(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】PCSK9遺伝子の発現を抑制するsiRNA分子及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221209BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221209BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221209BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221209BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P35/00
A61P9/00
A61P3/06
A61P35/04
A61K48/00
A61K31/713
(21)【出願番号】P 2020528962
(86)(22)【出願日】2017-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2017118526
(87)【国際公開番号】W WO2019126990
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521198712
【氏名又は名称】アーゴーナ ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARGORNA PHARMACEUTICALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Room 101,Building B,7 Suida Street,Science Park,Huangpu District,Guangzhou 510530 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】張 必良
(72)【発明者】
【氏名】楊 秀群
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲イ▼
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545736(JP,A)
【文献】特表2016-506240(JP,A)
【文献】特表2016-508367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61P 35/00
A61P 9/00
A61P 3/06
A61P 35/04
A61K 48/00
A61K 31/713
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCSK9遺伝子の発現を抑制し、相補して二本鎖を形成するセンス鎖とアンチセンス鎖とを含むsiRNA分子であって、
前記センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、15~27個のヌクレオチドを含み、または15~27個のヌクレオチドから構成され、前記アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:1の少なくとも15個、16個、17個、18個、19個、20個または21個の連続するヌクレオチドと相補し、且つ、
前記siRNA分子中の少なくとも一つのヌクレオチドがリガンド修飾を含み、
前記リガンド修飾は、siRNA分子の3’末端、5’末端または配列の中間で行われ、
前記リガンド
修飾はXm(ここで、Xは同一のまたは異なるリガンドであり、Xはコレステロール、ビオチン、ビタミン、ガラクトース誘導体または類似体、ラクトース誘導体または類似体、N-アセチルガラクトサミン誘導体または類似体、N-アセチルグルコサミン誘導体または類似体、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれ、mはリガンドの個数であり、m=3または4である。)であり、Xの構造はZであるsiRNA分子。
【化1】
(ここで、Z構造中のCH
2基のn値は、独立して1~15から選ばれる。)
【請求項2】
前記siRNA分子のセンス鎖はSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を含み、前記siRNA分子のアンチセンス鎖はSEQ ID NO:3のヌクレオチド配列を含む請求項1に記載のsiRNA分子。
【請求項3】
前記siRNA分子中の少なくとも一つのヌクレオチドは、さらに、2′-O-メチル、DNA、2′-フルオロ、チオ修飾のリン酸骨格またはこれらの組み合わせで
修飾されたものである請求項1または2に記載のsiRNA分子。
【請求項4】
前記センス鎖とアンチセンス鎖が、鎖1と2、鎖3と5、鎖3と6、鎖3と7、鎖3と8、鎖9と4、鎖9と5、鎖9と6、鎖9と7、鎖9と8の組み合わせから選ばれる請求項
1に記載のsiRNA分子。
【請求項5】
Z構造中のn値は3または8である請求項1に記載のsiRNA分子。
【請求項6】
前記センス鎖とアンチセンス鎖が、鎖13と8、鎖17と8、鎖19と8、鎖20と8、鎖13と10、鎖17と10、鎖19と10、鎖20と10、鎖14と10、鎖18と10、鎖21と10、鎖22と10の組み合わせから選ばれる請求項4に記載のsiRNA分子。
【請求項7】
構造が、
A:GACGAUGCCUGCCUCUACU-(X)m;
fAmGfUfAfG(s)dA(s)dG(s)dGfCfAfG(s)dG(s)dC(s)dAfUfCmGfUfC(s)mC(s)mC;または、
B:mGmAmCfGfAfUmGmCmCfUfGfCfCmUfCfUmAmCmU-(X)m;
fAmGfUfAfG(s)dA(s)dG(s)dGfCfAfG(s)dG(s)dC(s)dAfUfCmGfUfC(s)mC(s)mCである請求項4に記載のsiRNA分子。
【請求項8】
nの値が3または8である請求項7に記載のsiRNA分子。
【請求項9】
ヒト、猿のPCSK9遺伝子の発現を抑制する請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子と、薬学的に許容されるその他の成分と、を含む薬物組成物。
【請求項11】
体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下する方法であって、前記細胞に請求項1~8のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子、または請求項10に記載の薬物組成物を導入して、PCSK9遺伝子の発現レベルを少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、または少なくとも5%抑制または低下させることを含む方法。
【請求項12】
請求項1~8のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子または請求項10に記載の薬物組成物の、体内または体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下するための薬物の調製または被験者のPCSK9遺伝子媒介性疾患または症状を治療するための薬物の調製における使用。
【請求項13】
前記PCSK9遺伝子媒介性疾患または症状は、心血管疾患または腫瘍性疾患を含み、好ましくは、心血管疾患は、高脂血症、高コレステロール血症、非家族性高コレステロール血症、多遺伝子高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合家族性高コレステロール血症、またはヘテロ接合家族性高コレステロール血症から選ばれ、腫瘍性疾患は、黒色腫、肝細胞癌、転移性肝がんから選ばれる請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬分野に関し、特に、RNA干渉技術によってPCSK9遺伝子の発現を抑制するsiRNA分子及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)とは、進化過程に高度に保存され、二本鎖RNAによって誘発される、相同性mRNAが効率よく特異的に分解する現象を指す。RNAiは自然界の種に広く存在している。Andrew Fire及びCraig Melloらは、1998年に線虫(Caenorhabditis elegans,C.elegans)で初めてRNAi現象を発見した。Tuschl及びPhil Sharpらは2001年に哺乳動物にもRNAiが存在していることを確認した。その後、RNAiのメカニズム、遺伝子機能、臨床応用等についての研究が、一連の進展を遂げている。RNAiは、ウイルス感染の防御、トランスポゾンジャンプの防止等の多種の生体保護機構で重要な役割を果たしている(Hutvagner et al.,2001;Elbashir et al.,2001;Zamore,2001)。RNAiメカニズムに基づいて開発された製品は幅広い有望な候補薬物である。
【0003】
小干渉RNA(small interfering RNA,siRNA)は、RNA干渉作用を果たすことができる。Elbashirらは、2001年にsiRNAsが哺乳動物細胞中の特異的な遺伝子のサイレンシングを抑制することを発見した。研究によると、siRNAが、配列が相補する標的mRNAと特異的に結合し、それを分解させる。長鎖の二本鎖RNAがDicer酵素によって短鎖RNAに切断される。siRNA分子は2本の鎖からなり、2本の鎖中、標的mRNAに結合する鎖はアンチセンス鎖またはガイド鎖と呼ばれ、もう一方の鎖はセンス鎖またはパッセンジャー鎖と呼ばれる。研究によると、体外(in vitro)で化学合成されたsiRNAは、細胞に入った後も、同様にRNA干渉作用を果たすことができ、且つ、長鎖RNAによる免疫反応を効果的に低減することができる。よって、siRNAはRNAiの主な工具になる。
【0004】
プロタンパク質転換酵素サブチリシン9(Proprotein convertase subtilisin/kexin type 9,PCSK9)は、サブチリシンセリンプロテアーゼのファミリーのメンバーであり、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質のレベルの調節に関与する。肝臓はPCSK9を発現する主な部位である。PCSK9を発現する他の重要な部位としては、膵臓、腎臓及び腸が含まれる。低密度リポタンパク質受容体(LDLR)は、血液中の低密度リポタンパク質(LDL)を除去することで、アテローム性動脈硬化症及び高コレステロール血症を予防する。過剰発現の研究によると、PCSK9はLDLRのレベルを制御できることを示している。同時に、研究によると、マウス中のPCSK9遺伝子ノックアウト後、血液中のコレステロールのレベルが低下し、スタチン系薬物の血液コレステロールの低下への感受性が増強されている。以上の研究は、PCSK9の阻害剤が、血液中のLDL-C(低密度リポタンパク質-コレステロール)濃度の低下及びPCSK9媒介性疾患の治療に有利でありえることを示している。
【0005】
現在、PCSK9を標的とする阻害剤及びそれを脂質系疾患の治療への応用が報告されているが、さらに優れた治療効果、特異性、安定性、ターゲティング性または耐性等を有するように、当該標的に対する他の阻害剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本願は、PCSK9遺伝子の発現を抑制するsiRNA分子、キット及びその薬物組成物、並びに上記分子、キットまたは薬物組成物によるPCSK9遺伝子の発現の抑制または低下、またはPCSK9遺伝子媒介性疾患または症状の治療における方法と応用を提供する。
【0007】
具体的に、本願は以下の発明に関する。
【0008】
[1]PCSK9遺伝子の発現を抑制し、相補して二本鎖を形成するセンス鎖とアンチセンス鎖とを含むsiRNA分子であって、
前記センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、15~27個のヌクレオチドを含み、または15~27個のヌクレオチドから構成され、前記アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:1の少なくとも15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個または25個の連続するヌクレオチドと相補し、且つ
前記siRNA分子中の少なくとも一つのヌクレオチドが修飾されたものであるsiRNA分子。
【0009】
[2]前記siRNA分子のセンス鎖はSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を含み、前記siRNA分子のアンチセンス鎖はSEQ ID NO:3のヌクレオチド配列を含む[1]に記載のsiRNA分子。
【0010】
[3]前記修飾は、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、2′-メトキシエチル、2′-O-アルキル、2′-O-メチル、2′-O-アリル、2′-C-アリル、2′-フルオロ、2′-デオキシ、2′-ヒドロキシ、リン酸骨格、DNA、蛍光プローブ、リガンド修飾またはこれらの組み合わせを含み、好ましくは、2′-O-メチル、DNA、2′-フルオロ、チオ修飾のリン酸骨格またはこれらの組み合わせである[1]または[2]に記載のsiRNA分子。
【0011】
[4]そのセンス鎖とアンチセンス鎖が、鎖1と2、鎖3と5、鎖3と6、鎖3と7、鎖3と8、鎖9と4、鎖9と5、鎖9と6、鎖9と7、鎖9と8の組み合わせから選ばれる[3]に記載のsiRNA分子。
【0012】
[5]前記リガンド修飾は、siRNA分子の3’末端、5’末端または配列の中間で行われ、
前記リガンド部分はXmであり、ここで、Xは同一のまたは異なるリガンドであり、Xはコレステロール、ビオチン、ビタミン、ガラクトース誘導体または類似体、ラクトース誘導体または類似体、N-アセチルガラクトサミン誘導体または類似体、N-アセチルグルコサミン誘導体または類似体、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれ、mはリガンドの個数であり、好ましくは、m=1~5の中の任意の一つの整数であり、さらに好ましくは、m=2~4の中の任意の一つの整数であり、最も好ましくは、mが3である[3]に記載のsiRNA分子。
【0013】
[6]Xの構造はZであり、
【化1】
ここで、Z構造中のCH
2基のn値は、独立して1~15から選ばれ、好ましくは、Z構造中のn値は3または8であり、
さらに好ましくは、mが2、3または4である場合、リガンド部分はそれぞれ、(Z)
2、(Z)
3または(Z)
4であり、最も好ましくは、(Z)
2、(Z)
3または(Z)
4中の各n値が等しい[5]に記載のsiRNA分子。
【0014】
[7]リガンド及び/または蛍光修飾をさらに含み、前記リガンド修飾部分はXmであり、ここで、Xは同一のまたは異なるリガンドであり、Xはコレステロール、ビオチン、ビタミン、ガラクトース誘導体または類似体、ラクトース誘導体または類似体、N-アセチルガラクトサミン誘導体または類似体、N-アセチルグルコサミン誘導体または類似体、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれ、mはリガンドの個数であり、好ましくは、m=1~5の中の任意の一つの整数であり、さらに好ましくは、m=2~4の中の任意の一つの整数であり、最も好ましくは、mが3である[4]に記載のsiRNA分子。
【0015】
[8]そのセンス鎖とアンチセンス鎖が、鎖13と8、鎖17と8、鎖19と8、鎖20と8、鎖13と10、鎖17と10、鎖19と10、鎖20と10、鎖14と10、鎖18と10、鎖21と10、鎖22と10の組み合わせから選ばれる[7]に記載のsiRNA分子。
【0016】
[9]その構造が、
A:GACGAUGCCUGCCUCUACU-(X)m;
fAmGfUfAfG(s)dA(s)dG(s)dGfCfAfG(s)dG(s)dC(s)dAfUfCmGfUfC(s)mC(s)mC;または、
B:mGmAmCfGfAfUmGmCmCfUfGfCfCmUfCfUmAmCmU-(X)m;
fAmGfUfAfG(s)dA(s)dG(s)dGfCfAfG(s)dG(s)dC(s)dAfUfCmGfUfC(s)mC(s)mCであり、
ここで、Xの構造はZであり、
【化2】
mの値は2または3または4であり、
それぞれのZ中のCH
2基のn値は独立して1~15から選ばれ、
好ましくは、mが2、3または4である場合、リガンド部分はそれぞれ(Z)
2、(Z)
3または(Z)
4であり、且つ(Z)
2、(Z)
3または(Z)
4中の各nの値が等しい[7]に記載のsiRNA分子。
【0017】
[10]nの値が3または8である[9]に記載のsiRNA分子。
【0018】
[11]ヒト、猿のPCSK9遺伝子の発現を抑制する[1]乃至[10]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子。
【0019】
[12][1]乃至[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子と、薬学的に許容されるその他の成分と、を含む薬物組成物。
【0020】
[13]体内または体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下する方法であって、前記細胞に[1]~[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子、または[12]に記載の薬物組成物を導入して、PCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、または少なくとも5%低下させることを含む方法。
【0021】
[14][1]~[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子または[12]に記載の薬物組成物の、体内または体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下するための薬物の調製または被験者のPCSK9遺伝子媒介性疾患または症状を治療するための薬物の調製における応用。
【0022】
[15]前記PCSK9遺伝子媒介性疾患または症状は、心血管疾患または腫瘍性疾患を含み、好ましくは、心血管疾患は、高脂血症、高コレステロール血症、非家族性高コレステロール血症、多遺伝子高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合家族性高コレステロール血症、またはヘテロ接合家族性高コレステロール血症から選ばれ、腫瘍性疾患は、黒色腫、肝細胞癌、転移性肝がんから選ばれる[14]に記載の応用。
【0023】
[16][1]乃至[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子を含むキット。
【0024】
[17]被験者のPCSK9遺伝子媒介性疾患または症状を治療する方法であって、前記被験者に[1]乃至[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子または[12]に記載の薬物組成物を投与することを含む方法。
【0025】
[18]前記PCSK9遺伝子媒介性疾患または症状は、心血管疾患または腫瘍性疾患を含み、好ましくは、心血管疾患は高脂血症、高コレステロール血症、非家族性高コレステロール血症、多遺伝子高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合家族性高コレステロール血症、またはヘテロ接合家族性高コレステロール血症から選ばれる[17]に記載の用途。
【0026】
[19][1]乃至[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子または[12]に記載の薬物組成物の、体内または体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下するための薬物の調製における応用。
【0027】
[20]体内または体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下するための、[1]乃至[11]のうちのいずれか一項に記載のsiRNA分子または[12]に記載の薬物組成物。
【0028】
以下、図面と実施例を結合して本発明の実施形態を詳しく説明するが、以下の図面と実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを当業者は理解できる。本発明の様々な目的および有利な態様は、添付の図面および以下の好ましい実施形態の詳細な説明から当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】本発明のGalNAc-siRNAと受容体の結合を示す曲線を示す。
【
図1B】本発明のGalNAc-siRNAと受容体の結合を示す曲線を示す。
【
図1C】本発明のGalNAc-siRNAと受容体の結合を示す曲線を示す。
【
図2】投与してから6時間後に安楽死した後に行われたエクスビボ臓器イメージングを示す。
【
図3】投与してから6時間後に安楽死した後に行われたエクスビボ臓器イメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
配列情報
本発明に係る配列の情報を以下の表で提供する。
【0031】
基本配列(未修飾)は以下のとおりである。
【表1-1】
【0032】
本願に係る各siRNA分子中の各鎖及びその組成は以下である。
【表1-2】
【0033】
「G」、「C」、「A」、「T」、「U」は通常、それぞれ、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシルを塩基とするヌクレオチドである。
【0034】
修飾:d=DNA;m=2'-O-メチル;f=2'-フルオロ;(s)=PS骨格(すなわち、チオ修飾のリン酸骨格);L=L型リガンド;S=S型リガンド;Cy5=蛍光標識Cy5。
【0035】
発明を実施するための形態
以下、本発明の実施形態を具体的に詳細に説明する。
【0036】
本発明では、PCSK9遺伝子の発現を抑制し、相補して二本鎖を形成するセンス鎖とアンチセンス鎖を含むsiRNA分子であって、前記センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は15~27個のヌクレオチドを含みまたは15~27個のヌクレオチドから構成され、前記アンチセンス鎖はSEQ ID NO.:1の少なくとも15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個のまたは25個の連続するヌクレオチドと相補し、且つ、前記siRNA分子中の少なくとも一つのヌクレオチドが修飾されたものであるsiRNA分子を提供する。
【0037】
ここで使用される用語「アンチセンス鎖」とは、標的配列と完全または実質的に相補する領域を含むsiRNAの一つの鎖である。ここで使用される用語「相補する領域」とは、アンチセンス鎖上の標的mRNA配列と完全または実質的に相補する領域を指す。相補する領域と標的配列とが完全に相補しない場合、ミスマッチは分子の内部または末端の領域に位置してもよい。通常、最も耐容性のあるミスマッチは末端の領域に位置する。例えば5’及び/または3’端の5、4、3、2または1個のヌクレオチド内に位置する。ミスマッチに最も敏感であるアンチセンス鎖部分は「シード領域」と呼ばれる。例えば、19ntの鎖を含むsiRNAにおいて、第19目の位置(5’から3’へ数える)で一部のミスマッチに耐えることができる。
【0038】
ここで使用される用語「相補」とは、第1のポリヌクレオチドが、例えば厳格な条件などの条件で第2のポリヌクレオチドとハイブリダイズする能力を指す。例えば、厳格な条件としては、400mM NaCl、40mM PIPES pH 6.4、1mM EDTAで50℃または70℃で12~16時間持続することを含んでもよい。
【0039】
ここで使用される用語「センス鎖」とは、ここで定義された用語であるアンチセンス鎖の領域と実質的に相補する領域を含むsiRNAの一つの鎖を指す。
【0040】
siRNAのアンチセンス鎖とセンス鎖は、ここに記載されている且つ周知のように、同一のまたは異なる長さを有してもよい。
【0041】
前記siRNA分子は、RNAi作用によって、PCSK9mRNAの配列の特異的な分解を促進して、PCSK遺伝子の発現を抑制し、またはPCSK9遺伝子の発現レベルを低減させることを図る。例えばPCSK9遺伝子の発現レベルを95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、または5%低減させる。
【0042】
前記siRNA分子の各鎖の少なくとも70%、80%、90%、95%、または100%のヌクレオチドは、リボヌクレオチドであるが、例えばデオキシリボヌクレオチド等の一つまたは複数の非リボヌクレオチドを含んでもよい。
【0043】
一部の実施形態において、本発明のsiRNA分子中の少なくとも一つのヌクレオチドが修飾されたものである。siRNAの性能を改善するために多くの修飾を試みることができるが、このような試みは通常、RNA干渉を媒介するとともに、血清で向上された安定性を有する(例えば、ヌクレアーゼに対する耐性の増加及び/または延長された持続時間を有する)ことを解釈しにくい。本発明の修飾されたsiRNAは、高い安定性を有するとともに、高い阻害活性を保持する。
【0044】
本発明に適合する修飾としては、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、2′-メトキシエチル、2′-O-アルキル、2′-O-メチル、2′-O-アリル、2′-C-アリル、2′-フルオロ、2′-デオキシ、2′-ヒドロキシ、リン酸骨格、蛍光プローブ、リガンド修飾またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることができる。好適な修飾は2′-O-アルキルであり、例えば2′-O-メチル、DNA、2′-フルオロ、チオ修飾のリン酸骨格及びその組み合わせである。
【0045】
本発明の具体的な実施形態において、好適な修飾方式は以下を含む。すなわち、(1)アンチセンス鎖:5'端の1番目のヌクレオチドが2'-フルオロ修飾で、二番目のヌクレオチドが2'-O-メチル修飾で、中間領域がfNfNfN(s)dN(s)dN(s)dNfNfNfN(s)dN(s)dN(s)dNの繰り返し構造であり、3'端に5'(s)mN(s)mN 3'オーバーハング構造を有し、オーバーハング構造と中間領域との間のヌクレオチドが2'-O-メチルまたは2'-フルオロによって修飾され、且つ最大で二つの連続する2'-フルオロまたは2'-O-メチル修飾を有する。(2)センス鎖は修飾されず、またはセンス鎖のすべてのヌクレオチドが修飾された:5'端12ntのヌクレオチドがmNmNmNfNfNfNmNmNmNfNfNfNで修飾され、3'端の3ntヌクレオチドが2'-O-メチルで修飾され、中間ヌクレオチドが2'-O-メチルまたは2'-フルオロで修飾され、且つ最大で二つの連続する2'-フルオロまたは2'-O-メチル修飾を有する。一部の実施形態において、本発明で提供されるsiRNA分子は、表5に示すRBP9-005-P1G1、RBP9-005-P2G2、RBP9-005-P2G3、RBP9-005-P2G4、RBP9-005-P2G5、RBP9-005-P2G6、RBP9-005-P3G2、RBP9-005-P3G3、RBP9-005-P3G4、RBP9-005-P3G5、及びRBP9-005-P3G6から選ばれる。
【0046】
一部の実施形態において、化学修飾されたsiRNA分子は、RBP9-005-P2G6またはRBP9-005-P3G6であることが好ましい。
【0047】
一部の実施形態において、リガンド修飾は、siRNA分子の3′末端、5′末端または配列の中間で行われてもよい。一部の実施形態において、リガンドは、宿主細胞により取り込まれた部分であってもよい。本発明に適合するリガンドは、コレステロール、ビオチン、ビタミン、ガラクトース誘導体または類似体、ラクトース誘導体または類似体、N-アセチルガラクトサミン誘導体または類似体、N-アセチルグルコサミン誘導体または類似体またはこれらの組み合わせを含む。好ましくは、リガンド修飾がN-アセチルガラクトサミン誘導体または類似体修飾である。
【0048】
リガンド修飾は、siRNA分子の細胞取り込み、細胞内ターゲティング、半減期、または薬物代謝または動態等の性能を改善することができる。一部の実施形態において、リガンド修飾されていないsiRNAに比べ、リガンド修飾されたsiRNAは、選択された標的(例えば、特定の組織タイプ、細胞タイプ、細胞器等)、特に肝細胞に対して補強された親和性または細胞取込性を有する。好ましいリガンドはsiRNAの活性に干渉を及ぼすことがない。
【0049】
一部の実施形態において、本発明のsiRNAは、一つまたは複数のリガンド修飾を含んでもよく、好ましくは、1~5個、2~4個または3個のリガンド修飾を含み、好ましくはN-アセチルガラクトサミン誘導体/類似体である。
【0050】
一部の実施形態において、N-アセチルガラクトサミン誘導体のリガンド修飾部分の構造はZである。
【化3】
【0051】
一部の実施形態において、リガンド修飾のsiRNA分子は、表8に示すP2G6-03L、P2G6-03S、P3G6-03L、及びP3G6-03S、並びに表10に示すP2G6-13L、P2G6-13S、P3G6-13L、P3G6-13Sから選ばれるいずれかのsiRNA分子である。
【0052】
一部の実施形態において、リガンド修飾のsiRNA分子の構造は、
GACGAUGCCUGCCUCUACU-ZZZ;
fAmGfUfAfG(s)dA(s)dG(s)dGfCfAfG(s)dG(s)dC(s)dAfUfCmGfUfC(s)mC(s)mC;または、
mGmAmCfGfAfUmGmCmCfUfGfCfCmUfCfUmAmCmU-ZZZ;
fAmGfUfAfG(s)dA(s)dG(s)dGfCfAfG(s)dG(s)dC(s)dAfUfCmGfUfC(s)mC(s)mCであり、
ここで、ZZZ構造はリン酸ジエステル結合によって、siRNAセンス鎖3′末端のヌクレオチドに連結しており、それぞれのZはリン酸ジエステル結合によって、隣接のZに連結されている。ここで、siRNAに連結されているZZZ構造は下記の通りである。
【化4】
【0053】
それぞれのZにおけるCH2基のnの値は、独立して1~15から選ばれ、好ましくは、ZZZ構造中のnの値は等しい。
【0054】
一実施形態において、ZZZ構造におけるnの値はいずれも3である。前記nの値が3である場合、ZをLで表すことができる。
【0055】
一実施形態において、ZZZ構造におけるnの値はいずれも8である。前記nの値が8である場合、ZをSで表すことができる。本発明のsiRNA分子の各鎖において0%~100%の修飾されたヌクレオチド、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の修飾されたヌクレオチドを有してもよい。前記修飾は、オーバーハング領域または二本鎖領域で行われることができる。本発明の修飾は、例えば安定性、生体分布、阻害活性等のsiRNA分子の体外または体内の特性を改善するために用いられる。本発明の修飾を組み合わせて使用することができる。
【0056】
本発明のsiRNA分子の各鎖はオーバーハング端または平滑末端を有する。アンチセンス鎖またはセンス鎖の任意の一つの鎖または二本鎖の5′及び/または3′端はいずれも、オーバーハング端であってもよい。オーバーハング端は1~8個、好ましくは、2個、3個、4個、5個または6個のオーバーハングを有してもよく、その中、オーバーハングはU、A、G、C、T、dTから任意に選ばれる。
【0057】
一部の実施形態において、本発明のsiRNA分子は、人または猿のPCSK9遺伝子の発現を抑制する。
【0058】
一部の実施形態において、本発明は、本発明のsiRNA分子中の少なくとも1本の鎖を発現する、細胞内PCSK9遺伝子の発現を抑制するベクターをさらに提供する。ここで使用される用語「ベクター」とは、連結された他の核酸を増幅または発現させることができる核酸分子を指す。
【0059】
一部の実施形態において、本発明は、本発明のsiRNA分子またはベクターを含むキットをさらに提供する。
【0060】
一部の実施形態において、本発明は、本発明のsiRNA分子またはベクターと薬学的に許容されるその他の成分とを含む薬物組成物をさらに提供する。一実施形態において、本発明の組成物は、本発明のsiRNA分子またはベクターと薬学的に許容されるその他の成分とを薬理学的に有効量含む。ここで使用される用語「有効量」とは、所望の薬理学的な治療効果を得られるsiRNA分子の量を指す。「その他の成分」としては、水、塩水、ブドウ糖、緩衝液(PBSなど)、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、調味剤、防腐剤またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0061】
一部の実施形態において、本発明は、体内または体外細胞のPCSK9遺伝子の発現レベルを抑制または低下する方法であって、細胞へ本発明のsiRNA分子、ベクター、キットまたは薬物組成物を導入することで、PCSK9遺伝子の発現レベルを少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%抑制または低下する方法をさらに提供する。本文に使用された用語「導入」とは、非補助的拡散若しくは能動的な細胞過程、または補助試薬若しくは機器による、細胞への取り込みまたは吸収を容易にすることを指す。体内の細胞へ導入する際、siRNAを標的組織に注射したりまたは全身に投与することができる。体外の細胞への導入は、例えばエレクトロポレーション法等の本分野で周知の方法を利用することができる。
【0062】
細胞は、例えばヒト細胞のような霊長類動物細胞などの、PCSK9を発現する哺乳動物の細胞であることが好ましい。好ましくは、標的細胞においてPCSK9遺伝子の発現レベルが高い。より好ましくは、細胞が脳、唾液腺、心臓、脾臓、肺、肝臓、腎臓、腸または腫瘍に由来する。さらにより好ましくは、細胞が肝がん細胞または子宮頸癌細胞である。またさらに好ましくは細胞がHepG2とHeLa細胞から選ばれる。
【0063】
体外方法において、siRNA分子の細胞の終濃度は0.1~1000nMであり、好ましくは10~500nM、25~300nM、または50~100nMである。
【0064】
標的遺伝子、標的RNAまたは標的タンパク質レベルの検出は、siRNAの活性、有効性または治療結果の予測または評価に利用される。標的遺伝子、標的RNAまたは標的タンパク質レベルの検出には本分野の周知の方法を利用することができる。
【0065】
一部の実施形態において、本発明は、被験者のPCSK遺伝子媒介性疾患または症状の緩和または治療を含む体内方法を提供し、前記疾患または症状は、心血管疾患、脂質異常を含む。心血管疾患はアテローム性動脈硬化性心血管疾患を含んでもよく、脂質異常は血清におけるコレステロール及び/またはトリグリセリドのレベル上昇、低密度リポタンパク質コレステロールの上昇またはアポリポタンパク質B(ApoB)の上昇を含んでもよい。前記疾患または症状は、高脂血症、高コレステロール血症、非家族性高コレステロール血症、多遺伝子高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合家族性高コレステロール血症、またはヘテロ接合家族性高コレステロール血症であることが好ましい。被験者は哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトである。
【0066】
ここで使用される用語「高コレステロール血症」とは、増加された血清コレステロールを特徴とする状況を指す。用語「高脂血症」とは、増加された血清脂質を特徴する状況を指す。用語「非家族性高コレステロール血症」とは、単一の遺伝性遺伝子変異によるものではない、増加されたコレステロールを特徴とする状況を指す。用語「多遺伝子高コレステロール血症」とは、様々な遺伝子によるものであって増加されたコレステロールを特徴とする状況を指す。用語「家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia)(FH)」とは、LDL-受容体(LDL-R)中の変異、有意に増加されたLDL-C及びアテローム性動脈硬化の早期発生(premature onset)を特徴とする常染色体優性代謝障害を指す。用語「ホモ接合家族性高コレステロール血症(homozygous familial hypercholesterolemia)」または「HoFH」とは、母体及び父体のLDL-R遺伝子の変異を特徴とする状況を指す。用語「ヘテロ接合家族性高コレステロール血症(heterozygous familial hypercholesterolemia)」または「HoFH」とは、母体または父体のLDL-R遺伝子の変異を特徴とする状況を指す。
【0067】
PCSK遺伝子媒介性疾患または症状は、PCSK9遺伝子の過剰発現、PCSK9タンパク質の過剰産生によって起こされ、PCSK9遺伝子の発現を低減することで調節することが可能である。ここで使用される用語「治療」とは、PCSK9遺伝子媒介性疾患または症状の緩和、軽減または治癒を指し、例えば血清LDL、LDL-Cのレベルの低減を含む血液脂質レベルの低減を指す。一部の実施形態において、血清LDL、血清LDL-Cの含有量または濃度が、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%減少された。
【0068】
体内方法において、薬物組成物を例えば筋肉、静脈、動脈、腹膜または皮下注射を含む非経口投与のようなすべての適切な手段で投与することができる。投与形態は一回投与または複数回投与を含むが、これに限定されることはない。投与量範囲は、0.1mg/kg乃至100mg/kg、0.5mg/kg乃至50mg/kg、2.5mg/kg乃至20mg/kg、5mg/kg乃至15mg/kgであることがであってもよく、好ましくは、3mg/kg、10mg/kg、33mg/kgであり、さらに好ましくは10mg/kgであり、最も好ましくは、33mg/kgである。
【0069】
一方、本発明においてさらに1種または複種類の本発明のsiRNAまたはそれを含む薬物組成物と1種または複種類の他の治療剤とを併用、または他の治療方法と結合して使用することを含む併用治療の方法を提供する。他の治療剤としては、例えば高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化または脂質異常等の脂質失調を予防、緩和または治療するための既知の薬剤、 例えばコレステロール吸収阻害剤、脂質低下薬、鎮痛剤、抗炎症剤、抗腫瘍薬等を含む。他の治療方法としては、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、手術療法等を含む。
【0070】
本発明のsiRNA分子は、多種の有益な効果を生じる。1、修飾されたsiRNA分子は、高い安定性と高い阻害活性を有する。2、リガンド修飾されたsiRNA分子は、高い阻害活性と安定性を保持しつつ、優れた肝臓ターゲティング性及び細胞内取り込み促進能を有し、他の組織または臓器に対する影響を低減、及びsiRNA分子の使用量を低減することができ、毒性の軽減及びコストの低減の目的を実現できる。3、リガンド修飾されたsiRNA分子は、トランスフェクション試薬を必要とせず標的細胞及び標的組織に導入されることができ、細胞または組織毒性等のトランスフェクション試薬の悪影響を低減することができる。したがって、本発明のリガンド修飾されたsiRNA分子はターゲティング治療を可能にする。
【0071】
略称、略語と番号説明
【0072】
「G」、「C」、「A」、「T」、「U」は通常、それぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシルを塩基とするヌクレオチドを表す。
【0073】
REL(Relative exprseeion level):mRNA相対発現レベル。
【0074】
GalNAc:N-アセチルガラクトサミン。
【0075】
修飾:N=RNA;dN=DNA;mN=2'-O-メチル修飾;fN=2'-フルオロ修飾;(s)=PS骨格(すなわち、5'-チオ修飾のリン酸骨格)。
【0076】
略語:RBP9-005-P3G6をP3G6と略称することができ、その他も類似する。
【0077】
番号:P3G6折れ線後の第1位は蛍光標識の有無(0は「無し」、1は「有り」)を表し、第2位はリガンドの個数を表し、第3位はリガンドのタイプを表し、例えば、P3G6-13LはP3G6が蛍光標識、三つのLのリガンド修飾を経ることを表し、その他も類似する。
【0078】
実施例
実施例1 PCSK9-siRNA活性スクリーニング
【0079】
siRNAの設計
ヒトのpcsk9mRNA配列に基づいて、異なる部位を選択して複数対のPCSK9-siRNAを設計し、設計された全ての単一のsiRNAはいずれも標的遺伝子(表1を参照)の全ての転写産物にターゲティングでき、これらの複数対のsiRNAは、配列類似性ソフトウェアでアラインメントした結果、他の全ての非標的遺伝子の配列と最低の相同性を持つ。配列設計方法は、Elbashir et al.2002;Paddison et al.2002;Reynoldset al.2004;Ui-Tei et al.2004らの方法を参照することができる。
【0080】
【0081】
siRNAの合成
本発明において、2’-ヒドロキシを含有するリボヌクレオチドのオリゴヌクレオチドはいずれも理論収量1umol合成仕様に応じて完成された。1umol仕様の汎用の固相サポートCPGまたは3’-コレステロール修飾CPG(Chemgenesから購入した)、2’-O-TBDMS保護RNAホスホロアミダイトのモノマー、DNAモノマー、2’-メトキシモノマー、及び2’-フルオロモノマー(Sigma Aldrichから購入した)を量って、無水アセトニトリル溶液に、その濃度が0.2Mとなるように溶解させた。リン酸骨格のチオ修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドに対して、0.2M PADS溶液をチオール試薬とした。5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール(Chemgenesから購入した)アセトニトリル溶液を活性剤(0.25M)として配置し、0.02Mヨードのピリジン/水溶液を酸化剤として、及び3%トリクロロ酢酸ジクロロメタン溶液を脱保護試薬として配置し、ABI 394型のDNA/RNA自動合成機の対応する試薬指定位置に置いた。合成プログラムを設定して指定のオリゴデオキシヌクレオチド塩基配列を入力した。誤りがないとチェックした後、オリゴデオキシヌクレオチドの合成の循環を開始した。各ステップのカップリング時間は6分であり、ガラクトースリガンドの対応するL及びSモノマーのカップリング時間は10~20分である。自動で循環した後、オリゴデオキシヌクレオチド固相の合成を完成した。乾燥窒素でCPGをブロー乾燥し、5ml EP管に移し、アンモニア水/アルコール溶液(3/1)2mlを添加して、55℃で16~18時間加熱した。10000rpmの回転速度で10min遠心分離して上澄み液を得て、濃アンモニア水/アルコールを完全に抜き出して白色のゲル状固体が得られた。固体を200μlの1M TBAF THF溶液に溶解させて、室温で20時間振動させた。その後、0.5mlの1M Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)を添加して、室温で15分振動させ、遠心乾燥機に加えて体積が元の1/2になるように乾燥させてTHFを除去した。得られた溶液を0.5mlクロロホルムで2回抽出して、1ml 0.1M TEAAローディングバッファーを添加し、混合溶液を固相抽出カラムに入れて、溶液中の過剰の塩を除去した。得られたオリゴデオキシヌクレオチドの濃度をマイクロ紫外分光光度計(KO5500)で含有量を測定した。Oligo HTCS LC-MS system(Novatia)システムで、質量分析検測を完成した。一級走査後Promassソフトウェアで核酸分子量を正規化して算出した。
【0082】
本発明において、デオキシリボヌクレオチドまたは2’-メトキシまたは2’-フルオロまたはLNAまたは2’-MOE修飾オリゴヌクレオチドのみは理論収量1umol合成仕様で完成した。1umol仕様の汎用固相サポートCPGまたは3’-コレステロール修飾CPG(Chemgenesから購入した)、DNAモノマー、2’-メトキシモノマー、2’-フルオロモノマー(Sigma Aldrichから購入した)を量って、無水アセトニトリル溶液にその濃度が0.2Mとなるように溶解させた。リン酸骨格のチオ修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドに対して、0.2M PADS溶液をチオール試薬とした。5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール(Chemgenesから購入した)アセトニトリル溶液を活性剤(0.25M)として配置し、0.02Mヨードのピリジン/水溶液を酸化剤として、及び3%トリクロロ酢酸ジクロロメタン溶液を脱保護試薬として配置し、ABI 394型DNA/RNA自動合成機の対応する試薬指定位置に置いた。合成プログラムを設定して指定のオリゴデオキシヌクレオチド塩基配列を入力した。誤りがないとチェックした後、オリゴデオキシヌクレオチドの合成の循環を開始した。各ステップのカップリング時間は6分であり、ガラクトースリガンドの対応するモノマーのカップリング時間は6~10分である。自動で循環した後、オリゴヌクレオチド固相の合成を完成した。乾燥窒素でCPGをブロー乾燥し、5ml EP管に移し、アンモニア水溶液2mlを添加して、55℃で16~18時間加熱した。10000rpmの回転速度で10min遠心分離して上澄み液を得て、濃アンモニア水/アルコールを完全に抜き出して白色または黄色のゲル状固体が得られた。1ml 0.1M TEAAローディングバッファーを添加し、混合溶液を固相抽出カラムに入れて、溶液中の過剰の塩を除去した。得られたオリゴデオキシヌクレオチドの濃度をマイクロ紫外分光光度計(KO5500)で含有量を測定した。Oligo HTCS LC-MS system(Novatia)システムで、質量分析検測を完成した。一級走査後Promassソフトウェアで核酸分子量を正規化して算出した。
【0083】
PCSK9-siRNAの異なる細胞へのトランスフェクション
全ての細胞は、ATCCから由来したが、公衆が入手可能な他の供給源から由来してもよい。他の試薬も購入可能である。
【0084】
【0085】
細胞は、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地中で、5% CO2、37℃の恒温培養器で培養した。細胞が対数増殖期であり状態が良好である時(70%コンフルエンシー)、トランスフェクション試薬でトランスフェクションを行った。細胞濃度を1×106/mLに調節し、6ウェルプレートの各孔にmL細胞溶液及び5μLのriboFectトランスフェクション試薬を添加した。室温で5min放置してから5μLの100nM siRNAを添加して、37℃、5%CO2で48hインキュベートした。
【0086】
細胞プレーティングごとに、試験グループに加え、NCが陰性である対照グループ(非関連siRNA)、Mockがトランスフェクション試薬である対照グループ、未処理対照グループ(UTグループ、siRNAを添加していない)等の対照グループも設置した。試験グループと対照グループはいずれも3回繰り返した。
【0087】
標的mRNAレベルのリアルタイム定量PCR分析
1、トランスフェクションした48h後、細胞を溶解させ、Trizol法で細胞全RNAを抽出した。
【0088】
2、Reverse Transcription mix逆転写キットは逆転写に用いられる(クワンチョウ リボバイオ カンパニーリミテッド)。
【0089】
3、蛍光定量PCR:
β-actin遺伝子を内部参照遺伝子とし、Real-time PCRキットSYBR Premix(2×)でリアルタイムに蛍光定量PCR反応を行った。美国Bio-Rad社のCFX96蛍光定量PCR機でPCR反応を行った。使用されたプライマーは以下である。
【0090】
【0091】
4、データ分析
PCR反応終了後、一つのサンプルの九つのレピティション(サンプルあたり三つのトランスフェクションレピティション、三つのqPCRレピティション)のCt誤差は±0.5であった。CFX 2.1で相対定量分析を行った。表4はNCグループに対する標的遺伝子の発現レベル平均値(NCグループのmRNA相対発現レベルは1である)である。好ましいsiRNAのリアルタイムの定量PCR検出結果は以下である。
【0092】
【0093】
HepG2、HeLaで行われたPCSK9 siRNAスクリーニングでは、HeLa及びHePG2細胞で活性の高いsiRNA分子、即ちRBP9-005を見出した。
【0094】
実施例2 PCSK9-siRNA最適化
【0095】
RBP9-005に対して、異なる修飾最適化を行い、その合成、トランスフェクション、定量PCR検出ステップは実施例1と同様である。トランスフェクション細胞はHeLa及びHePG2細胞であり、その結果を表5に示す(REL-H:HeLa細胞中のPCSK9mRNA相対発現レベル;REL-2:HePG2細胞中のPCSK9mRNA相対発現レベル)。表5は、NCグループに対する標的遺伝子の発現レベルの平均値である(NCグループのmRNA相対発現レベルは1である)。ここで、NCはsiRNA非関連陰性対照グループであり、Mockはトランスフェクション試薬対照グループであり、UTは未処理細胞対照グループである。
【0096】
【0097】
【0098】
結果から、化学修飾されたRBP9-005-P2G6、RBP9-005-P3G6はHeLa及びHePG2細胞で阻害活性が高いことが分かる。
【0099】
実施例3 GalNAc-siRNA細胞ターゲティング性の検出
【0100】
一、リガンド修飾されたsiRNAの調製
【0101】
【0102】
(1)化合物1の合成
1Lの丸底フラスコに、δ-バレロラクトン(100g、1mol)、水酸化ナトリウム(40g、1mol)及び脱イオン水400mLを混合し、70℃で6時間反応させ、TCLで反応が終了するまでモニタリングした。反応液を回転して乾燥させ、200mlのトルエンを添加して回転して乾燥させて、白色の固体140gを得た。
【0103】
(2)化合物2の合成
1Lの丸底フラスコに、化合物1(140g、1mol)、無水アセトン500mL、臭化ベンジル(205.2g、1.2mol)、及び触媒としての臭化テトラブチルアンモニウム(16.2g、0.05mol)を加えて、加熱して還流させる。TLCで反応をモニタリングし、24h後に完全に反応した。反応液を室温まで冷却した後、アセトンを減圧除去した。残留物を500mLの酢酸エチルに溶解させ、順に飽和重硫酸ナトリウム200mL、飽和重炭酸ナトリウム200mL、飽和食塩水200mLで洗浄した。有機相は無水硫酸ナトリウムによって乾燥、濃縮され、シリカゲルカラム(石油エーテル:酢酸エチルV:V=1:1)よって分離されて透明オイル状の液体175gを得て、収率は84%であった。
【0104】
(3)化合物3の合成
1Lの丸底フラスコに、D-ガラクトース塩酸塩(100g、0.46mol)と無水ピリジン450mLを加えて、氷浴で無水酢酸325mL、トリエチルアミン(64.5mL、0.46mol)、及びDMAP(2g、0.016mol)を徐々に添加した。常温で一夜反応させて、大量の固体が析出した。吸引ろ過し、ろ過ケークを0.5N HCl溶液200mLで洗い流し、白色の固体162.5gを得、収率は90%であった。1H
NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.88(d,J=9.2Hz,1H),5.63(d,J=8.8Hz,1H),5.26(d,J=3.1Hz、1H),5.05(d,J=11.3,3.3Hz,1H),4.36(m,4H),2.11(s,3H),2.03(s,3H),1.98(s,3H),1.90(s,3H),1.78(s,3H)。
【0105】
(4)化合物4の合成.
250mLの丸底フラスコに、化合物3(10g、25.7mmol)と無水ジクロロメタン100mLを加えた。10分攪拌してから、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(7mL、38.7mmol)を添加した。その後、室温で一夜反応させ、反応液を重炭酸ナトリウム(7g、79.5mmol)の水溶液(200mL)中に徐々に注いで0.5時間攪拌した。有機相が分離され、無水硫酸ナトリウムで乾燥された。減圧濃縮して、淡黄色コロイド7.78gを得て、収率は92%であった。
【0106】
(5)化合物5の合成
100mLの丸底フラスコに、化合物4(5g、15.2mmol)と化合物2(3.8g、18.25mmol)を無水1,2-ジクロロエタン50mLに溶解させ、10分攪拌した後、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.55mL、3mmol)を添加した。常温で一夜反応させた。反応液をジクロロメタンで抽出した。取得した有機相を飽和重炭酸ナトリウム50mLで二回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(石油エーテル:酢酸エチルV:V=3:2)で分離して透明オイル状の液体6.94gを得て、収率は85%であった。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.69(d,J=9.3Hz,1H),7.33-7.16(m,5H),5.28(d,J=5.3Hz,1H),4.95(s,2H),4.93(q,J=4.2Hz,1H),4.40(d,J=8.6Hz,1H),4.00-3.86(m,3H),3.73-3.56(m,2H),3.36-3.21(m,1H),2.53(t,J=8.2Hz,2H),2.11(s,3H),1.89(s,3H),1.83(s,3H),1.65(s,3H),1.59-1.36(m,4H).MS(ESI),m/z:560.2([M+Na]+)。
【0107】
(6)化合物6の合成
50mLの丸底フラスコに、化合物5(3.3g、6.1mmmol)、Pd/C(0.33g、10%)を5mLメタノールと20mL酢酸エチルに溶解させ、その後、水素バルーンに接続して常温で一夜反応させた。反応液を珪藻土でろ過してから、珪藻土をメタノールで洗い流した。ろ過液を減圧濃縮して回転乾燥させて、白色の固体2.8gを得て、収率は95.5%であった。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:11.98(s,1H),7.79(d,J=8.9Hz,1H),5.20(s,1H),5.0-4.95(q,J=4.2Hz,1H),4.51-4.46(d,J=7.2Hz,1H),4.15-3.97(m,3H),3.89-3.79(m,1H),3.80-3.69(m,1H),3.46-3.36(m,1H),2.22-2.14(t,J=7.2Hz,2H),2.15(s,3H),2.00(s,3H),1.95(s,3H),1.87(s,3H),1.59-1.42(m,4H).MS(ESI),m/z:470.5([M+Na]+)。
【0108】
(7)化合物7の合成
セリノールを原料として、Choi J Y等の文献を参照して合成した。白色の固体を得て、収率は89%であった。MS(ESI),m/z:248.2([M+Na]+)。
【0109】
(8)化合物8の合成
化合物2を原料として、US 2011/0077389A1文献を参照して合成した。白色の固体を得て、収率は56%であった。1H
NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.41-7.37(d,J=7.2Hz,2H),7.33-7.28(t,J=6.9Hz,2H),7.27-7.19(m,5H),6.91-6.86(d,J=8.2Hz,4H),5.16(s,2H),4.63-4.58(m,1H),4.05-3.97(m,1H),3.74(s,6H),3.04-2.99(m,2H),2.95-2.90(m,2H).MS(ESI),m/z:416.3([M+Na]+)。
【0110】
(9)化合物9の合成
250mLの丸底フラスコに、化合物6(10g、22.35mmol)、1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC.HCL)(5.14g、26.82mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(2.83g、24.59mmol)、及びジクロロメタン100mLを加えた。常温で0.5h攪拌反応させた後、化合物8(8.79g、22.35mmol)を添加した。TLCで反応をモニタリングし、4h後に完全に反応した。反応液を順に飽和重炭酸ナトリウム50mLと飽和食塩水50mLで洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮し、シリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノールV:V=20:1)で分離して白色の固体15.8gを得て、収率は86%であった。MS(ESI),m/z:845.2([M+Na]+)。
【0111】
(10)化合物Lモノマーの合成
250mLの2口瓶に、化合物1(5g、6.08mmol)、窒素保護、無水アセトニトリル100ml、ビス(ジイソプロピルアミノ)(2-シアノエトキシ)ホスフィン(3.66g、12.16mmol)を添加して、攪拌しながらエチルチオテトラゾールのアセトニトリル溶液(2.5M)(1.22ml,3.04mmol)を徐々に滴下した。0.5h反応させた。TLCで反応をモニタリングし、0.5h後に完全に反応された。減圧濃縮してアセトニトリルを除去した。ジクロロメタン100mLを添加して、濃縮物を溶解させ、続いて、飽和食塩水100mLで洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、シリカゲルカラム(石油エーテル:酢酸エチルV:V=1:3)で分離して白色の固体5.16gを得て、収率は83%であった。<1>H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.84-7.79(d,J=8.9Hz,1H),7.65-7.60(d,J=8.9Hz,1H),7.41-7.37(d,J=7.2Hz,2H),7.33-7.28(t, J=6.9Hz,2H),7.27-7.19(m,5H),6.91-6.86(d,J=8.2Hz,4H),5.20(s,1H),5.0-4.95(q,J=4.2Hz,1H),4.51-4.46(d,J=7.2Hz,1H),4.15-3.97(m,3H),4.05-3.96(m,1H),3.84-3.80(m,2H),3.89-3.79(m,1H),3.74(s,6H),3.71-3.69(m,1H),3.46-3.36(m,1H),3.04-2.99(m,2H),2.95-2.90(m,2H),2.88-2.84(m,2H),2.59-2.54(m,2H),2.22-2.14(t,J=7.2Hz,2H),2.15(s,3H),2.00(s,3H),1.95(s,3H),1.87(s,3H),1.77(s,12H),1.59-1.42(m,4H).MS(ESI),m/z:1045.5([M+Na]+)。
【0112】
【0113】
(1)化合物10の合成
100mLの丸底フラスコに、化合物4(5g、15.2mmol)と、50mlの無水ジクロロメタンに溶解された10-ウンデセノール(3.1g、18.24mmol)を添加した。10分攪拌してからトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.55mL、3.0mmol)を添加した。常温で一夜反応させた。反応液をジクロロメタンで抽出した。得られた有機相を飽和重炭酸ナトリウム50mLで2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(石油エーテル:酢酸エチルV:V=3:2)で分離して白色の固体6.59gを得て、収率は87%であった。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.82(d,J=3.3Hz,1H),5.86-5.73(m,1H),5.22(s,1H),5.02-4.9(m,3H),4.5-4.98(s,J=3.5Hz,1H),4.08-3.99(m,3H),3.9-3.88(m,1H),3.73-3.65(m,1H),3.48-3.38(m,1H),2.12(s,3H),2.05-2.01(m,2H),2.00(s,3H),1.88(s,3H),1.66(s,3H),1.5-1.4(m,2H),1.39-1.3(m,2H),1.29-1.19(m,10H).MS(ESI),m/z:522.4([M+Na]+)。
【0114】
(2)化合物11の合成
100mLの丸底フラスコに、化合物10(4g、8.02mmol)、ジクロロメタン50ml、アセトニトリル50ml、及び脱イオン水70mLを加えた。NaIO4(6.86g、32.1mmol)を複数回に分けて添加した。常温で48h反応させた。TCLで反応が終了するまでモニタリングした。反応液に脱イオン水100mLを添加し、た後、ジクロロメタンで3回抽出した(50mL×3)。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮して、淡褐色ゲル状産物4.1gを得て、収率は99%であった。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:11.99(s,1H),7.82(d,J=3.3Hz,1H),5.22(s,1H),5.02-4.9(m,1H),4.5-4.98(s,J=3.5Hz,1H),4.08-3.99(m,3H),3.9-3.88(m,1H),3.73-3.65(m,1H),3.48-3.38(m,1H),2.12(s,3H),2.05-2.01(m,2H),2.00(s,3H),1.88(s,3H),1.66(s,3H),1.5-1.4(m,2H),1.39-1.3(m,2H),1.29-1.19(m,10H).MS(ESI),m/z:540.26([M+Na]+)。
【0115】
(3)化合物12の合成
化合物1の合成を参照して、白色の固体を得て、収率は85.6%であった。MS(ESI),m/z:915.5([M+Na]+)。
【0116】
(4)化合物Sの合成
化合物Lの合成を参照して、白色の固体を得て、収率は82.1%であった。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.82-7.78(d,J=7.3Hz,1H),7.69-7.63(d,J=7.3Hz,1H),7.41-7.37(d,J=7.2Hz,2H),7.33-7.28(t,J=6.9Hz,2H),7.27-7.19(m,5H),6.91-6.86(d,J=8.2Hz,4H),5.22(s,1H),5.02-4.9(m,1H),4.5-4.98(s,J=3.5Hz,1H),4.08-3.99(m,3H),4.05-3.97(m,1H),3.9-3.88(m,1H),3.84-3.80(m,2H),3.74(s,6H),3.73-3.65(m,1H),3.48-3.38(m,1H),3.04-2.99(m,2H),2.95-2.90(m,2H),2.88-2.84(m,2H),2.61-2.55(m,2H),2.12(s,3H),2.05-2.01(m,2H),2.00(s,3H),1.88(s,3H),1.77(s,12H),1.66(s,3H),1.5-1.4(m,2H),1.39-1.3(m,2H),1.29-1.19(m,10H).MS(ESI),m/z:1115.2([M+Na]+)。
【0117】
3、GalNac-siRNAの合成
実施例1を参照する。
【0118】
二、マウス初代肝細胞の単離
マウスを麻酔し、皮膚と及び筋肉層を開いて肝臓を露出させた。灌流カテーテルを門脈に挿入し、下腔の静脈に小さい開口を切り取って、肝臓への灌流を用意した。40℃で灌流溶液Solution I(Hank’s,0.5mM EGTA,pH 8)と灌流溶液Solution II(低グルコースDMEM,100U/mL Type IV,pH 7.4)を予熱した。37℃の灌流溶液Solution Iを門脈カニューレに沿って、流速7mL/minで、肝臓が灰白色になるまで肝臓を5min灌流した。続いて、37℃の灌流溶液Solution IIで、流速7mL/minで肝臓を7min灌流した。灌流が完了した後、肝臓を取り外しSolution III(10%FBSの低グルコースDMEM,4℃)に置いて消化を終了させた。ピンセットで肝包膜を切って、軽く振って肝臓細胞を放出した。70um細胞フィルターで肝細胞をろ過し、50gで2min遠心分離して上澄み液を廃棄した。Solution IV(40%percoll低グルコースDMEM,4℃)で細胞を再懸濁し、その後、100gで2min遠心分離して上澄み液を廃棄した。2%FBSの低グルコースDMEMを添加して細胞を再懸濁して用意した。トリパンブルー染色で細胞の活力を検定した。
【0119】
三、GalNAc結合曲線及びKd値の測定
新たに単離したマウス初代肝細胞を96ウェルプレートに、2×10
4個/孔、100ul/孔で広げた。各孔にGalNAc-siRNAをそれぞれ添加した。GalNAc-siRNAの各々は、終濃度0.9nM、8.3nM、25nM、50nM、100nM、150nMをそれぞれ設定した。4℃で2hインキュベートした後、50gで2min遠心分離して上澄み液を廃棄した。10ug/ml PIで細胞を再懸濁して、10min染色した後、50gで2min遠心分離した。予冷のPBSで細胞を洗浄し、50gで2min遠心分離して上澄み液を廃棄した。PBSで細胞を再懸濁した。フローサイトメーターで生細胞平均蛍光強度MFIを測定し、GraphPad Prism 5ソフトウェアで非線形フィッティング及びKd値の算出を行った。表6A~C及び
図1A~Cのデータによると、リガンド修飾されたGalNAc-siRNAはトランスフェクション試薬を添加することなく、体外の肝細胞のエンドサイトーシス/取り込みを促進し、肝細胞の配達を実現することが分かる。同時に、GalNac構造が異なるGalNAc-siRNAは、細胞エンドサイトーシス及び受容体との結合能に一定の差異があることが示されている。Bmax及びKd値から、3S、4Sと3L、4S構造のGalNAc-siRNAが肝細胞との親和性に優れていると判る。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
注:P2G6-10の折れ線後の1は、蛍光標識修飾されたことを表し、折れ線後の0は、標的リガンド修飾が行われていないことを表す。P2G6-13Lの折れ線後の1は蛍光標識修飾されたことを表し、折れ線後の3Lは標的リガンド修飾が三つのL(LLL)であることを表し、その他も類似する。
【0125】
実施例4 GalNAc-siRNAの体外有効性試験
【0126】
実施例1のステップを参照して、HePG2細胞中のmRNA発現レベルを測定した。GalNAc-siRNAトランスフェクション終濃度は50nMである。表8にその結果を示す。
【0127】
【0128】
【0129】
注:P2G6-03Lの折れ線後の0は、蛍光標識修飾されていないことを表し、折れ線後の3Lは、標的リガンド修飾が三つのL(LLL)であることを表し、その他も類似する。
【0130】
実施例5 体内肝臓のターゲティング性試験
【0131】
本試験は、雄性の、6~7週齢のSPF級Balb/c-nuマウス24匹(北京維通利華実験動物有限会社から購入した)を用いて行った。マウスをランダムにブランク対照グループ、P2G6-10グループ、P3G6-10グループ、P2G6-13Lグループ、P2G6-13Sグループ、P3G6-13Lグループ、P3G6-13Sグループの7グループに分けた。各グループの動物数はそれぞれ、2、3、3、4、4、4、4匹であった。マウスに尾静脈注射投与を行い、投与量は約10mg/kgである(実験設計は表10に示される)。投与前、投与後の15min、30min、1h、2h、4h、6hに、すべての動物に対して白光及びX線のイメージングを含む生体イメージングを行った。投与してから6時間後に安楽死した後、脳、唾液腺、心臓、脾臓、肺臓、肝臓、腎臓、腸管を取り出してエクスビボ臓器イメージング(
図2と
図3)の分析を行った。
【0132】
【0133】
エクスビボイメージング分析を行って、表11~表12にその結果を示した。その結果によると、投与してから6時間後に、P2G6-13L、P2G6-13S、P3G6-13L、P3G6-13Sグループの肝臓の蛍光強度が陰性対照グループ(NC)に比べ有意に向上され(表12の蛍光強度比の結果を参照)、これは、P2G6-13L、P2G6-13S、P3G6-13L、P3G6-13Sがいずれも肝臓に対してより有意に高いターゲティング性を有することを示す。
【0134】
【0135】
【0136】
実施例6、GalNAc-siRNAの体内有効性検出
【0137】
試験は、SPF級の雄性の6~8週齢のC57BL/6マウス(北京維通利華実験動物有限会社)を用いて行われ、ランダムにグループに分けた。C57/Bl6マウス尾静脈投与し、3日目と7日目にそれぞれマウスの肝臓を取って、肝臓を-80℃で凍結保存し、肝臓組織のPCSK9mRNAレベルを調べた。それぞれ、3日目、7日目、14日目、21日目、30日目にマウスの血液を採って(眼球後部から放血して0.25ml血液を採集し、採集してから1h内に検査を行う)、血液中のLDL-c、Tc、TGレベルを検査した。実験中に、すべての動物には死亡または瀕死症状がなかった。臨床的に観察したところ、いずれの動物にも有意な異常は見られなかった。
【0138】
一、マウス肝臓のPCSK9遺伝子のmRNA発現レベルの検測
マウス28匹をランダムに7グループに分け、グループに4匹ずつ、動物のグループ分けと投与状況を表13に示した。凍結保存されたマウス肝臓組織を自動研磨機で研磨した。Trizol法でマウス肝臓組織中の全RNAを抽出し、K5500でRNA純度及び濃度を測定したところ、後続のqPCR実験要求を満たした。qRT-PCR Starter Kit(クワンチョウ リボバイオ カンパニーリミテッド)でPCSK9遺伝子のmRNA発現レベルを検測した。qPCR実験において、サンプルごとに三つの複素孔を設置し、18s RNAを内部参照とし、2-ΔΔCt法でサンプル中のPCSK9遺伝子のmRNA相対発現量を算出した。溶媒グループは対照グループである。Excelソフトウェアでグループ間のPCSK9遺伝子mRNA相対発現量の差異を分析した。
【0139】
【0140】
結果(表14)によると、3日乃至7日間投与した後、溶媒対照グループに比べ、投与グループCと投与グループDにおいて、マウス肝臓組織中のPCSK9mRNA発現レベルは低減され、且つ一定の投与量依存性があることが分かる。これは、目標薬物C及びDが有効且つ安定的であり、マウス肝臓組織中のPCSK9遺伝子のmRNAの発現レベルを低減できることを示す。
【0141】
【0142】
二、マウス血清生化指標の検出
マウス112匹をランダムに7グループに分け、グループに16匹の動物ずつ、動物のグループ分けと投与状況を表13に示した。200μLの血液を採って、4000rpm遠心分離して上澄み液をとり、生化学分析装置(邁瑞BS-490生化学分析装置)で血清中の各生化指標のレベルを検出した。
結果を表15~19に示した。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
結果(表15~表19)によると、3~30日投与した後、投与グループC及びDはともに動物体内のLDL-C、TC、TGの発現を低減させ、投与量の増加に伴って、LDL-C、TC、TGの発現に対する抑制作用も徐々に増加されたことが分かる。一部の用量(例えば、中用量グループと高用量グループ)は血液脂質を低減するより顕著な作用を果たした。よって、目標薬物C及びDに代表される本発明のPCSK9遺伝子の発現を抑制するsiRNA分子は、血液脂質を著しく低減させる作用を有し、心血管疾患または腫瘍性疾患などのPCSK9遺伝子媒介性疾患または症状の治療に有用である。
【0149】
本発明の具体的な実施形態を詳細に説明したが、当業者であれば、開示された全ての示唆に基づいて、細部に各種の変形及び変更を行うことができ、これらの変更はいずれも本発明の保護範囲に含まれることは理解される。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物によって与えられる。
【0150】
参照文献
Hutvagner G,Mclachlan J,Pasquinelli A E,et al.A cellular function for the RNA-interference enzyme Dicer in the maturation of the let-7small temporal RNA[J].Science,2001,293(5531):834-8。
Elbashir S M,Harborth J,Lendeckel W,et al.Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells.[J].Nature,2001,411(24):494-8。
Choi J Y,Borch R F.Highly efficient synthesis of enantiomerically enriched2-hydroxymethylaziridines by enzymatic desymmetrization[J].Cheminform,2010,38(18):215-8。
Zamore P D.RNA interference:listening to the sound of silence[J].Nature Structural Biology,2001,8(9):746-50。
【配列表】