(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/593 20210101AFI20221209BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20221209BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20221209BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M50/588
H01M50/564
(21)【出願番号】P 2020176042
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517432536
【氏名又は名称】株式会社CAPABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】仁平 聡
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-239614(JP,A)
【文献】特開平06-134800(JP,A)
【文献】特開平06-317720(JP,A)
【文献】特開2022-045932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子のうち、四角柱状である樹脂切り部の外周を閉塞することで、前記端子の所定部位の周囲に樹脂の注入空間を形成する空間形成工程と、
前記注入空間に樹脂を注入することで、前記端子に樹脂部品を射出成形する射出成形工程と、を含み、
前記空間形成工程は、
互いに対向し、且つ第1所定距離離間した一対の閉塞面の間に、前記樹脂切り部を設置する設置工程と、
前記一対の閉塞面の間に設置された前記樹脂切り部における4つの外周面のうち、前記閉塞面に平行に設置された一対の第1外周面に対して交差する方向に延びる一対の第2外周面の間を押圧することで、前記一対の第2外周面の間の距離を第2所定距離とする押圧工程と、
を含み、
前記押圧工程では、前記一対の第2外周面の少なくとも一方を、前記第2外周面側に突出した突起を備える押圧面によって押圧
し、前記突起により前記樹脂切り部を前記一対の第1外周面が離間する方向に押し広げることを特徴とする、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記設置工程では、互いに対向する前記一対の閉塞面の間に前記樹脂切り部が配置された状態で、前記一対の閉塞面の間の距離を近づけることで、前記一対の閉塞面の間の距離を前記第1所定距離とすることを特徴とする、
請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記端子の前記樹脂切り部のうち、前記一対の第2外周面間の距離は、前記一対の第1外周面間の距離よりも短いことを特徴とする、
請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記突起は、
前記押圧面のうち、前記一対の閉塞面同士の中間位置よりも一方の前記閉塞面側にずれて配置された第1突起と、前記中間位置よりも他方の前記閉塞面側に配置された第2突起とを含むことを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、パソコンや携帯端末等のポータブル電源、あるいはEV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)等の車両駆動用電源として広く用いられている。二次電池では、電池ケースの内部に収容された発電要素を外部に電気的に接続するための端子が用いられる。例えば、端子と電池ケースの間の絶縁を確保する等の目的で、端子の所定部位に樹脂部品が設けられる場合がある。
【0003】
端子の所定部位に樹脂部品を設置するための方法の1つとして、射出成形を利用する方法が考えられる。射出成形とは、加熱溶融させた樹脂材料を金型内に射出注入した後、樹脂材料を冷却して固化させることで、成形品を得る方法である。射出成形を利用する場合、樹脂材料が、注入された空間から外部に漏れてしまうと、電池性能の低下等を引き起こす可能性がある。例えば、特許文献1に記載の光モジュールの製造方法では、キャビティ部から樹脂が流出することを防止するために、キャビティ部と整列部の間に樹脂切り板が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
端子のうち四角柱状の部分を、樹脂切りを行う樹脂切り部とする場合、金型に形成された矩形の孔に樹脂切り部が隙間なく嵌まり込む必要がある。しかし、樹脂切り部の形状を高い精度で形成することは困難な場合が多く、形成された複数の樹脂切り部の寸法には差が生じやすい。
【0006】
ここで、樹脂切り部を、第1方向と、第1方向に交差する第2方向とで別々に押圧することで、樹脂切り部における樹脂切りを行うことができれば、樹脂切り部の寸法のばらつきを許容できると考えられる。しかし、第1方向・第2方向ともに定圧で押圧して隙間を埋めようとすると、寸法のばらつきの影響で、第1方向に押圧する部材と第2方向に押圧する部材の間に隙間が生じてしまい、樹脂切りが適切に実行されない場合がある。また、第1方向・第2方向ともに定寸で単純に押圧すると、樹脂切り部の寸法のばらつきが吸収されない可能性、および、樹脂切り部に過度な変形・破損等が生じる可能性がある。
【0007】
本発明の典型的な目的は、端子の所定部位に樹脂材料を適切に形成することが可能な二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される一態様の二次電池の製造方法は、端子のうち、四角柱状である樹脂切り部の外周を閉塞することで、上記端子の所定部位の周囲に樹脂の注入空間を形成する空間形成工程と、上記注入空間に樹脂を注入することで、上記端子に樹脂部品を射出成形する射出成形工程と、を含み、上記空間形成工程は、互いに対向し、且つ第1所定距離離間した一対の閉塞面の間に、上記樹脂切り部を設置する設置工程と、上記一対の閉塞面の間に設置された上記樹脂切り部における4つの外周面のうち、上記閉塞面に平行に設置された一対の第1外周面に対して交差する方向に延びる一対の第2外周面の間を押圧することで、上記一対の第2外周面の間の距離を第2所定距離とする押圧工程と、を含み、上記押圧工程では、上記一対の第2外周面の少なくとも一方を、上記第2外周面側に突出した突起を備える押圧面によって押圧する。
【0009】
本開示に係る二次電池の製造方法では、突起を備える押圧面によって樹脂切り部が押圧されると、樹脂切り部は、一対の第1外周面が離間する方向に適度に押し広げられる。その結果、樹脂切り部の寸法のばらつきに関わらず、樹脂切り部における一対の第1外周面と、一対の閉塞面の間の隙間が閉塞される。また、一対の第2外周面と、一対の押圧面の間の隙間は、押圧工程によって閉塞される。つまり、本開示に係る製造方法によると、樹脂切り部の寸法のばらつきに関わらず、樹脂切り部の周囲が、部材の変形・破損等の発生が抑制された状態で適切に閉塞される。よって、端子の所定部位に樹脂材料が適切に形成される。
【0010】
ここに開示される二次電池の製造方法の効果的な一態様では、設置工程において、互いに対向する一対の閉塞面の間に樹脂切り部が配置された状態で、一対の閉塞面の間の距離を近づけることで、一対の閉塞面の間の距離を第1所定距離とする。この場合には、予め第1所定距離離間した一対の閉塞面の間に樹脂切り部が設置される場合に比べて、樹脂切り部を容易に一対の閉塞面の間に設置することができる。従って、例えば、樹脂切り部における一対の第1外周面の距離が、第1所定距離と近い場合等でも、一対の閉塞面の間に適切に樹脂切り部が設置される。また、樹脂切り部の寸法のばらつき等の影響で、一対の第1外周面の距離が第1所定距離よりも長い場合でも、樹脂切り部が適切に設置される。ただし、一対の閉塞面の間の距離は、第1所定距離に固定されていてもよい。
【0011】
ここに開示される二次電池の製造方法の効果的な一態様では、端子の樹脂切り部のうち、一対の第2外周面間の距離は、一対の第1外周面間の距離よりも短い。この場合には、一対の第2外周面間の距離が一対の第1外周面間の距離以上である場合に比べて、押圧工程によって樹脂切り部が押し広げられる距離(つまり、一対の第1外周面が離間する方向に押し広げられる距離)が長くなり易い。よって、より適切に樹脂切り部の周囲が閉塞される。
【0012】
ここに開示される二次電池の製造方法の効果的な一態様では、突起は、押圧面のうち、一対の閉塞面同士の中間位置よりも一方の閉塞面側にずれて配置された第1突起と、中間位置よりも他方の閉塞面側に配置された第2突起とを含む。この場合、樹脂切り部は、第1突起によって一方の閉塞面側に押し広げられると共に、第2突起によって他方の閉塞面側に押し広げられる。従って、樹脂切り部と一対の閉塞面の間の隙間が、より効率良く閉塞される。
【0013】
樹脂切り部を形成する部材の硬度が小さい程、押圧面の突起の高さ(つまり、押圧面から突起の先端までの長さ)が大きくなるように、突起の高さが設定されていてもよい。この場合、樹脂切り部を形成する部材の材質に応じて適切に射出成形が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】射出成形機1を右斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図1におけるA-A線矢視方向断面図である。
【
図3】右基部2および可動閉塞部材20(
図1参照)を取り外した状態の射出成形機1の一部を、右斜め後方から見た斜視図である。
【
図4】
図2におけるB-B線矢視方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0016】
図1は、射出成形機1を右斜め上方から見た斜視図である。
図1における紙面上側を射出成形機1および端子10の上側とし、紙面下側を射出成形機1および端子10の下側とする。
図1における紙面右手前側を射出成形機1および端子10の右側とし、紙面左奥側を射出成形機1および端子10の左側とする。
図1における紙面左手前側を射出成形機1および端子10の前側とし、紙面右奥側を射出成形機1および端子10の後側とする。
図2は、
図1におけるA-A線矢視方向断面図である。従って、
図2における紙面上下方向が射出成形機1および端子10の上下方向となり、紙面左右方向が射出成形機1および端子10の左右方向となる。
図3は、右基部2および可動閉塞部材20(
図1参照)を取り外した状態の射出成形機1の一部を、右斜め後方から見た斜視図である。
図4は、
図2におけるB-B線矢視方向断面図である。従って、
図4における紙面上下方向が射出成形機1および端子10の前後方向となり、紙面左右方向が射出成形機1および端子10の左右方向となる。
【0017】
(端子)
まず、本実施形態の製造方法によって製造される二次電池の端子10について説明する。端子10は、二次電池の電池ケース内に収容された発電要素を、電気的に外部に接続する。
図2および
図3に示すように、端子10は、上下方向を長手方向とする略板状の部材である。端子10は、外部露出部11および被収容部12を備える。外部露出部11は、電池ケースの外部に露出される。被収容部12は、電池ケースの内部に収容される。外部露出部11の左右方向の幅は、被収容部12の左右方向の幅よりも長い。
図1および
図3に示すように、外部露出部11の上端部は前方(正面側)に向けて屈曲されている。
【0018】
図2および
図3に示すように、端子10のうち、外部露出部11と被収容部12の間に位置する四角柱状の部位は、後述する射出成形の際に樹脂漏れが遮断される樹脂切り部13となる。端子10が射出成形機1に装着され、樹脂切り部13の外周が閉塞されると、端子10の所定部位(本実施形態では、樹脂切り部13の上方)の周囲に、樹脂の注入空間S(
図2参照)が形成される。注入空間Sに樹脂が注入された後、固化されることで、所定部位に樹脂部品が射出成形される。形成された樹脂部品は、端子10と電池ケースを絶縁する。
【0019】
図4に示すように、四角柱状である樹脂切り部13の4つの外周面のうち、左方および右方を向き、且つ互いに平行に延びる一対の面を、第1外周面14Aとする。また、樹脂切り部13の4つの外周面のうち、一対の第1外周面14Aに対して交差する方向に延びる(つまり、
図4における前方および後方を向く)一対の面を、第2外周面14Bとする。本実施形態では、樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bの間の距離DBは、一対の第1外周面14Aの間の距離DAよりも短い。この詳細については後述する。
【0020】
なお、二次電池の正極端子および負極端子の少なくとも一方が、本開示に係る製造方法によって製造されればよい。端子10を形成する材質は、種々の条件(例えば、正極端子および負極端子のいずれであるか等)に応じて適宜選択される。例えば、端子10のうち、外部露出部11の材質と被収容部12の材質が異なっていてもよい。この場合、射出成形される樹脂部品は、端子10における外部露出部11と被収容部12を固定する固定部を兼ねてもよい。端子10の材質には、例えば、アルミニウムおよび銅等の少なくともいずれかの金属を採用できる。
【0021】
(射出成形機)
本実施形態の二次電池の製造工程で使用される射出成形機1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の射出成形機1は、右基部2、左基部3、可動閉塞部材20、第1固定部材30、押圧部材40、および第2固定部材50(
図3および
図4参照)を備える。さらに、射出成形機1は、射出成形時に端子10の上部を覆う蓋部材(図示せず)を備えている。右基部2は、樹脂部材が射出成形される端子10の右側に配置されており、端子10を設置するために必要な空間を十分に確保する等の目的により可動状態に設けられている。右基部2には、可動閉塞部材20が設けられている。左基部3は、端子10の左側に配置される。左基部3には、第1固定部材30(詳細は後述する)が設けられている。
【0022】
可動閉塞部材20は、端子10の所定部位の閉塞をより確実に行うために設けられており、本実施形態では第1固定部材30との間で、端子10の樹脂切り部13(
図2から
図4参照)を挟み込む。換言すると、
図4に示すように、端子10の樹脂切り部13は、可動閉塞部材20における左側先端の閉塞面21と、第1固定部材30における右側の閉塞面31の間に設置される。本実施形態の可動閉塞部材20は、剛性を有する板状の部材である。
【0023】
可動閉塞部材20は、左右方向に可動可能に設けられている。詳細には、可動閉塞部材20は、一対の閉塞面21、31の間の距離が第1所定距離よりも長くなる待機位置と、一対の閉塞面21、31の間の距離が第1所定距離となる作動位置の間で移動することができる。
【0024】
可動閉塞部材20を移動させる機構には、種々の機構を採用することができる。一例として、本実施形態の可動閉塞部材20には、左右方向に対して斜めに傾斜した傾斜部(図示せず)が形成されている。作動片(図示せず)が傾斜部に摺動しながら押し込まれることで、可動閉塞部材20が左方へ移動する。作動片が傾斜部に対して完全に押し込まれると、一対の閉塞面21、31の間の距離が第1所定距離となる。従って、本実施形態の可動閉塞部材20の移動機構は、シリンダー等を用いる場合とは異なり、樹脂を溶融する際の熱の影響を受けにくい。さらに、本実施形態の可動閉塞部材20の移動機構によると、可動閉塞部材20が作動位置に移動した際の、一対の閉塞面21、31の間の距離が、より高い精度で第1所定距離となる。ただし、可動閉塞部材20の移動機構を変更することも可能である。
【0025】
押圧部材40は、
図1に示すように、右基部2と左基部3の間であり、且つ端子10の前側に、前後方向に移動可能に配置される。また、第2固定部材50(
図3および
図4参照)は、端子10の後側に配置されている。押圧部材40は、後方に移動することで、第2固定部材50との間で端子10を押圧する。詳細には、
図4に示すように、押圧部材40は、端子10の樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bの間を押圧することで、一対の第2外周面14Bの間の距離DBを第2所定距離とする。換言すると、樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bは、押圧部材40の後端の押圧面41と、第2固定部材50の前端の押圧面51との間で、定寸で押圧される。
【0026】
図3および
図4に示すように、押圧部材40の押圧面41、および第2固定部材50の押圧面51(
図4参照)の少なくとも一方には、端子10における第2外周面14B(
図4参照)側に突出する突起42が形成されている。従って、一対の押圧面41、51によって端子10の樹脂切り部13が押圧されると、樹脂切り部13は、一対の第1外周面14A(
図4参照)が離間する方向(本実施形態では左右方向)に適度に押し広げられる。
【0027】
図3および
図4に示すように、本実施形態では、押圧部材40の押圧面41のうち、第1所定距離となった一対の閉塞面21、31(
図4参照)の中間位置よりも一方の閉塞面21側に配置された第1突起42Rと、他方の閉塞面31側に配置された第2突起42Lが形成されている。この効果については後述する。
【0028】
なお、樹脂切り部13を形成する部材の硬度が小さい程、押圧部材40によって押圧された樹脂切り部13は、一対の第1外周面14Aが離間する方向(左右方向)だけでなく、端子10の長手方向(本実施形態では上下方向)にも押し広げられ易くなる。従って、本実施形態では、樹脂切り部13を形成する部材の硬度が小さい程、押圧面41に形成される突起42の高さ(つまり、押圧面41から突起42の先端までの長さ)が大きくなるように、突起42が形成されている。例えば、樹脂切り部13の材質が銅である場合の突起42よりも、樹脂切り部13の材質がアルミニウムである場合の突起42の方が、高さが大きくなるように形成する。その結果、樹脂切り部13の材質に応じて適切に射出成形が行われる。
【0029】
ただし、突起42の構成を変更することも可能である。例えば、突起42は、第2固定部材50の押圧面51(
図4参照)に形成されていてもよい。押圧面41および押圧面51の両方に突起42が形成されていてもよい。突起42の数を変更することも可能である。
【0030】
押圧部材40を前後方向に移動させる移動機構の一例について説明する。
図1に示すように本実施形態の押圧部材40の上部には、前後方向に対して斜めに傾斜した傾斜部43が形成されている。押圧部材40と第2固定部材50の間に端子10が配置された状態で、端子10の上部を覆う蓋部材(図示せず)が上方から装着されると、蓋部材から下方に突出する作動片(図示せず)が、押圧部材40の傾斜部43に摺動する。その結果、作動片が下方に押し込まれるに従って、押圧部材40が所定の位置まで後方に移動する。従って、本実施形態の押圧部材40の移動機構は、シリンダー等を用いる場合とは異なり、樹脂を溶融する際の熱の影響を受けにくい。さらに、本実施形態の押圧部材40の移動機構によると、端子10の第2外周面14Bの間を高い精度で定寸押圧することが可能である。ただし、押圧部材40の移動機構を変更してもよい。例えば、モータ等のアクチュエータが移動機構に使用されてもよい。
【0031】
(製造工程)
本実施形態における二次電池(詳細には端子10)の製造工程について説明する。本実施形態における端子10の製造工程は、空間形成工程と射出成形工程を含む。空間形成工程では、端子10における四角柱状の樹脂切り部13の外周が閉塞されることで、端子10の所定部位の周囲に、樹脂の注入空間S(
図2参照)が形成される。詳細には、空間形成工程は、設置工程と、押圧工程とを含む。
【0032】
設置工程では、互いに対向し、且つ第1所定距離離間した一対の閉塞面21、31の間に樹脂切り部13が設置される。詳細には、樹脂切り部13における4つの外周面のうち、一対の第1外周面14A(
図4参照)の各々が、一対の閉塞面21、31と対向するように、樹脂切り部13が設置される。
【0033】
詳細には、本実施形態の設置工程では、互いに対向する一対の閉塞面21、31の間に樹脂切り部13が配置された状態で、可動閉塞部材20が待機位置から作動位置に移動される。その結果、一対の閉塞面21、31の間の距離が近づけられて、第1所定距離とされる。従って、予め第1所定距離離間した一対の閉塞面21、31の間に樹脂切り部13が設置される場合に比べて、樹脂切り部13が容易に一対の閉塞面21、31の間に設置される。従って、例えば、樹脂切り部13における一対の第1外周面14A間の距離が、第1所定距離と近い場合等でも、一対の閉塞面21、31の間に適切に樹脂切り部13が設置される。また、樹脂切り部13の寸法のばらつき等の影響で、一対の第1外周面14Aの間の距離が第1所定距離よりも長い場合でも、樹脂切り部13が適切に設置される。
【0034】
押圧工程では、押圧部材40を移動させることで、押圧部材40の押圧面41と、第2固定部材50の押圧面51の間で、樹脂切り部13を押圧する。詳細には、樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bの間が、一対の押圧面41、51によって押圧されることで、一対の第2外周面14Bの間の距離が第2所定距離とされる。前述したように、押圧面41には、第2外周面14B側に突出した突起42が形成されている。従って、押圧工程が実行されると、樹脂切り部13は、一対の第1外周面14Aが離間する方向に適度に押し広げられる。その結果、樹脂切り部13の寸法のばらつきに関わらず、樹脂切り部13における一対の第1外周面14Aと、一対の閉塞面21、31の間の隙間が閉塞される。また、一対の第2外周面14Bと、一対の押圧面41、51の間の隙間は、押圧工程によって閉塞される。よって、樹脂切り部13の寸法のばらつきに関わらず、樹脂切り部13の周囲が、部材の変形・破損等の発生が抑制された状態で適切に閉塞される。
【0035】
図4に示すように、樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bの間の距離DBは、一対の第1外周面14Aの間の距離DAよりも短い。従って、一対の第2外周面14B間の距離が、一対の第1外周面14A間の距離以上である場合に比べて、押圧工程によって樹脂切り部13が押し広げられる距離(つまり、一対の第1外周面14Aが離間する方向に押し広げられる距離)が長くなり易い。よって、より適切に樹脂切り部13の周囲が閉塞される。
【0036】
また、押圧部材40の押圧面41のうち、第1所定距離となった一対の閉塞面21、31(
図4参照)の中間位置よりも一方の閉塞面21側に配置された第1突起42Rと、他方の閉塞面31側に配置された第2突起42Lが、突起42として形成されている。従って、樹脂切り部13は、第1突起42Rによって一方の閉塞面21側に押し広げられると共に、第2突起42Lによって他方の閉塞面31側に押し広げられる。従って、樹脂切り部13と一対の閉塞面21、31の間の隙間が、より効率良く閉塞される。
【0037】
射出成形工程では、加熱溶融された樹脂が、注入空間Sに射出注入される。その後、注入された樹脂が冷却されて固化される。その結果、端子10の所定部位に樹脂部品が形成される。一例として、本実施形態で使用される樹脂はPPE(ポニフェニレンエーテル)であるが、樹脂の材質を変更することも可能である。
【0038】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 射出成形機
10 端子
13 樹脂切り部
14A 第1外周面
14B 第2外周面
21 閉塞面
31 閉塞面
41 押圧面
42 突起
51 押圧面