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特許7191176電力変換装置、発電電動機の制御装置、及び電動パワーステアリング装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】電力変換装置、発電電動機の制御装置、及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221209BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20221209BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20221209BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20221209BHJP
   H02P 21/05 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02M7/493
H02P25/22
H02P27/08
H02P21/05
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021167487
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 晃
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-096399(JP,A)
【文献】特開2020-137233(JP,A)
【文献】特開2011-188674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1スイッチング素子を有しており、直流電源からの直流電圧を第1交流電圧に変換し、交流回転機の第1の3相巻線に印加する第1電力変換器、
複数の第2スイッチング素子を有しており、前記直流電圧を第2交流電圧に変換し、前記交流回転機の第2の3相巻線に印加する第2電力変換器、及び
前記第1の3相巻線に対する電圧指令である第1電圧指令から3次高調波信号としての第1オフセット電圧を減算して得た第1印加電圧と、第1参照信号とを比較することにより、前記複数の第1スイッチング素子に対する複数の第1オンオフ信号を算出するとともに、前記第2の3相巻線に対する電圧指令である第2電圧指令から3次高調波信号としての第2オフセット電圧を減算して得た第2印加電圧と、第2参照信号とを比較することにより、前記複数の第2スイッチング素子に対する複数の第2オンオフ信号を算出する制御部
を備え、
前記制御部は、
前記第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と前記第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍とが等しくなるように、前記第1電圧指令から前記第1オフセット電圧を減算するとともに、前記第2電圧指令から前記第2オフセット電圧を減算し、
前記第1参照信号及び前記第2参照信号は搬送波信号であり、
前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とが等しい場合、前記Kは1であり、前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とが180度異なる場合、前記Kは-1である
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1電圧指令における変調率と前記第2電圧指令における変調率との比は1対1に設定されている
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の3相巻線の位相と前記第2の3相巻線の位相とは30度異なっており、
前記制御部は、
前記複数の第1オンオフ信号に基づいて前記第1電力変換器から出力される電圧ベクトルである第1電圧ベクトルと、前記複数の第2オンオフ信号に基づいて前記第2電力変換器から出力される電圧ベクトルである第2電圧ベクトルとの位相差が30度となるか又は前記第1電圧ベクトル及び前記第2電圧ベクトルの少なくともいずれか一方が零電圧ベクトルとなるように、前記第1参照信号及び前記第2参照信号の少なくともいずれか一方の信号を、前記第1電圧指令及び前記第2電圧指令の位相である電圧位相に応じて、位相が180度異なる第1搬送波信号及び第2搬送波信号のいずれかに切り替える
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1電圧指令における各相を、電圧指令が大きい順に、第1電圧最大相、第1電圧中間相、第1電圧最小相とし、前記第2電圧指令における各相を、電圧指令が大きい順に、第2電圧最大相、第2電圧中間相、第2電圧最小相としたとき、
前記制御部は、
前記第1電圧最大相と前記第2電圧最大相との位相差及び前記第1電圧最小相と前記第2電圧最小相との位相差が30度である場合、前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とを等しくし、
前記第1電圧最大相と前記第2電圧最大相との位相差及び前記第1電圧最小相と前記第2電圧最小相との位相差のいずれか一方が30度でない場合、前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とを180度異ならせる
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を前記第1参照信号の振幅の中央に一致させるとともに、前記第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を前記第2参照信号の振幅の中央に一致させる
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記複数の第1スイッチング素子は、前記第1の3相巻線の各相に対応している3つの第1高電位側スイッチング素子及び前記第1の3相巻線の各相に対応している3つの第1低電位側スイッチング素子を含み、
前記第1電力変換器は、前記第1の3相巻線の各相に流れる電流を検出する第1電流検出器をさらに有しており、
前記第1電流検出器は、前記3つの第1低電位側スイッチング素子のそれぞれと直列に接続されており、
前記複数の第2スイッチング素子は、前記第2の3相巻線の各相に対応している3つの第2高電位側スイッチング素子及び前記第2の3相巻線の各相に対応している3つの第2低電位側スイッチング素子を含み、
前記第2電力変換器は、前記第2の3相巻線の各相に流れる電流を検出する第2電流検出器をさらに有しており、
前記第2電流検出器は、前記3つの第2低電位側スイッチング素子のそれぞれと直列に接続されており、
前記制御部は、
前記直流電圧の値をVdcとして、前記第1電流検出器及び前記第2電流検出器により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-Vdc/2からK×Vdcまでの範囲であり、K が1/2未満の正の値であるとき、
前記第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値及び前記第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値をそれぞれ(K/2-1/4)×Vdcに設定し、
前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とを等しくする
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数の第1スイッチング素子は、前記第1の3相巻線の各相に対応している3つの第1高電位側スイッチング素子及び前記第1の3相巻線の各相に対応している3つの第1低電位側スイッチング素子を含み、
前記第1電力変換器は、前記第1の3相巻線の各相に流れる電流を検出する第1電流検出器をさらに有しており、
前記第1電流検出器は、前記3つの第1高電位側スイッチング素子のそれぞれと直列に接続されており、
前記複数の第2スイッチング素子は、前記第2の3相巻線の各相に対応している3つの第2高電位側スイッチング素子及び前記第2の3相巻線の各相に対応している3つの第2低電位側スイッチング素子を含み、
前記第2電力変換器は、前記第2の3相巻線の各相に流れる電流を検出する第2電流検出器をさらに有しており、
前記第2電流検出器は、前記3つの第2高電位側スイッチング素子のそれぞれと直列に接続されており、
前記制御部は、
前記直流電圧の値をVdcとして、前記第1電流検出器及び前記第2電流検出器により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-K×VdcからVdc/2までの範囲であり、K が1/2未満の正の値であるとき、
前記第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値及び前記第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値をそれぞれ(1/4-K/2)×Vdcに設定し、
前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とを等しくする
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記複数の第1スイッチング素子は、前記第1の3相巻線の各相に対応している3つの第1高電位側スイッチング素子及び前記第1の3相巻線の各相に対応している3つの第1低電位側スイッチング素子を含み、
前記第1電力変換器は、前記第1の3相巻線の各相に流れる電流を検出する第1電流検出器をさらに有しており、
前記第1電流検出器は、前記3つの第1低電位側スイッチング素子のそれぞれと直列に接続されており、
前記複数の第2スイッチング素子は、前記第2の3相巻線の各相に対応している3つの第2高電位側スイッチング素子及び前記第2の3相巻線の各相に対応している3つの第2低電位側スイッチング素子を含み、
前記第2電力変換器は、前記第2の3相巻線の各相に流れる電流を検出する第2電流検出器をさらに有しており、
前記第2電流検出器は、前記3つの第2高電位側スイッチング素子のそれぞれと直列に接続されており、
前記制御部は、
前記直流電圧の値をVdcとして、前記第1電流検出器により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-Vdc/2からK×Vdcまでの範囲であり、且つ前記第2電流検出器により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-K×VdcからVdc/2までの範囲であり、K 及びK がいずれも1/2未満の正の値であるとき、
前記第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を(min(K,K)/2-1/4)×Vdcに設定し、
前記第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を(1/4-min(K,K)/2)×Vdcに設定し、
前記第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とを180度異ならせる
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電力変換装置を備えた発電電動機の制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電力変換装置を備えた電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、発電電動機の制御装置、及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置では、2台のインバータを用いて2つの巻線組に電圧が印加される。また、3次高調波が電圧指令に重畳される場合、2台のインバータが同時に有効電圧ベクトルとなることを回避するため、2台のインバータにおける各搬送波信号が互いに90度ずらされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-50252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の電力変換装置では、2つの巻線組の相互インダクタンスの影響により、第1組が有効電圧ベクトルを出力しているときには第2組の電流変化が生じ、第2組が有効電圧ベクトルを出力しているときには第1組の電流変化が生じる。このため、従来の電力変換装置では、相電流リプルが大きくなるという問題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために為されたものであり、相電流リプルをより低減させることができる電力変換装置、発電電動機の制御装置、及び電動パワーステアリング装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力変換装置は、複数の第1スイッチング素子を有しており、直流電源からの直流電圧を第1交流電圧に変換し、交流回転機の第1の3相巻線に印加する第1電力変換器、複数の第2スイッチング素子を有しており、直流電圧を第2交流電圧に変換し、交流回転機の第2の3相巻線に印加する第2電力変換器、及び第1の3相巻線に対する電圧指令である第1電圧指令から3次高調波信号としての第1オフセット電圧を減算して得た第1印加電圧と、第1参照信号とを比較することにより、複数の第1スイッチング素子に対する複数の第1オンオフ信号を算出するとともに、第2の3相巻線に対する電圧指令である第2電圧指令から3次高調波信号としての第2オフセット電圧を減算して得た第2印加電圧と、第2参照信号とを比較することにより、複数の第2スイッチング素子に対する複数の第2オンオフ信号を算出する制御部を備え、制御部は、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍とが等しくなるように、第1電圧指令から第1オフセット電圧を減算するとともに、第2電圧指令から第2オフセット電圧を減算し、第1参照信号及び第2参照信号は搬送波信号であり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが等しい場合、Kは1であり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なる場合、Kは-1である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電力変換装置、発電電動機の制御装置、及び電動パワーステアリング装置によれば、相電流リプルをより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置を示す構成図である。
図2図1の第1の3相巻線の位相と第2の3相巻線の位相との関係を示す図である。
図3図1の第1電力変換器によって出力される第1電圧ベクトルを示す図である。
図4】複数の第1オンオフ信号と、第1電力変換器によって出力される第1電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図5図1の第2電力変換器によって出力される第2電圧ベクトルを示す図である。
図6】複数の第2オンオフ信号と、第2電力変換器によって出力される第2電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図7】第1電圧指令の波形を示す図である。
図8】第1オフセット電圧の波形を示す図である。
図9】第1印加電圧の波形を示す図である。
図10図1の第1オンオフ信号発生器の動作を説明するための図である。
図11図1の第2オンオフ信号発生器の動作を説明するための図である。
図12】第1高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図13】第2高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図14】結合係数と6相電流の微分値の直流成分の二乗和との関係を示す図である。
図15】第1高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図16】第2高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図17図1の第1オンオフ信号発生器の動作を説明するための図である。
図18図1の電力変換装置の発電電動機への適用例を示す構成図である。
図19図1の電力変換装置の電動パワーステアリング装置用電動機への適用例を示す構成図である。
図20】実施の形態2に係る電力変換装置を示す構成図である。
図21】実施の形態3に係る電力変換装置を示す構成図である。
図22】実施の形態4に係る電力変換装置を示す構成図である。
図23】実施の形態5に係る電力変換装置を示す構成図である。
図24図23の電力変換装置が出力する第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルを示す図である。
図25】第1印加電圧の中心値が0であるときの第1高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図26】第2印加電圧の中心値が0であるときの第2高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。
図27】結合係数と6相電流の微分値の直流成分の二乗和との関係を示す図である。
図28】電圧位相が0度から60度までの領域における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの第1の例を示す図である。
図29】電圧位相が0度から60度までの領域における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの第2の例を示す図である。
図30】電圧位相に応じた搬送波信号の切替の第1の例を示す図である。
図31】電圧位相が0度から60度までの領域における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの第3の例を示す図である。
図32】電圧位相に応じた搬送波信号の切替の第2の例を示す図である。
図33】電圧位相に応じた搬送波信号の切替の第3の例を示す図である。
図34】実施の形態1~5の電力変換装置の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。
図35】実施の形態1~5の電力変換装置の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置を示す構成図である。電力変換装置は、平滑コンデンサ3、第1電力変換器4a、第2電力変換器4b、第1電流検出器5a、第2電流検出器5b、及び制御部6を備えている。
【0010】
電力変換装置には、負荷としての交流回転機1と、電源としての直流電源2とが接続されている。電力変換装置は、直流電源2からの直流電圧Vdcを交流電圧に変換して交流回転機1に印加する。
【0011】
交流回転機1は、3相交流回転機である。交流回転機1は、第1の3相巻線と第2の3相巻線とを有している。第1の3相巻線と第2の3相巻線とは、互いに電気的に接続されることなく、交流回転機1内の固定子に収納されている。第1の3相巻線は、巻線U1、巻線V1、及び巻線W1を有している。巻線U1、巻線V1、及び巻線W1は、それぞれU1相の巻線、V1相の巻線、及びW1相の巻線である。第2の3相巻線は、巻線U2、巻線V2、及び巻線W2を有している。巻線U2、巻線V2、及び巻線W2は、それぞれU2相の巻線、V2相の巻線、及びW2相の巻線である。
【0012】
交流回転機1としては、例えば、永久磁石同期回転機、誘導回転機、及び同期リラクタンス回転機等が挙げられる。2つの3相巻線を有する交流回転機であれば、上記のいずれの回転機を交流回転機1として用いてもよい。
【0013】
直流電源2は、第1電力変換器4a及び第2電力変換器4bに接続されている。直流電源2は、第1電力変換器4a及び第2電力変換器4bに直流電圧Vdcを出力する。直流電源2としては、例えば、バッテリー、DC-DCコンバータ、ダイオード整流器、又はPWM(Pulse Width Modulation)整流器等が用いられる。
【0014】
平滑コンデンサ3は、直流電源2に対し、並列に接続されている。即ち、平滑コンデンサ3の一端は、直流電源2の正極端子に接続され、平滑コンデンサ3の他端は、直流電源2の負極端子に接続されている。平滑コンデンサ3は、第1電力変換器4a及び第2電力変換器4bの母線電流の変動を抑制し、直流電流を安定させる。図示しないが、平滑コンデンサ3には、真のコンデンサ容量C以外に等価直列抵抗Rc及びリードインダクタンスLcが存在している。
【0015】
第1電力変換器4aは、複数の第1スイッチング素子を有している。第1電力変換器4aは、直流電源2からの直流電圧Vdcを第1交流電圧に変換し、交流回転機1の第1の3相巻線に印加する。複数の第1スイッチング素子には、3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1、Svp1、及びSwp1と、3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1、Svn1、及びSwn1とが含まれている。
【0016】
第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1は、それぞれU1相,V1相,W1相に対応している。第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1は、それぞれU1相,V1相,W1相に対応している。
【0017】
U1相の第1高電位側スイッチング素子Sup1及びU1相の第1低電位側スイッチング素子Sun1は互いに直列に接続されている。V1相の第1高電位側スイッチング素子Svp1及びV1相の第1低電位側スイッチング素子Svn1は互いに直列に接続されている。W1相の第1高電位側スイッチング素子Swp1及びW1相の第1低電位側スイッチング素子Swn1は互いに直列に接続されている。複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1は、インバータ回路を構成している。
【0018】
これにより、第1の3相巻線には、U1相電流Iu1、V1相電流Iv1、及びW1相電流Iw1が流れる。
【0019】
第2電力変換器4bは、複数の第2スイッチング素子を有している。第2電力変換器4bは、直流電源2からの直流電圧Vdcを第2交流電圧に変換し、交流回転機1の第2の3相巻線に印加する。複数の第2スイッチング素子には、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2、Svp2、及びSwp2と、3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2、Svn2、及びSwn2とが含まれている。
【0020】
第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2は、それぞれU2相,V2相,W2相に対応している。第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2は、それぞれU2相,V2相,W2相に対応している。
【0021】
U2相の第2高電位側スイッチング素子Sup2及びU2相の第2低電位側スイッチング素子Sun2は互いに直列に接続されている。V2相の第2高電位側スイッチング素子Svp2及びV2相の第2低電位側スイッチング素子Svn2は互いに直列に接続されている。W2相の第2高電位側スイッチング素子Swp2及びW2相の第2低電位側スイッチング素子Swn2は互いに直列に接続されている。複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2は、インバータ回路を構成している。
【0022】
これにより、第2の3相巻線には、U2相電流Iu2、V2相電流Iv2、及びW2相電流Iw2が流れる。
【0023】
複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1及び複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2のそれぞれには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとの組合せが用いられる。この組合せでは、IGBTとダイオードとが逆並列に接続されている。また、IGBTに代えて、例えば、バイポーラトランジスタ又はMOS(Metal Oxide Semiconductor)パワートランジスタ等が用いられてもよい。
【0024】
第1電流検出器5aは、第1電力変換器4aと第1の3相巻線との間に設けられている。第1電流検出器5aは、U1相電流Iu1、V1相電流Iv1、及びW1相電流Iw1の値を、電流検出値Iu1s、Iv1s、及びIw1sとしてそれぞれ検出する。
【0025】
第1電流検出器5aは、複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1のオンオフ状態にかかわらず、U1相電流Iu1、V1相電流Iv1、及びW1相電流Iw1の値を常時検出することができる。従って、実施の形態1に係る電力変換装置は、U1相電流Iu1、V1相電流Iv1、及びW1相電流Iw1の値が検出できるか否かを考慮することなく、第1電力変換器4aの各第1スイッチング素子をオンにするかオフにするかを決定することができる。
【0026】
第2電流検出器5bは、第2電力変換器4bと第2の3相巻線との間に設けられている。第2電流検出器5bは、U2相電流Iu2、V2相電流Iv2、及びW2相電流Iw2の値を、電流検出値Iu2s、Iv2s、及びIw2sとしてそれぞれ検出する。
【0027】
第2電流検出器5bは、複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2のオンオフ状態にかかわらず、U2相電流Iu2、V2相電流Iv2、及びW2相電流Iw2の値を常時検出することができる。従って、実施の形態1に係る電力変換装置は、U2相電流Iu2、V2相電流Iv2、及びW2相電流Iw2の値が検出できるか否かを考慮することなく、第2電力変換器4bの各第2スイッチング素子をオンにするかオフにするかを決定することができる。
【0028】
制御部6は、電圧指令演算器7、第1オフセット演算器8a、第2オフセット演算器8b、第1オンオフ信号発生器9a、及び第2オンオフ信号発生器9bを有している。
【0029】
電圧指令演算器7は、交流回転機1に対する制御指令に基づいて、第1電圧指令を演算し、演算された第1電圧指令を第1オフセット演算器8aに入力する。第1電圧指令には、U1相に対する電圧指令Vu1、V1相に対する電圧指令Vv1、及びW1相に対する電圧指令Vw1が含まれている。
【0030】
また、電圧指令演算器7は、交流回転機1に対する制御指令に基づいて、第2電圧指令を演算し、演算された第2電圧指令を第2オフセット演算器8bに入力する。第2電圧指令には、U2相に対する電圧指令Vu2、V2相に対する電圧指令Vv2、及びW2相に対する電圧指令Vw2が含まれている。
【0031】
電圧指令演算器7は、例えば、電流フィードバック制御又はV/F(Voltage/Frequency)制御により第1電圧指令及び第2電圧指令を演算する。
【0032】
電流フィードバック制御による場合、電圧指令演算器7は、制御指令として、交流回転機1に対する電流指令を設定し、設定された電流指令に基づいて、電圧指令の振幅を決定する。より具体的に述べると、電圧指令演算器7は、交流回転機1に対する電流指令と、電流検出値Iu1s,Iv1s,Iw1sとの偏差が零となるように、比例積分制御によって第1電圧指令を演算する。また、電圧指令演算器7は、交流回転機1に対する電流指令と、電流検出値Iu2s,Iv2s,Iw2sとの偏差が零となるように、比例積分制御によって第2電圧指令を演算する。
【0033】
V/F制御による場合、電圧指令演算器7は、制御指令として、交流回転機1に対する速度指令又は周波数指令を設定し、設定された速度指令又は周波数指令に基づいて、電圧指令の振幅を決定する。
【0034】
なお、V/F制御はフィードフォワード制御であるため、電圧指令演算器7は、U1相電流Iu1、V1相電流Iv1、W1相電流Iw1、U2相電流Iu2、V2相電流Iv2、及びW2相電流Iw2の情報を必要としない。従って、V/F制御による場合、U1相電流Iu1、V1相電流Iv1、W1相電流Iw1、U2相電流Iu2、V2相電流Iv2、及びW2相電流Iw2の情報は電圧指令演算器7に入力される必要はない。
【0035】
第1オフセット演算器8aは、第1オフセット電圧Voffset1を演算する。第1オフセット演算器8aは、第1電圧指令から第1オフセット電圧Voffset1を減算することにより、第1印加電圧を得る。第1オフセット演算器8aは、得られた第1印加電圧を第1オンオフ信号発生器9aに出力する。
【0036】
第1印加電圧には、3相に対応する3つの印加電圧、即ち、U1相に対応する印加電圧Vu1’、V1相に対応する印加電圧Vv1’、及びW1相に対応する印加電圧Vw1’が含まれている。つまり、第1印加電圧は、以下の式(1)により表される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、第1電圧指令における各相を、電圧指令が大きい順に、第1電圧最大相、第1電圧中間相、及び第1電圧最小相と呼ぶことにする。また、第1電圧最大相に対する電圧指令をVmax1と呼び、第1電圧中間相に対する電圧指令をVmid1と呼び、第1電圧最小相に対する電圧指令をVmin1と呼ぶことにする。
【0039】
具体的には、第1オフセット演算器8aは、以下の式(2)に基づいて、第1オフセット電圧Voffset1を算出する。このとき、第1印加電圧の中心値、即ち、第1の3相巻線の中性点電位は、-αとなる。
【0040】
【数2】
【0041】
第2オフセット演算器8bは、第2オフセット電圧Voffset2を演算する。第2オフセット演算器8bは、第2電圧指令から第2オフセット電圧Voffset2を減算することにより、第2印加電圧を得る。第2オフセット演算器8bは、得られた第2印加電圧を第2オンオフ信号発生器9bに出力する。
【0042】
第2印加電圧には、3相に対応する3つの印加電圧、即ち、U2相に対応する印加電圧Vu2’、V2相に対応する印加電圧Vv2’、及びW2相に対応する印加電圧Vw2’が含まれている。つまり、第2印加電圧は、以下の式(3)により表される。
【0043】
【数3】
【0044】
ここで、第2電圧指令における各相を、電圧指令が大きい順に、第2電圧最大相、第2電圧中間相、及び第2電圧最小相と呼ぶことにする。また、第2電圧最大相に対する電圧指令をVmax2と呼び、第2電圧中間相に対する電圧指令をVmid2と呼び、第2電圧最小相に対する電圧指令をVmin2と呼ぶことにする。
【0045】
具体的には、第2オフセット演算器8bは、以下の式(4)に基づいて、第2オフセット電圧Voffset2を算出する。このとき、第2印加電圧の中心値、即ち、第2の3相巻線の中性点電位は、-αとなる。
【0046】
【数4】
【0047】
第1オンオフ信号発生器9aは、第1印加電圧と第1参照信号とを比較することにより、複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1に対する複数の第1オンオフ信号Qup1、Qun1、Qvp1、Qvn1、Qwp1、及びQwn1を算出する。第1参照信号は、搬送波信号である。第1オンオフ信号発生器9aは、算出された複数の第1オンオフ信号Qup1~Qwn1を第1電力変換器4aに出力する。
【0048】
複数の第1オンオフ信号Qup1、Qvp1、Qwp1、Qun1、Qvn1、及びQwn1は、複数の第1スイッチング素子Sup1、Svp1、Swp1、Sun1、Svn1、及びSwn1をそれぞれオンオフする。
【0049】
複数の第1オンオフ信号Qup1~Qwn1の値が「1」である場合、第1オンオフ信号発生器9aは、対応する複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1をオンにするための信号を第1電力変換器4aに出力する。複数の第1オンオフ信号Qup1~Qwn1の値が「0」である場合、第1オンオフ信号発生器9aは、対応する複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1をオフにするための信号を第1電力変換器4aに出力する。
【0050】
第2オンオフ信号発生器9bは、第2印加電圧と第2参照信号とを比較することにより、複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2に対する複数の第2オンオフ信号Qup2、Qun2、Qvp2、Qvn2、Qwp2、及びQwn2を算出する。第2参照信号は、搬送波信号である。第2オンオフ信号発生器9bは、算出された複数の第2オンオフ信号Qup2~Qwn2を第2電力変換器4bに出力する。
【0051】
複数の第2オンオフ信号Qup2、Qvp2、Qwp2、Qun2、Qvn2、及びQwn2は、複数の第2スイッチング素子Sup2、Svp2、Swp2、Sun2、Svn2、及びSwn2をそれぞれオンオフする。
【0052】
複数の第2オンオフ信号Qup2~Qwn2の値が「1」である場合、第2オンオフ信号発生器9bは、対応する複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2をオンにするための信号を第2電力変換器4bに出力する。複数の第2オンオフ信号Qup2~Qwn2の値が「0」である場合、第2オンオフ信号発生器9bは、対応する複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2をオフにするための信号を第2電力変換器4bに出力する。
【0053】
図2は、図1の第1の3相巻線U1,V1,W1の位相と第2の3相巻線U2,V2,W2の位相との関係を示す図である。第1の3相巻線U1,V1,W1と第2の3相巻線U2,V2,W2との位相差は零である。
【0054】
図3は、図1の第1電力変換器4aによって出力される第1電圧ベクトルを示す図である。第1電力変換器4aは、複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1のオンオフ状態に応じて、8つの第1電圧ベクトルのいずれか1つを出力する。8つの第1電圧ベクトルは、V0(1)、V1(1)、V2(1)、V3(1)、V4(1)、V5(1)、V6(1)、及びV7(1)である。
【0055】
ここで、V0(1)及びV7(1)は零電圧ベクトルである。第1電力変換器4aが零電圧ベクトルを出力しているとき、第1電力変換器4aの母線電流である第1母線電流Iinv1は零となる。また、V1(1)、V2(1)、V3(1)、V4(1)、V5(1)、及びV6(1)は有効電圧ベクトルである。第1電力変換器4aが有効電圧ベクトルを出力しているとき、第1母線電流Iinv1は、各相の電流値又はその反転値となる。
【0056】
図4は、複数の第1オンオフ信号Qup1~Qwn1と、第1電力変換器4aによって出力される第1電圧ベクトルとの関係を示す図である。図4に示すように、複数の第1オンオフ信号Qup1~Qwn1の値の組合せは、8通りである。例えば、Qup1が「0」、Qun1が「1」、Qvp1が「0」、Qvn1が「1」、Qwp1が「0」、Qwn1が「1」である場合、第1電力変換器4aは、第1電圧ベクトルとしてV0(1)を出力する。
【0057】
図5は、図1の第2電力変換器4bによって出力される第2電圧ベクトルを示す図である。第2電力変換器4bは、複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2のオンオフ状態に応じて、8つの第2電圧ベクトルのいずれか1つを出力する。8つの第2電圧ベクトルは、V0(2)、V1(2)、V2(2)、V3(2)、V4(2)、V5(2)、V6(2)、及びV7(2)である。
【0058】
ここで、V0(2)及びV7(2)は零電圧ベクトルである。第2電力変換器4bが零電圧ベクトルを出力しているとき、第2電力変換器4bの母線電流である第2母線電流Iinv2は零となる。また、V1(2)、V2(2)、V3(2)、V4(2)、V5(2)、及びV6(2)は有効電圧ベクトルである。第2電力変換器4bが有効電圧ベクトルを出力しているとき、第2母線電流Iinv2は、各相の電流値又はその反転値となる。
【0059】
第1の3相巻線と第2の3相巻線との位相差は零であるので、V1(1)とV1(2)、V2(1)とV2(2)、V3(1)とV3(2)、V4(1)とV4(2)、V5(1)とV5(2)、V6(1)とV6(2)とはそれぞれ一致する。
【0060】
図6は、複数の第2オンオフ信号Qup2~Qwn2と、第2電力変換器4bによって出力される第2電圧ベクトルとの関係を示す図である。図6に示すように、複数の第2オンオフ信号Qup2~Qwn2の値の組合せは、8通りである。例えば、Qup2が「0」、Qun2が「1」、Qvp2が「0」、Qvn2が「1」、Qwp2が「0」、Qwn2が「1」である場合、第2電力変換器4bは、第2電圧ベクトルとしてV0(2)を出力する。
【0061】
図7は、第1電圧指令Vu1,Vv1,Vw1の波形を示す図である。第1電圧指令Vu1,Vv1,Vw1は、互いに位相が120度異なる正弦波により表される。
【0062】
図8は、第1オフセット電圧Voffset1の波形を示す図である。式(2)により演算される第1オフセット電圧Voffset1は、1周期が120度の信号となる。従って、第1オフセット電圧Voffset1は、1周期が360度の第1電圧指令に対する3次高調波信号となる。
【0063】
図9は、第1印加電圧Vu1’,Vv1’,Vw1’の波形を示す図である。式(1)により演算される第1印加電圧Vu1’,Vv1’,Vw1’は、図9に示すような波形となる。
【0064】
また、図示しないが、第2電圧指令Vu2,Vv2,Vw2は、第1電圧指令Vu1,Vv1,Vw1と同様に、互いに位相が120度異なる正弦波により表される。第2オフセット電圧Voffset2は、第1オフセット電圧Voffset1と同様に、第2電圧指令に対する3次高調波信号となる。第2印加電圧Vu2’,Vv2’,Vw2’は、第1印加電圧Vu1’,Vv1’,Vw1’と同様の波形となる。
【0065】
図10は、図1の第1オンオフ信号発生器9aの動作を説明するための図である。図10において、U1相に対する電圧指令Vu1、V1相に対する電圧指令Vv1、W1相に対する電圧指令Vw1には、Vu1>Vv1>Vw1の関係が成り立っている。C1は第1搬送波信号である。第1搬送波信号C1は、最小値が-Vdc/2、最大値がVdc/2、周期Tcの三角波である。
【0066】
第1オンオフ信号発生器9aは、第1参照信号としての第1搬送波信号C1と、U1相の印加電圧Vu1’とを比較する。U1相の印加電圧Vu1’が第1搬送波信号C1以上である場合、第1オンオフ信号発生器9aは、Qup1及びQun1としてそれぞれ「1」及び「0」を第1電力変換器4aに出力する。U1相の印加電圧Vu1’が第1搬送波信号C1よりも小さい場合、第1オンオフ信号発生器9aは、Qup1及びQun1としてそれぞれ「0」及び「1」を第1電力変換器4aに出力する。
【0067】
その結果、第1電力変換器4aは、第1電圧ベクトルとして、t1~t2及びt8~t9においてV7(1)、t2~t3及びt7~t8においてV2(1)、t3~t4及びt6~t7においてV1(1)、t4~t6においてV0(1)をそれぞれ出力する。
【0068】
図11は、図1の第2オンオフ信号発生器9bの動作を説明するための図である。図11において、U2相に対する電圧指令Vu2、V2相に対する電圧指令Vv2、W2相に対する電圧指令Vw2には、Vu2>Vv2>Vw2の関係が成り立っている。C1は、図10におけるC1と同じ第1搬送波信号である。
【0069】
第2オンオフ信号発生器9bは、第2参照信号としての第1搬送波信号C1と、U2相の印加電圧Vu2’とを比較する。U2相の印加電圧Vu2’が第1搬送波信号C1以上である場合、第2オンオフ信号発生器9bは、Qup2及びQun2としてそれぞれ「1」及び「0」を第2電力変換器4bに出力する。U2相の印加電圧Vu2’が第1搬送波信号C1よりも小さい場合、第2オンオフ信号発生器9bは、Qup2及びQun2としてそれぞれ「0」及び「1」を第2電力変換器4bに出力する。
【0070】
その結果、第2電力変換器4bは、第2電圧ベクトルとして、t1~t2及びt8~t9においてV7(2)、t2~t3及びt7~t8においてV2(2)、t3~t4及びt6~t7においてV1(2)、t4~t6においてV0(2)をそれぞれ出力する。
【0071】
このように、式(2)及び式(4)のように第1オフセット電圧Voffset1及び第2オフセット電圧Voffset2を設定することにより、有効電圧ベクトル区間の中央時刻及び零電圧ベクトル区間の中央時刻をそれぞれ揃えることができる。有効電圧ベクトル区間は、有効電圧ベクトルが出力されている区間である。零電圧ベクトル区間は、零電圧ベクトルが出力されている区間である。そして、それぞれの区間における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとを一致させることができる。これにより、相電流リプルを低減することができる。
【0072】
図12は、第1高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。また、図13は、第2高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。ここで、縦軸は電圧位相であり、電圧位相が0度から360度までの範囲が示されている。横軸は、第1搬送波信号C1の周期Tcに相当する。
【0073】
図12及び図13に示すように、例えば、電圧位相が40度の場合、同時に出力される第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの組合せは、V7(1)とV7(2)、V2(1)とV2(2)、V1(1)とV1(2)、V0(1)とV0(2)となる。このように、電圧ベクトルの各区間において、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとを一致させることができる。これは、上記の式(2)及び式(4)によって、第1の3相巻線の中性点電位と第2の3相巻線の中性点電位が揃えられるからである。
【0074】
次に、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの組合せを考慮した相電流リプルの低減方法について述べる。ここでは、説明を簡単にするため、抵抗成分及び誘起電圧成分を0と見做しているが、抵抗成分及び誘起電圧成分が0でない場合についても同様の考えに基づいて説明することができる。
【0075】
第1電力変換器4aにおけるd軸電圧を第1d軸電圧Vd1、第1電力変換器4aにおけるq軸電圧を第1q軸電圧Vq1、第2電力変換器4bにおけるd軸電圧を第2d軸電圧Vd2、第2電力変換器4bにおけるq軸電圧を第2q軸電圧Vq2とする。このとき、以下の式(5)が成り立つ。
【0076】
【数5】
【0077】
d軸自己インダクタンスをLd、d軸相互インダクタンスをMd、q軸自己インダクタンスをLq、q軸相互インダクタンスをMq、電気角をθ、微分演算子をpとすると、6相電流の微分値piu1~piw2は、以下の式(6)により表すことができる。
【0078】
【数6】
【0079】
結合係数をkとし、式(7)のように簡単化し、以下では、6相電流の微分値を式(8)で表されるベース電流の微分値pibaseに対する比として表現する。
【0080】
【数7】
【0081】
【数8】
【0082】
第1電力変換器4aが第1電圧ベクトルとしてV1(1)を出力し、第2電力変換器4bが第2電圧ベクトルとしてV0(2)を出力する場合、6相電流の微分値の直流成分piu1_dc~piw2_dcは、以下の式(9)により与えられる。交流回転機1の効率は、6相すべての相電流リプルに影響を受ける。そのため、交流回転機1の効率を向上させるには、6相電流の微分値の直流成分の二乗和を最小化すればよい。この場合、6相電流の微分値の直流成分の二乗和は、以下の式(10)により表される。なお、「6相電流の微分値の直流成分の二乗和」は、以下「微分直流二乗和」と略して呼ぶことにする。
【0083】
【数9】
【0084】
【数10】
【0085】
結合係数kが0である場合、U2相、V2相、W2相には電流は流れないが、相互インダクタンスが存在するために、第2電力変換器4bが零電圧ベクトルを出力している場合であっても、第1電力変換器4aが有効電圧ベクトルを出力している場合には、第2の3相巻線を流れる電流にも変化が生じる。従って、第1電力変換器4a及び第2電力変換器4bのいずれかにおいて有効電圧ベクトルが出力されているときには電流変化が生じる。従って、第1電力変換器4aによる零電圧ベクトル区間と第2電力変換器4bによる零電圧ベクトル区間とを重複させることにより、電流変化が抑制され、相電流リプルが低減される。
【0086】
具体的には、第1電力変換器4aによる零電圧ベクトル区間と第2電力変換器4bによる零電圧ベクトル区間とを重複させることは、式(2)及び式(4)に従って、第1印加電圧の中心値と第2印加電圧の中心値とを揃えることにより実現可能である。
【0087】
第1電力変換器4aが第1電圧ベクトルとしてV1(1)を出力し、第2電力変換器4bが第2電圧ベクトルとしてV1(2)を出力する場合、6相電流の微分値の直流成分は、以下の式(11)により与えられる。この場合、微分直流二乗和は、以下の式(12)により表される。
【0088】
【数11】
【0089】
【数12】
【0090】
第1電力変換器4aが第1電圧ベクトルとしてV1(1)を出力し、第2電力変換器4bが第2電圧ベクトルとしてV2(2)を出力する場合、6相電流の微分値の直流成分は、以下の式(13)により与えられる。この場合、微分直流二乗和は、以下の式(14)により表される。
【0091】
【数13】
【0092】
【数14】
【0093】
第1電力変換器4aが第1電圧ベクトルとしてV1(1)を出力し、第2電力変換器4bが第2電圧ベクトルとしてV3(2)を出力する場合、6相電流の微分値の直流成分は、以下の式(15)により与えられる。この場合、微分直流二乗和は、以下の式(16)により表される。
【0094】
【数15】
【0095】
【数16】
【0096】
第1電力変換器4aが第1電圧ベクトルとしてV1(1)を出力し、第2電力変換器4bが第2電圧ベクトルとしてV4(2)を出力する場合、6相電流の微分値の直流成分は、以下の式(17)により与えられる。この場合、微分直流二乗和は、以下の式(18)により表される。
【0097】
【数17】
【0098】
【数18】
【0099】
微分直流二乗和は、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差によって決定される。従って、V1(1)とV5(2)とが同時に出力される場合における微分直流二乗和は、V1(1)とV3(2)とが同時に出力される場合における微分直流二乗和と等しい。また、V1(1)とV6(2)とが同時に出力される場合における微分直流二乗和は、V1(1)とV2(2)とが同時に出力される場合における微分直流二乗和と等しい。
【0100】
図14は、結合係数kと微分直流二乗和との関係を示す図である。第1電圧ベクトルとしてV1(1)が出力される場合、結合係数kが0.27よりも大きい領域では、第2電圧ベクトルとしてV0(2)が出力されるよりも、V1(2)が出力されることにより、相電流の変化をより小さくすることができる。V0(2)は零電圧ベクトルであり、V1(2)はV1(1)との位相差が零の電圧ベクトルである。
【0101】
一方、第1電圧ベクトルとしてV1(1)が出力される場合に、V1(1)との位相差が120度のV3(2)が第2電圧ベクトルとして出力されると、相電流の変化が増大する。従って、相電流リプルを低減するためには、少なくとも、V1(1)との位相差が120度のV3(2)及びV1(1)との位相差が180度のV4(2)がV1(1)と同時に出力されることを回避する必要がある。
【0102】
以上のように、第1電圧ベクトルV1(1)及び第1電圧ベクトルV1(1)と組み合わせられる第2電圧ベクトルについて説明したが、他の第1電圧ベクトルV2(1)~V6(1)と組み合わされる第2電圧ベクトルについても同様に考えればよい。
【0103】
また、第2オフセット演算器8bは、第2オフセット電圧Voffset2を以下の式(19)に基づいて算出し、第2オンオフ信号発生器9bは、第2参照信号として、第2搬送波信号C2を用いてもよい。第2搬送波信号C2は、第1搬送波信号C1の位相と180度異なる信号である。このとき、第2印加電圧の中心値、即ち、第2の3相巻線の中性点電位は「α」となる。
【0104】
【数19】
【0105】
図15は、第1高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。図16は、第2高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。例えば、電圧位相が40度の場合、同時に出力される第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの組合せは、V7(1)とV0(2)、V2(1)とV1(2)、V2(1)とV2(2)、V1(1)とV2(2)、及びV0(1)とV7(2)である。
【0106】
この例では、V2(1)とV1(2)との組合せ及びV1(1)とV2(2)との組合せのように、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が60度の組合せの区間が存在するため、図12及び図13の場合とくらべて相電流リプルは大きくなる。しかし、有効電圧ベクトル区間及び零電圧ベクトル区間が揃っているため、相電流リプルは抑制される傾向がある。零電圧ベクトル区間は、零電圧ベクトルが出力されている区間である。
【0107】
このように、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを180度ずらした場合であっても、第2印加電圧の中心値が第1印加電圧の中心値の-1倍となるように、各電圧指令から各オフセット電圧が減算される。これにより、第1電力変換器4aの零電圧ベクトル区間と第2電力変換器4bの零電圧ベクトル区間とを揃えることができる。また、これにより、相電流リプルを低減できる。
【0108】
つまり、第1オフセット演算器8aは、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と、第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍とが等しくなるように、第1電圧指令から第1オフセット電圧を減算する。また、第2オフセット演算器8bは、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と、第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍とが等しくなるように、第2電圧指令から第2オフセット電圧を減算する。第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが等しい場合、Kは「1」であり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なる場合、Kは「-1」である。これにより、相電流リプルを低減できる。
【0109】
図17は、図1の第1オンオフ信号発生器9aの動作を説明するための図である。図17には、式(2)において、αを「0」としたときの複数の第1オンオフ信号及び第1電圧ベクトルが示されている。ここでは、搬送波信号2周期に相当する期間が示されている。
【0110】
第1印加電圧の基本波成分を除去して考えると、第1の3相巻線の各相の相電流は、t1、t9、及びt17において等しくなる。また、有効電圧ベクトルが出力される区間では、第1電圧ベクトルと電気角とにより6相電流の微分値が決定され、決定された微分値に応じて相電流が変化する。一方、零電圧ベクトルが出力される区間では、有効電圧ベクトルが出力される区間における相電流の変化を打ち消すように、0に向かって相電流が変化する。
【0111】
仮に、αを以下の式(20)によって定義すると、第1電圧最大相であるU1相の印加電圧Vu1’はVdc/2となるので、t4~t6の区間の長さは0となる。この場合、相電流リプルの波高値は、t2~t4における電流変化の幅の2倍となる。
【0112】
【数20】
【0113】
一方、図17のように、αを「0」に設定した場合、第1電圧最大相における電圧指令Vmax1と第1電圧最小相における電圧指令Vmin1とは、0Vを中心として対称に配置される。そのため、t4~t6の区間の長さは、t1~t2の区間の長さとt8~t9の区間の長さとの和、即ち、t8~t10の区間の長さと等しくなる。そのため、第1印加電圧の基本波成分を除去して考えると、相毎に、t1、t5、t9、t13、及びt17における相電流は等しくなる。
【0114】
その結果、相電流リプルの波高値は、t2~t4における電流変化の幅と等しくなる。つまり、αを「0」に設定し、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を第1参照信号の振幅の中央と一致させることにより、t4~t6の区間の長さは、t8~t10の区間の長さと等しくなる。これにより、零電圧ベクトルが均等に配置され、相電流リプルの抑制効果を向上させることができる。「零電圧ベクトルを均等に配置する」とは、零電圧ベクトルV0(1)を出力する区間の長さと、零電圧ベクトルV7(1)を出力する区間の長さとを等しくすることである。
【0115】
また、第2オンオフ信号発生器9bの動作は、第1オンオフ信号発生器9aの動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を第2参照信号の振幅の中央と一致させる。
【0116】
また、変調率により有効電圧ベクトル区間の長さが決まる。そのため、第1電圧指令の変調率と第2電圧指令の変調率との比を1対1とすることにより、有効電圧ベクトル区間を重複させることができ、相電流リプルをより低減させることができる。ここで、変調率は、直流電圧Vdcに対する線間電圧の波高値の比と定義される。
【0117】
図18は、図1の電力変換装置の発電電動機への適用例を示す構成図である。電力変換装置の構成については、図1を用いて説明した通りであるため、ここではその説明は省略される。発電電動機は、例えば、車両用発電電動機である。発電電動機は、交流回転機1及び内燃機関801を有している。発電電動機は、図示しない車両に搭載されている。
【0118】
交流回転機1は、内燃機関801の補機として、図示しない駆動系部品を経由して車両に設けられた車輪の駆動力を発生させるとともに、内燃機関801の回転を利用して発電を行う。
【0119】
内燃機関801の回転数がアイドル回転数に近いほど、交流回転機1により発電動作が実施される頻度は高くなる。また、アイドル回転数付近の比較的低い回転数における運転では、鉄損が発電効率に与える影響は、比較的大きくなる。
【0120】
実施の形態1の電力変換装置によれば、内燃機関801のアイドル回転数付近において頻繁に実施される交流回転機1の発電動作における相電流リプルが抑制される。これにより、鉄損が低減されるとともに、より効率のよい発電が行われる。また、力行運転により駆動力をアシストする場合においても同様に、鉄損が低減されるとともに、効率のよい駆動が行われることにより、車両の燃費をより向上させることができる。
【0121】
図19は、図1の電力変換装置の電動パワーステアリング装置用電動機への適用例を示す構成図である。電力変換装置の構成については、図1を用いて説明した通りであるため、ここではその説明は省略される。交流回転機1は、図示しない車両の電動パワーステアリング装置に接続されている。
【0122】
車両は、ハンドル901、前輪902、トルク検出器903、ギヤ904、及び制御指令生成部905を有している。車両の運転者は、ハンドル901を左右に回転させることにより、前輪902の操舵を行う。トルク検出器903は、ステアリング系の操舵トルクTsを検出し、検出された操舵トルクTsを制御指令生成部905に出力する。
【0123】
制御指令生成部905は、トルク検出器903から出力された操舵トルクTsに基づいて、交流回転機1を制御するための制御指令を演算する。演算された制御指令は、制御部6の電圧指令演算器7に入力される。制御指令生成部905は、制御指令として、以下の式(21)により、トルク電流指令Iq_tgtを演算する。ここで、kaは定数である。
【0124】
【数21】
【0125】
実施の形態1に係る電力変換装置を電動パワーステアリング装置用の電動機に用いることにより、相電流リプルが低減され、運転者にとって不快な振動が、ハンドル901を介して、運転者に伝わることが抑制される。また、車室内に伝わる騒音が低減される。
【0126】
なお、定数kaは、操舵トルクTs又は車両の走行速度に応じて変化するように設定されてもよい。ここでは、式(21)を用いてトルク電流指令Iq_tgtが決定されるが、操舵状況に応じた公知の補償制御に基づいてトルク電流指令Iq_tgtが決定されてもよい。ここでは、単純化して、q軸電流に対するトルク電流指令Iq_tgtのみが決定されていたが、q軸電流に対するトルク電流指令だけでなく、d軸電流に対するトルク電流指令が決定される方式であってもよい。
【0127】
以上のように、実施の形態1に係る電力変換装置は、第1電力変換器4a、第2電力変換器4b、及び制御部6を備えている。第1電力変換器4aは、複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1を有しており、直流電源2からの直流電圧Vdcを第1交流電圧に変換し、交流回転機1の第1の3相巻線U1,V1,W1に印加する。第2電力変換器4bは、複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2を有しており、直流電圧Vdcを第2交流電圧に変換し、交流回転機1の第2の3相巻線U2,V2,W2に印加する。
【0128】
制御部6は、第1電圧指令Vu1,Vv1,Vw1から3次高調波信号としての第1オフセット電圧Voffset1を減算して得た第1印加電圧Vu1’,Vv1’,Vw1’と、第1参照信号とを比較する。これにより、制御部6は、複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1に対する複数の第1オンオフ信号Qup1~Qwn1を算出する。第1電圧指令Vu1,Vv1,Vw1は、第1の3相巻線U1,V1,W1に対する電圧指令である。
【0129】
制御部6は、第2電圧指令Vu2,Vv2,Vw2から3次高調波信号としての第2オフセット電圧Voffset2を減算して得た第2印加電圧Vu2’,Vv2’,Vw2’と、第2参照信号とを比較する。これにより、制御部6は、複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2に対する複数の第2オンオフ信号Qup2~Qwn2を算出する。第2電圧指令Vu2,Vv2,Vw2は、第2の3相巻線U2,V2,W2に対する電圧指令である。
【0130】
制御部6は、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍とが等しくなるように、第1電圧指令から第1オフセット電圧Voffset1を減算する。また、これとともに、制御部6は、第2電圧指令から第2オフセット電圧Voffset2を減算する。
【0131】
第1参照信号及び第2参照信号は搬送波信号である。第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが等しい場合、Kは1であり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なる場合、Kは-1である。
【0132】
これによれば、第1電力変換器4aにおける有効電圧ベクトル区間の中央時刻と第2電力変換器4bにおける有効電圧ベクトル区間の中央時刻とが揃うため、有効電圧ベクトル区間が最短となる。その結果、相電流リプルが低減される。
【0133】
また、第1電圧指令における変調率と第2電圧指令における変調率との比は1対1に設定されている。
【0134】
これによれば、第1電力変換器4aによる有効電圧ベクトル区間と第2電力変換器4bによる有効電圧ベクトル区間とを重複させることができ、これにより、相電流リプルがより効果的に低減される。
【0135】
また、制御部6は、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を第1参照信号の振幅の中央に一致させるとともに、第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を第2参照信号の振幅の中央に一致させる。
【0136】
これによれば、零電圧ベクトル区間が均等に配置される。その結果、相電流リプルがより低減される。
【0137】
また、発電電動機の制御装置は、実施の形態1に係る電力変換装置を備えている。
【0138】
これによれば、発電電動機における鉄損を低減し、効率的な発電が可能となる。従って、車両用発電電動機に適用された場合、車両の燃費を向上することができる。
【0139】
また、電動パワーステアリング装置は、実施の形態1に係る電力変換装置を備えている。
【0140】
これによれば、電力変換装置の相電流リプルが低減されることにより、ハンドルを介して運転者に伝達される振動が抑制されるとともに、車室内の騒音が低減される。
【0141】
なお、実施の形態1に係る電力変換装置では、第1の3相巻線と第2の3相巻線との位相差が零となるように設けられていたが、上記位相差は必ずしも零である必要はない。つまり、第1の3相巻線と第2の3相巻線との位相差が零でない場合であっても、第1電力変換器4aにおける有効電圧ベクトル区間の中央時刻と第2電力変換器4bにおける有効電圧ベクトル区間の中央時刻とを揃えることにより、相電流リプルは低減される。
【0142】
また、第1電流検出器5aは、例えば、第1低電位側スイッチング素子Sun1、Svn1、Swn1のそれぞれに直列に電流検出用抵抗を設けて、電流検出値Iu1s、Iv1s、及びIw1sを検出する方式の電流検出器であってもよい。
【0143】
また、第1電流検出器5aは、第1電力変換器4aと平滑コンデンサ3との間に電流検出用抵抗を設けて、第1電力変換器4aへの入力電流を検出し、その検出値から、電流検出値Iu1s、Iv1s、及びIw1sを検出する方式の電流検出器であってもよい。これらの場合には、電流検出可否を考慮して、複数の第1スイッチング素子Sup1~Swn1のオンオフを決定すればよい。
【0144】
また、第2電流検出器5bは、例えば、第2低電位側スイッチング素子Sun2、Svn2、Swn2のそれぞれに直列に電流検出用抵抗を設けて、電流検出値Iu2s、Iv2s、及びIw2sを検出する方式の電流検出器であってもよい。
【0145】
また、第2電流検出器5bは、第2電力変換器4bと平滑コンデンサ3との間に電流検出用抵抗を設けて、第2電力変換器4bへの入力電流を検出し、その検出値から、電流検出値Iu2s、Iv2s、及びIw2sを検出する方式の電流検出器であってもよい。これらの場合には、電流検出可否を考慮して、複数の第2スイッチング素子Sup2~Swn2のオンオフを決定すればよい。
【0146】
実施の形態2.
図20は、実施の形態2に係る電力変換装置を示す構成図である。図20の電力変換装置には、図1の第1電流検出器5aに代えて、第1電流検出器5a1が設けられている。また、図20の電力変換装置には、図1の第2電流検出器5bに代えて、第2電流検出器5b1が設けられている。
【0147】
上記以外の構成については、図1の電力変換装置と同様である。以下、図1の電力変換装置と同様の構成についての説明は省略される。
【0148】
第1電流検出器5a1は、3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1、Svn1、及びSwn1のそれぞれと直列に接続されている。第1電流検出器5a1は、3つのシャント抵抗を有している。3つのシャント抵抗は、U1相電流を検出するための抵抗、V1相電流を検出するための抵抗、及びW1相電流を検出するための抵抗である。
【0149】
より具体的に述べると、U1相電流を検出するためのシャント抵抗は、U1相の第1低電位側スイッチング素子Sun1と直流電源2の負極端子との間に接続されている。V1相電流を検出するためのシャント抵抗は、V1相の第1低電位側スイッチング素子Svn1と直流電源2の負極端子との間に接続されている。W1相電流を検出するためのシャント抵抗は、W1相の第1低電位側スイッチング素子Swn1と直流電源2の負極端子との間に接続されている。
【0150】
図10に示すような印加電圧が第1オンオフ信号発生器9aに入力される場合、第1電流検出器5a1は、時刻t5において、第1の3相巻線U1,V1,W1を流れる電流の検出値として、Iu1s,Iv1s,Iw1sを得る。しかし、第1高電位側スイッチング素子Sup1、Svp1、Swp1のいずれかがオンしている場合、第1電流検出器5a1は、第1高電位側スイッチング素子がオンしている相の電流を検出することができない。
【0151】
つまり、U1相の検出値Iu1sは、t1~t4及びt6~t9の間において「0」となり、V1相の検出値Iv1sは、t1~t3及びt7~t9の間において「0」となり、W1相の検出値Iw1sは、t1~t2及びt8~t9の間において「0」となる。
【0152】
従って、U1相の検出値Iu1sは、時刻t4において、「0」から実際に流れている電流「Iu1」に向かって変化する。そのため、第1電流検出器5a1には、検出された電流波形が整定するための整定時間が必要である。整定時間を確保するために、第1電流検出器5a1において電流を検出可能な印加電圧の範囲は、-Vdc/2~K×Vdcに制限される。ここで、Kは1/2未満の正の値である。
【0153】
第2電流検出器5b1は、3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2、Svn2、及びSwn2のそれぞれと直列に接続されている。第2電流検出器5b1は、3つのシャント抵抗を有している。3つのシャント抵抗は、U2相電流を検出するための抵抗、V2相電流を検出するための抵抗、及びW2相電流を検出するための抵抗である。
【0154】
より具体的に述べると、U2相電流を検出するためのシャント抵抗は、U2相の第2低電位側スイッチング素子Sun2と直流電源2の負極端子との間に接続されている。V2相電流を検出するためのシャント抵抗は、V2相の第2低電位側スイッチング素子Svn2と直流電源2の負極端子との間に接続されている。W2相電流を検出するためのシャント抵抗は、W2相の第2低電位側スイッチング素子Swn2と直流電源2の負極端子との間に接続されている。
【0155】
図11に示すような印加電圧が第2オンオフ信号発生器9bに入力される場合、第2電流検出器5b1は、時刻t5において、第2の3相巻線U2,V2,W2を流れる電流の検出値として、Iu2s,Iv2s,Iw2sを得る。しかし、第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2のいずれかがオンしている場合、第2電流検出器5b1は、第2高電位側スイッチング素子がオンしている相の電流を検出することができない。
【0156】
第1電流検出器5a1と同様に、波形の整定時間が必要であるため、第2電流検出器5b1において電流を検出可能な印加電圧の範囲は、-Vdc/2~K×Vdcに制限される。
【0157】
上記式(2)に従って第1オフセット電圧Voffset1を算出し、αが「0」である場合には、印加電圧の最大値の絶対値と、印加電圧の最小値の絶対値とは等しくなる。そのため、印加電圧の最大値がK×Vdc以下であれば、すべての電気角において3相同時に電流の検出が可能となる。従って、3相同時に電流の検出が可能な変調率の最大値は、2Kとなる。
【0158】
実施の形態2に係る電力変換装置では、より広い電気角範囲において3相同時に電流の検出を行えるように、以下の式(22)によりαを与える。ここで、第1印加電圧の中心値及び第2印加電圧の中心値をともに(K/2-1/4)×Vdcとする。この条件では、変調率が(K+1/2)以下のとき、すべての電気角において、印加電圧の最大値がK×Vdc以下となり、印加電圧の最小値が-Vdc/2以上となる。これにより、3相同時に電流の検出が可能となる。
【0159】
【数22】
【0160】
第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なる場合、第1電流検出器5a1において3相同時に電流の検出が可能なタイミングと、第2電流検出器5b1において3相同時に電流の検出が可能なタイミングとがずれる。
【0161】
そこで、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくすることにより、より広い電気角範囲において3相同時に電流の検出が可能な状態を実現することができる。
【0162】
つまり、第1印加電圧の中心値及び第2印加電圧の中心値を(K/2-1/4)×Vdcとし、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくすることにより、中性点電位の変動を抑制するとともに相電流リプルを低減することができる。また、3相同時に電流の検出が可能な変調率の上限値を大きくすることができる。
【0163】
以上のように、実施の形態2に係る電力変換装置では、複数の第1スイッチング素子は、3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1及び3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1を含んでいる。3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1及び3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1は、第1の3相巻線の各相に対応している。
【0164】
第1電力変換器4aは、第1電流検出器5a1をさらに有している。第1電流検出器5a1は、第1の3相巻線の各相に流れる電流を検出する。第1電流検出器5a1は、3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1のそれぞれと直列に接続されている。
【0165】
複数の第2スイッチング素子は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2及び3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2を含んでいる。3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2及び3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2は、第2の3相巻線の各相に対応している。
【0166】
第2電力変換器4bは、第2電流検出器5b1をさらに有している。第2電流検出器5b1は、第2の3相巻線の各相に流れる電流を検出する。第2電流検出器5b1は、3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2のそれぞれと直列に接続されている。
【0167】
制御部6は、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値及び第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値をそれぞれ(K/2-1/4)×Vdcに設定する。また、制御部6は、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくする。ここで、上記制御が行われるのは、第1電流検出器5a1及び第2電流検出器5b1により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-Vdc/2からK×Vdcまでの範囲であるときである。また、Vdcは直流電圧の値である。
【0168】
これによれば、第1電流検出器が第1低電位側スイッチング素子と直列に接続されており、第2電流検出器が第2低電位側スイッチング素子と直列に接続されている場合であっても、電流の検出と相電流リプルの低減とを両立させることができる。
【0169】
なお、第1電流検出器5a1は、第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,及びSwn1のそれぞれと、第1電力変換器4aの出力点Pu1,Pv1,Pw1のそれぞれとの間に設けられていてもよい。また、第2電流検出器5b1は、第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,及びSwn2のそれぞれと、第2電力変換器4bの出力点Pu2,Pv2,Pw2のそれぞれとの間に設けられていてもよい。
【0170】
実施の形態3.
図21は、実施の形態3に係る電力変換装置を示す構成図である。図21の電力変換装置には、図1の第1電流検出器5aに代えて、第1電流検出器5a2が設けられている。また、図21の電力変換装置には、図1の第2電流検出器5bに代えて、第2電流検出器5b2が設けられている。
【0171】
上記以外の構成については、図1の電力変換装置と同様である。以下、図1の電力変換装置と同様の構成についての説明は省略される。
【0172】
第1電流検出器5a2は、3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1、Svp1、及びSwp1のそれぞれと直列に接続されている。第1電流検出器5a2は、3つのシャント抵抗を有している。3つのシャント抵抗は、U1相電流を検出するための抵抗、V1相電流を検出するための抵抗、及びW1相電流を検出するための抵抗である。
【0173】
より具体的に述べると、U1相電流を検出するためのシャント抵抗は、U1相の第1高電位側スイッチング素子Sup1と直流電源2の正極端子との間に接続されている。V1相電流を検出するためのシャント抵抗は、V1相の第1高電位側スイッチング素子Svp1と直流電源2の正極端子との間に接続されている。W1相電流を検出するためのシャント抵抗は、W1相の第1高電位側スイッチング素子Swp1と直流電源2の正極端子との間に接続されている。
【0174】
図10に示すような印加電圧が第1オンオフ信号発生器9aに入力される場合、第1電流検出器5a2は、時刻t1及び時刻t9において、第1の3相巻線U1,V1,W1を流れる電流の検出値として、Iu1s,Iv1s,Iw1sを得る。しかし、第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1のいずれかがオンしている場合、第1電流検出器5a2は、第1低電位側スイッチング素子がオンしている相の電流を検出することができない。なお、第1搬送波信号C1に対して位相が180度異なる第2搬送波信号C2と比較して第1オンオフ信号を生成する場合には、時刻t5において、第1の3相巻線U1,V1,W1を流れる電流の検出値として、Iu1s,Iv1s,Iw1sを得ればよい。
【0175】
つまり、U1相の検出値Iu1sは、t4~t6の間において「0」となり、V1相の検出値Iv1sは、t3~t7の間において「0」となり、W1相の検出値Iw1sは、t2~t8の間において「0」となる。
【0176】
従って、W1相の検出値Iw1sは、時刻t8において、「0」から実際に流れている電流「Iw1」に向かって変化する。そのため、第1電流検出器5a2には、検出された電流波形の整定時間が必要である。整定時間を確保するために、第1電流検出器5a2において電流を検出可能な印加電圧の範囲は、-K×Vdc~Vdc/2に制限される。ここで、Kは1/2未満の正の値である。
【0177】
第2電流検出器5b2は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2、Svp2、及びSwp2のそれぞれと直列に接続されている。第2電流検出器5b2は、3つのシャント抵抗を有している。3つのシャント抵抗は、U2相電流を検出するための抵抗、V2相電流を検出するための抵抗、及びW2相電流を検出するための抵抗である。
【0178】
より具体的に述べると、U2相電流を検出するためのシャント抵抗は、U2相の第2高電位側スイッチング素子Sup2と直流電源2の正極端子との間に接続されている。V2相電流を検出するためのシャント抵抗は、V2相の第2高電位側スイッチング素子Svp2と直流電源2の正極端子との間に接続されている。W2相電流を検出するためのシャント抵抗は、W2相の第2高電位側スイッチング素子Swp2と直流電源2の正極端子との間に接続されている。
【0179】
図11に示すような印加電圧が第2オンオフ信号発生器9bに入力される場合、第2電流検出器5b2は、時刻t1及び時刻t9において、第2の3相巻線U2,V2,W2を流れる電流の検出値として、Iu2s,Iv2s,Iw2sを得る。しかし、第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2のいずれかがオンしている場合、第2電流検出器5b2は、第2低電位側スイッチング素子がオンしている相の電流を検出することができない。なお、第1搬送波信号C1に対して位相が180度異なる第2搬送波信号C2と比較して第2オンオフ信号を生成する場合には、時刻t5において、第2の3相巻線U2,V2,W2を流れる電流の検出値として、Iu2s,Iv2s,Iw2sを得ればよい。
【0180】
第1電流検出器5a2と同様に、波形の整定時間が必要であるため、第2電流検出器5b2において電流を検出可能な印加電圧の範囲は、-K×Vdc~Vdc/2に制限される。
【0181】
上記式(2)に従って第1オフセット電圧Voffset1を算出し、αが「0」である場合には、印加電圧の最大値の絶対値と、印加電圧の最小値の絶対値とは等しくなる。そのため、印加電圧の最大値が-K×Vdc以上であれば、すべての電気角において3相同時に電流の検出が可能となる。従って、3相同時に電流の検出が可能な変調率の最大値は、3Kとなる。
【0182】
実施の形態3に係る電力変換装置では、より広い電気角範囲において3相同時に電流の検出を行えるように、以下の式(23)によりαを与える。このとき、第1印加電圧の中心値及び第2印加電圧の中心値はともに(1/4-K/2)×Vdcとなる。
【0183】
【数23】
【0184】
第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なる場合、第1電流検出器5a2において3相同時に電流の検出が可能なタイミングと、第2電流検出器5b2において3相同時に電流の検出が可能なタイミングとがずれる。
【0185】
そこで、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくすることにより、より広い電気角範囲において3相同時に電流の検出が可能な状態を実現することができる。
【0186】
つまり、第1印加電圧の中心値及び第2印加電圧の中心値を(1/4-K/2)×Vdcとし、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくすることにより、中性点電位の変動を抑制するとともに相電流リプルを低減することができる。また、3相同時に電流の検出が可能な変調率の上限値を大きくすることができる。
【0187】
以上のように、実施の形態3に係る電力変換装置では、複数の第1スイッチング素子は、3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1及び3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1を含んでいる。3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1及び3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1は、第1の3相巻線の各相に対応している。
【0188】
第1電力変換器4aは、第1電流検出器5a2をさらに有している。第1電流検出器5a2は、第1の3相巻線の各相に流れる電流を検出する。第1電流検出器5a2は、3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1のそれぞれと直列に接続されている。
【0189】
複数の第2スイッチング素子は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2及び3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2を含んでいる。3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2及び3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2は、第2の3相巻線の各相に対応している。
【0190】
第2電力変換器4bは、第2電流検出器5b2をさらに有している。第2電流検出器5b2は、第2の3相巻線の各相に流れる電流を検出する。第2電流検出器5b2は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2のそれぞれと直列に接続されている。
【0191】
制御部6は、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値及び第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値をそれぞれ(1/4-K/2)×Vdcに設定する。また、制御部6は、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくする。ここで、上記制御が行われるのは、第1電流検出器5a2及び第2電流検出器5b2により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-K×VdcからVdc/2までの範囲であるときである。また、Vdcは直流電圧の値である。
【0192】
これによれば、第1電流検出器が第1高電位側スイッチング素子と直列に接続されており、第2電流検出器が第2高電位側スイッチング素子と直列に接続されている場合であっても、電流の検出と相電流リプルの低減とを両立させることができる。
【0193】
なお、第1電流検出器5a2は、第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,及びSwp1のそれぞれと、第1電力変換器4aの出力点Pu1,Pv1,Pw1のそれぞれとの間に設けられていてもよい。また、第2電流検出器5b2は、第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,及びSwp2のそれぞれと、第2電力変換器4bの出力点Pu2,Pv2,Pw2のそれぞれとの間に設けられていてもよい。
【0194】
実施の形態4.
図22は、実施の形態4に係る電力変換装置を示す構成図である。図22の電力変換装置には、図1の第1電流検出器5aに代えて、第1電流検出器5a3が設けられている。また、図22の電力変換装置には、図1の第2電流検出器5bに代えて、第2電流検出器5b3が設けられている。
【0195】
上記以外の構成については、図1の電力変換装置と同様である。以下、図1の電力変換装置と同様の構成についての説明は省略される。
【0196】
第1電流検出器5a3は、3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1、Svn1、及びSwn1のそれぞれと直列に接続されている。第1電流検出器5a3は、3つのシャント抵抗を有している。3つのシャント抵抗は、U1相電流を検出するための抵抗、V1相電流を検出するための抵抗、及びW1相電流を検出するための抵抗である。
【0197】
より具体的に述べると、U1相電流を検出するためのシャント抵抗は、U1相の第1低電位側スイッチング素子Sun1と直流電源2の負極端子との間に接続されている。V1相電流を検出するためのシャント抵抗は、V1相の第1低電位側スイッチング素子Svn1と直流電源2の負極端子との間に接続されている。W1相電流を検出するためのシャント抵抗は、W1相の第1低電位側スイッチング素子Swn1と直流電源2の負極端子との間に接続されている。
【0198】
図10に示すような印加電圧が第1オンオフ信号発生器9aに入力される場合、第1電流検出器5a3は、時刻t5において、第1の3相巻線U1,V1,W1を流れる電流の検出値として、Iu1s,Iv1s,Iw1sを得る。しかし、第1高電位側スイッチング素子Sup1、Svp1、Swp1のいずれかがオンしている場合、第1電流検出器5a3は、第1高電位側スイッチング素子がオンしている相の電流を検出することができない。
【0199】
つまり、U1相の検出値Iu1sは、t1~t4及びt6~t9の間において「0」となり、V1相の検出値Iv1sは、t1~t3及びt7~t9の間において「0」となり、W1相の検出値Iw1sは、t1~t2及びt8~t9の間において「0」となる。
【0200】
従って、U1相の検出値Iu1sは、時刻t4において、「0」から実際に流れている電流「Iu1」に向かって変化する。そのため、第1電流検出器5a3には、検出された電流波形の整定時間が必要であり、t4~t5の期間が整定時間以上とされる必要がある。つまり、Kを1/2以下の正の値とすると、第1電流検出器5a3において電流を検出可能な印加電圧の範囲は、-Vdc/2~K×Vdcとなる。
【0201】
第2電流検出器5b3は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2、Svp2、及びSwp2のそれぞれと直列に接続されている。第2電流検出器5b3は、3つのシャント抵抗を有している。3つのシャント抵抗は、U2相電流を検出するための抵抗、V2相電流を検出するための抵抗、及びW2相電流を検出するための抵抗である。
【0202】
より具体的に述べると、U2相電流を検出するためのシャント抵抗は、U2相の第2高電位側スイッチング素子Sup2と直流電源2の正極端子との間に接続されている。V2相電流を検出するためのシャント抵抗は、V2相の第2高電位側スイッチング素子Svp2と直流電源2の正極端子との間に接続されている。W2相電流を検出するためのシャント抵抗は、W2相の第2高電位側スイッチング素子Swp2と直流電源2の正極端子との間に接続されている。
【0203】
図11に示すような印加電圧が第2オンオフ信号発生器9bに入力される場合、第2電流検出器5b3は、時刻t1及び時刻t9において、第2の3相巻線U2,V2,W2を流れる電流の検出値として、Iu2s,Iv2s,Iw2sを得る。しかし、第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2のいずれかがオンしている場合、第2電流検出器5b3は、第2低電位側スイッチング素子がオンしている相の電流を検出することができない。
【0204】
第1電流検出器5a3と同様に、波形の整定時間が必要であるため、t8~t9の期間は整定時間以上とされる必要がある。つまり、Kを1/2以下の正の値とすると、第2電流検出器5b3において電流を検出可能な印加電圧の範囲は、-K×Vdc~Vdc/2となる。
【0205】
第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくした場合、第1電流検出器5a3において3相同時に電流の検出が可能なタイミングと、第2電流検出器5b3において3相同時に電流の検出が可能なタイミングとがずれる。
【0206】
そこで、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを180度異ならせることにより、より広い電気角範囲において3相同時に電流の検出が可能な状態を実現することができる。
【0207】
第1オフセット電圧Voffset1を式(2)で与え、第2オフセット電圧Voffset2を式(4)で与えるとき、αが「0」である場合には、3相同時に電流の検出が可能な最大変調率は、2×min(K,K)となる。ここで、min(a,b)は、a及びbの最小値選択を表している。例えば、a<bである場合、min(a,b)=aである。
【0208】
実施の形態4に係る電力変換装置では、より広い電気角範囲において3相同時に電流の検出を行えるように、式(24)によりαを与える。このとき、第1印加電圧の中心値は、(min(K,K)/2-1/4)×Vdcとなり、第2印加電圧の中心値は、(1/4-min(K,K)/2)×Vdcとなる。また、3相同時に電流の検出が可能な最大変調率は、(min(K,K)+1/2)となる。
【0209】
【数24】
【0210】
つまり、実施の形態4では、第1印加電圧の中心値が(min(K,K)/2-1/4)×Vdcとされ、第2印加電圧の中心値が(1/4-min(K,K)/2)×Vdcとされ、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度ずらされる。これにより、中性点電位の変動を抑制するとともに相電流リプルを低減することができる。また、3相同時に電流の検出が可能な変調率の上限値を大きくすることができる。
【0211】
以上のように、実施の形態4に係る電力変換装置では、複数の第1スイッチング素子は、3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1及び3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1を含んでいる。3つの第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1及び3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1は、第1の3相巻線の各相に対応している。
【0212】
第1電力変換器4aは、第1電流検出器5a3をさらに有している。第1電流検出器5a3は、第1の3相巻線の各相に流れる電流を検出する。第1電流検出器5a3は、3つの第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,Swn1のそれぞれと直列に接続されている。
【0213】
複数の第2スイッチング素子は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2及び3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2を含んでいる。3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2及び3つの第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,Swn2は、第2の3相巻線の各相に対応している。
【0214】
第2電力変換器4bは、第2電流検出器5b3をさらに有している。第2電流検出器5b3は、第2の3相巻線の各相に流れる電流を検出する。第2電流検出器5b3は、3つの第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,Swp2のそれぞれと直列に接続されている。
【0215】
制御部6は、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を(min(K,K)/2-1/4)×Vdcに設定し、第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値を(1/4-min(K,K)/2)×Vdcに設定する。また、制御部6は、第1参照信号の位相と前記第2参照信号の位相とを180度異ならせる。ここで、上記制御が行われるのは、第1電流検出器5a3により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-Vdc/2~K×Vdcの範囲であり、且つ第2電流検出器5b3により電流の検出が可能な印加電圧の範囲が-K×Vdc~Vdc/2の範囲であるときである。また、Vdcは直流電圧の値である。
【0216】
これによれば、第1電流検出器が第1高電位側スイッチング素子と直列に接続されており、第2電流検出器が第2低電位側スイッチング素子と直列に接続されている場合であっても、電流の検出と相電流リプルの低減とを両立させることができる。
【0217】
なお、第1電流検出器5a3は、第1低電位側スイッチング素子Sun1,Svn1,及びSwn1のそれぞれと、第1電力変換器4aの出力点Pu1,Pv1,Pw1のそれぞれとの間に設けられていてもよい。また、第2電流検出器5b3は、第2高電位側スイッチング素子Sup2,Svp2,及びSwp2のそれぞれと、第2電力変換器4bの出力点Pu2,Pv2,Pw2のそれぞれとの間に設けられていてもよい。
【0218】
また、第1電流検出器5a3が第1高電位側スイッチング素子Sup1,Svp1,及びSwp1と直列に接続されており、第2電流検出器5b3が第2低電位側スイッチング素子Sun2,Svn2,及びSwn2と直列に接続されていてもよい。
【0219】
実施の形態5.
図23は、実施の形態5に係る電力変換装置を示す構成図である。図23の電力変換装置には、図1の交流回転機1に代えて、交流回転機1aが接続されている。
【0220】
上記以外の構成については、図1の電力変換装置と同様である。以下、図1の電力変換装置と同様の構成についての説明は省略される。
【0221】
図1の交流回転機1では、図3及び図5に示したように、第1の3相巻線U1、V1、W1及び第2の3相巻線U2,V2,W2は、第1の3相巻線U1,V1,W1と第2の3相巻線U2,V2,W2との位相差が零となるように交流回転機1に設けられていた。図23の交流回転機1aでは、第1の3相巻線U1,V1,W1及び第2の3相巻線U2、V2、W2が、第1の3相巻線U1,V1,W1と第2の3相巻線U2,V2,W2との位相差が30度となるように交流回転機1aに設けられている。
【0222】
図24は、図23の電力変換装置が出力する第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルを示す図である。図24に示すように、実施の形態5に係る電力変換装置において、第1の3相巻線U1,V1,W1と第2の3相巻線U2,V2,W2との位相差は30度である。
【0223】
例えば、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくして交流回転機1aを制御する場合、第1オフセット演算器8aは、第1オフセット電圧Voffset1を式(2)に基づいて演算する。
第1オンオフ信号発生器9aは、第1搬送波信号C1と第1印加電圧とを比較することにより複数の第1オンオフ信号を算出し、算出された複数の第1オンオフ信号を第1電力変換器4aに出力する。
また、第2オフセット演算器8bは、第2オフセット電圧Voffset2を式(4)に基づいて算出する。
第2オンオフ信号発生器9bは、第1搬送波信号C1と第2印加電圧とを比較することにより複数の第2オンオフ信号を算出し、算出された複数の第2オンオフ信号を第2電力変換器4bに出力する。
【0224】
このとき、第1印加電圧の中心値及び第2印加電圧の中心値はいずれも「-α」となるため、零電圧ベクトル区間を最大にすることができる。
零電圧ベクトル区間は、第1電力変換器4a及び第2電力変換器4bがともに零電圧ベクトルを出力する区間である。
そして、これにより、相電流リプルを低減することができる。
【0225】
図25は、第1印加電圧の中心値が0であるときの第1高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。また、図26は、第2印加電圧の中心値が0であるときの第2高電位側スイッチング素子のオンオフタイミングと出力される電圧ベクトルとの関係を示す図である。図25及び図26において、αは「0」に設定されている。
【0226】
第1電力変換器4aから出力される電圧ベクトルの電圧位相と第2電力変換器4bから出力される電圧ベクトルの電圧位相とは、30度異なっている。従って、第1電力変換器4a及び第2電力変換器4bから同時に出力される電圧ベクトルの組合せは、図12及び図13に示された組合せとは異なる。
【0227】
図27は、結合係数kと微分直流二乗和との関係を示す図である。微分直流二乗和は、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差によって決定される。このため、第1電圧ベクトルとしてV1(1)が出力され、第2電圧ベクトルとしてV4(2)が出力されるときの微分直流二乗和は、V1(1)とV3(2)とが出力されるときの微分直流二乗和と等しい。
【0228】
また、V1(1)とV5(2)とが出力されるときの微分直流二乗和は、V1(1)とV2(2)とが出力されるときの微分直流二乗和と等しい。また、V1(1)とV6(2)とが出力されるときの微分直流二乗和は、V1(1)とV1(2)とが出力されるときの微分直流二乗和と等しい。
【0229】
ところで、実施の形態1において説明したように、第1の3相巻線と第2の3相巻線との位相差が0度である場合、第1電圧ベクトルV1(1)に対して、微分直流二乗和が最小となる第2電圧ベクトルの組合せは、V1(2)のみであった。
つまり、微分直流二乗和が最小となる第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せは、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が零となるような組合せのみであった。
【0230】
一方、本実施の形態のように、第1の3相巻線と第2の3相巻線との位相差が30度である場合、第1電圧ベクトルV1(1)に対して、微分直流二乗和が最小となる第2電圧ベクトルの組合せは、V6(2)及びV1(2)の2つが存在する。つまり、微分直流二乗和が最小となる第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せは、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となるような組合せである。
【0231】
従って、第1の3相巻線と第2の3相巻線との位相差を30度とすることにより、微分直流二乗和を最小とする第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの選択肢が増加する。
【0232】
結合係数kが0.32よりも大きい場合、第2電圧ベクトルとして零電圧ベクトルであるV0(2)が出力されるよりも、第2電圧ベクトルとしてV1(2)又はV6(2)が出力される方が、電流変化を小さくすることができる。一方、V1(1)との位相差が90度であるV2(2)又はV1(1)との位相差が150度であるV3(2)が第2電圧ベクトルとして出力される場合、電流変化は極めて大きくなる。
【0233】
従って、相電流リプルを低減するためには、第1電圧ベクトルV1(1)との位相差が30度である第2電圧ベクトルV1(2)又はV6(2)と「V1(1)」とが同タイミングに出力されることが望まれる。
【0234】
以上、第1電圧ベクトルとしてV1(1)が出力される場合についてのみ説明したが、第1電圧ベクトルとしてV2(1)~V6(1)が出力される場合にも、同様の関係が成り立つ。
【0235】
図28は、電圧位相が0度から60度までの領域における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの第1の例を示す図である。例えば、電圧位相が40度の場合、出力される第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せは、以下の通りである。
A:V7(1)とV7(2)、B:V2(1)とV7(2)、C:V2(1)とV2(2)、D:V2(1)とV1(2)、E:V1(1)とV1(2)、F:V1(1)とV0(2)、及びG:V0(1)とV0(2)
【0236】
組合せA及び組合せGでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルは、いずれも零電圧ベクトルである。組合せB及び組合せFでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルのいずれか一方が零電圧ベクトルである。組合せC、D、Eでは、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となる。これにより、相電流の変化を小さくすることができ、相電流リプルを低減することができる。
【0237】
ただし、電圧位相が0度から30度までの領域には、短い区間ではあるもののV2(1)とV6(2)との組合せが存在している。V2(1)とV6(2)との組合せにおける第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差は90度であるため、この区間においては、相電流リプルを低減できない。
【0238】
また、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを180度ずらして交流回転機1aを制御する場合、第1オフセット演算器8aは、第1オフセット電圧Voffset1を式(2)に基づいて演算する。第1オンオフ信号発生器9aは、第1搬送波信号C1と第1印加電圧とを比較することにより複数の第1オンオフ信号を算出し、算出された複数の第1オンオフ信号を第1電力変換器4aに出力する。
【0239】
第2オフセット演算器8bは、第2オフセット電圧Voffset2を式(19)に基づいて演算する。第2オンオフ信号発生器9bは、第2搬送波信号C2と第2印加電圧とを比較することにより複数の第2オンオフ信号を算出し、算出された複数の第2オンオフ信号を第2電力変換器4bに出力する。
【0240】
このとき、第1印加電圧の中心値は「-α」となり、第2印加電圧の中心値は「α」となるため、零電圧ベクトル区間を最大にすることができる。これにより、相電流リプルが低減される。
【0241】
図29は、電圧位相が0度から60度までの領域における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの第2の例を示す図である。例えば、電圧位相が20度である場合、出力される第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せは、以下の通りである。
A:V7(1)とV0(2)、B:V2(1)とV0(2)、C:V2(1)とV1(2)、D:V1(1)とV1(2)、E:V1(1)とV6(2)、F:V1(1)とV7(2)、G:V0(1)とV7(2)
【0242】
組合せA及び組合せGでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルは、いずれも零電圧ベクトルである。組合せB及び組合せFでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルのいずれか一方が零電圧ベクトルである。組合せC、D、Eでは、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となる。これにより、相電流の変化を小さくすることができ、相電流リプルを低減することができる。
【0243】
ただし、電圧位相が30度から60度までの領域には、短い区間ではあるもののV1(1)とV2(2)との組合せが存在している。V1(1)とV2(2)との組合せにおける第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差は90度であるため、この区間においては、相電流リプルを低減できない。
【0244】
そこで、実施の形態5に係る電力変換装置では、電圧位相の全領域において、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となるか又は第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの少なくともいずれか一方が零電圧ベクトルとなるような制御が行われる。
そのために、第1オンオフ信号発生器9a及び第2オンオフ信号発生器9bは、第1参照信号及び第2参照信号の少なくともいずれか一方の信号を、電圧位相に応じて、第1搬送波信号C1及び第2搬送波信号C2のいずれかに切り替える。
【0245】
図30は、電圧位相に応じた搬送波信号の切替の第1の例を示す図である。第1オフセット演算器8aは、電圧位相の全領域において、第1オフセット電圧Voffset1を式(2)に基づいて演算する。第1オンオフ信号発生器9aは、演算された第1オフセット電圧Voffset1と第1搬送波信号C1とを比較することにより、複数の第1オンオフ信号を算出する。
【0246】
電圧位相が60n度から(60n+30)度までの領域では、第2オフセット演算器8bは、第2オフセット電圧Voffset2を式(19)に基づいて演算する。ここで、nは0又は正の整数である。第2オンオフ信号発生器9bは、演算された第2オフセット電圧Voffset2と第2搬送波信号C2とを比較することにより、複数の第2オンオフ信号を算出する。
【0247】
電圧位相が(60n+30)度から60(n+1)度までの領域では、第2オフセット演算器8bは、第2オフセット電圧Voffset2を式(4)に基づいて演算する。第2オンオフ信号発生器9bは、演算された第2オフセット電圧Voffset2と第1搬送波信号C1とを比較することにより、複数の第2オンオフ信号を算出する。
【0248】
図31は、電圧位相が0度から60度までの領域における第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せの第3の例を示す図である。V0,7(2)という記載は、電圧位相が0度から30度までの領域において、図31の左端ではV0(2)、中央ではV7(2)となり、電圧位相が30度から60度までの領域において、図31の左端ではV7(2)、中央ではV0(2)となることを簡略化して表記したものである。例えば、電圧位相が20度である場合、出力される第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せは、以下の通りである。
A:V7(1)とV0(2)、B:V2(1)とV0(2)、C:V2(1)とV1(2)、D:V1(1)とV1(2)、E:V1(1)とV6(2)、F:V1(1)とV7(2)、G:V0(1)とV7(2)
【0249】
組合せA及び組合せGでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルは、いずれも零電圧ベクトルである。組合せB及び組合せFでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルのいずれか一方が零電圧ベクトルである。組合せC、D、Eでは、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となる。これにより、相電流の変化を小さくすることができ、相電流リプルを低減することができる。
【0250】
また、電圧位相が40度である場合、出力される第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの組合せは、以下の通りである。
A:V7(1)とV7(2)、B:V2(1)とV7(2)、C:V2(1)とV2(2)、D:V2(1)とV1(2)、E:V1(1)とV1(2)、F:V1(1)とV0(2)、G:V0(1)とV0(2)
【0251】
組合せA及び組合せGでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルは、いずれも零電圧ベクトルである。組合せB及び組合せFでは、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルのいずれか一方が零電圧ベクトルである。組合せC、D、Eでは、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となる。これにより、相電流の変化を小さくすることができ、相電流リプルを低減することができる。
【0252】
つまり、第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となるか又は第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの少なくともいずれか一方が零電圧ベクトルとなっているため、相電流リプルが低減される。
【0253】
なお、この例においては、電圧位相が60度から360度までの領域においても、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの少なくともいずれか一方を零電圧ベクトルとするか、又は第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差を30度とすることができる。
【0254】
また、この例においては、第1参照信号として、全電圧位相範囲において、第1搬送波信号C1を用い、第2参照信号として、第1搬送波信号C1及び第2搬送波信号C2を30度毎に切り替えていた。しかし、第1参照信号も電圧位相に応じて切り替えられてもよい。
【0255】
図32は、電圧位相に応じた搬送波信号の切替の第2の例を示す図である。また、図33は、電圧位相に応じた搬送波信号の切替の第3の例を示す図である。
【0256】
電圧位相が60n度から(60n+30)度までの領域では、第1参照信号として選択される搬送波信号と第2参照信号として選択される搬送波信号とは異なっている。つまり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とは180度異なっている。ここで、nは0又は正の整数である。従って、第2オンオフ信号発生器9bは、第1参照信号の位相と180度異なる位相の搬送波信号と第2印加電圧とを比較することにより、複数の第2オンオフ信号を算出する。
【0257】
電圧位相が(60n+30)度から60(n+1)度までの領域では、第1参照信号として選択される搬送波信号と第2参照信号として選択される搬送波信号とは等しい。つまり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とは等しい。従って、第2オンオフ信号発生器9bは、第1参照信号の位相と等しい位相の搬送波信号と第2印加電圧とを比較することにより、複数の第2オンオフ信号を算出する。
【0258】
なお、第1オフセット電圧Voffset1及び第2オフセット電圧Voffset2は、選択される搬送波信号に合わせて設定されることは言うまでもない。
【0259】
以下、搬送波信号を選択するための制御方法の一例について述べる。電圧位相が0度から30度までの領域では、第1電力変換器4aは、有効電圧ベクトルとして、V1(1)及びV2(1)を出力し、第2電力変換器4bは、有効電圧ベクトルとして、V6(2)及びV1(2)を出力する。この場合、第1電圧最大相はU1相、第2電圧最大相はU2相、第1電圧最小相はW1相、第2電圧最小相はV2相となる。
【0260】
一方、電圧位相が30度から60度までの領域では、第1電力変換器4aは、有効電圧ベクトルとして、V1(1)及びV2(1)を出力し、第2電力変換器4bは、有効電圧ベクトルとして、V1(2)及びV2(2)を出力する。この場合、第1電圧最大相はU1相、第2電圧最大相はU2相、第1電圧最小相はW1相、第2電圧最小相はW2相となる。
【0261】
従って、第1電圧最大相と第2電圧最大相との位相差、及び第1電圧最小相と第2電圧最小相との位相差が30度である場合に、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが等しくなるように搬送波信号が選択されればよい。また、第1電圧最大相と第2電圧最大相との位相差が30度でない場合、又は第1電圧最小相と第2電圧最小相との位相差が30度でない場合に、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なるように搬送波信号が選択されればよい。
【0262】
このような方法により、第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの少なくともいずれか一方を零電圧ベクトルとするか、又は第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差を30度とすることができる。これにより、相電流の変化を抑制でき、その結果、相電流リプルを低減することができる。
【0263】
以上のように、実施の形態5に係る電力変換装置では、第1の3相巻線の位相と第2の3相巻線の位相とは30度異なっている。制御部6は、以下の2つの条件のいずれかを満たすように、第1参照信号及び第2参照信号の少なくともいずれか一方の信号を、電圧位相に応じて第1搬送波信号及び第2搬送波信号のいずれかに切り替える。
条件1:第1電圧ベクトルと第2電圧ベクトルとの位相差が30度となる。
条件2:第1電圧ベクトル及び第2電圧ベクトルの少なくともいずれか一方が零電圧ベクトルとなる。
【0264】
ここで、第1電圧ベクトルは、複数の第1オンオフ信号に基づいて第1電力変換器4aから出力される電圧ベクトルであり、第2電圧ベクトルは、複数の第2オンオフ信号に基づいて第2電力変換器4bから出力される電圧ベクトルである。また、電圧位相は、第1電圧指令及び第2電圧指令の位相である。また、第1搬送波信号及び第2搬送波信号とは位相が180度異なる。
【0265】
これによれば、電流変化の小さい電圧ベクトルの組合せとすることで、相電流リプルが低減される。
【0266】
また、実施の形態5に係る電力変換装置では、制御部6は、第1電圧最大相と第2電圧最大相との位相差及び第1電圧最小相と第2電圧最小相との位相差が30度である場合、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを等しくする。
【0267】
また、制御部6は、第1電圧最大相と第2電圧最大相との位相差及び第1電圧最小相と第2電圧最小相との位相差のいずれか一方が30度でない場合、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とを180度異ならせる。
【0268】
ここで、第1電圧指令における各相を、電圧指令が大きい順に、第1電圧最大相、第1電圧中間相、第1電圧最小相とし、第2電圧指令における各相を、電圧指令が大きい順に、第2電圧最大相、第2電圧中間相、第2電圧最小相とする。
【0269】
これによれば、電圧指令の大小順に基づいて搬送波信号を決定できる。
【0270】
なお、実施の形態1~5において、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが等しい場合には、第1参照信号及び第2参照信号として同じ搬送波信号が用いられている場合が含まれる。
【0271】
また、第1参照信号及び第2参照信号として、三角波である第1搬送波信号C1又は第2搬送波信号C2が用いられていたが、第1参照信号及び第2参照信号として三角波以外の形状の波が用いられてもよい。三角波以外の形状の波としては、例えば、のこぎり波が挙げられる。
【0272】
また、実施の形態1~5の電力変換装置の機能は、処理回路によって実現される。図34は、実施の形態1~5の電力変換装置の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。第1の例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0273】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0274】
また、図35は、実施の形態1~5の電力変換装置の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。第2の例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0275】
処理回路200では、電力変換装置の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組合せにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、機能を実現する。
【0276】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
【0277】
なお、上述した電力変換装置の機能について、一部の専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0278】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組合せによって、上述した電力変換装置の機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0279】
1,1a 交流回転機、2 直流電源、4a 第1電力変換器、4b 第2電力変換器、5a,5a1,5a2,5a3 第1電流検出器、5b,5b1,5b2,5b3 第2電流検出器、6 制御部、Sup1~Swn1 第1スイッチング素子、Sup1,Svp1,Swp1 第1高電位側スイッチング素子、Sun1,Svn1,Swn1 第1低電位側スイッチング素子、Sup2~Swn2 第2スイッチング素子、Sup2,Svp2,Swp2 第2高電位側スイッチング素子、Sun2,Svn2,Swn2 第2低電位側スイッチング素子、U1,V1,W1 第1の3相巻線、U2,V2,W2 第2の3相巻線。
【要約】
【課題】相電流リプルをより低減させることができる電力変換装置、発電電動機の制御装置、及び電動パワーステアリング装置を得る。
【解決手段】第1オフセット演算器8aは、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍が等しくなるように、第1電圧指令から第1オフセット電圧を減算する。第2オフセット演算器8bは、第1印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値と第2印加電圧における3相に対応する3つの印加電圧の中心値のK倍が等しくなるように、第2電圧指令から第2オフセット電圧を減算する。第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが等しい場合、Kは「1」であり、第1参照信号の位相と第2参照信号の位相とが180度異なる場合、Kは「-1」である。
【選択図】図1
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