二電源系統31に供給する。各々の第二予備電源36は、バッテリ37と、BMS(バッテリマネジメントシステム)38とを有している。BMS38は第二予備電源36の状態を管理し、センサ13、アクチュエータ12、及び操舵制御部14に供給可能な電力の電圧が所定値よりも小さくなった際に、上記保安ブレーキ装置17を動作させることで走行輪7にブレーキ力を付与可能とする。
【0046】
また第二予備電源36は、アクチュエータ12に外力が作用した際の回生電力を吸収するようになっている。第二予備電源36はフローティング充電可能に設けられていてもよい。この場合、BMS38が第二予備電源36の状態が異常と判断した際には、保安ブレーキ装置17を動作させる以外にも第二予備電源36の充放電を停止させるようにしてもよい。
【0047】
第二予備電源36が第二電源系統31のセンサ系統33及び操舵系統32に供給可能な電力の電圧は、第二予備電源36の下流側の機器を動作させるために十分な電圧であるとともに、正常運転時に変圧装置22がセンサ系統33及び操舵系統32に供給する電力の電圧よりも若干低くなっている。これにより、例えば変圧装置22がセンサ系統33及び操舵系統32に供給している電力の電圧が低下し、この電圧が、第二予備電源36がセンサ系統33及び操舵系統32に供給可能な電力の電圧よりも低くなると、自動的に第二予備電源36からセンサ系統33及び操舵系統32への電力供給が開始される。
【0048】
例えば本実施形態では全ての第二予備電源36が台車枠4に設けられているが、少なくとも操舵系統32に設けられた第二予備電源36が台車枠4に設けられているとよい。即ち少なくともアクチュエータ12を動作させる第二予備電源36をアクチュエータ12に近い位置で台車枠4に設けるとよい。また第二予備電源36は台車3における台車枠4以外の部分に設けられていてもよい。
【0049】
また二つの操舵系統32に接続された第二予備電源36の各々からは、二つの操舵系統32に共に電力を供給することも可能となっている。同様に、二つのセンサ系統33に接続された第二予備電源36の各々からは、二つのセンサ系統33に共に電力を供給することも可能となっている。
【0050】
次に
図3から
図5を参照して、電源装置20における電力供給方法のフローを説明する。
【0051】
まず、第一電源系統21のフローについて説明する。
図3に示すように第一電源系統21の上流、即ち給電レール120からパンタグラフ6を介して第一電源系統21に電力が供給される。この際、VD21bで検知する電圧が閾値(所定値)以上である場合、「YES」となりフローのスタートに戻り、一方で、VD21bで検知する電圧が閾値(所定値)よりも小さい場合、「NO」となる(ステップS1)。そして、ステップS1で「NO」となった場合、VD21bによってリレー21cを動作させ、リレー21cによって保安ブレーキ装置17を動作させるとともに、保安ブレーキ装置17の動作と並行して第一予備電源35から変圧装置22へ自動的に電力供給が開始される(ステップS2)。
なお、パンタグラフ6等の第一電源系統21の上流側の装置に不具合が生じた場合だけでなく、第一電源系統21内でVD21bの上流側で断線等が発生した場合にも、保安ブレーキ装置17及び第一予備電源35が動作するようになっている。
【0052】
次に、変圧装置22のフローについて説明する。
図4に示すように変圧装置22の上流、即ち、第一電源系統21又は第一予備電源35から変圧装置22へ電力が供給される。この際、VD24で検知する電圧が閾値(所定値)以上である場合、「YES」となりフローのスタートに戻り、一方で、VD24で検知する電圧が閾値(所定値)よりも小さい場合、「NO」となる(ステップS11)。そして、ステップS11で「NO」となった場合、VD24によってリレー25を動作させ、リレー25によって保安ブレーキ装置17を動作させるとともに、保安ブレーキ装置17の動作と並行して第二予備電源36から変圧装置22へ自動的に電力供給が開始される(ステップS12)。
【0053】
図3に示す第一電源系統21のフローと、
図4に示す変圧装置22のフローとは独立して動作する。このため、第一電源系統21及び第一予備電源35に不具合が無く、これらが正常に動作している場合であっても、仮に変圧装置22内の断線等で、VD24で検知する電圧が閾値よりも小さくなった場合には、保安ブレーキ装置17や第二予備電源36が動作するようになっている。
【0054】
次に、第二予備電源36のフローについて説明する。
図5に示すように第二予備電源36では、第二予備電源36から第二電源系統31へ供給可能な電力の電圧が閾値(所定値)以上であるとBMS38が検知した場合、「YES」となりフローのスタートに戻り、一方で第二予備電源36から第二電源系統31へ供給可能な電力の電圧が閾値よりも小さいとBMS38が検知した場合、「NO」となる(ステップS21)。そして、ステップS21で「NO」となった場合、BMS38によって保安ブレーキ装置17を動作させる(ステップS22)。
【0055】
図5に示す第二予備電源36のフローと、
図3に示す第一電源系統21のフロー及び
図4に示す変圧装置22のフローとは独立して動作する。このため、第一電源系統21、第一予備電源35、及び変圧装置22に不具合が無く、これらが正常に動作している場合であっても、仮に第二予備電源36自身に不具合が生じた場合には、保安ブレーキ装置17が動作するようになっている。
【0056】
以上説明した本実施形態の車両1によれば、なんらかの原因で第一電源系統21に不具合が生じた場合、VD21bで検知される電力の電圧が上記の閾値よりも小さくなる。この際には、VD21bの下流側の第二電源系統31に十分な電力が供給されなくなり、操舵装置10へ十分な電力供給を行うことができなくなってしまう。しかしこのとき、変圧装置22へは第一予備電源35から電力が自動的に供給されるため、操舵装置10への電力の供給が不足、及び停止することなく、走行輪7の自動操舵を継続することができる。よって電源喪失時に車両1の脱線等を回避できる。即ち、安全に自動操舵車両1の走行を制御できる。
【0057】
また、電源装置20に第二予備電源36が設けられていることで、第一予備電源35から変圧装置22へ十分な電力供給ができなくなった際にも、操舵装置10への電力の供給が不足、及び停止することなく、走行輪7の自動操舵を継続することができる。よって自動操舵制御の冗長性を向上でき、車両1の脱線等の可能性をさらに低減することができる。
【0058】
また各操舵系統32及びセンサ系統33へは変圧装置22から並列に電力が供給可能となって、各系統32、33には一つずつ第二予備電源36が設けられている。従って操舵系統32の電圧とセンサ系統33の電圧とを異なる電圧にすることができる。
【0059】
さらに本実施形態では第二予備電源36が前後の台車3A、3Bの各々における操舵系統32とセンサ系統33とに一つずつ設けられている。このため、アクチュエータ12、センサ13、及び操舵制御部14に変圧装置22を介さずに第二電源系統31の電圧でダイレクトに電力を供給することができる。よって電源喪失時に瞬時に操舵装置10を制御することで、より確実に車両1の走行を制御できる。
【0060】
また前後の台車3A、3Bの両方の操舵系統32における各々の第二予備電源36は、いずれもが前後の台車3A、3Bの両方の操舵系統32へ電力を供給できる。同様に前後の台車3A、3Bの両方のセンサ系統33における各々の第二予備電源36は、いずれもが前後台車3A、3Bの両方のセンサ系統33へ電力を供給できる。
【0061】
よって操舵系統32の第二予備電源36のうちの一方が故障したとしても、他方が前後の台車3A、3Bの両方の操舵系統32へ電力を供給でき、かつ、センサ系統33の第二予備電源36のうちの一方が故障したとしても、他方が前後の台車3A、3Bの両方のセンサ系統33へ電力を供給できるため、冗長性を向上できる。
【0062】
さらに、第二予備電源36にはBMS38が設けられている。BMS38は、第二予備電源36自身の状態を管理可能であり、第二予備電源36を常に最適な状態に保つことができる。例えば第一電源系統21や第一予備電源35が正常動作していたとしても、第二予備電源36が故障して第二予備電源36から操舵装置10に供給可能な電力の電圧が所定値よりも小さくなってしまった際には、第二予備電源36によって操舵装置10を十分に動作させられなくなってしまう可能性がある。この場合、BMS38によって保安ブレーキ装置17を動作させることで、第二予備電源36が動作できない状態で車両1が走行し続けてしまうことを回避できる。
【0063】
さらに本実施形態では、変圧装置22に不具合が生じた場合、VD24で検知する電圧が所定値をよりも小さくなる。この際には、第二予備電源36から操舵装置10に電力を自動的に供給することができる。よって、第一電源系統21から変圧装置22への電力供給、及び/又は、第一予備電源35から変圧装置22への電力供給が停止しないまま電力の供給量が低下した場合であっても、第二予備電源36から操舵装置10へ補助的に電力を供給することができ、確実に走行輪7の自動操舵を行うことができる。
【0064】
また操舵系統32の第二予備電源36が台車枠4に設けられていることで、アクチュエータ12の近くに第二予備電源36を配置することができる。従って、第二予備電源36からアクチュエータ12へ電力を供給する際に、電力の送電ロスを低減することができる。これにより、より確実にアクチュエータ12を動作させることができ、第二予備電源36の容量を小さくすることができ、電源装置20全体の小型化を達成できる。
【0065】
さらに第二予備電源36は、アクチュエータ12に外力が作用した際の回生電力を吸収するようになっている。よって、例えば走行輪が外力によって急に操舵された場合に、アクチュエータ12によって発生する電力が操舵系統32の回路における耐電圧を超えてしまい回路が損傷してしまうような問題を回避できる。
【0066】
また、変圧装置22のVD24で検知される電力の電圧が閾値よりも小さくなってしまった際には保安ブレーキ装置17を動作させることができる。よって、車両1を停止させつつ第二予備電源36によって走行輪7の自動操舵を継続できるため、安全に車両1を停止させることが可能となる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0068】
第二予備電源36は、第二電源系統31のみに設ける場合だけでなく、第一電源系統21に設けてもよい。
【0069】
第二電源系統31は操舵系統32及びセンサ系統33以外の系統をさらに有していてもよい。
【0070】
操舵制御部14は前後の台車3A、3Bの各アクチュエータ12に対して一つずつ設けられているが、仮に一方の操舵制御部14が故障した場合には、いずれか一方の操舵制御部14で前後の台車3A、3Bのアクチュエータ12を動作させるようにしてもよい。
【0071】
また、車両1は、軌道100の両側部の案内軌条によって案内される案内輪を台車枠4に設けたパッシブ型の新交通システムの車両と同様の構成を有していてもよい。この場合、仮に電源喪失で自動操舵が難しくなったとしても、より安全に車両1の走行を制御することができる。
【0072】
車両1は複数両が連結されていてもよく、車両1に設けられる台車3の数量も上述の場合に限定されない。
【0073】
上記では第一予備電源35及び第二予備電源36からの電力供給は自動的に開始されるようになっているが、別途、制御装置を設けて第一予備電源35及び第二予備電源36からの電源供給を開始させてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…車両
2…車体
3…台車
4…台車枠
5…給電部
6…パンタグラフ
7…走行輪
8…車軸
9…モータ
10…操舵装置
11…連結アーム
12…アクチュエータ
13…センサ
14…操舵制御部
17…保安ブレーキ装置
20…電源装置
21…第一電源系統
21a…SIV
21b…VD
21c…リレー
22…変圧装置
23…DC/DCコンバータ
24…VD
25…リレー
31…第二電源系統
32…操舵系統
33…センサ系統
35…第一予備電源
36…第二予備電源
37…バッテリ
38…BMS
100…軌道
120…給電線
D1…走行方向