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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】擬似接着ラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/10 20060101AFI20221209BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221209BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221209BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221209BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20221209BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221209BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G09F3/10 J
G09F3/10 A
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/08
C09J123/00
B32B27/00 M
B32B27/32 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019060345
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020160308
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雅康
(72)【発明者】
【氏名】森 剛志
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-243919(JP,A)
【文献】特開2015-145475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/10
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 11/08
C09J 123/00
B32B 27/00
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
粘着剤層と、
前記基材と前記粘着剤層との間に含まれる擬似接着層と、を有し、
前記粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有し、
前記擬似接着層は、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有し、
前記結晶化度は、広角X線回折法により測定した散乱強度に基づいて算出される値であり、
前記擬似接着層は、前記基材に対して擬似接着し、
前記擬似接着層の前記基材に対する擬似接着力は、250mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である
擬似接着ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の擬似接着ラベルにおいて、
前記粘着剤層は、主剤ポリマーを含み、
前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量は、前記主剤ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上、200質量部以下である、
擬似接着ラベル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の擬似接着ラベルにおいて、
前記結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂である、
擬似接着ラベル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の擬似接着ラベルにおいて、
JIS Z 0237:2009における擬似接着ラベルの粘着力は、6.0N/25mm以上である、
擬似接着ラベル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の擬似接着ラベルにおいて、
ポリエチレンを被着体とした場合の擬似接着ラベルの粘着力は、5.0N/25mm以上である、
擬似接着ラベル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の擬似接着ラベルにおいて、
前記基材は、紙基材である、
擬似接着ラベル。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の擬似接着ラベルにおいて、
さらに、剥離シートを有し、
前記粘着剤層が、前記剥離シートに貼着されている、
擬似接着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似接着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
擬似接着ラベルは、被着体に貼付した後、擬似接着した界面を起点として基材を容易に剥離できるラベルである。擬似接着ラベルは、例えば、配送伝票又は情報隠蔽ラベル等として実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、種々の印刷を施した紙基材、透明の合成樹脂フィルム、感圧性粘着剤及び剥離紙で構成される荷札及びラベル等の表示紙が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の表示紙においては、表面にある紙基材を剥離する際に、紙基材が破れてしまう可能性がある。すなわち、紙基材の層間で剥離が生じて紙基材の上層のみが主として部分的に剥れ、剥れた上層の下側にある領域が熱可塑性樹脂層上に残ってしまうおそれがある。
【0005】
特許文献2には、特許文献1に記載の問題点を解消するための擬似接着ラベルとして、紙基材、熱可塑性樹脂層、及び粘着剤層がこの順に積層された擬似接着ラベルが記載されている。特許文献2に記載の擬似接着ラベルにおいては、粘着剤層が被着物に貼付された状態で、紙基材を熱可塑性樹脂層から剥離できる。さらに、当該擬似接着ラベルにおいては、基材の層間強度が、当該紙基材を0.3m/分の剥離速度で剥離するときに、紙基材の縦方向および横方向の層間強度が、いずれも6.0N/50mm以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭55-15035号公報
【文献】特開2010-243919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙基材、熱可塑性樹脂層、及び粘着剤層がこの順に積層された擬似接着ラベル(例えば、特許文献2に記載された擬似接着ラベル)は、配送伝票用に使用されることが多い。擬似接着ラベルは発送時に被着体(配送物)へ貼付され、その後、保管及び配送等の過程を経て、配送完了後には、配送情報が記載されている紙基材を、熱可塑性樹脂層との界面で剥離する。そのため、擬似接着ラベルには、配送過程等において紙基材と熱可塑性樹脂層とが界面で剥離せず、配送完了後には、紙基材を熱可塑性樹脂層から剥離し易い程度の擬似接着力が要求される。さらに、擬似接着ラベルには、配送物から擬似接着ラベルが剥離しない程度の粘着力も要求される。
ところで、擬似接着ラベルが被着体に貼着されるまでの保管条件によっては、紙基材を擬似接着層から剥がし難くなり、紙基材が破れる場合がある。例えば、長期間保管されていた擬似接着ラベル、又は高温高湿下で保管されていた擬似接着ラベルを被着体に貼着した後、紙基材を剥がす際に、紙基材が破れる場合がある。なお、擬似接着ラベルの表面に位置する基材は、紙基材に限られない。他の材質の基材であっても、基材を擬似接着層から剥がし難くなるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、基材と擬似接着層とが適度な擬似接着力で接着され、意図しない基材の剥れを抑制し、擬似接着ラベルの保管条件に関わらず、基材の破れを抑制できる擬似接着ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、基材と、粘着剤層と、前記基材と前記粘着剤層との間に含まれる擬似接着層と、を有し、前記粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有し、前記擬似接着層は、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有し、前記結晶化度は、広角X線回折法により測定した散乱強度に基づいて算出される値であり、前記擬似接着層は、前記基材に対して擬似接着し、前記擬似接着層の前記基材に対する擬似接着力は、250mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である擬似接着ラベルが提供される。
【0010】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記粘着剤層は、主剤ポリマーを含み、前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量は、前記主剤ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上、200質量部以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、JIS Z 0237:2009における擬似接着ラベルの粘着力は、6.0N/25mm以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、ポリエチレンを被着体とした場合の擬似接着ラベルの粘着力は、5.0N/25mm以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記擬似接着層は、前記結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を80質量%以上含有することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記基材は、紙基材であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、さらに、剥離シートを有することが好ましく、前記粘着剤層が、前記剥離シートに貼着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、基材と擬似接着ラベルとが適度な擬似接着力で接着され、意図しない基材の剥れを抑制し、擬似接着ラベルの保管条件に関わらず、基材の破れを抑制できる擬似接着ラベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルの断面概略図である。
図2】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルが被着体に貼着された状態を示す断面概略図である。
図3】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルから基材を剥離する状態を説明するための断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、擬似接着ラベルの紙基材と熱可塑性樹脂層(擬似接着層)との擬似接着力が、1500N/50mmを超えると、紙基材を熱可塑性樹脂層から剥離する際に紙基材が破れ易い傾向にあることを見出した。
また、擬似接着ラベルの被着体となる配送物には様々な素材が使用される可能性があるため、配送物等が難接着性の素材であっても容易に剥れないように、擬似接着ラベルの粘着剤層は、被着体選択性が小さいことが必要である。そのため、当該粘着剤層は、主剤ポリマー及び粘着付与樹脂(タッキファイヤー(tackifier)と称する場合がある。)を含有する粘着剤により構成されている場合が多い。
本発明者らは、粘着剤層が粘着付与樹脂を含有していると、時間の経過と共に擬似接着力が上昇する傾向にあることを見出した。また、本発明者らは、高温高湿下で擬似接着ラベルを保管した場合においても、擬似接着力が上昇する傾向にあることを見出した。
そこで、本発明者らは、粘着付与樹脂を含有する粘着剤層を備える擬似接着ラベルを長期間保管した後、又は高温高湿下で保管した後に、基材と擬似接着層との界面を赤外分光法(infrared spectroscopy;IR)により分析したところ、粘着剤層中の粘着付与樹脂が、基材と擬似接着層との界面まで移動していることを確認した。
このような分析結果に基づいて、本発明者らは、粘着剤層中の粘着付与樹脂が基材と擬似接着層との界面に到達することを抑制する手段として、擬似接着層に含まれる熱可塑性樹脂の結晶化度に着目した。様々な熱可塑性樹脂の結晶化度と擬似接着性との関係を検討したところ、結晶化度が所定値以下であれば、前述のような時間経過による擬似接着力の上昇を抑制できることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づいて発明された。
以下、本発明の一態様に係る実施形態を例に挙げて本発明を説明するが、本発明は、当該実施形態に限定されない。
【0020】
[本発明の一態様に係る実施形態]
(擬似接着ラベル)
本実施形態に係る擬似接着ラベルは、基材と、粘着剤層と、基材と粘着剤層との間に含まれる擬似接着層と、を有する。擬似接着層は、基材に対して擬似接着する。
【0021】
図1には、本実施形態に係る擬似接着ラベル1の断面概略図が示されている。本実施形態に係る擬似接着ラベル1においては、基材10、擬似接着層20、及び粘着剤層30がこの順に積層されている。基材10と擬似接着層20とが、界面Aにおいて、互いに擬似接着されている。
また、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、図1に示すように、さらに剥離シートRLを有する。なお、本発明に係る擬似接着ラベルは、剥離シートRLを有する態様に限定されない。
【0022】
「擬似接着」とは、特定の条件(例えば、材料の組合せ及び温度範囲)で貼合させた一方の層と他方の層との界面において容易に剥離でき、剥離後には再接着性及び再粘着性を示さない態様の接着をいう。
本実施形態に係る擬似接着ラベルの場合、一方の層としての基材10と、他方の層としての擬似接着層20と、の界面Aにおいて剥離でき、剥離後の基材10の界面A側表面、及び擬似接着層20の界面A側表面は、再接着性及び再粘着性を示さない。
【0023】
擬似接着ラベル1の形状は、特に限定されない。平面視した擬似接着ラベル1の形状としては、例えば、多角形(例えば、矩形及び三角形等)、円形、楕円形、及び不定形等が挙げられる。
【0024】
(基材)
本実施形態に係る擬似接着ラベル1が有する基材10は、特に制限がない。
基材10は、従来の擬似接着ラベルにおいて使用されている基材の中から、擬似接着ラベル1の使用目的に応じて適宜選択される。
擬似接着ラベル1において、基材10は、被着体に関する情報を表示する情報表示用基材である。被着体に関する情報は、例えば、被着体が配送物である場合、発送者、宛先、及び配送業者の氏名又は名称、住所、電話番号、並びに発送物の内容等が挙げられる。
【0025】
基材10の厚さは、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。基材10の厚さは、取扱性の観点から、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、20μm以上、150μm以下であることがより好ましく、30μm以上、100μm以下であることがさらに好ましい。
基材10としては、例えば、紙類、樹脂フィルム、及び合成紙、並びにこれらを2層以上積層した積層シート等が挙げられる。
基材10として用いることのできる紙類としては、例えば、感熱紙、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、及び合成繊維紙が挙げられる。
基材10として用いることのできる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂のフィルムが挙げられる。
【0026】
基材10は、紙類及び合成紙からなる紙基材であることが好ましく、感熱紙、クラフト紙、上質紙、又はグラシン紙であることがより好ましい。
紙基材の坪量は、10g/m以上、100g/m以下であることが好ましく、15g/m以上、80g/m以下であることがより好ましい。本実施形態に係る擬似接着ラベル1によれば、基材10がこのような坪量の範囲の紙基材であっても、基材剥離時の基材破れを抑制できる。
【0027】
(擬似接着層)
本実施形態に係る擬似接着ラベル1の擬似接着層20は、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有する。
本明細書において、擬似接着層の結晶化度は、広角X線回折法により測定した散乱強度に基づいて算出される値である。
擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂の結晶化度は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。
擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂の結晶化度は、22.0%以下であることが好ましく、21.5%以下であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態のある一態様に係る擬似接着層20は、実質的に結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂のみから形成されることが好ましい。擬似接着層20が、実質的に結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂のみから構成されるとは、擬似接着層20の全質量に対して80質量%以上が、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂で構成されていることをいう。擬似接着層20は、擬似接着層20の全質量に対して結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を85質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。なお、擬似接着層20中の熱可塑性樹脂の含有量を「実質的に」と規定するのは、擬似接着層20の製造に用いる原料に含まれている可能性がある不純物、又は擬似接着層の製造過程で混入する可能性がある不純物が、意図せず、擬似接着層20に含まれる場合があるためである。
【0029】
本実施形態に係る擬似接着層20は、基材10に、直接、積層されている。
擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、250mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である。
擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、350mN/50mm以上であることが好ましく、450mN/50mm以上であることがより好ましい。
擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、1200mN/50mm以下であることが好ましく、1000mN/50mm以下であることがより好ましい。
擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力が250mN/50mm以上であれば、基材10が意図せず擬似接着層20から剥離することを抑制できる。
擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力が1500mN/50mm以下であれば、基材10を擬似接着層20から剥離する際に、基材10が破れることを抑制できる。
【0030】
擬似接着ラベル1を60℃、95%RHの条件下で3日間、保管した後の擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、450mN/50mm以上であることが好ましく、550mN/50mm以上であることがより好ましい。
擬似接着ラベル1を60℃、95%RHの条件下で3日間、保管した後の擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、1500mN/50mm以下であることが好ましく、1450mN/50mm以下であることがより好ましい。
60℃、95%RHの条件下で3日間、保管した後の擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、「(経時)擬似接着力」と記す場合がある。
擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0031】
擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂としては、結晶性の熱可塑性樹脂であって、結晶化度が22.5%以下であれば、特に限定されない。結晶化度は、後述するように、熱可塑性樹脂の種類に応じて、擬似接着層20を形成する条件を適宜変更することで制御できる。
擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂が挙げられる。擬似接着層20は、熱可塑性樹脂を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0032】
擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンモノマーに由来の構成単位を少なくとも有する重合体である。
オレフィンモノマーは、炭素数2以上、8以下のオレフィンであることが好ましい。炭素数2以上、8以下のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン及び1-ヘキセン等が挙げられる。
本実施形態の一態様において、上記オレフィンモノマーは、炭素数2以上、4以下のオレフィンであるエチレン、プロピレン及びブチレンからなる群から選択される少なくともいずれかのモノマーであることがより好ましく、炭素数2以上、3以下のオレフィンであるエチレン及びプロピレンからなる群から選択される少なくともいずれかのモノマーであることが更に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンモノマー1種を単独で用いた重合体でもよいし、2種以上のオレフィンモノマーを併用した共重合体でもよい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリブテン樹脂(PB)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)及びポリブテン樹脂(PB)からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂であることが好ましく、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂(PP)からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂であることがより好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m以上910kg/m未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m以上915kg/m未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m以上942kg/m未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m以上)、及び直鎖状ポリエチレン等が挙げられる。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂における、炭素数2~4のオレフィンに由来する構成単位の含有量は、オレフィン系樹脂の全構成単位(100質量%)に対して、50質量%以上、100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上、100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上、100質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以上、100質量%以下であることがよりさらに好ましく、90質量%以上、100質量%以下であることがさらになお好ましい。
【0035】
擬似接着層20は、熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0036】
基材10が紙基材である場合、紙基材との良好な擬似接着性を実現するという観点、及び紙基材への熱圧着が容易であるとの観点から、擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0037】
本実施形態に係る擬似接着層20は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びアンチブロッキング剤等が挙げられる。擬似接着層20が添加剤を含有する場合、添加剤は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
擬似接着層20が、添加剤を含有する場合、添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.0001質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、0.0005質量部以上、15質量部以下であることがより好ましく、0.001質量部以上、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0038】
擬似接着層20の厚さは、特に限定されない。擬似接着層20の厚さは、5μm以上、50μm以下であることが好ましく、5μm以上、40μm以下であることがより好ましく、10μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましい。
擬似接着層20が熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含有する場合、擬似接着層20の厚さは、15μm以上、25μm以下であることが好ましい。
【0039】
(粘着剤層)
擬似接着ラベル1の粘着剤層30は、粘着付与樹脂を含有する。粘着付与樹脂をタッキファイヤーと称する場合がある。
前述の通り、被着体選択性が小さく、配送過程等で意図せぬ擬似接着ラベルの剥離を抑制する観点から、本実施形態に係る粘着剤層30は、粘着付与樹脂を含有する。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1の粘着剤層30は、擬似接着ラベルを被着体に貼着するための層である。粘着剤層30を構成する成分は、粘着付与樹脂を含んでいれば特に限定されず、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。
【0040】
粘着剤層30が含有する粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、及びキシレン樹脂等が挙げられる。
【0041】
粘着剤層30は、公知の粘着剤を含有していることが好ましい。粘着剤層30において、粘着付与樹脂と組み合わせて構成される粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。
粘着剤層30が含有する粘着剤は、耐候性及び価格の点から、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、例えば、溶剤型アクリル系粘着剤及び水系エマルション型アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0042】
粘着剤層30における粘着付与樹脂の含有量は、粘着剤の主剤ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上、200質量部以下であることが好ましい。
粘着剤層30が主剤ポリマーとしてアクリル樹脂を含む場合、粘着付与樹脂の含有量は、主剤ポリマーとしてのアクリル樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、50質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上、25質量部以下であることがより好ましい。
粘着剤層30が主剤ポリマーとして合成ゴムを含む場合、粘着付与樹脂の含有量は、主剤ポリマーとしての合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、200質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上、100質量部以下であることがより好ましい。
【0043】
粘着剤層30は、必要に応じて、添加剤をさらに含有してもよい。粘着剤層30が含有してもよい添加剤としては、例えば、充填剤、軟化剤、熱光安定剤、酸化防止剤及び架橋剤等が挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等が挙げられる。軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、液状ゴム及び可塑剤等が挙げられる。熱光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系安定剤、ベンゾトリアゾール系安定剤及びヒンダードアミン系安定剤等が挙げられ、酸化防止剤としては、例えば、アニリド系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤及びチオエステル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0044】
粘着剤層30の厚さは、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。粘着剤層30の厚さは、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、5μm以上、50μm以下であることがより好ましく、10μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましく、10μm以上、20μm以下であることが更になお好ましい。
【0045】
JIS Z 0237:2009における擬似接着ラベル1の粘着力は、擬似接着ラベル1が被着体から意図せず剥れることを抑制するという観点から、6.0N/25mm以上であることが好ましく、8.0N/25mm以上であることがより好ましい。
また、被着体が難接着性の素材であっても、擬似接着ラベル1は十分な粘着力を示すことが好ましい。難接着性の被着体の代表例としてはポリエチレンフィルムの包装材が挙げられ、ポリエチレンを被着体とした場合の擬似接着ラベル1の粘着力は、5.0N/25mm以上であることが好ましく、7.0N/25mm以上であることがより好ましく、8.0N/25mm以上であることがより好ましい。
ポリエチレンを被着体とした場合の擬似接着ラベルの粘着力の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0046】
(剥離シート)
剥離シートRLは、擬似接着ラベル1を被着体へ貼付するまでの期間において、粘着剤層30を保護する。
剥離シートRLは、粘着シートの粘着剤層に貼付して使用できれば、特に限定されない。剥離シートRLとしては、例えば、片面剥離シート及び両面剥離シートが挙げられる。片面剥離シートは、剥離シート用基材と、剥離シート用基材の一方の面に設けられた剥離処理層、とを有する。両面剥離シートは、剥離シート用基材と、剥離シート用基材の一方の面に設けられた第1剥離処理層と、剥離シート用基材の他方の面に設けられた第2剥離処理層と、を有する。剥離処理層は、剥離シート用基材の面上に剥離剤を塗布することにより形成できる。
【0047】
剥離シート用基材としては、例えば、紙類及びプラスチックフィルム等が挙げられる。
紙類としては、例えば、上質紙、グラシン紙及びクラフト紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム及びポリオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。ポリエステル樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂等のフィルムが挙げられる。ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂等のフィルムが挙げられる。
剥離シート用基材として用いる紙類及びプラスチックフィルムは、例えば、擬似接着ラベル1の基材10の説明において例示した紙類及びプラスチックフィルムと同じでも、異なっていてもよい。
【0048】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂及びフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0049】
剥離シートRLの厚さは、特に制限されない。剥離シートRLの厚さは、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、25μm以上、170μm以下であることがより好ましく、30μm以上、150μm以下であることがさらに好ましく、35μm以上、100μm以下であることがよりさらに好ましく、35μm以上、80μm以下であることがさらになお好ましい。
【0050】
<擬似接着ラベルの製造方法>
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、例えば、以下の工程P1及び工程P2を含む製造方法によって、製造できる。
【0051】
・工程P1
工程P1は、基材10と擬似接着層20とを積層する工程である。工程P1で製造される基材10と擬似接着層20との間の界面Aが擬似接着された積層体を、以下、「擬似接着性積層体」と称する場合がある。
【0052】
・工程P2
工程P2は、粘着剤層30を、工程P1で得た擬似接着性積層体の擬似接着層20に積層させる工程である。
【0053】
まず、工程P1について説明する。
基材10の上に擬似接着層20を積層する方法は、特に限定されない。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1の製造方法は、擬似接着層20を構成する材料を含む擬似接着層材料を基材10の上に溶融押出する工程(溶融押出工程)を含む。本実施形態に係る擬似接着ラベル1の製造方法において、擬似接着層材料は、熱可塑性樹脂を少なくとも含有する。なお、本実施形態において擬似接着層20を構成する材料が、所定の熱可塑性樹脂のみからなる場合は、「擬似接着層材料」は、当該熱可塑性樹脂に相当する。また、擬似接着層20を構成する材料が、所定の熱可塑性樹脂だけでなく、他の材料も含有する場合は、「擬似接着層材料」は、当該熱可塑性樹脂を含んだ組成物に相当する。
【0054】
擬似接着層材料を溶融押出する方法としては、例えば、Tダイを用いる方法が挙げられる。
擬似接着層材料を溶融させて押出す際の温度(溶融押出温度)は、結晶化度を所望の範囲(22.5%以下)に制御するための要素の一つである。擬似接着層材料の溶融押出温度は、擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、所望の結晶化度を得ることのできるように、適宜、設定することが好ましい。また、溶融押出温度は、擬似接着層材料が基材10に溶融固着しない程度の温度であることがより好ましい。
擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、溶融押出温度は、通常、200℃以上、400℃以下であり、230℃以上、350℃以下であることが好ましく、250℃以上、300℃以下であることがより好ましい。
【0055】
また、擬似接着層材料を溶融させて押出す際の熱可塑性樹脂層の厚さも、結晶化度を所望の範囲(22.5%以下)に制御するための要素の一つである。溶融押出しする熱可塑性樹脂層の厚さは、擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、所望の結晶化度を得ることのできるように、適宜、設定することが好ましい。
擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、溶融押出しする熱可塑性樹脂層の厚さは、15μm以上、25μm以下であることが好ましく、18μm以上、23μm以下であることがより好ましい。
【0056】
工程P1は、溶融押出した擬似接着層材料を冷却する工程(冷却工程)も含む。
冷却工程においては、加熱溶融された擬似接着層材料を冷却ロール等の冷却手段に接触させて、擬似接着層20を形成する。冷却ロールは、外周面が金属製の筒体を有する。冷却ロールは、筒体の内部に冷却水等が通されることで冷却機能を有する。冷却手段として冷却ロールを用いる場合、基材の上に溶融押出された擬似接着層材料を冷却ロール外周面に、直接、接触させて冷却してもよいし、基材を冷却ロール外周面に、直接、接触させて、擬似接着層材料を間接的に冷却してもよい。また、冷却工程においては、溶融押出した擬似接着層材料を空冷によって冷却してもよい。
擬似接着層材料を冷却する際の温度(冷却温度)も、熱可塑性樹脂の結晶化度を所望の範囲(22.5%以下)に制御するための要素の一つである。擬似接着層材料の冷却温度は、擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、所望の結晶化度を得ることのできるように、適宜、設定することが好ましい。
擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、冷却温度は、15℃以上、40℃以下であることが好ましく、20℃以上、35℃以下であることがより好ましい。なお、冷却手段として冷却ロールを使用する場合、冷却温度は、冷却ロールに通水する冷却水の温度である。また、空冷によって擬似接着層材料を冷却する場合、冷却温度は、溶融押出しされた擬似接着層材料が置かれる雰囲気温度であったり、温調された空気を強制的に擬似接着層材料に吹き付ける場合は、その空気の温度である。
【0057】
本実施形態に係る冷却工程においては、溶融した擬似接着層材料を冷却手段にて冷却する時間の長さも、熱可塑性樹脂の結晶化度を所望の範囲(22.5%以下)に制御するための要素の一つである。
冷却手段として冷却ロールを用いる場合、溶融した擬似接着層材料を冷却ロールの外周面に直接又は間接的に接触させる時間(冷却時間)は、基材と擬似接着層材料とが積層された積層体を搬送する速度(本明細書においては、加工速度と称する場合がある。)によって制御でき、その結果、熱可塑性樹脂の結晶化度も制御できる。加工速度は、擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、所望の結晶化度を得ることのできるように、適宜、設定することが好ましい。
擬似接着層20を構成する熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、加工速度は、40m/min以上、180m/min以下であり、50m/min以上、160m/min以下であることが好ましい。
【0058】
擬似接着層20における熱可塑性樹脂の結晶化度は、溶融押出温度、溶融押出しする熱可塑性樹脂層の厚さ、冷却温度、及び冷却時間の少なくともいずれかの要素を調整することで制御できる。なお、熱可塑性樹脂の結晶化度を制御する要素は、これらの要素に限定されない。
【0059】
以上のように、溶融押出工程及び冷却工程を含む工程P1によって、擬似接着性積層体を得ることができる。
【0060】
次に、工程P2について説明する。
工程P2においては、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面に粘着剤層30を形成する。
【0061】
具体的には、剥離シートRLの剥離処理面に粘着剤層30を構成する材料を含む粘着剤組成物を塗布して、剥離シートRLの上に粘着剤層30を形成する。工程P2における粘着剤組成物は、粘着付与樹脂と主剤ポリマーとを含む。剥離シートRLの上に形成した粘着剤層30を、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面に貼り付けることで擬似接着ラベル1を製造できる。
【0062】
あるいは、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面に、粘着剤組成物を塗布して粘着剤層30を形成し、さらに粘着剤層30に剥離シートRLを貼り付けることでも擬似接着ラベル1を製造できる。
【0063】
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法及びグラビアコート法等が挙げられる。
【0064】
擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面と粘着剤層30の密着性を向上させる観点から、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面にコロナ処理等を施した後に、粘着剤層30を形成することが好ましい。
【0065】
擬似接着ラベル1は、適宜、抜き加工が施されていてもよい。
抜き加工は、例えば、所定のラベルの外郭に沿った抜き刃を使用して、剥離シートRLごと打抜いてもよい。
また、剥離シートRLを打抜かないように基材10から粘着剤層30までを切込みを入れ、剥離シートRLの上に複数の擬似接着ラベル1が配列するように形成してもよい。この場合、抜き加工による切込みは、剥離シートRLが打抜かれて脱落しない程度、剥離シートRLに入り込んでいてもよい。
また、必要に応じて、個々の擬似接着ラベル1の外郭周りの不要部を剥離シートRL上から取り除いてもよい。
【0066】
<擬似接着ラベルの用途>
図2は、被着体100に擬似接着ラベル1が貼着された状態を示す断面概略図である。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、粘着剤層30と剥離シートRLとの界面で剥離できる。図2に示すように、剥離シートRLと分離した後、擬似接着ラベル1の粘着剤層30が、被着体100に貼着される。
【0067】
擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、被着体100としては、例えば、配送物が挙げられる。配送物は、通常、配送する物品と、当該物品を包装する包装材と、で構成される。包装材としては、例えば、包装紙、包装フィルム、包装箱及び包装容器等が挙げられる。包装材の材質としては、ダンボール、紙、プラスチック、及び金属等が挙げられる。擬似接着ラベル1は、配送物の包装材に貼着されるため、粘着剤層30は、包装材に対する適度な粘着力を有する。
【0068】
図3は、被着体100に貼着された擬似接着ラベル1から、基材10を剥離する状態を示す断面概略図である。
【0069】
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、例えば、配送伝票として使用される。擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、基材10の全体を受領票として剥がしてもよい。
また、擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、擬似接着ラベル1の基材10は、例えば、切込みによって複数のラベル片に分割されていることも好ましい。例えば、切込みによって基材10を2つに分割した場合、一方のラベル片を配達票として使用し、他方のラベル片を受領票として使用できる。受領票としてのラベル片は、通常、捺印又はサインがなされた後に擬似接着層20との界面Aで剥がされる。他方のラベル片は、配送物、又は配送物を梱包している箱もしくは容器等に残る。
擬似接着ラベル1から剥がされた受領票は、配達業者等によって、伝票整理等に使用される。
【0070】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、粘着付与樹脂を含有する粘着剤層30を有する。そのため、擬似接着ラベル1は、被着体選択性が小さく、配送過程等での被着体からの剥れを抑制できる。
さらに、本実施形態に係る擬似接着ラベル1の擬似接着層20は、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有し、擬似接着層20の基材10に対する擬似接着力は、250mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である。そのため、基材10と擬似接着層20とが適度な擬似接着力で接着されており、擬似接着ラベル1によれば、擬似接着層20から基材10が意図せず剥れることを抑制できる。さらに、擬似接着ラベル1によれば、擬似接着ラベルの保管条件に関わらず、基材10を擬似接着層20から剥がし易いため、基材10の破れを抑制できる。
【実施例
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0072】
[擬似接着ラベルの作製]
(実施例1)
擬似接着層材料としての熱可塑性樹脂を260℃に加熱し、Tダイを用いて、厚さ20μmの熱可塑性樹脂層を基材の上に押し出した。熱可塑性樹脂層の厚さは、押出機のスクリューの背圧を調整することにより制御した。水温が23℃に調節された冷却水を水冷ロールに通水させ、当該水冷ロールの表面に、基材の上の熱可塑性樹脂層を接触させることにより、溶融した熱可塑性樹脂層を冷却して、固化させた。このようにして、基材にラミネートされた擬似接着層を作製した。実施例1では、表面基材として、日本製紙株式会社製のサーマルTP60KS-F1(坪量65g/m)を用い、擬似接着層材料の熱可塑性樹脂として、日本ポリエチレン製のLC8001を用いた。
擬似接着層を作製する際の基材の搬送速度、すなわち擬似接着層の加工速度は、150m/minとした。
次に、アクリル系粘着剤(トーヨーケム株式会社製 BPW6137N)100質量部と、ロジン系タッキファイヤー(荒川化学工業株式会社製 KE-100)7.5質量部と、を混合して粘着剤組成物を作製した。次に、作製した粘着剤組成物を剥離紙の上に塗布した。剥離紙として、リンテック株式会社製の「8Kアオ」を用いた。粘着剤組成物の塗布には、ロールコーターを用いた。
塗布した粘着剤組成物を乾燥させて、粘着剤層を形成した。
剥離紙上の粘着剤層と、基材上の擬似接着層とを貼り合わせることで、実施例1に係る擬似接着ラベルを作製した。実施例1に係る擬似接着ラベルは、基材、擬似接着層、粘着剤層、及び剥離紙を、この順に備えていた。
【0073】
(実施例2)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂層の厚さを16μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0074】
(実施例3)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂の押出温度を270℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0075】
(実施例4)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造において用いた熱可塑性樹脂を住友化学株式会社製の「スミカセンL-405」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る擬似接着ラベルを作製した。「スミカセン」は、住友化学株式会社の登録商標である。
【0076】
(実施例5)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造におけるタッキファイヤーの配合量を、5.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0077】
(実施例6)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造におけるタッキファイヤーの配合量を、2.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0078】
(実施例7)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂の押出温度を280℃に変更し、水冷ロールに通水する冷却水の温度を30℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0079】
(実施例8)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における加工速度を60m/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0080】
(実施例9)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂層の厚さを12μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0081】
(比較例1)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂層の厚さを27μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0082】
(比較例2)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における粘着剤層にタッキファイヤーを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0083】
(比較例3)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における水冷ロールに通水する冷却水の温度を10℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0084】
(比較例4)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における加工速度を200m/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0085】
(比較例5)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂の押出温度を280℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例5に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0086】
(比較例6)
実施例1に係る擬似接着ラベルの製造における熱可塑性樹脂の押出温度を280℃に変更し、水冷ロールに通水する冷却水の温度を10℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例6に係る擬似接着ラベルを作製した。
【0087】
[擬似接着ラベルの評価]
作製した擬似接着ラベルについて、以下の通り評価した。評価結果は、表1に示す。
【0088】
(結晶化度)
擬似接着層に含まれる熱可塑性樹脂の結晶化度は、広角X線回折法により求めた。
擬似接着層を基材から剥離し、擬似接着層単体について、(株)リガク製のX線発生装置(RAD-3A型)を用いて散乱強度を測定した。Cu-Kα線で[010]の散乱強度を測定した。測定した散乱強度及び下記式(1)に基づいて結晶化度Xcを算出した。結晶化度の単位は、%である。
(結晶化度Xc)=(結晶部の散乱強度)/(全散乱強度)×100…(1)
【0089】
((常態)擬似接着力)
擬似接着力は、JIS Z 0237:2009の180°引き剥がし粘着力測定に準じて測定した。具体的には、まず、作製した擬似接着ラベルを擬似接着ラベル自身の粘着剤層を使用してSUS板に固定した。その後、擬似接着ラベルの基材を、剥離速度:0.3m/min、剥離角度:180°の条件で擬似接着層から剥離した。この剥離で必要とされた力(引き剥がし力)の大きさを測定し、測定された引き剥がし力を擬似接着力とした。擬似接着力の単位は、mN/50mmである。
【0090】
((経時)擬似接着力)
作製した擬似接着ラベルを、60℃、95%RHの条件下で3日間保管した。その後、上記「(常態)擬似接着力」にて説明した方法と同様にして擬似接着力を測定した。このような加熱及び加湿条件下での保管を経た擬似接着ラベルの擬似接着力を、上記「(常態)擬似接着力」に対して、「(経時)擬似接着力」とした。
【0091】
(擬似接着層の厚さ測定)
基材に積層された擬似接着層を剥離して得た擬似接着層単体について厚さを測定した。厚さの測定には、株式会社テクロック製の定圧厚み測定器(PG-02)を用いた。
【0092】
(粘着力)
擬似接着ラベルの粘着力をJIS Z 0237:2009の180°引き剥がし粘着力測定に準じて測定した。
擬似接着ラベルを幅25mmに切断し、擬似接着ラベルから剥離紙を剥離し、粘着剤層を被着体としてのポリエチレン板又はSUS#360板に貼付した。被着体に貼着した擬似接着ラベルの上を、重さ2kgのローラーを1往復させることによって、擬似接着ラベルと被着体とを圧着した。
ローラーで圧着した後、24時間経過後に引き剥がし速度300mm/分にて、擬似接着ラベルを被着体から引き剥がして粘着力を測定した。なお、粘着力の測定における全ての工程は、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で実施した。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1~9に係る擬似接着ラベルによれば、基材の破れが発生することなく、基材を擬似接着層から剥離できた。これは、実施例1~9に係る擬似接着ラベルは、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有する擬似接着層を有し、基材と擬似接着層との擬似接着力が、(常態)及び(経時)のいずれについても、250mN/50mm以上、1500mN/50mm以下であったことに起因すると考えられる。擬似接着層の非晶質部分は、結晶部分と比べてタッキファイヤーとの親和性が高く、結晶化度が22.5%以下であることにより、擬似接着層に移行してきたタッキファイヤーをトラップする性質が効果的に発揮したと考えられる。実施例1~9においては、擬似接着層に用いた熱可塑性樹脂に応じて、適切な製造条件を設定したことにより、擬似接着層中の熱可塑性樹脂の結晶化度を22.5%以下に制御できたと考えられる。
【0095】
また、実施例1~9に係る擬似接着ラベルによれば、被着体としてのポリエチレン及びSUSに対して良好な粘着力を示した。これは、粘着剤層がタッキファイヤーを含有していたことに起因すると考えられる。
【0096】
したがって、実施例1~9に係る擬似接着ラベルによれば、基材と擬似接着層とが適度な擬似接着力で接着され、意図しない基材の剥れを抑制し、擬似接着ラベルの保管条件に関わらず、基材を擬似接着層から剥がし易く、基材の破れを抑制できると考えられる。さらに、実施例1~9に係る擬似接着ラベルによれば、被着体選択性が小さく、擬似接着ラベルの被着体からの意図しない剥がれも抑制できると考えられる。
【0097】
一方、比較例1、3、4、5及び6に係る擬似接着ラベルに関しては、(経時)擬似接着力の試験において基材を擬似接着層から剥離する際に、基材が破れた。これは、擬似接着層が含有する熱可塑性樹脂の結晶化度が、22.5%を超えていたため、擬似接着層に移行してきたタッキファイヤーをトラップする性質が十分に発揮しなかったと考えられる。比較例1、3、4、5及び6に係る擬似接着ラベルは、(経時)擬似接着力の試験では、タッキファイヤーが非晶質部分で十分にトラップされずに基材と擬似接着層との界面に移動し、基材と擬似接着層との擬似接着力が1700mN/50mmを超える値を示したと考えられる。
比較例2に係る擬似接着ラベルに関しては、基材を擬似接着層から剥離する際に、基材は破れなかった。しかしながら、ポリエチレン及びSUSに対する粘着力が低かった。これは、比較例2に係る擬似接着ラベルの粘着剤層がタッキファイヤーを含有していなかったことに起因すると考えられる。比較例2に係る擬似接着ラベルによれば、基材の破れを抑制できるが、当該擬似接着ラベルは、配送過程等において被着体から擬似接着ラベルが剥れるおそれがある。
【符号の説明】
【0098】
1…擬似接着ラベル、10…基材、100…被着体、20…擬似接着層、30…粘着剤層、A…界面、RL…剥離シート。
図1
図2
図3