(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】触媒組成物、変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08F 4/54 20060101AFI20221209BHJP
C08F 36/04 20060101ALI20221209BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20221209BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221209BHJP
C08F 4/606 20060101ALI20221209BHJP
C08F 4/60 20060101ALI20221209BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C08F4/54
C08F36/04
C08F8/00
C08L9/00
C08F4/606
C08F4/60
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019525203
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2018017920
(87)【国際公開番号】W WO2018230200
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2017117004
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆嗣
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202769(JP,A)
【文献】特開2002-155109(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/44 - 4/82
C08F 36/00 - 36/22
C08F 8/00 - 8/50
C08L 9/00 - 9/10
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR
1
aR
2
bR
3
c ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1
は水素原子で、R
2は、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、R
3は炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表わされる有機金属化合物(B)と、
極性官能基を有する化合物(C)と、を含む触媒組成物
であって、前記極性官能基を有する化合物(C)が、極性官能基に加えて、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有する、触媒組成物を調製する工程と、
前記触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合する工程と、
を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法であって、
前記触媒組成物を調製する工程において、前記極性官能基を有する化合物(C)を前記有機金属化合物(B)と反応させることを特徴とする、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記触媒組成物が、更に、イオン性化合物(D)及びハロゲン化合物(E)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記極性官能基を有する化合物(C)のモル量が、前記有機金属化合物(B)のモル量の3倍以上である、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記極性官能基を有する化合物(C)の極性官能基が、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンからなる群から選択される少なくとも一種を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記極性官能基を有する化合物(C)の極性官能基が、アルコール性水酸基、アルコキシ基、置換又は無置換のアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記極性官能基を有する化合物(C)のモル量は、前記希土類元素含有化合物(A)に対して、30倍以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
更に、前記共役ジエン化合物を重合する工程で得られる重合生成物に、下記(a)成分~(h)成分からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を反応させる工程を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
(a)成分:下記一般式(II):
【化1】
(式中、X
1~X
5は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びスルホニルオキシ基から選ばれる少なくとも一種を含み、かつ活性プロトン及びオニウム塩を含まない一価の官能基を示し、X
1~X
5は、互いに同一でも異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではなく;R
4~R
8は、それぞれ独立に単結合又は炭素数1~18の二価の炭化水素基を示し;また、X
1~X
5及びR
4~R
8のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい)で表される化合物。
(b)成分:R
9
nM
1Z
4-n、M
1Z
4、M
1Z
3、R
10
nM
1(-R
11-COOR
12)
4-n又はR
10
nM
1(-R
11-COR
12)
4-n(式中、R
9~R
11は同一又は異なり、炭素数1~20の炭化水素基であり、R
12は炭素数1~20の炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M
1はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子であり、Zはハロゲン原子であり、nは0~3の整数である)で表わされる、ハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物。
(c)成分:分子中に、Y
1=C=Y
2結合(式中、Y
1は炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、Y
2は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、但し、Y
1及びY
2は、互いに同一でも異なってもよい)を含有するヘテロクムレン化合物。
(d)成分:下記一般式(III):
【化2】
(式中、Y
3は、酸素原子又は硫黄原子である)で表される構造を分子中に含有するヘテロ3員環化合物。
(e)成分:ハロゲン化イソシアノ化合物。
(f)成分:R
13-(COOH)
m、R
14(COZ)
m、R
15-(COO-R
16)、R
17-OCOO-R
18、R
19-(COOCO-R
20)
m、又は下記一般式(IV):
【化3】
(式中、R
13~R
21は同一又は異なり、炭素数1~50の炭化水素基であり、Zはハロゲン原子であり、mは1~5の整数である)で表わされる、カルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物。
(g)成分:R
22
kM
2(OCOR
23)
4-k、R
24
kM
2(OCO-R
25-COOR
26)
4-k、又は下記一般式(V):
【化4】
(式中、R
22~R
28は同一又は異なり、炭素数1~20の炭化水素基であり、M
2はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子であり、kは0~3の整数であり、pは0~1の整数である)で表わされる、カルボン酸の金属塩。
(h)成分:N-置換アミノケトン、N-置換アミノチオケトン、N-置換アミノアルデヒド、N-置換アミノチオアルデヒド、又は分子中に-C-(=Y
3)-N<結合(式中、Y
3は酸素原子又は硫黄原子を表す)を有する化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物、変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求が強まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。従来、タイヤの転がり抵抗を減少させる手法として、タイヤ構造を最適化する手法も検討されてきたが、タイヤに適用するゴム組成物について、tanδが低く(以下、「低ロス性」という。)、低発熱性の優れたものを用いることが、現在一般的な手法として行われている。
このような発熱性の低いゴム組成物を得る方法として、カーボンブラックやシリカ等の充填剤の減量、又は大粒径のカーボンブラックの使用等が考えられるが、いずれの方法でも、ゴム組成物の補強性、耐摩耗性及び湿潤路面でのグリップ性の低下が避けられない。
一方、発熱性の低いゴム組成物を得る方法として、ゴム組成物中の充填剤の分散性を高める技術開発も数多くなされてきた。その中でも特に、アルキルリチウムを用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を、充填剤と相互作用可能な官能基で修飾する方法が効果的である。例えば、下記特許文献1には、充填剤としてカーボンブラックを用い、ゴム成分として重合活性部位をスズ化合物で修飾した変性共役ジエン系重合体を用いる方法が開示されている。また、下記特許文献2には、充填剤としてカーボンブラックを用い、ゴム成分として重合活性両末端をスズ化合物で修飾した変性共役ジエン系重合体を用いる方法が開示されている。しかしながら、特許文献1及び2に開示された変性共役ジエン系重合体を用いる場合、充填剤及び軟化剤の配合量が少ない低燃費タイヤ用のゴム組成物においては、当該変性共役ジエン系重合体による充填剤の分散性改良効果が大きいが、充填剤及び軟化剤の配合量が多い汎用タイヤ向けのゴム組成物においては、当該変性共役ジエン系重合体による充填剤の分散性改良効果が十分に発揮されず、ゴム組成物の低ロス性、破壊特性及び耐摩耗性を十分に改善できないという問題があった。
一方、共役ジエン系重合体の主鎖に充填剤と相互作用可能な官能基で修飾する(グラフト)方法も知られている(例えば、下記特許文献3)。しかしながら、主鎖への修飾は、重合体を合成した後、更にグラフト反応を行う必要があり、より簡便な方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-287121号公報
【文献】特開平6-49279号公報
【文献】特開2011-184511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便な方法で製造することが可能な触媒組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造することが可能な変性共役ジエン系重合体の製造方法、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体、更には、かかる変性共役ジエン系重合体を用いたゴム組成物及びタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0006】
本発明の触媒組成物は、
希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR1
aR2
bR3
c ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R1、R2及びR3はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表わされる有機金属化合物(B)と、
極性官能基を有する化合物(C)と、
を含むことを特徴とする。
かかる本発明の触媒組成物を用いることで、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造することができる。
【0007】
本発明の触媒組成物は、更に、イオン性化合物(D)及びハロゲン化合物(E)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。この場合、重合活性が向上し、目的とする重合体が効率よく得られる。
【0008】
本発明の触媒組成物の好適例においては、前記極性官能基を有する化合物(C)のモル量が、前記有機金属化合物(B)のモル量の3倍以上である。この場合、目的とする物性を達成することができる。
【0009】
本発明の触媒組成物の他の好適例においては、前記極性官能基を有する化合物(C)が、極性官能基に加えて、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有する。この場合、極性官能基を有する化合物(C)が、単量体として、生成する変性共役ジエン系重合体中に取り込まれ易くなる。
【0010】
本発明の触媒組成物の他の好適例においては、前記極性官能基を有する化合物(C)の極性官能基が、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンからなる群から選択される少なくとも一種を有する。この場合、生成する変性共役ジエン系重合体の充填剤に対する親和性が更に向上する。
【0011】
本発明の触媒組成物の他の好適例においては、前記極性官能基を有する化合物(C)の極性官能基が、アルコール性水酸基、アルコキシ基、置換又は無置換のアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種を有する。この場合も、生成する変性共役ジエン系重合体の充填剤に対する親和性が更に向上する。
【0012】
本発明の触媒組成物の他の好適例においては、前記極性官能基を有する化合物(C)のモル量は、前記希土類元素含有化合物(A)に対して、30倍以上である。この場合、極性官能基を有する化合物(C)が、生成する変性共役ジエン系重合体の主鎖中に取り込まれ易くなる。
【0013】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、上記の触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合する工程を含むことを特徴とする。かかる本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法によれば、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造できる。
【0014】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、更に、前記共役ジエン化合物を重合する工程で得られる重合生成物に、下記(a)成分~(h)成分からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を反応させる工程を含むことが好ましい。
(a)成分:下記一般式(II):
【化1】
(式中、X
1~X
5は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びスルホニルオキシ基から選ばれる少なくとも一種を含み、かつ活性プロトン及びオニウム塩を含まない一価の官能基を示し、X
1~X
5は、互いに同一でも異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではなく;R
4~R
8は、それぞれ独立に単結合又は炭素数1~18の二価の炭化水素基を示し;また、X
1~X
5及びR
4~R
8のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい)で表される化合物。
(b)成分:R
9
nM
1Z
4-n、M
1Z
4、M
1Z
3、R
10
nM
1(-R
11-COOR
12)
4-n又はR
10
nM
1(-R
11-COR
12)
4-n(式中、R
9~R
11は同一又は異なり、炭素数1~20の炭化水素基であり、R
12は炭素数1~20の炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M
1はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子であり、Zはハロゲン原子であり、nは0~3の整数である)で表わされる、ハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物。
(c)成分:分子中に、Y
1=C=Y
2結合(式中、Y
1は炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、Y
2は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、但し、Y
1及びY
2は、互いに同一でも異なってもよい)を含有するヘテロクムレン化合物。
(d)成分:下記一般式(III):
【化2】
(式中、Y
3は、酸素原子又は硫黄原子である)で表される構造を分子中に含有するヘテロ3員環化合物。
(e)成分:ハロゲン化イソシアノ化合物。
(f)成分:R
13-(COOH)
m、R
14(COZ)
m、R
15-(COO-R
16)、R
17-OCOO-R
18、R
19-(COOCO-R
20)
m、又は下記一般式(IV):
【化3】
(式中、R
13~R
21は同一又は異なり、炭素数1~50の炭化水素基であり、Zはハロゲン原子であり、mは1~5の整数である)で表わされる、カルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物。
(g)成分:R
22
kM
2(OCOR
23)
4-k、R
24
kM
2(OCO-R
25-COOR
26)
4-k、又は下記一般式(V):
【化4】
(式中、R
22~R
28は同一又は異なり、炭素数1~20の炭化水素基であり、M
2はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子であり、kは0~3の整数であり、pは0~1の整数である)で表わされる、カルボン酸の金属塩。
(h)成分:N-置換アミノケトン、N-置換アミノチオケトン、N-置換アミノアルデヒド、N-置換アミノチオアルデヒド、又は分子中に-C-(=Y
3)-N<結合(式中、Y
3は酸素原子又は硫黄原子を表す)を有する化合物。
この場合、主鎖が変性されている上、末端も変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造できる。
【0015】
本発明の変性共役ジエン系重合体は、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。かかる本発明の変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を向上させることができる。
【0016】
本発明のゴム組成物は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明のゴム組成物は、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れる。
【0017】
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いたことを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便な方法で製造することが可能な触媒組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造することが可能な変性共役ジエン系重合体の製造方法、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体、更には、かかる変性共役ジエン系重合体を用いたゴム組成物及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の触媒組成物、変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0020】
<触媒組成物>
本発明の触媒組成物は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR1
aR2
bR3
c ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R1、R2及びR3はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表わされる有機金属化合物(B)と、
極性官能基を有する化合物(C)と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の触媒組成物は、極性官能基を有する化合物(C)を含有し、該触媒組成物を共役ジエン化合物の重合に使用すると、生成する共役ジエン系重合体中に、極性官能基を有する化合物(C)が取り込まれる。そのため、本発明の触媒組成物を用いることで、変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造することができる。なお、いかなるメカニズムで極性官能基を有する化合物(C)が共役ジエン化合物の重合に関与しているかは必ずしも明らかではないが、極性官能基を有する化合物(C)が前記有機金属化合物(B)と反応することで、重合に関与して、極性官能基を有する化合物(C)が重合体中に取り込まれるものと考えられる。
【0022】
また、前記極性官能基を有する化合物(C)は、極性官能基を有するため、生成する共役ジエン系重合体は、極性官能基を有することとなる。該極性官能基は、充填剤と親和性を有するため、本発明の触媒組成物を用いることで得られる変性共役ジエン系重合体は、充填剤との親和性が高く、例えば、該変性共役ジエン系重合体をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物における充填剤の分散性が向上し、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0023】
本発明の触媒組成物に用いる希土類元素含有化合物(A)は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む。ここで、希土類元素化合物とは、周期律表中の原子番号57~71の元素から構成されるランタノイド元素又はスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。希土類元素含有化合物(A)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記希土類元素含有化合物(A)としては、下記一般式(VI):
【化5】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して置換インデニルを示し、R
a~R
fは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す]で表されるメタロセン錯体、下記一般式(VII):
【化6】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す]で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(VIII):
【化7】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
R’は、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、又は置換フルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示し、[B]
-は、非配位性アニオンを示す]で表されるハーフメタロセンカチオン錯体が好ましい。
【0025】
上記一般式(VI)、(VII)及び(VIII)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0026】
上記一般式(VI)及び(VII)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpRは、置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C9H7-xRx又はC9H11-xRxで示され得る。ここで、Xは置換インデニル基上の置換基の数であり、Xは1~7又は1~11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル、1-メチル-2-フェニルインデニル、1,3-ビス(t-ブチルジメチルシリル)インデニル、1-エチル-2-フェニルインデニル、1-ベンジル-2-フェニルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(VI)及び(VII)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0027】
上記一般式(VI)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[-N(SiRaRbRc)(SiRdReRf)]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(VI)におけるRa~Rf)は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子である。また、Ra~Rfのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。Ra~Rfのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、重合させる単量体が導入され易くなる。同様の観点から、Ra~Rcのうち少なくとも一つが水素原子であり、Rd~Rfのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0028】
上記一般式(VII)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[-SiX’3]を含む。シリル配位子[-SiX’3]に含まれるX’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1~20の炭化水素基からなる群より選択される基である。
【0029】
上記一般式(VIII)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル又は置換フルオレニルであり、これらの中でも、置換インデニルであることが好ましい。
【0030】
上記一般式(VIII)において、置換シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCp
R’は、C
5H
5-xR
xで示される。ここで、Xは1~5の整数であり、好ましくは1~4の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCp
R’として、具体的には、以下のものが例示される。
【化8】
(式中、R’はメチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
【0031】
上記一般式(VIII)において、上記置換インデニル環を基本骨格とするCpR’は、一般式(VI)及び(VII)のCpRと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0032】
上記一般式(VIII)において、上記置換フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C13H9-xRx又はC13H17-xRxで示され得る。ここで、Xは1~9又は1~17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1~20の炭化水素基からなる群より選択される基である。
【0034】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0035】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXが表すアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシ基が挙げられ、これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0036】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0037】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0038】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0039】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXが表す炭素数1~20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0040】
上記一般式(VII)及び(VIII)において、X’及びXとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1~20の炭化水素基が好ましい。
【0041】
上記一般式(VIII)において、[B]-で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニルペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0042】
上記一般式(VI)及び(VII)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(VIII)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0~3個、好ましくは0~1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。また、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
上記一般式(VI)及び式(VII)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(VIII)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0044】
また、前記希土類元素含有化合物(A)としては、下記一般式(IX):
M-(NQ1)(NQ2)(NQ3) ・・・ (IX)
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、NQ1、NQ2及びNQ3はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M-N結合を有する]で表わされる化合物、及び下記一般式(X):
M-(NQ1)(NQ2)(CpR) ・・・ (X)
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、NQ1及びNQ2はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M-N結合を有し、CpRは、置換インデニルを示す]で表わされる化合物も好ましい。
【0045】
上記一般式(IX)及び(X)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0046】
上記一般式(IX)中のNQ1、NQ2及びNQ3、並びに、上記一般式(X)中のNQ1及びNQ2が表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-tert-ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基;ビスジメチルシリルアミド基などのビスジアルキルシリルアミド基;ビストリメチルシリルアミド基などのビストリアルキルシリルアミド基等が挙げられ、ビスジメチルシリルアミド基、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0047】
上記一般式(X)において、CpRは、置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C9H7-xRx又はC9H11-xRxで示され得る。ここで、Xは置換インデニル基上の置換基の数であり、Xは1~7又は1~11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることがより一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル、1-メチル-2-フェニルインデニル、1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル、1-エチル-2-フェニルインデニル、1-ベンジル-2-フェニルインデニル等が挙げられる。
【0048】
また、上記希土類元素含有化合物(A)としては、炭化水素溶媒に可溶な塩が好ましく、具体的には、上記希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β-ジケトン錯体、リン酸塩及び亜リン酸塩が挙げられ、これらの中でも、カルボン酸塩及びリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩が特に好ましい。
ここで、炭化水素溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4~10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数5~20の飽和脂環式炭化水素、1-ブテン、2-ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0049】
上記希土類元素のカルボン酸塩としては、下記一般式(XI):
(R29-COO)3M ・・・ (XI)
[式中、R29は炭素数1~20の炭化水素基で、Mは周期律表の原子番号57~71の希土類元素である]で表される化合物が挙げられる。ここで、R29は、飽和又は不飽和でもよく、アルキル基及びアルケニル基が好ましく、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。また、カルボキシル基は、1級、2級又は3級の炭素原子に結合している。該カルボン酸塩として、具体的には、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名であって、カルボキシル基が3級炭素原子に結合しているカルボン酸]等の塩が挙げられ、これらの中でも、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、バーサチック酸の塩が好ましい。
【0050】
上記希土類元素のアルコキサイドとしては、下記一般式(XII):
(R30O)3M ・・・ (XII)
[式中、R30は炭素数1~20の炭化水素基で、Mは周期律表の原子番号57~71の希土類元素である]で表される化合物が挙げられる。R30Oで表されるアルコキシ基としては、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基等が挙げられる。これらの中でも、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基が好ましい。
【0051】
上記希土類元素のβ-ジケトン錯体としては、上記希土類元素のアセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらの中でも、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
【0052】
上記希土類元素のリン酸塩及び亜リン酸塩としては、上記希土類元素と、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、リン酸ビス(p-ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール-p-ノニルフェニル)、リン酸(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)、リン酸(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-p-ノニルフェニル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸等との塩が挙げられ、これらの中でも、上記希土類元素と、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸との塩が好ましい。
【0053】
本発明の触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合する場合、前記希土類元素含有化合物(A)のモル量は、使用する共役ジエン化合物のモル量の1/1000以下であることが好ましく、1/2000以下であることが更に好ましい。モル比率をこのように規定することで、得られる変性共役ジエン系重合体中の触媒残渣量を大きく低減させることができる。これにより、該重合体をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の破壊特性を更に向上させることができる。
なお、重合反応系において、触媒組成物に含まれる希土類元素含有化合物(A)の濃度は、0.0001~0.2mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0054】
本発明の触媒組成物に用いる有機金属化合物(B)は、下記一般式(I):
YR1
aR2
bR3
c ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R1、R2及びR3はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表わされる。
【0055】
上記一般式(I)において、R1、R2及びR3が示す炭素数1~10の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基等が好ましい。
【0056】
前記有機金属化合物(B)としては、下記一般式(XIII):
AlR1R2R3 ・・・ (XIII)
[式中、R1及びR2は、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R1、R2及びR3はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい]で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。該有機アルミニウム化合物は、上記一般式(I)において、YがAlで、a、b及びcが1である化合物に相当する。
【0057】
上記一般式(XIII)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ-n-プロピルアルミニウム、水素化ジ-n-ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n-プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0058】
前記有機金属化合物(B)は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、前記有機金属化合物(B)の含有量は、上述の希土類元素含有化合物(A)に対して2倍モル以上であることが好ましく、3~1000倍モルであることが更に好ましく、30~900倍モルであることがより一層好ましく、50~800倍モルであることが特に好ましい。
【0059】
本発明の触媒組成物は、極性官能基を有する化合物(C)を含む。該化合物(C)の極性官能基は、本発明の触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合する場合、単量体として使用する共役ジエン化合物に比べて極性が高い官能基であり、好ましくは、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンからなる群から選択される少なくとも一種を有する。極性官能基が、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンからなる群から選択される少なくとも一種を有する場合、生成する変性共役ジエン系重合体の充填剤に対する親和性が更に向上する。
【0060】
前記極性官能基を有する化合物(C)の極性官能基は、アルコール性水酸基、アルコキシ基、置換又は無置換のアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種を有することが好ましい。極性官能基を有する化合物(C)の極性官能基が、アルコール性水酸基、アルコキシ基、或いは、置換又は無置換のアミノ基である場合、生成する変性共役ジエン系重合体の充填剤に対する親和性が更に向上する。前記アルコール性水酸基としては、ヒドロキシ基の他、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2,2-ジヒドロキシメチルプロピル基等のヒドロキシアルキル基等が挙げられるが、主鎖からヒドロキシ基やアミノ基までの炭素数に特に限りはない。さらにヒドロキシ基もアミノ基も保護基で保護されていてもかまわない。保護基として、たとえば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、ベンジル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基を用いることができるが、シリコン系保護基が特に望ましい。また、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシ基等が挙げられる。また、置換アミノ基における、アミノ基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、トリメチルシリル基(TMS)等のトリアルキルシリル基等が挙げられる。なお、前記置換又は無置換のアミノ基としては、アミノ基の他、メチルアミノ基、エチルアミノ基、トリメチルシリルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基等が挙げられる。
【0061】
前記極性官能基を有する化合物(C)は、前記極性官能基に加えて、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有することが好ましい。極性官能基を有する化合物(C)が、前記極性官能基に加えて、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有する場合、該化合物(C)が、該炭素-炭素不飽和結合を利用して、単量体として、生成する変性共役ジエン系重合体の主鎖中に取り込まれ易くなる。なお、前記炭素-炭素不飽和結合は、炭素-炭素二重結合でも、炭素-炭素三重結合でもよい。
【0062】
前記極性官能基を有する化合物(C)は、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有する芳香族化合物であることが好ましい。なお、ここでの、炭素-炭素不飽和結合とは、芳香族性の不飽和結合を除くものとする。極性官能基を有する化合物(C)が、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有する芳香族化合物である場合、該化合物(C)が、炭素-炭素不飽和結合を利用して、生成する変性共役ジエン系重合体の主鎖中に更に取り込まれ易くなる。
【0063】
前記極性官能基を有する化合物(C)は、スチレン誘導体であることが好ましい。ここで、スチレン誘導体とは、スチレン分子中の水素が一価の置換基で置換された化合物を指し、スチレン分子のベンゼン環の水素を置換した化合物及びスチレン分子のビニル基の水素を置換した化合物の双方を包含するが、スチレン分子のベンゼン環の水素を置換した化合物が好ましく、ビニル基に対してパラ位に置換基を有するものが更に好ましい。なお、一価の置換基としては、ヒドロキシアルキル基、トリアルキルシリルオキシアルキル基、アミノアルキル基等が挙げられる。ここで、ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2,2-ジヒドロキシメチルプロピル基等が挙げられるが、主鎖からヒドロキシ基やアミノ基までの炭素数に特に限りはない。さらにヒドロキシ基もアミノ基も保護基で保護されていてもかまわない。保護基として、たとえば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、ベンジル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基を用いることができるが、シリコン系保護基が特に望ましい。また、トリアルキルシリルオキシアルキル基としては、トリメチルシリルオキシメチル基、トリメチルシリルオキシエチル基、トリエチルシリルオキシメチル基等が挙げられる。また、アミノアルキル基としては、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基等が挙げられる。
【0064】
前記極性官能基を有する化合物(C)として、具体的には、アリルアルコール、3-ヒドロキシ-1-ペンテン、4-ヒドロキシ-1-ペンテン、5-ヒドロキシ-1-ペンテン、プロパルギルアルコール等の不飽和アルコール、プロパルギルトリメチルシリルエーテル、4-エチニルベンジルトリメチルシリルエーテル、4-ビニルベンジルトリメチルシリルエーテル等の不飽和エーテル、p-ヒドロキシメチルスチレン、p-トリメチルシリルオキシメチルスチレン、p-(2,2-ジヒドロキシメチル)プロピルスチレン、p-アミノメチルスチレン等のスチレン誘導体、アリルアミン、ブテニルアミン、ペンテニルアミン、ヘキセニルアミン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アリルアミン、p-アミノメチルスチレン等のアミン化合物が挙げられる。
【0065】
前記極性官能基を有する化合物(C)は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記極性官能基を有する化合物(C)のモル量は、前記有機金属化合物(B)のモル量の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることが更に好ましく、また、4倍以下であることが好ましい。極性官能基を有する化合物(C)のモル量が有機金属化合物(B)のモル量の3倍以上であれば、極性官能基を有する化合物(C)が、生成する変性共役ジエン系重合体の主鎖中に取り込まれ易くなる。
【0066】
前記極性官能基を有する化合物(C)のモル量は、前記希土類元素含有化合物(A)に対して、30倍以上であることが好ましく、30~1000倍であることがより好ましく、30~800倍であることが更に好ましい。極性官能基を有する化合物(C)のモル量が希土類元素含有化合物(A)に対して30倍以上であれば、極性官能基を有する化合物(C)が、生成する変性共役ジエン系重合体の主鎖中に取り込まれ易くなる。
【0067】
本発明の触媒組成物は、更に、イオン性化合物(D)及びハロゲン化合物(E)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。触媒組成物が、イオン性化合物(D)及びハロゲン化合物(E)を含む場合、極性官能基を有する化合物(C)が、生成する変性共役ジエン系重合体の主鎖中に取り込まれ易くなる。なお、環境への配慮の観点から、本発明の触媒組成物は、ハロゲン化合物(E)よりも、イオン性化合物(D)を含むことが好ましい。
【0068】
前記触媒組成物に用いることができるイオン性化合物(D)は、非配位性アニオンとカチオンとからなる。該イオン性化合物(D)としては、上述の希土類元素含有化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。
ここで、非配位性アニオンとしては、4価のホウ素アニオン、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニルペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。
従って、イオン性化合物(D)としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。
【0069】
前記イオン性化合物(D)は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、前記触媒組成物におけるイオン性化合物(D)の含有量は、上述の希土類元素含有化合物(A)に対して0.1~10倍モルであることが好ましく、約1倍モルであることが更に好ましい。
【0070】
前記触媒組成物に用いることができるハロゲン化合物(E)としては、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、及び活性ハロゲンを含む有機化合物等が挙げられる。該ハロゲン化合物(E)は、例えば、上述の希土類元素含有化合物(A)と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。特に、空気中の安定性を考慮すると、ハロゲン化合物(E)としては、ルイス酸よりも金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物の方が好適に使用できる。また、ハロゲン化合物(E)としては、1つの化合物中にハロゲン原子を2つ以上含む化合物の方が、ハロゲン原子1つのみを有する化合物よりも、反応性がよく、その使用量を減じることが可能となるため、より好ましい。
【0071】
上記ルイス酸としては、B(C6F5)3等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C6F5)3等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表第4族、第6族、第13族、第14族及び第15族に属する元素を含有するハロゲン化合物等を用いることもできる。好ましくはアルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、塩素又は臭素が好ましい。
上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチルスズジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化スズ、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
【0072】
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
【0073】
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2-エチルヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1-デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2-エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2-エチルヘキシルアルコール、1-デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
【0074】
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、0.01~30モル、好ましくは0.5~10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、重合体中に残存する金属を低減することができる。
【0075】
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0076】
前記ハロゲン化合物(E)は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記触媒組成物におけるハロゲン化合物(E)の含有量は、希土類元素含有化合物(A)に対して0~5倍モルであることが好ましく、1~5倍モルであることが更に好ましい。
【0077】
本発明の触媒組成物は、更に、置換又は無置換インデン(F)、即ち、インデン及び置換インデン化合物の少なくとも一種を含むことが好ましい。触媒組成物が置換又は無置換インデン(F)を含むことで、触媒活性を向上させることができ、反応時間を短くすることができる。
【0078】
前記インデン及び置換インデン化合物は、インデニル基を有する。ここで、置換インデン化合物としては、例えば、2-フェニル-1H-インデン、3-ベンジル-1H-インデン、3-メチル-2-フェニル-1H-インデン、3-ベンジル-2-フェニル-1H-インデン、1-ベンジル-1H-インデン等が挙げられ、これらの中でも、3-ベンジル-1H-インデン、1-ベンジル-1H-インデンが好ましい。
【0079】
前記置換又は無置換インデン(F)の使用量は、触媒活性を向上させる観点から、上述の希土類元素含有化合物(A)1molに対して、0mol超であることが好ましく、0.5mol以上であることが更に好ましく、1mol以上であることが特に好ましく、また、触媒活性の低下を抑制する観点から、前記希土類元素含有化合物(A)1molに対して、3mol以下であることが好ましく、2.5mol以下であることが更に好ましく、2.2mol以下であることが特に好ましい。
【0080】
<変性共役ジエン系重合体の製造方法>
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、上記の触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合する工程(以下、「重合工程」と呼ぶことがある。)を含むことを特徴とする。本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、上述の触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合することで、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造できる。
なお、共役ジエン化合物を2種以上使用する場合や、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体を併用する場合、重合は、共重合となるが、本発明では、重合は、共重合をも包含するものとする。
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記重合工程の他に、更に、必要に応じ、洗浄工程、変性工程、その他の工程を適宜含んでもよい。
【0081】
前記重合工程において、単量体として使用する共役ジエン化合物は、特に限定しないが、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられるが、これらの中でも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0082】
前記重合工程においては、単量体として、共役ジエン化合物に加えて、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体を併用してもよい。該共役ジエン化合物と共重合可能な単量体としては、芳香族ビニル化合物が好ましい。該芳香族ビニル化合物は、特に限定しないが、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。なお、前記芳香族ビニル化合物としては、特に制限されることなく、上述した芳香族ビニル化合物を用いることができるが、これらの中でも、スチレンが特に好ましい。
【0083】
前記重合工程には、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、ヘキサン(例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン)等が挙げられる。
【0084】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法において、重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。一段階の重合工程とは、重合させる単量体を一斉に反応させて重合させる工程である。多段階の重合工程とは、一種類又は二種類以上の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、残る種類の単量体や前記一種類又は二種類以上の単量体の残部を添加して重合させる一以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。
【0085】
上記触媒組成物の存在下では、反応器への各単量体の投入順序、各単量体の投入量、その他の反応条件を制御することによって、製造された重合体中における共役ジエン化合物由来の単位全体における結合含量(シス-1,4結合含量、トランス-1,4結合含量、3,4ビニル結合含量及び1,2ビニル結合含量)や各単量体由来の単位の含有量(すなわち、各単量体の共重合比)を制御することができる。
【0086】
本発明の製造方法において、前記重合工程は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。重合工程の温度は、特に限定しないが、例えば、-100~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、重合体の共役ジエン単位のシス-1,4選択性が低下することがある。重合工程の圧力は、0.1~10.0MPaの範囲とすることが好ましい。また、重合工程の反応時間は、特に限定しないが、例えば、1秒~10日の範囲であり、得られる重合体について所望するミクロ構造、各単量体の種類、投入量及び添加順序、触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができる。重合工程において、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の停止剤を用いて、反応を停止させてもよい。
【0087】
前記洗浄工程は、前記重合工程において得られた重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、触媒組成物としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(たとえば塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸が重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。該洗浄工程により、重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0088】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、更に、前記共役ジエン化合物を重合する工程で得られる重合生成物に、上記(a)成分~(h)成分からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を反応させる工程(以下、「変性工程」と呼ぶことがある。)を含むことが好ましい。
上述の触媒組成物の存在下で、共役ジエン化合物を重合した後、重合生成物に、前記(a)成分~(h)成分からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を反応させることで、主鎖が変性されている上、末端も変性された変性共役ジエン系重合体を簡便に製造できる。
【0089】
前記変性工程で使用できる(a)成分は、上記一般式(II)で表される化合物である。
上記一般式(II)中、X1~X5は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びスルホニルオキシ基から選ばれる少なくとも一種を含み、かつ活性プロトン及びオニウム塩を含まない一価の官能基を示す。X1~X5は、互いに同一でも異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではない。
上記一般式(II)中、R4~R8は、それぞれ独立に単結合又は炭素数1~18の二価の炭化水素基を示す。ここで、二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基などが挙げられるが、これらの中でも、炭素数1~18のアルキレン基、特に炭素数1~10のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。また、該直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
また、上記一般式(II)において、X1~X5及びR4~R8のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい。
【0090】
前記変性工程で使用できる(b)成分は、R9
nM1Z4-n、M1Z4、M1Z3、R10
nM1(-R11-COOR12)4-n又はR10
nM1(-R11-COR12)4-nで表わされる、ハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物である。ここで、R9~R11は同一又は異なり、炭素数1~20の炭化水素基であり、R12は炭素数1~20の炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよい。また、M1はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子であり、Zはハロゲン原子であり、nは0~3の整数である。なお、炭素数1~20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0091】
前記変性工程で使用できる(c)成分は、分子中に、Y1=C=Y2結合を含有するヘテロクムレン化合物である。ここで、Y1は炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、Y2は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子である。(c)成分のうち、Y1が炭素原子、Y2が酸素原子の場合、ケテン化合物であり、Y1が炭素原子、Y2が硫黄原子の場合、チオケテン化合物であり、Y1が窒素原子、Y2が酸素原子の場合、イソシアナート化合物であり、Y1が窒素原子、Y2が硫黄原子の場合、チオイソシアナート化合物であり、Y1およびY2がともに窒素原子の場合、カルボジイミド化合物であり、Y1およびY’がともに酸素原子の場合、二酸化炭素であり、Y1が酸素原子、Y2が硫黄原子の場合、硫化カルボニルであり、Y1およびY2がともに硫黄原子の場合、二硫化炭素である。これらの中でも、(c)成分としては、二酸化炭素が好ましい。
【0092】
前記変性工程で使用できる(d)成分は、上記一般式(III)で表される構造を分子中に含有するヘテロ3員環化合物である。一般式(III)中、Y3は、酸素原子又は硫黄原子である。(d)成分のうち、Y3が酸素原子の場合、エポキシ化合物であり、Y3が硫黄原子の場合、チイラン化合物である。ここで、エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴム等が挙げられる。また、チイラン化合物としては、例えばチイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン等が挙げられる。
【0093】
前記変性工程で使用できる(e)成分は、ハロゲン化イソシアノ化合物である。該ハロゲン化イソシアノ化合物は、>N=C-Zで表わされる結合を有し、ここで、Zはハロゲン原子である。該ハロゲン化イソシアノ化合物としては、例えば、2-アミノ-6-クロロピリジン、2,5-ジブロモピリジン、4-クロロ-2-フェニルキナゾリン、2,4,5-トリブロモイミダゾール、3,6-ジクロロ-4-メチルピリダジン、3,4,5-トリクロロピリダジン、4-アミノ-6-クロロ-2-メルカプトピリミジン、2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジン、2-アミノ-4,6-ジクロロピリミジン、6-クロロ-2,4-ジメトキシピリミジン、2-クロロピリミジン、2,4-ジクロロ-6-メチルピリミジン、4,6-ジクロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン、2,4,5,6-テトラクロロピリミジン、2,4,6-トリクロロピリミジン、2-アミノ-6-クロロピラジン、2,6-ジクロロピラジン、2,4-ビス(メチルチオ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-5-ニトロチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2-クロロベンゾオキサゾール等が挙げられる。
【0094】
前記変性工程で使用できる(f)成分は、R13-(COOH)m、R14(COZ)m、R15-(COO-R16)、R17-OCOO-R18、R19-(COOCO-R20)m、又は上記一般式(IV)で表わされる、カルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物である。ここで、R13~R21は同一又は異なり、炭素数1~50の炭化水素基であり、Zはハロゲン原子であり、mは1~5の整数である。なお、炭素数1~50の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0095】
前記変性工程で使用できる(g)成分は、R22
kM2(OCOR23)4-k、R24
kM2(OCO-R25-COOR26)4-k、又は上記一般式(V)で表わされる、カルボン酸の金属塩である。ここで、R22~R28は同一又は異なり、炭素数1~20の炭化水素基であり、M2はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子であり、kは0~3の整数であり、pは0~1の整数である。なお、炭素数1~20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0096】
前記変性工程で使用できる(h)成分は、N-置換アミノケトン、N-置換アミノチオケトン、N-置換アミノアルデヒド、N-置換アミノチオアルデヒド、又は分子中に-C-(=Y3)-N<結合(式中、Y3は酸素原子又は硫黄原子を表す)を有する化合物である。(h)成分としては、4-ジメチルアミノアセトフェノン、4-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-ジビニルアミノベンズアルデヒド、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-フェニル-5-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-カプロラクタム、N-フェニル-ω-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0097】
前記(a)成分~(h)成分から選択される化合物の使用量(総量)は、触媒組成物に含まれる希土類元素含有化合物(A)に対して、モル比で、0.1~100、好ましくは1.0~50であることが好ましい。(a)成分~(h)成分から選択される化合物の使用量がこの範囲内であれば、変性反応が容易に進行して、末端が変性された変性共役ジエン系重合体を容易に製造できる。
また、前記変性工程は、通常室温~100℃の攪拌下、0.5分~2時間、好ましくは3分~1時間行うことが好ましい。
【0098】
<変性共役ジエン系重合体>
本発明の変性共役ジエン系重合体は、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。本発明の変性共役ジエン系重合体は、主鎖に、上述の極性官能基を有する化合物(C)の少なくとも一部が取り込まれている。該化合物(C)は、極性官能基を有するため、本発明の変性共役ジエン系重合体は、極性官能基を有することとなる。そして、該極性官能基は、充填剤との親和性を有するため、本発明の変性共役ジエン系重合体は、充填剤との親和性が高く、例えば、該変性共役ジエン系重合体をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物での充填剤の分散性が向上し、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0099】
本発明の変性共役ジエン系重合体は、変性率が30%以上であることが好ましく、40%以上であることが更に好ましく、50%以上であることがより一層好ましい。なお、本発明において、変性率は、後述する実施例で記載の方法で測定し、具体的には、極性官能基を有する化合物(C)が窒素を含む場合は、重合体の全窒素量から変性率を求め、その他の場合は、NMRから変性率を求める。変性共役ジエン系重合体は、変性率が30%以上であると、ゴム組成物に配合した際に、ゴム組成物の低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0100】
本発明の変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン化合物として、イソプレンを使用した場合、変性ポリイソプレンとなる。ここで、該変性ポリイソプレンは、ゲル量が30%以上であることが好ましく、40%以上であることが更に好ましい。なお、本発明において、ゲル量は、後述する実施例で記載の方法で測定する。変性ポリイソプレンのゲル量が30%以上であると、分子鎖の絡み合いが多く、変性ポリイソプレンの破壊特性が向上する。
【0101】
なお、本発明の変性共役ジエン系重合体としては、上述の変性ポリイソプレンの他、変性ポリブタジエン、変性ポリペンタジエン、変性ポリジメチルブタジエン等が挙げられるが、これらの中でも、変性ポリイソプレン及び変性ポリブタジエンが好ましい。
【0102】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明のゴム組成物は、低ロス性、破壊特性(耐亀裂性等)、耐摩耗性に優れる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述の変性共役ジエン系重合体を含み、更に必要に応じて、その他のゴム成分、充填剤、架橋剤、その他の成分を含むことができる。
なお、本発明のゴム組成物は、ゴム成分の30質量%以上が上記の変性共役ジエン系重合体であることが好ましい。ゴム成分の30質量%以上が上記の変性共役ジエン系重合体であれば、ゴム組成物の低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0103】
なお、その他のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
前記ゴム組成物が充填剤を含む場合、ゴム組成物の補強性を向上させることができる。該充填剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記充填剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10~100質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましく、30~60質量部が特に好ましい。前記充填剤の配合量が10質量部以上であることにより、充填剤を配合したことによる補強性向上の効果が得られ、また、100質量部以下であることにより、良好な作業性を保持することができる。
【0105】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用ゴム組成物としては、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましい。
【0106】
前記加硫剤を用いる場合には、更に加硫促進剤を併用することもできる。前記加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。
【0107】
また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0108】
本発明のゴム組成物は、後述するタイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、コンベヤベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホースなどに用いることができる。
【0109】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いたことを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、低ロス性、破壊特性(耐亀裂性等)、耐摩耗性に優れる。
タイヤにおける本発明のゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられる。
【0110】
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴム組成物及び/又はコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0112】
(比較例1)
トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}24μmol、1-ベンジル-1H-インデン48μmol、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)1.6mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]26.4μmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gのイソプレンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、50℃で2時間、重合を行った。得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ、ドラムドライヤーにて乾燥させて重合体を得た。
【0113】
(実施例1)
-78℃に冷却した5-ヒドロキシ-1-ペンテン(極性官能基を有する化合物A)1.2mmolに、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)1.6mmolをゆっくり添加した。混合液をゆっくり室温まで昇温した後、封管中にて130℃で加熱攪拌して、化合物A/DIBAL混合液を得た。
得られた化合物A/DIBAL混合液と、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}24μmol、1-ベンジル-1H-インデン48μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]26.4μmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gのイソプレンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、-20℃で2日、重合を行った。得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ、ドラムドライヤーにて乾燥させて変性重合体を得た。
【0114】
(実施例2~5)
極性官能基を有する化合物A(化学式を以下に示す)の代わりに、下記の極性官能基を有する化合物B~Eを使用する以外は、実施例1と同様にして、変性重合体を得た。
【化9】
化学式中のTMSは、トリメチルシリル基を示す。
【0115】
(実施例6)
-78℃に冷却した上記化合物D 480μmolに、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)1.6mmolをゆっくり添加した。混合液をゆっくり室温まで昇温した後、封管中にて130℃で加熱攪拌して、化合物D/DIBAL混合液を得た。
得られた化合物D/DIBAL混合液と、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}24μmol、1-ベンジル-1H-インデン48μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]26.4μmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gのイソプレンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、-20℃で2日、重合を行った。得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ、ドラムドライヤーにて乾燥させて変性重合体を得た。
【0116】
<変性率の分析>
得られた(変性)重合体に対して、NMRを用い、ヒドロキシ基に隣接するプロトン(3.5ppm付近)の積分値と主鎖の積分値の比から、変性率を測定した。また、参考例1として、市販のポリイソプレンゴム[JSR社製、商品名「IR2200」]の変性率も測定した。結果を表1に示す。
【0117】
<ゲル量の分析>
得られた(変性)重合体160mgにトルエン40mLを加え一晩放置したサンプルを金網(100メッシュ)でろ過し、金網の上の残分を乾燥させゲルを得、ゲル量を算出した。また、参考例1として、市販のポリイソプレンゴム[JSR社製、商品名「IR2200」]のゲル量も測定した。結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
(比較例2)
トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}24μmol、1-ベンジル-1H-インデン48μmol、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)1.6mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]26.4μmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gの1,3-ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、50℃で2時間、重合を行った。得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ、ドラムドライヤーにて乾燥させて重合体を得た。
【0120】
(実施例7)
-78℃に冷却したアリルアミン(極性官能基を有する化合物F)360mmolに、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)480mmolをゆっくり添加した。混合液を室温まで昇温した後、封管中にて130℃で加熱攪拌して、化合物F/DIBAL混合液を得た。
得られた化合物F/DIBAL混合液と、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}1.2mmol、1-ベンジル-1H-インデン2.4mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]1.32mmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gの1,3-ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、室温で3分、重合を行った。得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ、ドラムドライヤーにて乾燥させて変性重合体を得た。
【0121】
(実施例8~11)
極性官能基を有する化合物F(化学式を以下に示す)の代わりに、下記の極性官能基を有する化合物G~I又は上記の極性官能基を有する化合物Aを使用する以外は、実施例7と同様にして、変性重合体を得た。
【化10】
化学式中のTMSは、トリメチルシリル基を示す。
【0122】
<変性率の分析>
実施例7~10については、極性官能基を有する化合物が窒素を含むため、得られた変性重合体に対して、全窒素量を測定し、全窒素量から、変性率を算出した。
一方、実施例11については、実施例1と同様に、NMRを用いて、変性率を測定した。また、参考例2として、市販のポリブタジエンゴム[JSR社製、商品名「BR01」]の変性率も測定した。結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
(比較例3)
トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}24μmol、1-ベンジル-1H-インデン48μmol、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)1.6mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]26.4μmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gの1,3-ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、50℃で2時間、重合を行った。
重合転化率が100%に達した後、重合反応系に、過剰量の二酸化炭素を加え、50℃で1時間、変性反応を行った。
得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ、ドラムドライヤーにて乾燥させて変性重合体を得た。
【0125】
(実施例12)
-78℃に冷却したアリルアミン(極性官能基を有する化合物F)360mmolに、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)480mmolをゆっくり添加した。混合液を室温まで昇温した後、封管中にて130℃で加熱攪拌して、化合物F/DIBAL混合液を得た。
得られた化合物F/DIBAL混合液と、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム{Gd[N(SiMe3)2]3}1.2mmol、1-ベンジル-1H-インデン2.4mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C・B(C6F5)4]1.32mmol、トルエン20mLを混合して、一晩以上室温にて静置して、触媒組成物を調製した。
100gの1,3-ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液700mLに、上記触媒組成物を加え、室温で3分、重合を行った。
重合転化率が100%に達した後、重合反応系に、過剰量の二酸化炭素を加え、50℃で1時間、変性反応を行った。
得られたセメント溶液から、イソプロパノールを用いて生成物を沈殿させ,ドラムドライヤーにて乾燥させて変性重合体を得た。
【0126】
(実施例13~16)
極性官能基を有する化合物Fの代わりに、上記の極性官能基を有する化合物G~I又はAを使用する以外は、実施例12と同様にして、変性重合体を得た。
【0127】
<変性率の分析>
得られた(変性)重合体に対して、上記の全窒素量から変性率を測定した。結果を表3に示す。
【0128】
【0129】
(ゴム組成物の調製と評価1)
通常のバンバリーミキサーを用いて、比較例1又は実施例1~6で得られた(変性)重合体100質量部に対して、硫黄1.5質量部、ワックス(精工化学社製、商品名「サンタイト」)1質量部、老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」)1.5質量部を配合して、ゴム組成物を製造した。また、得られたゴム組成物に対して、下記の方法で耐亀裂性を評価した。結果を表4に示す。
また、参考例3として、参考例1の市販のポリイソプレンゴム[JSR社製、商品名「IR2200」]100質量部に対して、上記と同じ配合剤を同量配合して、ゴム組成物を製造し、同様に耐亀裂性を評価した。
【0130】
<耐亀裂性>
JIS 3号試験片の中心部に0.5mmの亀裂を入れ、室温において、100%の歪にて繰り返し疲労を与え、試験片が破断に至るまでの回数を測定した。結果は、比較例4の値を100とした指数で表示した。指数値が大きい程、破断に至るまでの回数が多く、耐亀裂性(破壊特性)に優れることを示す。
【0131】
【0132】
(ゴム組成物の調製と評価2)
通常のバンバリーミキサーを用いて、比較例1又は実施例1~6で得られた(変性)重合体100質量部に対して、HAF級カーボンブラック[旭カーボン社製、商品名「旭#70」]40質量部、硫黄1.5質量部、ワックス(精工化学社製、商品名「サンタイト」)1質量部、老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C])1質量部、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」)1.5質量部を配合して、ゴム組成物を製造した。また、得られたゴム組成物に対して、下記の方法で耐亀裂性を評価した。結果を表5に示す。
また、参考例4として、参考例1の市販のポリイソプレンゴム[JSR社製、商品名「IR2200」]100質量部に対して、上述の配合物を上述と同量配合して、ゴム組成物を製造し、同様に耐亀裂性を評価した。
【0133】
<耐亀裂性>
JIS 3号試験片の中心部に0.5mmの亀裂を入れ、室温において、100%の歪にて繰り返し疲労を与え、試験片が破断に至るまでの回数を測定した。結果は、比較例5の値を100とした指数で表示した。指数値が大きい程、破断に至るまでの回数が多く、耐亀裂性(破壊特性)に優れることを示す。
【0134】
【0135】
(ゴム組成物の調製と評価3)
通常のバンバリーミキサーを用いて、天然ゴム60質量部と、比較例2又は実施例7~11で得られた(変性)重合体40質量部に対して、ISAF級カーボンブラック[旭カーボン社製、商品名「旭#80」]44質量部、硫黄1.5質量部、ワックス(精工化学社製、商品名「サンタイト」)1質量部、老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」)1.5質量部を配合して、ゴム組成物を製造した。また、得られたゴム組成物に対して、下記の方法で低ロス性を評価した。結果を表6に示す。
また、参考例5として、天然ゴム60質量部と、参考例2の市販のポリブタジエンゴム[JSR社製、商品名「BR01」]40質量部に対して、上述の配合剤を上述と同量配合して、ゴム組成物を製造し、同様に低ロス性を評価した。
【0136】
<低ロス性>
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度50℃、歪み3%、周波数15Hzでtanδを測定した。結果は、参考例5の値を100とした指数で表示した。指数値が小さい程、tanδが小さく、低ロス性に優れることを示す。
【0137】
【0138】
(ゴム組成物の調製と評価4)
通常のバンバリーミキサーを用いて、天然ゴム50質量部と、比較例3又は実施例12~16で得られた(変性)重合体50質量部に対して、ISAF級カーボンブラック[旭カーボン社製、商品名「旭#80」]44質量部、硫黄1.5質量部、ワックス(精工化学社製、商品名「サンタイト」)1質量部、老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」)1.5質量部を配合して、ゴム組成物を製造した。
また、得られたゴム組成物に対して、上記の方法で低ロス性を評価し、更に、下記の方法で耐摩耗性を評価した。なお、低ロス性の結果は、比較例7の値を100とした指数で表示した。結果を表7に示す。
また、参考例6として、天然ゴム50質量部と、参考例2の市販のポリブタジエンゴム[JSR社製、商品名「BR01」]50質量部に対して、上述の配合剤を上述と同量配合して、ゴム組成物を製造し、同様に低ロス性及び耐摩耗性を評価した。
【0139】
<耐摩耗性>
ランボーン型摩耗試験機を使用して室温で摩耗量を測定し、該摩耗量の逆数を算出し、それぞれ比較例7を100として指数表示をした。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0140】
【0141】
表4~表7に示す結果から、本発明に従う実施例のゴム組成物は、低ロス性、耐亀裂性(破壊特性)、耐摩耗性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の触媒組成物は、主鎖変性された変性共役ジエン系重合体の製造に利用できる。また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、かかる重合体の製造に利用できる。また、本発明の変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物のゴム成分として利用できる。また、本発明のゴム組成物は、タイヤを始め、各種ゴム製品に利用できる。更に、本発明のタイヤは、各種車輌向けのタイヤとして利用できる。