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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20221209BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221209BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019070102
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020170750
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】朽木 克博
(72)【発明者】
【氏名】副島 成雅
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 行彦
(72)【発明者】
【氏名】片岡 恵太
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 順
(72)【発明者】
【氏名】江口 浩次
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059817(JP,A)
【文献】特開2011-091125(JP,A)
【文献】特開2009-027152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体層を有する縦型の半導体装置の製造方法であって、
前記化合物半導体層の一方の主面に絶縁ゲート部を形成する工程と、
前記絶縁ゲート部を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜を覆うとともに前記化合物半導体層の前記一方の主面上に表面電極を形成する工程と、を備えており、
前記層間絶縁膜は、
前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記絶縁ゲート部が存在する範囲を含むように設けられている内側部分と、
前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記内側部分よりも外側に設けられており、前記内側部分の上面よりも高く突出して構成された部分を有する外側部分と、を有しており、
前記層間絶縁膜を形成する工程は、
前記絶縁ゲート部を覆うとともに前記化合物半導体層の前記一方の主面上に前記層間絶縁膜を成膜する成膜工程と、
前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記絶縁ゲート部が存在する範囲の前記層間絶縁膜の一部をエッチングし、前記内側部分と前記外側部分を形成するエッチング工程と、を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記層間絶縁膜を形成する工程はさらに、
前記成膜工程と前記エッチング工程の間に、前記層間絶縁膜の一部をエッチングしてコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程、を有しており、
前記コンタクトホール形成工程では、前記成膜工程のときに前記層間絶縁膜に形成された前記絶縁ゲート部の端部の形態を反映した段差が除去される、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記化合物半導体層の材料が、SiC又はGaNである、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、化合物半導体層を有する縦型の半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体層を有する縦型の半導体装置の開発が進められており、その一例が特許文献1に開示されている。このような半導体装置では、化合物半導体の物性値により、低いオン抵抗が実現可能として期待されている。しかしながら、特許文献1でも指摘されるように、この種の半導体装置では、低いオン抵抗によって短絡時には大電流が流れることから、短絡耐量が低くなることが懸念されている。このため、化合物半導体層を有する縦型の半導体装置では、短絡耐量を向上させる技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-33731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体装置は、化合物半導体層の表面に設けられているプレーナー型又はトレンチ型の絶縁ゲート部と、絶縁ゲート部を覆って設けられている層間絶縁膜と、層間絶縁膜を覆うとともに化合物半導体層の表面上に設けられている表面電極と、を備えている。
【0005】
このような半導体装置において、例えば負荷等が短絡したときに化合物半導体層内に大電流が流れると、化合物半導体層の一部が局所的に熱膨張する。本発明者らの検討によると、このような局所的な熱膨張により、化合物半導体層の表面が上に凸となるように変形し、層間絶縁膜に高い応力が加わり、層間絶縁膜が破損して絶縁ゲート部と表面電極が短絡してしまう虞があることが分かってきた。したがって、本明細書は、大電流が流れたときに絶縁ゲート部と表面電極が短絡することが抑えられる半導体装置を提供することを目的とする。本明細書はまた、そのような半導体装置を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、化合物半導体層を有する縦型の半導体装置を開示する。前記化合物半導体層の材料は、例えばSiC又はGaNであってもよい。この半導体装置は、前記化合物半導体層の一方の主面に設けられている絶縁ゲート部と、前記絶縁ゲート部を覆って設けられている層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を覆うとともに前記化合物半導体層の前記一方の主面上に設けられている表面電極と、を備えることができる。前記層間絶縁膜は、前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記絶縁ゲート部が存在する範囲を含むように設けられている内側部分と、前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記内側部分よりも外側に設けられており、前記内側部分の上面よりも高く突出して構成された部分を有する外側部分と、を有することができる。このような形態の前記層間絶縁膜が設けられていると、短絡時に前記層間絶縁膜に加わる応力集中箇所が前記外側部分内とすることができる。これにより、応力集中箇所が絶縁ゲート部から離れることとなる。このため、仮に前記層間絶縁膜の前記外側部分が短絡時に破損しても、前記絶縁ゲート部と前記表面電極が短絡することが抑えられる。また、前記層間絶縁膜の前記外側部分は、その形状から圧縮応力が加わる部分である。前記層間絶縁膜は、引張応力よりも圧縮応力に対して強い。このため、大電流が流れたときに前記層間絶縁膜が破損することが抑えられる。このように、上記半導体装置は、前記絶縁ゲート部と前記表面電極が短絡することが抑えられ、高い信頼性を有することができる。
【0007】
上記半導体装置では、前記絶縁ゲート部が、前記化合物半導体層の前記一方の主面上にプレーナー型として構成されていてもよい。この場合、前記化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記化合物半導体層の前記一方の主面に露出する位置に配置されている第1導電型のJFET領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記JFET領域に隣接しており、前記化合物半導体層の前記一方の主面に露出する位置に配置されている第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域によって前記ドリフト領域及び前記JFET領域から隔てられており、前記化合物半導体層の前記一方の主面に露出する位置に配置されている第1導電型のソース領域と、を有していてもよい。前記絶縁ゲート部は、前記JFET領域に対向するとともに、前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分の前記ボディ領域にも対向するように配置されている。
【0008】
上記半導体装置では、前記絶縁ゲート部が、前記化合物半導体層の前記一方の主面から深部に向けて伸びているトレンチ型として構成されていてもよい。この場合、前記化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記化合物半導体層の前記一方の主面に露出する位置に配置されている第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域によって前記ドリフト領域から隔てられており、前記化合物半導体層の前記一方の主面に露出する位置に配置されている第1導電型のソース領域と、を有していてもよい。前記絶縁ゲート部は、前記ドリフト領域と前記ソース領域を隔てる位置の前記ボディ領域に対向している。
【0009】
本明細書は、化合物半導体層を有する縦型の半導体装置の製造方法を開示することができる。前記化合物半導体層の材料が、例えばSiC又はGaNであってもよい。この半導体装置の製造方法は、前記化合物半導体層の一方の主面に絶縁ゲート部を形成する工程と、前記絶縁ゲート部を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜を覆うとともに前記化合物半導体層の前記一方の主面上に表面電極を形成する工程と、を備えることができる。前記層間絶縁膜は、前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記絶縁ゲート部が存在する範囲を含むように設けられている内側部分と、前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記内側部分よりも外側に設けられており、前記内側部分の上面よりも高く突出して構成された部分を有する外側部分と、を有することができる。この製造方法によると、大電流が流れたときに前記絶縁ゲート部と前記表面電極が短絡することが抑えられる半導体装置を提供することができる。
【0010】
上記製造方法では、前記層間絶縁膜を形成する工程が、前記絶縁ゲート部を覆うとともに前記化合物半導体層の前記一方の主面上に前記層間絶縁膜を成膜する成膜工程と、前記化合物半導体層の前記一方の主面に直交する方向から見たときに、前記絶縁ゲート部が存在する範囲の前記層間絶縁膜の一部をエッチングし、前記内側部分と前記外側部分を形成するエッチング工程と、を有していてもよい。
【0011】
上記製造方法では、前記層間絶縁膜を形成する工程はさらに、前記成膜工程と前記エッチング工程の間に、前記層間絶縁膜の一部をエッチングしてコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程、を有していてもよい。この場合、前記コンタクトホール形成工程では、前記成膜工程のときに前記層間絶縁膜に形成された前記絶縁ゲート部の端部の形態を反映した段差が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の半導体装置の要部断面図である。
図2】(A)第1実施例の半導体装置の層間絶縁膜近傍の要部拡大断面図である。(B)比較例の半導体装置の層間絶縁膜近傍の要部拡大断面図である。
図3】第1実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図4】第1実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図5】第1実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図6】第1実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図7】第1実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図8】第1実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図9】第2実施形態の半導体装置の要部断面図である。
図10】第2実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図11】第2実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図12】第2実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図13】第2実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図14】第2実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
図15】第2実施形態の半導体装置の一製造工程における半導体装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本明細書が開示する技術が適用された半導体装置及びその製造方法を説明する。以下の説明では、実質的に共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0014】
(第1実施形態の半導体装置1)
図1に、第1実施形態の半導体装置1の要部断面図を示す。半導体装置1は、SiC(炭化珪素)を材料とする化合物半導体層10と、化合物半導体層10の裏面上を被覆するドレイン電極22と、化合物半導体層10の表面上の一部を被覆するソース電極24と、化合物半導体層10の表面の一部に設けられているプレーナー型絶縁ゲート部26と、プレーナー型絶縁ゲート部26とソース電極24を絶縁している層間絶縁膜40と、を備えている。化合物半導体層10は、n+型のドレイン領域11と、n型のドリフト領域12と、n型のJFET領域13と、p型のボディ領域14と、n+型のソース領域15と、を有している。
【0015】
ドレイン領域11は、化合物半導体層10の裏面に露出する位置に設けられており、ドレイン電極22にオーミック接触している。
【0016】
ドリフト領域12は、ドレイン領域11上に設けられており、ドレイン領域11とJFET領域13の間、且つ、ドレイン領域11とボディ領域14の間に配置されている。ドリフト領域12は、エピタキシャル成長技術を利用して、ドレイン領域11の表面から結晶成長して形成される。
【0017】
JFET領域13は、ドリフト領域12上に設けられており、ドリフト領域12の表面から化合物半導体層10の表面まで化合物半導体層10の厚み方向に沿って伸びており、ドリフト領域12の表面から突出した形態を有している。換言すると、JFET領域13は、化合物半導体層10の表面からボディ領域14を貫通してドリフト領域12まで伸びている。この例では、JFET領域13の不純物濃度は、ドリフト領域12の不純物濃度と等しい。
【0018】
ボディ領域14は、ドリフト領域12上に設けられており、JFET領域13を間に置いて配置されており、JFET領域13の側面に隣接している。ボディ領域14は、化合物半導体層10の表面に露出する位置に設けられており、ソース電極24にオーミック接触している。
【0019】
ソース領域15は、ボディ領域14上に設けられており、ボディ領域14によってドリフト領域12及びJFET領域13から隔てられている。ソース領域15は、化合物半導体層10の表面に露出する位置に設けられており、ソース電極24にオーミック接触している。
【0020】
プレーナー型絶縁ゲート部26は、化合物半導体層10の表面上の一部にプレーナー型として構成されており、酸化シリコンのゲート絶縁膜26a及びポリシリコンのゲート電極26bを有している。ゲート電極26bは、JFET領域13の全体にゲート絶縁膜26aを介して対向している。ゲート電極26bはさらに、JFET領域13とソース領域15を隔てる部分のボディ領域14にゲート絶縁膜26aを介して対向している。
【0021】
層間絶縁膜40は、プレーナー型絶縁ゲート部26を覆って設けられており、プレーナー型絶縁ゲート部26とソース電極24の間に配置されており、プレーナー型絶縁ゲート部26とソース電極24を絶縁している。層間絶縁膜40にはコンタクトホール42が形成されており、化合物半導体層10の表面に位置するボディ領域14及びソース領域15がそのコンタクトホール42に露出している。ソース電極24は、コンタクトホール42介してボディ領域14及びソース領域15に接触している。
【0022】
層間絶縁膜40は、内側部分40aと外側部分40bを有している。内側部分40aは、化合物半導体層10の表面に直交する方向から見たときに(紙面上下方向であり、以下「平面視したときに」という)、プレーナー型絶縁ゲート部26が存在する範囲を含むように設けられている。外側部分40bは、平面視したときに、内側部分40aよりも外側に設けられており、内側部分40aの上面よりも高く突出して構成された部分を有している。層間絶縁膜40の材料は、例えば酸化シリコンである。
【0023】
後述するように、内側部分40aは、層間絶縁膜40の一部をエッチングして形成された溝の底部を構成する部分である。このため、内側部分40aの上面は、層間絶縁膜40に形成された溝の底面を画定している。外側部分40bは、層間絶縁膜40の一部をエッチングして形成された溝の側部を構成する部分を含んでいる。このため、外側部分40bの内側側面は、層間絶縁膜40に形成された溝の側面を画定している。また、外側部分40bの外側側面は、コンタクトホール42の側面を画定している。
【0024】
図1に示されるように、内側部分40aの上面の高さ、即ち、化合物半導体層10の表面から内側部分40aの上面までの高さを第1高さH1とする。外側部分40bの上面の高さ、即ち、化合物半導体層10の表面から外側部分40bの上面までの高さを第2高さH2とする。層間絶縁膜40は、H1<H2となるような内側部分40aと外側部分40bで構成されている。なお、この例では、内側部分40aと外側部分40bの各々の上面が平坦に構成されている。この例に代えて、内側部分40aと外側部分40bの各々の上面が曲面で構成されていてもよい。この場合、層間絶縁膜40は、内側部分40aの最大高さよりも外側部分40bの最大高さが高くなるように構成されていればよい。このように、層間絶縁膜40は、外側部分40bが内側部分40aの上面よりも高く突出した部分を有するように構成されていることを特徴としている。
【0025】
次に、半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地される。ゲート電極26bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域13とソース領域15を隔てる部分のボディ領域14に反転層が形成され、半導体装置1がターンオンする。このとき、反転層を経由してソース領域15からJFET領域13に電子が流入する。JFET領域13に流入した電子は、JFET領域13とドリフト領域12を縦方向に流れてドレイン電極22に向かう。これにより、ドレイン電極22とソース電極24が導通する。ゲート電極26bが接地されると、反転層が消失し、半導体装置1がターンオフする。このように、半導体装置1は、ゲート電極26bに印加する電圧に基づいてスイッチング動作を実行することができる。
【0026】
例えば、半導体装置1がターンオンしているときに、半導体装置1に接続される負荷が短絡すると、半導体装置1のドレイン電極22とソース電極24の間に大電流が流れる。この場合、電流がJFET領域13とドリフト領域12を縦方向に流れる部分の温度がジュール熱によって上昇する。具体的には、JFET領域13とドリフト領域12の境界近傍の温度がピークとなるように、化合物半導体層10の温度が局所的に上昇する。このように、局所的な温度上昇箇所は、層間絶縁膜40の中央下方に位置している。これにより、その温度上昇箇所が熱膨張し、化合物半導体層10の表面が上に凸となるように変形すると、層間絶縁膜40に応力が加わる。
【0027】
ここで、図2(A)に本実施形態の半導体装置1の層間絶縁膜40の要部拡大断面図を示し、図2(B)に比較例の半導体装置100の層間絶縁膜140の要部拡大断面図を示す。比較例の半導体装置100は、従来から良く知られている半導体装置であり、絶縁ゲート部126の端部の形態が反映した段差140Sが層間絶縁膜140に形成されている例である。
【0028】
図2(B)に示されるように、比較例の半導体装置100では、負荷短絡時に化合物半導体層が上に凸となるように変形すると、層間絶縁膜140内の符号152の部分が応力集中箇所となる。この応力集中箇所152は、ゲート電極126bの端部と層間絶縁膜140の段差140Sの間の領域である。また、この領域は、引張応力が加わる領域である。層間絶縁膜140は、圧縮応力よりも引張応力に対して弱い。このため、比較例の半導体装置100では、応力集中箇所152近傍が破損し、ソース電極124とゲート電極126bが短絡することが懸念される。これにより、比較例の半導体装置100は、短絡耐量に対する信頼性が低い。
【0029】
一方、図2(A)に示されるように、本実施形態の半導体装置1では、負荷短絡時に化合物半導体層が上に凸となるように変形すると、層間絶縁膜40内の符号52の部分が応力集中箇所となる。この応力集中箇所52は、層間絶縁膜40の外側部分40bのうちの周縁側の領域である。このように、本実施形態の半導体装置1では、比較例に比して応力集中箇所52がプレーナー型絶縁ゲート部26から離れることとなる。このため、仮に外側部分40bに位置する応力集中箇所52において、層間絶縁膜40が負荷短絡時に破損しても、ゲート電極26bとソース電極24が短絡することが抑えられる。また、外側部分40bの周縁側は、その形状から圧縮応力が加わる部分であることが分かっている。層間絶縁膜40は、引張応力よりも圧縮応力に対して強い。このため、負荷短絡時に層間絶縁膜40が破損することが抑えられる。さらに、外側部分40bには、図2(B)のような段差140Sが形成されていない。このため、外側部分40bの応力集中が緩和されている。このように、本実施形態の半導体装置1は、ゲート電極26bとソース電極24が短絡することが抑えられ、高い信頼性を有することができる。
【0030】
(第1実施形態の半導体装置1の製造方法)
次に、半導体装置1の製造方法を説明する。まず、図3に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、SiCを材料とするドレイン領域11の表面からドリフト領域12を結晶成長し、化合物半導体層10を準備する。エピタキシャル成長技術の一例は、有機金属化合物気相成長法(MOCVD法)である。
【0031】
次に、図4に示されるように、イオン注入技術を利用して、化合物半導体層10の表層部にボディ領域14とソース領域15を形成する。具体的には、ボディ領域14を形成するためのマスクを化合物半導体層10の表面上にパターニングし、そのマスクの開口を通過してp型の不純物イオンを化合物半導体層10の表層部に注入する。これにより、化合物半導体層10の表層部にボディ領域14が形成される。なお、ボディ領域14の間に残存したドリフト領域12の一部がJFET領域13となる。同様に、ソース領域15を形成するためのマスクを化合物半導体層10の表面上にパターングし、そのマスクの開口を通過してn型の不純物イオンを化合物半導体層10の表層部に注入する。これにより、化合物半導体層10の表層部にソース領域15が形成される。
【0032】
次に、図5に示されるように、化合物半導体層10の表面上にプレーナー型絶縁ゲート部26を形成する。具体的には、CVD法又は原子層堆積法(ALD法)を利用して、化合物半導体層10の表面上にゲート絶縁膜26a及びゲート電極26bを成膜し、次に、フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を利用して、ゲート電極26b及びゲート絶縁膜26aを加工し、プレーナー型絶縁ゲート部26を形成する。
【0033】
次に、図6に示されるように、CVD技術を利用して、プレーナー型絶縁ゲート部26の表面を覆うように化合物半導体層10の表面上に層間絶縁膜40を成膜する。層間絶縁膜40は、従来よりも厚く成膜され、その厚みT40は例えば1μm~5μmの範囲である。なお、層間絶縁膜40には、プレーナー型絶縁ゲート部26の端部の形態が反映した段差40Sが形成されている。
【0034】
次に、図7に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、層間絶縁膜40の一部をエッチングしてコンタクトホール42を形成する。コンタクトホール42の底面には、化合物半導体層10の表面の一部が露出している。このコンタクトホール42を形成するときに、層間絶縁膜40の段差40Sが除去されるようにコンタクトホール42が形成される。
【0035】
次に、図8に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、平面視したときに、プレーナー型絶縁ゲート部26が存在する範囲の層間絶縁膜40の一部をエッチングし、内側部分40aと外側部分40bを形成する。
【0036】
最後に、化合物半導体層10の裏面を被覆するようにドレイン電極22を形成し、化合物半導体層10の表面を被覆するようにソース電極24を形成すると、半導体装置1が完成する。
【0037】
(第2実施形態の半導体装置2)
図9に、第2実施形態の半導体装置2の要部断面図を示す。半導体装置2では、絶縁ゲート部28が、トレンチ型で構成されていることを特徴としている。トレンチ型絶縁ゲート部28は、化合物半導体層10の表面から深部に向けて伸びており、ゲート絶縁膜28aとゲート電極28bを有している。ゲート電極28bは、ゲート絶縁膜28aによって化合物半導体層10から絶縁されており、ドリフト領域12とソース領域15を隔てる位置のボディ領域14にゲート絶縁膜28aを介して対向している。
【0038】
半導体装置2の動作について説明する。使用時には、ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地される。ゲート電極28bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、ドリフト領域12とソース領域15を隔てる部分のボディ領域14に反転層が形成され、半導体装置2がターンオンする。このとき、反転層を経由してソース領域15からドリフト領域12に電子が流入する。ドリフト領域12に流入した電子は、トレンチ型絶縁ゲート部28の下方に位置するドリフト領域12を縦方向に流れてドレイン電極22に向かう。これにより、ドレイン電極22とソース電極24が導通する。ゲート電極28bが接地されると、反転層が消失し、半導体装置2がターンオフする。このように、半導体装置2は、ゲート電極28bに印加する電圧に基づいてスイッチング動作を実行することができる。
【0039】
例えば、半導体装置2がターンオンしているときに、半導体装置2に接続される負荷が短絡すると、半導体装置2に大電流が流れる。この場合、電流がトレンチ型絶縁ゲート部28の下方に位置するドリフト領域12を縦方向に流れる部分の温度がジュール熱によって上昇する。具体的には、トレンチ型絶縁ゲート部28の下方に位置するドリフト領域12の温度がピークとなるように、化合物半導体層10の温度が局所的に上昇する。このように、局所的な温度上昇箇所は、層間絶縁膜240の中央下方に位置している。これにより、その温度上昇箇所が熱膨張し、化合物半導体層10の表面が上に凸となるように変形すると、層間絶縁膜240に応力が加わる。
【0040】
本実施形態の半導体装置2でも、上記した半導体装置1の場合と同様に、層間絶縁膜240内の応力集中箇所が、層間絶縁膜240の外側部分240b内のうちの周縁側の領域となる。このため、上記した半導体装置1の場合と同様に、本実施形態の半導体装置2も、ゲート電極26bとソース電極24が短絡することが抑えられ、高い信頼性を有することができる。
【0041】
(第2実施形態の半導体装置2の製造方法)
次に、半導体装置2の製造方法を説明する。まず、図10に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、SiCを材料とするドレイン領域11の表面からドリフト領域12及びボディ領域14を結晶成長し、化合物半導体層10を準備する。エピタキシャル成長技術の一例は、有機金属化合物気相成長法(MOCVD法)である。
【0042】
次に、図11に示されるように、イオン注入技術を利用して、化合物半導体層10の表層部にソース領域15を形成する。具体的には、ソース領域15を形成するためのマスクを化合物半導体層10の表面上にパターニングし、そのマスクの開口を通過してn型の不純物イオンを化合物半導体層10の表層部に注入する。これにより、化合物半導体層10の表層部にソース領域15が形成される。
【0043】
次に、図12に示されるように、化合物半導体層10の表面から深部に向けて伸びるトレンチ型絶縁ゲート部28を形成する。具体的には、ドライエッチング技術を利用して、化合物半導体層10の表面からソース領域15とボディ領域14を貫通してドリフト領域12に達するトレンチを形成する。次に、CVD法又は原子層堆積法(ALD法)を利用して、トレンチ内にゲート絶縁膜28a及びゲート電極28bを成膜し、トレンチ型絶縁ゲート部28を形成する。
【0044】
次に、図13に示されるように、CVD技術を利用して、トレンチ型絶縁ゲート部28を覆うように化合物半導体層10の表面上に層間絶縁膜240を成膜する。層間絶縁膜240は、従来よりも厚く成膜され、その厚みT240は例えば1μm~5μmの範囲である。
【0045】
次に、図14に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、層間絶縁膜240の一部を除去してコンタクトホール242を形成する。コンタクトホール242の底面には、化合物半導体層10の表面の一部が露出している。
【0046】
次に、図15に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、平面視したときに、トレンチ型絶縁ゲート部28が存在する範囲の層間絶縁膜240の一部を除去し、内側部分240aと外側部分240bを形成する。
【0047】
最後に、化合物半導体層10の裏面を被覆するようにドレイン電極22を形成し、化合物半導体層10の表面を被覆するようにソース電極24を形成すると、半導体装置2が完成する。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
1:半導体装置、 10:化合物半導体層、 11:ドレイン領域、 12:ドリフト領域、 13:JFET領域、 14:ボディ領域、 15:ソース領域、 22:ドレイン電極、 24:ソース電極、 26:プレーナー型絶縁ゲート部、 26a:ゲート絶縁膜、 26b:ゲート電極、 40:層間絶縁膜、 40a:内側部分、 40b:外側部分、 42:コンタクトホール
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