(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】脂肪抑制を用いる拡散MRイメージング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 376
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2020531630
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2018083392
(87)【国際公開番号】W WO2019115277
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク ヨハン サムエル
(72)【発明者】
【氏名】デ ウェールト エルウィン
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517375(JP,A)
【文献】特表2016-519994(JP,A)
【文献】特開2012-157687(JP,A)
【文献】特表2017-519576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の拡散強調磁気共鳴(MR)画像を決定する脂肪抑制拡散画像決定装置であって、
パラレルイメージング法を使用して、前記物体の拡散基準MR画像を提供する拡散基準画像提供ユニットと、
前記拡散基準MR画像から脂肪画像を決定する脂肪画像決定ユニットと、
前記物体の拡散強調MR画像を提供する拡散強調画像提供ユニットと、
前記拡散強調MR画像及び前記脂肪画像の組み合わせを使用して、脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する脂肪抑制画像決定ユニットと、
を含み、
前記拡散基準画像提供ユニットは、前記物体の前記拡散基準MR画像の折り返しありの表現を提供し、
前記脂肪画像決定ユニットは、前記拡散基準MR画像の前記表現から脂肪と水とを分解することによって折り返し除去された脂肪画像を決定し、分解された脂肪成分の折り返しありの表現を前記脂肪画像として決定する、脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項2】
前記拡散基準画像提供ユニットは、最大200s/mm
2、好適には最大100s/mm
2、最も好適には最大50s/mm
2の拡散パラメータで収集された前記拡散基準MR画像を提供する、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項3】
前記拡散強調画像提供ユニットは、それぞれ異なる拡散パラメータを有する前記物体の複数の拡散強調MR画像を提供し、
前記脂肪抑制画像決定ユニットは、前記脂肪画像を使用して、前記複数の拡散強調MR画像のそれぞれに対して複数の脂肪抑制拡散強調MR画像を提供する、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項4】
前記拡散強調画像提供ユニットは、パラレルイメージング法を使用して、前記拡散強調MR画像を提供する、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項5】
前記パラレルイメージング法は、SENSEを含む、請求項4に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項6】
前記脂肪画像決定ユニットは、複素数値の脂肪画像を決定し、
前記拡散基準画像提供ユニットは、複素数値の拡散基準MR画像を提供する、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項7】
前記拡散基準画像提供ユニットは、k空間全体をカバーするために複数のショットを使用して、前記拡散基準MR画像を提供し、
前記複数のショットは、類似のk空間軌跡を有し、
前記複数のショットの前記k空間軌跡は、位相エンコード方向にそれぞれ異なるシフトを有する、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項8】
前記拡散基準画像提供ユニットは、複素数値の画像データに対してエコープラナーイメージング再構成を行い、
前記脂肪画像決定ユニットは、エコープラナーイメージング再構成された前記複素数値の画像データを使用して水と脂肪とのSENSE分離を使用して、前記脂肪画像を決定する、請求項7に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項9】
前記拡散基準画像提供ユニットは、特定のSENSE短縮因子を有する前記拡散基準MR画像を提供する、請求項8に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項10】
前記脂肪画像決定ユニットは、前記拡散基準MR画像の複数の平均値を前記脂肪画像に追加する、請求項9に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項11】
前記拡散強調画像提供ユニットは、折り返し除去前の前記拡散強調MR画像を提供し、
前記脂肪抑制画像決定ユニットは、
折り返しありの前記拡散強調MR画像から前記脂肪画像を減算し、前記脂肪画像が減算された、
折り返しありの前記拡散強調MR画像を折り返し除去することによって、前記脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置。
【請求項12】
物体の拡散基準MR画像及び拡散強調MR画像を収集する磁気共鳴スキャナと、
請求項1から11のいずれか一項に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置と、
を含む、物体をイメージングする磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項13】
物体の拡散強調磁気共鳴(MR)画像を決定する脂肪抑制拡散画像決定方法であって、
パラレルイメージング法を使用して得られる前記物体の拡散基準MR画像、及び、前記物体の前記拡散基準MR画像の折り返しありの表現を提供するステップと、
前記拡散基準MR画像から脂肪画像を決定し、前記拡散基準MR画像の前記表現から脂肪と水とを分解することによって折り返し除去された脂肪画像を決定し、分解
された脂肪成分の折り返しありの表現を前記脂肪画像として決定するステップと、
前記物体の拡散強調MR画像を提供するステップと、
前記拡散強調MR画像及び前記脂肪画像の組み合わせを使用して、脂肪抑制拡散強調MR画像を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
磁気共鳴イメージング装置上で実行される場合に、前記脂肪抑制拡散画像決定装置に、請求項13に記載の脂肪抑制拡散画像決定方法を実行させるプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)イメージングの分野に関する。本発明は、脂肪抑制拡散画像決定装置及び物体の拡散強調磁気共鳴画像(DWI)を決定する対応する方法に関する。本発明はまた、MRIシステム及び脂肪抑制拡散画像決定装置で実行されるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、2次元又は3次元画像を形成するために磁場と核スピンとの相互作用を利用する画像形成MR方法は、軟組織のイメージングについて、他のイメージング方法よりも多くの点において優れ、電離放射線を必要とせず、また、通常、侵襲的ではないので、特に医療診断分野において広く使用されている。
【0003】
拡散強調MRI(DWI)は、例えば様々ながんの悪性腫瘍の検出を促進するために臨床実習で広く採用されている。ピクセル単位の見かけの拡散係数(ADC)は、病理学、特にがんのグレーディングと相関するため、脂肪抑制は、DWIにおいて不可欠な要素である。脂肪の拡散率は、水と比べて非常に低く、信号が残留していると、計算されたDWI(cDWI)画像のADCの評価を混乱させる。
【0004】
拡散MRIにおける脂肪抑制の1つのアプローチは、当技術分野において知られているように、スペクトル減衰反転回復法(SPectral Attenuated Inversion Recovery:SPAIR)で使用されるようなスペクトル選択的パルスを使用するか、又は、ショートTI反転回復法(STIR)といった選択的反転回復パルススキームを適用することによって、脂肪と水との間の化学シフトを利用することである。これらのスキームは、残留脂肪をスペクトルのリフォーカシング帯域からシフトアウトするために、90°~180°のパルスペアの反転スライス選択勾配によって拡張される可能性がある。
【0005】
これらの方法には、それぞれ、DWIにおいては本質的に低い信号対雑音比(SNR)の損失が伴う。また、脂肪信号は、主に3.5ppm及び1ppmにおける複数のスペクトルピークで構成され、1ppmはスペクトル選択的励起で抑制されるべき水のラインに近すぎる。
【0006】
拡散イメージング以外の他のイメージングシーケンスでは、DIXONアルゴリズムといった水信号と脂肪信号とのアルゴリズム的分離が、スペクトル的脂肪抑制の代替手段として開発された。しかし、マルチエコー時間DIXONアルゴリズムを拡散イメージングに適用することは難しいため、別の方法が必要になる。
【0007】
Burakiewicz他(DOI:l0.l002/mrm.25l9l、2014)は、複数のエコー時間がシフトされたシングルショットエコープラナーイメージング(EPI)により収集された画像を用いるDIXON DWIの可能性について開示している。この方法では、エコー時間が長くなるため、SNRが更に低下する。更に、この出版物には、DWIにおける位相は、拡散勾配中のモーションエンコードからの逸脱に非常に敏感であるため、異なるエコー時間における2つ又は3つの収集が同じ位相に確実に関連付けられるように、位相ナビゲータが必要であることが示されている。更に、シングルショット収集は、拡散パラメータの各値(b値)での複数の収集に置換され、これは、スキャン時間を最大3倍に増加する。
【0008】
Larkman他(ISMRM2005、505)は、感度エンコーディング法(SENSitivity Encoding:SENSE)を適用して、シングルショットEPI拡散強調画像に基づいて水分解画像及び脂肪分解画像を生成することについて開示している。しかし、このスキームは、効果的ではあるが、すべてのピクセルが脂肪の存在とは無関係に二重縮退していると見なされるため、最適ではないと説明されている。したがって、SENSE短縮因子(reduction factor)が低くても、g因子の影響による画像全体のSNRの低下が発生する。したがって、この方法は、幾何学的に正確なEPIに通常必要とされる高いSENSE因子と互換性がない。
【0009】
Magnetic Resonance in Medicine(第79巻、第1号、2017年3月5日、152~159ページ)に、強度ベースのディクソン法を使用した骨格筋DTIにおけるオレフィン脂肪抑制の促進について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、脂肪抑制された拡散画像決定装置、対応する脂肪抑制された拡散画像決定方法、MRイメージングシステム及び対応するコンピュータプログラムを提供して、SNR及びスキャン時間のトレードオフが改善された拡散MRIにおけるロバストな脂肪抑制を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、物体の拡散強調磁気共鳴画像(DWI)を決定する脂肪抑制拡散画像決定装置が提供される。脂肪抑制拡散画像決定装置は、
物体の拡散基準MR画像を提供する拡散基準画像提供ユニットと、
拡散基準MR画像から脂肪画像を決定する脂肪画像決定ユニットと、
物体の拡散強調MR画像を提供する拡散強調画像提供ユニットと、
拡散強調MR画像及び脂肪画像の組み合わせを使用して、脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する脂肪抑制画像決定ユニットとを含む。
【0012】
脂肪抑制拡散強調MR画像は、それ自体が別の画像、つまり、拡散基準MR画像に基づいて決定される脂肪画像に基づいて決定されるため、拡散強調MR画像のために追加の脂肪画像を収集する必要がない。したがって、本発明による脂肪抑制拡散画像決定装置は、例えば幾何学的に正確なEPIに必要とされる高いSENSE短縮因子が使用される場合でも、SNRが低下することなく、脂肪抑制拡散強調MR画像を決定することを可能にする。
【0013】
脂肪画像は、画像空間で提供されるデータである。しかし、脂肪画像は、画像空間における値又はデータに限定されず、例えばk空間で表すこともできる。
【0014】
本発明は、水と脂肪との分離が拡散エンコードとは無関係であるという研究結果と、また更に、脂肪の流動性は一般に無視することができることから、脂肪信号、即ち、脂肪画像は拡散エンコードとは無関係であるという研究結果とに基づいている。したがって、拡散基準MR画像に基づいて決定された脂肪画像を考慮することにより、拡散強調MR画像から脂肪の寄与を取り除くことができる。
【0015】
更に、拡散強調MR画像を決定するのに追加の脂肪画像を収集する必要がないことから、拡散強調MR画像を得るためにスキャン時間が増加しない。
【0016】
物体は、好ましくは生物、即ち、人若しくは動物、又は、肝臓、脳、心臓、肺、膵臓、腎臓等の臓器といった生物の一部である。物体はまた、内部に拡散が生じる技術的な物体であってもよい。
【0017】
拡散基準画像提供ユニットは、拡散基準画像データが格納され、拡散基準MR画像データを提供するために当該データをそこから取り出すことができる記憶装置である。拡散基準画像提供ユニットはまた、拡散基準画像データを受信し、受信した拡散基準画像データを提供する受信ユニットであってもよい。例えば拡散基準画像提供ユニットは、拡散基準画像データを、MRデータ収集デバイスから、生データとして又は処理されたデータとして、即ち、再構成されたMR画像として受信することができる。拡散基準画像提供ユニットはまた、MRイメージングシステムのMRデータ収集デバイスであってもよい。
【0018】
同様に、拡散強調画像提供ユニットも、拡散強調画像データが格納され、拡散強調画像データを提供するために当該データをそこから取り出すことができる記憶装置である。拡散強調画像提供ユニットはまた、拡散強調画像データを受信し、受信した拡散強調画像データを提供する受信ユニットであってもよい。例えば拡散強調画像提供ユニットは、拡散強調画像データを、MRデータ収集デバイスから、生データとして又は処理されたデータとして、即ち、再構成されたMR画像として受信することができる。拡散強調画像提供ユニットはまた、MRイメージングシステムのMRデータ収集デバイスであってもよい。
【0019】
好ましくは、拡散基準MR画像は、拡散強調なしか又はわずかに拡散強調されたMR画像収集から生成される。より好適には、拡散勾配の強度及び持続時間を示す拡散パラメータは、拡散強調MR画像よりも拡散基準MR画像の方が大幅に低い。拡散パラメータは、好適には、例えばLe Bihan他の「MR imaging of intravoxel incoherent motions:application to diffusion and Perfusion in neurologic disorders」(Radiology、161:401-407(1986))に説明されているb値である。
【0020】
拡散基準MR画像は、好ましくは、例えばk空間において収集された生データ、部分的に再構成された画像データ(例えばパラレルMRIの場合のエイリアス画像又は折り返しありの画像(folded image))及び/又は完全に再構成された画像データを含む。好適には、拡散基準MR画像の収集タイミングは、拡散エンコード勾配にゼロ勾配領域を適用することによりゼロに設定される拡散エンコードパラメータb、即ち、ほぼゼロのb値、つまり、比較的低いb値を用いて、拡散強調MR画像の収集タイミングと同一である。以下では、拡散基準MR画像及び非拡散強調MR画像との用語は、同義に使用され、非拡散強調MR画像は、上で例示したように、低い又はわずかな拡散強調を有するMR画像を含む。
【0021】
拡散基準MR画像とは対照的に、拡散強調MR画像は、0よりも大幅に大きい拡散パラメータb、例えば100又は1000s/mm2の拡散パラメータbを有するMR画像収集から生成される。当然ながら、これらのb値は、例示的であり、限定ではない。また、拡散強調MR画像は、例えばk空間において収集された生データ、部分的に再構成された画像データ(例えばパラレルMRIの場合のエイリアス画像又は折り返しありの画像)及び/又は完全に再構成された画像データを含む。
【0022】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニットは、最大200s/mm2、好適には最大100s/mm2及び最も好適には最大50s/mm2の拡散パラメータで収集された拡散基準MR画像を提供する。これらの限界を超えない拡散パラメータは、フローによる影響を効率的に抑制する有利な効果を有する。
【0023】
脂肪抑制拡散画像決定装置の更に好適な実施形態では、拡散基準MR画像及び収集された拡散強調MR画像のb値の差は、少なくとも100s/mm2である。しかし、本発明の概念は、500s/mm2、1000s/mm2、2000s/mm2以上の範囲といったb値の著しく大きい差にも有利に適用することができる。
【0024】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散強調画像提供ユニットは、それぞれ異なる拡散パラメータを有する物体の複数の拡散強調MR画像を提供し、脂肪抑制画像決定ユニットは、脂肪画像を使用して、複数の拡散強調MR画像のそれぞれに対して複数の脂肪抑制拡散強調MR画像を提供する。
【0025】
有利には、1つの脂肪画像しか必要でなく、この脂肪画像を使用して、異なる拡散エンコード因子(b値)を有する複数の脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する。したがって、収集時間を有利に短縮することができ、スキャン時間の短縮にもつながる。脂肪画像の決定に使用される拡散基準画像がより長いスキャン時間で収集されたとしても、スキャン時間は拡散基準MR画像についてのみ増加する一方で、複数の画像、即ち、複数の拡散強調MR画像は、スキャン時間が増加することなく収集されるため、全体のスキャン時間は短縮される。
【0026】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニット及び拡散強調画像提供ユニットは、それぞれ、パラレルイメージング法を使用してMR画像を提供する。
【0027】
パラレルイメージング法は、当技術分野において知られており、また、画像空間の異なる領域に対してそれぞれが異なる感度を有する複数のコイルがあるという概念を含む。複数の受信コイルを使用することにより、収集時間が大幅に短縮される。パラレル磁気共鳴イメージング技術の概要は、例えばLarkman他の「Parallel magnetic resonance imaging」(Physics in Medicine and Biology、52(2007)R15-R55)に説明されている。特に、拡散MRイメージングでは、パラレルイメージングにより、有益なSNR信号を生成するのに十分に短いエコー時間が確保される。
【0028】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、パラレルイメージング法は、少なくともSENSEを含む。
【0029】
SENSEは、上記パラレルMRイメージング技術の説明に加えて、例えばPruessmann他の「SENSE:Sensitivity encoding for Fast MRI」(Magnetic Resonance in Medicine、1999;42:952-962)から知られている。この実施形態の例示的なパラレルイメージング技法は、主に、個々のコイルからのデータの再構成の後に画像空間で行われる。GRAPPA/ARC法を含む他のアプローチは、主に、画像再構成の前にk空間データに対して行われ、これらの方法も、代替実施形態において使用することが考えられる。更に、上記パラレルイメージング法に対するあらゆる既知の及び実現可能な修正も同様に考えられることは明らかである。
【0030】
SENSEの特に好適な実施形態では、例えば異なるコイルの再構成された画像データがエイリアシングを示し、即ち、折り返しがあり、これは、最終画像が得られる前に除去(unfold)されるべきである。これは、SENSEアルゴリズムによって正確に行われる。
【0031】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニットは、物体の拡散基準MR画像の折り返しありの表現を提供し、脂肪画像決定ユニットは、拡散基準MR画像の表現から脂肪及び水を分解することによって折り返し除去された脂肪画像を決定し、脂肪信号の折り返しありの表現を脂肪画像として決定する。
【0032】
好ましくは、脂肪画像を、拡散強調MR画像、即ち、k空間からの変換後であるが再構成前の画像の折り返しありの表現から減算することができる。分解は、例えば先験的に分かっている脂肪と水との間の化学シフトにより誘発された変位に基づく既知のやり方で行うことができる。EPIにおける水と脂肪との分離は、例えばLarkman他のProceedings of the International Society of Magnetic Resonance in Medicine(13(2005)505)から知られている。
【0033】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、脂肪画像決定ユニットは、複素数値の脂肪画像を決定し、拡散基準画像提供ユニットは、複素数値の拡散基準MR画像を提供する。更に又は或いは、拡散強調画像提供ユニットもまた、複素数値の脂肪抑制拡散強調MR画像を提供することができる。具体的には、MR画像の提供は、好ましくは、複素数値のEPI再構成を含む。
【0034】
更に好ましくは、拡散基準MR画像の折り返しあり又はSENSE短縮された表現及び折り返し除去された脂肪画像の両方が、位相情報を提供する複素数値の画像データとして提供される。
【0035】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニットは、k空間全体をカバーするための複数のショットを使用して拡散基準MR画像を提供する。複数のショットは、類似のk空間軌跡を有する。複数のショットのk空間軌跡は、位相エンコード方向にそれぞれ異なるシフトを有する。
【0036】
シングルショット収集とは対照的に、この実施形態では、複数の無線周波数(RF)励起パルスを使用して、k空間が横断される。拡散基準画像の複数のショットのk空間軌跡は、好ましくは、各ショットにおける幾何学的変形が同じであることを確保するために、拡散強調MR画像がカバーするk空間軌跡に対応する。
【0037】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニットは、拡散基準MR画像のためにマルチショット収集を行う。マルチショット収集は、再構成問題のより良い条件付けを提供するので、拡散基準MR画像の実信号成分及び虚数信号成分を用いる再構成のために、アンダーサンプリングによるエイリアシングを解決する必要性を少なくとも部分的に軽減する。
【0038】
したがって、脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニットは、エコープラナーイメージング(EPI)再構成を複素数値の画像データに対して行う。
【0039】
この複素数値の拡散基準MR画像データは、SENSE再構成のための入力であり、拡散抑制された水画像及び脂肪画像が生成される。これにより、マルチエコー時間(TE)収集の必要性が軽減される。
【0040】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、脂肪画像決定ユニットは、EPI再構成された複素数値の画像データを使用する水と脂肪とのSENSE分離を使用して脂肪画像を決定する。
【0041】
水と脂肪とのSENSE分離は、前述のLarkman他から知られている。しかし、当然ながら、SENSE分離は、水と脂肪とを分離する1つの適切な方法に過ぎず、当技術分野において知られている他の分離アルゴリズムを代わりに使用することもできる。
【0042】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散基準画像提供ユニットは、特定のSENSE短縮因子を有する拡散基準画像を提供する。
【0043】
この点で、マルチショット収集の各ショットで幾何学的歪みが同じであることを確認する必要がある。基本的に、この条件は、k空間における2つの隣接するライン間の差のエコー間隔に対する比、つまり、後続のエコー間の時間における距離を一定に保つことによって満たすことができる。
【0044】
好適な例では、サンプリングされた撮像野(FOV)及びSENSE短縮因子は、結果のSENSE因子が整数になるまで、因子を乗算することによって増加することができる。しかし、当然ながら、一定の幾何学的歪みの要件を満たす他のオプションも実行可能である。
【0045】
更なる例を提供するために、拡散基準MR画像収集は、拡散強調MR画像収集のSENSE短縮因子Rに等しい又は短縮因子Rよりも大きい最も近い整数に対応するショット数Nsを有するようにすることができ、これは、Ns=ceil(R)と表すことができる。
【0046】
k空間におけるライン間の差又はデルタは、SENSE短縮されたショットとマルチショット収集では、歪みを同一に保つために同一である必要があるため、以下に説明するように、ショット数が切り上げられている場合は、同じ撮像野をカバーするために必要なショット毎のk空間ライン数は少ない。SENSEエンコードショット又は収集のための位相エンコードされたk空間ラインの数は、Nk(SENSE)=N/R、即ち、画像解像度、つまり、短縮されていない位相エンコードk空間ラインの数Nの短縮因子Rに対する比と定義することができる。
【0047】
画像解像度Nは、Ns回のショットのマルチショット収集についても同じである。これにより、ショット毎のk空間ラインの数Nk(ショット毎)=N/Nsになり、これは、SENSE短縮されたショットのk空間ラインの数Nk(SENSE)以下である。したがって、EPIトレインタイミングを同一に保ち、MR画像収集のための非整数の短縮因子Rも拡散基準MR画像収集におけるショットの数を増やすことによって実現することができる。
【0048】
当然ながら、再構成において水/脂肪分離を適用すると、通常、未知数の数が2倍になり、特にSENSEアンダーサンプリング画像、例えば拡散基準MR画像では、より顕著なg係数のペナルティがもたらされる。このペナルティを軽減するために、好ましくは、より適切に決定された再構成が確保される。一実施形態では、再構成は、脂肪及び/又は水がどこにあるかを示すことができる正則化パラメータを組み込むことによって追加的に条件付けされる。
【0049】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、脂肪画像決定ユニットは、拡散基準画像の複数の平均値を脂肪画像に追加する。
【0050】
この実施形態では、SENSE再構成問題が十分に適切に条件付けられている、即ち、g因子が十分に低いと想定される。1から5以上の範囲である複数の平均値が、g因子ペナルティの増加による約10~20%の信号対雑音比(SNR)損失に対処するには十分である。有利には、幾つかの平均値を追加するこのアプローチは、実施が簡単である一方で、脂肪信号、即ち、脂肪画像の合理的な推定を提供することができる。
【0051】
脂肪抑制拡散画像決定装置の好適な実施形態では、拡散強調画像提供ユニットは、折り返し除去前の拡散強調MR画像を提供する。脂肪抑制画像決定ユニットは、折り返しありの拡散強調MR画像から、折り返しありの脂肪画像を減算し、脂肪画像が減算された、折り返しありの拡散強調MR画像から折り返し除去することによって脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する。
【0052】
脂肪抑制拡散強調MR画像は、水のみの処理の形で折り返し除去されるので、即ち、折り返しありの拡散強調MR画像から脂肪画像が減算された後に折り返し除去されるので、再構成問題の悪条件付けが防止される。更に、拡散パラメータbの各値での1回の収集で十分であるので、位相ナビゲータ等が不要であり、また、拡散勾配中の動きエンコードからの逸脱に非常に敏感である拡散強調イメージングにおいて位相を特に考慮をする必要がない。
【0053】
本発明の更なる態様では、物体をイメージングする磁気共鳴イメージング(MRI)システムが提供される。MRIシステムは、物体の拡散基準MR画像及び拡散強調MR画像を収集するMRイメージング装置と、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置とを含む。
【0054】
有利には、この態様によるMRIシステムは、上記脂肪抑制拡散画像決定装置について説明したのと同じ利点を有する拡散強調画像(DWI)の決定を可能にする。同様に、脂肪抑制拡散画像決定装置のすべての好適な実施形態は、この態様によるMRIシステムと組み合わせることができる。
【0055】
好ましくは、脂肪抑制拡散画像決定装置の拡散基準画像提供ユニット及び拡散強調画像提供ユニットは、それぞれ、MRイメージング装置によって収集される拡散基準MR画像及び拡散強調MR画像を提供する。
【0056】
好ましくは、MRIシステムは、ホストコンピュータといった処理ユニットを含み、脂肪抑制拡散画像決定装置の1つ以上又はすべてのユニットが、ホストコンピュータに含まれるハードウェア及び/又はソフトウェアのユニットとして実現される。更に又は或いは、脂肪抑制拡散画像決定装置の1つ以上又はすべてのユニットを、リモートサーバにおいてといったように、MRイメージング装置からリモートで実現することができる。
【0057】
本発明の更なる態様では、物体の拡散強調磁気共鳴画像(DWI)を決定する脂肪抑制拡散画像決定方法が提供される。脂肪抑制拡散画像決定方法は、
物体の拡散基準MR画像を提供するステップと
拡散基準MR画像から脂肪画像を決定するステップと、
物体の拡散強調MR画像を提供するステップと、
拡散強調MR画像及び脂肪画像の組み合わせを使用して、脂肪抑制拡散強調MR画像を決定するステップとを含む。
【0058】
本発明の更なる態様において、請求項1に記載の脂肪抑制拡散画像決定装置を制御するためのコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、磁気共鳴イメージング装置で実行される場合に、脂肪抑制拡散画像決定装置に、請求項14に記載の脂肪抑制拡散画像決定方法を実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0059】
請求項1の脂肪抑制拡散画像決定装置、請求項13の磁気共鳴イメージングシステム、請求項14の脂肪抑制拡散画像決定方法及び請求項15のコンピュータプログラムは、具体的には従属請求項に規定されている同様及び/又は同一の実施形態を有することを理解されたい。
【0060】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項又は上記実施形態と対応する独立請求項との任意の組み合わせであってもよいことを理解されたい。
【0061】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかとなり、また、当該実施形態を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、本発明による脂肪抑制拡散画像決定装置を含むMRイメージングシステムを概略的且つ例示的に示す。
【
図2】
図2は、本発明による脂肪抑制拡散画像決定方法のフローチャートを概略的且つ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
一般的なMR方法では、検査される患者の身体が、強力な均一磁場B0内に配置される。磁場の方向は、同時に、測定が関連する座標系の軸(通常はz軸)を規定する。磁場B0は、規定された周波数(いわゆるラーモア周波数又はMR周波数)の交流電磁場(RF磁場)の印加によって励起(スピン共鳴)可能である磁場強度に依存して、個々の核スピンの様々なエネルギーレベルを生成する。
【0064】
巨視的観点から、個々の核スピンの分布が全体的な磁化を生成し、全体的な磁化は、適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)を印加することにより平衡状態から外れるように偏向可能である一方で、このRFパルスの対応する磁場B1は、z軸に垂直に延在し、これにより、磁化は、z軸の周りで歳差運動を行う。歳差運動は、円錐体の表面を描き、その開口角はフリップ角と呼ばれる。フリップ角の大きさは、印加された電磁パルスの強度及び持続時間に依存する。いわゆる90°パルスの場合、磁化はz軸から横断面に偏向される(フリップ角90°)。横磁化及びその変動は、磁化の変動がz軸に垂直な方向で測定されるように、MRデバイスの検査ボリューム内に配置及び方向付けられる受信RFコイルによって検出することができる。
【0065】
体内における空間分解能を実現するために、3つの主軸に沿って延在する一定磁場勾配が均一磁場B0に重畳され、スピン共鳴周波数の線形空間的依存性につながる。このとき、受信コイルにおいて捕捉される信号は、体内の様々な場所に関連付けられる様々な周波数成分を含む。
【0066】
受信コイルを介して得られる信号データは空間周波数領域に対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは、通常、異なる位相エンコーディングで収集された複数のk空間プロファイル(k空間におけるライン)を含む。各k空間プロファイルは、幾つかのサンプルを集めることによってデジタル化される。k空間データのセットは、フーリエ変換によってMR画像に変換される。
【0067】
MRI画像を、均一磁場ではなく、拡散に敏感にさせるために、均一性は、パルス磁場勾配によって直線的に変化させられる。歳差運動は磁石の強度に比例するため、陽子は様々な速度で歳差運動をし始め、その結果、位相分散及び信号損失につながる。一定の時間が経過した後、同じ強度であるが反対方向に別の勾配パルスを印加して、スピンをリフォーカス又はリフェーズする。陽子の前の位置と現在の位置との間のパルスの強度の変動により、パルス間の時間間隔中に移動した陽子については、リフォーカシングは完全ではなく、また、MRIマシンによって測定される信号が減少する。
【0068】
図1を参照すると、MRイメージング装置1を含むMRイメージングシステム20が示されている。MRイメージング装置は、実質的に均一で時間的に一定の主磁場B
0が、検査ボリュームを通るz軸に沿って生成されるように超伝導又は抵抗性の主磁石コイル2を含む。MRイメージング装置は更に、(1次、2次及び該当する場合は3次)シミングコイルのセット2’を含み、セット2’の個々のシミングコイルを流れる電流は、検査ボリューム内のB
0偏差を最小限に抑えるために制御可能である。
【0069】
磁気共鳴生成及び操作システムが、一連のRFパルス及び切り替え磁場勾配を印加して、核磁気スピンを反転又は励起させ、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴をリフォーカスさせ、磁気共鳴を操作し、磁気共鳴を空間エンコードする及び他の方法でエンコードし、スピンを飽和させる等して、MRイメージングを行う。
【0070】
より具体的には、勾配増幅器3が、検査ボリュームのx軸、y軸及びz軸に沿った全身用勾配コイル4、5及び6のうちの選択された勾配コイルに電流パルス又は波形を印加する。デジタルRF周波数送信器7が、送受信スイッチ8を介して、RFパルス又はパルスパケットを全身用RFコイル9に送信して、RFパルスを検査ボリューム内に送信する。典型的なMRイメージングシーケンスは、短い持続時間のRFパルスセグメントのパケットから構成され、これらは、任意の印加された磁場勾配と共に、核磁気共鳴信号の選択された操作を達成する。RFパルスを使用して、共鳴を飽和させ、共鳴を励起させ、磁化を反転させ、共鳴をリフォーカスさせ又は共鳴を操作して、検査ボリューム内に配置される物体10の一例としての身体の一部を選択する。MR信号は全身用RFコイル9によっても捕捉される。
【0071】
物体10の限定領域のMR画像を生成するために又はパラレルイメージングによるスキャン加速のために、局所アレイRFコイル11、12、13のセットが、イメージング用に選択される領域に隣接して置かれる。アレイコイル11、12、13を使用して、全身用コイルRF送信によって誘導されるMR信号を受信することができる。
【0072】
結果として生じるMR信号は、全身用RFコイル9及び/又はアレイRFコイル11、12、13によって捕捉され、好適には前置増幅器(図示せず)を含む受信器14によって復調される。受信器14は、送受信スイッチ8を介して、RFコイル9、11、12及び13に接続される。
【0073】
ホストコンピュータ15が、シミングコイル2’だけでなく勾配パルス増幅器3及び送信器7を制御して、エコープラナーイメージング(EPI)、エコーボリュームイメージング、グラジエント・スピンエコーイメージング、高速スピンエコーイメージング等といった複数のMRイメージングシーケンスのいずれかを生成する。受信器14は、選択されたシーケンスについて、各RF励起パルスに続いて、単一の又は複数のMRデータラインを高速連続で受信する。データ収集システム16が、受信信号のアナログ-デジタル変換を行い、各MRデータラインを、更なる処理に適したデジタル形式に変換する。最新のMRデバイスでは、データ収集システム16は、生画像データの収集に特化した別個のコンピュータである。
【0074】
最終的に、デジタル生画像データは、再構成プロセッサ17によって画像表現に再構成される。再構成プロセッサ17は、フーリエ変換や、パラレルイメージング分野のSENSE又はGRAPPAといった他の適切な再構成アルゴリズムを適用する。MR画像は、患者の平面スライス、平行平面スライスのアレイ、3次元ボリューム等を表す。その後、MR画像は画像メモリに保存される。画像メモリにアクセスして、画像表現のスライス、投影又は他の部分を、例えば結果として得られたMR画像の人間が読み取り可能な表示を提供するビデオモニタ18を介して視覚化に適した形式に変換する。
【0075】
図1に示すMRイメージングシステム20は更に、本発明の一態様による脂肪抑制拡散画像決定装置100を含む。脂肪抑制拡散画像決定装置100は、物体10の拡散強調磁気共鳴画像(DWI)を決定する。したがって、脂肪抑制拡散画像決定装置100は、MR画像、特に効率的に脂肪が抑制されたDWIを再構成する特定の方法を実施する。
【0076】
この例では、脂肪抑制拡散画像決定装置100は、再構成プロセッサ17に組み込まれているものとして示され、また、MRイメージング装置1のデータ収集システム16及びホストコンピュータ15と通信する。しかし、他の例では、脂肪抑制拡散画像決定装置100は、MRイメージング装置1から独立して設けられ、例えば1つ以上の計算ユニットの形で設けられる。
【0077】
なお、当然ながら、脂肪抑制拡散画像決定装置100は、この例では、例えば再構成プロセッサ17、データ収集システム16及び/又はホストコンピュータ15で実施される、前述したようにMRI技術分野において知られている標準又は利用可能な処理方法に依存することができ、脂肪抑制拡散画像決定装置100自体に関してこれらの方法を具体的に及び明示的に説明する必要はない。
【0078】
脂肪抑制拡散画像決定装置100は、物体10の拡散基準MR画像を提供する拡散基準画像提供ユニット110と、拡散基準MR画像から脂肪画像を決定する脂肪画像決定ユニット120と、物体の拡散強調MR画像を提供する拡散強調画像提供ユニット130と、拡散強調MR画像と脂肪画像との組み合わせを使用して脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する脂肪抑制画像決定ユニット140とを含む。
【0079】
拡散基準画像提供ユニット110は、記憶装置から又はMRイメージング装置1による収集を通じて、拡散基準MR画像を提供する。拡散基準画像提供ユニット110は、このために、MRイメージング装置1の関連のユニットの動作を制御することができる。拡散基準MR画像は、一例では、非拡散強調画像又はb=0画像、即ち、拡散係数bが0の画像である。他の例では、拡散基準MR画像はまた、例えば200s/mm2を超えない、低い又はかなり小さい拡散パラメータbを有する。
【0080】
b値は、拡散強調画像の生成に使用される勾配の強度及びタイミングを反映する因子である。b値が高いほど、拡散効果が強くなる。「b値」との用語は、広く受け入れられており、Stejskal他の「Spin diffusion measurements:spin echoes in the presence of time-dependent field gradient」(The Journal of Chemical Physics、1965年、42(1)、288-292)に由来する。ここには、DWIパルスシーケンスの一例としてのパルス勾配拡散法が説明されている。基本的に、この方法及びほぼすべての現行のDWIパルスシーケンスは、2つの強い勾配パルスに依存し、b値は、これらのパルス勾配の強度、持続時間及び間隔に依存する。大きいb値は、勾配の振幅及び持続時間を増加し、勾配パルス間の間隔を広げることで達成される。b=0の値は、拡散強調のない画像を表すと見なされる。
【0081】
次に、拡散強調画像提供ユニット130は、物体10の拡散強調MR画像を提供する。提供されるMR画像の基礎となる収集は、b値、即ち、拡散強調が異なるが、拡散基準MR画像の収集と好ましくは同様である。次に、脂肪抑制画像決定ユニット140は、拡散強調MR画像、即ち、拡散強調画像提供ユニット130によって提供される画像と、以下で詳述するように、脂肪画像、即ち、脂肪画像決定ユニット120によって拡散基準MR画像から分離されて決定される脂肪画像との組み合わせを使用して、脂肪抑制拡散強調MR画像を決定する。
【0082】
本発明は、脂肪の拡散率が非常に低く、したがって、b=0画像又は低b値、即ち、拡散抑制画像から得られる脂肪画像、即ち、実質的に脂肪のみを示す画像を、以下に詳述するように、脂肪抑制拡散強調MR画像、即ち、b>>0の画像の決定に使用することができるという洞察に基づいている。
【0083】
脂肪画像決定ユニット120は、この例では、物体10について提供された拡散基準MR画像に基づいて、水から脂肪を分離する。MRI技術分野において、水から脂肪を分離するための複数のアプローチが知られている。この例では、拡散基準MR画像は、マルチショット収集されたEPI画像の形式であることが好適であり、脂肪画像は、水/脂肪候補選択のためのフィールドマップを使用して再構成される。したがって、複数のTE収集、具体的には1つ以上の拡散強調MR画像の収集の必要性を軽減することができる。
【0084】
好適には、拡散基準MR画像は、マルチショットEPI画像であり、そのマルチショットの組み合わせが、複素数値の画像データに再構成される。
【0085】
EPI画像は、好適には、(部分)パラレルイメージング(PPI)の形式で複数のショットを使用して収集され、次に、脂肪画像は更に、好ましくは、例えばSENSE又は任意の他の採用されているPPIモデルを使用して、面内アンダーサンプリング再構成を適用することなく、複合マルチショット収集に基づいて再構成される。
【0086】
フィールドマップを使用する再構成の代替として、Larkman他(ISMRM2005、505)によるSENSEを使用した水画像と脂肪画像との分離を、複合マルチショットEPI収集に使用することができる。
【0087】
拡散基準MR画像の複数のショットは、好適には、k空間全体をカバーし、各ショットは、位相エンコード方向のシフトを除き、拡散強調MR画像、即ち、b>0の画像について収集されたものと同じk空間軌跡を有する。これにより、各ショットにおける幾何学的変形が同じであることを保証することができる。
【0088】
提供される拡散基準MR画像のSENSE短縮因子は、以下で説明する拡散強調MR画像と同様に、整数であっても整数でなくてもよい。非整数のSENSE因子の場合、上記Larkmanの方法に従ってSENSEを用いて再構成することが好適であり、好ましくは、拡散基準MR画像の複数の平均値を追加して、脂肪画像における潜在的なg因子のペナルティを減少させる。別の好適なアプローチは、結果として得られるSENSE因子が整数になるまで、同じ因子を用いてFOV及びSENSE因子を増加することである。
【0089】
要約すると、脂肪画像決定ユニット120は、好適には、パラレルイメージングアプローチを使用して、先験的に分かっている水と脂肪との間の化学シフトによって誘導される変位に基づいて水信号及び脂肪信号の折り返し除去を行うことによって、拡散基準MR画像から脂肪画像を決定する。脂肪画像及び拡散基準MR画像の両方は、好適には、位相感度を提供するために、複素数値の画像として提供される。
【0090】
この処理は、一例では、次の一般式を使用して要約及び表現することができる。
【数1】
【0091】
2つの画像-水画像(W)及び脂肪画像(F)は、b=0収集について測定又は収集された(折り返しあり(folded)の)信号
【数2】
及び組み合わせ行列Hから決定される。
【0092】
次に、
【数3】
は、拡散強調MR画像
【数4】
として、目標b因子b=Bについて提供又は収集される。脂肪抑制画像決定ユニットは、折り返しありの脂肪信号
【数5】
を減算して、水のみの(折り返しありの)拡散強調MR画像
【数6】
を取得する。次に、水のみの拡散強調MRデータ、即ち、脂肪抑制された拡散強調MRデータを、
【数7】
を使用して、折り返し除去することができる。水のみの信号処理を使用すると、再構成問題の悪条件付けを防ぎ、更に、例えばBurakiewicz他(DOI:l0.l002/mrm.25l9l、2014)に説明されているDIXONアプローチでは必要である位相ナビゲータを用いた収集の拡張の必要性を防ぐ。
【0093】
図2は、本発明による脂肪抑制拡散画像決定方法200のフローチャートを概略的且つ例示的に示す。脂肪抑制拡散画像決定方法200は、物体10の拡散強調磁気共鳴画像(DWI)を決定する方法であり、以下のステップを含む。
【0094】
ステップ210において、物体10の拡散基準MR画像が決定される。物体の拡散基準MR画像は、例えば前述したように拡散基準画像提供ユニット110によって決定される。好ましくは、拡散基準MR画像は、複素数値の画像データに再構成されるマルチショットEPI画像である。
【0095】
ステップ220において、ステップ210において提供された拡散基準MR画像から脂肪画像が決定される。脂肪画像は、例えば前述したように脂肪画像決定ユニット120によって決定される。好ましくは、拡散基準MR画像は、特定の短縮因子で収集され、そこから折り返し除去された複素数値の脂肪画像を決定するために、EPI収集のタイミングパラメータから「水-脂肪シフト」が分かっている順モデルにおいて様々な位置にある水及び脂肪を用いてSENSEによる折り返し除去が適用される。このようにして生成された折り返し除去脂肪画像は、適用された短縮因子を用いて順方向に折り返されて、脂肪画像が決定される。
【0096】
ステップ230において、物体10の拡散強調MR画像が決定される。拡散強調MR画像は、例えば前述したように拡散強調画像提供ユニット130によって決定される。好ましくは、拡散強調MR画像の収集は、拡散基準MR画像の収集とは、拡散エンコーディング又は拡散強調及びショット数において異なり、拡散強調MR画像は、折り返しありの複素数値のEPI再構成画像として提供される。実際には、異なる拡散パラメータbを有する複数の拡散強調MR画像が提供される。
【0097】
最後に、ステップ240において、ステップ230において提供された拡散強調MR画像とステップ220において決定された脂肪画像との組み合わせを使用して、脂肪抑制拡散強調MR画像が決定される。脂肪抑制拡散強調MR画像は、例えば前述したように脂肪抑制画像決定ユニット140によって決定される。好ましくは、脂肪画像は、拡散強調MR画像から減算される。スケーリングパラメータを使用することが有益である。スケーリングパラメータは、脂肪信号における小さな信号変化を考慮することにより、減算結果を最適化する。有利には、解剖学的構造に対してシフトし、解剖学的構造とオーバーラップしない脂肪信号を特定することにより、自動決定を行うことができる。減算結果に基づいて、脂肪画像が拡散強調MR画像から取り除かれているため、残りの拡散エンコードされた水信号はSENSEを使用して再構成される。これは、水のみの折り返し除去とも呼ばれる。
【0098】
本発明は、標準拡散スキャンと比べて、g因子の挙動及びスキャン時間への影響を最小限に抑えた脂肪抑制拡散強調MR画像を達成することを可能にする。
【0099】
ステップの順序は、
図2に示す順序に限定されず、例えばステップ230はステップ220の前に行うことができる。つまり、脂肪画像が拡散基準画像に基づいて決定される前に、拡散強調MR画像を提供することができる。
【0100】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解及び達成されうる。
【0101】
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。
【0102】
単一のユニット、コンポーネント又はデバイスが、請求項に引用される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。