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特許7190957活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20221209BHJP
   C09D 11/105 20140101ALI20221209BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/105
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071325
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169267
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 忠司
(72)【発明者】
【氏名】浅野 高志
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-65912(JP,A)
【文献】特開2000-265102(JP,A)
【文献】特開平10-219595(JP,A)
【文献】特開平1-289876(JP,A)
【文献】特開2006-219523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとの縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1~100mgKOH/gであるロジン変性アルキッド樹脂をインキ組成物中に5.0~70.0質量%、
及び多官能モノマー及び/又は多官能オリゴマーをインキ組成物中に20.0~70.0質量%、
含有し、粘度が300~2000mPa・sである、
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【請求項2】
ロジン変性アルキッド樹脂全体の質量に対する脂肪酸部分の質量の割合(質量%)である油長が30~85である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【請求項3】
ロジン変性アルキッド樹脂の脂肪酸部分が炭素数8~16の脂肪酸を含む請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【請求項4】
アミノ基含有多官能モノマーをインキ組成物中に0.5~10質量%含有する請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【請求項5】
平均粒子径8.0μm以下のワックスをインキ組成物中に1.0~5.0質量%含有する請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【請求項6】
表面調整剤をインキ組成物中に0.01~1.00質量%含有する請求項1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【請求項7】
着色剤を含有する請求項1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全を目標として、様々な業界や業種で環境負荷低減活動が展開されており、各種の観点から環境負荷低減を促す活動が行われている。例えば、塗料やインキ等に含まれている揮発性有機化合物(VOC)は、地球温暖化に繋がる化学物質であることから、VOC使用の自主規制・削減による環境負荷の低減活動の対象となっている。
VOC削減の観点から、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物の活用が検討されている。活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、活性エネルギー線の照射により重合する重合性化合物と、必要に応じて活性エネルギー線の照射により重合開始機能を発現する重合開始剤等とを含む。
活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物は、VOC使用を抑制できVOC揮発量をゼロ又は少なくできることから、環境負荷の低減が可能である。さらに、急速に硬化する(速乾性を有している)ため、省エネルギー化と生産性向上が可能であって、塗料やインキとして実際に使用されている。
【0003】
印刷業界においては、各種方式で印刷された印刷物表面のインキが十分乾燥しないと、印刷物を重ねた際の裏移りや、印刷物に触れた際のインキ付着が発生するため、後工程に進めることや商品として流通させることができない。そのため、印刷直後の印刷物に活性エネルギー線を照射することで、印刷物表面のインキを瞬時に硬化(乾燥)できる活性エネルギー線硬化型インキが普及してきている。
このような活性エネルギー線硬化型インキは、例えば、特許文献1及び特許文献2にあるように広く知られている。
【0004】
さらに、活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物については、環境負荷の低減を目指した各種対応が行われている。例えば、より少ない活性エネルギー線照射で硬化(乾燥)できる製品の開発や、電力消費が大きく短波長の紫外線によるオゾンの発生を招く高圧水銀灯等から、省電力でオゾンの発生の少ない紫外線LEDランプや低出力紫外線ランプへの置換え等が行われている。
【0005】
近年、環境負荷低減活動として、化石資源由来の原材料を再生可能資源であるバイオマス由来の原材料に代替することにより、環境中のCOを増加させない(カーボンニュートラル)なバイオマス製品として、温室効果ガス排出量を削減することが行われている。
例えば、印刷インキ業界においては、新たにインキグリーンマーク(IGマーク)制度を制定し、印刷インキ構成成分におけるバイオマス由来成分の比率に応じて環境対応レベルを3段階にランク付けし、環境負荷の低減を促す活動が行われている。
【0006】
しかしながら、これまでの活性エネルギー線硬化型インキは、化石資源由来の原材料である重合性化合物を多量に用いるものであって、IGマークの認定基準に適合させることは困難であった。しかも、バイオマスを由来とする重合性化合物を容易にかつ大量に入手することは困難であった。
【0007】
さらに、最近は、バイオマス由来成分として、食糧生産との競合に配慮して、非可食性のバイオマス成分(食用でないバイオマス成分、特に、食用でない物質から得られたバイオマス成分)の利用についても検討されている。
例えば、特許文献3には、カシューナッツシェルリキッドに含まれるカルダノール等の天然再生可能資源又はそれらの誘導体から合成されたウレタンアクリレートを、ベースとする紫外線硬化型組成物を印刷インキとして用いることが可能である旨記載されている。しかしながら、このようなウレタンアクリレートを容易にかつ大量に入手することは困難と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-137369号公報
【文献】特開2015-081264号公報
【文献】特許第5335436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、バイオマス由来成分をより多く使用しながら、硬化性、密着性、耐摩擦性、耐スクラッチ性等の基本的特性が維持された活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物とすることを課題とする。
しかも、バイオマス由来の原料比率を高めて、非可食性バイオマスを使用するため食糧生産と競合せず、飢餓問題・食糧問題につながることを抑制し得る。そして、持続可能な循環型社会の形成に大きく貢献できる活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、下記の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を使用することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、
1.樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとの縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1~100mgKOH/gであるロジン変性アルキッド樹脂をインキ組成物中に5.0~70.0質量%、
及び多官能モノマー及び/又は多官能オリゴマーをインキ組成物中に20.0~70.0質量%、
含有し、粘度が300~2000mPa・sである、
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
2.ロジン変性アルキッド樹脂全体の質量に対する脂肪酸部分の質量の割合(質量%)である油長が、30~85である1記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
3.ロジン変性アルキッド樹脂の脂肪酸部分が炭素数8~16の脂肪酸を含む1又は2記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
4.アミノ基含有多官能モノマーをインキ組成物中に0.5~10質量%含有する1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
5.平均粒子径8.0μm以下のワックスをインキ組成物中に1.0~5.0質量%含有する1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
6.表面調整剤をインキ組成物中に0.01~1.00質量%含有する1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
7.着色剤を含有する1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化性、密着性、耐スクラッチ性等の基本的特性が維持された活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を得ることができ、さらにバイオマス由来の原料比率を高めることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、ラベル等に印刷される。以下、この組成物について詳細に説明する。
(着色剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物には、各色相の着色剤を含有させて、各色の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を得ることもできる。また着色剤を含有させず、又は含有量を低減させて無色クリアーや有色クリアーな組成物にもできる。
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物に使用される着色剤としては、フレキソインキ組成物で使用されている公知の顔料、染料を制限なく使用できるが、耐光性の点より、有機顔料又は無機顔料等の顔料が好ましい。
具体的には、無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、及び、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また、有機顔料として、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等が挙げられる。
各色相の着色剤を含有させて、各色の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物とする場合は、着色剤の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物中での濃度は1~60質量%であることが好ましい。
【0013】
(顔料分散剤・顔料分散用樹脂)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が着色剤として顔料を採用するとき、顔料分散剤及び/又は顔料分散用樹脂を配合することができる。
顔料分散剤としては、公知のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
これらの界面活性剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤(例えば、ポリエーテル変性シリコンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等)、フッ素系界面活性剤、オキシアルキレンエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、リン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、顔料分散用樹脂として、高分子分散剤(例えば、カルボジイミド系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエステルアミン系、ポリウレタン系、脂肪酸アミン系、ポリアクリレート系、ポリカプロラクトン系、ポリシロキサン系、多鎖型高分子非イオン系、高分子イオン系の分散剤等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が顔料分散剤や顔料分散用樹脂を含む場合には、使用する全顔料の量を100質量%としたときに、顔料分散剤や顔料分散用樹脂を1~200質量%含有することが好ましい。
【0014】
(樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとの縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1~100mgKOH/gであるロジン変性アルキッド樹脂)
ロジン変性アルキッド樹脂は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとの縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1~100mgKOH/gである。このようなロジン変性アルキッド樹脂を用いることにより、インキ組成物における良好な相溶性を得ながら、インキ組成物におけるバイオマス由来成分の含有量を高めることができる。また、ロジン変性アルキッド樹脂は、そのポリマー鎖又は側鎖に樹脂酸骨格を含むので顔料に対する親和性に優れ、良好な顔料分散性や印刷されたインキ組成物表面に良好な光沢をもたらす。
さらに、被印刷体がフィルムのような非浸透性材質である場合、インキ組成物により形成された皮膜(すなわち印刷画像)と被印刷体との密着性を向上させる。本発明のインキ組成物で用いられるロジン変性アルキッド樹脂は、フィルム等への良好な密着性を示すので、これを含む本発明のインキ組成物は、フィルム等への良好な接着性を示す。
【0015】
本発明のインキ組成物には、上記の通りモノマーやオリゴマーが成分として含まれ、これらの成分は比較的高いsp値を有する。そのため、本発明のインキ組成物で用いるロジン変性アルキッド樹脂は、9.0~11.0(cal/cm1/2という、この種の材料としては高いsp値を有するものを用いる。これにより、本発明のインキ組成物は、良好な相溶性を備えるものとなる。ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値の下限は、9.2(cal/cm1/2がより好ましく、9.4(cal/cm1/2がさらに好ましい。また、ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値の上限は、10.5(cal/cm1/2がより好ましく、10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
【0016】
濁点滴定法による溶解性パラメータsp値の算出について説明する。これは、簡便な実測法である濁点滴定により測定することができ、下記のK.W.SUH,J.M.CORBETTの式に従い算出される値である。なお、この方法によるsp値の算出については、J.Appl.Polym.Sci.1968,12,2359を参考にすることができる。
式 sp値=(Vml1/2・δH+Vmh1/2・δD)/(Vml1/2+Vmh1/2
濁点滴定では、試料0.5gを良溶媒であるトルエン10mL又はトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)10mLに溶解させた中に低sp値貧溶媒であるn-ヘキサンを加えていき、濁点での滴定量H(mL)を読み、同様にトルエン溶液中に高sp値貧溶媒であるエタノールを加えたときの濁点における滴定量D(mL)を読み、これらを下記式に適用し、Vml、Vmh、δH、及びδDを算出し、上記式へ代入すればよい。
なお、上記の濁点滴定で用いた各溶剤の分子容やsp値は次の通りである。
良溶媒の分子容 φ0 トルエン:106.28mL/mol
TMPTA:279.55mL/mol
低sp値貧溶媒の分子容 φl n-ヘキサン:131.61mL/mol
高sp値貧溶媒の分子容 φh エタノール:58.39mL/mol
各溶剤のsp値 トルエン:9.14、TMPTA:9.88
n-ヘキサン:7.28、エタノール:12.58
Vml=(φ0・φl)/{(1-VH)・φl+VH・φ0}
Vmh=(φ0・φh)/{(1-VD)・φh+VD・φ0}
VH=H/(M+H)
VD=D/(M+D)
δH=(δ0・M)/(M+H)+(δl・H)/(M+H)
δD=(δ0・M)/(M+D)+(δl・D)/(M+D)
δ0:良溶媒のsp値
δl:低sp値貧溶媒のsp値
δh:高sp値貧溶媒のsp値
H:低sp値貧溶媒の滴定量(mL)
D:高sp値貧溶媒の滴定量(mL)
M:良溶媒の量(mL)
VH:低sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
VD:高sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
ロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、1~100mgKOH/gである。
【0017】
ロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、1000~70000であることが好ましく、2000~30000がより好ましく、3000~10000が更に好ましい。重量平均分子量が1000以上であることにより、顔料の分散性に優れ、インキ組成物に良好な粘弾性を付与することができるので好ましく、重量平均分子量が70000以下であることにより、溶解性が良好でハンドリングに優れるので好ましい。
上記のようにロジン変性アルキッド樹脂は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとの縮重合体である。次に、これらの成分について説明する。
樹脂酸は、ロジン類に含まれるアビエチン酸及びその異性体、並びにそれらの誘導体を指す。ロジン類は、松科の植物から採集される松脂の不揮発性の成分であり、アビエチン酸及びその異性体を主成分とする。アビエチン酸及びその異性体としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられ、これらはいずれもカルボキシル基を有し、後述する多価アルコールとエステルを形成することができる。ロジン変性アルキッド樹脂にこうした樹脂酸が導入されることにより、顔料に対する親和性を向上させることができるとともに、得られるロジン変性アルキッド樹脂におけるバイオマス由来の成分比率を高めることができる。
【0018】
上記のアビエチン酸及びその異性体にはカルボキシル基が一つしか含まれないが、これを変性することにより複数のカルボキシル基を導入することができる。例えば、アビエチン酸はtrans-ジエン化合物であるが、これを加熱するとcis-ジエン化合物へ異性化する。こうして得られたcis-ジエン化合物と、マレイン酸や1,2-シクロヘキセンジカルボン酸等のような複数のカルボキシル基を有するジエノフィル化合物とをディールスアルダー反応させることによって、アビエチン酸骨格に複数のカルボキシル基を導入することができる。また、複数分子のアビエチン酸又はその異性体を重合させることにより重合ロジンが合成されるが、こうした化合物も複数のカルボキシル基を有するものである。上記アビエチン酸及びその異性体の誘導体とはこうした化合物を指すものである。
【0019】
ロジン類は樹脂酸を主成分とするものであるので、上記樹脂酸に代えてロジン類そのものを用いてもよい。ロジン類は、製造方法やその後の化学処理等の違いから複数の種類が知られているが、いずれのロジン類を用いてもよい。このようなロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン等が挙げられる。また、ロジン類に対して、上記のようなディールスアルダー反応により変性を行ってもよい。なお、保存安定性の観点からは、共役二重結合を化学的に有さないか少ないロジン類を用いることが好ましい。このようなロジン類としては不均化ロジン、水添ロジンを挙げることができる。もっとも、共役二重結合を有するロジン類も合成された樹脂の保存安定性の面でやや劣るものの、問題無く使用することが可能である。
【0020】
脂肪酸は、植物油や動物油のような天然油脂を加水分解することにより得られるものであり、1個のカルボキシル基を有するので、後述する多価アルコールとエステルを形成することができる。ロジン変性アルキッド樹脂にこうした脂肪酸が導入されることにより、得られるロジン変性アルキッド樹脂におけるバイオマス由来の成分比率を高めることができる。このような観点から、油長が30~85程度になるような量の脂肪酸を用いることが好ましく、50~85程度になるような量の脂肪酸を用いることがより好ましい。
既に述べたように、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法では、調製されるロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法によるsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2になるように脂肪酸を選択することを特徴の一つとする。この数値はこの種の樹脂としては比較的高いものであり、調製されるロジン変性アルキッド樹脂がこうした高いsp値を備えることにより、同じく高いsp値を備えるモノマーやオリゴマー類と良好な相溶性を備えることができる。
【0021】
脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸等を挙げることができる。ところで、脂肪酸はカルボキシル基を有し、比較的sp値の高い化合物ということができる。それら脂肪酸の中でも炭素数が少ないほどsp値が高くなる傾向があり、そのような観点から本発明では、炭素数が8~16である脂肪酸を好ましく用いることができ、炭素数が8~14である脂肪酸をより好ましく用いることができる。このような高いsp値を持つ脂肪酸を1種又は2種以上を組み合わせて用いることにより、調製されるロジン変性アルキッド樹脂のsp値も高くすることができる。このような観点からは、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸が好ましく例示される。これらの脂肪酸は、いずれもFeders sp値が9.18以上である。もっとも、これよりも低いsp値を有する脂肪酸が使えないということではなく、低いsp値の脂肪酸であっても、高いsp値の脂肪酸と組み合わせれば問題無く用いることができる。
【0022】
いずれにしても、調製されたロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2になるようにこれらを適宜組み合わせればよい。また、脂肪酸は、不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であってもよいが、変質による着色等を避ける観点からは、分子内に含まれる不飽和結合の数が1以下のものが好ましく用いられる。なお、オレイン酸、リノール酸、エレオステアリンサン酸等のような不飽和結合の数が2以上の脂肪酸については、酸化処理により二重結合部分がエポキシ化されて消去されたものを使用することが望ましい。このような変性脂肪酸も本発明における脂肪酸として用いることができる。これら脂肪酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記のように炭素数の少ない脂肪酸であるほど好ましく、そのような観点からは、ヤシ油、トール油又はパーム核油を用いることが好ましい。これらの油は、炭素数12~14の脂肪酸を豊富に含むので、ロジン変性アルキッド樹脂のsp値を高くするための調節用として好ましく用いられる。もっとも、最終的にロジン変性アルキッド樹脂のsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2になればよいので、そのような範囲を実現することのできる範囲で他の油脂を由来とする脂肪酸を用いてもよい。
また、ヤシ油、トール油又はパーム核油等の植物油を使用することにより環境に与える不可を削減できる。
【0024】
多塩基酸は、複数のカルボキシル基を有する化合物であり、後述する多価アルコールと縮重合して高分子量化させるための成分である。複数のカルボキシル基を有する化合物としては、アルキッド樹脂の合成に用いられてきたものを制限なく用いることができ、2又は3以上のカルボキシル基を備え、又はこれらの酸無水物であってもよい。
このような化合物としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキセンジカルボン酸、1,4-シクロヘキセンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5-ソディオスルホイソフタル酸、フマル酸、安息香酸、tert-ブチル安息香酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、セバシン酸、アゼライン酸、テトラブロム無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
多価アルコールは、既に説明した、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分とエステルを形成させ、これらの成分を高分子量化するものである。このような多価アルコールとしては、これまでアルキッド樹脂の合成に用いられてきたものを制限なく用いることができ、2又は3以上の水酸基を備える化合物が挙げられる。
これらの化合物としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9-ノナンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、アダマンタンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ロジン変性アルキッド樹脂の分子量を調節するために、上記の脂肪酸以外の一塩基酸を酸成分として加えてもよい。このような一塩基酸としては、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。
次に、これらを用いてロジン変性アルキッド樹脂を調製する方法について説明する。ロジン変性アルキッド樹脂は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとを反応させることで調製される。具体的には、これらの原料を仕込んだ反応釜に、窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態でキシレン等の溶剤を少量加えて加熱を行い、縮合水と共沸させて水を除きながら縮重合させる方法を挙げることができる。さらに反応温度としては170~250℃程度を挙げることができ、反応時間としては5~25時間程度を挙げることができるが特に限定されない。反応終了の判断は、反応時間の経過に応じて反応混合物の酸価をモニターすることで行うことができる。すなわち、縮重合に伴う反応混合物の酸価の低下が止まった時点で反応終了とすればよい。縮重合反応を、縮重合によって生じた水を系外に留出させるか反応触媒を用いることで、より短時間で行うことができる。反応触媒としては、テトラブチルジルコネート、モノブチルチンオキサイド(モノブチルすずオキサイド)、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート等を挙げることができる。
【0027】
既に述べたように、ロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、1000~70000程度であることが好ましい。ロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、酸成分と多価アルコールとのバランスによって決定される。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2となるように原料となる脂肪酸の種類や量を選択することが必要である。既に述べたように、ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値は、9.3~10.0(cal/cm1/2がより好ましく、9.5~10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
【0028】
これも既に述べたように、縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、1~100mg/KOHである。なお、反応終了時点でのロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、酸成分と多価アルコールとの量のバランスによって決定される。
なお、上記の製造方法は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとを反応させるものだが、これ以外の方法でロジン変性アルキッド樹脂が調製されてもよい。このような方法としては、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換反応させて反応中間体を調製し、次いで、この反応中間体を下記(1)~(3)のいずれかの存在下で縮重合させる方法や、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと下記(1)~(3)のいずれかとをエステル交換反応させて反応中間体を調製し、次いで、この反応中間体を多価アルコールの存在下で縮重合させる方法を挙げることができる。
(1)樹脂酸及び多塩基酸
(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
インキ組成物全体に対するロジン変性アルキッド樹脂の含有量としては、5.0~30.0質量%程度が挙げられる。
【0029】
(多官能モノマー、多官能オリゴマー)
本発明の活性エネルギー線フレキソ印刷インキ組成物には、耐擦性を向上させるためにエチレン性不飽和結合を2つ以上備えた化合物をインキ組成物中に20.0~45.0質量%含有させることが好ましい。
但し、植物油変性多官能(ポリエステル)オリゴマーは別の個所にて説明し、上記の含有割合を求める際には、含有量を考慮しない。)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、公知のエチレン性不飽和結合を2つ以上備えたモノマーやオリゴマー等の化合物、植物油変性多官能(ポリエステル)オリゴマー、エポキシ化植物油(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。
なかでもエチレン性不飽和結合を2つ以上備えた化合物としては、公知のものを制限なく使用することができる。
【0030】
(2官能モノマー)
2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(100)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(700)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールビス(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノベンゾエート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキル、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、例えば、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートであってもよい前記エチレン性不飽和結合を2つ備えた化合物のアルコキシ化物(例えば、エトキシ化、プロポキシ化、ブトキシ化物等)等が挙げられる。
なかでも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを採用することが必要である。インキ組成物中のジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量としては20.0~55.0質量%であることが必要である。なおペンタエリスリトールペンタアクリレートよりも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することが、密着性、耐スクラッチ性及び耐摩耗性向上の点において好ましい。
【0031】
また、例えば、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールPO(プロピレンオキサイド)変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であってもよい前記エチレン性不飽和結合を2つ備えた化合物のアルキレンオキサイド変性物(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)の1種以上を用いることもできる。また、例えば、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であってもよい前記エチレン性不飽和結合を2つ備えた化合物のカプロラクトン変性物の1種以上を用いることができる。
【0032】
(3官能モノマー)
3官能モノマーとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、1,3,5-トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)ホスフェート等が挙げられる。
また、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε-カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の前記3官能モノマーのエトキシ化、プロポキシ化、ブトキシ化等のアルコキシ化物、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド変性物、カプロラクトン変性物等が挙げられる。
【0033】
(4官能以上のモノマー)
4官能以上のモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和結合を4つ備えた化合物、エチレン性不飽和結合を5つ備えた化合物、エチレン性不飽和結合を6つ備えた化合物及びエチレン性不飽和結合を7つ以上備えた化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を4つ以上備えた化合物としては、例えば、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の前記4官能以上のモノマーのエトキシ化、プロポキシ化、ブトキシ化等のアルコキシ化物、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド変性物、カプロラクトン変性物等が挙げられる。
【0034】
(多官能オリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が含有してもよい多官能オリゴマーとしては、植物油変性多官能(ポリエステル)オリゴマーが好ましく、(メタ)アクリレート基を分子内に2つ以上有し、植物油により変性された、2官能、4官能又は6官能の多官能のポリエステルオリゴマーであれば制限なく用いることができる。これにより、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物のバイオマス度を高くでき好ましい。
なお変性に使用される植物油は、植物油に含有される各種脂肪酸エステル、及び、その各種脂肪酸エステルを加水分解して得た脂肪酸等を包含する概念である。植物油としては、大豆油、ナタネ油、ひまわり油、トール油、トウモロコシ油等を使用できる。中でも、非可食性であるトール油を変性に使用する植物油とすることが好ましい。
多官能(ポリエステル)オリゴマーのなかでも、6官能の植物由来変性(ポリエステル)オリゴマーが好ましく、例えば、EBECRYL 450や、トール油脂肪酸変性6官能ポリエステルアクリレート(例えば、AgiSyn 716等)からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0035】
多官能オリゴマーは、本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物中に、クリアーではない場合及びクリアーである場合に共通して、20.0~70.0質量%、好ましくは15.0~60.0質量%、より好ましくは20.0~40.0質量%含有される。
特に、クリアーではない活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物にする際には、好ましくは20.0~60.0質量%であり、更に好ましくは20.0~45.0質量%であり、より好ましくは27.0~40.0質量%である。
またクリアーである活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物にする際には、好ましくは15.0~70.0質量%であり、更に好ましくは20.0~65.0質量%であり、更に好ましくは25.0~50.0質量%である。
これにより、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、優れた硬化性、密着性、耐摩擦性、及び耐スクラッチ性に優れ、かつバイオマス度が高いインキを得ることができる。
【0036】
(エポキシ化植物油(メタ)アクリレート化合物)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物はエポキシ化植物油(メタ)アクリレート化合物を含有させることもできる。エポキシ化植物油(メタ)アクリレートは、植物油を由来とするものであることから、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物におけるバイオマス成分の量を増加させることが可能である。 エポキシ化植物油(メタ)アクリレート化合物としては、エポキシ化植物油を(メタ)アクリル変性することにより得られるものであって、例えば、不飽和植物油の二重結合を過酢酸、過安息香酸等の酸化剤によりエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を開環付加重合させた化合物等が挙げられる。
【0037】
(2官能以上のオリゴマー又はポリマー(但し、植物油変性多官能(ポリエステル)オリゴマーは除く))
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は公知のエチレン性不飽和結合を2つ以上備えたオリゴマー又はポリマーを含有することもできる。エチレン性不飽和結合を2つ以上備えたオリゴマー又はポリマーとしては、(メタ)アクリロイル基やビニル基等からなる群より選ばれる1種以上のエチレン性不飽和結合を2つ以上有するものが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を2つ以上備えたオリゴマー又はポリマーとしては、例えば、ポリジアリルフタレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでもロジン変性エポキシ(メタ)アクリレートを採用することが好ましい。使用するロジン変性エポキシ(メタ)アクリレートは、インキ組成物中の0.3~5.0質量%となるように含有でき、好ましくは1.0~3.0質量%、さらに好ましくは1.2~2.5質量%である。含有量がこの範囲であればインキ組成物として、硬化性、密着性、耐スクラッチ性、耐摩耗性及び耐溶剤性を良好なものとすることができる。
【0038】
(アミノ基含有多官能モノマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキの硬化速度を向上させるために、アミノ基含有多官能モノマーをインキ組成物中に0.5~10質量%含有させることが好ましい。
アミノ基含有多官能モノマーとしては、アミノ基とエチレン性不飽和結合を2つ以上備えた化合物が例示できる。具体的には、サートマー社製のCN371、CN550、CN551、DSM-Agi社製のAgiSyn001、AgiSyn002、AgiSyn003、AgiSyn005、AgiSyn006、AgiSyn007、AgiSyn008、ダイセルオルネクス社製のEBECRYL80、EBECRYL7100(いずれも商品名)等が例示できる。本発明において、アミノ基含有多官能モノマーのインキ組成物中の含有量は、インキ光重合性成分の総質量に対して0.1~25質量%、好ましくは2~8質量%である。光重合性成分の総質量に対して0.1質量%未満であると、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を用いて形成した印刷物の硬化性が低下する。一方、25質量%を超えると、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度が高く、吐出に支障をきたす場合がある。
【0039】
(ワックス)
本発明にて使用してもよいワックスとしては、スクラッチ性向上のために平均粒子径8.0μm以下のものを選択できる。
具体的には、蜜蝋、ラノリンワックス、鯨蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の動植物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物、石油系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等の平均粒子径が8.0μm以下、好ましくは、6.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、更に好ましくは2.0μm以下のものを使用できる。平均粒子径が2.0μm以下であるときには、耐スクラッチ性がより良好となる。
また、使用するワックスの平均粒子径を、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の粘度及びフレキソ印刷機のアニロックスの線数に応じて適宜選択してもよい。
【0040】
ワックスの、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物中の含有量は、1.0~5.0質量%の範囲が好ましく、1.5~4.5質量%の範囲がより好ましい。
ワックスの含有量が0.5質量%より少ないと耐摩擦性が低下する傾向にあり、一方、5.0質量%より多いとターンロールを汚す等して作業性が低下する傾向にある。
【0041】
(光重合開始剤)
活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物は、公知の光重合開始剤を含んでいてもよい。
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカル等の活性種を発生させ、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、レドックス開始剤、熱重合開始剤、光重合開始剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。なお、本件の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を電子線により硬化させる際には、光重合開始剤を含有させる必要はない。
【0042】
レドックス開始剤は、過酸化物と還元剤を組み合わせることで温和な条件下の酸化還元反応によって重合開始機能を発揮するものである。
熱重合開始剤又は光重合開始剤は、それぞれ、活性エネルギー線(赤外線、紫外線、LED、電子線等)の照射を受けてラジカルを発生させて重合開始機能を発揮するものである。
重合開始剤は、用途や目的等に応じて適宜選択され、通常は、光重合開始剤を用いることが好ましい。毒性について検討が必要な場合には、潜在的な毒性が高い熱重合開始剤及び光重合開始剤よりも、比較的毒性が低いレドックス開始剤を用いることもできる。
これらの中でも、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性を良好にすることができる点から、450~300nmの波長にわたって光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応(ラジカル重合)の開始剤機能を発現することができる光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0043】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、トリアジン系化合物、芳香族ケトン系化合物、芳香族オニウム塩系化合物、有機過酸化物、チオキサントン系化合物、チオフェニル系化合物、アントラセン系化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物、ケトオキシムエステル系化合物、ボレート系化合物、アジニウム系化合物、メタロセン系化合物、活性エステル系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物及びアルキルアミン系化合物、ヨードニウム塩系化合物及びスルフォニウム塩系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドやビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0044】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン及び2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0045】
さらに、例えば、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
このような光重合開始剤として、例えば、BASF社のイルガキュア907、369、184、379、819等、Lamberti社のTPO、DETX等、みどり化学社のTAZ-204等を用いることができる。
【0046】
インキ組成物中における光重合開始剤の含有量としては、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の成分等に応じて適宜定めることができ、例えば活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物中に0.1~25.0質量%、好ましくは0.1~15.0質量%、より好ましくは1.0~15.0質量とすることができる。
インキ組成物中における光重合開始剤の含有量が上記の範囲であることにより、インキ組成物の十分な硬化性と、良好な内部硬化性やコストとを両立できるので好ましい。
【0047】
(表面調整剤)
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、レベリング性、スリッピング性を向上させるための公知の表面調整剤を含んでいてもよい。
表面調整剤としては、例えば、シリコン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
表面調整剤の具体例としては、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エボニックジャパン社製のTEGOシリーズ、共栄社化学社製のポリフローシリーズ等からなる群より選ばれる1種以上を用いることできる。
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が表面調整剤を含む場合には、その含有量を0.01~1.00質量%とすることができる。
【0048】
(その他の重合性化合物)
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物には、性能が低下しない範囲で、公知のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物を用いることができる。
このような化合物としては、例えば、次のような化合物等が挙げられる。
【0049】
-不飽和カルボン酸系化合物-
不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、それらの塩及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0050】
-アルキル(メタ)アクリレート系化合物-
アルキル(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
-ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0052】
-ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物-
ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO(エチレンオキサイド)付加(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
-エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(EO繰返し単位数400、700等)、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート(エトキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート(エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート等)、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、等のアルコキシ及び又はフェノキシ系(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0054】
-カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキ
シエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲ
ンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタ
レート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート
等が挙げられる。
【0055】
-ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0056】
-その他の(メタ)アクリレート系化合物-
その他の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパン、アクリロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトールアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イミドアクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、マレイミド等が挙げられる。
【0057】
-スチレン系化合物-
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン、p-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0058】
-アクリルアミド誘導体-
アクリルアミド誘導体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン(ACMO)、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0059】
-N-ビニル系化合物-
N-ビニル系化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0060】
-アリレート系化合物-
アリレート系化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、イソシアヌル酸トリアリレート等が挙げられる。
【0061】
-その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物-
エチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物として、前記化合物以外の「その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物」を用いることができる。
そのような化合物としては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、三員環化合物類(例えば、ビニルシクロプロパン類、1-フェニル-2-ビニルシクロプロパン類、2-フェニル-3-ビニルオキシラン類、2,3-ジビニルオキシラン類等)、環状ケテンアセタール類(例えば、2-メチレン-1,3-ジオキセパン、ジオキソラン類、2-メチレン-4-フェニル-1,3-ジオキセパン、4,7-ジメチル-2-メチレン-1,3-ジオキセパン、5,6-ベンゾ-2-メチレン-1,3-ジオキセパン等)等が挙げられる。
【0062】
(その他の樹脂)
その他の樹脂としては、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物に付与する特性、特に、適度な粘弾性特性やインキ組成物構成時の印刷特性等に応じて、公知のものを特に制限なく用いることができる。
その他の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、ブロックポリマー、グラフトポリマー(コアシェルポリマー)、アクリル変性フェノール系樹脂、ロジン変性フェノール系樹脂、ロジン変性マレイン酸系樹脂、ロジン変性アルキド系樹脂、ロジン変性石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂、脂肪酸変性ロジン系樹脂、石油系樹脂変性フェノール系樹脂、アルキド系樹脂、植物油変性アルキド系樹脂、石油系樹脂、炭化水素系樹脂(ポリブテン及びポリブタジエン等)、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂ワックス等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0063】
特に好ましくは、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル-スチレン共重合体系樹脂等)、スチレン系樹脂(スチレン-アクリル酸エステル共重合体系樹脂等)、ロジン変性フェノール系樹脂、ロジン変性マレイン酸系樹脂、ロジン変性アルキド系樹脂、ロジンエステル系樹脂、脂肪酸変性ロジン系樹脂、アルキド系樹脂、植物油変性アルキド系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
このような樹脂としては、重量平均分子量は500~300,000のものが好ましい。また、活性エネルギー線を照射した際の速乾性の観点等から、酸価が1~100mgKOH/gであることが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物においては、樹脂として脂肪酸変性ロジン系樹脂又はロジン変性アルキッド樹脂を用いることで、バイオマス度等の特性を向上させることができる。
【0064】
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が上記の樹脂成分を含む場合には、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物中の樹脂成分の含有量を0~30.0質量%、好ましくは0~20.0質量%とすることができる。
樹脂成分を配合した場合、その含有量を前記範囲とすることにより、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物に密着性、スクラッチ性、印刷適性等を付与することができる。
樹脂成分の含有量が30.0質量%を超える場合、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の耐溶剤性に悪影響を与える傾向がある。
その結果、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の好ましい態様としては、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1~50mgKOH/gであるロジン変性アルキッド樹脂をインキ組成物に5.0~30.0質量%、及び多官能モノマー及び/又はオリゴマーをインキ組成物中に20.0~45.0質量%含有するものである。
【0065】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。
このような「その他の成分」としては、前記組成物に所望の機能や特性等を付与し得る公知のものを制限なく使用することができ、例えば、重合禁止剤、溶剤、アンチブロッキング剤、光安定化剤、消泡剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、増粘剤(チキソトロピー剤)、抗菌・防黴剤等が挙げられる。
【0066】
(重合禁止剤)
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、保存時の重合を防止する目的で、公知の重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、カテコール、tert-ブチルカテコール、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、ハイドロキノン、アルキル置換ハイドロキノン、フェノチアジン、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が重合禁止剤を含む場合には、その含有量を0.01~1.0質量%とすることができる。
【0067】
(溶剤)
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、低粘度化及び基材への濡れ広がり性を向上させる等のために、公知の溶剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、例えば、水、グリコールモノアセテート類、グリコールジアセテート類、グリコールエーテル類、乳酸エステル類等が挙げられる。これら中でも、水、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコールが好ましい。
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が溶剤を含む場合には、その含有量を0~50.0質量%とすることができる。
【0068】
(表面調整剤)
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は、レベリング性、スリッピング性を向上させるための公知の表面調整剤を含んでいてもよい。
表面調整剤としては、例えば、シリコン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
表面調整剤の具体例としては、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エボニックジャパン社製のTEGOシリーズ、共栄社化学社製のポリフローシリーズ等からなる群より選ばれる1種以上を用いることできる。
活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物が表面調整剤を含む場合には、その含有量を0.01~1.00質量%とすることができる。
【0069】
[製造方法]
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、前記の各成分を全て添加してビーズミルや3本ロールミル等で混合して調製することができる。
また、顔料、顔料分散剤及び各種の活性エネルギー線硬化型化合物を混合することによってあらかじめコンクベースを得た後、所望の組成となるよう活性エネルギー線硬化型化合物、ロジン変性アルキッド樹脂、重合開始剤、必要に応じて界面活性剤等の添加剤をコンクベースに添加して調製することもできる。
【0070】
また、前記の各成分を混合した後にビーズミルや3本ロールミル等で練肉して顔料(すなわち着色成分及び体質顔料)を分散させた後、必要に応じて添加剤(重合開始剤、重合禁止剤、ワックス等のその他の添加剤等)を加え、さらに他の成分の添加により粘度調整することもできる。
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の粘度としては、用途等に応じて適宜調整され限定されるものではないが、例えば300~2000mPa・s、好ましくは500~1500mPa・sである。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を印刷する対象の基材としては、プラスチック、紙、カルトン等であり、これらの複数の基材から構成される積層体等の複合基材であってもよい。
【0072】
このうち、発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を印刷する対象のプラスチック基材としては、例えば、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、及びポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を使用するには、例えば、活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を基材上に公知のフレキソ印刷機を利用してアニロックスロールを用いて印刷し、その後に紫外線等の活性エネルギー線を照射する。これにより基材(印刷媒体)上の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物は速やかに硬化する。
【実施例
【0074】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。酸価の単位はmgKOH/gである。
【0075】
(活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物)
・顔料
カーボンブラック
C.I.ピグメントブルー15:4
【0076】
・ロジン変性アルキッド樹脂
<ロジン変性アルキッド樹脂1>
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することでロジン変性アルキッド樹脂1を得た。ロジン変性アルキッド樹脂1の樹脂の酸価は13mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。
【0077】
<ロジン変性アルキッド樹脂2>
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、デヒドロアビエチン酸160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することでロジン変性アルキッド樹脂2を得た。ロジン変性アルキッド樹脂2の酸価は13mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.70であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。
【0078】
<ロジン変性アルキッド樹脂3>
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、大豆油800部を配合し、150℃に昇温後、ロジン160部、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することでロジン変性アルキッド樹脂3を得た。ロジン変性アルキッド樹脂3の酸価は10mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.45であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
【0079】
<ロジン変性アルキッド樹脂(比較1)>
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで比較ロジン変性アルキッド樹脂を得た。比較ロジン変性アルキッド樹脂の酸価は21mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は8.84であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.5万だった。
【0080】
・分散剤
PB822(アジスパー 味の素ファインテクノ社製)
・多官能モノマー
DPGDA (ジプロピレングリコールジアクリレート)
・他の光重合性化合物
ロジン変性エポキシアクリレート 商品名:UV22C(ハリマ化成社製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
商品系:SR399(サートマー社製)
植物油変性多官能(ポリエステル)オリゴマー
商品名:AgiSyn 716(DSM-Agi社製、バイオマス度30%)
・ワックス
平均粒子径1~2μm 商品名:SST-1MG(SHAMROCK社製)
平均粒子径2~4μm 商品名:Fluo HT(Micro Powders社製)
平均粒子径4~6μm 商品名:Ceridust 9202F(Clariant社製)
・開始剤
TPO(アシルフォスフィンオキサイド)
Ir184 (1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)
Ir369 (2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノ
ン)
Ir907 (2-メチル-1-[4-メチルチオフェニル]-2-モルフォリノプロ
パン-1-オン)
BMS (4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド)
EMK (エチルミヒラーズケトン)
・重合禁止剤
商品名:IN510(ニトロソアミン、大同化成社製)
・表面調整剤
商品名:PDMS 1000J(Momentive社製)
・消泡剤
商品名:AIREX 920(エボニック社製)
【0081】
(活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物の調製)
顔料と分散剤と光重合性成分とロジン変性アルキッド樹脂を配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させて、ベース組成物を得た。得られたベース組成物に、表1に記載の配合組成(質量%)となるように他の各成分を配合し、撹拌混合して、実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物を得た。
【0082】
(評価方法)
・インキ粘度
TA instruments製レオメーターDiscovery HR-2 share rate 3000 1/s(約251rpm)で測定
【0083】
<紫外線硬化>
・硬化性
基材(合成紙)に800lpiのハンドプルーファーを用いて展色した。次いで1回(1パス)当たりの照射強度が120W、80mJとなるようにUV光(光源はメタルハライドランプ)を照射した。そして、硬化するまでの照射回数を評価した。照射後、綿棒で硬化膜を擦った際にインキが付着しない状態を硬化したと判断した。
【0084】
・密着性
基材(PET及びユポ80)に800lpiのハンドプルーファーを用いて展色した。次いで1回(1パス)当たりの照射強度が120W、80mJとなるようにUV光(光源はメタルハライドランプ)を照射した。得られた塗膜にニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付けて、貼り付けた上から指で3回擦ったのちに剥離させた。剥離後の硬化膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
〇:硬化膜の剥離が無いもの
△:硬化膜の剥離があったが剥離面積が20%未満
×:硬化膜の剥離面積が20%以上
【0085】
・耐スクラッチ性
基材(合成紙)に800lpiのハンドプルーファーを用いて展色した。次いで1回(1パス)当たりの照射強度が120W、80mJとなるようにUV光(光源はメタルハライドランプ)を照射した。得られた塗膜を爪の先で擦り、硬化膜の脱落を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
〇:脱落が無いもの
△:脱落はあるが基材が見えないもの
×:脱落があり基材が見えるもの
【0086】
・耐摩擦性
基材(合成紙)に800lpiのハンドプルーファーを用いて展色した。次いで1回(1パス)当たりの照射強度が120W、80mJとなるようにUV光(光源はメタルハライドランプ)を照射した。得られた塗膜を、学振型耐摩擦堅牢性試験機により当て布にカナキン3号で200g×1000回擦ったときの、基材シートからの硬化膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
〇 :硬化膜の表面に傷がなかった
○△:硬化膜の表面にほんの僅かな傷があった
△ :硬化膜の表面に傷があった
× :硬化膜がとられ、シートが見えた
【0087】
<電子線硬化>
基材(合成紙)に800lpiのハンドプルーファーを用いて展色、EB照射装置にて、1回(1パス)当たり加速電圧90kV,照射線量30kGy下で硬化させ、硬化膜を形成した。硬化膜について、上記UV光で硬化させた場合と同様に評価した。
【0088】
【表1】
【0089】
本発明に沿った例である実施例1~13によれば、UV光及び電子線のいずれに対しても硬化性に優れ、かつ硬化後の塗膜の密着性、耐スクラッチ性、耐摩擦性及び耐溶剤性に優れる活性エネルギー線硬化型フレキソ印刷インキ組成物とすることができた。
これに対して、溶解性パラメータsp値が低いロジン変性アルキッド樹脂を使用した比較例1によれば、経時安定性に劣り、密着性、耐スクラッチ性及び耐摩擦性を評価するに至らなかった。ロジン変性アルキッド樹脂を含有しない比較例2によれば、経時安定性は良好であるが、密着性、耐スクラッチ性及び耐摩擦性が劣っていた。