(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】点火コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 38/12 20060101AFI20221209BHJP
F02P 15/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01F38/12 F
H01F38/12 E
F02P15/00 303H
(21)【出願番号】P 2021170079
(22)【出願日】2021-10-18
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 修司
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-093759(JP,A)
【文献】特開2016-171098(JP,A)
【文献】特開昭61-107712(JP,A)
【文献】特開平7-288212(JP,A)
【文献】特開平10-134692(JP,A)
【文献】実開昭58-99823(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターコアと、
このセンターコアの外周に配置された一次コイルと、
この一次コイルの外周に配置された二次コイルと、
前記二次コイルに電気的に接続された出力端子とを備えた点火コイルであって、
前記二次コイルは外周側に複数のフランジを備えた筒状の二次ボビンと、この二次ボビンに巻き回された二次導線と、この二次導線に一方の端部が電気的に接続され他方の端部が前記出力端子に電気的に接続された長尺板状の二次リード端子とを有しており、前記二次リード端子は前記フランジの間に
配置されており、前記二次リード端子の前記フランジと対向する面および前記フランジの側面の前記二次リード端子と対向する面の少なくとも一方の面には複数の線状突起が備えられており、前記二次リード端子と前記フランジとは前記線状突起を介して接触していることを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
前記二次ボビンと前記二次リード端子とが対向する位置において、前記二次ボビンおよび前記二次リード端子の少なくとも一方に切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンに代表される内燃機関には、点火プラグに高電圧を印加する点火コイルが備えられている。点火コイルは、四角柱状のセンターコアと、センターコアの外周側に配置された一次コイルと、一次コイルの外周側に配置された二次コイルと、センターコアの両端に配置されたサイドコアとを備えている。点火コイルはこれらの部品で構成されたトランスである。サイドコアは、二次コイルの外側に配置されている。これらの部品はコネクタモジュールおよび出力端子と電気的に接続された後に、コネクタモジュールおよび出力端子と共に絶縁樹脂で固められてケース内に固定される。コネクタモジュールは、車両ハーネスと接続するための接続コネクタを有する。出力端子は、スプリングを介して内燃機関の点火プラグに接続される。
【0003】
一般にセンターコアおよびサイドコアは、積層された電磁鋼板で構成されている。絶縁樹脂としては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。二次コイルは、筒状の二次ボビンと、この二次ボビンに巻き回された二次導線とを備えている。出力端子は、二次導線と電気的に接続されている。点火コイルにおいては、絶縁樹脂で固められてケース内に固定されるときに出力端子と二次導線との接続を確実に行うことが重要である。この課題に対応するために、出力端子側のリード端子と二次導線側のリード端子とをそれぞれ備え、互いに嵌め合わせることができるようにそれぞれのリード端子が屈曲された点火コイルが開示されている。この点火コイルにおいては、二次導線側のリード端子の屈曲部が二次ボビンに圧入されており、組み立てのときにこの二次導線側のリード端子の屈曲部に出力端子側のリード端子の屈曲部を嵌め合わせることで、出力端子と二次導線との電気的な接続を確保している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の点火コイルにおいては出力端子側のリード端子と二次導線側のリード端子との2つのリード端子が必要となるため、部品点数が多く高コストになるという問題がある。また、内燃機関の温度変化は大きく、内燃機関の温度変化の繰り返しで点火コイルのリード端子は熱膨張と熱収縮とを繰り返すことになる。従来の点火コイルにおいては二次導線側のリード端子の屈曲部が二次ボビンに圧入されているため、リード端子の熱膨張と熱収縮との繰り返しによってリード端子が二次ボビンから剥離したり、二次ボビンにクラックが発生したりするという問題がある。
【0006】
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、低コストであると共に、リード端子が二次ボビンから剥離したり、二次ボビンにクラックが発生したりすることを抑制することができる点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の点火コイルは、センターコアと、このセンターコアの外周に配置された一次コイルと、この一次コイルの外周に配置された二次コイルと、二次コイルに電気的に接続された出力端子とを備えている。そして、二次コイルは外周側に複数のフランジを備えた筒状の二次ボビンと、この二次ボビンに巻き回された二次導線と、この二次導線に一方の端部が電気的に接続され他方の端部が出力端子に電気的に接続された長尺板状の二次リード端子とを有しており、二次リード端子はフランジの間に配置されており、二次リード端子のフランジと対向する面およびフランジの側面の二次リード端子と対向する面の少なくとも一方の面には複数の線状突起が備えられており、二次リード端子とフランジとは線状突起を介して接触している。
【発明の効果】
【0008】
本願の点火コイルにおいては、二次コイルが外周側に複数のフランジを備えた筒状の二次ボビンと、この二次ボビンに巻き回された二次導線と、この二次導線に一方の端部が電気的に接続され他方の端部が出力端子に電気的に接続された長尺板状の二次リード端子とを有しており、二次リード端子はフランジの間に配置されており、二次リード端子のフランジと対向する面およびフランジの側面の二次リード端子と対向する面の少なくとも一方の面には複数の線状突起が備えられており、二次リード端子とフランジとは線状突起を介して接触しているので、低コストであると共に、二次リード端子が二次ボビンから剥離したり、二次ボビンにクラックが発生したりすることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る点火コイルの断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る点火コイルの拡大断面図である。
【
図3】実施の形態1における二次リード端子の斜視図である。
【
図4】実施の形態1における二次ボビンの側面図である。
【
図5】実施の形態1における二次ボビンの側面図である。
【
図6】実施の形態1における二次ボビンの側面図である。
【
図7】実施の形態1における二次コイルの側面図である。
【
図8】実施の形態1における二次コイルの底面図である。
【
図9】実施の形態1における二次コイルの拡大図である。
【
図10】実施の形態3における二次コイルの側面図である。
【
図11】実施の形態3における二次コイルの側面図である。
【
図12】実施の形態3における二次コイルの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る点火コイルについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る点火コイルの断面図である。本実施の形態の点火コイル1は、コネクタモジュール2と、四角柱状のセンターコア3と、このセンターコア3の外周に配置された一次コイル4と、この一次コイル4の外周に配置された二次コイル5と、センターコア3の両端に配置されたサイドコア6と、センターコア3の一方の端部に配置されたマグネット7と、出力端子8とを備えている。サイドコア6の外側にはコアカバー9が配置されている。コネクタモジュール2は、イグナイター21とコネクタ端子22とを備えている。一次コイル4は、筒状の一次ボビン41と、この一次ボビン41を介してセンターコア3の周りに巻き回された一次導線42とで構成されている。二次コイル5は、筒状の二次ボビン51と、この二次ボビン51を介して一次コイル4の周りに巻き回された二次導線52と、この二次導線52と出力端子8とを電気的に接続する二次リード端子53とで構成されている。二次ボビン51は外周側に複数のフランジを備えており、二次導線52はこのフランジの間で二次ボビン51に巻き回されている。これらの構成部品は、ケース10の内部に絶縁樹脂11で固定されている。ただし、コネクタモジュールのコネクタ端子22と出力端子8の一方の端部とはケース10の外部に露出されている。
【0012】
センターコア3およびサイドコア6は、例えば積層された電磁鋼板で構成されている。一次導線42および二次導線52は、例えば銅線で構成されている。一次ボビン41および二次ボビン51は、樹脂で構成されている。二次リード端子53は、例えば黄銅、鉄、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属で構成されている。マグネット7は、一次コイル4の通電によって発生する磁束の方向と逆方向に着磁されている。サイドコア6は、センターコア3およびマグネット7と共同して閉磁路を形成するようにO字型またはC字型の形状を有している。コアカバー9は、サイドコア6の少なくとも一部を覆うように構成されており、サイドコア6とインサート成形されるかまたはサイドコア6とは別部品として成形される。イグナイター21は、一次コイル4への通電および遮断を行うスイッチング制御回路を備えている。コネクタ端子22は、エンジンハーネスに締結される。絶縁樹脂11は、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂である。
【0013】
図2は、
図1のAで示す部分の拡大断面図である。二次ボビン51は、外周側に突出した複数のフランジ511を備えている。二次リード端子53は、板状の部材で構成されている。フランジ511同士の間隔は、板状の二次リード端子53の厚さよりも大きく設定されている。そして、二次リード端子53は、フランジ511の間にフランジ511の側面に面接触せずに配置されている。
【0014】
図3は、本実施の形態における二次リード端子の斜視図である。
図3に示すように、二次リード端子53は長尺板状の部材でプレス加工によって一体形成されている。二次リード端子53の一方の端部は、出力端子8と電気的に接続される伝達部531である。伝達部531は、出力端子8が挿入されて電気的に接続される構造となっている。二次リード端子53の他方の端部は、二次導線52と電気的に接続される接続部532である。接続部532は、二次導線52が巻き付けられる構造となっている。伝達部531と接続部532とは、連結部533で連結されている。
【0015】
図4は、本実施の形態における二次ボビンの側面図である。二次ボビン51には外周側に複数のフランジ511が設けられている。フランジ511同士の間隔は、板状の二次リード端子53の厚さよりも大きく設定されている。
図4において、二次ボビン51の最も右側のフランジ511とその左側のフランジ511との間に二次リード端子53の連結部533が配置される。それ以外のフランジ511同士の間には二次導線が巻かれる。
【0016】
図5は、
図4の一点破線の位置において矢印Bの方向から見た二次ボビンの側面図である。
図6は、
図4の一点破線の位置において矢印Cの方向から見た二次ボビンの側面図である。
図4の一点破線の示す位置は、二次リード端子53の連結部533がフランジ511の間に配置される位置である。
図5および
図6に示すように、二次リード端子53と対向するフランジ511の面には、断面が三角形のリブ512が形成されている。フランジ511の間に配置される二次リード端子53の連結部533は、このリブ512で挟み込まれて固定される。なお、樹脂で構成された二次ボビンは、通常金型成形で製造される。そのため、リブの長手方向は、金型の型割り方向と平行であることが好ましい。
【0017】
図7は、本実施の形態における二次コイル側面図である。
図8は、二次コイルの底面図である。
図7および
図8に示すように、二次コイル5においては、二次ボビン51のフランジ511の間に二次導線52が巻かれている。二次リード端子53は、二次ボビン51の最も右側のフランジ511とその左側のフランジ511との間にその連結部533が配置される。二次リード端子53の接続部532には二次導線52の端部が巻き付けられている。
図9は、
図8のDで示す部分の拡大断面図である。
図9に示すように、二次リード端子53の連結部533がフランジ511の間に配置されており、リブ512で挟まれている。リブ512は断面が三角形である。そのため、二次リード端子53の連結部533は、フランジ511と線接触しているが、フランジ511とは面接触していない。このことから、リブ512は線状突起と言い換えることもできる。
【0018】
このように構成された点火コイルにおいては、二次リード端子53がフランジ511の間にフランジ511の側面に面接触せずに配置されている。そのため、本実施の形態の点火コイルは、内燃機関の温度変化の繰り返しで二次リード端子53が熱膨張と熱収縮とを繰り返しても、二次リード端子53は二次ボビン51から離れているので、二次リード端子53が二次ボビン51から剥離したり、二次ボビン51にクラックが発生したりすることを抑制することができる。
【0019】
なお、本実施の形態においては、フランジの側面に断面が三角形のリブが形成されている。リブに代わる突起としては、二次リード端子に線接触する線状突起であればどのような形状の突起でもよい。また、本実施の形態においては、二次ボビンのフランジの側面にリブが形成されている。これに替えて、二次リード端子のフランジと対向する面にリブが形成されていてもよい。さらに、本実施の形態の点火コイルにおいて、出力端子として雑音防止抵抗素子を用いてもよい。
【0020】
実施の形態2.
実施の形態1の点火コイルにおいては、二次ボビンのフランジの側面に線状突起が形成されており、二次リード端子をフランジに線接触させることで二次リード端子が固定されていた。実施の形態2の点火コイルにおいては、二次リード端子をフランジに点接触させることで二次リード端子が固定されるものである。
【0021】
本実施の形態の点火コイルの構成は、実施の形態1の点火コイルの構成と同様である。本実施の形態の点火コイルは、実施の形態1の二次ボビンにおいて、フランジの側面に形成されたリブの替わりに円錐の突起が形成されている。そして、二次リード端子は、その連結部がフランジの間に配置されて円錐の突起で挟まれて固定される。そのため、二次リード端子の連結部は、フランジと点接触しているが、フランジとは面接触していない。このことから、円錐の突起は針状突起と言い換えることもできる。
【0022】
このように構成された点火コイルにおいては、二次リード端子がフランジの間にフランジの側面に面接触せずに配置されている。そのため、本実施の形態の点火コイルは、内燃機関の温度変化の繰り返しで二次リード端子が熱膨張と熱収縮とを繰り返しても、二次リード端子が二次ボビン51から剥離したり、二次ボビン51にクラックが発生したりすることを抑制することができる。
【0023】
なお、本実施の形態においては、フランジの側面に円錐の突起が形成されている。円錐の突起に代わる突起としては、二次リード端子に点接触する針状突起であればどのような形状の突起でもよい。また、本実施の形態においては、二次ボビンのフランジの側面に針状突起が形成されている。これに替えて、二次リード端子のフランジと対向する面に針状突起が形成されていてもよい。
【0024】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3の点火コイルにおける二次コイルの側面図である。また、
図11は、
図10の一点破線の位置において矢印Eの方向から見た二次コイルの側面図である。さらに、
図12は、
図11のFで示す部分の拡大断面図である。
【0025】
本実施の形態の点火コイルの構成は、実施の形態1の点火コイルの構成と同様である。本実施の形態の点火コイルは、実施の形態1の点火コイルにおいて、二次ボビンの本体部と二次リード端子との間に間隔を設けたものである。本実施の形態の点火コイルにおいては、
図12に示すように、二次ボビン51の本体部と二次リード端子53とが対向する位置において、二次ボビン51側に切り欠き部513が形成されている。また同じ位置において、二次リード端子53側にも切り欠き部534が形成されている。
【0026】
このように構成された点火コイルは、二次コイルが絶縁樹脂と共にケース内に固定されるときに、二次ボビンと二次リード端子との間に流動性を有する絶縁樹脂の充填経路が確保される。そのため、点火コイル製造時に流動性を有する絶縁樹脂が二次ボビンと二次リード端子との間に確実に充填される。その結果、硬化後の絶縁樹脂中にボイドなどが残らず、点火コイルの耐電圧特性が向上する。とくに
図12に示すように、リブ512が形成されている位置に切り欠き部を設けることで、リブ512の間にも確実に絶縁樹脂の充填経路を確保することができる。
【0027】
なお、絶縁樹脂の充填経路を確保するためには、二次ボビン51側の切り欠き部513および二次リード端子53側の切り欠き部534のどちらか一方が形成されていればよい。
【0028】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0029】
1 点火コイル、2 コネクタモジュール、3 センターコア、4 一次コイル、5 二次コイル、6 サイドコア、7 マグネット、8 出力端子、9 コアカバー、10 ケース、21 イグナイター、22 コネクタ端子、41 一次ボビン、42 一次導線、51 二次ボビン、52 二次導線、53 二次リード端子、511 フランジ、512 リブ、513 切り欠き部、531 伝達部、532 接続部、533 連結部、534 切り欠き部。
【要約】
【課題】低コストであると共に、リード端子が二次ボビンから剥離したり、二次ボビンにクラックが発生したりすることを抑制することができる点火コイルを提供する。
【解決手段】センターコア3と、このセンターコアの外周に配置された一次コイル4と、この一次コイルの外周に配置された二次コイル5と、二次コイルに電気的に接続された出力端子8とを備えた点火コイル1であって、二次コイルは外周側に複数のフランジを備えた筒状の二次ボビン51と、この二次ボビンに巻き回された二次導線52と、この二次導線に一方の端部が電気的に接続され他方の端部が出力端子に電気的に接続された長尺板状の二次リード端子53とを有しており、二次リード端子はフランジの間にフランジの側面と面接触せずに配置されている。
【選択図】
図1