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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】車両走行管制装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221209BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021193959
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】角谷 文章
(72)【発明者】
【氏名】張 海越
(72)【発明者】
【氏名】青柳 貴久
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027175(JP,A)
【文献】特開2017-117328(JP,A)
【文献】特開2014-225114(JP,A)
【文献】特開2021-197009(JP,A)
【文献】特開2019-046413(JP,A)
【文献】特開2016-095697(JP,A)
【文献】特開2015-170233(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を含む監視領域内に存在している複数の車両のそれぞれの位置及び速度を含む情報である交通状況情報と、前記複数の車両のうち、これから前記交差点を通過しようとする車両である複数の通過予定車両が、前記交差点においてそれぞれどの方向へ進行する予定であるかについての情報である進行方向情報とを取得する情報取得部、
前記交通状況情報と前記進行方向情報とに基づいて、前記複数の通過予定車両のうち、前記交差点において互いに衝突する可能性がある通過予定車両である複数の衝突判定車両の有無を判定する衝突判定部、
前記複数の衝突判定車両のそれぞれを前記交差点に進入させる順序である進入優先順位を決定する優先順位決定部、
前記進入優先順位に基づいて、前記複数の衝突判定車両のうちの少なくとも1台である指定車両の前記交差点への進入を遅らせる指令である調停指令を生成する調停指令生成部、及び
前記調停指令を前記指定車両に送信する送信部
を備え、
前記衝突判定部は、前記交差点内を複数の分割領域に区画し、前記交通状況情報と前記進行方向情報とに基づいて、前記複数の分割領域に対する各前記通過予定車両の通過時間帯を予測することにより、前記複数の衝突判定車両の有無を判定し、
前記優先順位決定部は、前記進行方向情報に含まれている各前記衝突判定車両の進行方向の情報に基づいて、前記進入優先順位を決定する
車両走行管制装置。
【請求項2】
前記優先順位決定部は、2台以上の前記指定車両が前記交差点の手前で待機している場合、各前記指定車両の待機時間に基づいて、前記進入優先順位を決定する
請求項1に記載の車両走行管制装置。
【請求項3】
前記優先順位決定部は、前記交通状況情報に基づいて、前記進入優先順位を決定する
請求項1又は請求項2に記載の車両走行管制装置。
【請求項4】
前記衝突判定部は、各前記通過予定車両の速度情報と、各前記通過予定車両が走行する車線の情報とを含む行動計画に基づいて、前記通過時間帯を予測する
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両走行管制装置。
【請求項5】
前記複数の分割領域のうち、各前記通過予定車両が通過している領域を第1通過領域とし、
前記複数の分割領域のうち、各前記通過予定車両がこれから通過しようとしている領域を第2通過領域としたとき、
前記衝突判定部は、前記第1通過領域を各前記通過予定車両が通過する前記通過時間帯である第1時間帯と、前記第2通過領域を各前記通過予定車両が通過する前記通過時間帯である第2時間帯とに基づいて、前記複数の衝突判定車両の有無を判定する
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両走行管制装置。
【請求項6】
前記複数の通過予定車両のうちの1つを第1車両とし、前記複数の通過予定車両のうちの前記第1車両とは異なる1つを第2車両としたとき、
前記衝突判定部は、
前記複数の分割領域のいずれかにおいて、前記第1車両の前記第1時間帯と、前記第2車両の前記第1時間帯とが重なる場合に、前記第1車両と前記第2車両とが衝突する可能性があると判定し、
前記複数の分割領域のいずれかにおいて、前記第1車両の前記第2時間帯と、前記第2車両の前記第2時間帯とが重なる場合に、前記第1車両と前記第2車両とが衝突する可能性があると判定する
請求項5に記載の車両走行管制装置。
【請求項7】
前記優先順位決定部は、前記複数の車両のうちのいずれかが、前記複数の分割領域のうちのいずれかに停止しているか否かに基づいて、前記進入優先順位を決定する
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両走行管制装置。
【請求項8】
前記優先順位決定部は、各前記通過予定車両が前記交差点の手前の特定領域に進入しているか否かに基づいて、前記進入優先順位を決定する
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の車両走行管制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両走行管制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動作決定装置は、T字路において、車両が側道から本道に進入しようとする場合に、本道を走行中の他車両がセンサ部によって検知されると、他車両がT字路を通過するまで車両を側道で待機させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-172068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の動作決定装置では、本道を多数の他車両が走行している場合には、すべての他車両がT字路を通過するまで、側道の車両を長時間待機させることになり、側道の車両の通行効率が低下する。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために為されたものであり、交差点における車両の通行効率を向上させることができる車両走行管制装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両走行管制装置は、交差点を含む監視領域内に存在している複数の車両のそれぞれの位置及び速度を含む情報である交通状況情報と、複数の車両のうち、これから交差点を通過しようとする車両である複数の通過予定車両が、交差点においてそれぞれどの方向へ進行する予定であるかについての情報である進行方向情報とを取得する情報取得部、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、複数の通過予定車両のうち、交差点において互いに衝突する可能性がある通過予定車両である複数の衝突判定車両の有無を判定する衝突判定部、複数の衝突判定車両のそれぞれを交差点に進入させる順序である進入優先順位を決定する優先順位決定部、進入優先順位に基づいて、複数の衝突判定車両のうちの少なくとも1台である指定車両の交差点への進入を遅らせる指令である調停指令を生成する調停指令生成部、及び調停指令を指定車両に送信する送信部を備え、衝突判定部は、交差点内を複数の分割領域に区画し、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、複数の分割領域に対する各通過予定車両の通過時間帯を予測することにより、複数の衝突判定車両の有無を判定し、優先順位決定部は、進行方向情報に含まれている各衝突判定車両の進行方向の情報に基づいて、進入優先順位を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る車両走行管制装置によれば、交差点における車両の通行効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る車両走行管制システムを一部ブロックで示す説明図である。
図2図1の車両走行管制装置の構成を示すブロック図である。
図3図1の交差点及びその周辺に設定されている複数の領域を示す平面図である。
図4図3の交差点を車両が直進する様子を示す平面図である。
図5図4の車両が交差点に進入する前の状態を示す平面図である。
図6図4の車両がさらに直進した状態を示す平面図である。
図7図4の車両がさらに直進した状態を示す平面図である。
図8図3の交差点を車両が直進する場合における第1通過領域及び第2通過領域の時間遷移を示すグラフである。
図9図3の交差点を車両が左折する様子を示す平面図である。
図10図9の車両が交差点に進入した状態を示す平面図である。
図11図10の車両がさらに進んだ状態を示す平面図である。
図12図3の交差点を車両が左折する場合における第1通過領域及び第2通過領域の時間遷移を示すグラフである。
図13図3の交差点を車両が右折する様子を示す平面図である。
図14図13の車両が交差点に進入した状態を示す平面図である。
図15図14の車両がさらに進んだ状態を示す平面図である。
図16図15の車両がさらに進んだ状態を示す平面図である。
図17図3の交差点を車両が右折する場合における第1通過領域及び第2通過領域の時間遷移を示すグラフである。
図18】同一の分割領域における2台の通過予定車両の通過状況と、衝突判定結果との関係を示す表である。
図19】車両位置による優先度を説明するための説明図である。
図20図2の優先順位決定部により決定される進入優先順位の第1の例を示す説明図である。
図21図2の優先順位決定部により決定される進入優先順位の第2の例を示す説明図である。
図22図2の調停部が実行する調停ルーチンを示すフローチャートである。
図23図2の衝突判定部が実行する衝突予測ルーチンを示すフローチャートである。
図24図2の優先順位決定部が実行する優先順位決定ルーチンを示すフローチャートである。
図25図2の調停指令生成部が実行する調停指令生成ルーチンを示すフローチャートである。
図26】実施の形態1の車両走行管制装置の各機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。
図27】実施の形態1の車両走行管制装置の各機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る車両走行管制システムを一部ブロックで示す説明図である。図1により、交差点41における車両走行管制について説明する。
【0010】
実施の形態1において、交差点41は、以下の条件1及び条件2を同時に満足する。
条件1:交差点41の中心に対して、隣り合う入口が90度又は180度離れて配置されているT字路又は十字路
条件2:各入口は、車両30が対向通行可能な幅を有している
【0011】
図1の交差点41は、十字路である。十字路においては、第1道路と第2道路とが直角に交差している。
【0012】
第1道路における交差点41の一側に隣接する部分を、第1道路部分42aと称する。第1道路における交差点41の他側に隣接する部分を、第2道路部分42bと称する。第2道路における交差点41の一側に隣接する部分を、第3道路部分42cと称する。第2道路における交差点41の他側に隣接する部分を、第4道路部分42dと称する。
【0013】
車両走行管制システムは、少なくとも1つの交通環境検出装置10、車両走行管制装置20、及び複数の車両30を含んでいる。図1には、1台の車両30のみが示されている。複数の車両30のそれぞれは、自動運転車両である。
【0014】
交通環境検出装置10は、監視領域40内における交通状況を検出する。監視領域40は、交差点41、第1道路部分42a、第2道路部分42b、第3道路部分42c、及び第4道路部分42dを含む領域である。
【0015】
車両走行管制装置20には、監視領域40内の地図情報が登録されている。
【0016】
図2は、図1の車両走行管制装置20の構成を示すブロック図である。図2には、2つの交通環境検出装置10が示されている。各交通環境検出装置10は、検出した交通状況に関する情報である交通状況情報を車両走行管制装置20に送信する。
【0017】
交通状況情報は、監視領域40内に存在している複数の車両30のそれぞれの位置及び速度を含む情報である。
【0018】
監視領域40内に存在している複数の車両30のうち、これから交差点41を通過しようとしている車両30を、通過予定車両と称する。各通過予定車両は、目的方向情報を車両走行管制装置20に送信する。目的方向情報は、各通過予定車両が交差点41においてどの方向へ進行する予定であるかについての情報である。
【0019】
車両走行管制装置20は、機能ブロックとして、情報取得部21、調停部22、及び送信部23を有している。
【0020】
情報取得部21は、各通過予定車両から目的方向情報を取得する。即ち、情報取得部21は、複数の通過予定車両から進行方向情報を取得する。進行方向情報は、複数の目的方向情報を集めた情報であり、複数の通過予定車両が、交差点41においてそれぞれどの方向へ進行する予定であるかについての情報である。また、情報取得部21は、各交通環境検出装置10から交通状況情報を取得する。
【0021】
調停部22は、機能ブロックとして、衝突判定部221、優先順位決定部222、及び調停指令生成部を有している。
【0022】
衝突判定部221は、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、複数の衝突判定車両の有無を判定する。複数の衝突判定車両は、複数の通過予定車両のうち、交差点41において互いに衝突する可能性がある通過予定車両である。
【0023】
優先順位決定部222は、進入優先順位を決定する。進入優先順位は、複数の衝突判定車両のそれぞれを交差点41に進入させる順序である。また、優先順位決定部222は、各衝突判定車両の進行方向の情報に基づいて、進入優先順位を決定する。各衝突判定車両の進行方向の情報は、各衝突判定車両の目的方向情報であり、進行方向情報に含まれている。
【0024】
また、優先順位決定部222は、2台以上の指定車両が交差点41の手前で待機している場合、各指定車両の待機時間に基づいて、進入優先順位を決定する。
【0025】
調停指令生成部223は、進入優先順位に基づいて、調停指令を生成する。調停指令は、指定車両の交差点41への進入を遅らせる指令である。指定車両は、複数の衝突判定車両のうちの少なくとも1台である。
【0026】
送信部23は、監視領域40内に存在している複数の車両30に交通状況情報を送信する。また、送信部23は、調停指令を指定車両に送信する。
【0027】
車両走行管制装置20においては、交差点41及びその周辺に対して、複数の領域が設定されている。図3は、図1の交差点41及びその周辺に設定されている複数の領域を示す平面図である。
【0028】
複数の領域には、交差点41、第1道路部分42a、第2道路部分42b、第3道路部分42c、及び第4道路部分42dが含まれている。
【0029】
衝突判定部221は、交差点41内を複数の分割領域に区画している。即ち、交差点41内には、複数の分割領域が設定されている。図3では、第1道路の幅方向の中心を通る直線と、第2道路の幅方向の中心を通る直線とによって、交差点41内が4つの分割領域に分割されている。4つの分割領域は、分割領域A51、分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54である。
【0030】
衝突判定部221は、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、上記の4つの分割領域に対する各通過予定車両の通過時間帯を予測することにより、複数の衝突判定車両の有無を判定する。また、衝突判定部221は、各通過予定車両の速度情報と、各通過予定車両が走行する車線の情報とを含む計画である行動計画に基づいて、通過時間帯を予測する。
【0031】
また、衝突判定部221は、通過予定車両に対して調停不可領域44aを設定する。調停不可領域44aは、第1道路部分42aにおける交差点41の手前の停止線43aを起点として、交差点41とは反対側へ長さL1の領域である。
【0032】
調停不可領域44aは、交差点41に向かって走行している通過予定車両が調停指令を受けて停止しようとした場合に、停止線43aを越える領域である。従って、衝突判定部221は、調停不可領域44aの長さL1を、通過予定車両の現在の車速Vactに基づいて設定する。調停不可領域44aの長さL1は、通過予定車両の現在の車速Vactが高いほど大きな値に設定される。
【0033】
なお、衝突判定部221は、通過予定車両が交差点41に進入する前に、同一車線の前方に他の車両が存在せず、且つ通過予定車両が一旦停止した場合、調停不可領域44aを一旦消去する。その後、通過予定車両が再発進したとき、衝突判定部221は、調停不可領域44aを再設定する。
【0034】
また、衝突判定部221は、調停不可領域44aに対して、交差点41とは反対側の領域を調停可能領域45aとして設定する。
【0035】
図4は、図3の交差点41を車両30が直進する様子を示す平面図である。図4では、図3の交差点41を時計方向へ90度回転させて示している。
【0036】
図4において、車両30は、第1道路部分42aから分割領域A51に進入している。この状態から、車両30は、分割領域B52を通過して、第2道路部分42bに進む予定である。
【0037】
4つの分割領域のうち、通過予定車両が現在通過している領域を、第1通過領域と称する。また、4つの分割領域のうち、通過予定車両がこれから通過しようとしている領域を、第2通過領域と称する。図4では、分割領域A51が第1通過領域であり、分割領域B52が第2通過領域である。
【0038】
また、4つの分割領域のうち、第1通過領域にも第2通過領域にも該当しない領域を、フリー領域と称する。図4では、分割領域C53及び分割領域D54がフリー領域である。
【0039】
図5は、図4の車両30が交差点41に進入する前の状態を示す平面図である。図5では、第1通過領域は存在せず、分割領域A51及び分割領域B52が第2通過領域である。
【0040】
図6は、図4の車両30がさらに直進した状態を示す平面図である。図6では、車両30は、第2分割領域は存在せず、分割領域A51及び分割領域B52が第1通過領域である。
【0041】
図7は、図6の車両30がさらに直進した状態を示す平面図である。図7では、分割領域B52が第1通過領域である。
【0042】
図8は、図3の交差点41を車両30が直進する場合における第1通過領域及び第2通過領域の時間遷移を示すグラフである。
【0043】
図8において、時刻tは、調停不可領域44aに車両30が進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域A51に進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域B52に進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域A51から退出する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域B52から退出する時刻である。
【0044】
分割領域A51は、時刻tにおいて第2通過領域となり、時刻tにおいて第1通過領域となる。分割領域A51は、時刻tにおいてフリー領域となる。分割領域B52は、時刻tにおいてフリー領域となる。
【0045】
時刻tは、以下の式(1)によって算出される。時刻tは、以下の式(2)によって算出される。時刻tは、以下の式(3)によって算出される。時刻tは、以下の式(4)によって算出される。
【0046】
ここで、vcrsは、交差点41に進入する前の車両30の速度である。lvehは、車両30の長さである。dは、調停不可領域44aの始点から第1道路部分42aと交差点41との境界線までの長さである。dは、分割領域A51内における車両30の走行距離である。dは、分割領域B52内における車両30の走行距離である。
【0047】
式(1):t=(d/vcrs)+t
【0048】
式(2):t=(d+d/vcrs)+t
【0049】
式(3):t=(d+lveh/vcrs)+t
【0050】
式(4):t=(d+d+d+lveh/vcrs)+t
【0051】
各分割領域が第1通過領域となっている時間帯を、第1時間帯と称する。即ち、第1時間帯は、各通過予定車両が第1通過領域を通過する通過時間帯である。また、各分割領域が第2通過領域となっている時間帯を、第2時間帯と称する。即ち、第2時間帯は、各通過予定車両が第2通過領域を通過する時間帯である。
【0052】
図8に示した例において、分割領域A51の第1時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域A51の第2時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域B52の第1時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域B52の第2時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。
【0053】
図9は、図3の交差点41を車両30が左折する様子を示す平面図である。図9では、図3の交差点41を時計方向へ90度回転させて示している。
【0054】
図9では、車両30は、調停不可領域44aに位置している。このため、分割領域A51が第2通過領域である。
【0055】
図10は、図9の車両30が交差点41に進入した状態を示す平面図である。図10では、車両30は、分割領域A51に進入している。このため、分割領域A51が第1通過領域である。また、分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54は、フリー領域である。
【0056】
図11は、図10の車両30がさらに進んだ状態を示す平面図である。図11では、車両30は、分割領域A51を退出し、第3道路部分42cを走行している。
【0057】
図12は、図3の交差点を車両が左折する場合における第1通過領域及び第2通過領域の時間遷移を示すグラフである。
【0058】
図12において、時刻tは、調停不可領域44aに車両30が進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域A51に進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域A51から退出する時刻である。
【0059】
分割領域A51は、時刻tにおいて第2通過領域となり、時刻tにおいて第1通過領域となり、時刻tにおいてフリー領域となる。このため、分割領域A51の第1時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域A51の第2時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。
【0060】
図13は、図3の交差点41を車両30が右折する様子を示す平面図である。図13では、図3の交差点41を時計方向へ90度回転させて示している。
【0061】
図13では、車両30は、調停不可領域44aに存在している。そして、分割領域A51、分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54は、第2通過領域である。
【0062】
図14は、図13の車両30が交差点41に進入した状態を示す平面図である。図14では、車両30は、分割領域A51に進入している。このため、分割領域A51は、第1通過領域である。また、分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54は、第2通過領域である。
【0063】
図15は、図14の車両30がさらに進んだ状態を示す平面図である。図15では、車両30は、分割領域A51、分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54のすべてに進入している。このため、分割領域A51、分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54は、第1通過領域である。
【0064】
図16は、図15の車両30がさらに進んだ状態を示す平面図である。図16では、車両30は、分割領域C53から第4道路部分42dに進入している。このため、分割領域C53のみが第1通過領域である。分割領域A51、分割領域B52、及び分割領域D54は、フリー領域である。
【0065】
図17は、図3の交差点41を車両30が右折する場合における第1通過領域及び第2通過領域の時間遷移を示すグラフである。
【0066】
図17において、時刻tは、調停不可領域44aに車両30が進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域A51に進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域B52、分割領域C53、及び分割領域D54に進入する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域A51から退出する時刻である。時刻tは、車両30が分割領域C53から退出する時刻である。
【0067】
分割領域A51は、時刻tにおいて第2通過領域となり、時刻tにおいて第1通過領域となり、時刻tにおいてフリー領域となる。このため、分割領域A51の第1時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域A51の第2時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。
【0068】
分割領域B52及び分割領域D54は、時刻tにおいて第2通過領域となり、時刻tにおいて第1通過領域となり、時刻tにおいてフリー領域となる。このため、分割領域B52及び分割領域D54の第1時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域B52及び分割領域D54の第2時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。
【0069】
分割領域C53は、時刻tにおいて第2通過領域となり、時刻tにおいて第1通過領域となり、時刻tにおいてフリー領域となる。このため、分割領域C53の第1時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。分割領域C53の第2時間帯は、時刻tから時刻tまでの時間帯である。
【0070】
衝突判定部221は、第1時間帯と第2時間帯とに基づいて、衝突判定車両の有無を判定する。例えば、第1車両及び第2車両の2台の通過予定車両が同時に交差点41に進入しようとしているとする。この場合、第1車両の分割領域Aにおける第1時間帯と、第2車両の分割領域Aにおける第1時間帯とが重なると、衝突判定部221は、第1車両と第2車両とが衝突すると判定する。
【0071】
図18は、同一の分割領域における2台の通過予定車両の通過状況と、衝突判定結果との関係を示す表である。図18において、「通過可能」は、第1車両と第2車両との衝突の可能性がないとの判定結果である。「通過不可」は、第1車両と第2車両との衝突の可能性があるとの判定結果である。
【0072】
このように、4つの分割領域のいずれかにおいて、第1車両の第1時間帯と第2車両の第1時間帯とが重なる場合に、衝突判定部221は、第1車両と第2車両とが衝突する可能性があると判定する。
【0073】
また、4つの分割領域のいずれかにおいて、第1車両の第2時間帯と、第2車両の第2時間帯とが重なる場合にも、衝突判定部221は、第1車両と第2車両とが衝突する可能性があると判定する。
【0074】
4つの分割領域のいずれかにおいて、第1車両の第1時間帯と第2車両の第2時間帯とが重なる場合、衝突判定部221は、その分割領域においては第1車両と第2車両とが衝突する可能性はないと判定する。
【0075】
次に、進入優先順位の決定方法について説明する。優先順位決定部222は、衝突判定部221において、複数の通過予定車両のうち、衝突判定車両と判定された車両に対し、以下の方法により進入優先順位を決定する。
【0076】
調停不可領域に車両30が存在している場合、衝突判定部221は、調停可能領域内に存在している待機車両の台数、各待機車両の待機時間、及び各待機車両の通過方向についての情報を取得する。待機車両は、交差点41の手前で停止して待機している車両である。
【0077】
優先順位決定部222は、進入優先順位を決定する。進入優先順位は、複数の衝突判定車両のそれぞれを交差点41に進入させる順序である。
【0078】
図19は、車両位置による進入優先順位を説明するための説明図である。図19には、既に調停不可領域44aに進入している車両30aと、まだ調停不可領域44bに進入していない車両30bとが示されている。車両30aと車両30bとは、それぞれ同じ道路を反対方向から交差点41に向かって走行している。この場合、優先順位決定部222は、車両30aの進入優先順位を車両30bの進入優先順位よりも高く設定する。
【0079】
図20は、図2の優先順位決定部222により決定される進入優先順位の第1の例を示す説明図である。図20には、第1衝突判定車両31、第2衝突判定車両32、第3衝突判定車両33、第4衝突判定車両34、及び第5衝突判定車両35が示されている。
【0080】
第1衝突判定車両31は、調停可能領域45aを交差点41に向かって走行している。第1衝突判定車両31は、交差点41を直進して通過する予定である。第2衝突判定車両32は、第1衝突判定車両31の後方を交差点41に向かって走行している。第2衝突判定車両32は、交差点41を直進して通過する予定である。
【0081】
第3衝突判定車両33は、停止線43dの手前において停車して、5分間停止して待機している。この場合、調停不可領域は一旦消去されているので、第3衝突判定車両33は、調停可能領域45dに存在していることになる。
【0082】
第4衝突判定車両34は、第3道路部分42cを交差点41に向かって走行しており、調停不可領域44cに進入している。第4衝突判定車両34は、左折を予定している。第5衝突判定車両35は、第2道路部分42bを交差点41に向かって走行しており、調停可能領域45bを走行している。第5衝突判定車両35は、右折を予定している。
【0083】
図20では、調停不可領域に進入している車両は、第4衝突判定車両34のみである。従って、優先順位決定部222は、最初に交差点41を通過させる車両を第4衝突判定車両34に決定する。このように、優先順位決定部222は、各通過予定車両が交差点41の手前の特定領域としての調停不可領域に進入しているか否かに基づいて、進入優先順位を決定する。
【0084】
次に、優先順位決定部222は、交通状況情報に基づいて、調停可能領域に存在している複数の車両、即ち、第1衝突判定車両31、第2衝突判定車両32、第3衝突判定車両33、及び第5衝突判定車両35の間の進入優先順位を、以下のよう設定する。なお、各道路のデフォルト優先度とは、各道路に予め設けられている優先順位である。
【0085】
調停可能領域内における進入優先順位
(1)既に設定時間以上待機した車両
(2)後続車両が設定台数以上の車両
(3)直進車両
(4)左折車両
(5)右折車両
(6)後続車両が設定台数未満の車両のうち、後続車両が最も多い車両
(7)各道路のデフォルト優先度
【0086】
上記(1)には、第3衝突判定車両33が該当する。上記(2)に該当する車両はない。上記(3)には、第1衝突判定車両31及び第2衝突判定車両32が該当する。上記(5)には、第5衝突判定車両35が該当する。上記(4)、(6)及び(7)に該当する車両はない。
【0087】
なお、この例では、第1衝突判定車両31の進入優先順位と第2衝突判定車両32の進入優先順位とが等しくなる。しかし、第2衝突判定車両32は、第1衝突判定車両31の後方に位置しているため、優先順位決定部222は、第1衝突判定車両31を第2衝突判定車両32よりも優先する。
【0088】
従って、図20の例における進入優先順位は、第4衝突判定車両34、第3衝突判定車両33、第1衝突判定車両31、第2衝突判定車両32、第5衝突判定車両35の順である。
【0089】
図21は、図2の優先順位決定部222により決定される進入優先順位の第2の例を示す説明図である。図21の例では、第5衝突判定車両35が右折のために既に交差点41に進入して停車している点においてのみ、図20の例と異なっている。図21の例では、2台以上の衝突判定車両が、調停不可領域又は交差点41内に存在している。
【0090】
このような場合のために、優先順位決定部222には、調停不可領域及び交差点41内の衝突判定車両に対して、次のような進入優先順位が設定されている。
(1a)調停不可領域内に存在し、且つ他の衝突判定車両のフリー領域又は他の衝突判定車両の第2通過領域を通過可能な車両
(2a)交差点41内において意図せず停車したが、現在は正常復帰して移動可能な車両
(3a)調停不可領域内に存在しているが、上記(2a)の車両に妨げられ、交差点41を通過できなかった車両
【0091】
図21の例では、第4衝突判定車両34が調停不可領域44cに存在し、第5衝突判定車両35が交差点41に存在している。第5衝突判定車両35が正常復帰して移動可能になっている場合、優先順位決定部222は、各衝突判定車両の進入優先順位を以下のように決定する。
【0092】
優先順位決定部222は、第4衝突判定車両34及び第5衝突判定車両35を第1優先車両に決定し、第1衝突判定車両31、第2衝突判定車両32、第3衝突判定車両33を第2優先車両に決定する。
【0093】
優先順位決定部222は、2台の第1優先車両の間の進入優先順位を以下のように決定する。第4衝突判定車両34は、調停不可領域44c内に存在している。また、第4衝突判定車両34は、交差点41を左折することを予定している。このため、第4衝突判定車両34は、第5衝突判定車両35のフリー領域又は第2通過領域を通過可能である。
【0094】
より具体的に述べると、第4衝突判定車両34は、交差点41を左折するとき、分割領域B52を通過する。図21において、第5衝突判定車両35は、分割領域C53に存在しているため、分割領域B52は、第5衝突判定車両35の第2通過領域に相当する。従って、優先順位決定部222は、第4衝突判定車両34の通過を第5衝突判定車両35の通過よりも優先させる。
【0095】
このように、優先順位決定部222は、複数の車両30のうちのいずれかが、複数の分割領域のうちのいずれかに停止しているか否かに基づいて、進入優先順位を決定する。
【0096】
また、優先順位決定部222は、第1衝突判定車両31、第2衝突判定車両32、及び第3衝突判定車両33の間の進入優先順位を次のように決定する。
【0097】
上記(1)には、第3衝突判定車両33が該当する。上記(2)に該当する車両はない。上記(3)には、第1衝突判定車両31及び第2衝突判定車両32が該当する。上記(4)~(7)に該当する車両はない。
【0098】
従って、図21の例における進入優先順位は、第4衝突判定車両34、第5衝突判定車両35、第3衝突判定車両33、第1衝突判定車両31、第2衝突判定車両32の順である。
【0099】
図22は、図2の調停部22が実行する調停ルーチンを示すフローチャートである。図22のルーチンは、例えば、情報取得部21が交通状況情報又は進行方向情報を取得するごとに実行される。
【0100】
図22のルーチンが開始されると、調停部22は、ステップS101において、通過指令を受信していない車両が調停可能領域に存在しているか否かを判定する。ここで、通過指令は、調停指令の1つであり、通過予定車両が交差点41を通過することを許可する指令である。
【0101】
通過指令を受信していない車両が調停可能領域に存在していない場合、調停部22は、本ルーチンを一旦終了する。つまり、調停部22は、調停可能領域に通過指令を受信していない車両が存在するまで、ステップS101の処理を繰り返す。
【0102】
通過指令を受信していない車両が調停可能領域に存在している場合、調停部22は、ステップS102において、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、車両間の衝突可能性を予測する。
【0103】
この後、調停部22は、ステップS103において、ステップS102における予測の結果に基づいて、衝突判定車両の有無を判定する。
【0104】
衝突判定車両が無いと判定した場合、調停部22は、ステップS105において、各衝突判定車両による交差点41の通過時間帯を計算する。また、調停部22は、ステップS105において、通過開始時刻の計算結果に基づいて、各衝突判定車両に調停指令を送信し、本ルーチンを一旦終了する。
【0105】
一方、調停部22は、ステップS103において、衝突判定車両が有ると判定した場合、ステップS104において、複数の衝突判定車両が交差点41を通過するための進入優先順位を決定する。
【0106】
この後、調停部22は、ステップS105において、各衝突判定車両の交差点の通過時間帯を計算する。また、調停部22は、ステップS105において、通過時間帯の計算結果に基づいて、各衝突判定車両に調停指令を送信し、本ルーチンを一旦終了する。
【0107】
図23は、図2の衝突判定部221が実行する衝突予測ルーチンを示すフローチャートである。図23のルーチンは、図22のステップS102のサブルーチンである。
【0108】
図22のステップS101において、通過指令を受信していない車両が調停可能領域に存在している場合、図23のルーチンが開始され、衝突判定部221は、ステップS201において、調停期間を決定する。衝突判定部221は、調停期間を、前回のルーチンの処理によって最後に交差点41を通過することになった車両が交差点41を通過した時刻から一定時間後までの期間として決定する。
【0109】
この後、衝突判定部221は、ステップS202において、各通過予定車両の交差点41における通過時間帯を計算する。つまり、衝突判定部221は、各通過予定車両の各分割領域における第1通過時間帯及び第2通過時間帯を計算する。
【0110】
続いて、衝突判定部221は、ステップS203において、各通過予定車両の交差点41における通過時間帯に基づいて、各通過予定車両の衝突可能性を判定する。ここでは、図18に示した規則に従って、各通過予定車両の衝突可能性を判定する。
【0111】
つまり、第1車両の第1通過時間帯と第2車両の第2通過時間帯とが重なる場合は、第1車両と第2車両とは衝突しないと判定し、第1車両の第2通過時間帯と第2車両の第2通過時間帯とが重なる場合は、第1車両と第2車両とが衝突する可能性があると判定する。
【0112】
図24は、図2の優先順位決定部222が実行する進入優先順位決定ルーチンを示すフローチャートである。図24のルーチンは、図22のステップS104のサブルーチンである。
【0113】
図22のステップS103において、衝突の可能性があると判定された場合、図24のルーチンが開始され、優先順位決定部222は、以下のステップS301からステップS305までの処理を順に実行する。
【0114】
ステップS301:優先順位決定部222は、交通状況情報として、調停不可領域に進入している車両の位置及び速度を含む情報を取得する。
【0115】
ステップS302:優先順位決定部222は、調停可能領域に存在している車両の待機時間についての情報を取得する。
【0116】
ステップS303:優先順位決定部222は、調停可能領域に存在する車両の台数についての情報を取得する。
【0117】
ステップS304:優先順位決定部222は、各衝突判定車両の進行方向の情報を取得する。
【0118】
ステップS305:優先順位決定部222は、各衝突判定車両の進入優先順位を決定する。
【0119】
図25は、図2の調停指令生成部223が実行する調停指令生成ルーチンを示すフローチャートである。図25のルーチンは、図22のステップS105のサブルーチンである。
【0120】
優先順位決定部222による図24のルーチンの処理が完了すると、図25のルーチンが開始され、調停指令生成部223は、ステップS401において、通過開始時刻が決まっていない車両が存在しているか否かを判定する。
【0121】
通過時間帯が決まっていない車両が存在していない場合、調停指令生成部223は、ステップS406において、調停指令を生成し、生成された調停指令を該当する衝突判定車両に送信する。具体的には、調停指令生成部223は、通過時間帯が決まっていない衝突判定車両に対して、調停不可領域への進入時刻の情報を送信する。また、調停指令生成部223は、通過時間帯が決まっている衝突判定車両に対して、待機指令を送信する。
【0122】
一方、通過時間帯が決まっていない衝突判定車両が存在している場合、調停指令生成部223は、ステップS402において、通過時間帯が決まっていない衝突判定車両について、交差点41の通過時間帯及び調停不可領域の通過時間帯を計算する。
【0123】
この後、調停指令生成部223は、ステップS403において、進入優先順位が同位の衝突判定車両があるか否かを判定する。
【0124】
進入優先順位が同位の衝突判定車両がある場合、調停指令生成部223は、ステップS402において、通過時間帯を再度計算する。進入優先順位が同位の衝突判定車両がない場合、調停指令生成部223は、ステップS404において、間隔を空けて各衝突判定車両の調停不可領域への進入時刻及び各衝突判定車両の交差点41からの退出時刻を算出する。
【0125】
このとき、調停指令生成部223は、ステップS402において計算された通過時間帯を参照する。退出時刻は、1回のルーチンにおいて、交差点41から最後に退出する衝突判定車両が交差点41から退出する時刻である。
【0126】
次に、調停指令生成部223は、ステップS405において、ステップS404において予測された退出時刻が調停時刻を超過しているか否かを判定する。
【0127】
退出時刻が調停時刻を超過していない場合、調停指令生成部223は、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、調停指令生成部223は、調停指令を生成せずに、次回のルーチンにおいて、ステップS401の処理を実行する。
【0128】
一方、退出時刻が調停時刻を超過している場合、調停指令生成部223は、ステップS406において、調停指令を生成し、生成された調停指令を通過予定車両に送信する。具体的には、調停指令生成部223は、通過時間帯が決まっていない衝突判定車両に対して、調停不可領域への進入時刻の情報を送信する。
【0129】
また、調停指令生成部223は、通過時間帯が決まっている衝突判定車両に対して、待機指令を送信する。
【0130】
以上のように、車両走行管制装置20は、情報取得部21、衝突判定部221、優先順位決定部222、調停指令生成部223、及び送信部23を備えている。情報取得部21は、交通状況情報と、進行方向情報とを取得する。交通状況情報は、監視領域40内に存在している複数の車両30のそれぞれの位置及び速度を含む情報である。進行方向情報は、複数の通過予定車両が、交差点41においてそれぞれどの方向へ進行する予定であるかについての情報である。複数の通過予定車両は、複数の車両30のうち、これから交差点41を通過しようとする車両である。
【0131】
衝突判定部221は、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、複数の衝突判定車両の有無を判定する。複数の衝突判定車両は、複数の通過予定車両のうち、交差点41において互いに衝突する可能性がある通過予定車両である。優先順位決定部222は、進入優先順位を決定する。進入優先順位は、複数の衝突判定車両のそれぞれを交差点41に進入させる順序である。調停指令生成部223は、進入優先順位に基づいて、調停指令を生成する。調停指令は、指定車両の交差点41への進入を遅らせる指令である。指定車両は、複数の衝突判定車両のうちの少なくとも1台である。送信部23は、調停指令を指定車両に送信する。
【0132】
さらに、衝突判定部221は、交差点41内を4つの分割領域に区画し、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、通過時間帯を予測することにより、複数の衝突判定車両の有無を判定する。通過時間帯は、各通過予定車両が4つの分割領域のそれぞれを通過する時間帯である。優先順位決定部222は、進行方向情報に含まれている各衝突判定車両の進行方向の情報に基づいて、進入優先順位を決定する。
【0133】
このように、実施の形態1に係る車両走行管制装置20によれば、各分割領域ごとに衝突の発生の可能性を判定し、衝突の可能性が無いと判定された分割領域については、車両の通過を許可することができる。従って、交差点41における車両30の通行効率を向上させることができる。
【0134】
また、優先順位決定部222は、2台以上の指定車両が交差点41の手前で待機している場合、各指定車両の待機時間に基づいて、進入優先順位を決定する。このため、待機時間の長い指定車両の交差点41への進入を優先させることができ、交差点41における車両30の通行効率をより向上させることができる。
【0135】
また、優先順位決定部222は、交通状況情報に基づいて、進入優先順位を決定する。このため、交差点41における車両30の通行効率をより向上させることができる。
【0136】
また、衝突判定部221は、各通過予定車両の速度情報と、各通過予定車両が走行する車線の情報とを含む計画である行動計画に基づいて、通過時間帯を予測する。これにより、通過時間帯の予測精度を向上させ、交差点における車両30の通行効率をより向上させることができる。
【0137】
また、衝突判定部221は、第1時間帯と第2時間帯とに基づいて、複数の衝突判定車両の有無を判定する。このため、複雑な計算によらず、衝突判定車両の有無を容易に判定することできる。
【0138】
また、衝突判定部221は、複数の分割領域のいずれかにおいて、第1車両の第1時間帯と、第2車両の第1時間帯とが重なる場合に、第1車両と第2車両とが衝突する可能性があると判定する。また、衝突判定部221は、複数の分割領域のいずれかにおいて、第1車両の第2時間帯と、第2車両の第2時間帯とが重なる場合にも、第1車両と第2車両とが衝突する可能性があると判定する。
【0139】
これにより、複雑な計算によらず、衝突判定車両の有無を容易に判定することができる。
【0140】
また、優先順位決定部222は、複数の車両30のうちのいずれかが、複数の分割領域のうちのいずれかに停止しているか否かに基づいて、進入優先順位を決定する。このため、交差点41内において車両30が停止するような事態が発生しても、優先順位を決定することができ、交差点41における車両30の通行効率をより向上させることができる。
【0141】
また、優先順位決定部222は、各通過予定車両が交差点41の手前の調停不可領域に進入しているか否かに基づいて、進入優先順位を決定する。このため、交差点41の手前に存在している通過予定車両を優先して交差点41に進入させることができ、交差点41における車両30の通行効率をより向上させることができる。
【0142】
なお、実施の形態1では、第1道路及び第2道路のそれぞれは、片側1車線の道路であったが、車両走行管制装置20は、片側2車線以上の車線の道路に適用されてもよい。この場合、分割領域の数及び進入優先順位は、車線数に応じて適宜変更される。
【0143】
また、交差点41は、十字路に限らず、例えば、T字路、三叉路、又は五叉路であってもよい。
【0144】
また、実施の形態1の車両走行管制装置20の各機能は、処理回路によって実現される。図26は、実施の形態1の車両走行管制装置20の各機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。第1の例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0145】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。また、車両走行管制装置20の各機能それぞれを個別の処理回路100で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路100で実現してもよい。
【0146】
また、図27は、実施の形態1の車両走行管制装置20の各機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。第2の例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0147】
処理回路200では、車両走行管制装置20の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0148】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
【0149】
なお、上述した各部の機能について、一部の専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0150】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0151】
10 交通環境検出装置、20 車両走行管制装置、21 情報取得部、22 調停部、221 衝突判定部、222 優先順位決定部、223 調停指令生成部、23 送信部、30 車両、40 監視領域、41 交差点、42a 第1道路部分、42b 第2道路部分、42c 第3道路部分、42d 第4道路部分、43a,43d 停止線、44a,44b,44c 調停不可領域、45a,45b,45d 調停可能領域、51 分割領域A、52 分割領域B、53 分割領域C、54 分割領域D。
【要約】
【課題】交差点における車両の通行効率を向上させることができる車両走行管制装置を得る。
【解決手段】車両走行管制装置20は、情報取得部21、調停部22、及び送信部23を有している。調停部22は、衝突判定部221、優先順位決定部222、及び調停指令生成部を有している。衝突判定部221は、交差点41内を複数の分割領域に区画している。衝突判定部221は、交通状況情報と進行方向情報とに基づいて、複数の分割領域に対する各通過予定車両の通過時間帯を予測することにより、複数の衝突判定車両の有無を判定する。複数の衝突判定車両は、複数の通過予定車両のうち、交差点41において互いに衝突する可能性がある通過予定車両である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27