(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】車両のステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
B62D1/04
(21)【出願番号】P 2021049970
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大舘 正太郎
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203061(JP,A)
【文献】特開2017-140915(JP,A)
【文献】特開2019-202446(JP,A)
【文献】特開2019-023009(JP,A)
【文献】特開2020-40436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ部から延びるスポーク部にリム部が連結されたステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールに対する運転者による把持を静電容量の変化に基づいて検出する静電容量式の接触センサと、を備え、
前記接触センサは、
前記リム部に設置されて当該リム部の静電容量の変化を感知する検出電極と、
前記スポーク部のうちの運転者と対峙する側の領域に配置され、一端部が前記リム部の前記検出電極に当接する導電部材と、を備え
、
前記スポーク部には、前記接触センサのセンサ制御ユニットが配置され、
前記スポーク部に配置される前記導電部材の一端部は、前記検出電極の上に当接状態で重なって配置され、
前記検出電極の前記導電部材との当接部には、前記ハブ部の方向に向かって開放された離間部が設けられ、
前記離間部には、前記導電部材の前記当接部の下方を跨いで、前記センサ制御ユニットと前記検出電極を接続する配線が配置されていることを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記導電部材の他端部は、前記ハブ部に設けられた接地部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記導電部材は、前記検出電極と当接する側の領域が湾曲頂部となる略U字状の正面視形状とされていることを特徴とする請求項
1または2に記載の車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記導電部材の前記検出電極との当接部は、前記リム部の内周側の円弧に略沿う主当接領域と、当該主当接領域に連なり前記リム部の内周側の円弧よりも小径の円弧形状の小円弧領域と、を有することを特徴とする請求項3に記載の車両のステアリング装置。
【請求項5】
前記リム部は、前記検出電極の外側を覆う表皮部材を備え、
前記表皮部材は、前記主当接領域と前記小円弧領域とに沿う切欠き部を有することを特徴とする請求項4に記載の車両のステアリング装置。
【請求項6】
前記センサ制御ユニットは、前記導電部材の正面視が略U字形状である部分の内側領域に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項7】
ハブ部から延びるスポーク部にリム部が連結されたステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールに対する運転者による把持を静電容量の変化に基づいて検出する静電容量式の接触センサと、を備え、
前記接触センサは、
前記リム部に設置されて当該リム部の静電容量の変化を感知する検出電極と、
前記スポーク部のうちの運転者と対峙する側の領域に配置され、一端部が前記リム部の前記検出電極に当接する導電部材と、を備え、
前記導電部材の他端部は、前記ハブ部に設けられた接地部材に固定され、
前記導電部材の他端部には、前記リム部の運転席側に向く面と略平行な姿勢で、前記接地部材に固定される接続片が設けられ、
前記接続片には、前記ステアリングホイールが中立操舵位置にある状態において、上下方向となる向きに延びる水抜き溝が設けられている
ことを特徴する車両のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によるステアリングホイールの把持を検出する機能を備えた車両のステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置として、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出する検出センサを備えたものがある。この検出センサの検出方式として、静電容量式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のステアリング装置は、ステアリングホイールのリム部の外層部に導電性の金属から成る検出電極が配置され、検出電極で感知される静電容量の変化を静電容量検出回路によって検出する基本構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のステアリング装置は、ステアリングホイールのリム部の周域に環状に検出電極が配置されている。このため、運転者がリム部のいずれの部位を把持した場合にも、運転者による把持を検出することができる。しかし、車両の運転時には、運転者はリム部だけでなくスポーク部を把持する場合があり、この場合には、上記の検出電極ではスポーク部の把持を検出することができない。このため、運転者がスポーク部を把持した場合にも、その把持を検出できることが望まれる。
【0006】
この対策としては、検出電極をリム部だけでなくスポーク部にも延ばすことが考えられるが、その場合には、検出電極の構造が複雑になり、検出電極の製造が難しくなる。
【0007】
そこで本発明は、検出電極の構造の複雑化を招くことなく、リム部とスポーク部の静電容量の変化を検出することができる車両のステアリング装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両のステアリング装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本出願の一態様に係る車両のステアリング装置は、ハブ部(例えば、実施形態のハブ部11)から延びるスポーク部(例えば、実施形態のスポーク部13)にリム部(例えば、実施形態のリム部12)が連結されたステアリングホイール(例えば、実施形態のステアリングホイール10)と、前記ステアリングホイールに対する運転者による把持を静電容量の変化に基づいて検出する静電容量式の接触センサ(例えば、実施形態の接触センサ32)と、を備え、前記接触センサは、前記リム部に設置されて当該リム部の静電容量の変化を感知する検出電極(例えば、実施形態の検出電極18)と、前記スポーク部のうちの運転者と対峙する側の領域に配置され、一端部が前記リム部の前記検出電極に当接する導電部材(例えば、実施形態の導電部材31)と、を備え、前記スポーク部には、前記接触センサのセンサ制御ユニット(例えば、実施形態のセンサ制御ユニット39)が配置され、前記スポーク部に配置される前記導電部材の一端部は、前記検出電極の上に当接状態で重なって配置され、前記検出電極の前記導電部材との当接部には、前記ハブ部の方向に向かって開放された離間部(例えば、実施形態の隙間37)が設けられ、前記離間部には、前記導電部材の前記当接部の下方を跨いで、前記センサ制御ユニットと前記検出電極を接続する配線(例えば、実施形態の配線30)が配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、運転者がリム部を把持した場合には、リム部に配置された検出電極がその把持による静電容量の変化を感知する。また、運転者がスポーク部を把持した場合には、リム部に配置された検出電極が、スポーク部に配置された導電部材を通してその把持による静電容量の変化を感知する。したがって、本構成では、共通の検出電極を用いてリム部とスポーク部の静電容量の変化を検出することができる。
また、この場合、センサ制御ユニットと検出電極を接続する配線が、検出電極の離間部を通り、かつ、導電部材の下方を跨いでハブ部の方向に向かって引き出されるため、ステアリングホイールに加わる外力から前記配線を保護することができる。また、本構成を採用することにより、検出電極に接続された前記配線をハブ部の方向(センサ制御ユニットの側)に容易に引き出すことができる。
【0010】
前記導電部材の他端部は、前記ハブ部に設けられた接地部材(例えば、実施形態の接地部材43)に固定されるようにしても良い。
【0011】
この場合、接地部材を介して導電部材をハブ部に固定することができるうえ、導電部材と接地部材を介して接触センサを接地させることができる。このため、接触センサの構造の簡素化を図ることができる。
【0012】
前記導電部材は、前記検出電極と当接する側の領域が湾曲頂部となる略U字状の正面視形状としても良い。
【0013】
この場合、導電部材の検出電極との当接部側の端部が略U字形状の湾曲頂部に相当する形状となるため、スポーク部のうちのリム部に近接する部位に対する運転者の手の接触を導電部材を介して確実に検出することができる。
【0014】
前記導電部材の前記検出電極との当接部(例えば、実施形態の当接部36)は、前記リム部の内周側の円弧に略沿う主当接領域(例えば、実施形態の主当接領域36a)と、当該主当接領域に連なり前記リム部の内周側の円弧よりも小径の円弧形状の小円弧領域(例えば、実施形態の小円弧領域36b)と、を有する構成としても良い。
【0015】
この場合、導電部材がリム部の内周側の円弧に略沿う主当接領域に加えて、小円弧領域でも検出電極に当接する。このため、検出電極に対する導電部材の導通状態を安定させることができる。したがって、スポーク部での静電容量の検出感度をより高めることができる。
【0016】
前記リム部は、前記検出電極の外側を覆う表皮部材(例えば、実施形態の表皮部材19)を備え、前記表皮部材は、前記主当接領域と前記小円弧領域とに沿う切欠き部(例えば、実施形態の切欠き部38)を有する構成としても良い。
【0017】
この場合、リム部に検出電極を覆う表皮部材が設けられた構造であっても、導電部材のうちの検出電極との当接部(主当接領域、及び、小円弧領域)は、表皮部材の切欠き部によって外側に露出することになる。このため、スポーク部のうちのリム部に近接する部位に対する運転者の手の接触を導電部材を介して確実に検出することができる。
【0018】
前記センサ制御ユニットは、前記導電部材の正面視が略U字形状である部分の内側領域に配置されるようにしても良い。
【0019】
この場合、導電部材の正面視が略U字形状である部分の内側領域にセンサ制御ユニットが配置されるため、センサ制御ユニットと検出電極の間の配線距離を短くすることができるうえ、導電部材とセンサ制御ユニットをスポーク部に効率良くレイアウトすることができる。
【0020】
本出願の他の態様に係る車両のステアリング装置は、ハブ部(例えば、実施形態のハブ部11)から延びるスポーク部(例えば、実施形態のスポーク部13)にリム部(例えば、実施形態のリム部12)が連結されたステアリングホイール(例えば、実施形態のステアリングホイール10)と、前記ステアリングホイールに対する運転者による把持を静電容量の変化に基づいて検出する静電容量式の接触センサ(例えば、実施形態の接触センサ32)と、を備え、前記接触センサは、前記リム部に設置されて当該リム部の静電容量の変化を感知する検出電極(例えば、実施形態の検出電極18)と、前記スポーク部のうちの運転者と対峙する側の領域に配置され、一端部が前記リム部の前記検出電極に当接する導電部材(例えば、実施形態の導電部材31)と、を備え、前記導電部材の他端部は、前記ハブ部に設けられた接地部材(例えば、実施形態の接地部材43)に固定され、前記導電部材の他端部には、前記リム部の運転席側に向く面と略平行な姿勢で、前記接地部材に固定される接続片(例えば、実施形態の接続片41)が設けられ、前記接続片には、前記ステアリングホイールが中立操舵位置にある状態において、上下方向となる向きに延びる水抜き溝(例えば、実施形態の水抜き溝44)が設けられていることを特徴とする。
【0021】
この場合、導電部材の他端部の接続片が、リム部の運転席側に向く面と略平行な姿勢で接地部材に固定されるため、接続片をステアリングホイールの正面側(運転席側に向く側)から接地部材に容易に固定することができる。また、こうして接地部材に固定された接続片の周囲に何等かの原因によって水滴が流れ込んだ場合には、上下方向に延びる水抜き溝を通してその水滴を下方に排出することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る車両のステアリング装置は、スポーク部のうちの運転者と対峙する側の領域に導電部材が配置され、その導電部材の一端部がリム部の検出電極に当接している。このため、本発明に係る車両のステアリング装置を採用した場合には、リム部に配置する検出電極をスポーク部まで延びる複雑な形状にすることなく、共通の検出電極によってリム部とスポーク部の静電容量の変化を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】実施形態の接触センサの検出原理を示す概略構成図。
【
図3】実施形態のリム部の表皮部材を取り去ったステアリングホイールの一部の正面図。
【
図4】実施形態のスポークカバー(導電部材)の一部を破断したステアリングホイールの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、実施形態のステアリング装置1の正面図である。
ステアリング装置1は、図示しないステアリングシャフトに連結されるステアリングホイール10を備えている。ステアリングホイール10は、ステアリングシャフトに一体回転可能に結合されるハブ部11と、ハブ部11の径方向外側に配置される環状のリム部12と、ハブ部11から径方向外側に延びて、ハブ部11とリム部12を連結する三つのスポーク部13と、を備えている。運転席に着座した運転者と正対するハブ部11の前面(車両の後方側に向く面)には、ホーン操作部14が配置されている。ホーン操作部14の背部側には、図示しないエアバッグ装置が内蔵されている。
【0028】
図1は、ステアリングホイール10が中立操舵位置にある状態を示している。以下のスポーク部13の説明での上下や左右は、特別に断らない限り、ステアリングホイール10が中立操舵位置にあるときにおける上下や左右を意味するものとする。
三つのスポーク部13のうちの二つは、ハブ部11から左右の相反方向に延び、その延び方向の端部がリム部12に連結されている。残余のスポーク部13は、ハブ部11から下方に延び、その延び方向の端部がリム部12に連結されている。以下、三つのスポーク部13を区別する場合には、ハブ部11から左側に延びるスポーク部13を左スポーク部13Lと称し、ハブ部11から右側に延びるスポーク部13を右スポーク部13Rと称する。また、ハブ部11から下側に延びるスポーク部13を下スポーク部13Dと称する。
【0029】
左スポーク部13Lと右スポーク部13Rの各前面(車両の後方側に向く面)には、スイッチ操作によって図示しない車載機器の制御部に操作信号を出力する複数の操作スイッチ15が配置されている。操作スイッチ15の操作によって操作信号を出力する車載機器は、例えば、オーディオ関連機器や液晶パネルの表示機器、走行モードの切換え機器等である。
【0030】
図2は、ステアリング装置1におけるステアリング把持の検出原理を示す概略構成図である。
図2では、ステアリングホイール10の一部を断面にして示している。
図2中のステアリングホイール10の断面は、リム部12の表面から内部中心側に向かう領域の断面をイメージしたものである。
図2中の符号20は、リム部12の中心側のウレタン等の樹脂層であり、符号19は、リム部12の外側を被覆する表皮部材である。
ステアリングホイール10のリム部12には、図示しない環状の芯金が埋設されており、その芯金の周囲には、
図2に示す樹脂層20が配置されている。そして、樹脂層20の外周側には、導電部材から成るシート状の検出電極18が被着されている。表皮部材19は、非導電性の皮革等から成り、検出電極18と樹脂層20の外周側に、これらを包み込むようにして取り付けられている。なお、リム部12に配置する検出電極18は、必ずしもシート状のものである必要はなく、例えば、導電性の金属導線や金属板、金属メッキ層、導電性塗料等であっても良い。
【0031】
検出電極18は、運転者がリム部12を把持することによって変化する静電容量を感知する部材であり、
図2に示すように、配線30によって静電容量検出回路17に接続されている。検出電極18には、後に詳述する下スポーク部13Dの導電部材31の一端部が接続されている。本実施形態では、検出電極18と、導電部材31と、静電容量検出回路17とが静電容量式の接触センサ32を構成している。
【0032】
静電容量検出回路17は、検出電極18と導電部材31に通電する交流電源33と、検出電極18と導電部材31の静電容量の変化に比例した電流を検出する電流センサ34と、を備えている。静電容量検出回路17は、運転者が検出電極18の近傍や導電部材31の近傍を把持したときに、その部位に生じた静電容量の変化を電流センサ34の検出電流を基にして検出する。
【0033】
図3は、リム部12の表皮部材19を取り去ったステアリングホイール10の下部領域を拡大して示した正面図である。
図1,
図3に示すように、ステアリングホイール10の下スポーク部13Dの前面(運転者の上半身に対峙する側の領域)には、正面視が略U字状の樹脂製のスポーク部カバー35が取り付けられている。スポーク部カバー35は、その外表面と裏面側の一部に導電性金属のメッキ層が設けられている。そのメッキ層は上記の導電部材31を構成している。メッキ層によって形成された導電部材31は、スポーク部カバー35の外表面と同様に正面視が略U字形状とされている。具体的には、導電部材31は、リム部12に近接する側が湾曲頂部となる略U字状の正面視形状とされている。導電部材31の湾曲頂部に相当する領域(一端部)は、リム部12の表皮部材19の内側に配置された検出電極18に当接している。これにより、検出電極18と導電部材31とは相互に電気的に導通している。
【0034】
導電部材31のうちの検出電極18との当接部36は、
図3に示すように、リム部12の内周側の円弧に略沿う主当接領域36aと、主当接領域36aのリム部12の円周方向の前後に連なる一対の小円弧領域36bと、を有する。小円弧領域36bの円弧は、リム部12の内周面の円弧よりも小径とされている。導電部材31の当接部36は、主当接領域36aと前後の小円弧領域36bが検出電極18の外表面に重ねられ、その状態で当接状態(電気的な導通状態)が維持されている。
【0035】
ここで、本実施形態のステアリング装置1では、リム部12の円周上に二つの検出電極18が配置されている。一方の検出電極18は、リム部12の下端位置(下スポーク部13Dとの接続位置)からリム部12の円周の右半分の領域に亘って配置され、他方の検出電極18は、リム部12の下端位置(下スポーク部13Dとの接続位置)からリム部12の円周の左半分の領域に亘って配置されている。一方の検出電極18と他方の検出電極18とは、
図3に示すように、リム部12の円周の下端位置において、互いの端部が隙間37を挟んで相互に対向している。本実施形態では、一方の検出電極18と他方の検出電極18の間の隙間37が、ハブ部11の方向に向かって開放された離間部を構成している。
下スポーク部13Dに配置される導電部材31の当接部36は、一方の検出電極18と他方の検出電極18とに跨って当接している。
【0036】
リム部12の外側を覆う表皮部材19には、
図1,
図3に示すように、導電部材31の主当接領域36aと小円弧領域36bとに沿う切欠き部38が設けられている。これにより、導電部材31の主当接領域36aと小円弧領域36bとは、切欠き部38を通して表皮部材19の外部に露出している。
【0037】
また、
図1に示すように、下スポーク部13Dには、静電容量検出回路17(
図2参照)を含むセンサ制御ユニット39が配置されている。センサ制御ユニット39は、車両の統合制御ユニット等から検出指令を受け、静電容量検出回路17によって運転者によるステアリングホイール10の把持状態を検出する。
センサ制御ユニット39は、導電部材31の正面視が略U字形状である部分の内側領域に配置されている。センサ制御ユニット39の前面側(運転者の上半身に対峙する側)は、樹脂製のユニットカバー40によって覆われている。ユニットカバー40は、正面視が略U状のスポーク部カバー35の内側に配置されている。
【0038】
図4は、ホーン操作部14を取り去り、スポーク部カバー35(導電部材31)の一部を破断してステアリングホイール10の下部領域を拡大して示した正面図である。
正面視が略U字状のスポーク部カバー35の他端部側(上端側)には、上方側に向かって延びる平板状の一対の接続片41が延設されている。接続片41は、スポーク部カバー35の略U形状の開口側の各上端部に延設されている。接続片41は、ハブ部11に固定設置された導電金属製の接地部材43(アース部材)に固定されている。接続片41は、リム部12の運転席側に向く面(リム部12の前面)と略平行な姿勢で接地部材43(アース部材)の上に重ねられ、その状態でボルト等の締結部材42によって接地部材43に固定されている。各接続片41の表面は、導電部材31と連続するように導電性金属のメッキ処理が施されている。したがって、導電部材31の上端部(他端部)は、一対の接続片41を介して接地部材43に電気的に接続されている。
なお、本実施形態の場合、接地部材43の各接続片41との固定部には、接続片41を上方から挟み込むクリップ構造の挟み込み片45が設けられている。各接続片41は、挟み込み片45で挟み込まれた状態で接地部材43に締結固定されている。
【0039】
図5は、接続片41を裏面側(接地部材43と当接する面の側)から見た図である。
図5に示すように、各接続片41の裏面、若しくは、表面には、ステアリングホイール10が中立操舵位置にある状態において、上下方向となる向きに延びる水抜き溝44が形成されている。接続片41と接地部材43の締結部の上方側に水滴が流れ込んだ場合には、接続片41の水抜き溝44を通して水滴を下方に排出することができる。
【0040】
図6は、
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図6に示すように、リム部12の下端の二つの検出電極18の隙間37(離間部)には、下スポーク部13Dの導電部材31(当接部36)の下方を跨いで、センサ制御ユニット39と各検出電極18を接続する配線30が配置されている。また、センサ制御ユニット39は、ハブ部11と図示しないステアリングシャフトを経由して車両の統合制御ユニットに配線接続されている。
【0041】
以上の構成において、運転者によってステアリングホイール10のリム部12が把持されると、リム部12内の検出電極18の静電容量が増加する。また、運転者によって下スポーク部13Dのスポーク部カバー35(導電部材31)が運転者によって把持される(触れられる)と、導電部材の31と検出電極18の静電容量が増加する。これらの静電容量の増加は、センサ制御ユニット39(静電容量検出回路17)によって検出される。
【0042】
本実施形態のステアリング装置1は、下スポーク部13Dの運転者と対峙する側の領域に導電部材31が配置され、その導電部材31の一端部がリム部12の検出電極18に当接している。このため、本実施形態のステアリング装置1を採用した場合には、リム部12に配置する検出電極18をスポーク部13まで延びる複雑な形状にすることなく、共通の検出電極18によってリム部12と下スポーク部13Dの静電容量の変化を検出することができる。
なお、本実施形態では、リム部12内の検出電極18と当接する導電部材31が下スポーク部13Dに設けられているが、検出電極18と当接する導電部材31は、左スポーク部13Lや右スポーク部13R等の他のスポーク部13に設けることも可能である。
【0043】
また、本実施形態のステアリング装置1は、ハブ部11に固定された接地部材43に、導電部材31(スポーク部カバー35)の上端側(他端部側)が固定されている。このため、本構成では、接地部材43を介して導電部材31をハブ部11に固定することができるうえ、導電部材31と接地部材43を介して接触センサ32を接地させることができる。したがって、本構成を採用した場合には、接触センサ32の構造の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態のステアリング装置1では、導電部材31が、検出電極18と当接する側の領域が湾曲頂部となる略U字状の正面視形状とされている。このため、下スポーク部13D(スポーク部13)のうちのリム部12に近接する部位に対する運転者の手の接触を導電部材31を介して安定して検出することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のステアリング装置1では、導電部材31の検出電極18との当接部36が、リム部の内周側の円弧に略沿う主当接領域36aと、主当接領域36aに連なる小円弧領域36bと、を有している。このため、導電部材31を検出電極18に対してより広い面積で安定して当接させることができ、導電部材31と検出電極18との導通状態を安定させることができる。したがって、本構成を採用した場合には、スポーク部13での静電容量の検出感度をより高めることができる。
【0046】
また、本実施形態のステアリング装置1では、リム部12の検出電極18の外側を覆う表皮部材19に、導電部材31の主当接領域36aと小円弧領域36bとに沿う切欠き部38が設けられている。このため、リム部12に検出電極18を覆う表皮部材19が設けられた構造であっても、導電部材31の検出電極18との当接部36(主当接領域36a、及び、小円弧領域36b)が、表皮部材19の外側に露出することになる。したがって、本構成を採用した場合には、スポーク部13(下スポーク部13D)のリム部12と近接する部位に運転者の手が振れたときに、その接触を導電部材31を介して確実に検出することができる。
【0047】
また、本実施形態のステアリング装置1は、導電部材31の下端部(一端部)が左右の検出電極18に跨って当接し、左右の検出電極18の隙間37(離間部)に、左右の検出電極18とセンサ制御ユニット39を接続する配線30が配置されている。そして、その配線30が導電部材31の下端の当接部36の下方を跨いでハブ部11側に引き出されている。このため、左右の検出電極18とセンサ制御ユニット39を接続する配線30をステアリングホイール10に加わる外力から保護することができる。また、本構成を採用した場合には、各検出電極18に接続された配線30をハブ部11の方向(センサ制御ユニット39の側)に容易に引き出すことができる。なお、本実施形態では、左右の検出電極18は別体として記載しているが、隙間37をステアリングホイール10の下方に設けるように配置した、切れ目のない一体の検出電極18であっても良い。また、この場合、隙間に向けて左右いずれかの検出電極18の端部から配線30を引き出す構造としても良い。
【0048】
さらに、本実施形態のステアリング装置1では、導電部材31の上端部側(他端部)に、リム部12の運転席側に向く面と略平行な姿勢で接地部材43に固定される平板状の接続片41が設けられている。このため、導電部材31の接続片41をステアリングホイール10の正面側(運転席側に向く側)から接地部材43に容易に固定することができる。
また、本実施形態では、接地部材43と対向する接続片41に、上下方向に向いて延びる水抜き溝44が形成されている。このため、接地部材43に固定された接続片41の周囲に何等かの原因によって水滴が流れ込んだ場合には、上下方向に延びる水抜き溝44を通してその水滴を下方にスムーズに排出することができる。
【0049】
また、本実施形態のステアリング装置1では、センサ制御ユニット39が、導電部材31の正面視が略U字形状である部分の内側領域に配置されている。このため、本構成を採用した場合には、センサ制御ユニット39と検出電極18の間の配線距離を短くすることができるうえ、導電部材31とセンサ制御ユニット39をスポーク部13に効率良くレイアウトすることができる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、導電部材31の検出電極18との当接部36(主当接領域36a、及び、小円弧領域36b)が、切欠き部38を通して表皮部材19の外部に露出しているが、導電部材31の検出電極18との当接部36は、表皮部材19によって外側から覆うようにしても良い。この場合には、導電部材31の検出電極18との当接部36が外部から見えなくなるため、見栄えが良好になるうえ、表皮部材19による押さえ込みによって導電部材31と検出電極18の当接部分の接触不良を抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…ステアリング装置
10…ステアリングホイール
11…ハブ部
12…リム部
13…スポーク部
18…検出電極
19…表皮部材
30…配線
31…導電部材
32…接触センサ
36…当接部
36a…主当接領域
36b…小円弧領域
37…隙間(離間部)
38…切欠き部
39…センサ制御ユニット
41…接続片
43…接地部材
44…水抜き溝