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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/24 20060101AFI20221209BHJP
   H01H 73/02 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01H71/24
H01H73/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019071001
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020170624
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-190972(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0101610(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00-69/01、71/00-83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路の開閉を切り替える回路遮断器であって、
ハウジングに対して固定されている固定接触子と、
前記ハウジングの内部において動作することにより、前記固定接触子に当接した状態と、前記固定接触子から離間した状態と、が切り替わる可動接触子と、
電路の開閉を切り替えるための操作により回転するハンドルと、
前記ハンドルと前記可動接触子との間を繋ぐ連結部材と、
前記ハウジングに対して固定されている部材であって、前記ハンドルの回転中心軸に沿って見た場合において、その少なくとも一部が前記ハンドルの一部と重なる位置に配置された案内部材と、を備え、
前記ハンドルには第1長穴が形成されており、
前記案内部材には、前記回転中心軸に沿って見た場合において前記第1長穴と交差する第2長穴が形成されており、
前記回転中心軸に沿った方向に前記連結部材を貫く棒状部材が、前記第1長穴と前記第2長穴とが互いに交差する位置において、前記第1長穴及び前記第2長穴のそれぞれに対して挿通されており、
前記ハンドルが回転すると、前記棒状部材が前記第2長穴に沿って移動するように前記連結部材が動作し、前記連結部材から受ける力によって前記可動接触子が動作するように構成されている回路遮断器。
【請求項2】
電路において過電流が流れた際には、前記ハウジングに対する前記案内部材の固定が解除され、前記棒状部材が前記第1長穴に沿って移動し得る状態となるように構成されている、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記回転中心軸に沿って見た場合において、前記第2長穴は円弧状に伸びるように形成されている、請求項1又は2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記回転中心軸に沿って見た場合において、前記第1長穴は直線状に伸びるように形成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、例えば分電盤の内部において、電路の開閉を切り替えるための装置として用いられるものである。下記特許文献1に記載されているように、回路遮断器にはハンドルが設けられており、当該ハンドルに対して使用者が行う操作により、電路の開閉が切り替えられる。回路遮断器には、ハウジングの内部において動作する可動接触子と、可動接触子とハンドルとの間を繋ぐ連結部材とが設けられる。ハンドルの動作は、連結部材を介して可動接触子に伝えられる。
【0003】
また、電路において過電流が流れた場合には、ハンドルへの操作によることなく、自動的に電路が開状態に切り替えられる。このとき、仮に、何らかの障害物によってハンドルの動作が外部から妨げられていた場合であっても、電路を自動的に開状態に切り替える動作は確実に行われる必要がある。
【0004】
このような動作を実現するための構成としては、例えば以下のような構成が知られている。上記の連結部材を、第1部材と第2部材とに分けた上で、第1部材と第2部材とが互いになす角度が変化し得るように両部材を繋いだ構成としておく。通常時においては、第1部材と第2部材とのなす角度が固定された状態とされる。これにより、ハンドルの動作が第1部材及び第2部材を介して可動接触子に伝えられる。
【0005】
一方、過電流が生じた際には上記の固定を解除し、第1部材と第2部材とのなす角度が自由に変化し得る状態とされる。これにより、可動接触子及びハンドルが互いに独立に動作し得る状態となり、可動接触子の動きがハンドルによっては妨げられない状態となる。従って、仮にハンドルの動作が外部から妨げられていた場合であっても、可動接触子を固定接触子から離れるように動作させ、電路を開状態に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-161992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように連結部材を第1部材と第2部材とに分けた構成においては、回路遮断器の部品点数が増加してしまう。また、複数の部材をリンクさせる箇所が増加してしまうので、これらの部材を支持するハウジング内部の構成が複雑化してしまうという問題も生じる。更に、第1部材と第2部材とが、互いになす角度を変化させながら動作するために必要なスペースを確保する必要が生じ、ハウジングが大型化してしまうという問題も生じる。
【0008】
本開示は、過電流が生じた際において開状態に切り替える動作を、部品点数を増加させることなく比較的簡単な構成で実現することのできる回路遮断器、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る回路遮断器は、電路の開閉を切り替える回路遮断器であって、ハウジングに対して固定されている固定接触子と、ハウジングの内部において動作することにより、固定接触子に当接した状態と、固定接触子から離間した状態と、が切り替わる可動接触子と、電路の開閉を切り替えるための操作により回転するハンドルと、ハンドルと可動接触子との間を繋ぐ連結部材と、ハウジングに対して固定されている部材であって、ハンドルの回転中心軸に沿って見た場合において、その少なくとも一部がハンドルの一部と重なる位置に配置された案内部材と、を備える。ハンドルには第1長穴が形成されている。案内部材には、回転中心軸に沿って見た場合において第1長穴と交差する第2長穴が形成されている。回転中心軸に沿った方向に連結部材を貫く棒状部材が、第1長穴と第2長穴とが互いに交差する位置において、第1長穴及び第2長穴のそれぞれに対して挿通されている。この回路遮断器は、ハンドルが回転すると、棒状部材が第2長穴に沿って移動するように連結部材が動作し、連結部材から受ける力によって可動接触子が動作するように構成されている。
【0010】
このような構成の回路遮断器では、連結部材が複数の部材に分かれていないので、上記のように連結部材を第1部材と第2部材とに分けた構成に比べて、部品点数を削減することができる。
【0011】
また、過電流が流れた場合には、ハウジングに対する案内部材の固定を解除すれば、連結部材を貫く棒状部材がハンドルの第1長穴に沿って移動し得る状態となる。このため、ハンドルが外部から固定されている状態であっても、ハンドルの第1長穴に沿って連結部材を動作させ、可動接触子を固定接触子から離間させることが可能となる。また、連結部材は単一の部材であるから、連結部材が上記のように動作するために必要なスペースを比較的小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、過電流が生じた際において開状態に切り替える動作を、部品点数を増加させることなく比較的簡単な構成で実現することのできる回路遮断器、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る回路遮断器の外観を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図6図6は、第1比較例に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図7図7は、第1比較例に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図8図8は、第2比較例に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
図9図9は、第2比較例に係る回路遮断器の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
本実施形態に係る回路遮断器10は、不図示の分電盤に取り付けられるものあり、当該分電盤において電路の開閉を切り替えるための装置として構成されている。図1に示されるように、回路遮断器10は、ハウジング20と、電源側端子座31と、負荷側端子座41と、ハンドル70と、を備えている。
【0016】
ハウジング20は、概ね回路遮断器10の外形をなす部材である。ハウジング20は樹脂によって形成されている。ハウジング20の内部には、後述の可動接触子60や連結部材80等が収容されている。
【0017】
ハウジング20は、基台21とカバー22とに分割された構成となっている。基台21は、図1における下方側の部分であって、分電盤の内側にある不図示のベースに取り付けられる部分となっている。カバー22は、図1における上方側の部分であって、基台21を、上記のベースとは反対側から覆っている部分である。
【0018】
電源側端子座31は、不図示の電源側配線が接続される部分である。図1に点線で示されるように、ハウジング20のうち図1における左側の部分は、一部が右側に向けて凹状に後退しており、これにより凹状の空間である凹部23が形成されている。電源側端子座31は、この凹部23に配置されている。
【0019】
負荷側端子座41は、不図示の負荷側配線が接続される部分である。図1に点線で示されるように、ハウジング20のうち図1における右側の部分は、一部が左側に向けて凹状に後退しており、これにより凹状の空間である凹部24が形成されている。負荷側端子座41は、この凹部24に配置されている。
【0020】
ハンドル70は、使用者により電路の開閉を切り替えるための操作がなされる部分である。ハンドル70は、カバー22に形成された不図示の開口を通じて、その一部が外側に突出している。
【0021】
図1のようにハンドル70が右側に向けて傾斜している状態においては、ハウジング20の内部における電路、すなわち、電源側端子座31と負荷側端子座41との間を繋ぐ電路が開状態となっている。このため、負荷側配線への電力の供給は遮断されている。
【0022】
図1の状態からハンドル70が操作され、ハンドル70が反時計回り方向に回転して図4の状態になると、上記の電路が閉状態に切り替えられる。これにより、電源側配線からの電力が負荷側配線へと供給されるようになる。また、図4の状態からハンドル70が操作され、ハンドル70が時計回り方向に回転して図1の状態になると、上記の電路は再び開状態に切り替えられる。このように、ハンドル70は、電路の開閉を切り替えるための操作により回転する部材として設けられている。
【0023】
図2を参照しながら、回路遮断器10の内部の構成について説明する。図2では、回路遮断器10からカバー22を取り外した状態の断面が示されている。同図に示されるように、回路遮断器10は、電源側端子金具30と、負荷側端子金具40と、可動接触子60と、を備えている。
【0024】
電源側端子金具30は、ハウジング20に対して固定されている金属製の部材である。電源側端子金具30は、その一部が凹部23に配置され外部に露出している。この露出している部分が、先に述べた電源側端子座31となっている。電源側端子金具30のうち、ハウジング20の内側に収容されている部分は、固定接触子32となっている。固定接触子32には、後述の可動接触子60側に向けて突出する固定接点33が設けられている。
【0025】
負荷側端子金具40は、上記の電源側端子金具30と同様に、ハウジング20に対して固定されている金属製の部材である。負荷側端子金具40は、その一部が凹部24に配置され外部に露出している。この露出している部分が、先に述べた負荷側端子座41となっている。
【0026】
可動接触子60は、ハウジング20の内部に設けられた金属製の部材である。可動接触子60は、不図示の接続配線を介して負荷側端子金具40と接続されている。可動接触子60は、絶縁性の材料からなる保持部材62によって保持されている。保持部材62のうち、図2における右側の端部近傍となる位置には、不図示の回転軸が挿通されている。当該回転軸は、図2の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材であって、ハウジング20に対して固定されている。可動接触子60は、保持部材62と共に、上記回転軸の周りに回動自在な状態で保持されている。
【0027】
可動接触子60には、固定接触子32側に向けて突出する可動接点61が設けられている。図2に示された状態においては、可動接触子60の可動接点61と、固定接触子32の固定接点33との間が離間している。
【0028】
図2に示される状態から、可動接触子60が不図示の回転軸を中心として反時計回り方向に回転すると、可動接触子60の可動接点61は、固定接触子32の固定接点33に当接した状態となる。このとき、ハウジング20の内部では、電源側端子金具30、固定接触子32、可動接触子60、不図示の接続配線、及び負荷側端子金具40からなる電路が閉じられた状態となる。つまり、電源側端子金具30と負荷側端子金具40との間が導通された状態となる。
【0029】
この状態から、可動接触子60が不図示の回転軸を中心として時計回り方向に回転すると、図2に示される状態に戻る。このとき、可動接触子60の可動接点61と、固定接触子32の固定接点33との間は離間しているので、上記の電路は開かれた状態となる。つまり、電源側端子金具30と負荷側端子金具40との間が電気的に遮断された状態となる。
【0030】
このように、可動接触子60は、ハウジング20の内部において動作することにより、固定接触子32に当接した状態と、固定接触子32から離間した状態と、が切り替わる部材として設けられている。
【0031】
可動接触子60は、不図示の弾性部材によって、固定接触子32から離間する方向に付勢されている。可動接触子60は、ハンドル70の回動に伴って加えられる力によって動作し、固定接触子32に当接した状態となる。
【0032】
このような可動接触子60の動作を実現するための機構について説明する。図2に示されるように、ハウジング20の内部には更に、フレーム25と、案内部材90と、係合片100と、連結部材80と、が設けられている。
【0033】
フレーム25は、ハウジング20に対して固定された部材である。ハンドル70、案内部材90、係合片100、及び連結部材80は、いずれもこのフレーム25によって保持されている。フレーム25は、ハウジング20のうち基台21に対して固定されており、図2における基台21の上端から更に上方側に向けて突出している。
【0034】
ハンドル70には回転軸71が挿通されている。回転軸71は、その中心軸が図2の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材であって、フレーム25に対して固定されている。ハンドル70は、回転軸71の周りに回動自在な状態で保持されている。回転軸71の中心軸は、ハンドル70の「回転中心軸」に該当する。
【0035】
ハンドル70には第1長穴72が形成されている。第1長穴72は、その大部分が回転軸71よりも基台21側となる位置に形成されている。第1長穴72は、図2のようにハンドル70の回転中心軸に沿って見た場合において、直線状に伸びる穴として形成されている。
【0036】
案内部材90は、概ね平板状の部材であって、フレーム25に対して保持されている。案内部材90は、ハンドル70よりも図2の紙面奥側となる位置に配置されている。図2のようにハンドル70の回転中心軸に沿って見た場合において、案内部材90は、その一部がハンドル70の一部と重なる位置に配置されている。
【0037】
案内部材90のうち、図2において右下近傍となる位置には、回転軸91が挿通されている。回転軸91は、その中心軸が図2の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材であって、フレーム25に対して固定されている。案内部材90は、回転軸91の周りに回転自在な状態で保持されているのであるが、通常時においては、その回転は後述の係合片100によって抑制されている。「通常時」とは、回路遮断器10の電路を過電流が流れておらず、後述の引外し装置50が作動していないときのことである。このように、案内部材90は、通常時においてはハウジング20に対して固定されている部材となっている。
【0038】
案内部材90には第2長穴92が形成されている。第2長穴92は、図2のようにハンドル70の回転中心軸に沿って見た場合において、基台21側に向けて突出するような円弧状に伸びる穴として形成されている。また、上記のように見た場合には、第2長穴92の一部は、ハンドル70に形成された第1長穴72の一部と交差した状態となっている。
【0039】
案内部材90のうち、図2における右上端部となる位置には、紙面手前側に突出するように被係合部93が形成されている。被係合部93は、案内部材90の回転が抑制されるよう、係合片100によって係合される部分である。
【0040】
係合片100は、上記のように、案内部材90の回転を抑制するための部材である。係合片100には、回転軸101が挿通されている。回転軸101は、その中心軸が図2の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材であって、フレーム25に対して固定されている。係合片100は、回転軸101の周りに回動自在な状態で保持されている。
【0041】
係合片100は、図2において概ね上下方向に沿って伸びるように配置されており、回転軸101は、係合片100のうち上端部近傍となる位置に挿通されている。係合片100のうち、回転軸101の近傍となる位置には、案内部材90に向かって伸びるように突出する突出部102が形成されている。図2に示される通常時においては、突出部102の先端が案内部材90の被係合部93に係合しており、これにより、回転軸91の周りにおける案内部材90の回転が抑制された状態となっている。つまり、案内部材90がハウジング20に対して固定された状態となっている。
【0042】
連結部材80は、ハンドル70と可動接触子60との間を繋ぐための部材である。連結部材80は、図2の紙面奥行き方向に沿って、その一部が案内部材90とハンドル70との間に挟まれた状態となっている。
【0043】
連結部材80には棒状部材81が設けられている。棒状部材81は、ハンドル70の回転中心軸に沿って伸びるように配置された棒状の部材であって、同方向に沿って連結部材80を貫いている。ただし、棒状部材81はフレーム25に対して固定されていない。棒状部材81は、第1長穴72と第2長穴92とが互いに交差する位置において、第1長穴72及び第2長穴92のそれぞれに対して挿通されている。
【0044】
連結部材80のうち棒状部材81が貫いている位置は、連結部材80の長手方向に沿った一端の近傍となる位置である。連結部材80のうち、上記一端とは反対側の端部近傍となる位置、すなわち可動接触子60側の端部近傍となる位置には、押圧バー82が設けられている。押圧バー82は円柱形状の部材であって、その中心軸が図2の紙面奥行き方向に沿うように配置されている。押圧バー82は、保持部材62に対して図2の上方側から当接している。尚、押圧バー82が、保持部材62を介することなく可動接触子60に直接当接しているような態様であってもよい。
【0045】
ハウジング20の内部には更に、引外し装置50と可動片110とが配置されている。引外し装置50は、ハウジング20内部の電路を過電流が流れた際に磁力を発生させ、次に述べる可動片110を動作させるための装置である。尚、引外し装置50の構成としては公知のものを採用し得るので、その具体的な構成の説明については省略する。
【0046】
可動片110は、引外し装置50と係合片100との間となる位置に配置されている。可動片110は、引外し装置50の上方側に配置される第1部分111と、係合片100と概ね対向するように下方側に向かって伸びる第2部分112と、を有している。通常時においては、第1部分111と引外し装置50との間は互いに離間しており、第2部分112と係合片100との間も互いに離間している。
【0047】
ハウジング20内部の電路を過電流が流れると、引外し装置50で磁力が発生する。可動片110のうち第1部分111は、当該磁力によって引外し装置50側へと引き寄せられる。これにより、可動片110はその全体が時計回り方向に回転するので、第2部分112の下端は係合片100側へと移動し、係合片100に力を加えることとなる。係合片100は、第2部分112からの力によって、回転軸101の周りに時計回り方向に回転する。
【0048】
係合片100の回転により、係合片100の突出部102は、案内部材90の被係合部93から外れた状態となる。ハウジング20に対する案内部材90の固定は解除され、案内部材90は自由に回転し得る状態となる。尚、このような動作の結果として、可動接触子60は固定接触子32から離間する方向に移動し、電路が開状態に切り替わるのであるが、その理由については後に説明する。
【0049】
ハンドル70が使用者によって操作された場合における、回路遮断器10の動作について説明する。図2に示された状態から、電路を閉状態に切り替えるための操作、すなわちハンドル70を反時計回り方向に回転させる操作が行われると、回路遮断器10は図3に示される状態となる。図3は、電路が閉状態に切り替わる際の途中の状態が示されている。また、同図においては、ハンドル70が回転する方向が矢印A1で示されている。
【0050】
ハンドル70が上記のように回転すると、第1長穴72と第2長穴92とが互いに交差する位置は、図3の右下に向かって移動して行く。これに伴い、棒状部材81は、第2長穴92に沿って右下へと移動して行く。また、連結部材80及びこれに設けられた押圧バー82も、次第に下方側へと移動して行くこととなる。つまり、棒状部材81が第2長穴92に沿って移動するように連結部材80が動作することとなる。
【0051】
可動接触子60は、下方側へ移動する押圧バー82からの力を受けるので、不図示の回転軸の周りに反時計回り方向に回転する。尚、「押圧バー82からの力」とは、連結部材80から受ける力ともいうことができる。図3では、このように可動接触子60が回転する方向が矢印A2で示されている。可動接触子60の回転に伴い、可動接点61は固定接点33へと近づいて行き、最終的には固定接点33に当接した状態となる。つまり、可動接触子60と固定接触子32とが互いに当接した状態となり、電路が閉じられた状態となる。図4には、上記のようなハンドル70の回転が完了した状態が示されている。
【0052】
図4の状態から、ハンドル70を時計回り方向に回転させる操作がなされると、回路遮断器10が備える各部材は上記とは反対の方向に動作することとなる。具体的には、第1長穴72と第2長穴92とが互いに交差する位置は、図4の左上に向かって移動して行く。これに伴い、棒状部材81は、第2長穴92に沿って左上へと移動して行く。また、連結部材80及びこれに設けられた押圧バー82も、次第に上方側へと移動して行くこととなる。その結果、可動接触子60と固定接触子32とが互いに離間した状態となり、電路が開かれた状態となる。
【0053】
このように、本実施形態に係る回路遮断器10は、ハンドル70が回転すると、棒状部材81が第2長穴92に沿って移動するように連結部材80が動作し、連結部材80から受ける力によって可動接触子60が動作するように構成されている。連結部材80は、複数の部材ではなく単一の部材によって構成されており、この連結部材80が、ハンドル70の動きを可動接触子60に直接伝える構成となっている。
【0054】
図4の状態から、ハウジング20内部の電路を過電流が流れた場合の動作について説明する。先に述べたように、この場合には係合片100が可動片110から力を受けて、係合片100は図5の矢印A3で示される方向に回転する。その結果、ハウジング20に対する案内部材90の固定は解除され、案内部材90は、回転軸91の周りに自由に回転し得る状態となる。
【0055】
図4の状態においては、可動接触子60は不図示の弾性部材により付勢されており、保持部材62を介して押圧バー82に押し付けられた状態となっている。このため、連結部材80は、押圧バー82からの力によって図4の上方側に向けて付勢されている。
【0056】
ハウジング20に対する案内部材90の固定が解除されると、図4の上方側に向けて付勢されている連結部材80からの力を受けて、案内部材90は図5の矢印A4で示される方向に回転する。このとき、棒状部材81を特定の位置に保持しておくような力は働かなくなっている。このため、棒状部材81は、第1長穴72に沿って上方側、すなわち可動接触子60から遠ざかる方向に移動する。また、棒状部材81と同様に連結部材80も同方向に移動する。その結果、可動接触子60は固定接触子32から離間した状態となり、電路は開かれた状態となる。
【0057】
尚、棒状部材81は、ハンドル70に形成された第1長穴72に沿って移動するので、ハンドル70が回転しなくても、棒状部材81は上記のように移動することができる。つまり、ハンドル70が、例えば外部からの力によって固定された状態となっていた場合であっても、過電流が流れると、可動接触子60を固定接触子32から確実に離間させ、電路を開かれた状態とすることができる。
【0058】
このように、本実施形態に係る回路遮断器10は、電路において過電流が流れた際には、ハウジング20に対する案内部材90の固定が解除され、棒状部材81が第1長穴72に沿って移動し得る状態となるように構成されている。
【0059】
以上のような構成としたことの利点を説明するために、比較例に係る回路遮断器の構成について説明する。
【0060】
図6に示されるのは、第1比較例に係る回路遮断器10Aの構成である。この第1比較例では、連結部材80に替えて、第1連結部材210及び第2連結部材220が設けられている。第1連結部材210は、その一端が回転軸211を介してハンドル70に繋がれており、他端が回転軸212を介して第2連結部材220の一端に繋がれている。また、第2連結部材220の他端には押圧バー82が設けられている。
【0061】
回転軸211及び回転軸212は、いずれも図6の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材である。回転軸211は、ハンドル70と第1連結部材210との間を回動自在な状態で繋いでいる。また、回転軸212は、第1連結部材210と第2連結部材220との間を回動自在な状態で繋いでいる。ただし、回転軸212と、図6において符号230が付されている部分との間は、両者の間の距離が一定となるように不図示の機構によって拘束されている。このため、通常時においては、第1連結部材210と第2連結部材220とのなす角度は概ね一定に保持されている。図6において符号230が付されている部分のことを、以下では「拘束部230」とも称する。
【0062】
図6に示される状態では、ハンドル70が反時計回り方向に回転しており、可動接触子60が固定接触子32に当接した状態、すなわち電路が閉じられている状態となっている。図6に示される状態から、ハンドル70を時計回り方向に回転させる操作がなされると、第1連結部材210及び第2連結部材220は、互いになす角度を概ね一定に保ったまま、可動接触子60とは反対側の方向に移動する。このため、可動接触子60は、不図示の弾性部材からの力によって図6の上方側に移動し、固定接触子32から離間した状態となる。つまり、電路が開かれた状態となる。
【0063】
図6に示される状態から、電路において過電流が流れると、不図示の機構によって、回転軸212と拘束部230との間の拘束が解除される。これにより、第1連結部材210と第2連結部材220とのなす角度は自由に変化し得る状態となる。
【0064】
可動接触子60が不図示の弾性部材から受けている上向きの力は、押圧バー82を介して第1連結部材210及び第2連結部材220に伝えられている。このため、当該力によって両者のなす角度は変化し、図7に示される状態となる。図7では、第1連結部材210の回転した方向が矢印A5で示されている。
【0065】
第1連結部材210と第2連結部材220とのなす角度が変化したことに伴って、可動接触子60は固定接触子32から離間した状態となる。つまり、電路が開かれた状態となる。このような可動接触子60の動きは、第1連結部材210及び第2連結部材220の動作によって吸収されるので、ハンドル70に伝えられることはない。
【0066】
このように、この第1比較例でも、上記の本実施形態において説明したものと同様の動作を行うことが可能となっている。すなわち、ハンドル70が、例えば外部からの力によって固定された状態となっていた場合であっても、過電流が流れると、可動接触子60を固定接触子32から確実に離間させ、電路を開かれた状態とすることが可能となっている。
【0067】
ただし、この第1比較例では、第1連結部材210及び第2連結部材220からなる2つの部材によって連結部材が構成されているので、部品点数が増加してしまっている。これに対し、本実施形態に係る回路遮断器10では、連結部材80が単一の部材となっているので、第1比較例に比べて部品点数が削減されている。
【0068】
また、第1比較例では、回転軸212のような部材間のリンク箇所が比較的多くなっているので、これらの部材を支持するためのハウジング20の内部構成が複雑になってしまうという問題も生じている。これに対し、本実施形態に係る回路遮断器10では、部品点数と共に部材間のリンク箇所も少ないので、ハウジング20の内部構成を簡単なものとすることができる。
【0069】
更に、第1比較例では、第1連結部材210及び第2連結部材220が、互いになす角度を変化させながら動作する。このため、各部材の動作に必要なスペースを、ハウジング20の内部において広く確保しておく必要がある。その結果、ハウジング20が大型化してしまうという問題が生じる。図6における回転軸212の左側のスペースが、確保しておくべきスペースに該当する。
【0070】
これに対し、本実施形態に係る回路遮断器10では、連結部材80が、ハンドル70の第1長穴72に沿って動作するので、当該動作に必要なスペースを確保する必要がほとんど生じない。このため、本実施形態においてはハウジング20を従来に比べて小型化することが可能となっている。
【0071】
図8に示されるのは、第2比較例に係る回路遮断器10Bの構成である。この第2比較例では、連結部材80に替えて連結部材310が設けられている。連結部材310の一端は、回転軸311を介してハンドル70に繋がれている。
【0072】
連結部材310の他端にはローラー312が設けられている。ローラー312は、連結部材310に対して回動自在な状態で保持されている。連結部材310は、ローラー312を押圧部材320の上端に当接させた状態となっている。
【0073】
押圧部材320は、押圧バー82に替えて設けられた部材である。押圧部材320は、上下方向に沿って伸びるように設けられたブロック状の部材である。押圧部材320には、これを図8の左右方向に沿って貫く貫通穴322が形成されている。可動接触子60は、貫通穴322に挿通されている。
【0074】
押圧部材320は、ハウジング20の内部において、図8の上下方向に沿ってのみ移動し得る状態で保持されている。
【0075】
回路遮断器10Bには、拘束部材500が設けられている。拘束部材500は、連結部材310のローラー312が、押圧部材320の上端に当接している状態を保つための部材である。図8に示されるように、拘束部材500は、ローラー312を図8の右側から支えており、ローラー312が右側へとずれてしまうことを防止している。
【0076】
拘束部材500は、回転軸510を介してフレーム25に取り付けられている。回転軸510は、図8の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材である。拘束部材500は、回転軸510の周りに回転自在な状態となっている。ただし、通常時においては、拘束部材500の回転は係合片400によって抑制されている。
【0077】
係合片400は、回転軸410を介してフレーム25に取り付けられている。回転軸410は、図8の紙面奥行き方向に沿って伸びる棒状の部材である。係合片400には、拘束部材500に向かって突出する突出部420が形成されている。通常時においては、突出部420の先端が拘束部材500に当接している。このため、拘束部材500の回転は抑制されている。
【0078】
図8に示される状態では、ハンドル70が反時計回り方向に回転しており、連結部材310は、その可動範囲におけるもっとも下方側へと移動している。このため、押圧部材320は連結部材310からの力によって、やはり下方側へと移動している。その結果、可動接触子60は、押圧部材320からの力によって、固定接触子32に押し付けられている。つまり、電路が閉じられた状態となっている。
【0079】
図8に示される状態から、ハンドル70を時計回り方向に回転させる操作がなされると、連結部材310のローラー312は上方側へと移動する。押圧部材320は、その上端にローラー312が当接している状態を維持しながら、可動接触子60と共に上方側へと移動する。その結果、可動接触子60は固定接触子32から離間した状態となる。つまり、電路が開かれた状態となる。
【0080】
図8に示される状態から、電路において過電流が流れると、可動片110の第2部分112から受ける力により、係合片400が回転軸410の周りを反時計回り方向に回転する。このとき、突出部420の先端が拘束部材500から離れることにより、拘束部材500は自由に回転し得る状態となる。拘束部材500は、ローラー312から受ける力によって反時計回り方向に回転する。
【0081】
ローラー312は、拘束部材500によって保持されなくなるので、押圧部材320の上端から図8の右側に移動し、押圧部材320の上端から外れた状態となる。図9にはこのような状態が示されている。
【0082】
図9の状態になると、押圧部材320はローラー312からの力を受けなくなるので、可動接触子60と共に上方へと移動する。その結果、可動接触子60は固定接触子32から離間した状態となる。つまり、電路が開かれた状態となる。このときの押圧部材320の動きは、ハンドル70には伝達されない。
【0083】
このように、この第2比較例でも、上記の本実施形態において説明したものと同様の動作を行うことが可能となっている。すなわち、ハンドル70が、例えば外部からの力によって固定された状態となっていた場合であっても、過電流が流れると、可動接触子60を固定接触子32から確実に離間させ、電路を開かれた状態とすることが可能となっている。
【0084】
ただし、この第2比較例では、連結部材310の下端が、押圧部材320の上端からスムーズに外れた状態となるよう、連結部材310の下端にローラー312を設ける必要がある。このため、結局は部品点数が増加してしまうという問題がある。また、通常時においては、押圧部材320の上端にローラー312からの力が常に加えられることとなるので、押圧部材320が変形しないように、押圧部材320を大型化してその強度を高めておく必要も生じてしまう。
【0085】
これに対し、本実施形態に係る回路遮断器10では、特定の個所に大きな力が加えられる構造ではないので、特定の部品の強度を過度に高めておく必要が無い。
【0086】
本実施形態に係る回路遮断器10における更なる工夫点について、再び図2を参照しながら説明する。先に述べたように、本実施形態の第2長穴92は、円弧状に伸びるように形成されている。このため、ハンドル70を回転させ、図2の状態から図4の状態に移行する過程においては、棒状部材81は、常にハンドル70の下端部近傍に保持された状態のまま移動することとなる。ハンドル70の下端部近傍は、ハンドル70が回転軸71の周りに回転する際において、最もその移動距離が大きい部分ということができる。このような位置に棒状部材81が保持されることとなるので、ハンドル70の回転運動を、効率的に連結部材80や可動接触子60の動作に変換することが可能となっている。
【0087】
また、本実施形態の第1長穴72は、直線状に伸びるように形成されている。このため、図4の状態から、過電流が生じて図5の状態に移行するにあたっては、棒状部材81が、第1長穴72に沿って最短距離を移動することとなる。その結果、連結部材80や可動接触子60をスムーズに動作させることが可能となっている。
【0088】
以上においては、第1長穴72が、図2の紙面奥行き方向に沿ってハンドル70を貫通するように形成された穴である場合の例について説明した。このような態様に替えて、第1長穴72は、ハンドル70のうち連結部材80と対向する面の一部を、図2の紙面手前方向に向けて後退させることにより形成された、所謂「有底」の穴として形成されていてもよい。この場合の第1長穴72は、直線状に形成された「溝」ということもできる。また、この場合において、「棒状部材81が第1長穴72に対して挿通されている」とは、棒状部材81の先端部分が、溝である第1長孔72の内側に入り込んでいることを意味する。
【0089】
また、以上においては、第2長穴92が、図2の紙面奥行き方向に沿って案内部材90を貫通するように形成された穴である場合の例について説明した。このような態様に替えて、第2長穴92は、案内部材90のうち連結部材80と対向する面の一部を、図2の紙面奥側方向に向けて後退させることにより形成された、所謂「有底」の穴として形成されていてもよい。この場合の第2長穴92は、円弧状に形成された「溝」ということもできる。また、この場合において、「棒状部材81が第2長穴92に対して挿通されている」とは、棒状部材81の先端部分が、溝である第2長穴92の内側に入り込んでいることを意味する。
【0090】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0091】
10:回路遮断器
20:ハウジング
32:固定接触子
60:可動接触子
70:ハンドル
72:第1長穴
80:連結部材
81:棒状部材
90:案内部材
92:第2長穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9