(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いて製造したタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20221209BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20221209BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221209BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L15/00
C08K3/36
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020202763
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0164494
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520258806
【氏名又は名称】ハンクック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】キム イルジン
(72)【発明者】
【氏名】キム キヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒュンジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンホ
(72)【発明者】
【氏名】アン ビュンキュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンヒュク
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044889(WO,A1)
【文献】特開2008-063364(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199915(WO,A1)
【文献】特開2015-221884(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044891(WO,A1)
【文献】特開2002-114874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 1/00 - 4/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン含有量が20重量%~30重量%であり、ブタジエン中のビニル含有量が20重量%~30重量%である連続式の方法によって製造された溶液重合スチレン-ブタジエンゴムを含む原料ゴム100重量部と、
シリカ90重量部~110重量部と、
変性液状ブタジエンゴム20重量部~40重量部
と、を含み、
前記変性液状ブタジエンゴムは、ガラス転移温度が-90℃~-100℃であり、ビニル含有量が10重量%~20重量%であり、シリケートを使用してゴム鎖内で変性が行われたものである、
タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性液状ブタジエンゴムは、重量平均分子量が5,000g/mol~50,000g/molで
ある、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記シリケートは、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか一つであるものである、請求項
1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つの項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いて製造したタイヤに関し、氷雪路面での制動性能を大きく向上させると同時に、耐摩耗性能も向上させることにより、四季用トレッドゴム組成物として使用することができるタイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いて製造したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にヨーロッパでは、夏はウェット路面での制動性能が向上した夏用タイヤを使用し、冬は氷雪路面での制動性能を大きく向上させたタイヤに交換して使用してきた。これは、ドライ又はウェット路面と氷雪路面での制動性能に求められるゴム組成物の特性が、互いに相反するので、どちらか一方の性能を選ぶと、他方の性能は不利になるしかない。
【0003】
こうした環境の中で、燃費性能の向上が継続的に求められ、2012年に燃費性能とウェット路面での制動性能を等級化したラベリング制度が導入されることで、燃費性能と制動性能を同時に満足させる技術の開発が行われ続けてきた。
【0004】
近年、地球温暖化が急速に進むにつれ、世界中で年間降雪量が急激に減少し、雪が降って路面が氷状態になる場合もあるが、雪が半溶けでドロドロになった状態や、雨が降ってウェット路面になる日が増えていることから、氷雪路面での制動性能にも優れ、ウェット路面での制動性能にも優れた四季用タイヤの使用が増加している。また、四季用タイヤを使用すると、季節に応じてタイヤを交換する必要がなくなるので、消費者のニーズが高まり続けている。
【0005】
しかし、氷雪路面での制動性能を向上させた四季用タイヤは、季節に応じてタイヤを交換することなく継続的にタイヤを使用することができるため、耐摩耗性能の向上が不可欠である。
【0006】
特に、制動性能は自動車の安全性に関わる問題であり、耐摩耗性能は消費者の経済性に関わる問題であるため、タイヤメーカーの主な関心事となっており、それを解決するための研究開発が盛んに行われているのが実情である。
【0007】
このような問題を解決するために、従来では、冬用トレッドタイヤのゴム組成物にスチレン含有量が高いスチレン-ブタジエンゴムを使用することにより、ゴム組成物のガラス転移温度を上昇させて、ドライ又はウェット路面での制動性能を向上させる方法を使用していた。しかし、スチレン含有量が増加するにつれて、低温でのゴムの硬度及びモジュラスが上昇して、氷雪路面での制動性能が低下してしまう問題がある。
【0008】
また、補強剤としてシリカを用いる方法も多く使われているが、シリカは、カーボンブラックに比べ補強性に優れて、ドライ又はウェット路面での制動性能に優れており、低温での温度依存性が弱くて、温度減少に伴う硬度及びモジュラスの増加率が、カーボンブラックに比べ低いため、氷雪路面での制動性能にも有利であるというメリットがある。しかし、冬用タイヤトレッドのゴム組成物に、単に補強剤をカーボンブラックからシリカに替えるとしても、ウェット路面での制動性能が飛躍的に改善されるわけではない。
【0009】
また、液状ブタジエンを使用して氷雪路面での制動性能を大きく向上させると同時に、ドライ路面及びウェット路面での制動性能にも優れ、転がり抵抗を低くする方法も使用されているが、液状ブタジエンの使用による耐摩耗性能が効果的に改善されるわけではないので、消費者のニーズを全て満たすことは、難しい技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、氷雪路面での制動性能を大きく向上させると同時に、耐摩耗性能も大きく向上させることにより、四季用トレッドゴム組成物として使用することができるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、前記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造したタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例によると、スチレン含有量が20重量%~30重量%であり、ブタジエン中のビニル含有量が20重量%~30重量%である連続式の方法によって製造された溶液重合スチレン-ブタジエンゴムを含む原料ゴム100重量部と、シリカ90重量部~110重量部と、変性液状ブタジエンゴム20重量部~40重量部とを含むタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【0013】
前記変性液状ブタジエンゴムは、重量平均分子量が5,000g/mol~50,000g/molであり、ガラス転移温度が-90℃~-100℃であり、ビニル含有量が10重量%~20重量%であり、シリケートを使用してゴム鎖内で変性が行われたものであってもよい。
【0014】
前記シリケートは、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0015】
本発明の別の一実施例によると、前記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造したタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、氷雪路面での制動性能を大きく向上させると同時に、耐摩耗性能も大きく向上させることにより、四季用トレッドゴム組成物として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
本発明の一実施例に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、原料ゴム100重量部と、シリカ90重量部~110重量部と、液状ブタジエンゴム20重量部~40重量部とを含む。
【0019】
前記原料ゴムは、スチレン含有量が20重量%~30重量%であり、ブタジエン中のビニル含有量が20重量%~30重量%である連続式の方法によって製造された溶液重合スチレン-ブタジエンを含む。
【0020】
前記連続式の方法によって製造された溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、多量の低分子物質を含んでいるため、回分式の方法によって製造されたスチレン-ブタジエンゴムに比べて転がり抵抗の面では不利であるものの加工性には優れており、ヒステリシスロスが高くてドライ路面やウェット路面での制動性能に優れている。
【0021】
前記シリカは、BET表面積が160m2/g~180m2/gであり、DBP吸油量が180cc/100g~210cc/100gである沈降性シリカを使用することができる。この場合、分散が容易であるため、耐摩耗性能の向上に有利であり、ウェット路面での制動性能をさらに向上させることができる。
【0022】
前記シリカは、前記原料ゴム100重量部に対して90重量部~110重量部、具体的には、95重量部~100重量部で含まれてもよい。前記シリカの含有量が前記原料ゴム100重量部に対して90重量部未満である場合、シリカ含有量の低下に伴うウェット路面での制動性能が低下する虞があり、110重量部を超過する場合、シラスカの量が多くて混合時の加工が困難になる虞がある。
【0023】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、軟化剤として、従来のプロセスオイルの代わりに変性液状ブタジエンゴムを使用する。したがって、前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、前記変性液状ブタジエンゴム以外のプロセスオイルを含まなくてもよい。前記原料ゴム及びシリカ組成とともに前記変性液状ブタジエン軟化剤を使用することにより、前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、氷雪路面での制動性能を大きく向上させると同時に、耐摩耗性能も大きく向上させて、四季用トレッドゴム組成物として適切に使用することができる。
【0024】
前記変性液状ブタジエンゴムの含有量は、前記原料ゴム100重量部に対して20重量部~40重量部であってもよい。前記液状ブタジエンゴムの含有量が、前記原料ゴム100重量部に対して20重量部未満であると、原料ゴム及びシリカの混合が円滑に行われない虞があり、氷雪路面での制動性能の向上効果が大きくない虞がある。また、前記液状ブタジエンゴムの含有量が、前記原料ゴム100重量部に対して40重量部を超過すると、配合ゴムのガラス転移温度が大きく減少して、ウェット路面での制動性能が不利になる逆効果が生じかねない。
【0025】
一方、ゴム鎖の両末端が変性された変性液状ブタジエンゴムは、重量平均分子量5,000g/mol以上で合成されることは難しい虞がある。また、前記末端が変性された変性液状ブタジエンゴムは、シリカ間の化学結合の増加によってモジュラスが急激に上昇して、投入量を増やすことが難しい問題もある。さらに、前記末端が変性された変性液状ブタジエンゴムは、モジュラスの上昇に伴うToughness減少によって耐摩耗性が改善されない虞がある。
【0026】
これを解決するために、本発明の一実施例に係る変性液状ブタジエンゴムは、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか一つのシリケートを使用して、ゴム鎖内に変性されていなければならない上、重量平均分子量が5,000g/mol~50,000g/molであり、ガラス転移温度が-90℃~-100℃であり、ビニル含有量が10重量%~20重量%であってもよい。すなわち、前記変性液状ブタジエンゴムは、従来に原料ゴムとして使用する固体ブタジエンに比べて分子量が非常に小さくて、室温で液体状態であり、これにより、プロセスオイルのように原料ゴム及びシリカの混合を円滑にする軟化剤として使用することができる。
【0027】
前記変性液状ブタジエンゴムの重量平均分子量が5,000g/mol未満である場合、分子量が小さくて引張強度が低く、有機物に簡単に抽出されてマイグレーションに不利であるため、耐摩耗性能が低下し、重量平均分子量が50,000g/molを超過する場合、ブタジエンチェーンエンド(chain end)が減少して燃費性能は有利であるものの、軟化剤を代替適用することによる加工性が不利であり、タフネス(Toughness)減少に伴う耐摩耗性の低下が生じる虞がある。
【0028】
また、前記変性液状ブタジエンゴムは、プロセスオイルよりもガラス転移温度が低くて、配合ゴムのガラス転移温度を下げて低温でのゴムの硬度及びモジュラスを減少させることにより、氷雪路面での制動性能を大きく向上させ、転がり抵抗を低減させることができる。
【0029】
また、前記変性液状ブタジエンは、固体ブタジエンのビニル含有量が2重量%未満であるのに対し、ビニル含有量が高くて、ドライ路面又はウェット路面での制動性能を低下させないことが可能である。
【0030】
また、前記変性液状ブタジエンは、変性されていない液状ブタジエンよりもシリカ表面の疎水化でシリカ分散を向上させ、ポリマー鎖に固定されて、マイグレーション現象の減少で耐摩耗性能を最大化することができる。
【0031】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、加硫剤として硫黄加硫剤を含むことができる。前記硫黄加硫剤としては、元素硫黄又は硫黄を作り出す加硫剤、例えば、アミンジスルフィド(amine disulfide)又は高分子硫黄を使用することができ、好ましくは、元素硫黄を使用することができる。
【0032】
前記加硫剤は、前記原料ゴム100重量部に対して1.0重量部~1.5重量部で使用されてもよく、前記範囲内で適切な加硫効果として、原料ゴムが熱にあまり敏感ではなく、化学的に安定になるという点で好ましい。
【0033】
また、前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤として、アミン(Amine)、二硫化物、グアニジン(guanidine)、チオ(thio)尿素、チアゾール(thiazole)、チウラム(thiuram)、スルフェンアミド(sulfene amide)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つを、前記原料ゴム100重量部に対して2.0重量部~3.0重量部でさらに含むことができる。
【0034】
また、前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、老化防止剤として、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(3PPD)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(RD)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つを、前記原料ゴム100重量部に対して1重量部~5重量部でさらに含むことができる。
【0035】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、前記で言及した組成以外にも、通常のタイヤトレッド用ゴム組成物に使用される酸化亜鉛、ステアリン酸、カップリング剤又は加工助剤などといった各種添加剤を必要に応じて選択して使用できることはもちろんである。
【0036】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、通常の2段階の連続する製造工程によって製造することができる。すなわち、110℃~190℃に達する最大温度、好ましくは、130℃~180℃の高温で熱機械的処理又は混錬する第1段階(非生産段階という)、及び架橋結合システムが混合されるフィニッシング段階の間、典型的に110℃未満、例えば、40℃~100℃の低温で機械的に処理する第2段階(生産段階という)を用いて、適切な混合器の中で製造することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0037】
本発明の別の一実施例に係るタイヤは、前記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造される。前記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いてタイヤを製造する方法は、従来のタイヤの製造に用いられる方法であればいかなるものでも適用することが可能であるので、詳しい説明は本明細書では省略する。
【0038】
前記タイヤは、乗用車用タイヤ、競走用タイヤ、飛行機タイヤ、農機械用タイヤ、オフロード(off-the-road)タイヤ、トラックタイヤ又はバスタイヤなどであってもよい。また、前記タイヤは、ラジアル(radial)タイヤ又はバイアス(bias)タイヤであってもよく、ラジアルタイヤであることが好ましい。
【0039】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、種々の異なる形態で具現可能であり、ここで説明する実施例によって限定されるものではない。
【0040】
[製造例:ゴム組成物の製造]
【0041】
下記表1に示すような組成を用いて、下記の実施例及び比較例に従うタイヤトレッド用ゴム組成物を製造した。前記ゴム組成物の製造は、通常のゴム組成物の製造方法に従った。
【0042】
【0043】
(単位:重量部)
1)S-SBR:スチレン含有量が26.5重量%であり、ブタジエン中のビニル含有量が26重量%であり、ムーニー粘度54、ガラス転移温度が-48℃であり、連続式の方法によって製造された溶液重合スチレン-ブタジエンゴム。
【0044】
2)シリカ:BET表面積が160m2/g~180m2/gであり、DBP吸油量が180cc/100g~210cc/100gである沈降性シリカ。
【0045】
3)カップリング剤:Evonic製のスルフィド系シランで、商品名はSi69。
【0046】
4)軟化剤:PAH(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon)成分の総含有量が3重量%以下であり、動粘度が95(210 °F SUS)であり、軟化剤内の芳香族成分が25重量%、ナフテン系成分が32.5重量%、及びパラフィン系成分が47.5重量%であるオイルで、商品名はVivatec500。
【0047】
5)液状ブタジエン:重量平均分子量が28,000g/molであり、ビニル含有量が14重量%であり、ガラス転移温度が-98℃で合成された液状ポリブタジエンゴム。
【0048】
6)~10)変性液状ブタジエン:ビニル含有量が12重量%であり、ガラス転移温度が-97℃であり、重量平均分子量は、それぞれ5,000g/mol7)、12,000g/mol8)、26,000g/mol6)、34,000g/mol9)、45,000g/mol10)で合成され、テトラエチルオルトシリケートでゴム鎖内で変性が行われた液状ポリブタジエンゴム。
【0049】
11)両末端変性液状ブタジエン:ビニル含有量が24重量%であり、ガラス転移温度が-80℃であり、重量平均分子量は5,000g/molであり、鎖の両末端が変性された変性液状ブタジエンゴム。
【0050】
[実験例:製造されたゴム組成物の物性測定]
【0051】
前記実施例及び比較例において製造したゴム試験片に対して、ムーニー粘度、硬度、300%モジュラス、粘弾性などをASTM関連規定に基づいて測定し、耐摩耗性能はDIN関連規定に基づいて測定し、その結果を下記表2に示した。
【0052】
【0053】
-ムーニー粘度(ML1+4(125℃))は、ASTM D1646規格によって測定した。
-硬度は、DIN53505によって測定した。
-300%モジュラスは、ISO37、ASTM D412規格によって測定した。
-粘弾性は、ARES測定器を用いて0.5%変形(strain)に10Hz Frequencyの下で-60℃から60℃までG’、G”、tanδを測定した。
-耐摩耗性能は、DIN abrasion測定器を用いてDIN53516規格によって測定した。
【0054】
前記表2において、ムーニー粘度は未加硫ゴムの粘度を示す値で、数値が低いほど未加硫ゴムの加工性に優れている。硬度は操縦安定性を示すもので、その値が高いほど操縦安定性に優れている。-30℃G’は氷雪路面での制動特性を示すもので、数値が低いほど制動性能に優れており、0℃G”は、ドライ路面又はウェット路面での制動特性を示したもので、数値が高いほど制動性能に優れることを意味する。また、60℃tanδは転がり抵抗特性を示すもので、数値が低いほど性能に優れることを意味する。なお、表2において、-30℃G’、0℃G”、60℃tanδの値は性能として指数(Index)化しており、指数(Index)が高いほど性能に優れる。
【0055】
前記表2を参照すると、実施例において製造されたタイヤトレッド用ゴム組成物は、前記変性液状ブタジエンゴムを含むことにより、氷雪路面での制動性能を大きく向上させると同時に、耐摩耗性能も大きく向上させて、四季用トレッドゴム組成物として使用することができることがわかる。
【0056】
比較例3及び4と実施例2-1~2-3を比較すると、原料ゴム100重量部に対して、前記変性液状ブタジエンゴムは、20重量部~40重量部の範囲を満たすことにより、ドライ路面又はウェット路面での制動性能にはさらに優れる可能性があり、良好な耐摩耗性能を確保することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、後述する請求範囲において定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。