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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221209BHJP
   G03F 7/24 20060101ALI20221209BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G03F7/24 Z
H01L21/30 502D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019095417
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020190618
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】野上 朝彦
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135161(JP,A)
【文献】特開平07-106219(JP,A)
【文献】特開2009-212498(JP,A)
【文献】特開2011-049409(JP,A)
【文献】特開2005-311057(JP,A)
【文献】特開2003-266776(JP,A)
【文献】特開2005-148243(JP,A)
【文献】特開2002-367194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0051209(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103365097(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G03F 7/20
G03F 7/24
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された原盤にレーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置であって、
前記レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置と、
前記光源装置から出射されるレーザー光のフォーカスを制御する制御演算部と、
前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージと、
前記補助ステージの位置を制御する補助ステージ制御部と、を備え、
前記光源装置は、
前記レーザー光を前記原盤に出射する対物レンズと、
駆動電流に応じて前記対物レンズを変位させるアクチュエーターとを備え、
前記制御演算部は、前記駆動電流を制御し、
前記補助ステージ制御部は、前記アクチュエーターの駆動電流に応じて、前記補助ステージの位置を制御する、露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記レーザー光のフォーカス誤差に応じた出力を行う誤差演算部と、
前記レーザー光が前記原盤の表面上で合焦している状態での前記誤差演算部からの出力に相当する目標値と、前記原盤の表面粗さ、前記原盤の傾きおよび前記原盤の偏心の少なくとも1つに応じた、前記原盤の表面と前記光源装置との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値とを加算する加算器と、をさらに備え、
前記制御演算部は、前記加算器による加算値と前記誤差演算部の出力との差分に基づき、前記アクチュエーターの駆動電流を制御する、露光装置。
【請求項3】
載置された原盤にレーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置であって、
前記レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置と、
前記光源装置から出射されるレーザー光のフォーカスを調整する制御演算部と、
前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージと、
前記補助ステージの位置を制御する補助ステージ制御部と、を備え、
前記補助ステージ制御部は、予め測定された、前記原盤の表面粗さ、前記原盤の傾きおよび前記原盤の偏心の少なくとも1つに応じた、前記原盤の表面と前記光源装置との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき、前記補助ステージの位置を制御する、露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記レーザー光のフォーカス誤差に応じた出力を行う誤差演算部と、
前記レーザー光が前記原盤の表面上で合焦している状態での前記誤差演算部からの出力に相当する目標値と、前記総合表面形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値とを加算する加算器と、をさらに備え、
前記制御演算部は、前記加算器による加算値と前記誤差演算部の出力との差分に基づき、前記レーザー光のフォーカスを制御する、露光装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記原盤は、円筒状または円柱状の原盤である、露光装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記原盤は、平板状の原盤である、露光装置。
【請求項7】
レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置を備え、載置された原盤に前記レーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置による露光方法であって、
前記露光装置は、前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージを備え、
前記光源装置は、
前記レーザー光を前記原盤に出射する対物レンズと、
駆動電流に応じて前記対物レンズを変位させるアクチュエーターとを備え、
前記アクチュエーターの駆動電流に応じて、前記補助ステージの位置を制御する、露光方法。
【請求項8】
レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置を備え、載置された原盤に前記レーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置による露光方法であって、
前記露光装置は、前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージを備え、
予め測定された、前記原盤の表面粗さ、前記原盤の傾きおよび前記原盤の偏心の少なくとも1つに応じた、前記原盤の表面と前記光源装置との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき、前記補助ステージの位置を制御する、露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原盤にレーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置および露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術の1つとして、表面に微細なパターンが形成された平板状あるいは円筒状(円柱状)の原盤を樹脂シートなどに押し当てることで、原盤上の微細なパターンを樹脂シートなどに転写するナノインプリント技術がある。
【0003】
特許文献1には、原盤の表面に微細なパターンを形成するための露光装置が開示されている。この露光装置は、円筒状の原盤を両端面から挟みこんで保持するスピンドルと、レーザービーム(レーザー光)を出射する光源とを備える。そして、この露光装置は、表面に熱反応レジストまたは光反応レジストが塗布された原盤を回転させながら、光源から出射されたレーザービームを所望のパターンに合わせて原盤に照射(露光)して熱反応レジストまたは光反応レジストを反応させることで、所望のパターンを原盤の表面に形成する。また、この露光装置は、光源と原盤との位置偏差に応じて、レーザービームの偏向を制御するビーム位置偏差制御部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-5678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような露光装置においては、原盤へのパターンの露光形成を高精度に行うために、原盤上にレーザー光を高精度に合焦させる必要がある。
【0006】
図7は、フォーカス制御を行う従来の露光装置100の構成の一例を示す図である。
【0007】
図7に示す露光装置100は、スピンドルモーター11と、オプティカルピックアップ12と、光センサー13と、誤差演算部14と、減算器15と、制御演算部16と、増幅部17と、補助ステージ19とを備える。オプティカルピックアップ12および光センサー13は、光ヘッド18を構成する。光ヘッド18は、補助ステージ19に載置されている。
【0008】
オプティカルピックアップ12は、レーザー光をスピンドルモーター11に載置された原盤1に向けて出射する。オプティカルピックアップ12が載置された補助ステージ19は、スピンドルモーター11に載置された円筒状(または円柱状)の原盤1の軸方向に沿って移動可能である。すなわち、オプティカルピックアップ12は原盤1の軸方向にスライド可能である。スピンドルモーター11により原盤1を回転させつつ、オプティカルピックアップ12を原盤1の軸方向に沿ってスライドさせることで、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光を原盤1の表面に照射することができる。原盤1の表面には、例えば、熱反応レジストまたは光反応レジストが塗布形成されており、レーザー光を照射することで、レーザー光が照射された部分の熱反応レジストまたは光反応レジストを反応させ、原盤1の表面の任意の領域にパターンを露光形成することができる。
【0009】
オプティカルピックアップ12は、レーザー光源121と、コリメータレンズ122と、偏光ビームスプリッタ123と、対物レンズ124と、VCM(Voice Coil Motor)アクチュエーター125と、シリンドリカルレンズ126とを備える。
【0010】
レーザー光源121は、レーザー光を出力する。コリメータレンズ122は、レーザー光源121から出力されたレーザー光を平行光化して、偏光ビームスプリッタ123に出力する。
【0011】
偏光ビームスプリッタ123は、コリメータレンズ122から出力されたレーザー光を対物レンズ124に向けて透過させる。また、偏光ビームスプリッタ123は、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光が原盤1で反射され、対物レンズ124を介して入射してきた反射光をシリンドリカルレンズ126に反射する。
【0012】
対物レンズ124は、偏光ビームスプリッタ123を透過したレーザー光を集光して、原盤1に向けて出射する。VCMアクチュエーター125は、駆動電流(VCM電流)に応じて、対物レンズ124を原盤1に向かう方向に沿って変位させる(前後に移動させる)。対物レンズ124を変位させることで、対物レンズ124から出射されるレーザー光の焦点位置が変化する。したがって、オプティカルピックアップ12は、レーザー光のフォーカスを調整可能である。
【0013】
シリンドリカルレンズ126は、偏光ビームスプリッタ123により反射された光(原盤1からの反射光)を光センサー13の受光面上に集光する。
【0014】
光センサー13は、シリンドリカルレンズ126からの光(原盤1からの反射光)を受光面にて受光し、受光した光に応じた出力を行うセンサーであり、例えば、4分割PD(Photo Diode)である。光センサー13は、例えば、図8に示すように、4つの領域(領域A,B,C,D)に分割された受光面を備える。
【0015】
原盤1に照射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦している場合には、光センサー13の受光面で受光される光は、図9Aに示すように、真円となり、領域A~Dで概ね均等となる。一方、原盤1に照射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦していない(レーザー光のフォーカスに誤差がある)場合には、光センサー13の受光面で受光される光は、図9B,9Cに示すように、楕円形で斜めに傾いた形状となる。光センサー13は、領域A~Dそれぞれに照射された光に対応する電圧V~Vを誤差演算部14に出力する。
【0016】
図7を再び参照すると、誤差演算部14は、原盤1に照射されたレーザー光のフォーカス誤差に応じた出力を行う。具体的には、誤差演算部14は、以下の式(1)に基づき、原盤1に照射されたレーザー光のフォーカス誤差に応じた電圧(フォーカス誤差電圧)を算出し、算出したフォーカス誤差電圧を減算器15に出力する。
フォーカス誤差電圧=(V+V)-(V+V) ・・・式(1)
【0017】
上述したように、原盤1に照射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦している場合には、光センサー13の受光面で受光される光は真円となり、4つの領域に均等に光が照射される。そのため、式(1)により算出されるフォーカス誤差電圧は概ね0となる。一方、原盤1に照射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦していない場合には、光センサー13の受光面で受光される光は楕円形で斜めに傾いた形状となる。そのため、式(1)により算出されるフォーカス誤差電圧は0とならない。したがって、誤差演算部14からは、原盤1に照射されたレーザー光のフォーカス誤差に応じたフォーカス誤差電圧が出力される。
【0018】
減算器15は、フォーカス誤差電圧目標値と誤差演算部14の出力(フォーカス誤差電圧)との差分を算出し、算出した差分を制御演算部16に出力する。フォーカス誤差電圧目標値は、例えば、原盤1に照射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦している状態での誤差演算部14の出力電圧に相当する値である。
【0019】
制御演算部16は、減算器15により算出された差分が0となるように対物レンズ124を移動させるためのVCMアクチュエーター125の制御信号を生成し、増幅部17に出力する。制御演算部16は、例えば、比例積分制御(PID制御など)に従い制御信号を生成する。
【0020】
増幅部17は、制御演算部16から出力された制御信号を増幅し、駆動電流としてVCMアクチュエーター125に出力する。したがって、VCMアクチュエーター125は、減算器15により算出された差分が0となるように制御される。つまり、制御演算部16は、VCMアクチュエーター125の駆動電流を制御することで、オプティカルピックアップ12から出射されるレーザー光のフォーカスを制御する。このように、露光装置100は、フォーカス誤差を抑制するようにレーザー光の焦点位置を調整する、減算器15から誤差演算部14に至るフォーカスサーボループによるオートフォーカス機能を備える。
【0021】
図7に示す露光装置100においては、VCMアクチュエーター125による対物レンズ124の移動によって、レーザー光の焦点位置を調整している。そのため、例えば、原盤1の傾きが大きい場合、VCMアクチュエーター125の変位も大きくなる。VCMアクチュエーター125の変位が大きくなると、VCMアクチュエーター125のゼロ電流(バネフリー)位置からの距離が、フォーカスを引き込むことが可能な、VCMアクチュエーター125の変位の範囲であるフォーカス補正範囲(引込レンジ)の距離を超えてしまうことがある。この状態で、原盤1の表面の傷などにより、原盤1からの反射光が途絶えると、VCMアクチュエーター125の変位がフォーカス位置から大きくずれてしまい、レーザー光を原盤1の表面上で合焦させることが困難となる。その結果、原盤1へのパターンの露光形成を高精度に行うことができなくなってしまう。
【0022】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、原盤へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる露光装置および露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明に係る露光装置は、載置された原盤にレーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置であって、前記レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置と、前記光源装置から出射されるレーザー光のフォーカスを制御する制御演算部と、前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージと、前記補助ステージの位置を制御する補助ステージ制御部と、を備え、前記光源装置は、前記レーザー光を前記原盤に出射する対物レンズと、駆動電流に応じて前記対物レンズを変位させるアクチュエーターとを備え、前記制御演算部は、前記駆動電流を制御し、前記補助ステージ制御部は、前記アクチュエーターの駆動電流に応じて、前記補助ステージの位置を制御する。
【0024】
また、本発明に係る露光装置において、前記レーザー光のフォーカス誤差に応じた出力を行う誤差演算部と、前記レーザー光が前記原盤の表面上で合焦している状態での前記誤差演算部からの出力に相当する目標値と、前記原盤の表面粗さ、前記原盤の傾きおよび前記原盤の偏心の少なくとも1つに応じた、前記原盤の表面と前記光源装置との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値とを加算する加算器と、をさらに備え、前記制御演算部は、前記加算器による加算値と前記誤差演算部の出力との差分に基づき、前記アクチュエーターの駆動電流を制御することが好ましい。
【0025】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る露光装置は、載置された原盤にレーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置であって、前記レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置と、前記光源装置から出射されるレーザー光のフォーカスを調整する制御演算部と、前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージと、前記補助ステージの位置を制御する補助ステージ制御部と、を備え、前記補助ステージ制御部は、予め測定された、前記原盤の表面粗さ、前記原盤の傾きおよび前記原盤の偏心の少なくとも1つに応じた、前記原盤の表面と前記光源装置との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき、前記補助ステージの位置を制御する。
【0026】
また、本発明に係る露光装置において、前記レーザー光のフォーカス誤差に応じた出力を行う誤差演算部と、前記レーザー光が前記原盤の表面上で合焦している状態での前記誤差演算部からの出力に相当する目標値と、前記総合表面形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値とを加算する加算器と、をさらに備え、前記制御演算部は、前記加算器による加算値と前記誤差演算部の出力との差分に基づき、前記レーザー光のフォーカスを制御することが好ましい。
【0027】
また、本発明に係る露光装置において、前記原盤は、円筒状または円柱状の原盤であることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る露光装置において、前記原盤は、平板状の原盤であることが好ましい。
【0029】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る露光方法は、レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置を備え、載置された原盤に前記レーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置による露光方法であって、前記露光装置は、前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージを備え、前記光源装置は、前記レーザー光を前記原盤に出射する対物レンズと、駆動電流に応じて前記対物レンズを変位させるアクチュエーターとを備え、前記アクチュエーターの駆動電流に応じて、前記補助ステージの位置を制御する。
【0030】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る露光方法は、レーザー光を出射し、前記レーザー光のフォーカスを調整可能な光源装置を備え、載置された原盤に前記レーザー光を照射してパターンを露光形成する露光装置による露光方法であって、前記露光装置は、前記光源装置が載置され、前記原盤に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージを備え、予め測定された、前記原盤の表面粗さ、前記原盤の傾きおよび前記原盤の偏心の少なくとも1つに応じた、前記原盤の表面と前記光源装置との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき、前記補助ステージの位置を制御する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る露光装置および露光方法によれば、原盤へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態に係る露光装置の構成例を示す図である。
図2】ERR信号およびSUM信号の波形を示す図である。
図3図1に示す露光装置による露光方法について説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る露光装置の構成例を示す図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る露光装置の構成例を示す図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る露光装置の構成例を示す図である。
図7】従来の露光装置の構成例を示す図である。
図8】光センサーの受光面の一例を示す図である。
図9A】原盤の表面でレーザー光が合焦している場合の、光センサーの受光面での受光状態を示す図である。
図9B】原盤の表面でレーザー光が合焦していない場合の、光センサーの受光面での受光状態の一例を示す図である。
図9C】原盤の表面でレーザー光が合焦していない場合の、光センサーの受光面での受光状態の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る露光装置10の構成例を示す図である。本実施形態に係る露光装置10は、原盤1にレーザー光を照射してパターンを露光形成するものである。図1において、図7と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0035】
図1に示す露光装置10は、スピンドルモーター11と、光源装置としてのオプティカルピックアップ12と、光センサー13と、誤差演算部14と、減算器15と、制御演算部16と、増幅部17と、補助ステージ21と、電流検出部22と、LPF(Low Pass Filter)23と、減算器24と、補助ステージ制御部25とを備える。すなわち、本実施形態に係る露光装置10は、図7に示す露光装置100と比較して、補助ステージ19を補助ステージ21に変更した点と、電流検出部22、LPF23、減算器24および補助ステージ制御部25を追加した点とが異なる。なお、図1においては、オプティカルピックアップ12と光センサー13とを分けて記載しているが、光センサー13は、オプティカルピックアップ12に含まれていてもよい。
【0036】
補助ステージ21には、オプティカルピックアップ12および光センサー13からなる光学ヘッド18が搭載される。補助ステージ21は、スピンドルモーター11に載置された円筒状(または円柱状)の原盤1の軸方向に沿って移動可能である。すなわち、オプティカルピックアップ12は、原盤1の軸方向にスライド可能である。
【0037】
また、補助ステージ21は、スピンドルモーター11に載置された原盤1に向かう方向に位置を調整可能である。補助ステージ21を載置された原盤1に向かう方向に移動させることで、オプティカルピックアップ12と原盤1との距離が調整可能となる。これにより、詳細は後述するが、VCMアクチュエーター125を変位を抑制することができる。
【0038】
電流検出部22は、VCMアクチュエーター125を駆動する駆動電流(VCM電流)を検出し、検出結果をLPF23に出力する。
【0039】
LPF23は、電流検出部22により検出されたVCMアクチュエーター125の駆動電流を平均化して、減算器24に出力する。
【0040】
減算器24は、LPF23から出力されたVCMアクチュエーター125の駆動電流の平均値と、VCM電流目標値との差分を演算し、演算結果を補助ステージ制御部25に出力する。VCM電流目標値は、例えば、VCMアクチュエーター125の変位が0である状態でのVCMアクチュエーター125の駆動電流に相当する値である。
【0041】
補助ステージ制御部25は、VCMアクチュエーター125の駆動電流に応じて、補助ステージ21の位置を制御する。具体的には、補助ステージ制御部25は、減算器24により算出された差分が0となるように、補助ステージ21の位置を制御する。すなわち、補助ステージ制御部25は、VCMアクチュエーター125の変位が0に近づくように、補助ステージ21の位置を制御する。
【0042】
図9A図9Cを参照して説明したように、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦しているか否かに応じて、光センサー13の受光面で受光状態が異なる。すなわち、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦している場合には、図9Aに示すように、光センサー13の受光面で受光される光は、真円となり、領域A~Dで概ね均等となる。一方、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光が原盤1の表面上で合焦していない場合には、図9B,9Cに示すように、光センサー13の受光面で受光される光は、楕円形で斜めに傾いた形状となる。
【0043】
以下の式(2)で示されるエラー信号(ERR信号)、および、以下の式(3)で示される和信号(SUM信号)の波形を考える。
ERR信号=(V+V)-(V+V) ・・・式(2)
SUM信号=V+V+V+V ・・・式(3)
【0044】
ERR信号およびSUM信号はそれぞれ、VCMアクチュエーター125の駆動電流(VCM電流)に応じて、図2に示すような波形となる。VCMアクチュエーター125により対物レンズ124を変位させることでレーザー光のフォーカスを制御する場合、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離の変動に応じてフォーカスを保持することが出来る範囲(フォーカス補正範囲)には制限がある。一般的には、フォーカス補正範囲は、図2に示すように、S字状のERR信号の極大点よりも少し高電流側から、S字状のERR信号の極小点よりも少し低電流側までの範囲である。すなわち、フォーカス補正範囲は、S字状のERR信号が0の地点を中心として、ERR信号の全体の幅の1/2よりも少し小さい範囲である。フォーカス補正範囲をVCMアクチュエーター125の変位で表すと、例えば、20μm程度、すなわち、VCMアクチュエーター125の変位が0の位置を中心として前後方向にそれぞれ10μm程度の範囲である。
【0045】
上述したように、補助ステージ制御部25は、VCMアクチュエーター125の駆動電流と、VCMアクチュエーター125の変位が0である状態でのVCMアクチュエーター125の駆動電流に相当するVCM電流目標値との偏差が0になるように制御する。すなわち、補助ステージ制御部25は、VCMアクチュエーター125の変位が0となるように補助ステージの位置を制御する。その結果、VCMアクチュエーター125の変位は、フォーカス補正範囲に含まれる可能性が高くなる。
【0046】
図7を参照して説明したように、対物レンズ124の変位のみによっても、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光を原盤1上で合焦させることはできる。ただし、原盤1の傾きなどによっては、VCMアクチュエーター125のゼロ電流(バネフリー)位置からの距離が、フォーカス補正範囲(引込レンジ)を超えた状態で、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光が原盤1上で合焦することがある。この場合、原盤1の表面の傷などにより、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離が瞬時的に変動すると、VCMアクチュエーター125の変位がフォーカス補正範囲を超えているため、フォーカスを保持できないことがある。
【0047】
一方、本実施形態においては、補助ステージ制御部25が、VCMアクチュエーター125の変位が0となるように(VCMアクチュエーター125の変位がフォーカス補正範囲に含まれるように)補助ステージ21の位置を制御するため、原盤1の表面の傷などにより、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離が瞬時的に変動した場合も、対物レンズ124によるフォーカス制御により、原盤1上でのレーザー光のフォーカスを保持することができる。したがって、原盤1へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる。
【0048】
なお、VCMアクチュエーター125は、駆動電流を大きくすれば、変位も大きくなる。そのため、必要に応じて駆動電流を大きくすることで、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光を原盤1上で合焦させることができる。ただし、駆動電流を大きくすると、発熱が大きくなり、VCMアクチュエーター125の寿命が短くなる。また、駆動電流を大きくすると、駆動電流と変位との直線性が低下するため、オートフォーカスループゲインも低下する。理想的には、バネフリーの中心位置(変位が0の位置)からVCMアクチュエーター125のストローク範囲の1/4程度の範囲で、VCMアクチュエーター125を変位させることが望ましい。
【0049】
次に、本実施形態に係る露光装置10による露光方法について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0050】
まず、円筒状の原盤1がスピンドルモーター11に載置される(ステップS101)。次に、スピンドルモーター11の回転速度(SP回転速度)が設定され(ステップS102)、その設定に従い、スピンドルモーター11が回転する(ステップS103)。
【0051】
また、円筒状の原盤1の軸方向に沿ってスライドを開始するスタート位置(SLスタート位置)にオプティカルピックアップ12を移動させ(ステップS104)、原盤1の軸方向に沿ったオプティカルピックアップ12のスライド速度(SL速度)が設定される(ステップS105)。
【0052】
次に、レーザー光源121がオン(LD-ON)となり、レーザー光を出射するとともに、露光装置10のオートフォーカス機能(減算器15から誤差演算部14に至るオートフォーカスサーボループによるオートフォーカス機能)がオンとなる(AF-ON)(ステップS106)。
【0053】
そして、SL速度の設定に従い、オプティカルピックアップ12がスライドを開始し、原盤1への露光が開始される(ステップS107)。
【0054】
補助ステージ制御部25は、VCMアクチュエーター125の駆動電流に応じて、補助ステージ21の位置を制御する(ステップS108)。すなわち、原盤1へのレーザー光の照射に応じて、対物レンズ124の変位によるフォーカス制御および補助ステージ21の位置の制御が行われる。原盤1への露光が終了すると(ステップS109)、露光装置10は処理を終了する。
【0055】
このように本実施形態においては、露光装置10は、レーザー光を出射し、レーザー光のフォーカスを調整可能なオプティカルピックアップ12と、オプティカルピックアップ12から出射されるレーザー光のフォーカスを制御する制御演算部16と、オプティカルピックアップ12が載置され、スピンドルモーター11に載置された原盤1に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージ21と、補助ステージ21の位置を制御する補助ステージ制御部25とを備える。オプティカルピックアップ12は、レーザー光を原盤1に出射する対物レンズ124と、駆動電流に応じて対物レンズ124を変位させるVCMアクチュエーター125とを備える。補助ステージ制御部25は、VCMアクチュエーター125の駆動電流に応じて、補助ステージ21の位置を制御する。
【0056】
VCMアクチュエーター125の駆動電流は、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離に対応する。したがって、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離に応じて、原盤1に向かう方向に補助ステージ21の位置を制御することで、VCMアクチュエーター125の変位を小さくすることができる。そのため、原盤1の表面の傷などにより、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離が瞬時的に変動した場合にも、VCMアクチュエーター125による対物レンズ124の変位により、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光を原盤1上で合焦させることができる。その結果、原盤1へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる。
【0057】
また、VCMアクチュエーター125の変位が小さくなるように補助ステージ21の位置を制御することで、VCMアクチュエーター125における過剰テンションの発生および発熱を抑制し、省電力化および長寿命化を図ることができる。なお、オプティカルピックアップ12および光センサー13からなる光学ヘッド18を搭載した補助ステージ21は一般的に設けられるものであるため、大きなコストアップを招くことも無い。
【0058】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る露光装置10Aの構成例を示す図である。図4において、図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0059】
図4に示す露光装置10Aは、スピンドルモーター11と、オプティカルピックアップ12と、光センサー13と、誤差演算部14と、減算器15と、制御演算部16と、増幅部17と、補助ステージ21と、補助ステージ制御部25Aとを備える。すなわち、本実施形態に係る露光装置10Aは、図1に示す露光装置10と比較して、電流検出部22、LPF23、減算器24を削除した点と、補助ステージ制御部25を補助ステージ制御部25Aに変更した点とが異なる。
【0060】
補助ステージ制御部25Aは、予め測定された総合表面形状データに基づき、VCMアクチュエーター125の変位が0に近づくように、補助ステージ21の原盤1に向かう方向の位置を制御する。ここで、総合表面形状データとは、原盤1の表面粗さ(凹凸)、載置された原盤1の傾きおよび原盤1の偏心の少なくとも1つに応じた、原盤1の表面とオプティカルピックアップ12との相対的な位置関係を示すデータである。
【0061】
総合表面形状データは、スピンドルモーター11に載置された原盤1の表面粗さ、載置された原盤1の傾きおよび原盤1の偏心の少なくとも1つを予め測定することで得られる。総合表面形状データの測定は、例えば、以下のようにして行われる。
【0062】
まず、原盤1がスピンドルモーター11に載置される。次に、スピンドルモーター11の回転速度が設定され、その設定に従い、スピンドルモーター11が回転する。
【0063】
また、オプティカルピックアップ12がスライドの開始位置へ移動し、オプティカルピックアップ12のスライド速度を設定する。
【0064】
次に、レーザー光源121をオンにしてレーザー光を出力させるとともに、オートフォーカス機能をオンにする。また、フォーカス誤差電圧またはVCM電流を測定する測定間隔を設定する。そして、オプティカルピックアップ12のスライドを開始し、フォーカス誤差電圧またはVCM電流を設定した測定間隔で測定し、総合表面形状データの測定を開始する。例えば、減算器15から誤差演算部14に至るフォーカスサーボループのループ伝達関数は既知であるため、フォーカス誤差電圧から総合表面形状データを取得することができる。レーザー光による原盤1の全面または一部(所定の範囲)のスキャンを終了すると、総合表面形状データの測定を終了する。
【0065】
なお、総合表面形状データとしては、レーザー変位計を用いて取得してもよい。また、一般的に、露光装置には、スピンドルモーター11に載置される原盤1の偏心および傾きが小さくするための偏心傾き調整機構が設けられていることが多い。総合表面形状データは、偏心傾き調整機構の制御データから取得してもよい。
【0066】
このように本実施形態においては、露光装置10Aは、レーザー光を出射し、レーザー光のフォーカスを調整可能なオプティカルピックアップ12と、オプティカルピックアップ12から出射されるレーザー光のフォーカスを調整する制御演算部16と、オプティカルピックアップ12が載置され、原盤1に向かう方向に位置を調整可能な補助ステージ21と、補助ステージ21の位置を制御する補助ステージ制御部25Aとを備える。補助ステージ制御部25Aは、予め測定された、原盤1の表面粗さ、原盤1の傾きおよび原盤1の偏心の少なくとも1つに応じた、原盤1の表面とオプティカルピックアップ12との相対的な位置関係を示す総合表面形状データに基づき、補助ステージ21の位置を制御する。
【0067】
総合表面形状データに基づき原盤1に向かう方向に補助ステージ21の位置を制御することで、VCMアクチュエーター125の変位を小さくすることができる。そのため、原盤1の表面の傷などにより、原盤1とオプティカルピックアップ12との距離が瞬時的に変動した場合にも、VCMアクチュエーター125による対物レンズ124の変位により、オプティカルピックアップ12から出射されたレーザー光を原盤1上で合焦させることができる。その結果、原盤1へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる。
【0068】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る露光装置10Bの構成例を示す図である。図5において、図1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0069】
図7に示す露光装置10においては、フォーカス誤差を完全に取り除くことはできず、減算器15から誤差演算部14に到るフォーカスサーボループ全体でのループ伝達関数(ゲイン)分の1程度の誤差(取り残し誤差)が生じてしまう。特に、載置された原盤1にパターンを露光形成する場合に、原盤1の表面の粗さ(凹凸)、原盤1の傾きおよび原盤1の偏心などの影響により、オプティカルピックアップ12と原盤1の表面との相対的な位置関係にバラツキが大きいと、取り残し誤差も大きくなってしまう。取り残し誤差が大きくなると、原盤1へのパターンの露光形成が高精度に行うことができなくなってしまう。本実施形態に係る露光装置10Bは、このような取り残し誤差を小さくすることで、原盤1へのパターンの露光形成の更なる高精度化を図るものである。
【0070】
図5に示す露光装置10Bは、スピンドルモーター11と、オプティカルピックアップ12と、光センサー13と、誤差演算部14と、減算器15Bと、制御演算部16と、増幅部17と、補助ステージ21と、電流検出部22と、LPF23と、減算器24と、補助ステージ制御部25と、加算器31とを備える。すなわち、本実施形態に係る露光装置10Bは、図1に示す露光装置10と比較して、加算器31を追加した点と、減算器15を減算器15Bに変更した点とが異なる。
【0071】
加算器31は、総合表面形状データに基づき生成された補正信号に従い生成される、露光を行う原盤1の表面上の位置に応じて、フォーカス誤差電圧目標値に加算するフォーカスオフセット(オフセット値)が入力される。加算器31は、フォーカス誤差電圧目標値と、入力されたフォーカスオフセットとを加算し、加算値を減算器15Bに出力する。
【0072】
減算器15Bは、加算器31の出力値と誤差演算部14から出力されたフォーカス誤差電圧との差分を演算し、演算結果を制御演算部16に出力する。以下、図1に示す露光装置10と同様に、減算器15Bにより算出された差分が0となるように、VCMアクチュエーター125が制御される。上述したように、図7に示す露光装置100では、フォーカス誤差電圧目標値とフォーカス誤差電圧との差分が0となるように制御しても、フォーカスサーボループのループ伝達関数分の1程度のフォーカス誤差が残ってしまう。一方、本実施形態に係る露光装置10Bでは、総合表面形状データに基づき、フォーカスサーボループでは取り除ききれないフォーカス誤差が0となるようにフォーカス誤差電圧目標値を補正するフォーカスオフセットをフォーカス誤差電圧目標値に加算してからフォーカス制御を行うため、より高精度にフォーカス誤差を抑制することができ、その結果、原盤1へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる。
【0073】
次に、補正信号の生成方法について説明する。
【0074】
まず、第2の実施形態において説明したように、レーザー光による原盤1のスキャンを行いつつ、所定のサンプリングレートでフォーカス誤差を測定する。次に、測定されたフォーカス誤差電圧と既知のループ伝達関数とに基づき、フォーカス誤差電圧が0となるようにフォーカスオフセットを調整するための補正信号(テーブルまたは関数)を算出する。
【0075】
補正信号の生成は、フォーカス誤差電圧を用いた方法に限られるものではなく、例えば、VCMアクチュエーター125の駆動電流(VCM電流)を用いて補正信号を生成することも可能である。以下では、VCM電流を用いた補正信号の生成方法について説明する。
【0076】
まず、レーザー光による原盤1のスキャンを行いつつ、所定のサンプリングレートでVCM電流を測定する。上述したように、オートフォーカス機能によりフォーカス誤差を抑制するようにVCMアクチュエーター125が駆動される。したがって、VCM電流は、対物レンズ124の変位量、すなわち、原盤1の表面とオプティカルピックアップ12との相対的な位置関係を示すものである。次に、測定されたVCM電流と既知のループ伝達関数とに基づき、フォーカス誤差電圧が0となるようにフォーカスオフセットを調整するための補正信号を算出する。
【0077】
フォーカス誤差電圧が小さく、量子化誤差が大きい場合、フォーカス誤差電圧に基づいて補正信号を生成すると、誤差が大きくなってしまう。この場合、VCM電流から対物レンズ124の変位量を計算し、その変位量と、フォーカスサーボ伝達関数と、光センサー13の特性とから、取り残し誤差を予測し、予測した取り残し誤差を補償するような補正信号を生成する。こうすることで、高精度な補正信号を生成することができる。
【0078】
また、フォーカス誤差電圧およびVCM電流の双方を測定し、これらの測定結果から補正信号を生成してもよい。
【0079】
なお、上述したように、光センサー13はオプティカルピックアップ12に含まれていてもよい。この場合、フォーカス誤差電圧およびVCM電流は、オプティカルピックアップ12で検出することができる。したがって、オプティカルピックアップ12により、フォーカス誤差電圧およびVCM電流を測定し、その測定結果に基づき総合表面形状データを取得することができる。
【0080】
また、変位計を用いて、原盤1の総合表面形状データを測定し、その測定結果から補正信号を生成してもよい。この場合、レーザー変位計、レーザー干渉変位計または静電容量変位計などの変位計を用いて、原盤1の総合表面形状データを測定する。そして、変位計による測定結果と、既知のフォーカスサーボ伝達関数とに基づき補正信号を生成する。
【0081】
このように本実施形態においては、露光装置10Bは、フォーカス誤差電圧目標値と、総合表面形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値とを加算する加算器31と、加算器31による加算値と誤差演算部14の出力との差分を演算する減算器15Bと、減算器15Bにより演算された差分に基づき、レーザー光のフォーカスを制御する制御演算部16とを備える。
【0082】
総合形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値をフォーカス誤差電圧目標値に加算することで、フォーカスサーボループだけでは取り除ききれないフォーカス誤差を抑制し、より高精度にフォーカス誤差を抑制することができ、その結果、原盤1へのパターンの露光形成をより高精度に行うことができる。また、より高精度にフォーカス制御を行うことができるため、原盤1に求められる表面の研磨精度を下げることができるので、コストの増加を抑制することもできる。
【0083】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係る露光装置10Cの構成例を示す図である。図6において、図4,5と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0084】
図6に示す露光装置10Cは、スピンドルモーター11と、オプティカルピックアップ12と、光センサー13と、誤差演算部14と、減算器15Bと、制御演算部16と、増幅部17と、補助ステージ21と、補助ステージ制御部25Aと、加算器31とを備える。すなわち、本実施形態に係る露光装置10Cは、図4に示す露光装置10と比較して、加算器31を追加した点と、減算器15を減算器15Bに変更した点とが異なる。加算器31および減算器15Bの動作は第3の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0085】
このように、総合表面形状データに基づき補助ステージ21の位置を制御する場合にも、総合形状データに基づき生成された補正信号に基づくオフセット値をフォーカス誤差電圧目標値に加算することで、取り残し誤差を小さくし、原盤1へのパターンの露光形成の更なる高精度化を図ることができる。
【実施例
【0086】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0087】
(原盤について)
まず、レーザー光の照射によりパターンを露光形成するための原盤として、ガラス製で円筒状の原盤を用意した。原盤の半径は140mmであり、長さは500mmであった。また、原盤の厚みばらつきは、500μmであった。また、円筒状の原盤の表面形状誤差は40μmp-pであった。
【0088】
(実施例1)
本実施例では、図1を参照して説明した露光装置10を用いて、用意した原盤にパターンを露光形成した。露光の際のスピンドルモーター11の回転速度は900rpmとした。また、円筒状の原盤の軸方向に沿ったオプティカルピックアップのスライド速度は3μm/sec.とした。また、レーザー光源としては、波長405nmのレーザー光を出射するレーザーダイオードを用いた。また、VCMアクチュエーターの感度は4mm/Aであり、変位のストロークは±400μmであった。
【0089】
(実施例2)
本実施例では、図4を参照して説明した露光装置10Aを用いて、実施例1と同じ条件で、用意した原盤にパターンを露光形成した。
【0090】
(実施例3)
本実施例では、図5を参照して説明した露光装置10Bを用いて、実施例1と同じ条件で、用意した原盤にパターンを露光形成した。
【0091】
(実施例4)
本実施例では、図6を参照して説明した露光装置10Cを用いて、実施例1と同じ条件で、用意した原盤にパターンを露光形成した。
【0092】
(比較例1)
本比較例では、図7を参照して説明した露光装置10を用いて、実施例1と同じ条件で、用意した原盤にパターンを露光形成した。
【0093】
(比較例2)
本比較例では、補助ステージの位置の制御を行わずに、フォーカスオフセットを用いたフォーカス制御のみを行い、用意した原盤にパターンを露光形成した。
【0094】
上述した実施例1-4および比較例1,2によるパターンの露光形成の評価結果について、説明する。
【0095】
実施例1-4および比較例1,2によるパターンの露光形成におけるVCMアクチュエーターの発熱およびフォーカス性能の評価を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示すように、VCMアクチュエーターの発熱については、実施例1-4では良好な結果が得られた(評価結果:「丸印」)のに対し、比較例1,2では良好な結果が得られなかった(評価結果:「ばつ印」)。なお、表1においては、発熱量が所定の閾値(例えば、50mW~100mW)以下であれば評価結果を良好としている。
【0098】
実施例1-4では、VCM電流の平均電流は略0Aであった。この場合、VCMアクチュエーターのコイル抵抗Rは約10Ωである。VCM電流のAC実効電流Iは約3.5mAであるので、実施例1-4では、(I^2)*R=(3.5mW^2)*10=0.1225mW程度の発熱量であった。
【0099】
一方、例えば、比較例1では、VCM電流のAC実効電流Iは最大200mAであった。したがって、比較例1では、(I^2)*R=(200mW^2)*10=400mW程度の発熱量であった。
【0100】
このように、実施例1-4では、比較例1,2と比べて、VCMアクチュエーターの発熱が抑制された。
【0101】
また、表1に示すように、実施例1、2では、低域の凹凸に対して良好なフォーカス性能が得られた。また、実施例3,4では、低域および高域の凹凸に対して良好なフォーカス性能が得られた。また、比較例1では、低域の凹凸に対して良好なフォーカス性能が得られた。また、比較例2では、低域および高域の凹凸に対して良好なフォーカス性能が得られた。
【0102】
なお、低域の凹凸とは、概ねDC~1Hz程度の周波数に対応する周期を有する凹凸を指す。また、広域の凹凸とは、概ね数Hz以上の周波数に対応する周期を有する凹凸を指す。例えば、スピンドルモーター11の回転数が300rpmの場合では5Hzであり、スピンドルモーター11の回転数が900rpmでは15Hz以上となる。
【0103】
また、比較例1,2では、対物レンズ124の位置を制御するだけであるので、例えば、VCMアクチュエーターのストロークを400μmとし、フォーカス補正範囲を20μmとすると、(20μm/400μm)*100=5%程度しかVCMアクチュエーターの変位がフォーカス補正範囲(引込レンジ)に含まれない。一方、実施例1-4では、VCMアクチュエーターの変位が0に近づくように、補助ステージ21の位置が制御されるので、VCMアクチュエーターの変位は、略100%フォーカス補正範囲(引込レンジ)に含まれた。
【0104】
上述した実施形態1-4では、原盤1は、円筒状である例を用いて説明したが、本発明はこれにかぎられるものではない。原盤1は、例えば、平板状であってもよい。
【0105】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0106】
10,10A,10B,10C,100 露光装置
11 スピンドルモーター
12 オプティカルピックアップ
121 レーザー光源
122 コリメータレンズ
123 偏光ビームスプリッタ
124 対物レンズ124
125 アクチュエーター
126 シリンドリカルレンズ
13 光センサー
14 誤差演算部
15,15B 減算器
16 制御演算部
17 増幅部
18 光学ヘッド
19,21 補助ステージ
22 電流検出部
23 LPF
24 減算器
25,25A 補助ステージ制御部
31 加算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C