(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】棒金開封装置
(51)【国際特許分類】
G07D 9/00 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
G07D9/00 481Z
G07D9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021178515
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2017205766の分割
【原出願日】2017-10-25
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】井出 直朗
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-5697(JP,A)
【文献】実開昭60-154211(JP,U)
【文献】米国特許第3781987(US,A)
【文献】米国特許第4333234(US,A)
【文献】米国特許第4382330(US,A)
【文献】米国特許第4858805(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-13/00
B65B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコインを棒状に包装した棒金を挿入する開口部と、
前記棒金を、当該棒金に応じた深さまで挿入可能であり
、前記棒金
を挿入した場合に、当該棒金と当接しながら、前記棒金の太さに応じた位置まで移動する可動壁部を備える穴部と、
前記穴部に形成されて、前記棒金の挿入方向以外の方向への移動を制限する当接部と、
前記開口部の近傍に形成されて、前記穴部に挿入されていない前記棒金の一端側に対する、当該棒金の方向と略直交する方向に対する押圧力を受ける受圧部と、
を備える棒金開封装置。
【請求項2】
前記穴部は、
奥側ほど、面積がステップ状に小さくなる形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒金開封装置。
【請求項3】
前記穴部は、
奥側ほど、面積が錐体状に小さくなる形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒金開封装置。
【請求項4】
前記開口部は、
前記棒金を側面から前記穴部に挿入可能に形成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の棒金開封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、棒金開封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小売店においては、釣銭の補充用として、同一金種の複数の硬貨を棒状(円柱状)に包装した棒金を用いている。棒金は、樹脂状のフィルムや紙等で包装されているため、硬貨を使用する際には、包装を破って開封する必要がある。そのため、例えば、カッターを備えた穴部に棒金を挿入して、カッターでフィルムや紙等を切り裂くことで棒金を開封する例が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような棒金開封装置にあっては、カッターの切れ味を維持するために、定期的に刃を交換する必要があった。また、カッターを用いるため、誤って身体が接触する可能性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、部品の交換が必要なく、なおかつ、棒金を容易に開封することができる棒金開封装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の棒金開封装置は、開口部と、穴部と、当接部と、受圧部とを備える。開口部は、複数のコインを棒状に包装した棒金を挿入する。穴部は、棒金を、当該棒金に応じた深さまで挿入可能であり、棒金を挿入した場合に、当該棒金と当接しながら、棒金の太さに応じた位置まで移動する可動壁部を備える。当接部は、穴部に形成されて、棒金の挿入方向以外の方向への移動を制限する。受圧部は、開口部の近傍に形成されて、穴部に挿入されていない棒金の一端側に対する、棒金の方向と略直交する方向に対する押圧力を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1(a)は、第1の実施形態の棒金開封装置の外観斜視図である。
図1(b)は、棒金開封装置に棒金を挿入した状態を示す外観斜視図である。
図1(c)は、棒金開封装置で棒金を開封した状態を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の棒金開封装置の一部を、穴部の略中心で切ったXZ断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す棒金開封装置の穴部の内部構造を示すYZ断面図であり、
図3(a)は、A-A断面図である。
図3(b)は、B-B断面図である。
図3(c)は、C-C断面図である。
【
図4】
図4は、棒金が開封した状態を示す、棒金開封装置のXZ断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の棒金開封装置の穴部の変形例を示すXZ断面図およびYZ断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第2の実施形態の棒金開封装置の外観斜視図である。
図6(b)は、棒金開封装置に棒金を挿入した状態を示す外観斜視図である。
図6(c)は、棒金開封装置で棒金を開封した状態を示す外観斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、第3の実施形態の棒金開封装置の外観斜視図である。
図7(b)は、棒金開封装置のXZ断面図である。
図7(c)は、棒金押さえコマの外観斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、第3の実施形態の棒金開封装置のYZ断面図である。
図8(b)は、第3の実施形態の棒金開封装置のXY断面図である。
【
図9】
図9(a)は、第3の実施形態の棒金開封装置に対する、細い棒金の挿入状態を示すXY断面図である。
図9(b)は、第3の実施形態の棒金開封装置に対する、太い棒金の挿入状態を示すXY断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、棒金開封装置の概略構成について説明する。
図1(a)は、棒金開封装置10の外観斜視図である。
図1(b)は、棒金開封装置10に棒金90を挿入した状態を示す外観斜視図である。
図1(c)は、棒金開封装置10で棒金90を開封した状態を示す外観斜視図である。
【0008】
(棒金開封装置の機能の説明)
図1(a)に示すように、棒金開封装置10は、略直方体状の筐体20に、開口部22を有する穴部24を備えている。筐体20は、筐体20aと筐体20bとを、接着やねじ止め等によって接合して形成されている。開口部22は、筐体20aと筐体20bとの接合部に形成されて、棒金90が挿入可能な形状(例えば、略円形状)を有する。穴部24は、開口部22から筐体20の内部に向かって形成されて、棒金90を、当該棒金90の略半分の長さ相当の位置まで挿入可能とされている。穴部24の具体的な内部構造については後述する。なお、以後の説明のため、棒金開封装置10の穴部24の延びる方向をX軸として、棒金開封装置10の幅方向をY軸として、棒金開封装置10の高さ方向をZ軸とするXYZ座標系を設定する。
【0009】
図1(b)に示すように、筐体20の開口部22に続く穴部24には、棒金90を挿入することができる。棒金90は、同一金種の複数の硬貨93を円柱状に積層して、フィルム92で包装したものである。ここで、硬貨93はコインの一例である。なお、棒金90は、一般に、通貨としての硬貨やゲーム機等で使用されるメダル等を棒状に包装したものである。本実施形態では、例えば50枚の硬貨93が積層された棒金90を例にあげて説明する。
【0010】
棒金90を穴部24に挿入した状態で、棒金90の穴部24に挿入されていない一端側に、
図1(b)に示す矢印Fの方向、すなわち、棒金90の方向と略直交する方向(Z軸負方向)に押圧力を加える。すると、
図1(c)に示すように、棒金90を包装したフィルム92が、穴部24の開口部22の位置で開封される。詳しい開封のメカニズムについては後述する。
【0011】
棒金90が開封されると、棒金90を包装したフィルム92のうち、Z軸負側の位置のフィルム92は、部分的に切れずに残る(残存フィルム部94)。こうして、棒金90は、筐体20の外側に垂れ下がった棒金片90xと、穴部24の内部に残った棒金片90yとに分離する。なお、筐体20は、棒金片90xが突き当たる突当部26を備えている。突当部26は、開口部22の周縁がなす面と略面一になるように形成されて、棒金片90xの側面が突き当たる。
図1(c)の例では、開口部22の周縁から連続する、筐体20の外周面が突当部26となる。なお、フィルム92を確実に開封するために、開封後の棒金片90xと棒金片90yとは、略90度の角度をなすことが望ましい。すなわち、棒金90の挿入方向と、突当部26が形成する面とは、略90度の角度を有するのが望ましい。
【0012】
棒金90を開封した操作者は、棒金片90xを把持して穴部24から引き抜くことによって、棒金片90xと棒金片90yとを、筐体20から取り出す。操作者は、続いて、棒金片90xと棒金片90yとを引っ張ることによって、残存フィルム部94の位置から、棒金片90xと棒金片90yとをそれぞれ開封して硬貨を取り出す。
【0013】
(棒金開封装置の内部構造の説明)
次に、
図2,
図3を用いて、棒金開封装置10の内部構造について説明する。
図2は、棒金開封装置10の一部を、穴部24の略中心で切ったXZ断面図である。
【0014】
穴部24は、開口部22に続いて形成されて、棒金90aを、当該棒金90aに応じた深さまで挿入可能であり、且つ棒金90aの太さに応じた径を有する。
図4に示す棒金開封装置10では、穴部24は、略円形状に形成されている。そして、穴部24の内部には、第1の底部28aと、第2の底部28bと、第3の底部28cとが、それぞれ階段状(ステップ状)に形成されている。第1の底部28aは、開口部22から深さD1の位置に形成されている。第2の底部28bは、開口部22から深さD2の位置に形成されている。そして、第3の底部28cは、開口部22から深さD3の位置に形成されている。
【0015】
第1の底部28aの直径d1は、例えば、d1=27mmに設定されている。第2の底部28bの直径d2は、例えば、d2=24mmに設定されている。そして、第3の底部28cの直径d3は、例えば、d3=21.5mmに設定されている。すなわち、直径d3以内の棒金90は、第3の底部28cの位置まで挿入可能である。また、直径d3から直径d2(d3<d2)の棒金90は、第2の底部28bの位置まで挿入可能である。そして、直径d2から直径d1(d2<d1)の棒金90は、第1の底部28aの位置まで挿入可能である。
【0016】
日本国内で使用されている硬貨には、1円硬貨(直径20.0mm)、5円硬貨(直径22.0mm)、10円硬貨(直径23.5mm)、50円硬貨(直径21.0mm)、100円硬貨(直径22.6mm)、500円硬貨(直径26.5mm)の6種類がある。そして、径が小さい(細い)1円硬貨と50円硬貨は、第3の底部28cの位置まで挿入可能である。また、径が中間の5円硬貨と10円硬貨と100円硬貨は、第2の底部28bの位置まで挿入可能である。そして、径が大きい(太い)500円硬貨は、第1の底部28aの位置まで挿入可能である。以下、説明の便宜上、1円硬貨の棒金90と50円硬貨の棒金90を、棒金90aと呼ぶ。また、5円硬貨の棒金90と10円硬貨の棒金90と100円硬貨の棒金90を、棒金90b(不図示)と呼ぶ。そして、500円硬貨の棒金90を棒金90c(不図示)と呼ぶことにする。なお、
図2は、棒金90aを、第3の底部28cの位置まで挿入した例を示している。
【0017】
第1の底部28aの深さD1,第2の底部28bの深さD2,第3の底部28cの深さD3は、それぞれ、棒金90を穴部24の奥まで挿入した際に、穴部24に挿入された側の長さと、穴部24に挿入されていない部分の長さとが略等しくなるように設定するのが望ましい。例えば、D1=30mm,D2=40mm,D3=50mm程度に設定する。穴部24の深さD1,D2,D3をこのように設定することによって、棒金90のうち、穴部24に挿入されていない部分の長さが、棒金90の長さの略半分となるため、棒金90を開封する際に、筐体20から突出した部分、すなわち、棒金90の穴部24に挿入されていない側に対して、押圧力を加えやすくなる。
【0018】
なお、開口部22の近傍には、開口部22の面積よりもやや狭い開口面積を有する折曲部材30が設置されている。折曲部材30は、例えば鉄等の金属で形成された板状部材である。
【0019】
図2に示す状態において、穴部24に挿入した棒金90aのうち、穴部24に挿入されていない側の端部に、棒金90aの方向と略直交する矢印F方向の押圧力を加えると、棒金90aは、第3の底部28cの近傍において、穴部24の壁面と当接部27において当接する。すなわち、当接部27は、穴部24に形成されて、棒金90aの挿入方向以外の方向への移動を制限する。さらに、棒金90aは、
図2に示すように、折曲部材30と、受圧部32において当接した状態となる。すなわち、受圧部32は、開口部22の近傍に形成されて、穴部24に挿入されていない棒金90aの一端側に対する、棒金90aの方向と略直交する方向に対する押圧力を受ける。なお、受圧部32の形状は、折曲部材30の形状によって定まる。すなわち、受圧部32は、棒金90aの外側面と1点で当接させてもよいし、棒金90aの外側面がなす円弧の一部と曲線状に当接させてもよい。
【0020】
次に、
図3を用いて、穴部24の断面形状について説明する。
図3は、
図2に示す棒金開封装置10の穴部24の内部構造を示すYZ断面図であり、
図3(a)は、A-A断面図である。
図3(b)は、B-B断面図である。
図3(c)は、C-C断面図である。
【0021】
図3(a)に示すように、穴部24は、第1の底部28aと、第2の底部28bと、第3の底部28cとがステップ状に形成されている。そして、第1の底部28aは、直径d1の穴部24のうち、周縁部の幅(d1-d2)/2の領域である。そして、棒金90c(不図示)は、この第1の底部28aの位置まで挿入することができる。また、第1の底部28aの内側の領域は略円形状をなしており、その領域は、棒金90a(
図2参照)と棒金90b(不図示)とが通過可能な面積を有する。
【0022】
また、
図3(b)に示すように、第2の底部28bは、直径d2の穴部24のうち、周縁部の幅(d2-d3)/2の領域である。そして、棒金90b(不図示)は、この第2の底部28bの位置まで挿入することができる。また、第2の底部28bの内側の領域は略円形状をなしており、その領域は、棒金90a(
図2参照)が通過可能な面積を有する。
【0023】
そして、
図3(c)に示すように、第3の底部28cは、直径d3の穴部24の領域であり、略円形状をなしている。そして、棒金90a(
図2参照)は、この第3の底部28cの位置まで挿入することができる。
【0024】
(棒金開封装置の作用の説明)
次に、
図4を用いて、棒金開封装置10の作用について説明する。
図4は、棒金90aが開封した状態を示す、棒金開封装置10のXZ断面図である。
【0025】
棒金90aに、
図2で示した矢印Fの方向の押圧力をさらに加えると、
図4に示すように、棒金90aは、当接部27および受圧部32によって移動を制限されるため、矢印F方向(
図2参照)に加えられた押圧力は、棒金90aが受圧部32に当接する点の反対側の点である、点32a(
図2参照)に集中する。そして、さらに押圧力を加えると、棒金90aを包装しているフィルム92の引張力が、棒金90aをZ軸負側に移動させる力に耐えきれなくなり、点32aにおいてフィルム92が破断する。
【0026】
すなわち、穴部24に挿入されていない棒金90aの一端側に、当該棒金90aの方向と略直交する方向に対する押圧力を加えると、押圧力を加えた点が力点として作用する。そして、棒金90aのうち、当接部27において穴部24と当接した点が支点として作用する。さらに、受圧部32において折曲部材30と当接した点が作用点として作用する。これによって、棒金90aに当該棒金90aを折り曲げる方向の力を作用させることができる。点32aにおけるフィルム92の破断は、棒金90aの方向と直交する方向(略Z軸負方向)に伝わるため、フィルム92はZ軸に沿って破断する。そして、棒金90aの側面は折れ曲がって、筐体20の外面、すなわち突当部26に突き当たる位置まで移動する。
【0027】
このようにして、棒金90aを、折曲部材30の位置で開封することができる。そして、フィルム92の破断は、棒金片90xが突当部26に突き当たった際に停止するため、棒金片90xと棒金片90yとは、破断せずに残った残存フィルム部94によって接続された状態となる。なお、筐体20が、棒金90aの折り曲げに耐える十分な強度を有している場合には、折曲部材30は設置しなくてもよい。
【0028】
なお、棒金90aに加える押圧力の方向は、常に一定であるとは限らない。そして、押圧力の方向が変わった場合には、前記した当接部27の位置が、穴部24の内壁内で、押圧力の方向に応じた位置に変化する。そして、当接部27の位置の変化に伴って、受圧部32の位置も変化する。
【0029】
また、棒金90aが挿入される深さは常に一定であるとは限らない。棒金90aが挿入される深さが変化すると、それに伴って、当接部27の位置が、穴部24の内壁内で変化する。そして、当接部27の位置の変化に伴って、受圧部32の位置も変化する。
【0030】
なお、棒金90aに対して、押圧力を有効に伝達して、棒金90aを容易に開封するためには、棒金90aの先端が当接して形成された当接部27の位置は、棒金90aが開封されるまでの間、滑りの発生等によって移動しないことが望ましい。そのため、穴部24の内壁、特に、当接部27が形成される可能性がある領域は、例えば、梨地仕上げにする等して滑り止め効果を持たせておくのが望ましい。
【0031】
以上、棒金90aを開封する場合を例にあげて説明したが、棒金90b,90c(不図示)についても、開封のメカニズムは同様である。
【0032】
(実施形態の変形例の説明)
以上説明した実施形態では、穴部24は、奥側(X軸負方向側)ほど、断面積がステップ状に小さくなる形態としたが、穴部24の形態は、これに限定されるものではない。
【0033】
図5は、棒金開封装置10の穴部24の変形例を示すXZ断面図およびYZ断面図である。特に、
図5(a)は、実施形態で説明した穴部24に対して、Z軸負方向側の内壁である内壁下部34の段差をなくした穴部24aを形成した例である。また、
図5(b)は、穴部24aに対して、内壁上部36aにリブ状の底部38a,38bを形成して、穴部24bとした例である。そして、
図5(c)は、穴部24aに対して、Z軸正方向側の内壁である内壁上部36bを、奥側ほど、断面積が錐体状に小さくなる穴部24cとした例である。
【0034】
図5(a)の穴部24aによると、
図5(a)のXZ断面図を切断線D-Dで切ったD-D断面図(YZ断面図)に示すように、内壁下部34には段差がない。したがって、開口部22から棒金90を挿入した際に、棒金90を、内壁下部34に当接させながら穴部24aの奥に挿入することができる。そのため、棒金90を挿入しやすくなる。
【0035】
図5(b)の穴部24bによると、内壁下部34の段差がないため、開口部22から棒金90を挿入した際に、棒金90を挿入しやすくなる。さらに、穴部24bによると、内壁上部36aにリブ状の底部38a,38bを形成したため、前記した穴部24と比べて、筐体20の軽量化を図ることができる。
【0036】
図5(c)の穴部24cによると、穴部24cの断面積が、奥側ほど錐体状に小さくなるため、開口部22から棒金90を挿入した際に、棒金90を内壁上部36bまたは内壁下部34に当接させながら穴部24cの奥まで挿入することができる。したがって、棒金90を、より一層挿入しやすくなる。
【0037】
なお、棒金開封装置10は、
図1に示した形態で製造して、店舗のPOS端末等の近傍に載置してもよいし、棒金開封装置10を、POS端末や、テープカッターや、ドロワ装置や、レジ台等に内蔵した構成としてもよい。
【0038】
以上説明したように、棒金開封装置10によれば、開口部22から穴部24に挿入した棒金90の、穴部24に挿入されていない一端側に、棒金90の方向と略直交する方向に押圧力を加えることによって、押圧力の方向に応じた穴部24の位置に、棒金90の先端が当接して、棒金90の挿入方向以外の方向への移動を制限する当接部27が形成される。そして、開口部22の近傍の、棒金90の一端側に対する押圧力の方向と当接部27の位置とに応じた位置に、押圧力を受ける受圧部32が形成される。形成された当接部27は支点として作用して、加えられた押圧力に応じた力を、作用点である受圧部32に作用させることによって、棒金90を包装するフィルム92を引き裂く。したがって、棒金90を容易に開封することができる。また、棒金開封装置10は、カッター等の、交換が必要な部品を用いないため、部品交換を行う必要がない。
【0039】
また、棒金開封装置10によれば、穴部24は、奥側ほど、断面積がステップ状に小さくなる形状を有する。したがって、太さの異なる棒金90(90a,90b,90c)を穴部24に挿入した場合に、当該棒金90を、太さに応じた位置まで確実に挿入して、当接部27を形成することができる。
【0040】
そして、棒金開封装置10によれば、穴部24cは、奥側ほど、断面積が錐体状に小さくなる形状を有する。したがって、太さの異なる棒金90(90a,90b,90c)を穴部24cに挿入した場合に、棒金90を、穴部24cの壁面に当接させながら、容易に挿入することができる。なお、
図5(c)において、内壁上部36bと内壁下部34とを入れ替えて、内壁上部をX軸に平行な形状として、内壁下部を、X軸正方向側が低い傾斜面としてもよい。このような形状の穴部24cを形成した場合、穴部24cに残った棒金片90y(
図4参照)が、X軸正方向側、すなわち開口部22側に滑り落ちるようになるため、開封後の棒金片90yを取り出し易くすることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図6(a)は、第2の実施形態の棒金開封装置10aの外観斜視図である。
図6(b)は、棒金開封装置10aに棒金90を挿入した状態を示す外観斜視図である。
図6(c)は、棒金開封装置10aで棒金90を開封した状態を示す外観斜視図である。
【0042】
図6(a)に示すように、棒金開封装置10aは、筐体21に、開口部22aと開口部22aに続く穴部25を備えている。開口部22aは、筐体21のX軸正方向側に加えて、筐体21のY軸正方向側にも開口を有するように形成されている。そして、開口部22aは、棒金90を、X軸正方向側のみならず、棒金90の側面の側、すなわちY軸正方向側からも穴部25に挿入可能とする。
【0043】
穴部25の内部形状は、第1の実施形態で説明した穴部24と同様である。すなわち、太さの異なる棒金90が、それぞれ棒金90に応じた深さまで挿入可能とされている。なお、開口部22aのX軸正方向側端部には、折曲部材30aが設置されている。折曲部材30aは、開口部22aの形状に合わせて、U字形状とされている。なお、穴部25の内部形状は、
図5に示した形状としてもよい。
【0044】
穴部25には、例えば
図6(b)に示すように、棒金90が挿入される。挿入された棒金90に、第1の実施形態と同様に、矢印Fの方向から押圧力を加えることによって、棒金開封装置10aには、
図6に不図示の当接部27と受圧部32とが形成される。そして、棒金90は、
図6(c)に示すように開封される。開封された棒金90は、第1の実施形態と同様に、棒金片90xと、棒金片90yとに分割される。そして、棒金片90xと棒金片90yとは、残存フィルム部94によって接続された状態となる。
【0045】
開封された棒金90は、開口部22aを通して取り出される。その際、棒金90は、X軸正方向側から取り出してもよいし、Y軸正方向側から取り出してもよい。なお、
図6(a)では、穴部25は、Y軸正方向側に形成した開口からY軸に沿って延びる方向(水平方向)に形成したが、これは、Y軸負方向側ほど低くなるように傾斜を付けて形成してもよい。これにより、穴部25に挿入した棒金90は、傾斜に沿ってY軸負方向側に滑り落ちるため、挿入した棒金90が、Y軸正方向側の開口からこぼれ落ちにくくなる。また、穴部25のうち、筐体21のX軸正方向側の開口に続く面を、X軸正方向側ほど低くなる傾斜面としてもよい。この場合、先に説明したように、穴部25に残った棒金片90yが、X軸正方向側に滑り落ちるようになるため、開封後の棒金片90yを取り出し易くすることができる。
【0046】
以上説明したように、棒金開封装置10aによれば、開口部22aは、棒金90を側面からでも穴部25に挿入可能に形成される。したがって、棒金90の挿入がより一層容易になる。さらに、棒金開封装置10aによれば、穴部25の内部に溜まったフィルム92の切れ端や、穴部25の内部に溜まった埃等を容易に清掃することができる。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図7(a)は、第3の実施形態の棒金開封装置10bの外観斜視図である。
図7(b)は、棒金開封装置10bのXZ断面図である。
図7(c)は、棒金押さえコマ40aの外観斜視図である。
【0048】
図7(a)に示すように、棒金開封装置10bは、略直方体状の筐体23に、開口部22を有する穴部44を備えている。筐体23は、筐体23aと筐体23bとを、接着やねじ止め等によって接合して形成されている。開口部22は、筐体23aと筐体23bとの接合部に形成されて、棒金90が挿入可能な形状(例えば、略円形状)を有する。穴部44は、開口部22から筐体23の内部に向かって形成されて、棒金90(不図示)を、当該棒金90に応じた深さ、例えば、当該棒金90の略半分の長さ相当の位置まで挿入可能とされる。穴部44の具体的な内部構造については後述する。なお、以後の説明のため、棒金開封装置10bの穴部44の延びる方向をX軸として、棒金開封装置10bの幅方向をY軸として、棒金開封装置10bの高さ方向をZ軸とするXYZ座標系を設定する。
【0049】
図7(b)に示すように、穴部44の内部には、筐体23a側に、棒金押さえコマ40aが備えられる。また、筐体23b側には、棒金押さえコマ40b(
図8参照)が備えられる。棒金押さえコマ40aと棒金押さえコマ40bとは同じ形状を有して、互いに向かい合って設置される。
【0050】
棒金押さえコマ40aは、
図7(c)に示すように内壁43aを備える。内壁43aは、X軸正側からX軸負側に向けて、径が徐々に小さくなる凹面の形状を有する。内壁43aの形状は、前記した穴部24c(
図5(c)参照)の形状と同じであり、挿入された棒金90を、当該棒金90の太さに応じた位置までガイドする。なお、筐体23bの内部に備えられる棒金押さえコマ40b(
図8(a)参照)も、同じ形状の内壁43b(
図8(a)参照)を備える。
【0051】
棒金押さえコマ40aのZ軸方向上下の位置には、摺動部41aと摺動部42aが形成されている。摺動部41aと摺動部42aとは、それぞれ、筐体23aの内部に形成された溝部29a,31aに嵌め込まれる。摺動部41a,42aは、筐体23aの内部で、棒金押さえコマ40aをY軸方向に摺動させた際のガイド部材として機能する。
【0052】
なお、穴部44の最深位置には、底面48aが形成されている。また、開口部22の近傍には、第1の実施形態の棒金開封装置10と同様に、折曲部材30が備えられる。
【0053】
穴部44には、開口部22から棒金90が挿入される。そして、挿入された棒金90の先端側は、底面48aの位置まで挿入される。このとき、穴部44に挿入されていない棒金90の一端側に押圧力を加えると、穴部44に挿入された棒金90の先端側は、穴部44の内壁に当接して、当接部27(
図4参照)を形成する。そして、このとき、折曲部材30の端部には、棒金90を開封する際の受圧部32(
図4参照)が形成される。
【0054】
次に、
図8を用いて、穴部44の内部構造について説明する。
図8(a)は、棒金開封装置10bのYZ断面図(
図7(b)のE-E断面図)である。
図8(b)は、棒金開封装置10bのXY断面図(
図7(b)のF-F断面図)である。
【0055】
図8(a),
図8(b)に示すように、棒金押さえコマ40aと棒金押さえコマ40bとは、内壁43aと内壁43bとが向かい合った状態で設置される。なお、棒金押さえコマ40a,40bは、それぞれ可動壁部の一例である。
【0056】
図8(a)に示すように、棒金押さえコマ40aのY軸負側の面には、筐体23aとの間に、弾性体であるばね50aが接続されている。また、棒金押さえコマ40bのY軸正側の面には、筐体23bとの間に、弾性体であるばね50bが接続されている。ばね50a,50bは、例えば、金属ばねである。そして、棒金押さえコマ40aと棒金押さえコマ40bとは、それぞればね50aとばね50bとで加圧されて、互いに当接した状態を保持している。
【0057】
棒金押さえコマ40aに設けられた摺動部41aと摺動部42aは、前記したように、溝部29a,31aに嵌め込まれる。そして、摺動部41a,42aは、溝部29a,31aにガイドされて、棒金押さえコマ40aをY軸方向に摺動可能とする。また、棒金押さえコマ40bに設けられた摺動部41bと摺動部42bは、それぞれ、溝部29b,31bに嵌め込まれる。そして、摺動部41b,42bは、溝部29b,31bにガイドされて、棒金押さえコマ40bをY軸方向に摺動可能とする。
【0058】
図8(b)に示すように、棒金押さえコマ40aの内壁43aと、棒金押さえコマ40bの内壁43bとは、X軸の負方向に向けて、径が徐々に小さくなる。そして、開口部22から棒金90(不図示)を挿入すると、棒金90は、内壁43aと内壁43bとに当接して、内壁43aと内壁43bとを押し広げる方向に力を加えながら、X軸負側に向けて進行する。このとき、棒金押さえコマ40a,40bは、それぞれ、ばね50a,50bの弾性力を受けるため、棒金90の挿入をガイドする。
【0059】
次に、
図9を用いて、棒金開封装置10bに、太さが異なる棒金90a,90cをそれぞれ挿入した際の動作について説明する。
図9(a)は、棒金開封装置10bに対する、細い棒金90aの挿入状態を示すXY断面図(
図7(b)のF-F断面図)である。
図9(b)は、棒金開封装置10bに対する、太い棒金90cの挿入状態を示すXY断面図(
図7(b)のF-F断面図)である。
【0060】
図9(a)に示すように、棒金開封装置10bに細い棒金90aを挿入した場合、棒金90aの先端は、内壁43a,43bに当接しながら、筐体23a,23bの内部に進入する。このとき、棒金90aは、内壁43a,43bに対して、Y軸方向に押し開く力を加える。棒金押さえコマ40aは、この押し開く力によって、Y軸負方向に移動する。その際、棒金押さえコマ40aのZ軸方向上下位置に設けられた摺動部41a,42a(
図7(b)参照)は、筐体23aの溝部29a,31a(
図8(a)参照)に沿って摺動する。したがって、棒金押さえコマ40aは、姿勢を保ったまま、棒金90aの挿入位置に応じてY軸負方向に移動する。そして、棒金押さえコマ40aは、ばね50aの弾性力によってY軸正方向に加圧される。したがって、棒金押さえコマ40aは、棒金90aによってY軸負方向に押される力と、ばね50aによってY軸正方向に押される力とが釣り合った位置まで移動する。
【0061】
そして、内壁43bを有する棒金押さえコマ40bも、筐体23bの内部で、棒金押さえコマ40aと同様に移動する。すなわち、棒金押さえコマ40bは、棒金90aの挿入に伴って、Y軸正方向に押し開く力を受ける。その際、棒金押さえコマ40bのZ軸方向上下位置に設けられた摺動部41b,42b(
図8(a)参照)は、筐体23bの溝部29b,31b(
図8(a)参照)に沿って摺動する。したがって、棒金押さえコマ40bは、姿勢を保ったまま、棒金90aの挿入位置に応じてY軸正方向に移動する。そして、棒金押さえコマ40bは、ばね50bの弾性力によってY軸負方向に加圧される。したがって、棒金押さえコマ40bは、棒金90aによってY軸正方向に押される力と、ばね50bによってY軸負方向に押される力とが釣り合った位置まで移動する。
【0062】
挿入された棒金90aの先端は、穴部44の底面48a,48bの位置まで到達する。なお、底面48bは、筐体23b側に形成された穴部44の底面である。このとき、内壁43aと内壁43bとは押し広げられた状態にあるが、内壁43a,43bには、ばね50a,50bから、棒金90aを挟み込む方向の力が作用するため、棒金90aはがたつくことなく、棒金押さえコマ40a,40bによって把持される。
【0063】
棒金90aが、底面48a,48bの位置まで挿入された状態にあるとき、第1の実施形態で説明したように、棒金90aの穴部44に挿入されていない一端側に、棒金90aの方向と略直交する方向、すなわち、略Z軸負方向に向かう押圧力を加える。すると、棒金90aの先端は、穴部44の内壁に当接して、
図9(a)に不図示の当接部27を形成する。そして、棒金90aの開口部22側は、折曲部材30に当接して、受圧部32を形成する。このように、当接部27と受圧部32とが形成された状態で、さらに押圧力を加えると、棒金90aは、当接部27と受圧部32とに応じた位置で開封される。
【0064】
一方、
図9(b)に示すように、太い棒金90cを挿入した場合にも、棒金押さえコマ40a,40bは同様に動作する。この場合、棒金90cは棒金90aよりも太いため、棒金押さえコマ40a,40bの移動量は、
図9(a)の場合と比べて大きくなる。しかし、この場合であっても、棒金90cの先端は、底面48a,48bの位置まで挿入される。そして、先に説明したのと同様に、棒金90cの穴部44に挿入されていない一端側に、棒金90cの方向と略直交する方向に向かう押圧力を加えると、当接部27(不図示)と受圧部32とが形成されて、棒金90cは、当接部27と受圧部32とに応じた位置で開封される。
【0065】
以上説明したように、棒金開封装置10bによれば、穴部44は、棒金90を挿入した場合に、当該棒金90と当接しながら、棒金90の太さに応じた位置まで移動する棒金押さえコマ40a,40b(可動壁部)を備える。したがって、棒金90(90a,90b,90c)の太さによらずに、棒金90の先端を穴部44の底面48a,48bの位置まで挿入することができる。そのため、穴部44に挿入した棒金90の、開口部22から突出した部分の長さが、棒金90の太さによらずに略等しくなるため、棒金90の太さによらず、略等しい押圧力で棒金90を開封することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、いずれも例示であり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10,10a,10b 棒金開封装置
20,20a,20b,21,23,23a,23b 筐体
22,22a 開口部
24,24a,24b,24c,25,44 穴部
27 当接部
30,30a 折曲部材
32 受圧部
40a,40b 棒金押さえコマ(可動壁部)
90,90a,90b,90c 棒金
90x,90y 棒金片
92 フィルム
94 残存フィルム部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】