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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】車両用樹脂製バックドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20221209BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
B60J5/04 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020567311
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002220
(87)【国際公開番号】W WO2020152819
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 克利
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230717(JP,A)
【文献】特開2016-094065(JP,A)
【文献】特開2015-182478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329066(US,A1)
【文献】米国特許第05820191(US,A)
【文献】特開2016-107653(JP,A)
【文献】特開2019-010910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接着される樹脂製のインナーパネルと、アウターパネルとを有し、前記インナーパネルの一般板厚が2.0mm以下であり、
インナーパネルにヒンジ及びヒンジリンフォースが取付けられ、車両後部開口の上辺に前記ヒンジを介して揺動可能に連結される車両用樹脂製バックドアであって、
前記ヒンジリンフォースの取付部には、前記ヒンジリンフォースを固定する為のボスが突設され、前記ボスの周囲には放射状リブが設けられており、
前記放射状リブは前記ボスを中心として外側に向かって延びる複数のリブからなり、当該複数のリブのうちの少なくとも1つのリブがバックドアの側壁につながっている、車両用樹脂製バックドア。
【請求項2】
インナーパネルが、繊維強化樹脂組成物を用いて得られた射出成形体である請求項1に記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項3】
インナーパネルが、シートモールディングコンパウンドを用いて得られたSMC成形体であり、一般板厚が1.8mm以下である請求項1に記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項4】
周囲に放射状リブが設けられているボスが、インナーパネルの上辺の左コーナー部及び右コーナー部のうちの一方又は両方のヒンジリンフォースの取付部に設けられている請求項1~3のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項5】
ボス及び放射状リブが、インナーパネルの成形時に同時成形された一体成形部である請求項1~4のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項6】
インナーパネルのベルトラインとピラーの交差部にリブが設けられている請求項1~のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項7】
インナーパネルの下辺の左コーナー部及び右コーナー部のうちの一方又は両方にリブが設けられている請求項1~のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項8】
インナーパネルの外周フランジに玉縁形状部が設けられている請求項1~のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【請求項9】
インナーパネルの下部にリブが設けられている請求項1~8のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に用いる樹脂製バックドアに関し、より詳しくは車両の軽量化の点で非常に有用な樹脂製バックドアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の軽量化を目的として、その車体の樹脂化が進んでいる。ただし従来の金属製車体に比べて、樹脂製車体は軽量であるという利点を有するが、強度が比較的低いという問題がある。車体の後部開口に設けられる樹脂製バックドアについても、その強度に関する様々な検討が為されている。
【0003】
特許文献1~3では、樹脂製バックドアの剛性を向上させる為に、一対のバックドア側部と、一対の連結部と、一対のビート部(V字骨格)を含む左右一対の骨格構造を構成すること、バックドア裾部の外周に環状膨出部と凹入部を設けること、並びに、バックドアの上部、側部及び裾部にリブを設けることが提案されている。そして、このような補強構造を有する樹脂製バックドアは、比較的重いリインフォースを設ける必要がないので、車両の軽量化を図りつつ、効果的に剛性を向上できると説明されている。
【0004】
特許文献4では、バックドアインナーパネルの少なくとも周縁に凹部を設け、そこに異なる角度で(ジグザグ状に)補強リブを配置することが提案されている。そして、このような補強構造を有するバックドアは、ドアインナパネルの周縁のねじれ剛性及び曲げ剛性を向上できると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-012500号公報
【文献】特開2018-012502号公報
【文献】特開2018-158704号公報
【文献】特開2016-107653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1~4の樹脂製バックドアは、軽量化の点においてはまだ十分とは言えない。具体的には、これら樹脂製バックドアの構成は剛性の改善を主たる目的とするものであり、軽量化の点においてはさらなる改善の余地があると考えられる。また、これら樹脂製バックドアの構成による剛性の改善は必ずしも十分ではなく、その結果として、自動車等の車両に実際に使用可能な十分に軽量化された樹脂製バックドアを提供できているとは言えない。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、車両の軽量化の点で非常に有用な樹脂製バックドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、樹脂製バックドアのインナーパネルの一般板厚などの構成を特定することによって車両の軽量化を図ることが非常に効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の事項により特定される。
【0009】
[1]互いに接着される樹脂製のインナーパネルと、アウターパネルとを有し、前記インナーパネルの一般板厚が2.0mm以下であり、
インナーパネルにヒンジ及びヒンジリンフォースが取付けられ、車両後部開口の上辺に前記ヒンジを介して揺動可能に連結される車両用樹脂製バックドアであって、
前記ヒンジリンフォースの取付部には、前記ヒンジリンフォースを固定する為のボスが突設され、前記ボスの周囲には放射状リブが設けられており、
前記放射状リブは前記ボスを中心として外側に向かって延びる複数のリブからなり、当該複数のリブのうちの少なくとも1つのリブがバックドアの側壁につながっている、車両用樹脂製バックドア。
【0010】
[2]インナーパネルが、繊維強化樹脂組成物を用いて得られた射出成形体である[1]に記載の車両用樹脂製バックドア。
【0011】
[3]インナーパネルが、シートモールディングコンパウンドを用いて得られたSMC成形体であり、一般板厚が1.8mm以下である[1]に記載の車両用樹脂製バックドア。
【0013】
]周囲に放射状リブが設けられているボスが、インナーパネルの上辺の左コーナー部及び右コーナー部のうちの一方又は両方のヒンジリンフォースの取付部に設けられている[1]~[3]のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【0014】
]ボス及び放射状リブが、インナーパネルの成形時に同時成形された一体成形部である[1]~[4]のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【0015】
]インナーパネルのベルトラインとピラーの交差部にリブが設けられている[1]~[]のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【0016】
]インナーパネルの下辺の左コーナー部及び右コーナー部のうちの一方又は両方にリブが設けられている[1]~[]のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【0017】
]インナーパネルの外周フランジに玉縁形状部が設けられている[1]~[]のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【0018】
]インナーパネルの下部にリブが設けられている[1]~[8]のいずれかに記載の車両用樹脂製バックドア。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両の軽量化の点で非常に有用な樹脂製バックドアを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の樹脂製バックドアのインナーパネルの一実施形態を示す図である。
図2図1に示したインナーパネル10の上辺の右コーナー部12の部分拡大図である。
図3図2に示したインナーパネル10の上辺の右コーナー部12に、ヒンジリンフォース20を取付けた状態を示す図である。
図4図1に示したインナーパネル10のベルトラインとピラーの交差部(すなわち図1の右側辺の中央部22)の部分拡大図である。
図5図1に示したインナーパネル10の下辺の右コーナー部32の部分拡大図である。
図6】(A)は図1に示したインナーパネル10の外周フランジの一部(すなわち図1の下辺の一部31)の部分拡大図であり、(B)は外周フランジに設けられた玉縁形状部16の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の樹脂製バックドアのインナーパネルの一実施形態を示す図である。車両用樹脂製バックドアは、通常、図1に示すような樹脂製のインナーパネル10及びアウターパネル(不図示)を有し、両者が互いに接着されることによりバックドアが構成される。
【0022】
本発明において、インナーパネル10の一般板厚は2.0mm以下であり、好ましくは0.5~2.0mm、より好ましくは0.5~1.8mmである。
【0023】
本発明において「一般板厚」とは、インナーパネル10の一般的な部分の板厚、すなわちインナーパネル10の大部分を占める箇所の板厚を意味する。したがって、インナーパネル10の各部分のうち、特別な役割を担う為に一般的な部分よりも厚く設計されている特別な部分の板厚は、一般板厚とは言わない。この厚く設計されている特別な部分としては、例えば、リブやボス等の補強用突起部又はボルト用突起部、ヒンジ取付部やコーナー部等の部分の剛性を向上させる為に一般的な部分よりも厚く設計されている部分、成形寸法精度を向上させる為の玉縁形状部が挙げられる。
【0024】
本発明において、一般板厚が2.0mm以下であることは、インナーパネル10全体を片側(室内側又は室外側)から見た場合の投影面積を基準にすると、通常、そのインナーパネル10全体の投影面積の70%以上の部分の板厚が2.0mm以下であることと同等である。そして、インナーパネル10の一般板厚がこのように薄いことによりインナーパネル10が著しく軽量となり、車両の軽量化の点で非常に有用な樹脂製バックドアとなる。
【0025】
図1に示す実施形態において、インナーパネル10の室内側(背面側)の面の上辺の左コーナー部11及び右コーナー部12には、ヒンジ取付部及びその周辺を補強する為のヒンジリンフォースが取付けられる。ヒンジ取付部にはヒンジが取付けられ、このヒンジを介してバックドアを車両後部開口の上辺に連結することによってバックドアが揺動可能になる。すなわち、このように連結されたバックドアは、上側に揺動させることにより開き、下側に揺動させることにより閉じる。
【0026】
図2は、図1に示したインナーパネル10の上辺の右コーナー部12の部分拡大図である。この右コーナー部12のヒンジリンフォースの取付部13に、ヒンジリンフォースが取り付けられる。ヒンジリンフォース(及びヒンジ)は、通常、ボルト等の固定部品により取り付けられる。
【0027】
図2に示す実施形態においては、ヒンジリンフォースの取付部13に複数のボルト穴14を有する。この複数のボルト穴14にボルトを螺入することによって、ヒンジリンフォースがインナーパネル10の室内側の面の上辺の右コーナー部12に固定される。そして、この実施形態においては、複数のボルト穴14うちの2つが、周囲に放射状リブ15aが設けられているボス14a(インナーパネル10の表面から隆起した凸形状を有するボルト穴)である。
【0028】
図2に示すボス14aは、他のボルト穴14と同様にヒンジリンフォースを固定する為のものであると共に、その周囲に放射状リブ15aが設けられている点に特徴がある。インナーパネル10がこのような構成を有するので、バックドアの側壁にかかった力は放射状リブ15aを介してボス14aに伝わり、さらにボス14a及び放射状リブ15aを介してヒンジリンフォースに伝えられる。その結果、ヒンジ取付部及びその周辺のねじれ変形が抑制される。
【0029】
以上の補強構造によれば、ヒンジ取付部及びその周辺を補強する為の補強部材として知られているヒンジリンフォースと、このヒンジリンフォースを固定する為のボスと、このボスの周囲に設けられる放射状リブとが相互に作用することによって、バックドアのねじれ剛性が顕著に向上する。したがってこのような補強構造は、一般板厚が2.0mm以下であるインナーパネル10に対して非常に有効である。
【0030】
図2に示す実施形態においては、放射状リブ15aが設けられているボス14aは2つであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、放射状リブ15aが設けられているボス14aの数は1つでも良いし、3つ以上でも良い。また、ボルト穴14の全てがそのような放射状リブ15aが設けられているボス14aであっても構わない。
【0031】
放射状リブ15aは、図2に示すように、ボス14aを中心として各々外側に伸び出た複数のリブからなる。本発明において、この外側に伸び出たリブの数や具体的なリブ形状は特に限定されない。バックドアの側壁などの所定位置にかかった力を、その中心にあるボス14aに伝えることが可能なリブの数やリブ形状であれば良い。また、ボス形状のボルト穴が複数ある場合、そのうち1つ又は2つ以上のボス形状のボルト穴の周囲に放射状リブ15aを設けても良いし、全てのボス形状のボルト穴の周囲に放射状リブ15aを設けても良い。
【0032】
放射状リブ15aが設けられているボス14aは、インナーパネル10の上辺の左コーナー部11及び右コーナー部12の両方のヒンジリンフォースの取付部13に設けることが好ましいが、その一方のみに設けても構わない。
【0033】
図2に示す実施形態においては、放射状リブ15aが設けられている2つのボス14aの上辺横及び側辺下に、各々2つのリブ15がさらに設けられている。また、2つのボス14aの間にも、1つのリブ15がさらに設けられている。これらリブ15は、ねじれ剛性(及び場合によっては成形寸法精度)の向上に効果的である。したがってこのようなリブ15を追加することは、一般板厚が2.0mm以下であるインナーパネル10に対して非常に有効である。
【0034】
ボス14a、放射状リブ15a及びリブ15は、インナーパネル10の成形時に同時成形された一体成形部であることが、製造の容易性の点から好ましい。その場合、ボス14a、放射状リブ15a及びリブ15を構成する材料は、必然的に、インナーパネル10を構成する樹脂材料と同じ樹脂になる。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば樹脂製バックドアの成形後に、ボス14a、放射状リブ15a及びリブ15を加工して形成しても構わないし、別部品として新たに取付けても構わない。
【0035】
図3は、図2に示したインナーパネル10の上辺の右コーナー部12に、ヒンジリンフォース20を取付けた状態を示す図である。このようにヒンジリンフォース20を取り付けたバックドアは、バックドアのねじれ剛性が顕著に向上する。
【0036】
ヒンジリンフォース20を構成する材料は特に限定されない。ただし、ねじれ剛性等の強度特性の点から金属製のヒンジリンフォースが好ましい。ヒンジリンフォース20の具体的なサイズや形状も特に限定されない。バックドアの種類に応じて様々なサイズや形状の公知のヒンジリンフォースを使用できる。また、先に説明した放射状リブ15が設けられているボス14aの位置や数は、このヒンジリンフォース20の具体的なサイズや形状に応じて適宜決定すれば良い。
【0037】
図4は、図1に示したインナーパネル10のベルトラインとピラーの交差部(すなわち図1の右側辺の中央部22)の部分拡大図である。この図4に示すように、インナーパネル10のベルトラインとピラーの交差部にも複数のリブ15が設けられている。これらリブ15は、ねじれ剛性(及び場合によっては成形寸法精度)の向上に効果的である。したがってこのようなリブ15を追加することもまた、一般板厚が2.0mm以下であるインナーパネル10に対して非常に有効である。
【0038】
図4に示すようなリブ15は、インナーパネル10のベルトラインとピラーの左右の交差部の両方(すなわち図1の右側辺の中央部22及び左側辺の中央部21)に設けることが好ましいが、その一方のみに設けても構わない。また図4に示すようなリブ15も、インナーパネル10の成形時に同時成形された一体成形部であることが、製造の容易性の点から好ましく、その場合のリブ15を構成する材料はインナーパネル10を構成する樹脂材料と同じ樹脂になる。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0039】
図5は、図1に示したインナーパネル10の下辺の右コーナー部32の部分拡大図である。この右コーナー部32にも、複数のリブ15が設けられている。これらリブ15も、ねじれ剛性(及び場合によっては成形寸法精度)の向上に効果的である。したがってこのようなリブ15を追加することもまた、一般板厚が2.0mm以下であるインナーパネル10に対して非常に有効である。
【0040】
図5に示すようなリブ15も、下辺の左コーナー部31及び右コーナー部32の両方に設けることが好ましいが、その一方のみに設けても構わない。また図5に示すようなリブ15も、インナーパネル10の成形時に同時成形された一体成形部であることが、製造の容易性の点から好ましく、その場合のリブ15を構成する材料はインナーパネル10を構成する樹脂材料と同じ樹脂になる。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0041】
図6(A)は、図1に示したインナーパネル10の外周フランジの一部(すなわち図1の下辺の一部41)の部分拡大図であり、図6(B)は、外周フランジに設けられた玉縁形状部16の模式的断面図である。この図6(A)及び(B)に示すように、インナーパネル10の外周フランジには玉縁形状部16が2箇所に設けられている。図6(B)においては、下側の玉縁形状部16はインナーパネル10の外周フランジの下端(インナーパネル10全体から見ると外周端)に設けられ、上側の玉縁形状部16はインナーパネル10の外周フランジの角部の下(インナーパネル10全体から見ると外周端の玉縁形状部よりも内側)に設けられている。下側の玉縁形状部16は上側の玉縁形状部16よりも大きな玉縁形状になっている。また同時に、インナーパネル10の下辺には複数のリブ15が一様に設けられていることが好ましい。とくにインナーパネル10が射出成形体である場合に、下辺にリブを設けることが好ましい。これら玉縁形状部16及びリブ15は、成形寸法精度の向上に効果的である。したがってこのような玉縁形状部16及びリブ15を追加することもまた、一般板厚が2.0mm以下であるインナーパネル10に対して非常に有効である。
【0042】
図6に示すような玉縁形状部16は、外周フランジの全体(すなわち外周フランジの上下辺及び左右側辺)に設けることが好ましいが、その一部のみに設けても構わない。さらに、玉縁形状部16を図6に示すように2箇所に設けることが好ましいが、どちらか1箇所のみに設けても良いし、3箇所以上に設けても良い。玉縁形状部16の大きさは任意であり、図6に示すように各々異なる大きさにしても良いし、同じ大きさにしても良い。図6に示すようなリブ15は、インナーパネル10の下辺全体に一様に設けることが好ましいが、下辺の一部のみに設けても構わない。また図6に示すような玉縁形状部16及びリブ15も、インナーパネル10の成形時に同時成形された一体成形部であることが、製造の容易性の点から好ましく、その場合の玉縁形状部16リブ15を構成する材料はインナーパネル10を構成する樹脂材料と同じ樹脂になる。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0043】
本発明において、インナーパネルを構成する樹脂の種類は特に限定されず、公知の各種樹脂を使用できる。好ましい樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂やエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミド系樹脂が挙げられる。また、ガラス繊維、炭素繊維等の短・長繊維を含有する樹脂を使用しても良い。特に、繊維を含有する繊維強化樹脂組成物が好ましい。その成形法としては、例えば、射出成形法やSMC(シートモールディングコンパウンド)を用いたSMC成形法が挙げられる。本発明におけるインナーパネルは、特に、繊維強化樹脂組成物を用いて得られた射出成形体、又は、シートモールディングコンパウンドを用いて得られたSMC成形体であることが好ましい。
【0044】
本発明においては、インナーパネルの種類によって一般板厚の好適な範囲は異なる。例えば、インナーパネルが繊維強化樹脂組成物を用いて得られた射出成形体である場合は、その一般板厚は2.0mm以下であり、好ましくは0.5~2.0mm、より好ましくは0.5~1.8mmである。一方、インナーパネルがシートモールディングコンパウンドを用いて得られたSMC成形体である場合は、その一般板厚は2.0mm以下であり、好ましくは1.8mm以下であり、より好ましくは0.5~1.8mm、特に好ましくは0.5~1.6mm、最も好ましくは0.5~1.4mmである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の車両用樹脂製バックドアは車両の軽量化の点で有用であり、特に、自動車等の車両に実際に使用可能な点で非常に有用である。
【符号の説明】
【0046】
10 インナーパネル
11 上辺の左コーナー部
12 上辺の右コーナー部
13 ヒンジリンフォースの取付部
14 ボルト穴
14a ボス
15 リブ
15a 放射状リブ
16 玉縁形状部
20 ヒンジリンフォース
21 左側辺の中央部
22 右側辺の中央部
31 下辺の左コーナー部
32 下辺の右コーナー部
41 下辺の一部
図1
図2
図3
図4
図5
図6