(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】低純度出発前駆体を使用するリチオ化遷移金属酸化物の電気めっき
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20221209BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20221209BHJP
C25D 9/04 20060101ALI20221209BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20221209BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20221209BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221209BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221209BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
C01G51/00 A
C25D9/04
C25D17/10 Z
C25D17/10 101Z
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
(21)【出願番号】P 2020564835
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 US2019033632
(87)【国際公開番号】W WO2019226840
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520449596
【氏名又は名称】ゼリオン、アドバンスド、バッテリー、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】XERION ADVANCED BATTERY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】メフメット、エヌ.エーテス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ディー.バスビー
(72)【発明者】
【氏名】チャド、ティー.キギンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ビー.クック
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0028081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0077490(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0006016(US,A1)
【文献】特開2014-096296(JP,A)
【文献】国際公開第2010/089991(WO,A1)
【文献】特開平11-140661(JP,A)
【文献】特表2015-523682(JP,A)
【文献】ZHANG, Huigang et al.,Electroplating lithium transition metal oxides,Sci. Adv.,2017年05月12日,3(5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C25D 9/04
C25D 17/10
C01G 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用電極の表面にリチオ化遷移金属酸化物(a lithiated transition metal oxide)を形成する方法であって、
(a)リチウム源および遷移金属源を含む
無機溶融塩(an inorganic molten salt)電解液に作用電極を浸すステップであって、前記リチウム源および遷移金属源が50重量%から95重量%までの範囲の純度を有する、ステップと、
(b)前記
無機溶融塩電解液の溶融温度を上回る温度で前記電解液から前記作用電極の表面にリチオ化遷移金属酸化物を電着させるステップと、
(c)溶液槽から前記作用電極を除去するステップと、
(d)前記電着されたリチオ化遷移金属酸化物をすすぐステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前
記リチウム源および遷移金属源が、50重量%から85重量%までの範囲の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前
記リチウム源が、LiOH、Li
2CO
3、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO
3、LiNO
2、Li
2SO
4、およびそれらの組合せからなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前
記遷移金属源が、MnCl
2、MnSO
4、Mn
2O
3、MnO
2、Mn
3O
4、Mn(NO
3)
2、CoO、Co
2O
3、Co
3O
4、Co(OH)
2、CoCl
2、CoSO
4、Co(NO
3)
2、およびそれらの組合せからなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無機溶融塩電解液
内のイオンの少なくとも50%が無機イオンである、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記無機溶融塩電解液が、水酸化物塩(a hydroxide salt)、ハロゲン化物塩(a halide salt)、硫酸塩(a sulfate salt)、硝酸塩(a nitrate salt)、亜硝酸塩(a nitrite salt)、およびそれらの組合せを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記無機溶融塩電解液が
、LiOH、KOH、NaOH、RbOH、およびCsOHからなるグループから選択された水酸化物塩、LiCl、LiF、KF、KCl、NaCl、NaF、LiBr、NaBr、KBr、LiI、NaI、KIからなるグループから選択されたハロゲン化物塩、LiNO
3、NaNO
3、およびKNO
3からなるグループから選択された硝酸塩、LiNO
2、NaNO
2、KNO
2からなるグループから選択された亜硝酸塩、Li
2SO
4硫酸塩、ならびにそれらの組合せを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記無機溶融塩電解液が、LiOH、KOH、NaOH、およびそれらの組合せからなるグループから選択された水酸化物塩を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記無機溶融塩電解液がLi
2SO
4硫酸塩を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記作用電極が、金属、金属合金、金属性セラミック、導電性カーボン、導電性ポリマ、および導電性複合材料からなるグループから選択された導電性材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記作用電極が、1μmから100mmまでの範囲の厚さを有す
る、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記作用電極が、1%多孔度から99%多孔度までの範囲の多孔度を有する多孔質発泡体である、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記作用電極が、アルミニウム、銅、クロム、コバルト、マンガン、ニッケル、銀、金、錫、プラチナ、パラジウム、亜鉛、タングステン、タンタル、ロジウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、バナジウム、およびハフニウム、ならびにそれらの合金からなるグループから選択された金属または金属合金である、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記めっき溶液槽内の前記遷移金属源が、少なくとも1つの遷移金属の酸化物(an oxide)、ハロゲン化物(halide)、または硫酸塩(sulfate)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記遷移金属源が、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、鉄、クロム、バナジウム、チタン、モリブデン、タングステン、およびそれらの組合せからなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記リチオ化遷移金属酸化物が、開気孔多孔質構造を有する3次元作用電極の表面に電着される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記リチオ化遷移金属酸化物が、前記作用電極にコンフォーマルにコーティングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記電着されたリチオ化遷移金属酸化物の厚さが、10nmから500μmまでの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記電着されたリチオ化遷移金属酸化物が、63と70の間の2Θ度において二重項ピークを含むXRDスペクトルによって特徴付けられたリチウム・コバルト酸化物(lithium cobalt oxide)である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年5月24に出願された米国仮出願第62/676,043号の出願日に対する利益および優先権を主張する。本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,780,356号として2017年10月3日に発行された、LITHIATED TRANSITION METAL OXIDESと題する、米国出願第15/362,993号に関係する。本出願はまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公報2019/0100850A1として2019年4月4日に公告された、ELECTROPLATING TRANSITIONAL METAL OXIDESと題する、2018年9月27日に出願された、米国出願第16/143,453号に関係する。
【0002】
本開示は、従来の低純度出発前駆体(たとえば、LiOH)ならびに従来にはない低純度出発前駆体(たとえば、Li2SO4およびLiCl)を使用して、リチオ化遷移金属酸化物(a lithiated transition metal oxide)組成物を電気めっき(または電着)するための方法に関する。最終生成物、すなわち、リチオ化遷移金属酸化物(LTMO)は、燃料電池、構造用部品、超コンデンサ、金属空気、1次および2次のリチウムイオン電池において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池(LIB)は、それらの高エネルギー密度のおかげで、エネルギー危機の分野における非常な関心を刺激している。それらはカソードから構成され、カソードはリチウムイオンをホストし、リチウムイオンは、電解液、隔離体、およびアノードを含み、アノードの中でリチウムイオンは、インターカレート/合金およびデインターカレート/脱合金され得る。
【0004】
リチウムイオン活性材料を製造するために広く使用されている大量生産法の1つは、活性材料(すなわち、グラファイト、LiCoO2)を使用し、活性材料は、導電体(たとえば、超リン(super P)、カーボン・ブラック、アセチレン・ブラック)および高分子結合剤(たとえば、ポリフッ化ビニリデン)と混合される。これらの成分は、N-メチルピロリドン(NMP)と一緒に均質化されて、スラリーを形成する。このスラリーは、2次元基板(通常、アルミニウムまたは銅のホイル)上に流し込まれ、乾燥される。この広く使用されている方法は、いくつかの重大な欠点を有する。均質化中に担体溶媒としてNMPを使用することは、乾燥中のこの毒性溶媒の回収を必要とし、さらなる初期コストならびに進行中の経常コストにつながる。さらに、この被覆プロセスは、不十分な導電性の活性材料間の高い界面抵抗、および、高質量充填において剥離する傾向をもつ電極をもたらす。電気めっきされたLTMOは、1ステップのみで合成され、電極に形成されるが、これは現在マルチステッププロセスである(2017年10月3日にHuigang Zhang、John D.Busbee、Hailong Ning、Thuy D.Dang、Kevin A.Arpinに発行された米国特許第9,780,356B2号、Lithiated transition metal oxide、ならびにElectroplating lithium transition metal oxides、Huigang Zhang、Hailong Ning、John Busbee、Zihan Shen、Chadd Kiggins、Yuyan Hua、Janna Eaves、Jerome Davis、Tan Shi、Yu-Tsun Shao、Jian-Min Zuo、Xuhao Hong、Yanbin Chan、Shuangbao Wang、Peng Wang、Pengcheng Sun、Sheng Xu、Jinyun Liu、およびPaul V.Braun、Science Advances、第3巻、第5号、el602427、2017年を参照)。この方法は毒性NMPを使用せず、したがって、従来のスラリー流延法に必要な高価な溶媒回収ステップを必要としない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LTMOの合成は、産業的にも学究的にも、高温(800~1100℃)で生成される(1999年3月23日にNobuyuki Yamazaki、Kathuyuki Negishiに発行された米国特許第5,885,544号、Lithium cobaltate based positive electrode-active material for lithium secondary cell and method of manufacturing same、ならびにSolid-State Redox Reactions of LiCoO2(R3m) for 4 Volt Secondary Lithium Cells、Tsutomu OhzukuおよびAtsushi Ueda、J. Electrochem. Soc.、第141巻、第11号、1994年11月を参照)。結果として、性能低下および安全問題につながる可能性がある最終生成物内の2次材料の含有がないことを保証するために、高純度(>99%)の出発材料が必要とされる。本明細書に記載される電着プロセスの基本的なメカニズムにより、広範囲の出発材料および不純物のための、50%純度まで下がる低純度出発材料の使用が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、低コスト/低純度の原材料を使用することによりLTMOの生産コストを下げることを目的とする新規の手法が記載される。加えて、低純度前駆体を使用すると、従来のLTMO製造の場合かなりの精製(およびコスト)なしには使用できない、様々な新しい原材料が可能になる。LTMOを合成する高純度原材料の精製は、通常、毒性化学物質およびエネルギー集約型プロセスの使用を必要とし、それはひいてはリチウムイオン電池の最終価格にかなりのコストを加える。今までは、固相、湿式、ソルゲルなどのすべての市販のリチウム金属酸化物(lithium metal oxide)生成方法は、少なくとも98%純度のリチウムおよび95%純度の遷移金属前駆体を使用することが必要であり(Ultrathin Coatings on Nano-LiCoO2 for、Isaac D.Scott、Yoon Seok Jung、Andrew S.Cavanagh、Yanfa Yan、Anne C.Dillon、Steven M.George、およびSe-Hee Lee、Nano Lett.、2011年、11(2)、ページ414~418を参照)、それは最終的なバッテリ・コストのかなりの部分を占める。加えて、従来の固相合成方法は、リチウム源としてLi2SO4およびLiCl前駆体を利用しない、何故なら、LTMOの高温熱処理中にそれらのアニオン(SO4
2-およびCl-)が安定せず、LTMOと反応するからである(Improvement of Structural Stability and Electrochemical Activity of a Cathode Material LiNi0.7Co0.3O2 by Chlorine Doping、Xinlu Li、Feiyu Kang、Wanci Shen、Xinde Bai、Electrochemica Acta、53、2007年、1761~1765を参照)。この副反応のせいで、LTMOを製造する従来の技法は、それらのリチウム源として、主に、LiOH・H2O、LiOH、Li2CO3、LiNO3、Li(CHOOCH3)を利用する(Lithium Recovery from Aqueous Resources and Batteries:A Brief Review、Ling Li、Vishwanath G.Deshmane、M.Parans Paranthaman、Ramesh Bhave、Bruce A.Moyer、Stephen Harrison、Johnson Matthey Technol.Rev.、2018年、62、(2)、161~176を参照)。本特許出願は、したがって、LiCl、Li2SO4、およびCoCl2などの従来にはない出発リチウムおよび遷移金属前駆体を用いてLTMOを合成する新しいルートを実証する。
【0007】
電気めっきは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年10月3日にHuigang ZHANG、John D.BUSBEE、Hailong Ning、Thuy D.Dang、およびKevin A.Arpinに発行された、米国特許第9,780,356B2号、Lithiated transition metal oxideによって実証された、LTMOを製造するために使用され得る元素固有の技法である。356号特許の目的は、必要な原材料の純度に関するいかなる開示もなしに溶解塩共融混合物(a molten salt eutectic)からLTMOをめっきする方法を記述することである。本発明の基礎は、従来および従来にはない両方のリチウム源および遷移金属(TM)源からの低純度出発材料を使用して、溶解塩共融混合物から高純度LTMOを作り出す能力を実証することである。我々が知る限り、低純度原材料(50%~95%)から高純度LTMOを合成した報告は行われていない。本明細書に記載される方法は、従来のLTMOと同じくらい良好に、または場合によってはそれよりも良好に機能する高純度LTMOが、50%まで低下した純度を有する出発材料から合成され、電極に形成され得ることを実証する。この技術は、いくつかの一般的な鉱石(たとえば、リシア輝石(spodumene)リチウム-アルミニウム-ケイ酸塩(lithium-aluminum-silicate))およびいくつかの一般的なリチウム含有塩水の直接使用を可能にするか、またはそれらの予備精製しか必要としないはずである。低純度塩は、広範な複数の処理ステップ、エネルギー消費、水消費、および厳重な高出発純度要件を必要としない。結果として、財務コストは低くなり、経済的な影響は低くなり、処理速度は速くなる。出願人らは、リチウムおよびTMの精製プロセスに関連付けられたコスト課題を克服するために、Xerion Advanced Battery Corp.(XABC)による以前の特許技術を利用している。電気めっき溶液は非水であり、いくつかのリチウム前駆体(LiOH、Li2SO4、LiCl3、LiNO3、LiI、LiBr)のうちの1つの共融点からなり、KOHは共融溶液槽の主要構成要素である。所望の最終LTMOに応じて、遷移金属源(Co、Mn、Ni、Al、Fe、Cu、Zn、V、Ti)も共融溶液槽に加えられる。
【0008】
本発明の実施形態の1つは、低純度(85%純度)LiOHを含有した共融溶液槽からLiCoO2微粒子を合成することによって実証された。この例では、低純度LiOH材料は、98%純度LiOH(製造業者当たり不純物1:1Li2CO3&Li2SO4)を、製造業者によって指定された他のよく見られる不純物(すなわちLi2SO4およびLi2CO3)と混合することによって調合された。これらの主要な不純物に加えて、Li2SO4およびLi2CO3の中に他の不純物が存在する。これらの不純物はppmレベルであり、ベンダによって提供された仕様書の基づく以下の元素であり得る:Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Zn、SO4-、Cl-、およびNO3。この例では、3次元ステンレス・スチール・ファイバ(SSF)、コバルト・ワイヤ、およびニッケル・ホイルが、それぞれ、作用電極、基準電極、および対電極として使用された。これら3つの電極は溶融塩に浸され、(コバルト・ワイヤ基準電極に対して)複数の1.2V電位パルスが印加された。パルスレンジは100μsから20sまでである(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年10月3日にHuigang Zhang、John D.Busbee、Hailong Ning、Thuy D.Dang、およびKevin A.Arpinに発行された、米国特許第9,780,356B2号、Lithiated transition metal oxideを参照)。LTMOの特性を確認し、従来の高温法を使用して合成された材料と比較して、物理的および電気化学的な性状が同一であり、かつ/または場合によっては優れていることを実証するために、様々な特性評価方法が採用された。これは、下記に詳述される、85%純度LiOHから始めて高純度LCOが作成され得ることを実証する。出願人らはまた、X線蛍光を使用して98%純度と85%純度の両方のLi2SO4から調合された最終LCO電極の元素硫黄分析を実行したが、計器の検出限度内でいかなる硫黄も発見しなかった。この実施形態の拡張はまた、2つの他の溶液槽の構成要素Co(OH)
2
(97%)およびKOH(85%)の標準純度を維持しながら、様々な純度のリチウム源を使用して実行された。我々は、LiCl(85~50%)およびLiSO4(85%)の様々な純度、最終的にTMO(たとえば、85%のCo(OH)
2
)の様々な純度が、本発明の方法において使用され得ることの実証に成功した。具体的な不純物の詳細は「発明を実施するための形態」において見出されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】260℃における5mV/sの走査速度でのCo(OH)
2を含むLiOH(98%)/KOH、LiOH(90%)/KOH、LiOH(85%)/KOHの溶液槽のサイクリック・ボルタンメトリの図である。
【
図2】Co(OH)
2を含むLiOH(98%)/KOH、LiOH(90%)/KOH、LiOH(85%)/KOHの共融溶液槽から取得された、電気めっきされたLiCoO
2粉末のXRDパターンの図である。
【
図3】Co(OH)
2を含むLiOH(98%)/KOH、LiOH(90%)/KOH、LiOH(85%)/KOHの共融溶液槽から取得されたLiCoO
2微粒子のHRSEM図である。
【
図4A】Co(OH)
2を含むLiOH(98%)/KOH、LiOH(90%)/KOH、LiOH(85%)/KOHの共融溶液槽から取得されたLiCoO
2カソード活性材料の放電性状の図である。セルはC/5レートで4.25Vと3Vとの間を循環した。
【
図4B】Co(OH)
2を含む正規のLiOH/KOHの共融溶液槽から取得されたLiCoO
2カソードについてのその充電-放電性状とともにdQ/dVのプロットである。
【
図5】320℃における5mV/sの走査速度でのCo(OH)
2を含むLiCl(97%)/KOH、LiCl(85%)/KOH、LiCl(70%)/KOH、LiCl(50%)/KOHの溶液槽のサイクリック・ボルタンメトリの図である。
【
図6】320℃におけるCo(OH)
2を含むLiCl(97%)/KOH、LiCl(85%)/KOH、LiCl(70%)/KOH、LiCl(50%)/KOHの溶液槽から取得されたLiCoO
2カソード活性材料の放電性状の図である。セルはC/5レートで4.25Vと3Vとの間を循環した。
【
図7】350℃における5mV/sの走査速度でのCo(OH)
2を含むLi
2SO
4(98%)/KOHおよびLi
2SO
4(85%)/KOHの溶液槽のサイクリック・ボルタンメトリの図である。
【
図8】350℃におけるCo(OH)
2を含むLi
2SO
4(98%)/KOHおよびLi
2SO
4(85%)/KOHの溶液槽から取得されたLiCoO
2カソード活性材料の放電性状の図である。セルはC/5レートで4.25Vと3Vとの間を循環した。
【
図9】260℃における5mV/sの走査速度での98%純度Co(OH)
2および85%純度Co(OH)
2を含むLiOH/KOHの溶液槽のサイクリック・ボルタンメトリの図である。
【
図10】260℃での98%純度Co(OH)
2および85%純度Co(OH)
2を含むLiOH/KOHの溶液槽から取得されたLiCoO
2カソード活性材料の放電性状の図である。セルはC/5レートで4.25Vと3Vとの間を循環した。
【
図11】260℃における5mV/sの走査速度での95%純度Co(SO)
4を含むLiOH/KOHの溶液槽のサイクリック・ボルタンメトリの図である。
【
図12】260℃における98%純度Co(OH)
2および95%純度Co(SO)
4を含むLiOH/KOHの溶液槽から取得されたLiCoO
2カソード活性材料の放電性状の図である。セルはC/5レートで4.25Vと3Vとの間を循環した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一般に、本発明は、(a)リチウム源および遷移金属源を含む非水電解液に作用電極を浸すステップであって、リチウム源および遷移金属源が両方とも低純度である、ステップと、(b)非水電解液の溶融温度を上回る温度で電解液から作用電極の表面にリチオ化遷移金属酸化物を電着させるステップと、(c)溶液槽から作用電極を除去するステップと、(d)電着されたリチオ化遷移金属酸化物をすすぐステップとを含む、リチオ化遷移金属酸化物を形成する方法に関する。
【0011】
好ましい実施形態では、電着は、コバルト・ワイヤ基準電極に対して0.6Vから1.4Vまでの範囲の定電圧を印加すること、または1μA/cm2からl00A/cm2までの範囲の定電流を印加すること、または電圧および/もしくは電流のパルスを間欠的に印加することによって行われる。
【0012】
好ましい実施形態では、低純度リチウム源は、LiOH、Li2CO3、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO3、LiNO2、Li2SO4、およびそれらの組合せからなるグループから選択される。
【0013】
好ましい実施形態では、低純度遷移金属源は、MnCl2、MnSO4、Mn2O3、MnO2、Mn3O4、CoO、Co2O3、Co3O4、Co(OH)
2
、CoCl2、CoSO4、およびそれらの組合せからなるグループから選択される。
【0014】
低純度のリチウム源および遷移金属源は、約50重量%から約98重量%まで、より好ましくは、約50重量%から約95重量%まで、最も好ましくは、約50重量%から約85重量%までの範囲の純度を有する。
【0015】
好ましくは、非水電解液は無機溶融塩(an inorganic molten salt)を含み、無機溶融塩電解液によって含まれるイオンの少なくとも50%、好ましくは99%は無機イオンである。無機溶融塩電解液は、水酸化物塩(a hydroxide salt)、ハロゲン化物塩(a halide salt)、硝酸塩(a nitrate salt)、硫酸塩(a sulfate salt)、またはそれらの組合せを含むことができる。好ましい実施形態では、無機溶融塩電解液は、LiOH、KOH、NaOH、RbOH、およびCsOHからなるグループから選択された水酸化物塩、LiCl、LiF、KF、KCl、NaCl、NaF、LiBr、NaBr、KBr、LiI、NaI、KIからなるグループから選択されたハロゲン化物塩、LiNO3、NaNO3、およびKNO3からなるグループから選択された硝酸塩、LiNO2、NaNO2、KNO2からなるグループから選択された亜硝酸塩(a nitrite salt)、Li2SO4硫酸塩、ならびにそれらの組合せを含む。
【0016】
一実施形態では、無機溶融塩電解液は、LiNO2、NaNO2、KNO2、およびそれらの組合せからなるグループから選択された亜硝酸塩を含む。
【0017】
別の実施形態では、無機溶融塩電解液は、LiOH、KOH、NaOH、CsOH、およびそれらの組合せからなるグループから選択された水酸化物塩を含む。
【0018】
別の実施形態では、無機溶融塩電解液は、Li2SO4硫酸塩を含む。
【0019】
電着されたリチオ化遷移金属酸化物は、好ましくは、作用電極にコンフォーマルにコーティングされる。好ましい実施形態では、作用電極は3次元多孔質ナノ構造体構造である。3次元多孔質作用電極は、好ましくは、1%と99%との間の空隙体積割合(多孔度)を有する。
【0020】
作用電極は、金属、金属合金、金属性セラミック、導電性カーボン、導電性ポリマ、および導電性複合材料からなるグループから選択された導電性材料を含む。好ましい実施形態では、作用電極は、アルミニウム、銅、クロム、コバルト、マンガン、ニッケル、銀、金、錫、プラチナ、パラジウム、亜鉛、タングステン、タンタル、ロジウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、バナジウム、およびハフニウム、ならびにそれらの合金からなるグループから選択された金属または金属合金である。
【0021】
別の好ましい実施形態では、作用電極は、1μmから100mmまでの範囲の厚さを有する平面ホイル、または1%多孔度から99%多孔度までの範囲の多孔度を有する多孔質発泡体である。
【0022】
電着されたリチオ化遷移金属酸化物の厚さは、好ましくは、約10nmから約500μmまでの範囲である。電着されたリチオ化遷移金属酸化物材料はまた、粉末の形状であり得、粉末は削り取られ得る。
【0023】
電着は、100℃から600℃までの範囲の比較的低い温度で実行される。好ましくは、電着温度は、約300℃から約500℃までである。
【0024】
電着は、大気雰囲気または不活性雰囲気において実行される。
【0025】
好ましい実施形態では、電着されたリチオ化遷移金属酸化物は、おおよそ63と70の間の2Θ度において二重項ピークを含むXRDスペクトルによって特徴付けられたリチウム・コバルト酸化物(lithium cobalt oxide)である。
【0026】
リチオ化遷移金属酸化物の電気めっきは、3電極システムを使用して実行され、そこでは、作用電極、対電極(ニッケル・ホイル)、および擬似基準(コバルト金属)電極が共融溶液に浸され、共融溶液は溶融塩とも呼ばれ、遷移金属源およびリチウムイオン源を含む。好ましくは、遷移金属源は、少なくとも1つの遷移金属の酸化物(an oxide)、水酸化物(hydroxide)、ハロゲン化物(halide)、または硫酸塩(sulfate)を含む。遷移金属は、アルミニウム、銅、クロム、コバルト、マンガン、ニッケル、銀、金、錫、プラチナ、亜鉛、タングステン、タンタル、ロジウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、およびそれらの合金であり得る。リチウム源は、LiOH、Li2SO4、LiCl、LiI、LiBr、LiNO3、LiNO2、LiNO、およびそれらの混合物であり得る。
【0027】
共融系は、比較的低い合成温度(100°~800℃)を実現することができる。共融温度は、混合物から構成されたいかなる組成物よりも低い溶融点として知られている。共融温度の上では、液相は、一般に溶融塩と呼ばれる。作用電極上の電着の場合、溶融塩系は、作用電極を保護するために低い温度を有するべきであり、遷移金属源の高い溶解度を保有するべきである。低温溶融塩は、通常、相図内の共融点を確認することによって選択される。溶融塩溶液槽は、水酸化物(KOH、NaOH、RbOH、CsOHなど)、ハロゲン化物(KF、KCl、NaCl、NaF、NaBr、KBr、NaI、KI、AlCl
3など)、硝酸塩(NaNO
3、KNO
3)、亜硝酸塩(NaNO
2、KNO
2)、および硫酸塩(Na
2SO
4、K
2SO
4)を含む化学物質のうちの少なくとも1つを用いて調合される。ニッケルのるつぼは反応槽として使用され、ガラスの蓋(lid)は、上述された電極を共融溶液の中につるすために使用された。3つの電極すべては、十分な電圧または電流密度を供給する電源に接続され、そこで、電気化学的に活性なリチオ化遷移金属酸化物材料が生成された。これらの材料はリチウムイオン電池業界の強い関心を引く。
図1は、溶液槽のすべてがコバルト源として
Co(OH)
2
化学種を含む、様々な割合のLiOH不純物(98%、90%、および85%)を含むいくつかのKOH/LiOH共融塩系のサイクリック・ボルタンメトリ(CV)を示す。90%純度および85%純度のLiOH粉末は、適切な割合のLi
2CO
3およびLi
2SO
4を98%純度LiOHとともにすりつぶすことによって調合された。CVの性状から分かるように、すべてのケースにおいて、比較的同様の電位、すなわち0.7VでCo
2+イオンが酸化され始める。
図1の3つの性状すべては互いに似ており、電気めっき中に電気化学的に活性な不純物が存在しない可能性が高いことを示唆する。1.2Vの上に見える電流の急上昇は、溶融塩の主要成分であるKOH塩およびLiOH塩から生じるOH-基の酸化に起因する。これをさらに支援するために、
図1の挿入図もコバルト源が存在しないKOH/LiOH溶液槽のCVを示し、それは、アニオン酸化に対応する1つだけの酸化ピークが存在することを立証する。溶融塩の含水量に起因する可能性があるコバルト酸化後の電位シフトは小さい。
図1(挿入図)に見られるように、共融溶液槽は、Co/Co
2+に対して1.4Vまで、LiCoO
2ナノ片をめっきする間安定している。我々は、コバルト基準電極に対して1.2Vになるように最適な電圧パルスを発見した。すべての電圧値は、Co/Co
2+擬似基準電極に対して報告される。
図2から分かるように、すべてのLiCoO
2粉末は、出発材料の不純物割合にかかわらず、非常に類似するXRDパターンを有する。それらは、すべて層状構造のR3mの相を保有し、同様の格子パラメータを有する。あらゆる回折ピークはJoint Committee on Powder Diffraction Standards(JCPDS)カード番号50-0653に割り当てられ得、これらの不純出発材料から作成された材料が標準的なリチウム・コバルト酸化物と結晶学的に同一であることを示す。特に重要なことに、65~70の2Θ度のまわりのすべてのパターン内の二重項ピークの存在は、結晶構造の層状の特徴が不純物の割合にかかわらず保存されることを示唆する。
図3に表された高解像度走査電子顕微鏡画像は、LiCoO
2微粒子が非常に類似する形態学的特徴を有することを示す。画像のこのセットは、LiOHに存在する原材料の不純物が最終生成物の形態に影響を及ぼさないことを実証する。
【0028】
一例では、120gのKOH、20gのLiOH、および5gのCo(OH)
2
が溶液槽に加えられ、それらが完全に溶解されることが監視された。2価Co2+イオンが水酸化物イオンによって配位結合されるにつれて、溶融物の色は透明色から青色に変化した。この後に、3電極の蓋を溶融塩に浸すことが続く。その後、(コバルト・ワイヤ基準電極に対して)1.2Vの電位パルスが印加された。パルスレンジは1μsから20sまでであり、そこで、SSF、ニッケル・ホイル、およびコバルト・ワイヤが、それぞれ、作用電極、対電極、および擬似基準電極として使用される。パルスの間に、(1μsから60分までの範囲の)開路電圧期間が存在した。この休止期間により、イオンがSSFの空隙に移動することが可能になり、それによりコンフォーマルな堆積が実現される。堆積サイクル(デューティ・サイクルはオン/オフ時間を指す)の数は、サンプルの装填を決定する。一定の電圧または電流密度はまた、金属酸化物の形成につながるが、電気めっきされた材料は、3D基板をコンフォーマルにカバーしない。それにもかかわらず、この方法を使用して、粉末状のリチオ化金属酸化物を取得することができる。遷移金属をマンガン源に変更するだけで、LixMnyOz材料を生成することもできる。
【0029】
作用電極上でLiCoO2を電気めっきした後、電極は、残りのKOH塩またはLiOH塩が残っていないことを保証するために、完全に脱イオン水で迅速にすすがれる。Co(OH)
2
は水に溶けないので、クエン酸(citric acid)などのキレート剤(a chelating agent)がCo2+を溶解することを助けるはずである。Co(OH)
2
の痕跡が除去されない場合、熱処理中、これは、電気めっき中に形成されないCo3O4微粒子を形成するはずである。Co2+イオンの除去は、単に、1分間ほぼ0.4Mのクエン酸水溶液にリチオ化遷移金属酸化物の電極を浸すことによって行われる。
【0030】
一実施形態では、我々は、3D骨格作用電極としてステンレス・スチール・ファイバ(SSF)を採用した。めっき手順は以下の通りである。1秒間のオン時間(on-time)(Co/Co
2+に対する)1.2V電圧パルスの後に、各電圧パルス間の2分間の休止が続く。これにより、イオンが3D骨格の内孔を拡散させることが保証され、コンフォーマルなLCOめっきにつながる。おおよそ、これらのパルスめっき手順の20サイクルにより、文献の標準値である約145mAh/gの比容量を有する2mAh/cm
2装填された電極がもたらされる。LiCoO
2電極の電気化学的な性能が検査され、様々な純度のLiOH前駆体から取得されたLiCoO
2の放電性状が
図4Aにプロットされた。コイン電池は、リチウム・ホイルに対してSSFに堆積されたLiCoO
2カソードで構築され、市販の20μmポリマ隔離体で隔離された。電解液は、有機溶剤に溶解された従来のLiPF
6であった。
図4AのLiCoO
2電極のすべては、まったく同一の容量(約145mAh/g)および互いによく似ている電圧性状を送出した。この電気化学的なデータはさらに、85%純度LiOHも90%純度LiOHも、LiCoO
2の電気化学的な放電性状の特性に対していかなる悪影響ももたないことを証明している。
図4Bは、正規の溶融塩溶液槽から取得されたLiCoO
2電極の充電-放電容量を表す。
図4Bの円で示された平坦域は、高レベルの結晶度を示す。4.06Vおよび4.18Vの領域における充電中に、それぞれ、単斜晶相および六方晶相からの相変態がリチウムイオンの除去と同時に発生する(Microemulsion-based synthesis and electrochemical evaluation of different nanostructures of LiCoO
2 prepared through sacrificial nanowire templates、Gautam Ganapati Yadav、Anand David、Huazhang Zhu、James Caruthers、およびYue Wu、Nanoscale、2014年、6、860を参照)。これらの領域は、LiCoO
2粉末の品質と直接の相関関係があると考えられる。良好な結晶度は、寿命および高温蓄積耐性のような良好な性能特性の原因となるので望ましい。
【0031】
別の例では、
図5は、溶液槽のすべてがコバルト源として
Co(OH)
2
化学種を含む、様々な割合のLiCl不純物(97%、85%、70%、および50%)を含むいくつかのKOH/LiCl溶融塩系のサイクリック・ボルタンメトリ(CV)を示す。溶液槽温度は320℃に設定され、めっき手順は以下の通りであった。1秒間のオン時間(Co/Co
2+に対する)1.2V電圧パルスの後に、各電圧パルス間の2分間の休止が続く。これにより、イオンが3D骨格SSF作用電極の内孔を拡散させることが保証され、コンフォーマルなLCOめっきにつながる。おおよそ、これらのパルスめっき手順の20サイクルにより、文献の標準値を有する良い兆候である約145mAh/gの比容量を有する2mAh/cm
2装填された電極がもたらされる。85%純度、70%純度、および50%純度のLiCl粉末は、適切な割合のNaCl、KCl、およびCaClを97%純度LiClと混合することによって調合された。LiClは、通常、アルカリ塩化物イオンを大量に含む塩水を通して精製されるので、これらの不純物が選択された(Extraction of lithium from primary and secondary sources by pre-treatment, leaching and separation:A comprehensive review、Pratima Meshram、B.D.Pandey、T.R.Mankhand、Hydrometallurgy 150(2014年)、192~208を参照)。不純物の重量割合は、それぞれ、NaCl/KCl/CaCl w/w 1/0.5/0.5として設定された。LiCl前駆体の不純物から生じる何らかの副反応が存在するかどうかを評価するために、任意のプラチナ・ホイル作用電極が採用されている。CVの性状から分かるように、すべてのケースにおいて、比較的同様の電位、すなわち0.6VでCo
2+イオンが酸化する。
図1の3つの性状すべては互いに似ており、電気めっき中に電気化学的に活性な不純物が存在しない可能性が高いことを示唆する。約1Vの酸化ピークの強度は、錯体[Co(OH)
6]
4-に対応する可能性があり、何らかの陽イオン障害(cation hindrance)に起因して不純物割合が増加するにつれて減少するように見える。しかしながら、これは、以下に議論されるように、最終生成物に影響を及ぼさない。これらの結果から、共融溶液槽は、Co/Co
2+に対して1.4Vまで、LiCoO
2をめっきする間安定している。我々は、コバルト基準電極に対して1.2Vになるように最適な電圧パルスを発見した。すべての電圧値は、Co/Co
2+擬似基準電極に対して報告される。
図6から分かるように、LiClの様々な不純物範囲から取得されたLiCoO
2電極の放電容量は、約145mAh/gであった同一の値を送出した。電圧性状も互いに似ており、NaCl、KCl、およびCaClの不純物がLiCoO
2に対して悪影響をもたないことを示唆する。
【0032】
別の例では、
図7は、両方の溶液槽がコバルト源として
Co(OH)
2
化学種を含む、様々な割合のLi
2SO
4不純物(98%および85%)を含む2つのKOH/Li
2SO
4溶融塩系のCVを示す。溶液槽温度は350℃に設定され、めっき手順は以下の通りであった。1秒間のオン時間(Co/Co
2+に対する)1.2V電圧パルスの後に、各電圧パルス間の2分間の休止が続く。これにより、イオンが3D骨格SSF作用電極の内孔を拡散させることが保証され、コンフォーマルなLCOめっきにつながる。おおよそ、これらのパルスめっき手順の20サイクルにより、文献の標準値である約145mAh/gの比容量を有する2mAh/cm
2装填された電極がもたらされる。85%純度のLi
2SO
4粉末は、適切な割合のAl
2O
3およびSiO
2を98%純度Li
2SO
4と混合することによって調合された。Al
2O
3およびSiO
2は、文献でLi
2SO
4の一般的な不純物として報告されている。Li
2SO
4は、通常、リチウム-アルミニウム-ケイ酸塩として知られているリシア輝石を含む鉱石を介して精製されるので、これらの不純物が選択された(Extraction of lithium from primary and secondary sources by pre-treatment, leaching and separation:A comprehensive review、Pratima Meshram、B.D.Pandey、T.R.Mankhand、Hydrometallurgy 150(2014年)、192~208を参照)。不純物の重量割合は、それぞれ、Al
2O
3/SiO
2 w/w 1/1として設定された。これら2つの主要な不純物に加えて、Li
2SO
4の中に他の不純物が存在する。これらの不純物はppmレベルであり、以下の元素から構成される:Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Zn、およびCl-。Li
2SO
4前駆体の不純物から生じる副反応が存在するかどうかを評価するために、任意のプラチナ・ホイル作用電極が採用されている。CV性状から分かるように、すべてのケースにおいて、比較的同様の電位、すなわち0.6VでCo
2+イオンが酸化し始める。
図7の3つのCV性状すべては互いに似ており、電気めっき中に電気化学的に活性な不純物が存在しないことを示唆する。これらの結果から、共融溶液槽は、Co/Co
2+に対して1.4Vまで、LiCoO
2ナノ片をめっきする間安定している。我々は、コバルト基準電極に対して1.2Vになるように最適な電圧パルスを発見した。すべての電圧値は、Co/Co
2+擬似基準電極に対して報告される。
図8から分かるように、Li
2SO
4の様々な不純物範囲から取得されたLiCoO
2電極の放電容量は、約145mAh/gである同一の値を送出した。電圧性状も互いに似ており、Al
2O
3およびSiO
2の不純物ならびに他のppmレベルの不純物がLiCoO
2に対して悪影響をもたないことを示唆する。
【0033】
別の例では、
図9は、溶液槽温度が260℃に設定された、様々な純度割合のCo(OH)
2不純物(98%および85%)を含む2つのKOH/LiOH溶融塩系のCVを示し、めっき手順は以下の通りであった。1秒間のオン時間(Co/Co
2+に対する)1.2V電圧パルスの後に、各電圧パルス間の2分間の休止が続く。これにより、イオンが3D骨格SSF作用電極の内孔を拡散させることが保証され、コンフォーマルなLCOめっきにつながる。おおよそ、これらのパルス・めっき手順の20サイクルにより、文献の標準値である約145mAh/gの比容量を有する2mAh/cm
2装填された電極がもたらされる。85%純度Co(OH)
2粉末は、98%Co(OH)
2粉末を、適切な割合の、Co(OH)
2の中でよく見られる不純物CoSO
4およびMg(OH)
2と混合することによって調合された(Processing Considerations for Cobalt Recovery from Congolese Copperbelt Ores、B.Swartz、S.Donegan、S.Amos、Hydrometallurgy Conference 2009年、The Southern African Institute of Mining and Metallurgy、2009年を参照)。CoSO
4不純物およびMg(OH)
2不純物の重量割合は1/1であった。Co(OH)
2前駆体の不純物から生じる何らかの副反応が存在するかどうかを評価するために、任意のプラチナ・ホイル作用電極が採用されている。CV性状から分かるように、すべてのケースにおいて、比較的同様の電位、すなわち0.6VでCo
2+イオンが酸化され始める。
図9の3つのCV性状すべては互いに似ており、電気めっき中に電気化学的に活性な不純物が存在しないことを示唆する。これらの結果から、共融溶液槽は、Co/Co
2+に対して1.4Vまで、LiCoO
2ナノ片をめっきする間安定している。我々は、コバルト基準電極に対して1.2Vになるように最適な電圧パルスを発見した。すべての電圧値は、Co/Co
2+擬似基準電極に対して報告される。
図10から分かるように、Co(OH)
2の様々な不純物範囲から取得されたLiCoO
2電極の放電容量は、約145mAh/gである同一の値を送出した。構造的完全性の指示である電圧性状も互いに似ており、CoSO
4およびMg(OH)
2の不純物ならびに他のppmレベルの不純物がLiCoO
2に対して悪影響をもたないことを示唆する。
【0034】
別の例では、
図11は、溶液槽温度が260℃に設定された、低純度(95%純度)割合のCo(SO)
4を含む2つのKOH/LiOH溶融塩系のCVを示し、めっき手順は以下の通りであった。1秒間のオン時間(Co/Co
2+に対する)1.2V電圧パルスの後に、各電圧パルス間の2分間の休止が続く。これにより、イオンが3D骨格SSF作用電極の内孔を拡散させることが保証され、コンフォーマルなLCOめっきにつながる。おおよそ、これらのパルスめっき手順の20サイクルにより、文献の標準値である約145mAh/gの比容量を有する2mAh/cm
2装填された電極がもたらされる。Co(SO)
4前駆体の不純物から生じる何らかの副反応が存在するかどうかを評価するために、任意のプラチナ・ホイル作用電極が採用されている。CV性状から分かるように、すべてのケースにおいて、比較的同様の電位、すなわち0.6VでCo
2+イオンが酸化され始める。
図11のCV性状は共融溶液槽に基づく
Co(OH)
2
に似ており、CoSO
4もコバルト源として利用され得ることを示唆する。
図12から分かるように、異なるコバルト源、すなわち、
Co(OH)
2
およびCoSO
4から取得されたLiCoO
2電極の放電容量は、約145mAh/gである同一の値を送出した。構造的完全性の指示である電圧性状も互いに似ており、
Co(OH)
2
またはCoSO
4のいずれかを使用することがLiCoO
2に対して悪影響をもたないことを示唆する。