(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】冷却服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20221209BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
(21)【出願番号】P 2019095067
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2019-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019047050
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知弘
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】一ノ瀬 覚
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6477962(JP,B1)
【文献】特開2017-14644(JP,A)
【文献】米国特許第6971249(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0047622(US,A1)
【文献】特公昭43-27163(JP,B1)
【文献】米国特許第5572991(US,A)
【文献】国際公開第2017/006481(WO,A1)
【文献】特開平10-280211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通気性でありかつ少なくとも1つの第1貫通孔が形成された中衣であって、外衣の下に着用される中衣と、
内部に空気流路を有する筒状を呈する送風冶具であって、その先端部が前記第1貫通孔から前記中衣の外側に突き出るようにその基端部が前記中衣に取り付けられ、前記基端部から外側に延びた部分に前記外衣を位置させる送風冶具と、を備え、
前記送風冶具は、前記基端部から外側に延びた部分の外径が長手方向に同じであると共に前記基端部から外側に延びた部分に対して前記外衣が非固定であり、
前記送風冶具の先端部に、前記中衣の内側に空気を送り込むための送風装置が直接的又は間接的に着脱可能である、冷却服。
【請求項2】
前記中衣の上に着用される前記外衣を更に備え、
前記外衣には少なくとも1つの第2貫通孔が形成されており、
前記送風冶具は、その先端部が前記外衣の外側に突き出るように前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の順に挿し通される、
請求項1に記載の冷却服。
【請求項3】
前記第1貫通孔の内周縁及び/又は前記第2貫通孔の内周縁には、前記送風冶具の外周面に当接するパッキンが装着されている、
請求項2に記載の冷却服。
【請求項4】
前記送風冶具の基端部には、前記第1貫通孔よりも外径が大きいフランジが設けられており、前記フランジが前記中衣の第1貫通孔の周囲部に内側から突き当たることで、前記送風冶具の基端部が前記中衣に取り付けられる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却服。
【請求項5】
非通気性でありかつ少なくとも1つの第1貫通孔が形成された中衣であって、外衣の下に着用される中衣と、
内部に空気流路を有する筒状を呈する送風冶具であって、その先端部が前記中衣の外側に突き出るようにその基端部が前記中衣に取り付けられ、前記基端部から外側に延びた部分に前記外衣を位置させる送風冶具と、
を備え、
前記基端部は、内周面に形成された雌ネジを含み、
前記送風冶具は、外周面に
雄ネジが形成された環状の固定具
を有し、
前記第1貫通孔
の周縁部を間に挟んで
前記基端部の雌ネジと前記固定具の
雄ネジとが螺合することで、前記基端部が前記中衣に取り付けられ
、
前記送風冶具は、前記基端部から外側に延びた部分の外径が長手方向に同じであると共に前記基端部から外側に延びた部分に対して前記外衣が非固定であり、
前記先端部に、前記中衣の内側に空気を送り込むための送風装置が直接的又は間接的に着脱可能である、
冷却服。
【請求項6】
前記中衣の下に着用される胴着をさらに備え、
前記胴着は、身体の少なくとも背中に当たる部位に通気性及び弾力性を有するクッション材を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却服。
【請求項7】
前記胴着は、身体のさらに肩に当たる部位に前記クッション材を備える、
請求項6に記載の冷却服。
【請求項8】
前記胴着は、身体のさらに横腹に当たる部位に前記クッション材を備える、
請求項6又は7に記載の冷却服。
【請求項9】
前記胴着の前記クッション材を備える部位は、表地及び裏地を有し、前記表地と前記裏地との間に前記クッション材が介在されている、
請求項6~8のいずれか一項に記載の冷却服。
【請求項10】
前記送風装置は、
一端に空気入口を有するとともに前記一端と対向する他端に空気出口を有する筒状容器と、
前記空気入口から前記空気出口に向けて前記筒状容器内に空気を流通させる送風手段と
前記筒状容器の少なくとも一部に収容される吸湿材と、
前記筒状容器の少なくとも一部に収容される蓄熱材と、を備え、
前記筒状容器は、
両端に開口部を有しかつ前記吸湿材及び前記蓄熱材を収容する収容器と、
前記空気出口を有しかつ前記収容器が入れられるケーシングと、
前記空気入口を有しかつ前記ケーシングに着脱可能な蓋と、を備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の冷却服。
【請求項11】
前記筒状容器は、前記収容器と前記蓋との間に介在するスペーサをさらに備え、
前記送風手段は、前記スペーサ内に位置するよう前記蓋に取り付けられている、
請求項10に記載の冷却服。
【請求項12】
前記収容器は、前記空気出口側の開口部が網材で塞がれている、
請求項10又は11に記載の冷却服。
【請求項13】
前記収容器は、前記空気入口側の開口部が複数の孔が形成された板材により塞がれている、
請求項10~12のいずれか一項に記載の冷却服。
【請求項14】
前記吸湿材及び前記蓄熱材は、混合した状態で前記筒状容器に収容されている、
請求項10~13のいずれか一項に記載の冷却服。
【請求項15】
前記吸湿材及び前記蓄熱材は、互いが仕切られた状態で前記筒状容器に収容されている
請求項10~13のいずれか一項に記載の冷却服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の内部に送風装置から空気を送り込むことで使用者の身体を冷却する際に着用する冷却服に関し、例えば作業服や防護服等の外衣と、外衣の下に着用する中衣との組み合わせからなる冷却服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファン等によって取り込んだ空気を例えば作業服や防護服等の外衣内に送り込むことにより身体を冷却する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1では、ズボンの腰部に装着された送風装置から外衣内に送り込まれた空気が、外衣の内部で使用者の身体に沿って上昇するように流れることで使用者の身体に触れ、その際に身体の汗が気化することにより発生する気化熱によって身体を冷却することで、身体の体温上昇を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、外衣が通気性の高い素材で作られたものであると、外衣内の気密性が低く、外衣内に送り込まれた空気が外衣の外側に漏れてしまう。そのため、外衣内に送り込まれた空気が、外衣の内部で使用者の身体に沿って安定して流れないことから、送風装置からの空気が外衣内を広範囲に行き渡らず、その結果、身体を広範囲に冷却することができないとの課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、衣服の内部に送風装置から空気を送り込むことで使用者の身体を冷却する際に、身体を広範囲に冷却することができる冷却服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の構成からなる。
【0007】
1.非通気性でありかつ少なくとも1つの第1貫通孔が形成された中衣であって、外衣の下に着用される中衣と、
内部に空気流路を有する筒状を呈する送風冶具であって、その先端部が前記第1貫通孔から前記中衣の外側に突き出るようにその基端部が前記中衣に取り付けられる送風冶具と、を備え、
前記送風冶具の先端部に、前記中衣の内側に空気を送り込むための送風装置が直接的又は間接的に着脱可能である、冷却服。
2.前記外衣には少なくとも1つの第2貫通孔が形成されており、
前記送風冶具は、その先端部が前記外衣の外側に突き出るように前記前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の順に挿し通される、上記項1に記載の冷却服。
3.前記第1貫通孔の内周縁及び/又は前記第2貫通孔の内周縁には、前記送風冶具の外周面に当接するパッキンが装着されている、上記項2に記載の冷却服。
4.前記送風冶具の基端部には、前記第1貫通孔よりも外径が大きいフランジが設けられており、前記フランジが前記中衣の第1貫通孔の周囲部に内側から突き当たることで、前記送風冶具の基端部が前記中衣に取り付けられる、上記項1~3のいずれか一項に記載の冷却服。
5.内周面に雌ネジが形成された環状の固定具をさらに備え、
前記送風冶具の基端部は、外周面に雄ネジが形成されており、前記第1貫通孔を間に挟んで前記送風冶具の基端部の雄ネジと前記固定具の雌ネジとが螺合することで、前記送風冶具の基端部が前記中衣に取り付けられる、上記項1~3のいずれか一項に記載の冷却服。
6.前記中衣の下に着用される胴着をさらに備え、
前記胴着は、身体の少なくとも背中に当たる部位に通気性及び弾力性を有するクッション材を備える、上記項1~5のいずれか一項に記載の冷却服。
7.前記胴着は、身体のさらに肩に当たる部位に前記クッション材を備える、上記項6に記載の冷却服。
8.前記胴着は、身体のさらに横腹に当たる部位に前記クッション材を備える、上記項6又は7に記載の冷却服。
9.前記胴着の前記クッション材を備える部位は、表地及び裏地を有し、前記表地と前記裏地との間に前記クッション材が介在されている、上記項6~8のいずれか一項に記載の冷却服。
10.前記送風装置は、一端に空気入口を有するとともに前記一端と対向する他端に空気出口を有する筒状容器と、前記空気入口から前記空気出口に向けて前記筒状容器内に空気を流通させる送風手段と、前記筒状容器の少なくとも一部に収容される吸湿材と、前記筒状容器の少なくとも一部に収容される蓄熱材と、を備え、前記筒状容器は、両端に開口部を有しかつ前記吸湿材及び前記蓄熱材を収容する収容器と、前記空気出口を有しかつ前記収容器が入れられるケーシングと、前記空気入口を有しかつ前記ケーシングに着脱可能な蓋と、を備える、上記項1~9のいずれか一項に記載の冷却服。
11.前記筒状容器は、前記収容器と前記蓋との間に介在するスペーサをさらに備え、前記送風手段は、前記スペーサ内に位置するよう前記蓋に取り付けられている、上記項10に記載の冷却服。
12.前記収容器は、前記空気出口側の開口部が網材で塞がれている、上記項10又は11に記載の冷却服。
13.前記収容器は、前記空気入口側の開口部が複数の孔が形成された板材により塞がれている、上記項10~12のいずれか一項に記載の冷却服。
14.前記吸湿材及び前記蓄熱材は、混合した状態で前記筒状容器に収容されている、上記項10~13のいずれか一項に記載の冷却服。
15.前記吸湿材及び前記蓄熱材は、互いが仕切られた状態で前記筒状容器に収容されている、上記項10~13のいずれか一項に記載の冷却服。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者により外衣の下に着用される中衣が非通気性であり、中衣の内側の気密性が高いため、送風装置により中衣の内側に送り込まれた空気が中衣の外側に漏れることを防止することができる。よって、送風装置により中衣の内側に送り込まれた空気が、中衣の内側で使用者の身体に沿って安定して流れることから、空気が中衣の内側を広範囲に行き渡り、身体の汗が良好に気化する。その結果、気化熱を利用した身体の冷却効果を効果的に得ることができる。
【0009】
また、本発明によれば、中衣に手軽に取り付けられる送風冶具による簡易な構成で送風装置からの空気を中衣の内側に送り込むようにしたため、外衣を脱いでも中衣へ送風できる。また、使用状況や作業状況に応じて、防護性等の性能の異なる外衣に交換することも容易にできる。また、使用状況や作業状況に応じて、異なる性能の送風装置に交換することも容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】使用者が冷却服を装着した状態を示す背面図である。
【
図2】使用者が中衣を装着した状態を示す背面図である。
【
図5】送風冶具に送風装置は接続された状態の内部構造を概略的に示す断面図である。
【
図6】使用者が外衣を装着した状態を示す背面図である。
【
図7】使用者が胴着を装着した状態を示す背面図である。
【
図14】送風装置のケーシングの(A)左側面図及び(B)正面図である。
【
図15】送風装置の蓋の(A)右側面図及び(B)正面図である。
【
図16】送風装置の収容器及びスペーサの内部構造を概略的に示す断面図である。
【
図17】送風装置の収容器の本体部の左側面図である。
【
図18】送風装置の収容器の蓋部の左側面図である。
【
図19】変形例の送風冶具に送風装置は接続された状態の内部構造を概略的に示す断面図である。
【
図20】中衣を着用した場合と中衣を着用しない場合とにおける送風量と放熱量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る冷却服は、例えば作業現場での作業を行う作業者が着用するものであって、冷却服内に送風を行って作業者の体温の上昇を抑制するものであり、特に、冷却服内に空気を広範囲に流通させることで、作業者の身体を広範囲に冷却するものである。以下、本発明に係る冷却服の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の冷却服1000は、
図1に示すように、使用者により着用される中衣100と、中衣100に備え付けられる送風冶具200と、使用者により中衣100の上(外側)に着用される外衣300と、使用者により中衣100の下(内側)に着用される胴着400(図示省略)と、中衣100の内側に空気を送り込むための送風装置1とを備える。
【0013】
まず、
図2に示すように、中衣100は、非通気性(空気不透過性)である。ここで、「非通気性」とは、完全に空気を通さない性質だけに限定されるものではなく、通気性が低くてわずかに空気を通す性質も含むものであり、例えば通気度が0~20cm
3/cm
2・s、好ましくは0~10cm
3/cm
2・sであることを指す。中衣100が非通気性であることで、送風装置1により中衣100の内側に送り込まれた空気(外気)が中衣100を透過して中衣100の外側に漏れてしまうことを防止することができる。
【0014】
中衣100は、非通気性の素材を用いて作製することができる。非通気性の素材としては、生地(織物、編物、不織布)に樹脂をラミネートもしくはコーティングした材料や、生地に樹脂フィルムを積層した材料、樹脂フィルム、高密度の生地にカレンダー加工した材料等を例示することができる。なお、中衣100を非通気性とするためには、少なくも裏地(身体側の生地)を非通気性の素材としてもよい。中衣100の形態は、特に限定されるものではなく、身体の全身を覆う形態であってもよいし、身体の上半身又は下半身を覆う形態であってもよい。また、中衣100の上半身の部分は、袖部のある長袖又は半袖の形態であってもよいし、袖部のないベストの形態であってもよい。本実施形態では、中衣100は、身体の全身を覆う長袖の形態のものである。さらに、中衣100は、前側の正面部がファスナーやボタン等により左右に開閉可能な形態であってもよいし、正面部が左右に開閉せずに一連に繋がる形態であってもよい。
【0015】
送風装置1により中衣100の内側に送り込まれた空気は、中衣100の袖口部103や襟部104、裾部102から中衣100の外側に排出されるが、裾部102、袖口部103及び襟部104のいずれかを身体に密着するようにして、その密着部分からは中衣100の内側の空気が外側に漏れ出ないようにしてもよい。
【0016】
中衣100には、第1貫通孔105が形成されている。第1貫通孔105は、例えば中衣100の後ろ側の背面部102に形成することができる。
図5に示すように、中衣100の第1貫通孔105に送風冶具200が装着される。中衣100の第1貫通孔105の内周縁は補強処理が行われるか、又は、送風冶具200の外周面(本実施形態では水平部203の外周面)に当接するパッキン(図示せず)が装着されることが好ましい。パッキンを装着すると、中衣100の内側の気密性が向上し、中衣100の内側に送風冶具200から送られる外気以外の空気、ガス、湿気、粉塵等が導入することを防止できる。
【0017】
次に、
図3~
図5に示すように、送風冶具200は、送風装置1が着脱され、送風装置1から供給される空気を中衣100の内側に導くためのものである。送風冶具200は両端が開口した筒状を呈しており、内部が空気が流通する空気流路となる。送風冶具200の素材は、特に限定されず、例えば樹脂製又は金属製とすることができるが、軽量性の点から樹脂製であることが好ましい。
【0018】
送風冶具200は、その先端部201が第1貫通孔105から中衣100の外側に突き出るようにその基端部202が中衣100に取り付けられる。本実施形態の送風冶具200は、L字型を呈していて、中衣100の第1貫通孔105から水平に延びる水平部203と、水平部203と直交する鉛直部204とを含んでおり、水平部203に基端部201があり、鉛直部204に先端部201がある。
【0019】
送風冶具200の先端部201には、送風装置1が直接的、又は蛇腹等の送風ホース500を介して間接的に着脱される。送風冶具200の基端部202には、中衣100の第1貫通孔105よりも外径が大きいフランジ205が設けられている。送風冶具200は、先端部201が中衣100の外側に突き出るように中衣100の内側から外側に向けて第1貫通孔105に挿し通された後、フランジ205が中衣100の第1貫通孔105の周囲部に内側から突き当たって第1貫通孔105から抜け出ないことで、基端部202が中衣100に取り付けられる。
【0020】
次に、
図6に示すように、外衣300は、中衣100の上(外側)に着用するものであれば特に限定されず、その形態は、例えば本実施形態のような身体の全身を覆う形態とすることができ、上半身を覆う部分と下半身を覆う部分とが繋がった形態(ワンピース型)であってもよいし、身体の上半身を覆う部分と下半身を覆う部分とが離された形態(ツーピース型)であってもよい。外衣300としては、例えば作業服、防護服、防塵衣、耐火服、耐蜂服、レーシングドライバー用衣類、ジャンパー(ブルゾン)、ユニフォーム、合羽等、種々のものを例示することができる。外衣300には、第2貫通孔302が形成されている。第2貫通孔302は、例えば外衣300の後ろ側の背面部301に形成することができる。外衣300の第2貫通孔302は、
図5に示すように、送風冶具200が挿し通される。送風冶具200は、中衣100の第1貫通孔105に挿し通された後、外衣300の内側から外側に向けて第2貫通孔302に挿し通されることで、先端部201が外衣300の外側に突き出て、先端部201に送風装置1が着脱される。外衣300の第2貫通302の内周縁は、送風冶具200の外周面(本実施形態では水平部203の外周面)に当接するパッキン303が装着されることが好ましい。パッキン303により、外衣300の内側の気密性が向上し、外衣300の内側に外気、ガス、湿気、粉塵等が導入することを防止できる。
【0021】
次に、
図7に示すように、胴着400は、中衣100の下(内側)に着用するものである。
図8~
図13に示すように、胴着400は、身体の前側(胸側)を覆うための左右の前面部401R,401Lと、身体の後側(背中側)を覆うための後面部402とからなるベスト型のものであり、左右の前面部401R,401Lをファスナー403により開閉することで容易に着衣及び脱衣が可能である。
【0022】
左右の前面部401R,401Lは、身体の胸と腹の前側とを覆うことが可能な大きさ・形状に形作られている。左右の前面部401R,401Lは、本実施形態では1枚の生地により形成されているが表地及び裏地の2枚の生地で形成されていてもよい。一方で、後面部402は、身体の背中から上方においては両肩までを覆うとともに側方においては左右の横腹(脇腹)までを覆うことが可能な大きさ・形状に形作られている。後面部402は、表地406及び裏地407の2枚の生地によって形成されている。左右の前面部401R,401Lと後面部402との接続部分はパイピング始末404が施されている。また、左右の前面部401R,401L及び後面部402の首及び両腕の出る部分、及び、後面部402の下縁部についてもそれぞれパイピング始末404が施されている。また、後面部402には、複数箇所に表地406と裏地407とを縫着するステッチ405が施されている。
【0023】
左右の前面部401R,401L及び後面部402を形成する生地としては、通気性を有する生地が用いられている。通気性を有する生地としては、例えば合成繊維からなるメッシュ生地を用いることができる。メッシュ生地を形成する合成繊維としては、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等を例示することができる。なお、図面では、左右の前面部401R,401L及び後面部402のメッシュ柄は図示を省略している。
【0024】
後面部402の表地406と裏地407との間には、弾力性及び通気性を有するクッション材408が介在している。つまり、胴着400は、身体の背中、肩及び横腹に当たる部位に通気性及び弾力性を有するクッション材408を備えている。このクッション材408は、例えば使用者が外衣300の上にハーネスやサスペンダーを装着したり、外衣300の上から重い荷物や装備品等を背負ったりする等して衣服に荷重が掛かった場合においても、その荷重を受けとめて中衣100と身体との間の空間が押しつぶされることを防止することで、中衣100内において送風装置1から送り込まれる空気の流れを確保する空気流路を形成して、中衣100内の送風の阻害を防止するものである。
【0025】
クッション材408としては、弾力性及び通気性を有していて、外衣300の上から加えられる荷重に対し中衣100内の空気流路を確保して送風の阻害を防止可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば熱可塑性樹脂の3次元網状構造体や、エステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維フィラメントを用いたダブルラッセル編物等を用いることができる。その中でも、荷重を受けた際に中衣100内での送風阻害を効果的に防止可能なクッション性、胴着400を着用した際の装着感、及びクッション材408の加工性等を考慮すると、3次元網状構造体を好ましく用いることができる。3次元網状構造体は、熱可塑性弾性樹脂からなる多数の線条がランダムループを形成し、かつ該線条の接点の少なくとも一部を融着してなるものである。3次元網状構造体を形成する熱可塑性弾性樹脂としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等の熱可塑性樹脂エラストマーを例示することができる。この3次元網状構造体は、例えば特許第4802369号公報に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0026】
クッション材408は、特に限定されるものではないが、その厚みが5mm以上70mm以下であることが好ましく、10mm以上50mm以下であることがより好ましい。クッション材408の厚みが5mm以上であると、荷重を受けた際に中衣100内に空気流路を十分に形成することができ、中衣100内における送風阻害を良好に防止することができる一方で、クッション材408の厚みが70mm以下であると、胴着400を着用した際の装着感を損なうことがなく、胴着400の着心地を良好にすることができるからである。
【0027】
また、クッション材408は、特に限定されるものではないが、その見掛け密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましい。クッション材408の見掛け密度が10kg/m3以上であると、荷重を受けた際に中衣100内に空気流路を十分に形成することができ、中衣100内における送風阻害を良好に防止することができる一方で、クッション材408の見掛け密度が100kg/m3以下であると、胴着400を着用した際の装着感を損なうことがなく、胴着400の着心地を良好にすることができるからである。
【0028】
さらに、クッション材408は、特に限定されるものではないが、その厚み方向に50%圧縮した後の回復率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。クッション材408を厚み方向に50%圧縮した後の回復率が70%以上であると、荷重を受けた際に中衣100内に空気流路を十分に形成することができ、中衣100内における送風阻害を良好に防止することができるうえ、繰り返しの使用に良好に耐えることができる。
【0029】
次に、送風装置1は、
図5及び
図14~
図18に示すように、筒状容器2と、筒状容器2内に空気を流通させる送風手段3と、筒状容器2の少なくとも一部に収容される吸湿材4と、筒状容器2の少なくとも一部に収容される蓄熱材5とを少なくとも備えた構成のものである。
【0030】
筒状容器2は、一端(図示例では左端)に空気入口6を有し、前記一端と対向する他端(図示例では反対側の右端)に空気出口7を有している。空気出口7は、直接的に又は送風ホース500を介して間接的に送風冶具200の先端部201に接続される。空気入口6は外部から空気を筒状容器2内に取り入れ、空気出口7は筒状容器2内の空気を外部に送り出し、筒状容器2の内部は空気入口6から空気出口7に向けて空気が流れる流通路となっている。筒状容器2は例えば金属製又は樹脂製とすることができるが、放熱性及び軽量性の点からアルミニウム製であることが好ましい。
【0031】
筒状容器2は、複数のパーツで構成されており、外殻をなすケーシング8と、ケーシング8に着脱可能な蓋9と、ケーシング8内に入れられる収容器10と、収容器10と蓋9との間に介在するスペーサ11とを備えている。
【0032】
ケーシング8は、
図5及び
図14に示すように、一端(図示例では左端)が開口し、前記一端と対向する他端(図示例では反対側の右端)側の端壁80に中央の貫通孔と連通するようにして筒状の空気出口7が一体に連設されている。ケーシング8の周壁81の一端側の外周面には雄ネジ82が設けられており、蓋9に設けられた雌ネジ92と螺合することで、ケーシング8に蓋9が取り付けられる。ケーシング8の周壁81は、内部に収容器10及びスペーサ11を収容可能な寸法に形成されている。
【0033】
蓋9は、
図5及び
図15に示すように、一端(図示例では右端)が開口し、前記一端と対向する他端(図示例では反対側の左端)側の端壁90に中央の貫通孔と連通するようにして筒状の空気入口6が一体に連設されている。蓋9の周壁91の内周面に雌ネジ92が設けられている。蓋9の端壁90には間隔をあけて複数のネジ孔93が形成されている。この複数のネジ孔93は、送風手段3としてのファンをボルト12等を用いて蓋9に取り付けるためのものである。
【0034】
送風手段3は、
図5に示すように、筒状容器2の内部に空気の流れを強制的に生じさせ、空気入口6から空気出口7に向けて筒状容器2内に空気を流通させる。送風手段3としては、例えばファンを用いることができる。ファンは、回転軸が筒状容器2の中心軸に一致するように蓋9に取り付けられる。ファンには、図示は省略するが、電池や電源装置等の電源から駆動のための電力が供給される。ファンは、オンオフや送風強さを切り替えるスイッチが接続されることによりファンの駆動及び停止や、回転数が制御されてもよい。
【0035】
収容器10は、
図5及び
図16に示すように、吸湿材4及び蓄熱材5を収容する。本実施形態では、収容器10は、吸湿材4及び蓄熱材5を混合した状態で収容している。収容器10は、両端に空気の出し入れのための開口部を有しており、ケーシング8内の空気の流通路に設置される。空気が収容器10内を通過する際に吸湿材4と接触することで、空気に含まれる水蒸気が吸湿材4により吸着されて、空気が除湿される。このとき、吸湿材4による水蒸気の吸着は発熱反応であるため、水蒸気の吸着に伴い吸湿材4には吸着熱が生じるが、この吸着熱が蓄熱材5に伝達されて潜熱として蓄熱されることで、吸着熱により吸湿材4を通過した空気の温度上昇が抑制される。よって、空気入口6から取り込まれた空気が水蒸気を多く含んでいても、乾燥した低温空気として空気出口7に送り出すことができる。
【0036】
収容器10は、本実施形態では、空気入口6側の開口部が、複数の孔が間隔をあけて均一に穿設された多孔状の板材13で塞がれ、空気出口7側の開口部が、複数の網目を有するメッシュ状の網材14で塞がれている。板材13及び網材14は例えばアルミニウム等の金属製であり、収容器10内の吸湿材4及び蓄熱材5が収容器10の外部に漏れ出すことを防止している。また、収容器10の空気入口6側の開口部が多孔状の板材13により塞がれていることで、空気入口6から導入された空気は、板材13の表面に沿って径方向に広がりながら各孔より収容器10内に取り込まれるため、収容器10内を径方向で均等に流通する。そのため、流通する空気が収容器10内の吸湿材4に満遍なく接触することで、効果的に除湿される。そして、収容器10の空気出口7側の開口部がメッシュ状の網材14で塞がれていることで、除湿された空気は網材14の複数の網目からスムースに収容器10内から取り出されて空気出口7に送られる。
【0037】
また、収容器10は、
図5及び
図16~
図18に示すように、本実施形態では、吸湿材4及び蓄熱材5を収容する本体部110と、本体部110に着脱可能な蓋部114とで構成されている。本体部110は、一端(図示例では左端)が開口した筒状を呈しており、前記一端と対向する他端(図示例では反対側の右端)側の端壁112に網材14が一体に設けられている。本体部110の周壁111の一端側の内周面には雌ネジ113が設けられており、蓋部114に設けられた雄ネジ117と螺合することで、本体部110に蓋部114が取り付けられる。
【0038】
蓋部114は、両端が開口した筒状を呈しており、開口内に板材13が一体に設けられている。蓋部114の周壁115の一端(図示例では右端)には、外周面に雄ネジ117が設けられたフランジ116が一体に設けられている。
【0039】
スペーサ11は、
図5及び
図16に示すように、両端が開口した筒状を呈しており、ケーシング8内において収容器10と蓋9との間に介在している。スペーサ11により、ケーシング8内において、収容器10と蓋9との間に送風手段3を収容する収容空間が確保されている。
【0040】
吸湿材4は、空気に含まれた水蒸気を吸着することにより、空気出口7に送られる空気を乾燥した状態にする。吸湿材4は、一般に使用されているものを用いることができるが、吸着能を向上するために、細孔を有する多数の粒状のものを用いることが好ましい。吸湿材4としては、例えばシリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ、塩化カルシウム等を挙げることができる。吸湿材4が水蒸気を吸着できなくなった場合には、吸湿材4を取り替える必要があるが、吸湿材4としてシリカゲルやゼオライト等を用いた場合には、吸湿材4を加熱することにより吸着能を再生することができる。
【0041】
蓄熱材5は、吸湿材4により空気を除湿した際に生じる吸着熱を蓄熱することにより、この吸着熱による空気の温度上昇を抑制し、空気出口7に送られる空気を低温の状態にする。蓄熱材5としては、例えば、温度に応じて潜熱の吸収を生じる相変化物質をカプセル等に封入してなる多数の蓄熱カプセルを用いることができる。この蓄熱カプセルは、特許第4508867号公報や特許第4861136号公報に記載されたものを用いることができる。収容器10内で蓄熱材5を吸湿材4に均一に混合することにより、蓄熱材5が吸湿材4に良好に接触し、吸着熱の蓄熱材5への伝達効率が高くなる。よって、吸湿材4を通過した空気の吸着熱による温度上昇を効果的に抑制することができる。なお、蓄熱材5としては、上述した蓄熱カプセルに限定されるものではなく、吸着熱を蓄熱できる素材であれば、種々の素材を用いることができる。
【0042】
次に、上述した本実施形態の冷却服1000の使用方法について説明する。
図7に示すように、使用者は、まず、身体の上(又は肌着の上)に胴着400を着用した後、
図2に示すように、その上に中衣100を着用し、
図6に示すように、さらにその上に外衣300を着用する。中衣100及び外衣300を着用する際には、送風冶具200を、その先端部201が外衣300の外側に突き出るように中衣100の内側から外衣300の外側に向けて第1貫通孔105及び第2貫通孔302に挿し通して、
図1に示すように、送風冶具200の先端部201に送風装置1の空気出口7を直接的に又は送風ホース500を介して間接的に接続する。送風装置1は、例えば使用者の外衣300やズボンに巻かれたベルトに取り付けるための取付手段(図示せず)を備えることで、送風装置1を使用者の腰部あたりに装着することができる。
【0043】
この状態で、送風装置1の送風手段3を駆動すると、外気(空気)が空気入口6を介して筒状容器2内に取り込まれ、空気出口7より使用者が着用した中衣100内に送り出される。中衣100内に送り出された空気が使用者の身体に沿って中衣100内を通過することにより、身体の汗が気化し易くなり、汗が気化する際の冷却効果で使用者の体温の低下を促すことができる。また、高温多湿の空気が空気入口6より筒状容器2内に取り込まれても、吸湿材4により空気に含まれた水蒸気が吸着されて乾燥した空気が中衣100内に送り出されるうえ、吸湿材4による空気の除湿の際に生じた吸着熱が蓄熱材5に蓄熱されて中衣100内に送り出される空気の温度上昇が抑制される。よって、中衣100内の空間を快適な環境とすることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、送風装置1へ外気を単に導入しているが、コンプレッサーや空気ボンベ(高圧空気ボンベ)等の圧縮空気源を用いて外気を導入してもよい。あるいは、新鮮な空気のある場所に設置した電動送風機(清浄空気供給ユニット等)を用いて送風装置1へ外気を導入してもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態の冷却服1000によれば、使用者により外衣300の下に着用される中衣100が非通気性であり、中衣100の内側の気密性が高いため、送風装置1により中衣100の内側に送り込まれた空気が中衣100の外側に漏れることを防止することができる。よって、送風装置1により中衣100の内側に送り込まれた空気が、中衣100の内側で使用者の身体に沿って安定して流れることから、空気が中衣100の内側を広範囲に行き渡り、身体の汗が良好に気化する。その結果、気化熱を利用した身体の冷却効果を効果的に得ることができる。
【0046】
よって、本実施形態の冷却服1000は、外側からの防護のために必要であるが、着用により暑さや蒸れを伴う服を外衣300とする場合に好適である。この種の外衣300としては、例えば作業服、防護服、防塵衣、耐火服、耐蜂服、レーシングドライバー用衣類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、本実施形態の冷却服1000によれば、中衣100に手軽に取り付けられる送風冶具200による簡易な構成で送風装置1からの空気を中衣100の内側に送り込むようにしたため、外衣300を脱いでも中衣100へ送風できる。また、使用状況や作業状況に応じて、防護性等の性能の異なる外衣300に交換することも容易にできる。また、使用状況や作業状況に応じて、異なる性能の送風装置1に交換することも容易にできる。
【0048】
また、本実施形態の冷却服1000によれば、外衣300の上にハーネスやサスペンダーを装着したり、外衣300の上から重い荷物や装備品等を背負ったりした場合においても、胴着400を中衣100の下に着用していることで、身体の背中に当たる部位ではクッション材408により中衣100と身体との間の空間がつぶれないため、中衣100内では空気の流れが阻害されずに空気の流路が十分に確保されている。よって、送風装置1から中衣100内に送り込まれた空気は、背中を通って身体の前側(胸や腹側)まで広範囲に行き渡るため、身体の汗が良好に気化し、気化熱を利用した身体の冷却効果を効果的に得ることができる。特に本実施形態では、胴着400は、身体の肩や横腹に当たる部位にもクッション材408を備えているため、送風装置1から中衣100内に送り込まれた空気を背中から肩や横腹を通して身体の前側(胸や腹側)に良好に流通させることができるため、身体の冷却効果をさらに効果的に得ることができる。
【0049】
また、本実施形態の冷却服1000によれば、送風装置1について、蓄熱材5を吸湿材4とともに筒状容器2内に収容した構成としたので、簡易な構成で中衣100内に送り込む空気の除湿を実現でき、装置の小型化及び軽量化が可能である。なお、送風装置1は、作業に大きな影響を及ぼさないサイズが好ましく、重さは、例えば3kg以下が好ましい。
【0050】
また、本実施形態の冷却服1000によれば、送風装置1の筒状容器2が、ケーシング8、蓋9及び収容器10で構成され、収容器10を交換可能であるので、吸湿材4の吸着能や蓄熱材5の蓄熱能が限界に到達した際には、吸湿材4及び蓄熱材5を容易に取り替えることができる。
【0051】
加えて、収容器10が本体部100及び蓋部104で構成され、吸湿材4及び蓄熱材5を容易に取り出し可能であるので、吸湿材4の吸着能が限界に到達した際には、吸湿材4を容易に取り出して加熱等を行うことで再生することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述した実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないため、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものであり、よって、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記した実施形態では、中衣100に第1貫通孔105が1つだけ形成されているが、第1貫通孔105を2つ以上形成し、第1貫通孔105ごとに送風冶具200を取り付けて送風装置1からの空気を中衣100の内側に送り込むようにしてもよい。
【0054】
また、上記した実施形態では、送風冶具200がフランジ205を含んでいて、このフランジ205が中衣100の第1貫通孔105の周囲部に突き当たるにより基端部202が中衣100に取り付けられている。しかし、
図19に示すように、送風冶具200が中衣100の第1開口孔105の周囲に配置されるリング状の固定具206を含み、送風冶具200の基端部202の
内周面に
雌ネジを形成する一方で、固定具206の
外周面に
雄ネジを形成し、送風冶具200の基端部202と固定具206とで中衣100を挟んで両ネジによる結合で基端部202と固定具206とを固定することで、基端部202を中衣100に取り付けてもよい。固定具206は、中衣100に設置されていても設置されていなくてもよい。また、送風冶具200の基端部202を中衣100に取り付ける方法は、上述した方法に限定されない。
【0055】
また、上記した実施形態では、外衣300に第2貫通孔302が形成されていて、送風冶具200は、その先端部201が外衣300の外側に突き出るように中衣100の第1貫通孔105及び外衣300の第2貫通孔302に挿し通されている。しかし、外衣300に第2貫通孔302を形成せず、送風冶具200の先端部201に接続された送風ホース500を外衣300の裾部から外衣3000の外側に露出させてもよい。
【0056】
また、上記した実施形態において、胴着400のクッション材408の身体側の表面に、吸水性に優れる吸汗材料を設けてもよい。吸汗材料は、汗を吸収拡散し、放散しやすい材料が好ましく、本来疎水性であるポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維から適宜選定することが可能で、上記からなる繊維の原糸改質や表面加工により吸水拡散性、吸水速度及び放散性を向上させたもの、さらには、極細化繊維、異形断面形状繊維等を使用することも有効な手段である。また、これら繊維の混合化、複合化及び混繊した糸状からなる繊維集合体等を使用することも有効な手段となる。吸汗材料としては、織物、編物、不織布等の形態とすることが好ましい。クッション材408と吸水材料との固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば縫製や接着等を用いることができる。吸水材料は、身体からの汗を吸収することで、衣服内において汗を送風装置1からの送風により効率よく気化させることができるので、効果的に気化熱が奪われることにより身体を良好に冷却することができる。
【0057】
なお、上述した吸汗材料を用いて作製した下着等を身体の上に着用し、その上から胴着400を着用するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、胴着400の表地406に通気性を有する素材(具体的にはメッシュ生地)が用いられているが、中衣100内における送風の効率を上げるために、表地406に非通気性の素材を用いてもよい。非通気性の素材としては、生地(織物、編物、不織布)に樹脂をラミネートもしくはコーティングした材料や、生地に樹脂フィルムを積層した材料、樹脂フィルム等を例示することができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、胴着400の身体の胸及び腹に当たる部位である左右の前面部401R,401Lにクッション材408を備えていないが、左右の前面部401R,401Lにもクッション材408を備えるように構成してもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、胴着400は、身体の背中に当たる部位に加えて、肩及び横腹に当たる部位にクッション材408を備えているが、肩及び横腹に当たる部位にクッション材408は必ずしも備えていなくてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、胴着400は、左右の前面部401R,401Lがファスナー403により開閉可能となっているが、ボタンやバンド等のその他の手段により、左右の前面部401R,401Lが開閉可能となるように構成してもよいし、左右の前面部401R,401Lが開閉せずに一連に繋がるように構成してもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、胴着400は、左右の前面部401R,401Lと後面部402とが一連に繋がっているが、左右の前面部401R,401Lと後面部402とを調節ベルト(図示せず)を介して繋げることで、胴着400を使用者の体型に合わせて胴回りのサイズを変えることが可能なアジャスター機能が付与されるように構成してもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、胴着400は、表地406と裏地407とを有し、表地406及び裏地407の間にクッション材408を介在させた構造のものであるが、クッション材408が身体の所望の部位(少なくとも背中、さらには肩や横腹)に当たる部位に備えられるのであれば、胴着400の構造は特に限定されない。
【0064】
また、上述した実施形態では、胴着400は、袖部を有していないが、袖部を有するように構成してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、送風装置1は、収容器10が吸湿材4及び蓄熱材5を混合した状態で収容しているが、吸湿材4及び蓄熱材5を互いに仕切って分離した状態で収容してもよい。吸湿材4及び蓄熱材5を互いに仕切るには、収容器10内を複数の孔が形成された仕切板で2つの区画に仕切り、各区画に吸湿材4、蓄熱材5をそれぞれ収容するようにしてもよいし、吸湿材4及び蓄熱材5をそれぞれ異なる通気性を有する袋(例えばメッシュ状の袋等)に充填し、各袋を収容器10に並べて収容するようにしてもよい。この場合には、蓄熱材5は、吸湿材4よりも空気の流れの下流側に配置され、吸湿材4により除湿された際の吸着熱によって温度上昇した空気の熱を蓄熱することにより、温度上昇した空気の温度を低下させて、衣服内に送り出される空気の温度上昇を抑制する。よって、衣服内の空間を快適な環境とすることができる。このように、吸湿材4及び蓄熱材5を互いに仕切った状態で収容器10に収容した場合には、吸湿材4と蓄熱材5とを分けて取り出すことができるので、吸湿材4及び蓄熱材5をそれぞれの最適再生処理温度にて処理することが可能となり、再生効率が上がる。
【0066】
また、上述した実施形態において、送風装置1は、吸湿材4及び蓄熱材5を収容器10に収容する際には、束ねられて互いに接触した状態にあるアルミニウム箔からなる複数の筒状体を収容器10内に配備し、各筒状体ごとに吸湿材4及び蓄熱材5を充填するようにしてもよい。この実施形態では、アルミニウム箔からなる筒状体により、吸湿材4による空気の除湿の際に生じる吸着熱が放熱されるので、空気を冷却することができる。なお、複数の筒状体に限らず、複数のアルミニウム製の薄板を格子状に配列した区画体を収容器10内に配備し、各区画ごとに吸湿材4及び蓄熱材5を充填するようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、送風装置1は吸湿材4及び蓄熱材5を備えた構成とされているが、吸湿材4及び蓄熱材5を備えていない、単に外気送風機能のみを有するように構成されていてもよい。また、送風装置1は、有害物質や有毒物質を除去するフィルターを備えた構成であってもよい。この場合も、吸湿材4及び蓄熱材5を備えていない、外気送風機能とフィルターとを備える構成でもよい。フィルターは、使用環境に応じて様々なものを用いることができる。また、送風装置1は、使用環境において適切な構成のものを用いられるように交換できるように構成されていてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態において、送風装置1は、筒状容器2の周囲を覆うようにしてPCM等の保冷剤を配備してもよい。これにより、吸湿材4による空気の除湿の際に生じる吸着熱が放熱されるので、空気を冷却することができる。
【0069】
また、上述した実施形態では、中衣100及び外衣300は、身体の全身を覆うものであるが、上半身のみ又は下半身のみを覆うものであってもよい。
【実施例】
【0070】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
外衣の下に中衣を着用した場合と着用しない場合とにおいて、空気の送風量と送風による身体の冷却性能とに関する試験を行った。具体的に、32℃・60%RHに制御した部屋に、吸汗下着を着せた発汗マネキンを準備し、吸汗下着の上に内衣及び外衣の順に着せたのを実施例とし、吸汗下着の上に外衣を着せたのを比較例とした。発汗マネキンの皮膚温度は35℃に制御した。外衣には無透湿の合羽(市販用)を用い、中衣にはナイロン織物にポリウレタン樹脂をコーティングした防水透湿布帛を用いた。使用したナイロン織物は、78デシテックス96フィラメントからなる質量60g/m2の平織物を定法により精錬、染色、撥水処理、乾燥後、コーターを使用し、ウレタン樹脂溶液をコーティングした。これを、20℃の水中に導き、3分間凝固させた後、130℃のオーブンで乾燥し、樹脂層厚45μmの微多孔膜を得た。得られた防水透湿布帛の厚みは0.22mm、質量95g/m2、透湿度115g/m2・hであった。また、吸汗下着は、以下の方法で作製した吸汗材料により作製した。ポリエステルフィラメント(84デシテックス×72フィラメント)を使用し、スムース組織で編成後、定法により精錬し、さらに分散染料により染色した。その後、親水化剤(高松油脂株式会社製、SR-1000)を1%濃度でパッド、ドライし親水性を付与した。このようにして得られた編地は、厚さ0.80mm、質量153g/m2、吸水拡散性(JIS L 1907 滴下法)が2sec以下、吸水速度(JIS L 1907 バイレック法)が100mmであった。
【0072】
実施例及び比較例ともに、発汗マネキンを400g/m
2・hrの発汗量で15分間発汗させた後、前記発汗量で発汗させながら60分間にわたり部屋内の空気を実施例では吸汗下着と中衣との間に、比較例では吸汗下着と外衣との間にファンを用いて送風した。ファンの送風量は、実施例及び比較例ともに100L/min、200L/min、400L/minとした。発汗マネキンの皮膚温度を32℃に制御するのにかかる消費電力量から発汗マネキンの全身の平均放熱量(W/m
2)を算出した。その結果を
図20に示す。
【0073】
図20によると、外衣の下に中衣を着用することで、中衣を着用しない場合との比較で放熱量が約2倍となり、身体の冷却性能が良好となることが確認され、中衣を着用することで衣服内をより快適な環境にできることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、作業現場での作業の際に利用することができ、特に、夏場の高温多湿の環境下での利用に適しており、産業界に大いに寄与できる。
【符号の説明】
【0075】
1 送風装置
2 筒状容器
3 送風手段
4 吸湿材
5 蓄熱材
6 空気入口
7 空気出口
8 ケーシング
9 蓋
10 収容器
11 スペーサ
13 板材
14 網材
100 中衣
105 第1貫通孔
200 送風冶具
201 先端部
202 基端部
205 フランジ
206 固定具
300 外衣
302 第2貫通孔
303 パッキン
400 胴着
408 クッション材
1000 冷却服