(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】超精製DsbA及びDsbC、ならびにそれらの作製及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/245 20060101AFI20221209BHJP
C07K 1/36 20060101ALI20221209BHJP
C07K 16/12 20060101ALI20221209BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20221209BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221209BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20221209BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221209BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20221209BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20221209BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20221209BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20221209BHJP
G01N 30/34 20060101ALI20221209BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20221209BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20221209BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
C07K14/245 ZNA
C07K1/36
C07K16/12
C07K16/40
C12N15/13
C12N9/02
C12P21/02 C
G01N30/88 J
G01N30/02 B
G01N30/06 Z
B01J20/281 X
G01N30/34 E
C12N15/31
C12N15/53
C12P21/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021001186
(22)【出願日】2021-01-07
(62)【分割の表示】P 2017546779の分割
【原出願日】2016-03-04
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2015-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】イー, リリアーナ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リム, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】フォン, クリス ビー.
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535463(JP,A)
【文献】特表平10-508203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0030022(US,A1)
【文献】Biochemistry,1995年,Vol.34,pp.5075-5089
【文献】The EMBO Journal,1994年,Vol.13, No.8,pp.2013-2020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物からの前記DsbCポリペプチドの精製方法であって、
a)ポリエチレンイミン(PEI)を、約0.01%~約1.0%、任意選択的に0.1%、の最終濃度になるまで、前記DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物に添加することと、
b)遠心分離により前記細胞溶解物を浄化することと、
c)前記DsbCポリペプチドを含む前記浄化された細胞溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、
d)前記陰イオン交換クロマトグラフィー材料から前記DsbCポリペプチドを溶出させて、前記DsbCポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を生成することと、
e)前記DsbCポリペプチドを含む前記陰イオン交換溶出物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)材料に適用し、任意選択的に前記陰イオン交換材料を10mM MOPSで洗浄することと、
f)前記HIC材料から前記DsbCポリペプチドを溶出させて、HIC溶出物を生成することと、
g)前記DsbCポリペプチドを含む前記HIC溶出物をサイズ排除クロマトグラフィーに適用することと、
h)前記サイズ排除クロマトグラフィーから、少なくとも95%の単量体DsbCポリペプチドを含む精製されたDsbCを含む画分を収集することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー材料が弱陰イオン交換体であり、好ましくは第四級アミンを含み、より好ましくは架橋アガロースに結合している第四級アミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DsbCが、塩勾配を使用して前記陰イオンクロマトグラフィー材料から溶出され、好ましくは前記塩勾配が直線勾配であり、より好ましくは前記塩勾配が15カラム体積にわたる約0%~約60%の10mM MOPS及び250mM NaCl勾配である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(i)ステップb)の前記DsbCポリペプチドを含む前記浄化された溶解物が、陰イオン交換クロマトグラフィー前に0.22μmのフィルターに通される、
(ii)ステップb)の前記DsbCポリペプチドを含む前記浄化された溶解物が、陰イオン交換クロマトグラフィー前にpH約8.0に調整される、
(iii)前記陰イオン交換溶出物が画分で収集され、任意選択的に疎水性相互作用クロマトグラフィー前にサイズ排除クロマトグラフィーによって分析され、任意選択的に少なくとも約25%のDsbCを含む画分がさらなる精製のために選択される、
(iv)前記陰イオン交換溶出物が、HICクロマトグラフィー前に約0.54M硫酸ナトリウム及び約50mM PO
4(約pH7)を含有するように条件付けられる、
(v)前記DsbCが、水を使用して前記HIC材料から溶出される、または
(vi)前記HIC溶出物が画分で収集され、好ましくはDsbCを含む画分がプールされる
のうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記HIC材料がフェニル部分を含み、好ましくは前記フェニル部分が架橋アガロースに結合している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サイズ排除クロマトグラフィー材料が、架橋アガロースとデキストランとの球状複合体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記DsbCポリペプチドがEscherichia coli DsbCポリペプチドであり、任意選択的に前記DsbCポリペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含むまたは前記DsbCポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約
95%同一である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記DsbCがE. coli細胞で発現され、任意選択的に前記細胞がDsbCの内因性発現を超えるレベルでDsbCを発現するように操作される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
DsbCに特異的に結合する抗体の精製方法であって、抗DsbC抗体を含む組成物を支持材料に結合している、少なくとも95%の単量体DsbCポリペプチドを含む超高純度DsbCを含むクロマトグラフィー材料と接触させることと、前記クロマトグラフィー材料を洗浄して、結合していない化合物を除去することと、前記抗DsbC抗体を溶出させることと、を含み、任意選択的に前記DsbCが請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって調製され、任意選択的に、前記抗体の約1%未満が非DsbC化合物に特異的に結合する、方法。
【請求項10】
試料中のDsbCの定量化方法であって、検出システムを使用して前記試料中のDsbCを検出することと、前記試料中で検出されたDsbCの量を超高純度DsbC参照標準の1つ以上の濃度の検出と比較することと、を含み、前記超高純度DsbC参照標準が少なくとも95%の単量体DsbCポリペプチドを含み、前記超高純度DsbC参照標準が請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって調製され
る、方法。
【請求項11】
前記検出システムが免疫アッセイである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫アッセイが95%DsbCに特異的に結合する抗体を含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
DsbCの存在及び/または分量についての組換えポリペプチド試料の分析方法であって、免疫アッセイを使用して前記試料中のDsbCを検出することと、前記試料中で検出されたDsbCの量を、少なくとも95%の単量体DsbCポリペプチドを含む超高純度DsbC参照標準の1つ以上の濃度の検出と比較することと、を含み、前記超高純度DsbC参照標準が請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって調製され
る、方法。
【請求項14】
前記免疫アッセイが95%DsbCに特異的に結合する抗体を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
95%DsbCに特異的に結合する前記抗体が、ポリクローナル抗体であり、前記免疫アッセイにおいて捕捉抗体として使用される、かつ/または検出抗体として使用される、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
DsbCに特異的に結合する前記抗体が請求項12に記載の方法に従って調製される、請求項
14または
15に記載の方法。
【請求項17】
前記DsbCがE.coli DsbCである、請求項
13~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組換えポリペプチドが宿主細胞、任意選択的にE.coli細胞、さらに任意選択的にDsbCを過剰発現するE.coli細胞内で調製される、請求項
13~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組換えポリペプチド調製物が最終精製産物であり、任意選択的に抗体またはイムノアドヘシンである、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbCの検出のためのキットであって
、試料中のDsbCを定量化するための標準曲線の生成における参照標準として使用するため、かつ/または陽性対照として使用するための、DsbCを含む組成物であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法にしたがって調製され、少なくとも95%の単量体DsbCを含む組成物を含む
、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年3月6日出願の米国仮特許出願第62/129,701号の利益を主張するものであり、この開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:146392026040SeqList.txt、記録日:2016年3月4日、サイズ:9KB)。
【0003】
本発明は、ジスルフィドオキシドレダクターゼA(DsbA)及びジスルフィドオキシドレダクターゼC(DsbC)ポリペプチドの非常に高いレベルの純度での産生方法を提供する。超高純度DsbA及びDsbC、ならびに、例えば、細菌中に産生された生物製剤からのDsbA及びDsbCの除去を示すための免疫アッセイで使用するためのそれらの使用方法も提供される。
【背景技術】
【0004】
発酵条件下における細菌宿主細胞での発現によって大量に産生される真核生物ポリペプチドの産生収率及び品質は、多くの場合、分泌ヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体)の適切な集合及び折り畳みを改善するように修正される。DsbA及びDsbCを含むジスルフィドオキシドレダクターゼ(Dsb)タンパク質等のシャペロンタンパク質の過剰発現により、細菌宿主細胞内で産生された抗体等の異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解が容易になる。DsbAは、強力なチオール酸化剤であり、ジスルフィドの中間供与体は、分泌タンパク質に結合する。DsbCは、ジスルフィド結合の異性化を触媒し、誤って折り畳まれたジスルフィド結合をシャッフルすることができる。Dsbタンパク質は、細菌におけるジスルフィド結合形成及び異性化の一次触媒であり、タンパク質の正しいタンパク質折り畳みを促進する。Chen et al.(1999)J Bio Chem 274:19601-19605、Georgiou et al.,米国特許第6,083,715号、Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号、Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100-17105、Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106-17113、Arie et al.(2001)Mol.Microbiol.39:199-210。
【0005】
ヒト患者への投与に許容される組換え生物薬剤学的タンパク質の場合、製造及び精製プロセスによって生じる残留不純物が最終生物学的産物から除去されることが重要である。これらのプロセス成分としては、培養培地タンパク質、免疫グロブリン親和性リガンド、ウイルス、内毒素、DNA、及び宿主細胞タンパク質が挙げられる。これらの宿主細胞不純物は、プロセス特異的宿主細胞タンパク質(HCP)を含み、HCPは、組換えDNA技術から得られる生物学的産物中のプロセス関連不純物、例えば、過剰発現されてタンパク質折り畳みを容易にするDsbA及びDsbCシャペロンである。HCPが典型的には最終薬物物質中に少量で(目的とする組換えポリペプチド1ミリグラム当たり100万分の1またはナノグラム単位で)存在する一方で、HCPが望ましくなく、それらの量が最小限に抑えられるべきであることが認識されている。例えば、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)は、ヒトにおけるインビボ使用を目的とする生物薬剤が可能な限り外来不純物を含むべきではないことを要求しており、また、HCP等の潜在的不純物の検出及び定量の試験を要求している。加えて、日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(International Conference on Harmonization)(ICH)は、生物工学的/生物学的産物の試験手順及び受け入れ基準についてのガイドラインを提供している。このガイドラインは、HCPの場合、広範囲のタンパク質不純物を検出することができる高感度免疫アッセイが利用されるべきであることを示唆している。免疫グロブリン、DNA、内毒素、ウイルス、及び全HCP、例えば、全E.coliタンパク質(ECP)を検出するためのアッセイ及び試薬が開発されているが、かかるアッセイ及び試薬は、DsbAまたはDsbC等の付属タンパク質を正確に検出しない。典型的には細菌で高レベルでは発現されないが、組換え細菌宿主細胞で過剰発現されて生物学的産物の折り畳み及び分泌を容易にし得るDsbAまたはDsbC等のタンパク質の検出及び定量化に十分な特異度及び感度を有する市販試薬または分析方法は、現在のところ存在しない。
【0006】
DsbA及びDsbCの検出のための試薬、方法、及びキットが、十分な一貫性、感度、特異度、または効率を有する既存のアッセイ及び試薬が存在しない場合に特に必要とされている。本明細書に記載の発明は、上述の必要性をいくらか満たし、他の利点を提供する。
【0007】
特許出願及び公報を含む本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの態様では、本発明は、DsbAポリペプチドを含む細胞溶解物からのDsbAポリペプチドの精製方法であって、a)ポリエチレンイミン(PEI)を、約0.01%~約1.0%の最終濃度になるまで、DsbAポリペプチドを含む細胞溶解物に添加することと、b)遠心分離により細胞溶解物を浄化することと、c)DsbAポリペプチドを含む浄化された細胞溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、d)陰イオン交換クロマトグラフィー材料からDsbAポリペプチドを溶出させて、DsbAポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を生成することと、e)DsbAポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を陽イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、f)陽イオン交換クロマトグラフィー材料からDsbAポリペプチドを溶出させて、精製されたDsbAポリペプチドを含む陽イオン交換溶出物を生成することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、DsbAポリペプチドを含む細胞溶解物は、陰イオン交換クロマトグラフィー前にPEI中に少なくとも約16時間保持される。いくつかの実施形態では、溶解物中のPEIの最終濃度は、約0.1%である。いくつかの実施形態では、DsbAポリペプチド及びPEIを含む溶解物は、pH約7.0である。
【0009】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、強陰イオン交換体である。いくつかの実施形態では、強陰イオン交換体は、第四級アミンを含む。さらなる実施形態では、第四級アミンは、架橋アガロースに結合している。いくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、QSFF陰イオン交換体である。
【0010】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、DsbAは、塩勾配を使用して陰イオンクロマトグラフィー材料から溶出される。さらなる実施形態では、塩勾配は、段階勾配である。いくつかの実施形態では、浄化された溶解物は、pH7.1の10mM MOPSを含む。
【0011】
いくつかの実施形態または上述の実施形態では、DsbAは、以下のステップで陰イオン交換クロマトグラフィー材料から溶出される:約4カラム体積の約15%の約25mM Tris及び約250mM NaCl(約pH9.2)、約4カラム体積の約20%の約25mM Tris及び約250mM NaCl(約pH9.2)、DsbAがカラムから溶出するまで約25%の約25mM Tris及び約250mM NaCl(約pH9.2)。
【0012】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、ステップb)のDsbAポリペプチドを含む浄化された溶解物は、陰イオン交換クロマトグラフィー前に0.22μmのフィルターに通される。いくつかの実施形態では、ステップb)のDsbAポリペプチドを含む浄化された溶解物は、陰イオン交換クロマトグラフィー前にpH約9.0に調整される。
【0013】
いくつかの実施形態では、陰イオン交換溶出物は、画分で収集される。いくつかの実施形態では、画分は、約0.3~約1.0カラム体積(CV)である。いくつかの実施形態では、画分は、陽イオン交換クロマトグラフィー前にサイズ排除クロマトグラフィーによって分析される。いくつかの実施形態では、少なくとも約55%のDsbAを含む画分が、さらなる精製のために選択される。
【0014】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、スルホプロピル部分を含む。いくつかの実施形態では、スルホプロピル部分は、架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)マトリックスに結合している。いくつかの実施形態では、陽イオン交換媒体は、POROS HS 50または等価物である。いくつかの実施形態では、ステップd)の陰イオン交換溶出物は、陽イオン交換クロマトグラフィー前にpH約5.0に調整される。
【0015】
いくつかの実施形態では、DsbAは、塩勾配を使用して陽イオンクロマトグラフィー材料から溶出される。いくつかの実施形態では、陽イオンクロマトグラフィー材料は、5カラム体積の12.5mM MESで洗浄される。いくつかの実施形態では、塩勾配は、15カラム体積にわたる約0%~約60%の12.5mM MES及び1M NaCl勾配である。いくつかの実施形態では、陽イオン交換溶出物は、画分で収集される。いくつかの実施形態では、画分は、サイズ排除クロマトグラフィーによって分析される。いくつかの実施形態では、少なくとも約95%のDsbAを含む画分がプールされる。
【0016】
上述の実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、DsbAポリペプチドは、Escherichia coli DsbAポリペプチドである。いくつかの実施形態では、DsbAポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、DsbAポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約80%同一である。いくつかの実施形態では、DsbAは、細胞で発現される。いくつかの実施形態では、細胞は、原核生物細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、E.coli細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、DsbAの内因性発現を超えるレベルでDsbAを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、微小流動化剤を使用して溶解される。
【0017】
いくつかの態様では、本発明は、上述の実施形態のうちのいずれか1つの方法によって精製されたDsbAポリペプチドを含む組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は、精製されたDsbAポリペプチドを含む組成物であって、少なくとも約95%の単量体DsbAポリペプチドを含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は、精製されたDsbAポリペプチドを含む組成物であって、少なくとも約98%の単量体DsbAポリペプチドを含む、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、約2%未満の低分子量種を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約1%未満の高分子量種を含む。いくつかの実施形態では、単量体DsbAポリペプチドの割合は、サイズ排除クロマトグラフィーによって検出される。いくつかの実施形態では、組成物は、約5%未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、不純物は、天然または所望のDsbAに対して高分子量及び/または低分子量のポリペプチド種である。いくつかの実施形態では、不純物は、E.coliタンパク質(ECP)、DsbA凝集体、DsbA断片、核酸、または細胞培養培地成分のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、DsbAは、1回以上の凍結融解サイクルに対して安定している。いくつかの実施形態では、DsbAは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または10回を超える凍結融解サイクルに対して安定している。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAは、例えば、試験試料中のDsbAの量または濃度を決定するための参照標準として使用される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAは、例えば、あるアッセイにおいて試料中のDsbAの存在及び/または分量を決定するための陽性対照として使用される。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物中のDsbAポリペプチドの純度は、クロマトグラフィー、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはウエスタンブロット分析によって測定される。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbAポリペプチドの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、SEC-HPLC)である。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbAポリペプチドの純度は、蛍光タンパク質染色または銀染色を使用してSDSゲル電気泳動によって測定される。いくつかの実施形態では、組成物中の非DsbAポリペプチドの存在は、ウエスタンブロット分析により示される抗DsbA抗体と免疫反応しないゲル電気泳動によって特定される種の存在によって特定される。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbAポリペプチドの凝集体の存在は、ウエスタンブロット分析による天然DsbAを超える分子量を有する種の存在によって特定される。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbAポリペプチドの断片の存在は、ウエスタンブロット分析による天然DsbA未満の分子量を有する種の存在によって特定される。
【0019】
いくつかの態様では、本発明は、DsbAに特異的に結合する抗体の生成方法であって、動物を上述のように精製された超高純度DsbAに曝露することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本方法は、動物から血清を収集することを含み、血清は、DsbAに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、血清は、DsbAに特異的に結合するポリクローナル抗体を含む。いくつかの態様では、本発明は、血清から単離された1つ以上のモノクローナル抗体を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、ヤギ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ロバ、またはニワトリである。
【0020】
いくつかの態様では、本発明は、DsbAに特異的に結合する抗体の精製方法であって、抗DsbA抗体を含む組成物を支持材料に結合している超高純度DsbAを含むクロマトグラフィー材料と接触させることと、クロマトグラフィー材料を洗浄して、結合していない化合物を除去することと、抗DsbA抗体を溶出させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAは、少なくとも約95%の単量体DsbAポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAは、約5%未満の不純物、約1%未満の不純物、または約0.1%未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製される。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかに従って調製される。いくつかの実施形態では、抗体の1%未満が、非DsbA化合物に特異的に結合する。
【0021】
いくつかの態様では、本発明は、DsbAに特異的に結合するポリクローナル抗体を含む組成物であって、該ポリクローナル抗体が動物を上述のDsbA組成物のうちのいずれかに曝露することによって生成される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ポリクローナル抗体は、動物の血清から収集される。いくつかの実施形態では、本発明は、DsbAに特異的に結合するモノクローナル抗体を含む組成物であって、該モノクローナル抗体が動物を上述のDsbA組成物のうちのいずれかに曝露することによって生成される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、ヤギ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ロバ、またはニワトリである。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbAの存在及び/または分量についての組換えポリペプチド試料の分析方法であって、免疫アッセイを使用して試料中のDsbAを検出することと、試料中で検出されたDsbAの量を超高純度DsbA参照標準の1つ以上の濃度の検出と比較することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、参照標準DsbAのいくつかの異なる濃度が、検出レベルと参照標準中のDsbAの濃度との間の相関関係を確立するために試験される。試験試料中のDsbAの濃度は、試験試料中のDsbAの検出レベルを参照標準中のDsbAの既知の濃度の検出と比較することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%未満の不純物のうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbA参照標準は、本明細書に記載の方法によって調製される。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、約1%未満の非DsbA化合物のうちのいずれかに結合する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。他の実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、免疫アッセイにおいて捕捉抗体として使用される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、検出抗体として使用される。いくつかの実施形態では、検出抗体は、検出剤(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、DsbAは、E.coli DsbAである。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、宿主細胞(例えば、E.coli宿主細胞)内で調製される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、DsbAを過剰発現する(例えば、DsbAを過剰発現したE.coli宿主細胞)。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物であるか、または組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。
【0023】
いくつかの態様では、本発明は、例えば試料中のDsbAの検出のための免疫アッセイ方法であって、試料が組換えポリペプチド調製物または宿主細胞株から得られ、本方法が、(a)DsbAに結合する捕捉抗体を試料と接触させ、それにより試料-捕捉抗体組み合わせ材料を生成することと、(b)DsbAに結合する検出抗体を試料-捕捉抗体組み合わせ材料と接触させることと、(c)試料-捕捉抗体組み合わせ材料に結合している抗体を検出することと、を含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本方法は、標準滴定曲線を使用して結合している検出抗体のレベルを定量化することを含む。さらなる実施形態では、本方法は、結合している検出抗体のレベルに基づいて試料中に存在するDsbAの量を計算することを含む。いくつかの実施形態では、試料中に存在するDsbAの量は、標準滴定曲線を超高純度DsbA組成物で生成された標準滴定曲線と比較することによって決定される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbA組成物は、少なくとも約95%の単量体DsbAポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbA組成物は、約5%未満の不純物、約1%未満の不純物、または約0.1%未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、組成物中の超高純度DsbAは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製される。いくつかの実施形態では、捕捉抗体は、超高純度DsbAに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、検出抗体は、超高純度DsbAに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、DsbAに結合する検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、サンドイッチアッセイである。さらなる実施形態では、サンドイッチアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。いくつかの実施形態では、DsbAは、E.coli DsbAである。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物または宿主細胞株は、E.coliから得られる。いくつかの実施形態では、宿主細胞株は、DsbAを過剰発現する(例えば、DsbAを過剰発現するE.coli宿主細胞)。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物中に含有される組換えポリペプチドは、抗体またはイムノアドヘシンである。いくつかの実施形態では、抗体は、多重特異性抗体、二重特異性抗体、半抗体、または抗体断片である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物の品質アッセイであって、放出アッセイが、薬学的組成物を本明細書に記載の免疫アッセイに供することを含み、免疫アッセイにおけるDsbAの検出が、薬学的組成物が動物への治療的投与に好適ではないことを示す、品質アッセイを提供する。いくつかの実施形態では、約1ppm未満の薬学的組成物中のDsbAの量は、薬学的組成物が動物への投与に好適であることを示す。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、E.coli細胞から調製される。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、DsbAを過剰発現する。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物中に含有される組換えポリペプチドは、抗体またはイムノアドヘシンである。いくつかの実施形態では、抗体は、多重特異性抗体、二重特異性抗体、半抗体、または抗体断片である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0025】
いくつかの態様では、本発明は、DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物からのDsbCポリペプチドの精製方法であって、a)ポリエチレンイミン(PEI)を、約0.01%~約1.0%の最終濃度になるまで、DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物に添加することと、b)遠心分離により細胞溶解物を浄化することと、c)DsbCポリペプチドを含む浄化された細胞溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、d)陰イオン交換クロマトグラフィー材料からDsbCポリペプチドを溶出させて、DsbCポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を生成することと、e)DsbCポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)材料に適用することと、f)HIC材料からDsbCポリペプチドを溶出させて、HIC溶出物を生成することと、g)DsbCポリペプチドを含むHIC溶出物をサイズ排除クロマトグラフィーに適用することと、h)サイズ排除クロマトグラフィーから精製されたDsbCポリペプチドを含む画分を収集することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物は、陰イオン交換クロマトグラフィー前にPEI中に少なくとも約16時間保持される。いくつかの実施形態では、溶解物中のPEIの最終濃度は、約0.1%である。いくつかの実施形態では、DsbCポリペプチド及びPEIを含む溶解物は、pH約7.0である。
【0026】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、弱陰イオン交換体である。なおさらなる実施形態では、弱陰イオン交換体は、第四級アミンを含む。なおさらなる実施形態では、第四級アミンは、架橋アガロースに結合している。
【0027】
いくつかの実施形態では、DsbCは、塩勾配を使用して陽イオンクロマトグラフィー材料から溶出される。さらなる実施形態では、塩勾配は、線形勾配である。いくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、10mM MOPS中で洗浄される。いくつかの実施形態では、塩勾配は、15カラム体積にわたる約0%~約60%の10mM MOPS及び250mM NaCl勾配である。
【0028】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、ステップb)のDsbCポリペプチドを含む浄化された溶解物は、陰イオン交換クロマトグラフィー前に0.22μmのフィルターに通される。いくつかの実施形態では、ステップb)のDsbCポリペプチドを含む浄化された溶解物は、陰イオン交換クロマトグラフィー前にpH約8.0に調整される。
【0029】
いくつかの実施形態では、陰イオン交換溶出物は、画分で収集される。いくつかの実施形態では、画分は、疎水性相互作用クロマトグラフィー前にサイズ排除クロマトグラフィーによって分析される。いくつかの実施形態では、少なくとも約25%のDsbCを含む画分が、さらなる精製のために選択される。
【0030】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、HIC材料は、フェニル部分を含む。さらなる実施形態では、フェニル部分は、架橋アガロースに結合している。いくつかの実施形態では、陰イオン交換溶出物は、HICクロマトグラフィー前に約0.54M硫酸ナトリウム及び約50mM PO4(約pH7)を含有するように条件付けられる。いくつかの実施形態では、DsbCは、水を使用してHIC材料から溶出される。いくつかの実施形態では、HIC溶出物は、画分で収集される。さらなる実施形態では、DsbCを含む画分がプールされる。
【0031】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィー材料は、架橋アガロースとデキストランとの球状複合体を含む。いくつかの実施形態では、サイズ排除貫流物は、画分で収集される。いくつかの実施形態では、HIC溶出物は、サイズ排除クロマトグラフィー前に限外濾過される。いくつかの実施形態では、DsbCを含む画分がプールされる。
【0032】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、DsbCポリペプチドは、Escherichia coli DsbCポリペプチドである。いくつかの実施形態では、DsbCポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbCポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%同一である。
【0033】
上述の実施形態のうちのいくつかの実施形態では、DsbCは、細胞で発現される。いくつかの実施形態では、細胞は、原核生物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、E.coli細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、DsbCの内因性発現を超えるレベルでDsbCを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、微小流動化剤を使用して溶解される。
【0034】
いくつかの態様では、本発明は、上述の実施形態のうちのいずれか1つの方法によって精製されたDsbCポリペプチドを含む組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は、精製されたDsbCポリペプチドを含む組成物であって、少なくとも約95%の単量体DsbCポリペプチドを含む、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約98%の単量体DsbCポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約99%の単量体DsbCポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約99.5%の単量体DsbCポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約2%未満の低分子量種を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約1%未満の高分子量種を含む。いくつかの実施形態では、単量体DsbCポリペプチドの割合は、サイズ排除クロマトグラフィーによって検出される。いくつかの実施形態では、不純物は、天然または所望のDsbCに対して高分子量及び/または低分子量のポリペプチド種である。いくつかの実施形態では、不純物は、E.coliタンパク質(ECP)、DsbC凝集体、DsbC断片、核酸、または細胞培養培地成分のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、DsbCは、1回以上の凍結融解サイクルに対して安定している。いくつかの実施形態では、DsbCは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または10回を超える凍結融解サイクルに対して安定している。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCは、例えば、試験試料中のDsbCの量または濃度を決定するための参照標準として使用される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCは、例えば、あるアッセイにおいて試料中のDsbCの存在及び/または分量を決定するための陽性対照として使用される。
【0035】
いくつかの実施形態では、組成物中のDsbCポリペプチドの純度は、クロマトグラフィー、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動またはウエスタンブロット分析によって測定される。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbCポリペプチドの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、SEC-HPLC)である。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbCポリペプチドの純度は、蛍光タンパク質染色または銀染色を使用してSDSゲル電気泳動によって測定される。いくつかの実施形態では、組成物中の非DsbCポリペプチドの存在は、ウエスタンブロット分析により示される抗DsbC抗体と免疫反応しないゲル電気泳動によって特定される種の存在によって特定される。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbCポリペプチドの凝集体の存在は、ウエスタンブロット分析による天然DsbCを超える分子量を有する種の存在によって特定される。いくつかの実施形態では、組成物中のDsbCポリペプチドの断片の存在は、ウエスタンブロット分析による天然DsbC未満の分子量を有する種の存在によって特定される。
【0036】
いくつかの態様では、本発明は、DsbCに特異的に結合する抗体の生成方法であって、動物を上述のように精製された超高純度DsbCに曝露することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本方法は、動物から血清を収集することを含み、血清は、DsbCに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、血清は、DsbCに特異的に結合するポリクローナル抗体を含む。いくつかの態様では、本発明は、血清から単離された1つ以上のモノクローナル抗体を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、ヤギ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ロバ、またはニワトリである。
【0037】
いくつかの態様では、本発明は、DsbCに特異的に結合する抗体の精製方法であって、抗DsbC抗体を含む組成物を支持材料に結合している超高純度DsbCを含むクロマトグラフィー材料と接触させることと、クロマトグラフィー材料を洗浄して、結合していない化合物を除去することと、抗DsbC抗体を溶出させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCは、約95%を越える単量体DsbCポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCは、約5%未満の不純物、約1%未満の不純物、または約0.1%未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製される。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかに従って調製される。いくつかの実施形態では、抗体の1%未満が、非DsbC化合物に特異的に結合する。
【0038】
いくつかの態様では、本発明は、DsbCに特異的に結合するポリクローナル抗体を含む組成物であって、ポリクローナル抗体が動物を上述のDsbC組成物のうちのいずれかに曝露することによって生成される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ポリクローナル抗体は、動物の血清から収集される。いくつかの実施形態では、本発明は、DsbCに特異的に結合するモノクローナル抗体を含む組成物であって、モノクローナル抗体が動物を上述のDsbC組成物のうちのいずれかに曝露することによって生成される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、ヤギ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ロバ、またはニワトリである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbCの存在及び/または分量についての組換えポリペプチド試料の分析方法であって、免疫アッセイを使用して試料中のDsbCを検出することと、試料中で検出されたDsbCの量を超高純度DsbC参照標準の1つ以上の濃度の検出と比較することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、参照標準DsbCのいくつかの異なる濃度が、検出レベルと参照標準中のDsbCの濃度との間の相関関係を確立するために試験される。試験試料中のDsbCの濃度は、試験試料中のDsbCの検出レベルを参照標準中のDsbCの既知の濃度の検出と比較することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%未満の不純物のうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbC参照標準は、本明細書に記載の方法によって調製される。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、約1%未満の非DsbC化合物のうちのいずれかに結合する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。他の実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、免疫アッセイにおいて捕捉抗体として使用される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、検出抗体として使用される。いくつかの実施形態では、検出抗体は、検出剤(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、DsbCは、E.coli DsbCである。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、宿主細胞(例えば、E.coli宿主細胞)内で調製される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、DsbCを過剰発現する(例えば、DsbCを過剰発現したE.coli宿主細胞)。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物であるか、または組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。
【0040】
いくつかの態様では、本発明は、例えば試料中のDsbCの検出のための免疫アッセイ方法であって、試料が組換えポリペプチド調製物または宿主細胞株から得られ、本方法が、(a)DsbCに結合する捕捉抗体を試料と接触させ、それにより試料-捕捉抗体組み合わせ材料を生成することと、(b)DsbCに結合する検出抗体を試料-捕捉抗体組み合わせ材料と接触させることと、(c)試料-捕捉抗体組み合わせ材料に結合している抗体を検出することと、を含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本方法は、標準滴定曲線を使用して結合している検出抗体のレベルを定量化することを含む。さらなる実施形態では、本方法は、結合している検出抗体のレベルに基づいて試料中に存在するDsbCの量を計算することを含む。いくつかの実施形態では、試料中に存在するDsbCの量は、標準滴定曲線を超高純度DsbC組成物で生成された標準滴定曲線と比較することによって決定される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbC組成物は、少なくとも約95%の単量体DsbCポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbC組成物は、約5%未満の不純物、約1%未満の不純物、または約0.1%未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、組成物中の超高純度DsbCは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製される。いくつかの実施形態では、捕捉抗体は、超高純度DsbCに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、検出抗体は、超高純度DsbCに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、DsbCに結合する検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、サンドイッチアッセイである。さらなる実施形態では、サンドイッチアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。いくつかの実施形態では、DsbCは、E.coli DsbCである。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物または宿主細胞株は、E.coliから得られる。いくつかの実施形態では、宿主細胞株は、DsbCを過剰発現する(例えば、DsbCを過剰発現するE.coli宿主細胞)。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物中に含有される組換えポリペプチドは、抗体またはイムノアドヘシンである。いくつかの実施形態では、抗体は、多重特異性抗体、二重特異性抗体、半抗体、または抗体断片である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物の品質アッセイであって、放出アッセイが、薬学的組成物を本明細書に記載の免疫アッセイに供することを含み、免疫アッセイにおけるDsbCの検出が、薬学的組成物が動物への治療的投与に好適ではないことを示す、品質アッセイを提供する。いくつかの実施形態では、約1ppm未満の薬学的組成物中のDsbCの量は、薬学的組成物が動物への投与に好適であることを示す。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、E.coli細胞から調製される。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、DsbCを過剰発現する。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物中に含有される組換えポリペプチドは、抗体またはイムノアドヘシンである。いくつかの実施形態では、抗体は、多重特異性抗体、二重特異性抗体、半抗体、または抗体断片である。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0042】
いくつかの態様では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbAの検出のためのキットであって、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製された抗DsbA抗体、または本明細書に記載の抗DsbA抗体のうちのいずれかの組成物を含む、キットを提供する。
【0043】
いくつかの態様では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbCの検出のためのキットであって、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製された抗DsbC抗体、または本明細書に記載の抗DsbC抗体のうちのいずれかの組成物を含む、キットを提供する。
【0044】
いくつかの態様では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbA及びDsbCの検出のためのキットであって、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって調製された抗DsbA抗体及び抗DsbC抗体、または本明細書に記載の抗DsbA抗体のうちのいずれか及び抗DsbC抗体のうちのいずれかの組成物を含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、試料中のDsbA及び/またはDsbCを定量するための標準曲線を生成する際の参照標準として使用するための超高純度DsbA及び/またはDsbCをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、試料中のDsbA及び/またはDsbCを検出するためのあるアッセイにおける陽性対照として使用するための超高純度DsbA及び/またはDsbCをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】DsbAの精製のためのQSFF画分のサイズ排除クロマトグラフィーを示すクロマトグラムを示す。上から下に、クロマトグラムは、以下の画分:装填物、画分3、画分7、画分10、画分11、及び画分15を表す。
【
図2】DsbAの精製のためのPoros HSプール画分のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を示す。
【
図3】DsbAの精製のためのPoros装填物及びPorosプール画分のサイズ排除クロマトグラフィーのクロマトグラフ。
【
図4】DsbA Poros HSプール画分のウエスタンブロットを示す。模擬プールは、DsbA分子を主に含有する。
【
図5】DsbCの精製のための画分のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動である。
【
図6A】DsbCの精製のためのDEAE FFクロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。
【
図7】DsbCの精製のためのDEAE-FF画分のSDS-PAGEを示す。
【
図8A】DsbCの精製時のクロマトグラフィー試料の電気泳動を示す。
図8Aは、検出剤として抗DsbC-HRPを使用したウエスタンブロットである。
【
図8B】
図8Bは、クマシーブルーで染色された画分のSDS-PAGEである。
【
図10】DsbCの精製のためのHICクロマトグラフィーのスクリーニングに使用されたSDS-PAGEを示す。
【
図11】DsbCの精製のためのHICクロマトグラフィーのスクリーニングに使用されたSDS-PAGEを示す。
【
図12】DsbCの精製時のHICクロマトグラフィー画分のSDS-PAGEを示す。
【
図13】DsbCのsuperdex 75クロマトグラフィー画分のSDS-PAGEを示す。
【
図14】製剤化されたDsbCの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を示すクロマトグラムを示す。
【
図15】DsbA及びDsbCのSDS-PAGEを示す。非還元試料が左側のカラムに提供されている。還元試料が右側のカラムに提供されている。
【
図16】直接結合ELISAにおける抗DsbC親和性プールの比較を示す。正方形が分画材料(94%主ピーク)を表し、円形が非分画材料(78%主ピーク)を表す。
【
図17】低凝集体Superdex 200 抗DsbC親和性プールを使用したELISAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、DsbA及びDsbCの超高純度組成物の生成方法を提供する。かかる組成物を使用して、DsbAまたはDsbCに高度に特異的な抗体を生成する。本抗体は、DsbA及びDsbCが過剰発現されて組換えポリペプチドの折り畳み及び集合を容易にする細菌発酵培養物内で調製された組換えポリペプチド中のDsbA及びDsbCの検出に有用である。例えば、本抗体は、抗体等の組換えポリペプチドの薬学的製剤の開発における放出アッセイにおいて有用であり得る。
【0047】
I.定義
「検出」という用語は、標的分子の質的測定及び量的測定の両方を含むために本明細書で最も広義に使用される。検出は、単に試料中の標的分子の存在を特定すること、ならびに標的分子が検出可能なレベルで試料中に存在するかを決定することを含む。
【0048】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で同義に使用される。ポリマーは、直鎖状または分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語は、自然にまたは介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、及び当該技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。本明細書で使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、抗体を具体的に包含する。
【0049】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)とは、ポリペプチドがその天然環境下で存在するよりも純粋な形態で存在するように、かつ/または実験室条件下で最初に合成及び/もしくは増幅されたときにポリペプチドの純度が増加することを意味する。純度は、相対用語であり、必ずしも絶対純度を意味しない。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「超高純度DsbA」及び「超高純度DsbC」とは、組成物中のタンパク質の少なくとも約95%が所望のタンパク質、単量体DsbAまたは単量体DsbCであるDsbAまたはDsbC組成物を指す。いくつかの例では、超高純度DsbA及び超高純度DsbCは、少なくとも約96%、97%、98%、99%、または99.5%の単量体DsbAまたは単量体DsbCを含む。いくつかの実施形態では、単量体DsbAまたは単量体DsbCは、SECによって決定される。
【0051】
ポリペプチドに関して使用されるとき、「Dsb」タンパク質とは、細菌ジスルフィドオキシドレダクターゼを指す。細菌ジスルフィドオキシレダクターゼは、酵素のジスルフィド結合ファミリーのメンバーである。Dsbファミリーのメンバーとしては、DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、及びDsbGが挙げられる。DsbAは、ペプチドが細胞のペリプラズム内に出現すると鎖内ジスルフィド結合を形成し、DsbCは、細胞のペリプラズムにおける酸化的タンパク質折り畳み中にジスルフィド結合イソメラーゼとしての機能を果たす。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「DsbA」は、ペリプラズムタンパク質ジスルフィドイソメラーゼIとしても知られ得る。例示的なDsbAタンパク質は、E.coli DsbAである。E.coli DsbAのアミノ酸配列は、NCBI受入番号NP_418297(配列番号1)によって提供されており、E.coli dsbA遺伝子の核酸配列は、NCBI受入番号NC_000913.3またはEcoGene:EG11297(配列番号2)によって提供されている。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「DsbC」は、ペリプラズムタンパク質ジスルフィドイソメラーゼIIとしても知られ得る。例示的なDsbCタンパク質は、E.coli DsbCである。E.coli DsbCのアミノ酸配列は、NCBI受入番号NP_417369.1(配列番号3)によって提供されており、E.coli dsbC遺伝子の核酸配列は、NCBI受入番号NC_000913.3またはEcoGene:EG11070(配列番号4)によって提供されている。
【0054】
「試料」とは、より大量の材料のわずか一部を指す。一般に、本明細書に記載の方法に従う試験は、試料で行われる。試料は、典型的には、例えば、培養された組換えポリペプチド発現細胞株(本明細書で「産物細胞株」とも称される)から、または培養された宿主細胞から得られる組換えポリペプチド調製物から得られる。本明細書で使用されるとき、「宿主細胞」は、目的とする組換えポリペプチドまたは産物の発現のための遺伝子を含有しない。試料は、例えば、採取された細胞培養液から、精製プロセスのある特定のステップでのインプロセスプールから、または最終精製産物から得られ得るが、これらに限定されない。
【0055】
「捕捉抗体」とは、試料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。ある特定の条件下で、捕捉抗体は、標的分子と複合体を形成し、これにより、抗体-標的分子複合体が試料の残りから分離され得る。ある特定の実施形態では、かかる分離は、捕捉抗体に結合しなかった試料中の物質または材料を洗い流すことを含み得る。ある特定の実施形態では、捕捉抗体は、例えば、プレートまたはビーズ等であるが、これらに限定されない固体支持体表面に結合し得る。
【0056】
「検出抗体」とは、試料または試料-捕捉抗体組み合わせ材料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。ある特定の条件下で、検出抗体は、標的分子または標的分子-捕捉抗体複合体と複合体を形成する。検出抗体は、増幅され得る標識を用いて直接、または例えば標識され、かつ検出抗体に結合する別の抗体を使用して間接的にのいずれかで検出されることができる。直接標識の場合、検出抗体は、典型的には、例えば、ビオチンまたはルテニウムを含むが、これらに限定されない、いくつかの手段によって検出可能な部分にコンジュゲートされる。
【0057】
「標識」または「検出可能な標識」という用語は、検出または定量される物質に結合し得る任意の化学基または部分、例えば、抗体を指す。典型的には、標識は、物質の高感度検出または定量化に好適な検出可能な標識である。検出可能な標識の例としては、発光標識、例えば、蛍光、リン光、化学発光、生物発光、及び電気化学発光標識、放射性標識、酵素、粒子、磁性物質、電気活性種等が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、検出可能な標識は、特異的結合反応に関与することによってその存在をシグナル伝達し得る。かかる標識の例としては、ハプテン、抗体、ビオチン、ストレプトアビジン、Hisタグ、ニトリロ三酢酸、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、グルタチオン等が挙げられる。
【0058】
「検出手段」という用語は、あるアッセイで後に読み取られるシグナル報告により検出可能な抗体の存在を検出するために使用される部分または技法を指す。典型的には、検出手段は、マイクロタイタープレート上で捕捉される標識等の固定化標識を増幅する試薬、例えば、アビジンまたはストレプトアビジン-HRPを用いる。
【0059】
「光ルミネセンス」とは、材料がその材料による光(あるいは、電磁放射線とも称される)の吸収後に発光するプロセスを指す。蛍光及びリン光は、2つの異なる種類の光ルミネセンスである。「化学発光」プロセスは、化学反応による発光種の作製を伴う。「電気化学発光」または「ECL」とは、ある種、例えば、ある抗体が、適切な周辺化学環境下でその種の電気化学的エネルギーへの曝露時に発光するプロセスである。
【0060】
目的とする抗原、例えば、宿主細胞タンパク質に「結合する」抗体は、その抗体が、アッセイ試薬、例えば、捕捉抗体または検出抗体として有用であるように十分な親和性で抗原に結合するものである。典型的には、かかる抗体は、他のポリペプチドと有意に交差反応しない。
【0061】
ポリペプチドの標的分子への結合に関して、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドまたはエピトープの「特異的結合」、またはそれに「特異的に結合する」、またはそれに「特異的な」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有しない同様の構造を有する分子である対照分子の結合と比較して標的分子の結合を決定することによって測定され得る。いくつかの実施形態では、ポリクローナル抗体の調製物は、DsbAまたはDsbCに特異的に結合する。例えば、ポリクローナル抗体調製物中の抗体の少なくとも約99%が、所望のポリペプチド(例えば、DsbAまたはDsbC)に結合する。
【0062】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載の方法を含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。
【0063】
本明細書における「活性な」または「活性」とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドの生物学的及び/または免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態(複数可)を指し、「生物学的」活性とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドが有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の天然のまたは天然に存在するポリペプチドによって引き起こされる生物学的機能(阻害または刺激のいずれか)を指し、「免疫学的」活性とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドが有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。
【0064】
「アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子を含む。同様の様式で、「アゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。好適なアゴニストまたはアンタゴニストの分子としては、具体的には、アゴニストまたはアンタゴニストの抗体または抗体断片、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列変異形等が挙げられる。ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストの特定方法は、ポリペプチドを候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子と接触させることと、ポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することとを含み得る。
【0065】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を具体的に包含するが、これは、それらが所望の生物学的活性を呈する場合に限る。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書で抗体と同義に使用される。
【0066】
抗体は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子であり、それらの構造は全て免疫グロブリン折り畳みに基づく。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合して機能的抗体を形成する2つの「重」鎖及び2つの「軽」鎖を有する。各重鎖及び軽鎖はそれ自体、「定常」(C)領域及び「可変」(V)領域を含む。V領域が抗体の抗原結合特異性を決定する一方で、C領域は、構造的支持を提供し、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において機能する。抗体または抗体の抗原結合断片の抗原結合特異性は、特定の抗原に特異的に結合する抗体の能力である。
【0067】
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特徴によって決定される。可変性は、可変ドメインの110アミノ酸長にわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、各々9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域によって分離される15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域によって連結され、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近して一緒に保持され、他方の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0068】
各V領域は、典型的には、3つの相補性決定領域(各々が「超可変ループ」を含む「CDR」)、及び4つのフレームワーク領域を含む。したがって、有意な親和性で特定の所望の抗原に結合するのに必要な最小構造単位である抗体結合部位は、典型的には、それらの3つのCDRと、それらの間に散在する少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域とを含み、適切な立体配座にCDRを保持して提示する。古典的な4つの鎖抗体は、VHドメイン及びVLドメインによって協働して定義される抗原結合部位を有する。ラクダ及びサメ抗体等のある特定の抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成された結合部位に依存する。結合部位がVHとVLとの間の協働の不在下で重鎖のみまたは軽鎖のみによって形成された単一ドメイン操作免疫グロブリンが調製され得る。
【0069】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で大きく異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインでも重鎖可変ドメインでもいずれにおいても超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域によって連結され、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近して一緒に保持され、他方の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0070】
「超可変領域」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VLでは残基約24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)前後、VHでは約31~35B(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)前後(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、ならびに/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、VLでは残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、VHでは26~32(H1)、52A~55(H2)、及び96~101(H3)(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含み得る。
【0071】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0072】
抗体または半抗体との関連での「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230までの伸展と定義される(Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖内S-S結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を同じ位置に入れることによってIgG1配列と整列し得る。
【0073】
Fc領域の「下部ヒンジ領域」は、通常、ヒンジ領域のすぐC末端にある残基の伸展、すなわち、Fc領域の残基233~239と定義される。本発明の前は、FcγR結合は、概して、IgG Fc領域の下部ヒンジ領域におけるアミノ酸残基に起因するものであった。
【0074】
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、IgGの残基約231から約340まで延びる。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合されないという点で特有である。むしろ、2つのN結合分岐状炭水化物鎖がインタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間に介在する。炭水化物がドメイン-ドメイン対合の代替を提供し、CH2ドメインを安定させるのに役立ち得ることが推測されている。Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985)。
【0075】
「CH3ドメイン」は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまで(すなわち、IgGのアミノ酸残基約341からアミノ酸残基約447)の残基の伸展を含む。
【0076】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部分を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、直鎖状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995));一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミノボディ、一本鎖抗体分子;抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、Db-Fc、taDb-Fc、taDb-CH3,(scFV)4-Fc、di-scFv、bi-scFv、またはタンデム(di,tri)-scFvを含むが、これらに限定されない);及び二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTEs)が挙げられる。
【0077】
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して表記される1つの残留「Fc」断片とが産生される。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)とともに全L鎖、及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)2断片が産出され、これは、概して、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片に対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にさらなる数個の残基を有する点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0078】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、密接な非共有結合性会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構成において、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してVH-VL二量体の表面上に抗原結合部位を定義する。集合的に、6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な超可変領域を3つのみ含むFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有するが、全結合部位よりも親和性が低い。
【0079】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加だけFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が少なくとも1つの遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0080】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0081】
抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。インタクトな抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分類され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は周知である。
【0082】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0083】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)内の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結している重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上のこれらの2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディについては、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)により完全に記載されている。
【0084】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を具体的に包含する。かかる多重特異性抗体としては、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体(VHVL単位がポリエピトープ特異性を有する)、2つ以上のVLドメイン及びVHドメインを有する抗体(各VHVL単位が異なるエピトープに結合する)、2つ以上の単一可変ドメインを有する抗体(各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する)、全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三機能的抗体、共有結合している抗体断片または共有結合していない抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」とは、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。一実施形態によれば、多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
【0085】
「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、一般に、単一可変ドメイン(VHまたはVL)が抗原結合を付与し得る抗体を指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要はない。単一ドメイン抗体の例としては、ラクダ科動物(ラマ及びラクダ)ならびに軟骨魚類(例えば、テンジクザメ)由来の抗体、ならびにヒト及びマウス抗体由来の組換え方法から得られる抗体が挙げられる(Nature(1989)341:544-546、Dev Comp Immunol(2006)30:43-56、Trend Biochem Sci(2001)26:230-235、Trends Biotechnol(2003):21:484-490、WO2005/035572、WO03/035694、FEBS Lett(1994)339:285-290、WO00/29004、WO02/051870)。
【0086】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る想定される変異形は除外され、かかる変異形は、一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが混入していないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本明細書に提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)が最初に説明したハイブリドーマ方法によって作製され得るか、または組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)に記載の技法を使用してファージ抗体ライブラリから単離され得る。
【0087】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種由来であるか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種由来であるか、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、及びかかる抗体の断片を具体的に含むが、これは、それらが所望の生物学的活性を呈する場合に限る(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書における目的とするキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、またはカニクイザル等の旧世界ザル)由来の可変ドメイン抗原結合配列、及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
【0088】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(供与体抗体)の超可変領域由来の残基に置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも供与体抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、上述のFR置換(複数可)を除いて、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、かつFRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリンの定常領域、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分を含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。
【0089】
本明細書では、「インタクトな抗体」とは、重及び軽可変ドメイン、ならびにFc領域を含むものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異形であり得る。好ましくは、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0090】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端(VL)に可変ドメインを有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0091】
「ネイキッド抗体」は、細胞毒性部分等の異種分子または放射性標識にコンジュゲートされない(本明細書に定義される)抗体である。
【0092】
本明細書で使用されるとき、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた分子を指す。構造的に、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列(このアミノ酸配列は、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、抗体の定常領域と比較して「異種」である))と、免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えば、IgGのCH2及び/またはCH3配列)との融合物を含む。例示的なアドヘシン配列としては、目的とするタンパク質に結合する受容体またはリガンドの一部分を含む連続したアミノ酸配列が挙げられる。アドヘシン配列は、目的とするタンパク質に結合するが、受容体またはリガンド配列ではない配列(例えば、ペプチボディにおけるアドヘシン配列)でもあり得る。かかるポリペプチド配列は、ファージディスプレイ技法及びハイスループット選別方法を含む様々な方法によって選択または特定され得る。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、またはIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD、またはIgM等の任意の免疫グロブリンから得られ得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異形Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプにより異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体の下方調節が挙げられる。
【0094】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させる分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1の成分の、同種抗原と複合した分子(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))への結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載のCDCアッセイが行われ得る。
【0095】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現については、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464貢の表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載のアッセイ等のインビトロADCCアッセイが行われ得る。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)に開示されるモデル等の動物モデルで評価され得る。
【0096】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を実行する白血球である。いくつかの実施形態では、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。
【0097】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用される。いくつかの実施形態では、FcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、これらの受容体の対立遺伝子変異形及び選択的スプライシング形態を含む、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。今後特定されるものも含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。この用語は、母体IgGsの胎児への移行に関与する新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0098】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」という用語は、同義に使用され、外因性核酸が中に導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が挙げられ、これらは、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一ではないが、変異を含み得る。元来形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0099】
本明細書で使用される「不純物」という用語は、所望のポリペプチド産物とは異なる材料または物質を指す。不純物としては、E.coli宿主細胞タンパク質(ECP)等の宿主細胞物質;浸出タンパク質A;核酸;所望のポリペプチドの変異形、断片、凝集体、または誘導体;別のポリペプチド;内毒素;ウイルス汚染物質;細胞培養培地成分等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、不純物は、例えば、E.coli細胞(例えば、ECP)等の細菌細胞であるが、これらに限定されない細胞由来の宿主細胞タンパク質(HCP)であり得る。いくつかの実施形態では、不純物は、クリップされたDsbAもしくはDsbC及び/またはDsbAもしくはDsbCの凝集体であり得る。
【0100】
「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常は核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0101】
参照ポリペプチド配列に関して「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列同一性最大パーセントを達成するために配列を整列させ、かつ必要に応じてギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。ある特定の実施形態では、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)においてユーザ文書とともに申請されており、これは、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変動しない。
【0102】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される。
100×画分X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性値%は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0103】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、VH及びVL)の可変ドメインは、一般に、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む同様の構造を有する(例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照のこと)。単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体のVHドメインまたはVLドメインを使用して単離されて、それぞれ、相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0104】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及び中に導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0105】
クロマトグラフィーに関して本明細書で使用される「順次」という用語は、第1のクロマトグラフィーに続いて第2のクロマトグラフィーを有することを指す。さらなるステップが第1のクロマトグラフィーと第2のクロマトグラフィーとの間に含まれ得る。
【0106】
クロマトグラフィーに関して本明細書で使用される「連続」という用語は、直接または第1のクロマトグラフィー材料と第2のクロマトグラフィー材料との間の連続流を可能にするいくつかの他の機構を介して接続されたこれらの2つのクロマトグラフィー材料を有することを指す。
【0107】
「装填密度」とは、クロマトグラフィー材料の体積(例えば、リットル)と接触した組成物の量(例えば、グラム)を指す。いくつかの例では、装填密度は、g/Lで表わされる。
【0108】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変動を含む(かつ記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0109】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a(1つの)」、「or(または)」、及び「the(その)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書に記載の本発明の態様及び変形例が、態様及び変形例「consisting(からなる)」及び/または「consisting essentially of(から本質的になる)」を含むことが理解される。
【0110】
II.精製方法
DsbA及びDsbCの超高純度調製物の生成方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、調製物は、約95.0%、約96.0%、約97.0%、約98.0%、約99.0%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%のうちのいずれかを超える純度のDsbAまたはDsbCを含む。いくつかの実施形態では、99%の純度のDsbAまたは99%の純度のDsbCである調製物は、調製物中の材料の1%未満がDsbAまたはDsbCの産生中に存在する細胞または細胞溶解物中に存在する物質(例えば、タンパク質、核酸、脂質等)であることを示す。DsbAまたはDsbCの99%の純度の調製物は、DsbAまたはDsbCの精製または製剤化に使用される緩衝液、塩、または他の賦形剤を含有し得る。
【0111】
A.DsbAの精製
いくつかの態様では、本発明は、DsbAの超高純度調製物の生成方法を提供する。いくつかの実施形態では、DsbAは、E.coli培養物等の細菌発酵培養物でDsbAを過剰発現することによって産生される。発酵後、細菌細胞が収集及び遠心分離される。結果として生じる細胞ペーストが溶解緩衝液(例えば、10mM MOPS(pH7.1))中に再懸濁され、溶解される(例えば、微小流動化剤を使用して)。いくつかの実施形態では、細胞溶解物がポリエチレンイミン(PEI)で条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1.0%のうちのいずれかを超える最終濃度で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約12時間、約16時間、約20時間、または約24時間のうちのいずれかを超える時間で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、約0℃、約4℃、または約21℃のうちのいずれかを超える温度で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、周囲温度(約21℃)で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、PEIで条件付けられた溶解物が遠心分離されて、粒子状物質を除去する。いくつかの実施形態では、PEIで条件付けられた溶解物がクロマトグラフィー前に濾過される。いくつかの実施形態では、PEIで条件付けられた溶解物がクロマトグラフィー前に22μmのフィルターを介して濾過される。
【0112】
いくつかの実施形態では、本方法は、DsbAポリペプチドを含む細胞溶解物からのDsbAポリペプチドの精製方法であって、a)ポリエチレンイミン(PEI)を、約0.01%~約1.0%の最終濃度になるまで、DsbAポリペプチドを含む細胞溶解物に添加することと、b)遠心分離により細胞溶解物を浄化することと、c)DsbAポリペプチドを含む浄化された細胞溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、d)陰イオン交換クロマトグラフィー材料からDsbAポリペプチドを溶出させて、DsbAポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を生成することと、e)DsbAポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を陽イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、f)陽イオン交換クロマトグラフィー材料からDsbAポリペプチドを溶出させて、精製されたDsbAポリペプチドを含む陽イオン交換溶出物を生成することと、を含む、方法を含む。
【0113】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、正に荷電しており、かつ固相を通るか、または通過した水溶液中の陰イオンとの交換のために遊離陰イオンを有する固相である。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、膜、モノリス、または樹脂であり得る。一実施形態では、陰イオン交換材料は、樹脂であり得る。いくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、または第四級アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基、またはジエチルアミノアエチル(diethylaminoaethyl)官能基を含み得る。上述のいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムである。上述のいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー膜である。
【0114】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、負に荷電しており、かつ固相を通るか、または通過した水溶液中の陽イオンとの交換のために遊離陽イオンを有する固相である。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、膜、モノリス、または樹脂であり得る。いくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、樹脂であり得る。陽イオン交換材料は、例えば、スルホン酸塩、カルボキシル、カルボキシメチルスルホン酸、スルホイソブチル、スルホエチル、カルボキシル、スルホプロピル、スルホニル、スルホキシエチル、またはオルトリン酸塩であるが、これらに限定されないカルボン酸官能基またはスルホン酸官能基を含み得る。上述のいくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムである。上述のいくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー膜である。本発明のいくつかの実施形態では、クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料ではない。
【0115】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、イオン交換材料は、従来のクロマトグラフィー材料または対流クロマトグラフィー材料を利用し得る。従来のクロマトグラフィー材料としては、例えば、灌流材料(例えば、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂)及び拡散材料(例えば、架橋アガロース樹脂)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂は、Poros樹脂であり得る。いくつかの実施形態では、架橋アガロース樹脂は、スルホプロピル-Sepharose(登録商標)Fast Flow(「SPSFF」)樹脂であり得る。対流クロマトグラフィー材料は、膜(例えば、ポリエーテルスルホン)またはモノリス材料(例えば、架橋ポリマー)であり得る。ポリエーテルスルホン膜は、Mustangであり得る。架橋ポリマーモノリス材料は、架橋ポリ(グリシジルメタクリレート-コ-エチレンジメタクリレート)であり得る。
【0116】
陰イオン交換材料の例は、当該技術分野で既知であり、それらとしては、Poros HQ 50、Poros PI 50、Poros D、Mustang Q、Q Sepharose(登録商標)FF(QSFF)、及びDEAE Sepharose(登録商標)、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、弱陰イオン交換材料、例えばDEAEである。他の実施形態では、陰イオン交換材料は、強陰イオン交換材料、例えば、QSFFである。
【0117】
陽イオン交換材料の例は、当該技術分野で既知であり、それらとしては、Mustang S、Sartobind S、SO3 Monolith、S Ceramic HyperD、Poros XS、Poros HS 50、Poros HS 20、SPSFF、SP-Sepharose(登録商標)XL(SPXL)、CM Sepharose(登録商標)Fast Flow、Capto S、Fractogel Se HiCap、Fractogel SO3、もしくはFractogel COO、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、Poros HS 50である。いくつかの実施形態では、Poros HS樹脂は、Poros HS 50μm粒子またはPoros HS 20μm粒子であり得る。いくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、弱陽イオン交換材料、例えば、CM sepharose(登録商標)またはその等価物である。他の実施形態では、陽イオン交換材料は、強陽イオン交換材料、例えば、POROS HS 50またはその等価物である。
【0118】
DsbAを含む組成物のクロマトグラフィー材料への装填は、不純物からのDsbA産物の分離のために最適化され得る。いくつかの実施形態では、組成物のクロマトグラフィー材料への装填は、不純物のクロマトグラフィー材料への結合のために最適化される。例えば、組成物は、装填緩衝液の伝導度を一定に保ちながら、いくつかの異なるpHの装填緩衝液中のクロマトグラフィー材料、例えば、クロマトグラフィーカラムに装填され得る。あるいは、組成物は、装填緩衝液のpHを一定に保ちながら、いくつかの異なる伝導度の装填緩衝液中のクロマトグラフィー材料に装填され得る。組成物をクロマトグラフィー材料に装填し、クロマトグラフィー材料から産物をプール画分中に溶出させた時点で、プール画分中の汚染物質の量は、所与のpHまたは伝導度での産物の不純物からの分離に関する情報を提供する。
【0119】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、DsbAを含む組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料の約10mg/mL、約9mg/mL、約8mg/mL、約7mg/mL、約6mg/mL、約5mg/mL、約4mg/mL、約3mg/mL、約2mg/mL、または約1mg/mLのうちのいずれか以下のポリペプチドの装填密度で陰イオン交換クロマトグラフィー材料に装填される。組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料の約1mg/mL~約2mg/mL、約2mg/mL~約3mg/mL、約3mg/mL~約4mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約5mg/mL~約6mg/mL、約6mg/mL~約7mg/mL、約7mg/mL~約8mg/mL、約8mg/mL~約9mg/mL、または約9mg/mL~約10mg/mLのうちのいずれかのポリペプチドの装填密度で陰イオンクロマトグラフィー材料に装填され得る。いくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、アガロースに架橋した第四級アミン、例えば、QSFFである。
【0120】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、DsbAを含む組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料の約10mg/mL、約9mg/mL、約8mg/mL、約7mg/mL、約6mg/mL、約5mg/mL、約4mg/mL、約3mg/mL、約2mg/mL、または約1mg/mLのうちのいずれか以下のポリペプチドの装填密度で陽イオン交換クロマトグラフィー材料に装填される。組成物は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料の約1mg/mL~約2mg/mL、約2mg/mL~約3mg/mL、約3mg/mL~約4mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約5mg/mL~約6mg/mL、約6mg/mL~約7mg/mL、約7mg/mL~約8mg/mL、約8mg/mL~約9mg/mL、または約9mg/mL~約10mg/mLのうちのいずれかのポリペプチドの装填密度で陽イオンクロマトグラフィー材料に装填され得る。いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)マトリックスに架橋したスルホプロピル部分、例えば、POROS HS 50またはその等価物である。
【0121】
クロマトグラフィー材料からのDsbAの溶出は、最小不純物及び最小プール体積でのDsbAの産出のために最適化され得る。例えば、組成物は、装填緩衝液中のクロマトグラフィー材料、例えば、クロマトグラフィーカラムに装填され得る。装填が完了した時点で、産物は、溶出緩衝液の伝導度を一定に保ちながら、いくつかの異なるpHの緩衝液で溶出される。あるいは、産物は、溶出緩衝液のpHを一定に保ちながら、いくつかの異なる伝導度の溶出緩衝液中のクロマトグラフィー材料から溶出され得る。クロマトグラフィー材料からの産物の溶出が完了した時点で、プール画分中の汚染物質の量は、所与のpHまたは伝導度での産物の不純物からの分離に関する情報を提供する。多数の画分(例えば、8カラム体積)における産物の溶出は、溶出プロファイルの「テーリング」を示す。本発明のいくつかの実施形態では、溶出のテーリングが最小限に抑えられる。
【0122】
例えば、緩衝液の所望のpH、緩衝液の所望の伝導度、目的とするタンパク質の特徴、及び精製方法に応じて用いられ得る様々な緩衝液。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、緩衝液を使用することを含む。緩衝液は、装填緩衝液、平衡化緩衝液、または洗浄緩衝液であり得る。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液のうちの1つ以上が同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液は異なる。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、緩衝液は塩を含む。装填緩衝液は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、装填緩衝液は、塩化ナトリウム緩衝液である。いくつかの実施形態では、装填緩衝液は、酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0123】
装填物とは、本明細書で使用されるとき、クロマトグラフィー材料に装填された組成物である。装填緩衝液は、DsbAを含む組成物をクロマトグラフィー材料に装填するために使用される緩衝液である。クロマトグラフィー材料は、精製される組成物の装填前に平衡化緩衝液で平衡化され得る。いくつかの例では、洗浄緩衝液は、組成物をクロマトグラフィー材料に装填した後、かつ目的とするポリペプチドを固相から溶出させる前に使用される。
【0124】
溶出とは、本明細書で使用されるとき、クロマトグラフィー材料からの産物、例えば、DsbAの除去である。溶出緩衝液は、クロマトグラフィー材料から目的とするポリペプチドまたは他の産物を溶出させるために使用される緩衝液である。多くの場合、溶出緩衝液は、装填緩衝液とは異なる物理的特徴を有する。例えば、溶出緩衝液は、装填緩衝液とは異なる伝導度または装填緩衝液とは異なるpHを有し得る。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも低い伝導度を有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも高い伝導度を有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも低いpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも高いpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液とは異なる伝導度及び異なるpHを有する。溶出緩衝液は、より高いまたはより低い伝導度及びより高いまたはより低いpHの任意の組み合わせを有し得る。
【0125】
伝導度とは、2つの電極間に電流を伝導する水溶液の能力を指す。溶液中で、電流は、イオン輸送により流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量が増加すると、この溶液は、より高い伝導度を有するようになる。伝導度の尺度の基本単位は、ジーメンス(またはmho)、mho(mS/cm)であり、様々なモデルのOrion伝導度計等の伝導度計を使用して測定され得る。電解質伝導度が電流を搬送する溶液中のイオンの能力であるため、溶液の伝導度は、その中のイオンの濃度を変化させることによって変更され得る。例えば、溶液中の緩衝剤の濃度及び/または塩(例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、または塩化カリウム)の濃度は、所望の伝導度を達成するために変更され得る。好ましくは、様々な緩衝液の塩濃度は、所望の伝導度を達成するために修正される。
【0126】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、装填緩衝液は、約4.0mS/cm、約4.5mS/cm、約5.0mS/cm、約5.5mS/cm、約6.0mS/cm、約6.5mS/cm、約7.0mS/cm、約7.5mS/cm、約8.0mS/cm、約8.5mS/cm、約9.0mS/cm、約9.5mS/cm、または約10mS/cmのうちのいずれかを超える伝導度を有する。伝導度は、約4mS/cm~約17mS/cm、約4mS/cm~約10mS/cm、約4mS/cm~約7mS/cm、約5mS/cm~約17mS/cm、約5mS/cm~約10mS/cm、または約5mS/cm~約7mS/cmのうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、伝導度は、約4mS/cm、約4.5mS/cm、約5.0mS/cm、約5.5mS/cm、約6.0mS/cm、約6.5mS/cm、約7.0mS/cm、約7.5mS/cm、約8.0mS/cm、約8.5mS/cm、約9.0mS/cm、約9.5mS/cm、または約10mS/cmのうちのいずれかである。一態様では、伝導度は、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液の伝導度である。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び洗浄緩衝液のうちの1つ以上の伝導度が同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液の伝導度は、洗浄緩衝液及び/または平衡化緩衝液の伝導度とは異なる。
【0127】
いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液の伝導度を超える伝導度を有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、約5mS/cm、約10mS/cm、約15mS/cm、約20mS/cm、約25mS/cm、約30mS/cm、約35mS/cm、約40mS/cm、約45mS/cm、約50mS/cm、約55mS/cm、約60mS/cm、約65mS/cm、約70mS/cm、約75mS/cm、約80mS/cm、約85mS/cm、約90mS/cm、約95mS/cm、または約100mS/cmのうちのいずれかを超える伝導度を有する。いくつかの実施形態では、上述の溶出緩衝液は、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィーに使用される。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液の伝導度は、溶出緩衝液の塩濃度を変更することによって変更される。
【0128】
上述の実施形態のうちのいずれかのいくつかの態様では、溶出緩衝液の伝導度は、段階勾配または線形勾配により装填物及び/または洗浄緩衝液から均一濃度で変化したものである。
【0129】
いくつかの実施形態では、DsbAは、以下のステップで陰イオン交換クロマトグラフィー材料から溶出される:1)約4カラム体積の約15%の約25mM Tris及び約250mM NaCl(約pH9.2)、2)約4カラム体積の約20%の約25mM Tris及び約250mM NaCl(約pH9.2)、3)DsbAがカラムから溶出するまで約25%の約25mM Tris及び約250mM NaCl(約pH9.2)。いくつかの実施形態では、DsbAは、15カラム体積にわたる約0%,~約60%の12mM MES及び1M NaClの塩勾配を使用して陽イオン交換クロマトグラフィーから溶出される。
【0130】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換装填緩衝液は、約10、約9、約8、約7、約6、または約5のうちのいずれか未満のpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、装填緩衝液は、約4、約5、約6、約7、約8、または約9のうちのいずれかを超えるpHを有する。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液のうちの1つ以上のpHが同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液のpHは、平衡化緩衝液及び/または洗浄緩衝液のpHとは異なる。
【0131】
いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液のpH未満のpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、約8、約7、約6、約5、約4、約3、または約2のうちのいずれか未満のpHを有する。溶出緩衝液のpHは、約4~約9、約4~約8、約4~約7、約4~約6、約4~約5、約5~約9、約5~約8、約5~約7、約5~約6、約6~約9、約6~約8、約6~約7のうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液のpHは、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7/0、約7.5、約8.0、約8.5、または約9.0のうちのいずれかである。
【0132】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陽イオン交換装填緩衝液は、約4、約5、約6、または約7のうちのいずれか未満のpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、装填緩衝液は、約4、約5、約6、または約7のうちのいずれかを超えるpHを有する。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液のうちの1つ以上のpHが同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液のpHは、平衡化緩衝液及び/または洗浄緩衝液のpHとは異なる。
【0133】
いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液のpHを超えるpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、約5、約6、約7、約8、または約9のうちのいずれかを超えるpHを有する。溶出緩衝液のpHは、約4~約9、約5~約9、約6~約9、約7~約9、約8~約9、約4~約8、約5~約8、約6~約8、約7~約8、約4~約7、約5~約7、及び約6~約7のうちのいずれかであり得る。
【0134】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、流量は、約50CV/時間、約40CV/時間、または約30CV/時間のうちのいずれか未満である。流量は、約5CV/時間~約50CV/時間、約10CV/時間~約40CV/時間、または約18CV/時間~約36CV/時間のうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、流量は、約9CV/時間、約18CV/時間、約25CV/時間、約30CV/時間、約36CV/時間、または約40CV/時間のうちのいずれかである。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、流量は、約200cm/時間、約150cm/時間、約100cm/時間、約75cm/時間、または約50cm/時間のうちのいずれか未満である。流量は、約25cm/時間~約200cm/時間、約25cm/時間~約175cm/時間、約25cm/時間~約150cm/時間、約25cm/時間~約100cm/時間、約50cm/時間~約100cm/時間、または約65cm/時間~約85cm/時間のうちのいずれかであり得る。
【0135】
床高さとは、使用されるクロマトグラフィー材料の高さである。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、床高さは、約3cm、約10cm、約15cm、約20cm、約25cm、約30cm、約35cm、約40cm、約45cm、または約50cmのうちのいずれかを超える。床高さは、約3cm~約50cm、約5cm~約35cm、約3cm~約35cm、または約5cm~約50cmのうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、床高さは、装填物中のポリペプチドまたは不純物の量に基づいて決定される。
【0136】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーは、約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、40mL、50mL、75mL、100mL、または200mLを超える体積を有するカラム容器内で行われる。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態では、画分は、クロマトグラフィーから収集される。いくつかの実施形態では、収集される画分は、約0.01CV、0.02CV、0.03CV、0.04CV、0.05CV、0.06CV、0.07CV、0.08CV、0.09CV、0.1CV、0.2CV、0.3CV、0.4CV、0.5CV、0.6CV、0.7CV、0.8CV、0.9CV、1.0CV、2.0CV、3.0CV、4.0CV、5.0CV、6.0CV、7.0CV、8.0CV、9.0CV、または10.0CVを超える。いくつかの実施形態では、産物、例えば、ポリペプチドを含有する画分がプールされる。いくつかの実施形態では、装填画分及び溶出画分からのポリペプチドを含有する画分がプールされる。画分中のポリペプチドの量は、当業者によって決定され得、例えば、画分中のポリペプチドの量は、紫外分光法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、検出可能なポリペプチド断片を含有する画分がプールされる。いくつかの実施形態では、画分中のDsbAの存在及び純度は、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。
【0138】
例示的な実施形態
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbAの超高純度調製物を産生するための以下の例示的ではあるが非限定的な方法を提供する。DsbAは、E.coliで発現される。細胞ペーストが10mM MOPS(pH7.1)中に懸濁され(50g細胞ペースト/1L)、懸濁液が均質になるまで混合される。細胞溶解が、室内圧力(約7000psi)での3回通過の微小流動化剤110Fを使用して行われる。均等物が(10%PEIストック溶液を使用して)0.1%PEIになるように条件付けられ、周囲温度(約21℃)で30分間混合される。懸濁液が、「GSA」回転子を使用してSorval RC-5B+遠心分離機内で、8500rpmで30分間遠心分離される。遠心分離物が収集され、0.22umのDuraporeフィルターを介して濾過される。
【0139】
(a)Q-Sepharose(登録商標)ステップ
細胞溶解物が結合及び溶出モードでQ-Sepharose(登録商標)FF(GE)に適用される。カラム高さは、約20~30cmであり、流量は、150cm/時間であり、装填密度は、6mg/mL以下である。カラムは、25mM Tris、1M NaCl(pH9.2、86mS/cm、4カラム体積(CV))で事前平衡化される。カラムは、25mM Tris(pH9.1、0.3mS/cm、4CV)で平衡化される。DsbAを含む遠心分離物が水(1:1)で希釈され、その後、pHが1.5M Tris塩基(pH9.0、伝導度約1.0mS/cm、6mg/mL以下)で9.0に調整される。その後、カラムが6CVの平衡化緩衝液で洗浄される。DsbAが、塩濃度の段階勾配増加を使用してカラムから溶出される。緩衝液Bは、25mM Tris、250mM NaCl、pH9.2、26mS/cmである。DsbAは、まず4CVの15%緩衝液B、その後、4CVの20%緩衝液B、最後に溶出相の残りの25%緩衝液Bを適用することによってカラムから溶出される。これらのプールがSECによってアッセイされ、最大量のDsbAを含有する画分に基づいてプールされる。
【0140】
(b)POROS HS 50ステップ
その後、プールされたQSFF画分が結合及び溶出モードでPOROS HS 50カラムに適用される。QSFF画分が2.0M酢酸でpH5.0に調整される。カラム高さは、約20~30cmであり、流量は、約150cm/時間であり、装填密度は、約6mg/mL以下である。POROS HS 50カラムは、12.5mM MES(pH5.5、0.4mS/cm、4CV)で最初に平衡化される。2M酢酸でpH5.0に調整され、その後、水(1:2)で希釈されたQSFFプール(pH5.0、0.4mS/cm)が、POROS HS 50カラムに装填される。その後、カラムが5CVの平衡化緩衝液で洗浄される。DsbAが塩勾配でカラムから溶出される。緩衝液Bは、12.5mM MES、250mM NaCl pH5.5、25mS/cmである。勾配は、15CVにわたる0~60%Bである。1CVの画分がピーク収集される。画分がSDS-PAGEゲル及びSECによって分析され、純度に基づいてプールされる。POROSプールが、Sorval RC-3B 遠心分離機を用いて3000rpmで約30分間遠心分離される10kDのCentricon膜(Millipore)を使用して約3.0mg/mLに濃縮される。
【0141】
B.DsbCの精製
いくつかの態様では、本発明は、DsbCの超高純度調製物の生成方法を提供する。いくつかの実施形態では、DsbCは、E.coli培養物等の細菌発酵培養物でDsbCを過剰発現することによって産生される。発酵後、細菌細胞が収集及び遠心分離される。結果として生じる細胞ペーストが溶解緩衝液(例えば、10mM MOPS(pH7.1))中に再懸濁され、溶解される(例えば、微小流動化剤を使用して)。いくつかの実施形態では、細胞溶解物がポリエチレンイミン(PEI)で条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1.0%のうちのいずれかを超える最終濃度で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約12時間、約16時間、約20時間、または約24時間のうちのいずれかを超える時間で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、約0℃、約4℃、または約21℃のうちのいずれかを超える温度で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、周囲温度(約21℃)で、PEIで条件付けられる。いくつかの実施形態では、PEIで条件付けられた溶解物が遠心分離されて、粒子状物質を除去する。いくつかの実施形態では、PEIで条件付けられた溶解物がクロマトグラフィー前に濾過される。いくつかの実施形態では、PEIで条件付けられた溶解物がクロマトグラフィー前に22μmのフィルターを介して濾過される。
【0142】
いくつかの実施形態では、本方法は、DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物からのDsbCポリペプチドの精製方法であって、a)ポリエチレンイミン(PEI)を、約0.01%~約1.0%の最終濃度になるまで、DsbCポリペプチドを含む細胞溶解物に添加することと、b)遠心分離により細胞溶解物を浄化することと、c)DsbCポリペプチドを含む浄化された細胞溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィー材料に適用することと、d)陰イオン交換クロマトグラフィー材料からDsbCポリペプチドを溶出させて、DsbCポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を生成することと、e)DsbCポリペプチドを含む陰イオン交換溶出物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)材料に適用することと、f)HIC材料からDsbCポリペプチドを溶出させて、HIC溶出物を生成することと、g)DsbCポリペプチドを含むHIC溶出物をサイズ排除クロマトグラフィーに適用することと、h)サイズ排除クロマトグラフィーから精製されたDsbCポリペプチドを含む画分を収集することと、を含む、方法を含む。
【0143】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、正に荷電しており、かつ固相を通るか、または通過した水溶液中の陰イオンとの交換のために遊離陰イオンを有する固相である。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、膜、モノリス、または樹脂であり得る。一実施形態では、陰イオン交換材料は、樹脂であり得る。いくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、または第四級アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基、またはジエチルアミノアエチル(diethylaminoaethyl)官能基を含み得る。上述のいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムである。上述のいくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー膜である。
【0144】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、従来のクロマトグラフィー材料または対流クロマトグラフィー材料を利用し得る。従来のクロマトグラフィー材料としては、例えば、灌流材料(例えば、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂)及び拡散材料(例えば、架橋アガロース樹脂)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂は、Poros樹脂であり得る。いくつかの実施形態では、架橋アガロース樹脂は、スルホプロピル-Sepharose(登録商標)Fast Flow(「SPSFF」)樹脂であり得る。対流クロマトグラフィー材料は、膜(例えば、ポリエーテルスルホン)またはモノリス材料(例えば、架橋ポリマー)であり得る。ポリエーテルスルホン膜は、Mustangであり得る。架橋ポリマーモノリス材料は、架橋ポリ(グリシジルメタクリレート-コ-エチレンジメタクリレート)であり得る。
【0145】
陰イオン交換材料の例は、当該技術分野で既知であり、それらとしては、Poros HQ 50、Poros PI 50、Poros D、Mustang Q、Q Sepharose(登録商標)FF(QSFF)、及びDEAE Sepharose(登録商標)、またはそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、陰イオン交換材料は、弱陰イオン交換材料、例えばDEAEである。他の実施形態では、陰イオン交換材料は、強陰イオン交換材料、例えば、QSFFである。いくつかの実施形態では、DsbCの精製に使用される陰イオン交換材料は、弱陰イオン交換材料である。いくつかの実施形態では、弱陰イオン交換材料は、第四級アミンを含む。いくつかの実施形態では、第四級アミンは、架橋アガロースに結合している。いくつかの実施形態では、DsbCの精製に使用される陰イオン交換材料は、DEAE Sepharose(登録商標)である。
【0146】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、生体分子を疎水性に従って分離する液体クロマトグラフィー技法である。HICクロマトグラフィー材料の例としては、Toyopearl Hexyl 650、Toyopear Butyl 650、Toyopearl Phenyl 650、Toyopearl Ether 650、Source、Resource、Sepharose(登録商標)Hi-Trap、Octyl Sepharose(登録商標)、Phenyl Sepharose(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。上述のいくつかの実施形態では、HICクロマトグラフィー材料は、HICクロマトグラフィーカラムである。上述のいくつかの実施形態では、HICクロマトグラフィー材料は、HICクロマトグラフィー膜である。いくつかの実施形態では、HIC材料は、フェニル部分を含む。いくつかの実施形態では、フェニル部分は、架橋アガロースに結合している。いくつかの実施形態では、DsbCの精製に使用されるHIC材料は、Phenyl Sepharose(登録商標)である。
【0147】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、生体分子をそれらのサイズ及び形状に従って分離する液体クロマトグラフィー技法である。サイズ排除クロマトグラフィー材料には、特定の重量範囲の効率的な分子分離のために様々な孔径のものがある。サイズ排除クロマトグラフィー材料の例としては、デキストラン、多孔質アガロース粒子、架橋アガロース、架橋アガロース及びデキストラン、ならびに架橋アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。サイズ排除クロマトグラフィー材料の例としては、Sephadex、Superdex、Sephacryl、TSKgel、及びBio-Gelが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Superdex 75サイズ排除クロマトグラフィーが、DsbCの精製に使用される。
【0148】
DsbCを含む組成物のクロマトグラフィー材料への装填は、不純物からのDsbC産物の分離のために最適化され得る。いくつかの実施形態では、組成物のクロマトグラフィー材料への装填は、不純物のクロマトグラフィー材料への結合のために最適化される。例えば、組成物は、装填緩衝液の伝導度を一定に保ちながら、いくつかの異なるpHの装填緩衝液中のクロマトグラフィー材料、例えば、クロマトグラフィーカラムに装填され得る。あるいは、組成物は、装填緩衝液のpHを一定に保ちながら、いくつかの異なる伝導度の装填緩衝液中のクロマトグラフィー材料に装填され得る。組成物をクロマトグラフィー材料に装填し、クロマトグラフィー材料から産物をプール画分中に溶出させた時点で、プール画分中の汚染物質の量は、所与のpHまたは伝導度での産物の不純物からの分離に関する情報を提供する。
【0149】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、DsbCを含む組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料の約10mg/mL、約9mg/mL、約8mg/mL、約7mg/mL、約6mg/mL、約5mg/mL、約4mg/mL、約3mg/mL、約2mg/mL、または約1mg/mLのうちのいずれか以下のポリペプチドの装填密度で陰イオン交換クロマトグラフィー材料に装填される。組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料の約1mg/mL~約2mg/mL、約2mg/mL~約3mg/mL、約3mg/mL~約4mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約5mg/mL~約6mg/mL、約6mg/mL~約7mg/mL、約7mg/mL~約8mg/mL、約8mg/mL~約9mg/mL、または約9mg/mL~約10mg/mLのうちのいずれかのポリペプチドの装填密度で陰イオンクロマトグラフィー材料に装填され得る。いくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、アガロースに架橋した第四級アミン、例えば、DEAE Sepharose(登録商標)である。
【0150】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、DsbCを含む組成物は、HIC材料の約10mg/mL、約9mg/mL、約8mg/mL、約7mg/mL、約6mg/mL、約5mg/mL、約4mg/mL、約3mg/mL、約2mg/mL、または約1mg/mLのうちのいずれか以下のポリペプチドの装填密度でHIC材料に装填される。組成物は、HIC材料の約1mg/mL~約2mg/mL、約2mg/mL~約3mg/mL、約3mg/mL~約4mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約5mg/mL~約6mg/mL、約6mg/mL~約7mg/mL、約7mg/mL~約8mg/mL、約8mg/mL~約9mg/mL、または約9mg/mL~約10mg/mLのうちのいずれかのポリペプチドの装填密度でHIC材料に装填され得る。いくつかの実施形態では、HIC材料は、架橋アガロースに架橋したフェニル部分、例えば、Phenyl Sepharose(登録商標)である。
【0151】
クロマトグラフィー材料からのDsbCの溶出は、最小不純物及び最小プール体積でのDsbCの産出のために最適化され得る。例えば、組成物は、装填緩衝液中のクロマトグラフィー材料、例えば、クロマトグラフィーカラムに装填され得る。装填が完了した時点で、産物は、溶出緩衝液の伝導度を一定に保ちながら、いくつかの異なるpHの緩衝液で溶出される。あるいは、産物は、溶出緩衝液のpHを一定に保ちながら、いくつかの異なる伝導度の溶出緩衝液中のクロマトグラフィー材料から溶出され得る。クロマトグラフィー材料からの産物の溶出が完了した時点で、プール画分中の汚染物質の量は、所与のpHまたは伝導度での産物の不純物からの分離に関する情報を提供する。多数の画分(例えば、8カラム体積)における産物の溶出は、溶出プロファイルの「テーリング」を示す。本発明のいくつかの実施形態では、溶出のテーリングが最小限に抑えられる。
【0152】
例えば、緩衝液の所望のpH、緩衝液の所望の伝導度、目的とするタンパク質の特徴、及び精製方法に応じて用いられ得る様々な緩衝液。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、緩衝液を使用することを含む。緩衝液は、装填緩衝液、平衡化緩衝液、または洗浄緩衝液であり得る。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液のうちの1つ以上が同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液は異なる。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、緩衝液は塩を含む。装填緩衝液は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、装填緩衝液は、塩化ナトリウム緩衝液である。いくつかの実施形態では、装填緩衝液は、酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0153】
装填物とは、本明細書で使用されるとき、クロマトグラフィー材料に装填された組成物である。装填緩衝液は、DsbCを含む組成物をクロマトグラフィー材料に装填するために使用される緩衝液である。クロマトグラフィー材料は、精製される組成物の装填前に平衡化緩衝液で平衡化され得る。いくつかの例では、洗浄緩衝液は、組成物をクロマトグラフィー材料に装填した後、かつ目的とするポリペプチドを固相から溶出させる前に使用される。
【0154】
溶出とは、本明細書で使用されるとき、クロマトグラフィー材料からの産物、例えば、DsbCの除去である。溶出緩衝液は、クロマトグラフィー材料から目的とするポリペプチドまたは他の産物を溶出させるために使用される緩衝液である。多くの場合、溶出緩衝液は、装填緩衝液とは異なる物理的特徴を有する。例えば、溶出緩衝液は、装填緩衝液とは異なる伝導度または装填緩衝液とは異なるpHを有し得る。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも低い伝導度を有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも高い伝導度を有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも低いpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液よりも高いpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液とは異なる伝導度及び異なるpHを有する。溶出緩衝液は、より高いまたはより低い伝導度及びより高いまたはより低いpHの任意の組み合わせを有し得る。
【0155】
伝導度とは、2つの電極間に電流を伝導する水溶液の能力を指す。溶液中で、電流は、イオン輸送により流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量が増加すると、この溶液は、より高い伝導度を有するようになる。伝導度の尺度の基本単位は、ジーメンス(またはmho)、mho(mS/cm)であり、様々なモデルのOrion伝導度計等の伝導度計を使用して測定され得る。電解質伝導度が電流を搬送する溶液中のイオンの能力であるため、溶液の伝導度は、その中のイオンの濃度を変化させることによって変更され得る。例えば、溶液中の緩衝剤の濃度及び/または塩(例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、または塩化カリウム)の濃度は、所望の伝導度を達成するために変更され得る。好ましくは、様々な緩衝液の塩濃度は、所望の伝導度を達成するために修正される。
【0156】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換装填緩衝液は、約4.0mS/cm、約4.5mS/cm、約5.0mS/cm、約5.5mS/cm、約6.0mS/cm、約6.5mS/cm、約7.0mS/cm、約7.5mS/cm、約8.0mS/cm、約8.5mS/cm、約9.0mS/cm、約9.5mS/cm、または約10mS/cmのうちのいずれかを超える伝導度を有する。伝導度は、約4mS/cm~約17mS/cm、約4mS/cm~約10mS/cm、約4mS/cm~約7mS/cm、約5mS/cm~約17mS/cm、約5mS/cm~約10mS/cm、または約5mS/cm~約7mS/cmのうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、伝導度は、約4mS/cm、約4.5mS/cm、約5.0mS/cm、約5.5mS/cm、約6.0mS/cm、約6.5mS/cm、約7.0mS/cm、約7.5mS/cm、約8.0mS/cm、約8.5mS/cm、約9.0mS/cm、約9.5mS/cm、または約10mS/cmのうちのいずれかである。一態様では、伝導度は、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液の伝導度である。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び洗浄緩衝液のうちの1つ以上の伝導度が同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液の伝導度は、洗浄緩衝液及び/または平衡化緩衝液の伝導度とは異なる。
【0157】
いくつかの実施形態では、陰イオン交換溶出緩衝液は、装填緩衝液の伝導度を超える伝導度を有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、約5mS/cm、約10mS/cm、約15mS/cm、約20mS/cm、約25mS/cm、約30mS/cm、約35mS/cm、約40mS/cm、約45mS/cm、約50mS/cm、約55mS/cm、約60mS/cm、約65mS/cm、約70mS/cm、約75mS/cm、約80mS/cm、約85mS/cm、約90mS/cm、約95mS/cm、または約100mS/cmのうちのいずれかを超える伝導度を有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液の伝導度は、溶出緩衝液の塩濃度を変更することによって変更される。
【0158】
いくつかの実施形態では、HIC装填緩衝液は、溶出緩衝液の伝導度を超える伝導度を有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、HIC装填緩衝液は、約5mS/cm、約10mS/cm、約15mS/cm、約20mS/cm、約25mS/cm、約30mS/cm、約35mS/cm、約40mS/cm、約45mS/cm、約50mS/cm、約55mS/cm、約60mS/cm、約65mS/cm、約70mS/cm、約75mS/cm、約80mS/cm、約85mS/cm、約90mS/cm、約95mS/cm、または約100mS/cmのうちのいずれかを超える伝導度を有する。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液の伝導度は、溶出緩衝液の塩濃度を変更することによって変更される。
【0159】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、HIC溶出緩衝液は、約4.0mS/cm、約4.5mS/cm、約5.0mS/cm、約5.5mS/cm、約6.0mS/cm、約6.5mS/cm、約7.0mS/cm、約7.5mS/cm、約8.0mS/cm、約8.5mS/cm、約9.0mS/cm、約9.5mS/cm、または約10mS/cmのうちのいずれか未満の伝導度を有する。
【0160】
上述の実施形態のうちのいずれかのいくつかの態様では、溶出緩衝液の伝導度は、段階勾配または線形勾配により装填物及び/または洗浄緩衝液から均一濃度で変化したものである。
【0161】
いくつかの実施形態では、DsbCは、15カラム体積にわたる約0%~約60%の10mM MOPS及び250mM NaClの塩勾配で陰イオン交換クロマトグラフィー材料から溶出される。いくつかの実施形態では、塩勾配は、10カラム体積にわたる約0%~約60%の10mM MOPS及び250mM NaClである。
【0162】
いくつかの実施形態では、DsbCは、DsbCがHIC材料から溶出するまで精製水を使用してHIC材料から溶出される。
【0163】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、陰イオン交換装填緩衝液は、約10、約9、約8、約7、約6、または約5のうちのいずれか未満のpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、装填緩衝液は、約4、約5、約6、約7、約8、または約9のうちのいずれかを超えるpHを有する。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液のうちの1つ以上のpHが同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液のpHは、平衡化緩衝液及び/または洗浄緩衝液のpHとは異なる。
【0164】
いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、装填緩衝液のpH未満のpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、約8、約7、約6、約5、約4、約3、または約2のうちのいずれか未満のpHを有する。溶出緩衝液のpHは、約4~約9、約4~約8、約4~約7、約4~約6、約4~約5、約5~約9、約5~約8、約5~約7、約5~約6、約6~約9、約6~約8、約6~約7のうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液のpHは、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7/0、約7.5、約8.0、約8.5、または約9.0のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、DsbCを含む組成物は、pH8の装填緩衝液中の陰イオン交換材料に装填され、pH約7.0または7.1の溶出緩衝液中の陰イオン交換材料から溶出される。
【0165】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、HIC装填緩衝液は、約6、約7、または約8のうちのいずれか未満のpHを有する。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、装填緩衝液は、約6、約7、または約8のうちのいずれかを超えるpHを有する。いくつかの実施形態では、装填緩衝液、平衡化緩衝液、及び/または洗浄緩衝液のうちの1つ以上のpHが同じである。いくつかの実施形態では、装填緩衝液のpHは、平衡化緩衝液及び/または洗浄緩衝液のpHとは異なる。
【0166】
いくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、貫流モードで使用される。いくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーに使用される緩衝液は、PBS(pH7.0±0.4)である。
【0167】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、流量は、約50CV/時間、約40CV/時間、または約30CV/時間のうちのいずれか未満である。流量は、約5CV/時間~約50CV/時間、約10CV/時間~約40CV/時間、または約18CV/時間~約36CV/時間のうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、流量は、約9CV/時間、約18CV/時間、約25CV/時間、約30CV/時間、約36CV/時間、または約40CV/時間のうちのいずれかである。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、流量は、約200cm/時間、約150cm/時間、約100cm/時間、約75cm/時間、または約50cm/時間のうちのいずれか未満である。流量は、約25cm/時間~約200cm/時間、約25cm/時間~約175cm/時間、約25cm/時間~約150cm/時間、約25cm/時間~約100cm/時間、約50cm/時間~約100cm/時間、または約65cm/時間~約85cm/時間のうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、流量は約0.1mL/分、約0.25mL/分、約0.5mL/分、約0.75mL/分、約1mL/分、約2mL/分、約3mL/分、約4mL/分、約5mL/分、約6mL/分、約7mL/分、約8mL/分、約9mL/分、約10mL/分、約11mL/分、約12mL/分、約13mL/分、約14mL/分、約15mL/分、約20mL/分、約25mL/分、及び約50mL/分を超える。いくつかの実施形態では、流量は、約0.1mL/分~約1mL/分、約1mL/分~約5mL/分、約1mL/分~約10mL/分、約5mL/分~約10mL/分、約10mL/分~約15mL/分、約10mL/分~約25mL/分、及び約15mL/分~約25mL/分である。いくつかの実施形態では、DsbCの陰イオン交換クロマトグラフィーの流量は、約13.3mL/分である。いくつかの実施形態では、DsbCの疎水性相互作用クロマトグラフィーの流量は、約13.2mL/分である。いくつかの実施形態では、DsbCのサイズ排除クロマトグラフィーの流量は、約1mL/分である。
【0168】
床高さとは、使用されるクロマトグラフィー材料の高さである。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、床高さは、約3cm、約10cm、約15cm、約20cm、約25cm、約30cm、約35cm、約40cm、約45cm、約50cm、約60cm、約70cm、約80cm、約90cm、または約100cmのうちのいずれかを超える。床高さは、約3cm~約50cm、約5cm~約35cm、約3cm~約35cm、または約5cm~約50cmのうちのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、床高さは、装填物中のポリペプチドまたは不純物の量に基づいて決定される。
【0169】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーは、約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、40mL、50mL、75mL、100mL、または200mLを超える体積を有するカラム容器内で行われる。
【0170】
本発明のいくつかの実施形態では、画分は、クロマトグラフィーから収集される。いくつかの実施形態では、収集される画分は、約0.01CV、0.02CV、0.03CV、0.04CV、0.05CV、0.06CV、0.07CV、0.08CV、0.09CV、0.1CV、0.2CV、0.3CV、0.4CV、0.5CV、0.6CV、0.7CV、0.8CV、0.9CV、1.0CV、2.0CV、3.0CV、4.0CV、5.0CV、6.0CV、7.0CV、8.0CV、9.0CV、または10.0CVを超える。いくつかの実施形態では、産物、例えば、ポリペプチドを含有する画分がプールされる。いくつかの実施形態では、装填画分及び溶出画分からのポリペプチドを含有する画分がプールされる。画分中のポリペプチドの量は、当業者によって決定され得、例えば、画分中のポリペプチドの量は、紫外分光法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、検出可能なポリペプチド断片を含有する画分がプールされる。いくつかの実施形態では、画分中のDsbCの存在及び純度は、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。
【0171】
例示的な実施形態
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbCの超高純度調製物を産生するための以下の例示的ではあるが非限定的な方法を提供する。DsbCは、E.coliで発現される。細胞ペーストが10mM MOPS(pH7.1)中に懸濁され(50g細胞ペースト/1L)、懸濁液が均質になるまで混合される。細胞溶解が、室内圧力(約7000psi)での3回通過の微小流動化剤110Fを使用して行われる。均等物が(10%PEIストック溶液を使用して)0.1%PEIになるように条件付けられ、周囲温度(約21℃)で30分間混合される。懸濁液が、「GSA」回転子を使用してSorval RC-5B+遠心分離機内で、8500rpmで30分間遠心分離される。遠心分離物が収集され、0.22umのDuraporeフィルターを介して濾過される。
【0172】
(a)DEAE Sepharose
浄化された遠心分離物(1.5M Tris塩基でpH8.0に条件付けられたもの)が、結合及び溶出モードでDEAE Sepharose(登録商標)Fast Flow(GE Healthcare)を含有するカラムに装填される。カラムは、以下の特性を有する。カラムは、直径28.4cm×2.6cm、体積151mL、タンパク質容量50mg/mL以下の樹脂であった。カラムは、3CVの250mM MOPS(pH7.1、伝導度6.2mS/cm)で事前平衡化され、10mM MOPS(pH7.1、伝導度0.3mS/cm)で平衡化される。装填の終わりに、カラムは、12CVの平衡化緩衝液で洗浄される。DsbCは、15CVの0~60%緩衝液Bの勾配を使用して溶出される。溶出は、溶出緩衝液への15CVにわたる0~60%緩衝液Bの線形勾配である。画分は、SDS-PAGEによって分析される。
【0173】
(b)Phenyl Sepharose
その後、プールされたDEAE画分が結合及び溶出モードでPhenyl Sepharose(登録商標)クロマトグラフィーに適用される。カラムは、以下の特性を有する。カラムは、直径20cm×2.6cm、体積106mL、タンパク質容量20mg/mL以下の樹脂であった。カラムは、0.6M硫酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0で平衡化される。DsbCを含む条件付けられたDEAEプールは、Phenyl Sepharoseカラムに装填され、その後、1.2M硫酸ナトリウム(1:1)、1Mリン酸ナトリウム(1:20)で希釈され、装填前にpH7.0、約68mS/cmに調整される。その後、カラムは、7CVの0.6M硫酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)で洗浄され、次いで、7CVの0.6M硫酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)で洗浄される。DsbCは、精製水でカラムから溶出される。画分が収集され、カラム画分のSDS-PAGE分析によって分析される。
【0174】
(c)Superdex
その後、プールされたPhenyl Sepharose画分がSuperdex 75を使用してサイズ排除クロマトグラフィーに供される。このステップを使用して、任意の残留高分子量種及び低分子量種を除去し、DsbCを製剤化する。Superdex 75は、DsbC等のより小さいタンパク質(約24kDa)により適した分画範囲(5kDa~70kDa)を有する。カラムは、Superdex 75であり、以下の特性を有する。カラムは、直径60cm×2.6cm、体積320mL、装填体積16mL以下であった。HICプール(画分7~11)は、遠心分離フィルターを使用して16mL以下(SEC CVの5%以下)の体積に濃縮される。これらの装置は、20分間隔で臨床遠心分離機を使用して目標体積に到達するまで4000rpmで遠心分離される。Superdex 75サイズ排除カラムは、3CVのPBS(pH7.0±0.4)で平衡化される。Phenyl Sepharose画分は、カラムに装填され、PBS(pH7.0±0.4)で、1mL/分の流量で溶出される。
【0175】
C.DsbA及びDsbCの純度の決定方法
DsbA及びDsbCの調製物の純度の決定方法は、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、調製物中のDsbAまたはDsbCの純度は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。いくつかの実施形態では、調製物中のDsbAまたはDsbCの純度は、高速液体クロマトグラフィーサイズ排除クロマトグラフィー(HPLC SEC)によって決定される。いくつかの実施形態では、調製物中のDsbAまたはDsbCの純度は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決定される。いくつかの実施形態では、SDSPAGEゲル上のタンパク質は、蛍光タンパク質染色を使用して特定される。いくつかの実施形態では、蛍光タンパク質染色は、Sypro(登録商標)Ruby染色である。いくつかの実施形態では、SDS-PAGE上のタンパク質は、Heukeshoven銀染色を使用して可視化される。他の実施形態では、DsbA分子またはDsbC分子の同一性は、N末端配列分析、ペプチド質量フィンガープリント法(PMF)、CHIP TOFによるインタクト/還元質量、及びウエスタンブロット分析を含むが、これらに限定されない特徴付けアッセイを使用して確認される。
【0176】
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbAの超高純度調製物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、単量体DsbAが調製物の少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99.5%のうちのいずれかを構成するDsbAの調製物を提供する。いくつかの実施形態では、単量体DsbAは、調製物の約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、及び/または約99.5%のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、または約0.01%のうちのいずれか未満の不純物を含む。不純物としては、E.coli宿主細胞タンパク質等の宿主細胞タンパク質、核酸、ウイルス、細胞培養培地成分等の細胞培養成分、及びDsbAの凝集体またはDsbAの断片(例えば、DsbAの非機能的断片)が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、調製物は、約2%、約1.5%、または約1%のうちのいずれか未満の低分子量種を含む。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、0.5%、または0.1%未満の高分子量種を含む。いくつかの実施形態では、高分子量種は、検出不能である。いくつかの実施形態では、単量体DsbA、低分子量種、及び/または高分子量種の存在は、SECによって検出される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbCの超高純度調製物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、単量体DsbCが調製物の少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99.5%のうちのいずれかを構成するDsbCの調製物を提供する。いくつかの実施形態では、単量体DsbCは、調製物の約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、及び/または約99.5%のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、または約0.01%のうちのいずれか未満の不純物を含む。不純物としては、E.coli宿主細胞タンパク質等の宿主細胞タンパク質、核酸、ウイルス、細胞培養培地成分等の細胞培養成分、及びDsbCの凝集体またはDsbCの断片(例えば、DsbCの非機能的断片)が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、約0.5%、または約0.1%のうちのいずれか未満の低分子量種を含む。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、0.5%、または0.1%未満の高分子量種を含む。いくつかの実施形態では、単量体DsbC、低分子量種、及び/または高分子量種の存在は、SECによって検出される。
【0178】
宿主細胞DNA等のDNAの測定方法は、当該技術分野で既知であり、実施例の項に記載される。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、DNAの量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%のうちのいずれかを超えて低減される。DNAの量は、約10%~約99%、約30%~約95%、約30%~約99%、約50%~約95%、約50%~約99%、約75%~約99%、または約85%~約99%のうちのいずれかで低減され得る。DNAの量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%のうちのいずれかで低減され得る。いくつかの実施形態では、低減は、精製ステップ(複数可)から回収された組成物中のDNAの量を精製ステップ(複数可)前の組成物中のDNAの量と比較することによって決定される。
【0179】
細胞培養培地成分とは、細胞培養培地中に存在する成分を指す。細胞培養培地は、細胞の採取時の細胞培養培地であり得る。いくつかの実施形態では、細胞培養培地成分は、ゲンタマイシンである。ゲンタマイシンの量は、ELISAによって測定され得る。本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、細胞培養培地成分の量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%のうちのいずれかを超えて低減される。細胞培養培地成分の量は、約10%~約99%、約30%~約95%、約30%~約99%、約50%~約95%、約50%~約99%、約75%~約99%、または約85%~約99%のうちのいずれかで低減され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養培地成分の量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約98%のうちのいずれかで低減される。いくつかの実施形態では、低減は、精製ステップ(複数可)から回収された組成物中の細胞培養培地成分の量を精製ステップ(複数可)前の組成物中の細胞培養培地成分の量と比較することによって決定される。
【0180】
III.ポリペプチド-DsbA及びDsbC
本発明は、DsbA及びDsbCの超高純度調製物の生成方法を提供する。「Dsb」タンパク質という用語は、細菌ジスルフィドオキシドレダクターゼを指す。DsbAは、ペプチドが細胞のペリプラズム内に出現すると鎖内ジスルフィド結合を形成し、DsbCは、細胞のペリプラズムにおける酸化的タンパク質折り畳み中にジスルフィド結合イソメラーゼとしての機能を果たす。いくつかの実施形態では、DsbA及びDsbCは、細菌由来である。いくつかの実施形態では、DsbA及びDsbCポリペプチドは、E.coli DsbA及びDsbCポリペプチドである。他の実施形態では、DsbA及びDsbCポリペプチドは、Enterobacteria、Actinetobacter、Azoarcus、Salmonella、Buchnera、Xylella、Xanthmonas、Campylobacter、Shigella、Pseudomonas、Yersina、Erwinia、及びNeisseriaの任意の種由来である。いくつかの実施形態では、DsbAポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbAポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%のうちのいずれかの同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbCポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbCポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%のうちのいずれかの同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0181】
本明細書に記載の方法を使用して精製されるDsbA及びDsbCポリペプチドは、一般に、組換え技法を使用して産生される。細菌中での組換えポリペプチドの産生方法は、当該技術分野で既知である。組換え技法を使用する場合、ポリペプチドは、細胞内で産生され得るか、ペリプラズム空間に産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。いくつかの実施形態では、DsbAまたはDsbCをコードする核酸は、ポリペプチドを過剰発現するために宿主細胞に導入される。いくつかの実施形態では、DsbAまたはDsbCをコードする核酸は、発現ベクター、例えば、プラスミドから発現される。いくつかの実施形態では、DsbAポリペプチドをコードする核酸は、配列番号2の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbAをコードする核酸は、配列番号2の核酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%のうちのいずれかの同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbCをコードする核酸は、配列番号4の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、DsbCをコードする核酸は、配列番号3の核酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%のうちのいずれかの同一性を有する核酸配列を含む。
【0182】
ポリペプチドは、培養培地または宿主細胞溶解物から回収され得る。ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、様々な物理的または化学的手段、例えば、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤によって破壊され得る。ポリペプチドが細胞内で産生される場合、第1のステップとして、粒子状残屑、宿主細胞または溶解された断片のいずれかが、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、E.coliのペリプラズム空間に分泌されるポリペプチドを単離するための手順について記載している。簡潔には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分間にわたって融解される。細胞残屑が遠心分離によって除去され得る。ポリペプチドが培地に分泌される場合、かかる発現系由来の上清が、一般に、市販のポリペプチド濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して最初に濃縮される。タンパク質分解を阻害するためのPMSF等のプロテアーゼ阻害剤が前述のステップのうちのいずれかに含まれてもよく、外来性汚染物質の成長を阻止するための抗生物質が含まれてもよい。
【0183】
IV.産生時にDsbA及び/またはDsbCが使用され得るポリペプチド
タンパク質折り畳み及び集合がDsbA及び/またはDsbCの過剰発現によって支援され得る細菌(例えば、E.coli)中で産生され得るポリペプチドの例としては、免疫グロブリン、イムノアドヘシン、抗体、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫コンジュゲート、サイトカイン、及びインターロイキンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチドの例としては、哺乳類タンパク質、例えば、レニン等;ホルモン;成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ-1-抗トリプシン;インスリンA-鎖;インスリンB-鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えば、タンパク質C;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(活性化時に調節され、正常T細胞が発現及び分泌している);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;レラキシンA-鎖;レラキシンB-鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;酵素;微生物タンパク質、例えば、ベータ-ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;タンパク質AまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、または-6(NT-3、NT-4、NT-5、またはNT-6)、または神経成長因子、例えば、NGF-b;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子、例えば、aFGF及びbFGF;表皮成長因子(EGF);形質転換成長因子(TGF)、例えば、TGF-アルファ及びTGF-ベータ、例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5;インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);サイトカイン;CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;融合ポリペプチド、すなわち、2つ以上の異種ポリペプチドまたはその断片から成り、組換え核酸によってコードされるポリペプチド;Fc含有ポリペプチド、例えば、第2のポリペプチドに融合した免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質、またはその断片;免疫コンジュゲート;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、-ベータ、及び-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4、及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣癌抗原)、またはHER2、HER3、もしくはHER4受容体;イムノアドヘシン;ならびに上述のタンパク質のうちのいずれかの断片及び/または変異形、ならびにタンパク質、例えば、上述のタンパク質のうちのいずれか等に結合する抗体断片を含む抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアッセイ方法のうちのいずれかで使用するためのポリペプチド調製物は、目的とする抗体を含有する。すなわち、宿主細胞によって産生される組換えポリペプチドは抗体である。
【0185】
かかる抗体の分子標的は、CDタンパク質及びそれらのリガンド、例えば、(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79?(CD79a)、及びCD79?(CD79b);(ii)ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えば、EGF受容体、HER2、HER3、またはHER4受容体;(iii)細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mac1、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、及びαv/β3インテグリン(それらのアルファサブユニットまたはベータサブユニットのいずれか(例えば、抗CD11a、抗CD18、または抗CD11b抗体)を含む);(iv)成長因子、例えば、VEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;タンパク質C、BR3、c-met、組織因子、β7等;ならびに(v)細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)、例えば、米国特許第7,521,541号に記載のものを含む。
【0186】
他の例示的な抗体としては、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl-2抗体、抗E-カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15-3抗体、抗CA19-9抗体、抗c-erbB-2抗体、抗P-糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras癌タンパク質抗体、抗ルイスX抗体、抗Ki-67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ubiquitin抗体、抗CD71抗体、抗c-myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異抗原抗体、抗S-100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体、及び抗Tn-抗原抗体から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
ポリクローナル抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注入によって動物において産生される。二機能性または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、R及びR1が異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるポリペプチド、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートすることが有用であり得る。
【0188】
動物は、例えば、100μgまたは5μgのポリペプチドまたはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を3体積の完全フロイントアジュバントと混合し、この溶液を複数の部位で皮内注入することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物は、複数の部位での皮下注入によって完全フロイントアジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートの最初の量の1/5~1/10で追加免疫される。7~14日後、動物から採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。動物は、力価がプラトーに到達するまで追加免疫される。いくつかの実施形態では、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるポリペプチドにコンジュゲートされ、かつ/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートされたもので追加免疫される。コンジュゲートは、ポリペプチド融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン等の凝集剤も免疫応答を増強するために好適に使用される。
【0189】
モノクローナル抗体
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得られる。すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じる想定される変異形は除外され、かかる変異形は、一般に、少量で存在する。したがって、「モノクローナル」という修飾語句は、別個の抗体またはポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。
【0190】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)が最初に説明したハイブリドーマ方法を使用して作製され得るか、または組換えDNA方法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。
【0191】
ハイブリドーマ方法では、マウスまたは他の適切な宿主動物が本明細書に記載されるように免疫化されて、免疫化に使用されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化される。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0192】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、融合していない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含有する好適な培養培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。
【0193】
いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示すものである。これらのうち、いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞由来のものである。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株もヒトモノクローナル抗体の産生について説明されている(Kozbor,J.Immunol.133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0194】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、抗原に対して指向されたモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)によって決定される。
【0195】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.107:220(1980)のScatchard分析によって決定され得る。
【0196】
所望の特異性、親和性、及び/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手技によってサブクローニングされ、標準の方法によって成長し得る(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice pp.59-103(Academic Press,1986))。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM培地またはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。
【0197】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手技、例えば、ポリペプチドA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィー等によって、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。
【0198】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手技を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離及び配列決定される。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの供給源としての機能を果たす。単離されると、DNAは、発現ベクター内に置かれ得て、その後、これが宿主細胞、例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、ヒト胚腎臓(HEK)293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはさもなければ免疫グロブリンポリペプチドを産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの細菌での組換え発現についての総説論文としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.5:256-262(1993)、及びPluckthun,Immunol.Revs.,130:151-188(1992)が挙げられる。
【0199】
さらなる一実施形態では、抗体または抗体断片は、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)に記載の技法を使用して生成された抗体ファージライブラリから単離され得る。Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリを使用したマウス抗体及びヒト抗体の単離について記載している。続報は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992))、ならびに非常に大きいファージライブラリを構築するための戦略としての組み合わせ感染及びインビボ組換え(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.21:2265-2266(1993))について記載している。したがって、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法の実行可能な代替案である。
【0200】
DNAは、例えば、同種マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を用いることによって(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによっても修飾され得る。
【0201】
典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、ある抗体の定常ドメインの代わりに用いられるか、またはある抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに用いられて、ある抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位及び異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0202】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
【0203】
抗体断片
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。抗体断片を産生するための様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化によって得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)、及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生することができる。例えば、抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。他の実施形態では、最適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように、「直鎖状抗体」であってもよい。かかる直鎖状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の断片が提供される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、Fv、及びダイアボディからなる群から選択される。
【0205】
ポリペプチド変異形及び修飾
ある特定の実施形態では、本明細書におけるタンパク質のアミノ酸配列変異形が企図される。例えば、タンパク質の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。タンパク質のアミノ酸配列変異形は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾としては、例えば、タンパク質のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。
【0206】
変異形ポリペプチド
「ポリペプチド変異形」とは、ポリペプチドの全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書に定義されるポリペプチド、例えば、活性ポリペプチドを意味する。かかるポリペプチド変異形としては、例えば、1つ以上のアミノ酸残基が全長天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に付加または欠失されたポリペプチドが挙げられる。通常、ポリペプチド変異形は、全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%のうちのいずれかのアミノ酸配列同一性を有する。通常、変異形ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換を有し、あるいは天然ポリペプチド配列と比較して約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個のうちのいずれか以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0207】
変異形ポリペプチドは、N末端またはC末端で切断され得るか、または例えば、全長天然ポリペプチドと比較して、内部残基を欠き得る。ある特定の変異形ポリペプチドは、所望の生物学的活性にとって不可欠ではないアミノ酸残基を欠き得る。切断、欠失、及び挿入を有するこれらの変異形ポリペプチドは、いくつかの従来の技法のうちのいずれかによって調製され得る。所望の変異形ポリペプチドは、化学的に合成されたものであり得る。別の好適な技法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって所望の変異形ポリペプチドをコードする核酸断片の単離及び増幅することを伴う。核酸断片の所望の末端を定義するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’プライマー及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、変異形ポリペプチドは、本明細書に開示の天然ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/または免疫学的活性を共有する。
【0208】
アミノ酸配列挿入としては、長さが1残基から100以上の残基の範囲を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体または細胞毒性ポリペプチドに融合した抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異形としては、抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
【0209】
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。ポリペプチドのアミノ酸配列変異形は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。かかる修飾としては、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達するが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。アミノ酸変化は、ポリペプチド(例えば、抗体)の翻訳後プロセスも改変することができ、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化することができる。
【0210】
どのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を及ぼすことなく挿入、置換、または欠失され得るかを決定する際の手引きは、ポリペプチドの配列を同種の既知のポリペプチド分子の配列と比較し、かつ相同性の高い領域のアミノ酸配列変化の数を最小限に抑えることによって見出され得る。
【0211】
変異誘発の好ましい位置であるポリペプチド(例えば、抗体)のある特定の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells,Science 244:1081-1085(1989)によって説明される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGlu等の荷電残基)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)に置き換えられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。その後、置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置は、さらなるまたは他の変異形を置換部位に、またはそこの代わりに導入することによって洗練される。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されている一方で、変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、所与の部位での変異の性能を分析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異誘発が標的コドンまたは領域で行われ、発現した抗体変異形が所望の活性についてスクリーニングされる。
【0212】
別の種類の変異形は、アミノ酸置換変異形である。これらの変異形は、異なる残基に置き換えられた抗体分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換変異誘発に関する最も関心ある部位としては、超可変領域が挙げられるが、FR改変も企図される。かかる置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「例示的な置換」と表示されるか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるより実質的な変化が導入され、産物がスクリーニングされ得る。
表1.
【0213】
ポリペプチドの生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくは螺旋立体配座、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のバルクの維持に対するそれらの影響が著しく異なる置換を選択することによって達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従って群分けされ得る(A.L.Lehninger,Biochemistry second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975))。
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0214】
あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0215】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーと別のクラスとの交換を伴う。
【0216】
抗体の適切な立体配座の維持に関与しない任意のシステイン残基も一般にセリンで置換されて、分子の酸化的安定性を改善し、異常な架橋を阻止することができる。逆に、システイン結合(複数可)がポリペプチドに付加されて、その安定性を改善することができる(具体的には、抗体がFv断片等の抗体断片である場合)。
【0217】
置換変異形の一例は、親抗体(例えば、ヒト化抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、さらなる開発のために選択された結果として生じる変異形(複数可)は、それらが生成される親抗体に対して改善された生物学的特性を有する。かかる置換変異形を生成するための好都合な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。簡潔には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7つの部位)が変異されて、各部位に全ての想定されるアミノ置換を生成する。そのように生成された抗体変異形は、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物への融合物として線維状ファージ粒子から一価様式でディスプレイされる。その後、ファージディスプレイされた変異形は、本明細書に開示のそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を特定するために、アラニンスキャニング変異誘発が行われ、抗原結合に著しく寄与する超可変領域残基を特定することができる。あるいは、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と標的との間の接触点を特定することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書に詳述される技法に従う置換の候補である。かかる変異形が生成されると、変異形のパネルが本明細書に記載されるようにスクリーニングに供され、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体がさらなる開発のために選択され得る。
【0218】
ポリペプチドの別の種類のアミノ酸変異形は、抗体の元のグリコシル化パターンを改変する。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含み得る。例えば、ポリペプチドは、グリコシル化され得る。かかるグリコシル化は、宿主細胞または宿主生物でのポリペプチドの発現中に天然に生じ得るか、またはヒト介入に起因する計画的な修飾であり得る。改変とは、ポリペプチドに見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/またはポリペプチド中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0219】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN-アセイルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0220】
グリコシル化部位のポリペプチドへの付加は、(N結合グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。改変は、(O結合グリコシル化部位のための)元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加、またはそれによる置換によっても行われ得る。
【0221】
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的もしくは酵素的に、またはグリコシル化の標的としての機能を果たすアミノ酸残基をコードするコドンの変異置換によって達成され得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンド-及びエキソ-グリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0222】
他の修飾としては、それぞれ、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基それぞれへの脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のγ-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0223】
キメラポリペプチド
本明細書に記載のポリペプチドは、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法で修飾され得る。いくつかの実施形態では、キメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般に、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。かかるエピトープタグ形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出され得る。エピトープタグの提供により、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する別の種類の親和性マトリックスを使用してポリペプチドが親和性精製によって容易に精製されることも可能になる。
【0224】
多重特異性抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性の一方は、c-metに対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、c-metの2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体を使用して、細胞毒性薬を、c-metを発現する細胞に限局させることもできる。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0225】
多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照のこと)、及び「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、静電ステアリング効果を操作して抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照のこと)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444-6448(1993)を参照のこと)、一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと)、例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されるように三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0226】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照のこと)。
【0227】
本明細書における抗体または断片としては、c-met、及びEGFR等の別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も挙げられる(例えば、US2008/0069820を参照のこと)。
【0228】
二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野で既知である。従来、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づいており、これらの2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature,305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常親和性クロマトグラフィーステップによって行われる正しい分子の精製は、幾分煩雑であり、産物収率は低い。同様の手技が、1993年5月13日公開のWO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655(1991)に開示されている。
【0229】
異なるより好ましいアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。融合物のうちの少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖融合物をコードするDNAが別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これにより、構築時に使用される不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供する場合、実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する際に優れた柔軟性が提供される。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合に、またはそれらの比率が特に重要でない場合に、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0230】
このアプローチの好ましい一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにある(第2の結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対から成る。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在により容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造が望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0231】
別のアプローチに従って、抗体分子の対間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように操作され得る。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる(ノブまたは隆起)。大きい側鎖(複数可)と同一または同様の大きさの補償「空洞」(ホール)は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって第2の抗体分子の界面上に作製される。これにより、ホモ二量体等の他の望ましくない最終産物と比べてヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。ノブ及びホールは、本明細書にさらに記載されている。
【0232】
ノブインホール
多重特異性抗体及び/または一アーム抗体及び/またはイムノアドヘシンの産生方法としてノブイントゥホール(Knobs into holes)を使用することは、当該技術分野で周知である。Genentechに譲渡された米国特許第5,731,168号(1998年3月24日付与)、Amgenに譲渡されたPCT公開第WO2009089004号(2009年7月16日公開)、及びNovo Nordisk A/Sに譲渡された米国特許公開第20090182127号(2009年7月16日公開)を参照されたい。Marvin and Zhu,Acta Pharmacologica Sincia(2005)26(6):649-658及びKontermann(2005)Acta Pharacol.Sin.,26:1-9も参照されたい。簡潔な考察が本明細書に提供されている。
【0233】
「隆起」とは、第1のポリペプチドの界面から突出し、それ故に隣接した界面(すなわち、第2のポリペプチドの界面)の補償空洞内に位置付け可能になり、これにより、例えば、ヘテロ多量体を安定させ、それによりホモ多量体形成よりもヘテロ多量体形成が好都合になる、少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。隆起は、元の界面に存在し得るか、または合成的に(例えば、界面をコードする核酸を改変することによって)導入され得る。通常、第1のポリペプチドの界面をコードする核酸は、隆起をコードするように改変される。これを達成するために、第1のポリペプチドの界面の少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基よりも大きい側鎖体積を有する少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基をコードする核酸で置き換えられる。2つ以上の元の残基及び対応する移入残基が存在し得ることが理解される。置き換えられる元の残基の数の上限は、第1のポリペプチドの界面における残基の総数である。様々なアミノ残基の側鎖体積が以下の表に示される。
表2.アミノ酸の特性
a水の分子量を差し引いたアミノ酸の分子量。Handbook of Chemistry and Physics,43rd ed.Cleveland,Chemical Rubber Publishing Co.,1961からの値。
bA.A.Zamyatnin,Prog.Biophys.Mol.Biol.24:107-123,1972からの値。
cC.Chothia,J.Mol.Biol.105:1-14,1975からの値。アクセス可能な表面積は、この参考文献の
図6~20に定義されている。
【0234】
隆起の形成に好ましい移入残基は、一般に、天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)から選択される。トリプトファン及びチロシンが最も好ましい。一実施形態では、隆起を形成するための元の残基は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリン等の小さい側鎖体積を有する。隆起を形成するためのCH3ドメインにおける例示的なアミノ酸置換としては、T366W置換が挙げられるが、これに限定されない。
【0235】
「空洞」とは、第2のポリペプチドの界面から凹んでおり、それ故に隣接する第1のポリペプチドの界面上の対応する隆起を収容する少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。空洞は、元の界面に存在し得るか、または合成的に(例えば、界面をコードする核酸を改変することによって)導入され得る。通常、第2のポリペプチドの界面をコードする核酸は、空洞をコードするように改変される。これを達成するために、第2のポリペプチドの界面の少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基よりも小さい側鎖体積を有する少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基をコードするDNAで置き換えられる。2つ以上の元の残基及び対応する移入残基が存在し得ることが理解される。置き換えられる元の残基の数の上限は、第2のポリペプチドの界面における残基の総数である。様々なアミノ残基の側鎖体積が上の表2に示されている。空洞の形成に好ましい移入残基は、通常、天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはアラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、及びバリン(V)から選択される。セリン、アラニン、またはトレオニンが最も好ましい。一実施形態では、空洞を形成するための元の残基は、チロシン、アルギニン、フェニルアラニン、またはトリプトファン等の大きい側鎖体積を有する。空洞を生成するためのCH3ドメインにおける例示的なアミノ酸置換としては、T366S置換、L368A置換、及びY407A置換が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
「元の」アミノ酸残基とは、元の残基よりも小さいまたは大きい側鎖体積を有し得る「移入」残基に置き換えられるものである。移入アミノ酸残基は、天然に存在するか、または天然に存在しないアミノ酸残基であり得るが、好ましくは、天然に存在するアミノ酸残基である。「天然に存在する」アミノ酸残基とは、遺伝子コードによってコードされ、上の表2に列記される残基である。「天然に存在しない」アミノ酸残基とは、遺伝子コードによってコードされないが、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基(複数可)に共有結合することができる残基を意味する。天然に存在しないアミノ酸残基の例は、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及び他のアミノ酸残基類似体、例えば、Ellman et al.,Meth.Enzym.202:301-336(1991)に記載されるもの等である。かかる天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Noren et al.Science 244:182(1989)及びEllman et al.(上記参照)の手技が使用され得る。簡潔には、これは、天然に存在しないアミノ酸残基を有するサプレッサーtRNAの化学的活性化、その後のRNAのインビトロ転写及び翻訳を伴う。本発明の方法は、少なくとも1つの元のアミノ酸残基の置き換えを伴うが、2つ以上の元の残基が置き換えられ得る。通常、第1または第2のポリペプチドの界面における合計残基より多くが、置き換えられる元のアミノ酸残基を含むことはない。典型的には、置き換えられる元の残基は「埋められる」。「埋められる」とは、残基が溶媒に本質的にアクセス不能であることを意味する。一般に、移入残基は、ジスルフィド結合の起こり得る酸化または誤対合を阻止するために、システインではない。
【0237】
隆起は、空洞内で「位置付け可能」であり、これは、それぞれ、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドの界面の隆起及び空洞の空間的位置、ならびに隆起及び空洞の大きさが、界面での第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの正常な会合を著しく乱すことなく隆起が空洞内に位置し得るようなものであることを意味する。Tyr、Phe、及びTrp等の隆起が、典型的には、界面の軸から垂直に延びず、好ましい立体配座を有しないため、隆起と対応する空洞との整列は、X線結晶学または核磁気共鳴(NMR)によって得られるもの等の三次元構造に基づく隆起/空洞対のモデリングに依存する。これは、当該技術分野で広く受け入れられている技法を使用して達成され得る。
【0238】
「元のまたは鋳型核酸」とは、隆起または空洞をコードするように「改変され」得る(すなわち遺伝子操作され得るか、または変異させられ得る)目的とするポリペプチドをコードする核酸を意味する。元のまたは開始核酸は、天然に存在する核酸であり得るか、または事前改変されている核酸(例えば、ヒト化抗体断片)を含み得る。核酸を「改変する」とは、元の核酸が目的とするアミノ酸残基をコードする少なくとも1つのコドンの挿入、欠失、または置き換えによって変異させられることを意味する。通常、元の残基をコードするコドンは、移入残基をコードするコドンに置き換えられる。この様式でDNAを遺伝子修飾するための技法は、Mutagenesis:a Practical Approach,M.J.McPherson,Ed.,(IRL Press,Oxford,UK.(1991)に概説されており、例えば、部位特異的変異誘発、カセット変異誘発、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異誘発を含む。元の/鋳型核酸を変異させることによって、元の/鋳型核酸によってコードされた元の/鋳型ポリペプチドがそれに従って対応して改変される。
【0239】
隆起または空洞は、合成手段によって、例えば、組換え技法、インビトロペプチド合成、前述の天然に存在しないアミノ酸残基を導入するための技法、ペプチドの酵素または化学的カップリング、またはこれらの技法のいくつかの組み合わせによって、第1または第2のポリペプチドの界面に「導入され」得る。したがって、「導入される」隆起または空洞は、「天然に存在しない」または「非天然」であり、これは、それが天然または元のポリペプチド(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)には存在しないことを意味する。
【0240】
一般に、隆起を形成するための移入アミノ酸残基は、比較的小数の「回転異性体」(例えば、約3~6つ)を有する。「回転異性体」とは、アミノ酸側鎖のエネルギー的に好ましい立体配座である。様々なアミノ酸残基の回転異性体の数は、Ponders and Richards,J.Mol.Biol.193:775-791(1987)に概説されている。
【0241】
一実施形態では、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドは、界面で接触する/相互作用する。第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドが界面で接触するいくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドの界面(配列)は、第1のFcポリペプチドの界面(配列)の空洞(「ホール」とも称される)内に位置付け可能な隆起(「ノブ」とも称される)を含む。一実施形態では、第1のFcポリペプチドが、空洞をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されているか、または第2のFcポリペプチドが、隆起をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されているか、またはこれらの両方である。一実施形態では、第1のFcポリペプチドが、空洞をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されており、第2のFcポリペプチドが、隆起をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されている。一実施形態では、第2のFcポリペプチドの界面は、第1のFcポリペプチドの界面の空洞内に位置付け可能な隆起を含み、空洞もしくは隆起、またはこれらの両方が、それぞれ、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドの界面に導入されている。第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドが界面で接触するいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド(配列)の界面は、第2のFcポリペプチドの界面(配列)の空洞内に位置付け可能な隆起を含む。一実施形態では、第2のFcポリペプチドが、空洞をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されているか、または第1のFcポリペプチドが、隆起をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されているか、またはこれらの両方である。一実施形態では、第2のFcポリペプチドが、空洞をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されており、第1のFcポリペプチドが、隆起をコードするように鋳型/元のポリペプチドから改変されている。一実施形態では、第1のFcポリペプチドの界面は、第2のFcポリペプチドの界面の空洞内に位置付け可能な隆起を含み、隆起もしくは空洞、またはこれらの両方が、それぞれ、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドの界面に導入されている。
【0242】
一実施形態では、隆起及び空洞は各々、天然に存在するアミノ酸残基を含む。一実施形態では、隆起を含むFcポリペプチドは、鋳型/元のポリペプチドの界面由来の元の残基を、元の残基よりも大きい側鎖体積を有する移入残基で置き換えることによって生成される。一実施形態では、隆起を含むFcポリペプチドは、前記ポリペプチドの界面由来の元の残基をコードするポリヌクレオチドが元の残基よりも大きい側鎖体積を有する移入残基をコードするポリヌクレオチドで置き換えられるステップを含む方法によって生成される。一実施形態では、元の残基は、トレオニンである。一実施形態では、元の残基は、T366である。一実施形態では、移入残基は、アルギニン(R)である。一実施形態では、移入残基は、フェニルアラニン(F)である。一実施形態では、移入残基は、チロシン(Y)である。一実施形態では、移入残基は、トリプトファン(W)である。一実施形態では、移入残基は、R、F、Y、またはWである。一実施形態では、隆起は、鋳型/元のポリペプチドの2つ以上の残基を置き換えることによって生成される。一実施形態では、隆起を含むFcポリペプチドは、366位のトレオニンのトリプトファンでの置き換えを含む(Kabat et al.(pp.688-696 in Sequences of proteins of immunological interest,5th ed.,Vol.1(1991;NIH,Bethesda,MD))のEU番号付けスキームに従うアミノ酸番号付け)。
【0243】
いくつかの実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、鋳型/元のポリペプチドの界面の元の残基を、元の残基よりも小さい側鎖体積を有する移入残基で置き換えることによって生成される。例えば、空洞を含むFcポリペプチドは、前記ポリペプチドの界面由来の元の残基をコードするポリヌクレオチドが元の残基よりも小さい側鎖体積を有する移入残基をコードするポリヌクレオチドで置き換えられるステップを含む方法によって生成され得る。一実施形態では、元の残基は、トレオニンである。一実施形態では、元の残基は、ロイシンである。一実施形態では、元の残基は、チロシンである。一実施形態では、移入残基は、システイン(C)ではない。一実施形態では、移入残基は、アラニン(A)である。一実施形態では、移入残基は、セリン(S)である。一実施形態では、移入残基は、トレオニン(T)である。一実施形態では、移入残基は、バリン(V)である。空洞は、鋳型/元のポリペプチドの1つ以上の元の残基を置き換えることによって生成され得る。例えば、一実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、トレオニン、ロイシン、及びチロシンからなる群から選択される2つ以上の元のアミノ酸の置き換えを含む。一実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、アラニン、セリン、トレオニン、及びバリンからなる群から選択される2つ以上の移入残基を含む。いくつかの実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、トレオニン、ロイシン、及びチロシンからなる群から選択される2つ以上の元のアミノ酸の置き換えを含み、前記元のアミノ酸は、アラニン、セリン、トレオニン、及びバリンからなる群から選択される移入残基で置き換えられる。いくつかの実施形態では、置き換えられる元のアミノ酸は、T366、L368、及び/またはY407である。一実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、366位のトレオニンのセリンでの置き換えを含む(Kabat et al.(上記参照)のEU番号付けスキームに従うアミノ酸番号付け)。一実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、368位のロイシンのアラニンでの置き換えを含む(Kabat et al.(上記参照)のEU番号付けスキームに従うアミノ酸番号付け)。一実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、407位のチロシンのバリンでの置き換えを含む(Kabat et al.(上記参照)のEU番号付けスキームに従うアミノ酸番号付け)。一実施形態では、空洞を含むFcポリペプチドは、T366S、L368A、及びY407Vからなる群から選択される2つ以上のアミノ酸置き換えを含む(Kabat et al.(上記参照)のEU番号付けスキームに従うアミノ酸番号付け)。これらの抗体断片のいくつかの実施形態では、隆起を含むFcポリペプチドは、366位のトレオニンのトリプトファンでの置き換えを含む(Kabat et al.(上記参照)のEU番号付けスキームに従うアミノ酸番号付け)。
【0244】
一実施形態では、本抗体は、WO2005/063816に記載されるように「ノブ」及び「ホール」を構成するFc変異を含む。例えば、ホール変異は、FcポリペプチドにおけるT366A、L368A、及び/またはY407Vのうちの1つ以上であり得、ノブ変異は、T366Wであり得る。
【0245】
V.ベクター、宿主細胞、及び組換え方法
DsbA及びDsbCを使用した異種ポリペプチド(例えば、抗体)の組換え産生の場合、それをコードする核酸は、単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。ポリペプチド(例えば、抗体)をコードするDNAは、従来の手技を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離及び配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物起源のいずれかのものである。IgG、IgM、IgA、IgD、及び、IgE定常領域を含む任意のアイソタイプの定常領域がこの目的のために使用され得、かかる定常領域が任意のヒトまたは動物種から得られ得ることが理解される。
【0246】
A.原核生物宿主細胞を使用した抗体の生成:
i.ベクター構築
本発明のポリペプチド(例えば、抗体)のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準の組換え技法を使用して得られ得る。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞等の抗体産生細胞から単離及び配列決定され得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技法を使用して合成され得る。得られた時点で、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主内で異種ポリヌクレオチドを複製及び発現することができる組換えベクターに挿入される。利用可能であり、かつ当該技術分野で既知である多くのベクターが本発明で使用され得る。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸の大きさ及びベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはこれらの両方)及びそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて様々な成分を含有する。ベクター成分としては、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入及び転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0247】
一般に、宿主細胞と適合性のある種由来のレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。このベクターは、通常、複製部位、及び形質転換細胞において表現型選択を提供することができるマーキング配列を持つ。例えば、E.coliは、典型的には、E.coli種由来のプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、それ故に形質転換細胞を特定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージは、内因性タンパク質の発現のための微生物によって使用され得るプロモーターも含有し得るか、またはそれを含有するように修飾され得る。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322誘導体の例は、Carter et al.,米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0248】
加えて、宿主微生物と適合性のあるレプリコン及び制御配列を含有するファージベクターは、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、GEM(商標)-11等のバクテリオファージが、E.coli LE392等の感受性宿主細胞を形質転換するために使用され得る組換えベクターを作製する際に利用され得る。
【0249】
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、2つのクラス、誘導プロモーター及び構成プロモーターに分けられる。誘導プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは不在、または温度の変化に応答してその制御下で増加したレベルのシストロンの転写を開始するプロモーターである。
【0250】
様々な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によりソースDNAからプロモーターを除去し、かつ単離されたプロモーター配列を本発明のベクターに挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に結合し得る。天然プロモーター配列も多くの異種プロモーターもいずれも、標的遺伝子の増幅及び/または発現を誘導するために使用され得る。いくつかの実施形態では、異種プロモーターが一般に天然標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現された標的遺伝子のより大きい転写及びより高い収率をもたらすため、異種プロモーターが利用される。
【0251】
原核生物宿主との使用に好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能的な他のプロモーター(他の既知の細菌またはファージプロモーター等)も好適である。それらのヌクレオチド配列が公開されており、それにより、当業者が、任意の必要とされる制限部位を提供するためにリンカーまたはアダプターを使用して、それらを標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンに作動可能に連結することが可能になっている(Siebenlist et al.,(1980)Cell 20:269)。
【0252】
翻訳開始領域(TIR)は、タンパク質の全体の翻訳レベルの主要な決定因子である。TIRは、シグナル配列をコードするポリヌクレオチドを含み、シャイン・ダルガノ配列の直上流から開始コドンのおよそ20ヌクレオチド下流まで延びている。一般に、このベクターは、TIRを含み、TIR及び変異形TIRは、当該技術分野で既知であり、TIRの生成方法は、当該技術分野で既知である。一連の核酸配列変異形がある範囲の翻訳強度で作製され、それにより多くの異なるポリペプチドの最適な分泌のためにこの因子を調整するための便利な手段を提供することができる。PhoA等のこれらの変異形に融合するレポーター遺伝子の使用により、異なる翻訳開始領域の相対翻訳強度の定量方法が提供される。変異形または変異体TIRがプラスミドベクターのバックグラウンドに提供され、それにより、成熟ポリペプチドの最大発現の翻訳強度の最適範囲を確立するように目的とする遺伝子が挿入される一組のプラスミド及び測定されるその発現を提供することができる。変異形TIRは、USP8,241,901に開示されている。
【0253】
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜にわたる発現ポリペプチドの転位を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明で選択されたシグナル配列は、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドに特有のシグナル配列を認識及びプロセシングしない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、本発明のシグナルポリペプチドから選択された原核生物シグナル配列により置換される。加えて、ベクターは、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Lpp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、及びMBPからなる群から選択されるシグナル配列を含み得る。
【0254】
一態様では、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)が、抗体を集合的にコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドが、抗体の軽鎖をコードし、別個のポリヌクレオチドが、抗体の重鎖をコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドが、抗体の軽鎖及び重鎖をコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)が、一アーム抗体を集合的にコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドが、(a)一アーム抗体の軽鎖及び重鎖、ならびに(b)Fcポリペプチドをコードする。一実施形態では、単一のポリヌクレオチドが、一アーム抗体の軽鎖及び重鎖をコードし、別個のポリヌクレオチドが、Fcポリペプチドをコードする。一実施形態では、別個のポリヌクレオチドが、それぞれ、一アーム抗体の軽鎖成分、一アーム抗体の重鎖成分、及びFcポリペプチドをコードする。一アーム抗体の産生については、例えば、WO2005063816に記載されている。
【0255】
本発明の抗体の発現に好適な原核生物宿主細胞としては、グラム陰性菌またはグラム陽性菌等のArchaebacteria及びEubacteriaが挙げられる。有用な細菌の例としては、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、E.coli細胞が、本発明の宿主として使用される。E.coli株の例としては、株W3110(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),pp.1190-1219、ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体(遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する株33D3(米国特許第5,639,635号)、ならびに株63C1及び64B4等)が挙げられる。いくつかの実施形態では、E.coli株は、62A7(ΔfhuA(ΔtonA)ptr3、lacIq、lacL8、ompTΔ(nmpc-fepE)ΔdegP ilvG修復型)と名付けられたW3110誘導体である。他の株及びその誘導体、例えば、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coli λ1776(ATCC 31,537)、及びE.coli RV308(ATCC 31,608)も好適である。これらの例は、限定するものではなく、例証するものである。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のうちのいずれかの誘導体の構築方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309-314(1990)に記載されている。一般に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮して適切な細菌を選択することが必要である。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410等の周知のプラスミドを使用してレプリコンを提供する場合、E.coli、Serratia、またはSalmonella種が宿主として好適に使用され得る。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素しか分泌すべきでなく、さらなるプロテアーゼ阻害剤が細胞培養物に組み込まれることが望ましくあり得る。
【0256】
細菌培養におけるポリペプチドの産生収率及び品質を改善するために、細菌細胞が修飾され得る。例えば、分泌抗体ポリペプチドの適切な集合及び折り畳みを改善するために、細菌宿主細胞は、宿主原核生物細胞を共形質転換するために使用され得るDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、及び/またはDsbG)等のシャペロンタンパク質を過剰発現するさらなるベクターを含み得る。シャペロンタンパク質が細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解を容易にすることが実証されている。
【0257】
ii.抗体産生
宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切になるように修飾された従来の栄養素培地で培養される。
【0258】
形質転換とは、DNAが染色体外要素として、または染色体組み込み体によってのいずれかで複製可能になるように、DNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換がかかる細胞に適切な標準の技法を使用して行われる。一般に、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理が、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞に使用される。形質転換の別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるなお別の技法は、電気穿孔である。
【0259】
本発明のポリペプチドを産生するために使用される原核生物細胞は、当該技術分野で既知であり、かつ選択された宿主細胞の培養に好適な培地で成長する。好適な培地の例としては、必要な栄養素補助剤を含むルリアブロス(LB)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は、発現ベクターを含有する原核生物細胞の成長を選択的に許容するために、発現ベクターの構築に基づいて選択された選択剤も含有する。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を成長させるための培地に添加される。
【0260】
炭素、窒素、及び無機リン酸塩源に加えて、任意の必要な補助剤も、単独で、または複合窒素源等の別の補助剤もしくは培地との混合物として導入される適切な濃度で含まれ得る。任意に、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール、及びジチオスレイトールからなる群から選択される1つ以上の還元剤を含有し得る。
【0261】
原核生物宿主細胞は、好適な温度で培養される。E.coli成長の場合、例えば、好ましい温度は、約20℃~約39℃の範囲、より好ましくは約25℃~約37℃の範囲、さらにより好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて約5~約9の範囲の任意のpHであり得る。E.coliの場合、pHは、好ましくは約6.8~約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0262】
誘導プロモーターが本発明の発現ベクターに使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本発明の一態様では、PhoAプロモーターは、ポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸塩制限培地で培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.方法(2002),263:133-147を参照のこと)、またはWO2002/061090に記載の培地である。様々な他の誘導因子が、当該技術分野で既知の用いられるベクター構築物に従って使用され得る。
【0263】
一実施形態では、本発明の発現ポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、それから回収される。タンパク質回収は、典型的には、一般に浸透圧ショック、超音波処理、または溶解等の手段による微生物の破壊を伴う。細胞が破壊されると、細胞残屑または全細胞は、遠心分離または濾過によって除去され得る。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製される。あるいは、タンパク質は、培養培地に輸送され、その中で単離され得る。細胞が培養物から除去され得、培養上清が、産生されたタンパク質のさらなる精製のために濾過及び濃縮される。発現ポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイ等の一般に既知の方法を使用してさらに単離及び特定され得る。
【0264】
本発明の一態様では、抗体産生は、発酵プロセスによって大量に行われる。様々な大規模供給バッチ発酵手技が組換えポリペプチドの産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分布させるために撹拌インペラーを使用する。小規模発酵とは、一般に、容積がおよそ100リットル以下であり、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る発酵槽での発酵を指す。
【0265】
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が所望の密度、例えば、約180~220のOD550になるまで好適な条件下で成長した後に開始され、その段階で、細胞は、初期静止期にある。様々な誘導因子が、当該技術分野で既知の上述の用いられるベクター構築物に従って使用され得る。細胞は、誘導前により短い期間成長し得る。細胞は、通常、約12~50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間も使用され得る。
【0266】
本発明のポリペプチドの産生収率及び品質を改善するために、様々な発酵条件が修正され得る。例えば、分泌抗体ポリペプチドの適切な集合及び折り畳みを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、及び/またはDsbG)等のシャペロンタンパク質を過剰発現するさらなるベクターを使用して、宿主原核生物細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質が細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解を容易にすることが実証されている。Chen et al.,(1999)J.Biol.Chem.274:19601-19605、Georgiou et al.,米国特許第6,083,715号、Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号、Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100-17105、Ramm and Pluckthun,(2000)J.Biol.Chem.275:17106-17113、Arie et al.,(2001)Mol.Microbiol.39:199-210。いくつかの実施形態では、DsbA及びCは、細菌宿主細胞で発現される。
【0267】
発現異種タンパク質(特にタンパク質分解感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損したある特定の宿主株が本発明に使用され得る。例えば、宿主細胞株は、既知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、及びそれらの組み合わせをコードする遺伝子において遺伝子変異(複数可)をもたらすように修飾され得る。いくつかのE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、Joly et al.,(1998)(上記参照)、Georgiou et al.,米国特許第5,264,365号、Georgiou et al.,米国特許第5,508,192号、Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63-72(1996)に記載されている。
【0268】
一実施形態では、タンパク質分解酵素が欠損し、かつ1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換されたE.coli株が、本発明の発現系における宿主細胞として使用される。
【0269】
iii.抗体精製
当該技術分野で既知の標準のタンパク質精製方法が用いられ得る。以下の手技:免疫親和性またはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、DEAE等のシリカまたは陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び例えばSephadex G-75を使用したゲル濾過が、好適な精製手技の例示である。
【0270】
一態様では、固相に固定化されたタンパク質Aが、本発明の抗体産物の免疫親和性精製に使用される。タンパク質Aは、高親和性で抗体のFc領域に結合するStaphylococcus aureas由来の41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark et al.,(1983)J.Immunol.Meth.62:1-13。タンパク質Aが固定化される固相は、好ましくは、ガラスまたはシリカ表面を含むカラム、より好ましくは、制御孔ガラスカラムまたはケイ酸カラムである。いくつかの適用では、カラムは、不純物の非特異的結合を阻止するためにグリセロール等の試薬でコーティングされている。
【0271】
精製の第1のステップとして、上述のように細胞培養から得られた調製物がタンパク質A固定化固相に適用されて、目的とする抗体のタンパク質Aへの特異的結合を可能にする。その後、固相が洗浄されて、固相に非特異的に結合している不純物を除去する。最後に、目的とする抗体が、溶出により固相から回収される。
【0272】
本発明のいくつかの実施形態では、精製ステップのうちの1つ以上から得られる画分は、DsbA及び/またはDsbCの除去について分析される。いくつかの実施形態では、DsbA及び/またはDsbCの除去は、免疫アッセイ、例えば、本明細書に記載の免疫アッセイによって決定される。
【0273】
本発明は、例えば、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、もしくはその断片)、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)等の細胞毒性薬にコンジュゲートされる本明細書に記載の抗体のうちのいずれかを含む免疫コンジュゲート(同義に「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」と称される)も提供する。
【0274】
VI.DsbA及びDsbCの組成物
いくつかの態様では、本発明は、超高純度DsbA及び/またはDsbCを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、約95.0%、約96.0%、約97.0%、約98.0%、約99.0%、または約99.5%のうちのいずれかを超える単量体DsbAであるDsbAを含む。いくつかの実施形態では、95%の単量体DsbAを含む組成物は、調製物中の材料の5%未満が、DsbAの産生中に存在する細胞または細胞溶解物(例えば、タンパク質、核酸、脂質等)中に存在した他の物質である組成物である。いくつかの実施形態では、単量体DsbAポリペプチドの割合は、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、SEC-HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAを含む組成物は、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、または約0.1%のうちのいずれか未満の低分子量種(例えば、SECまたはSDS-PAGEによって測定される、単量体DsbA未満の分子量を有する種)を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAを含む組成物は、約2%未満の低分子量種を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAを含む組成物は、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、または約0.1%のうちのいずれか未満の高分子量種(例えば、SECまたはSDS-PAGEによって測定される、単量体DsbAを超える分子量を有する種)を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAを含む組成物は、約1%未満の高分子量種を含む。
【0275】
いくつかの実施形態では、組成物は、約95.0%、約96.0%、約97.0%、約98.0%、約99.0%、または約99.5%のうちのいずれかを超える単量体DsbCであるDsbCを含む。いくつかの実施形態では、95%の単量体DsbCを含む組成物は、調製物中の材料の5%未満が、DsbCの産生中に存在する細胞または細胞溶解物(例えば、タンパク質、核酸、脂質等)中に存在した他の物質である組成物である。いくつかの実施形態では、単量体DsbCポリペプチドの割合は、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、SEC-HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCを含む組成物は、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、または約0.1%のうちのいずれか未満の低分子量種(例えば、SECまたはSDS-PAGEによって測定される、単量体DsbC未満の分子量を有する種)を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCを含む組成物は、約2%未満の低分子量種を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCを含む組成物は、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、または約0.1%のうちのいずれか未満の高分子量種(例えば、SECまたはSDS-PAGEによって測定される、単量体DsbCを超える分子量を有する種)を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCを含む組成物は、約1%未満の高分子量種を含む。
【0276】
いくつかの実施形態では、高度に精製されたDsbAまたはDsbCを含む組成物が、使用のために製剤化される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAまたはDsbCを含む組成物は、例えば、アジュバントを添加して免疫応答の生成を容易にすることによって、DsbAまたはDsbCに対する抗体を生成するように動物の免疫化するために製剤化される。他の実施形態では、超高純度DsbAまたはDsbCを含む組成物は、免疫アッセイでの使用、例えば、陽性対照または標準曲線としての使用のために製剤化される。
【0277】
VII.DsbA及びDsbCに対する抗体の生成
ある特定の態様では、本発明は、DsbA及び/またはDsbCの存在について組換えポリペプチド試料を分析するための免疫アッセイで使用するための抗体(例えば、ポリクローナル抗体及び/またはモノクローナル抗体)を生成するために免疫原として使用するための超高純度DsbA及び超高純度DsbCを提供する。例えば、本抗体は、組換えポリペプチドがDsbA及び/またはDsbCを過剰発現する細菌細胞で産生された組換えポリペプチド試料中のDsbA及びまたはDsbCを検出及び/または定量するための免疫アッセイで使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明は、超高純度DsbAに特異的に結合するポリクローナル抗体及び/または超高純度DsbCに特異的に結合するポリクローナル抗体を提供する。いくつかの態様では、ポリクローナル抗体は、DsbAまたはDsbCの異なるエピトープに特異的に結合し、それ故に、DsbAまたはDsbC断片、変異形、誤って折り畳まれたタンパク質等を検出するための有用性を提供する。免疫アッセイで測定される試料中のDsbAまたはDsbCのレベルの過剰定量をもたらし得る宿主細胞タンパク質不純物に対するウサギ抗体の生成を最小限に抑えるために、動物(例えば、ウサギ)が超高純度DsbAまたはDsbCで免疫化される。
【0278】
本発明は、DsbAに特異的に結合する抗体及びDsbCに特異的に結合する抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注入によって動物において産生される。二機能性または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、R及びR1が異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるポリペプチド、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートすることが有用であり得る。
【0279】
動物は、例えば、100μgまたは5μgのポリペプチドまたはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を3体積の完全フロイントアジュバントと混合し、この溶液を複数の部位で皮内注入することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物は、複数の部位での皮下注入によって完全フロイントアジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートの最初の量の1/5~1/10で追加免疫される。7~14日後、動物から採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。動物は、力価がプラトーに到達するまで追加免疫される。いくつかの実施形態では、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるポリペプチドにコンジュゲートされ、かつ/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートされたもので追加免疫される。コンジュゲートは、ポリペプチド融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン等の凝集剤も免疫応答を増強するために好適に使用される。
【0280】
いくつかの実施形態では、DsbAまたはDsbCで免疫化される動物は、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ロバ、またはニワトリである。
【0281】
いくつかの実施形態では、DsbAまたはDsbCに特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得られる。すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じる想定される変異形は除外され、かかる変異形は、一般に、少量で存在する。したがって、「モノクローナル」という修飾語句は、別個の抗体またはポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。上述のように、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)が最初に説明したハイブリドーマ方法を使用して作製され得るか、または組換えDNA方法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。
【0282】
いくつかの態様では、本発明は、DsbAに特異的に結合する抗体の精製方法であって、抗DsbA抗体を含む組成物を支持材料に結合している超高純度DsbAを含むクロマトグラフィー材料と接触させることと、クロマトグラフィー材料を洗浄して、結合していない化合物を除去することと、抗DsbA抗体を溶出させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、支持材料に結合している超高純度DsbAは、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.05%、約0.01%のうちのいずれか未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAは、本明細書に記載の方法によって調製される。いくつかの実施形態では、本発明は、DsbAに特異的に結合するポリクローナル抗体の精製方法を提供する。いくつかの実施形態では、ポリクローナル抗体の約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.05%、約0.01%のうちのいずれか未満が、非DsbA化合物に特異的に結合する。
【0283】
いくつかの態様では、本発明は、DsbCに特異的に結合する抗体の精製方法であって、抗DsbC抗体を含む組成物を支持材料に結合している超高純度DsbCを含むクロマトグラフィー材料と接触させることと、クロマトグラフィー材料を洗浄して、結合していない化合物を除去することと、抗DsbC抗体を溶出させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、支持材料に結合している超高純度DsbAは、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.05%、約0.01%のうちのいずれか未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCは、本明細書に記載の方法によって調製される。いくつかの実施形態では、本発明は、DsbCに特異的に結合するポリクローナル抗体の精製方法を提供する。いくつかの実施形態では、ポリクローナル抗体の約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.05%、約0.01%のうちのいずれか未満が、非DsbC化合物に特異的に結合する。
【0284】
いくつかの実施形態では、抗DsbA及び/または抗DsbC抗体は、抗体を、クロマトグラフィー材料に固定化された超高純度DsbAまたはDsbC(例えば、活性化グリセリル制御孔ガラスに固定化された超高純度DsbA及び/またはDsbC)と接触させることによって精製される。いくつかの実施形態では、抗体は、固定化DsbAまたはDsbCとの接触前に、例えば、硫酸アンモニウム沈殿によって濃縮される。いくつかの実施形態では、抗体が固定化DsbAまたはDsbCに結合し、その後、固定化DsbAまたはDsbC-抗体複合体が洗浄されて、結合していない不純物を除去する。さらなる実施形態では、抗体は、装填緩衝液として異なるpHの緩衝液で溶出することによって固定化DsbAまたはDsbCから溶出し、例えば、抗体は、中性pH(例えば、pH7.2)の固定化DsbAまたはDsbCに結合し、酸性pH(例えば、pH2.0)で溶出される。いくつかのさらなる実施形態では、抗DsbAまたは抗DsbC抗体に対して、さらなるクロマトグラフィー、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを行う。いくつかの実施形態では、精製された抗DsbAまたは抗DsbC抗体(例えば、ポリクローナル抗体)は、それぞれ、超高純度DsbAまたはDsbCへのそれらの結合についてアッセイされる。
【0285】
VIII.DsbA及びDsbCに対する抗体を使用した免疫アッセイ
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbAの存在及び/または分量についての組換えポリペプチド試料の分析方法であって、免疫アッセイを使用して試料中のDsbAを検出することと、試料中で検出されたDsbAの量を超高純度DsbA参照標準の1つ以上の濃度の検出と比較することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、または約0.01%のうちのいずれか未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbA参照標準は、本明細書に記載の方法によって調製される。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、または約0.01%のうちのいずれか未満の非DsbA化合物に結合する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。他の実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、免疫アッセイにおいて捕捉抗体として使用される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、検出抗体として使用される。いくつかの実施形態では、検出抗体は、検出剤(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、DsbAは、E.coli DsbAである。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、宿主細胞(例えば、E.coli宿主細胞)内で調製される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、DsbAを過剰発現する(例えば、DsbAを過剰発現したE.coli宿主細胞)。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物であるか、または組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。いくつかの実施形態では、超高純度DsbAに特異的に結合する抗体は、免疫アッセイにおいて、約50ng/mL、約25ng/mL、約15ng/mL、約10ng/mL、約5ng/mL、約2.5ng/mL、及び/または約1.5ng/mL未満、及び/またはそれらのうちのいずれかのDsbAを検出することができる。
【0286】
いくつかの実施形態では、本発明は、DsbCの存在及び/または分量についての組換えポリペプチド試料の分析方法であって、免疫アッセイを使用して試料中のDsbCを検出することと、試料中で検出されたDsbCの量を超高純度DsbC参照標準の1つ以上の濃度の検出と比較することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、調製物は、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、または約0.01%のうちのいずれか未満の不純物を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbC参照標準は、本明細書に記載の方法によって調製される。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、または約0.01%のうちのいずれか未満の非DsbC化合物に結合する。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。他の実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、免疫アッセイにおいて捕捉抗体として使用される。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、免疫アッセイにおいて、約50ng/mL、約35ng/mL、約25ng/mL、約15ng/mL、約10ng/mL、約5ng/mL、約2.5ng/mL、約1.5ng/mL、及び/または約1ng/mL未満、及び/またはそれらのうちのいずれかのDsbCを検出することができる。いくつかの実施形態では、超高純度DsbCに特異的に結合する抗体は、検出抗体として使用される。いくつかの実施形態では、検出抗体は、検出剤(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、DsbCは、E.coli DsbCである。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、宿主細胞(例えば、E.coli宿主細胞)内で調製される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、DsbCを過剰発現する(例えば、DsbCを過剰発現したE.coli宿主細胞)。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物であるか、または組換えポリペプチド調製物から得られ、組換えポリペプチド調製物は、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチド調製物は、最終精製産物である。
【0287】
いくつかの態様では、本発明は、DsbA及びDsbC検出及び定量化のための免疫アッセイ方法を提供する。かかる方法は、DsbA及び/またはDsbCが過剰発現されてポリペプチド折り畳み及び集合を容易にする、宿主細胞、例えば、E.coliで産生された組換えポリペプチド調製物中のDsbA及びDsbCの検出及び定量化のために使用され得る。いくつかの実施形態では、免疫アッセイ方法は、本明細書に記載の捕捉及び検出抗DsbAまたはDsbC抗体を使用する。いくつかの実施形態では、本抗体は、サンドイッチアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイ、電気化学的アッセイ(ECL)アッセイ、磁気免疫アッセイを含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の免疫アッセイ方法で使用される。ある特定の実施形態では、本方法は、抗DsbAまたは抗DsbC抗体のDsbAまたはDsbCへの結合を許容する条件下で、組換えポリペプチド調製物の試料を本明細書に記載の抗DsbAまたは抗DsbC抗体と接触させることと、複合体が、それぞれ、抗DsbAまたは抗DsbC抗体とDsbAまたはDsbCとの間に形成されたかを検出することと、を含む。
【0288】
ある特定の実施形態では、標識された抗DsbA及び/または抗DsbC抗体が提供される。標識としては、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度の高い標識、化学発光標識、及び放射性標識等)、ならびに間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用により検出される酵素またはリガンド等の部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な標識としては、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土類キレートまたはフルオレセイン等のフルオロフォア及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、蛍ルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ等)とカップリングした複素環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0289】
ある特定の実施形態では、捕捉抗DsbAまたは抗DsbC抗体は、固相に固定化される。いくつかの実施形態では、固定化のために使用される固相は、例えば、表面、粒子、多孔質マトリックス、ビーズ等の形態の支持体を含む、本質的に水不溶性であり、かつ免疫測定アッセイに有用な任意の不活性支持体または担体である。一般に使用されている支持体の例としては、小シート、SEPHADEX(登録商標)、ゲル、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から製造されたアッセイプレートまたは試験管、例えば、96ウェルマイクロタイタープレート、ならびに濾紙等の粒子材料、アガロース、架橋デキストラン、及び他の多糖が挙げられる。あるいは、米国特許第3,969,287号、同3,691,016号、同4,195,128号、同4,247,642号、同4,229,537号、及び同4,330,440号に記載の反応性水不溶性マトリックス、例えば、臭化シアン活性化炭水化物、及び反応性基質が、捕捉-試薬固定化に好適に用いられる。いくつかの実施形態では、固定化捕捉試薬は、一度にいくつかの試料を分析するために使用され得るマイクロタイタープレート上にコーティングされる。例示的なマイクロタイタープレートとしては、MICROTEST(登録商標)、MAXISORP(登録商標)、NUNC MAXISORB(登録商標)、及びIMMULON(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。固相は、非共有結合もしくは共有結合相互作用、または所望の場合、物理的結合によって結合し得る、上で定義された捕捉試薬でコーティングされる。結合技法としては、米国特許第4,376,110号及びそこに引用される参考文献が挙げられる。共有結合の場合、プレートまたは他の固相が、室温で1時間等の当該技術分野で周知の条件下で、捕捉試薬と一緒に架橋剤とインキュベートされる。いくつかの実施形態では、プレートが積み重ねられ、アッセイ自体のかなり前にコーティングされ、その後、アッセイが、手動で、半自動で、または自動で、例えば、ロボット工学を使用して、いくつかの試料で同時に行われる。
【0290】
いくつかの実施形態では、コーティングされたプレートは、結合部位に非特異的に結合してそれを飽和させる遮断剤で処理されて、遊離リガンドのプレートのウェル上の過剰部位への望ましくない結合を阻止する。この目的に適切な遮断剤の例としては、例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、カゼイン、及び脱脂乳が挙げられるが、これらに限定されない。遮断処理は、典型的には、周囲温度である期間、典型的には、約1~4時間の条件下で行われる。
【0291】
いくつかの実施形態では、コーティング及び遮断後、分析される、適切には、希釈される試料が固定化相に添加される。この目的のために希釈に使用され得る例示的な緩衝液としては、(a)0.5% BSA、0.05% TWEEN 20(登録商標)洗剤(P20)、0.05% PROCLIN(登録商標)300抗生物質、5mM EDTA、0.25% 3-((3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネート(CHAPS)界面活性剤、0.2%ベータ-ガンマグロブリン、及び0.35M NaClを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS);(b)0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.05% P20、及び0.05% PROCLIN(登録商標)300を含有するPBS(pH7);(c)0.5% BSA、0.05% P20、0.05% PROCLIN(登録商標)300、5mM EDTA、及び0.35M NaClを含有するPBS(pH6.35);(d)0.5% BSA、0.05% P20、0.05% PROCLIN(登録商標)300、5mM EDTA、0.2%ベータ-ガンマグロブリン、及び0.35M NaClを含有するPBS;ならびに(e)0.5% BSA、0.05% P20、0.05% PROCLIN(登録商標)300、5mM EDTA、0.25% CHAPS、及び0.35M NaClを含有するPBSが挙げられるが、これらに限定されない。
【0292】
試料及び固定化捕捉試薬のインキュベーションの条件は、アッセイの感度を最大にし、解離を最小限に抑えるように、かつ試料中に存在する目的とする任意の検体(DsbAまたはDsbC等)が固定化捕捉試薬に確実に結合するように選択される。任意に、試料は、固定化捕捉試薬から分離されて(例えば、洗浄によって)、捕捉されていない材料を除去する。洗浄に使用される溶液は、一般に、緩衝液(例えば、「洗浄緩衝液」)である。架橋剤または他の好適な薬剤もこの段階で添加されて、目的とする捕捉された材料がその後のステップである程度解離されるという懸念がある場合に、目的とする結合した材料(例えば、DsbAまたはDsbC)が捕捉試薬に共有結合することを可能にし得る。
【0293】
存在する目的とする任意の結合した材料を有する固定化捕捉試薬が、検出抗DsbAまたは抗DsbC抗体と接触する。いくつかの実施形態では、検出抗体は、ビオチン化される。いくつかの実施形態では、ビオチン化標識のための検出手段は、アビジンまたはストレプトアビジン-HRPである。いくつかの実施形態では、検出手段の読み出しは、蛍光または比色である。
【0294】
捕捉試薬に結合している試料由来の目的とする任意の遊離材料(例えば、DsbAまたはDsbC)のレベルは、検出抗体の検出手段を使用して測定または定量化される。いくつかの実施形態では、測定または定量化は、上述のステップの結果として生じる反応を標準曲線と比較して、目的とする材料(例えば、DsbAまたはDsbC)のレベルを既知の量と比較して決定することを含む。
【0295】
固定化捕捉試薬に添加される抗体は、直接標識されるか、または過剰な第1の抗体を洗い流した後に第1の抗体の動物種のIgGに対して指向されたモル過剰の第2の標識抗体を添加することによって間接的に検出されるかのいずれかである。後者の間接アッセイでは、第1の抗体に対する標識された抗血清が試料に添加されて、標識抗体をインサイチュで産生する。
【0296】
第1の抗体または第2の抗体のいずれかに使用される標識は、目的とする遊離材料(例えば、DsbAまたはDsbC)の第1の抗体または第2の抗体への結合を妨害しない任意の検出可能な機能性である。好適な標識の例としては、免疫アッセイでの使用に既知のもの、例えば、上に列挙されるものが挙げられる。
【0297】
これらの標識をタンパク質またはポリペプチドに共有結合させる従来の方法が利用可能である。例えば、カップリング剤、例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジン等を使用して、抗体を、上述の蛍光標識、化学発光標識、及び酵素標識でタグすることができる。例えば、米国特許第3,940,475号(蛍光測定法)及び米国特許第3,645,090号(酵素)、Hunter et al.,Nature 144:945(1962)、David et al.,Biochemistry,13:1014-1021(1974)、Pain et al.,J.Immunol.Methods 40:219-230(1981)、ならびにNygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407-412(1982)を参照されたい。いくつかの実施形態では、標識は、検出手段としてストレプトアビジン-HRPを使用するビオチンである。
【0298】
酵素等のかかる標識の抗体へのコンジュゲーションは、免疫アッセイ技法の技術者にとって標準の操作手技である。例えば、O’Sullivan et al.“Methods for the Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,”in Methods in Enzymology,ed.J.J.Langone and H.Van Vunakis,Vol.73(Academic Press,New York,N.Y.,1981),pp.147-166を参照されたい。
【0299】
最後に標識された抗体を添加した後、結合している抗体の量は、過剰な結合していない標識抗体を洗浄により除去し、その後、標識に適切な検出方法を使用して結合した標識の量を測定または定量化し、測定された量を生物学的試料中の目的とする抗体の量と相関させることによって決定される。例えば、酵素の場合、発現及び測定された色の量は、存在する目的とする抗体の量の定量化を可能にする直接測定値となる。一実施形態では、HRPは、標識であり、色は、基質OPDを490nmの吸光度で使用して検出される。
【0300】
一例では、第1の標識されていない抗体に対して指向された酵素標識された第2の抗体が固定化相から洗浄された後、色または化学発光が、固定化捕捉試薬を酵素基質とインキュベートすることによって発現及び測定される。その後、目的とする材料(例えば、DsbAまたはDsbC)の濃度が、並行して標準実行によって生成された色または化学発光と比較することによって計算される。
【0301】
いくつかの実施形態では、本発明は、タンパク質の折り畳み及び集合を容易にするためのDsbA及び/またはDsbCを含む細菌内で調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物の品質アッセイを提供する。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、DsbA及び/またはDsbCを過剰発現する。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、E.coli細胞である。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、DsbA及び/またはDsbCを過剰発現したE.coli細胞である。いくつかの実施形態では、品質アッセイは、組換えポリペプチドを含む組成物の試料を免疫アッセイに供して、DsbAまたはDsbCを検出することを含み、ある特定の量を超えるDsbAまたはDsbCの検出は、治療用ポリペプチドの薬学的組成物が動物への投与に好適ではないことを示す。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドを含む組成物の試料は、細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、組換えポリペプチドを含む組成物から得られ、組換えポリペプチドは、1つ以上のクロマトグラフィー精製ステップに供されている。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドを含む組成物は、最終精製産物である。いくつかの実施形態では、約50ppm、約40ppm、約30ppm、約20ppm、約10ppm、約9ppm、約8ppm、約7ppm、約6ppm、約5ppm、約4ppm、約3ppm、約2ppm、約1ppm、約0.9ppm、約0.8ppm、約0.7ppm、約0.6ppm、約0.5ppm、約0.4ppm、約0.3ppm、約0.2ppm、または約0.1ppmのうちのいずれか未満のDsbA及び/またはDsbCの濃度は、薬学的組成物が動物への投与に好適であることを示す。
【0302】
IX.製品及びキット
本明細書に記載の方法によって精製されるポリペプチド及び/または本明細書に記載の方法によって精製されるポリペプチドを含む製剤は、製品に含まれ得る。いくつかの実施形態では、製品は、本明細書に記載の超高純度DsbA及び/またはDsbCポリペプチドを使用して生成された抗体を含む。製品は、ポリペプチド、抗体、ポリペプチド製剤、及び/または抗体製剤を収容する容器を含み得る。好ましくは、製品は、(a)本明細書に記載のポリペプチド、抗体、ポリペプチド製剤、及び/または抗体製剤を含む組成物を容器内に含む容器、ならびに(b)ポリペプチド及び/または抗体の使用に関する指示を有する添付文書を含む。
【0303】
製品は、容器と、容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書と、を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、製剤を保持または収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであり得る)。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、容器は、シリンジである。いくつかの実施形態では、シリンジは、注入デバイス内にさらに収容される。いくつかの実施形態では、注入デバイスは、自己注入器である。
【0304】
「添付文書」は、ポリペプチド、抗体、ポリペプチド製剤、及び/または抗体製剤の使用に関する情報を含む治療薬の商業用パッケージ内に習慣的に含まれる指示を指すために使用される。
【0305】
いくつかの実施形態では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbAの検出のためのキットであって、本明細書に記載の抗DsbA抗体を含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbCの検出のためのキットであって、本明細書に記載の抗DsbC抗体を含む、キットを提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbA及びDsbCの検出のためのキットであって、本明細書に記載の抗DsbA抗体及び本明細書に記載の抗DsbC抗体を含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細菌細胞から調製された組換えポリペプチドを含む薬学的組成物中のDsbAの検出のためのキットを提供し、細菌細胞(例えば、E.coli細胞)は、DsbA及び/またはDsbCを過剰発現する。いくつかの実施形態では、キットは、使用に関する指示を含む。いくつかの実施形態では、キットは、試料中のDsbA及び/またはDsbCを定量するための標準曲線を生成する際の参照標準として使用するための超高純度DsbA及び/またはDsbCをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、試料中のDsbA及び/またはDsbCを検出するためのあるアッセイにおける陽性対照として使用するための超高純度DsbA及び/またはDsbCをさらに含む。
【0306】
本明細書に開示される特徴は全て、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えられてもよい。したがって、別途明確に示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の一例にすぎない。
【0307】
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例によって例証されている。本明細書における全ての参考文献の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0308】
以下の実施例は、単に本発明の例示となるよう意図されており、それ故に、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定するものではなく、例証として提供されている。
【0309】
実施例1.E.coliタンパク質のアッセイは、DsbAまたはDsbCを適切に測定しない。
ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)は、ジスルフィド結合を形成するためのチオール-ジスルフィド交換反応によってタンパク質中のシステインを酸化することができる強酸化剤である。これは、細菌におけるジスルフィド結合形成の一次触媒であり、タンパク質の正しいタンパク質折り畳みを促進する。同様に、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbC)は、細胞のペリプラズムにおける酸化的タンパク質-折り畳み中のジスルフィド結合イソメラーゼである。DsbA及びDsbCは、典型的には、E.coliで高レベルでは発現されないが、DsbA及び/またはDsbCを過剰発現するE.coliが抗体(例えば、多重特異性抗体)を含むヘテロ多量体真核生物タンパク質の適切な集合及び折り畳みを改善するために使用されている。
【0310】
E.coliタンパク質(ECP)のアッセイがDsbA及び/またはDsbCの存在を適切に検出及び定量することができるかを決定するために、精製されたDsbAまたはDsbCの試料を、アッセイ希釈剤(0.15M NaCl/0.1M NaPO
4/0.1%魚ゼラチン/0.05% Polysorbate 20/0.05% Proclin 300)に異なる濃度で添加し、ECPアッセイで試験した(Zhu-Shimoni,J.et al.,2014,Biotech and Bioeng.111:2367-2379)。E.coliタンパク質のアッセイがウシ血清アルブミンを検出すべきではないため、この哺乳類タンパク質を陰性対照として使用した。結果を表3に示す。
表3.ECPアッセイ検出
【0311】
これらの結果は、ECPアッセイがDsbAまたはDsbCを適切に検出及び定量しないことを示す。さらに、E.coli内で調製された治療用タンパク質の放出アッセイの一部としてのE.coli残物(例えば、E.coliタンパク質及び核酸)を検出するための商業的アッセイは、これらのアッセイが、典型的には、DsbA及び/またはDsbC発現が最小限であるE.coli細胞抽出物に対するポリクローナル抗体を作製することによって生成されるため、DsbA及び/またはDsbCを特定しない。したがって、DsbA及び/またはDsbC検出アッセイを妨害し得る他のE.coliタンパク質及び/または核酸への反応性が最小限に抑えられたDsbA及び/またはDsbCに高度に特異的なポリクローナル抗体を生成するために超高純度DsbA及び/またはDsbCを調製する必要がある。加えて、DsbA及び/またはDsbCの超高純度調製物は、治療用ポリペプチド調製物中のDsbA及び/またはDsbCを正確に検出するためのDsbA及び/またはDsbC標準の生成、ならびに研究及び商業的ポリペプチド産生のためのアッセイ品質を保証するためのDsbA及び/またはDsbC陽性対照の生成に有用である。
【0312】
実施例2.超高純度DsbAの精製
材料及び方法
抽出ステップ
DsbAをE.coliで発現させた(62A7 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3、lacIq、lacL8、ompTΔ(nmpc-fepE)ΔdegP ilvG修復型と名付けられたW3110誘導体)(Joly,JC and Swartz JR 1994,Biochem.33:4231-4236、Joly,JC and Swartz JR 1997,Biochem.36:10067-10072、米国特許第5,789,199号)。細胞ペーストを10mM MOPS(pH7.1)中に懸濁し(50g細胞ペースト/1L)、懸濁液が均質になるまで混合した。微小流動化剤110Fを7000psiで使用して細胞溶解を行った。均等物を(10%PEIストック溶液を使用して)0.1%PEIになるように条件付け、周囲温度(約21℃)で30分間混合した。懸濁液を、8500rpmで30分間遠心分離した遠心分離物を収集して、0.22umのDuraporeフィルターを介して濾過した。
【0313】
精製方法
全てのカラムクロマトグラフィーステップをGE製のAKTA Explorersで行った。DsbAを、均質化及び遠心分離を使用してE.coli細胞ペーストから抽出した。遠心分離物を、Q Sepharose(登録商標)FF(QSFF)カラムを使用して結合及び溶出モードで陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。その後、QSFFプールを、Poros 50 HSカラムを使用して結合及び溶出モードで陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。詳細な実行条件を表4及び5に記載する。
【0314】
Q-Sepharose(登録商標)ステップ
モード:結合及び溶出、樹脂:Q-Sepharose(登録商標)FF(GE)、カラム高さ:20~30cm、流量:150cm/時間、装填密度:6mg/mL以下)。
表4:QSFFプロセス
【0315】
プール:プールをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってアッセイし、最大量のDsbAを含有する画分に基づいてプールした(データ示されず)。
【0316】
Poros 50 HSステップ
モード:結合及び溶出、樹脂:Poros 50 HS(Applied Biosystems)、カラム高さ:20~30cm、流量:150cm/時間、装填密度:6mg/mL以下)。
表5:Poros 50 HSプロセス
【0317】
プール:画分を、SDS-PAGEゲル及びSECによって、純度に基づいて分析してプールした(
図3及び4)。
【0318】
Poros 50 HSプールの濃度
プールを、3000rpmで約30分間遠心分離した10kDのCentricon膜(Millipore)を使用して約3.0mg/mLに濃縮した。
【0319】
分析方法
力価決定
DsbA遠心分離物の力価を、GE Healthcare製のSuperdex 200 10/300 SECカラム(ID番号0619081)を使用したHPLC(Agilent 1100)アッセイで定量化した。カラムを周囲温度にて0.5mL/分で運転した。カラムを、0.20Mリン酸カリウム、0.25M塩化カリウム(pH6.2±0.1)を用いて0.5mL/分で60分間平衡化した。吸光度を280nmで監視し、溶出ピーク面積を定量化した。吸光度を、1.15(mg/mL)-1*cm-1の減衰係数を使用して320nmのバックグラウンド吸光度を差し引いた280nmで測定した。
【0320】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
DsbA異質性、高分子量パーセント、単量体、及び断片を、GE Healthcare製のSuperdex 200 10/300 SECカラム(ID番号0619081)を使用して決定した。カラムを、0.20Mリン酸カリウム、0.25M塩化カリウム(pH6.2±0.1)中に、HPLC(Agilent 1100)で周囲温度にて0.5mL/分で60分間運転した。目標注入体積は50μgであり、吸光度を280nmで監視した。ピーク面積を、Agilent製のChemstationソフトウェアを使用して計算した。
【0321】
SDS-PAGE
SDS-PAGEを、4~12%Bis-Trisプレキャストゲル(Invitrogen、カタログ番号NP0322)を用いて行った。ゲルを、Heukeshoven銀染色方法を使用して染色した。
【0322】
ウエスタンブロット
精製されたDsbAタンパク質を生成した。ウサギを免疫化し、最終採血をプールし、以下に記載されるように親和性精製した。
【0323】
免疫ブロット分析の場合、タンパク質を、半乾燥移行システム(iBlot Invitrogen、カタログ番号SD1000)を用いてSDSゲルからニトロセルロース膜に移した。ニトロセルロースを、1×NET(A3017)、0.5%ゼラチン(Bio-Rad、カタログ番号170-6539)溶液を使用して室温で30分間遮断した。一次抗DsbA抗体を50mLの1×NET中に1:700Kに希釈し、遮断されたニトロセルロースに添加し、一晩プローブした。抗DsbA抗体を、ウサギを精製されたDsbAで免疫化することによって産生した。ウサギ抗血清をプールし、親和性精製し、0.1%アジ化ナトリウムを含有するpH7.5のPBS中に保管した]。二次抗ウサギ-HRP(GE Healthcare、カタログ番号NA934V)抗体を、1:100Kに希釈し、洗浄されたニトロセルロースに2時間にわたって添加した。
【0324】
結果
DsbAは、pH9.0の緩衝液を使用してカラムに結合し、装填することができた。QSFF溶出相は、3つの異なる溶出ピークを有した。溶出ピークにわたる選択されたQSFFプール画分を、Superdex 200 10/300 GL SECカラムを使用して分析した(
図1)。低分子量不純物は、第1のピークで溶出する(画分3)。第2のピークは、高分子量種から主に成り(画分7)、第3のピークは、標的DsbAタンパク質を含有した(画分10及び11)。尾溶出ショルダーは、さらなる低分子量種及び微量のDsbAを含有した(画分15)。DsbAタンパク質を含有する画分をサイズ排除クロマトグラフィーデータに基づいてプールした。QSFFステップが高分子量及び低分子量種の部分的還元をもたらしたが、さらなる下流精製ステップを実施してDsbAの純度をさらに改善した。
【0325】
Poros 50 HS樹脂を実装してQSFFプールを精製した。POROS 50 HSプール(画分4及び5)のSDS-PAGE分析は、主ピークがDsbAタンパク質を含有することを示した(
図2、レーン6及び7)。精製されたDsbAタンパク質を表す単一バンドは、先に精製されたDsbAプールと一致する分子量を有する(レーン2)。高分子量及び低分子量種は、勾配及び高塩洗浄で後に溶出した(レーン9及び10)。代表的なPoros 50 HS運転のSECデータを
図3に示す。プールされたPoros 50 HS画分(画分4及び5)は、高分子量及び低分子量が装填物から除去され、画分がDsbAタンパク質から主になったことを示した。凝集問題は精製されたDsbA材料では観察されなかった。
【0326】
クロマトグラフィープロセスにより、超高純度DsbAがもたらされた。DsbAは、
図4に示されるように98%を超え、0.0%の高分子量種及び1.8%の低分子量種で98.2%の主ピークがSECによって分析され、0.0%の高分子量種及び0.8%の低分子量で99.2%の主ピークがSECによって分析された。不純物をSECにより定量し、
図3にPoros装填物(Qプール)で示す。
【0327】
実施例3.超高純度DsbCの精製
DsbCを、二段階クロマトグラフィープロセスを使用して事前精製した(表6、プロセスA)。タンパク質は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)開発の参照標準を生成するために、かつ分子プローブとして使用するための(ウサギにおける)DsbCに対する抗体を生成する免疫原として必要であった。
【0328】
二段階プロセスから精製されたDsbCバルクを、市販のウサギ抗DsbCに対するウエスタンブロットにより分析した。SDS-PAGE分析は、DsbCがいくつかのより高い分子量(高分子量)宿主細胞関連タンパク質を含有したことを明らかにした(
図5)。これらの不純物のために、ELISAで測定される試料中のDsbCのレベルの過剰定量をもたらし得る宿主細胞タンパク質不純物に対するウサギ抗体の生成を最小限に抑えるために、新たなDsbC材料が生成されて、より高いレベルのDsbC純度を提供した。
【0329】
この所望のレベルの純度を達成するために、いくつかの異なるクロマトグラフィーステップ(ならびに精製プロセスにおけるそれらの相対位置付け)を評価した。異なるプロセスを、参照及び免疫原としての使用に好適な材料を生成する相対性能について評価した(表6)。
表6.DsbC精製プロセス
【0330】
細胞抽出
E.coli(62A7 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3、lacIq、lacL8、ompTΔ(nmpc-fepE)ΔdegP ilvG修復型と名付けられたW3110誘導体)(Joly,JC and Swartz JR 1994,Biochem.33:4231-4236、Joly,JC and Swartz JR 1997,Biochem.36:10067-10072、米国特許第5,789,199号)細胞ペースト(DsbCを含有するもの)を、溶解緩衝液(10mM MOPS、pH7.0、10mLの溶解緩衝液当たり1グラムの細胞ペースト)中に懸濁した。細胞溶解を、微小流動化剤(登録商標)(Microfluidics)を使用して行った(7~8Kpsiで4回通過)。ポリエチレンイミン(PEI、綿状)を0.1%(m/v)の最終濃度になるまで溶解物に添加し、その後、室温で30分間混合した。PEI懸濁液を遠心分離し(10Krpm、45分間、18℃)、上清をクロマトグラフィー前に収集して、0.22μmのフィルターを介して濾過した。
【0331】
精製:プロセスA
合計1.8Lの浄化された遠心分離物(1.5M Tris塩基でpH8.0に条件付けられたもの)を、表7に記載されるように、結合及び溶出モードでDEAE Sepharose(登録商標)Fast Flow(GE Healthcare)を含有するカラムに装填した。このステップの最後に、DsbCを含有するタンパク質を694mg回収した。
表7.プロセスA DEAE Sepharose(登録商標)Fast Flowクロマトグラフィー
【0332】
DEAE Sepharoseカラム(登録商標)の溶出プロファイルを
図6に示す。1、2、及び3とラベル付けされたピークのSDS-PAGE分析(
図7)は、ピーク1の画分がDsbCの予測モル質量(約24kDa)に対応する顕著なバンドを含むことを示す。ピーク1の画分をプールし、その後、ウサギ抗DsbCに対して免疫ブロットした。この免疫ブロットの結果(
図8A)は、DsbCの存在を裏付けた。SDS-PAGE分析により、いくつかのより高い分子量及びより低い分子量バンドが免疫ブロットで点灯しないことが明らかになり、それらがDsbCに関連せず、宿主細胞関連不純物であることを示す(
図8B)。DsbCのモル質量に近いモル質量を有するタンパク質が十分に分離されていないため、元のプロセス(プロセスA)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、これらの不純物の全てではないがいくらかを除去することができるであろう。下流精製の代替手段を評価して、どの方法(複数可)及びステップ順序(複数可)が目標指示の要求される純度レベルまでのDsbCの精製に効果的であるかを調べた(試薬背景の項を参照して概説されている)。
【0333】
精製:プロセスB
強陽イオン交換クロマトグラフィー培地、SP Sepharose(登録商標)Fast Flow(SP-FF、GE Healthcare)を、DEAE Sepharose(登録商標)Fast Flowクロマトグラフィープールからの宿主細胞タンパク質の除去について評価した。
【0334】
SP Sepharose(登録商標)FFのスクリーニングを5.0、5.5、及び6.0のpH値で行った。装填密度は、5mg/mLであった。緩衝液は、以下の通りであった:A.平衡化/洗浄緩衝液:pH5が50mM NaOAc(3.1mS/cm)であり、pH5.5が50mM NaOAc(3.05mS/cm)であり、pH6が20mMリン酸塩(3.18mS/cm)であり、B.溶出緩衝液:pH5が平衡化Aで1M NaCl(94mS/cm)であり、pH5.5が平衡化Aで1M NaCl(92mS/cm)であり、pH6が平衡化Aで1M NaCl(87mS/cm)であった。各々が1mLのSPFF樹脂を有する3つの滴下カラムを設定し、適切なpH範囲で試験した。カラム(PD10カラム、Sephadex 25)を10CVの平衡化緩衝液で平衡化した。装填物は、pH5、5.5、及び6の適切なSP平衡化緩衝液で緩衝液交換されたDEAEプールであった。カラムを7CVの洗浄緩衝液で洗浄した。溶出は、5CVであり、各々、10%B、20%B、40%B、60%B、80%B、及び100%Bであった。
【0335】
試験されたpH値の各々のカラム画分をSDS-PAGEにより評価した。最良の結合状態がpH5.0で観察された。pH値を増加させることにより、緩衝液交換したDEAE-FFプールのいくらか~全てのカラムへの貫流がもたらされた。宿主細胞不純物の全てではないがいくらかがpH5.0で除去され、約20kDaの単一のより低い分子量バンドがカラム装填中に除去された。
【0336】
NaCl濃度を100mMに増加させることにより、DsbCの不完全溶出がもたらされたが、いくつかのより高い分子量バンドを除去した。NaClの200mMへの増加により、残りのDsbCの大半が溶出したが、いくつかの他のタンパク質不純物も溶出した。
【0337】
SP-FFの初期の結果により、pH5.0でのさらなる評価が必要とされた。残留宿主細胞タンパク質不純物を除去するSP-FFの潜在能力を評価するために、以下のパラメータを使用して小規模精製を行った:浄化された遠心分離物を、表8に記載されるように、結合及び溶出モードでSP Sepharose(登録商標)Fast Flowを含有するカラムに装填した。SP-FFカラム画分の分析は、初期評価で見られた除去と同じ20kDaの不純物の除去、及び勾配のより初期に溶出した37kDaでのバンドの除去を示した(
図9)。DsbC画分は、このクロマトグラフィーステップからの増加した純度を示したが、残りのより高い分子量の不純物及び微量のより低い分子量の不純物を依然として含有した(
図9)。HPLC-SECによるプールされたSP-FF画分の分析は、95.2%の主ピーク、0.8%の高分子量種、及び4.0%の低分子量種を示した。SP-FFゲルが残りの不純物を十分なレベルまで除去しなかったため、他の精製方法を評価した。
表8.SP Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー
【0338】
精製:プロセスC
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)をSP-FFプール中の残りの不純物の除去について評価した。プロセスCの開発時、5つの潜在的なHIC培地(Hi Propyl,Phenyl Sepharose(登録商標)6 Fast Flow(低置換)、Phenyl Sepharose(登録商標)6 Fast Flow(高置換)、Butyl Sepharose(登録商標)4 Fast Flow、及びOctyl Sepharose(登録商標)4 Fast Flow)を、SP-FFの初期評価について概説したもの(上述のプロセスB)と同じ1.0mLカラムプロセスを使用して評価した。クロマトグラフィー条件を表9に詳述する。
表9.プロセスC:DEAE-SPFF-HIC
【0339】
SDS-PAGEによるカラム画分の分析は、評価したHIC培地の大部分について、宿主細胞不純物の大半がゲルに結合せず、装填及び洗浄ステップ中に除去されたことを示した。追加の不純物がこれらのHIC培地への結合の差異を示したが、減少塩勾配(50mMリン酸ナトリウム中0.5M硫酸ナトリウム~0.1M硫酸ナトリウム、pH7.0)を使用した除去に成功した(
図10)。その後、DsbCを精製水(PW)でHIC培地の各々から溶出させた。SDS-PAGE結果は、最大量の精製されたDsbCがPhenyl Sepharose(登録商標)FF(低置換)プール中に見られることを示す(
図10)。
精製:プロセスD
【0340】
プロセスCのこれらの3つのクロマトグラフィーステップの順序は、初期DEAE-FFステップで存在する残留宿主細胞不純物を除去して非常に超高純度のDsbCを産出する際に非常に効果的であった。さらなる評価を行って、HICステップがDEAE-FFプールから宿主細胞不純物を除去するのに十分に頑強であるかを調べ、SP-FFステップを排除し、DsbCの精製プロセスを効果的に能率化した。
【0341】
第2の位置でのHICステップを評価するために、一定分量のDEAE-FFプールを、開発されたHIC条件(表6、プロセスC)を使用して条件付けして処理した。HICプロセスのさらなる洗練は、中間洗浄ステップをより長い0.1M硫酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム洗浄ステップで置き換えることを含んだ。さらなる洗浄体積を実装してカラムから不純物を除去した後、DsbCを精製水で溶出させた。
【0342】
第3の位置でのHICステップを評価するために、DEAE-FFプールの代わりに強SP-FFプールを使用して上述と同じ実験戦略を行った。これらの実験を以下のように行った:
実験スキーム:位置2でのHIC、DEAEプール>HIC
位置3でのHIC、DEAEプール>SPFFプール>HIC
形式:重力(滴下方法)
HIC樹脂:Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(低置換)
装填密度:5mg/mL
緩衝液:
平衡化/洗浄1:0.6M硫酸ナトリウム+50mMリン酸塩(pH7)
洗浄2:0.1M硫酸ナトリウム+50mMリン酸塩(pH7)
溶出:PW(精製水)
【0343】
各々1mLのHIC樹脂を含有する2つの滴下カラムを設定した。
平衡化(カラム):10カラム体積(CV)
装填:位置2でのHIC:5mgのDEAEプールを取り込み、それを希釈して、0.6M硫酸ナトリウム/50mMリン酸塩(pH7)の最終濃度を含有させた。最終pH7、約68mS/cmに調整した。
位置3でのHIC:5mgのSPFFプールを取り込み、それを希釈して、0.6M硫酸ナトリウム/50mMリン酸塩(pH7)の最終濃度を含有させた。最終pH7、約68mS/cmに調整した。
洗浄1:5CV
洗浄2:5CV
溶出:3CV
追加の3CV
塩基再生:0.1N NaOH(2CV)
【0344】
画分を収集し、SDS-PAGEを行って、不純物除去を評価した。
【0345】
この二段階プロセスは、三段階プロセスと同様にDsbCからの望ましくない不純物の除去に効果的であった(
図11)。
【0346】
精製:プロセスE(最終プロセス)
DEAE-FFプールの精製を、Phenyl Sepharose(登録商標)Fast Flow(低置換)を使用して拡大した。表10は、動作パラメータを列記する。主ピーク画分は、HICステップの7、8、9、10、及び11であった。
【0347】
カラムは、結合及び溶出モードでのPhenyl Sepharose(登録商標)(LS)であった。カラムに装填した質量は、536mgであった。
表10.Phenyl Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー(低置換)
【0348】
カラム画分のSDS-PAGE分析は、HICステップによる非常に良好な不純物除去を示した。2つの薄いバンド(15kDa及び50kDa)が個々のHIC画分のうちのいくつかで観察された。しかしながら、主画分のうちのいくつかまたは全てが組み合わせられると、DsbCに対応するバンド主バンドが1つのみ観察された(
図12)。HPLC-SECを使用した主DsbC画分(7~11)の分析は、97.0%の主ピーク、1.0%の低分子量、及び2.0%の高分子量の分布を示した。より狭い切片(画分8~10)をとることにより、98.2%の主ピーク、1.7%の低分子量、及び0.1%のより高い分子量種の分布がもたらされた。
【0349】
Superdex 75(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、任意の残留高分子量及び低分子量種を除去し、DsbCを製剤化した。Superdex 75の分画範囲(5kDa~70kDa)がDsbC等のより小さいタンパク質(約24kDa)により適しているため、Superdex 75を選択した。SECカラムの動作パラメータを表11に示す。
【0350】
サイズ排除クロマトグラフィーに備えて、HICプール(画分7~11)を、Amicon Ultra-3遠心分離フィルター(Millipore)を使用して16mL以下(SEC CVの5%以下)の体積に濃縮した。これらの装置を、20分間隔で臨床遠心分離機(Eppendorf)を使用して目標体積に達するまで4000rpmで遠心分離した。
表11.Superdex 75サイズ排除クロマトグラフィー
【0351】
濃縮HICプールをSECカラムに装填し、装填を平衡化緩衝液で追跡した。カラムを平衡化緩衝液で展開し、SEC CVの2%(6.4mL)に相当する画分を収集した。合計2回のサイズ排除運転を行った。主画分(47~56)をSDS-PAGEにより分析し(
図13)、DsbCに対応する1つの主バンド(約24kDa)を示した。同じ画分もHPLC-SECアッセイで試験した。最終製剤化DsbCバルクは、後部にわずかなテーリングを有する単一の高度に対称性のピークを示す(
図14)。分取SECステップは、不純物のさらなる除去及びDsbCバルクの最終製剤緩衝液への緩衝液交換に成功し、HPLC-SECの使用は、99.85%の主ピーク、0.10%の低分子量、及び0.05%の高分子量の分布を示した。
【0352】
凍結融解安定性及び分析
製剤化バルクの安定性を、それを3回の凍結融解サイクルに-80℃以下の温度で供することによって評価した。凍結融解試料の分析を、SDS-PAGE及びHPLC-SECを使用して行った。
【0353】
合計600μLの製剤化バルクをこの試験に使用し、各時点の4×150μLの一定分量に分けた。1つの一定分量を冷室(2~8℃)(「0」凍結融解)に置いた。残りの3つの一定分量を-80℃以下の冷凍室に置いた。4時間後、試料を室温で約1時間融解し、緩徐に混合した。試料のうちの1つを冷室に移し(「1回」凍結融解)、残りの試料を-80℃以下の冷凍室内に再設置した。このプロセスを繰り返して、「2回」凍結融解試料を生成した。残りの試料(「3回」凍結融解)を-80℃以下の冷凍室に一晩保管した。「3回」凍結融解試料を翌日融解した。非還元下及び還元下で実行したSDS-PAGEの結果は、精製されたバルク及び全ての凍結融解試料においてDsbCに対応する1つのバンド(約24kDa)を示す(データ示さず)。HPLC-SECアッセイは、全ての試料が同等であり、0.1%の高分子量種及び99.9%の主ピークとのプロファイルが重複しており、低分子量種は検出されないことを示す。分子は、3回の凍結/融解サイクル後にその物理的及び機能的特性を保持する。
【0354】
SDS-PAGE及びSyproRuby染色
他の非DsbC不純物が最終製剤化バルク中に確実に存在しないようにするために、SDS-PAGEを行い、SyproRuby染色を使用して画像化した(Bio-Rad、
図15)。
【0355】
機能試験
DsbC分子の同一性を、一組の特徴付けアッセイ(N末端配列分析、ペプチド質量フィンガープリント法(PMF)、CHIP TOFによるインタクト/還元質量)によって確認した。これらのアッセイにより、分子の正しい同一性が確認された。
【0356】
一定分量の精製されたDsbCバルク及び生成された凍結融解試料の機能試験を行い、4つの試料間の同等性を実証し、タンパク質が3回の凍結融解にわたって安定かつ機能的であることを示した(データ示さず)。精製されたDsbCを、抗DsbC抗体を生成するためのウサギ免疫化に許容可能なものと見なし、親和性クロマトグラフィーのリガンドとして後に使用してウサギ抗血清から抗DsbCを精製した。
【0357】
実施例4.抗DsbA及び抗DsbC抗体の生成及び精製
超高純度DsbA及びDsbCに対して生成されたポリクローナル抗体を、治療用ポリペプチドの調製においてDsbA及びDsbCからの除去を測定するためのアッセイで使用するために生成した。以下の実施例は、ポリクローナルDsbA及びDsbC抗体を生成するために使用される精製方法を説明する。これらの重要な試薬は、DsbA及びDsbC免疫原とともに、特異的DsbA及びDsbC ELISAの開発に必要であった。
【0358】
3匹のウサギ(1免疫原当たり)をDsbAまたはDsbCのいずれかで免疫化した。42日目に、個々のウサギから採血し、DsbA及びDsbC抗血清を抗DsbA及び抗DsbC抗体の精製に使用した。
【0359】
分析方法
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用してDsbA及びDsbC抗体の相対純度を決定し、タンパク質のモル質量を確認した。電気泳動をジスルフィド結合還元を用いて、また用いずに行い、抗体の共有結合凝集について評価した。
【0360】
SDS-PAGEを、Bio-Rad Criterion(商標)4~20% TGX(Tris-Glycine eXtended)Stain-Free(商標)ゲルを使用して行い、Bio-Rad Criterion Stain Free(商標)画像化装置(Bio-Rad Laboratories)で画像化した。
【0361】
高速液体クロマトグラフィー-サイズ排除クロマトグラフィー(HPLC-SEC)を使用して、TSK Gel 3000SWxlカラム(Tosoh Bioscience)を使用した天然条件下でのDsbA及びDsbC抗体のサイズ不均一性を監視し、高分子量(高分子量)種、主ピーク(単量体)、及び低分子量(低分子量)種を分離した。
【0362】
DsbA及びDsbC抗体の精製
DsbA及びDsbC抗体の精製を、同じ抽出及びクロマトグラフィーステップを使用して並行して行った。このプロセスは、以下のものからなる。
【0363】
塩沈殿:60%硫酸アンモニウム(AS)分画ステップを抗血清で行った。60%硫酸アンモニウムペレットを親和性クロマトグラフィー前にリン酸緩衝液中に溶解する。
【0364】
固定化(免疫原)親和性クロマトグラフィー:60%硫酸アンモニウムペレット中の残りの不純物から標的抗体を分離するように親和性クロマトグラフィーステップを設計した。精製されたDsbA及びDsbC(ウサギを免疫化するために使用した試薬と同じロット)をリガンドとして使用して、別個の親和性支持体を構築した。各親和性支持体を、還元的アミノ化化学反応により特異的免疫原を活性化グリセリル-CPG(制御孔ガラス、Millipore)に固定化することによって作製した。この種類の親和性クロマトグラフィーにより、標的抗体の高度の選択性がもたらされた。
【0365】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):分取SECを使用して、標的抗体からより高い分子量(MW)種及びより低い分子量(MW)種を分離し、それらを好適な保管緩衝液に製剤化した。その後、抗体プールの機能性をそれらのそれぞれのELISAによって決定して、目標アッセイ性能を確認した。
【0366】
特異的DsbA及びDsbC ELISAの開発での使用に好適な材料を生成するためのクロマトグラフィーステップを行い、評価した。
【0367】
抗血清の沈殿及び標的抗体の確認
ウサギ抗血清A、B、Cをプールした(体積=72mL(抗DsbA)、76mL(抗DsbC)。52mLの硫酸アンモニウム条件付け溶液(上記)を抗DsbA溶液に緩徐に添加し、55mLを添加中で緩徐に撹拌しながら抗DsbCに添加した。溶液を18℃の温度で45分間、13,000rpmで遠心分離した。硫酸アンモニウムペレット(DsbA及びDsbC抗体を含有するもの)を、親和性クロマトグラフィーの準備が整うまで-60℃以下で凍結させた。
【0368】
硫酸アンモニウム懸濁液、上清、及びペレットのSDS-PAGE分析では、上清は抗体が枯渇しており、ペレットはウサギ抗体の全てを含有することが確認された。ウサギ抗DsbA及び抗DsbC抗体は、約130kDaのモル質量を示す。還元時、約130kDaの主バンドが重鎖(約50kDa)及び軽鎖(約25kDa)に還元した。
【0369】
親和性クロマトグラフィー
抗DsbA及び抗DsbC 60%硫酸アンモニウムペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.2)中で再構成した後に、それらのそれぞれのDsbA-CPGまたはDsbC-CPG親和性カラムに装填した。
【0370】
親和性クロマトグラフィーステップを表12に記載されるように行った。
樹脂は、DsbA-CPGまたはDsbC-CPGであった。クロマトグラフィーは、結合及び溶出モードであった。床高さは、6.0cm(DsbA-CPG)または5.0cm(DsbC-CPG)であった。直径は、1.6cmであり、体積は、12.0mLまたは10.0mLであった。
表12.親和性クロマトグラフィー動作条件
【0371】
各カラム由来の結合したDsbA及びDsbC抗体を5CVの溶出緩衝液で溶出させ、抗体を濃縮Tris緩衝液中に収集した(7.0~7.5のpHを維持し、これにより、非常に低い溶出pHに起因して抗体の凝集が最小限に抑えられるため)。溶出プールを、17mLの1.0M Tris(pH7.5)を収容するビーカー中に収集した。
【0372】
抗DsbC親和性プールのSDS-PAGE分析は、標的ウサギ抗DsbC抗体ならびに他の産物に関連する可能性のあるより高い分子量種及びより低い分子量(75kDa未満)種に対応する、約130kDaで顕著なバンドを示した。還元条件下で、約130kDaの主バンドは、2つのバンド、それぞれ、重鎖及び軽鎖に対応する約50kDa及び約25kDaに還元される。同様のSDS-PAGEバンドパターンも抗DsbA親和性プールで観察された(データ示さず)。
【0373】
抗DsbAプールのHPLC-SEC分析は、79%の主ピーク、19%のより高い分子量種、及び2%のより低い分子量種の分布を示した。抗DsbCプールの場合、78%の主ピーク、16%のより高い分子量種及び6%のより低い分子量種が観察された。79%(主ピーク)の全体純度がこのステップで達成された。これらのプールの機能試験前に、一定分量のプールをさらに分画して、主ピークの量を濃縮した。サイズ排除クロマトグラフィー前後のプールのアッセイ性能をELISAで評価した。
【0374】
サイズ排除クロマトグラフィー:SEC
より高いレベルの純度を得るために、Superdex 200カラム(GE Healthcare)を使用してサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。抗DsbA親和性プールの量が限られているため、一定分量の抗DsbC親和性プールを最初に分画した。SECカラムの動作パラメータは、以下の通りであった。カラム体積は、1120mLであり、装填体積は、6mL以下(1CVの5%以下)であった。カラムを0.5mL/分の流量で3CVのPBS(pH7.2)で平衡化した。装填は、1サイクル当たり6.0mL以下であった。1サイクルを抗DsbAに実行し、2サイクルを抗DsbCに実行した。カラムを0.5mL/分で1CVのPBS(pH7.2)で展開した。各サイクルについて、ウサギ血清由来のpH調整親和性プールを、Amicon Ultra 10kDaフィルターを使用して6.0mLの最終体積に濃縮した。
【0375】
10mgの一定分量の抗DsbC親和性プールを、Amicon Ultra-3遠心分離フィルター(Millipore)を使用して6.0mL以下(1CVの5%以下)の体積に濃縮した。
【0376】
濃縮抗DsbC親和性プールをSECカラムに装填し、装填を平衡化緩衝液で追跡した。カラムを平衡化緩衝液で展開し、2.4mLの画分(SEC CVの2%)を収集した。主ピークプール画分は、34~37であった。
【0377】
いくつかの模擬プールをHPLC-SECアッセイで評価して、どの一連の画分が最も高度の純度をもたらしたかを決定した(表13)。より狭い切片(画分35~36)が95.1%の主ピーク、1.0%の高分子量、及び3.9%の低分子量種の分布を示した一方で、より広い切片(画分34~37)は、93.9%の主ピーク、1.4%の高分子量、及び4.7%の低分子量種を示した。より狭いプールが純度を著しく改善せず、より低いタンパク質質量しか回収しなかったため、より広いプールスキームを選択した(表13)。
表13.抗DsbC模擬プールのHPLC-SEC
【0378】
濃度を模擬プールに基づいて予測する。
【0379】
TSKカラム:QC Pak GFC 300、流量=0.5mL/分、運転時間=15分間。
【0380】
SECステップにより、単量体の量が79%(親和性ステップで)から94%に増加した。
【0381】
機能試験結果
抗DsbC親和性プール(非分画及び分画)を直接結合ELISA形式で評価して、より高い純度がより良好なアッセイ性能をもたらすのに必要であるかを判定した。2つのプール間で同等の用量応答曲線を達成し、高分子量種の除去が必要ではなかったことを示した(
図16)。
【0382】
上述の結果は、DsbC抗体の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)へのコンジュゲーションを必要とするより感度の高いELISAサンドイッチアッセイの追求を促した。この種類のコンジュゲーション(ビオチン化)の成功は、典型的には、抗体プールに高分子量種(凝集体)が少ないことを必要とする。
【0383】
このステップを評価するために、低凝集体親和性プールをHRPにコンジュゲートした。低凝集体親和性プールをコートとして使用し、かつ検出のためにHRPにコンジュゲートされた低凝集体親和性プールである低凝集体抗DsbCプールを、DsbCを検出するサンドイッチELISAでの使用に好適であると見なした(
図17)。
【0384】
最終決定は、Superdex 200 抗DsbCプール(凝集体がより少なく、主ピークでの濃縮がより高い)を使用することであった。この決定により、抗DsbCプールの残りの半分及び全抗DsbAプールを、SECを使用してさらに分画した。
【0385】
プロセスB
SECステップを最終クロマトグラフィーステップとして最終精製プロセス(B)に追加して、低レベルの凝集体でのより高度の純度を確実にした。
【0386】
抗DsbA親和性プール及び残りの抗DsbC親和性プールの分画を、上述のSuperdex 200カラムを使用し、かつ上述と同じ動作パラメータを使用してSECによって行った。
【0387】
抗DsbAの最終プール切片は、画分35~38であり、抗DsbCの場合はファクション(faction)34~37であった。これらのプール切片が高レベルの純度(主ピーク)及び最大産物収率を得るようにした。HPLC-SECによってアッセイされた最終分画プールは、87.3%の主ピーク(抗DsbA)及び92.5%の主ピーク(抗DsbC)を含有した。SECステップは、高分子量種及び低分子量種の除去による主ピークの濃縮、ならびにプールの最終製剤緩衝液(PBS、pH7.0±0.2)への緩衝液交換に成功した。
【0388】
DsbA及びDsbCの精製により、DsbA及びDsbC ELISA開発に成功した。
【0389】
実施例5.DsbA及びDsbCのELISA検出
試薬
コート抗体(ポリクローナル抗DsbAまたはポリクローナル抗DsbC)をPBSで約1.2mg/mLに希釈し、-60℃以下で保管した。融解後、コート抗体を、融解日から最大1週間、2~8℃で保管した。標準材料(DsbAまたはDsbC)を100μg/mLに希釈し、-60℃以下で保管した。アッセイ対照源を標準曲線の低面積及び高面積内に入るようにアッセイ希釈剤で希釈し、-60℃以下で保管した。HRP-コンジュゲート(西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされるDsbAまたはDsbCに対する抗体)。融解後、HRP-コンジュゲート抗体を、融解日から最大1週間、2~8℃で保管した。HRP-コンジュゲート抗DsbAストックIを、-10℃~-30℃での保管のためにグリセロールでおよそ1:1に希釈した。HRP-コンジュゲート抗DsbCストックIを、-60℃での保管のためにアッセイ希釈剤でおよそ1:20に希釈した。
アッセイ希釈剤:0.15M塩化ナトリウム[NaCl]/0.1Mリン酸ナトリウム[NaPO4]/0.1%魚ゼラチン/0.05% Polysorbate 20/0.05% Proclin 300
洗浄緩衝液:PBS/0.05% Polysorbate 20
コーティング緩衝液:0.05M炭酸ナトリウム緩衝液
基質溶液:SureBlue Reserve(商標)TMB Microwell Peroxidase Substrate(Kirkegaard & Perry Labs[KPL]、カタログ番号53-00-00または等価物)
停止溶液:0.6N硫酸
標準、対照、及び試料調製
【0390】
標準曲線を調製した(1000、100、50、25、12.5、6.25、3.13、1.56、0.781、0ng/mL)。各対照の一定分量の対照調製物を使用日に融解した。未使用の融解された対照を処分した。試験試料を標準曲線の範囲内に入るようにアッセイ希釈剤で希釈した。
【0391】
手順
コート抗体ストックIをコーティング緩衝液で希釈して、標準曲線濃度及び所望の応答範囲を得た。100μLの希釈コート抗体ストックIをマイクロタイタープレートの各ウェルにピペットで移し、2~8℃で12~72時間インキュベートした。各ウェルを洗浄し、プレート洗浄機を使用しておよそ400μLの洗浄緩衝液で3回吸引し、完全にブロットした。プレートを廃棄物リザーバー上で反転させても溶液がウェルから除去されなかった。およそ200μLのアッセイ希釈剤を各ウェルに添加し、撹拌しながら周囲温度で1~2時間インキュベートした。洗浄ステップを繰り返した。
【0392】
1ウェル当たり100μLの希釈標準(二通り)、対照(二通り)、及び試料を適切なウェルにピペットで移した。撹拌しながら周囲温度で2時間±10分間インキュベートした。ウェルを上述のように洗浄し、プレートを回転させ、洗浄ステップを繰り返した。
【0393】
HRP-コンジュゲートストックIをアッセイ希釈剤で希釈して、1.5~2.0ODの最大OD値を目標とした最も高い標準と最も低い標準との間に有意なOD範囲を得た。100μLの希釈HRP-コンジュゲートストックIを各ウェルにピペットで移し、撹拌しながら周囲温度で2時間±10分間インキュベートした。ウェルを上述のように洗浄し、プレートを回転させ、洗浄ステップを繰り返した。
【0394】
1ウェル当たり100μLの基質溶液をウェルにピペットで移し、暗所にて周囲温度で十分な時間インキュベートして、最適標準曲線色発現を可能にした。1ウェル当たり100μLの0.6N硫酸をピペットで移した。
【0395】
ODを、2つのフィルター(検出吸光度の場合450nm及び参照吸光度の場合620~630nm(参照波長は任意であった))を使用したプレートリーダーを使用して読み取った。
【0396】
計算及びデータ分析
試料濃度を、最低5パラメータのロジスティック曲線当てはめプログラムを有するデータ処理ソフトウェアを使用して決定した。
【0397】
ELISAを使用して、実施例4に記載の抗体の精製中のDsbA及びDsbC除去を評価した。
【0398】
実施例5.モノクローナル抗体の精製中のDsbA及びDsbC除去の評価
MAb1を、適切な折り畳み及びジスルフィド結合の生成を支援するDsbA及びDsbCを過剰発現したE.coli細胞で産生した。簡潔には、MAb1、DsbA、及びDsbCを発現するE.coli細胞を溶解して遠心分離し、溶解物を浄化した。その後、遠心分離物をMabSelect Sureタンパク質Aカラム(MSS)に適用した。その後、MAb1を含有する溶出したMSS画分をCaptoAdhere(Capto)混合モードクロマトグラフィー、Poros 50 HS陽イオン交換クロマトグラフィー、及びQSFF陰イオン交換クロマトグラフィーに全て結合及び溶出モードで適用した。その後、MAb1を含有するプールされたQSFF画分を、限外濾過及び透析濾過を使用して濃縮して製剤化した。
【0399】
各精製ステップ由来の画分(遠心分離物、MSSタンパク質A、CaptoAdhere、Poros 50 HS、QSFF、UFDF)を、タンパク質濃度、以下に記載のE.coliタンパク質の除去、ならびに実施例3に記載のDsbA及びDsbCの存在についてアッセイした。適格性確認を6回実行して結果を得た。
【0400】
宿主細胞タンパク質(ECP)の除去
抗体の精製に使用した回収プロセスを、宿主細胞タンパク質(E.coliタンパク質またはECP)のレベルを低減するその能力について評価した。ECPの定量を、以下に記載のELISAアッセイを使用してインプロセス試料及び濾過されたバルク試料で行った。これらのデータは、臨床抗体材料中のECPが回収プロセスによって50ng/mg未満の抗体レベルまで著しく低減されたことを実証する。
【0401】
E.coliタンパク質の多産物サンドイッチELISAを使用して、プール試料中のECPのレベルを定量した。親和性精製されたヤギ抗全ECP抗体をマイクロタイタープレートウェル上に固定化した。プール試料の希釈物をウェル中でインキュベートし、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた親和性精製されたヤギ全ECPとインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素活性をo-フェニレンジアミン二塩酸塩で検出した。ECPを、マイクロタイタープレートリーダーの吸光度を490nmで読み取ることによって定量した。4パラメータコンピュータ曲線当てはめプログラムを使用して標準曲線を生成し、試料濃度を自動計算した。ELISAのアッセイ範囲は、典型的には、DsbAの場合は1.56ng/mL~50ng/mLであり、DsbCの場合は1.09ng/mL~35ng/mLであった。
【0402】
結果
各画分中に見られたタンパク質の総量を表14に提示する。
表14.精製画分の総タンパク質濃度(mg/mL)
【0403】
E.coliタンパク質の除去を表15に示す。
表15.精製画分の総E.coliタンパク質(ngのECP/mgの総タンパク質)
【0404】
各画分中で検出されたDsbAの総量を表16に提示する。
表16.精製画分の総DsbA濃度(ng/mL)
【0405】
各画分中のDsbAの相対量を、各画分中の総DsbA(表16)を各画分中の総タンパク質(表14)に正規化することによって決定した。正規化されたDsbA含有量の結果を表17に示す。結果を、ng/mLのDsbA/タンパク質濃度として提示する。
表17.精製画分の総相対DsbA含有量(ngのDsbA/mgの総タンパク質)
【0406】
各画分中で検出されたDsbCの総量を表18に提示する。
表18.精製画分の総DsbC濃度(ng/mL)
【0407】
各画分中のDsbCの相対量を、各画分中の総DsbC(表18)を各画分中の総タンパク質(表14)に正規化することによって決定した。正規化されたDsbC含有量の結果を表19に示す。結果を、ng/mLのDsbA/タンパク質濃度として提示する。
表19.精製画分の総相対DsbC含有量(ngのDsbC/mgの総タンパク質)
【0408】
DsbA及びDsbCアッセイの結果は、DsbAもDsbCもいずれも限外濾過/透析濾過ステップ前に取り除かれることを示す。DsbAは、CaptoAdhereステップ後に取り除かれ、DsbCは、MabSelect Sureステップ後に取り除かれる。
配列
E.coli DsbA
アミノ酸配列-リーダー配列なし
アミノ酸配列-リーダー配列あり(太字)
核酸配列
E.coli DsbC
アミノ酸配列-リーダー配列なし
アミノ酸配列-リーダー配列あり(太字)
核酸配列
【配列表】