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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】車両用モールディング
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/75 20160101AFI20221209BHJP
【FI】
B60J10/75
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019197120
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070381
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】水戸部 友哉
(72)【発明者】
【氏名】鶴崎 直
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 美由紀
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-130961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0305611(US,A1)
【文献】特表2010-521349(JP,A)
【文献】特開2015-174608(JP,A)
【文献】特開2017-136979(JP,A)
【文献】特開2019-094034(JP,A)
【文献】特開2014-196051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルに接続される基部と、前記基部に支持されて上下方向に配列される上側タッチリップ及び下側タッチリップとを備える車両用モールディングであって、
前記上側タッチリップは、前記基部に固着された上側根本部と、前記上側根本部の先端に接続されると共に開閉式ドアガラスに対して摺動される上側摺動部と、前記上側摺動部の先端から前記基部に向けて延伸すると共に先端部が前記基部に対して離着可能なシール部とを有し、
前記下側タッチリップは、前記基部に固着された下側根本部と、前記下側根本部の先端に接続されると共に前記開閉式ドアガラスに対して摺動される下側摺動部と、前記下側摺動部から前記基部に向けて突設されると共に前記基部と接触することで前記下側摺動部から前記開閉式ドアガラスに向けて作用する反力を発生する反力調節突部とを有し、
前記シール部の前記先端部は、前記シール部の先端部から前記上側摺動部の先端までの部位に対して、前記基部と平行状態に近づくように屈曲された部位であり、
前記シール部の前記先端部は、前記基部に接触する面が平面であり、
前記基部は、前記先端部の前記基部に接触する面が面接触されるシール面を有する
ことを特徴とする車両用モールディング。
【請求項2】
前記基部は、前記上側タッチリップの前記シール部が当接される上壁部と、前記上壁部の下方に配置されると共に前記上側タッチリップの上側根本部が固着される中間壁部と、前記中間壁部の下方に配置されると共に前記下側タッチリップの前記下側根本部が固着されると共に前記下側根本部の前記反力調節突部が接触される下壁部とを有し、
前記下壁部は、前記上壁部よりも前記開閉式ドアガラス側に変位して配置されている ことを特徴とする請求項記載の車両用モールディング。
【請求項3】
前記中間壁部の前記上側根本部が固着される固着面は、前記上壁部側から前記下壁部側に向かうに連れて前記開閉式ドアガラス側に変位する傾斜面とされていることを特徴とする請求項記載の車両用モールディング。
【請求項4】
前記下側根本部は、前記下側根本部が固着される前記基部の表面から当該表面の法線方向に延設され、当該表面から一定距離に亘って上面と下面とが平行とされていることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の車両用モールディング。
【請求項5】
前記反力調節突部は、前記下側摺動部が前記基部に近づく方向に傾動するに連れて前記基部に押されて先端部が前記下側摺動部に近づくように前記下側摺動部に対して姿勢設定されていることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の車両用モールディング。
【請求項6】
前記基部の上部から前記上側タッチリップ側に向けて突出して設けられた装飾リップを備え、
前記シール部の前記先端部が前記シール面と面接触した状態で、前記先端部と前記上側摺動部との間の前記シール部の部位は、前記装飾リップと隙間を空けて平行となる
ことを特徴とする請求項1~5いずれか一項に記載の車両用モールディング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モールディングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、四輪自動車等の車両には、アウトサイドモール等のモールディングが装着されている。アウトサイドモールは、ドアパネルの上側縁部に取り付けられ、ドアパネルのドアガラスとの間隙に異物や水が侵入することを防止している。このようなアウトサイドモールは、ドアパネルに対して取り付けられる基部と、この基部からドアパネル側に突出して設けられる複数のリップとを有している。例えば、特許文献1には、上記リップとして、ドアガラスに当接される2つのタッチリップを備えるアウトサイドモールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-171559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたアウトサイドモールでは、2つのタッチリップのうち、下側に配置されるタッチリップにサブリップを形成することで、ドアガラス昇降時の摺動抵抗を抑えつつ、ドアガラス閉鎖時の押圧力を高めてシール性を高めている。
【0005】
一方で、ドアガラスに付着した水がタッチリップと基部との間に流れ込むと、流れ込んだ水の凍結等によってドアガラスを昇降する際の抵抗が増し、ドアガラスの駆動系に対する負荷が増す等の問題が生じる。このような問題を解決するためには、上側のタッチリップに対して常にドアガラスに当接する部位を設けることで水の侵入を抑制することが考えられる。しかしながら、上側のタッチパネルがドアガラスの昇降位置に関わらず常に強くドアガラスに対して押圧された状態とされていると、下側のタッチリップに対してサブリップを設けたことで得られた効果を削ぐ結果となる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ドアガラスの昇降時の摺動抵抗の増加を抑制しつつ、水の侵入を抑止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、ドアパネルに接続される基部と、上記基部に支持されて上下方向に配列される上側タッチリップ及び下側タッチリップとを備える車両用モールディングであって、上記上側タッチリップが、上記基部に固着された上側根本部と、上記上側根本部の先端に接続されると共に開閉式ドアガラスに対して摺動される上側摺動部と、上記上側摺動部の先端から上記基部に向けて延伸すると共に先端部が上記基部に対して離着可能なシール部とを有し、上記下側タッチリップが、上記基部に固着された下側根本部と、上記下側根本部の先端に接続されると共に上記開閉式ドアガラスに対して摺動される下側摺動部と、上記下側摺動部から上記基部に向けて突設されると共に上記基部と接触することで上記下側摺動部から上記開閉式ドアガラスに向けて作用する反力を発生する反力調節突部とを有するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記シール部の上記先端部は、上記シール部の先端部から上記上側根本部の先端までの部位に対して、上記基部と平行状態に近づくように屈曲された部位であるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記基部が、上記上側タッチリップの上記シール部が当接される上壁部と、上記上壁部の下方に配置されると共に上記上側タッチリップの上側根本部が固着される中間壁部と、上記中間壁部の下方に配置されると共に上記下側タッチリップの上記下側根本部が固着されると共に上記下側根本部の上記反力調節突部が接触される下壁部とを有し、上記下壁部が、上記上壁部よりも上記開閉式ドアガラス側に変位して配置されているという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記中間壁部の上記上側根本部が固着される固着面は、上記上壁部側から上記下壁部側に向かうに連れて上記開閉式ドアガラス側に変位する傾斜面とされているという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記下側根本部が、上記下側根本部が固着される上記基部の表面から当該表面の法線方向に延設され、当該表面から一定距離に亘って上面と下面とが平行とされているという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記反力調節突部が、上記下側摺動部が上記基部に近づく方向に傾動するに連れて上記基部に押されることで先端部が上記下側摺動部に近づくように上記下側摺動部に対して姿勢設定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上側タッチリップが上側摺動部の先端から基部に向けて延伸するシール部を備えているため、シール部によって上側タッチリップと基部との間に水が侵入することを抑制することができる。また、シール部の先端は、基部に対して離着可能とされている。このようなシール部の先端は、上側摺動部や上側根本部に固定されておらず、自由端となっている。このため、シール部の先端が上側摺動部や上側根本部に固定されている場合と比較して、上側摺動部が小さな力で傾動することができる。このため、開閉式ドアガラスが昇降する際に上側タッチリップから受ける摺動抵抗を低減させることができる。これに加えて、本発明は、下側タッチリップが基部と接触することで下側摺動部から開閉式ドアガラスに向けて作用する反力を発生する反力調節突部を備えており、昇降時の摺動抵抗の増加を抑えつつ必要に応じてドアガラスに対して押圧力を強く作用させることができる。したがって、本発明によれば、下側タッチリップによる昇降時の摺動抵抗の増加を抑えつつ必要に応じてシール性を高めるという効果を削ぐことなく、上側タッチリップによって上側タッチリップと基部との間に水が侵入することを抑制することができる。よって、本発明によれば、ドアガラスの昇降時の摺動抵抗の増加を抑制しつつ、水の侵入を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態におけるアウトサイドモールが設置される車両のブロントドアの正面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるアウトサイドモールの断面図であり、図1のA-A断面図である。
図3】上側タッチリップ及び下側タッチリップが中間姿勢とされた本発明の一実施形態におけるアウトサイドモールの断面図である。
図4】上側タッチリップ及び下側タッチリップが閉鎖姿勢とされた本発明の一実施形態におけるアウトサイドモールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用モールディングの一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のアウトサイドモール1(車両用モールディング)が設置される車両のフロントドア10の正面図である。この図に示すように、車両のフロントドア10は、ドアパネル11と、窓枠12と、ドアガラス13(開閉式ドアガラス)と、アウトサイドモール1とを備えている。ドアパネル11は、鋼板からなる強度部材であり、例えば外装パネルであるドアアウタパネルと、当該ドアアウタパネルの内側に配置されるドアインナパネルとを有している。窓枠12は、ドアパネル11の上部に設けられる枠体である。ドアガラス13は、窓枠12で囲われた領域に配置されており、不図示の昇降機構によって昇降される。
【0018】
本実施形態のアウトサイドモール1は、ドアパネル11の上端に車両の前後方向(図1の左右方向)に延在して固定される長尺状の部品であり、ドアパネル11とドアガラス13との隙間を埋めるように配置されている。
【0019】
図2は、図1のA-A断面図である。この図に示すように、本実施形態のアウトサイドモール1が取り付けられるドアパネル11は、上端部が車両の外側から内側に向けて折り返されている。このようにドアパネル11の折り返された部位を、以下、折り返し部11aと称する。ドアパネル11は、上述の折り返し部11aが車両の前後方向における一端から他端まで設けられた形状を有している。
【0020】
本実施形態のアウトサイドモール1は、図2に示すように、基部2と、上側タッチリップ3と、下側タッチリップ4と、装飾リップ5と、緩衝リップ6と、上部傾倒防止部7と、下部傾倒防止部8とを備えている。基部2の端部は、例えば開放端とされ、エンドキャップが装着されている。
【0021】
基部2は、本実施形態のアウトサイドモール1の剛性を確保するための強度部材であり、例えば硬質樹脂によって形成されている。この基部2は、アウトサイドモール1の延在方向に沿って配設されている。このような基部2は、図2に示すように、外装壁部2aと、上壁部2bと、中間壁部2cと、下壁部2dとが一体化されて形成されている。また、基部2は、外装壁部2aに対して、上壁部2b、中間壁部2c及び下壁部2dが対向するように配置されることで、全体として断面形状が逆U字形とされている。
【0022】
外装壁部2aは、アウトサイドモール1がドアパネル11に装着された場合に、車両の外側に向けて配置される部位である。この外装壁部2aの上端は湾曲されて上壁部2bの上端と接続されている。また、外装壁部2aは、下端部の内壁面から基部2の内側(上壁部2b等)に向けて突出された下端突部2a1を有している。このような外装壁部2aの外側の面は、外部から視認される意匠面とされている。この外装壁部2aの外側の面に対しては、耐候性や意匠性を向上させるための表面処理を行うようにしても良い。
【0023】
上壁部2bは、外装壁部2aの上端から下方に延伸された部位である。この上壁部2bは、外装壁部2aの上下寸法に対して半分程度の上下寸法されており、外側の表面(上側タッチリップ3側の表面)が略鉛直な面とされている。この上壁部2bの外側の表面は、上側タッチリップ3の後述するシール部3cが接触可能とされたシール面2b1とされている。
【0024】
中間壁部2cは、上端が上壁部2bの下端と接続され、下端が下壁部2dの上端とされた部位である。つまり、中間壁部2cは、上壁部2bと下壁部2dとの間に配置され、上壁部2bと下壁部2dとを接続する部位である。この中間壁部2cは、図2に示すように、下方に向かうに連れてドアガラス13側(外装壁部2aから離間する方向)に変位するように傾斜配置されている。このような中間壁部2cの外側の表面(上側タッチリップ3側の表面)は、上壁部2b側から下壁部2d側に向かうに連れてドアガラス13側に変位する傾斜面2c1とされている。この傾斜面2c1には、上側タッチリップ3の後述する根本部3a(上側根本部)が固着されている。この中間壁部2cは、上下寸法が上壁部2bよりも小さく設定されており、下端が外装壁部2aの下端よりも上方に位置している。
【0025】
下壁部2dは、中間壁部2cの下端から下方に延伸された部位である。この下壁部2dは、上下寸法が上壁部2bと同程度とされており、下端が外装壁部2aの下端よりも下方に位置している。また、下壁部2dの外側の表面(下側タッチリップ4側の表面)が略鉛直な面とされている。この下壁部2dの外側の表面は、下側タッチリップ4の後述する根本部4a(下側根本部)が固着されると共に、下側タッチリップ4の後述する反力調節突部4cが接触される接触面2d1とされている。
【0026】
本実施形態においては、図2に示すように、下壁部2dが上壁部2bよりもドアガラス13側(上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4が配置された側)に変位して配置されている。これによって、上壁部2bのシール面2b1よりも、下壁部2dの接触面2d1がドアガラス13側に変位して配置されている。
【0027】
また、図2に示すように下壁部2dは、下端部の内壁面から基部2の内側(外装壁部2a)に向けて突出された抜け止め部2d2を有している。この抜け止め部2d2は、湾曲されることによって下方に向いたドアパネル11の先端11bが上方から当接されることによって、アウトサイドモール1がドアパネル11から容易に脱離しないようにするための突部である。
【0028】
上側タッチリップ3、下側タッチリップ4、装飾リップ5、緩衝リップ6、上部傾倒防止部7及び下部傾倒防止部8は、基部2に対して固着されており、例えば軟質樹脂によって形成されている。これらのうち、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4は、ドアガラス13の表面に対して摺動可能に当接されるリップである。本実施形態においては、ドアガラス13が下端に向かうに連れて車両の外側に向かうように僅かに傾斜されており、この傾斜姿勢を保ったまま昇降される。このため、ドアガラス13が最も上方に位置する場合、すなわちドアガラス13が閉鎖状態である場合に、ドアガラス13は最もアウトサイドモール1に近づいた状態となる。さらに、ドアガラス13が開放されるにしたがって、すなわちドアガラスが下降されるにしたがって、ドアガラス13はアウトサイドモール1から徐々に離間していく。
【0029】
図2は、ドアガラス13が完全に開放され、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4に対してドアガラス13が当接されていない状態を示している。つまり、図2では、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4は、ドアガラス13から押圧力を受けていない状態とされている。この図2に示す上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4の姿勢を基準姿勢と称する。
【0030】
一方で、ドアガラス13が完全に開放された状態から閉鎖状態に近づくに連れて、ドアガラス13が上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4に近づき、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4がドアガラス13から受ける押圧力が徐々に増加する。また、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4は、ドアガラス13が閉鎖状態に近づくに連れて基部2側に向けて傾動される。図4は、ドアガラス13が完全に閉鎖された状態を示している。図4に示す上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4の姿勢を閉鎖姿勢と称する。なお、図3は、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4が、基準姿勢と閉鎖姿勢との間の中間姿勢である場合を示している。
【0031】
上側タッチリップ3は、図2図4に示すように、ドアガラス13の開閉に伴って基準姿勢と閉鎖姿勢との間で傾動される部位である。この上側タッチリップ3は、根本部3a(上側根本部)と、摺動部3b(上側摺動部)と、シール部3cとを有している。根本部3aは、上側タッチリップ3のうち、基部2に対して直接的に固着される部位である。本実施形態において上側タッチリップ3の根本部3aは、基部2の中間壁部2cの傾斜面2c1に固着形成されている。図2図4に示すように、根本部3aは、傾斜面2c1から水平方向に向けて延伸され、先端に摺動部3bが接続されている。このような根本部3aは、図2図4に示す縦断面において、傾斜面2c1から摺動部3bが接続された先端に向かう一定の距離の間、上面と下面とが平行とされている。その後、上面には摺動部3bの表面が上方に屈曲されるようにして接続され、下面は上方に向かって湾曲するようにして摺動部3bの表面と接続されている。つまり、本実施形態において根本部3aは、摺動部3bと接続されるまでの間の部位にて、上面と下面との両方が互いに近接されるようにして形成されたくびれ部位を有していない。このような根本部3aによれば、局所的に厚さ寸法が小さくなる部位が設けられていないため、摺動部3bがドアガラス13に押圧されて傾動する場合における傾動中心がいずれかの一か所に集中することを防止することができる。したがって、根本部3aと摺動部3bとの接続部位において、一か所のみが局所的に疲労することを防止することができる。
【0032】
摺動部3bは、図2図4に示すように、根本部3aから基部2と反対側の斜め上方に向けて延伸された部位であり、ドアガラス13に対して直接的に当接される。この摺動部3bは、ドアガラス13が昇降される場合に、ドアガラス13の表面に対して摺動される。また、摺動部3bは、根本部3aから先端に向かう方向にて、中央部にて最も厚さ寸法が膨出され、根本部3a側とシール部3cが接続される先端側とが、中央部に対して厚さ寸法が小さい形状とされている。なお、図2図4には示していないが、摺動部3bの表面に対しては、ドアガラス13との摺動抵抗を低下させる低摩擦層を形成するようにしても良い。
【0033】
シール部3cは、摺動部3bの先端から基部2に向けて延伸された部位である。つまり、本実施形態において上側タッチリップ3は、根本部3aから摺動部3bの先端に向かうに連れて基部2から徐々に離間し、摺動部3bの先端からシール部3cの先端に向かうに連れて基部2側に戻るような略V字形状とされている。シール部3cは、先端部3c1が基部2に対して離れたり着いたりすることが可能とされた部位とされている。この先端部3c1は、シール部3cの摺動部3bの先端から先端部3c1に至る部位に対して、基部2のシール面2b1と平行状態に近づくように屈曲されている。このような先端部3c1は、摺動部3bがドアガラス13から強く押されることで上側タッチリップ3が閉鎖姿勢となった場合においては、シール面2b1に対して面接触される。このように、シール部3cの先端部3c1が基部2のシール面2b1に接触することによって、上側タッチリップ3と基部2との隙間がシールされ、上側タッチリップ3と基部2との間に水が侵入することを防止することができる。
【0034】
下側タッチリップ4は、図2図4に示すように、上側タッチリップ3の下方に配置されている。つまり、上側タッチリップ3と下側タッチリップ4とは、上下方向に配列されている。この下側タッチリップ4は、上側タッチリップ3と同様に、ドアガラス13の開閉に伴って基準姿勢と閉鎖姿勢との間で傾動される部位である。この下側タッチリップ4は、根本部4a(下側根本部)と、摺動部4b(下側摺動部)と、反力調節突部4cとを備えている。
【0035】
根本部4aは、下側タッチリップ4のうち、基部2に対して直接的に固着される部位である。本実施形態において下側タッチリップ4の根本部4aは、基部2の下壁部2dの接触面2d1に固着形成されている。図2図4に示すように、根本部4aは、接触面2d1から水平方向に向けて延伸され、先端に摺動部4bが接続されている。このような根本部4aは、図2図4に示す縦断面において、接触面2d1から摺動部4bが接続された先端に向かう一定の距離の間、上面と下面とが平行とされている。その後、上面には摺動部4bの表面が上方に屈曲されるようにして接続され、下面は上方に向かって湾曲するようにして摺動部4bの表面と接続されている。つまり、本実施形態において根本部4aは、摺動部4bと接続されるまでの間の部位にて、上面と下面との両方が互いに近接されるようにして形成されたくびれ部位を有していない。このような根本部4aによれば、局所的に厚さ寸法が小さくなる部位が設けられていないため、摺動部4bがドアガラス13に押圧されて傾動する場合における傾動中心がいずれかの一か所に集中することを防止することができる。したがって、根本部4aと摺動部4bとの接続部位において、一か所のみが局所的に疲労することを防止することができる。また、ドアガラス13の昇降によって下側タッチリップ4からドアガラス13に対して作用する反力の変化率を緩やかにすることができる。このため、ドアガラス13の昇降時の摺動抵抗が変化しにくく、ドアガラス13の昇降速度が急変することを防止することができる。
【0036】
摺動部4bは、図2図4に示すように、根本部4aから基部2と反対側の斜め上方に向けて延伸された部位であり、ドアガラス13に対して直接的に当接される。この摺動部4bは、ドアガラス13が昇降される場合に、ドアガラス13の表面に対して摺動される。また、摺動部4bは、根本部4aから先端に向かう方向にて、中央部にて最も厚さ寸法が膨出され、根本部4a側と先端側とが、中央部に対して厚さ寸法が小さい形状とされている。なお、図2図4には示していないが、摺動部4bの表面に対しては、ドアガラス13との摺動抵抗を低下させる低摩擦層を形成するようにしても良い。
【0037】
反力調節突部4cは、図2図4に示すように、摺動部4bの基部2側の表面から基部2に近づく方向に突出して設けられた突部である。この反力調節突部4cは、根本がフィレット状に広がって摺動部4bに対して接続されており、さらに先端に向かうに連れて摺動部4bの先端が向く方向と同一方向に向かうように湾曲されるように形成されている。このような反力調節突部4cは、下側タッチリップ4が基準姿勢である場合には基部2の接触面2d1から離間され、下側タッチリップ4が中間姿勢となったときに先端が基部2の接触面2d1と接触される。さらに下側タッチリップ4が閉鎖姿勢に近づくに連れて、反力調節突部4cは、図4に示すように、摺動部4bに対して先端部を近づけるようにして傾動される。つまり、反力調節突部4cは、摺動部4bが基部2に近づく方向に傾動するに連れて基部2から押されることで先端部が摺動部4bに近づくように摺動部4bに対して姿勢設定されている。このような反力調節突部4cは、摺動部4bに対して先端部が近づくに連れて大きな復元力を発生させ、下側タッチリップ4からドアガラス13に対して作用する反力を増大させる。
【0038】
装飾リップ5は、基部2の外装壁部2aと上壁部2bとの接続部から上側タッチリップ3側に向けて突出して設けられたリップである。この装飾リップ5は、上側タッチリップ3と基部2との間を隠している。また、本実施形態においては、図2に示すように、装飾リップ5は、基部2からの長さ寸法が、基準姿勢となった上側タッチリップ3のシール部3cの先端部3c1に上方から見て重なるように設定されている。このような装飾リップ5によれば、基準姿勢とされた上側タッチリップ3と基部2との間に異物や水が侵入することを抑制することができる。
【0039】
緩衝リップ6は、基部2の外装壁部2aの下端から下方に向けて突出して形成されたリップであり、ドアパネル11と当接して弾性変形する。この緩衝リップ6は、ドアパネル11と本実施形態のアウトサイドモール1との間に雨水等が入り込むことを防止すると共に取付時のばらつきを吸収している。
【0040】
上部傾倒防止部7は、外装壁部2aの内壁面からドアパネル11に向けて突設された部位である。下部傾倒防止部8は、上部傾倒防止部7よりも下方に配置されており、外装壁部2aの下端突部2a1の先端から突出して形成されている。これらの上部傾倒防止部7及び下部傾倒防止部8は、ドアパネル11に当接することによって、ドアパネル11に対するアウトサイドモール1の姿勢を保持する。
【0041】
このような本実施形態のアウトサイドモール1では、ドアガラス13が開放された状態から閉じられると、上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4が基準姿勢から中間姿勢を介して閉鎖姿勢へと傾動される。基準姿勢においては、上側タッチリップ3のシール部3cはシール面2b1から離間され、下側タッチリップ4の反力調節突部4cは接触面2d1から離間されている。
【0042】
ドアガラス13が上昇すると、まずドアガラス13が下側タッチリップ4の摺動部3bに当接し、摺動部3bにドアガラス13の表面が摺動される。ドアガラス13が上昇に伴って基部2に近づくため、摺動部3bが基部2に近づくように徐々に傾動され、図3に示すように反力調節突部4cが接触面2d1に接触する。一方で、ドアガラス13が上昇すると、ドアガラス13が上側タッチリップ3の摺動部4bに当接し、摺動部4bにドアガラス13の表面が摺動される。ドアガラス13が上昇に伴って基部2に近づくため、摺動部4bが基部2に近づくように傾動され、シール部3cの先端部3c1がシール面2b1に対して接触する。
【0043】
さらにドアガラス13が上昇して閉鎖状態となると、図4に示すように、反力調節突部4cが摺動部4bに近づくように傾動され、摺動部4bが強い反力によってドアガラス13の表面に向けて押圧される。また、ドアガラス13が上昇して閉鎖状態となると、図4に示すように、シール部3cの先端部3c1がシール面2b1に対して広い範囲で面接触する。
【0044】
以上のような本実施形態のアウトサイドモール1は、ドアパネル11に接続される基部2と、基部2に支持されて上下方向に配列される上側タッチリップ3及び下側タッチリップ4とを備えている。また、アウトサイドモール1は、上側タッチリップ3が、基部2に固着された根本部3aと、根本部3aの先端に接続されると共にドアガラス13に対して摺動される摺動部3bと、摺動部3bの先端から基部2に向けて延伸すると共に先端部3c1が基部2に対して離着可能なシール部3cとを有し、下側タッチリップ4が、基部2に固着された根本部4aと、根本部4aの先端に接続されると共にドアガラス13に対して摺動される摺動部4bと、摺動部4bから基部2に向けて突設されると共に基部2と接触することで摺動部4bからドアガラス13に向けて作用する反力を発生する反力調節突部4cとを有している。
【0045】
このような本実施形態のアウトサイドモール1によれば、上側タッチリップ3が摺動部3bの先端から基部2に向けて延伸するシール部3cを備えているため、シール部3cによって上側タッチリップ3と基部2との間に水が侵入することを抑制することができる。また、シール部3cの先端部3c1は、基部2に対して離着可能とされている。このようなシール部3cの先端部3c1は、摺動部3bや根本部3aに固定されておらず、自由端となっている。このため、シール部3cの先端部3c1が摺動部3bや根本部3aに固定されている場合と比較して、摺動部3bが小さな力で傾動することができる。このため、ドアガラス13が昇降する際に上側タッチリップ3から受ける摺動抵抗を低減させることができる。
【0046】
これに加えて、本実施形態のアウトサイドモール1は、下側タッチリップ4が基部2と接触することで摺動部4bからドアガラス13に向けて作用する反力を発生する反力調節突部4cを備えており、昇降時の摺動抵抗の増加を抑えつつ必要に応じてドアガラスに対して押圧力を強く作用させることができる。したがって、本実施形態のアウトサイドモール1によれば、下側タッチリップ4による昇降時の摺動抵抗の増加を抑えつつ必要に応じてシール性を高めるという効果を削ぐことなく、上側タッチリップ3によって上側タッチリップ3と基部2との間に水が侵入することを抑制することができる。よって、本実施形態のアウトサイドモール1によれば、ドアガラス13の昇降時の摺動抵抗の増加を抑制しつつ、水の侵入を抑止することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のアウトサイドモール1においてはシール部3cの先端部3c1は、シール部3cの先端部3c1から根本部3aの先端までの部位に対して、基部2と平行状態に近づくように屈曲された部位とされている。このため、シール部3cの先端部3c1を基部2のシール面2b1に広く面接触させることができ、よりシール性を高めることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のアウトサイドモール1においては、基部2が、上側タッチリップ3のシール部3cが当接される上壁部2bと、上壁部2bの下方に配置されると共に上側タッチリップ3の根本部3aが固着される中間壁部2cと、中間壁部2cの下方に配置されると共に下側タッチリップ4の根本部4aが固着されると共に根本部4aの反力調節突部4cが接触される下壁部2dとを有し、下壁部2dが、上壁部2bよりもドアガラス13側に変位して配置されている。このため、ドアガラス13を閉鎖する場合に、上側タッチリップ3よりも先に下側タッチリップ4をより先に傾動させることができ、反力の調整をより早く行うことが可能となる。また、反対にドアガラス13を開放する場合には、上側タッチリップ3よりもさらに遅らせて下側タッチリップ4が基準姿勢とされるため、より長く反力の調整をより早く行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のアウトサイドモール1においては、中間壁部2cの根本部3aが固着される固着面は、上壁部2b側から下壁部2d側に向かうに連れてドアガラス13側に変位する傾斜面2c1とされている。このため、上側タッチリップ3を傾動させやすくなり、上側タッチリップ3の摺動抵抗をより低減させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のアウトサイドモール1においては、下側タッチリップ4の根本部4aが、根本部4aが固着される基部2の表面から当該表面の法線方向に延設され、当該表面から一定距離に亘って上面と下面とが平行とされている。このため、根本部4aは、摺動部4bと接続されるまでの間の部位にて、上面と下面との両方が互いに近接されるようにして形成されたくびれ部位を有していない。このような根本部4aによれば、局所的に厚さ寸法が小さくなる部位が設けられていないため、摺動部4bがドアガラス13に押圧されて傾動する場合における傾動中心がいずれかの一か所に集中することを防止することができ、一か所のみが局所的に疲労することを防止することができる。また、ドアガラス13の昇降によって下側タッチリップ4からドアガラス13に対して作用する反力の変化率を緩やかにすることができる。このため、ドアガラス13の昇降時の摺動抵抗が変化しにくく、ドアガラス13の昇降速度が急変することを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態のアウトサイドモール1においては、反力調節突部4cが、摺動部4bが基部2に近づく方向に傾動するに連れて先端部が基部に押されて摺動部4bに近づくように基部2に対して姿勢設定されている。このため、反力調節突部4cを接触面2d1に対して垂直方向から突き当てる場合と比較して、下側タッチリップ4からドアガラス13に作用する反力の立ち上がりを緩やかに抑えることが可能となる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、基部2が硬質樹脂によって形成された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基部2として、金属製の芯材を備える構成や、金属製の芯材と硬質樹脂とが接合された部材を用いる構成を採用することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、本発明をアウトサイドモールに適用した例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の車両用モールディングに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1……アウトサイドモール(車両用モールディング)、2……基部、2a……外装壁部、2a1……下端突部、2b……上壁部、2b1……シール面、2c……中間壁部、2c1……傾斜面、2d……下壁部、2d1……接触面、2d2……止め部、3……上側タッチリップ、3a……根本部(上側根本部)、3b……摺動部(上側摺動部)、3c……シール部、3c1……先端部、4……下側タッチリップ、4a……根本部(下側根本部)、4b……摺動部(下側摺動部)、4c……反力調節突部、11……ドアパネル、13……ドアガラス
図1
図2
図3
図4