(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221209BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20221209BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20221209BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/06
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2020116374
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】玉置 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】齊京 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】大井 章宜
(72)【発明者】
【氏名】村橋 善光
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/095236(WO,A1)
【文献】特開2019-197356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路情報を有する地図データを取得する第1取得部と、
第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得する第2取得部と、
前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定する判定部と、
前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行う制御部を、備え、
前記制御部は、
第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていると判定された場合、第1モードの自動運転を継続し、
第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第1モードの自動運転を継続しない、
処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第2モードの自動運転を行い、
前記第2モードの自動運転は、第1モードの自動運転よりも前記自動運転の自動化率が低い、または、第1モードの自動運転が行われている場合に比して前記第1移動体の運転者に要求される周辺監視の度合が高いモードの自動運転である、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、
第1モードの自動運転が行われている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定した場合、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれているか否かを判定する処理を停止し、
前記判定を停止した後の所定のタイミングで、前記判定を再開する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、更に、前記検知結果に含まれる道路区画線の位置と、前記道路情報に含まれる道路区画線の位置とが合致するか否かを判定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、下記の条件(1)または条件(2)のうち、条件(1)を満たした場合、または条件(1)および条件(2)を満たした場合、第1モードの自動運転を開始し、
条件(1)は、前記判定部が、前記道路情報に含まれる道路区画線の位置と、前記検知結果に含まれる道路区画線の位置とが合致すると判定したことであり、
条件(2)は、前記判定部が、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置が、前記道路情報の道路を示す領域に含まれると判定したことである、
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記第2移動体は、前記第1移動体が進行方向とは反対方向から前記第1移動体に向かって移動している移動体である、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
道路情報を有する地図データを取得する第1取得部と、
第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得する第2取得部と、
前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定する判定部と、
前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行う制御部を、備え、
前
記制御部は、第1モードの自動運転を行っているときに、下記の条件(3)を満たした場合、第1モードの自動運転を停止し、または前記第1モードの自動運転から第2モードの自動運転に移行し、
条件(3)は、前記判定部は、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置が、前記道路情報の道路を示す領域に含まれないと判定したことであり、
前記第2モードの自動運転は、第1モードの自動運転よりも前記自動運転の自動化率が低い、または、第1モードの自動運転が行われている場合に比して前記第1移動体の運転者に要求される周辺監視の度合いが高いモードの自動運転である、
処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
道路情報を有する地図データを取得し、
第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得し、
前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定し、
前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行い、
第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていると判定された場合、第1モードの自動運転を継続し、
第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第1モードの自動運転を継続しない、
処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
道路情報を有する地図データを取得させ、
第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得させ、
前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定させ、
前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行わせ、
第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていると判定された場合、第1モードの自動運転を継続させ、
第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第1モードの自動運転を継続させない、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザスキャナによる地物の測定結果と、地図データの地物のデータとを比較し、比較結果に基づいて、地図データに誤りがあるか否かを判定するシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、地図データの信頼性を精度よく評価することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、地図データの信頼性をより精度よく評価することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る処理装置、処理方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る処理装置は、道路情報を有する地図データを取得する第1取得部と、第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得する第2取得部と、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定する判定部とを備える。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記判定部は、時系列の前記第2移動体の位置の軌跡が、前記道路を示す領域に含まれ且つ前記道路の形状に沿っているか否かを判定する。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記第2移動体は、前記第1移動体が進行方向とは反対方向から前記第1移動体に向かって移動している移動体である。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行う制御部を、更に備え、前記制御部は、第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていると判定された場合、第1モードの自動運転を継続し、第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第1モードの自動運転を継続しない。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記制御部は、前記第1モードの自動運転を行っている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第2モードの自動運転を行い、前記第2モードの自動運転は、第1モードの自動運転よりも前記自動運転の自動化率が低い、または、第1モードの自動運転が行われている場合に比して前記第1移動体の運転者に要求される周辺監視の度合が高いモードの自動運転である。
【0011】
(6):上記(4)の態様において、前記判定部は、第1モードの自動運転が行われている場合に、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定した場合、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれているか否かを判定する処理を停止し、前記判定を停止した後の所定のタイミングで、前記判定を再開する。
【0012】
(7):上記(1)の態様において、前記判定部は、更に、前記検知結果に含まれる道路区画線の位置と、前記道路情報に含まれる道路区画線の位置とが合致するか否かを判定する。
【0013】
(8):上記(7)の態様において、前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行う制御部を、更に備え、前記制御部は、下記の条件(1)または条件(2)のうち、条件(1)を満たした場合、または条件(1)および条件(2)を満たした場合、第1モードの自動運転を開始し、条件(1)は、前記判定部が、前記道路情報に含まれる道路区画線の位置と、前記検知結果に含まれる道路区画線の位置とが合致すると判定したことであり、条件(2)は、前記判定部が、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置が、前記道路情報の道路を示す領域に含まれると判定したことである。
【0014】
(9):上記(1)の態様において、前記第1移動体の速度および操舵を制御して自動運転を行う制御部を、更に備え、前記制御部は、第1モードの自動運転を行っているときに、下記の条件(3)を満たした場合、第1モードの自動運転を停止し、または前記第1モードの自動運転から第2モードの自動運転に移行し、条件(3)は、前記判定部は、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置が、前記道路情報の道路を示す領域に含まれないと判定したことであり、前記第2モードの自動運転は、第1モードの自動運転よりも前記自動運転の自動化率が低い、または、第1モードの自動運転が行われている場合に比して前記第1移動体の運転者に要求される周辺監視の度合いが高いモードの自動運転である。
【0015】
(10):この発明の一態様に係る処理方法は、コンピュータが、道路情報を有する地図データを取得し、第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得し、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定する。
【0016】
(11):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、道路情報を有する地図データを取得させ、第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得させ、前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定させる。
【発明の効果】
【0017】
(1)-(11)によれば、処理装置は、第2移動体の位置が道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定することで、地図データの信頼性をより精度よく評価することができる。例えば、処理装置は、第2移動体の位置を用いて判定を行うため、遠い道路の地図データの信頼性を評価することができる。
【0018】
(2)によれば、処理装置は、時系列の前記第2移動体の位置の軌跡を用いて判定を行うため、更に精度よく地図データの信頼性を評価することができる。
【0019】
(3)によれば、処理装置は、第1移動体に対してオフセットした移動体を第2移動体とすることにより、より遠い第2移動体を検知することができる。これにより、処理装置は、より早期に判定処理が行い、より遠い道路の地図データの信頼性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る処理装置を利用した制御システム1の構成図である。
【
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
【
図5】第1判定処理について説明するための図である。
【
図6】第2判定処理について説明するための図(その1)である。
【
図7】第2判定処理について説明するための図(その2)である。
【
図8】仮想線が合致しているか否かを判定する処理について説明するための図である。
【
図9】第1モードの自動運転および第2モードの自動運転の一例について説明するための図である。
【
図10】第1モードの自動運転および第2モードの自動運転の他の一例について説明するための図である。
【
図11】自動運転のモードの開始または終了と、判定処理の結果との関係について説明するための図である。
【
図12】行動計画生成部140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図13】行動計画生成部140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】自動運転のモードが切り替わる例について説明するための図である。
【
図15】処理装置300の機能構成の一例を示す図である。
【
図16】実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の処理装置、処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0022】
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、実施形態に係る処理装置を利用した制御システム1の構成図である。制御システム1は、移動体に搭載される。以下の説明では、移動体は、一例として車両であるものとする。車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0023】
制御システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、車室内カメラ90と、ハンズオンセンサ92と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0024】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、制御システム1が搭載される車両(以下、車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0025】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0026】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0027】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。制御システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0028】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0029】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0030】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0031】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0032】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0033】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0034】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0035】
車室内カメラ90は、例えば、車室内に設置されたシートに着座する乗員(特に、運転席に着座する乗員)を撮像する。車室内カメラ90は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車室内カメラ90は、例えば、周期的に乗員を撮像する。
【0036】
ハンズオンセンサ92は、運転者のステアリングホイールの把持状態を検知するセンサである。把持状態とは、車両Mの運転者がステアリングホイールを把持、保持、操作している状態、またはステアリングホイールに手を添えている(ハンズオンしている)状態である。ハンズオンセンサ92は、例えば、ステアリングホイール82の周方向に沿うように設けられた静電容量センサである。ハンズオンセンサ92は、検出対象の領域に物体(運転者の手)が接近または接触したことを、静電容量の変化として検出する。ハンズオンセンサ92は、静電容量が閾値以上である場合、所定の検出信号を監視部170に出力する。本実施形態では、例えば、ハンズオンセンサ92は、運転者がステアリングホイールに手を添えていることを検知する。
【0037】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、監視部170と、記憶部180とを備える。第1制御部120と、第2制御部160と、監視部170とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置100は「処理装置」の一例である。
【0038】
記憶部180は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部180には、例えば、自動運転制御装置100が実行するためのプログラムなど記憶されている。
【0039】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0040】
認識部130は、例えば、物体認識部132と、第1取得部134Aと、第2取得部134Bと、第1処理部136と、第2処理部138とを備える。認識部130は、「処理装置」の一例である。
【0041】
物体認識部132は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、車両Mの周辺にある物体の種別や、位置、速度、加速度等を認識する。物体の種別は、例えば、物体が車両であるか、歩行者であるかなどの種別である。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標系(以下、車両座標系)の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0042】
第1取得部134Aは、道路情報を有する地図データを取得する。道路情報とは、例えば、道路区画線の位置や道路区間線の種別、車線の位置、車線の幅などである。地図データは、道路情報を含むものであればよい。第2地図情報62は、「地図データ」一例である。
【0043】
第2取得部134Bは、車両M(第1移動体)の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得する。カメラ10、レーダ装置12、またはLIDAR14は、「検知部」の一例である。また、検知部は、通信装置20であってもよい。この場合、通信装置20は、不図示のサーバ装置や、周辺の他車両と通信して、車両Mの周辺の物体の位置や、他車両の位置、道路区間線の情報を取得する。
【0044】
また、第2取得部134Bは、車両センサ40またはナビゲーション装置50により特定された車両Mの位置を取得する。
【0045】
第1処理部136は、ナビゲーション装置50により特定される自車両Mの位置、カメラ10により撮像された画像、車両センサ40に含まれる方位センサの出力などを第2地図情報62と照合し、車両Mが地図におけるどの道路、どの車線を走行しているかを認識する。更に、第1処理部136は、上記した各種情報に基づいて、車線の幅方向に関して、自車両Mの代表点がどの位置にあるのか(以下、横位置)を認識する。横位置は、車線の左右のいずれかの道路区画線からのオフセット量として導出されてもよいし、車線中央からのオフセット量として導出されてもよい。第1処理部136は、上記した各種情報に基づいて、車線の延在方向に対して、その時点の自車両Mの進行方向が何度傾いているか(以下、ヨー角)を認識する。第1処理部136は、ナビゲーション装置50により特定される車両Mの位置、カメラ10により撮像された画像、車両センサ40に含まれる方位センサの出力などを第2地図情報62と照合した結果、十分な信頼度で整合しない場合には、マッチング失敗を示す情報を行動計画生成部140に出力する。「マッチング失敗」には、ナビゲーション装置50により特定される車両Mの位置に相当する地図が無い場合や、道路区画線が検出されなかった場合も含まれる。上記のように、地図において車両Mが存在する位置が認識される。以下、第1処理部136が、ナビゲーション装置50により特定される車両Mの位置、カメラ10により撮像された画像、車両センサ40に含まれる方位センサの出力などを第2地図情報62と照合する処理を「マッチング処理」と称する。
【0046】
更に、第1処理部136は、第2取得部134Bにより取得された検知結果(例えばカメラ10に撮像された画像)に含まれる道路区画線の位置と、地図データに含まれる道路区画線の位置とが合致するか否かを判定する。以下、第1処理部136が行うこの処理を、「第1判定処理」と称する場合がある。
【0047】
第2処理部138は、第2取得部134Bに取得されたた検知結果(例えばLIDAR14の検知結果)に含まれる他車両の位置と、地図データの道路情報とを照合して、第2移動体の位置が道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定する。以下、第2処理部138が行う処理を、「第2判定処理」と称する場合がある。第1判定処理と第2判定処理とを区別しない場合は、「判定処理」と称する場合がある。判定処理の詳細については後述する。
【0048】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、車両Mの周辺状況に対応できるように、車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0049】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0050】
また、行動計画生成部140は、判定処理の結果と、監視部170の監視結果とに基づいて、車両Mを制御する。この制御の詳細については後述する。
【0051】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0052】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0053】
監視部170は、車室内カメラ90により撮像された画像に基づいて、車両Mの運転席に着座した運転者が車両Mの周辺を監視しているか否かを判定する。監視部170は、例えば、画像から運転席に着座する乗員の顔画像を抽出し、抽出した顔画像から視線方向を取得する。例えば、監視部170は、ニューラルネットワーク等を利用したディープラーニングによって、画像から乗員の視線方向を取得してもよい。例えば、顔画像が入力されると、視線方向を出力するように学習させたニューラルネットワークを予め構築しておく。監視部170は、このニューラルネットワークに車両Mの乗員の顔画像を入力することで、その乗員の視線方向を取得する。また、監視部170は、画像から得られた乗員の視線方向が、予め決められた監視対象の範囲に含まれるか否かにより、乗員が自車両Mの周辺監視を行っているか否かを判定してもよい。
【0054】
図1に戻り、走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0055】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0056】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0057】
[判定処理]
図3は、判定処理について説明するための図である。第1処理部136は、カメラ10により撮像された画像から得られた道路区画線の位置情報(例えば位置を示す座標)を取得する(S1)。次に、第1処理部136は、第2地図情報62に含まれる地図データを取得する(S2)。次に、第1処理部136は、カメラ10により撮像された画像から得られた道路区画線の位置と、地図データに含まれる道路区画線の位置とが合致するか否かを判定し(S3)、判定結果(第1判定処理の結果)を行動計画生成部140に出力する(S4)。
【0058】
次に、第2処理部138は、第2地図情報62に含まれる地図データを取得する(S5)。次に、第2処理部138は、LIDAR14の検知結果から得られた他車両の位置情報を取得する(S6)。次に、第2処理部138は、LIDAR14により検知された他車両の位置が地図データに含まれる道路を示す領域に含まれるか否かを判定し(S7)、判定結果(第2判定処理の結果)を行動計画生成部140に出力する(S8)。そして、行動計画生成部140は、判定結果に基づいて、自動運転のモードを決定する。
【0059】
図4は、判定処理について説明するための図である。車両Mが、道路の車線L1を走行している。車両Mの前方には他車両m1が走行し、車両Mの後方には他車両m2が走行している。車両Mの前方であって、車線L1に対向する車線L2を他車両m3が走行している。このとき、第1処理部136は、マッチング処理を行い、マッチングが成功したか否かを判定する。マッチングが成功した場合、すなわち、地図における車両Mの位置が特定された場合、第1処理部136は、第1判定処理を行う。
【0060】
図5は、第1判定処理について説明するための図である。第1処理部136は、画像において隣接画素との輝度差が大きいエッジ点を抽出し、エッジ点を連ねて画像平面における道路区画線を認識し、道路区画線の各点の位置を車両座標系に変換する。第1処理部136は、車両座標系の平面において、車両Mの位置と、道路区画線の位置と、地図データから得られた道路区画線の位置とを重畳して、道路区画線の位置と、地図データから得られた道路区画線の位置とが合致するか否かを判定する。「合致」とは、例えば、画像から得られた道路区画線の位置と、地図データから得られた道路区画線の位置との乖離度合が閾値以下であることである。
図5では、道路区画線の位置が合致すると判定された場合の一例である。
【0061】
図4の説明に戻る。第2取得部134Bは、物体認識部132により認識された他車両m1-他車両m3の位置を取得する。第2処理部138は、他車両m1-他車両m3のうち、車両Mの所定距離前方に位置する他車両(または認識できる範囲で最も前方に位置する他車両)を抽出する。また、車両Mの所定距離前方に複数の他車両が存在する場合、第2処理部138は、車両Mの中心軸方向(または進行方向)に対して、幅方向に所定度合オフセットまたは最もオフセットしている他車両を抽出する。
図4の例では、他車両m3が、対象の他車両(第2移動体)として抽出される。
【0062】
なお、対象の他車両は、車両Mが進行する方向とは反対方向から車両Mに向かって移動している他車両が好適である。この他車両は、対向車線を走行しており、車両Mに対して幅方向にオフセットしている。
図4のように、車両Mの前後に他車両が存在する場合、認識部130は、走行車線を走行している遠くの他車両を認識することはできないが、より離れた位置に存在している対向車線に存在する他車両を検知することができる。更に、オフセットしている他車両であれば、カーブ路などにおいても車両Mの前後に存在する他車両よりも、より容易に検知がされる。このため、第2処理部138は、他車両m3を対象とすることで、より早期に第2判定処理の判定結果を得ることができる。
【0063】
また、第1判定処理の対象の道路区画線は、車両Mから第1距離の区画線であり、第2判定処理の対象の他車両は、車両Mから第2距離の他車両である。第2距離は、第1距離よりも長い距離である。また、第1距離は、車両Mの近くの距離(例えば数メートル)であり、第2距離は、車両Mから遠く(数十メートルから数百メール)の他車両である。これにより、自動運転制御装置100は、車両Mに近い位置の地図と認識結果との整合と、車両Mから遠い位置の地図と認識結果との整合とを確認することができる。
【0064】
図6は、第2判定処理について説明するための図(その1)である。第2処理部138は、車両座標系において、地図データから得られた道路を示す領域ARに、LIDAR14より検知された他車両m3の位置をプロットした場合に、他車両m3の位置が領域ARに含まれるか否かを判定する。
図6は、他車両m3の位置が領域ARに含まれると判定される例である。
【0065】
第2処理部138が他車両m3の位置が領域ARに含まれていると判定した場合、他車両m3は地図データに対応する道路を走行しているため、地図データは信頼性が高いことが推定される。これに対して、第2処理部138が他車両m3の位置が領域ARに含まれていないと判定した場合、他車両m3は地図データに対応する道路を走行していないため、地図データは信頼性が高くないことが推定される。この場合、例えば、地図データが古かったり、一時的な事象(工事や交通規制など)によって地図データの道路の形状や位置と、実際に検知された道路の形状や位置とが異なっていたりすることが推定される。このように、認識部130は、他車両の位置と、地図データとを用いて、地図データの信頼性をより精度よく評価することができる。
【0066】
図7は、第2判定処理について説明するための図(その2)である。第2処理部138は、第2判定処理において、時系列の他車両m3の位置を地図にプロットし、位置が道路を示す領域に含まれ、且つ位置の軌跡が地図の道路の形状に沿っているか否かを判定してもよい。例えば、位置の軌跡が地図の道路の形状に沿っているとは、
図7に示すように時刻t-3から時刻tの位置を時系列に地図に並べ、それらを仮想線で繋いで形成された履歴を示す仮想線と、道路の形状を示す仮想線とが合致していることである。
【0067】
図8は、仮想線が合致しているか否かを判定する処理について説明するための図である。第2処理部138は、時刻t-3から時刻tの位置を繋いた仮想線L1と、道路の形状を示す仮想線L2とを生成する。仮想線L2は、例えば、道路の中央や、道路区画線、道路の端部(縁石)などに対応する線、または他車両が存在する位置(例えば時刻t-3の位置)を起点に道路の延在方向に仮想線を延在させた線である。
【0068】
第2処理部138は、仮想線L1と仮想線L2(または仮想線L1に重なるようにオフセットされた仮想線L2)とによって形成されたなす角に基づいて、位置の軌跡が地図の道路の形状に沿っているか否かを判定する。
図8に示すように、第2処理部138は、なす角θが基準角度θs以上である場合、位置の軌跡が地図の道路の形状に沿っていないと判定する。例えば、第2処理部138は、なす角θが基準角度θs未満である場合、位置の軌跡が地図の道路の形状に沿っていると判定する。このように、認識部130は、他車両の位置の履歴と、地図データとを用いることで、地図データの信頼性をより精度よく評価することができる。
【0069】
上記のように、認識部130は、第1判定処理および第2判定処理を行い、地図データの信頼性を評価する。評価結果は、第1制御部120に出力され、第1制御部120は、評価結果に基づいて、車両Mを制御する。
【0070】
例えば、第2処理部138は、他車両が正しい車線を走行しているか否かを判定し、正しい車線を走行している場合、地図データの信頼性が高いと判定してもよい。例えば、第2処理部138は、他車両の位置の履歴に基づいて、他車両の進行方向を特定する。第2処理部138は、他車両が車両Mに向かってきている他車両である場合、他車両の位置が対向車線に含まれるか否かを(または位置の履歴が対向車線の形状に沿っているか否かを)判定し、肯定的な判定が得られた場合、他車両は正しい車線を走行していると判定する。上記のように、第2処理部138は、他車両の移動方向と、車線の種別とを加味して、第2判定処理を行うことで、判定制度をより向上させることができる。
【0071】
[自動運転のモード]
第1制御部120の行動計画生成部140は、少なくとも第1モードの自動運転および第2モードの自動運転を実行する。第1モードの自動運転は、第2モードの自動運転よりも自動運転の自動化率(自動化度合)が高いモードである。自動運転の自動化率が高いとは、第1制御部120が操舵または加減速を制御する度合が高い(運転者が操舵または加減速の操作に介入する必要度合が低い)ことである。また、第1モードの自動運転は、第2モードの自動運転よりも運転者に課される義務(運転者が行う必要があるタスク、要求される所作)が小さいモードである。自動運転の自動化率は、例えば、周辺監視の状態または操舵の把持状態にリンクしている。
【0072】
図9は、第1モードの自動運転および第2モードの自動運転の一例について説明するための図である。第1モードの自動運転は、運転者が少なくとも周辺を監視していることを条件に実行されるモードである。第2モードの自動運転は、運転者が少なくとも周辺を監視し、且つハンズオン状態であることを条件に実行されるモードである。
【0073】
図10は、第1モードの自動運転および第2モードの自動運転の他の一例について説明するための図である。第1モードの自動運転は、運転者が周辺を監視することが不要であり、且つハンズオン状態でなくても実行されるモードであってもよい。第2モードの自動運転は、運転者が少なくとも周辺を監視することを条件に実行されるモードであってもよい。
【0074】
なお、第2モードの自動運転は、第1自動運転が行われている場合に比して車両Mの運転者に要求される周辺監視義務の度合が高いモードであってもよい。例えば、第1モードの自動運転および第2モードの自動運転は、周辺監視義務が課されるモードであり、第2モードの自動運転は、第1自動運転が行われている場合に比して車両Mの運転者に要求される周辺監視義務の度合が高いモード(より周辺を監視している必要があるモード)であってもよい。より周辺を監視している必要があるモードとは、監視の頻度が高い必要があることであったり、車両Mの表示部に車両Mの走行や運転とは関連しない画像や動画が表示されることが制限されることであったりする。
【0075】
[評価結果の利用]
行動計画生成部140は、判定処理の結果に基づいて、第1モードの自動運転を開始するか、第1モードの自動運転を終了するか、第2モードのモードを開始するかを決定する。
【0076】
図11は、自動運転のモードの開始または終了と、判定処理の結果との関係について説明するための図である。第1モードの開始の条件は、少なくとも第1判定処理の結果が肯定的であることである。第1モードの開始の条件において、第2判定処理の結果は、肯定的であってもよいし、考慮されてなくてもよい。
【0077】
第1モードの終了の条件は、少なくとも第2判定処理の結果が否定的であることである。第1モードの終了の条件において、第1判定処理の結果は考慮されなくてよい。
【0078】
第2モードの開始の条件は、少なくとも第1判定処理の結果が肯定的であることである。第2モードの開始の条件において、第1判定処理の結果または第2判定処理の結果は考慮されてなくてよい。
【0079】
上記のように、第1モードの自動運転が行われている状態において、第2判定処理が否定的である場合、第1モードの自動運転は継続されず、自動運転の状態は第2モードの自動運転に移行する。
【0080】
[フローチャート(その1)]
図12は、行動計画生成部140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、行動計画生成部140は、第1モードの自動運転の開始の条件を満たす否かを判定する(ステップS100)。第1モードの自動運転の開始の条件を満たす場合、行動計画生成部140は、第1モードの自動運転を実行する(ステップS102)。これにより、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0081】
[フローチャート(その2)]
図13は、行動計画生成部140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、本フローチャートは、
図12のフローチャートの処理が終了した後に開始される。まず、行動計画生成部140は、第1モードの自動運転の終了の条件を満たすか否かを判定する(ステップS200)。第1モードの自動運転の終了の条件を満たした場合、行動計画生成部140は、第2モードの自動運転の開始の条件を満たすか否かを判定する(ステップS202)。
【0082】
第2モードの自動運転の開始の条件を満たす場合、行動計画生成部140は、第2モードの自動運転を開始する(ステップS204)。第2モードの自動運転の開始の条件を満たさない場合、行動計画生成部140は、第2モードの自動運転よりも、自動運転の度合が低い自動運転のモード(または運転支援)を開始、または自動運転から手動運転に移行するための処理を実行する(ステップS206)。運転支援とは、前走車両と車両Mとの距離を所定距離に維持して走行をするACC(Adaptive Cruise Control System)や、車両Mが走行する車線の道路区画線と、車両Mとの距離を一定に維持して車両Mを走行させるLKAS(Lane Keeping Assist System)に代表される支援である。
【0083】
このように、自動運転制御装置100は、判定処理の結果に基づいて自動運転のモードを制御する。例えば、上述したように、地図データの信頼性がより精度よく評価されているため、自動運転制御装置100は、より車両Mの周辺の状況に対する、自動運転制御装置100が保持している情報の信頼度を加味した制御を実現することができる。これにより、自動運転制御の信頼性が向上する。
【0084】
例えば、道路の周辺の地物の位置や道路の地物の位置と、地図データとを用いて地図データの信頼性を判断することができるが、静止している地物よりも、実際に道路を走行している移動体の位置と地図データとを用いて地図データの信頼性を判断する方が、信頼性の判断はより精度よく行われる。更に、上述した道路の周辺等に地物が存在しない場合(例えば田んぼの間にある道)であっても、移動体を用いて、より精度よく地図データの信頼性が判断される。
【0085】
更に、道路区画線などの立体的でない対象を判定対象とするより、本実施形態のように立体物である移動体を判定対象とすることで、認識部130は、より遠方の地図データの信頼度を判断することができる。より遠方の地図データの信頼度を判断することができるため、自動運転制御装置100は、自動運転に関する制御をより早く行うことができる。例えば、所定距離前方の地図データの信頼度が低いと判断された場合、自動運転制御装置100は、より早い段階で第2モードの自動運転に切り替えるための処理(乗員に周辺監視またはハンズオンを行うことを報知する処理)を行うことができる。これにより、乗員は、余裕を持ってモードの切り替えに対する準備を行うことができる。
【0086】
このように、本実施形態では、認識部130が、より精度よく地図データの信頼を判断し、行動計画生成部140が、判断された地図データの信頼度に基づいて、自動運転に関する制御を行うことで、自動運転の信頼度が向上する。
【0087】
図14は、自動運転のモードが切り替わる例について説明するための図である。例えば、車両Mが保持する地図データは、地域ごとに最新であったり、最新よりも古いバージョンであったりする場合がある。例えば、地域A、地域B、および地域Dの地図データは最新であり、地域Cの地図データは最新よりも古いバージョンであるものとする。地域Cの地図データと、実際の地域Cの道路形状とは異なるものとする。
【0088】
例えば、車両Mが地域Aおよび地域Bで第1モードの自動運転を実行し、地域Cに進入する直前(または進入した後)、第2判定結果が否定的となる。この場合、第1モードの自動運転を実行する条件が満たされなくなるため、車両Mは、第1モードの自動運転から第2モードの自動運転に移行する。次に、車両Mが、地域Dに進入する直前(または進入した後)、第1判定処理および第2判定処理の結果が肯定的となり、第1モードの自動運転を実行する条件を満たすと、車両Mは、第1モードの自動運転を実行する。
【0089】
このように、車両Mは、周辺の状況と、自身が保持する情報とに基づいて、信頼性が高い自動運転を行う。
【0090】
上記の例では、地図データが古いバージョンの例について説明したが、例えば、地図データが最新であっても、工事や交通規制により第1判定処理の結果が否定的となる場合がある。この場合も、上記のように第1モードの自動運転が終了する。
【0091】
また、第1の道路リンクにおいて、第2判定処理が否定的な結果であった場合、第2判定処理が停止され、隣接する次の道路リンクに近づいた場合に、第2判定処理が再開されてもよい。また、第2判定処理が否定的な結果となって停止された場合、第2判定処理が否定的な結果となったときから所定時間が経過した場合または車両Mが所定距離走行した場合に、第2判定処理は再開されてもよい。例えば、自動運転制御装置100は、第1モードの自動運転を行っている場合に、第2移動体の位置が道路情報の道路を示す領域に含まれていないと判定された場合、第2移動体の位置が道路情報の道路を示す領域に含まれているか否かを判定する処理を停止し、判定を停止した後の「所定のタイミング」で、判定を再開する。「所定のタイミング」は、例えば「次の道路リンクに近づいたタイミング」、「第2判定処理を停止したときから所定時間が経過したタイミングまたは車両Mが所定距離走行したタイミング」、または「第1モードの自動運転が再開されたタイミング」である。自動運転制御装置100は、第2判定処理が否定的な結果である場合、第1モードの自動運転を停止する。自動運転制御装置100が第1モードの自動運転を再開させる条件は、例えば、第1判定処理または第2判定処理の判定結果のうち一方または双方が肯定的なことである。これらの処理により、不要な処理が軽減されたり、適切なタイミングで第2判定処理が行われたりする。更に、より第1モードの自動運転が適切なタイミングで再開される。
【0092】
以上説明した実施形態によれば、認識部130は、検知結果に含まれる第2移動体の位置と、地図データの道路情報とを照合して、第2移動体の位置が道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定することにより、地図データの信頼性をより精度よく評価することができる。更に、自動運転制御装置100は、信頼性が高い地図データの評価結果を用いて、より信頼性が高い自動運転することができる。
【0093】
なお、上記の実施形態では、第1取得部134A、第2取得部134B、第1処理部136、および第2処理部138は、自動運転制御装置100に含まれるものとして説明したが、これに代えて、これらの機能部と同様の機能を有する機能部は、
図15に示すように、処理装置300に含まれてもよい。処理装置300は、自動運転制御装置100とは別体である。処理装置300は、物体認識部302、第1取得部304、第2取得部306、第1処理部308、および第2処理部310を備える。物体認識部302、第1取得部304、第2取得部306、第1処理部308、および第2処理部310は、それぞれ第1取得部134A、第2取得部134B、第1処理部136、および第2処理部138と同等の機能を有する。この場合、第1取得部304は、他の装置等から地図データを取得し、第2取得部306は、他の装置等から検知結果(カメラや、レーダ装置、LIDARなどの検知結果)を取得する。自動運転制御装置100は、処理装置300から判定結果を取得し、取得した判定結果に基づいて、制御を実行する。
【0094】
[ハードウェア構成]
図16は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100は、通信コントローラ100-1、CPU100-2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)100-3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)100-4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置100-5、ドライブ装置100-6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100-1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。記憶装置100-5には、CPU100-2が実行するプログラム100-5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM100-3に展開されて、CPU100-2によって実行される。これによって、第1制御部120、第2制御部160、およびこれらに含まれる機能部のうち一部または全部が実現される。
【0095】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
道路情報を有する地図データを取得し、
第1移動体の周辺を検知する一以上の検知部により検知された検知結果を取得し、
前記検知結果に含まれる第2移動体の位置と、前記地図データの道路情報とを照合して、前記第2移動体の位置が前記道路情報の道路を示す領域に含まれるか否かを判定する、
ように構成されている、処理装置。
【0096】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0097】
1‥制御システム、100‥自動運転制御装置、120‥第1制御部、130‥認識部、134A‥第1取得部、134B‥第2取得部、136‥第1処理部、138‥第2処理部、140‥行動計画生成部、160‥第2制御部、170‥監視部