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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ガスバーナ、及び燃焼設備
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/24 20060101AFI20221209BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20221209BHJP
   F23D 14/22 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
F23D14/24 C
F23C99/00 324
F23D14/22 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021106793
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
(72)【発明者】
【氏名】上妻 富明
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄三
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155917(JP,A)
【文献】特開2004-077010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/20-14/24
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含むガス燃料を噴出するノズルと、
前記ノズルより前記ノズルの径方向の外側を前記ノズルの軸線に沿って延び、前記ノズルとの間に一次空気が流通する一次空気流路を形成するスリーブと、
前記一次空気の流通方向において、前記スリーブの下流端から前記ノズルの径方向の外側に向かうように前記一次空気流路側とは反対側に延びる第1延在部と、
火炉の炉壁を開口する開口空間を画定するストレート面と傾斜面を含むバーナスロートと、を備え、
前記ストレート面は、前記開口空間の入口を形成し、
前記傾斜面は、前記開口空間の出口を形成し、前記ノズルの軸方向において前記開口空間の前記出口に向かうにつれて前記開口空間を拡径し、
前記スリーブの下流端は、前記ノズルの軸方向において、前記ストレート面と前記傾斜面とが互いに接続する接続点よりも前記開口空間の出口側に位置し、
前記スリーブを前記一次空気の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線と前記第1延在部とによって形成される角度をθ1とすると、
45度≦θ1≦60度を満たす、
ガスバーナ。
【請求項2】
前記第1延在部の先端は、前記開口空間の前記出口に位置している、
請求項1に記載のガスバーナ。
【請求項3】
前記第1延在部の先端は、前記火炉の内部空間内に位置している、
請求項1に記載のガスバーナ。
【請求項4】
前記スリーブより前記ノズルの径方向の外側を前記ノズルの軸線に沿って延び、前記スリーブとの間に二次空気が流通する二次空気流路を形成する二次空気流路形成部をさらに備え、
前記ノズルから噴出する前記ガス燃料に対する前記一次空気の空気比は、前記ノズルから噴出する前記ガス燃料に対する前記二次空気の空気比よりも低い、
請求項1から3の何れか一項に記載のガスバーナ。
【請求項5】
前記二次空気の流通方向において、前記二次空気流路形成部の下流端に接続され、前記ノズルの径方向の外側に向かうように前記二次空気流路側とは反対側に延びる第2延在部をさらに備え、
前記二次空気流路形成部を前記二次空気の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線と前記第2延在部とによって形成される角度をθ2とすると、
35度≦θ2≦60度を満たす、
請求項に記載のガスバーナ。
【請求項6】
45度<θ2≦60度を満たす、
請求項5に記載のガスバーナ。
【請求項7】
θ2≧θ1である、
請求項5又は6に記載のガスバーナ。
【請求項8】
前記第2延在部は、前記バーナスロートである、
請求項5から7の何れか一項に記載のガスバーナ。
【請求項9】
前記二次空気流路を流通する前記二次空気に旋回力を付与する旋回力付与装置をさらに備える、
請求項4から8の何れか一項に記載のガスバーナ。
【請求項10】
前記火炉と、
前記火炉内にガス燃料を噴出する請求項1から9の何れか一項に記載のガスバーナと、を備える、
燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバーナ、及び燃焼設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、NOx(窒素酸化物)の発生を抑制するガスバーナの開発が行われてきた。例えば、特許文献1には、ノズルの先端に形成された主孔の噴出角度を35°~45°とし、副孔の噴出角度を45°~55°とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4600850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術を適用することで、ある程度のNOxの発生を抑制可能である。しかしながら、NOxの発生は可能な限り抑制できることが望ましい。本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、NOxの発生を抑制することができるガスバーナ、及びこのガスバーナを備える燃焼設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本開示に係るガスバーナは、水素を含むガス燃料を噴出するノズルと、前記ノズルより前記ノズルの径方向の外側を前記ノズルの軸線に沿って延び、前記ノズルとの間に一次空気が流通する一次空気流路を形成するスリーブと、前記一次空気の流通方向において、前記スリーブの下流端から前記ノズルの径方向の外側に向かうように前記一次空気流路側とは反対側に延びる第1延在部と、を備え、前記スリーブを前記一次空気の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線と前記第1延在部とによって形成される角度をθ1とすると、45度≦θ1≦60度を満たす。
【発明の効果】
【0006】
本開示のガスバーナによれば、NOxの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るガスバーナを備える燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係るガスバーナの構成を概略的に示す図である。
図3】空気比とガス燃料の燃焼速度との関係を示すグラフである。
図4】幾つかの実施形態に係るガスバーナの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態によるガスバーナについて、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0009】
(燃焼設備の構成)
図1は、一実施形態に係るガスバーナ1を備える燃焼設備100の構成を概略的に示す図である。図1に例示するように、燃焼設備100は、火炉102と、火炉102内にガス燃料Fを噴出するガスバーナ1と、を備える。このような燃焼設備100は、例えば、ボイラであって、火炉102内に噴出されたガス燃料Fを火炎Xを発生させて燃焼することで高温の燃焼ガスGを生成し、この高温の燃焼ガスGから熱を回収することで蒸気を生成する。尚、燃焼ガスGの熱は、火炉102内に設けられる熱交換器によって回収されてもよいし、火炉102外に設けられる熱交換器によって回収されてもよい。
【0010】
(ガスバーナの構成)
図2は、一実施形態に係るガスバーナ1の構成を概略的に示す図である。一実施形態では、図2に例示するように、ガスバーナ1は、ノズル2と、スリーブ4と、第1延在部6と、バーナスロート8と、を備える。バーナスロート8は、火炉102の炉壁を開口する開口空間16を形成する。バーナスロート8(第2延在部)の構成については、後述する。
【0011】
ノズル2は、水素を含むガス燃料Fを噴出する。ノズル2は、例えば、円筒形状を有しており、不図示のガス燃料供給装置から供給されるガス燃料Fが流通するガス燃料流路10を含む。ガス燃料供給装置は、例えば、水素ガスが貯蔵されている水素ガスタンクである。ノズル2の先端2aは、ガス燃料Fが噴出されるガス燃料流路10の出口12を形成する。
【0012】
一実施形態では、ノズル2の先端2aは、バーナスロート8の開口空間16内に位置している。言い換えると、ガス燃料流路10の出口12は、バーナスロート8の開口空間16と連通している。ガス燃料Fは、ノズル2から噴出されると、バーナスロート8の開口空間16を通って、火炉102の内部空間103(燃焼室)に噴出される。火炉102の内部空間103に噴出されたガス燃料Fは、火炎Xを形成して燃焼する。尚、別の実施形態では、ノズル2はバーナスロート8の開口空間16を挿通していない。この場合、ノズルの先端2aは、ノズル2の軸線Cが延びる軸方向D2において、バーナスロート8を挟んで火炉102の内部空間103とは反対側に位置している。
【0013】
以下、ノズル2の軸線Cを中心とする径方向をノズル2の径方向D1と記載する。ノズル2の軸線Cが延びる軸方向D2をノズル2の軸方向D2と記載する。
【0014】
スリーブ4は、例えば、円筒形状を有しており、ノズル2よりノズル2の径方向D1の外側をノズル2の軸線Cに沿って延びる。そして、スリーブ4は、ノズル2との間に一次空気A1が流通する一次空気流路14を形成する。言い換えると、スリーブ4の内径はノズル2の外径より大きく、ノズル2がスリーブ4内に配置されている。スリーブ4は、スリーブ4の内壁面とノズル2の外壁面との間に、一次空気流路14を形成する。
【0015】
一実施形態では、図2に例示するように、スリーブ4の下流端4aは、スリーブ4の両端のうち一次空気A1の流通方向の下流側に位置するスリーブ4の一端であり、バーナスロート8の開口空間16内に位置している。スリーブの下流端4aは、ノズル2の軸方向D2において、ノズル2の先端2aよりも火炉102の内部空間103側に位置している。
【0016】
第1延在部6は、一次空気A1の流通方向において、スリーブ4の下流端4aからノズル2の径方向D1の外側に向かうように一次空気流路14側とは反対側に延びる。スリーブ4を一次空気A1の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線L1と第1延在部6とによって形成される角度をθ1とすると、45度≦θ1≦60度を満たす。
【0017】
一実施形態では、図2に例示するように、第1延在部6は、第1延在部6の先端6aがバーナスロート8の開口空間16内に位置するように、スリーブ4の下流端4aから火炉102の内部空間103に向かって延びている。言い換えると、第1延在部6は、火炉102の内部空間103内に挿入されていない。図2に例示する形態では、第1延在部6の先端6aは、バーナスロート8の開口空間16と火炉102の内部空間103との境界(バーナスロート8の開口空間16の出口)に位置している。尚、本開示は、図2に例示する形態に限定されず、別の実施形態では、第1延在部6は、第1延在部6の先端6aが火炉102の内部空間103内に位置するように、スリーブ4の下流端4aから火炉102の内部空間103に向かって延びている。
【0018】
一実施形態では、図2に例示するように、ガスバーナ1は、二次空気流路形成部18をさらに備える。二次空気流路形成部18は、例えば、円筒形状を有しており、スリーブ4よりノズル2の径方向D1の外側をノズル2の軸線Cに沿って延びる。そして、二次空気流路形成部18は、スリーブ4との間に二次空気A2が流通する二次空気流路20を形成する。言い換えると、二次空気流路形成部18の内径はスリーブ4の外径より大きく、スリーブ4が二次空気流路形成部18内に配置されている。二次空気流路形成部18は、二次空気流路形成部18の内壁面とスリーブ4の外壁面との間に、二次空気流路20を形成する。二次空気流路形成部18は、二次空気流路20の出口22がバーナスロート8の開口空間16と連通するように、二次空気流路形成部18の二次空気A2の流通方向の下流側の一端18aがバーナスロート8に接続されている。
【0019】
このようなガスバーナ1は、ガス燃料Fが一次空気A1と混合して燃焼してから、二次空気A2と混合して燃焼するように構成されており、いわゆる二段燃焼型の燃焼装置である。尚、本開示は、ガスバーナ1を二段燃焼型の燃焼装置に限定するものではない。ガスバーナ1は、一次空気A1だけでガス燃料Fを燃焼する単段燃焼型の燃焼装置であってもよい。ガスバーナ1は、一次空気A1及び二次空気A2に加え、ガス燃料Fと三次空気とを混合して燃焼する3段以上の多段燃焼型の燃焼装置であってもよい。
【0020】
一実施形態では、ノズル2から噴出するガス燃料Fに対する一次空気A1の空気比は、1未満である。空気比とはガス燃料Fを完全燃焼させるのに必要な空気量を1としたときの空気量の比率をいう。一実施形態では、一次空気A1の空気比は、ノズル2から噴出するガス燃料Fに対する二次空気A2の空気比よりも低い。一実施形態では、一次空気A1の空気比と二次空気A2の空気比との合計値は1以上である。つまり、ガスバーナ1は、ガス燃料Fを完全燃焼するように構成されている。この場合、火炉102は、バーナスロート8とは別に火炉102内に空気を供給する空気供給口(アフターエアポート)が形成される必要がなく、コスト削減を図ることができる。
【0021】
一実施形態では、図2に例示するように、ガスバーナ1は、旋回力付与装置21をさらに備える。旋回力付与装置21は、二次空気流路20を流通する二次空気A2に旋回力を付与する。旋回力付与装置21は、例えば、二次空気流路20に配置されるエアレジスタであって、エアレジスタのベーンがノズル2の軸方向D2に対して傾斜している。このため、エアレジスタを流通した二次空気A2は旋回力を付与される。
【0022】
一実施形態に係るバーナスロート8の構成について説明する。一実施形態では、図2に例示するように、バーナスロート8は、二次空気A2の流通方向において、二次空気流路形成部18の下流端18aに接続され、ノズル2の径方向D1の外側に向かうように二次空気流路20側とは反対側に延びる。
【0023】
具体的には、図2に例示するように、バーナスロート8は、開口空間16を画定するストレート面24と傾斜面26とを含む。
【0024】
ストレート面24は、開口空間16の入口を形成している。ストレート面24は、二次空気流路20の内面に対してフラットであるように、二次空気流路形成部18の先端22aから火炉102の内部空間103に向かって延びている。
【0025】
傾斜面26は、ノズル2の軸方向D2において、ストレート面24より火炉102の内部空間103側に位置している。傾斜面26は、開口空間16の出口を形成している。傾斜面26は、ノズル2の軸方向D2において、火炉102の内部空間103に向かうにつれて開口空間16を拡径している。
【0026】
一実施形態では、ストレート面24と傾斜面26とが互いに接続する接続点28は、ノズル2の軸方向D2において、ノズル2の先端2aよりも火炉102の内部空間103側に位置している。一実施形態では、スリーブ4の下流端4aは、ノズル2の軸方向D2において、接続点28よりも火炉102の内部空間103側に位置している。一実施形態では、接続点28は、ノズル2の軸方向D2において、ノズル2の先端2aとスリーブ4の下流端4aとの間に位置している。
【0027】
図2に例示するように、二次空気流路形成部18を二次空気A2の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線L2とバーナスロート8の傾斜面26とによって形成される角度をθ2とすると、35度≦θ2≦60度を満たす。一実施形態では、45度≦θ2≦60度を満たし、θ1=θ2である。
【0028】
(作用・効果)
一実施形態に係るガスバーナ1の作用・効果について説明する。一般的に、燃料(例えば、水素、プロパン、メタンなど)の燃焼による燃焼温度は、燃料に対する空気比がおよそ1(理論空気量)の場合に最も高温となる。そして、空気比を1より低減すると、燃焼可能な燃料の量が減少するので、燃焼温度が低減し、NOxの発生を抑制する。
【0029】
一実施形態によれば、一次空気A1の空気比は1未満であるので、ガス燃料Fの燃焼による燃焼温度を低減させ、NOxの発生を抑制することができる。
【0030】
ところで、燃料に対する空気比を1より小さくすることで、NOxの発生を抑制できるが、燃料の燃焼速度(着火性・燃焼性)が悪化する場合がある。図3は、空気比とガス燃料Fの燃焼速度との関係を示すグラフであって、横軸が空気比を表し、縦軸が燃焼速度を表している。図3において、L1は水素を含むガス燃料Fの燃焼速度を表し、L2はプロパンを含むガス燃料の燃焼速度を表し、L3はメタンを含むガス燃料の燃焼速度を表している。L1~L3のそれぞれは、燃焼が発生する空気比から空気比が大きくなるにつれて大きくなり、各成分に応じた空気比で最大値に達する。そして、L1~L3のそれぞれは、最大の燃焼速度となる空気比から空気比がさらに大きくなるにつれて小さくなる。
【0031】
図3に示すように、メタン(L2)やプロパン(L3)は、空気比が1より小さくなるにつれて燃焼速度が低減している。つまり、メタンやプロパンは、空気比を1より小さくすると着火性・燃焼性が悪化する。さらに、メタンやプロパンは、炭素成分を含むので、燃焼性の悪化により、一酸化炭素や煤が発生する虞がある。
【0032】
水素(L1)は、メタンやプロパンと比較して燃焼速度が非常に大きく、水素の燃焼速度は、空気比が1より小さい場合であっても、空気比が1である場合のメタンやプロパンの燃焼速度より大きい。つまり、水素は、メタンやプロパンと比較して、空気比が1未満での着火性・燃焼性に優れている。尚、水素は、炭素成分を含まないので、燃焼しても一酸化炭素や煤を発生させない点でも優れている。
【0033】
一次空気A1の空気比が1未満である場合、ガス燃料Fと一次空気A1とが混合して燃焼する領域(以下、第1領域とする)を拡げることで、NOxの発生を抑制することができる。しかし、ガス燃料が、メタンを含む都市ガスやプロパンを含むLPG等の場合、火炉102内での燃焼が可能である程度の着火性・燃焼性を有しつつ、第1領域を拡げるためにθ1を45度以上にすることが容易ではない。これに対して、水素を含むガス燃料Fは、火炉102内での燃焼が可能である程度の着火性・燃焼性を有しつつ、第1領域を拡げるためにθ1を45度以上にすることができる。
【0034】
一実施形態によれば、ガス燃料Fは水素を含み、且つ45度≦θ1≦60度を満たすので、ガス燃料Fと一次空気A1とをノズル2の径方向D1の外側に広く拡散させて、第1領域を拡大することができる。よって、NOxの発生を抑制することができる。
【0035】
一実施形態によれば、ガスバーナ1は、ガス燃料Fを一次空気A1及び二次空気A2のそれぞれと混合させて完全燃焼する二段燃焼型の燃焼装置である。このため、一次空気A1だけでガス燃料Fを完全燃焼する場合と比較して、一次空気A1の空気比を低減し、第1領域の燃焼温度をさらに低減することができる。よって、NOxの発生をさらに抑制することができる。
【0036】
一実施形態によれば、一次空気A1の空気比は二次空気A2の空気比よりも低いので、第1領域の燃焼温度はガス燃料Fと二次空気A2とが混合して燃焼する領域(以下、第2領域)の燃焼温度と比較して低くなっていることが多い。よって、一次空気A1の空気比が二次空気A2の空気比以上である場合と比較して、第1領域の燃焼温度を低くし、NOxの発生を抑制することができる。
【0037】
ガスバーナが二段燃焼型の燃焼装置であり、且つガス燃料がメタンを含む都市ガスやプロパンを含むLPG等の場合、火炉102内での燃焼が可能である程度の着火性・燃焼性を有するために、θ2が35度未満となるようにバーナスロート8が設計されていた。一実施形態によれば、35度≦θ2を満たすので、二次空気A2をノズル2の径方向D1の外側に拡散させ、ガス燃料Fを第2領域よりも温度の低い第1領域で燃焼させる割合を相対的に増加させる。よって、NOxの発生を抑制することができる。
【0038】
一方で、θ2が60度を超えると、二次空気A2がノズル2の径方向D1の外側に拡散し過ぎて、ガス燃料Fと二次空気A2とが混合しない虞がある。つまり、2次燃焼(ガス燃料Fと二次空気A2とが混合することによる燃焼)が発生しない虞がある。一実施形態によれば、θ2≦60度を満たすので、二次空気A2がノズル2の径方向D1外側に拡散し過ぎることを抑制し、2次燃焼を確実に発生させることができる。
【0039】
第1延在部6が火炉102の内部空間103に向かって長く延びるほど、一次空気A1と二次空気A2との分離が促進され、ガス燃料Fを第1領域で燃焼させる割合を相対的に増加させ、NOxの発生を抑制する。一方で、二次空気A2がノズル2の径方向D1の外側に拡散し過ぎて、2次燃焼が発生しない虞がある。一実施形態によれば、第1延在部6の先端6aをバーナスロート8の開口空間16と火炉102の内部空間103との境界に位置させることで、一次空気A1と二次空気A2との分離によってNOxの発生を抑制しつつ、2次燃焼を確実に発生させることができる。
【0040】
一実施形態によれば、ガスバーナ1は旋回力付与装置21をさらに備えるので、二次空気A2に旋回力を付与することで、二次空気A2のノズル2の径方向D1の内側への巻き戻りを促進する。このため、二次空気A2の循環が繰り返される再循環領域を形成し、二次燃焼を促進させることができる。すなわち、旋回力付与装置21から二次空気A2に付与する旋回力を調整することで火炎形状を調整し、燃焼の安定化を図ることができる。
【0041】
一実施形態によれば、θ1=θ2であるので、二次空気A2を一次空気A1よりもノズル2の径方向D1の外側に拡散させ、ガス燃料Fを第2領域よりも温度の低い第1領域で燃焼する割合を相対的に増加させる。よって、NOxの発生を抑制することができる。さらに、θ1=θ2とすることで、火炉102の内部空間103における二次空気A2の流れを滑らかにすることができる。尚、本開示は、二次空気A2を一次空気A1よりもノズル2の径方向D1の外側に拡散可能であるならば、θ1=θ2に限定しない。幾つかの実施形態では、θ2>θ1である。
【0042】
一実施形態によれば、従来から設けられるバーナスロートに35度≦θ2≦60度を満たす傾斜面26を形成することで、NOxの発生を抑制することができる。また、部材を新たに追加する必要がないので、コスト削減を図ることができる。
【0043】
ところで、一実施形態では、二次空気流路形成部18の下流端18aにバーナスロート8が接続され、35度≦θ2≦60度を満たすように、バーナスロート8の傾斜面26が傾斜していたが、本開示はこの形態に限定されない。図4は、幾つかの実施形態に係るガスバーナ1の構成を概略的に示す図である。
【0044】
幾つかの実施形態では、図4に例示するように、ガスバーナ1は、バーナスロート8に代わり、二次空気流路形成部18の下流端18aに接続され、二次空気流路形成部18と一体的に構成されるガイド部材30(第2延在部)をさらに備える。
【0045】
ガイド部材30は、二次空気A2の流通方向において、ノズル2の径方向D1の外側に向かうように二次空気流路20側とは反対側に延びる。そして、二次空気流路形成部18を二次空気A2の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線L1とガイド部材30とによって形成される角度をθ2とすると、35度≦θ2≦60度を満たす。図4に例示する形態では、θ1<θ2を満たす。
【0046】
図4に例示する形態では、バーナスロート8は火炉102の炉壁を開口する開口空間16を形成しており、二次空気流路形成部18の一端18aがバーナスロート8の開口空間16内に位置している。ガイド部材30は、二次空気流路形成部18の一端18aから火炉102の内部空間103に向かうにつれて、ノズル2の径方向D1の外側に向かって延びている。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0048】
[1]本開示に係るガスバーナ(1)は、水素を含むガス燃料(F)を噴出するノズル(2)と、前記ノズルより前記ノズルの径方向(D1)の外側を前記ノズルの軸線(C)に沿って延び、前記ノズルとの間に一次空気(A1)が流通する一次空気流路(14)を形成するスリーブ(4)と、前記一次空気の流通方向において、前記スリーブの下流端(4a)から前記ノズルの径方向の外側に向かうように前記一次空気流路側とは反対側に延びる第1延在部(6)と、を備え、前記スリーブを前記一次空気の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線(L1)と前記第1延在部とによって形成される角度をθ1とすると、45度≦θ1≦60度を満たす。
【0049】
上記[1]に記載の構成によれば、45度≦θ1≦60度を満たす。この角度θ1は、メタンを含む都市ガスやプロパンを含むLPGのような従来からのガス燃料を採用するガスバーナと比較して大きい。よって、ガス燃料と一次空気とを径方向の外側に広く拡散させ、ガス燃料と一次空気とが混合して燃焼する領域(第1領域)を拡大することができる。よって、一次空気の空気比を1より小さくすることで、燃焼温度の低い第1領域で燃焼させる状態が長くなり、NOxの発生を抑制することができる。
【0050】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、前記スリーブより前記ノズルの径方向の外側を前記ノズルの軸線に沿って延び、前記スリーブとの間に二次空気(A2)が流通する二次空気流路(14)を形成する二次空気流路形成部(18)をさらに備え、前記ノズルから噴出する前記ガス燃料に対する前記一次空気の空気比は、前記ノズルから噴出する前記ガス燃料に対する前記二次空気の空気比よりも低い。
【0051】
上記[2]に記載の構成によれば、一次空気だけでガス燃料を燃焼(完全燃焼)する場合と比較して、一次空気の空気比を低減し、第1領域の燃焼温度を低減することができる。このため、NOxの発生をさらに抑制することができる。また、一次空気の空気比は二次空気の空気比よりも低いので、第1領域の燃焼温度はガス燃料と二次空気とが混合して燃焼する領域(第2領域)の燃焼温度と比較して低くなっていることが多い。よって、一次空気の空気比が二次空気の空気比以上である場合と比較して、第1領域の燃焼温度を低くすることができる。
【0052】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、前記二次空気の流通方向において、前記二次空気流路形成部の下流端(18a)に接続され、前記ノズルの径方向の外側に向かうように前記二次空気流路側とは反対側に延びる第2延在部(8、30)をさらに備え、前記二次空気流路形成部を前記二次空気の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線(L2)と前記第2延在部とによって形成される角度をθ2とすると、35度≦θ2≦60度を満たす。
【0053】
上記[3]に記載の構成によれば、35度≦θ2を満たすので、二次空気を径方向の外側に拡散させ、ガス燃料を第2領域よりも温度の低い第1領域で燃焼させる割合を相対的に増加させる。よって、NOxの発生を抑制することができる。一方で、θ2が60度を超えると、二次空気が径方向の外側に拡散し過ぎて、ガス空気と二次空気とが混合しない虞がある。つまり、2次燃焼が発生しない虞がある。上記[3]に記載の構成によれば、θ2≦60度を満たすので、二次空気が径方向の外側に拡散し過ぎることを抑制し、2次燃焼を確実に発生させることができる。
【0054】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の構成において、θ2≧θ1である。
【0055】
上記[4]に記載の構成によれば、二次空気を一次空気よりも径方向の外側に拡散させ、ガス燃料を第2領域よりも温度の低い第1領域で燃焼する割合を相対的に増加させる。よって、NOxの発生を抑制することができる。
【0056】
[5]幾つかの実施形態では、上記[3]又は[4]に記載の構成において、前記第2延在部は、火炉の炉壁を開口するバーナスロートである。
【0057】
上記[5]に記載の構成によれば、従来から設けられるバーナスロートが35度≦θ2≦60度を満たすように構成されることで、NOxの発生を抑制することができる。また、部材を新たに追加する必要がないので、コスト削減を図ることができる。
【0058】
[6]幾つかの実施形態では、上記[2]から[5]の何れか1つに記載の構成において、前記二次空気流路を流通する前記二次空気に旋回力を付与する旋回力付与装置をさらに備える。
【0059】
上記[6]に記載の構成によれば、二次空気に旋回力を付与することで、二次空気のノズルの径方向の内側への巻き戻りを促進する。このため、二次空気の循環が繰り返される再循環領域を形成し、燃焼を促進させることができる。
【0060】
[7]本開示に係る燃焼設備(100)は、火炉と、前記火炉内にガス燃料を噴出する上記[1]から[6]の何れか1つに記載のガスバーナと、を備える。
【0061】
上記[7]に記載の構成によれば、ガスバーナによってNOxの発生を抑制することができる。このため、燃焼設備から排出されるNOxの量を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ガスバーナ
2 ノズル
4 スリーブ
4a スリーブの下流端
6 第1延在部
8 バーナスロート(第2延在部)
14 一次空気流路
18 二次空気流路形成部
18a 二次空気流路形成部の下流端
20 二次空気流路
21 旋回力付与装置
30 ガイド部材(第2延在部)
100 燃焼設備
102 火炉

A1 一次空気
A2 二次空気
C ノズルの軸線
D1 ノズルの径方向
F ガス燃料
L1 仮想の直線
L2 仮想の直線

【要約】
【課題】NOxの発生を抑制することができるガスバーナを提供する。
【解決手段】ガスバーナは、水素を含むガス燃料を噴出するノズルと、ノズルよりノズルの径方向の外側をノズルの軸線に沿って延び、ノズルとの間に一次空気が流通する一次空気流路を形成するスリーブと、一次空気の流通方向において、スリーブの下流端からノズルの径方向の外側に向かうように一次空気流路側とは反対側に延びる第1延在部と、を備え、スリーブを一次空気の流通方向の下流側に延ばした仮想の直線と第1延在部とによって形成される角度をθ1とすると、45度≦θ1≦60度を満たす。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4