(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221209BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221209BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/68 A
H01L21/68 N
H01L21/304 648A
(21)【出願番号】P 2019121646
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
(72)【発明者】
【氏名】上原 大貴
(72)【発明者】
【氏名】河原 啓之
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332230(JP,A)
【文献】特開2009-260036(JP,A)
【文献】特開2017-147330(JP,A)
【文献】特開2018-82043(JP,A)
【文献】特開2014-27298(JP,A)
【文献】特開2018-56203(JP,A)
【文献】特開2014-49463(JP,A)
【文献】特開2003-59998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
H01L 21/683
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための処理空間を形成し、側部に前記処理空間と連通する開口を有する処理チャンバと、
上面が処理対象の前記基板を水平姿勢に支持する支持面となった平板形状を有し、前記開口を介して前記処理空間に対し挿抜可能な支持トレイと、
前記処理チャンバ外に設けられて、前記処理チャンバから引き出された前記支持トレイとの間で前記基板を受け渡す移載機構と
を備え、
前記移載機構は、
前記支持トレイに設けられた貫通孔を介して上端部が前記支持面よりも上方に突出して前記基板の下面に当接することで、前記基板を下方から支持可能な複数のリフトピンと、
前記複数のリフトピンが取り付けられたベース部と、
前記ベース部を昇降させる昇降部と
を有し、
前記昇降部が、前記ベース部の上面が前記支持トレイの下面に近接または当接する位置まで上昇し前記リフトピンの前記上端部が前記支持面よりも上方に突出する上部位置と、前記リフトピンの前記上端部が前記支持面よりも下方に退避する下部位置との間で前記ベース部を昇降させる、基板処理装置。
【請求項2】
前記上部位置において、前記ベース部の前記上面が前記支持トレイの前記下面に当接する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記移載機構は、前記ベース部を冷却する冷却部を有する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記冷却部は、前記下部位置にある前記ベース部を冷却する請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記冷却部が前記ベース部に設けられた請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ベース部は、前記支持トレイの前記下面に近接配置された状態で該下面に向けて冷却用気体を吹き出す請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ベース部の前記上面は、液体を保持可能な凹面となっている請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数のリフトピンは、前記処理チャンバ内での処理を受ける前の前記基板を支持する複数の搬入用リフトピンと、前記処理後の前記基板を支持する複数の搬出用リフトピンとを含み、
前記搬出用リフトピンが前記ベース部に取り付けられて前記ベース部と一体的に昇降する一方、前記搬入用リフトピンは前記ベース部とは独立して昇降可能である請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
処理チャンバ内で基板を処理する基板処理方法において、
移載機構が、未処理の前記基板を、上面が前記基板を水平姿勢に支持する支持面となった平板形状を有する支持トレイに載置する工程と、
前記支持トレイが前記処理チャンバの側部に設けられた開口を介して前記処理チャンバ内に進入することで前記基板を前記処理チャンバ内に搬入する工程と、
前記処理チャンバ内で前記基板に対し所定の処理を実行する工程と、
前記移載機構が、前記処理チャンバから取り出された前記支持トレイに載置されている処理済みの前記基板を前記支持トレイから外部へ払い出す工程と
を備え、
前記移載機構は、前記支持トレイに設けられた貫通孔を介して複数のリフトピンを昇降させることで前記支持トレイとの間で前記基板を受け渡し、前記複数のリフトピンは共通のベース部に取り付けられて前記ベース部と一体的に昇降し、
前記処理済みの基板を払い出す際、前記ベース部の上面が前記支持トレイの下面に近接または当接して前記支持トレイを冷却する、基板処理方法。
【請求項10】
冷却された前記ベース部を前記支持トレイに当接させて前記支持トレイを冷却する請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記処理チャンバ内で前記処理が行われている間に、前記ベース部が冷却される請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記所定の処理は、前記基板の温度上昇を伴う処理である請求項9ないし11のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記所定の処理は、超臨界流体を用いた処理である請求項9ないし11のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記未処理の基板は、上面に液膜が形成された状態で前記処理チャンバに搬入される請求項9ないし13のいずれかに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理チャンバ内で基板に所定の処理を実行する基板処理装置および基板処理方法に関するものであり、特に処理チャンバに対する基板の搬入および搬出に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程には、基板が処理チャンバに収容された状態で行われる処理が含まれる場合がある。この場合、処理の前後で、チャンバと外部との間での基板の受け渡しが必然的に生じる。このような基板の受け渡しをスムーズに行うために、基板を平板状のトレイに載置した状態で処理チャンバ内に搬入するように構成された装置がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の基板処理装置は、超臨界流体を用いて基板の乾燥処理を行うための装置である。この装置では、処理チャンバの側面に設けられたスリット状の開口を介して基板の出し入れを行うために、基板が平板トレイ状の保持板に載置された状態でチャンバ内に搬入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-082043号公報
【文献】特開2019-021806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理チャンバ内での処理には、基板の温度上昇を伴うものがある。例えば特許文献1に記載の超臨界乾燥処理においても、超臨界状態を実現するためにチャンバ内を高温・高圧状態にする必要がある。そのため、処理直後においては基板や処理チャンバ内の構成部品が高温となっている。このことは、複数の基板を連続的に処理する場合に問題となり得る。というのは、先の基板の処理直後に未処理の基板が装置に搬入されると、高温状態の構成部品に触れるまたは接近することで基板の温度が上昇してしまい、このことが処理プロセスに悪影響を及ぼすことがあるからである。特に、未処理基板が何らかの液体または固体の表面層で覆われた状態で搬入される場合、表面層が温められることで変質したり、揮発して基板表面が露出したりすることがある。
【0006】
この問題を解決するために、例えば特許文献2に記載されたように、処理後の基板を冷却するための機構を処理チャンバ内に設けることも考えられる。しかしながら、この場合には、処理後の基板が冷却されてから外部へ搬出されることとなるため、1枚の基板に対する処理時間が長くなり、処理のスループットが低下するという問題が生じる。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の温度上昇を伴う処理であっても、スループットの低下を生じさせず、複数の基板を効率よく処理することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の態様は、上記目的を達成するため、基板を処理するための処理空間を形成し、側部に前記処理空間と連通する開口を有する処理チャンバと、上面が処理対象の前記基板を水平姿勢に支持する支持面となった平板形状を有し、前記開口を介して前記処理空間に対し挿抜可能な支持トレイと、前記処理チャンバ外に設けられて、前記処理チャンバから引き出された前記支持トレイとの間で前記基板を受け渡す移載機構とを備える基板処理装置である。ここで、前記移載機構は、前記支持トレイに設けられた貫通孔を介して上端部が前記支持面よりも上方に突出して前記基板の下面に当接することで、前記基板を下方から支持可能な複数のリフトピンと、前記複数のリフトピンが取り付けられたベース部と、前記ベース部を昇降させる昇降部とを有し、前記昇降部が、前記ベース部の上面が前記支持トレイの下面に近接または当接する位置まで上昇し前記リフトピンの前記上端部が前記支持面よりも上方に突出する上部位置と、前記リフトピンの前記上端部が前記支持面よりも下方に退避する下部位置との間で前記ベース部を昇降させる。
【0009】
また、この発明の他の一の態様は、上記目的を達成するため、処理チャンバ内で基板を処理する基板処理方法において、移載機構が、未処理の前記基板を、上面が前記基板を水平姿勢に支持する支持面となった平板形状を有する支持トレイに載置する工程と、前記支持トレイが前記処理チャンバの側部に設けられた開口を介して前記処理チャンバ内に進入することで前記基板を前記処理チャンバ内に搬入する工程と、前記処理チャンバ内で前記基板に対し所定の処理を実行する工程と、前記移載機構が、前記処理チャンバから取り出された前記支持トレイに載置されている処理済みの前記基板を前記支持トレイから外部へ払い出す工程とを備えている。ここで、前記移載機構は、前記支持トレイに設けられた貫通孔を介して複数のリフトピンを昇降させることで前記支持トレイとの間で前記基板を受け渡し、前記複数のリフトピンは共通のベース部に取り付けられて前記ベース部と一体的に昇降し、前記処理済みの基板を払い出す際、前記ベース部の上面が前記支持トレイの下面に近接または当接して前記支持トレイを冷却する。
【0010】
このように構成された発明では、基板が平板状の支持トレイに載置された状態で処理チャンバへの出し入れが行われる。具体的には、基板を支持可能な複数のリフトピンが共通のベース部に取り付けられており、ベース部の昇降によりリフトピンが一体的に昇降することで、支持トレイ上で基板が上下する。これにより外部装置と支持トレイとの間でリフトピンを介した基板の受け渡しが行われる。複数のリフトピンが一体のベース部に取り付けられることで、リフトピンを機械的に安定して保持することができる。また複数のリフトピンが一体的に昇降するため、細長いリフトピンを個別に昇降させる場合よりも安定した姿勢で基板を昇降させることが可能である。
【0011】
そして、処理後の基板が処理チャンバから外部へ払い出されるとき、これと併行して支持トレイの冷却を行うことが可能である。具体的には、移載機構がリフトピンを上昇させて支持トレイから基板を受け取る際、リフトピンが取り付けられたベース部材がリフトピンと一体的に上昇して支持トレイの下面に近接もしくは当接することで、処理後の支持トレイが持つ熱エネルギーを放散させ支持トレイを冷却する。ベース部は、複数のリフトピンおよびこれに支持される基板を安定的に保持するための機械的強度を有する構造とされる。そのような構造は必然的に比較的大きな熱容量を有するため、処理後の温められた支持トレイから熱エネルギーを奪う能力を有している。
【0012】
すなわち、本発明では、処理チャンバから引き出された支持トレイからリフトピンへ基板を受け渡すための動作が、同時に支持トレイを冷却する動作にもなっている。このため、処理において支持トレイの温度が上昇していたとしても、基板が払い出される間にその温度を下げておくことができる。したがって、処理済みの基板が払い出された後、直ちに未処理の基板を受け入れることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明では、共通のベース部に取り付けられた複数のリフトピンで基板を安定的に支持して外部との基板の受け渡しを行うことができる。支持トレイからの基板の払い出しと併行して支持トレイの冷却が行われるため、払い出し後には直ちに新たな基板を受け入れることができる。そのため、処理によって支持トレイの温度が上昇する場合であっても、その温度上昇による悪影響を回避し、しかも、処理のスループットを低下させることなく効率よく複数の基板を処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2】基板の受け渡しの様子を模式的に示す図である。
【
図3】受け渡しに関与する各部の形状および位置関係を示す図である。
【
図4】支持トレイおよびベース部材の構造をより詳細に示す側面断面図である。
【
図7】この基板処理装置の概略動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の表面を超臨界流体を用いて処理するための装置である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は鉛直方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が鉛直下向きを表す。
【0016】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0017】
基板処理装置1は、処理ユニット10、移載ユニット30、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものであり、移載ユニット30は、図示しない外部の搬送装置により搬送されてくる未処理基板を受け取って処理ユニット10に搬入し、また処理後の基板を処理ユニット10から外部の搬送装置に受け渡す。供給ユニット50は、処理に必要な化学物質および動力を処理ユニット10および移載機構30に供給する。
【0018】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90には、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0019】
処理ユニット10は、台座11の上に処理チャンバ12が取り付けられた構造を有している。処理チャンバ12は、いくつかの金属ブロックの組み合わせにより構成され、その内部が空洞となって処理空間SPを構成している。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバ12の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口121が形成されており、開口121を介して処理空間SPと外部空間とが連通している。
【0020】
処理チャンバ12の(-Y)側側面には、開口121を閉塞するように蓋部材13が設けられている。蓋部材13の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられており、支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。蓋部材13は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。
【0021】
蓋部材13は、供給ユニット50に設けられた進退機構53により、処理チャンバ12に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構53は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材13をY方向に移動させる。進退機構53は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0022】
蓋部材13が(-Y)方向に移動することにより、支持トレイ15が処理空間SPから開口121を介して外部へ引き出されると、支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材13が(+Y)方向に移動することにより、支持トレイ15は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに処理空間SPに搬入される。
【0023】
蓋部材13が(+Y)方向に移動し開口121を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。なお、図示を省略しているが、蓋部材13の(+Y)側側面と処理チャンバ12の(-Y)側側面との間にはシール部材が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。また、図示しないロック機構により、蓋部材13は処理チャンバ12に対して固定される。このようにして処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。
【0024】
この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部57から、超臨界処理に利用可能な物質の流体、例えば二酸化炭素を気体または液体の状態で処理ユニット10に供給する。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。
【0025】
流体は処理空間SPに充填され、処理空間SP内が適当な温度および圧力に到達すると、流体は超臨界状態となる。こうして基板Sが処理チャンバ12内で超臨界流体により処理される。供給ユニット50には流体回収部55が設けられており、処理後の流体は流体回収部55により回収される。流体供給部57および流体回収部55は制御ユニット90により制御されている。
【0026】
移載ユニット30は、外部の搬送装置と支持トレイ15との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット30は、本体31と、昇降部材33と、ベース部材35と、複数のリフトピン37とを備えている。昇降部材33はZ方向に延びる柱状の部材であり、図示しない支持機構により、Z方向に移動自在に支持されている。昇降部材33の上部には略水平の上面を有するベース部材35が取り付けられており、ベース部材35の上面から上向きに、複数のリフトピン37が立設されている。後述するように、リフトピン37の各々は、その上端部が基板Sの下面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン37が設けられることが望ましい。
【0027】
昇降部材33は、供給ユニット50に設けられた昇降機構51により昇降移動可能となっている。具体的には、昇降機構51は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が昇降部材33をZ方向に移動させる。昇降機構51は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0028】
昇降部材33の昇降によりベース部材35が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン37が上下動する。これにより、次に説明するように、移載ユニット30と支持トレイ15との間での基板Sの受け渡しが実現される。
【0029】
図2は基板の受け渡しの様子を模式的に示す図である。また、
図3は受け渡しに関与する各部の形状および位置関係を示す図である。より具体的には、
図3(a)は基板Sの受け渡しに関与する構成を示す斜視図であり、
図3(b)は支持トレイ15の部分拡大断面図である。なお、
図3(a)では、各部の構造を明示するため、部材間のZ方向の距離を実際より拡大している。これらの図に示すように、基板Sの受け渡しは、支持トレイ15が処理チャンバ12から引き出された状態で実行される。このために、移載ユニット30は、引き出された状態の支持トレイ15の下方に当たる位置に配置されている。
【0030】
図2(a)ないし
図2(d)を参照し、基板Sの受け渡しにおける各部の動作について説明する。装置の初期状態は
図1に示されている。この状態から、外部から搬入される基板Sを受け取るとき、
図2(a)に示すように、蓋部材13が(-Y)側に移動して支持トレイ15が処理チャンバ12から引き出される。このときの支持トレイ15の位置を、以下では「引き出し位置」と称する。また、昇降部材33が上昇することでリフトピン27が支持トレイ15の上面(支持面)151より突出した状態となる。
【0031】
図3(a)に示すように、支持トレイ15のうち水平方向におけるリフトピン27の配設位置に対応する位置には、上下方向に貫通する貫通孔152が設けられている。昇降部材33の上昇によってベース部材35が上昇するとき、リフトピン37は貫通孔152を通して支持面151よりも上方に突出する。
【0032】
図3(b)に示すように、貫通孔152内には例えばゴム製、シリコン樹脂製またはフッ素樹脂(例えばPTFE;poly-tetrafluoroethylene)製の環状のシール部材153が装着されている。シール部材153は、リフトピン37と貫通孔152との隙間をシールする。後述するように、基板Sは上面に液膜が形成された状態で搬入されてくるが、仮に一部の液体が基板Sからこぼれ落ちることがあったとしても、それが貫通孔152を介して下方へ落下することは防止される。なお、図を見やすくするため、他の各図においてはシール部材153の図示を省略している。
【0033】
図2(a)に示すように、基板Sは外部の搬送装置に設けられたハンドHにより保持された状態で搬送されてくる。リフトピン37がハンドHの上面よりも上方まで突出することで、基板SはハンドHからリフトピン37に受け渡される。ハンドHとリフトピン37とは互いに干渉しないように形状および配置が定められる。この状態で、ハンドHは側方へ退避することができる。
図2(b)に示すように、昇降部材33が下降することで、リフトピン37により支持される基板Sが下降する。
【0034】
最終的には
図2(c)に示すように、基板Sの下面が支持面151に当接し、リフトピン37が支持面151よりも下方まで下降することで、基板Sはリフトピン37から支持トレイ15へ受け渡される。このようにして、外部搬送装置から支持トレイ15へ基板Sが受け渡される。その後、
図2(d)に示すように、蓋部材13が(+Y)方向へ移動することで、支持トレイ15とともに基板Sが処理チャンバ12の処理空間SPに収容される。
【0035】
処理後の基板Sの搬出は、上記とは逆の動きとなる。すなわち、
図2(c)に示すように、処理後の基板Sが支持トレイ15とともに処理チャンバ12から引き出された後、昇降部材33が上昇することで、リフトピン27が基板Sを支持トレイ15から持ち上げる。そして、
図2(a)に示すように、外部から進入してくるハンドHにリフトピン37から基板Sを受け渡すことで、基板SはハンドHにより保持されることとなる。ハンドHが基板Sを外部へ搬出することで、基板Sは基板処理装置1から払い出される。
【0036】
なお、処理チャンバ12に搬入される基板Sはその上面が液体または固体に覆われている場合がある。例えば基板Sの表面に微細パターンが形成されている場合、基板Sに残留付着している液体の表面張力によってパターンの倒壊が生じるおそれがある。また、不完全な乾燥によって基板Sの表面にウォーターマークが残留する場合がある。また、基板S表面が外気に触れることで酸化等の変質を生じる場合がある。このような問題を未然に回避するために、基板Sの表面を液体または固体の表面層で覆った状態で搬送することがある。
【0037】
したがって、上記した基板Sの受け渡しプロセスのうち、外部から搬入された基板Sが移載ユニット30を介して処理チャンバ12に収容されるプロセスは、基板Sの上面が表面層で覆われた状態で実行されることがある。例えば表面に微細パターンが形成された半導体基板に対しては、基板に対する腐食性が低く比較的低い表面張力を有する液体、例えばIPA(イソプロピルアルコール)やアセトン等により液膜を形成した状態で搬送が実行される。一方、処理チャンバ12から基板Sが搬出されるプロセスにおいては、基板Sは乾燥した状態となっている。
【0038】
図4は支持トレイおよびベース部材の構造をより詳細に示す側面断面図である。このうち
図4(a)は、上記した基板Sの受け渡しの際の上下動においてベース部材35が最も低い位置まで下降した状態を示している。このときのベース部材35の位置を「下部位置」と称することとする。またこのときのリフトピン37の上端部のZ方向位置を「受け渡し位置」と称する。
【0039】
また、
図4(b)は、該上下動においてベース部材35が最も高い位置まで上昇した状態を示している。このときのベース部材35の位置を「上部位置」と称することとする。またこのときのリフトピン37の上端部のZ方向位置を「退避位置」と称する。したがって、ベース部材35は上部位置と下部位置との間を上下方向に往復移動することになる。これに伴い、リフトピン37の上端部は受け渡し位置と退避位置との間を上下方向に往復移動する。
【0040】
概略平板状の支持トレイ15の上面には、部分的に窪んだ凹部が設けられており、凹部の底が平坦な支持面151となっている。この凹部に基板Sが載置される。なお、このような凹部が設けられず、支持トレイ15の上面が平坦面であっても基板Sの支持は可能である。
【0041】
一方、ベース部材35も平板状の部材であり、その上面は略平坦であるが、中央部に対して周縁部が盛り上がった表面形状となっている。言い換えれば、ベース部材35の上面は中央部分が窪んだ凹面となっている。したがってベース部材35の上面は一定量の液体を保持可能となっている。このようにする理由は、基板Sの上面に表面層が形成されているとき、受け渡しの際の振動によってその一部が基板Sからこぼれ落ちたとしても、ベース部材35によってそれを受け止め周囲に飛散するのを防止するためである。つまり、ベース部材35は、基板Sからこぼれ落ちる液体または固体を受け止める受け皿としての機能を有する。このような落下物は主として貫通孔151およびリフトピン37を伝わって下方へ流下するが、リフトピン37の下端はベース部材35の上面に取り付けられているのでベース部材37によって確実に受け止めることができる。
【0042】
そして、複数のリフトピン37はいずれも単一のベース部材35に取り付けられており、ベース部材35の上下動に伴って一体的に上下動する。このような構造では、細長いリフトピンを剛性の高いベース部材35に取り付けることにより、機械的強度を高めることができる。また、複数のリフトピン37が一体的に昇降するため、それらの上端部の相対的な高さが変化せず、各リフトピンが個別に昇降する場合よりも基板Sを安定的に水平姿勢に維持することが可能である。このことは、特に基板Sの上面が液膜で覆われているときに、それを維持するという点で大きな意味を持つ。
【0043】
図4(a)に示すように、ベース部材35が下部位置にあるとき、リフトピン37の上端部は支持プレート15よりも大きく下方へ後退した状態となっている。図に破線で示される、蓋部材13の下端位置よりも下方へ後退していることがより好ましい。このようにすると、基板Sを処理チャンバ12に収容するために蓋部材13が(+Y)方向へ移動する際に、蓋部材13とリフトピン37とが干渉するのを回避することができる。
【0044】
一方、
図4(b)に示すベース部材35の上部位置では、破線で示される蓋部材13の上端位置よりもさらに上方までリフトピン37が達することで、蓋部材13の上方を通って基板Sの下部へハンドHを進入させることができる。これにより、ハンドHとリフトピン37との間での基板Sの受け渡しが可能となる。
【0045】
またこのとき、ベース部材35の上面が支持トレイ15の下面に当接する。両者をよりよく密着させるために、支持トレイ15の下面がベース部材35の上面の曲面に倣う形状に加工されているが、このことは必須ではない。このように、上部位置においてベース部材35を支持トレイ15の下面に当接させるのは、以下の理由による。
【0046】
処理チャンバ12において、本実施形態の超臨界乾燥処理のように基板Sの温度上昇を伴うような処理が行われる場合、処理直後に搬出される基板Sおよび支持トレイ15は高温になっている。処理済み基板の搬出後に新たな基板を受け入れて処理を実行する場合、未処理基板が高温の支持トレイ15に載置されることにより問題が生じるおそれがある。例えば未処理の基板Sが表面に液膜あるいは揮発性固体の膜が形成された状態で搬入される場合、基板Sが温められることでこれらが揮発し基板表面が露出してしまうことがある。これを防止するために、新たな基板Sの搬入に先立って、支持トレイ15の温度をできるだけ下げておくことが求められる。
【0047】
処理チャンバ12内で冷却処理を行うことや、引き出された支持トレイ15が自然冷却により十分に温度が低下するまで待機することも考えられるが、その間新たな基板Sへの処理開始が遅れることになり、処理のスループットが低下してしまう。
【0048】
そこで、この実施形態では、処理済みの基板Sを払い出す際にベース部材35を支持トレイ15の下面に当接させることで、支持トレイ15が持つ熱エネルギーをベース部材35に移動させることにより支持トレイ15を冷却する。この目的のために、ベース部材35については熱伝導性に優れた物質、例えばアルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料により、しかも支持トレイ15よりも大きな熱容量を有するように構成されることが望ましい。こうすることで、自然冷却の場合よりも十分に早く支持トレイ15の温度が低下し、より早期に次の基板Sへの処理を開始することができる。
【0049】
支持トレイ15の冷却のために特別な時間を取る必要はなく、基板Sを支持トレイ15から取り出し外部の搬送装置に受け渡すためのリフトピン37の昇降動作自体が、ベース部材35を当接させて支持トレイ15を冷却するための動作ともなっている。このため、処理のスループットの低下を招くことなく支持トレイ15を冷却することが可能である。
【0050】
ベース部材35が支持トレイ15に当接して熱エネルギーを奪うことで支持トレイ15の温度は低下するが、ベース部材35の温度が上昇してしまう。このような温度上昇については、支持トレイ15への基板Sの受け渡しの終了後から処理チャンバ12内での処理が終了するまでの間、ベース部材35が周囲雰囲気に触れて自然冷却されることである程度解消されるものと期待される。したがって、ベース部材35を積極的に冷却することは不要であるとも言える。しかしながら、次に説明するように、ベース部材35を積極的に冷却するための構成が設けられてもよい。なお、以下の変形例では、上記実施形態と同一のまたは対応する機能を有する構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図5は移載ユニットの変形例を示す図である。
図5(a)に示すように、下部位置にあるベース部材35の下面に当接してベース部材35を冷却する冷却機構38が移載ユニット30に設けられてもよい。
図5(b)に示すように、冷却機構38は移載ユニット30の本体31の上面に取り付けられており、ベース部材35が上昇するとベース部材35からは離間するため冷却作用を失う。このような構成では、冷却機構38により予め冷却されたベース部材35が上昇して支持トレイ15の下面に当接することで、支持トレイ15をより効果的に冷却することができる。また、上部位置で支持トレイ15との当接により温度が上昇したベース部材35が、下部位置で冷却機構38により冷却されることにより、冷却機能を継続的に維持することが可能となる。
【0052】
冷却機構38としては、例えば冷媒を用いた熱交換器、ヒートポンプ方式のもの、ペルチェ素子を利用したもの等を適用可能である。なお、冷却機構38はベース部材35の下面に直接取り付けられて、ベース部材35とともに上下動する構成であってもよい。このような構成では、冷却機構38によりベース部材35を常時冷却しておくことが可能となる。
【0053】
また、冷却機構がベース部材の内部に埋め込まれた構造や、
図5(c)に示すように冷却機構39がベース部材35の上面に取り付けられ直接支持トレイ15を冷却する構成であってもよい。
【0054】
図6は移載ユニットの他の変形例を示す図である。
図6(a)に示す変形例では、ベース部材35の上面から支持トレイ15の下面に向けて冷却用ガスGが吹き出される。冷却用ガスGとしては、例えば常温または熱交換器を通すことで冷却された乾燥空気または不活性ガスを用いることができる。このような構成では、ベース部材35から支持トレイ15の下面に向けて冷却用ガスGが吹き付けられることにより、支持トレイ15が冷却される。したがってこの場合、上部位置でベース部材35が支持トレイ15の下面に当接する必要は必ずしもなく、両者が十分に近接した状態であればよい。
【0055】
また、
図6(b)に示す変形例では、本体31の上面から冷却用ガスGが吹き出される。このような構成では、ベース部材35が下部位置にあるとき、つまり基板Sの受け渡しに関与してないときにその下面に冷却用ガスGが吹き付けられることにより、ベース部材35が冷却される。こうして冷却されたベース部材35が上部位置で支持トレイ15の下面に当接することで、上記実施形態と同様に支持トレイ15を冷却することが可能となる。また、当接による冷却と気体吹き付けによる冷却とが併用されてもよい。
【0056】
図7はこの基板処理装置の概略動作を示すフローチャートである。各工程における装置各部の動作についてはこれまでに説明した通りである。最初に、
図2(a)に示されるように、蓋部材13が(-Y)側に移動することで支持トレイ15が処理チャンバ12から引き出され、移載ユニット30のアクセスが可能な引き出し位置へ位置決めされる(ステップS101)。続いて、昇降機構51が作動することで、リフトピン37が上昇し、その上端部の位置が支持トレイ15の上面よりも上方に突出する受け渡し位置に位置決めされる(ステップS102)。
【0057】
この状態で、外部の搬送装置のハンドHに保持される基板Sをリフトピン37による支持に切り替える。これにより基板SはハンドHからリフトピン37へ受け渡される(ステップS103)。基板Sを支持するリフトピン37が下降することで、基板Sは下降し、最終的に支持トレイ15に受け渡される(ステップS104)。
【0058】
リフトピン37が蓋部材13と干渉しない退避位置まで下降した後、蓋部材13が(+Y)側へ移動して、基板Sを支持する支持トレイ15が処理チャンバ12内に格納される(ステップS105)。処理チャンバ12内では、搬入された基板Sに対して超臨界乾燥処理が実行される(ステップS106)。超臨界処理の内容は公知であるのでここでは説明を省略する。
【0059】
処理の終了後、蓋部材13が(-Y)側へ移動することで、基板Sが支持トレイ15とともに外部へ引き出され、移載ユニット30のアクセスが可能な引き出し位置へ位置決めされる(ステップS107)。続いて、昇降機構51が作動することで、ベース部材35が上部位置まで上昇する(ステップS108)。リフトピン37はベース部材35と一体的に上昇し、基板Sが蓋部材13の上端位置よりも上方に位置することで、基板Sは搬送装置のハンドHによる搬出が可能になる。こうして基板Sが外部へ払い出される(ステップS109)。また、ベース部材35が支持トレイ15の下面に当接することにより、支持トレイ15が冷却される。
【0060】
次に処理すべき基板Sがある場合(ステップS110においてYES)、ステップS103に戻って新たな基板Sを受け入れ、上記処理が繰り返される。このとき、ベース部材35の当接により支持トレイ15下面が冷却されているため、高温の支持トレイ15に載置された基板Sの温度上昇に起因する各種のトラブルを未然に回避することができる。全ての基板Sについて処理が終了していれば(ステップS109においてNO)、リフトピン37が退避位置まで下降し(ステップS111)、支持トレイ15が処理チャンバ12内に格納されて(ステップS112)、全ての処理が終了する。
【0061】
上記実施形態の移載ユニット30では、外部から搬入される未処理の基板Sのハンドリングと、処理後に搬出される基板Sのハンドリングとが同じリフトピン37を用いて行われる。これに代えて、以下に説明するように、未処理の基板と処理済みの基板とを異なるリフトピンによりハンドリングする構成とすることも可能である。なお、以下の説明においては、上記実施形態の構成と同一のまたは対応する構成には同一符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0062】
図8および
図9は移載ユニットの変形例を示す図である。これらの変形例では、未処理の基板を支持するためのリフトピンと、処理済みの基板を支持するためのリフトピンとが個別に用意されている。主として処理の前後でリフトピンを共用することに起因する処理済み基板の汚染を防止するために、このような使い分けが行われる。
【0063】
図8に示す変形例では、未処理基板S1を支持するためのリフトピン37aと、処理済み基板S2を支持するためのリフトピン37bとがそれぞれ設けられる。なお、図ではリフトピン37bがリフトピン37aの間に配置されているが、これは両者の区別を明示するための便宜的なものであり、平面視におけるリフトピンの配置を示すものではない。実際の装置においては、例えばリフトピン37a,37bが基板の周縁部を支持するように、かつリフトピン37aとリフトピン37bとが基板の周方向に互いに位置を異ならせて配置されるようにすることができる。
【0064】
複数のリフトピン37aは、ベース部材35aに取り付けられている。また、複数のリフトピン37bは、ベース部材35aとは別体に構成されたリフトピン35bに取り付けられている。昇降機構51は、制御ユニット90からの制御指令に応じてこれらの昇降動作を実現する。
【0065】
図8(a)に示すように、ベース部材35aはベース部材35bの下方に配置されており、未処理基板用のリフトピン37aは処理済み基板用のリフトピン37bよりも長く、かつその上端部は、初期状態において処理済み基板用のリフトピン37bの上端部よりも上方となるように形成されている。上記実施形態の支持トレイ15に対応する支持トレイ150には、リフトピン37aに対応する貫通孔155と、リフトピン37bに対応する貫通孔156とがそれぞれ設けられている。
【0066】
図8(b)は外部から未処理基板S1を受け取るときの動作を示す。このとき、ベース部材35aとベース部材35bとが一体的に上昇する。これによりリフトピン37a,37bも上昇するが、リフトピン37aの上端部がリフトピン37bの上端部よりも上方にあるため、搬入される未処理基板S1はリフトピン37aによって支持される。リフトピン37bは基板S1に当接しないため、処理前の基板S1の付着物によりリフトピン37bが汚染されることは回避される。この状態からベース部材35aとベース部材35bとが一体的に下降することで、基板S1はリフトピン37aから支持トレイ150に受け渡される。
【0067】
一方、処理済み基板S2が払い出される際には、
図8(c)に示すように、処理済み基板用のリフトピン37bが取り付けられたベース部材35bのみが上昇する。したがって、処理済み基板S2はリフトピン37bのみによって支持され、最終的に外部へ払い出される。このときリフトピン37aは基板S2に当接しないので、仮にリフトピン37aに未処理基板S1から移行した付着物があったとしても、それが処理済み基板S2に再移行することは防止される。
【0068】
処理済み基板S2の払い出しと併行して、支持トレイ150の冷却を行う必要がある。この目的のために、ベース部材35bの上面が支持トレイ150の下面に密着することで熱エネルギーを奪う。前記したように、近接位置から冷却用ガスを吹き付ける態様であってもよい。未処理基板S1を受け取るリフトピン37aを支持するベース部材35aについては、特に冷却のための構成を必要としない。
【0069】
図9に示す変形例では、未処理基板S1を支持するためのリフトピン37cと、処理済み基板S2を支持するためのリフトピン37dとがそれぞれ設けられる。この例においても、図ではリフトピン37cがリフトピン37dの間に配置されているが、これは両者の区別を明示するための便宜的なものであり、平面視におけるリフトピンの配置を示すものではない。
【0070】
未処理基板S1に対応して設けられた複数のリフトピン37cは、リング状のベース部材35cに取り付けられている。また、処理済み基板S2に対応して設けられた複数のリフトピン37dは、ベース部材35cとは別体に構成され、ベース部材35cのリング内に配置されたベース部材35dに取り付けられている。昇降機構51は、制御ユニット90からの制御指令に応じてこれらの独立した昇降動作を実現する。支持トレイ150の構造は
図8のものと同じである。なお、リング状のベース部材35cは基板からの落下物を受け止める機能を持たないため、別途受け皿部材36がベース部材35cの下方に設けられることが望ましい。
【0071】
図9(b)は外部から未処理基板S1を受け取るときの動作を示す。このとき、ベース部材35cのみが上昇することでリフトピン37cが上昇して、搬入される未処理基板S1を支持する。この状態からベース部材35cが下降することで、基板S1はリフトピン37cから支持トレイ150に受け渡される。
【0072】
一方、処理済み基板S2が払い出される際には、
図9(c)に示すように、処理済み基板用のリフトピン37dが取り付けられたベース部材35dのみが上昇する。したがって、処理済み基板S2はリフトピン37dによって支持され、最終的に外部へ払い出される。ベース部材37c,37dを平面視において互いに重ならない形状および配置とすることによって、このように2種類のリフトピンを互いに独立して昇降させることができ、これによりリフトピンの使い分けが実現される。なお、必要な昇降範囲での個別の昇降動作に干渉しないという条件が満たされる限り、ベース部材37c,37dの形状はこれに限定されるものでなく任意である。
【0073】
この場合においても、処理済み基板S2に対応するリフトピン37dを支持するベース部材35dを支持トレイ150の下面に当接させることによって、温められた支持トレイ150の温度を低下させることができる。
【0074】
以上のように、本実施形態の基板処理装置1では、基板Sを支持する支持トレイ15が処理チャンバ12内で温められることにより新たな基板Sを受け入れるのに支障を来すという問題を解消するため、基板Sの払い出し動作と併行して支持トレイ15を冷却するための構成を有している。具体的には、払い出しの際に基板Sを支持する複数のリフトピン37が取り付けられこれらを一括して支持するベース部材35が、支持トレイ15の下面に近接または当接することによって、支持トレイ15に蓄積された熱エネルギーを放散させる。
【0075】
これにより支持トレイ15の温度が低下し、速やかに次の基板Sを受け入れることが可能になる。また、基板Sを払い出すためのリフトピン37の昇降動作自体が同時に支持トレイ15を冷却するための動作にもなっているため、冷却を行うために処理のスループットが低下することは避けられる。このように、本実施形態では、処理後の基板Sの払い出しと支持トレイ15の冷却とが併行して実施されるため、温められた支持トレイ15に基板Sが載置されることによる問題点を解消し、しかもそのためにスループットを低下させることがないという優れた効果が得られる。
【0076】
以上説明したように、上記実施形態においては、移載ユニット30が本発明の「移載部」に相当し、リフトピン37を支持する支持機構(不図示)および昇降機構51が本発明の「昇降部」として機能している。また、ベース部材37が本発明の「ベース部」として機能している。また、冷却機構38,39が本発明の「冷却部」として機能している。また、
図8および
図9の変形例において、リフトピン37a,37cが本発明の「搬入用リフトピン」に相当し、リフトピン37b,37dが本発明の「搬出用リフトピン」」に相当している。
【0077】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の処理チャンバ12は内部の処理空間SPで超臨界乾燥処理を実行するものである。しかしながら、本発明の技術思想はこれ以外の基板処理に対しても適用可能なものである。特に、処理対象の基板を支持トレイに載置して処理チャンバ内に搬入し、処理において支持トレイが温度上昇を伴うものに、本発明は有効である。
【0078】
また、上記実施形態では、リフトピン37の支持機能および支持トレイ15の冷却機能を有するベース部材35が、基板Sからの落下物を受け止める受け皿としての機能をさらに有するものとなっている。しかしながら、このような落下物を受け止める機能については省かれてもよく、また別途受け皿を設けてベース部材35の機能とは分離してもよい。また、ベース部材の上面に集められた落下物を排出するための構成がさらに設けられてもよい。
【0079】
また、上記実施形態における基板Sの受け渡しでは、外部の搬送装置が基板SをY方向に搬送する。このため、リフトピン37は蓋部材13の上端部よりも上方で基板Sを支持する必要がある。これに代えて、例えば基板がX方向に搬送される構成とすれば、基板Sが蓋部材13の上方を通る必要がなくなり、リフトピン37はより低い位置で基板Sを支持することができれば足りる。
【0080】
また、上記実施形態では、支持トレイ15が蓋部材13の側面に取り付けられておりこれらが一体的に移動するが、これに限定されない。例えば、蓋部材とは独立して支持トレイが移動可能な構成であってもよい。この場合、蓋部材は処理チャンバの開口に対して開閉自在に取り付けられる扉状の部材であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態の処理で使用される各種の化学物質は一部の例を示したものであり、上記した本発明の技術思想に合致するものであれば、これに代えて種々のものを使用することが可能である。
【0082】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理装置は、上部位置において、ベース部の上面が支持トレイの下面に当接する構成であってよい。また、本発明に係る基板処理方法は、冷却されたベース部を支持トレイに当接させて支持トレイを冷却する構成であってよい。このような構成によれば、処理後の支持トレイに対して相対的に低温であるベース部に熱エネルギーを移行させて、支持トレイの温度を低下させることができる。これによるベース部の温度上昇は、処理に影響を及ぼさない。
【0083】
また、本発明に係る基板処理装置において、移載機構は、ベース部を冷却する冷却部を有するものであってよい。例えば冷却部が下部位置にあるベース部を冷却するものであってもよく、また冷却部がベース部に設けられたものであってもよい。このような構成によれば、予めベース部を冷却して支持トレイに対する冷却効果を高めたり、支持トレイとの当接によって温められたベース部を冷却したりすることができる。
【0084】
また、ベース部は、支持トレイの下面に近接配置された状態で該下面に向けて冷却用気体を吹き出す構成であってよい。このような構成によれば、温められた支持トレイに気体を吹き付けて熱エネルギーを放散させ、温度を低下させることができる。
【0085】
また、ベース部の上面は、液体を保持可能な凹面となっていてよい。このような構成によれば、処理対象の基板が表面を液体で覆われた状態で搬入される場合であっても、搬送時の振動等で基板から落下する液体をベース部で受け止め、周囲への飛散を防止することができる。
【0086】
また、複数のリフトピンは、処理チャンバ内での処理を受ける前の基板を支持する複数の搬入用リフトピンと、処理後の基板を支持する複数の搬出用リフトピンとを含み、搬出用リフトピンがベース部に取り付けられてベース部と一体的に昇降する一方、搬入用リフトピンはベース部とは独立して昇降可能であってよい。このような構成によれば、処理前後の基板を別のリフトピンで支持することで、処理前の基板に付着した付着物が処理後の基板に再付着するのを防止することができる。したがって処理の品質を向上させることができる。
【0087】
また、本発明に係る基板処理方法では、処理チャンバ内で処理が行われている間に、ベース部を冷却することができる。このような構成によれば、ベース部の冷却を行うことによる処理のスループット低下を回避することが可能である。
【0088】
また、所定の処理は、基板の温度上昇を伴う処理であってよく、例えば超臨界流体を用いた処理であってよい。このような構成によれば、基板とともに高温状態となる支持トレイが、処理後の基板の払い出しのための動作と併行して冷却される。このため、複数の基板が連続的に処理される際、高温のままの支持トレイに新たな基板が載置されることによって生じる問題を未然に回避することが可能である。また、そのために処理のスループットを低下させることもない。
【0089】
また、未処理の基板は、上面に液膜が形成された状態で処理チャンバに搬入されるものであってよい。このような構成によれば、高温の支持トレイに基板が載置されることで基板が温められ、これにより液体が蒸発してしまうことが回避される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
この発明は、基板を支持トレイによって支持した状態で処理チャンバに収容し処理を行う技術全般に適用可能である。特に、基板の温度上昇を伴う処理や、基板表面に液膜が形成された状態で搬入される処理、例えば超臨界乾燥処理に好適である。
【符号の説明】
【0091】
1 基板処理装置
10 処理ユニット
12 処理チャンバ
15 支持トレイ
30 移載ユニット
35,35b,35d ベース部材
37 リフトピン
37a,37c 搬入用リフトピン
37b,37d 搬出用リフトピン
38,39 冷却機構
51 昇降機構
121 開口
S 基板
SP 処理空間