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特許7191034生体適合性モジュール式テトラジンプラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】生体適合性モジュール式テトラジンプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/14 20060101AFI20221209BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20221209BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20221209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
C07D405/14
C07D403/12
A61K31/502
A61K31/395
A61K31/405
A61K49/00
A61P35/00
A61K47/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019552066
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057520
(87)【国際公開番号】W WO2018172543
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】1752451
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1759851
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】519258965
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・ブルゴーニュ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル・ゴンカルヴェス
(72)【発明者】
【氏名】フランク・デナ
(72)【発明者】
【氏名】クレール・ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】コリーヌ・カノヴァス
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】Boddu Vwnkateswara Rao et al.,Chemical Communications,2013年,Vol.49, No.92,p.10808-10810,Supporting information, p.S1-S10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
【化2】
は、二重結合又は単結合、好ましくは二重結合を表し、
環Aは、アルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ及びヘテロアリールより選択される1個又は複数個の基により任意選択で置換されたシクロアルキル、シクロアルケン又はヘテロシクロアルケン基を表し、好ましくはAは、ビシクロ[6.1.0]ノナン、シクロオクタン、ビシクロ[6.1.0]ノネン、シクロオクテン、ジフルオロシクロオクテン、ヒドロキシシクロオクテン、メチルシクロプロパン、ノルボルネン、5,6-ジヒドロジベンゾ[a,e][8]アヌレン、5,6-ジヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン基を表し、
X1は、S、NH又はOであり、
L1、L2及びL3は、それぞれ独立して、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1、L2及びL3は、それぞれ独立して、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1、L2及びL3は、それぞれ独立して、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONH-CH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCO-CH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
前記細胞毒性薬が、モノメチルアウリスタチンE、メイタンシノイドDM1、デュオカルマイシン、カリケアミシン、α-アマニチン又は放射性金属を有する基より選択され、
前記検出可能基が、フルオロフォア及びクロモフォアからなる群より選択され、フルオロフォアはシアニン誘導体;Alexa fluor 647; ヒドロキシクマリン、アミノクマリン及びメトキシクマリンより選択されるクマリン; X-ローダミン及びローダミンBより選択されるローダミン;フルオレセイン又はBODIPYより選択され、クロモフォアはフェノールフタレイン、ゲンチアナバイオレット又はコンゴレッドより選択され、
前記生体活性基が、ペプチド、タンパク質及び酸からなる群より選択され、
前記親和性基が、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン及びヘキサヒスチジンペプチドからなる群より選択され、並びに
前記可溶化基が、直鎖状又は分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)鎖、直鎖状又は分枝鎖状ポリ(グルタミン酸)鎖及びコレステロールからなる群より選択され、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基であり、R2及びR3のうち少なくとも1個は生体活性基である)
の化合物、又はその互変異性体のうちの1つ。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物と、医薬的に許容可能なビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項3】
医薬品として、及び/又は医療用イメージングに使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の式(I)の化合物を合成する方法であって、
式(II):
【化3】
(式中、
X1は、S、NH又はOであり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1及びL2は、それぞれ独立して、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1及びL2は、それぞれ独立して、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCO-NHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2-NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は請求項1で規定される検出可能基である)
の二官能性テトラジンを、式(III):
【化4】
(式中、
【化5】
は、三重結合又は二重結合、好ましくは三重結合を表し、
環Aは、アルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ及びヘテロアリールより選択される1個又は複数個の基により任意選択で置換されたシクロアルケン、シクロアルキン又はヘテロシクロアルキン基を表し、好ましくはAで表される基は、trans-ビシクロ[6.1.0]ノネン、trans-シクロオクテン、ビシクロ[6.1.0]ノニン、シクロオクチン、ジフルオロシクロオクチン、ヒドロキシシクロオクチン、メチルシクロプロペン、ノルボルネン、5,6-ジデヒドロ-11,12-ジヒドロジベンゾ[a,e][8]アヌレン、11,12-ジデヒドロ-5,6-ジヒドロジベンゾ[b,f]アゾシンであり、
L3は、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL3は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL3は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R3は、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
ただし、R2及びR3のうち少なくとも1個は生体活性基である)
のアルキン又はアルケンと接触させる工程を含む、方法。
【請求項5】
式(IV):
【化6】
(式中、
Y2は、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、好ましくはY2は、ハロゲン、より好ましくは塩素であり、
X1は、S、NH又はOであり、
L1は、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1は、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の単官能性テトラジンに対して、式(V):
【化7】
(式中、
L2は、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL2は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL2は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R2は、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
のチオールの存在下で求核置換することにより、式(II)の二官能性テトラジンを形成する予備工程を更に含む、請求項4に記載の合成方法。
【請求項6】
式(VI):
【化8】
(式中、
Y1及びY2は、それぞれ独立して、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、好ましくはY1及びY2は、同一であり、かつハロゲン、好ましくは塩素である)
のテトラジンを、式(VII):
【化9】
(式中、
X1は、S、NH又はOであり、
L1は、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1は、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の求核剤の存在下で求核一置換することにより、式(IV)の単官能性テトラジンを形成する予備工程を更に含む、請求項5に記載の合成方法。
【請求項7】
式(II):
【化10】
(式中、
X1は、S、NH又はOであり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1及びL2は、それぞれ独立して、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1及びL2は、それぞれ独立して、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基、又は、直鎖状若しくは分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)鎖、直鎖状若しくは分枝鎖状ポリ(グルタミン酸)鎖及びコレステロールより選択される可溶化基であり、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
の化合物。
【請求項8】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は抗体より選択される生体分子のシステインのチオール官能基を選択的に官能化するための、式(IV):
【化11】
(式中、
Y2は、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、
X1はSであり、
L1は、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、
R1は、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)の化合物を得るための合成中間体としての、式(II):
【化12】
(式中、
X1は、S、NH又はOであり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、
R1及びR2は、それぞれ独立して、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
の化合物、又は式(IV):
【化13】
(式中、
Y2は、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、
X1は、S、NH又はOであり、
L1は、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、
R1は、請求項1で規定される検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用イメージング剤、特にバイモーダルイメージング剤(bimodal imaging agent)及び/又はセラグノスティクス剤(theragnostic agents)の分野に関する。本発明は特に、イメージングプローブにより生体分子の特定の標識を可能にすることを目指す。
【0002】
特に、本発明は、以下に記載されている、生体活性ベクトル化剤(vectorising agent)と少なくとも1つのイメージングプローブとの複合化を可能にする式(I)の三官能性プラットフォームであって、その第三の官能基が、第二のイメージングプローブ(バイモーダルイメージング用途)、細胞毒性薬(セラグノスティクス用途)、親和剤又は可溶化剤であり得る、三官能性プラットフォームに関する。
【0003】
本発明は、それ自体が式(IV)の単官能性テトラジンから得ることが可能な式(II)の二官能性テトラジンの逆電子要請型Diels-Alder反応を介してこれらの三官能性プラットフォームを合成する方法に関する(図1)。本発明は更に、単官能性及び二官能性の中間体である式(IV)及び(II)それぞれのテトラジンプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0004】
イメージングプローブ及び/又は細胞毒性薬による生体分子、例えばタンパク質、例えば抗体又はペプチドの標識は、急速に拡大しており、ケミカルバイオロジー又は人間医学のための強力なツールをもたらすことを目的としている。
【0005】
ビオチン及びフルオロフォアにより標識されたタンパク質は、例えば細胞生物学調査のためのプローブとして日々使用されている。イメージングプローブと複合化したペプチド又は抗体は、核医学ユニットにおいて診断用薬として使用されている。同様に、細胞毒性薬と複合化した抗体(ADC-抗体薬物複合体)は、期待できる臨床結果を示しており、医薬産業における研究の中心となっている。
【0006】
生体分子における複合化部位を厳密に制御することが重要であることが示されている。生体分子に結合したイメージングプローブ又は細胞毒性薬の数及び部位が、その生体分布、画質又は治療作用に大きな影響を与え得る。更に、生体分子をランダムに標識すると、特に大規模生産になった際に再現性についての問題が生じることがあり、規制機関により付与される市販承認の取得が複雑になる。
【0007】
生化学における最近の進展により、二重標識された生体分子を合成することが可能になった。まだ入手が難しいものの、前記複合体により新たな機会が切り開かれる。例えば、Boerman等は、患者を核イメージングにより全身診断し、その後、術中範囲の蛍光イメージングによって与えられる外科医のガイダンスを可能にするバイモーダルイメージングプローブを開発した(Lutje等、Mol Imaging Biol、2014年、16巻、747~755頁;Hekman等、Clin Cancer Res、2016年、22巻、4634~4642頁)。同様に、Maruani等は特に、抗体を細胞毒性薬及びフルオロフォアにより標識し、これにより、セラグノスティクス潜在性を有するADCを得た(Maruani等、Org Biomol Chem、2016年、14巻、6165~6178頁)。Xu等は、特定の細胞の表面にある2つのレセプターを標的にして、細胞の選択率及び薬物吸収率を改善することが可能な、イメージング及び治療用のヘテロ二価薬剤を開発した(Xu等、PNAS、2012年、109巻、21295~21300頁)。
【0008】
生体分子の二重標識には新規の方法の開発が必要であり、これらの方法は以下のようでなくてはならない:
- 実施が容易であること、すなわち、有機化学及び/又は分子生物学における高度なスキルが必要とされないこと;
- 位置選択的であり、それにより、その再現性が保証され、大規模生産が容易になり、生体分子の活性に対して少なくとも潜在効果があること;
- 生体適合性であること、すなわち、敏感な構成要素、例えばタンパク質又はフルオロフォアの完全性を保つ穏やかな条件下で生産可能であること;及び
- モジュール式であり、それにより、同一の方法を使用して同一の中間体から様々な種類の二重標識された生体分子が調製されること。
【0009】
タンパク質を位置選択的に標識する現行の方法は、組み換えタンパク質の遺伝子工学、酵素的修飾、希少アミノ酸を化学的に標的とすること、又は反応性生体直交型(bio-orthogonal)官能基を有する非天然アミノ酸の挿入に基づく。タンパク質の2つのアミノ酸における位置選択的修飾の実施は可能であるが、高度なタンパク質工学技術を必要とし、しばしば大規模生産への適応が難しい。
【0010】
これらの問題を克服するために、本発明は、生体分子への2つの標識の位置選択的な結合を可能にする、三官能性プラットフォームを使用したモジュール式の方法を提案している。タンパク質の場合、これを三官能性プラットフォームにカップリングしているアミノ酸は、非天然アミノ酸であっても、周知の方法、例えば特異的突然変異誘発を使用して挿入されたシステインであってもよい。
【0011】
更に、本発明は、リジン及びセリンそれぞれのアミン若しくはヒドロキシ官能基、又は生体活性基、例えばペプチド又は抗体に含有されるその他の潜在的に反応性の官能基とは対照的に、システインのチオール官能基について優れた選択率を有する標識方法を提案している。
【0012】
タンパク質の二重標識を可能にする幾つかの三官能性プラットフォームが記載されてきたが、その実施には多数の工程が必要とされ、そのうちの幾つかは、壊れやすい分子、例えば近赤外プローブ又はタンパク質と不適合である(Maruani等、Org Biomol Chem、2016年、14巻、6165~6178頁;Beal等、Angew Chem Int Ed、2012年、51巻、6320~6326頁;Maruani等、Nat Commun、2015年、6巻、6645頁;Rhashidian等、J Am Chem Soc、2013年、135巻、16388~16396頁)。更に、これらの合成は、二重標識されたプローブを調製する工程で開始することが一般的であるため、モジュール式ではない:そして、1つの標識の性質を変化させるには、完全な合成を繰り返すこと、及び任意選択で幾つかの合成工程を適合させることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Lutje等、Mol Imaging Biol、2014年、16巻、747~755頁
【文献】Hekman等、Clin Cancer Res、2016年、22巻、4634~4642頁
【文献】Maruani等、Org Biomol Chem、2016年、14巻、6165~6178頁
【文献】Xu等、PNAS、2012年、109巻、21295~21300頁
【文献】Beal等、Angew Chem Int Ed、2012年、51巻、6320~6326頁
【文献】Maruani等、Nat Commun、2015年、6巻、6645頁
【文献】Rhashidian等、J Am Chem Soc、2013年、135巻、16388~16396頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
よって、モジュール式かつ生体適合性の二重標識された生体分子を可能にする、すなわち、イメージングプローブと、第二のイメージングプローブ、細胞毒性薬、親和剤又は可溶化剤であり得る第二の官能基とにより標識された、新規の三官能性プラットフォームが必要とされている。
【0015】
本発明の方法は、モジュール式であり、2つ又は3つの合成工程だけで二重標識された生体分子を可能にする。生体分子が非常に敏感であるか、又は生体分子がほとんど安定していない場合、生体分子を最終工程で添加して、これにより中間工程におけるその劣化を制限することができる。或いは、生体分子を第二の標識の前に添加して、これにより、二重標識の最適化を容易にすることができ、かつ予め標的を定めたアプローチが可能になる。
【0016】
以下の実験項で証明されているように、本発明の合成方法は、極めて穏やかな条件下、かつ壊れやすい生体分子、例えばタンパク質又は抗体と適合した水性媒体中で実施することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
よって、本発明は、式(I):
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、A環、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、以下に定義されるものであり、特にR1、R2及びR3は、それぞれ独立して、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基であり、R2及びR3のうち少なくとも1個は生体活性基である)
の化合物、又はその互変異性体のうちの1つに関する。
【0020】
一実施形態において、式(I)の化合物では、
検出可能基が、フルオロフォア、クロモフォア、核イメージング用プローブ、MRIプローブより選択され、
生体活性基が、抗体、ペプチド、ペプチド模倣物、タンパク質、小分子、例えば葉酸、アプタマー、ナノ粒子又はリポソームより選択され、
細胞毒性薬が、モノメチルアウリスタチンE、メイタンシノイドDM1、デュオカルマイシン、カリケアミシン、α-アマニチン、放射性金属を有する基、シリカナノ粒子又は金ナノ粒子より選択され、
親和性基が、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン及びヘキサヒスチジンペプチドより選択され、
可溶化基が、直鎖状又は分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)鎖、直鎖状又は分枝鎖状ポリ(グルタミン酸)鎖及びコレステロールより選択される。
【0021】
本発明は更に、本発明の式(I)の化合物と、医薬的に許容可能なビヒクルとを含む医薬組成物に関する。
【0022】
本発明はまた、医薬品としての、及び/又は医療用イメージングのための本発明の式(I)の化合物の使用に関する。
【0023】
本発明はまた、式(II):
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、X1、L1、L2、R1及びR2は、以下に定義されるものであり、特にR1及びR2は、それぞれ独立して、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
の二官能性テトラジンを、式(III):
【0026】
【化3】
【0027】
(式中、A環、L3及びR3は、以下に定義されるものであり、特にR3は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、ただし、R2及びR3のうち少なくとも1個は生体活性基である)
のアルキン又はアルケンと接触させる工程を含む、本発明の式(I)の化合物の合成方法に関する。
【0028】
一実施形態において、本発明の合成方法は、式(IV):
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、Y2、X1、L1及びR1は、以下に定義されるものであり、特にR1は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の単官能性テトラジンに対して、式(V):
【0031】
【化5】
【0032】
(L2及びR2は、以下に定義されるものであり、特にR2は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
のチオールの存在下で求核置換することにより、式(II)の二官能性テトラジンを形成する予備工程を更に含む。
【0033】
一実施形態において、本発明の合成方法は、式(VI):
【0034】
【化6】
【0035】
(式中、Y1及びY2は、以下に定義されるものである)
のテトラジンを、式(VII):
【0036】
【化7】
【0037】
(式中、X1、L1及びR1は、以下に定義されるものであり、特にR1は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の求核剤の存在下で求核一置換することにより、式(IV)の単官能性テトラジンを形成する予備工程を更に含む。
【0038】
本発明は更に、式(II):
【0039】
【化8】
【0040】
(式中、X1、L1、L2、R1及びR2は、以下に定義されるものであり、特にR1及びR2は、それぞれ独立して、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
の中間体化合物に関する。
【0041】
本発明は更に、式(IV):
【0042】
【化9】
【0043】
(式中、Y2、X1、L1及びR1は、以下に定義されるものであり、特にR1は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の中間体化合物に関する。
【0044】
本発明は更に、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は抗体より選択される生体分子のシステインのチオール官能基を選択的に官能化するための、式(IV)(式中、X1はSである)の化合物の使用に関する。
【0045】
本発明はまた、式(I)の化合物を得るための合成中間体としての、式(II)の化合物又は式(IV)の化合物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】単官能性及び二官能性テトラジン中間体(IV)及び(II)を含む、本発明の三官能性プラットフォーム(I)の合成スキームを例示する図である。
図2A】インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したBT-474細胞(胸部腫瘍)で異種移植されたマウスのマルチモーダルSPECT画像である。
図2B】標識されていない過剰なトラスツズマブを同時注入してインジウムで放射標識された化合物I-1により処理したBT-474細胞(胸部腫瘍)で異種移植されたマウスのマルチモーダルSPECT画像である。
図3】インジウムで放射標識された化合物I-1により処理したマウス(バッチA-ライトグレー)、又は過剰なトラスツズマブと一緒にインジウムで放射標識された化合物I-1により処理したマウス(バッチB-ダークグレー)の様々な臓器におけるガンマ計測により決定される、臓器1グラムあたりに注入される平均投与率を示すヒストグラムである。
図4】インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したマウスの、蛍光あり(b)及び蛍光なし(a)の写真である。
図5】インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したマウスの、腫瘍及び様々な臓器のエクスビボ蛍光による写真である。
図6】バッチA(ライトグレー)におけるマウス又はバッチB(ダークグレー)におけるマウスについての、腫瘍及び様々な臓器においてインジウム111で放射標識された化合物I-1の平均生体分布を示すヒストグラムである。
図7】注射して1時間、4時間又は24時間後の、化合物I-3により処理したマウスのインビボ蛍光による写真である。
図8】注射して24時間後の、化合物I-3により処理したマウスの腫瘍及び様々な臓器のエクスビボ蛍光による写真である。
図9】バッチCにおけるマウスについての、腫瘍及び様々な臓器における化合物I-3の平均生体分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
本発明において、以下の用語を以下のように定義する。
【0048】
<<アルケニル>>という用語は、少なくとも1個の二重結合を有し、2~12個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有する任意の直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素鎖、例えば、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル及びそれらの異性体、2-ヘキセニル及びそれらの異性体、2,4-ペンタジエニルを指す。
【0049】
<<アルコキシ>>という用語は、-O-アルキル基を指す。
【0050】
<<アルキニル>>という用語は、少なくとも1個の三重結合を有し、2~12個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有する任意の直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素鎖、例えば、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニル及びそれらの異性体、2-ヘキシニル及びそれらの異性体を指す。
【0051】
<<キレート剤>>という用語は、金属イオンと配位結合を形成して、キレートとも呼ばれる金属錯体を形成することが可能な多座分子を指す。
【0052】
<<アルキルアリール>>という用語は、アルキル基により置換されたアリール基を指し、-アリール-アルキルと表記することができる。
【0053】
<<アルキル>>という用語は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する任意の飽和した直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル及びそれらの異性体(例えば、n-ペンチル、イソペンチル)、ヘキシル及びそれらの異性体(例えば、n-ヘキシル、イソヘキシル)を指す。
【0054】
<<アルキルヘテロアリール>>という用語は、アルキル基により置換されたヘテロアリール基を指し、-ヘテロアリール-アルキルと表記することができる。
【0055】
<<抗体>>という用語は、脊椎動物の血液又はその他の体液中にみられるγ-グロブリンタンパク質を指し、これは、異物、例えばバクテリア及びウィルスを特定及び無効化するために免疫系により使用される。抗体は、Y形に配置された重鎖及び軽鎖と呼ばれる2対のポリペプチド鎖からなる。本明細書で使用されている<<抗体>>という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、抗体断片、キメラ若しくはハイブリッド抗体、シングルドメイン抗体、ダイマー若しくはトリマーの組立生成物、又はミニボディ抗体断片を含む。
【0056】
<<アリールアルキル>>という用語は、アリール基により置換されたアルキル基を指し、-アルキル-アリールと表記することができる。
【0057】
<<アリール>>という用語は、単環(例えばフェニル)又は幾つかの縮合芳香環(例えば ナフチル)又は共有結合されたもの(例えばビフェニル)を有し、一般的に5~15個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を有し、ここで少なくとも1個の環が芳香族である、多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指す。芳香環としては、これに縮合した1~2個の更なる環(シクロアルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールのいずれか)を任意選択で挙げることができる。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ビフェニリル、ビフェニレニル、5又は6-テトラリニル、ナフタレン-1-又は-2-イル、4,5,6又は7-インデニル、1-,2-,3-,4-又は5-アセナフチレニル、3-,4-又は5-アセナフテニル、1-又は2-ペンタレニル、4-又は5-インダニル、5-,6-,7-又は8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-,2-,3-,4-又は5-ピレニル基を含む。
【0058】
<<キレート>>という用語は、金属イオンを含む分子を指す。キレート化(又は錯体形成)とは、多座分子(多重結合を可能にする)と単一の中心金属原子との間の2つ又は結合の異なる配位結合の形成又は存在を包含する。多座分子は、しばしば有機化合物であり、キレート剤、錯化剤、配位子又は金属イオン封鎖剤と呼ばれる。
【0059】
<<ゆがんだ環式アルキン又はアルケン>>という表現中の<<ゆがんだ>>という用語は、この環内のアルキン又はアルケンに、その内部エネルギーを増加させる環ひずみと呼ばれる応力がかかり、その非環式等価物よりも反応性が高まっていることを意味する。
【0060】
<<シクロアルケン>>という用語は、任意選択で架橋され、任意選択で1個又は複数個のアリール基に縮合した非芳香族の環式又は多環式アルケン基、好ましくは、シクロオクチン、ビシクロ[6.1.0]ノニン、ノルボルネン、5,6-ジヒドロジベンゾ[a,e][8]アヌレン基を指す。
【0061】
<<シクロアルキル>>という用語は、任意選択で架橋され、任意選択で1個又は複数個のアリール基に縮合した環式又は多環式アルキル基、好ましくは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、ノルボルニル、ビシクロ[6.1.0]ノニル基を指す。
【0062】
<<ジエノフィル>>という用語は、シクロ付加反応[4+2]を介してジエンと反応することができる原子の基、好ましくはアルキン又はアルケンを指す。
【0063】
<<スペーサー>>という用語は、共有結合を指すか、又はC、N、O、S及びPにより形成される群より選択される1~40個の多価原子を含む、一連の安定した共有結合を含む基を指し、本発明の化合物の2つの部分を共有結合する。スペーサー中の多価原子の数は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25又は30であってもよい。スペーサーは、直鎖状又は非直鎖状であってもよく、幾つかのスペーサーは、側鎖又はペンダント官能基(又は双方)を有する。前記側鎖の例は、親水性改質剤、例えば、可溶化基、例えばスルホ(-SO3H又は-SO3 -)又はカルボキシレート(-COO-)である。
【0064】
一実施形態において、スペーサーは、炭素-炭素、炭素-窒素、窒素-窒素、炭素-酸素及び炭素-硫黄の単結合、二重結合、三重結合又は芳香族結合のうちの任意の組み合わせからなる。例えば、スペーサーは、アルキル、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-C(O)Ar-、-ArC(O)-、-C(O)O-、-NH-、-S-、-O-、-C(O)-及び-S(O)n-基(式中、nは0、1又は2である)、5個又は6個の単環員を有する環、並びに官能性側鎖(例えば、スルホ、ヒドロキシ又はカルボキシ)より選択される群の組み合わせであり得る。
【0065】
<<脱離基>>という用語は、求核剤との置換反応の間に、それを芳香族炭素原子に連結するσ結合の電子対から外れた基を指す。
【0066】
<<ハロゲン>>又は<<ハロ>>という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード又はアスタト基、好ましくはクロロ基を指す。
【0067】
<<ヘテロアリール>>という用語は、5~15個の炭素原子を有する芳香環を表すか、又は5~6個の炭素原子と芳香族である少なくとも1個のその環とを有することが一般的な、一緒になって縮合した、若しくは共有結合した1~3個の環を含む環式系を表し、ここで、1個又は複数個のこれらの環内の1個又は複数個の炭素原子は、酸素、窒素及び/又は硫黄原子と置き換えられており、窒素及び硫黄原子は、任意選択で酸化されており、窒素原子は、任意選択で四級化されている。前記環を、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリル基に縮合してもよい。ヘテロアリール基の非限定的な例は、以下の基を含む:フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,3,1,2-ベンゾイソオキサゾリル、2,1-ベンゾイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル。
【0068】
<<ヘテロアリールアルキル>>という用語は、ヘテロアリール基により置換されたアルキル基を指し、-アルキル-ヘテロアリールと表記することができる。
【0069】
<<ヘテロシクロアルケン>>という用語は、先に定義したシクロアルケン基を指し、ここで1個又は複数個の炭素原子は、O、S、Nより選択される1個又は複数個のヘテロ原子により置き換えられており、ヘテロシクロアルケン基は、5,6-ジヒドロジベンゾ[b,f]アゾシンであることが好ましい。
【0070】
<<医療用イメージング>>という用語は、様々な物理的現象、例えば、X線吸収、蛍光、核磁気共鳴、超音波反射又は放射を使用して身体の様々な領域又は様々な臓器をイメージングする一連の技術を指す。
【0071】
<<脂質>>という用語は、とりわけ脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、又はリン脂質を含む、疎水性又は両親媒性分子を指す。
【0072】
<<リポソーム>>という用語は、同心状の脂質二重層により形成された人工小胞を指し、水性区画をその間に捕捉する。様々な両親媒性脂質を使用してリポソームを形成することができ、最も高頻度で使用されるのはリン脂質である。
【0073】
<<ペプチド>>という用語は、アミノ酸がペプチド結合により一緒になって連結している、アミノ酸の直鎖状ポリマーを表す。
【0074】
<<ペプチド模倣物>>という用語は、生物学的に活性なペプチドを真似するように設計された化合物を表すが、構造的な違いを有し、医薬品としてのその機能に関してより多くの利点をもたらす。
【0075】
<<タンパク質>>という用語は、1個又は複数個のペプチド、及び場合により非ペプチド補因子から形成された機能体を指す。
【0076】
<<ナノ粒子>>という用語は、1~100nmの範囲にあるサイズを有する粒子を指し、特にナノ粒子は、リポソーム、酸化鉄のナノ粒子、シリカのナノ粒子(例えばAGuIXナノ粒子)又は金のナノ粒子であり得る。
【0077】
<<テトラジン>>という用語は、4個の窒素原子と2個の炭素原子とを含む6個の原子を有する芳香核からなる反応性官能基を指す。このヘテロ環は、炭素及び窒素原子の相対的な位置に応じて、以下の3種の異なる異性体を有する:1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン及び1,2,4,5-テトラジン。本発明において、テトラジンは、1,2,4,5-テトラジンを指す。
【0078】
<<ビヒクル>>という用語は、組成物において有利な生成物を運ぶ物質を指し、特にこれは、その溶解を可能にする物質であり得る。例えば、ビヒクルは水であってもよい。<<医薬的に許容可能なビヒクル>>という用語は、活性剤が配合及び/又は投与されており、かつ動物、好ましくは人間に投与された際に不利な反応、アレルギー又は別のことを引き起こさない溶媒又は希釈剤として使用されるビヒクル又は不活性担体を指す。これは、すべての溶媒、分散媒、被覆、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤及びその他の類似した成分を包含する。ヒトに投与するには、調製物は、例えばFFDA又はEMAのような規制当局により必要される、無菌性、一般的安全性及び純度の基準を満たさなくてはならない。
【0079】
詳細な説明
三官能性プラットフォーム(I)
本発明は特に、三官能性プラットフォーム、好ましくは先に記載されている、少なくとも1個の生体分子(又はより一般的には生体活性基)及び少なくとも1個のイメージングプローブにより官能化された式(I)の三官能性プラットフォームに関し、その第三の官能基は、別のイメージングプローブ(バイモーダルイメージング用途)、細胞毒性薬(セラグノスティクス用途)、親和性基又は可溶化基であろう。
【0080】
よって、本発明は、式(I):
【0081】
【化10】
【0082】
(式中、
【0083】
【化11】
【0084】
は、二重結合又は単結合、好ましくは二重結合を表し、
環Aは、アルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ及びヘテロアリールより選択される1個又は複数個の基により任意選択で置換されたシクロアルキル、シクロアルケン又はヘテロシクロアルケン基を表し、好ましくはAは、ビシクロ[6.1.0]ノナン、シクロオクタン、ビシクロ[6.1.0]ノネン、シクロオクテン、ジフルオロシクロオクテン、ヒドロキシシクロオクテン、メチルシクロプロパン、ノルボルネン、5,6-ジヒドロジベンゾ[a,e][8]アヌレン、5,6-ジヒドロジベンゾ[b,f]アゾシンより選択される基を表し、
X1は、S、NH又はOであり、好ましくはX1は、S又はNHであり、
L1、L2及びL3は、それぞれ独立して、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1、L2及びL3は、それぞれ独立して、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1、L2及びL3は、それぞれ独立して、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基であり、R2及びR3のうち少なくとも1個は生体活性基である)
の三官能性プラットフォーム、又はその互変異性体のうちの1つに関する。
【0085】
環Aは、以下に記載のような式(II)の1,2,4,5-テトラジン及び式(III)のジエノフィル分子の逆電子要請型Diels-Alder反応により得られる。1,2,4,5-テトラジンとジエノフィル(例えばアルケン又はアルキン)との間の逆電子要請型Diels-Alder反応により不安定な環状付加物が生成され、これが自発的に逆Diels Alder反応を起こし、一分子の二窒素、及びジヒドロピリダジン(アルケンとの反応後)又はピリダジン(アルキンとの反応後)を形成する。ジヒドロピリダジン生成物は、任意選択で更なる酸化反応を起こして、相応するピリダジンを形成し得る。本発明に有用なジエノフィルとしては、炭素ジエノフィル、例えばアルケン又はアルキン、好ましくは<<ゆがんだ>>環式アルケン又はアルキンが挙げられるが、これらに限定されることはない。好ましい一実施形態において、ジエノフィルは、ビシクロノニン又はtrans-シクロオクテンであることが好ましい。
【0086】
<<検出可能基>>という用語は、当業者に公知のイメージング技術を使用して直接又は変性後に検出可能な化学基を指す。
【0087】
一実施形態において、検出可能基は、フルオロフォア、クロモフォア、核イメージング用プローブ、MRIプローブより選択される。
【0088】
一実施形態において、前記検出可能基の検出を可能にするイメージング技術は、陽電子放出断層撮影(PET)と、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)と、チェレンコフ発光イメージング(CLI)とを含む核イメージング、磁気共鳴イメージング(MRI)、光学イメージング、蛍光イメージングを含む。
【0089】
一実施形態において、検出可能基、例えば本発明の化合物に存在するものは、イメージング技術により直接検出可能である。
【0090】
別の実施形態において、検出可能基は、イメージング技術により検出可能になる前に、予め変性されなくてはならない。これは、検出可能基がキレート剤の形態にある場合に該当する。この場合、金属イオンによる事前の錯体化工程が、イメージング技術、好ましくは核イメージング又は磁気共鳴イメージングによる後の検出に必要とされる。
【0091】
<<フルオロフォア>>という用語は、励起後に蛍光を放出することができる化学物質を指す。フルオロフォアは、幾つかの複合化した芳香核を含む分子であるか、又は1個又は複数個のπ結合を有する平面若しくは環状分子であることが好ましい。
【0092】
一実施形態において、フルオロフォアは、シアニン誘導体(シアニン3、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、スルホン化シアニン)、Alexa fluor 647;クマリン(ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン)、ローダミン(X-ローダミン、ローダミンB)、フルオレセイン又はBODIPYより選択される。フルオロフォアは、シアニン5、スルホン化シアニン、ローダミン又はBODIPYより選択されることが好ましい。
【0093】
<<クロモフォア>>という用語は、1個又は複数個の二重結合を含み、かつ残りの分子で一連の複合化した二重結合を形成し、これによりそれが含有される分子に対してその色を付与する原子の基を指す。クロモフォアは、吸光度測定により検出可能である。
【0094】
一実施形態において、クロモフォアは、フェノールフタレイン、ゲンチアナバイオレット又はコンゴレッドから選択される。
【0095】
<<核イメージング用プローブ>>とは、核イメージング技術により検出可能なプローブを意味する。
【0096】
一実施形態において、核イメージング用プローブは、放射性同位体、放射性同位体により標識された有機基、キレート剤、放射性同位体キレートから選択される。
【0097】
核イメージング用の放射性同位体の一例は、フッ素-18である。
【0098】
一実施形態において、直鎖状又は環状にかかわらず、キレート剤は、例えば、DOTA、NOTA、デフェロキサミン及びその誘導体である。DOTA及びNOTAの好ましい誘導体はそれぞれ、例えばDOTAGA及び(R)-NODAGAである。
【0099】
相応する放射性同位体のキレートは、これらのキレート剤を、金属イオン、例えば、64Cu、68Ga、111In、89Zr、177Luにより錯体化することで得ることが可能である。
【0100】
よって、<<検出可能基>>は、直接検出可能な放射性同位体キレートと、まだ放射性同位体を錯体化していないキレート剤との双方を含む。後者の場合、イメージング用途のために本発明のプラットフォームを使用する直前に、錯体化を実施してもよい。特にこれにより、キレート化の準備が整ったプラットフォームを貯蔵すること、及び非常に短い半減期を有し得る放射性同位体を使用のすぐ直前に添加することが可能になる。
【0101】
<<MRIプローブ>>(磁気共鳴イメージング)という用語は、コントラストを人工的に増加させることを意図した常磁性コントラスト剤(例えばガドリニウムを含む)又は超常磁性コントラスト剤(例えば酸化鉄のナノ粒子を含む)を指し、本来はコントラストがほとんどない又はコントラストがなく、それにより隣接組織との区別が難しい解剖学的構造物(例えば臓器)又は病理学的構造物(例えば腫瘍)の可視化を可能にする。
【0102】
一実施形態において、本発明は、腫瘍、例えば胸部腫瘍を標的するための、先に記載のI-1、I-2及び/又はI-3の化合物の使用に関する。一実施形態において、先に記載のI-1及び/又はI-3の化合物は具体的には、腫瘍、好ましくは胸部腫瘍を標的とする。
【0103】
一実施形態において、MRIプローブは、キレート剤、キレート、ナノ粒子より選択される。
【0104】
一実施形態において、キレート剤は、例えばDOTA及びDTPAである。
【0105】
一実施形態において、相応するキレートは、これらのキレート剤を、金属イオン、例えばGd又はMnにより、又は酸化鉄により錯体化することで得ることができる。
【0106】
ナノ粒子は、酸化鉄ナノ粒子又はAGuIX型のシリカナノ粒子であることが好ましい。
【0107】
<<生体活性基>>又は<<生体分子>>という用語は、任意の天然生体分子を指すか、又は天然生体分子を真似する、若しくは天然生体分子の類似体である任意の合成由来分子を指す。
【0108】
生体分子は、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNA)、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、多糖類、脂質、グリカン及び小分子(例えば、ビタミン、一次及び二次代謝物質、ホルモン、神経伝達物質)を含む。アミノ酸は、20種の天然アミノ酸にみられるもの以外の断片を含んでいてもよい。また、アミノ酸は、非タンパク質構成官能基(例えば、CF3、N3、F、NO2)を含んでいてもよい。同様に、ポリペプチド及びタンパク質は、前記アミノ酸を含有していてもよい。<<多糖類>>は、O-及びN-グリコシル結合を有する単糖類、二糖類及びオリゴ糖類を含む。多糖類は、細胞環境では通常みられない官能基(例えば、シクロプロペン、ハロゲン及びニトリル)を含んでいてもよい。脂質は、両親媒性のリン及びグリコール脂質、並びにステロール、例えばコレステロールを含む。<<両親媒性脂質>>は、親水性及び疎水性特性を有する脂質を表す。<<リン脂質>>は、ホスフェート基に結合され、かつ電荷を有する脂質を表す。リン脂質の例は、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールを含む。<<糖脂質>>は、多糖類又はオリゴ糖類に結合した脂質を表す。糖脂質の例は、ガラクト脂質、スルホ脂質、グリコスフィンゴ脂質及びグリコシルホスファチジルイノシトールを含む。脂質は、細胞環境にはめったにみられない置換基(例えば、シクロプロペン、ハロゲン及びニトリル)を含んでいてもよい。本明細書で使用されている<<小分子>>は、生体環境において天然に生成され、かつ一般的に細胞中にはみられないが、細胞の治療の間に許容される非天然の断片又は結合をおそらく含有する任意の小分子(例えば、シクロプロペン、ハロゲン、ニトリル)を表す。
【0109】
一実施形態において、生体活性基は、抗体、ペプチド、ペプチド模倣物、タンパク質、小分子、例えば葉酸、アプタマー、好ましくは、核酸アプタマー、ナノ粒子又はリポソームから選択されることが好ましく、生体活性基は、抗体(例えばトラスツズマブ)又はペプチドから選択されることがより好ましい。一実施形態において、生体活性基は、ウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0110】
生体活性基及びそれらの生物学的標的の例を以下の表に記載する。
【0111】
【表1】
【0112】
<<細胞毒性薬>>という用語は、がん細胞を含む細胞を殺すことができる物質を指す。これらの薬剤は、細胞の分裂を防止することができ、がん細胞に関しては、腫瘍のサイズを低下させることができる。
【0113】
一実施形態において、細胞毒性薬は、モノメチルアウリスタチンE、メイタンシノイドDM1、デュオカルマイシン、カリケアミシン、α-アマニチン、又は放射性金属を有する基(例えば、131Iで標識した基、放射性金属キレート、例えば、90Y、223Ra、225Ac、177Lu)より選択される。
【0114】
別の実施形態において、細胞毒性薬は、ナノ粒子、好ましくは、シリカナノ粒子又は金ナノ粒子である。この場合、ナノ粒子は放射線増感剤としての機能を果たすことができる。
【0115】
細胞毒性薬及びそれらの生物学的標的の例、並びに/又は作用機序を以下の表に記載する。
【0116】
【表2】
【0117】
<<親和性基>>という用語は、当業者に公知の技術を使用して別のパートナー化学基に選択的かつ非共有結合可能な、標識と呼ばれることもある化学基を指す。
【0118】
具体的な一実施形態において、親和性基は、ビオチン(パートナー:ストレプトアビジン又はアビジン)、アビジン(パートナー:ビオチン)、ストレプトアビジン(パートナー:ビオチン)又はヘキサヒスチジンペプチド(パートナー:ニッケル)より選択される。
【0119】
<<可溶化基>>という用語は、三官能性プラットフォームの物理化学特性、特に、その親水性/親油性、その分子体積又は緩衝液媒体中での総電荷を変性させることが可能な合成又は天然の化学基を指す。可溶化基の種類は、プラットフォーム(I)の生体分布、その薬物動態又は動物の生物学的利用能に影響を与え得る。
【0120】
一実施形態において、可溶化基は、直鎖状又は分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)鎖、直鎖状又は分枝鎖状ポリ(グルタミン酸)鎖又はコレステロールより選択される。
【0121】
一実施形態において、R1は検出可能基であり、R2は生体活性基であり、R3は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、好ましくはR3は検出可能基である。
【0122】
一実施形態において、R2は検出可能基であり、R3は生体活性基であり、R1は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、好ましくはR1は検出可能基である。
【0123】
一実施形態において、R1は検出可能基であり、R3は生体活性基であり、R2は検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、好ましくはR2は検出可能基である。
【0124】
一実施形態において、X1は、S、NH又はOであり、好ましくはX1は、S又はNHである。具体的な一実施形態において、X1はSである。別の具体的な一実施形態において、X1はNHである。
【0125】
一実施形態において、L1は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、好ましくはL1は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCO-CH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーである。
【0126】
一実施形態において、L2は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、好ましくはL2は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、より好ましくはL2は、-CH2CH2NH-である。
【0127】
一実施形態において、L3は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、好ましくはL3は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCO-CH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、より好ましくはL3は、-NHCH2CH2NHCOCH2-である。
【0128】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Ia):
【0129】
【化12】
【0130】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0131】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Ib):
【0132】
【化13】
【0133】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものであり、
R4、R4'、R5及びR5'は、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ、ハロである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0134】
一実施形態において、R4、R4'、R5及びR5'は、すべてHを表す。別の実施形態において、R4及びR4'はHであり、R5及びR5'は、ハロ、好ましくはFである。別の実施形態において、R5及びR5'はHであり、R4及びR4'は、ハロ、好ましくはFである。別の実施形態において、R4、R4'及びR5'はHであり、R5はヒドロキシである。
【0135】
別の実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Ic):
【0136】
【化14】
【0137】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0138】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Id):
【0139】
【化15】
【0140】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0141】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Ie):
【0142】
【化16】
【0143】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0144】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(If):
【0145】
【化17】
【0146】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0147】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Ig):
【0148】
【化18】
【0149】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0150】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、式(Ih):
【0151】
【化19】
【0152】
(式中、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先の式(I)で定義したものである)
、又はその互変異性体のうちの1つを有する。
【0153】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームは、
【0154】
【表3A】
【0155】
【表3B】
【0156】
【表3C】
【0157】
より選択される。
【0158】
本願に記載の化合物を、ChemBioDraw(登録商標)Ultra版12.0(PerkinElmer社)を使用して命名した。
【0159】
三官能性プラットフォーム(I)の使用
本発明はまた、医薬品としての、及び/又は医療用イメージングのための式(I)の三官能性プラットフォームの使用にも関する。
【0160】
一実施形態において、本発明は、医療用イメージングにおける本発明の三官能性プラットフォームの使用に関する。特に、以下の検出方法を使用して、本発明の化合物を検出することができる:陽電子放出断層撮影(PET)と、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)と、チェレンコフ発光イメージング(CLI)とを含む核イメージング;磁気共鳴イメージング(MRI);光学イメージング;蛍光イメージング。一実施形態において、本発明は、医療用イメージングにおける、先に記載のI-1及び/又はI-3の化合物の使用に関する。一実施形態において、以下の検出方法を使用して、先に記載のI-1及び/又はI-3の化合物を検出することができる:陽電子放出断層撮影(PET)と、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)と、チェレンコフ発光イメージング(CLI)とを含む核イメージング;磁気共鳴イメージング(MRI);光学イメージング;蛍光イメージング;好ましくは、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)、光学イメージング及び/又は蛍光イメージング。
【0161】
本発明の三官能性プラットフォームが、2つの検出可能基を独立して含み得る場合、特にイメージング技術が異なる場合には、バイモーダルイメージングを実施してもよい。例えば、バイモーダルイメージングとしては、PET/MRIイメージング、SPECT/MRIイメージング、PET/光学イメージング、SPECT/光学イメージング又はMRI/光学イメージングが挙げられる。
【0162】
別の実施形態において、本発明は、医薬品としての、本発明の三官能性プラットフォームの使用に関する。これは特に、プラットフォームが細胞毒性薬により官能化されている場合に該当する。
【0163】
本発明の三官能性プラットフォームが検出可能基及び細胞毒性薬を含む場合、医薬品及びセラグノスティクスとしての適用が実施可能である。
【0164】
<<セラグノスティクス>>とは、身体中又は生検における細胞毒性薬の存在を検出及び/又は定量化するための医療用イメージング技術の使用に関連する。
【0165】
また、本発明の三官能性プラットフォームを、画像誘導手術における手術手技を補助するツールとして使用することもできる。
【0166】
また、本発明の三官能性プラットフォームを、意思決定を補助するツールとして使用することもできる。特に、これらを、標的とする治療に反応しやすい患者を選定するためのパートナーツールとして使用することができる。
【0167】
また、本発明の三官能性プラットフォームを使用して、新たな生物学的標的を特定するか、又はバイオマーカーを追跡することができる。例えば、光学プローブと、生体活性基と、ビオチンのような親和性基とを組み合わせることにより、生体活性基の様々な標的の位置判定(顕微鏡法による)及び分離(アフィニティークロマトグラフィーによる)を可能にすることができる。
【0168】
また、本発明の三官能性プラットフォームを、新規の治療薬の開発を補助するためのツールとして使用することもできる。モジュール式であると、プラットフォームにより、生体活性基と細胞毒性基又は可溶化基とを組み合わせる複合的な治療薬の単純なインビボ検出が可能になる。プラットフォームのモジュール性により、最適なインビボ薬理学特性を有する治療薬を特定するためのパートナーにおける迅速な変形が可能になる。
【0169】
また、本発明の三官能性プラットフォームを、薬理学的研究のための前臨床ツールとして使用することができる。これは、治療薬、例えばADC(抗体薬物複合体)が、組織、細胞及び小細胞内でどのように発現するかを特定するための、イメージング技術の使用に関し得る。
【0170】
本発明は更に、本発明の式(I)の化合物と、医薬的に許容可能なビヒクルとを含む医薬組成物に関する。
【0171】
一実施形態において、本発明の三官能性プラットフォーム、好ましくは先に記載のI-1及び/又はI-3の化合物を、エクスビボ又はインビボマルチモーダルイメージング剤として使用することができる。
【0172】
一実施形態において、先に記載のI-1及び/又はI-3の化合物は、イメージング剤として使用される場合、その他の臓器、例えば、肝臓、腎臓、筋肉、血液、脾臓及び/又は膀胱とは対照的に、好ましくは腫瘍に蓄積される。
【0173】
三官能性プラットフォーム(I)を合成する方法
本発明はまた、本発明の式(I)の三官能性プラットフォームを合成する方法にも関する。
【0174】
本発明の合成方法では、それ自体が式(IV)の単官能性テトラジンから得ることが可能な式(II)の二官能性テトラジンから出発する逆電子要請型Diels-Alder反応が使用される(図1)。
【0175】
式(IV)の単官能性テトラジン
よって、一実施形態において、本発明の合成方法は、式(IV):
【0176】
【化20】
【0177】
(式中、X1、L1及びR1は、先の式(I)で定義したものであり、
Y2は、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、好ましくはYは、ハロゲン、より好ましくは塩素である)
の単官能性テトラジンを形成する予備工程を含み、式(VI):
【0178】
【化21】
【0179】
(式中、Y1及びY2は、それぞれ独立して、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、好ましくはY1及びY2は、ハロゲン、より好ましくは塩素である)
のテトラジンを、式(VII):
【0180】
【化22】
【0181】
(式中、X1、L1及びR1は、式(I)で定義したものである)
の求核剤により求核一置換する工程を含む。
【0182】
一実施形態において、式(IV)の単官能性テトラジンの形成は、非プロトン性の極性溶媒、好ましくはアセトニトリル又は無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で行われる。
【0183】
一実施形態において、式(IV)の単官能性テトラジンの形成は、緩衝液中で、好ましくはpHを5~9の範囲の値、好ましくは約8のpHに固定した緩衝液中で行われ、緩衝液は、ホウ酸塩緩衝液(2.5mol/L、pH8)であることが好ましい。
【0184】
一実施形態において、式(IV)の単官能性テトラジンの形成は、塩基、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で行われる。
【0185】
一実施形態において、式(IV)の単官能性テトラジンの形成は、0℃~37℃の範囲にある温度、好ましくは室温で実施される。
【0186】
一実施形態において、式(IV)の単官能性テトラジンを形成する工程は、1分~5時間、好ましくは5分~1時間の範囲にある時間にわたり実施される。
【0187】
有利には、中間体(IV)は、X1がSである場合、リジン及びセリンそれぞれのアミン又はヒドロキシ官能基とは対照的に、又は生体活性基、例えばペプチド又は抗体に存在するその他の潜在的に反応性の官能基とは対照的に、システインのチオール官能基について、特に、3.5~8の間のpHで緩衝化された水溶液中で、優れた選択率を示す。
【0188】
式(II)の二官能性テトラジン
一実施形態において、本発明の合成方法は、式(II):
【0189】
【化23】
【0190】
(式中、X1、L1、L2、R1及びR2は、先の式(I)で定義したものである)
の二官能性テトラジンを形成するための中間工程を含み、式(IV):
【0191】
【化24】
【0192】
(式中、X1、L1及びR1は、先の式(I)で定義したものであり、
Y2は、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、好ましくはY2は、ハロゲン、より好ましくは塩素である)
の単官能性テトラジンを、式(V):
【0193】
【化25】
【0194】
(式中、L2及びR2は、式(I)に定義したものである)
のチオールにより求核置換する工程を含む。
【0195】
一実施形態において、式(II)の二官能性テトラジンの形成は、極性溶媒、好ましくは無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)又は蒸留水中で行われる。
【0196】
一実施形態において、式(II)の二官能性テトラジンの形成は、緩衝液の存在下で、好ましくはpHを3.5~8の範囲の値、好ましくは約7のpHに固定した緩衝液の存在下で行われ、緩衝液は、リン酸緩衝液であることが好ましい。
【0197】
一実施形態において、式(II)の二官能性テトラジンの形成は、塩基、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で行われる。
【0198】
一実施形態において、式(II)の二官能性テトラジンの形成は、好ましくはX1がSである場合、4℃~37℃の範囲にある温度、好ましくは25℃の室温で実施される。
【0199】
別の実施形態において、式(II)の二官能性テトラジンの形成は、好ましくはX1がNHである場合、50℃~90℃の範囲にある温度、好ましくは70℃~80℃の範囲にある温度、より好ましくは75℃の温度で実施される。
【0200】
一実施形態において、式(II)の二官能性テトラジンを形成する工程は、10秒~5時間、好ましくは3.5分~0.5時間の範囲にある時間にわたり実施される。
【0201】
式(I)の三官能性テトラジン
本発明の合成方法は、式(I):
【0202】
【化26】
【0203】
(式中、A、X1、L1、L2、L3、R1、R2及びR3は、先に記載のものである)
の三官能性プラットフォーム、又はその互変異性体のうちの1つを形成する工程を含み、式(II):
【0204】
【化27】
【0205】
(式中、X1、L1、L2、R1及びR2は、式(I)に記載のものである)
の二官能性テトラジンを、アルキン若しくはアルケン又は式(III):
【0206】
【化28】
【0207】
(式中、L3及びR3は、式(I)に記載のものであり、
【0208】
【化29】
【0209】
は、三重結合又は二重結合、好ましくは三重結合を表し、
環Aは、アルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ及びヘテロアリールより選択される1個又は複数個の基により任意選択で置換されたシクロアルケン、シクロアルキン又はヘテロシクロアルキン基を表し、Aで表される基は、trans-ビシクロ[6.1.0]ノネン、trans-シクロオクテン、ビシクロ[6.1.0]ノニン、シクロオクチン、ジフルオロシクロオクチン、ヒドロキシシクロオクチン、メチルシクロプロペン、ノルボルネン、5,6-ジデヒドロ-11,12-ジヒドロジベンゾ[a,e][8]アヌレン、11,12-ジデヒドロ-5,6-ジヒドロジベンゾ[b,f]アゾシンであることが好ましい)
と接触させる工程を含む。
【0210】
一実施形態において、(III)がアルケンである場合に得られるジヒドロピリダジン生成物は、任意選択で更なる酸化反応を起こし、相応するピリダジンを形成し得る。
【0211】
一実施形態において、式(III)の化合物は、式(IIIa)、(IIIb-1)、(IIIb-2)、(IIIb-3)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIIg)、(IIIh):
【0212】
【表4】
【0213】
(式中、L3及びR3は、先に定義したものである)
の化合物である。
【0214】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームの形成は、非プロトン性の極性溶媒、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)中で行われる。
【0215】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームの形成は、緩衝液の存在下で、好ましくはpHを4~9の範囲にある値、好ましくは約7.4のpHに固定した緩衝液の存在下で行われ、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)であることが好ましい。
【0216】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームの形成は、20℃~50℃の範囲にある温度、好ましくは約37℃の生理的温度における室温で実施される。
【0217】
一実施形態において、式(I)の三官能性プラットフォームを形成する工程は、30分~20時間、好ましくは50分~16時間の範囲にある時間にわたり実施される。
【0218】
合成中間体:二官能性テトラジンプラットフォーム(II)
本発明はまた、イメージングにより検出可能な少なくとも1個の基により官能化された、以下に記載の式(II)の二官能性テトラジンプラットフォームに関する。前記二官能性テトラジンプラットフォームを使用して、本発明の式(I)の三官能性プラットフォームを得ることができる。
【0219】
よって、本発明は、式(II):
【0220】
【化30】
【0221】
(式中、
X1は、S、NH又はOであり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1及びL2は、それぞれ独立して、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1及びL2は、それぞれ独立して、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基であり、
ただし、R1及びR2のうち少なくとも1個は検出可能基である)
の二官能性テトラジンに関する。
【0222】
一実施形態において、式(II)の二官能性プラットフォームは、
【0223】
【表5A】
【0224】
【表5B】
【0225】
【表5C】
【0226】
【表5D】
【0227】
より選択される。
【0228】
合成中間体:単官能性テトラジンプラットフォーム(IV)
本発明はまた、以下に記載の式(IV)の単官能性テトラジンプラットフォームに関する。前記単官能性テトラジンプラットフォームを使用して、上記の式(II)の二官能性テトラジンプラットフォームを得ることができ、これにより、本発明の式(I)の三官能性プラットフォームが利用可能になる。
【0229】
よって、本発明は、式(IV):
【0230】
【化31】
【0231】
(式中、
Y2は、ハロゲンであるか、又はメシレート、トシレート、トリフレート基及び3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1イルより選択される脱離基であり、好ましくはY2は、ハロゲン、より好ましくは塩素であり、
X1は、S、NH又はOであり、
L1は、単結合であるか、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル及びアルキニル基より選択されるスペーサーであり、ここでアルキル基は、-O-、-NH-、-S-、-C(O)-、-C(O)NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されており、好ましくはL1は、-O-、-C(O)-、-NH-及び-NHC(O)-より選択される1個又は複数個の基により任意選択で中断及び/又は末端化されたアルキル又はアルキルアリールスペーサーであり、より好ましくはL1は、-CH2CH2NH-、-NHCH2CH2NH-、-CH2OCONHCH2CH2NHCOCH2CH2-、-CH2OCO-、-COCH2CH2NH-、-CH2CH2NHCOCH2CH2-及び-CH2CH2NHCO-p-Ph-より選択されるスペーサーであり、
R1は、検出可能基、生体活性基、細胞毒性薬、親和性基又は可溶化基である)
の単官能性テトラジンに関する。
【0232】
一実施形態において、式(IV)の単官能性テトラジンは、
【0233】
【表6A】
【0234】
【表6B】
【0235】
より選択される。
【実施例
【0236】
本発明は、本発明を非限定的に例示する以下の実施例を読むことでより理解されるだろう。
【0237】
略語
ACN:アセトニトリル
BCN:ビシクロノニン
BODIPY:ホウ素-ジピロメテン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DODT:3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール
DOTAGA:2-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン二酸
Fab':ペルツズマブのFab'断片(抗HER2)
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
MeOH:メタノール
NODAGA:2-(4,7-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)ペンタン二酸
PBS:リン酸緩衝生理食塩液
rpm:毎分回転数
TCO:trans-シクロオクテン
TFA:トリフルオロ酢酸
TIS:トリイソプロピルシラン
TSTU:N,N,N',N'-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート
【0238】
材料
特に記載のない限り、化学試薬及び溶媒は、化学製品の通常の供給業者(Sigma-Aldrich社、Alfa-Aesar社、Fisher Scientic社、BioSolve社)から入手し、事前の精製なしに使用した。使用したポリアザマクロサイクルは、Chematech社(Quetigny、France)から入手した。シアニン族の光学プローブは、Prof. Anthony Romieu(Universite de Bourgogne)より賜り、文献に記載されている以下のプロトコールで合成した。
【0239】
半分取HPLCによる精製を、逆相カラム(C18)上に紫外可視検出器を備えたUltiMate 3000 Dionexシステム(Thermo Scientific社)において実施した。
【0240】
フラッシュクロマトグラフィーによる精製を、順相又は逆相(粒径15μm又は25μm)で、予め充填したInterchim社のカラムを使用したpuriFlash(登録商標)430システム(Interchim社)において実施した。
【0241】
LC-MS分析を、DAD検出器を備え、かつMSQ Plus質量検出器(Thermo Scientific社)にカップリングしたUltiMate 3000液体クロマトグラフィーシステムにおいてESIモードで実施した。クロマトグラフィーを、Kinetex(商標)C18カラム、2.6μm、100Å、50×2.1mm(Phenomenex社)において、HPLC品質の溶離液(溶離液A:H2O 0.1% ギ酸(FA);溶離液B:アセトニトリル 0.1% FA)を用いて実施し、Bの勾配は5分で5%~100%であり、1.5分にわたり100%平坦であった。化合物の純度を、214nmの波長でLC-MSクロマトグラムにより求めた。
【0242】
最終化合物の高分解能質量分析(HRMS ESI)を、ESI源(Thermo Scientific社)を備えたLTQ Orbitrap XL質量分析計を用いて、PACSMUBプラットフォーム(DIJON社、France)において実施した。
【0243】
Bruker社Avance III NanoBay NMR分光計において1H NMRスペクトルを得た。スペクトルは室温で得られた。複数のシグナルを表すために以下の略語を使用した:s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、m=マルチプレット
【0244】
第I部. 化学合成
1. 式(VII)のアミン中間体
1.1. シアニン5.0-NH2
2-((1E,3E,5E)-5-(1-(6-((2-アンモニオエチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチルインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-1-エチル-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム
【0245】
【化32】
【0246】
シアニン5.0(20.0mg、32.7μmol)、TSTU(11.8mg、39.3μmol、1.2当量)及びDIPEA(6.9μL、39.3μmol、1.2当量)を700μLの無水DMFに溶解させた。反応媒体を室温で1時間にわたり撹拌下に置き、その後、エチレンジアミン(21.8μL、327μmol、10.0当量)及びDIPEA(57.1μL、327μmol、10.0当量)を添加した。25分後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)を使用して実施した。
【0247】
シアニン5.0-NH2は、青色の粉末(11.1mg、52%のTFA塩)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) ∂: 1.36 (t, 3H; CH3), 1.41 (m, 2H; CH2), 1.64 (s, 6H; CH3), 1.65 (s, 6H; CH3), 1.67 (m, 2H; CH2), 1.74 (m, 2H; CH2), 2.24 (t, 2H; CH2), 3.13 (m, 2H; CH2), 3.51 (m, 2H; CH2), 3.94 (t, 2H; CH2), 4.01 (q, 2H; CH2), 6.13 (d, 1H; CH), 6.16 (d, 3J = 13.5 Hz, 1H; CH), 6.58 (t, 2H; CH), 7.07 (m, 2H; CHAr), 7.19 (m, 2H; CHAr), 7.32 (m, 4H; CHAr), 7.81 (dd, 2H; CH), 8.26 (t, 1H; CONH), 8.38 (m, 3H; NH3 +); MS: C35H47N4O+ ([M]+) m/z 計算値: 539.4; 実測値: 539.4.
【0248】
2. 式(V)及び(VII)のチオール中間体
2.1. ローダミンB-SH
N-(6-(ジエチルアミノ)-9-(2-((2-メルカプトエチル)カルバモイル)フェニル)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-エチルエタンアミニウム
【0249】
【化33】
【0250】
ローダミンB(200mg、418μmol)、HATU(191mg、502μmol、1.2当量)及びDIPEA(87μL、502μmol、1.2当量)を2mLの無水DMFに溶解させた。溶液を室温で2時間にわたり撹拌下に置き、その後、2-アミノエタンチオール塩酸塩(95mg、836μmol、2.0当量)及びDIPEA(139μL、836μmol、2.0当量)を反応媒体に添加した。2時間後、DMFを減圧下で除去した。反応生成物の精製を、シリカにおけるフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:DCM/MeOH)により達成した。ローダミンB-SHは、紫色の粉末(179.3mg、85%)の形態で得られた。1H NMR (300 MHz, CDCl3): ローダミンの非環状形と環状形との平衡; MS: C30H36N3O2S+ ([M]+) m/z 計算値: 502.3; 実測値: 502.2.
【0251】
2.2. BODIPY-SH
2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-((2-メルカプトエチル)カルバモイル)フェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2',1'-f][1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド
【0252】
【化34】
【0253】
BODIPY-COOH(100mg、235μmol)及びカルボニルジイミダゾール(46mg、282μmol、1.2当量)を1mLの無水DMFに溶解させた。溶液を室温で1時間にわたり撹拌下に置き、その後、2-アミノエタンチオール塩酸塩(54mg、470μmol、2.0当量)を添加した。20分後、DMFを減圧下で除去した。反応生成物の精製を、シリカにおけるフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:DCM/MeOH)により実施した。BODIPY-SHは、赤色の粉末(65.0mg、57%)の形態で得られた。1H NMR (300 MHz, CDCl3): ∂ = 0.95 (t, 6H; CH3), 1.23 (s, 6H; CH3), 1.43 (t, 1H; SH), 2.27 (q, 4H; CH2), 2.51 (s, 6H; CH3), 2.81 (dt, 2H; CH2), 3.66 (dt, 2H; CH2), 6.70 (t, 1H; NH), 7.37 (d, 2H; CHAr), 8.18 (d, 2H; CHAr); MS: C26H32BFN3OS+ ([M-F]+) m/z 計算値: 464.2; 実測値: 464.1.
【0254】
2.3. ジスルホン化シアニン3.0-SH
1-エチル-2-((1E,3E)-3-(1-(6-((2-メルカプトエチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチル-5-スルホインドリン-2-イリデン)プロパ-1-エン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート
【0255】
【化35】
【0256】
ジスルホン化シアニン3.0(24.5mg、38.8μmol)、TSTU(16.1mg、53.5μmol、1.4当量)及びDIPEA(10.0μL、57.3μmol、1.5当量)を1mLの無水DMFに溶解させた。溶液を室温で15分にわたり撹拌下に置き、その後、2-アミノエタンチオール塩酸塩(11.0mg、96.8μmol、2.5当量)及びDIPEA(13.6μL、77.7μmol、2.0当量)を添加した。室温で25分後、反応が完了した。ジチオトレイトール(15.5mg、100μmol、2.6当量)及び水(400μL)を添加し、溶液を3時間にわたり室温で撹拌下に置いた。その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)により実施した。ジスルホン化シアニン3.0-SHは、ピンク色の粉末(18.2mg、68%)の形態で得られた。1H NMR (300 MHz, D2O) : ∂ = 1.27 (m, 4H; CH2), 1.56 (m, 2H; CH2), 1.62 (s, 12H; CH3), 1.73 (m, 3H; CH3), 2.17 (m, 2H; CH2), 2.43 (t, 3J = 7.0 Hz, 2H; CH2), 3.18 (t, 3J = 7.0 Hz, 2H; CH2), 4.02 (m, 4H, CH2), 6.32 (t, 3J = 11.5 Hz, 2H; CH), 7.27 (m, 2H, CHAr), 7.80 (m, 2H, CHAr), 7.85 (s, 2H, CHAr), 8.37 (t, 3J = 11.5 Hz, 1H, CH); MS: C33H44N3O7S3 + ([M]+) m/z 計算値: 690.2; 実測値: 690.3.
【0257】
2.4. シアニン5.0-SH
1-エチル-2-((1E,3E,5E)-5-(1-(6-((2-メルカプトエチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチルインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム
【0258】
【化36】
【0259】
シアニン5.0(20.0mg、32.7μmol)、TSTU(11.8mg、39.3μmol、1.2当量)及びDIPEA(6.9μL、39.3μmol、1.2当量)を800μLの無水DMFに溶解させた。溶液を室温で10分にわたり撹拌下に置き、その後、2-アミノエタンチオール塩酸塩(7.4mg、65.4μmol、2.0当量)及びDIPEA(11.4μL、65.4μmol、2.0当量)を添加した。室温で1時間後、ジチオトレイトール(13.1mg、85.0μmol、2.6当量)及び水(400μL)を添加した。溶液を7時間にわたり室温で撹拌下に置き、その後、DMFを減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)により実施した。シアニン5.0-SHは、青色の粉末(22.2mg、純度:88%、ジスルフィド架橋に酸化した生成物:9%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, CD3CN): ∂ = 1.34 (t, 3J = 7.0 Hz, 3H; CH3), 1.42 (m, 2H; CH2), 1.60 (m, 1H; SH),1.63 (m, 2H; CH2), 1.66 (s, 12H; CH3), 1. 78 (m, 2H; CH2), 2.13 (t, 3J = 6.9 Hz, 2H; CH2), 2.54 (m, 2H, CH2), 3.27 (m, 2H, CH2), 4.00 (t, 3J = 7.5 Hz, 2H; CH2), 4.06 (q, 3J = 7.0 Hz, 2H, CH2), 6.22 (d, 3J = 13.7 Hz, 2H; CH), 6.55 (t, 3J = 12.5 Hz, 1H; CH), 6.74 (s 広幅, 1H, NH), 7.25 (m, 4H, CHAr), 7.40 (m, 2H, CHAr), 7.48 (m, 2H, CHAr), 8.08 (dd, 3J = 13.7, 12.5 Hz, 2H, CH) ; MS: C35H46N3OS+ ([M]+) m/z 計算値: 556.3; 実測値: 556.5.
【0260】
2.5. ジスルホン化シアニン5.0-SH
1-エチル-2-((1E,3E,5E)-5-(1-(6-((2-メルカプトエチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチル-5-スルホインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート
【0261】
【化37】
【0262】
ジスルホン化シアニン5.0(16.0mg、24.4μmol)、TSTU(8.8mg、29.2μmol、1.2当量)及びDIPEA(15.3μL、87.6μmol、3.6当量)を500μLのDMFに溶解させた。溶液を5分にわたり撹拌下に置き、その後、500μLのホウ酸塩緩衝液(2.5M、pH8)に溶解したシスタミン二塩酸塩(8.2mg、36.5μmol、1.5当量)、及びDIPEA(3.2μL、18.4μmol)を添加した。
【0263】
室温で1時間後、ジチオトレイトール(6.8mg、43.8μmol、1.8当量)を添加し、反応媒体を一晩にわたり室温で撹拌下に置いた。溶媒を減圧下で除去し、生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)により実施した。ジスルホン化シアニン5.0-SHは、青色の粉末(7.3mg、42%)の形態で得られた。MS:C35H46N3O7S3 +([M]+)m/z計算値:716.2;実測値:716.4
【0264】
2.6.(R)-NODAGA-SH
(S)-2,2'-(7-(1-カルボキシ-4-((2-メルカプトエチル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸
【0265】
【化38】
【0266】
(R)-NODAGA(tBu)3(159mg、292μmol)、TSTU(97.0mg、321μmol、1.1当量)及びDIPEA(61.0μL、350μmol、1.2当量)を2mLの無水DMFに溶解させた。溶液を室温で40分にわたり撹拌下に置き、その後、2-(トリチルスルファニル)エタンアミン(102mg、321μmol、1.1当量)を添加した。5時間後、DMFを減圧下で除去し、引き続き、10mLの90:5:5(v/v/v)のTFA/DODT/TIS脱保護溶液を添加した。反応媒体を室温で一晩にわたり撹拌下に置き、形成した白色固体を濾過により除去し、TFAを窒素流のもと蒸発させた。生成物を、4℃でジエチルエーテル中に沈殿させ、遠心分離(4000rpm、4℃)により単離した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)により実施した。(R)-NODAGA-SHは、吸湿性の白色の粉末(89.5mg、71%、純度:95%)の形態で得られた。1H NMR (300 MHz, D2O) : ∂ (ppm) = 2.10 (m, 1H; CH2), 2.19 (m, 1H; CH2), 2.51 (t, 3J = 7.8 Hz, 2H; CH2), 2.68 (t, 3J = 6.3 Hz, 2H; CH2), 3.11から3.22 (m, 4H; CH2), 3.22から3.31 (m, 2H; CH2), 3.34 (s, 2H; CH2), 3.40 (t, 3J = 6.3 Hz, 2H; CH2), 3.70 (dd, 1H; 3J = 6.0, 7.8 Hz, 1H; CH), 3.98 (s, 4H; CH2); MS: C17H31N4O7S+ ([M+H]+) m/z 計算値: 435.2; 実測値: 435.1.
【0267】
3. 式(IV)の単官能性テトラジン
3.1. NODAGA-NH-Tz-Cl(IV-1)
(S)-2,2'-(7-(1-カルボキシ-4-((2-((6-クロロ-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)アミノ)エチル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸
【0268】
【化39】
【0269】
(R)-NODAGA-NH2(95.3mg、228μmol)を1mLのホウ酸塩緩衝液(2.5M、pH8)に溶解させ、2.5MのNaOHを添加することによりpHをpH8に調整した。300μLのACNに入れたジクロロ-s-テトラジン(34.5mg、228μmol、1.0当量)を添加した。室温で2時間にわたり撹拌下に置いた後、溶媒を減圧下で除去した。
【0270】
反応生成物の精製を、逆相半分取HLPC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。NODAGA-NH-Tz-Clは、オレンジ色の粉末(43.8mg、36%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, D2O): ∂ = 1.20 (m, 1H; CH2), 2.05 (m, 1H; CH2), 2.43 (t, 3J = 7.5 Hz, 2H; CH2), 3.01から3.15 (m, 4H; CH2), 3.22 (m, 2H; CH2), 3.29 (s, 4H; CH2), 3.46から3.59 (m, 3H; CH, CH2), 3.71 (m, 2H; 2H; CH2), 3. 58 (s, 4H; CH2); MS: C19H31ClN9O7 + ([M+H]+) m/z 計算値: 532.2; 実測値: 532.1.
【0271】
3.2. DOTAGA-NH-Tz-Cl(IV-2)
2,2',2''-(10-(1-カルボキシ-4-((2-((6-クロロ-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)アミノ)エチル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸
【0272】
【化40】
【0273】
DOTAGA-NH2(243mg、443μmol)を7mLのホウ酸塩緩衝液(2.5M、pH8)に溶解させ、2.5MのNaOHを添加することによりpHをpH8に調整した。2mLのACNに入れたジクロロ-s-テトラジン(68mg、443μmol、1.0当量)を添加した。
【0274】
室温で2時間の撹拌時間後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)により実施した。DOTAGA-NH-Tz-Clは、オレンジ色の粉末(154mg、純度:99%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, D2O): ∂ = 1.20 (m, 1H; CH2), 2.05 (m, 1H; CH2), 2.43 (t, 3J = 7.5 Hz, 2H; CH2), 3.01から3.15 (m, 4H; CH2), 3.22 (m, 2H; CH2), 3.29 (s, 4H; CH2), 3.46から3.59 (m, 3H; CH, CH2), 3.71 (m, 2H; 2H; CH2), 3.58 (s, 4H; CH2) ; MS: C19H31ClN9O7 + ([M+H]+) m/z 計算値: 532.2; 実測値: 532.1.
【0275】
3.3. (R)-NODAGA-S-Tz-Cl(IV-3)
(S)-2,2'-(7-(1-カルボキシ-4-((2-((6-クロロ-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸
【0276】
【化41】
【0277】
(R)-NODAGA-SH(40mg、92μmol)及びジクロロ-s-テトラジン(41.7mg、276μmol、3当量)を3mLの無水DMFに溶解させた。室温での10分にわたる撹拌の後、DMFを減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% トリフルオロ酢酸、ACN 0.1% トリフルオロ酢酸)により実施した。(R)-NODAGA-S-Tz-Clは、オレンジ色の粉末(46mg、91%、純度:96%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, D2O): ∂ = 2.04 (m, 1H; CH2), 2.11 (m, 1H; CH2), 2.46 (m, 2H; CH2), 3.08から3.11 (m, 4H; CH2), 3.23 (m, 4H; CH2), 3.29 (s, 4H, CH2), 3.55 (t, 3J = 7.1 Hz, 1H; CH), 3.58 (m, 2H; CH2), 3.67 (m, 2H; CH2), 3.826 (s, 2H; CH2), 3.831 (s, 2H; CH2); MS: C19H30ClN8O7S+ ([M+H]+) m/z 計算値: 549.2; 実測値: 548.9.
【0278】
3.4. BODIPY-S-Tz-Cl(IV-4)
10-(4-((2-((6-クロロ-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)カルバモイル)フェニル)-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2',1'-f][1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド
【0279】
【化42】
【0280】
BODIPY-SH(29.1mg、60.2μmol)及びジクロロ-s-テトラジン(10.6mg、70.2μmol、1.2当量)を1.5mLの0.6:0.4(v/v)のDMF/ACN混合物に溶解させ、DIPEA(12.5μL、72.2μmol、1.2当量)を反応媒体に添加した。
【0281】
室温での1時間にわたる撹拌の後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。BODIPY-S-Tz-Clは、赤色の粉末(24.1mg、純度:90%、ジヒドロテトラジンに還元された生成物:10%)の形態で得られた。1H NMR (300 MHz, CDCl3): ∂ = 0.96 (t, 3J = 7.5 Hz, 6H; CH3), 1.23 (s, 6H; CH3), 2.28 (q, 3J =7.5 Hz, 4H; CH2), 2.51 (s, 6H; CH3), 3.65 (t, 3J = 6.3 Hz, 2H; CH2), 3.92 (dt, 3J = 5.7, 6.3 Hz, 2H; CH2), 6.71 (t, 3J = 5.7 Hz, 1H; NH), 7.39 (d, 3J = 8.2 Hz, 2H; CHAr), 8.18 (d, 3J = 8.2 Hz, 2H; CHAr); HRMS: C28H31BClFN7OS+ ([M-F]+) m/z 計算値: 578.20709; 実測値: 578.20828.
【0282】
3.5. ローダミンB-S-Tz-Cl(IV-5)
N-(9-(2-((2-((6-クロロ-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)カルバモイル)フェニル)-6-(ジエチルアミノ)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-エチルエタンアミニウム
【0283】
【化43】
【0284】
ローダミンB-SH(200mg、399μmol)及びジクロロ-s-テトラジン(60.3mg、399μmol、1.0当量)を2mLのACNに溶解させ、DIPEA(69.5μL、399μmol、1.0当量)を反応媒体に添加した。溶液を5時間にわたり室温で撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。ローダミンB-S-Tz-Clは、ピンク色の粉末(47.8mg、19%)の形態で得られた。1H NMR(300MHz,CDCl3):ローダミンの環式及び非環式形態の間で平衡;HRMS:C32H35ClN7O2S+([M]+) m/z 計算値:616.22560;実測値:616.22622;C32H34ClN7NaO2S+(環式形態)([M-H+Na]+) m/z 計算値:638.20754;実測値:638.20749
【0285】
3.6. ジスルホン化シアニン3.0-S-Tz-Cl(IV-6)
2-((1E,3E)-3-(1-(6-((2-((6-クロロ-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチル-5-スルホインドリン-2-イリデン)プロパ-1-エン-1-イル)-1-エチル-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート
【0286】
【化44】
【0287】
ジスルホン化シアニン3.0-SH(15.8mg、22.9μmol)及びジクロロ-s-テトラジン(4.3mg、28.5μmol、1.2当量)を1mLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(5.5μL、31.8μmol、1.4当量)を、撹拌下にて室温で反応媒体に添加した。1時間後、反応が完了し、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物を逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により精製した。ジスルホン化シアニン3.0-S-Tz-Clは、ピンク色の粉末(6.0mg)の形態で得られた。HRMS(ネガティブモード):C35H41ClN7O7S3 -([M-H]-) m/z 計算値:802.19236;実測値:802.18923
【0288】
4. 式(IIa)の二官能性テトラジン
4.1. DOTAGA-NH-Tz-S-ローダミンB(II-1)
N-(9-(2-((2-((6-((2-(4-カルボキシ-4-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ブタンアミド)エチル)アミノ)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)カルバモイル)フェニル)-6-(ジエチルアミノ)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-エチルエタンアミニウム2,2,2-トリフルオロアセテート
【0289】
【化45】
【0290】
ローダミンB-SH(39.7mg、79.0μmol)及びDOTAGA-NH-Tz-Cl(50.0mg、79.0μmol、1.0当量)を1mLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(65.7μL、395μmol、5.0当量)を反応媒体に添加した。溶液を75℃で3時間にわたり撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。DOTAGA-NH-Tz-S-ローダミンBは、赤色の油(37.0mg、43%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, D2O) ∂: 1.13 (m, 12H; CH3), 2.01 (m, 2H; CH2), 2.56 (m, 2H; CH2), 2.96 (m, 2H; CH2), 3.00から3.48 (m, 12H; CH2), 3.48から3.63 (m, 8H; CH2), 3.69 (m, 10H; CH2), 3.74から4.37 (m, 6H; CH2), 3.99 (m, 1H; CH), 7.11 (m, 2H; CHAr), 7.24 (m, 3H; CHAr), 7.63 (m, 2H; CHAr), 7.72 (m, 2H; CHAr), 8.02 (m, 1H; CHAr); HRMS: C53H72N13O11S+ ([M]+) m/z 計算値: 1098.51895; 実測値: 1098.52126; C53H71N13NaO11S+ ([M-H+Na]+) m/z 計算値: 1120.50089; 実測値: 1120.50291; C53H70KN13NaO11S+ ([M-2H+Na+K]+) m/z 計算値: 1158.45677; 実測値: 1158.454311.
【0291】
4.2. DOTAGA-NH-Tz-S-BODIPY(II-2)
10-(4-((2-((6-((2-(4-カルボキシ-4-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ブタンアミド)エチル)アミノ)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)カルバモイル)フェニル)-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2',1'-f][1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド
【0292】
【化46】
【0293】
BODIPY-SH(11.7mg、24.2μmol)及びDOTAGA-NH-Tz-Cl(15.3mg、24.2μmol、1.0当量)を1mLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(22.8μL、121.0μmol、5.0当量)を反応媒体に添加した。溶液を75℃で1時間30分にわたり撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。DOTAGA-NH-Tz-S-BODIPYは、赤色の粉末(18.0mg、69%、純度:95%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, MeOD) ∂: 0.99 (m, 6H; CH3), 1.32 (s, 6H; CH3), 2.35 (m, 4H; CH2), 2.48 (s, 6H; CH3), 3.01から4.13 (m, 27H; CH2, マクロサイクル), 3.52 (m, 2H; CH2), 3.80 (m, 2H; CH2), 7.46 (m, 2H; CHAr), 8.01 (m, 2H; CHAr); HRMS: C49H69BF2N13O10S+ ([M+H]+) m/z 計算値: 1080.50667; 実測値: 1080.50639; C49H68BF2N13NaO10S+ ([M+Na]+) m/z 計算値: 1102.48861; 実測値: 1102.48834; C49H67BF2N13Na2O10S+ ([M-H+2Na]+) m/z 計算値: 1124.47056; 実測値: 1124.46975.
【0294】
4.3. DOTAGA-NH-Tz-S-シアニン5.0(II-3)
2-((1E,3E,5E)-5-(1-(6-((2-((6-((2-(4-カルボキシ-4-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ブタンアミド)エチル)アミノ)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチルインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-1-エチル-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム
【0295】
【化47】
【0296】
シアニン5.0-SH(14.9mg、26.8μmol)及びDOTAGA-NH-Tz-Cl(19.5mg、30.8μmol、1.1当量)を1mLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(28.0μL、149.5μmol、5.6当量)を反応媒体に添加した。溶液を75℃で1時間にわたり撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。DOTAGA-NH-Tz-S-シアニン5.0は、青色の粉末(15.1mg、49%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, CD3CN): ∂ = 1.33 (t, 3J = 7.0 Hz, 3H; CH3), 1.42 (m, 2H; CH2), 1.61 (m, 2H; CH2), 1.67 (s, 12H; CH3), 1.76 (m, 2H; CH2), 2.12 (t, 2H; CH2), 2.76から3.97 (m, 35H; マクロサイクル + CH2), 4.00 (t, 2H; CH2), 4.06 (q, 3J = 7.0 Hz, 2H, CH2), 6.21 (d, 3J = 13.0 Hz, 2H; CH), 6.53 (t, 3J = 13.0 Hz, 1H; CH), 7.25 (m, 4H, CHAr), 7.40 (m, 2H, CHAr), 7.47 (m, 2H, CHAr), 8.07 (dd, 2H, CH) ; HRMS: C58H82N13O10S+ ([M]+) m/z 計算値: 1152.60228; 実測値: 1152.60445; C58H82N13NaO10S2+ ([M+Na]2+) m/z 計算値: 587.79575; 実測値: 587.79558.
【0297】
4.4. DOTAGA-NH-Tz-S-ジスルホネートシアニン5.0(II-4)
2-((1E,3E,5E)-5-(1-(6-((2-((6-((2-(4-カルボキシ-4-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ブタンアミド)エチル)アミノ)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチル-5-スルホインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-1-エチル-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート
【0298】
【化48】
【0299】
ジスルホン化シアニン5.0-SH(5.4mg、7.54μmol)及びDOTAGA-NH-Tz-Cl(5.7mg、9.05μmol、1.2当量)を800μLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(8.47μL、45.25μmol、6.0当量)を反応媒体に添加した。溶液を75℃で5時間にわたり撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。DOTAGA-NH-Tz-S-ジスルホン化シアニン5.0は、青色の粉末(3.75mg)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, D2O) ∂: 1.31 (m, 5H; CH2 + CH3), 1.59 (m, 2H; CH2), 1.61 (s, 6H; CH3), 1.67 (s, 6H; CH3), 1.81 (m, 2H; CH2), 1.88 (m, 2H; CH2), 2.20 (t, 2H; CH2), 2.44 (m, 2H; CH2), 2.97から3.63 (m, 26H; 2 CH2 + 11 CH2, マクロサイクル), 3.82 (m, 5H; 2 CH2 + CH), 4.07 (m, 4H; CH2), 6.15 (d, 1H; CH), 6.23 (d, 1H; CH), 6.48 (t, 1H; CH), 7.33 (d, 2H; CHAr), 7.79から7.88 (m, 4H; CHAr), 7.96 (m, 1H; CH), 8.01 (m, 1H; CH);
【0300】
4.5. (R)-NODAGA-NH-Tz-S-BODIPY(II-5)
(S)-10-(4-((2-((6-((2-(4-(4,7-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)-4-カルボキシブタンアミド)エチル)アミノ)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)カルバモイル)フェニル)-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2',1'-f][1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド
【0301】
【化49】
【0302】
BODIPY-SH(17.0mg、40.1μmol)及び(R)-NODAGA-NH-Tz-Cl(27.4mg、51.5μmol、1.3当量)を1mLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(48.3μL、275.5μmol、5.0当量)を反応媒体に添加した。溶液を75℃で1時間にわたり撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。(R)-NODAGA-NH-Tz-S-BODIPYは、赤色の粉末(8.1mg)の形態で得られた。HRMS:C45H62BF2N12O8S+([M+H]+) m/z 計算値:979.45899;実測値:979.45948;C45H61BF2N12NaO8S+([M+Na]+) m/z 計算値:1001.44094;実測値:1001.44055
【0303】
5. 式(IIb)の二官能性テトラジン
5.1. (R)-NODAGA-S-Tz-S-ペプチド(II-6)
2,2'-(7-((S)-4-((2-((6-(((2S,5S,11S,17S,20S,23S,26R)-17-((1H-インドール-3-イル)メチル)-26-アセトアミド-1-アミノ-23-(4-アミノブチル)-5-(カルボキシメチル)-11-(3-グアニジノプロピル)-20-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-1,4,7,10,13,16,19,22,25-ノナオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24-オクタアザヘプタコサン-27-イル)チオ)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)チオ)エチル)アミノ)-1-カルボキシ-4-オキソブチル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸
【0304】
【化50】
【0305】
(R)-NODAGA-S-Tz-Cl(8.5mg、15.5μmol)及びペプチドAc-CKYWGRGDS-NH2、2TFA(25mg、18.7μmol、1.2当量)を600μLの超純水に溶解させた。溶液を室温で撹拌下に置き、30分にわたり光から保護した。反応生成物の精製を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% ギ酸、ACN 0.1% ギ酸)により実施した。Ac-C(Tz-S-NODAGA)KYWGRGDS-NH2とも記載可能な(R)-NODAGA-S-Tz-S-ペプチド生成物は、オレンジ色の粉末(5.8mg、55%、純度:82%)の形態で得られた。HRMS:C67H98N23O21S2 +([M+H]+) m/z 計算値:1624.67;実測値:1624.57;C67H97N23NaO21S2([M+Na]+) m/z 計算値:1646.66;実測値:1646.49
【0306】
5.2. BSA-S-テトラジン-S-NODAGA(II-7)
【0307】
【化51】
【0308】
ウシ血清アルブミン(BSA)を、(R)-クロロテトラジン-NODAGA(10当量)を用いて1時間にわたり室温(pH=5.15)でインキュベートした。超遠心分離による精製の後、BSA-S-テトラジン-S-(R)-NODAGA(II-7)化合物が得られた。マススペクトルのデコンボリューションの後のLC-HRMS:67004(I-3の化合物に相応)及び66430(プローブなしのタンパク質残渣に相応)。
【0309】
5.3. Fab'-S-テトラジン-S-DOTAGA(II-8)
【0310】
【化52】
【0311】
Fab'断片を、(R)-クロロテトラジン-NODAGA(50当量)を用いて30分にわたり37℃(pH=7.3)でインキュベートした。マススペクトルのデコンボリューションの後の反応のLC-HRMS:49687(I-3の化合物に相応)及び48660(プローブなしのFab'残渣に相応)。この化合物は、化合物(ジスルホン化シアニン5.0-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA)2、S-Fab'(I-4)の形成に使用される前には精製されなかった。
【0312】
5.4. ペプチドのアミン対チオールについての(R)-NODAGA-S-Tz-Clの反応性選択率
タンパク質に存在する求核剤に関して、チオールタイプの求核剤により一置換されたクロロテトラジンの反応の化学選択率を、2つモデルのペプチドを使用して評価した:Ac-CKYWGRGDS-NH2及びAc-MKYWGRGDS-NH2。これらのペプチドは、求核側鎖を有する最も一般的なアミノ酸、例えば、リジン(アミン)、セリン(アルコール)及びチロシン(フェノール)を含有する。これらは、一方ではシステイン(チオール)が存在し、他方ではこれがメチオニン(チオエーテル)に置き換わっている点で異なる。
【0313】
リン酸緩衝液(0.01M;異なるpH)の溶液中にあるペプチド(20μM)を、2.5当量の(R)-NODAGA-S-Tz-Clの存在下で25℃でインキュベートした。ペプチドによる(R)-NODAGA-S-Tz-Clの塩素の置換から得られる生成物に対する転化率を、214nmでLC-MSにより求めた。以下の表に結果を示す。
【0314】
異なるpHでの2.5当量の(R)-NODAGA-S-Tz-Clの存在下におけるペプチドの転化率(quant.:定量的;<1%:使用される方法の検出限界)。
【0315】
【表7】
【0316】
これらの結果は、チオールタイプの求核剤により一置換されたクロロテトラジンが、Ac-CKYWGRGDS-NH2ペプチドに運ばれたチオールタイプの求核剤と、数分以内に穏やかな条件(緩衝水溶液、25℃、中性pH)で選択的に反応することを示す。システインの不在下では、反応は観察されなかった。
【0317】
6. 式(III)の中間体
6.1. シアニン5.0-BCN
2-((1E,3E,5E)-5-(1-(6-((2-((((1R,8S,9s)-ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン-9-イルメトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)アミノ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチルインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-1-エチル-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム-2,2,2-トリフルオロアセテート
【0318】
【化53】
【0319】
シアニン5.0-NH2(25.7mg、33.5μmol)及びビシクロノニン-N-ヒドロキシスクシンイミド(16.3mg、55.8μmol、1.7当量)を1mLの無水DMFに溶解させ、DIPEA(8.41μL、48.6μmol、1.5当量)を反応媒体に添加した。溶液を40分にわたり室温で撹拌下に置き、その後、溶媒を減圧下で除去した。反応生成物を、逆相半分取HPLC(溶離液:H2O 0.1% TFA、ACN 0.1% TFA)により実施した。シアニン5.0-BCN、TFAは、青色の粉末(11.5mg、41%、TFA塩、純度:90%)の形態で得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3): ∂ = 0.86 (m, 2H; CH), 1.31 (m, 1H; CH), 1.39 (t, 3J = 7.5 Hz, 3H; CH3), 1.47 (m, 2H; CH2), 1.53 (m, 2H; CH2), 1.66 (s, 6H; CH3), 1.67 (s, 6H; CH3), 1.71 (m, 2H; CH2), 1.79 (m, 2H; CH2), 2.08から2.27 (m, 6H; CH2), 2.30 (t, 3J = 7.3 Hz, 2H; CH2), 3.31 (m, 2H; CH2), 3.54 (m, 2H; CH2), 3.99 (t, 3J = 7.6 Hz, 2H; CH2), 4.04 (q, 3J = 7.2 Hz, 2H; CH2), 4.07 (d, 3J = 8.4 Hz, 2H; CH2), 6.04から6.22 (m, 1H; OCONH), 6.17 (d, 3J = 13.5 Hz, 1H; CH), 6.26 (d, 3J = 13.5 Hz, 1H; CH), 6.66 (t, 3J = 12.5 Hz, 1H; CH), 7.05 (d, 3J = 7.9 Hz, 1H; CHAr), 7.10 (d, 3J = 8.0 Hz, 1H; CHAr), 7.22 (m, 2H; CHAr), 7.35 (m, 4H; CHAr), 7.78 (dd, 3J = 12.0, 13.5 Hz, 1H; CH), 7.79 (dd, 3J = 12.0, 13.5 Hz, 1H; CH), 8.26 (m, 1H; CONH);HRMS: C46H59N4O3 + ([M]+) m/z 計算値: 715.45817; 実測値: 715.45752.
【0320】
6.2. トラスツズマブ-BCN
【0321】
【化54】
【0322】
2mMのBCN-NHSをDMSO(53.3nmol、4.0当量)に入れたストック溶液26.7μLを、10%(v/v)のDMSO(トラスツズマブ濃度:2mg/mL)の存在下で、重炭酸塩緩衝液(0.2M、pH8.5)の溶液に入れたトラスツズマブ抗体(Herceptin;Roche社、U.K.)(2mg、13.3nmol)に添加した。溶液をサーモミキサー(800rpm、25℃)内で2時間にわたり撹拌下に置いた。過剰なBCNをAmicon Ultra Ultracel-30kDa(Merck Millipore社)において限外濾過により除去した。限外濾過工程で、生成物を濃縮し、重炭酸塩緩衝液をPBS緩衝液(0.01M、pH7.4)と交換した。トラスツズマブ-BCNを、35.5mg/mLの濃度で51μLのPBSの溶液中で単離した(1.81mg、12.1nmol、標識収率:91%)。BCN/抗体比率は、3.3であった(MALDI/TOF質量分析により求めた)。
【0323】
7. 式(I)の三官能性プラットフォーム
7.1. トラスツズマブ-BCN-ピリダジン、NH-DOTAGA、ジスルホン化S-シアニン5.0(I-1)
【0324】
【化55】
【0325】
超純水(376.6nmol、33.0当量)に入れた5mMのDOTAGA-NH-Tz-ジスルホン化S-シアニン5.0のストック溶液75.3μLを、PBS(pH7.4)+10%(v/v)のDMSOの溶液に入れたトラスツズマブ-BCN(1.71mg、11.4nmol)に添加した(最終的なトラスツズマブ-BCN濃度:10mg/mL)。溶液をサーモミキサー(800rpm、37℃)内で16時間にわたり撹拌下に置いた。過剰なプローブを、FPLC精製(Akta Pure Healthcare、GE社)により、脱塩カラム(Hitrap Desalting、5mL、SepHadex G-25 Superfineにより予め充填)において、AcONH4緩衝液(0.1M、pH5.8、トレース選択)を溶離液として用いて除去した。トラスツズマブ-BCN-ピリダジン、NH-DOTAGA、ジスルホン化S-シアニン5.0(I-1)は、2.1mg/mLの濃度の484μLの酢酸アンモニウム緩衝液の溶液中で得られた(補正率=0.095)(1.02mg、6.8nmol、59%)。プローブ/抗体比率は、1.7であった(分光測光法により求めた)。変性条件下でのゲル電気泳動による分析は、化合物I-1に相応する分子量についての蛍光シグナルを示し、これは、プローブとトラスツズマブ抗体との間の共有型の結合を示した。化合物I-1の安定性を、37℃で、暗所にて、ヒト血漿中で、インキュベーションにより検証した(1時間、2時間、4時間、8時間、24時間及び48時間のインキュベーション時間の後の試料のゲル電気泳動による分析)。
【0326】
7.2. NODAGA-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA, S-ペプチド(I-2)
2,2'-(7-((1S)-4-((2-((((1-(((2S,5S,11S,17S,20S,23S,26R)-17-((1H-インドール-3-イル)メチル)-26-アセトアミド-1-アミノ-23-(4-アミノブチル)-5-(カルボキシメチル)-11-(3-グアニジノプロピル)-20-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-1,4,7,10,13,16,19,22,25-ノナオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24-オクタアザヘプタコサン-27-イル)チオ)-4-((2-((S)-4-(4,7-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)-4-カルボキシブタンアミド)エチル)チオ)-6,6a,7,7a,8,9-ヘキサヒドロ-5H-シクロプロパ[5,6]シクロオクタ[1,2-d]ピリダジン-7-イル)メトキシ)カルボニル)アミノエチル)アミノ)-1-カルボキシ-4-オキソブチル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸
【0327】
【化56】
【0328】
DMSO(60nmol)に入れた30mMの(R)-NODAGA-S-Tz-S-ペプチドのストック溶液2μL及びPBS(600mmol、10当量)に入れた50mMのNODAGA-BCNのストック溶液12μLを、室温でPBS中において組み合わせた(最終的な(R)-NODAGA-S-Tz-S-ペプチド濃度:2mM、DMSO中:6.7%)。反応の進行を紫外可視分光測光法により監視した。50分の反応時間後、NODAGA-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA、S-ペプチド(I-2)に対する転化率は、98%であった(214nmでLC-MSにより求めた)。MS:C95H140N26O30S2([M+2H]2+) m/z 計算値:1095.5;実測値:1096.0
【0329】
7.3. ジスルホン化シアニン5.0-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA、S-BSA(I-3)
【0330】
【化57】
【0331】
化合物(R)-NODAGA-S-テトラジン-S-BSAを、ジスルホン化シアニン5.0-BCNと、クリック化学反応により、水溶液(リン酸緩衝液、pH=7.13)中において37℃で一晩にわたり組み合わせた。最終生成物であるジスルホン化シアニン5.0-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA、S-BSA(I-3)を立体排除クロマトグラフィーにより精製した。プローブ/タンパク質の比率は、0.7であった(分光測光法により求めた)。マススペクトルのデコンボリューションの後のLC-HRMS:67851(化合物I-3に相応)及び66430(プローブなしのタンパク質残渣に相応)。変性条件下でのゲル電気泳動による分析は、化合物I-3に相応する分子量についての蛍光シグナルを示し、これは、プローブとアルブミンとの間の共有型の結合を示した。化合物I-3の安定性を、37℃で、暗所にて、ヒト血漿中で、インキュベーションにより検証した(1時間、2時間、4時間、8時間、24時間及び48時間のインキュベーション時間の後の試料のゲル電気泳動による分析)。
【0332】
7.3. (ジスルホン化シアニン5.0-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA)2、S-Fab'(I-4)
【0333】
【化58】
【0334】
ジスルホン化シアニン5.0-BCNを添加し、反応混合物を37℃で一晩にわたりインキュベート(pH=7.3)して、生成物(ジスルホン化シアニン5.0-BCN-ピリダジン、S-(R)-NODAGA)2、S-Fab'(I-4)を得た。未精製の反応を、マススペクトルのデコンボリューションの後にLC-HRMSにより分析した。得られた質量は以下のようであった:51503(化合物I-4 + 2個の銅カチオンに相応)及び48659(プローブなしのタンパク質残渣に相応)
【0335】
第II部. イメージングの結果
インジウム111で放射標識された化合物I-1を、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)によるマルチモーダルイメージング及び光学イメージング(蛍光)について調査した。化合物I-3を光学イメージングにより調査した。インビボ実験を、胸部腫瘍の異種移植片を有するマウスのモデル(モデルBT-474)について実施した。
【0336】
8.1. インジウム111で放射標識された化合物I-1を使用したイメージング
この実験の目的は、イメージング剤として使用される、インジウム111で放射標識された化合物I-1の特異的性質を証明することであった。
【0337】
この目的のために、マウスの2つのバッチを調査した:
- バッチA:インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理されたマウス(n=4);及び
- バッチB:インジウム111で放射標識された化合物I-1及び標識されていない過剰なトラスツズマブにより処理されたマウス(n=3)
【0338】
注入して24時間後、バッチA及びBのマウスの画像を、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)及び光学イメージングにより記録した。大過剰の標識されていないトラスツズマブ(HER2レセプターを飽和させる)の注入により、イメージング剤の特異性を証明することができた。
【0339】
バッチA及びBの画像の間に著しい変化が観察されない場合、調査組織におけるイメージング剤の蓄積は特異的ではない。それとは反対に、バッチAで観察されたシグナルが、バッチBで得られた画像から減少又は消失している場合、調査組織におけるイメージング剤の蓄積は特異的である。
【0340】
単一光子放射断層撮影(SPECT)
例示的なSPECT画像の例を、バッチAについては図2Aに、バッチBについては図2Bに示す。
【0341】
これらの結果は以下のことを示す:
- インジウム111で放射標識された化合物I-1(バッチA)による処理について、SPECTイメージングにおいて腫瘍を確認することができる(図2Aにおける白色の目印を参照)
- 大過剰の標識されていないトラスツズマブを用いてインジウム111で放射標識された化合物I-1によりマウスを処理する場合、バッチAに比べて、シグナルの消失がみられる。
【0342】
よって、この実験は、腫瘍組織におけるイメージング剤の特異的蓄積を証明している。
【0343】
図3は、インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したマウス(n=4)(バッチA-ライトグレー)又は過剰なトラスツズマブを用いてインジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したマウス(n=3)(バッチB-ダークグレー)の様々な臓器における放射能の生体分布(臓器1グラムあたりに注入される平均投与率)を示す。
【0344】
図3において、腫瘍について、その他の臓器に比べて、バッチA及びBの間で明らかな差が観察される。
【0345】
これらの結果は、調査したモデルにおける腫瘍について、イメージング剤として使用されるインジウム111で放射標識された化合物I-1の特異性を示す。
【0346】
光学イメージング(蛍光)
インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したマウスについて、インビボ及びエクスビボ光学的画像を得た。図4は、インジウム111で放射標識された化合物I-1により処理したマウスのインビボ写真(図4(a))を示し、ここで、腫瘍の部位は明らかに目視可能である(動物の背中からみて左上の突起)。
【0347】
蛍光シグナルを重ねることにより撮影された同じ写真(図4(b))は、腫瘍の部位が一致する強いシグナル(白色)を示す。
【0348】
これらのインビボの結果は、特に腫瘍を標的とすることについて、イメージング剤としてのインジウム111で放射標識された化合物I-1の有効性を認めている。
【0349】
図5及び図6は、単離された臓器(エクスビボ)について得られた結果示す。図5において、腫瘍から放出される発光の強度は、その他の単離された臓器からの強度よりもはるかに強い。図6は、インジウム111で放射標識された化合物I-1が、腫瘍について、特異的なイメージング剤として機能することを認めている。腫瘍について、シグナルが同等であるその他の臓器に比べて、バッチA及びBの間で、生体分布における著しい差が観察される。
【0350】
結論として、蛍光の結果は、核イメージングにより得られた結果を認めている。よって、トラスツズマブによる部位特異的二重標識の利点が、マルチモーダルSPECT/光学イメージングにおける応用について実証されている。
【0351】
8.2. 化合物I-3を使用したイメージング
胸部腫瘍BT-474細胞で予め異種移植し、かつ化合物I-3で処理したマウスのバッチ(n=3、ロットC)の光学イメージングについて、化合物I-3を使用して研究を実施した。
【0352】
処理(t0)後、バッチCにおけるマウスのインビボ蛍光画像を、t=1時間、4時間及び24時間で撮影し(図7)、単離した臓器についてエクスビボを24時間後に撮影した(図8及び図9)。
【0353】
図7は、バッチCにおけるグループのマウス1匹のインビボ蛍光シグナルにおける変化を示す。これは、化合物I-3の注入後に、生物の残りの部分に比べて、24時間後でさえ、腫瘍の領域において蛍光シグナルが強い(明るいエリア)ことを示す。
【0354】
図8は、バッチCのマウス1匹について、単離された臓器及び腫瘍(エクスビボ)について得られた結果を例示する。その他の臓器に比べて、腫瘍においてより強い蛍光シグナルが観察される。
【0355】
図8に関する定量化を図9に示す。
【0356】
結論として、化合物I-1について、実験により、化合物I-3が効率的なイメージング剤であることが示される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9