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特許7191143他車両行動予測装置、他車両行動予測方法、及び自動運転システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】他車両行動予測装置、他車両行動予測方法、及び自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221209BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221209BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/16 D
B60W60/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021038840
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138768
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】対馬 尚之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 琢也
(72)【発明者】
【氏名】竹原 成晃
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196973(JP,A)
【文献】特開2020-3971(JP,A)
【文献】特開2012-224316(JP,A)
【文献】特開2008-46845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲に存在する他車両を検知する周辺検知部と、
前記他車両が位置する道路形状を検知する道路形状検知部と、
前記他車両の検知結果に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測し、前記他車両が位置する前記道路形状に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる車線変更予測部と、を備え、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する道路位置の道路幅方向の前記他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を上回った場合に、前記他車両が車線変更を行うと予測し、前記道路幅方向の他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を下回った場合に、前記他車両が車線変更を行わないと予測し、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の前記判定値と、前記他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の前記判定値と、を個別に変化させ、
前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、右側の前記判定値よりも大きくし、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、左側の前記判定値よりも大きくする他車両行動予測装置。
【請求項2】
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、右側の前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させず、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、直線路である場合の右側の前記判定値から増加させ、左側の前記判定値を、直線路である場合の左側の前記判定値から変化させない請求項1に記載の他車両行動予測装置。
【請求項3】
前記車線変更予測部は、カーブ路の開始位置から、当該開始位置よりも判定距離だけ前方のカーブ路の位置までの範囲内に前記他車両が位置する場合に、前記判定値を、前記道路形状が直線路である場合の前記判定値から変化させ、前記判定距離だけ前方のカーブ路の位置から更に前方のカーブ路の位置では、前記判定値を、前記道路形状が直線路である場合の前記判定値に設定する請求項1又は2に記載の他車両行動予測装置。
【請求項4】
前記車線変更予測部は、前記カーブ路の長さに基づいて、前記判定距離を変化させる請求項3に記載の他車両行動予測装置。
【請求項5】
前記車線変更予測部は、前記カーブ路の曲率半径に基づいて、前記判定距離を変化させる請求項3又は4に記載の他車両行動予測装置。
【請求項6】
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記カーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、前記判定値を増加させる請求項1に記載の他車両行動予測装置。
【請求項7】
前記車線変更予測部は、前記カーブ路の曲率半径が途中で変化する場合に、前記他車両が現在位置する前記カーブ路の曲率半径に基づいて、前記判定値を変化させる請求項6に記載の他車両行動予測装置。
【請求項8】
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記他車両の移動速度の大きさが大きくなるに従って、前記判定値を増加させる請求項1、6、及び7のいずれか一項に記載の他車両行動予測装置。
【請求項9】
前記車線変更予測部は、隣接する車線が存在しない方向への前記他車両の車線変更の有無を判定しない請求項1から8のいずれか一項に記載の他車両行動予測装置。
【請求項10】
自車両の周囲に存在する他車両を検知する周辺検知ステップと、
前記他車両が位置する道路形状を検知する道路形状検知ステップと、
前記他車両の検知結果に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測し、前記他車両が位置する前記道路形状に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる車線変更予測ステップと、を備え、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させ、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が位置する道路位置の道路幅方向の前記他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を上回った場合に、前記他車両が車線変更を行うと予測し、前記道路幅方向の他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を下回った場合に、前記他車両が車線変更を行わないと予測し、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の前記判定値と、前記他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の前記判定値と、を個別に変化させ、
前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、右側の前記判定値よりも大きくし、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、左側の前記判定値よりも大きくする他車両行動予測方法。
【請求項11】
自車両の周囲に存在する他車両を検知する周辺検知部と、
前記他車両が位置する道路形状を検知する道路形状検知部と、
前記他車両の検知結果に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測し、前記他車両が位置する前記道路形状に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる車線変更予測部と、
前記他車両の車線変更の有無の予測結果に基づいて、前記自車両を自動運転する自動運転部と、を備え、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する道路位置の道路幅方向の前記他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を上回った場合に、前記他車両が車線変更を行うと予測し、前記道路幅方向の他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を下回った場合に、前記他車両が車線変更を行わないと予測し、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の前記判定値と、前記他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の前記判定値と、を個別に変化させ、
前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、右側の前記判定値よりも大きくし、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、左側の前記判定値よりも大きくする自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本願は、他車両行動予測装置、他車両行動予測方法、及び自動運転システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の技術では、他車両の横方向の移動速度に基づいて、他車両の車線変更の可能性を判定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6494121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路形状の変化によって、車線変更を行わない場合の車両のステアリング挙動が変化する。そのため、特許文献1の技術のように、道路形状の変化にかかわらず、同じ判定値を用いて、車線変更の有無を予測すると、誤判定を生じる問題があった。例えば、車線変更を行わない場合でも、カーブ路では、カーブの曲率に合わせるため、直線路よりもステアリングの操作量が増加し、他車両の道路幅方向の移動速度成分が増加し、車線変更を行うと誤判定される。
【0005】
そこで、本願は、道路形状の変化にかかわらず、他車両の車線変更の有無を精度よく判定することができる他車両行動予測装置、他車両行動予測方法、及び自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る他車両行動予測装置は、
自車両の周囲に存在する他車両を検知する周辺検知部と、
前記他車両が位置する道路形状を検知する道路形状検知部と、
前記他車両の検知結果に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測し、前記他車両が位置する前記道路形状に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる車線変更予測部と、を備え
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する道路位置の道路幅方向の前記他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を上回った場合に、前記他車両が車線変更を行うと予測し、前記道路幅方向の他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を下回った場合に、前記他車両が車線変更を行わないと予測し、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の前記判定値と、前記他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の前記判定値と、を個別に変化させ、
前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、右側の前記判定値よりも大きくし、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、左側の前記判定値よりも大きくするものである。
【0007】
本願に係る他車両行動予測方法は、
自車両の周囲に存在する他車両を検知する周辺検知ステップと、
前記他車両が位置する道路形状を検知する道路形状検知ステップと、
前記他車両の検知結果に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測し、前記他車両が位置する前記道路形状に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる車線変更予測ステップと、を備え
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させ、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が位置する道路位置の道路幅方向の前記他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を上回った場合に、前記他車両が車線変更を行うと予測し、前記道路幅方向の他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を下回った場合に、前記他車両が車線変更を行わないと予測し、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、
前記車線変更予測ステップでは、前記他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の前記判定値と、前記他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の前記判定値と、を個別に変化させ、
前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、右側の前記判定値よりも大きくし、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、左側の前記判定値よりも大きくするものである。
【0008】
本願に係る自動運転システムは、
自車両の周囲に存在する他車両を検知する周辺検知部と、
前記他車両が位置する道路形状を検知する道路形状検知部と、
前記他車両の検知結果に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測し、前記他車両が位置する前記道路形状に基づいて、前記他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる車線変更予測部と、
前記他車両の車線変更の有無の予測結果に基づいて、前記自車両を自動運転する自動運転部と、を備え
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から変化させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する道路位置の道路幅方向の前記他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を上回った場合に、前記他車両が車線変更を行うと予測し、前記道路幅方向の他車両の移動速度成分の大きさが、前記判定値を下回った場合に、前記他車両が車線変更を行わないと予測し、
前記車線変更予測部は、前記他車両が位置する前記道路形状がカーブ路である場合に、前記判定値を、直線路である場合の前記判定値から増加させ、
前記車線変更予測部は、前記他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の前記判定値と、前記他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の前記判定値と、を個別に変化させ、
前記他車両が位置する前記道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の前記判定値を、右側の前記判定値よりも大きくし、
前記他車両が位置する前記道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の前記判定値を、左側の前記判定値よりも大きくするものである。

【発明の効果】
【0009】
道路形状に合わせて、ステアリング操作が行われるので、車線変更の意図がなくても、道路形状に応じて、車両のステアリング挙動が変化する。そのため、道路形状の変化にかかわらず、同じ判定値を用いて、他車両の車線変更の有無を判定すると、誤判定が生じる。本願に係る他車両行動予測装置、他車両行動予測方法、及び自動運転システムによれば、他車両が位置する道路形状に基づいて、予測に用いられる判定値が変化されるので、車線変更の有無の誤判定の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る自動運転システム及び他車両行動予測装置の概略ブロック図である。
図2】実施の形態1に係る自動運転制御装置、他車両行動予測装置の概略ハードウェア構成図である。
図3】実施の形態1に係る自動運転制御装置、他車両行動予測装置の別例の概略ハードウェア構成図である。
図4】実施の形態1に係る他車両の道路幅方向の移動速度成分の算出を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る車線変更の有無の予測を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係る車線変更の有無の予測を説明するためのタイムチャートである。
図7】実施の形態1に係るカーブ路の曲率半径の算出を説明する図である。
図8】実施の形態1に係る曲率半径に応じた判定値の設定を説明する図である。
図9】実施の形態1に係る右側の判定値と左側の判定値とを変化させる場合のタイムチャートである。
図10】実施の形態1に係る判定距離による判定値を変化させるカーブ路の範囲の設定を説明する図である。
図11】実施の形態1に係る自動運転システム及び他車両行動予測装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態1
実施の形態1に係る自動運転システム30及び他車両行動予測装置35について図面を参照して説明する。自動運転システム30は、自動運転車両に搭載されている。
【0012】
1-1.自動運転システム30
図1に示すように、自動運転システム30は、周辺監視装置31、位置検出装置32、地図情報データベース33、無線通信装置34、自動運転制御装置35、及び駆動制御装置36等を備えている。なお、他車両行動予測装置35は、自動運転制御装置35に組み込まれている。
【0013】
周辺監視装置31は、車両の周辺を監視するカメラ、レーダ等の装置である。レーダには、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波レーダ等が用いられる。位置検出装置32は、自車両の現在位置を検出する装置であり、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の人工衛星から出力される信号を受信するGPSアンテナ等が用いられる。無線通信装置34は、4G、5G等のセルラー方式の無線通信の規格を用いて、基地局と無線通信を行う。
【0014】
地図情報データベース33には、道路形状、標識、信号等の道路情報が記憶されている。地図情報データベース33は、記憶装置を主体として構成されている。なお、地図情報データベース33は、ネットワーク網に接続された車外のサーバに設けられてもよく、車線変更予測部35c及び自動運転制御装置35は、必要な道路情報を、無線通信装置34を介して車外のサーバから取得してもよい。
【0015】
駆動制御装置36として、動力制御装置、ブレーキ制御装置、自動ステアリング制御装置、及びライト制御装置等が備えられている。動力制御装置は、内燃機関、モータ等の動力機の出力を制御する。ブレーキ制御装置は、電動ブレーキ装置のブレーキ動作を制御する。自動ステアリング制御装置は、電動ステアリング装置を制御する。ライト制御装置は、方向指示器等を制御する。
【0016】
自動運転制御装置35は、周辺検知部35a、道路形状検知部35b、車線変更予測部35c、目標軌道生成部35d、及び車両制御部35e等の機能部を備えている。自動運転制御装置35の各機能は、自動運転制御装置35が備えた処理回路により実現される。具体的には、図2に示すように、自動運転制御装置35は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90、記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入出力する入出力装置92等を備えている。
【0017】
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスク、DVD装置等の各種の記憶装置が用いられる。
【0018】
入出力装置92には、通信装置、A/D変換器、入出力ポート、駆動回路等が備えられる。入出力装置92は、周辺監視装置31、位置検出装置32、地図情報データベース33、無線通信装置34、及び駆動制御装置36等に接続され、これらの装置と通信を行う。
【0019】
そして、自動運転制御装置35が備える各機能部35a~35e等の各機能は、演算処理装置90が、記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91及び入出力装置92等の自動運転制御装置35の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各機能部35a~35e等が用いる判定値、判定距離、マップデータ等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。以下、自動運転制御装置35の各機能について詳細に説明する。
【0020】
或いは、自動運転制御装置35は、処理回路として、図3に示すように、専用のハードウェア93、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC、FPGA、GPU、AIチップ、又はこれらを組み合わせた回路等が備えられてもよい。
【0021】
周辺検知部35aは、自車両の周囲に存在する他車両等を検知する。周辺検知部35aは、周辺監視装置31から取得した検知情報、及び位置検出装置32から取得した自車両の位置情報に基づいて、他車両の位置、移動方向Dm、移動速度Vsなどを検知する。また、周辺検知部35aは、他車両以外にも、障害物、歩行者、標識なども検知する。
【0022】
道路形状検知部35bは、自車両の周囲の道路形状を検知する。また、道路形状検知部35bは、周辺検知部35aが検知した他車両が位置する道路形状を検知する。本実施の形態では、道路形状検知部35bは、周辺監視装置31から取得した白線、路肩等の区画線の検知情報に基づいて、道路の区画線等の形状を検知し、検知した道路の区画線等の形状に基づいて、道路の走行車線の形状、数、及び各検知物に対する位置を検知する。例えば、道路の区画線は、複数次数(例えば、3次)の多項式により表され、多項式を用いて、区画線の各位置の接線方向及び曲率が算出可能である。
【0023】
なお、道路形状検知部35bは、位置検出装置32から取得した自車両の位置情報、周辺検知部35aにより検知した他車両の位置情報、地図情報データベース33から取得した道路情報等に基づいて、自車両の周辺の道路形状を検知してもよい。
【0024】
目標軌道生成部35dは、周辺検知部35aにより検知された自車両の周辺の他車両、障害物、及び歩行者の状態、並びに道路形状検知部35bにより検知された自車両の周辺の道路形状に合わせた、目標走行軌道を決定する。目標走行軌道は、将来の各時刻における自車両の位置、自車両の進行方向、自車両の速度、走行車線、及び車線変更を行う位置等の時系列の走行計画である。
【0025】
例えば、目標軌道生成部35dは、周辺監視装置31により自車両の前方に他車両、障害物、歩行者等が検出された場合は、他車両、障害物、歩行者等への接触を避けるような目標走行軌道を決定する。
【0026】
また、目標軌道生成部35dは、後述する車線変更予測部35cによる他車両の車線変更の有無の予測結果に基づいて、目標走行軌道を決定する。例えば、他車両が自車線に車線変更を行うと予測された場合は、目標軌道生成部35dは、他車両との接触を避けるような目標走行軌道(例えば、加速、減速、車線変更)を決定する。また、他車両が自車線から隣接車線に車線変更を行うと予測された場合は、目標軌道生成部35dは、他車両との接触を考慮しない目標走行軌道(例えば、加速、減速)を決定する。
【0027】
車両制御部35eは、目標軌道生成部35dにより生成された自車両の目標走行軌道に追従走行するように車両を制御する。例えば、車両制御部35eは、目標速度、目標ステアリング角、方向指示器の操作指令等を決定し、決定した各指令値を、動力制御装置、ブレーキ制御装置、自動ステアリング制御装置、ライト制御装置等の駆動制御装置36に伝達する。
【0028】
動力制御装置は、自車両の速度が目標速度に追従するように、内燃機関、モータ等の動力機の出力を制御する。ブレーキ制御装置は、自車両の速度が目標速度に追従するように、電動ブレーキ装置のブレーキ動作を制御する。自動ステアリング制御装置は、ステアリング角が目標ステアリング角に追従するように、電動ステアリング装置を制御する。ライト制御装置は、方向指示器の操作指令に従って、方向指示器を制御する。
【0029】
1-2.車線変更予測部35c
車線変更予測部35cは、他車両の検知結果に基づいて、他車両の車線変更の有無を予測する。車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状に基づいて、他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させる。
【0030】
道路形状に合わせて、ステアリング操作が行われるので、車線変更の意図がなくても、道路形状に応じて、車両のステアリング挙動が変化する。そのため、道路形状の変化にかかわらず、同じ判定値を用いて、他車両の車線変更の有無を判定すると、誤判定が生じる。上記の構成によれば、他車両が位置する道路形状に基づいて、予測に用いられる判定値が変化されるので、誤判定の発生を抑制できる。
【0031】
車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状がカーブ路である場合に、判定値を、直線路である場合の判定値から変化させる。
【0032】
車線変更の意図がなくても、直線路よりもカーブ路の方が、ステアリング操作が大きくなる。上記の構成によれば、他車両が位置する道路形状が、カーブ路である場合に、直線路である場合の判定値から変化されるので、誤判定の発生を抑制できる。
【0033】
<道路幅方向の移動速度成分による判定>
本実施の形態では、車線変更予測部35cは、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさ(絶対値)が、判定値Vsthを上回った場合に、他車両が車線変更を行うと予測し、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさ(絶対値)が、判定値Vsthを下回った場合に、他車両が車線変更を行わないと予測する。この判定における判定値Vsthは、正の値に設定される。そして、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状がカーブ路である場合に、判定値Vsthを直線路である場合の判定値から増加させる。
【0034】
カーブ路である場合は、カーブに沿って走行させるために、ステアリングが操作される。例えば、カーブの曲率半径に対して、ステアリングの操作量に過不足が生じると、車両が走行車線から逸脱しようとするので、車両を車線内に維持するために、ステアリングの操作量がフィードバック的に増減される。この際、カーブの曲率に対して、ステアリングの操作量に過不足が生じると、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなり、車線変更を行うと誤判定されやすくなる。上記の構成によれば、他車両が位置する道路形状がカーブ路である場合に、判定値Vsthが、直線路である場合の判定値から増加されるので、カーブに沿って走行させるためのステアリングのフィードバック的な操作により、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなった場合でも、車線変更を行うと誤判定されることを抑制できる。
【0035】
図4に示すように、車線変更予測部35cは、道路形状検知部35bにより検知された区画線における他車両が位置する部分の接線方向を、道路の延出方向Yrに設定し、設定した道路の延出方向Yrに直交する方向を、道路幅方向Xrとして設定する。そして、車線変更予測部35cは、設定した道路幅方向Xr、及び周辺検知部35aにより検知された他車両の移動方向Dm及び移動速度Vsに基づいて、道路幅方向Xrの他車両の移動速度成分Vsxを算出する。また、車線変更予測部35cは、設定した道路の延出方向Yr、及び周辺検知部35aにより検知された他車両の移動方向Dm及び移動速度Vsに基づいて、道路の延出方向Yrの他車両の移動速度成分Vsyを算出する。
【0036】
車線変更予測部35cは、道路幅方向の移動速度成分Vsxが車線の左側に向かう成分であり、道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、判定値Vsthを上回った場合は、他車両が左側の車線に車線変更を行うと予測する。道路幅方向の移動速度成分Vsxが車線の左側に向かう成分である場合の道路幅方向の移動速度成分Vsxを、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxと称す。一方、車線変更予測部35cは、道路幅方向の移動速度成分Vsxが車線の右側に向かう成分であり、道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、判定値Vsthを上回った場合は、他車両が右側の車線に車線変更を行うと予測する。道路幅方向の移動速度成分Vsxが車線の右側に向かう成分である場合の道路幅方向の移動速度成分Vsxを、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxと称す。
【0037】
<判定挙動>
図5に、自車両の周囲(例えば、前方)に存在する他車両の挙動を示し、図6に他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxと、車線変更の有無の予測結果とを示す。左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxを正とし、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxを負としている。判定値Vsthの正負反転値が、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxと比較される。図6には、判定値をカーブ路で変化させない比較例の場合を一点鎖線で示している。
【0038】
時点Aにおいて、他車両が直進路を走行している場合は、ステアリングの操作が小さく、道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが小さい。そのため、本実施の形態の例及び比較例の双方において、道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、判定値Vsthを下回っており、車線変更が無いと予測されている。
【0039】
時点Bにおいて、他車両がカーブ路を走行し始めた後、ステアリングの操作が遅れ、他車両は走行車線の中心に対して左側にずれ、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなっている。そのため、比較例では、道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、判定値を上回っており、車線変更が有ると誤判定されている。一方、本実施の形態の例では、判定値Vsthは、直線路の判定値から増加されており、車線変更が無いと正常に判定されている。
【0040】
時点Bの後、他車両は、左側への車両のずれを元に戻すため、ステアリングが右側に操作されており、カーブの曲率半径に対して、右側への操作量が大きくなっている。そのため、時点Cにおいて、右側の道路幅方向の移動速度Vsxの絶対値が大きくなっている。比較例では、道路幅方向の移動速度Vsxの絶対値が、判定値を上回っており、車線変更が有ると誤判定されている。一方、本実施の形態の例では、直線路の判定値から増加されており、車線変更が無いと正常に判定されている。
【0041】
その後、車両が車線の中心付近に戻ったため、ステアリングが左側に操作され、時点D以降は、カーブの曲率半径に合ったステアリングの操作量に設定され、他車両は走行車線の中心に沿って走行している。そのため、道路幅方向の移動速度Vsxの絶対値が小さくなり、本実施の形態の例及び比較例の双方とも、車線変更が無いと正常に判定されている。
【0042】
<曲率半径による判定値の変化>
車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状がカーブ路である場合に、当該カーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、判定値Vsthを増加させる。
【0043】
カーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、カーブが急になり、フィードバック的なステアリングの操作量及び遠心力が大きくなり、道路幅方向の移動速度成分Vsxが大きくなる。上記の構成によれば、カーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、判定値Vsthが増加されるので、誤判定を抑制できる。
【0044】
車線変更予測部35cは、カーブ路の曲率半径が、途中で変化する場合に、他車両が現在位置するカーブ路の曲率半径に基づいて、判定値Vsthを変化させればよい。この構成によれば、途中で変化するカーブ路の曲率半径に応じて、判定値Vsthを適切に変化させることができ、誤判定を抑制できる。
【0045】
車線変更予測部35cは、道路形状検知部35bにより検知された区画線における他車両が位置する部分の曲率半径を算出する。曲率半径は、公知の各種方法により算出される。例えば、図7に示すように、曲率半径は、他車両が位置する区画線部分の接線に対する、他車両が位置する区画線部分よりも所定距離ΔLだけ前後の区画線の部分の変動幅ΔWに基づいて算出される。車線変更予測部35cは、曲率半径と判定値Vsthとの関係が予め設定されたマップデータを参照し、算出した曲率半径に対応する判定値Vsthを算出する。図8に示すように、曲率半径が、直線路とみなせる上限値以上である場合は、直線路に対応する判定値が設定され、曲率半径が、上限値よりも小さくなるに従って、直線路に対応する判定値から増加される。
【0046】
<移動速度による判定値の変化>
また、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状がカーブ路である場合に、他車両の移動速度Vsの大きさ(絶対値)が大きくなるに従って、判定値Vsthを増加させてもよい。
【0047】
移動速度Vsが大きくなるに従って、同じステアリングの操作量に対する道路幅方向の移動速度成分Vsxが大きくなり、誤判定が生じやすくなる。上記の構成によれば、他車両の移動速度Vsの大きさが大きくなるに従って、判定値Vsthが増加されるので、誤判定を抑制できる。
【0048】
例えば、車線変更予測部35cは、移動速度Vsと判定値の補正値との関係が予め設定されたマップデータを参照し、他車両の現在の移動速度Vsに対応する判定値の補正値を算出する。そして、車線変更予測部35cは、曲率半径に基づいて算出された判定値に、判定値の補正値を加算して、最終的な判定値Vsthを算出する。
【0049】
或いは、車線変更予測部35cは、曲率半径と移動速度Vsと判定値Vsthとの関係が予め設定されたマップデータを参照し、他車両が現在位置するカーブ路の曲率半径及び他車両の現在の移動速度Vsに対応する判定値Vsthを算出してもよい。
【0050】
或いは、車線変更予測部35cは、他車両が位置するカーブ路の曲率半径に基づいて判定値の第1候補値を算出し、他車両の移動速度に基づいて、判定値の第2候補値を算出し、第1候補値と第2候補値との大きい方を、最終的な判定値Vsthとして算出してもよい。
【0051】
<右側の判定値と左側の判定値の個別変化>
車線変更予測部35cは、他車両が、左側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる左側の判定値VsthLと、他車両が、右側の車線に車線変更するか否かを判定する場合に用いる右側の判定値VsthRと、を個別に変化させてもよい。
【0052】
車線変更予測部35cは、道路幅方向の移動速度成分Vsxが車線の左側に向かう成分であり、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、左側の判定値VsthLを上回った場合は、他車両が左側の車線に車線変更を行うと予測する。一方、車線変更予測部35cは、道路幅方向の移動速度成分Vsxが車線の右側に向かう成分であり、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、右側の判定値VsthRを上回った場合は、他車両が右側の車線に車線変更を行うと予測する。
【0053】
図5及び図6を用いて説明したように、他車両がカーブ路を走行し始めた後、ステアリングの操作が遅れると、右側のカーブ路である場合は、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなり、左側のカーブ路である場合は、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなる。図5及び図6の例では、カーブ路の開始直後のステアリングの操作遅れによるカーブ外側への車両のずれを元に戻すために、カーブ内側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなっているが、通常、カーブ路の開始直後のカーブ外側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさよりも小さくなる。また、カーブ路の遠心力の影響によりカーブ外側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、カーブ内側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさよりも大きくなる傾向になる。
【0054】
そこで、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の判定値VsthLを、右側の判定値VsthRよりも大きくし、他車両が位置する道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の判定値VsthRを、左側の判定値VsthLよりも大きくする。
【0055】
上述したように、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさよりも大きくなる傾向になる。上記のように、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の判定値VsthLが、右側の判定値VsthRよりも大きくされるので、判定精度を向上させることができる。一方、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさよりも大きくなる傾向になる。上記のように、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の判定値VsthRが、左側の判定値VsthLよりも大きくされるので、判定精度を向上させることができる。
【0056】
例えば、図9に示すように、図5と同様の右側にカーブするカーブ路である場合に、左側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、右側の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさよりも大きくなっている。これに合わせて、左側の判定値VsthLが、右側の判定値VsthRよりも大きくされているので、判定精度を向上させることができる。
【0057】
なお、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の判定値VsthLを、直線路である場合の判定値から増加させ、右側の判定値VsthRを、直線路である場合の判定値から変化させなくてもよい。また、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の判定値VsthRを、直線路である場合の右側の判定値から増加させ、左側の判定値VsthLを、直線路である場合の左側の判定値から変化させなくてもよい。
【0058】
左側の判定値VsthL及び右側の判定値VsthRは、それぞれ、上述したように、曲率半径及び他車両の速度Vsに基づいて変化されてもよい。
【0059】
<カーブ路の判定範囲>
図10に示すように、車線変更予測部35cは、カーブ路の開始位置から、当該開始位置よりも判定距離ΔLdtだけ前方のカーブ路の位置までの範囲内に他車両が位置する場合に、判定値Vsthを、道路形状が直線路である場合の判定値から変化させてもよい。なお、判定値Vsthを変化させるカーブ路の範囲が、カーブ路の終了位置を超過しないように、道路形状検知部35bによるカーブ路の検知結果に基づいて、判定距離ΔLdt及びカーブ路の範囲が調整される。
【0060】
特に、カーブの入り口付近では、カーブの曲率に合わせるためのステアリングのフィードバック的な操作が行われ、ステアリングの操作量の過不足が大きくなり、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなり易い。上記の構成によれば、カーブ路の開始位置から判定距離ΔLdtだけ前方の位置までのカーブ路の範囲内に他車両が位置する場合に、判定値Vsthを変化させる(本例では、増加させる)ので、カーブの入り口付近で、ステアリングのフィードバック的な操作により、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが大きくなった場合でも、誤判定を抑制できる。
【0061】
車線変更予測部35cは、カーブ路の長さ(全長)に基づいて、判定距離ΔLdtを変化させる。カーブ路の長さが長くなるに従って、判定距離ΔLdtが長くされる。例えば、カーブ路の長さに、1未満の係数が乗算されて、判定距離ΔLdtが算出されればよい。この構成によれば、カーブ路の長さに応じて、適切な判定距離ΔLdtを設定することができ、判定精度を向上させることができる。
【0062】
本実施の形態では、道路形状検知部35bは、周辺監視装置31の区画線等の検知情報に基づいて道路形状を検知しており、前方の見通しが悪く、カーブ路の長さを検知できない場合は、カーブ路の長さに基づいた、判定距離ΔLdtの変化が行われなくてもよく、デフォルト値に設定されてもよい。
【0063】
車線変更予測部35cは、カーブ路の曲率半径に基づいて、判定距離ΔLdtを変化させる。カーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、判定距離ΔLdtが長くされる。カーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、カーブの曲率に合わせるためのステアリングの操作量が大きくなるため、カーブ路の開始位置後にステアリングの操作量をフィードバック的に調整する区間が長くなる。上記の構成によれば、カーブ路の曲率半径に基づいて、判定距離ΔLdtが変化されるため、判定精度を向上させることができる。
【0064】
例えば、車線変更予測部35cは、曲率半径と判定距離の補正値との関係が予め設定されたマップデータを参照し、他車両の現在位置する道路の曲率半径に対応する判定距離の補正値を算出する。そして、車線変更予測部35cは、カーブ路の長さに基づいて算出された判定距離、又はデフォルトの判定距離に、判定距離の補正値を加算して、最終的な判定値Vsthを算出する。
【0065】
<隣接車線が存在しない方向への判定禁止>
車線変更予測部35cは、隣接する車線が存在しない方向への他車両の車線変更の有無を判定しない。車線変更予測部35cは、周辺検知部35a及び道路形状検知部35bの検知結果に基づいて、他車両の走行車線と、他車両の走行車線の左側に隣接する走行車線の有無と、右側に隣接する走行車線の有無を判定する。そして、車線変更予測部35cは、他車両の走行車線の右側に隣接する走行車線がない場合は、右側への他車両の車線変更の有無を判定しない。また、車線変更予測部35cは、他車両の走行車線の左側に隣接する走行車線がない場合は、左側への他車両の車線変更の有無を判定しない。
【0066】
この構成によれば、隣接車線が存在しない方向への不要な車線変更の判定が行われないので、判定精度を向上させることができる。
【0067】
<フローチャート>
以上で説明した処理を、図11のフローチャートに示すように構成できる。図11の処理は、例えば、所定の演算周期毎に実行される。
【0068】
ステップS01で、上述したように、周辺検知部35aは、自車両の周囲に存在する他車両等を検知する周辺検知ステップを実行する。また、周辺検知部35aは、他車両以外にも、障害物、歩行者、標識なども検知する。
【0069】
ステップS02で、上述したように、道路形状検知部35bは、自車両の周囲の道路形状を検知する道路形状検知ステップを実行する。また、道路形状検知部35bは、周辺検知部35aが検知した他車両が位置する道路形状を検知する。本実施の形態では、道路形状検知部35bは、周辺監視装置31から取得した白線、路肩等の区画線の検知情報に基づいて、道路の区画線等の形状を検知し、検知した道路の区画線等の形状に基づいて、道路の走行車線の形状、数、及び各検知物に対する位置を検知する。
【0070】
ステップS03からS08で、上述したように、車線変更予測部35cは、他車両の検知結果に基づいて、他車両の車線変更の有無を予測する車線変更予測ステップを実行する。なお、複数の他車両が検知された場合は、各他車両について、ステップS03からS08の処理が実行され、各他車両の車線変更の有無が判定される。
【0071】
ステップS03で、上述したように、車線変更予測部35cは、周辺検知部35a及び道路形状検知部35bにより検知された他車両が位置する道路形状に基づいて、他車両がカーブ路に位置するか否かを判定し、カーブ路に位置しない場合は、ステップS04に進み、カーブ路に位置する場合は、ステップS05に進む。例えば、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路の曲率半径が、カーブ判定値以下である場合に、カーブ路であると判定し、曲率半径が、カーブ判定値より大きい場合に、直線路であると判定する。
【0072】
ステップS04で、車線変更予測部35cは、直線路である場合の判定値を、判定値Vsthに設定する。
【0073】
一方、ステップS05で、車線変更予測部35cは、判定距離ΔLdtを設定する。道路形状検知部35bによりカーブ路の長さが検知できている場合は、車線変更予測部35cは、カーブ路の長さに基づいて、判定距離ΔLdtを変化させる。また、車線変更予測部35cは、カーブ路の曲率半径に基づいて、判定距離ΔLdtを変化させる。
【0074】
そして、ステップS06で、車線変更予測部35cは、カーブ路の開始位置から、当該開始位置よりも判定距離ΔLdtだけ前方のカーブ路の位置までの範囲内に他車両が位置するか否かを判定し、範囲内に位置しない場合は、ステップS04に進み、範囲内に位置する場合は、ステップS07に進む。
【0075】
ステップS07で、車線変更予測部35cは、判定値Vsthを、直線路である場合の判定値から増加させる。上述した複数の方法が組み合わされて、カーブ路の判定値Vsthが算出される。例えば、車線変更予測部35cは、他車両が位置するカーブ路の曲率半径が小さくなるに従って、判定値Vsthを増加させる。車線変更予測部35cは、他車両の移動速度Vsの大きさ(絶対値)が大きくなるに従って、判定値Vsthを増加させる。車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状が、右側にカーブするカーブ路である場合は、左側の判定値VsthLを、右側の判定値VsthRよりも大きくし、他車両が位置する道路形状が、左側にカーブするカーブ路である場合は、右側の判定値VsthRを、左側の判定値VsthLよりも大きくする。
【0076】
そして、ステップS08で、上述したように、車線変更予測部35cは、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさ(絶対値)が、判定値Vsthを上回った場合に、他車両が車線変更を行うと予測し、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさ(絶対値)が、判定値Vsthを下回った場合に、他車両が車線変更を行わないと予測する。
【0077】
ステップS09で、上述したように、目標軌道生成部35d及び車両制御部35eは、他車両の車線変更の有無の予測結果に基づいて、自車両を自動運転する自動運転ステップを実行する。目標軌道生成部35dは、車線変更予測部35cによる他車両の車線変更の有無の予測結果に基づいて、目標走行軌道を決定する。車両制御部35eは、目標軌道生成部35dにより生成された自車両の目標走行軌道に追従走行するように車両を制御する。
【0078】
2.実施の形態2
次に、実施の形態2に係る自動運転システム30及び他車両行動予測装置35について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る自動運転システム30及び他車両行動予測装置35の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、道路形状検知部35bが、地図情報データベース33から取得した道路情報等に基づいて、自車両の周辺の道路形状を検知する点が実施の形態1と異なる。
【0079】
本実施の形態では、道路形状検知部35bは、位置検出装置32から取得した自車両の位置情報、周辺検知部35aにより検知した他車両の位置情報、地図情報データベース33から取得した道路情報等に基づいて、自車両の周辺の道路形状を検知する。
【0080】
なお、地図情報データベース33の道路情報と、実際の道路の状態が一致していない場合があるので、周辺監視装置31による区画線等の検知情報に基づいて検知した道路形状も用いられてもよい。
【0081】
地図情報データベース33には、道路の位置情報、車線数情報、カーブ路の情報(曲率半径、カーブ路の長さ)等の道路形状に係る情報が記憶されている。道路形状検知部35bは、地図情報データベース33から、他車両の位置情報に対応する道路形状の情報を取得する。
【0082】
本実施の形態では、実施の形態1のように、周辺監視装置31による前方の見通しが悪い場合でも、地図情報データベース33からカーブ路の長さ(全長)を取得できる。よって、精度よく、車線変更予測部35cは、カーブ路の長さ(全長)に基づいて、判定距離ΔLdtを変化させることができる。
【0083】
3.その他の実施の形態
(1)上記の各実施の形態では、他車両行動予測装置が、自動運転制御装置35に組み込まれている場合を例に説明した。しかし、他車両行動予測装置は、自動運転制御装置35に組み込まれていなくてもよく、他車両行動予測装置は、単体で設けられてもよく、他の装置に組み込まれてもよい。また、他車両行動予測装置は、運転者により運転される車両に備えられてもよい。この場合は、例えば、他車両行動予測装置は、他車両の車線変更の有無の予測結果を、運転者に報知するように構成されてもよい。例えば、他車両行動予測装置は、他車両が車線変更を行うと予測した場合は、その旨を、表示装置、音声装置などにより、運転者に報知する。
【0084】
また、他車両行動予測装置の一部又は全部は、サーバ等、自車両の外部に設けられてもよく、他車両の車線変更の予測結果が、無線通信により自車両の装置に伝達されてもよい。
【0085】
(2)上記の各実施の形態では、判定値Vsthを変化させる複数の方法を説明した。しかし、全ての方法が用いられなくてもよく、単数又は複数の任意の方法が、用いられてもよい。
【0086】
(3)上記の各実施の形態では、車線変更予測部35cは、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、判定値Vsthを上回った場合に、他車両が車線変更を行うと予測し、他車両の道路幅方向の移動速度成分Vsxの大きさが、判定値Vsthを下回った場合に、他車両が車線変更を行わないと予測する場合を例に説明した。しかし、車線変更予測部35cは、他車両の検知結果に基づいて、他車両の車線変更の有無を予測すれば、他の方法が用いられてもよい。例えば、車線変更予測部35cは、他車両の移動方向Dm及び移動速度Vsに基づいて、予測時間先の他車両の位置を予測し、現在の他車両の走行車線に対する他車両の予測位置の道路幅方向の逸脱量の大きさが、判定値を上回った場合に、他車両が車線変更を行うと予測し、逸脱量の大きさが、判定値を下回った場合に、他車両が車線変更を行わないと予測してもよい。このような他の方法を用いる場合も、車線変更予測部35cは、他車両が位置する道路形状に基づいて、他車両の車線変更の有無を予測する際に用いる判定値を変化させればよい。
【0087】
(4)上記の各実施の形態では、車線変更予測部35cは、カーブ路の開始位置から、当該開始位置よりも判定距離ΔLdtだけ前方のカーブ路の位置までの範囲内に他車両が位置する場合に、判定値Vsthを、道路形状が直線路である場合の判定値から変化させる場合を例に説明した。しかし、車線変更予測部35cは、カーブ路の全体に亘って、判定値Vsthを直線路の判定値から変化させてもよい。
【0088】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0089】
30 自動運転システム、35 他車両行動予測装置、35a 周辺検知部、35b 道路形状検知部、35c 車線変更予測部、Vsth 判定値、VsthL 左側の判定値、VsthR 右側の判定値、Vsx 他車両の道路幅方向の移動速度成分、ΔLdt 判定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11