(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】画像を撮影する方法及び顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20221209BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20221209BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20221209BHJP
G02B 21/34 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B7/28 J
G02B21/06
G02B21/34
(21)【出願番号】P 2019570124
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066494
(87)【国際公開番号】W WO2018234419
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516125624
【氏名又は名称】ユーロイミューン・メディツィニシェ・ラボルディアグノシュティカ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】パンホフ,ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン‐エッガート,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】モーリン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ズンプ,ティルマン・ヨハネス
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0090176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 - 7/40
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料領域(2)の画像を撮影する方法であって、
少なくとも1つの対物レンズ(3)によって、レーザー光線(19、19a)を、少なくとも1つの境界面(59)を含む前記試料領域(2)に向けるステップであって、前記対物レンズは、
集束面(27、27b)にあり、前記対物レンズの光軸又は該光軸に対して平行な軸上にある集束点に
前記レーザー光線を結像する機能を果たすものである、向けるステップと、
前記対物レンズ(3)及び前記試料領域(2)を、前記対物レンズ(3)の前記光軸(13)に沿って、互いに対して複数の異なる相対変位位置に相対変位させるステップと、
各相対変位位置(Z)に関して、
前記境界面(59)において反射されて前記対物レンズ(3)を通過する前記レーザー光線の複数の強度値を
、顕微鏡カメラ(8)の検出面(29)の2次元部分領域(65)のピクセルによって検出するステップと、
各相対変位位置(Z)に関して、
個々の最高ピクセル強度として、前記部分領域(65)の
個々の前記ピクセルによってそれぞれ検出された複数の前記各強度値の各最高強度値を確定するステップと、
前記各最高強度値が前記各相対変位位置(Z)に割り当てられることにより、前記最高強度値の推移(67)を確定するステップと、
前記最高強度値の前記推移(67)の少なくとも1つの
極大値
に対応する前記相対変位位置から、基準相対変位位置(79)を確定するステップと、
前記基準相対変位位置における前記試料領域の少なくとも1つの画像を捕捉するステップと
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記レーザー光線(19)は、コリメートされた平行な光線束を有し、前記レーザー光線(19)の前記集束面は、前記対物レンズ(3)の焦点面(27)と一致する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対物レンズ(3)及び前記試料領域を、第1の距離分解能を用いて、相対距離を最大距離から最小距離まで減少させることによって、互いに対して相対変位させることにより、前記推移に複数の
極大値(73、75、77)が含まれるようにするステップと、
前記複数の
極大値(73、75、77)に基づいて、前記基準相対変位位置(79)を第1の基準相対変位位置として確定するステップと、
前記第1の距離分解能よりも高い第2の距離分解能で、第1の基準相対変位位置に向かって前記相対距離を増加させると同時に、前記各更なる相対変位位置における更なる最高強度値(81)を捕捉するステップと、
前記更なる最高強度値(81)に基づいて、極大値(82)の存在を検出するステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザー光線は、前記対物レンズに向かってコリメートされた平行な光線束(19)を有し、さらに、前記レーザー光線(19)の前記集束面は、前記対物レンズ(3)の焦点面(27)と一致し
ていることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザー光線は、前記対物レンズに向かって収束する光線束(19a)を有し、さらに、前記レーザー光線の前記集束面(27b)は、前記対物レンズの焦点面(27)と一致せず、
前記方法は、予め確定された所与の値だけ、前記相対距離を最終的な基準相対変位位置(85f)まで繰り返し増加させることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記対物レンズ(3)及び前記試料領域(2)を、前記光軸(13)に沿って、前記基準相対変位位置の上及び/又は下の最終的な各相対変位位置に、互いに対して相対変位させることと、
前記各最終的な相対変位位置における各画像を捕捉するとともに、前記各画像を記憶することと、
前記各画像に対する各フォーカスメトリックを確定するとともに、最良の前記フォーカスメトリックを有する各画像を選択することと、
を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザー光線(19)の直径は、前記対物レンズ(3)の開口全体が照明される寸法である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記部分領域は、前記検出器面の1/10よりも小さ
いか、又は前記検出器面の1/100よりも小さい、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対物レンズ(3)と前記検出面(29)との間の検出光線経路において、レンズ又はレンズ系(6)が配置され、該レンズ又は該レンズ系(6)は、前記対物レンズ(3)の焦点面(27)を前記検出面(29)に結像する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの境界面(57、59)は、空気に接触せず、
前記試料領域(2)は、有機試料(51)を含み、該有機試料(51)は、基板キャリア(45)上に載置され、液体物質(49)内に埋設され、カバーガラス(53)によって覆われ、
さらに、前記カバーガラスの上面(55)は、第1の境界面を形成し、
前記カバーガラスの下面(57)は、第2の境界面を形成し、
前記基板キャリア(45)の前記境界面(59)は、第3の境界面を形成する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記対物レンズ(3)と前記試料領域(2)との間の相対距離を、前記部分領域の前記ピクセルの強度値を捕捉しながら、最大距離を起点としてまず減少させ、
それにより、前記推移には、
前記第1の境界面に対応する第1の極大値(73)、
前記第2の境界面に対応する第2の極大値(75)、及び
前記第3の境界面に対応する第3の極大値(77)を含み、前記第3の極大値(77)に基づいて前記基準相対変位位置(79)を確定する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記基準相対変位位置は、
前記基板キャリア(45)の前記境界面(59)が形成する第3の境界面において反射されたレーザー光線が集束して、前記検出面(29)の前記部分領域(65)に結像する、相対変位位置(79)に対応し、
前記画像を撮影するために、前記基準相対変位位置(79)を、所与の値に基づいて変化又は補正するものである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザー光線(19)の供給源(10)と前記対物レンズ(3)との間に、前記対物レンズを通る前記レーザー光線(19)を反射させるために、ダイクロイック又は非ダイクロイックのビームスプリッタ(11、11a、11b)が配置される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ビームスプリッタ(11b)は、楔形状を有し、前記ビームスプリッタ(11b)の前面(91)及び背面(93)の平面が、
0.1度~1度である楔角(α)で交差し、
前記楔角(α)は、前記ビームスプリッタの前面及び背面における反射を重畳させることによって生じる干渉パターンが、前記対物レンズの開口全体にわたって少なくとも10個の最大値又は最小値を有するように選択されるか、又は、
少なくとも1つの更なる光学素子によって、楔形状を有する前記ビームスプリッタに起因する結像収差を補正するものである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
試料領域(2)の画像を撮影する顕微鏡システム(100)であって、
レーザー光線(19、19a)を生成するように構成されたレーザー源(10)と、
少なくとも1つの対物レンズ(3)であって、
該少なくとも1つの対物レンズ(3)は、前記レーザー光線(19、19a)を、少なくとも1つの境界面(59)を含む前記試料領域(2)に向けるように構成され、該対物レンズ(3)は、
集束面(27、27b)にあり、
該対物レンズの光軸又は該光軸に対して平行な軸上にある集束点に
前記レーザー光線(19、19a)を結像する機能を果たし、
該少なくとも1つの対物レンズ(3)は、前記光軸に沿って、前記試料領域(2)に対して、複数の異なる相対変位位置に変位可能である、少なくとも1つの対物レンズ(3)と、
検出面(29)を有する少なくとも1つの顕微鏡カメラ(8)であって、該顕微鏡カメラは、各相対変位位置(Z)に関して、前記境界面(59)において反射されて前記対物レンズを通過する前記レーザー光線の複数の強度値を
、顕微鏡カメラ(8)の検出面(29)の2次元部分領域(65)のピクセルによって検出する、少なくとも1つの顕微鏡カメラ(8)と、
少なくとも1つのプロセッサ(33)であって、
各相対変位位置に関して、
個々の最高ピクセル強度として、前記部分領域(65)の
個々の前記ピクセルによってそれぞれ検出された前記強度値の各最高強度値を確定し、
前記各最高強度値が前記各相対変位位置(Z)に割り当てられることにより、前記最高強度値の推移(81)を確定し、
前記最高強度値の推移(67)の少なくとも1つの
極大値(77)
に対応する前記相対変位位置から、基準相対変位位置(79)を確定し、
前記基準相対変位位置(79)に接近するために、駆動手段(15)を調整し、
さらに、前記顕微鏡カメラ又は更なる顕微鏡カメラを用いて、前記試料領域の画像を捕捉するように構成される、少なくとも1つのプロセッサ(33)と
を備えてなる顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料領域(Probenbereichs)の画像を撮影する方法、特に蛍光画像を撮影する方法に関し、さらに、試料領域の画像を撮影する顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光学機器のオートフォーカスの方法が記載されている。特許文献1では、測定光源及び対物レンズが、測定光源から発する実質的に平行な光線束(Strahlenbuendels)を観察対象物に結像し、反射像を生成するように設けられている。さらに、反射像からフォーカス位置を求め、対物レンズを位置決めするために好適な評価及び調整ユニットが設けられている。ここでは、正しいフォーカス位置までの距離に応じて直径が変化する同心円を伴って、画像が撮影される。
【0003】
特許文献2には、顕微鏡を試料に対して自動でフォーカスし、フォーカスされた試料の画像を撮影する方法及びシステムが開示されている。取得された測定値を分析し、いずれの測定値がピークを有するかを確定する。反射されたレーザー光線の測定値が、対物レンズの位置に対する顕微鏡の光軸に沿った基板の位置の関数としての最大強度を意味するピーク値として理解される。
【0004】
特許文献3には、3次元試料領域内にある物体を結像する方法及び光学装置が開示されている。特許文献3では、試料領域の深度プロファイルを、光学的コヒーレンス干渉計によって求め、物体点における反射に起因する深度プロファイルにおけるピークを認識し、ピークの光路長位置を確定し、それに基づいて、物体点の幾何学的経路長位置を計算する。最後に、顕微鏡は、幾何学的経路長位置に基づいて、物体を結像するためにフォーカスを合わせる。
【0005】
従来、顕微鏡画像は、様々な深度位置(Z位置)で撮影され、最適なフォーカス位置は、撮影画像の構造的鮮明さを評価することによって確定されていた。しかしながら、この方法は、比較的時間がかかるため、多数の試料を高スループットで処理することは困難である。
【0006】
特許文献4に記載の従来技術による解決策では、場合により平面的に拡張されたパターンを、反射境界面等の平面に投影する。次いで、反射されたパターンを、仮想的なマスク領域における画像捕捉ユニットを用いてピクセルごとに評価し、仮想的なマスク内の複数のピクセルの強度値(Intensitaetswerte)を統合することによって、対物レンズと境界面又は試料領域との間のフォーカスの尺度を導き出す。
【0007】
したがって、従来技術の方法及びシステムは、全ての条件下において、顕微鏡法、特に蛍光顕微鏡法における試料の迅速かつ確実なフォーカスを保証することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102008015885号公報
【文献】国際公開第2016/133787号公報
【文献】独国特許出願公開第102014002584号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0090176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、特に3次元試料領域に埋設された物体の迅速かつ確実なフォーカスを保証することができる、試料領域の画像を撮影する方法及び顕微鏡システムが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記要求は、試料領域の画像を撮影する方法又は顕微鏡システムに関する独立請求項の主題によって満たされる。従属請求項は、本発明の特定の実施形態を規定する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、試料領域の画像を撮影する方法であって、
少なくとも1つの対物レンズによって、レーザー光線を、少なくとも1つの境界面を含む試料領域に向けるステップであって、対物レンズは、レーザー光線を、集束面内にある集束点に結像する機能を果たし、集束面は、焦点面に対して平行であり、特に焦点面と一致し、集束点は、好ましくは対物レンズの光軸又は光軸に対して平行な軸上にあり、集束面は、更に好ましくは、対物レンズの光軸に対して垂直である、ステップと、
対物レンズ及び試料領域を、対物レンズの光軸に沿って、互いに対して複数の異なる相対変位位置に相対変位させるステップと、
各相対変位位置に関して、顕微鏡カメラの検出面の2次元部分領域のピクセルによって検出される、境界面において反射されて対物レンズを通過するレーザー光線の複数の強度値を捕捉するステップと、
各相対変位位置に関して、部分領域の検出された複数の各強度値の各最高強度値を確定するステップと、
各最高強度値が各相対変位位置に割り当てられることにより、最高強度値の推移を確定するステップと、
最高強度値の推移の少なくとも1つの極大値から、基準相対変位位置を確定するとともに、好ましくは基準相対変位位置に接近させるステップと、
好ましくは顕微鏡カメラの検出器面又は更なる顕微鏡カメラの検出器面の読取りによって、基準相対変位位置における試料領域の少なくとも1つの画像を捕捉するステップと
を含んでなる方法を提供する。
【0012】
以下、本発明に係る方法及び本発明に係る装置の1つ以上の利点が読み手に理解されるように、より詳細な説明を行う。
【0013】
対物レンズは、平行な光線経路又はコリメートされた平行な光線束として、レーザー光源に向いた対物レンズの光学的開口内へと入射するレーザー光線を、対物レンズの他方の側にある対物レンズの焦点面の一点に投影するように構成される。この点は、焦点とすることができ、又は、光線束が対物レンズの光軸を中心に正確に対称となっていない場合、焦点面において焦点からオフセットされた点となり得る。焦点面におけるちょうどこの点から、特に焦点から、対物レンズに再び入射するレーザー光線は、再び、開口側又は光学側で、レーザー源又は顕微鏡カメラに向かって平行な光線経路を形成する。
【0014】
したがって、例えば、レーザー光線がコリメートされた平行な光線束である場合、対物レンズは、レーザー光線を、その全体強度で、対物レンズの焦点面における一点、特に焦点に投影する。この点、特にこの焦点から対物レンズによって受光され、対物レンズの他の側において平行なコリメートされた光線経路へと集束する光線経路は、対物レンズの下流に配置されるレンズ、好ましくは円筒レンズによって、検出面又は顕微鏡カメラが配置される結像点に投影することができる。
【0015】
また、レーザー光線が平行な合成光線経路である場合、レーザー光線は、対物レンズによって焦点面の一点に投影され、この点は、焦点とすることができるか、又は焦点面において焦点からオフセットされた点とすることができる。これにより、レーザー光線の最大光学強度は、焦点面におけるこの点に存在する。したがって、この場合、又はこの例において、集束面と焦点面とは一致する。相対変位位置を変化させることで、試料領域の境界面がちょうど焦点面にくる場合、焦点面の点に投影されるレーザー光線は、再び対物レンズへと反射される。したがって、対物レンズ及び円筒レンズは、検出器面又は顕微鏡カメラにこの反射を結像する機能を果たす。したがって、検出器面の部分領域には、特に高い強度を有する少なくとも1つのピクセル又は少数のピクセルが存在する。これにより、部分領域において、特に有利な方法で、試料領域のフォーカスの尺度を得るために、部分領域内の最高強度値を簡単に考慮することができる。したがって、本明細書に記載のレーザー光線を使用することにより、部分領域のしばしば多数となる強度値を更に処理又はフィルタリングする必要はなく、対応する相対変位位置に対応する部分領域内の最高強度値がいずれであるかを確定するだけでよい。ここでは、いずれのピクセルが強度値の最大値を検出したかは重要ではないため、この方法は、特に高速となる。試料領域が対物レンズに対して別の相対変位位置に更に変位されると、レーザー光線の反射は、これまで焦点面における点及び特に焦点であった単一の点において起こるのではなく、試料領域又は境界面の平面的な領域で反射が起こる。したがって、これにより、レーザー光線の光学的強度は、レーザー光線が焦点面の単一の点のみで反射された場合よりも、部分領域のより大きな領域にわたって分散される。したがって、検出器面又は顕微鏡カメラ上の部分領域内にも、レーザー光線の光学的強度全体の合計を表す又は表すことができる強度値が生じる。ただし、この最高強度値は、レーザー光線が境界面によってちょうど焦点面の一点で反射される構成における最高強度値よりは小さくなる。したがって、部分領域又はそのピクセルを評価することによって、例えば絞りを用いて、反射パターンの正確なフィルタリング除去を考慮する必要はなく、各相対変位位置に対する最高強度値を評価することにより、特に高い空間分解能で、特に簡単かつ迅速なフォーカス又は基準相対変位位置の確定が可能になる。複数の境界面が存在する場合、基準相対変位位置を求めるために、最高強度値の推移を用いて、例えば第3の境界面を検出することができる。したがって、これにより、本方法の感度を高めることができ、深度方向における結像されるレーザー光線の広がりを、光学系の被写界深度と実質的に同じにすることができる。
【0016】
レーザー光線がレーザー光源から対物レンズの開口に向かって収束する場合、レーザー光線は、対物レンズの焦点面と一致しないが焦点面に対して平行な集束面にある集束点に集束する。この場合、集束面は、対物レンズの光軸に対して垂直に延在する。また、境界面におけるレーザー光線の反射を、上述のように、部分領域の最高強度値を観察することによって検出する場合、境界面は、集束面にあるが、対物レンズの焦点面ではなく、特に焦点面よりも対物レンズに対していくらか近くにある。対物レンズに入射するレーザー光線の収束角が既知であるために、集束面と焦点面との間のこのオフセットが既知である場合、このオフセットを、記憶された又は所与の値として用いて、焦点面に向かって試料領域の最終的なフォーカスをもたらすことができる。これは、最初に、最高強度値の推移の複数の最大値に基づいて、第1の比較的粗い距離分解能で基準相対変位位置を推定し、次に、相対変位を方向転換した後、対物レンズ及び試料領域を、もう一度、第2のより細かい距離分解能で互いに対して位置決め又は変位させる場合に特に有利であり得る。より高い距離分解能でのこの二度目の変位の間、推移の中の決定的な最大値を再度検出する場合、高い精度を有する最大値の存在は、二度目の変位中、少なくとも2つの連続する最高強度値が現在の変位方向において負の一次導関数を示す場合に初めて検出することができる。また、相対変位の間の方向転換を必要とすることなく、焦点面における試料領域の実際のフォーカスに向けて試料領域を対物レンズに対して最終的に位置合わせするために、集束面と焦点面との間の上述した既知の光学的オフセットを利用することができる。相対変位中に方向転換が行われる場合、対物レンズ及び/又は試料領域の機械的ガイド部材の位置合わせ公差により、対物レンズと試料領域との間の実際に所望される相対位置に誤差が出るような影響がもたらされる場合がある。そのような位置合わせ公差は、運動機構のバックラッシュと称することもある。集束面と焦点面とが一致しない本明細書に記載の変形形態によって、上述の方向転換が不要となり、それにより、位置合わせ公差の悪影響を回避することができる。
【0017】
一実施形態によれば、レーザー光線は、コリメートされた平行な光線束を含み、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点面と一致する。特に、集束点は、対物レンズの焦点と一致することが好ましい。特に、レーザー光線の断面直径は、対物レンズの開口と実質的に同じである。
【0018】
本願では、焦点面という用語は、焦点距離面という用語で呼ぶ場合もある。
【0019】
一実施形態によれば、提案される方法は、
第1の距離分解能を用いて、対物レンズと試料領域との間の相対距離を最大距離から最小距離まで減少させることによって、対物レンズ及び試料領域を互いに対して相対変位させることにより、推移に複数の最大値が含まれるようにするステップと、
複数の最大値に基づいて、基準相対変位位置を第1の基準相対変位位置として確定するステップと、
第1の距離分解能よりも高い第2の距離分解能で、第1の基準相対変位位置に向かって相対距離を増加させると同時に、各更なる相対変位位置における更なる最高強度値を捕捉するステップと、
更なる最高強度値に基づいて、極大値の存在を検出するステップと
を更に含む。
【0020】
一実施形態によれば、レーザー光線は、対物レンズに向かってコリメートされた平行な光線束を有し、さらに、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点面と一致する。この場合、更なる最高強度値に基づいて検出された極大値が存在する又は存在した相対変位位置を、最終的な基準相対変位位置として設定する。
【0021】
一実施形態によれば、レーザー光線は、対物レンズに向かって収束する光線束を有し、さらに、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点面と一致しない。この場合、予め確定された所与の値だけ、相対距離を最終的な基準相対変位位置まで繰り返し増加させる。したがって、集束面は、この実施形態では、対物レンズの焦点面とは一致せず、焦点面に対して平行である。集束面は、光軸に対して垂直に延在する。
【0022】
顕微鏡カメラ又は更なる顕微鏡カメラの検出面のピクセルを読み取る前に、レーザー光線の供給源を停止させることができ、試料の蛍光光線を励起するために、蛍光源を起動することができる。
【0023】
レーザー光線は、可視及び/又は不可視の波長域の電磁放射線(例えば、赤外線、紫外線)を含むことができる。
【0024】
本方法は、本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムによって実行することができる。
【0025】
試料領域は、2つの横方向に拡張されるとともに、それらの方向に垂直の深度方向に拡張されている、3次元に拡張された試料領域とすることができる。特に、試料領域内の特定の深度に、(生体)試料を配置することができ、この試料のフォーカスされた画像、特に蛍光画像が撮影される。したがって、この方法(及び顕微鏡システム)は、特に自己免疫診断において、免疫蛍光標本の評価に使用することができる。特に、この方法及び顕微鏡システムは、間接法免疫蛍光検査(IIFT)を補助することができる。この方法により、試料の迅速なフォーカスが必要とされる、検出される試料の迅速な処理を保証することができる。
【0026】
対物レンズは、対物レンズの光軸に沿って連続して配置することができる、1つ以上のレンズを含むことができる。対物レンズは、例として、10倍、20倍、又は例えば40倍の拡大率を提供し、例として、0.3~0.8の開口数を有することができる。画像を撮影するために最終的に使用される試料領域からの光は、可視光、例えば、緑色光、赤色光、及び/又は青色光を含み、特に、蛍光励起後の蛍光放射によって、試料領域から放射することができる。
【0027】
また、試料が顕微鏡の物体面において鮮明に結像される(深度)範囲、いわゆる被写界深度は、対物レンズの開口数NAに依存する。また、被写界深度twと、結像される光スペクトルの焦点波長λ0と、開口数NAとの間には、以下の関係がある。
tw=λ0/NA2
【0028】
被写界深度は、例えば、500nm~6000nm、特に700nm~1100nmとすることができる。本発明の実施形態は、対物レンズの被写界深度と実質的に同じ精度で基準相対変位位置を確定することができる。したがって、確実なフォーカスを保証することができる。
【0029】
対物レンズと試料領域とを相対変位させるために、対物レンズ及び/又は試料領域を変位させることができる。この場合、対物レンズと試料領域との間の距離が変化し、対物レンズと試料領域との相対移動が起こる。この方法は、プロセッサによって駆動手段を制御することによって行うことができ、駆動手段は、対物レンズ及び/又は試料領域の位置を変化又は変位させる。
【0030】
対物レンズと試料領域とを相対変位させる(又はZ方向、すなわち深度方向に沿って移動させる)ために、例えば、試料領域を、固定された対物レンズに対して移動させることができるか、又は、対物レンズを、固定された試料領域に対して(Z方向、すなわち深度方向において)移動させることができる。
【0031】
使用されるレーザー装置は、例えば、可視の赤色波長域の発光スペクトルを有することができる。特に、このレーザー光線は、試料領域の画像を撮影するように意図された波長に重なる波長を有することができる。例えば、レーザー光線の波長は、蛍光顕微鏡法において検出される発光スペクトルに重なることができる。したがって、一方では画像のフォーカス及び他方では画像の意図された撮影を補助するために、1つのみの(単一の)顕微鏡カメラを必要とすることが好ましい。レーザー光線は、例えば、ビームスプリッタを用いて、対物レンズの光線経路に結合することができる。レーザー光線の断面の大きさは、対物レンズの入射領域(又は開口若しくは瞳開口)の直径と実質的に同じとすることができることが好ましい。
【0032】
少なくとも1つの境界面は、例えば、平坦な境界面、例えば、固体物質と空気との間、固体物質と液体との間、又は固体物質と(有機)試料との間の境界面とすることができる。少なくとも1つの境界面の存在により、フォーカスが容易になり、又はフォーカスの信頼性を高めることができる。
【0033】
従来、顕微鏡カメラ又は更なる顕微鏡カメラは、画像を撮影するために設けることができ、ここでは、画像は、顕微鏡カメラの検出面のピクセルの強度値の合算によって形成することができる。しかし、フォーカス(特に基準相対変位位置の確定)には、顕微鏡カメラの検出面全体の2次元部分領域のピクセルのみが必要とされ、すなわち読み取られ、部分領域外の検出面の残りのピクセルを時間のかかる方法で読み取る必要はない。これにより、この方法は迅速に行うことができる。2次元部分領域は、例えば、2440×2048ピクセルの好ましい検出器面において16×16ピクセルとなるサイズを有することができ、これは、特に、検出器面の約0.005%に相当する。
【0034】
対物レンズの物体側焦点面の一点、特に焦点から異なる方向に発するレーザー光線は、対物レンズによって屈折して平行な光線になり、そのため、焦点面の視点からは、対物レンズの後ろ(又は光路の下流)に、平行な光線束が存在する。対物レンズの下流にあるレンズ(例えば、円筒レンズ等)は、この更なるレンズの像側の焦点面における一点に平行光線を集める。また、この更なるレンズの像側の焦点面に、顕微鏡カメラの検出面がある。検出面は、例えば、感光セル、例えばCCD又はCMOS感光セルのアレイ又は視野(特に、2次元視野)とすることができる。
【0035】
部分領域の所定の面積の大きさは、実質的に、対物レンズの物体側焦点面における特定の点から異なる方向に放射される光のみが、所定の面積のピクセルによって検出されることを確実にするように、特に選択することができることが好ましい。したがって、対物レンズの物体面以外からの光を検出から除外することができる。所定の面積の大きさは、例えば、数平方マイクロメートルとすることができる。
【0036】
対物レンズと試料領域との間の距離を、個別の相対変位位置に沿って深度方向に変化させる間、同時に、2次元部分領域のピクセルの強度値が読み取られる。次いで、各相対変位位置(すなわち、対物レンズと試料領域との間の各距離)に関して、ピクセルの強度値の最高強度値が確定される。したがって、各相対変位位置に関して、部分領域のただ1つのピクセルの値が最高強度値として確定される。
【0037】
このようにして確定された各最高強度値は、適切な相対変位位置(すなわち、対物レンズと試料領域との間の距離)に割り当てられる。したがって、多数の異なる相対変位位置に関して多数の最高強度値が確定される。ここでは、異なる相対変位位置に関して得られる推移は、複数の極大値又は大域的最大値を含むことができる。極大値及びまた大域的最大値は、境界面のうちの1つにおけるレーザー光線の反射を各々示すことができる。また、基準相対変位位置は、例えば、対物レンズと試料領域との間の距離に対応することができ、この距離において、レーザー光線は、試料領域内の特定の境界面に、特に、以降はバイオチップとも称する基板キャリア(特にバイオチップの表面)と被覆媒体(又は埋設媒体)との間の境界面に集束する。また、基準相対変位位置を求めることにより、画像を撮影するための相対変位位置を設定することが容易になり得る。例えば、画像は、基準相対変位位置の設定において撮影することができる。次いで、基準相対変位位置の周りの位置において、例えば、対物レンズと試料領域との間の距離がいくらか(数マイクロメートル)大きくなる(及び/又は小さくなる)他の相対変位位置において、更なる画像を撮影することができることが好ましい。試料領域内に配置された試料の性質及び幾何形状に関する更なる知識により、画像を撮影する相対変位位置を、基準相対変位位置を起点として適切に調整することを容易にすることができる。
【0038】
基準相対変位位置を確定するために、対物レンズ及び試料領域の相対変位の間に、多数の部分画像を撮影することができ、各最高強度値に関する評価を連続的に行うことができることが好ましい。この場合、例えば、毎秒数千の部分画像を撮影することができる。露光時間は、マイクロ秒領域とすることができる。2つの部分画像間の深度方向の段階幅は、200nm~1000nm、特に約500nmとすることができる。2つの部分画像間の段階幅は、顕微鏡の被写界深度よりも大きくてはならない。
【0039】
これにより、画像を撮影するための確実なフォーカスを保証することができ、迅速なフォーカス確定に起因する高スループットを保証することができる。
【0040】
一実施形態によれば、本方法は、
対物レンズ及び試料領域を、光軸に沿って、基準相対変位位置又は最終的な基準相対変位位置の上及び/又は下の各最終的な相対変位位置に、互いに対して相対変位させるステップと、
第1の顕微鏡カメラ又は更なる顕微鏡カメラを用いて、各最終的な相対変位位置における各画像を捕捉するとともに、各画像を記憶するステップと、
各画像に対して各フォーカスメトリック(Fokusmetriken)を確定するステップと、
最良のフォーカスメトリックを有する画像を選択するステップと
を更に含む。最良のフォーカスメトリックを有しない他の画像は、破棄されることが好ましい。これにより、画像が直接記憶されるため、ユーザが観察したり調整を行ったりする必要なく、フォーカスが最適となる画像を自動的に取得することが可能になる。また、本方法の最後に、顕微鏡を、対物レンズ及び試料領域が互いに対して最適に位置合わせされる動作状態にする必要はなく、画像は、後の時点でメモリから呼び出すことができる。ここで述べたフォーカスメトリックは、以下の演算子、すなわち、マー-ヒルドレス演算子(Marr-Hildreth-Operator)、LoG(Laplacian-of-Gaussian)、及びDoG(Difference-of-Gaussian)のうちの1つ以上に基づくことができることが好ましい。
【0041】
一実施形態によれば、レーザー光線の直径は、対物レンズの開口全体を照明するような寸法になっている。
【0042】
一実施形態によれば、部分領域は、検出器面の1/10よりも小さく、特に検出器面の1/100よりも小さい。好ましくは、部分領域は、50×50ピクセルよりも小さく、特に20×20ピクセルよりも小さい。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、部分領域が、350μm2~6400μm2、特に750μm2~1300μm2の大きさを有し、特に16×16ピクセルを形成するように構成される。ここで、検出面は、特に、部分領域の大きさの10倍~100倍の大きさを有する。選択される部分領域が小さいほど、方法をより迅速に実行することができる。
【0044】
一実施形態によれば、対物レンズと検出面との間の検出光線経路には、対物レンズの焦点面を検出面に結像するレンズ、特に円筒レンズが配置される。対物レンズの後ろ(又は光路の下流)には、平行な光線経路が存在することができ、平行光線は、円筒レンズによって像側の焦点面に結像することができる。したがって、円筒レンズに対する対物レンズの変位は、円筒レンズの像側の焦点面に平行光線を結像するのに影響を与えない。したがって、対物レンズの焦点面における特定の共通の点、特に焦点から異なる方向に発する光線のみが、検出面の部分領域内の特定の点に到達する。したがって、所定の面積の大きさを適切に選択することにより、散乱光(対物レンズの物体側の焦点面における一点以外から異なる方向に発する)を、フォーカスのための検出から除外することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、少なくとも1つの境界面、特に2つの境界面が、空気に接触しないように構成され、試料領域は、特に有機試料を含み、有機試料は、バイオチップに載置され、液体物質に埋設され、カバーガラスによって覆われ、さらに、特に、カバーガラスの上面は、第1の境界面を形成し、カバーガラスの下面は、第2の境界面を形成し、バイオチップの表面は、第3の境界面を形成する。有機試料は、例として、例えば染色された及び/又は1つ以上の蛍光マーカー若しくは蛍光分子と混合された組織学的試料を含むことができる。蛍光マーカー又は蛍光分子は、有機試料における所定の位置又は受容体又は抗原に結び付くことができる。液体物質は、例えばグリセリンを含むことができる。有機試料は、例えば、湿った有機試料である場合があり、この場合、試料が乾燥することを防ぐことができる。本発明の実施形態は、液体内に(3次元的に、すなわち、実質的に全ての側が)埋設された有機試料を結像することを可能にする。境界面は、境界面の上下の屈折率の変化によって特徴付けることができる。例えば、液体媒体と固体媒体との間の境界面では、空気から固体媒体、例えばガラスへの境界面の場合よりも、屈折率の変化が少ない場合がある。境界面における屈折率の変化が小さいほど、境界面における反射率も小さくなり得る。本発明に係る方法を用いると、第3の境界面における反射が比較的少ないにもかかわらず、この反射を検出することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、対物レンズと試料領域との間の相対距離を、部分領域のピクセルの強度値を捕捉しながら、最大距離を起点としてまず減少させ、それにより、特に、最初に、第1の境界面からのレーザー光線の反射による第1の極大値が生じ、その後、第2の境界面からのレーザー光線の反射による第2の極大値が生じ、最後に、第3の境界面からのレーザー光線の反射による第3の極大値が生じることを検出するように構成される。第1の極大値は、相対変位位置に応じた最大値の推移の大域的最大値とすることができる。3つの最大値(極大値)の全てが、相対変位位置に応じた最大値の推移の中で検出されるため、フォーカスの信頼性を向上することができる。最大値(極大値)は、相対変位位置に応じた最大値の推移内で、例えば、ピクセルの強度の所定の閾値を超えた場合に確定することができる。閾値は、例えば、事前に検出された最大値(極大値)から導出することができる。第1の極大値は、第2の極大値よりも大きいものとすることができ、第2の極大値は、さらに、第3の極大値よりも大きいか、又は実質的に第3の極大値と同じ大きさとすることができる。この一連の最大値が検出される場合、境界面の識別の信頼性、ひいてはフォーカスの確定を向上することができる。この場合、基準相対変位位置は、第3の最大値に基づいて確定される。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、基準相対変位位置が、第3の境界面、特にバイオチップの表面において反射するレーザー光線が検出面の部分領域に集束して結像される相対変位位置に対応するように構成される。特に、画像を撮影する相対変位位置は、試料に関する既知の知識から、基準相対変位位置を起点として調整される。例えば、(バイオチップ上の)試料の厚さは、少なくともおおよそ既知とすることができ、所与の値として設定することができる。試料タイプ又は基板タイプを好適なものにするために、例えば、対物レンズと試料領域との間の距離を、基準相対変位位置(バイオチップの表面が対物レンズの焦点面にある)を起点として、所与の値に応じて、例えば、数マイクロメートル(試料の既知の厚さによる)だけ、変更又は補正することができる。そして、補正された基準相対変位位置の周りにある変位位置において、更に複数の画像を撮影することができることが好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、レーザー光線の供給源と対物レンズとの間に、対物レンズを通るレーザー光線を反射させるために、ダイクロイック又は非ダイクロイックのビームスプリッタが配置され、特に、レーザー光線の反射率が5%~20%であるように構成される。したがって、レーザー光線は、対物レンズの光線経路に簡単な方法で結合することができる。したがって、レーザー光線の反射率が比較的小さい場合、例えば、実質的に10%である場合、画像の撮影のために意図された光の僅かな部分のみを、顕微鏡カメラによる検出から除外することもできる。別の実施形態において、試料領域の画像が撮影される場合、ビームスプリッタを光線経路から排除することもできる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、ビームスプリッタが楔形状を有するように構成され、ビームスプリッタの前面及び背面の平面が、特に、例えば0.1度~1度である楔角で切断され、楔角及び部分領域の大きさは、特に、ビームスプリッタの前面又は背面から反射した後、及び試料領域から反射した後のレーザー光線の反射のみが、部分領域に結像されるように選択される。楔形状を有するビームスプリッタにより、平面プレートとして形成されるビームスプリッタでは前面及び背面における反射によって発生する可能性がある干渉が生じることを回避することができる。フォーカスのために、特に、楔形状のビームスプリッタの前面において反射するレーザー光を用いることができる。楔形状のビームスプリッタの背面において反射するレーザー光は、対物レンズの物体側焦点面において、横方向の異なる場所に集束する。顕微鏡カメラの検出面の2次元部分領域の大きさ及び位置を好適に選択することによって、光線形状のビームスプリッタにおいて反射するこのレーザー光線を、検出から除外することができる。したがって、本方法は、更に向上させることができる。部分領域は、検出器面の全てのピクセルを含むことが好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、基準相対変位位置を確定するために、部分領域のピクセルの強度値を、対物レンズ及び試料領域の相対変位の間、1秒間に1000回~10000回読み取るように構成される。
【0051】
試料領域の画像を撮影する方法に関連して個々に又は任意の組合せで記載される特徴は、本発明の実施形態によれば、試料領域の画像を撮影する顕微鏡システムにも個々に又は任意の組合せで使用することができることが理解されたい。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、試料領域の画像を撮影する顕微鏡システムであって、
レーザー光線を生成するように構成されたレーザー源と、
レーザー光線を、少なくとも1つの境界面を含む試料領域に向けるように構成された少なくとも1つの対物レンズであって、対物レンズは、さらに、レーザー光線を、焦点面に対して平行であり、好ましくは焦点面と一致する集束面内にあり、好ましくは対物レンズの光軸又は光軸に対して平行な軸上にある集束点に結像する機能を果たし、さらに、対物レンズは、光軸に沿って、試料領域に対して複数の異なる相対変位位置に変位可能である、少なくとも1つの対物レンズと、
さらに、検出面を有する少なくとも1つの顕微鏡カメラであって、顕微鏡カメラは、各相対変位位置に関して、境界面において反射されて対物レンズを通過するレーザー光線の複数の強度値を捕捉するように構成され、強度値は、顕微鏡カメラの検出面の2次元部分領域のピクセルによって検出される、少なくとも1つの顕微鏡カメラと、
少なくとも1つのプロセッサであって、各相対変位位置に関して、部分領域の捕捉された強度値の各最高強度値を確定するように構成され、さらに、各最高強度値が各相対変位位置に割り当てられることにより、最高強度値の推移を確定するように構成され、さらに、最高強度値の推移(67)の少なくとも1つの極大値から基準相対変位位置を確定するように構成され、さらに、基準相対変位位置に接近するために駆動手段(15)を調整するように構成され、さらに、顕微鏡カメラ又は更なる顕微鏡カメラによって、試料領域の画像を捕捉するように構成される、少なくとも1つのプロセッサと
を備えてなる顕微鏡システムを提供する。
【0053】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。本発明は、記載又は図示の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムの概略側面図である。
【
図2】
図1に示されている顕微鏡システムを使用して画像を撮影することができる試料を有する試料領域の概略側面図又は側面断面図である。
【
図3】顕微鏡カメラによって撮影された画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4a、
図4bおよび
図4cは、異なる相対変位位置において記録された部分画像を有する、顕微鏡カメラの検出面の部分領域の一例を示す図である。
図4dは、部分領域内の所定の面積の一例を示す図である。
【
図5】方法の一実施形態に従って確定される、相対変位位置に応じた最高強度値の推移を示す図である。
【
図6】方法の一実施形態に従って確定される、相対変位位置に応じた最大値の推移における極大値の更なる一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムの、プレート形状のビームスプリッタの領域の概略側面断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムの一部の、楔形状のビームスプリッタの領域の概略側面断面図である。
【
図9】対物レンズの焦点面と一致しない集束面にレーザー光線が集束する、本発明に係る顕微鏡システムの実施形態を示す図である。
【
図10】
図10aおよび
図10bは、異なる光学面における境界面でのレーザー光線の反射を示す図である。
【
図11】
図11a、
図11b、
図11cおよび
図11dは、本発明に係る方法の一実施形態を実施する場合の試料領域の異なる位置を示す図であり、ここでは、レーザー光線の集束面が対物レンズの焦点面に対してオフセットされている。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1の概略側面断面図に示されている顕微鏡システム100は、対物レンズ3を備え、対物レンズ3は、対物レンズの光軸13に沿って試料領域2に対して変位可能である。通常、対物レンズ3及び試料領域2は、光軸13に沿って互いに対して相対的に変位可能とすることができる。このために、対物レンズ3が固定されている一方で、顕微鏡テーブル1(又は対物レンズ3)を矢印方向17(すなわち、Z方向又は鉛直方向)に沿って変位させるか、又は、顕微鏡テーブル1が固定されている一方で、対物レンズを変位させるように構成された、駆動手段15が設けられる。顕微鏡システム100は、対物レンズ3を通して試料領域2に向けられるレーザー光線19を生成するように構成されたレーザー装置10を更に備える。レーザー光源又はレーザー装置10は、コリメート光学系10aを備え、コリメート光学系10aによって、レーザー光線を、平行なコリメートされた光線束へと形成することができる。コリメート光学系10aは、レーザー光線を、収束した光線束として形成するために調整可能であることが好ましい。
図2に関して以下で更に説明するように、試料領域は、少なくとも1つの境界面を含む。レーザー光線19を対物レンズ3に通して導くために、ビームスプリッタ11が更に設けられる。対物レンズ3は、レーザー光線を集束点に結像する機能を果たす。集束点は、対物レンズの光軸又はこの光軸に対して平行な軸上にあり、かつ集束面内にある。集束面は、対物レンズの焦点面に対して平行であり、好ましくは焦点面と一致する。集束面は、対物レンズ3の光軸に対して垂直に延在する。
【0056】
一実施形態において、レーザー光線19の集束面は、対物レンズの焦点面と一致する。特に、集束点は、対物レンズの焦点と一致することが好ましい。すなわち、集束点は、焦点面内にあることが好ましい。この場合、レーザー光線19は、
図1に示されているように、コリメートされた平行な光線束を有することが好ましい。レーザー光線19の断面直径dは、ここでは、レーザー光線19が対物レンズ3に入射する位置における対物レンズ3の開口と実質的に同じであることが好ましい。換言すれば、レーザー光線19の直径dは、レーザー光線19が対物レンズ3に入射する位置における対物レンズ3の開口全体を照明するような寸法となっている。
【0057】
更なる一実施形態において、
図9に関して更に後述するように、レーザー光線は、対物レンズに向かって収束する光線束を有する。この場合、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点面とは一致せず、特に、集束点は、対物レンズの焦点と一致しないことが好ましい。この場合、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点面よりも、対物レンズに対する距離が小さいことが好ましい。ただし、ここでも、集束面は、対物レンズ3の光軸に対して垂直に延在する。集束面は、ここでも、焦点面に対して平行に延在する。
【0058】
図1の顕微鏡システム100は、検出面29を有する少なくとも1つの顕微鏡カメラ8を更に備える。顕微鏡カメラ8は、検出面の2次元部分領域のピクセルによって検出される、試料領域2から反射されて対物レンズ3を通過するレーザー光線19の強度値を捕捉するように構成される。ここで
図1に示されている顕微鏡システムの実施形態100において、対物レンズ3及び円筒レンズ6を通過した赤色光を偏向するために、顕微鏡カメラ8に、赤色成分を有する光を反射するフィルタセット7が設けられる。このために、赤緑チャネル分離(Rot-Gruen-Kanaltrennung)を行うフィルタセット7が設けられる。特に、フィルタセット7は、半透性ミラー21及び赤色フィルタ23を備える。赤色フィルタ23は、赤色波長帯域外の波長を除去し、所望の赤色帯域の波長のみを顕微鏡カメラ8の検出面29に入射させるようになっている。
【0059】
フィルタセット7は、所望の緑色帯域のみを、好ましくは存在する第2の顕微鏡カメラ9へと通過させる緑色フィルタ25を更に備えることが好ましい。第2の顕微鏡カメラ9は任意のものであり、他の実施形態では、単一の顕微鏡カメラのみを設ければよい。フィルタセット7も任意であり、他の実施形態ではなくてもよい。これらの実施形態では、第2の顕微鏡カメラ9の代わりに顕微鏡カメラ8を、光軸13に沿って配置することができる。ただし、特定の蛍光観察では、異なる2つの顕微鏡カメラ又は検出チャネルによって、複数の蛍光体の蛍光を別々に撮影することが有利であり得る。
【0060】
顕微鏡システムは、光線経路において対物レンズ3と顕微鏡カメラ8との間に配置され、対物レンズ3とともに対物レンズ3の焦点面27を顕微鏡カメラ8の検出面29に結像する、(
図1に概略的に示されている)レンズ6、特に円筒レンズ、又はレンズ系6を更に備える。特に、対物レンズ及びレンズ6は、対物レンズの焦点面の焦点を、検出面29が存在する像面の像点に結像する機能を果たす光学系をともに形成する。顕微鏡カメラ8の検出面29は、レンズ6の焦点面31にある。
【0061】
システム100は、各相対変位位置に関して、境界面において反射されて対物レンズを通過するレーザー光線の複数の強度値を捕捉することができる。ここでは、顕微鏡カメラ8の検出面29の2次元部分領域のピクセルの強度値が検出される。
【0062】
顕微鏡システム100は、各相対変位位置に関して、部分領域65の捕捉される強度値の各最高強度値を確定するように構成されたプロセッサ33を更に備える。このようにして確定された最高強度値は、対応する相対変位位置に割り当てられ、そうした各相対変位位置に対する各最高強度値から、最高強度値の推移が確定されるようになっている。そして、最高強度値の推移の特に少なくとも1つの極大値から、基準相対変位位置が確定される。ここで、プロセッサは、制御ユニット37を使用して、基準相対変位位置に接近するために駆動手段15を制御する。さらに、プロセッサ33は、顕微鏡カメラ8又は更なる顕微鏡カメラ9によって、試料領域の画像を捕捉する。ここで、プロセッサ33は、制御装置37に要求信号38を送信し、Z方向の特定の位置に調整する要求を出す。
【0063】
このために、例えばコンピュータ内に備えることができるプロセッサ33は、顕微鏡カメラ8と通信接続し、特に赤色チャネルにおける、検出面29の部分領域のピクセルの強度の強度信号35を捕捉する又は読み取る。また、このカメラ8を介して、特に赤色チャネルにおける試料領域の画像を捕捉するために、プロセッサ33は、検出面29のピクセルの強度の強度信号35を捕捉する又は読み取ることができる。
【0064】
プロセッサ33は、特に緑色チャネルにおける、好ましくは検出面29aのピクセルの強度の強度信号35aを読み取り、試料領域の画像を捕捉するために、更なる顕微鏡カメラ9と更に通信接続することが好ましい。
【0065】
顕微鏡システム100は、制御ユニット又は制御装置37を更に備え、制御ユニット又は制御装置37は、同様に、プロセッサ33に接続され(又はプロセッサを備え)、顕微鏡テーブル1(又は対物レンズ3)を変位させるように、制御信号39によって駆動部15を制御するように構成される。さらに、独立してZ位置(すなわち、相対変位位置)を測定し、制御装置37と通信する測定システムMSを設けることができる。
【0066】
したがって、試料領域2の画像を撮影するために、基準相対変位位置に基づいて、画像を撮影する相対変位位置を確定して調整し、最終的に、顕微鏡カメラ8又は顕微鏡カメラ9によって画像を撮影する。
【0067】
図2の概略側面断面図においてより大きく詳細が示されているように、試料領域2は、バイオチップが埋め込まれたスライドを備える。試料領域2は、凹部43を有するプレート形状の構造を有するスライド41を備える。スライド41の凹部43には、バイオチップ45が配置され、接着剤47によってスライド41に取り付けられる。バイオチップ45の周りでは、凹部43内にグリセリン49が充填される。バイオチップ45上には、(生体)試料51が配置される。したがって、試料51は、グリセリン49内に埋設される。カバーガラス53は、凹部43及び凹部43内にあるグリセリン49に囲まれた試料51を覆う。カバーガラス53は、第1の境界面を形成する上面55と、第2の境界面を形成する下面57とを有する。バイオチップ45の表面59は、第3の境界面を形成する。特に、この第3の境界面59は、本発明の一実施形態に係るフォーカス方法において確定される。
【0068】
レーザー光線19が対物レンズ3によってバイオチップ45の表面59(すなわち、第3の境界面)に集束するとき、基準相対変位位置(対物レンズ3と試料領域2との間の相対的な垂直距離)が得られる。この基準相対変位位置が見つかると、試料51が、例えば可視光によって照明されるか又は好適な蛍光励起光によって照明される場合、顕微鏡カメラ8の検出面29の好ましくは全体の読取りによって、1つ以上の画像を撮影することができる。代替的に、ここでは、カメラ9の検出面29aが使用される。
【0069】
図1に示されている実施形態において、相対変位位置(対物レンズ3と試料領域2との間の距離)を変化させるために、対物レンズ3が固定されている一方で、顕微鏡テーブル1が鉛直に変位される。他の実施形態において、顕微鏡テーブル1を固定しておくことができる一方で、対物レンズ3を鉛直に変位させることができる。
【0070】
試料51(例えば、蛍光体と混合することができる)の蛍光を励起するために、好適な、例えば青色の発光スペクトルの励起光201を生成する光源4(例えば、LED)が用いられる。蛍光フィルタセット5を介して、励起光及び蛍光のスペクトル分離が行われる。対物レンズ3及び円筒レンズ6によって、物体面27に放射される蛍光が、拡大されて双方の顕微鏡カメラ8、9に結像される。蛍光の光線は、対物レンズ3と円筒レンズ6との間で平行に進む。したがって、対物レンズ3と円筒レンズ6との間の空間は、「無限空間」とも称される。このために、蛍光フィルタセット5は、蛍光励起光201を反射する一方で、蛍光は実質的に反射せずに通過させることができる、ダイクロイックミラー61を備えることができる。
【0071】
撮像の前に迅速なフォーカスを行うために、レーザー及びカメラに基づくシステムを用いて、顕微鏡撮影前の試料を光学的に測定する。ここでは、バイオチップの表面のピント位置(Schaerfenposition)を確定するために、例えば、レーザー装置10の可視赤色発光スペクトルを有する光を使用し、その光を、ビームスプリッタプレート11を用いて対物レンズ3の光軸13に結合する。この場合、顕微鏡の無限空間(すなわち、光線が互いに平行に進む部分)において結合を行うことができる。ここで、レーザー光線19は、図示されていない光学系によって、平行な光線束19へと形成される。この実施形態では、レーザー光線は、コリメートされた平行な光線束を有する。一実施形態において、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点距離面と一致する。レーザー光線の断面直径は、対物レンズの開口と実質的に同じであることが好ましい。
【0072】
レーザー光線19は、蛍光フィルタセット5を透過し、対物レンズ3によって顕微鏡システム100の物体面27に集束する。光学的境界面が対物レンズ3のフォーカス面27にある場合、レーザー光線19の点形状の反射が生じ、対物レンズ3及び円筒レンズ6を通して、顕微鏡カメラ8に、特に顕微鏡カメラ8の検出面29に結像される。レーザー光線19の反射は、カメラの画像における点形状の信号として現れ、その強度は、スライドの材料における境界面の移行部に依存する。
【0073】
図3は、顕微鏡カメラ8の検出面29全体によって撮影されるような、点形状のレーザー反射の全体画像を示している。顕微鏡カメラ8によって記録された全体画像63は、例えば、1024×1024ピクセルである。
【0074】
基準相対変位位置(すなわち、バイオチップ45の表面59が対物レンズ3の焦点面27に配置される位置)を確定する方法において、対物レンズ3と試料領域2との間の距離又は相対変位位置を変化させながら、顕微鏡カメラ8の検出面29全体のピクセルの部分領域のみを読み取る。
【0075】
さらに、
図4a、
図4b、及び
図4cは、検出面29の例示的な部分領域65a、65b、65cを示し、また、それらの部分領域65a、65b、65c内に含まれるピクセルによって検出される強度を、異なる相対変位位置に関するレーザー反射の画像のグレー値として示している。部分領域65a、65b、65cは、例えば、16×16ピクセルで形成することができる。ここで、
図4a、
図4b、及び
図4cは、対物レンズ3と試料領域2との間の相対距離に関して、z=-0.5μm、z=0μm、及びz=+0.5μmの場合に生じる部分画像を示している。バイオチップ45の表面59が対物レンズの焦点面27に配置されると、z=0μmの場合の確定すべき基準相対変位位置が得られる。また、各最高強度値G
maxも示されている。対物レンズのフォーカス面がスライドにおける対応する境界面から離れる場合(
図4a、
図4cを参照)、レーザー信号は、減衰して又は拡大して結像される。
図4a、
図4b、及び
図4cから、約±500nmの変位の場合で既に個々のピクセルの出力が著しく低下し、すなわち、ちょうど基準相対変位位置をとる場合、すなわち
図4bの場合に、部分領域にわたる最高ピクセル強度が最大となることが明らかである。本明細書に記載のシステムを使用することにより、対物レンズの焦点面の焦点にレーザー光線を集束させることで、z位置の特に精密な空間分解能を得ることができる。平面的に広がった全体のパターンが部分領域の複数のピクセルに投影される場合、このパターンは、理想的な集束位置において、ここで用いられるレーザー光線よりも空間的に大きな広がりも有するため、Z方向の空間分解能がより粗く又はより低い精度にもなり得る。さらに、そのようなパターン投影では、本発明に係る方法において可能であるように、部分領域の個々の最高ピクセル強度をフォーカスの尺度として考慮するだけでは不十分であり、複数のピクセルを統合しなければならず、複数のピクセルの共通の分析によって、フォーカスの尺度として平面パターンに関してフォーカスを確定しなければならない。これは、本発明に従って部分領域の個々のピクセルの最高強度を考慮するよりも明らかに時間がかかる。
【0076】
バイオチップ表面のフォーカス位置(すなわち、バイオチップ45の表面59が対物レンズ3の焦点面27内にある、対物レンズ3と試料領域2との間の相対距離)を確定するため、好ましくは第1の距離分解能又は空間分解能で、顕微鏡テーブル1をZ方向17において顕微鏡システム100のフォーカス面27を通して動かす。これは、Z方向にモータ駆動される対物レンズマウントを用いて、又は顕微鏡テーブル1の移動によって達成することができる。フォーカスの確定のために、顕微鏡カメラ8による距離分解能又は空間分解能に対応する画像捕捉レートに対するレーザー反射の強度推移がプロットされる。可能な最高画像レートを達成することができるように、僅かな部分領域(例えば、
図4a、
図4b、
図4cに示されている部分領域65)のみを読み取り、プロセッサ33に送信する。例えば、部分領域は、16×16ピクセルを有することができ、それにより、1秒あたり数千の画像、例えば約3000の画像という画像捕捉レートが達成可能である。
【0077】
図4dは、例として、好ましくは使用される所定の面積66を示しており、この面積66において、部分領域(例えば、65a、65b、65c)にわたる最大値を求めるために、1つ以上のピクセルの強度値が捕捉及び評価される。所定の面積66は、個々のピクセルの面積にちょうど対応することができるか、又は、所定の面積66をカバーするために、複数のピクセルをまとめることができる。
【0078】
特定の相対距離(相対変位位置)に関してプロットされた部分画像の各々について、最高ピクセルグレー値又は最高強度値を求めることができる。制御装置37において要求信号28が認識されることによって、プロセッサ33は、カメラデータ又は強度値を対応する相対変位位置に関連付け、さらに、基準相対変位位置を確定することができる。
【0079】
図5は、相対変位位置に応じた(各相対変位位置に対する)所定の最高強度値の推移67の一例を、座標システムにおける曲線67として示している。横座標69には、相対変位位置(Z位置)がプロットされ、縦座標71には、対応する相対変位位置での部分領域における各最高強度値がプロットされる。最低Z値は、ここでは、試料領域が対物レンズから最も遠くなる位置を示し、最高Z値は、ここでは、試料領域が対物レンズに最も近くなる位置を示す。まず、対物レンズと試料領域との間の相対距離を、最大距離から最小距離まで第1の距離分解能で減少させることによって、対物レンズ及び試料領域を互いに対して相対変位させる。ここでは、複数の最大値を含む最高強度値の推移が確定される。この推移には、特に、推移の中の第1の極大値73と、その後の第2の極大値75と、最後の第3の極大値77とが含まれる。
【0080】
曲線67は、
図2に示されているように試料領域の幾何形状に基づく特徴的な信号パターン(「オートフォーカス信号」)を示している。試料領域2の構造が既知であるので、信号推移67から、バイオチップ45のZ位置、特にバイオチップ45の表面59を確定することができる。
【0081】
曲線67(オートフォーカス信号)は、第1の境界面55(カバーガラス53の上面)におけるレーザー光線19の反射によって生じる第1の最大値73を含む。さらに、曲線67は、カバーガラス53の下面57(第2の境界面)からのレーザー光線19の反射によって生じる第2の最大値75を含む。最後に、曲線67は、バイオチップ45の表面59(第3の境界面)からのレーザー光線19の反射によって生じる第3の最大値77を含む。ここで、バイオチップ表面59のフォーカス位置又は基準相対変位位置は、第3の信号最大値77のZ位置79の確定によって得られる。
【0082】
続いて、マイクロコントローラ又は制御装置37と、対物レンズ3を変位させる駆動手段とを用いて、対物レンズ3は、対物レンズと試料領域との間の距離を広げながら、求められたフォーカス位置又は基準相対変位位置の方向に、再び引き返すことができる。これは、特に、第1の距離分解能よりも高い、すなわち細かい第2の距離分解能を用いて行われる。ここでは、移動の長さは、Z方向における動きと同時に監視及び評価されるオートフォーカス信号によって制御する。この場合、各更なる相対変位位置における各更なる最高強度値を確定し、更なる強度値に基づいて
図6の最大値82の存在を検出する。レーザー光線が、対物レンズに向かってコリメートされた平行な光線束を有し、さらに、レーザー光線の集束面が対物レンズの焦点面に一致する場合、相対変位位置は、更なる最高強度値に基づいて検出された極大値が存在する又は存在した最終的な基準相対変位位置へと調整されることが好ましい。
【0083】
これに関して、
図6は、バイオチップ45の表面59からのレーザー光線19の反射によって生じるオートフォーカス信号、すなわち、推移の中の位置85における第3の最大値82を示している。横座標83上のZ位置に応じた部分領域内の更なる最高強度値の推移81は、開口数が0.5で20倍の拡大率を有する対物レンズを使用して確定される。ここでは、放射波長λ
0=635nmのレーザー装置が使用される。この信号81の軸方向分解能は、例えば、約2.1μmまでの半値幅Δから確定することができる。基準相対変位位置85は、例えば、最大値82が生じるZ位置として、又は曲線81の重心若しくは最大値82の重心として確定することができる。次いで、対物レンズを、試料領域に対して、更なる最高強度値の最大値82が存在した相対変位位置85まで変位させることができる。これにより、例えば、位置85aにおける値82aが次に存在することがわかって初めて、位置85における値82を最大値82として認識することができるため、場合によっては、位置85aから位置85に戻らなければならないので、
図1の駆動部15の更なる方向転換が必要となる。
【0084】
以下の条件が満たされた場合に、最終的な基準相対変位位置としてのフォーカス位置に到達したものとみなされ、移動を停止することが好ましい。
・オートフォーカス信号の予め規定された閾値を超えた場合。この閾値は、事前に求められたオートフォーカス信号の信号レベルから求められる。
・オートフォーカス信号が極大値82に達した場合。
【0085】
ただし、バイオチップの表面は、試料51の層厚が、顕微鏡システム100の被写界深度よりも部分的に大きい場合があるため、蛍光顕微鏡法にとって最適な撮像面をなすとは限らない。したがって、求められたフォーカス位置又は求められた最終的な基準相対変位位置の周りで、複数の蛍光画像を作成することができる。したがって、試料領域の複数の画像の捕捉を、最終的な基準相対変位位置を起点として、
図1のカメラ8又は更なるカメラ9を用いて行うことができることが好ましい。カメラ8は、赤色チャネルにおける画像を捕捉することが好ましい。カメラ9は、緑色チャネルにおける画像を捕捉することが好ましい。この場合、対物レンズ及び試料領域は、光軸に沿って、最終的な基準相対変位位置の上及び/又は下の最終的な各相対変位位置に、互いに対して相対変位する。この場合、第1の顕微鏡カメラ8又は更なる顕微鏡カメラ9を用いて、最終的な各相対変位位置における各画像を捕捉することが更に行われる。次いで、プロセッサ33が、各画像を記憶し、各画像に対する各フォーカスメトリックを確定する。ここで、プロセッサ33は、最良のフォーカスメトリックを有する各画像を選択する。プロセッサ33は、最良のフォーカスメトリックを有しない他の画像を破棄することが好ましい。
【0086】
図5から見て取れるように、最大値は、特定のパターンの信号レベルを有する。極大値77の信号レベルが事前に確定された又は所与の閾値よりも大きい場合、さらに、極大値が実際に存在する場合、すなわち、基準相対変位位置79の左右における強度値が、ちょうど基準相対変位位置79にある強度よりも小さい場合、推移のうち、第3の最大値77を、例えば確実に検出されたものとして認識することができることが好ましい。したがって、レーザー光線19がバイオチップ45の表面59上に集束する基準相対変位位置を、信頼できる方法で求めることができることが好ましい。最大値73、75、及び77を互いに確実に分離することができるように、本発明の一実施形態によれば、オートフォーカスシステムの分解能は、顕微鏡システムの被写界深度と略同じである。平行なレーザー光線19の直径d(
図1を参照)は、顕微鏡対物レンズ3の開口全体を照明するような寸法になっていることが好ましい。例えば、赤色放射波長(例えば、λ
0=635nm)を有し、開口数0.5の場合で、t
w=約2.54μmの被写界深度をもたらすレーザー装置を用いることができる。
【0087】
フォーカス面27の外側から反射する光が測定値に重畳され、本方法の軸方向分解能を低減させることを防止するために、通常使用される開口絞りを必要とすることなく、レーザー装置及び検出器の物理的特性が利用されることが有利である。レーザー装置10の有効放射面は、数μmとすることができ、したがって点光源が存在することが有利である。これにより、光源の開口絞りを省くことができる。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、各Z測定点(各相対変位位置)において、信号強度は、各々、検出面29の部分領域において最高強度値を有するピクセルによってのみ規定されることから、検出器の開口絞りを省くこともできる。このようにして、ピクセル面積に対応する面積を有する数平方マイクロメートルの仮想的な開口絞りを模倣することができる。ピクセルのサイズによっては、1つ以上のピクセルによって所定の面積をもたらすことができる。この場合、16×16ピクセルというより大きなカメラ画像領域が評価されることによって、本方法は、同時に、画像領域中心からのレーザー位置の偏差に対してロバストとなり得る。露光時間が短い場合、フォーカス面の外側からの不鮮明に結像する反射の影響を大幅に低減することができるため、得られる信号は、フォーカス面27からのレーザー反射によって略排他的に規定される。ピクセルサイズとして、例えば3.45μm×3.45μmを用いることができ、露光時間は、例えば、20μ秒~1000μ秒とすることができる。
【0089】
図7は、例えば、
図1に示されている顕微鏡システム100において使用することができる、本発明の一実施形態に係るビームスプリッタ11aを、概略側面断面図で示している。ビームスプリッタ11aは、前面87及び背面89を有する平行プレートビームスプリッタであり、レーザー光線19を各々反射し、反射された2つの異なる部分光線I
1及びI
2を導くことができる。2つの部分光線I
1及びI
2は、対物レンズ3を通して焦点面27に重畳され、それにより、性能の変動が生じ得る。この性能の変動を低減するために、低コヒーレント光源を使用することができ、それにより、干渉を低減することができる。
【0090】
代替的には、この性能の変動を低減するために、
図8の断面図に概略的に示されているような、僅かな楔角を有するビームスプリッタプレート11b(「楔形プレート」)を使用することができる。楔形プレート11bは、互いに平行でなく、角度αで互いに対して傾斜している前面91及び背面93を有する。この楔形プレートを(例えば、
図1に示されている顕微鏡システム100において)ビームスプリッタ11として使用することによって、前面91及び背面93におけるレーザー光19のレーザー反射を異なる方向に偏向させ、部分光線I
1及びI
2が得られる。それにより、部分光線I
1及びI
2は、異なる角度で対物レンズ3に入射し、その後、対物レンズの焦点面27における異なる2つの位置95又は97に集束する。したがって、これらの位置95及び97は、物体面27において側方にオフセットされる。双方の部分光線I
1、I
2は、ここでは観察位置において重畳することなく、したがって、妨げとなる干渉も起こらない。
【0091】
対物レンズの入射瞳において、双方の部分光線I1及びI2を更に重畳することができる。ただし、重畳位置では干渉変調が生じ、その空間周波数は、ビームスプリッタの楔角に依存する。入射瞳における変調パターンの最小値及び最大値の好ましくない位置による性能損失を回避するため、楔角は、少なくとも、干渉パターンが対物レンズの開口全体にわたって少なくとも10個の最大値又は最小値を有する大きさで選択すべきである。
【0092】
楔角を有するビームスプリッタ11bは、顕微鏡システム100の撮像にも影響を与える場合がある。すなわち、例えば、顕微鏡画像の波長に依存した横方向の変位、及び1次元方向の歪みが生じる可能性がある。したがって、ビームスプリッタの最大楔角は、各顕微鏡用途に応じて異なる。例えば、楔角として、α=0.5度を例として選択することができる。
【0093】
原則として、発生し得る結像収差は、好適な更なる光学素子又は画像評価の方法によって補正することができる。例えば、第2の楔形ビームスプリッタプレートを設けることができ、第2の楔形ビームスプリッタプレートは、第1のビームスプリッタプレートと同一であり、角度変化が双方のビームスプリッタの楔形状によって互いに相殺されるように、顕微鏡の無限空間に配置される。
【0094】
本発明に係る方法及びシステムは、様々な利点をもたらすことができる。
【0095】
赤色チャネルにおける試料領域の1つ以上の画像のフォーカス及び捕捉のために、赤色チャネルにおける顕微鏡カメラを二重の用途で使用することによって、追加の検出器は不要となる。これにより、部品コスト及び調整労力が削減される。したがって、追加で必要となる部品の数は、光線拡張コリメートレーザーモジュールと、ビームスプリッタとに限定することができる。
【0096】
カメラデータにおける個々のピクセルの評価によって、光検出器と開口絞りとの組合せ(コンフォーカル技法)に匹敵する、Z方向における高い分解能を得ることができる。同時に、各測定深度に対して、多数のピクセル(通常は16×16)を有する検出器領域が捕捉されるため、開口絞り用途において一般的な高い調整労力を不要とすることができる。また、領域内、すなわち部分領域内のどのピクセルが、最大グレー値を検出する又は含むかは重要でない。
【0097】
検出器領域の選択も(例えば、顕微鏡の初期化段階の間に)動的に行うことができるため、レーザー信号は、カメラの検出器面上の略任意の場所にあることができる。したがって、この方法は、開口絞りに基づくオートフォーカス用途と比較して非常にロバストである。
【0098】
光源として、例えば約830nmの近赤外線(NIR)の放射波長を有するレーザーモジュールを使用することができる。この場合、レーザー光を対物レンズの光線経路に結合するために、ダイクロイックビームスプリッタ11を用いることができる。この場合、楔形状のビームスプリッタプレートは、必要とならない。
【0099】
干渉に起因する信号変動を回避するために、原則として、低コヒーレント光源、例えばスーパールミネッセンスダイオード又はコヒーレンス長が低減されたレーザー光源を利用することもできる。この場合、楔形状のビームスプリッタプレートを、単純なビームスプリッタ(平行プレート)に置き換えることができる。放射波長は、可視であるか又は近赤外にあることもできる。
【0100】
マイクロコントローラによって制御されるZ方向の動き(相対変位位置の変化)は、モータ駆動される対物レンズマウント又はモータ駆動される顕微鏡テーブルを用いて転換することができる。
【0101】
本発明の実施形態によれば、(検出面の前に)固定開口絞りは使用されず、カメラの検出器領域の個々のピクセルの輝度が評価される。評価に使用される所定の面積66(
図4dを参照)の寸法は、従来使用される物理的な開口絞りの開口の大きさの範囲とすることができる。
【0102】
上記で
図1、
図5、及び
図6に関して記載した方法の実施形態によれば、レーザー光線は、対物レンズに向かってコリメートされた平行な光線束を有し、さらに、レーザー光線の集束面は、対物レンズの焦点面と一致する。この実施形態によれば、
図5の最大値77に基づいて第1の基準相対変位位置79を確定した後、続いて、第1の距離分解能よりも高い第2の距離分解能で、第1の基準相対変位位置に向かって相対距離を増加させる。この場合、同時に、各更なる相対変位位置における更なる最高強度値を捕捉し、それにより、更なる最高強度値に基づいて極大値の存在を検出した場合に、各相対変位位置を、更なる最高強度値に基づいて検出された極大値が存在する又は存在した最終的な基準相対変位位置として設定する。上述したように、これには更なる方向転換を必要とし得る。このような方向転換が起こると、
図1の駆動手段15の運動機構のいわゆるバックラッシュにより、対物レンズと試料領域との間に不整合が生じる場合があり、その結果、フォーカスの質が低下する可能性がある。
【0103】
ここで、
図9に基づいて、バックラッシュに起因する対物レンズと試料領域との間の不整合を回避するために、そのような方向転換を回避することができる、方法の更なる実施形態を記載する。レーザー光源10は、コリメート光学系10aによって、レーザー光線が対物レンズに向かって収束する光線束19aを有するように調整される。これには、対物レンズ3によって、レーザー光線19aの集束面27bが対物レンズの焦点面27に一致しないようにする効果がある。したがって、特に、集束点が焦点面27に存在しないようにする効果がある。この場合、フォーカス点は、レーザー装置のコリメート光学系を介して、特に顕微鏡の焦点から対物レンズに向かって、好ましくは対物レンズの被写界深度の3倍~10倍の量だけ変位する。この場合、集束レーザー光線の収束角(半開口角)は、好ましくは-1分~-15分の範囲とすることができるが、この値に限定されない。
【0104】
対物レンズ3及びレンズ6、及びカメラ8、並びに特にミラー7は、光線が、対物レンズ3の焦点面27の共通の点、特に焦点面27の焦点から検出器面29の一点に結像するように、各光学的距離において互いに位置決めされているため、バイオチップ45の境界面又は表面59が焦点面27にある場合でも、レーザー光線点の反射の正確な結像が検出器面の正確な一点には生じない。しかし、焦点面27と集束面27bとの間には更なる反射面27cがあり、反射面27cにおいて、境界面又はバイオチップ45の表面59がレーザー光線のそのような反射をもたらすことにより、この反射は同様に、検出器面29上の一点に点状に結像する。
【0105】
これに関して、
図10a及び
図10bは、対物レンズ3の光学的開口、対物レンズの焦点271を有する焦点面27、及び集束点272を有するレーザー光線の集束面27bを詳細に示している。更なる反射面27cは、焦点面27と集束面27bとの間に位置する。境界面又はバイオチップの表面59は、更なる反射面27cにあることが想定される。入射するレーザー光線19aは、実質的に更なる反射面27cにおいて反射し、反射されたレーザー光線19bとして対物レンズに再び導かれる。このレーザー光線19bは、更なる反射面27cではなく正しい焦点面27において反射した場合と同様となるような角度で対物レンズ3に入射する。換言すれば、レーザー光線19aは、更なる反射面27cにおける試料境界面で反射し、逆行するレーザー光線19bは、対物レンズ3の焦点面27の共通点271、特に焦点面27の焦点271からの光線19cと見かけ上同様となる。したがって、更なる反射面27cにおいて反射されたこのレーザー光線19bに関して、
図9の検出器面29の一点に正しい点形状の結像が生じる。
【0106】
更なる反射面27cと事実上の焦点面27との間の距離又はオフセットVは、較正のために顕微鏡に設置された基準試料によって予め求めることができ、所与の値をプロセッサ33内に記憶することができるようになっており、この所与の値は、その後、方法の実施形態に入力することができる。
【0107】
図10bは、更なる反射面の効果を、更なる光線経路19a、19b、19cに関して再度示している。以下では、
図10a及び
図10bに基づいて説明した、フォーカス点を変位させるこの効果を、バックラッシュを回避するためにいかにして利用することができるかを記載する。
【0108】
まず、上記で説明したように、対物レンズ及び試料領域の互いに対する相対変位は、相対距離を、第1の距離分解能を用いて最大距離から最小距離まで減少させることによって行われ、したがって、最高強度値の上述の推移は、
図5に示されているように複数の最大値を有することが想定される。さらに、基準相対変位位置は、複数の最大値に基づいて、第1の基準相対変位位置として確定されることが想定される。さらに、バイオチップの表面59は、
図11aに示されているように、境界面として、レーザー光線の集束面27bと対物レンズ3との間に存在することが想定される。ここで、対物レンズ3と試料領域との間又は対物レンズ3とバイオチップの表面59との間の相対距離を、第1の基準相対変位位置に向かって、変位方向Rにおいて、第1の距離分解能よりも高い第2の距離分解能で増加させる場合、また同時に、各更なる相対変位位置における更なる最高強度値を捕捉する場合、
図6に示されている更なる強度値の曲線81は、右から最大値82の方向に出発するものとみなすことができる。
【0109】
また、
図11bに示されているように、バイオチップの表面59がちょうど更なる反射面27cにある場合、曲線の推移81内に、位置85における最大値82が生じる。この場合、対物レンズ3と試料領域との間の距離が更に拡大するように、更なる第2の分解能精度又は第2の分解能精度幅だけ、対物レンズを試料領域に対して(又はその逆に)変位させる。変位方向は、方向Rとして描写されている。
【0110】
バイオチップの表面59が、
図11bに示されている位置にある場合、すなわち更なる反射面27cにある場合、位置85の最大値82が生じる。バイオチップの表面59が、
図11cに示されている位置にある場合、すなわち更なる反射面27cの下にある場合、位置85aの値82aは、最大値82よりも小さくなる。したがって、推移81の更なる最高強度値に基づいて、以前の位置85において極大値82が存在したことを検出することができる。ここで、試料領域又はバイオチップの表面59と対物レンズとの間の相対距離を、
図11cに対応する位置85aから、予め確定された所与の値の分、試料領域又はバイオチップの表面59が焦点面にある
図11dに対応する最終的な基準相対変位位置85fに、所与の値だけ増加させるだけでよいことが好ましい。この増加又はこの所与の値は、焦点面27と更なる反射面27cとの間のオフセットVから、試料領域又はバイオチップの表面59が
図11bの位置から
図11cの位置まで変位した後の第2の分解能精度幅を差し引いたものに対応して選択される。この更なる増加は、方向転換を行うことなく同じ方向Rにおいて行われる。したがって、これにより、試料領域又はバイオチップの表面59を位置85aから位置85fに変位させることによって最大値82(
図6)を検出した後、方向転換を行う必要がなくなり、それにより、駆動部15(
図1)の運動機構のバックラッシュに起因する不正確性も回避される。焦点面と集束面との間のオフセットVが存在しない場合、位置85aから位置85への方向転換を行わなければならず、したがって、バックラッシュが、試料領域の位置決めに関して、ひいてはフォーカス結果に関して悪影響を与える。
【0111】
曲線81の測定値又は更なる最高強度値は、変動及びノイズによって重畳される場合があるため、最大値82及び最終的な基準相対変位位置の特定は、以下に記載のとおりに行われることが好ましい。まず、曲線81は、第2の距離分解能を用いて右から左に出発する。次に、位置85cの以前の値82c又は現在の最大値85cから位置85dの現在の値82dまで、連続的な値の減少が認められる場合、位置ウィンドウの内部で、これまでに検出された現在の最大値82cよりも大きい更なる値を発見することができるか否かを、左に向かってチェックする。これが当てはまるのは、図示のウィンドウFEを位置85cから左に向かって適用すると、値82cよりも大きな値が発見されることによると想定される。続いて、その後、位置85における最大値82が発見される場合、位置85aにおいて、より小さな値82aが発見されるが、ウィンドウFE内で、現在の最大値82よりも大きな値は存在しない。この場合、試料領域又はバイオチップの表面59は、位置85eにある。また、集束面と焦点面との間のオフセットVは、それに応じて考慮することができるため、試料領域又はバイオチップの表面59は、位置85eから所与の値又は送り値V2だけ、最終的な基準相対変位位置である位置85fへと更に変位する。所与の値V2は、V2=V-FEによって確定されることが好ましい。
【0112】
本発明の実施形態は、3次元試料領域内にあり、特に空気に接触しない境界面を有する光学的境界面への確実なフォーカスを可能にする。試料領域内にある境界面におけるレーザー反射は、原則として、空気に対する表面におけるレーザー反射よりも弱い。例えば、グリセリン対バイオチップの境界面(すなわち、第3の境界面)の反射率は、たったの0.029%とすることができる。それに対して、空気対カバーガラス上面の境界面の反射率は、約4.3%とすることができる。したがって、フォーカスに関連する境界面は、試料表面対空気の信号よりも約150倍小さい信号を出す。それにもかかわらず、相対変位位置に応じた特徴的な反射パターンの認識に基づいて、バイオチップ表面への確実なフォーカスを達成することができる。
【0113】
特定の実施要件に応じて、本発明の実施例は、プロセッサ及び/又は制御ユニットを、ハードウェア及び/又はソフトウェアにおいて実装することができる。ここで述べたプロセッサ及び/又は制御ユニットは、ここでは、少なくとも1つのユニットとして、又は複数のユニットを組み合わせて実装することができる。この実装は、デジタル記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、DVD、Blu-Rayディスク、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、若しくはフラッシュメモリ、ハードディスク、又は、電子的に読取り可能な制御信号が記憶される他の磁気メモリ若しくは光学メモリを使用して行うことができ、これらは、各方法を実行するように、プログラマブルハードウェアコンポーネントとインタラクトすることができる又はインタラクトする。プログラマブルハードウェアコンポーネントは、制御ユニットとして、コンピュータプロセッサ(CPU=Central Processing Unit)、コンピュータ、コンピュータシステム、特定用途向け集積回路(ASIC=Application-Specific Integrated Circuit)、集積回路(IC=Integrated Circuit)、ワンチップシステム(SOC=System on Chip)、プログラマブル論理素子、又はマイクロプロセッサを備えるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA=Field Programmable Gate Array)によって形成することができる。したがって、デジタル記憶媒体は、機械可読又はコンピュータ可読のものとすることができる。したがって、いくつかの実施例は、本明細書に記載の方法を実行するようにプログラマブルコンピュータシステム又はプログラマブルハードウェアコンポーネントとインタラクトするようになっている、電子的に可読な制御信号を含むデータキャリアを備える。一般に、本発明の実施例又は実施例の一部は、プログラム、ファームウェア、コンピュータプログラム、若しくはプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として、又はデータとして実装することができる。プログラムコード又はデータは、プログラムがプロセッサ又はプログラマブルハードウェアコンポーネント上で実行される際に、方法又は方法の一部を実行するのに効果的である。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1~15の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
試料領域(2)の画像を撮影する方法であって、
少なくとも1つの対物レンズ(3)によって、レーザー光線(19、19a)を、少なくとも1つの境界面(59)を含む前記試料領域(2)に向けるステップであって、前記対物レンズは、前記レーザー光線を、集束面(27、27b)にあり、特に前記対物レンズの光軸又は該光軸に対して平行な軸上にある集束点に結像する機能を果たすものである、向けるステップと、
前記対物レンズ(3)及び前記試料領域(2)を、前記対物レンズ(3)の前記光軸(13)に沿って、互いに対して複数の異なる相対変位位置に相対変位させるステップと、
各相対変位位置(Z)に関して、顕微鏡カメラ(8)の検出面(29)の2次元部分領域(65)のピクセルによって検出される、前記境界面(59)において反射されて前記対物レンズ(3)を通過する前記レーザー光線の複数の強度値を捕捉するステップと、
各相対変位位置(Z)に関して、前記部分領域(65)の捕捉された複数の前記各強度値の各最高強度値を確定するステップと、
前記各最高強度値が前記各相対変位位置(Z)に割り当てられることにより、前記最高強度値の推移(67)を確定するステップと、
前記最高強度値の前記推移(67)の少なくとも1つの最大値から、基準相対変位位置(79)を確定するステップと、
前記基準相対変位位置における前記試料領域の少なくとも1つの画像を捕捉するステップと
を含んでなる方法。
(請求項2)
前記レーザー光線(19)は、コリメートされた平行な光線束を有し、前記レーザー光線(19)の前記集束面は、前記対物レンズ(3)の焦点面(27)と一致する、請求項1に記載の方法。
(請求項3)
前記対物レンズ(3)及び前記試料領域を、第1の距離分解能を用いて、相対距離を最大距離から最小距離まで減少させることによって、互いに対して相対変位させることにより、前記推移に複数の最大値(73、75、77)が含まれるようにするステップと、
前記複数の最大値(73、75、77)に基づいて、前記基準相対変位位置(79)を第1の基準相対変位位置として確定するステップと、
前記第1の距離分解能よりも高い第2の距離分解能で、第1の基準相対変位位置に向かって前記相対距離を増加させると同時に、前記各更なる相対変位位置における更なる最高強度値(81)を捕捉するステップと、
前記更なる最高強度値(81)に基づいて、極大値(82)の存在を検出するステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
(請求項4)
前記レーザー光線は、前記対物レンズに向かってコリメートされた平行な光線束(19)を有し、さらに、前記レーザー光線(19)の前記集束面は、前記対物レンズ(3)の焦点面(27)と一致し、
前記方法は、各相対変位位置を、前記更なる最高強度値(81)に基づいて検出された極大値(85)が存在する又は存在した最終的な基準相対変位位置として設定することを更に含む、請求項3に記載の方法。
(請求項5)
前記レーザー光線は、前記対物レンズに向かって収束する光線束(19a)を有し、さらに、前記レーザー光線の前記集束面(27b)は、前記対物レンズの焦点面(27)と一致せず、
前記方法は、予め確定された所与の値だけ、前記相対距離を最終的な基準相対変位位置(85f)まで繰り返し増加させることを更に含む、請求項3に記載の方法。
(請求項6)
前記対物レンズ(3)及び前記試料領域(2)を、前記光軸(13)に沿って、前記基準相対変位位置の上及び/又は下の最終的な各相対変位位置に、互いに対して相対変位させることと、
前記各最終的な相対変位位置における各画像を捕捉するとともに、前記各画像を記憶することと、
前記各画像に対する各フォーカスメトリックを確定するとともに、最良の前記フォーカスメトリックを有する各画像を選択することと、
を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
(請求項7)
前記レーザー光線(19)の直径は、前記対物レンズ(3)の開口全体が照明される寸法である、請求項1に記載の方法。
(請求項8)
前記部分領域は、前記検出器面の1/10よりも小さく、特に前記検出器面の1/100よりも小さい、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
(請求項9)
前記対物レンズ(3)と前記検出面(29)との間の検出光線経路において、レンズ又はレンズ系(6)が配置され、該レンズ又は該レンズ系(6)は、前記対物レンズ(3)の焦点面(27)を前記検出面(29)に結像する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
(請求項10)
少なくとも1つの境界面(57、59)は、空気に接触せず、
前記試料領域(2)は、有機試料(51)を含み、該有機試料(51)は、基板キャリア(45)上に載置され、液体物質(49)内に埋設され、カバーガラス(53)によって覆われ、
さらに、前記カバーガラスの上面(55)は、第1の境界面を形成し、
前記カバーガラスの下面(57)は、第2の境界面を形成し、
前記基板キャリア(45)の前記境界面(59)は、第3の境界面を形成する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
(請求項11)
前記対物レンズ(3)と前記試料領域(2)との間の相対距離を、前記部分領域の前記ピクセルの強度値を捕捉しながら、最大距離を起点としてまず減少させ、
それにより、前記推移には、最初に、該推移の中の第1の極大値(73)、後続する第2の極大値(75)、及び最後に第3の極大値(77)を含み、前記第3の極大値(77)に基づいて前記基準相対変位位置(79)を確定する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
(請求項12)
前記基準相対変位位置は、第3の境界面において反射されたレーザー光線が集束して、前記検出面(29)の前記部分領域(65)に結像する、相対変位位置(79)に対応し、
前記画像を撮影するために、前記基準相対変位位置(79)を、所与の値に基づいて変化又は補正するものである、請求項8又は9に記載の方法。
(請求項13)
前記レーザー光線(19)の供給源(10)と前記対物レンズ(3)との間に、前記対物レンズを通る前記レーザー光線(19)を反射させるために、ダイクロイック又は非ダイクロイックのビームスプリッタ(11、11a、11b)が配置される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
(請求項14)
前記ビームスプリッタ(11b)は、楔形状を有し、前記ビームスプリッタ(11b)の前面(91)及び背面(93)の平面が、特に0.1度~1度である楔角(α)で交差し、
前記楔角(α)は、前記ビームスプリッタの前面及び背面における反射を重畳させることによって生じる干渉パターンが、前記対物レンズの開口全体にわたって少なくとも10個の最大値又は最小値を有するように選択されるか、又は、
少なくとも1つの更なる光学素子によって、楔形状を有する前記ビームスプリッタに起因する結像収差を補正するものである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
(請求項15)
試料領域(2)の画像を撮影する顕微鏡システム(100)であって、
レーザー光線(19、19a)を生成するように構成されたレーザー源(10)と、
少なくとも1つの対物レンズ(3)であって、
該少なくとも1つの対物レンズ(3)は、前記レーザー光線(19、19a)を、少なくとも1つの境界面(59)を含む前記試料領域(2)に向けるように構成され、該対物レンズ(3)は、前記レーザー光線(19、19a)を、集束面(27、27b)にあり、特に該対物レンズの光軸又は該光軸に対して平行な軸上にある集束点に結像する機能を果たし、
該少なくとも1つの対物レンズ(3)は、前記光軸に沿って、前記試料領域(2)に対して、複数の異なる相対変位位置に変位可能である、少なくとも1つの対物レンズ(3)と、
検出面(29)を有する少なくとも1つの顕微鏡カメラ(8)であって、該顕微鏡カメラは、各相対変位位置(Z)に関して、前記境界面(59)において反射されて前記対物レンズを通過する前記レーザー光線の複数の強度値を捕捉するように構成され、前記強度値を、顕微鏡カメラ(8)の検出面(29)の2次元部分領域(65)のピクセルによって検出する、少なくとも1つの顕微鏡カメラ(8)と、
少なくとも1つのプロセッサ(33)であって、
各相対変位位置に関して、前記部分領域(65)の捕捉された前記強度値の各最高強度値を確定し、
前記各最高強度値が前記各相対変位位置(Z)に割り当てられることにより、前記最高強度値の推移(81)を確定し、
前記最高強度値の推移(67)の少なくとも1つの最大値(77)から、基準相対変位位置(79)を確定し、
前記基準相対変位位置(79)に接近するために、駆動手段(15)を調整し、
さらに、前記顕微鏡カメラ又は更なる顕微鏡カメラを用いて、前記試料領域の画像を捕捉するように構成される、少なくとも1つのプロセッサ(33)と
を備えてなる顕微鏡システム。