(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】付加製造による透光性物体の製造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20221209BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20221209BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20221209BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221209BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221209BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/264
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2020515228
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(86)【国際出願番号】 US2018051289
(87)【国際公開番号】W WO2019060239
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515220524
【氏名又は名称】カーボン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ,グレゴリー・アール
(72)【発明者】
【氏名】ポラック,スティーヴン・ケネス
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251615(JP,A)
【文献】特開平10-152548(JP,A)
【文献】特開平09-217051(JP,A)
【文献】特開平09-194816(JP,A)
【文献】特表2017-524565(JP,A)
【文献】特表平10-502461(JP,A)
【文献】特開平08-020728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136889(US,A1)
【文献】米国特許第04816496(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00- 64/40
B33Y 10/00- 99/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
G03C 3/00
G03F 7/004- 7/04
G03F 7/06
G03F 7/075- 7/115
G03F 7/16 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造によって透明または半透明物体を作製する方法であって、
(a)透明または半透明の光重合性樹脂を用意するステップであって、前記樹脂が、
(i
)光重合性モノマー、プレポリマーまたはそれらの組合せ、
(ii
)光重合開始剤、
並びに
(iii
)ブロモ
およびクロ
ロからなる群より独立して選択される置換基で多置換されている多置
換アントラセ
ンの紫外線吸収性化合物を含むステップと、次いで、
(b)紫外線を用いたステレオリソグラフィによって、前記光重合性樹脂から透明または半透明物体を製造するステップと
を含
み、
前記多置換アントラセンの紫外線吸収性化合物が、非反応性であって、紫外線を吸収して前記ステップ(b)中のケーピングを低減する、方法。
【請求項2】
前記多置換
アントラセンの紫外線吸収性化合物が、下記式Iの構造を有する、請求項1に記載の方法。
【化1】
[式中、
mは
、1であり、
nは、2~4、6または8であり、
各Rは、ブロモ
およびクロ
ロからなる群より独立して選択される。]
【請求項3】
各Rがブロモである、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
式Iの前記化合物が、9,10-ジブロモアントラセン
および2,3,9,10-テトラブロモアントラセ
ンからなる群より選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
式Iの前記化合物が、
【化2】
である、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記製造するステップが、ボトムアップのステレオリソグラフ
ィによって実施される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光重合性モノマー、プレポリマーまたはそれらの組合せが、フリーラジカル重合性である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記樹脂が
、反応性希釈剤をさらに含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂が、二重硬化樹脂を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂が、0.0005または0.001から0.01または0.05の光吸収係数、アルファを有するものである、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(c)前記物体を洗浄するステップと、次いで
(d)前記物体
をさらに硬化するステップと
をさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記物体が、剛性、可塑性または弾性である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物体が、歯科用アライナー、レンズ、レンズカバーまたはウィンドウを含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性樹脂の付加製造(additive manufacturing)によって、3次元物体、詳細には透明または半透明物体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「ステレオリソグラフィ(stereolithography)」と呼ばれることもある付加製造技術群は、光重合性樹脂の逐次重合によって3次元物体を作るものである。このような技術は、透光性ウィンドウを通して作成中の物体の底部で樹脂に光が投射される「ボトムアップ(bottom-up)」技術、または作成中の物体の上部で樹脂に光が投射され、次いで、これが樹脂のプールに下向きに浸漬される「トップダウン(top down)」技術であり得る。
【0003】
付加製造のための「二重硬化(dual cure)」樹脂の導入と組み合わせた連続液界面製造(continuous liquid interface production)(CLIP)として公知でより迅速なステレオリソグラフィ技術の最近の導入は、ステレオリソグラフィの有用性を試作段階から製造に拡大している(例えば、DeSimoneらの米国特許第9211678号明細書、同第9205601号明細書および同第9216546号明細書、ならびにまた、J.Tumbleston、D.Shirvanyants、N.Ermoshkinら、Continuous liquid interface production of 3D Objects、Science 347、1349~1352(2015)を参照されたい。また、Rollandら、米国特許第9676963号明細書、同第9453142号明細書および同第9598606号明細書も参照されたい。)。残念ながら、透明または半透明物体の製造のための透光性(透明または半透明)樹脂は、ステレオリソグラフィの間の望ましくない重合を示すことがあり、製造されている物体に、重合が意図されない更なる重合領域を加える。射出成形において「フラッシュ(flashing)」として公知の現象に類似して、このような現象は「ケーピング(caping)」と呼ばれる。透明または半透明物体はステレオリソグラフィにおいて物体の1つの望ましいカテゴリーであるため、ケーピングの問題に対する解決法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様は、付加製造によって透明または半透明物体を作製する方法であって、
(a)透明または半透明の光重合性樹脂を用意するステップであって、樹脂が、(i)光重合性モノマー、プレポリマーまたはそれらの組合せ(例えば、5または10重量パーセント~80または90重量パーセントの量の)、(ii)光重合開始剤(例えば、0.1重量パーセント~4重量パーセントの量の)、および(iii)ブロモ、クロロ、-Se-R’、-S-R’(式中、各R’は、アルキル、アリールおよびアリールアルキルから独立して選択される)またはそれらの組合せで多置換されている多置換直線状ポリアセン(例えば、アントラセン)の紫外線吸収性化合物(polysubstituted linear polyacene (e.g., anthracene) ultraviolet light absorbing compound)(例えば、0.01、0.05または0.1重量パーセント~1、2、5、10または20重量パーセントの量の)を含むステップと、次いで、
(b)紫外線を用いたステレオリソグラフィによって、前記光重合性樹脂から透明または半透明物体を製造するステップと
を含む、方法である。
【0005】
一つの実施形態では、製造するステップは、ボトムアップのステレオリソグラフィ(例えば、連続液界面製造)によって実施される。
【0006】
一つの実施形態では、光重合性モノマー、プレポリマーまたはそれらの組合せは、フリーラジカル重合性のものである。
【0007】
一つの実施形態では、樹脂は、反応性の希釈剤(例えば、1または2重量パーセント~30または40重量パーセントの量の)をさらに含む。
【0008】
一つの実施形態では、樹脂は、二重硬化樹脂を含む。
【0009】
一つの実施形態では、樹脂は、0.0005または0.001~0.01または0.05の光吸収係数、アルファを有するものである。
【0010】
一つの実施形態では、方法は、
(c)物体を洗浄するステップと、次いで
(d)物体をさらに硬化する(例えば、焼成によって)ステップと
をさらに含む。
【0011】
方法を使用して、歯科アライナー、レンズ、レンズカバーおよびウィンドウを含むものの、これらに限定されない種々様々な物体を作製することができる。物体は、当技術分野で既知の通り、樹脂構成成分の選択に応じて、剛性、可撓性(flexible)または弾性(elastic)であり得る。
【0012】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載の方法により製造された物体である。
【0013】
本発明の更なる態様は、上記され、また以下でさらに記載される通りの透明または半透明の光重合性樹脂である。
【0014】
Sitzmannらの米国特許第5705116号明細書は、ステレオリソグラフィにおいてカチオン性光重合開始剤の有用な範囲を増加させるある特定のアントラセンの使用を記載しているものの、ケーピングには関連しておらず、本明細書に記載される置換基を提案していない。
【0015】
Rollandらの以前の米国特許第9676963号明細書、同第9453142号明細書および同第9598606号明細書は、非反応性光吸収剤に関して、重合性液体が、光、特にUV光を吸収する非反応性顔料または色素を含み得ることを記載している。このような光吸収剤の好適な例には、(i)酸化チタン(例えば、0.05もしくは0.1~1または5重量パーセントの量で含まれる)、(ii)カーボンブラック(例えば、0.05もしくは0.1~1もしくは5重量パーセントの量で含まれる)、および/または(iii)有機紫外線吸収剤、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オキサニリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、ヒドロキシフェニルトリアジンおよび/もしくはベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(例えば、Mayzo BLS1326)(例えば、0.001または0.005~1、2または4重量パーセントの量で含まれる)が含まれるものの、これらに限定されない。好適な有機紫外線吸収剤の例には、米国特許第3213058号明細書[ベンゾトリアゾール]、同第6916867号明細書[ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オキサニリドおよび/または2-ヒドロキシフェニルトリアジンの混合物]、同第7157586号明細書[ベンゾトリアゾール]および同第7695643号明細書[ベンゾトリアゾール]に記載されたものが含まれるものの、これらに限定されない。
【0016】
しかしながら、本出願に記載のUV吸収剤は、これらの以前の特許(またはRollandらの他の以前の特許および出願)において提案も記載もされておらず、透明または半透明樹脂のケーピングの問題は、これらの中で提案も記載もされておらず、また透光性物体の製造の間のケーピングを低減するための本明細書に記載の吸収剤の使用は、これらの中で提案も記載もされていない。
【0017】
本発明に係る前述のおよび他の目的および態様が、本明細書の図面および以下に示される明細書にてさらに詳細に説明される。本明細書で引用されるすべての米国特許参考文献は、引用することによってそのすべてが本明細書の一部をなすものとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】Carbon Inc.M1付加製造装置でCarbon Inc.RPU70黒色樹脂から製造した、左から右に徐々に距離が増加するように間を空けた直立平行プレートの形態の一組の試験物体を示す図である。物体の支持体プレートまたは支持体プラットフォームが一部、図の上部に見えている。
【
図2】黒色顔料を含まず、BASF CARBOPROTECT(登録商標)UV吸収剤を含んだことを除いて同様の樹脂から同様の方法で製造した、
図1のものと同様の一組の試験物体を示す図である。
【
図3】黒色顔料を含まず、9,10-ジエトキシアントラセンを含んだことを除いて同様の樹脂から同様の方法で製造した、
図1のものと同様の一組の試験物体を示す図である。
【
図4】黒色顔料を含まず、9,10-ジブロモアントラセンを含んだことを除いて同様の樹脂から同様の方法で製造した、
図1のものと同様の一組の試験物体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態が示された添付の図面を参照して、本発明をより完全に記載する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で示される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示が、完全かつ完璧なものになり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるために提供される。
【0020】
本明細書にて「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の任意のすべての可能な組合せまたはそれらのうちの1つもしくは複数、ならびに選択肢(「または」)で解釈される場合、組合せの欠如を含む。
【0021】
本明細書にて「アルキル」は、単独でまたは別の基の一部として、1~10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を指す。アルキルの代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等が含まれるものの、これらに限定されない。本明細書にて「低級アルキル」は、一つの実施形態では好ましいアルキルの部分集合であり、1~4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。低級アルキルの代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等が含まれるものの、これらに限定されない。このような基は、非置換であってもよく、または1つもしくは複数(例えば、1、2、3、4つなど)の独立して選択された電子供与または電子求引基で置換されていてもよい。
【0022】
本明細書にて「アリール」は、単独でまたは別の基の一部として、単環式炭素環式環系または1つもしくは複数の芳香族環を有する二環式炭素環式縮合環系を指す。アリールの代表例には、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチル等が含まれる。「アリール」という用語は、他に示されない限り、置換および非置換アリールの両方を含むことが意図され、これらの基は、上でアルキルおよび低級アルキルと関連して示されたのと同じ基で置換されていてもよい。このような基は、非置換であってもよく、または1つもしくは複数(例えば、1、2、3、4つなど)の独立して選択された電子供与または電子求引基で置換されていてもよい。
【0023】
本明細書にて「アリールアルキル」は、上記される通りのアルキル基に共有結合し、このアルキル基がコア分子に結合している、上記される通りのアリール基を指す。
【0024】
「電子求引」および「電子供与」は、水素原子が分子中の同じ位置を占める場合、水素の電子に対して電子を求引または供与する、置換基の能力を指す。これらの用語は、当業者に十分理解されており、引用によって本明細書の一部をなすAdvanced Organic Chemistry、J.March、John Wiley and Sons、New York、N.Y.、pp.16~18(1985)で議論されている。このような電子求引および電子供与基または置換基の例には、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル(例えば、ホルミル)、カルボキシアミド、アリール、4級アンモニウム、アリール(低級アルカノイル)、アルコキシカルボニル等;アシル、カルボキシ、アルカノイルオキシ、アリールオキシ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル等;ヒドロキシ、アルコキシまたは低級アルコキシ(メトキシ、エトキシ等を含む);低級アルキル;アミノ、アルキルアミノ、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、メルカプト、低級アルキルチオ、低級アルキルメルカプト、ジスルフィド(低級アルキルジチオ)等;1-ピペリジノ、1-ピペラジノ、1-ピロリジノ、アシルアミノ、ヒドロキシル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アリールオキシ、アルキル、エステル基(例えば、アルキルカルボキシ、アリールカルボキシ、ヘテロシクロカルボキシ)、アジド、イソチオシアナト、イソシアナト、チオシアナト、シアナト等が含まれるものの、これらに限定されない。当業者であれば、前述した置換基が、様々な化学条件下で電子供与または電子求引特性を有し得ることを認識するであろう。例えば、Kohnの米国特許第8933065号明細書を参照されたい。
【0025】
本明細書にて「ケーピング」は、しばしば物体の歪みおよびその物体の不合格につながる、付加製造、特にステレオリソグラフィの間の、重合が意図されない領域における光重合性樹脂の意図されない重合を指す。
【0026】
本明細書にて「光吸収係数(light absorption coefficient)」または「アルファ(alpha)」は、公知の技術に従って決定される。例えば、J.Tumblestonら、Continuous liquid interface production of 3D objects、Science 347:1349、補遺(2015)を参照されたい。
【0027】
[1.UV吸収剤]
上記の通り、本発明に係る有用な紫外線(UV)吸収性化合物は、一般に、多置換直線状ポリアセン(例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン)である。化合物は、ブロモ、クロロ、-Se-R’、-S-R’(式中、各R’は、アルキル、アリールおよびアリールアルキルから独立して選択される。)またはそれらの組合せのうちの2つ以上で多置換されている。
【0028】
より詳細には、光吸収性化合物は、式I:
【化1】
[式中、
mは、0、1、2、3、4または5であり、
nは、2~4、6または8であり、
各Rは、ブロモ、クロロ、-Se-R’および-S-R’(式中、各R’は、アルキル、アリールおよびアリールアルキルから独立して選択される。)からなる群より独立して選択される。]
の構造を有し得る。一つの実施形態では、ブロモが好ましい。
【0029】
好適な化合物の例には、9,10-ジブロモアントラセン、2,3,9,10-テトラブロモアントラセン、および5,11-ジブロモテトラセンが含まれるものの、これらに限定されない。特定の例は、構造:
【化2】
を有する。
【0030】
[2.樹脂]
一般に、その中に本明細書に記載のUV吸収剤が含まれる樹脂は、(a)物体を形成し得る光重合性モノマーおよび/またはプレポリマー、(b)以下に記載される通りの光重合開始剤、ならびに(c)任意選択的で(しかし一部の完全「二重硬化」樹脂の場合には、好ましくは)、熱(またはマイクロ波、RFエネルギー)重合性(またはそうでなければ、更なる重合性)モノマーおよび/またはプレポリマーをさらに含む。他の任意選択の樹脂成分は、以下でさらに議論される。二重硬化樹脂の構成成分は、以下、ならびにそれらの開示が引用によって本明細書の一部をなすRollandらの米国特許第9676963号明細書、同第9453142号明細書および同第9598606号明細書に記載されている。
【0031】
A.光重合性モノマーおよび/またはプレポリマー。樹脂の「部分A」と呼ばれることもある。これらは、化学線または光への曝露によって重合し得るモノマーおよび/またはプレポリマーである。この樹脂は、2つ以上の官能性を有し得る。部分Aの目的は、形成されている物体の形状を「ロックする(lock)」(および「二重硬化」樹脂の場合、1つまたは複数の更なる構成要素(例えば、部分B)のためのスキャフォールドを作る。)ことである。重要なことに、部分Aは、フォトリソグラフィの間の初期硬化後に、形成されている物体の形状を維持するのに必要な最小量で、またはそれを超えて存在する。一つの実施形態にて、この量は、全樹脂(重合性液体)組成物の10、20または30重量パーセント未満に相当する。
【0032】
部分Aの構成成分、モノマーまたはプレポリマーに好適な、反応性末端基の好適な例には、アクリレート、メタクリレート、α-オレフィン、N-ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン類、エポキシド、チオール、1,3-ジエン、ハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエステル、マレイミドおよびビニルエーテルが含まれるものの、これらに限定されない。
【0033】
一つの実施形態では、光重合性の構成要素(「部分A」の構成要素)が重合すると、更なる硬化の間(例えば、加熱または焼成の間)に分解して、更なる(例えば、熱)硬化のための構成成分を形成し得ることに留意されたい。したがってそれは、一部が、「部分B」の構成要素に変換されるが、他の部分(例えば、t-BAEMA等の残存する光反応性のブロッキング基)は、更なる硬化には関与しない場合があり、最終製品の機械特性にほとんどまたはまったく寄与しない。
【0034】
B.光重合開始剤。重合性液体(樹脂)中に含まれる光重合開始剤は、タイプIおよびタイプII光重合開始剤を含み、一般に使用されるUV光重合開始剤を含む、任意の好適な光重合開始剤であってもよく、このような例には、アセトフェノン(例えば、ジエトキシアセトフェノン)、ホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(PPO)、Irgacure 369等が含まれるものの、これらに限定されない。例えば、Rollandらの米国特許第9453142号明細書を参照されたい。
【0035】
C.熱重合性モノマーおよび/またはプレポリマー。「部分B」と呼ばれることもある。これらの構成成分は、部分Aの硬化反応後の第2の硬化反応に関与する反応性末端基を有するモノマーおよび/またはプレポリマーの混合物を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなり得る。一般に、二重硬化樹脂について、部分Bを硬化するために使用される方法の例には、物体またはスキャフォールド(scaffold)を、以下の組合せを含む、熱、水または水蒸気、部分Aが硬化する波長と異なる波長の光、触媒(更なる加熱ありまたはなしで)と接触させること、重合性液体からの溶媒の蒸発(例えば、加熱、真空またはこれらの組合せを使用して)、マイクロ波照射等が含まれるものの、これらに限定されない。この場合、「部分B」樹脂の熱硬化が好ましい。
【0036】
部分Bの構成成分、モノマーまたはプレポリマーに好適な、好適な反応性末端基対の例には、エポキシ/アミン、エポキシ/ヒドロキシル、オキセタン/アミン、オキセタン/アルコール、イソシアネート*/ヒドロキシル、イソシアネート*/アミン、イソシアネート/カルボン酸、無水物/アミン、アミン/カルボン酸、アミン/エステル、ヒドロキシル/カルボン酸、ヒドロキシル/酸塩化物、アミン/酸塩化物、ビニル/Si-H(ヒドロシリル化)、Si-Cl/ヒドロキシル、Si-Cl/アミン、ヒドロキシル/アルデヒド、アミン/アルデヒド、ヒドロキシメチルまたはアルコキシメチルアミド/アルコール、アミノプラスト、アルキン/アジド(チオレン、Michael付加、Diels-Alder反応、求核置換反応等を含む更なる反応と共に、「クリックケミストリー(click chemistry)」の一実施形態としても公知である)、アルケン/硫黄(ポリブタジエン加硫)、アルケン/過酸化物、アルケン/チオール、アルキン/チオール、ヒドロキシル/ハロゲン化物、イソシアネート*/水(ポリウレタンフォーム)、Si-OH/ヒドロキシル、Si-OH/水、Si-OH/Si-H(スズ触媒シリコーン)、Si-OH/Si-OH(スズ触媒シリコーン)、パーフルオロビニル(カップリングしてパーフルオロシクロブタンを形成する)等(ここで、*イソシアネートは、保護イソシアネート(例えば、オキシム)を含む)、Diels-Alder反応、オレフィンメタセシス重合、Ziegler-Natta触媒を使用するオレフィン重合、開環重合(開環オレフィンメタセシス重合、ラクタム、ラクトン、シロキサン、エポキシド、環式エーテル、イミン、環式アセタール等を含む)のためのジエン/求ジエン体等が含まれるものの、これらに限定されない。上記から留意されるように、「部分B」の構成要素は、一般に、少なくとも1対の互いに反応性である化合物(例えば、ポリイソシアネートとポリアミン)を含む。
【0037】
D.更なる樹脂成分。液体樹脂または重合性材料は、それに分散または懸濁された固体粒子を有し得る。製作される最終製品に応じて、任意の好適な固体粒子を使用することができる。粒子は、金属、有機/ポリマー、無機もしくは複合、またはこれらの混合物であってもよい。粒子は、非伝導性、半伝導性または伝導性(金属および非金属またはポリマー伝導体を含む)であってもよく、粒子は、磁性、強磁性、常磁性または非磁性であってもよい。粒子は、球形、楕円形、円柱形等を含む任意の好適な形状であってよい。粒子は、任意の好適なサイズ(例えば、1nm~20μmの範囲の平均直径)のものであってよい。
【0038】
粒子は、以下に記載される通りの活性剤または検出可能な化合物を含んでもよいものの、これらはまた、以下で議論されるように、液体樹脂中に溶解または可溶化されて提供されてもよい。例えば、磁性もしくは常磁性粒子またはナノ粒子を用いることができる。
【0039】
液体樹脂は、再度、製作される製品の特定の目的に応じて、顔料、色素、希釈剤、活性化合物または医薬化合物、検出可能な化合物(例えば、蛍光、リン光、放射性)等を含む、それに可溶化される更なる成分を有してもよい。このような更なる成分の例には、以下の組合せを含み、タンパク質、ペプチド、SiRNA等の核酸(DNA、RNA)、糖、小有機化合物(薬物および薬物様化合物)等が含まれるものの、これらに限定されない。
【0040】
充填剤(fillers)。任意の好適な充填剤を、作製される部分または物体において所望の特性に応じて、本発明に関連して使用できる。したがって、充填剤は、固体または液体、有機または無機であってよく、以下のすべての組合せを含む、反応性および非反応性ゴム:シロキサン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、反応性および非反応性熱可塑性プラスチック(ポリ(エーテルイミド)、マレイミド-スチレンターポリマー、ポリアリレート、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどを含むがこれらに限定されない)、無機充填剤、例えばシリケート(例えば、タルク、粘土、シリカ、マイカ)、ガラス、カーボンナノチューブ、グラフェン、セルロースナノ結晶等が含まれ得る。好適な充填剤には、以下で議論される通りの、強靭化剤、例えばコア-シェルゴムが含まれる。
【0041】
強靭化剤(tougheners)。1種または複数のポリマー強靭化剤および/または無機強靭化剤を、本発明に係る充填剤として使用することができる。一般に、米国特許出願公開第20150215430号明細書を参照されたい。強靭化剤は、硬化製品中に、粒子の形態で均一に分布し得る。粒子は、5ミクロン(μm)未満の直径であり得る。このような強靭化剤には、表面改質または機能化された、またはされていない、エラストマー、分枝状ポリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー、ゴム状ポリマー、ゴム状コポリマー、ブロックコポリマー、コア-シェル粒子、酸化物または粘土などの無機材料、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、炭素質材料(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン)、セラミックスおよび炭化ケイ素が含まれるものの、これらに限定されない。
【0042】
コア-シェルゴム。コア-シェルゴムは、ゴム状のコアを有する粒状材料(粒子)である。このような材料は公知であり、例えば、米国特許出願公開第20150184039号明細書、ならびに米国特許出願公開第20150240113号明細書および米国特許第6861475号明細書、同第7625977号明細書、同第7642316号明細書、同第8088245号明細書、ならびにその他に記載されている。一つの実施形態では、コア-シェルゴム粒子は、ナノ粒子(すなわち、1000ナノメートル(nm)未満の平均粒径を有する)である。一般に、コア-シェルゴムナノ粒子の平均粒径は、500nm未満、例えば、300nm未満、200nm未満、100nm未満またはさらには50nm未満である。典型的には、このような粒子は球形であり、そのため粒径は直径であるが、一方で、粒子が球形でない場合、粒径は粒子の最長寸法として定義される。好適なコア-シェルゴムには、Kaneka Kane Ace MX 120、Kaneka Kane Ace MX 153、Kaneka Kane Ace MX 154、Kaneka Kane Ace MX 156、Kaneka Kane Ace MX170、およびKaneka Kane Ace MX 257およびKaneka Kane Ace MX 120コア-シェルゴム分散剤およびこれらの混合物を含むKaneka Kane Ace 15および120シリーズの製品を含む、Kaneka Kane Aceの名称で株式会社カネカによって販売されているものが含まれるものの、これらに限定されない。
【0043】
有機希釈剤。一つの実施形態では、本発明で使用するための希釈剤は、好ましくは、反応性有機希釈剤、すなわち付加製造ステップの間に、それら自体または光重合性の構成要素と、分解、異性化、交差反応または重合する希釈剤である。一般に、希釈剤(複数可)は、重合性液体または樹脂の粘度を(例えば、25摂氏度で15,000、10,000、6,000、5,000、4,000または3,000センチポアズ以下に)低減するのに十分な量で含まれる。希釈剤の好適な例には、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドンおよびN-ビニルホルムアミドまたは混合物が含まれるものの、これらに限定されない。希釈剤は、任意の好適な量、典型的には、1、5または10重量パーセントから約30もしくは40重量パーセントまで、またはそれを超えて、重合性液体中に含まれ得る。
【0044】
[3.使用方法]
付加製造の技術は公知である。好適な技術には、一般にステレオリソグラフィとして公知の、ボトムアップおよびトップダウンの付加製造が含まれる。このような方法は公知であり、例えば、Hullの米国特許第5236637号明細書、Lawtonの米国特許第5391072号明細書および同第5529473号明細書、Johnの米国特許第7438846号明細書、Shkolnikの米国特許第7892474号明細書、El-Siblaniの米国特許第8110135号明細書、Joyceの米国特許出願公開第2013/0292862号明細書およびChenらの米国特許出願公開第2013/0295212号明細書に記載されている。これらの特許および出願の開示は、それらの全体が引用により本明細書の一部をなすものとする。
【0045】
CLIPは公知であり、例えば、DeSimoneらの米国特許第9211678号明細書、同第9205601号明細書および同第9216546号明細書、ならびにまたJ.Tumbleston、D.Shirvanyants、N.Ermoshkinら、Continuous liquid interface production of 3D Objects、Science 347、1349~1352(2015年)に記載されている。R.Janusziewczら、Layerless fabrication with Continuous liquid interface production、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 113、11703~11708(2016年)も参照されたい。一つの実施形態では、CLIPは、上で記載される通りのボトムアップ3次元製作の特徴を用いるが、照射および前進ステップは、例えば、(i)前記ビルド面と接触した重合性液体のデッドゾーンを連続的に維持し、(ii)デッドゾーンと固体ポリマーとの間の、それらの各々と接触した、部分的に硬化された形態の第1の構成要素を含む重合ゾーン(例えば、作用面)の勾配(ramp)を連続的に維持することによって、作成中の物体とビルド面またはウィンドウとの間の安定なもしくは一貫した液界面も同時に維持しながら実施される。DeSimoneら(上で引用)およびまたSunら、米国特許出願公開第2016/0288376号明細書に記載されている通り、阻害剤は、半透性部材を完全に通過し得るか、または阻害剤の「プール(pool)」は、半透性部材内に存在し、その樹脂接触面を通過し得る。好ましい阻害剤は、酸素であるものの、DeSimoneらに記載されているように、塩基(アミンを含む)またはSunらに記載されているものなどの他の阻害剤もまた、使用することができる。CLIPの一つの実施形態では、光透過性部材は、半透性部材(例えば、フルオロポリマー)を含み、デッドゾーンを連続的に維持することは、光透過性部材を通して重合の阻害剤を供給し、それによってデッドゾーンに、および任意選択的で重合ゾーンの勾配の少なくとも一部に阻害剤の勾配を作ることによって実施される。本発明で使用され得、半透性「ウィンドウ」またはウィンドウ構造の必要性をなくす可能性のある、CLIPを実施するための他のアプローチには、非混和液を含む液界面の利用(L.Robesonら、国際公開第2015/164234号を参照されたい。)、電気分解による阻害剤としての酸素の生成(I.Cravenら、国際公開第2016/133759号を参照されたい。)、および光活性剤が連結した、磁力により位置決め可能な粒子の重合性液体への組込み(J.Rolland、国際公開第2016/145182号を参照されたい。)が含まれる。
【0046】
非限定的な一実施形態では、物体は、Carbon,Inc.、1089 Mills Way、Redwood City、California 94063 USAから入手可能なCarbon Inc.M1付加製造装置で製造することができる。
【0047】
3次元物体の中間体(intermediate three-dimensional object)が形成された後、それは、任意選択的で洗浄され、任意選択的で乾燥(例えば、風乾)され、および/またはすすがれる(任意の順序で)。一つの実施形態(「二重硬化」樹脂を用いる)では、次いで、それは、例えば加熱によってさらに硬化される。
【0048】
加熱は、能動的加熱(例えば、電気、ガス、太陽光オーブンもしくはマイクロ波オーブンまたはそれらの組合せなどのオーブン中での焼成)または受動的加熱(例えば、周囲温度(室温)での)であり得る。能動的加熱は、一般に、受動的加熱よりも迅速であり、一つの実施形態で好ましいものである一方、更なる硬化を行うのに十分な時間、中間体を周囲温度で単純に維持する等の受動的加熱も、一つの実施形態では、用いられ得る。
【0049】
本発明は、以下の非限定的な実施例でさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0050】
[比較例A]
<黒色RPU70樹脂における実質的なケーピングの非存在>
ステレオリソグラフィにおける「ケーピング」は、製作の間の空または非重合のままであるべき領域における樹脂の意図されない重合である。
【0051】
Carbon,Inc.M1付加製造装置で一組の直立プレート試験物体を製作する場合、Carbon Inc.RPU70黒色樹脂では、顕著なケーピングは見られない(
図1を参照されたい)。黒色RPU70樹脂の樹脂光吸収係数、アルファは、0.0042であり、アルファは、J.Tumblestonら、Continuous liquid interface production of 3D objects、Science 347:1349、補遺(2015)で定義されている通りであった。
【0052】
透明バージョンのRPU70を調製する場合(黒色顔料なしで)、次いで、低いアルファ(低い樹脂光吸収係数)に起因する不十分なz-解像度(z-resolution)が予想される。したがって、以下に記載される通り、UV吸収化合物を添加することによって、透明樹脂においてZ軸解像度を改善することを試みた。
【0053】
[参考例1]
<Mayzo OB+UV吸収剤を含有する透明樹脂でのケーピング>
AUTODESK PR48標準透明プロトタイプ樹脂は、
オリゴマー:Allnex Ebecryl 8210 39.776%、Sartomer SR 494 39.776%;
光重合開始剤:Esstech TPO+(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド)0.400%;
反応性希釈剤:Rahn GenA clomer 1122 19.888%;
UV遮断剤:Mayzo OB+(2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tertブチルベンゾオキサゾール))0.160%;(すべてのパーセンテージは、wt/wtである。)
を含有する。
【0054】
RPU70のような樹脂を、黒色顔料なしで、UV吸収剤としてMayzo OB+を用いて調製し、物体をCarbon Inc.M1装置で製造した場合、ケーピングが再度観察された。本発明者らは、ケーピングが「部分B」構成成分のアミンを含むようであること、および「部分B」アミンを樹脂から除去した場合、ケーピングが大幅に減少したことに注目した。しかし、UV遮断剤OB+の存在に関わらず、上述のRPU70黒色樹脂について記載したものと同様の製造条件下で、ケーピングが観察された。
【0055】
[
参考例2]
<CARBOPROTECT(登録商標)UV吸収剤を含有する透明樹脂でのケーピング
の非存在>
黒色顔料を省き、BASF CarboProtect(登録商標)UV吸収剤(炭繊維強化材料に対する溶媒ベースの透明または半透明コーティングのために設計された)を含んだことを除いて、Carbon Inc.RPU70と同様の透明樹脂を調製した。樹脂アルファは、0.0044であった。次いで、
図1に示されるような試験物体を、
図1と同様の方法で樹脂を用いて製造し、
図2に示される結果となった。実質的なケーピングは見られなかった。しかしながら、物体の実質的な黄変が観察された。
【0056】
CarboProtect(登録商標)UV吸収剤を包含する一般的な構造は、BASF米国特許出願公開第20120279566号明細書に示されている。
【0057】
[比較例B]
<9,10-ジエトキシアントラセンUV吸収剤を含有する透明樹脂でのケーピング>
Sitzmannの米国特許第5705116号明細書(上述)には、ペンダントアルコキシ基を有するアントラセンが、特定の波長の光での使用に好ましいことを記述されている。
【0058】
黒色顔料を省き、UV吸収剤として9,10-ジエトキシアントラセンを含んだことを除いて、Carbon Inc.RPU70と同様の透明樹脂を調製した。樹脂アルファは、0.0044であった。次いで、
図1に示されるような試験物体を、
図1と同様の方法で樹脂を用いて製造し、
図3に示される結果となった。実質的な黄変は観察されなかった。残念ながら、実質的なケーピングが見られた。
【0059】
[実施例3]
<9,10-ジブロモアントラセンUV吸収剤を含有する透明樹脂でのケーピングの非存在>
黒色顔料を省き、UV吸収剤として9,10-ジブロモアントラセン(例えば、0.17重量パーセントの量の)を含んだことを除いて、Carbon Inc.RPU70と同様の透明樹脂を調製した。樹脂アルファは、0.0044であった。次いで、
図1に示されるような試験物体を、
図1と同様の方法で樹脂を用いて製造し、
図4に示される結果となった。実質的な黄変は観察されず、実質的なケーピングは見られなかった。
【0060】
前述の記載は、本発明の例示であり、その限定として解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価物もこれに含まれる。