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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04664 20160101AFI20221209BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20221209BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221209BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/04303
H01M8/04228
H01M8/0606
H01M8/2475
H01M8/04014
H01M8/04955
H01M8/04858
H01M8/04701
H01M8/12 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021500855
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019040801
(87)【国際公開番号】W WO2020014121
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】16/030,908
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521008891
【氏名又は名称】クミンス エンタープライズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ホンガン
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ, アンドリュー フィリップ
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-123818(JP,A)
【文献】特表2006-507647(JP,A)
【文献】特開2007-80723(JP,A)
【文献】特開2016-91644(JP,A)
【文献】特開2005-32652(JP,A)
【文献】特開2008-177162(JP,A)
【文献】特開2005-235427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、
前記アノードを含み、第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループと、
燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される、前記燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイスと、
空気供給経路を介して前記燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給する空気供給デバイスと、
前記アノード再循環ループに配置され、前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成されたアノードブロワと、
前記第1の経路と前記結合点との少なくとも一つに配置され、前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素と、
アノード圧力をカソード圧力よりも高くなるように別個に調整する圧力制御デバイスと
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記アノードブロワの故障の信号を受信すると、前記スイッチング要素がオフにトリガされて前記第1の経路が遮断され、前記燃料ガスが前記第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐ、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記圧力制御デバイスは、前記燃料電池システムがシャットダウンされる場合に、前記アノード圧力を前記カソード圧力よりも高く維持する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第2の経路で、前記アノードの上流に配置された改質器を前記アノード再循環ループがさらに備える、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
アノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気とを燃焼させるための触媒バーナと、
前記空気供給経路に順次配置された第1の空気熱交換器と第2の空気熱交換器とであって、高温ガスからの熱を前記空気供給デバイスによって供給される低温の空気に伝達するように構成された第1の空気熱交換器と、前記触媒バーナからの高温のバーナ排気の熱を前記第1の空気熱交換器の出口からの温かい空気に伝達するように構成された前記第2の空気熱交換器と、
をさらに備える、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記圧力制御デバイスがオリフィスを備え、前記オリフィスが前記第1の空気熱交換器の下流に配置される、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記高温ガスが、前記第2の空気熱交換器の出口からのガスを含む、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記触媒バーナからの前記高温のバーナ排気の熱を前記改質器に伝達するように構成されたアノード熱交換器をさらに備え、前記高温ガスが前記アノード熱交換器の出口からのガスを含む、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記燃料電池スタックと、前記改質器と、前記触媒バーナと、前記第2の空気熱交換器と、前記アノード熱交換器とがホットボックスに密封される、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記圧力制御デバイスは、アノード圧力制御弁を備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
アノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気を燃焼させるための触媒バーナをさらに備え、前記アノード圧力制御弁が前記分岐点と前記触媒バーナとの間に配置される、請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記燃料電池スタックと、改質器と、前記触媒バーナとがホットボックスに密封され、前記アノード圧力制御弁が前記分岐点の後で、かつ、前記ホットボックスの前に配置される、請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記スイッチング要素が、逆止弁と、電磁弁と、フェイルセーフ三方弁と、またはそれらの組み合わせとを含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードブロワを含むアノード再循環ループとを備える燃料電池システムを制御する方法であって、
前記アノードブロワを駆動することによって前記アノード再循環ループに燃料ガスを供給することと、
燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給することと、
前記アノードブロワの動作状態を監視することと、
前記アノードブロワの故障信号を受信すると、前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することと、を含み、
前記シャットダウン手順が
アノード圧力を調整し、前記アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにすること、および
前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすることと、
を含む方法。
【請求項15】
前記方法が、前記アノード再循環ループに蒸気を供給することをさらに含み、
前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することが、
前記燃料電池スタックの電力負荷を遮断することと、
前記燃料電池スタックの前記カソードに供給される前記空気の空気流量を所定の空気流量値に設定することと、
炭素堆積を回避するために、前記アノード再循環ループに供給される前記燃料ガスの燃料流量と前記蒸気の蒸気流量とをそれぞれ所定の燃料流量値と所定の蒸気流量とに設定することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アノード再循環ループが前記アノードの上流に配置された改質器をさらに含み、前記燃料電池システムがアノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気とを燃焼させるための触媒バーナを含み、
前記方法が、前記触媒バーナの負荷を調整することと、アノード温度がアノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値を下回るまで改質器入口の温度を所定の改質反応温度よりも高く維持するように、前記触媒バーナからの高温のバーナ排気の熱を前記改質器に伝達することと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記燃料ガスと、前記蒸気と、前記空気とを遮断することと、前記アノード温度が前記温度閾値を下回ると前記触媒バーナを停止することと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アノード温度が前記温度閾値を下回ると、前記アノードを所定の時間パージすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年7月10日に出願された米国特許出願第16/030908号明細書の優先権を主張し、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
この開示は、概して燃料電池の分野に関し、より詳細には、アノード保護を備えた燃料電池システムおよび燃料電池システムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、燃料からの化学エネルギーを、水素などの燃料と大気中に含まれる酸素などの酸化剤との電気化学反応により、電気エネルギーに変換することができる電気化学デバイスである。燃料電池が環境的に優れ、高効率であることから、燃料電池システムは、エネルギー供給システムとして広く開発されている。システム効率と燃料利用率とを改善し、外部の水の使用量を減らすために、燃料電池システムには、通常はアノード再循環ループが含まれる。単一の燃料電池は約1Vの電圧しか生成できないため、通常は複数の燃料電池を積層して(通常、燃料電池スタックと呼ばれる)所望の電圧を得る。
【0004】
燃料はアノード再循環ループに供給される。アノード再循環ループは、アノードブロワ経路とアノード経路とを含む。アノードブロワはアノードブロワ経路に配置され、燃料電池スタックのアノードはアノード経路に配置される。アノード経路は、分岐点でアノードブロワ経路と燃料排気経路とに分岐される。アノードブロワは、アノード再循環ループに駆動力を提供するために使用される。
【0005】
典型的な固体酸化物形燃料電池(SOFC)のアノードは、一般にニッケル(Ni)サーメットで作られる。アノードのニッケルは、燃料の酸化触媒および電流伝導体として機能する。燃料電池システムの正常動作中は、SOFCスタックは通常700℃超で動作され、主に水素燃料ガスが継続的に供給されるため、アノードのニッケル(Ni)は還元された状態を維持する。
【0006】
ただし、アノードブロワで故障または異常事象が発生すると、アノード再循環ループが遮断される。供給されるパージガス(通常は燃料と蒸気との混合物を使用)は、アノード経路ではなくアノードブロワ経路から漏出可能であり、必要な還元ガスが燃料電池スタックを通過することを保証できない。
【0007】
さらに、アノード再循環が失われた後、アノード再循環ループの改質器は、アノード排気から熱を回収することができなくなる。改質器は、パージガスとして燃料と蒸気との混合物を使用することにより、吸熱水蒸気改質反応のために、アノードよりも速く冷却する可能性がある。改質器入口温度が特定の値を下回ると、使用される触媒に応じて400℃から650℃の範囲になる可能性があり、水蒸気改質反応は停止する。その結果、アノードにHリッチな還元ガスが供給されなくなる。
【0008】
アノードが還元ガス雰囲気の欠如にさらされると、アノードのNiは再酸化される可能性があり、Niは、約350℃を超える温度で、カソード層から拡散した空気中の酸素またはアノードチャンバに導入された空気中の酸素と反応して酸化ニッケル(NiO)を形成する可能性がある。アノードの微細構造でのNiOの形成は、アノード層の体積膨張をもたらす可能性があり、SOFC構造全体に応力を及ぼす。急速な酸化の間、電解質は形成中の酸化ニッケルほど速く膨張することができず、その結果、電解質にクラックが発生する可能性がある。燃料電池スタックの完全性は、損なわれることになる。
【発明の概要】
【0009】
本開示の実施形態の一態様では、燃料電池システムが提供される。燃料電池システムは、電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードを含むアノード再循環ループと、燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイスと、空気供給経路を介して燃料電池スタックのカソードに空気を供給する空気供給デバイスと、アノードブロワと、スイッチング要素とを備える。アノード再循環ループには第1の経路と第2の経路とがあり、アノードは第2の経路に配置される。燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と第1の経路とが結合点で結合されて第2の経路を形成し、第2の経路は分岐点で第1の経路と燃料排気経路とに分岐される。アノードブロワは、アノード再循環ループに配置され、アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成される。スイッチング要素は、第1の経路と結合点との少なくとも1つに配置され、アノードブロワが故障した場合に、燃料ガスを第2の経路から燃料排気経路に流すように構成される。
【0010】
本開示の実施形態の別の態様では、燃料電池システムを制御する方法が提供される。燃料電池システムは、電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードを含むアノード再循環ループとを備える。この方法は、アノードブロワを駆動することによってアノード再循環ループに燃料ガスを供給することと、燃料電池スタックのカソードに空気を供給することと、アノードブロワの動作状態を監視することと、アノードブロワの故障信号を受信すると燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することと、燃料ガスがアノードを通って燃料排気経路に流れるようにすることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、類似符号が図面を通して類似部分を表している添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで、よりよく理解されよう。
【0012】
図1】アノード再循環ループを備えた例示的な燃料電池システムの概略ブロック図である。
図2】本開示の一実施形態による、アノード保護を備えた燃料電池システムの概略ブロック図である。
図3】本開示の別の実施形態による、アノード保護を備えた燃料電池システムの概略ブロック図である。
図4】本開示のさらに別の実施形態による、アノード保護を備えた燃料電池システムの概略ブロック図である。
図5】本開示の一実施形態による、燃料電池システムを制御する例示的な方法の前半部分の流れ図である。
図6】本開示の一実施形態による、図5の燃料電池スタックのシャットダウン手順を開始する方法を示す流れ図である。
図7】本開示の一実施形態による、燃料電池システムを制御する例示的な方法の後半部分の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態を、添付図面を参照して以下に説明する。以下の説明では、不必要な詳細で開示を曖昧にすることを避けるために、周知の機能または構造は詳細に説明しない。
【0014】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同様の意味を有する。本明細書で使用される「第1」、「第2」などの用語は、順序、数量、または重要性を示すのではなく、ある要素を別の要素から区別するために使用される。また、「a」および「an」という用語は、数量の限定を示すのではなく、参照される項目のうちの少なくとも1つの存在を示す。「または」という用語は、包括的であることを意味し、記載された項目のいずれかまたはすべてを意味する。本明細書での「含む」、「備える」または「有する」およびそれらの変形の使用は、その後に記載される項目およびその同等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。「接続された」および「結合された」という用語は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的か間接的かにかかわることなく、電気的な接続または結合を含むことができる。また、「上」、「下」、「左」、「右」などの特定の位置を示す用語は、特定の添付図面を参照した説明である。本開示で開示される実施形態は、図示されたものとは異なる方法で配置されてもよい。したがって、本明細書で使用される位置の用語は、特定の実施形態で説明されている位置に限定されてはならない。
【0015】
アノード再循環ループを備えた燃料電池システム
図1は、例示的な燃料電池システム100の概略ブロック図を示す。図1に示すように、例示的な燃料電池システム100は、電力を生成するための燃料電池スタック11を含む。燃料電池スタック11は、互いに積層された複数の燃料電池を含むことができる。燃料電池には、例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)を含むことができるが、これに限定されない。実際には、燃料電池は、アノード材料としてニッケル系材料を使用した任意の燃料電池とすることができる。
【0016】
燃料電池スタック11は、アノード12と、カソード13と、電解質14とを含む。燃料電池システム100は、燃料電池スタック11のアノード12を含むアノード再循環ループ10を有することができる。燃料電池スタック11のアノード12は、アノード入口とアノード出口とを有する。燃料電池スタック11のカソード13は、カソード入口とカソード出口とを有する。
【0017】
アノード12は、電気を生成する電気化学反応をサポートすることができる。燃料ガスは、電解質14を介した拡散を通じてカソード13から受け取った酸素イオンにより、アノード12で酸化され得る。この反応は、アノード12で熱と、蒸気と、自由電子の形の電気とを生成することができ、電力負荷への電力供給に使用することができる(図示せず)。酸素イオンは、電力負荷からカソード13に戻る電子を利用して、カソード酸化剤の酸素還元により生成することができる。
【0018】
カソード13は、大気中の酸素などのカソード酸化剤の供給源に結合することができる。カソード酸化剤は、電力生成時に燃料電池システム100に使用されるカソード13に供給される酸化剤として定義される。カソード13は、カソード酸化剤から受け取った酸素イオンに対して透過性であり得る。
【0019】
電解質14は、アノード12およびカソード13と連通していてもよい。電解質14は、カソード13からアノード12に酸素イオンを通過させることができ、カソード13からアノード12への自由電子の通過を防ぐために、電気伝導性をほとんど持たないか、または全く持たなくてもよい。
【0020】
図1を引き続き参照すると、燃料電池システム100は、燃料供給デバイス21と空気供給デバイス22とを含む。燃料供給デバイス21は、燃料供給経路P1を介してアノード再循環ループ10に燃料ガスを供給することができる。燃料ガスには、例えば天然ガス(NG)を含むことができる。空気供給デバイス22は、空気供給経路P2を介して燃料電池スタック11のカソード13に空気を供給することができる。
【0021】
燃料電池システム100は、アノード再循環ループ10内の循環を駆動するアノードブロワ41を含む。アノード再循環ループ10は、第1の経路P3と第2の経路P4とを有する。アノード12は、第2の経路P4に配置される。アノードブロワ41は、アノード再循環ループ10に配置することができる。例えば、アノードブロワ41は、図1に示すように、第1の経路P3に配置される。あるいは、アノードブロワ41はまた、第2の経路P4に配置されてもよい。燃料電池システム100の正常動作中は、燃料供給経路P1と第1の経路P3とが結合点Q1で結合されて第2の経路P4を形成し、第2の経路P4は分岐点Q2で第1の経路P3と燃料排気経路P5とに分岐される。
【0022】
燃料電池システム100は、燃料流量調整器31と空気流調整器32とをさらに含むことができる。燃料流量調整器31は、アノード再循環ループ10に供給される燃料ガスの燃料流量を調整することができる。空気流調整器32は、燃料電池スタック11のカソード13に供給される空気の空気流量を調整することができる。
【0023】
任意選択で、燃料電池システム100は、給水デバイス23と蒸気流量調整器33とをさらに含むことができる。給水デバイス23は、燃料改質のための蒸気を燃料供給経路P1に、さらにアノード再循環ループ10に供給することができる。蒸気流量調整器33は、燃料供給経路P1に供給される蒸気の蒸気流量を調整することができる。
【0024】
一実施形態では、図1に示すように、アノード再循環ループ10は、改質器15をさらに含むことができる。改質器15は、第2の経路P4で、アノード12の上流に配置される。改質器15は、改質器入口と改質器出口とを有する。改質器15の改質器出口はアノード12のアノード入口に結合され、アノード12のアノード出口は、アノード再循環ループ10を形成するように、改質器15の改質器入口に戻すことができる。
【0025】
燃料電池システム100が動作しているとき、燃料ガス、例えば天然ガスは、アノード再循環ループ10、特にこの実施形態では改質器15の改質器入口に供給され、空気は燃料電池スタック11のカソード13に供給される。改質器15では、燃料ガスを改質して、改質器出口で水素(H)リッチ改質物を生成することができる。例えば、天然ガスに含まれるメタン(CH)は、以下の燃料改質反応(1)により、一酸化炭素(CO)と水素(H)とに変換される。燃料改質反応は多量の熱を吸収することがある。
【0026】
水素リッチ改質物は、燃料電池スタック11のアノード入口に入る。燃料電池スタック11のアノード12では、水素リッチ改質物とカソード13からの酸素イオンとが混合され、以下の電気化学反応(2)により蒸気に変換されて電力を生成し、多量の熱を放出する。
【0027】
別の実施形態では、燃料電池スタック11は、別個の改質器15なしで、内部改質機能を有してもよい。このような状況下では、燃料電池スタック11のアノード出口は、アノード再循環ループ10を形成するように、アノード入口に直接戻すことができる。したがって、燃料改質反応(1)と電気化学反応(2)との両方が、燃料電池スタック11のアノード12で発生する。
【0028】
燃料電池システム100は、触媒バーナ51を含む。アノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気とは、触媒バーナ51で燃焼させることができる。
【0029】
燃料電池システム100は、燃料熱交換器61と、第1の空気熱交換器62と、第2の空気熱交換器63とを含む。燃料熱交換器61は、アノード再循環ループ10の第2の経路P4に配置され、燃料熱交換器61は、アノード出口からの燃料排気の熱を燃料供給デバイス21によって供給される温かい燃料ガスに伝達することができる。第1の空気熱交換器62と第2の空気熱交換器63とは、空気供給経路P2に順次配置される。第1の空気熱交換器62は、第2の空気熱交換器63出口からのガスの熱を空気供給デバイス22によって供給される低温の空気に伝達することができ、第2の空気熱交換器63は、触媒バーナ51からの高温のバーナ排気の熱を第1の空気熱交換器62出口からの温かい空気に伝達することができる。
【0030】
燃料電池スタック11と、改質器15と、触媒バーナ51と、第2の空気熱交換器63とは、ホットボックス1に密封される。ホットボックス1の内部は、高温環境にある。
【0031】
アノード保護を備えた燃料電池システム
図2は、本開示の一実施形態による、アノード保護を備えた燃料電池システム200の概略ブロック図を示す。図1の燃料電池システム100と比較して、本開示の一実施形態による燃料電池システム200は、スイッチング要素をさらに含むことができる。スイッチング要素は、第1の経路P3と結合点Q1との少なくとも1つに配置することができる。図2に示すように、一実施形態では、スイッチング要素には、逆止弁71を含むことができる。別の実施形態では、スイッチング要素には、電磁弁を含むことができる。さらに別の実施形態では、スイッチング要素には、直列に連結された逆止弁71と電磁弁との組み合わせを含むことができる。さらに別の実施形態では、スイッチング要素には、フェイルセーフ三方弁を含むこともできる。以下、説明のためのスイッチング要素の例として、逆止弁71を取り上げる。本開示の図面では、逆止弁71は、アノード再循環ループ10の第1の経路P3に配置されることが示される。逆止弁71は、アノードブロワ41が故障した場合に、燃料ガスを第2の経路P4から燃料排気経路P5に流すようにすることができる。アノードブロワ41の故障とは、アノードブロワ41がアノード再循環ループ10内の循環を駆動できなくなることを意味する。アノードブロワの故障信号を受信すると、逆止弁71がオフ(閉)にトリガされて第1の経路P3が遮断される。このとき、燃料ガスは、第1の経路P3ではなく第2の経路P4を通って確実に燃料排気経路P5に流れることができ、燃料ガスは還元ガスに還元される。したがって、適切な還元ガスが確実に燃料電池スタック11のアノード12を通って最小量で流れるようにすることができる。温度が500℃を超える場合、Niの再酸化を防ぐために、アノード12を還元雰囲気中に保持することができる。スイッチング要素がフェイルセーフ三方弁である場合には、スイッチング要素は結合点Q1に配置されてもよく、燃料ガスを第1の経路P3ではなく第2の経路P4に流すことができる。
【0032】
図1の燃料電池システム100と比較して、本開示の一実施形態による燃料電池システム200は、燃料電池システム200がシャットダウンされる場合にアノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するための圧力制御デバイスをさらに含むことができる。図2を引き続き参照すると、本開示の一実施形態による圧力制御デバイスは、アノード圧力制御弁72を含むことができる。アノード圧力制御弁72は、燃料電池システム200がシャットダウンプロセスを行う際に、アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するためにアノード圧力を別個に調整することができ、アノード材料を酸化する可能性のある、カソード13からアノード12への空気のクロスオーバーリークを防ぐことができる。一実施形態では、アノード圧力制御弁72は、分岐点Q2と触媒バーナ51との間に配置される。別の実施形態では、アノード圧力制御弁72は、分岐点Q2の後で、かつ、ホットボックス1の前に配置される。
【0033】
図3に示すように、燃料電池システム200は、改質器15の近くに配置されたアノード熱交換器64をさらに含むことができる。触媒バーナ51は、改質器15を、アノード還元のための連続還元ガス(H/CO)を供給可能な活性改質反応温度(例えば、500~650℃)よりも高い温度に維持することができる。触媒バーナ51からの高温のバーナ排気は、アノード熱交換器64を通って流れることができ、アノード熱交換器64は、高温のバーナ排気の熱を改質器15に伝達することができる。
【0034】
アノード熱交換器64を備えた実施形態では、空気供給デバイス22によって供給される低温の空気に、第1の空気熱交換器62によって熱を伝達する高温ガスは、アノード熱交換器64出口からのガスである。
【0035】
燃料電池スタック11と、改質器15と、触媒バーナ51と、第2の空気熱交換器63と、アノード熱交換器64とは、すべてホットボックス1に密封される。
【0036】
一例として、図3に示すように、燃料供給デバイス21によって供給される約200℃の温かい燃料ガスは、燃料熱交換器61を通過する。燃料熱交換器61では、約200℃の温かい燃料ガスは、アノード出口からの約750~800℃のアノード排気から熱を回収する。燃料熱交換器61の後、燃料熱交換器61出口から出て改質器入口に入る燃料ガスは、約680~750℃に達する可能性がある。
【0037】
空気供給デバイス22によって供給される約25℃の低温の空気は、第1の空気熱交換器62を通過する。第1の空気熱交換器62では、約25℃の低温の空気が、アノード熱交換器64出口からの約450℃のガスと熱交換する。第1の空気熱交換器62の後、第1の空気熱交換器62出口からの温かい空気は、約300℃に達する可能性があり、その後、ホットボックス1に入る。ホットボックス1の予熱後、第2の空気熱交換器63入口に入る、より温かい空気は、約400℃に達する可能性がある。第2の空気熱交換器63では、約400℃のより温かい空気が、触媒バーナ51からの約850℃の高温のバーナ排気とさらに熱交換される。第2の空気熱交換器63の後、第2の空気熱交換器63出口から出てカソード入口に入る高温の空気は約700℃に達する可能性があり、第2の空気熱交換器63から出てアノード熱交換器64に入るバーナ排気は約700℃である。アノード熱交換器64では、アノード熱交換器64は、約700℃のバーナ排気の熱を改質器15に伝達することができる。アノード熱交換器64の後、アノード熱交換器64出口から出て第1の空気熱交換器62に入るバーナ排気は、約450℃に達する可能性がある。第1の空気熱交換器62の後、第1の空気熱交換器62から排出されるバーナ排気は、約150~200℃である。
【0038】
図4に示すように、本開示の別の実施形態による圧力制御デバイスは、オリフィス73を含むことができる。一実施形態では、オリフィス73は、分岐点Q2の下流に配置される。別の実施形態では、オリフィス73は、第1の空気熱交換器62の下流に配置される。
【0039】
本開示の実施形態の燃料電池システム200では、逆止弁71などのスイッチング要素と圧力制御デバイスとを配置することにより、本開示の燃料電池システム200は、燃料電池スタック11のアノード12を酸化から効果的に保護し、かつ、アノードブロワ41が故障した場合に燃料電池スタック11のクロスオーバーリークを防ぐことができ、ひいては、燃料電池スタック11の完全性を保護することができる。
【0040】
アノード12のニッケルの再酸化を防ぐためにアンモニア系の還元ガスまたは水素のボンベなどの追加のガス供給を使用することなく、本開示の燃料電池システム200は、燃料電池スタック11の正常動作で使用される既存の燃料供給デバイス21のみで使用することができる。本開示の燃料電池システム200は、経済的に設置および操作することができる。
【0041】
燃料電池システムを制御する方法
図5は、本開示の一実施形態による、燃料電池システムを制御する例示的な方法の前半部分の流れ図を示す。制御方法には、以下のステップを含むことができる。
【0042】
図5に示すように、ブロックB11では、アノードブロワ41を駆動することによって、燃料ガスを燃料供給デバイス21により燃料電池システムのアノード再循環ループ10に供給することができる。
【0043】
任意選択の実施形態では、制御方法は、任意選択のステップB12をさらに含むことができる。ブロックB12では、給水デバイス23によって、アノード再循環ループ10に蒸気を供給することができる。
【0044】
ブロックB13では、空気供給デバイス22によって、燃料電池スタック11のカソードに空気を供給することができる。
【0045】
ブロックB14では、センサによって、アノードブロワ41の動作状態を監視することができる。
【0046】
ブロックB15では、アノードブロワ41に何らかの故障または異常事象が発生したかどうかが判定される。アノードブロワ41の故障信号を受信すると、プロセスはブロックB16に進む。そうでなければ、プロセスはブロックB14に戻る。
【0047】
ブロックB16では、アノードブロワ41の故障信号を受信すると、燃料電池システム200のシャットダウン手順を開始することができる。
【0048】
図6は、本開示の一実施形態による、図5の燃料電池スタック11のシャットダウン手順を開始する方法を示す。燃料電池システム200のシャットダウン手順開始は、以下のステップを含むことができる。
【0049】
図6のブロックB21では、燃料電池スタック11の電力負荷が遮断される。
【0050】
ブロックB22では、燃料電池スタック11のカソード13に供給される空気の空気流量が、所定の空気流量値に設定される。
【0051】
ブロックB23では、アノード再循環ループ10に供給される燃料ガスの燃料流量が、所定の燃料流量値に設定される。
【0052】
ブロックB24では、アノード再循環ループ10に供給される蒸気の蒸気流量が、所定の蒸気流量に設定される。ブロックB23およびB24の目的により、所定の蒸気対炭素比の限界を超えるアノード再循環ループ10の蒸気対炭素比(SCR)を確実にして、炭素堆積を回避することができる。例えば、所定の蒸気対炭素比の限界には、3を含むことができる。
【0053】
図5に戻ると、ブロックB17では、燃料ガスがアノード12を通って燃料排気経路P5に流れるようにすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、制御方法は、ブロックB18をさらに含むことができる。ブロックB18では、アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持することができる。一実施形態では、アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持することには、アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにアノード圧力を別個に調整することを含むことができる。
【0055】
図7は、本開示の一実施形態による、燃料電池システムを制御する例示的な方法の後半部分の流れ図を示す。制御方法には、以下のステップをさらに含むことができる。
【0056】
図7のブロックB31では、触媒バーナ51の負荷を調整することができ、アノード温度がアノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値を下回るまで改質器入口の温度を所定の改質反応温度よりも高く維持するように、触媒バーナ51からの高温のバーナ排気の熱がアノード再循環ループ10の改質器15に伝達される。温度閾値は、例えば350℃である。
【0057】
ブロックB32では、アノード温度が温度閾値を下回るかどうかが判定される。アノード温度が温度閾値を下回ると、プロセスはブロックB33に進む。そうでなければ、プロセスはブロックB31に戻る。
【0058】
ブロックB33では、アノード温度が温度閾値を下回ると、燃料ガスと、蒸気と、空気とが遮断される。
【0059】
ブロックB34では、アノード温度が温度閾値を下回ると、触媒バーナ51が停止される。
【0060】
ブロックB35では、アノード温度が温度閾値を下回ると、アノード12が、例えば窒素(N)を使用して所定の時間パージされる。
【0061】
パージの目的の1つは、アノード温度が120℃超である間にアノードパイプライン内の残留水蒸気を除去することである。燃料電池システムが自然に100℃未満に冷却されると、水蒸気は液体の水になってアノードパイプライン内に留まり、望ましくない。したがって、水が水蒸気または蒸気の形態であるときにアノード12をパージする必要がある。さらに、パージの別の目的は、アノードパイプライン内の残留燃料排気を除去することである。燃料排気には、可燃性、爆発性、または毒性のいずれかである、H、CO、CH、COが含まれる可能性がある。したがって、燃料電池システムが冷えた時点で保守要員が個人の安全の問題なく作業できるように、低い温度のアノードパイプラインからパージによって除去する必要がある。
【0062】
一実施形態では、パージガスはNとすることができる。別の実施形態では、アノードは、最初に(アノードが約150℃~350℃である間に)燃料ガスでパージすることができ、その後アノード12が爆発性でなくなる低い温度まで待機して、次に空気でアノード12をパージする。
【0063】
本開示の制御方法は、燃料電池スタック11のアノード12を酸化から効果的に保護し、かつ、アノードブロワ41が故障した場合に燃料電池スタック11のクロスオーバーリークを防ぐことができ、ひいては燃料電池スタック11の完全性を保護することができる。
【0064】
本開示の実施形態による制御方法のステップは機能ブロックとして図示されているが、ブロックの順序および図5図7に示されるさまざまなブロック間のステップの分離は、限定を意図するものではない。例えば、ブロックが異なる順序で実行されてもよく、1つのブロックに関連するステップが1つまたは複数の他のブロックと組み合わされてもよいし、またはいくつかのブロックに細分されてもよい。
【0065】
本開示を典型的な実施形態で例示および説明してきたが、本開示の精神から何ら逸脱することなくさまざまな修正および置換を行い得るので、示された詳細に限定されることは意図しない。したがって、本明細書に開示された開示のさらなる修正および同等物は、日常的な実験のみを用いて当業者が着想する可能性があり、そのようなすべての修正および同等物は、以下の請求項によって定義される開示の精神および範囲内にあると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7