(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】発泡粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
(21)【出願番号】P 2020553700
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038917
(87)【国際公開番号】W WO2020090335
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2018204236
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】平 晃暢
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03970959(EP,A1)
【文献】特開2016-160300(JP,A)
【文献】特開2016-155344(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099550(WO,A1)
【文献】特開2013-181157(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084245(WO,A1)
【文献】特開2018-070735(JP,A)
【文献】特開2010-126577(JP,A)
【文献】特開2010-159321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系熱可塑性エラストマー60~97重量%とポリエチレン系樹脂
(ただし、オレフィン系熱可塑性エラストマーを除く)3~40重量%からなる混合物から構成される発泡粒子であって、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーはメルトフローレイトMFR(I)を有し、前記ポリエチレン系樹脂はメルトフローレイトMFR(II)を有し、ここでMFR(I)は2~10g/10minであり、MFR(I)とMFR(II)との差[MFR(II)-MFR(I)]は1~35g/10minである、発泡粒子。
【請求項2】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体である、請求項1に記載の発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1又は2以上のポリエチレン系樹脂である、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡粒子。
【請求項5】
前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトMFR(II)と前記オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)との差[MFR(II)-MFR(I)]が、1~25g/10minである、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡粒子。
【請求項6】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーと前記ポリエチレン系樹脂との前記混合物がJIS K7121:2012に基づくDSC曲線において単一の融解ピークを示す結晶構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡粒子。
【請求項7】
熱キシレン不溶分が10~70重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡粒子。
【請求項8】
見掛け密度が30~150kg/m
3である、請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の多数の発泡粒子が互いに熱融着してなる発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物から構成される発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性や反発弾性に優れていることから、緩衝材や防振材、スポーツ用品、自動車用部材等の様々な用途で使用されている。
【0003】
このオレフィン系熱可塑性エラストマーの発泡粒子成形体は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが有する柔軟性や反発弾性等の優れた特性を維持しつつ、軽量化を図ることができるため、スポーツ用品、自動車部材、建材等の分野において更なる用途展開が期待されている。
【0004】
このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーに関し、例えば、特許文献1には、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体の粒子を架橋して発泡させて得られる架橋発泡粒子が開示されている。該架橋発泡粒子は、型内成形性に優れ、かつ、軽量性、柔軟性、反発性、回復性及び引張特性がバランスよく優れている発泡粒子成形体を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発泡粒子成形体は、その用途によっては、高温の雰囲気下で使用される場合がある。しかしながら、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、高温雰囲気下において、体積収縮が生じ、寸法が変化してしまうことがあった。したがって、引張特性、柔軟性、成形性等に優れるとともに、より優れた耐熱性を有する発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子の実現が望まれていた。
【0007】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、引張特性、柔軟性、成形性等のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子の優れた特性を維持しつつ、耐熱性に優れる発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1のアスペクトによれば、以下に示す発泡粒子が提供される。
[1] オレフィン系熱可塑性エラストマー60~97重量%とポリエチレン系樹脂3~40重量%からなる混合物から構成される発泡粒子であって、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーはメルトフローレイトMFR(I)を有し、前記ポリエチレン系樹脂はメルトフローレイトMFR(II)を有し、ここでMFR(I)は2~10g/10minであり、MFR(I)とMFR(II)との差[MFR(II)-MFR(I)]は1~35g/10minである、発泡粒子。
[2] 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体である、上記[1]に記載の発泡粒子。
[3] 前記前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1又は2以上のポリエチレン系樹脂である、上記[1]又は[2]に記載の発泡粒子。
[4] 前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の発泡粒子。
[5] 前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトMFR(II)と前記オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)との差[MFR(II)-MFR(I)]が、1~25g/10minである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の発泡粒子。
[6] 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーと前記ポリエチレン系樹脂との前記混合物がJIS K7121:2012に基づくDSC曲線において単一の融解ピークを示す結晶構造を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の発泡粒子。
[7] 熱熱キシレン不溶分が10~70重量%である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の発泡粒子。
[8] 見掛け密度が30~150kg/m3である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の発泡粒子。
他のアスペクトにおいて、本発明は
[9] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の多数の発泡粒子が互いに熱融着してなる発泡粒子成形体、
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発泡粒子は、引張特性、柔軟性、成形性等のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子の優れた特性を維持しつつ、耐熱性に優れる発泡粒子成形体を成形可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、その用途によっては、耐熱性が不十分である場合があり、例えば、80℃や100℃といった高温雰囲気下において体積収縮し、寸法変化を生じることがあった。オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体が高温雰囲気下において体積収縮する原因は、次のように考えられる。オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子を型内成形する際、加熱された発泡粒子は二次発泡する。このとき、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子に歪みが生じ、この歪みが発泡粒子成形体に残ることが体積収縮の原因の一つであると考えられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィン系樹脂等と比較してより弾性的であるため、発泡粒子成形体に歪みがより残りやすく、特に高温雰囲気下において体積収縮を生じやすいと考えられる。
【0011】
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物から構成され、引張特性、柔軟性、成形性等のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子の優れた特性を維持しつつ、耐熱性に優れた発泡粒子成形体(以下、単に「成形体」と称することがある)を成形可能である。本発明の発泡粒子が耐熱性に優れる発泡粒子成形体を成形可能となる理由は、明らかではないが、以下の理由が考えられる。
【0012】
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマーに加え、特定のポリエチレン系樹脂を含んでいる。したがって、型内成形時における、発泡粒子のオレフィン系熱可塑性エラストマーに起因する気泡膜の歪みを、ポリエチレン系樹脂が緩和することにより、高温雰囲気下においても体積収縮が小さく、耐熱性に優れた発泡粒子成形体が得られると考えられる。
【0013】
<発泡粒子>
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマー60~97重量%とポリエチレン系樹脂3~40重量%からなる混合物(ただし、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーと前記ポリエチレン系樹脂との合計は100重量%である)から構成される。オレフィン系熱可塑性エラストマーはメルトフローレイトMFR(I)を有し、ポリエチレン系樹脂はメルトフローレイトMFR(II)を有する。MFR(I)は2~10g/10minであり、MFR(I)とMFR(II)との差[MFR(II)-MFR(I)]は1~35g/10minである。
【0014】
[オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)]
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、単にTPOと称することがある)を含む。
【0015】
TPOとしては、例えば、プロピレン系樹脂からなるハードセグメントとエチレン系ゴムからなるソフトセグメントにより構成される混合物、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、TPOとして、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が好ましく用いられる。TPOとして、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体を用いると、TPOの優れた特性をより好ましく維持しつつ、より耐熱性に優れる発泡粒子成形体となる。
【0016】
プロピレン系樹脂からなるハードセグメントとエチレン系ゴムからなるソフトセグメントにより構成される混合物において、プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレン或いは炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。一方、エチレン系ゴムとしては、例えば、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエンとの共重合体等が挙げられる。
【0017】
ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体において、ポリエチレンブロックとしては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。一方、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとしては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体のブロックであり、エチレンと共重合するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手しやすさや諸特性、経済性等の観点から、エチレンと共重合するα-オレフィンは、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンであり、特に好ましくは1-オクテンである。
【0018】
ポリエチレンブロックにおけるエチレン単位の割合は、ポリエチレンブロックの重量に対して、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上である。一方、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックにおける、α-オレフィン単位の割合は、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの重量に対して、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上である。なお、ポリエチレンブロックの割合及びエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの割合は、示差走査熱量測定(DSC)又は核磁気共鳴(NMR)から得られるデータに基づいて計算される。
【0019】
(TPOのメルトフローレイト)
オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)は、2~10g/10minであり、好ましくは3~8g/10minであり、より好ましくは4~7g/10minである。MFR(I)が低すぎると、発泡粒子の融着性が低くなり、発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を作製することが難しくなるおそれがある。一方、MFR(I)が高すぎると、発泡粒子を型内成形して得られた発泡粒子成形体に所望の物性が得られなくなるおそれがある。
本明細書において、オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)は、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0020】
(TPOの密度)
TPOの密度は、好ましくは700~1000kg/m3であり、より好ましくは800~900kg/m3である。
【0021】
(TPOの融点)
TPOの融点は、発泡粒子成形体の耐熱性等の観点から、好ましくは110~140℃であり、より好ましくは115~135℃である。
なお、TPOの融点は、JIS K7121:2012に記載の熱流束示差走査熱量測定に基づき測定される融解ピーク温度意味する。試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、加熱速度及び冷却速度としては共に10℃/分を採用する。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0022】
(TPOの融解熱量)
TPOの融解熱量は、好ましくは20~80J/gであり、より好ましくは30~70J/gである。TPOの融解熱量が上記範囲内であると、より耐熱性に優れる発泡粒子成形体を得ることできる。
なお、TPOの融解熱量は、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。また、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とする。
【0023】
(TPOの結晶化温度)
TPOの結晶化温度は、好ましくは80~120℃である。TPOの結晶化温度が上記範囲内であると、発泡粒子は型内成形性により優れるものとなる。上記観点から、TPOの結晶化温度は、より好ましくは85~115℃である。
なお、TPOの結晶化温度は、JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。また、DSC曲線に複数の結晶化ピークが表れる場合は、ピーク高さの最も高い結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
【0024】
(TPOのデュロメータA硬さ)
TPOのタイプAデュロメータを用いて測定される、デュロメータ硬さ(HDA)は、好ましくは65~95、より好ましくは70~90である。TPOのデュロメータA硬さが上記範囲内であると、より柔軟性に優れる発泡粒子成形体を得ることできる。
なお、TPOのデュロメータ硬さ(HDA)は、JIS K7215:1986に準拠して測定される値である。
【0025】
(TPOの曲げ弾性率)
TPOの曲げ弾性率は、型内成形性、柔軟性等の観点から、10~50MPaであることが好ましく、15~40MPaであることがより好ましく、20~35MPaであることが更に好ましい。
なお、TPOの曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定される値である。
【0026】
TPOとして市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「アフィニティー(Affinity)」、三菱ケミカル(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、三井化学(株)製の商品名「タフマー」、住友化学(株)製の商品名「住友TPE」、(株)プライムポリマー製の商品名「プライムTPO」等が挙げられる。
【0027】
[ポリエチレン系樹脂]
本発明の発泡粒子はTPOに加えポリエチレン系樹脂を含む。ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系炭化水素単独重合体等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は単独で、又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0028】
これらの中でも、耐熱性等の観点から、ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1又は2以上のポリエチレン系樹脂であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1又は2以上のポリエチレン系樹脂であることにより、得られる発泡粒子はより耐熱性に優れるものとなる。この理由は、明らかではないが、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンは、結晶化度が高く、発泡時に結晶がより配向しやすいためであると考えられる。
特に、TPOとして、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体を用いた場合、TPOとポリエチレン系樹脂との相溶性により優れるため、型内成形時における気泡膜の歪みがより緩和されやすく、得られる発泡粒子は更に耐熱性に優れるものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレンであることがより好ましい。
【0029】
(ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト)
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトMFR(II)は、2~50g/10minであることが好ましく、5~40g/10minであることがより好ましく、8~35g/10minであることが更に好ましい。MFR(II)が上記範囲内であると、発泡粒子はより発泡性、成形性等に優れるものとなる。また、得られる発泡粒子成形体は、より耐熱性等に優れるものとなる。ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトMFR(II)は、上記TPOのメルトフローレイトMFR(I)と同様の方法により測定される。
【0030】
(ポリエチレン系樹脂の密度)
ポリエチレン系樹脂の密度は、耐熱性等の観点から、好ましくは910~1000kg/m3であり、より好ましくは920~980kg/m3であり、更に好ましくは930~960kg/m3である。
【0031】
(ポリエチレン系樹脂の融点)
ポリエチレン系樹脂の融点は、成形性、耐熱性等の観点から、好ましくは110~145℃であり、より好ましくは120~140℃であり、更に好ましくは125~135℃である。ポリエチレン系樹脂の融点は、上記TPOの融点と同様の方法により測定される。
【0032】
(ポリエチレン系樹脂の融解熱量)
本発明において、ポリエチレン系樹脂は、その融解熱量がTPOの融解熱量よりも高いものが好ましく用いられる。ポリエチレン系樹脂の融解熱量がTPOの融解熱量よりも高いことにより、得られる発泡粒子成形体は、より耐熱性に優れるものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の融解熱量は好ましくは40~120J/gであり、より好ましくは50~110J/gである。ポリエチレン系樹脂の融解熱量は、上記TPOの融解熱量と同様の方法により測定される。
【0033】
(ポリエチレン系樹脂の結晶化温度)
ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、好ましくは90~130℃である。ポリエチレン系樹脂の結晶化温度が上記範囲内であると、得られる発泡粒子成形体の収縮率がより小さなものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、より好ましくは100~125℃である。また、ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、前記TPOの結晶化温度よりも高いことが好ましい。ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、上記TPOの結晶化温度と同様の方法により測定される。
【0034】
(ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率)
ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、100~1000MPaであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲内であると、得られる発泡粒子成形体は、よりTPOの有する優れた柔軟性を良好に維持しつつ、耐熱性に優れるものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は300~950MPaであることがより好ましく、500~900MPaであることが更に好ましい。ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、上記TPOの曲げ弾性率と同様の方法により測定される。
【0035】
(TPOとポリエチレン系樹脂の混合物)
オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、3~40重量%である(ただし、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との合計を100重量%とする)。混合物中のポリエチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡粒子の耐熱性、発泡性、成形性等を十分に向上させることができなくなるおそれがある。一方、混合物中のポリエチレン系樹脂の含有量が多すぎると、柔軟性、引張特性、回復性、反発性等のオレフィン系熱可塑性エラストマーの優れた特性を維持できないおそれがある。上記観点から、混合物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、5~35重量%であることが好ましく、8~30重量%であることがより好ましく、10~25重量%であることが更に好ましい。
【0036】
(他の重合体)
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとして含む。本明細書において、「基材ポリマー」なる用語は、多数の気泡を有する発泡粒子を形成することができるあらゆるポリマー材料を意味する。本発明の発泡粒子を構成する基材ポリマーは、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、上記混合物以外の他の重合体を含むことができる。他の重合体としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂やオレフィン系以外の熱可塑性エラストマー(例えば、ポリブタジエン系エラストマーや、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレンのブロック共重合体、それらの水添物)等が挙げられる。上記基材ポリマー中の他の重合体の含有量は、基材ポリマー100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下である。本発明の基材ポリマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物以外の重合体を実質的に含まないことが特に好ましい。
【0037】
(その他の添加剤)
本発明の発泡粒子は、基材ポリマーの他に、本発明の目的効果を阻害しない範囲において各種の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、金属不活性剤、導電性フィラー、気泡調整剤等が挙げられる。気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウム、シリカ、ゼオライト、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機系粉体が例示される。
これらの添加剤の添加量は、基材ポリマー100重量部に対して合計で、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、更に好ましくは5重量部以下である。なお、これらの添加剤は、通常、必要最小限の量で使用される。また、これらの添加剤は、例えば、基材ポリマー粒子を製造する際、基材ポリマーとともに押出機内に添加し、これらを混練することによって基材ポリマー粒子中に含有させることができる。
【0038】
本発明では、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトMFR(II)とオレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)との差[MFR(II)-MFR(I)]が1~35g/10minである。差[MFR(II)-MFR(I)]が1g/10min未満であると、発泡粒子の形状が扁平化しやすくなり、型内成形可能な発泡粒子を得ることができないおそれがある。また、差[MFR(II)-MFR(I)]が35g/10minを超えると、得られる発泡粒子の成形性等が低下するおそれがある。
特に、上記メルトフローレイトの差[(MFR(II)-MFR(I)]が1~25g/10minの範囲内となるポリエチレン系樹脂を含むことにより、発泡性により優れるものとなり、好ましい。したがって、本発明の発泡粒子は、球形で、成形性に優れ、より軽量な発泡粒子成形体を成形することが可能なものとなる。上記観点から、メルトフローレイトの差[MFR(II)-MFR(I)]は2~25g/10minであることがより好ましく、3~20g/10minであることが更に好ましく、5~17g/10minであることが特に好ましい。
【0039】
本発明において、ポリエチレン系樹脂の融点は、TPOの融点よりも高いことが好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点がTPOの融点よりも高い場合、発泡粒子は成形性により優れ、得られる成形体の耐熱性がより高いものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の融点は、TPOの融点よりも3℃以上高いことが好ましく、5℃以上高いことがさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点がTPOの融点よりも高い場合、その温度の差に上限はないが、概ね20℃程度である。
【0040】
また、ポリエチレン系樹脂の融解熱量は、TPOの融解熱量よりも高いものが好ましい。ポリエチレン系樹脂の融解熱量がTPOの融解熱量よりも高い場合、得られる発泡粒子成形体は、より耐熱性に優れるものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の融解熱量は、TPOの融解熱量よりも20J/g以上高いことが好ましく、50J/g以上高いことがさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂の融解熱量がTPOの融解熱量よりも高い場合、その値の差に上限はないが、概ね150J/g程度である。
【0041】
さらに、ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、TPOの結晶化温度よりも高いことが好ましい。ポリエチレン系樹脂の結晶化温度がTPOの結晶化温度よりも高い場合、発泡粒子は成形性により優れ、得られる成形体の耐熱性がより高いものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、TPOの結晶化温度よりも5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。ポリエチレン系樹脂の結晶化温度がTPOの結晶化温度よりも高い場合、その温度の差に上限はないが、概ね25℃程度である。
【0042】
(混合物の融解熱量)
本発明において、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物の融解熱量は、40~120J/gであることが好ましい。混合物の融解熱量が上記範囲内であると、発泡粒子の耐熱性、成形性等により優れ、また、得られる発泡粒子成形体の収縮率がより小さなものとなる。上記観点から、混合物の融解熱量は、50~100J/gであることがより好ましく、55~90J/gであることが更に好ましい。
なお、混合物の融解熱量は、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。また、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とする。
【0043】
(混合物の融解ピーク)
本発明において、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物が、JIS K7121:2012に基づくDSC曲線において、単一の融解ピークを示す結晶構造を有することが好ましい。混合物が単一の融解ピークを示す結晶構造を有することは、TPOとポリエチレン系樹脂との相溶性が良好であることを示している。したがって、得られる発泡粒子は、ポリエチレン系樹脂が基材ポリマーに含まれていても、引張特性等のTPOが有する優れた特性をより好ましく維持することができる。また、得られる発泡粒子は成形性により優れるとともに、発泡粒子成形体は耐熱性により優れるものとなる。
なお、混合物のDSC曲線は、JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。
【0044】
(混合物の結晶化温度)
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物の結晶化温度は、105~125℃であることが好ましい。混合物の結晶化温度が上記範囲内であると、発泡粒子は成形性により優れるものとなる。上記観点から、混合物の結晶化温度は、更に好ましくは108~123℃であり、特に好ましくは110~120℃である。
なお、結晶化温度は、JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。また、DSC曲線に複数の結晶化ピークが表れる場合は、ピーク高さの最も高い結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
【0045】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物の結晶化温度は、該混合物の結晶化温度と同様の方法により測定されるオレフィン系熱可塑性エラストマー単独の結晶化温度よりも高いことが好ましい。混合物の結晶化温度がTPO単独の結晶化温度よりも高いと、発泡粒子は成形性に更に優れるものとなる。この理由は、明らかではないが、混合物の結晶化温度が高いことにより、より高温で結晶化され、発泡粒子成形体の成形時の収縮を抑制することができるためであると考えられる。上記観点から、混合物の結晶化温度は、TPO単独の結晶化温度よりも3℃以上高いことが好ましく、5℃以上高いことが更に好ましい。混合物の結晶化温度がTPO単独の結晶化温度よりも高い場合、その温度の差に上限はないが、概ね20℃程度である。
【0046】
(発泡粒子の熱キシレン不溶分(ゲル分率))
本発明の発泡粒子は、熱キシレン抽出法による熱キシレン不溶分を含むことが、発泡粒子の優れた型内成形性と優れた耐熱性とを両立しうる理由で好ましい。上記理由から、熱キシレン不溶分は、好ましくは10~70重量%であり、より好ましくは30~60重量%である。熱キシレン不溶分は、発泡粒子の架橋状態を示す指標の一つである。
なお、本明細書において、熱キシレン不溶分は次のように求められる。試料約1gを秤量(秤量した試料重量をG1(g)とする)してキシレン100g中で6時間還流下煮沸する。次いでこれを100メッシュの金網で速やかに濾過する。次いで金網上に残った沸騰キシレン不溶分を80℃の減圧乾燥機で8時間乾燥させてから沸騰キシレン不溶分の重量を秤量する(秤量した沸騰キシレン不溶分の重量をG2(g)とする)。熱キシレン不溶分は下記式(1)によって求められる。
熱キシレン不溶分(重量%)=〔G2/G1〕×100 (1)
【0047】
(発泡粒子の見掛け密度)
本発明の発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは30~300kg/m3であり、より好ましくは30~150kg/m3であり、更に好ましくは35~120kg/m3であり、特に好ましくは40~100kg/m3、最も好ましくは45~80kg/m3である。発泡粒子の見掛け密度が上記範囲内であると、軽量性、柔軟性、反発性、回復性等により優れる発泡粒子成形体を成形することができる。従来、発泡粒子の見掛け密度が小さい発泡粒子を成形して得られる発泡粒子成形体は、高温雰囲気下において、寸法がより変化しやすいものであった。しかしながら、本発明の発泡粒子は、見掛け密度が小さいものであっても耐熱性に優れ、高温雰囲気下における寸法変化の抑制された発泡粒子成形体を成形可能なものとなる。
【0048】
本明細書において、発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求められる。まず、発泡粒子群を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の重量W1)を上記メスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1(g)を容積V1[L]で除する(W1/V1)ことにより、発泡粒子の見掛け密度が求められる。
【0049】
(発泡粒子のアスペクト比)
本発明の発泡粒子は、アスペクト比が5.0以下であることが好ましい。本発明において、発泡粒子のアスペクト比が上記範囲内であることは、発泡粒子の形状が球状又は楕円状であることを意味する。発泡粒子のアスペクト比が上記範囲内であると、発泡粒子を型内成形する際、成形型内への充填性が向上し、成形性により優れるものとなる。上記観点から、発泡粒子のアスペクト比は3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。なお、アスペクト比の下限は、1である。
【0050】
なお、発泡粒子のアスペクト比は、粒子の最大長(L)と、粒子の最大長Lの長さ方向と直交する粒子断面の最小径(D)との比(L/D)として算出される値である。粒子の最大長(L)及び粒子の最大長Lの長さ方向と直交する粒子断面の最小径(D)は、例えば、ノギス等の測定具により測定することができる。
【0051】
(発泡粒子の平均気泡径)
本発明の発泡粒子は、各々、基材ポリマーからなる気泡膜により形成もしくは画定された多数の気泡を有している。発泡粒子の平均気泡径は、20~200μmであることが好ましい。発泡粒子の平均気泡径が上記範囲内であると、発泡粒子の型内成形性により優れるとともに、発泡粒子成形体の機械的物性により優れるものとなる。かかる観点から、平均気泡径は、40~180μmであることがより好ましく、60~160μmであることが更に好ましく、80~140μmであることが特に好ましい。
【0052】
発泡粒子の平均気泡径は、ASTM D3576-77に準拠し、次のように測定される。無作為に選択した50個の発泡粒子を各々その中心部を通るように切断して2分割し、その断面の拡大写真を撮影する。各断面写真において、発泡粒子の中心部を通り、かつ互いに等角度(45度)の方向の4本の線分を引く。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを計測された全気泡数で除して気泡の平均弦長を求め、さらに0.616で除することにより、各発泡粒子の平均気泡径値を求める。選択した50個の発泡粒子の平均気泡径値の算術平均が発泡粒子の平均気泡径である。
【0053】
<発泡粒子の製造方法>
本発明の発泡粒子の好ましい製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D)を含む。
工程(A):密閉容器内で分散媒に、TPOとポリエチレン系樹脂との混合物(以下、「TPO混合物」ともいう)を含む基材ポリマーと所望に応じ任意成分としての添加剤からなる粒子(以下、「基材ポリマー粒子」ともいう)及び架橋剤を分散させる分散工程、
工程(B):TPO混合物が軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上の温度(架橋温度)まで加熱し、基材ポリマー粒子を架橋させて架橋粒子を得る架橋工程、
工程(C):架橋粒子に所定の温度(含浸温度)で所定の時間(含浸時間)保持して発泡剤を含浸させる含浸工程、
工程(D):所定の温度(発泡温度)で加熱されている発泡剤を含浸させた架橋粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、発泡させて発泡粒子を製造する発泡工程。
【0054】
[工程(A)]
工程(A)では、密閉容器内で分散媒に、基材ポリマー粒子及び架橋剤を分散させる。密閉容器は、密閉することができ、加熱及び圧力の上昇に耐えられる容器であり、例えば、オートクレーブ等が挙げられる。
【0055】
TPOとポリエチレン系樹脂と所望に応じ任意成分としての添加剤とを押出機に供給し、混練して溶融混練物とし、該溶融混練物を押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に押出し、これを所定の重量となるように切断するストランドカット法等、公知の造粒方法により基材ポリマー粒子が製造される。上記の方法において、例えば、ストランド状に押出し成形された溶融混練物を水冷により冷却した後、所定の長さに切断することにより基材ポリマー粒子を得ることができる。所定の長さに切断する際には、例えば、該溶融混練物を押出した直後に切断するホットカット法や水中で切断するアンダーウォーターカット法等により基材ポリマー粒子を得ることができる。
【0056】
基材ポリマー粒子の1個当たりの平均質量は、通常0.01~10mgが好ましく、0.1~5mgがより好ましい。なお、基材ポリマー粒子の平均質量は、無作為に選んだ100個の基材ポリマー粒子の質量(mg)を100で除した値である。
【0057】
(分散媒)
工程(A)で使用する分散媒は、基材ポリマー粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されない。分散媒としては、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。好ましい分散媒は水である。
【0058】
(分散)
上記分散媒に基材ポリマー粒子を分散させる。例えば、攪拌機を用いて分散媒に基材ポリマー粒子を分散させる。
【0059】
工程(A)において、上記分散媒にさらに分散剤又は界面活性剤を添加してもよい。分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
また、工程(A)において、pH調整剤を分散媒に添加し、分散媒のpHを調整することもできる。また、工程(A)において、発泡剤を分散媒に添加することもできる。発泡剤については工程(C)で詳述する。
【0060】
架橋剤は、予め分散媒に添加してもよく、基材ポリマー粒子を分散させてから分散媒に添加しても良い。架橋剤は、TPO混合物を架橋させるものであれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、ジクミルパーオキシド(10時間半減期温度:116℃)、2,5-t-ブチルパーベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)等の10時間半減期温度が100~125℃である過酸化物を用いることが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。架橋剤の分散媒への配合量は、発泡粒子中のキシレン不溶分の含有割合を上述した範囲に調整できる量であれば特に限定されないが、架橋剤の配合量は、基材ポリマー粒子100重量部に対して、好ましくは0.1~5.0重量部であり、より好ましくは0.2~2.5重量部である。
【0061】
[工程(B)]
工程(B)では、密閉容器内で、工程(A)で分散媒中に分散した基材ポリマー粒子が軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上の温度(架橋温度)に加熱し、所定の時間(保持時間)保持する。これにより、TPO混合物の架橋が生じて架橋粒子が得られる。架橋温度は、特に限定されないが、例えば、100~170℃の範囲である。また、架橋温度での保持時間は、特に限定されないが、例えば、5~120分間であり、より好ましくは10~90分間である。
【0062】
[工程(C)]
工程(C)では、工程(B)の後、密閉容器内の分散媒に架橋粒子を発泡させる発泡剤を添加し、軟化状態の架橋粒子に発泡剤を含浸させる。含浸温度は、架橋粒子が軟化状態となる温度以上の温度であれば、特に限定されないが、例えば、100~170℃の範囲である。含浸時間は、好ましくは15~60分間であり、より好ましくは30~45分間である。
【0063】
(発泡剤)
工程(C)で使用する発泡剤は、上記架橋粒子を発泡させられるものであれば特に限定されない。発泡剤としては、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でもオゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、二酸化炭素がより好ましく、特に二酸化炭素が好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。発泡剤の配合量は、目的とする発泡粒子の見掛け密度、TPO及びポリエチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、架橋粒子100質量部に対して、5~50質量部の有機物理発泡剤又は0.5~30質量部の無機物理発泡剤を用いることが好ましい。なお、上記の架橋工程、含浸工程、発泡工程は単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましい。
【0064】
[工程(D)]
工程(D)では、工程(C)により発泡剤が含浸されており、加熱されている架橋粒子を、密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して発泡粒子を作製する。具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤が含浸されている架橋粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して架橋粒子を発泡させることによって発泡粒子を作製する。
【0065】
発泡粒子の製造方法として、密閉容器にて製造する方法を説明したが、発泡粒子の製造方法は上記製造方法に限定されない。例えば、基材ポリマー粒子、架橋剤及び発泡剤を押出機に供給して溶融し、基材ポリマー粒子を架橋し、発泡剤を含浸させた後、押出機の先端に取り付けたダイから架橋させた架橋粒子を押出発泡することによって架橋粒子の発泡体を製造し、それらを冷却した後にペレタイズすることにより粒子状に切断する方法;工程(A)~(C)により得た架橋粒子を密閉容器から取出し、脱水乾燥した後、架橋粒子を加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子とする方法等であってもよい。さらに、基材ポリマー粒子に有機過酸化物を用いて架橋する方法を示したが、本発明における架橋工程は、有機過酸化物を用いるものに限らず、他の公知の方法、例えば、電子線架橋法等を用いて架橋工程を行うことにより架橋粒子とすることができる。
【0066】
<発泡粒子成形体>
本発明の発泡粒子を型内成形することにより発泡粒子が互いに熱融着した発泡粒子成形体を得ることができる。
【0067】
(型内成形)
発泡粒子成形体は、従来公知の方法により、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより得られる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して二次発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。また、本発明における型内成形は、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を0.01~0.2MPa(G)(G:ゲージ圧、以下同じ)に調整した後、大気圧下又は減圧下で発泡粒子を成形型キャビティ内に充填して型閉めを行った後、型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報)により成形することが好ましい。
【0068】
(見掛け密度)
発泡粒子成形体の見掛け密度は、好ましくは20~300kg/m3であり、より好ましくは20~150kg/m3であり、更に好ましくは30~120kg/m3であり、35~100kg/m3であることが特に好ましい。発泡粒子成形体の見掛け密度が上記範囲であると、軽量性、柔軟性、反発性、回復性及び引張特性がバランスよく優れている発泡粒子成形体となる。
なお、見掛け密度は、以下のように求められる。発泡粒子成形体を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの雰囲気中に2日間放置する。次いで、温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子成形体(重量W)をメスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子成形体の容積V[L]を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子成形体の重量W(g)を容積V[L]で除する(W/V)ことにより、発泡粒子成形体の見掛け密度が求められる。
【0069】
(タイプCデュロメータ硬さ)
発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さは、好ましくは5~70であり、より好ましくは10~60であり、更に好ましくは17~40である。タイプCデュロメータ硬さが上記範囲内であれば、柔軟性、回復性等により優れた発泡粒子成形体となる。
なお、タイプCデュロメータ硬さとは、JIS K7312:1996に基づきタイプCデュロメータを用いて測定される、デュロメータ硬さを意味する。
【0070】
(引張強さ、引張伸び)
発泡粒子成形体の引張強さは、好ましくは0.2MPa以上であり、より好ましくは0.25MPa以上であり、更に好ましくは0.3MPa以上である。引張強さの上限は特に規定はないが、概ね1MPa程度である。引張強さが上記範囲内であると、発泡粒子成形体の発泡粒子間の融着性がより良好であり、クッション材、スポーツパッド材、靴底材、玩具等の用途に好適なものとなる。
また、発泡粒子成形体の引張伸びは、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは100%以上である。引張伸びが上記範囲内であると、発泡粒子成形体の発泡粒子間の融着性がより良好であり、クッション材、スポーツパッド材、靴底材、玩具等の種々の用途に好適なものとなる。
なお、引張強さ及び引張伸びは、JIS K6767:1999に準拠して発泡粒子成形体の引張試験を行うことにより求められる。
【0071】
(圧縮永久歪み)
発泡粒子成形体の圧縮永久歪みは、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下である。上記範囲内であると、発泡粒子成形体を圧縮した後の形状の回復性に優れることから、クッション材、スポーツパッド材、靴底材、玩具等の用途に好適なものとなる。
なお、発泡粒子成形体の圧縮永久歪みは、JIS K6767:1999に基づき、温度23℃にて測定される。
【0072】
(反発弾性率)
発泡粒子成形体の反発弾性率は、好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは55%以上である。一方、上限は概ね90%程度である。反発弾性率が上記範囲であると反発性により優れることから、シートクッション材、スポーツパッド材、靴底材等の用途に好適に使用することができる。
発泡粒子成形体の反発弾性率は、JIS K6255:2013に準拠してショブ式反発弾性試験機RT-90(高分子計器(株)製)を用い、相対湿度50%、23℃の条件下で測定される。反発弾性率は、具体的には、以下のように求められる。養生後の発泡粒子成形体の中心部から、縦30mm、幅30mm、厚さ12.5mmのサンプル(成形表皮あり)を5個切り出す。各サンプルを両面テープで装置所定部に固定し、ハンマー直径φ15mm、アーム重さ0.25kgの振子を、持ち上げ角度90±1°の位置から振り下ろす。そして、厚さ方向から固定されたサンプルの表皮面に振子を衝突させ、振子の跳ね返り高さh(mm)が測定される。跳ね返り高さh(mm)を振子の落下高さH(mm)で除して、N=5の平均値を反発弾性率とする。
【0073】
(収縮率)
発泡粒子成形体の収縮率は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。発泡粒子成形体の収縮率が8%以下であると、発泡粒子成形体が製造し易くなる観点からより好ましい態様であるといえる。
なお、発泡粒子成形体の収縮率は、成形後の発泡粒子成形体を60℃のオーブン中で12時間乾燥した後に、室温まで冷却して得られた養生後の発泡粒子成形体の長手方向の寸法を測定し、成形金型の長手方向の寸法に対する、成形金型の長手方向の寸法と発泡粒子成形体の長手方向の寸法との差の比率から求められる。
【0074】
(加熱寸法変化率)
発泡粒子成形体の80℃における加熱寸法変化率は、見掛け密度35~100kg/m3の成形体において、好ましくは-5~5%であり、より好ましくは-4~3%であり、更に好ましくは-3~1%である。また、発泡粒子成形体の100℃における加熱寸法変化率は、見掛け密度35~100kg/m3の成形体において、好ましくは-12~5%であり、より好ましくは-10~3%であり、更に好ましくは-8~1%である。加熱寸法変化率が上記範囲内であれば、高温雰囲気下における寸法変化が小さく、耐熱性に優れる発泡粒子成形体となる。
なお、加熱寸法変化率は、JIS K6767:1999のB法に準拠して測定される。具体的には、発泡粒子成形体から厚みはそのままで大きさ150mm×150mmの成形体を切り出し、成形体の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるように記入する。縦及び横方向について、それぞれ3本の直線の長さを測定し、その平均値を求めて、初めの寸法(L0)とする。その後、80℃又は100℃で22時間成型品を静置させ、取り出した後、23℃の条件下で1時間静置する。1時間静置後の成形体について、初めの寸法と同様に加熱後の寸法(L1)を求め、加熱前後での寸法変化の比率((L1-L0)/L0×100)から加熱寸法変化率を算出する。
【0075】
本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物から構成される発泡粒子であって、オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)が2~10g/10minであり、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトMFR(II)とオレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトMFR(I)との差[MFR(II)-MFR(I)]が1~35g/10minであり、混合物中のポリエチレン系樹脂の含有量が3~40重量%であることにより、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子の優れた引張特性、回復性、反発性、柔軟性及び成形性を維持しつつ、耐熱性に優れる発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子を提供することができる。
【0076】
本発明の発泡粒子を型内成形することにより得られる発泡粒子成形体は、単体でも使用することができるが、他の材料等を積層接着させた積層体としても使用することができる。他の材料は、特に制限はないが、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィンとポリスチレンとの複合樹脂(PO/PS複合樹脂)、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの複合樹脂等の熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体が好ましく例示される。これらの中でも、軽量性と機械強度の観点からポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、PO/PS複合樹脂からなる発泡粒子成形体がより好ましく、耐熱性の観点からポリプロピレン系樹脂からなる発泡粒子成形体が特に好ましい。
【0077】
上記積層体は、積層体全体として高温雰囲気下における収縮率が低く抑えられるため、寸法変化が抑制された積層体となる。
【0078】
上記積層体において、本発明の発泡粒子から得られる発泡粒子成形体と他の材料の発泡粒子成形体との積層方法は、特に限定されない。例えば、両成形体を別工程で製造した後、両者を接着剤で接着させる方法や熱融着させる方法等により積層体とすることができる。ただし、生産性の観点から、一つの成形型内で一方の成形体と他方の成形の成形を連続して行うことにより、両成形体を一体的に積層接着すること(一体成形)が好ましい。
【0079】
本発明の発泡粒子を型内成形することにより得られる発泡粒子成形体は、建材、自動車用部材、防振材、クッション材、スポーツパッド材、靴底材、玩具等の用途に好適なものである。
【実施例】
【0080】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0081】
<混合物>
実施例及び比較例の混合物について以下の評価を実施した。なお、混合物としては、実施例及び比較例のそれぞれにおいて、後述する基材ポリマー粒子を用いて評価した。
【0082】
(融解熱量)
JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することにより得られるDSC曲線の融解ピークから、融解熱量を算出した。また、DSC曲線に複数の融解ピークが表れた場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とした。
【0083】
(融解ピーク)
JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、融解ピークの形状を観察した。また、その融解ピークの頂点温度を混合物の融点とした。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れた場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とした。なお、2つの融解ピークが観察された場合には、表中、「ダブル」と表示し、2番目に面積の大きな融解ピークの頂点温度(融点)を括弧内に表示した。
【0084】
(結晶化温度)
JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温した後、10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却することにより得られるDSC曲線における結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とした。また、DSC曲線に複数の結晶化ピークが表れた場合には、ピーク高さの最も高い結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とした。
【0085】
<発泡粒子>
実施例及び比較例の発泡粒子について以下の評価を実施した。
【0086】
(熱キシレン不溶分(ゲル分率))
発泡粒子の熱キシレン不溶分は前記の方法により求めた。
【0087】
(見掛け密度)
見掛け密度は、前記の方法により求めた。
【0088】
(発泡性)
発泡性は、発泡粒子の見掛け密度から以下の基準で評価した。なお、発泡粒子の発泡性は、発泡温度160℃、蒸気圧4.0MPaの条件で発泡することにより得られた発泡粒子について評価した。
◎:65kg/m3未満
〇:65kg/m3以上70kg/m3未満
△:70kg/m3以上80kg/m3未満
×:80kg/m3以上
【0089】
(発泡粒子のアスペクト比)
発泡粒子のアスペクト比は以下のように測定した。まず、無造作に選択した100個の発泡粒子について、それぞれの粒子の最大長(L)と、粒子の最大長Lの長さ方向と直交する粒子断面の最小径(D)とをノギスで測定し、その比(L/D)を算出した。得られた(L/D)の値を算術平均することにより発泡粒子のアスペクト比を求めた。
【0090】
(発泡粒子の形状)
発泡粒子の形状は、上記アスペクト比の値に基づき、以下のように評価した。
球状:アスペクト比1.5以下
楕円:アスペクト比が1.5を超え5.0以下
扁平:アスペクト比が5.0を超える
【0091】
(発泡粒子の平均気泡径)
発泡粒子の平均気泡径は、前記の方法により求めた。
【0092】
<発泡粒子成形体>
実施例及び比較例の発泡粒子成形体について以下の評価を実施した。
【0093】
(見掛け密度)
発泡粒子成形体の見掛け密度は前記の方法によりを求めた。
【0094】
(タイプCデュロメータ硬さ)
JIS K7312:1996に基づき、発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さを測定した。具体的には、デュロメータC(高分子計器(株)製、Askerゴム硬度計C型)を定圧荷重器(高分子計器(株)製、CL-150L)に発泡粒子成形体を取り付け、その両表面について端部を除く任意の箇所各10箇所ずつ測定し、算術平均することによりタイプCデュロメータ硬さを求めた。
【0095】
(引張強さ、引張伸び)
JIS K6767:1999に準拠して発泡粒子成形体の引張試験を行うことにより、発泡粒子成形体の引張強さ及び引張伸びを求めた。具体的には、発泡粒子成形体からバーチカルスライサーを用いて、全ての面が切り出し面となるよう(表皮部分を除いた)切り出し片を作製し、糸鋸を用いてダンベル状1号形(測定部の長さ40mm、幅10mm、厚み10mm)に切り抜き、試験片とした。試験片を500mm/分の試験速度で引張試験を実施し、その間の最大荷重及び切断時の標線間距離を測定し、引張り時の最大引張応力を引張強さとし、破断時の伸びを引張伸びとした。
【0096】
(圧縮永久歪み)
JIS K6767:1999に基づき、温度23℃にて発泡粒子成形体の圧縮永久歪みを測定した。具体的には、発泡粒子成形体から成形時のスキン層を除いて、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状となるように5つの試験片を切り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で厚み方向に25%圧縮した状態で22時間放置し、圧縮開放24時間後に厚みを測定し、試験片の圧縮永久歪み(%)を求め、その算術平均値を圧縮永久歪み(%)とした。
【0097】
(反発弾性率)
発泡粒子成形体の反発弾性率は、前記の方法により測定した。
【0098】
(収縮率)
縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状の金型を用いて成形した発泡粒子成形体を60℃のオーブン中で12時間乾燥養生した後に、室温まで冷却して得られた養生後の発泡粒子成形体の縦方向の寸法(LB)を測定し、成形金型の縦方向の寸法(LA)に対する、成形金型の縦方向の寸法と発泡粒子成形体の縦方向の寸法との差の比率((LA-LB)/LA×100)を発泡粒子成形体の収縮率とした。
【0099】
(加熱寸法変化率)
発泡粒子成形体の加熱寸法変化率は前記の方法により求めた。
【0100】
(発泡粒子の成形性)
実施例及び比較例の発泡粒子の成形性について以下の評価を実施した。なお、本明細書において、「成形性」とは、上記融着性、外観及び回復性の総合評価を意味する。例えば、「成形性が良好な発泡粒子」とは、特定の成形圧において、融着性、外観及び回復性のすべての評価がAである発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子のことを指す。
【0101】
(融着性)
発泡粒子成形体の融着性は、以下の方法により評価した。発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて測定を5回行い、それぞれの材料破壊率を求め、それらを算術平均して融着性を以下の基準で評価した。
A:材料破壊率90%以上
B:材料破壊率20%以上90%未満
C:材料破壊率20%未満
【0102】
(外観(間隙の度合い))
発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの矩形を描き、矩形状のエリアの角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数え、発泡粒子成形体の表面外観を以下のように評価した。
A:ボイドの数が3個未満
B:ボイドの数が3個以上5個未満
C:ボイドの数が5個以上
【0103】
(回復性)
得られた発泡粒子成形体の中央部分と四隅部分の厚みをそれぞれ測定し、四隅部分のうち最も厚みが厚い部分に対する中央部分の厚みの比を算出し、回復性について以下のように評価した。
A:厚み比が95%以上の場合
B:厚み比が90%以上95%未満
C:厚み比が90%未満
【0104】
(成形可能範囲)
上記融着性、外観及び回復性のすべての評価がAである発泡粒子成形体を成形可能な成形圧を成形可能範囲(MPa)とした。
複数の成形圧において成形性が良好な発泡粒子は、成形可能範囲が広く、成形性により優れた発泡粒子であると判断できる。また、低い成形圧で成形できる場合は、より成形性に優れた発泡粒子であり、成形サイクルが短縮され生産性が向上する。
【0105】
<発泡粒子及び発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子を作製するために主に用いたTPO及びポリエチレン系樹脂を表1に示す。
TPO及びポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
TPO及びポリエチレン系樹脂の融点は、JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、その融解ピークの頂点温度を混合物の融点とした。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れた場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とした。
TPO及びポリエチレン系樹脂の融解熱量は、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することにより得られるDSC曲線の融解ピークから算出した。また、DSC曲線に複数の融解ピークが表れた場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とした。
TPO及びポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して、230℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)に切り出したものを使用した。また、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとした。
【0106】
【0107】
(実施例1)
<発泡粒子の作製>
TPOとしてTPO1を80重量%、ポリエチレン系樹脂として樹脂1を20重量%の混合原料(ただし、TPOとポリエチレン系樹脂の合計を100重量%とする)と、該混合原料100重量部に対して気泡調整剤としてホウ酸亜鉛(ZnBと略すことがある;富田製薬株式会社製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径6μm)0.1重量部とを押出機に投入し、230℃で溶融混練してφ2mmのダイからストランド状に押し出し、水中で冷却してからペレタイザーにて粒子質量約5mgとなるようにカットして造粒し、基材ポリマー粒子を得た。該基材ポリマー粒子1kgを分散媒である水3リットル、分散剤としてカオリンを3g、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.04g、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを基材ポリマー粒子100質量部に対して0.85質量部添加し、温度110℃まで昇温して30分間保持した。その後、発泡剤として二酸化炭素1.5MPaを容積5Lの密閉容器内に圧入し、攪拌下で架橋温度/発泡温度の160℃まで昇温し、30分間保持するとともに、さらに発泡剤として二酸化炭素を含浸させた。このときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)は4MPa(G)であった。その後、圧力を維持しつつ、密閉容器内の内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。
【0108】
<発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子を密閉容器に投入し、0.2MPa(G)の圧縮空気で12時間加圧して発泡粒子内に0.10MPa(G)の内圧を付与し、取り出した後、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状の金型に該発泡粒子を充填し、0.12~0.24MPa(G)の成形圧でスチーム加熱した後、冷却して金型より成形体を取り出す型内成形を行い、さらに該成形体を60℃に調整されたオーブン内で12時間加熱乾燥養生した後に取り出し、発泡粒子成形体を得た。
【0109】
(実施例2)
ポリエチレン系樹脂として樹脂2を用いた以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0110】
(実施例3)
ポリエチレン系樹脂として樹脂3を用いた以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0111】
(実施例4)
TPO1と樹脂1の配合量を表2に記載された配合量に変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0112】
(実施例5)
TPO1と樹脂1の配合量を表2に記載された配合量に変更し、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを基材ポリマー粒子100質量部に対して0.9質量部配合した以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0113】
(実施例6)
ポリエチレン系樹脂として樹脂7を用いた以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子を得た。
【0114】
(比較例1)
ポリエチレン系樹脂を用いず、TPO1のみを用いて基材ポリマー粒子とし、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを基材ポリマー粒子100質量部に対して0.80質量部配合した以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0115】
(比較例2)
ポリエチレン系樹脂として樹脂4を用いた以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。
【0116】
(比較例3)
ポリエチレン系樹脂として樹脂5を用いた以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。
【0117】
(比較例4)
TPO1と樹脂1の配合量を表4に記載された配合量に変更し、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを基材ポリマー粒子100質量部に対して1.0質量部配合した以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0118】
(比較例5)
ポリエチレン系樹脂として樹脂6を用いた以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。
【0119】
実施例1~6及び比較例1~5の発泡粒子及び発泡粒子成形体の製造条件、測定結果、及び評価結果を表2~5に示す。なお、表2及び4における発泡粒子成形体の物性は、表2及び4における成形圧で成形して得られた発泡粒子成形体の物性を示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
比較例1の発泡粒子から得られた発泡粒子成形体は80℃及び100℃における加熱寸法変化が大きく、耐熱性が不十分なものであった。比較例2及び3の発泡粒子から得られた発泡粒子は形状が扁平なものとなり、さらに成形が困難なものであった。比較例4の発泡粒子から得られた発泡粒子成形体は引張伸びに劣るものであった。比較例5の発泡粒子は成形性に劣るものであり、発泡粒子成形体の100℃における加熱寸法変化が大きく、耐熱性が不十分なものであった。これらと比較して、実施例1~6は、TPO発泡粒子の優れた引張特性、回復性、反発性、柔軟性及び成形性を維持しつつ、耐熱性に優れる発泡粒子成形体を得ることができていることが分かる。
【0125】
(実施例7)
発泡時の蒸気圧が2.2MPa(G)となるように二酸化炭素の含浸量を変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0126】
(比較例6)
発泡時の蒸気圧が1.8MPa(G)となるように二酸化炭素の含浸量を変更した以外は比較例1と同様にして発泡粒子を得た。
【0127】
実施例7及び比較例6の発泡粒子及び発泡粒子成形体の製造条件、測定結果、及び評価結果を表6及び7に示す。なお、表6における発泡粒子成形体の物性は、表6における成形圧で成形して得られた発泡粒子成形体の物性を示す。
【0128】
【0129】
【0130】
比較例6の発泡粒子を用いて得られた発泡粒子成形体は密度が大きいものにもかかわらず、やや耐熱性に劣るものであった。これに対し、実施例7は、TPO発泡粒子の優れた引張特性、回復性、反発性、柔軟性及び成形性を維持しつつ、耐熱性に優れる発泡粒子成形体を得ることができていることが分かる。