(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】芳香族化触媒を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/60 20060101AFI20221209BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20221209BHJP
B01J 37/26 20060101ALI20221209BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20221209BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20221209BHJP
B01J 37/24 20060101ALI20221209BHJP
B01J 29/62 20060101ALI20221209BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20221209BHJP
C10G 35/095 20060101ALI20221209BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20221209BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20221209BHJP
C07C 4/00 20060101ALI20221209BHJP
C07C 5/00 20060101ALI20221209BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
B01J29/60 M
B01J37/04 102
B01J37/26
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J37/24
B01J29/62 M
B01J32/00
C10G35/095
C07C15/04
C07C15/06
C07C4/00
C07C5/00
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019533360
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 US2017066257
(87)【国際公開番号】W WO2018118605
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502303175
【氏名又は名称】シェブロン フィリップス ケミカル カンパニー エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー、アン - シアン
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-500486(JP,A)
【文献】米国特許第6190539(US,B1)
【文献】特開昭62-057653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0156871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 1/00-99/00
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、
湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、
押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化押出ベースを形成することと、
フッ素化押出ベースをか焼してか焼フッ素化押出ベースを形成することと
、
を含む結合ゼオライト担体を製造する方法であって、
前記ゼオライトがKL型ゼオライトを含
み、
前記湿式押出ベースから過剰の水を除去する工程と前記押出ベースをフッ素含有化合物と接触させる工程との間に洗浄工程を有さない、上記方法
。
【請求項2】
前記結合剤が、合成又は天然ゼオライト、アルミナ、シリカ、粘土、元素周期表のIVA族及びIVB族の金属の耐火性酸化物、ケイ素、チタン、ジルコニウムの酸化物、又はそれらの組合わせを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合ゼオライト担体が、90:10~70:30の範囲にあるゼオライトと結合剤との重量比を有する、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトが、大細孔ゼオライトを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素含有化合物が、一般式N(R)
4Fで表される有機アンモニウムハライド化合物又はアンモニウムハライドであり、式中、Rが、水素、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rが同一でも異なっていてもよい、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Rが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はそれらの組合わせである、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素含有化合物が、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、フッ化テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムフルオライド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化メチルトリエチルアンモニウム、又はそれらの組合わせを含む、請求項
5~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結合ゼオライト担体が、蛍光X線によって、0.1重量%~5重量%の量で存在するフッ化物を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の
方法により得られた結合ゼオライト担体を、第VIII族金属及び少なくとも1種の塩素含有化合物と接触させて、芳香族化触媒を形成することを含む、方法。
【請求項10】
前記第VIII族金属が、白金を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩素含有化合物が、一般式N(R)
4Clで表される有機アンモニウムハライド化合物又はアンモニウムハライドであり、式中、Rが、水素、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rが同一でも異なっていてもよい、請求項
9~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項
9~
11のいずれか一項に記載の
方法により得られた芳香族化触媒を、改質条件下で反応域内で炭化水素供給物と接触させ、反応域から芳香族化合物を回収することを含む、炭化水素を芳香族化合物に転換する接触改質方法。
【請求項13】
前記炭化水素供給物が、100ppb未満の硫黄を含む、請求項
12に記載の接触改質方法。
【請求項14】
前記芳香族化触媒が、C5
+の重量百分率収率によって決定されるように、20%~100%の選択率を有する、請求項
12又は
13に記載の接触改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、芳香族化触媒による炭化水素の芳香族化に関する。具体的には、本開示は芳香族化触媒を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の芳香族化合物への接触転換は、芳香族化と呼ばれ、化学工業の大部分が基礎としている、基本的な構成要素である化学物質を製造するための重要な工業プロセスである。芳香族化反応は、炭化水素の脱水素化、異性化、及び水素化分解を含んでもよい。これらの反応は一般に、芳香族化触媒を含む1つ以上の芳香族化反応器中で行われる。これらの触媒は、所望の芳香族化合物への選択性、及び/又は反応の所望の芳香族化合物への転換率を高める可能性がある。それらの商業的重要性を考慮して、高い選択率及び転換率で芳香族化触媒を製造する改良された方法に対する、継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
結合ゼオライト担体を製造する方法は、ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼フッ素化押出ベースを形成することと、か焼フッ素化押出ベースを洗浄して、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む。
【0004】
結合ゼオライト担体を製造する方法は、ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼押出ベースを形成することと、か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化か焼押出ベースを形成することと、フッ素化か焼押出ベースを洗浄して、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む。
【0005】
結合ゼオライト担体を製造する方法は、ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼押出ベースを形成することと、か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化か焼押出ベースを形成することと、フッ素化か焼押出ベースを洗浄して、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む。
なお、下記[1]から[18]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、
湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、
押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化押出ベースを形成することと、
押出ベースをか焼してか焼フッ素化押出ベースを形成することと、か焼フッ素化押出ベースを洗浄して、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、
洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、
洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む結合ゼオライト担体を製造する方法。
[2]
ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、
湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼押出ベースを形成することと、
か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、か焼フッ素化押出ベースを形成することと、
か焼フッ素化押出ベースを洗浄して、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、
洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、
洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む結合ゼオライト担体を製造する方法。
[3]
ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して押出ベースを形成することと、
押出ベースをか焼してか焼押出ベースを形成することと、
か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、か焼フッ素化押出ベースを形成することと、
か焼フッ素化押出ベースを洗浄して、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、
洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、
洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む結合ゼオライト担体を製造する方法。
[4]
前記フッ素含有化合物が、気相にある、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]
前記結合剤が、合成又は天然ゼオライト、アルミナ、シリカ、粘土、元素周期表のIVA族及びIVB族の金属の耐火性酸化物、ケイ素、チタン、ジルコニウムの酸化物、又はそれらの組合わせを含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]
前記結合ゼオライト担体が、約90:10~約70:30の範囲にあるゼオライトと結合剤との重量比を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]
前記ゼオライトが、大細孔ゼオライトを含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
前記ゼオライトが、KL型ゼオライトを含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]
前記フッ素含有化合物が、一般式N(R)
4
Fで表される有機アンモニウムハライド化合物であり、式中、Rが、水素、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rが同一でも異なっていてもよい、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]
Rが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はそれらの組合わせである、[9]に記載の方法。
[11]
前記フッ素含有化合物が、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、フッ化テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムフルオライド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化メチルトリエチルアンモニウム、又はそれらの組合わせを含む、[9]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記結合ゼオライト担体が、蛍光X線によって、約0.1重量%~約5重量%の量で存在するフッ化物を含む、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]
[1~12のいずれか一項に記載の結合ゼオライト担体を、第VIII族金属及び少なくとも1種の塩素含有化合物と接触させて、芳香族化触媒を形成することを含む、方法。
[14]
前記第VIII族金属が、白金を含む、[13]に記載の方法。
[15]
前記塩素含有化合物が、一般式N(R)
4
Clで表される有機アンモニウムハライド化合物であり、式中、Rが、水素、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rが同一でも異なっていてもよい、[13]~[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16]
[13]~[15]のいずれか一項に記載の芳香族化触媒を、改質条件下で反応域内で炭化水素供給物と接触させ、反応域から芳香族化合物を回収することを含む、炭化水素を芳香族化合物に転換する接触改質方法。
[17]
前記炭化水素供給物が、100ppb未満の硫黄を含む、[16]に記載の接触改質方法。
[18]
前記芳香族化触媒が、C5
+
の重量百分率収率によって決定されるように、約20%~100%の選択率を有する、[16]又は[17]に記載の接触改質方法。
【0006】
(詳細な説明)
1つ又は複数の態様の例示的な実装形態が以下に提供されるが、開示されたシステム及び/又は方法は、現在知られているか又は存在するかにかかわらず、任意の数の技術を使用して実装されてもよいことを最初に理解されたい。本開示は、本明細書において例示され、説明される例示的な設計及び実装を含む、以下で示される例示的な実装、図面、及び技術に全く限定されるべきでなく、添付の請求項の均等物の全範囲と併せたそれらの請求項の範囲内で修正されてもよい。
【0007】
本明細書は、触媒を製造する方法を開示する。一態様では、触媒は、炭化水素を芳香族化合物に転換するために使用される芳香族化触媒である。一般に、炭化水素から芳香族化合物へのこれらの転換は、1つ以上の芳香族化反応器中で行われる。以下では、本開示は、一般に「触媒」と呼ばれることがある芳香族化触媒の製造に焦点を当てる。しかしながら、当業者は、本開示の利点により、類似の方法論を用いて他の種類の触媒を製造し得ることが考えられる。一態様では、本明細書に開示される触媒は、結合ゼオライト担体、1つ以上の触媒活性金属、及び1つ以上のハロゲン化物を含む。
【0008】
本明細書において使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。別段の定めがない限り、以下の定義が本開示に適用可能である。ある用語が本開示において用いられるが、本明細書において具体的に定義されていない場合、適用される定義は、本明細書に適用されるいずれか他の開示若しくは定義と矛盾しない限り、又はその定義が適用されるいずれの請求項も不明瞭又は不可能にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology、2nd Ed(1997)からの定義が適用されてもよい。参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文書によって提供される任意の定義又は使用が、本明細書において提供される定義又は使用と矛盾する場合に限り、本明細書において提供される定義又は使用が優先する。
【0009】
本開示において、組成物及び方法は、種々の構成要素又はステップを「含む」という観点からしばしば記載されるが、組成物及び方法は、別段の記載がない限り、種々の構成要素又はステップ「から本質的になる」又は「からなる」ものであってもよい。
【0010】
用語「a」、「an」、及び「the」は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことが意図される。例えば、「遷移金属」又は「ハロゲン」の開示は、他に特定されない限り、1つの遷移金属若しくはハロゲン、又は2つ以上の遷移金属若しくはハロゲンの混合物若しくは組合わせを包含することを意味する。
【0011】
本明細書にて開示されたいずれかの特定の化合物又は基については、提示されたいずれかの(一般又は特定の)名称又は構造は、別記されない限り、特定の一連の置換基から生じる可能性のある、全ての配座異性体、位置異性体、立体異性体、及びそれらの混合物を包含することが意図される。(一般又は特定の)名称又は構造は、別記されない限り、当業者により認識されることがあるような、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、及びエナンチオマー又はラセミ形態のいずれかの他の光学異性体(ある場合)、並びに立体異性体の混合物も包含する。例えば、ヘキサンに対する一般的言及は、n-ヘキサン、2-メチル-ペンタン、3-メチル-ペンタン、2,2-ジメチル-ブタン、及び2,3-ジメチル-ブタンを含み、ブチル基に対する一般的言及は、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基を含む。
【0012】
一態様において、化学「基」は、その基が形式上、参照又は「親」化合物からどのよう誘導されるかに従って、例えば、たとえその基が事実上そのような様式で合成されなくても、その基を生成するために親化合物から除去される水素原子の数によって、定義又は記載することができる。これらの基は、置換基として、又は金属原子に配位又は結合して、利用されてよい。例として、「アルキル基」は、形式的には、アルカンから1個の水素原子を除去することにより誘導されてよい。置換基、リガンド、又は他の化学部分が特定の「基」を構成してもよいという開示は、その基が記載されるように用いられる場合、化学構造及び結合の周知の規則に従うことを意味する。ある基を「により誘導される」、「から誘導される」、「により形成される」又は「から形成される」と説明する場合、そのような用語は、特に明記しない限り、又は文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本来の意味で用いられ、任意の特定の合成方法又は手順を示すことを意図するものではない。
【0013】
種々の数値範囲が本明細書に開示される。本明細書で任意の種類の範囲が開示又は請求される場合、特に明記しない限り、範囲の終点とその中に包含される任意の部分範囲及び部分範囲の組合わせを含む範囲に合理的に包含されてもよい個別の可能な数を各々開示又は特許請求することが意図される。代表例として、本願は、結合ゼオライト担体が、約0.1重量%~約5重量%の量で存在するフッ化物を含むことを開示する。結合ゼオライト担体が約0.1重量%~約5重量%の範囲の量で存在してもよいフッ化物を含むという開示により、フッ化物の量が、この範囲内の任意の量、例えば、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、又は約5.0重量%であってもよいことを記載することが意図されている。さらに、塩素含有量は、約2重量%~約3.8重量%の任意の範囲であってもよく(例えば、塩素含有量は、約2.5重量%~約3.3重量%の範囲内であってもよい)、これは約2重量%~約3.8重量%の範囲の任意の組合わせをも含む。さらに、フッ化物の量は、約0.1重量%~約5重量%の範囲内であってもよい(例えば、フッ化物の量は、約0.2重量%~約1.5重量%の範囲内であってもよい)。これは、約0.3重量%から約1.8重量%の間などの範囲の任意の組合わせをも含む。同様に、本明細書に開示される他の全ての範囲は、この例と同様に解釈されるべきである。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「炭化水素」は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。他の識別子は、もしあれば、炭化水素に特定の基が存在することを示すために利用されてよい(例えば、ハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の同数の水素原子を置き換える1つ以上のハロゲン原子の存在を示す)。
【0015】
「芳香族」化合物は、ヒュッケル(4n+2)則に従い、かつ(4n+2)パイ電子を含む環状共役二重結合系を含む化合物であり、式中、nは1~5の整数である。芳香族化合物は、「アレーン」(ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素)、及び「ヘテロアレーン」(芳香族系に特有の連続パイ電子系と、ヒュッケル則(4n+2)と一致する多くの面外パイ電子とを維持するような方法で、三価又は二価のヘテロ原子で環状共役二重結合系の1つ以上のメチン(-C=)炭素原子を置換することにより、アレーンから形式的に誘導されたヘテロ芳香族化合物)を含む。本明細書で開示したように、用語「置換」は、非水素部分が化合物中の水素原子を形式的に置き換える芳香族基、アレーン又はヘテロアレーンを説明するために使用されてよく、特に指定がない限り、非限定的であることを意図する。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「アルカン」は、飽和炭化水素化合物を指す。他の識別子は、もしあれば、アルカンに特定の基が存在することを示すために利用されてよい(ハロゲン化アルカンは、アルカン中の同数の水素原子を置き換える1つ以上のハロゲン原子の存在を示す、など)。用語「アルキル基」は、IUPACにより規定された定義に従って本明細書で使用され、アルカンから水素原子を除去することによって形成される一価の基である。アルカン又はアルキル基は、特に断らない限り、直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0017】
「シクロアルカン」は、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン及びメチルシクロヘキサンなどの、側鎖の有無を問わず、飽和環状炭化水素である。他の識別子は、もしあれば、シクロアルカンに特定の基が存在することを示すために利用されてよい(ハロゲン化シクロアルカンは、シクロアルカン中の同数の水素原子を置き換える1つ以上のハロゲン原子の存在を示す、など)。
【0018】
用語「ハロゲン」は、その通常の意味を有する。ハロゲンの例は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を含む。
【0019】
【0020】
【0021】
一態様では、結合ゼオライト担体は、結合剤によって結合される1つ以上のゼオライト粉末を含む。用語「ゼオライト」は、一般に、特定の群の結晶性金属アルミノケイ酸塩を指す。これらのゼオライトは、酸素原子を共有することによってアルミニウム原子とケイ素原子とが三次元骨格内で架橋されたSiO4及びAlO4四面体のネットワークを示す。フレームワークにおいて、アルミニウム原子とケイ素原子の合計に対する酸素原子の比率は2である。フレームワークは、負の電気原子価を呈し、それが通常、金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は水素などの陽イオンを結晶内に包含することによって相殺される。したがって、ゼオライトは、通常アルカリ及びアルカリ金属を含む一群の天然又は合成アルミノケイ酸塩鉱物である。ゼオライトは、可逆的脱水を許容するカリウム及び水分子のようなイオン交換可能な大きな金属陽イオンによって占められた相互に接続された空洞を囲むフレームワーク構造を特徴とする。ゼオライトの実際の化学式は、結晶構造を変えずに変えることができる。一態様では、ゼオライト中のアルミニウム対ケイ素のモル比(Si/Al)は、約1.0から約3.5まで変化してもよい。
【0022】
一態様では、結合ゼオライト担体は、大孔径ゼオライトを含む。本明細書で使用される用語「大孔径ゼオライト」は、約6オングストローム(Å)(0.6nm)~約15(Å)(1.5nm)、あるいは約7(Å)(0.7nm)~約9(Å)(0.7nm)の有効孔径を有するゼオライトを指す。本開示の使用に適した大孔径結晶性ゼオライトは、L-ゼオライト、X-ゼオライト、Y-ゼオライト、オメガゼオライト、ベータゼオライト、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-10、ZSM-12、ZSM-20、REY、USY、RE-USY、LZ-210、LZ-210-A、LZ-210-M、LZ-210-T、SSZ-24、ZZA-26、SSZ-31、SSZ-33、SSZ-35、SSZ-37、SSZ-41、SSZ-42、SSZ-44、MCM-58、モルデナイト、フォージャサイト、又はそれらの組合わせを含むが、これらに限定されない。一態様では、大孔径ゼオライトは、同形フレームワーク構造を有する。一態様では、結合ゼオライト担体は、L-ゼオライトを含む。
【0023】
L型ゼオライト触媒は、ゼオライト触媒のサブグループである。典型的なL型ゼオライトは、下式に従って酸化物のモル比を含む:
式中、「M」は、バリウム、カルシウム、セリウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、亜鉛などの少なくとも1つの交換可能な陽イオンと、L型ゼオライトの基本結晶構造を実質的に変化させずに他の交換可能な陽イオンに置き換えられてもよいヒドロニウム及びアンモニウムイオンのような非金属陽イオンと、を示す。式中、「n」は、「M」の原子価を表し、「x」は2以上であり、「y」は、チャネルに含まれる水分子又はゼオライトと相互に接続した空隙の数である。L-ゼオライト、そのX線回折パターン、その特性、及びその製造方法は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出第3,216,789号に詳細に記載されている。一態様では、結合ゼオライト担体は、Mがカリウムであり、以下、KL-ゼオライトと呼ばれるL-ゼオライトを含む。
【0024】
一態様では、触媒は、約6ミクロン未満、あるいは約5ミクロン未満、あるいは約4ミクロン未満、あるいは約3ミクロン未満、あるいは約5ミクロン~約2ミクロンの平均粒径、及び約5ミクロン未満、あるいは約4ミクロン未満、あるいは約3ミクロン未満、あるいは約2ミクロン未満、あるいは約5ミクロン~約2ミクロンの中央粒径、又はそれらの組合わせを有するKL-ゼオライト粉末などの結晶性ゼオライト粉末を含む。ゼオライトの製造に適切な任意の方法で、開示された平均粒径及び中央粒径を有するゼオライト粉末を製造してもよい。例えば、噴霧乾燥又は結晶化などの技術でゼオライトを製造してもよい。一態様では、次にゼオライトを他の成分と接触させて結合ゼオライト担体を形成してもよい。
【0025】
一態様では、ゼオライトと共に使用する結合剤は、合成又は天然ゼオライト、アルミナ、モンモリロナイト及びカオリンなどの粘土、元素周期表のIVA族及びIVB族の金属の高融点酸化物、ケイ素、チタン、ジルコニウムの酸化物、又はそれらの組合わせを含む。一態様では、結合剤はシリカを含む。一態様では、シリカはシリカゾルの形態であってもよい。シリカゾルは、水中に分散したシリカ粒子を含んでよい。シリカゾルは、25℃で約20mPa.s以下の粘度、あるいは25℃で約1mPa.s~約20mPa.sの粘度、及び約9.0~約10.5のpHを有する約20重量%~約30重量%の水溶液で提供されてもよい。
【0026】
一態様では、触媒の製造方法は、本明細書に開示した種類のゼオライト、本明細書に開示した種類の結合剤、及び水を結合してペーストを形成することと、該ペーストを湿式押出ベース又は押出物に成形することとを含む。一態様では、湿式押出ベースは、任意の適切な形状を有してもよい。任意の適切な成形プロセス又は技術を使用してもよく、そして押出、噴霧乾燥、ペレット化、凝集などを含んでもよいが、これらに限定されない。一態様では、ペーストを湿式押出ベース又は押出物に成形することは、例えば、それらの全体がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,263,518号、第7,902,105号、第6,190,539号、及び第5,558,851号に記載されている。
【0027】
ゼオライトと結合剤(シリカなど)を組み合わせて、ゼオライト担体中の、約95:5~約50:50のゼオライト:結合剤の重量比、あるいは約90:10~約70:30のゼオライト:結合剤の重量比、あるいは約88:12~約78:22のゼオライト:結合剤の重量比を得てもよい。当業者であれば、押出可能なペーストを形成するのに必要な水の量を決定してもよい。水の量は、パン生地状の粘度を有するペーストを形成するのに十分であってもよい。そのようなペーストは、崩壊に対する抵抗性(非脆性など)と、凝集形態(スープのような粘度ではない、など)を維持する能力とを特徴としてもよい。ペーストは、さらに、押出機のダイ界面にプラグを形成し、次にダイ開口部を通してスパゲッティストランドに似た円筒形に放出し、所望の寸法を有し、中実又は中空のいずれかであるシリンダー又はペレットに切断又は細断し得る能力を特徴としてもよい。
【0028】
一態様では、ペーストは、押出助剤をも含む。押出助剤は、ペーストのレオロジーを改善するように機能してもよい。ペーストのレオロジーのこの改善は、成形プロセス(押出ダイによる、など)におけるペーストの流動性を改善するように機能してもよい。成形プロセスにおいて改善された流動性は、装置のより容易な起動、より滑らかな押出、より迅速な処理、より低い押出圧力及び改善された製品外観をもたらす。一態様では、押出助剤は、セルロース系材料、エチレングリコール、ステアリン酸又はそれらの組合わせを含む。一態様では、押出助剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース又はそれらの組合わせなどのセルロースエーテルを含む。本開示の使用に適した押出助剤の例は、Dow Chemical社から市販されるセルロース系材料であるMETHOCEL(R)を含むが、これに限定されない。押出助剤、それらの有効量及び触媒ベース組成物への組み込み方法は、使用者及び/又はプロセス目的を達成するために必要に応じて変更し選択してもよい。以下、ダイを出る所望の寸法の成形ペーストを「湿式押出ベース」(WEB)と呼ぶ。
【0029】
更なる処理の前に、湿式押出ベース中の過剰の水を乾燥により除去して、押出ベース(EB)を形成してもよい。湿った固体を乾燥する任意の適切な方法は、WEBを乾燥するために使用されてもよく、かつ例えば、空気中又は窒素若しくはアルゴンのような不活性ガス中で乾燥する方法を含んでもよい。乾燥温度は、約200°F(93.3℃)~約400°F(204℃)、あるいは約200°F(93.3℃)~約300°F(149℃)、あるいは約225°F(107℃)~約275°F(135℃)の範囲であってもよい。乾燥時間は、約1時間以上、あるいは約1時間~約10時間、あるいは約2時間~約5時間の範囲であってもよい。
【0030】
一態様では、WEB又はEBを、一般にフッ化と呼ばれるプロセスでフッ素含有化合物と接触させてもよい。フッ素含有化合物は、固相、液相、気相、又はそれらの組合わせであってもよい。
【0031】
本開示の使用に適したフッ素含有化合物の例は、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、フッ化アンモニウム(NH4F又はAF)、又はそれらの組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0032】
幾つかの態様では、フッ素含有化合物は、有機アンモニウムハライド化合物であってもよく、そして一般式N(R)4Fで表される1種以上の化合物を含んでもよい。式中、Rは、水素又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rは同一でも異なっていてもよい。一態様では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はそれらの組合わせである。あるいは、Rはメチルである。適切な有機フッ化アンモニウム化合物の例は、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、フッ化テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムフルオライド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化メチルトリエチルアンモニウム、又はそれらの組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0033】
有機ハロゲン化アンモニウムは、少なくとも1種のフッ化水素酸及び式N(R’)4OHで表される少なくとも1種の水酸化アンモニウムも含んでもよい。式中、R’は、水素、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子であり、各R’は同一でも異なっていてもよい。一態様では、R’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はそれらの組合わせである。あるいは、Rはメチルである。本開示での使用に適した有機アンモニウム水酸化物の例は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム又はそれらの組合わせなどの水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む。
【0034】
一態様では、WEBを本明細書に開示された種類のフッ素含有化合物と接触させて、フッ化洗浄押出ベース(F-WEB)を形成する。別の態様では、EBを本明細書に開示された種類のフッ素含有化合物と接触させてフッ化押出ベース(F-EB)を形成する。
【0035】
一態様では、WEBもEBもフッ素含有化合物と接触しない。このような態様では、押出ベース(EB)をか焼してか焼押出ベース(CEB)を形成してもよい。か焼温度は、約500°F(260℃)~約1500°F(816℃)、あるいは約700°F(371℃)~約1100°F(593℃)、あるいは約850°F(454℃)~約1100°F(593℃)の範囲であってもよい。か焼時間は、約0.5時間~約5時間、あるいは約0.5時間~約1.5時間の範囲であってもよい。このような態様では、か焼は、約10立方フィート/時(CFH)(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する酸素含有雰囲気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で空気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する「乾燥」空気中で実施されてもよい。本明細書では、乾燥空気は、約-40°F(-40℃)未満の露点を有する空気を指す。一態様では、CEBを本明細書に開示された種類のフッ素含有化合物と接触させて、その結果、フッ化か焼押出ベース(F-CEB)を得てもよい。
【0036】
一態様では、押出ベース(EB)を(前述のような先行する乾燥ステップがない場合に)か焼してか焼押出ベース(CEB)を形成する。か焼温度は、約500°F(260℃)~約1500°F(816℃)、あるいは約700°F(371℃)~約1100°F(593℃)、あるいは約850°F(454℃)~約1100°F(593℃)の範囲であってもよい。か焼時間は、約0.5時間~約5時間、あるいは約0.5時間~約1.5時間の範囲であってもよい。このような態様では、か焼は、約10立方フィート/時(CFH)(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する酸素含有雰囲気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で空気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する「乾燥」空気中で実施さてもよい。本明細書では、乾燥空気は、約-40°F(-40℃)未満の露点を有する空気を指す。一態様では、CEBを本明細書に開示された種類のフッ素含有化合物と接触させて、その結果、フッ化か焼押出ベース(F-CEB)を得てもよい。
【0037】
一態様では、洗浄されたCEB(「WCEB」)を形成するようにCEBを洗浄してもよい。CEBを洗浄することにより、存在する可能性のある「容易に除去可能な」アルカリの量を低減してもよい。本明細書で使用される用語「洗浄」は、材料の細孔容積を超える液体(水など)をCEBと接触させる任意のプロセスを含むことを意味する。本明細書では、「容易に除去可能な」アルカリは、周囲温度で押出物の重量に対して約1:1の体積の液体を接触させることにより、5回の洗浄後にCEBから洗い流してもよいアルカリとして定義される。容易に除去可能なアルカリの量を実質的に低減するために、数回の洗浄が必要であってもよい。幾つかの態様では、相当量の容易に除去可能なアルカリを除去するために、CEBを少なくとも5回洗浄してもよい。一態様では、洗浄水は、pHが約5~約9の蒸留水又は脱イオン水である。洗浄温度は、約70°F(21℃)~約200°F(93.3℃)、あるいは約80°F(27℃)~約130°F(54℃)、あるいは約90°F(32℃)~約110°F(43℃)の範囲であってもよい。洗浄時間は、1回の洗浄につき約5~約60分間、あるいは1回の洗浄につき約15~約30分間であってもよい。
【0038】
洗浄して容易に除去可能なアルカリの量を低減した後、洗浄されたWCEBを乾燥して洗浄され乾燥されたCEBを形成してもよい。乾燥温度は、約200°F(93.3℃)~約400°F(204℃)、あるいは約200°F(93.3℃)~約300°F(149℃)、あるいは約225°F(107℃)~約275°F(135℃)の範囲であってもよい。乾燥時間は、少なくとも約1時間、あるいは約1~約10時間、あるいは約2~約5時間の範囲であってもよい。
【0039】
洗浄され乾燥されたCBMをか焼して、洗浄され、乾燥され、か焼されたCBMを形成してもよい。か焼温度は、約500°F(260℃)~約1200°F(649℃)、あるいは約700°F(371℃)~約1100°F(593℃)、あるいは約850°F(454℃)~約1000°F(593℃)の範囲であってもよい。か焼時間は、約0.5~約5.0時間、あるいは約0.5~約1.5時間の範囲であってもよい。このような態様では、か焼は、約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する酸素含有雰囲気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で空気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する「乾燥」空気中で実施されてもよい。
【0040】
F-WEB、F-EB、F-CEB、及び/又はF-WCEBは、まとめてフッ素系基材(FBM)と呼ばれることがある。一態様では、芳香族化触媒を製造する方法は、WEB、EB、CEB、又はWCEBのうちの少なくとも1つをフッ素含有化合物と接触させて1つ以上のFBMを得ることを含む。一態様では、フッ素含有化合物を、WEB、EB、CEB、又はWCEBのうちの少なくとも2つと接触させて、1つ以上のFBMを得てもよい。一態様では、フッ素含有化合物を、WEB、EB、CEB、及び/又はWCEBの任意の組合わせと接触させて、1つ以上のFBMを得てもよい。一態様では、FBMを製造するためのWEB、EB、CEB及び/又はWCEBとフッ素含有化合物との接触は、約20℃~約100℃、あるいは約22℃~約80℃、あるいは約25℃~約50℃の温度範囲で行われる。
【0041】
フッ素含有化合物との接触により、芳香族化触媒の製造中に形成された後続の材料と結合しているフッ化物を得ることを理解すべきである。例えば、WEBのフッ化により、F-WEBを得て、その後にそれを乾燥してF-EBを得てもよく、それをか焼してF-CEBを得てもよい。同様に、EBのフッ化により、F-EBを得て、それをか焼してF-CEBを得てもよい。前述のように、これらの各FBMをさらに洗浄し、乾燥し、か焼してもよい。その結果、湿式押出ベースをフッ化する時、フッ化湿式押出ベースが形成され、続いてフッ化押出ベース、か焼フッ化押出ベース、洗浄か焼フッ化押出ベース、乾燥洗浄か焼フッ化押出ベースなどが形成される。押出ベースをフッ素含有化合物と接触させる態様では、フッ化押出ベースが形成され、続いてか焼フッ化押出ベース、洗浄か焼フッ化押出ベース、乾燥洗浄か焼フッ化押出ベースなどが形成される。か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させる態様では、フッ化か焼押出ベースが形成され、続いて洗浄フッ化か焼押出ベース、乾燥洗浄フッ化か焼押出ベースなどが形成される。また、得られたFEB、F-EB、F-CEB、又はF-WCEBのいずれも、まとめてフッ素系基材(FBM)と呼ばれることがある。
【0042】
本明細書に記載されているように、結合ゼオライト担体及び/又は触媒(例えば、芳香族化触媒)を得るために、FBMを更なる処理工程にかけてもよい。例えば、結合ゼオライト担体(触媒担体、触媒前駆体、前駆体担体、担体材料などとも呼ばれることがあり、その各々は1種以上の触媒材料がまだ担体に添加されていないことを示す)を形成するために、FBMをさらに洗浄、乾燥、及びか焼してもよい。
【0043】
一態様では、洗浄されたFBMを形成するために、FBMを洗浄してもよい。本明細書で使用される用語「洗浄」は、材料の細孔容積を超える液体(水など)をFBMと接触させる任意のプロセスを含むことを意味する。数回洗浄してもよい。いくつかの態様では、FBMを1~5回洗浄してもよい。一態様では、洗浄水は、pHが約5~約9の蒸留水又は脱イオン水である。洗浄温度の範囲は、約70°F(21℃)~約200°F(93.3℃)、あるいは約80°F(27℃)~約130°F(54℃)、あるいは約90°F(32℃)~約110°F(43℃)であってもよい。洗浄時間は、1回の洗浄につき約5~約60分間、あるいは1回の洗浄につき約15~約30分間であってもよい。
【0044】
一態様では、洗浄中に形成された可能性のあるプロトン部位を中和する、及び/又はプロトン部位の形成を防止するために、カリウムイオン(K+)を洗浄液(例えば、水)に組み込んでもよい。使用してもよい任意の適切な水溶性のK含有化合物は、KOH、KNO3、KHCO3、K2CO3、K-アセテート、及びシュウ酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸などの一般的な有機酸のK-塩を含むが、これらに限定されない。K+は、約100~約1000ppmの範囲の量で存在してもよい。プロトン部位又はブレンステッド酸部位は、触媒活性及び/又は失活速度に悪影響を及ぼす酸性特性をもたらす可能性がある。一態様では、洗浄前にフッ素含有化合物をCEBと接触させる。
【0045】
洗浄後、洗浄され乾燥したFBMを形成するために、洗浄されたFBMを乾燥させてもよい。乾燥温度は、約200°F(93.3℃)~約400°F(204℃)、あるいは約200°F(93.3℃)~約300°F(149℃)、あるいは約225°F(107℃)~約275°F(135℃)であってもよい。乾燥時間は、少なくとも約1時間、あるいは約1~約10時間、あるいは約2~約5時間の範囲であってもよい。
【0046】
洗浄され、乾燥されか焼されたFBMを形成するために、洗浄され乾燥されたFBMをか焼してもよい。か焼温度は、約500°F(260℃)~約1200°F(649℃)、あるいは約700°F(371℃)~約1100°F(593℃)、あるいは約850°F(454℃)~約1000°F(593℃)の範囲であってもよい。か焼時間は、約0.5~約5.0時間、あるいは約0.5~約1.5時間の範囲であってもよい。このような態様では、か焼は、約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する酸素含有雰囲気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で空気中で実施されてもよく、あるいは約10CFH(4.7L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速を有する「乾燥」空気中で実施されてもよい。
【0047】
一態様では、洗浄され、乾燥されか焼されたFBMは、結合ゼオライト担体と呼ばれることがあり、そしてその上に堆積した1種以上の触媒材料を有する芳香族化触媒を製造するための担体材料として使用されてもよい。一態様では、蛍光X線のような任意の適切な方法を用いて決定した場合、結合ゼオライト担体は、約0.1重量%~約5重量%、あるいは約0.1重量%~約3重量%、あるいは約0.3重量%~約1.8重量%の量で存在するフッ化物を含む。
【0048】
芳香族化触媒を製造する方法はさらに、結合ゼオライト担体に1種以上の第VIII族金属(白金など)のような触媒化合物及び1種以上のハロゲン化物(塩化物など)を含浸させることを含んでもよい。
【0049】
1種以上の触媒材料を組み込むために、本明細書で前述したように製造された結合ゼオライト担体をさらに処理してもよい。一態様では、結合ゼオライト担体への金属及び塩化物の添加により、炭化水素の芳香族化合物への転換のような反応を触媒することができる触媒が形成される。
【0050】
一態様では、金属化触媒担体を形成するために、1種以上の第VIII族金属を結合ゼオライト担体に添加する。金属は、任意の適切な方法、例えばイオン交換、初期湿潤含浸又は細孔充填含浸を使用することによって、結合ゼオライト担体に添加されてもよい。一態様では、金属は、金属含有溶液を含浸させることによって結合ゼオライト担体に添加される。金属含有溶液中の金属は、少なくとも1種の第VIII族金属、あるいはPt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、又はそれらの組合わせ、あるいは白金であってもよい。
【0051】
一態様では、金属は、少なくとも1種の白金含有化合物を含む金属含有溶液との接触を介して結合ゼオライト担体に添加される白金を含む。結合ゼオライト担体との接触に適した白金含有化合物の例としては、例えば塩化物及び硝酸塩のような白金塩のような溶液中で正荷電白金錯体イオンを形成する白金化合物、アミンとの白金錯体、又はそれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、白金含有化合物は、テトラクロロ白金酸アンモニウム、塩化白金酸、ジアンミン白金(II)亜硝酸塩、ビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物、白金(II)アセチルアセトナート、ジクロロジアンミン白金、白金(II)塩化物、テトラアンミン白金(II)水酸化物、塩化テトラアンミン白金及びテトラアンミン白金(II)硝酸塩を包含するが、これらに限定されない任意の分解可能な白金含有化合物であってもよい。一態様では、白金源は、テトラアンミン白金塩化物(TAPC)である。金属化触媒担体中の白金の量は、約0.1~約5重量%、あるいは約0.1~約3重量%、あるいは約0.3~約1.8重量%であってもよい。
【0052】
一態様では、ハロゲン化触媒担体を形成するために、1種以上のハロゲン化物を、ハロゲン化物含有化合物と接触させることによって、結合ゼオライト担体に添加する。1種以上のハロゲン化物を結合ゼオライト担体に別々に添加してもよく、あるいは1種以上のハロゲン化物を同時に結合ゼオライト担体に添加してもよい。ハロゲン化金属化触媒担体を形成するために、このようなハロゲン化物を金属の添加中に組み込んでもよく、あるいは金属の添加前又は添加後であってもよい別の工程で組み込む。適切なハロゲン化物の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物又はそれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このようなハロゲン化物は、有機ハロゲン化アンモニウム化合物として導入されてもよい。
【0053】
有機アンモニウムハロゲン化合物は、式N(R)4Xで表される1種以上の化合物を含んでもよく、式中、Xはハロゲンであり、Rは水素又は1~20個の炭素を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rは同じ又は異なるものであってもよい。一態様では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及びそれらの組合わせからなる群から選択され、より具体的にはメチルである。一態様では、ハロゲン化物は、塩化物であり、塩素含有化合物との接触によって結合ゼオライト担体に添加される。
【0054】
適切な塩素含有化合物は、有機塩化アンモニウム化合物であってもよく、そして一般式N(R)4Clで表される1種以上の化合物を含んでもよい。式中、Rは水素又は1~20個の炭素を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rは同じ又は異なるものであってもよい。一態様では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はそれらの組合わせである。あるいは、Rはメチルである。適切な有機塩化アンモニウム化合物の例としては、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリエチルアンモニウム、又はそれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
一態様では、ハロゲン化金属化触媒担体は、約0.1重量%~約5重量%、あるいは約0.1重量%~約3重量%、あるいは約0.3重量%~約1.8重量%の量で存在する塩化物を含む。一態様では、ハロゲン化金属化触媒担体は、塩化物とフッ化物の両方を含み、塩化物とフッ化物は、約1:10~10:1、あるいは約1:5~5:1、あるいは約1:2~2:1のCl:Fの比で存在してもよい。
【0056】
一態様では、ハロゲン化金属化触媒担体を、追加の処理の前に数時間硬化させる。一態様では、ハロゲン化金属化触媒担体を、約1~約24時間、あるいは約2~約8時間、あるいは約3~約6時間硬化させる。一態様では、触媒は、金属化ハロゲン化担体を含む。
【0057】
ハロゲン化金属化触媒担体を形成するために結合ゼオライト担体に金属及び1種以上のハロゲン化物を含浸させた後、ハロゲン化金属化触媒担体を本明細書に記載のようにさらに処理してもよい。含浸工程から残留する望ましくない化合物を除去するために、例えば化合物を除去するために化合物を乾燥させる及び/又は化合物を分解するために加熱することによって、ハロゲン化金属化触媒担体を処理してもよい。一態様では、ハロゲン化金属化触媒担体を以下のように乾燥させてか焼する。
【0058】
乾燥したハロゲン化金属化触媒担体を形成するために、ハロゲン化金属化触媒担体を乾燥させてもよい。乾燥温度は、約100°F(38℃)~約300°F(149℃)、あるいは約150°F(66℃)~約250°F(121℃)、あるいは約200°F(93.3℃)~約220°F(104℃)であってもよい。乾燥時間は、約0.1~約6時間、あるいは約0.2~約4時間、あるいは約0.2~約3時間であってもよい。開示された条件下で、乾燥用の任意の適切な装置を使用して、ハロゲン化金属化触媒担体を乾燥させてもよい。例えば、ハロゲン化金属化触媒担体は、約30インチの水銀柱(102kPa)の圧力下で、約100°F(38℃)より高い温度で回転蒸発技術を用いて乾燥させてもよい。
【0059】
乾燥及びか焼ハロゲン化金属化触媒担体を形成するために、乾燥したハロゲン化金属化触媒担体をか焼してもよい。か焼温度は、約400°F(204℃)~約900°F(282℃)、あるいは約500°F(260℃)~約700°F(371℃)、あるいは約550°F(288℃)~約600°F(316℃)であってもよい。か焼時間は、約0.5~約5時間、あるいは約0.5~約2.5時間であってもよい。約5CFH(2.4L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で、酸素含有雰囲気中でか焼を行ってもよい。あるいは、約5CFH(2.4L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で、空気中でか焼を行ってもよく、あるいは約5CFH(2.4L/min)~約20CFH(9.4L/min)の流速で、乾燥空気中で行う。ハロゲン化金属化触媒担体の処理(例えば、洗浄、乾燥及びか焼)が完了後に、得られた処理されたハロゲン化金属化触媒担体は、触媒(芳香族化触媒など)と呼ばれ、また適切な化学反応及びプロセスに使用されてもよい。
【0060】
一態様では、本明細書に開示されるように製造された触媒は、少なくとも1つの芳香族化反応器及びそれに対応する処理装置を含む芳香族化反応器システムにおける触媒として使用される。本明細書で使用される場合、用語「芳香族化」、「芳香化」及び「改質」は、芳香族豊富な生成物を提供するための炭化水素供給物の処理を指し、一態様では、この生成物は、芳香族の含有量がその供給物より多い。典型的には、供給物の1種以上の成分は、芳香族化合物を製造するために1種以上の改質反応を受ける。芳香族化操作中に起こるいくつかの炭化水素反応は、シクロヘキサンの芳香族化合物への脱水素化、アルキルシクロペンタンの芳香族化合物への脱水素異性化、非環式炭化水素の芳香族化合物への脱水素環化、又はそれらの組合わせを含む。また、アルキルベンゼンの脱アルキル化、パラフィンの異性化、軽質ガス状炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン及びブタンを生成する水素化分解反応、又はそれらの組合わせを含む他の多数の反応も起こる。
【0061】
芳香族化反応は、熱力学的に脱ヒドロ環化反応を促進し、かつ望ましくない水素化分解反応を制限するプロセス条件下で起こる。圧力は、約0ポンド/平方インチゲージ(psig)(0kPa)~約500psig(3447kPa)、あるいは約25psig(172kPa)~約300psig(2068kPa)であってもよい。炭化水素に対する水素のモル比は、約0.1:1~約20:1、あるいは約1:1~約6:1であってもよい。動作温度は、約700°F(371℃)~約1050°F(566℃)、あるいは約900°F(482℃)~約1000°F(538℃)の反応器入口温度を含む。芳香族化触媒上の炭化水素供給物のための液空間速度は、約0.1hr-1~約10hr-1、あるいは約0.5hr-1~約2.5hr-1であってもよい。
【0062】
接触芳香族化システムを設計するとき、供給物の組成は、考慮すべき事項である。一態様では、炭化水素供給物は、少なくとも6個の炭素原子を含む非芳香族炭化水素を含む。芳香族化システムへの供給物は、最大で約10重量%、あるいは最大で約15重量%のC5及び軽質炭化水素(C5
-)を含み、かつ最大で約10重量%のC9及び重質炭化水素(C9
+)を含むC6~C8炭化水素を含む炭化水素の混合物である。このような低濃度のC9+及びC5
-炭化水素は、高価値の芳香族化合物の収率を最大化する。いくつかの態様では、最適な炭化水素供給物は、C6炭化水素の割合を最大化する。このような供給物は、フルレンジナフサのような炭化水素原料を軽質炭化水素供給物留分と重質炭化水素原料留分に分離し、そして軽質留分を使用することによって実現されてもよい。
【0063】
別の態様では、供給物は、ナフサ供給物である。ナフサ供給物は、約70°F(21℃)~約450°F(232℃)の沸点範囲を有する軽質炭化水素であってもよい。ナフサ供給物は、脂肪族、ナフテン系又はパラフィン系の炭化水素を含んでもよい。これらの脂肪族及びナフテン系の炭化水素は、芳香族化反応器システムにおいて少なくとも部分的に芳香族化合物に転換される。触媒芳香族化は、典型的にはナフサの転換を指すが、芳香族濃縮製品を得るために他の原料も同様に処理してもよい。したがって、ナフサの転換は一態様であるが、本開示は、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、アセチレン系炭化水素、環状パラフィン系炭化水素、環状オレフィン系炭化水素、それらの混合物、特に飽和炭化水素などの様々な原料の転換又は芳香族化のための触媒を活性化するために有用であってもよい。
【0064】
一態様では、原料は、硫黄、窒素、金属及び芳香族化触媒用の他の既知の毒を実質的に含まない。一態様では、原料は、約100ppb未満の硫黄を含む。そのような毒は、存在する場合、任意の適切な方法で除去されてもよい。いくつかの態様では、供給物は、まず従来の水素化精製技術を使用し、次に収着剤を使用して残りの毒物を除去することによって、精製されてもよい。
【0065】
一態様では、本明細書に開示されるタイプの芳香族化触媒は、ナフサ供給物を使用したときに生成されるトルエンに対するベンゼンの比によって決定されるように、改善された触媒選択性を示す。これらの態様では、選択性の範囲は、約10%~約100%、あるいは約20%~約90%、あるいは約30%から約80%であってもよい。
【実施例】
【0066】
本主題は、特定の実施例によってより詳細に説明される。以下の実施例は、説明の目的のためだけに提供され、そしていかなる方法においても本発明を限定することを意図しない。当業者は、本質的に同じ結果を得るために変更又は修正されてもよい様々な重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【0067】
担体Aは、約80重量%のKL-ゼオライトを含む乾燥シリカ結合KL-ゼオライト押出ベースであった。約609グラム(g)の結晶性KL-ゼオライト粉末と約30gのメチルセルロースから混合物を製造した。この混合物を混練機で十分に混合した。この混合物に、約20重量%のシリカ水溶液(SI-350、CCIC(日本)から入手)約714gを添加し、そして完全に混合した。完全な混合を達成するために、シリカゾルを約11分間かけて混練機に添加した。シリカゾルを混合物に添加した後、水を添加して、水分を押出用の強熱減量(LOI)の約35重量%~約40重量%の濃度にした。強熱減量は、サンプルを乾燥空気中で約1000°F(538℃)で約1時間加熱したときに減少した重量の百分率である。次に混合物を、1/16インチ(1.6mm)のダイを通して押し出した。次いで押出物を約250°F(121℃)で約4時間乾燥させて、担体A、押出ベース(「EB」)を得た。
【0068】
次いで、担体Aを約900°F(482℃)で約1時間か焼して、担体B、か焼押出ベース(「CEB」)を得た。か焼中に、温度を300°F/時間で最終900°F(482℃)設定点まで上昇させ、10SCFH(4.7L/min)の気流を粒子床を通して維持した。
【0069】
担体Cは、洗浄されたか焼押出成形ベース(「WCEB」)であった。か焼押出成形ベース(担体B)の約100g部分を、約250mLの約100°F(37.8℃)の脱イオン水で洗浄した。この洗浄時間は、固体と液体の良好な接触を達成するのに十分であった。この洗浄を、合計3回の洗浄について繰り返した。次に洗浄された押出物を約250°F(121℃)で約4時間乾燥させ、次いで空気中、約900°F(482℃)で約1時間、流動乾燥空気中でか焼した。
【0070】
初期湿潤技法を用いて12グラムの担体Aを2.33グラムのテトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)の20重量%溶液と接触させることによって、フッ素化担体1を製造した。担体を16時間静置させて、150℃で2時間乾燥させ、続いて500℃に2時間昇温させて、500℃で1時間保持した。
【0071】
初期湿潤技法を用いて、11gの担体Bを2.33gの20重量%のテトラメチルアンモニウムフルオライド(TMAF)の溶液と1.67gの水との混合物と接触させることによって、フッ素化担体2を製造した。担体を16時間静置して、150℃で2時間乾燥させ、続いて500℃に2時間昇温させて、500℃で1時間保持した。
【0072】
初期湿潤技法を用いて、64.36gの担体Cを約15gの20重量%のテトラメチルアンモニウムフルオライド(TMAF)の溶液と約15gの水との混合物と接触させることによって、フッ素化担体3~7を製造した。担体を4時間静置した。次に、担体を4つの部分に分け、各部分をそれぞれ150℃で2時間乾燥させ、続いて6時間で最終保持温度まで温度を上昇させた。フッ素化担体3~7を製造するために用いられた処理温度を表1に記載した。これらのフッ素化基材の分析を表2にまとめた。
【表1】
【表2】
【0073】
白金含浸KL型ゼオライト触媒は、以下の方法で製造した。初期湿潤技法を用いて、約0.18gの塩化テトラアンミン白金(II)(TAPC)、約0.36gの50重量%の塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の水溶液、及び約3.5gの水の含浸混合物を形成し、約10gの結合ゼオライト担体(EB、CEB、WCEBのいずれか)を収容する容器に入れた。次に、含浸された結合ゼオライト担体を室温で約16時間放置した。含浸された結合ゼオライト担体を約85℃で約4時間真空乾燥した。次に、6時間において、得られた材料を約150℃の初期保持温度まで約2時間か焼して、乾燥空気中で温度を、約4時間をかけて約350℃の第2保持温度まで上昇させた。得られた触媒を、蛍光X線(XRF)によって重量%Pt、重量%F、及び重量%Clについて分析し、多孔性を窒素吸着法によって決定し、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によって計算した。これらの触媒の分析を表3にまとめた。
【表3】
【0074】
以下の例では、上記で製造された触媒は、本明細書で上述した種類の芳香族化触媒である。各触媒について芳香族化触媒としての性能を評価した。以下の各例では、以下の標準試験条件を用いて、触媒を粉砕し、約20~40メッシュに篩分けして、温度制御炉中の、外径が1/4インチのステンレス鋼反応容器を含む反応器に1gを入れた。水素の流通下で触媒を還元した後、脂肪族炭化水素と水素の供給流を22mL/minの供給速度で、50psig(345kPa)の圧力で、3:1のH
2:炭化水素のモル比で、9hr
-1の液空間速度で反応容器に導入して、性能データを取得した。脂肪族炭化水素は、約8重量%のC
8パラフィン、約28重量%のC
7パラフィン、及び約62重量%のC
6パラフィンの重量百分率のノルマルパラフィン及びイソパラフィンを含んでいた。反応器流出物組成物をガスクロマトグラフィーで分析して、生成物に存在するベンゼン及びトルエンの量、並びに4つ以下の炭素を有する軽質炭化水素の量(「C
4
-重量%」)を示した。高苛酷度条件は、反応器流出物中のベンゼンの重量百分率及びトルエンの重量百分率を合計75重量%にするように調整された一方で、低苛酷度条件は、反応器流出物中のベンゼンの重量百分率とトルエンの重量百分率を合計60重量%にするように調整された。触媒性能は、標準試験条件で、低苛酷度条件では、ベンゼンとトルエンの合計収率を60重量%(高苛酷度条件では75重量%)に維持することに必要な温度をプロットすることにより決定した。以下の各例では、触媒の製造手順、製造パラメータ、及び/又はプロセス条件の変化は、T
60又はT
75、並びにC
4
-重量%で観察された効果によって評価した。表に示された他のパラメータは、オンストリーム時間(hr)(TOSとも呼ばれる)と、表4に示される生成物中のベンゼントルエンのモル比を含む。
【表4】
【0075】
結果から、押出ベース、か焼押出ベース又は洗浄したか焼押出ベースをフッ化物で処理すると、担体及び得られる芳香族化触媒のミクロ多孔性を低減し、押出ベース(触媒A)及びか焼押出ベース(触媒B)の処理が、生成物中のより低い重量%のC4
-によって判断されるように、より高い芳香族化触媒選択性を与えることが示された。
【0076】
以下に記載された態様は、本開示の主題の非限定的な例として提供されている。
【0077】
結合ゼオライト担体を製造する方法である第1の態様は、ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼フッ素化押出ベースを形成することと、か焼フッ素化押出ベースを洗浄して、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、洗浄されたか焼フッ素化押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースを形成することと、洗浄かつ乾燥されたか焼フッ素化押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む。
【0078】
結合ゼオライト担体を製造する方法である第2の態様は、ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、湿式押出ベースから過剰の水を除去して押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼押出ベースを形成することと、か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化か焼押出ベースを形成することと、フッ素化か焼押出ベースを洗浄して、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む。
【0079】
結合ゼオライト担体を製造する方法である第3の態様は、ゼオライト粉末を結合剤と水とに接触させてペーストを形成することと、ペーストを成形して湿式押出ベースを形成することと、押出ベースをか焼してか焼押出ベースを形成することと、か焼押出ベースをフッ素含有化合物と接触させて、フッ素化か焼押出ベースを形成することと、フッ素化か焼押出ベースを洗浄して、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄されたフッ素化か焼押出ベースを乾燥させて、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースを形成することと、洗浄かつ乾燥されたフッ素化か焼押出ベースをか焼して、結合ゼオライト担体を形成することと、を含む。
【0080】
前項のいずれか一項に記載の方法である第4の態様において、フッ素含有化合物は、気相にある。
【0081】
前項のいずれか一項に記載の方法である第5の態様において、結合剤は、合成又は天然ゼオライト、アルミナ、シリカ、粘土、元素周期表のIVA族及びIVB族の金属の耐火性酸化物、ケイ素、チタン、ジルコニウムの酸化物、又はそれらの組合わせを含む。
【0082】
前項のいずれか一項に記載の方法である第6の態様において、結合ゼオライト担体は、約90:10~約70:30の範囲にあるゼオライトと結合剤との重量比を有する。
【0083】
前項のいずれか一項に記載の方法である第7の態様において、ゼオライトは、大細孔ゼオライトを含む。
【0084】
前項のいずれか一項に記載の方法である第8の態様において、ゼオライトは、KL型ゼオライトを含む。
【0085】
前項のいずれか一項に記載の方法である第9の態様において、フッ素含有化合物は、一般式N(R)4Fで表される有機アンモニウムハライド化合物であり、式中、Rは、水素、又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rは同一でも異なっていてもよい。
【0086】
前項のいずれか一項に記載の方法である第10の態様において、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はそれらの組合わせである。
【0087】
前項のいずれか一項に記載の方法である第11の態様において、フッ素含有化合物は、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、フッ化テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムフルオライド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化メチルトリエチルアンモニウム、又はそれらの組合わせを含む。
【0088】
前項のいずれか一項に記載の方法である第12の態様において、結合ゼオライト担体は、蛍光X線を基準として約0.1重量%~約5重量%の量で存在するフッ化物を含む。
【0089】
第13の態様は、前項のいずれか一項に記載の結合ゼオライト担体を第VIII族金属及び少なくとも1種の塩素含有化合物と接触させて、芳香族化触媒を形成することを含む。
【0090】
第13の態様の方法である第14の態様において、第VIII族金属は、白金を含む。
【0091】
第14~第15の態様のいずれか一項に記載の方法である第15の態様において、塩素含有化合物は、一般式N(R)4Clで表される有機アンモニウムハライド化合物であり、式中、Rは、水素又は1~20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素鎖分子を表し、各Rは同一でも異なっていてもよい。
【0092】
炭化水素を芳香族化合物に転換する接触改質方法である第16の態様は、前項のいずれか一項に記載の芳香族化触媒を、改質条件下で反応域内で炭化水素供給物と接触させ、反応域から芳香族化合物を回収することを含む。
【0093】
第16の態様に記載の接触改質方法である第17の態様において、前記炭化水素供給物は、100ppb未満の硫黄を含む。
【0094】
第16~17の態様のいずれか一項に記載の接触改質方法である第18の態様において、前記芳香族化触媒は、C5+の重量百分率収率によって決定されるように、約20%~100%の選択率を有する。
【0095】
本開示の態様を示し説明してきたが、当業者であれば、本開示の趣旨及び教示から逸脱せずに、それらの修正を行ってもよい。本明細書に記載の態様は例示的なものに過ぎず、限定を意図したものではない。本開示の様々な変形及び修正は、可能であり、本発明の範囲内にある。特許請求の範囲の任意の要素に関する「好ましくは」という用語の使用は、対象要素が必要とされるか、又は代替的であるか、又は必要とされないことを意味することが意図される。両方の代替は、請求項の範囲内にあることが意図される。「備える」、「含む」、「有する」などの広義語の使用は、「からなる」、「本質的に、からなる」、「実質的に、備える」などの狭義語に対する支持を提供すると理解されるべきである。
【0096】
したがって、保護の範囲は、上記の説明によって限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題の全ての等価物を含む。各請求項は、本発明の一態様として明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲は、更なる説明であり、本発明の好ましい態様への追加である。背景技術における参考文献、特に本願の優先日の後に公開日を有する可能性がある任意の参考文献の考察は、本発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、本明細書に記載されたものを補足する例示的、手順又は他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
本出願から出願する米国国内段階の目的のために、本開示に記載される全ての刊行物及び特許は、それらの刊行物に記載される構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、本開示の方法を組み合わせて、全体で、参照により本明細書に組み込まれる。本文中で議論された刊行物は、本出願の出願日に先行するそれらの開示のみのために提供される。本明細書中のいかなるものも、発明者が先行発明によりそのような開示に先行する資格がないことを認めるものとして解釈されるものではない。
【0098】
特に指示しない限り、任意の種類の範囲が開示又は請求されるとき、そのような範囲がそこに包含される任意の部分範囲を含めて合理的に包含してもよいそれぞれの可能な数を個別に開示又は請求することを意図する。そのような範囲が合理的に包含することができる可能性のあるすべての数の測定範囲を説明するとき、例えば、範囲の終点に存在する数字より大きい1つの有効数字を有する範囲内の値を指すことができる。さらに、範囲の値が開示又は請求される場合、本出願人らは、そのような範囲が合理的に包含されてもよい各数値を個々に反映することを意図し、また、その中に包含される任意とあらゆる下位範囲及び下位範囲の組合わせを開示し、それと交換可能である範囲の開示を意図する。したがって、出願人は、何らかの理由で、本開示の全尺度未満を特許請求することを選択した場合、そのような群のいかなる個々の構成員(その群内のいかなる下位範囲又は下位範囲の組合わせを含む)を排除又は除外する権利を留保する。